残しておきたい福祉ニュース 1996〜社会福祉のニュース
残しておきたい福祉ニュース
2010年 |
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2010.10. 9 | いわき介護施設5人死傷火災で経営者を不起訴 ROSE倶楽部粒来 |
2010.10.14 | 発達障害ある子の子育て、経験した先輩が手助け |
2010.10.19 | 特別支援学校、教室不足が深刻に 更衣室、廊下、職員室まで転用 2008年文科省調査 |
2010.10.20 | 介護送迎車で死亡事故 女に禁固3年6月判決 和歌山 ニチイ学館 ニチイケアセンター紀北 |
2010.10.28 | 障害ゆえの犯罪行為、理解を 弁護士会と連携、ハンドブック作成 大津・支援センター |
■2010.10.9 いわき介護施設5人死傷火災で経営者を不起訴 ROSE倶楽部粒来 | |
いわき市の小規模多機能型居宅介護施設「ROSE倶楽部粒来(つぶらい)」で2008年12月、利用者2人が死亡、3人がけがをした火災で、地検いわき支部は8日、業務上過失致死傷の疑いで書類送検された同施設の経営者男性(39)を不起訴とした。処分内容は嫌疑不十分とみられ、福島地検は「過失を認めるだけの証拠が十分でない」と話した。 同地検によると、火災はリネン室の棚に置いてあったタオルから出火して発生。タオルにはフットマッサージ用のオイルが付着しており、オイルに含まれる成分が酸化して発火したことが原因、としている。 |
■2010.10.14 発達障害ある子の子育て、経験した先輩が手助け | |
発達障害の子を育てた親たちが、同じ障害のある子を持つ若い親たちを支える「ペアレントメンター」養成の取り組みが広がっている。メンターとは「信頼できる相談相手」の意。大変な子育てを経験した先輩だからこそ、安心して相談できることも多い。厚生労働省も、本年度からメンター養成に乗り出した。 名古屋市内で10月初めに開かれた「ペアレントメンター養成講座」。あいち発達障害者支援センターが主催し、自閉症や学習障害(LD)の子どもを育ててきた30〜60代の親たち18人が参加した。 講座の中で、参加者同士のロールプレーがあった。「子どもが病院で自閉症と言われました。学校生活がどうなるか不安です」と、悩みを打ち明ける親役。メンター役の受講生の女性は「幼稚園から小学校に入るときは、私も悩みました」と体験を語る。 終了後、講師は「もう少し幅広く話を聞いてあげると、別の悩みが出てくることもありますよ」とアドバイスした。 質問に答えるだけでなく、言葉にならない気持ちを受け止めて共感したり、療育機関などの情報を提供したりするのも、メンターの大事な役割だ。 講座では、自閉症や注意欠陥多動性障害(ADHD)、LDなど発達障害の知識、相談技術などを2日間かけて学んだ。 こうした養成講座は、厚労省の予算で、今年から愛知、福井、埼玉、栃木など20カ所で行われている。 同省の日詰正文・発達障害対策専門官は「発達障害を診る医療機関が少なく、診断を受けるのにも長期間待たされることも少なくない。それだけに、不安を抱える親たちを支える相談相手が必要。同じ立場の親だからこそできる役割もある」と話す。 今後、各都道府県でメンターの養成を進め、来年度以降は、メンターの活動を支えるコーディネーター役を発達障害者支援センターに配置するなど、体制整備を目指すという。 ペアレントメンターの養成は2005年ごろから、日本自閉症協会などが各地で行ってきた。今回の愛知県の養成講座も、同県自閉症協会のセミナーを修了したメンターが指導役を務めた。 発達障害がある子を持つ親たちは、「本人が苦手なことを園側にどう分かってもらったらいいか」「問題児扱いされてしまった」など、医療機関や療育施設とのかかわり方、就園、就学について悩みや不安を抱え、行き違いが起きることもある。 加藤香同協会理事によると、先輩の親たちは以前から相談に乗ってきたが、つい説教調になってしまったり、必要以上に相手に踏み込み過ぎてしまったりするケースがあるという。「ニーズが増えているからこそ、適切な知識と第三者的な目線も持てる人材の養成が必要」と指摘する。 15歳の自閉症の息子がいる浅野雪香さんもメンターとして活動する1人。「養成講座を受ける前は、自分の意見を押し付けてしまっていたかも。受講後は、アドバイスすることより、相手の気持ちを引き出すことを大切にするようになりました」 同協会のメンターは、親の相談に乗るほか、療育施設での講座の講師を務めたりしている。 講師として参加した名古屋大病院親と子どもの心療科の吉川徹医師は「医者や専門家がどれだけ配慮しても、障害を受け止める際に衝撃や戸惑い、怒りなどが出てくる。話を聞くのに加え、適切なタイミングで医療機関を紹介したり、専門機関と上手につながり続ける手助けをすることで、親も子も楽になれれば、子の発達にもいい効果があると思う」とその意義を強調する。 |
■2010.10.19 特別支援学校、教室不足が深刻に 更衣室、廊下、職員室まで転用 2008年文科省調査 | |
障害児が学ぶ全国の特別支援学校で、深刻な教室不足が起きている。倉庫を教室に転用したり、1教室をカーテンで二つに仕切ったり。発達障害などで入学してくる子どもが増え続けているためとみられる。 政府内では障害児教育のあり方を巡る議論が進められているのに、障害児の教育環境は悪化するばかりだ。 発達障害児の入学増背景に知的障害の小中学生が通う東京都立小金井特別支援学校の校舎は、鉄筋コンクリート造り2階建て。一般教室はもともと18室だった。ところが、児童生徒数が10年前の1・5倍の約150人に膨らんだ結果、家庭科室などの特別教室、更衣室や印刷室、廊下の一部まで一般教室に転用。特別教室をカーテンやロッカーで仕切って2クラスで使い、何とか35教室を作り出している状態だ。 福島市にある福島県立大(おお)笹生(ざそう)養護学校では、職員室も教室に転用した結果、教師は廊下に机を置いている。 国の学級編成基準では「小中学部6人、高等部8人まで」とされるが、熊本県合志(こうし)市の県立菊池養護学校では、教室不足のため、10人、11人学級を編成している。 少子化で子どもの数は減っているのに、特別支援学校の児童生徒数は急増し、文部科学省のまとめでは、昨年の公立特別支援学校の在籍者は約11万3000人。10年間で約2万8000人増えた。2008年の調査では、全国の公立966校の2万9008学級に対し、教室不足数は2797。1割の学級が、臨時の「教室」を使っていた。 文科省は昨年度、約2600億円の補正予算を組み、自治体の教室増設を促した。しかし、児童生徒の増加に追いつけず、間仕切りで教室の出入り口が1か所になり、自治体が建築基準条例に定める「二方向避難」を守れない教室も散見される。 特別支援学校の児童生徒が急増するのは、本来、一般の小中学校に入ることになっている発達障害の子どもが、支援学校に入学してきているためとみられる。 茨城大学の荒川智教授(障害児教育)は、「一般の学校には障害児教育の経験、知識が十分な教師が少なく、場所を失った子どもが、特別支援学校にきている。教室増設も急務だが、小中学校の体制も見直す必要がある」と指摘している。 特別支援学校 従来の養護学校(知的障害、肢体不自由等)、盲学校、ろう学校が、2007年4月の学校教育法改正により、「特別支援学校」として制度上、一本化された。地域の幼稚園、小・中学校、高校の障害児教育に助言し、支援する役割も担う。学校名が旧区分のままのケースもある。 発達障害 脳の機能障害で、対人関係やコミュニケーション、社会生活に困難を抱える。知的障害を伴うケースと、そうでないケースがある。自閉症、アスペルガー症候群などの広汎性発達障害、注意欠陥・多動性障害、学習障害などが含まれる。 |
■2010.10.20 介護送迎車で死亡事故 女に禁固3年6月判決 和歌山 ニチイ学館 ニチイケアセンター紀北 | |
介護施設の送迎車を運転中に事故を起こし、乗っていた施設利用者の男女3人を死亡させたとして、自動車運転過失致死の罪に問われた橋本市隅田町河瀬、パート従業員、千葉加奈子被告(29)の判決公判が19日、和歌山地裁であった。杉村鎮右裁判官は「事故は被告の全面的過失によるもので、3人の命を奪った結果は重大」として、禁固3年6月(求刑禁固6年)を言い渡した。 判決理由で杉村裁判官は「腹痛でハンドル操作などが困難だったにもかかわらず、休息を取らなかったのは危険性を軽視した安易な行動」と指摘した。 判決によると、千葉被告は平成21年11月19日午後4時25分ごろ、かつらぎ町の県道を走行中にガードレールに衝突、同乗の80〜90代の男女3人を死亡させた。 |
■2010.10.28 障害ゆえの犯罪行為、理解を 弁護士会と連携、ハンドブック作成 大津・支援センター | |
発達障害や知的障害がある人が犯罪を犯した際、裁判などで支援する試みが大津市で始まった。障害の特徴を理解してもらおうと、法廷での意見陳述やハンドブック発行に取り組む同市障害者相談支援事業所「やまびこ総合支援センター」の活動を報告する。(大津支局・猪飼なつみ) 7月下旬、大津地裁で開かれた公判。被告は、女性の体を触ったとして、滋賀県迷惑行為等防止条例違反の罪に問われた20代男性。人とのコミュニケーションが難しいとされる広汎性発達障害がある。 意見陳述した同センター相談支援専門員の佐藤紀子さん(35)は、事件前、男性が対人関係に慣れるため、共同生活を送るケアホームへの入所をセンターに相談していたこと、以前にも極度の緊張から女性の体に触ったことがあったと打ち明けていたことに触れた。 センターのスタッフが法廷で意見陳述したのは、今回が初めて。男性が5月に逮捕されて以降、弁護人、主治医らと話し合いを重ね、意見陳述、支援計画づくりが必要と判断した。 法廷で佐藤さんは「広汎性発達障害の人は、予想外のことが起こって緊張状態になると、混乱して妥当な判断ができなくなり、問題行動を起こすことがある」と説明。「本人が置かれている状態を周囲の支援者が察知できる環境を整える」と、今後、男性がケアホームに入所し、働くための支援計画も紹介した。 男性は8月、懲役5月、執行猶予5年の判決を言い渡された。裁判官は「広汎性発達障害のため、適切な方法でストレスを発散できなかった」と述べ、障害に一定の理解を示した。 センターは昨年3月、知的障害の男性がスーパーで万引をしたとして逮捕された際には、男性の障害の程度を調べた記録、今後の支援計画などをまとめた資料を大津地検に提出した。 佐藤さんは「本人の力だけではどうにもできないことがある。障害を警察、司法関係者に理解してもらうとともに、周囲の人の支援が必要」と語る。 こうした活動に加え、センターは、障害の特徴ゆえに犯罪行為と誤解されやすい事例、逮捕後の法手続き、弁護士会の当番弁護士の連絡先などを記したハンドブック(A5判、26ページ)を作成した。 誤解例では「毛玉に固執する人が、女性の服の毛玉を触って痴漢と間違われる」「小さい子どもが好きで、急に抱っこして不審者としてみられる」「突然パニックになって暴れる」−などのケースが挙がる。 センターに学識経験者や市社会福祉協議会、弁護士も加わって内容を練り、障害の例はイラスト入りで分かりやすく示すなど、工夫。「発達障害は、本人も家族も障害に気付かず、逮捕されてから分かるケースが多い」と、作成に携わったセンター相談員の越野緑さん(35)は、周囲が障害に気付くきっかけになればとの思いを込めた。11月初めに1万部発行し、警察、司法関係者や支援施設、障害者の家族らに配る。 越野さんは「ハンドブックは刑を軽くするためや、起訴されないようにするためのものではない。日ごろから、警察や司法の関係者、地域の人たちに障害の特性を知ってもらうのが本来の目的」と話す。 メンバーの1人、土井裕明弁護士(46)は「支援者の協力がなければ、有効な弁護活動はできない」と、弁護士会と支援者の連携こそがカギとみる。 障害者の権利のため支援する「プロテクション・アンド・アドボカシー大阪」代表の辻川圭乃弁護士(52)は「大阪や埼玉でも弁護士と支援者が協力する取り組みが始まっている。支援者のネットワークがある滋賀では、裁判支援の輪が広がりやすいのではないか」と評価している。 |