残しておきたい福祉ニュース 1996〜社会福祉のニュース
残しておきたい福祉ニュース
2007年 |
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2007. 8. 9 | 脳性まひによる身体障害を理由に1人で搭乗できなかったのは差別だ 損害賠償請求を棄却 |
2007. 8.11 | “70歳父「刑罰では救えない」” 窃盗重ね懲役8回目 知的障害34歳息子受け皿どこに |
2007. 8.30 | 【岩手】 「熊のエサにする」「感電させる」 身体障害者療護施設「清流の里」で、複数の職員が利用者に暴言 社会福祉法人ほたる会 |
2007. 8.31 | 男性入所者に人権侵害行為=施設の課長補佐を懲戒解雇 兵庫 県立五色精光園 |
2007. 8.31 | 「知的障害があって罪にならん」 小5息子に万引き指示した父母ら初公判 大阪 |
■2007.8.9 脳性まひによる身体障害を理由に1人で搭乗できなかったのは差別だ 損害賠償請求を棄却 | |
脳性まひによる身体障害を理由に1人で搭乗できなかったのは差別だとして、兵庫県西宮市の太田雅之さん(37)がシンガポール航空に165万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、神戸地裁尼崎支部(竹中邦夫裁判長)は9日、請求を棄却した。太田さんは控訴の方針。 判決理由で竹中裁判長は「客室乗務員や機長は、緊急時の態勢について事前に共通認識を持つことが必要だ」と指摘。「太田さんの障害を知ったのは出発の2時間前で対応が困難だった。身体障害者の社会参加の必要性を考慮しても差別的な取り扱いとは言えない」と結論付けた。 判決によると、太田さんは2003年7月、友人に会うため関西空港からシンガポール航空機でバンコクに向かおうとしたが、手足や言語に障害があることを理由に、付添人がいない搭乗を拒否された。 |
■2007.8.11 “70歳父「刑罰では救えない」” 窃盗重ね懲役8回目 知的障害34歳息子受け皿どこに | |
知的障害のある息子は欲望を抑えることができなかった――。この10年間、窃盗を繰り返し、再び民家から現金を盗んだとして、常習累犯窃盗罪で起訴された男(34)にさいたま地裁川越支部は懲役2年10カ月(求刑同4年)の実刑を言い渡した。 8回目の懲役刑だ。「被告に必要なのは、刑罰ではない」と弁護側は訴えたが届かなかった。息子の背中をじっと見つめていた父親(70)は「出所後に息子が入れる施設を探します」と話した。 無職の息子は6月、坂戸市の民家に空き巣に入り、約17万円を盗んだ疑いで西入間署に逮捕、起訴された。検察は「自制心のなさや規範意識の没却は顕著」と指摘した。 父親によると、5歳の時にかかった病気が、親子の人生を狂わせたという。2週間、高熱が続き、 脳に障害が残った。父親は「兄弟の中で一番賢くて自慢だった息子が、別人になった」。 神社からさい銭を盗んだり、店から商品を取ったり。記憶力も低下し、「人のものをとるのは悪いこと」と 教えても覚えられなかった。 盗んだ金は息子の銀行口座に入っていた。使うことはなかった。盗みが発覚すると、盗みに入った 日付や場所、金額を記した息子のメモから、金は被害者に返された。 両親の手に負えなかった。24時間、見張ることはできない。ものを教えても覚えられず、 欲求も抑えられない。受け入れてくれる施設を探したが「五体満足で、面倒をみてくれる親がいる 息子さんのような障害者を預かるところはない」と断られた。息子も障害者扱いされることを嫌がった。 障害を隠して就職しても、仕事の覚えが悪く、同僚から疎んじられ、離職を繰り返した。 父親は「社会に息子の受け皿はなかった」と振り返った。息子も「なぜ自分だけみんなに嫌われるのか」と自分を責めたという。 20代前半、初めて逮捕された事件の裁判で、父親は「息子を刑務所に入れて下さい」と訴えた。「どうすればいいか分からなかった」。息子は、窃盗が悪いことと分かるようになっていたが「人のお金を取る」という欲望は抑えられなかった。 以後、計7回起訴され、それぞれ1〜2年半の懲役を受けた。20歳からの14年間のうち10年以上を刑務所で過ごした。刑務所から父にあてた手紙には「今度こそ更生します」。だが、刑務所は息子を更生できなかった。 父親が「余命を考えると最後かもしれない」と臨んだ8回目の判決は今月6日にあった。息子は「自分が一般の社会で働くことは困難。出所後は、強制的な施設に入ります」と初めて施設に入ることに積極的な姿勢をみせた。 判決は「被害者に思いを致さず、窃盗を繰り返してきたことは非難を免れない」とする一方、「障害のため、仕事に支障があったのは不幸なこと」と酌量した。 控訴せず、刑は確定する見込みだ。 父親は「国が認めた障害者を漫然と、刑務所に送り続けてきた司法の姿勢に疑問を感じる。息子にとって刑務所は意味がない」と力なく話した。 |
■2007.8.30 【岩手】 「熊のエサにする」「感電させる」 身体障害者療護施設「清流の里」で、複数の職員が利用者に暴言 社会福祉法人ほたる会 | |
大槌町小鎚の身体障害者療護施設「清流の里」で、複数の職員が利用者に暴言を吐いていたと して、県が6月、同施設を運営する社会福祉法人に対して監査を実施し、職員の処分の検討や再発防止策を含む是正改善を求めていたことが29日までにわかった。県は7月末までに原因究明や改善策に関する報告書の提出を求めていたが、29日現在、提出されていない。 県障害保健福祉課などによると、同施設は05年10月に設立され、社会福祉法人「ほたる会」(阿部敏雄理事長)が運営する。入所定員は52人で、重度の身体的障害を持つ人を対象に治療や養護を行っている。6月の監査時に、入所者は50人、職員は47人いた。 県は6月半ば、施設関係者から「複数の職員による不適切な言動がある」という趣旨の情報を受け、同26日、施設と法人に対し、特別監査を実施した。 監査の結果、職員が入所者の靴をけるなどの行為や、入所者に対して「熊のエサにする」「感電させる」などの発言があったことが確認された。職員らは「冗談のつもりだった」と話したという。 県は是正のため、原因の究明と再発防止策の提出、該当職員の処分の検討、第三者による苦情解決システムの構築について、7月末までに文書で報告するよう指導した。 しかし、同法人はこれまでに報告書を提出していない。 阿部理事長(同町議)は「現在、報告書の提出準備をしている。それ以外は話せない」としている。 |
■2007.8.31 男性入所者に人権侵害行為=施設の課長補佐を懲戒解雇 兵庫 県立五色精光園 | |
兵庫県洲本市の知的障害者施設「県立五色精光園」で、男性入所者18人に対し下腹部の毛をそる人権侵害行為があったとして、同園を運営する県社会福祉事業団は31日、50代の男性課長補佐を同日付で懲戒解雇にしたと発表した。入所者1人に同様の行為をした40代の男性支援員も解雇した。 同事業団によると、課長補佐は2月21日、同園の浴室内で20〜50代の男性入所者18人を入浴させる際、必要がないのに下腹部の毛をそった。支援員は6月5日、入所者の成人男性1人に同様の行為をした。 |
■2007.8.31 「知的障害があって罪にならん」 小5息子に万引き指示した父母ら初公判 大阪 | |
生活に困り、小学生の息子(12)にコンビニで弁当やお茶などを万引きさせたとして、大阪市東淀川区の父母ら3人が窃盗罪で大阪地検に起訴されていたことがわかった。 犯行を指示したとされる無職の父親(31)の初公判が3日、大阪地裁(栗原保裁判官)であり、「知的障害があって罪にならん」と、子どもの障害まで利用していた実態を検察側が明らかにした。 父親は「息子が万引きをしたのは認めるが、明らかな指示はしていない」と起訴事実を一部否認した。 起訴状や検察側の冒頭陳述などによると、父親は妻(37)や同居人の男(21)と共謀。2月22日午後9時45分ごろ、妻の実子で軽度の知的障害がある当時小学5年の男児に、自宅近くのコンビニエンスストアで弁当やお茶、インスタントラーメンなど16点(約2200円相当)を盗ませたとされる。 起訴状や検察側の冒頭陳述などによると、父親は妻(37)や同居人の男(21)と共謀。2月22日午後9時45分ごろ、妻の実子で軽度の知的障害がある当時小学5年の男児に、自宅近くのコンビニエンスストアで弁当やお茶、インスタントラーメンなど16点(約2200円相当)を盗ませたとされる。 同居の男が見張り役をする中、男児は商品をかごに入れたまま店外に出たところで女性店員に呼び止められた。通報を受けた大阪府警の東淀川署員が男児を補導し、児童相談所へ通告した。 父親は当時、新聞配達の仕事を始めたばかりで所持金が数千円しかなく、一家は生活苦に陥っていた。父親は、仕事中に負ったけがで月15万円の労災保険を受け取っていたが、昨年中に支給が打ち切られたという。 父親は、14歳未満で刑事責任が問われない男児に食べ物を万引きさせることを思いつき、同居の男に「(男児を)連れて行って、やらせたらいい。知的障害があって、小学生だから罪にはならん」と指示。妻も「私の分も取ってきて」と頼んだという。 この日の公判で、検察側は男児の供述調書を読み上げた。「ぼくは、お兄ちゃん(同居の男)と一緒に店に入り、お父さんに言われた通り万引きをしました。店の外で店員さんに捕まりました。お兄ちゃんはバイクで逃げていきました」 さらに検察側は、たばこの火を押しつけた跡が体に残る男児の写真を示し、「男児は父親から暴力を受けるのが怖くて、万引きの指示に従った」と指摘。「子どもに万引きをさせるなど最低だ。厳罰を求める」と述べたコンビニ店長の調書も証拠として提出した。 一方、父親の弁護人は閉廷後、朝日新聞の取材に「事件の背景には、障害児がいる家庭に福祉が十分行き届いていないという問題もある」と話し、そうした事情を今後の公判で主張する方針を示した。 |