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残しておきたい福祉ニュース

 2010年 
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 2010. 4. 2 日清医療食品10億円所得隠し 病院給食受注で国税指摘
 2010. 4. 2 児童自立支援施設の虐待、研修や検討会開催求める厚労省専門委員会 「きぬ川学院」
 2010. 4. 2 入所児童に性的虐待か 岡山の児童養護施設 男性職員を懲戒解雇
 2010. 4. 7 大阪の障害児施設で職員13人が日常的体罰たたく・引きずる・馬乗りで押さえる「月の輪学院」 
 2010. 4. 7 <準強姦容疑>知的障害者に暴行、生活支援員を逮捕 千葉
 2010. 4. 8 知的障害者支援施設「竹の子学園」通所者が老人ホームで手作りパン販売/小田原
 2010. 4. 8 福祉の理念揺るがす行為 施設女性に暴行 元職員、資格持たず
 2010. 4.14 暴力行為で大阪府が改善指導 和泉の障害者施設 社会福祉法人日本ヘレンケラー財団 太平学園 伯太学園
 2010. 4.16 虐待や不適切拘束441件 城東区の知的障害児施設 「すみれ愛育館」 社会福祉法人大阪福祉事業財団
 2010. 4.16 大阪府が知的障害者2施設を監査 社会福祉法人日本ヘレンケラー財団 太平学園 伯太学園
 2010. 4.16 <千葉障害者準強姦>被告に懲役8年求刑 起訴内容認める
 2010. 4.24 障害ある人・ない人、共同生活の家誕生 東京・恵比寿


■2010.4.2  日清医療食品10億円所得隠し 病院給食受注で国税指摘
病院や福祉施設向けの給食サービス最大手「日清医療食品」(東京)が東京国税局の税務調査を受け、08年3月期までの7年間で約10億円の所得隠しを指摘されたことが分かった。

大阪の医療法人のグループ会社に「給食営業権」購入名目で代金を支払っていたが、国税局は営業権に実体はなく、課税対象の「寄付金」と判断したとみられる。実質的にはリベートに当たるとされた。

重加算税を含めた追徴税額は約3億円。日清医療食品は「指摘に従ってすでに修正申告し、納税を終えている」とコメントし、地方税を含めた約5億6500万円の損失計上を公表している。

関係者によると、同社は02年12月、大阪府茨木市の医療法人「恒昭会」のグループ会社で、グループ内で給食事業を請け負っていた「サンハンズ」(同市、解散)から、「給食事業の営業権」を約11億円で購入し、新たに給食の提供を始めたという。

しかし国税局はこの購入費について、代金に見合うような権利は存在しないと指摘。実質的に恒昭会傘下の病院などからの給食事業受注のための資金で、対価性を伴わない資金提供で、課税対象の「寄付金」に該当すると判断。その上で、経費として認められる一部を除き約11億円の大半について所得隠しを指摘したとみられる。

寄付金は、受け取った側が学校法人や宗教法人など公益法人であれば非課税だが、一般の法人であれば課税される。サンハンズは、受け取ったこの約11億円を適正に収入として計上しているとみられるが、一連の取引について恒昭会は「コメントは差し控えたい」としている。

日清医療食品は72年創業。医療、福祉系の給食ビジネスでは老舗(しにせ)として知られ、01年にジャスダックに上場している。08年3月期の売上高は1624億円。即席めんで有名な「日清食品」(東京)とは無関係。昨年9月には仕入れた食材の中に米販売会社「三笠フーズ」(大阪市)の汚染米が混入していたことが分かり、対応に追われた。

恒昭会は大阪府では有数の医療・福祉サービスグループで、複数の病院や福祉施設を経営するほか、全国で学校法人の運営にも携わっている。このうち山梨県の健康科学大学などを運営する学校法人で昨秋、2億円の使途不明金が発覚、文部科学省が今年3月に立ち入り調査をしている。

■2010.4.2  児童自立支援施設の虐待、研修や検討会開催求める厚労省専門委員会 「きぬ川学院」
国立児童自立支援施設「きぬ川学院」(栃木県さくら市)の寮で昨年、男性元寮長(40)が入所する10代の少女を虐待した問題で、厚労省専門委員会は2日、「個々の子どもへの対応が不十分だったとして、定期的な職員への研修や事例検討の開催などを施設に求める報告書を公表した。
 
報告書は、管理職が元寮長を指導し、速やかに問題を把握できる体制がなかったと分析。「近年は虐待を受けたり発達障害があったりする子どもが多く、(生活を安定させるための日課重視ではなく)個別対応が必要なのに、生活を安定させるために児童にやらせている日課を重視しすぎたと指摘。職員の技能を向上させる研修もなかったと批判した。

再発防止策では(1)実践的な職員研修を定期的に実施(2)事例検討会を定期的に開催し、検討内容の充実(3)他の施設と連携し、医師や心理士らでつくる医療チーム支援要請を求めた。同省の担当者は「同学院に限らず、事件の反省を多くの施設で参考にしてもらいたい」としている。元寮長は停職3カ月の懲戒処分を受けた。

■2010.4.2  入所児童に性的虐待か 岡山の児童養護施設 男性職員を懲戒解雇
岡山市内の児童養護施設で20代の男性職員が入所児童に性的虐待をしていたとして、同市が事実確認の調査をしていることが2日わかった。施設側は男性職員が事実関係を認めたため、3月31日付で懲戒解雇した。
 
同市と同施設園長によると、男性職員は昨年4月、小学校低学年の男児を夜寝かしつける際、下半身を触ったという。今年の3月下旬に児童の保護者から施設に連絡があり、発覚した。
 
男性職員は小学校低学年の生活寮を担当。問題行動について「わいせつなことをしているつもりはなかった」と述べたというが、施設側は子どもと不適切なかかわりがあったとして懲戒解雇にした。

■2010.4.7  大阪の障害児施設で職員13人が日常的体罰たたく・引きずる・馬乗りで押さえる「月の輪学院」 
大阪府寝屋川市の知的障害児施設「月の輪学院」で、職員13人が入所児童ら21人に対して体罰などの虐待を日常的に繰り返していたことがわかった。少なくとも2年前から続いていたとみられ、府は児童福祉法に基づき同施設に監査に入り、改善報告を提出するよう指導した。児童らにけがはなかった。

発表によると、同施設には知的障害児を中心に約50人が入所し、生活していた。このうち5〜22歳の計21人が体罰を受けていた。虐待に関与していたのは、職員約30人のうち男性児童指導員5人と女性保育士8人で、パニック症状になった児童の顔を平手でたたいたり、動かない児童を力ずくで立たせたりするなどの体罰を加えていた。けんかをした児童を注意する際などに、服や体をつかんで引きずったり、馬乗りになって押さえたりしたこともあった。

同施設で実習中、虐待を目撃した短大生が指導教授に相談。昨年9月に教授が府中央子ども家庭センター(寝屋川市)に通報したことから発覚した。府はその後、今年2月までに延べ10日間、監査を実施した。

府の調査に、職員らは「そういう(体罰などの)方法が当たり前だという認識だった。皆がやっているからいいだろうと思っていた。注意する人もいなかった」と語った。施設を運営する社会福祉法人の理事長は「体罰は知らなかったが、責任を痛感している。重大な問題だととらえ、早急に府に改善策を提出したい」と話しているという。

「石井芳明施設長は「隣の子のおかずを取り上げた子に対して手の甲をたたくことは虐待だと思っていなかった。認識が甘く、子供たちに対し深く反省している」と述べた。」

■2010.4.7  <準強姦容疑>知的障害者に暴行、生活支援員を逮捕 千葉
千葉県一宮町の障害者支援施設「青松(せいしょう)学園」の生活支援員だった男が昨年1月、重度の知的障害を持つ20代の女性入所者に性的暴行を加えたとして、準強姦(ごうかん)容疑で逮捕、起訴されていたことが関係者への取材で分かった。

捜査関係者によると、男は榊田悠人被告(23)。昨年1月下旬の夜、同施設内で、知的障害のため意思表示できない女性を性的に暴行した疑いが持たれており、容疑を認めているという。女性は暴行を受けて妊娠し、昨年8月に胎児を死産した。DNA鑑定から父親が榊田被告と判明したという。

青松学園や県などによると、榊田被告は事件当夜、別の男性職員と2人で夜勤だったが、男性職員は仮眠し、気づかなかったという。同施設の入所者は30人ほど。榊田被告は入所者の生活全般を介助する職員で、07年3月から逮捕される今年2月まで勤務。逮捕後、懲戒解雇されたという。

青松学園を運営する社会福祉法人「児童愛護会」の多久島宏規施設長(53)は「被害を受けた利用者や家族に申し訳ない気持ちだ。入居者を守る立場だったのに、なんと言っていいか」と話した。

■2010.4.8  知的障害者支援施設「竹の子学園」通所者が老人ホームで手作りパン販売/小田原
小田原市府川の知的障害者支援施設「竹の子学園」の通所者が8日、同市栢山の特別養護老人ホーム「芳徳の郷ほなみ」で手作りのパンを販売した。

同学園は南足柄市沼田で「ハッピー」というパン工房を運営する。通所者約25人は水、日曜を除くほぼ毎日、生地から数百個のパンを製造。JAかながわ西湘直営の農産物直売所「朝ドレファ〜ミ♪」(小田原市成田)に納品し、日替わりで市内約10施設で出前販売している。

同ホームが昨年8月の納涼祭に通所者を招待したことで両施設の交流が始まり、隔週木曜の正午ごろにパンの販売を続ける。毎回約30種類を用意し、5千〜6千円の売り上げがある。

「ユニホーム」の赤色バンダナを頭に巻いた通所者はこの日、玄関ホールに出店。お年寄りに取りかごを配ったり、自信作の「ピーナツクリームパン」や「じゃがめんたいパン」を勧めたりして接客した。

同ホームでは、1日2回の「おやつタイム」がある。購入は「1人2品」までと制限さ
れており、職員の青木利奈さんは「お年寄りは毎回、パン選びを楽しみにしています」と話している。

■2010.4.8  福祉の理念揺るがす行為 施設女性に暴行 元職員、資格持たず
千葉県内の障害者支援施設で、夜勤中に重度の知的障害がある入所者の20代女性に、性的暴行を加えたとして、準強姦の疑いで逮捕、起訴された元職員(23歳)が懲戒解雇となった。障害者を守るべき施設で、事件はなぜ起きたのか、施設運営や制度上の問題を探った。

施設によると被告は2007年3月、生活支援員として採用された。同被告は事件当時、20人ほどいた職員のなかで唯一、福祉関係の大学や専門学校で取得できる社会福祉主事などの資格を持っていなかったという。資格を持たない人を採用しても法的には問題ない。

施設や県警によると、施設関係者が昨年8月に女性の妊娠に気付き、女性は1〜2週間後の同月中に病院で死産した。警察への通報は病院からだったという。施設では昨年8月以降、夜勤を2人から3人態勢にし、見回りを強化。防犯カメラも3台から13台に増やした。施設の在り方に問題はないのか。障害者の人権尊重を訴えるNPO法人・DPI日本会議の三沢了議長は「施設の閉鎖性の問題の一つ」と指摘する。障害者施設は社会の目が届きにくく、虐待や人権侵害があっても、外部から見えにくいという。三沢議長は、職員のモラルの問題もあるとしたうえで「障害者虐待防止法(仮)」の制定や、オンブズマンなど外部の人が出入りする環境をつくるのが大切」と今後の課題を指摘する。

夜勤中に、女性入所者を暴行したとされる今回の事件。厚生労働省障害福祉課によると、当直体制についての規制やガイドラインはないという。同課の担当者は「各施設によって個別のケースがあるので、当直体制をこちらで決めるのは難しい」と指摘。落ち着きがなかったり、急にパニックになったりする入所者もいるため、夜勤に男手が必要なケースもあるという。県障害福祉課も「入所者それぞれのケースがあるので、細かい取り決めは施設に任せている」と説明する。同課は昨年8月に女性の妊娠を把握、昨年11月に施設から改善報告書を受け取ったが、これまで立ち入り検査などは行っていないという。担当者は「適切に報告書の内容が実践できているか、立ち入り検査も行い、厳正に対処していく」と話している。

■2010.4.14  暴力行為で大阪府が改善指導 和泉の障害者施設 社会福祉法人日本ヘレンケラー財団 太平学園 伯太学園
入所者を鍵をかけた個室に閉じこめていたとして大阪府から改善指導を受けた知的障害者更生施設「太平学園」(同府和泉市)で、元施設長が入所者を殴った り、職員が入所者を威嚇していたとして、運営する社会福祉法人「日本ヘレンケラー財団」(大阪市阿倍野区)が3月中旬に府から改善指導を受けていたことが 13日、新たにわかった。

府によると、元施設長は平成16年1月、当時30代後半だった入所者の男性が言うことを聞かなかったことなどを理由に、定規で男性の頭部を殴りつけ、軽傷を負わせたという。

元施設長によると、男性は職員や他の入所者に暴力を振るうこともあったといい、家族からは、絶対に男性を家に戻さないよう依頼を受けていたという。

元施設長は、一連の問題の責任を取る形で副施設長に降格となったが、今月末で退職することを決めた。「長年(男性の)面倒を見てきて親代わりのつもりだった。家に帰ろうとするので、止めるのに必死だった」などと話している。

また同学園と、同系列の知的障害者更生施設「伯太(はかた)学園」(和泉市)でそれぞれ、職員が入所者をにらみつけて威嚇しながら指導を行ったとして、府が法人に改善を指導していた。

■2010.4.16  虐待や不適切拘束441件 城東区の知的障害児施設 「すみれ愛育館」 社会福祉法人大阪福祉事業財団
大阪市は、同市城東区の知的障害児施設「すみれ愛育館」で2005年4月〜09年10月、職員が入所者をたたくなどの虐待や不適切な隔離・拘束が計441件あったと15日までに公表した。

市によると、施設は2〜39歳の男女68人が入所。職員は指導員ら39人。昨年9月に第三者から市に通報があり、05年度以降の監査を実施、3月29日、児童福祉法に基づき改善指導した。

監査結果によると、身体的虐待と認定したのは6件。08年3月、職員が入所者の男性(16)の顔面をたたき唇を5針縫うけがを負わせた。職員は「自分の頭を床に打ち付ける行為を注意するため頭をたたこうとしたら避けられ、手が唇に当たった」と釈明している。入浴の際に湯を飲もうとする入所者を止めようと職員が頭を洗面器でたたいたケースもあった。

施錠した部屋への隔離や、手足を縛るなどの拘束は(1)危険性が著しく高い(2)ほかに方法がない(3)一時的な措置−の3要件を満たせば児童福祉法上「緊急でやむを得ない」と認められる。しかし施設側は要件を満たしていたかどうかをきちんと記録しておらず、市は435件を「やむを得ないとは認定できず不適切だ」とした。


施設を運営する社会福祉法人「大阪福祉事業財団」は「成人した入所者も多く、職員も必死に対応しているが、記録や対応が不十分な面があった。市から指摘を受けた点は重く受け止め、既に改善した」としている。
⇒PDFファイル http://social-welfare.rgr.jp/databox/syougaisyahukushi_0104.jpg

■2010.4.16  大阪府が知的障害者2施設を監査 社会福祉法人日本ヘレンケラー財団 太平学園 伯太学園
大阪府は16日、新たに14人の入所者を鍵のかかった個室に閉じこめていた疑いが強まっている知的障害者更生施設「太平学園」(和泉市)と、同系列の知的 障害者更生施設「伯太(はかた)学園」(同)に対し、社会福祉法に基づく監査に入った。これまでに、太平学園で2人、伯太学園で1人の入所者を日常的に個 室で拘束していたことが判明。両学園とも、社会福祉法人「日本ヘレンケラー財団」(大阪市阿倍野区)が運営している。

■2010.4.16  <千葉障害者準強姦>被告に懲役8年求刑 起訴内容認める
重度の知的障害を持つ20代の女性に性的暴行を加えたとして準強姦(ごうかん)罪に問われた千葉県白子町の元障害者支援施設職員、榊田悠人被告(23)の初公判が16日、千葉地裁(安東章裁判長)であった。榊田被告は「間違いありません」と起訴内容を認め結審、検察側は懲役8年を求刑した。

起訴状によると、榊田被告は09年1月ごろ同県一宮町の民間施設「青松学園」で、知的障害のため意思表示できない女性に性的暴行をしたとされる。女性は妊娠し、同年8月に死産。DNA鑑定で父親が榊田被告と判明したという。

検察側は論告で「被害者が最重度の障害でものを言えないことを理解していながら犯行に及び卑劣極まりない」と指摘。弁護側は「反省している」として執行猶予付き判決を求めた。

千葉県などによると青松学園の入所者は約30人。榊田被告は入所者の生活全般を介助する生活支援員で、逮捕後の10年2月に懲戒解雇された。

■2010.4.24  障害ある人・ない人、共同生活の家誕生 東京・恵比寿
軽度の知的障害のある人と障害のない人が一緒に暮らすことを条件にした「家」が、東京の真ん中に完成した。世話役のスタッフを置かず、住民の支え合いで自立を目指す珍しい試み。障害者の住まいの選択肢を増やし、多様な人がふつうに住む社会を目指したNPO「ぱれっと」(東京都渋谷区)の宿願に、地元企業が一等地を提供した。

家の名は「ぱれっとの家 いこっと」。渋谷区の東部、恵比寿駅から徒歩8分の場所にある。3階建てで、6畳程度の居室が八つ。台所や風呂などの水回りと居間、ダイニングは共有だ。洗濯機や冷蔵庫も備え付けをみんなで使う。今月中旬から知的障害者2人と健常者4人が入居を始めた。ぱれっとの活動に参加する障害者やボランティア、公募に応じた人たちだ。

知的障害のある人向けの共同生活の場としては、これまでもグループホームやケアホームがあった。だが、「いこっと」はこれらとは違い、家事などを助けるスタッフはいない。障害者も自分のことは自分でやる。ただし、突然の訪問者や電話対応など、苦手な状況に面したときは遠慮せず助けを求め、健常者も応えるのがルール。プライバシーを保ちながら生活の一部を共有し、補い合うコレクティブハウス(共生型集合住宅)の理念を参考に、障害者の自立を支える環境を目指している。

健常者の会社員男性(26)は、ぱれっとが設けた知的障害者と健常者の余暇サークルに参加した縁で入居した。「新しいことが好き。留学生の友人が暮らすゲストハウスに遊びに行った時、一体感や、にぎやかさがうらやましかった」と気負いがない。
いざ暮らしはじめてみると、平日は健常者の帰宅が遅い。夕食の用意に戸惑った障害者からの電話で、ぱれっとのスタッフが買い出しに付き添ったことがあった。「慣れるために、最初だけ。今後は自分でしてもらう」
最初の週末となった17日に、住人たちは初めて一緒に夕食を囲んだ。次の週末には、掃除のルールや足りないと感じたものを全員で話し合う「入居者ミーティング」の時間を持つことにしている。

厚生労働省の2005年の調査では、地域で暮らす知的障害者の23%が軽度だ。ぱれっとの谷口奈保子理事長によると、多くは親と住み、身寄りがなくなると、グループホームやケアホームに移る。
しかし、「少しの支えがあれば地域で自立する素質があるのに、親や施設職員が世話を焼きすぎて、自立の機会を奪っているケースがある」という。「施設に障害者だけ固まっている社会は不自然。いろいろな人がかかわりあうことで生まれる活力は、地域再生にもつながる」

いこっとの敷地には、昨秋まで建築資材製造の「東京木工所」(本社・渋谷区)の社員寮があった。ぱれっとの構想を聞いた同社が、寮を取り壊して新築し、大家になった。家賃は採算ギリギリの月7万円前後の設定で、一部は管理費としてぱれっとに渡す。渋谷区は、低所得の障害者が入居した場合に最高2万円を家賃補助するなど、独自の支援策を決めた。

谷口理事長は、「地価の高い都市にハウスをつくるには、企業の協力を得るのが大切。協働のノウハウも自治体やほかのNPOに伝えて全国に広めたい」と話している。

 

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