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 2019. 7. 5 虐待に合わない老人ホームは? 「優良介護施設」の見分け方  週刊朝日
 2019. 7.30 町田の郊外住宅地で無料送迎サービス 自治会と社会福祉法人が連携


■2019.7.5  虐待に合わない老人ホームは? 「優良介護施設」の見分け方  週刊朝日
またも、入居者の尊い命が犠牲になってしまった。

東京都品川区の有料老人ホームで入居者の82歳の男性が死亡していたことがわかり、警視庁は5月22日、元介護職員の根本智紀容疑者(28)を殺人の疑いで逮捕し、発表した。調べに対し、「暴行を加えたということはありません」と容疑を否認しているという。

警視庁によると、根本容疑者は有料老人ホームで働いていた4月3日から4日にかけて、入居者の当時82歳の男性に暴行を加えて死亡させた疑いが持たれている。

こうした介護施設での入居者への暴行・虐待は後を絶たない。
厚生労働省が今年3月発表した実態調査では、介護職員らによる高齢者への虐待が2017年度に510件あり、過去最多を更新した。調査開始以来、11年連続の増加で、被害者は認知症の人が約8割を占めている。

調査は、厚労省が高齢者虐待防止法に基づき、毎年実施。17年度に自治体が虐待と判断した件数を集計したもの。
被害者が複数いる場合があるため、職員による虐待の被害者は854人。82.2%の人には認知症があった。

虐待の種類では、暴力や拘束などの身体的虐待が59.8%で最多。暴言などの心理的虐待、介護等放棄と続いた。

施設・事業所の種類では、特別養護老人ホームが30.4%で最も多かった。原因は「教育・知識・介護技術等の問題」が60.1%と最多で、「職員のストレスや感情コントロールの問題」が続いている。

立件されたケースも多い。
14年に川崎市の介護付き有料老人ホームで入所者3人が転落死した事件では、18年3月に元職員の男が死刑判決を受けた。18年8月には熊本市西区の介護施設で、職員の男が認知症の入所女性を殴り死なせたとして傷害致死罪で起訴されている。

年々深刻化する介護施設での虐待。社会福祉学が専門の淑徳大学の結城康博(ゆうきやすひろ)教授が背景を説明する。
「まず介護職の人手不足の問題がある。加えて、介護報酬を優先し、人材の質を見極めずに職員を採用しているホームがある」

結城教授によれば、ベッド数を増やせば増やすほど、介護職員も必要となるが、その分、職員数に応じた介護報酬が得られる。このため、職員の頭数だけそろえるという考えの施設も存在するという。

「経営者は職員を採用するときに、本当に介護の現場にふさわしい人物かしっかりと見極めるべきだ。特に重視すべきは、なぜこの職を選んだかという動機。そこをきちんと見極めることだ。そして介護報酬は減るが、ベッド数を減らして職員のシフトを余裕あるもの、ストレスのかからないものにすべきだ」

介護のマインドに相反する利益優先主義が事件の背景にある、と指摘する。
では実際に入居することになる家族を虐待に遭わせないためにはどのような施設を選ぶべきなのか。結城教授によると三つのポイントがあるという。

「まず施設の担当者に職員の離職率を尋ねること。職員が定着しないということは職場に何らかの問題があり、虐待も起こりやすい。はっきり答える施設は誠意があると考えられるので信用して良い。一方で回答を濁したり隠したりするようであれば赤信号。絶対に契約してはいけない」

二つ目は家族が頻繁に施設を訪問することが重要だという。家族が常に入居者のそばにいれば、職員は緊張感を持って接するのだ。

三つ目は地域に開かれているかどうか。地元のボランティアなどが定期的に施設を訪れてイベントなどを行っているかどうかもチェックすると良いという。
「地元の人の出入りがある施設は、オープンで隠し事がない。従って虐待が生まれにくい風土がある施設と判断できる」

団塊の世代が80歳を迎える今後10年で、介護施設もさらに人手が不足し、対策を打たなければ状況は深刻化する一方と予想される。
「ただ与えられるものという福祉の概念から一歩進んで、しっかりと消費者目線で施設を選んでいくことが重要だ」
介護施設選びにも主体性が求められる時代がすぐそこまで来ている。

■2019.7.30  町田の郊外住宅地で無料送迎サービス 自治会と社会福祉法人が連携
買い物や外出が困難な住民のための送迎車の試験運行が鞍掛台自治会(町田市西成瀬)で始まった。

鞍掛台は高台の住宅地で、最寄りバス停まで狭く急な坂道を上り下りしなければならない。高齢化率は31%で市平均よりも高く、移動困難者の救済が地域課題となっている。同自治会は昨年1月、住民350世帯にアンケートを実施。6割以上が送迎バスの利用を希望したことから、取り組みをスタートさせた。

地域包括支援センターの協力を得て、老人ホームなどを運営する社会福祉法人3団体から空き車両の提供を受ける。ガソリン代や運転手の人件費など運行に必要な経費は、社会福祉法「地域における公益的な取組」規定に基づき、社会福祉法人が負担。運行に必要な手続きや初期費用は、町田市が協力。道路運送法上は、「許可・登録を要しない輸送」に該当し、住民は無料で利用できる。

送迎車は3月に試験運行をスタート。毎週木曜11時〜14時、成瀬コミュニティーセンターと4カ所の乗降場所を結ぶルートを6周する。1カ月の平均利用者は約60人で、累計250人。コミュニティーセンター周辺で買い物をする利用者が多いという。

「住宅地ができて50年。高台に水道を引くポンプや私道の管理、スポーツ広場の利用などを通じて自治意識が高い。だから、送迎バスの取り組みも自分たちでできたと思う」と同自治会プロジェクトメンバーの海老澤清さん。8月で試験運行を終え、取り組みを検証するという。

「運行頻度を増やしてほしいという声もある。高齢者だけでなく、小さな子どもがいるお母さんにも利用してもらいたい。費用を負担してもらっている社会福祉法人に対しては、自治会のメンバーが施設のイベントを手伝うなどして、お礼をしている。今後の費用負担は、商店街や商業施設からの協賛を得られないかといったアイデアも出ている。送迎車の需要は増えることが見込まれるので、いい形で続けていきたい」とも。

公共交通不便地域の対策として、市は事業者と連携してコミュニティーバスを運行しているが、過去に赤字路線を廃止したこともある。人口減少と高齢化が進む郊外住宅地のモビリティー確保の一手段として、ラストワンマイルを補う互助的な取り組みが実現できるか、「地域の力」に懸かっている。

 

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