残しておきたい福祉ニュース 1996〜社会福祉のニュース

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残しておきたい福祉ニュース

 2002年 
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 2002. 5.22 大阪・養護施設、12年の事件 長期の「いじめ」で殺人 少年審判記録
 2002. 5.22 保育士のいじめあった 吹田の養護施設女児投げ落とし
 2002. 5.22 女児投げ落とし 改めて学園聴取 大阪府「いじめ」行為含め
 2002. 5.27 社会福祉法人・カナンの園 前理事長が利用者から預かった障害者基礎年金約二億四千万円株に投資し失敗


■2002.5.22  大阪・養護施設、12年の事件 長期の「いじめ」で殺人 少年審判記録
決意の母「園はなにを」 女児投げ落とし
裁判で責任明確に卒園生”告発” 「先生が追い詰めた」

「璃奏を投げ落とした女の子への憎しみは一生消えねい。でも、その子が保育士らによって精神的に追い詰められていたと聞き、その事実を明らかにしたいと思った」。大阪府吹田市の児童養護施設「松柏学園」で平成十二年八月に起こった女児投げ落とし事件。開示された少年審判の記録からわかった施設の状況に、殺害された木場璃奏ちゃん=当時(三つ)=の母親(三〇)は、「(施設のしたことは)絶対に許せない」と語った。

璃奏ちゃんを預けなければならなくなったときに、大阪府の関係者から松柏学園は「理想的な学園」との紹介を受けた。「『職員の管理態勢が整っており、全国からも視察に来る』といわれ、入所を決めました」。

とても素直な子だったという璃奏ちゃん。しかし、入所から一年もたたないうちに、女子に投げ落とされ、幼い命を奪われた。

女子に対する憎しみばかりが募る中、捜査関係者は母親に意外な言葉を告げた。「女子は「学園の保育士から精神的に追い詰められていた」。

学園側は、母親の所に弔問には来たが、事件について詳しい説明はしないままだった。このため母親は女子ではなく、学園のみを相手どって昨年十月に提訴。少年審判の記録開示を受け、「実態」が明らかになった。

「学園は璃奏が亡くなったことについて大きな責任を負うはず。民事裁判で追及したい」。娘を亡くしたショックから体調が直りきっていない状態だが、母親は裁判に強い決意を見せた。

一方、「(女子は)保育士からいじめを受けていた」と警察にか″告発″した卒園生二人は、「このままでは(加害女子が)あまりにもかわいそう。なんとか少年院に行かないですむようにしたかった」と話した。

卒園生二人は「学園の被害を最も受けていたのが、言葉で自分をうまく説明できない女子だった」という。体罰を受けた保育士の担当を逃れるために、女子は自分の希望で幼児部屋に移った。女子は目にみえて表情が暗くなっていったという。

二人は「先生たちは『仕事をするのは当たり前』というような態度で、だれも女子を助けなかった。ここまで追い詰めた先生たちも女子と同じ責任があると思う」と話し、女子の身を案じていた。

知的障害者のケアに詳しい池田直樹弁護士(大阪弁護士会)の話 「全ての情報が明らかなわけではないが、施設自体に子供を自由に生活させる余裕がないように思える。知的障害の子供が持つストレスを減らす工夫がもっとできていればよかったのではないか。本来だれのための施設なのか、子供に安らぎを与えられる施設なのかどうかを考える必要があるだろう」

■2002.5.22  保育士のいじめあった 吹田の養護施設女児投げ落とし
大阪府吹田市の児童養護施設「松柏学園」で平成十二年八月、入所していた木場璃奏ちゃん=当時(三つ)=が、入所女(一九)=中等少年院送到=に施設の五階から投げ落とされて死亡した殺人事件で、軽い知的障害を持つこの女子が、複数の保育士ら清掃の手伝いを何度もやり直させられたり、きつい言葉のしっ責など「いじめ」ともいえる行為を日常的に受けていたことが二十一日、分かった。女子は「先生を殺そうと思い、悪いことをすれば学園を出られると思った」と供述していた。

璃奏ちゃんの母親(30)が、学園を運営する社会福祉法人に約六千七百万円の損害賠償を求めて昨年十月に大阪地裁に提訴した民事訴訟で女子の少年審判記録の開示を受け、明らかになった。

開示された保育士や在園・卒園生の供述調書によると、女子は小学生時には女性保育士からつねられたり、物差しでたたかれるなどの体罰を繰り返し受けていた。高学年になるとストレスから自分の髪の毛を抜くなどの自傷行為に及んだ。別の保育士は「気持ち悪い」と物を投げつけたりして作業などをさせられた。

保育士の供述では、女子の「手伝い」は、幼児の着替え・入浴▽休みの日の部屋の掃除▽宿直の日の事務所掃除▽食堂での食事の配ぜん。その際に複数の保育士が「できていなければ掃除をやり直させ」、「自分がイライラしたときに、遅い、何してるのなどときつくあたった」とし、「アホになるから注意しているんや」としっ責した保育士もいた。

女子は「同じ年の子は自由なのに、ずっと幼児の面倒を見させられた」と供述していた。また二人の卒園生は警察署を自主的に訪れ、女子が受けていた行為について証言していた。

母親の担当弁護士は「保育士らの行為は明らかにしつけや教育の範囲を超えているのでは。長期間にわたる行為が少女の心にストレスをため、暴発したのが今回の事件」と話している。

保育士の何人かは「事件の責任は学園側にもある」「女子の心の重荷になっていたかも」などとも供述したが、学園側は裁判で「ことさらに仕事をさせたことなどはない」と否定。産経新聞の取材に対しても「民事訴訟が係争中のため応じられない」としている。

大阪府は事件後に施設の立ち入り調査を行い、十二年十二月、職員の資質向上などを求めて施設に口頭で指導している。

■女児投げ落とし事件

平成12年8月18日午後10時50分ごろ、施設5階の「幼児室」で寝ていた木場璃奏ちゃんを、入所女子が抱きかかえてベランダから約14メートル下の植え込みに投げ落とした。璃奏ちゃんは翌日午前、植え込みの中から遺体で発見された。大阪府警は女子を殺人容疑で逮捕。大阪家裁は中等少年院送致の保護処分を決定。女子はその後、医療少年院に転院している。

■2002.5.22  女児投げ落とし 改めて学園聴取 大阪府「いじめ」行為含め
大阪府吹田市の児童養護施設「松柏学園」で平成十二年八月、入所していた木場璃奏ちゃん=当時(三つ)=が、軽い知的障害を持つ入所女子(一九)=中等少年院送致=に五階から投げ落とされて死亡した殺人事件で、女子が先生(保育士)から仕事の押し付けやしっ責などの「いじめ」行為を受けて犯行に及んだとされる問題で、監督官庁の大阪府は二十二日、改めて学園側から事情聴取を行う方針を固めた。

府は事件直後、施設の立ち入り調査や学園側からの聴取を行った結果、同年十二月に子供の処遇を把握して、施設長や指導員の役割を強化する▽適切な処遇が行われるよう施設内で連携を取る−ことなどを学園側に口頭で指導している。

■2002.5.27  社会福祉法人・カナンの園 前理事長が利用者から預かった障害者基礎年金約二億四千万円株に投資し失敗
岩手県は、盛岡市にある社会福祉法人・カナンの園の設立時からのメンバーである前理事長が、運営する知的障害者施設の利用者から預かった障害者基礎年金約二億四千万円を、一九九四年ごろから無断で株式投資につぎ込み、ほぼ全額を失っていたことを明らかにした。

年金を担保に銀行から融資を受け、自己名義の株式に投資したが失敗したという。
障害者基礎年金は、知的障害者施設の利用者の六十九人の保護者が任意の年金組合をつくって積み立て、銀行や郵便局の「福祉預金」で運用、年間約五〇〇万円の利子を生活訓練などの活動費に充てることになっていた。

前理事長は代理執行人として一人で管理をまかされていたが、積立金総額とほぼ同額の約二億四千万円を失っていた。組合側は損害賠償を求める方針で、刑事告訴も考えているという。理事長は流用の事実を理事の一人に告白し、二十三日付で理事長を解任された。また、前理事長が理事長を兼務していた別の社会福祉法人・泉の園の「一戸子どもの家保育園」でも、運営費約二千万円を株式投資につぎ込み、全額を失い回収不能になっていたことも、県の監査で明らかになった。

 

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