残しておきたい福祉ニュース 1996〜社会福祉のニュース

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残しておきたい福祉ニュース

 2011年 
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

 2011.12. 1 大阪市の社会福祉協、委託料を3千万水増し請求
 2011.12. 1 障害者宅狙い「非行」 中3生5人書類送検 静岡県袋井市
 2011.12. 1 「盲老人ホーム知って」 山城さんら県外視察報告
 2011.12. 2 福島・双葉病院の悲劇―原発事故避難で死亡した50人の寝たきり患者
 2011.12. 2 特養のユニット間の壁、可動式は不適切- 厚労省が事務連絡
 2011.12. 2 障害者運営、そば屋開店 徳島駅構内
 2011.12. 5 特養の内部留保1・8兆円 職員給与に充当求める声も
 2011.12. 6 特養、一施設当たり3億円余の内部留保- 厚労省が調査
 2011.12. 7 人員基準違反で通所介護の指定取り消しへ- 東京都
 2011.12. 7 爪剥がし元介護助手に懲役3年判決
 2011.12. 9 着服:駒ケ根・知的障害者施設の職員が300万円 県社福事業団が告発へ /長野
 2011.12. 9 ◇日本の障害者の数
 2011.12. 9 刊行:障害者自立支援に心血、村井夫妻の追悼録 /大阪
 2011.12.10 生活保護見直しへ…資産調査・求職支援の厳格化
 2011.12.10 知的障害者に遊具規制 グリーンランド 一律対応に不満も / 他施設の例
 2011.12.13 大津の社会福祉施設で職員が入所者を虐待
 2011.12.14 20回目の窃盗罪被告に猶予判決「福祉向上で更生を」
 2011.12.14 海老名の福祉施設に72万円届く、名無しの善意に感謝/海老名市
 2011.12.16 障害者スポーツ施設「廃止」反発 利用者ら署名提出
 2011.12.16 障害者施設運営のNPO法人が補助金不正受給 長野県
 2011.12.16 元行員と元記者が障害者雇用アップへ奔走…千葉
 2011.12.16 福祉事業所 4割不備 県調査、改善求める 長崎
 2011.12.16 障害者とお年寄り共生 県内初 同一敷地に4施設 富山
 2011.12.17 重度障害者の福祉サービス、施設不足で利用できず…岐阜
 2011.12.17 介護報酬不正請求:長岡の福祉用具店、県が行政処分 /新潟
 2011.12.17 容疑者「知的障害」と通知 要請受け大阪地裁
 2011.12.18 「お願い手帳」配布 NTT西日本金沢支店
 2011.12.18 災害時の被災障害者への支援考える 宮城教育大でシンポ
 2011.12.18 災害時「福祉避難所」導入へ 青森
 2011.12.19 横浜のグループホーム、事故未報告相次ぐ 平均件数超え市が指導へ/神奈川
 2011.12.20 公的年金受給者、過去最高の6188万人
 2011.12.20 静岡生まれの「介護マーク」、全国へ- 厚労省が普及に向け事務連絡
 2011.12.21 社福施設の労災死傷者、昨年は5500人超−5年前より2000人増加・厚労省調査
 2011.12.22 老人ホームで虐待 香川県が改善命令
 2011.12.22 障害者駐車場を使いやすく ルームミラーに利用証
 2011.12.22 授産製品販売増へ支援 宇治のNPO2年かけ“大作戦”
 2011.12.22 福祉事業所の移動車、23日に始動 コロッケなど販売
 2011.12.22 視覚障害者用「しゃべる線量計」、福島県で開発
 2011.12.22 障害者施設きれいに 愛産大工高生が奉仕活動
 2011.12.23 季節の風景描く 障害者らがカレンダー作製 三田 
 2011.12.23 村支える唯一の医師 青森
 2011.12.23 お遍路さんに手作り土産/さぬきの障害者ら
 2011.12.24 障害者の就職、チーム支援に効果 福祉施設とハローワークで
 2011.12.24 障害者施設利用者に靴下贈る
 2011.12.25 作業所外に働く場橋渡し 滋賀県就労振興センター
 2011.12.25 初開催「介護技術コンテスト」で嬉野高生が日本一に
 2011.12.27 不正請求ほう助でケアマネ事業所取り消し- 熊本、系列2事業所も
 2011.12.29 医療功労賞、島根県から2人 過疎化の町で「病診連携」//障害児の生活充実に力
 2011.12.30 新たに要介護、100人中3・6人…65歳以上
 2011.12.30 障害者大会 準備進まず 少ない若手選手 福井
 2011.12.31 <国の未来像のヒント探る>幸福度日本一・福井県


■2011.12.1  大阪市の社会福祉協、委託料を3千万水増し請求
大阪市の関連団体・市社会福祉協議会が2008〜10年度に、架空の交通費を計上して介護保険事業の委託料計約3000万円を市に水増し請求し、エアコンや電動自転車といった社協の備品購入などに流用していたことがわかった。

市介護保険課は「いろいろな事情があって認めた」として事前了承していた。外部監査に「実態とかけはなれた支出」と指摘されたため、市は今年度から是正した。

市の委託は要介護認定調査で、要介護や要支援の認定を市に申請した住民宅に、市内24区にある各区社協のスタッフが訪問調査する。

市によると、訪問は自転車や徒歩が大半にもかかわらず、08年度には地下鉄などの交通費約1320万円を請求。実際には約150万円しか支出しておらず、市社協は差額の大半を余剰金としてプールし、電動自転車の購入22万円やエアコン設置費76万円、管理事務費360万円など計約870万円を目的外支出に充てていた。

こうした流用額は09年度には約1120万円、10年度は約1070万円に上り、3年度とも委託料の物件費のうち4分の1〜3分の1を占めている。

■2011.12.1  障害者宅狙い「非行」 中3生5人書類送検 静岡県袋井市
耳が不自由な人の家を狙い、盗んだ消火器を噴霧したり、花火で外壁を壊したりしたとして、袋井署は1日までに、窃盗と建造物損壊の疑いで袋井市内に住むいずれも15歳の中学3年の男子生徒5人を静岡地検浜松支部に書類送致した。同署によると、5人は「障害があることを知っていた。反応が面白くてやった」などと話しているという。

5人の送致容疑は8月中旬から10月にかけて、市内で屋外の消火器5本を盗んだ疑い。うち2人は8月28日、花火で市内の住宅外壁の一部を壊した疑い。
 
関係者によると、5人は8月から9月下旬にかけ、深夜などに市内の共に聴覚障害がある夫婦の自宅に向け、少なくとも3回にわたって消火器の消火剤をばらまいたほか、ブロック塀に花火を仕掛け、外壁を壊した。「障害で簡単に周囲に(被害を)伝えられないと思った」と話している生徒もいるという。
 
5人は6月から同宅を含む周辺地域で、呼び鈴を鳴らして逃げる“ピンポンダッシュ”を繰り返し、徐々に行動をエスカレートさせていったとみられる。
 
「ストレス発散になる」と自治会単位で屋外に設置している消火器を盗むようになり、近隣の駐車場にも消火剤をまいていた。空になった消火器は川に捨てていたという。

中学生らから被害を受けた夫婦は、次第に悪質性を増していった行為に「次は放火でもされるのではと恐ろしかった」と振り返った。静岡新聞社の取材に筆談などで答えた。

自宅に2人住まい。現在は落ち着きを取り戻したが、不気味な感覚は消えないという。夫(38)は「まだ許せる気持ちになれない」とし、妻(38)は「障害者への差別を感じ、とても悲しい」と訴えた。

■2011.12.1  「盲老人ホーム知って」 山城さんら県外視察報告
高齢の視覚障がい者専用の盲老人ホームについての講演会(主催・介護を考える女性の会)が11月26日、那覇市金城の市総合福祉センターで開かれた。県視覚障害者福祉協会の山田親幸会長と、県外の盲老人ホームを取材したジャーナリストの山城紀子さんが登壇した。関係者約30人が参加した。県内の視覚障がい者の7〜8割が病気による中途失明者といわれており、山城さんは「いつ自分も失明するか分からない。盲老人ホームは安心の最後のとりでになる」と語った。
 
盲老人ホームは、1970年代に全国各地に設置され、現在沖縄、山形、岐阜、滋賀、鳥取の5県を除き、48施設ある。
 
山城さんは「県外の盲老人ホーム関係者は、沖縄が未設置県だということを知っている。施設自体の存在さえ知らないのは県民だけ。沖縄の福祉の貧困を考えさせられた」と語った。
 
さらに「どのホームも『施設内自立』を掲げており、見えないからいろいろとお世話しないといけない、というのは間違った先入観」と山城さんは指摘した。
 
例えば廊下は右側通行が原則で、食堂に向かって歩く人がいれば「ホーホケキョ」、反対方向に行く人が通ると「カッコー」の音声が鳴る。また、手をたたくと時計のセンサーが反応して時間を教えるなど、人の手を借りずにまた白杖に頼ることなく生活することが可能。さらに香りの強い花の花壇を作り、四季を楽しむという生活の質の豊かさにも配慮されているという。
 
中にはホームで出会ったカップルが、地域で暮らすために2人で施設を出た事例もあり、「自分が元気になる施設があれば、人生をさらにステップアップできる」と山城さんは強調した。
 
一方、山田さんは「県内に視覚障がい者は約4千人おり、そのうち65歳以上が6割以上を占める。沖縄の盲学校を創設した高橋福治先生が、70年代に沖縄にも盲老人ホームを作ってほしいと言っていたが、これまで具体的な動きはなかった」と説明した。
 
山田さんらは今後、設置に向けて行政などに働き掛けていく予定。

■2011.12.2  福島・双葉病院の悲劇―原発事故避難で死亡した50人の寝たきり患者
福島第1原発から5キロにある双葉病院と病院が運営する介護老人保健施設で、3月の事故直後に起った悲劇は、当時あまり大きくは報じられなかった。津波の被害があまりに大きかったからだ。

移動バスの中で「座ったままなくなっていた」

双葉病院と施設には180人の患者がいた。多くは寝たきりや介護が必要な高齢者。本来、移動はできない人ばかりだ。そこへ3月11日、 いきなり政府の緊急避難指示が出た。スタッフは院長以下17人だけ。バスが来たのは12日。まず自力で歩ける患者を送り出した。その直後に1号機が爆発した。病院は患者を自衛隊員に託す。混乱の中で13日から翌未明にかけて4人が亡くなった。

避難先は30`離れた保健福祉事務所。すでに他の施設からの高齢者が800人もいた。そこで20キロ南のいわき市の高校を目指したが、20キロ圏内は通行禁止で、バスは大きく迂回して200キロを6時間をかけて走った。この移動と到着後に46人が亡くなった。出迎えた看護師は「座ったまま亡くなっている人が真っ先に目に入った」という。点滴の管理もなく、タンの吸入もできず、水分の欠乏、ショックなどだった。

岩手・大舟渡の老人施設では、中庭に患者を集めたところへ津波が襲い44人が亡くなった。生き残ったスタッフは「あのとき、ああしていれば救えたのに…」という思いがいまも消えない。全国老人福祉施設協議会の調査では、東北の被災3県で避難の際に200人が亡くなっていた。

先頃開かれた福祉関係者のシンポで注目されたのは、犠牲者を出さなかった施設の体験だった。宮城・岩沼の赤井江マリンホームは海岸から250メートル、津波に襲われたが、49人の寝たきり老人は全員無事だった。皮肉にも、「避難計画にしばられなかった」ためだった。

マリンホームの避難計画では、避難先は15キロ離れた介護施設になっていた。車イス用の車 にマットレスを敷いて、2、3人 づつピストン輸送するしかない。ラジオの津波警報では猶予は1時間だった。そこで移動先を1.5キロ離れた仙台空港にした。40分で49人全員を搬送し終わった。津波が来たのはその20分後だった。「自分たちで守ることだと気づかされた」とマリンホームのスタッフは言う。

「救えたはずなのに…」生き残ったスタッフに自責の念や心のキズ

96人を抱える静岡・磐田市の特別擁護老人ホームでは、月に1度避難訓練をしている。従来の避難計画は火災対策が主で、戸外に避難すればよかったが、いまは患者を3階へ運び上げることも想定している。車イスのままがいいのか、背負った方が早いか…。訓練では患者1人をスタッフ2人でかかえて階段を駆け上がった。20人運ぶのに17分かかった。96人だと1時間以上かかる計算だ。訓練のたびに新しい課題が見えてくるという。

この問題を調査しているびわこ学院大学の烏野猛准教授は、「国も自治体も指針がない以上、カギとなるのは平時のリスクマネージメントの応用だ」と言う。スタッフ1人ひとりがリスクを意識すること。誰も助けにきてくれない前提でスタートした方がいいとも言う。

犠牲者を出したケースでは、生き残ったスタッフの自責の念や心のキズも大きい。また、誰を先に助けるかという命の優先順位 (トリアージ)も課題だ。双葉病院の鈴木市郎院長は、「たとえ余命幾ばくもない人でも…」と言っていた。これが原点だろう。いま双葉病院に入るには防護服がいる。乱雑に移動されたベッド、散乱するシーツや毛布…。あの日がそのまま凍り付いている。

■2011.12.2  特養のユニット間の壁、可動式は不適切- 厚労省が事務連絡
厚生労働省は1日、特別養護老人ホーム(特養)のユニットの共同生活空間を仕切る壁が可動式になっている場合について、ユニット型個室の構造としては不適切とする事務連絡を、都道府県にあてて出した。入所者と職員のなじみの関係を重視したユニットケアを損なう恐れがあるのが理由。

事務連絡では、ユニットとユニットを仕切る壁が可動式の場合、壁を開放すれば従来型個室と同じ形態にできることから、ユニットケアとしての職員配置や入所者の処遇が適切に行われなくなる可能性があると指摘。ユニット型個室に対して従来型個室よりも高い報酬を設定している考え方に反するとしている。

特養(定員31人以上)のユニット型個室の入所者1人当たりの介護報酬は、従来型個室よりも1日70−80単位高く設定されているが、厚労省の担当者は、「可動式の壁を固定式に変えるなどの対応がされない場合、(ユニット型個室から)従来型個室に報酬が変わることもあり得る」としている。

■2011.12.2  障害者運営、そば屋開店 徳島駅構内
徳島駅構内に1日、知的障害者らが運営するそば店「麺家れもん徳島駅」が開店した。徳島市新町橋2には製麺所も開設。知的障害を持つ5人が、製麺から調理、接客まで行っており、初日から来店客でにぎわった。

午前10時半から店舗前で開店記念式典があり、製麺所で働く重井賢二さん(48)がそば打ちを実演。接客を担当する谷口良子さん(31)が「いろんな人の協力のおかげで看板メニューの祖谷そばが出来上がった。自信を持って頑張るので応援よろしくお願いします」と決意を述べた。

同11時にオープンすると、温かいそばを求める客が次々とのれんをくぐった。新聞で店のことを知り、大好きな祖谷そばを食べに訪れた徳島市川内町金岡、枝川旭さん(82)は「そばのいい香りがしておいしかった」と満足していた。閉店までに約150人が訪れた。

開店させたのは、障害者の就労移行を支援している社会福祉法人カリヨン(石井町)。全国のJR駅構内で障害者が主体となって運営する飲食店がオープンするのは初めてという。店舗の改装費約1140万円のうち、日本財団(東京)から872万円の助成を受けた。営業時間は日・祝日を除く午前7時から午後7時。

■2011.12.5  特養の内部留保1・8兆円 職員給与に充当求める声も
厚生労働省は5日、社会福祉法人が運営する特別養護老人ホーム(特養)の内部留保の額が、1施設当たり平均で3億782万円あったとの調査結果を公表した。特養は全国で約6千施設あり、内部留保の総額は1兆8千億円強に上る計算になる。同日の社会保障審議会介護給付費分科会に報告した。

特養の内部留保をめぐっては「過大にため込んでいる」と批判があり、政府の「提言型政策仕分け」でも介護職員の給与に充てるよう提言があった。今後、職員の待遇改善に内部留保の活用を求める声が強まるとみられる。

■2011.12.6  特養、一施設当たり3億円余の内部留保- 厚労省が調査
特別養護老人ホーム(特養)を運営する社会福祉法人の内部留保は、一施設当たり3億円余りに達することが、厚生労働省の調査で分かった。厚労省が5日の社会保障審議会介護給付費分科会で明らかにした。

厚労省では、今年3月末の段階での特養1087施設の貸借対照表を分析。その結果、内部留保の平均は、一施設当たり3億782万円1000円となった。その内訳は、「次期繰越活動収支差額」が2億4201万5000円、「その他の積立金」が6580万6000円だった。なお、現金預金などの流動資産の平均は2億2318万2000円、建物など不動産を含む固定資産は8億412万8000円、負債は2億2643万9000円、純資産は8億87万円だった=表=。
  
特養の内部留保が平均3億円余りとなった結果について、厚労省では「施設・設備整備など、将来へ向けた積み立てを多く含んでおり、すべてが自由に使える資金ではない」と説明している。また、政府の行政刷新会議の提言型政策仕分けでは、特養の内部留保を問題視する意見が出ていたことから、厚労省では今回の調査結果を同会議にも報告する方針だ。

■2011.12.7  人員基準違反で通所介護の指定取り消しへ- 東京都
生活相談員らを配置せず、人員基準に違反していたなどとして、東京都はこのほど、「有限会社ひまわりサービス」(板橋区)が運営する通所介護事業所「ひまわりガーデン」(同)について、介護保険法に基づいて指定を取り消すと発表した。取り消しは22日付。また、同社の訪問介護と居宅介護支援の事業所「ひまわりサービス」(同)に対しては、2012年6月1日まで新規利用者の受け入れを停止する処分を下した。

都によると、ひまわりガーデンは、▽今年2月1日から6日までの間、管理者と生活相談員を配置していなかった▽2月7日から3月17日までの間と、6月1日から7月14日までの間、要件を満たす生活相談員を配置していなかった―としている。また、これらの職員が正しく勤務していたように装うため、虚偽の勤務表や賃金台帳を作って都に提出。さらに、指定を受けた際には、実際には勤務する意思のない人を管理者兼生活相談員として記載した申請書類を作成し、届け出ていた。都では、指定後に受け取った介護報酬約950万円を不正受領としている。
 
また、訪問介護事業所のひまわりサービスでは、▽管理者が別事業所の管理業務を行い、専従で勤務していなかった▽介護報酬約38万円を不正に受領していた―などの違反が見られた。居宅介護支援事業所は不適正な給付管理などを行っていた。

都はこのほか、同社が運営していた通所介護事業所「ひまわりホーム」(同)を指定取り消し処分相当と発表した。監査中に廃止届が出され、処分対象にはならなかったものの、生活相談員を配置していない人員基準違反や、偽の勤務表などを提出した虚偽報告、介護報酬約19万円の不正受領など、指定取り消しに当たる事実が確認された。

同社がこれらの事業所で不正受領していた約1007万円については、今後2保険者が返還を求めることになるという。

■2011.12.7  爪剥がし元介護助手に懲役3年判決
京都市中京区の毛利病院で認知症の症状がある入院患者の女性(80)ら4人が足の爪を剥がされた事件で、傷害罪に問われた元介護助手、佐藤あけみ被告(38)=京都市西京区=の判決公判が7日、京都地裁で開かれ、笹野明義裁判長は懲役3年(求刑懲役6年)を言い渡した。

判決によると、佐藤被告は8月17〜24日、同病院に入院中だった60〜90代の患者4人の足の親指の爪を繰り返し引っ張るなどして剥がし、けがをさせたとしている。

佐藤被告は平成16年、市内の別の病院でも入院患者6人の爪を剥がしたとして傷害罪で起訴され、18年に懲役3年8月の実刑判決を受けた。

■2011.12.9  着服:駒ケ根・知的障害者施設の職員が300万円 県社福事業団が告発へ /長野
駒ケ根市内のグループホームに入居する知的障害者の預金などから計約300万円を着服したとして県社会福祉事業団は8日、女性非常勤職員(62)を15日付で懲戒免職処分にすると発表した。着服を認めているが、使途については話していないという。ホームを経営する事業団は県警に刑事告発する方針。

事業団によると、職員は昨年2月からホームに勤務し、身辺の世話や買い物などで入所者の個人資金を管理する「世話人」を務めていた。昨年3月〜今年8月、入居者の男女6人の預金通帳を使い引き出したり、入居者の小遣い銭などを入れた金庫から抜き取ったりして計約300万円を着服したとしている。職員は1人で通帳などを管理していたという。

被害者の一人が今年8月、別の施設に転居し、施設職員が「(過去の)金の使い方がおかしい」と気が付き、発覚した。事業団は6人に被害金を弁済し、7日に駒ケ根署に相談した。事業団は「チェック態勢の強化など、再発防止に取り組みたい」と陳謝した。

■2011.12.9  ◇日本の障害者の数
厚生労働省は身体障害者は約366万人、知的障害者約55万人、精神障害者約303万人、合計で総人口の約6%と発表している。
世界的には10人に1人とされ、日本は障害者手帳などをもっている人に限っているため少なくカウントされているのではと推測されている。

■2011.12.9  刊行:障害者自立支援に心血、村井夫妻の追悼録 /大阪
障害者の自立支援に尽くし共に昨年亡くなった、社会福祉法人わらしべ会(枚方市)創設者の村井正直(まさなお)さんと、同会理事長を務めた妻陽子さんの足跡をまとめた「追悼 村井正直・陽子伝 一本のわらしべ」が刊行された。

2人は医師。脳性まひの子が自立歩行できる治療を志す。正直さんのハンガリーでの研修を経て1978年、肢体不自由児療育施設を枚方市に開所。81年に社会福祉法人が発足し、重度身体障害者更生援護施設「わらしべ園」を開設した。リハビリに柔道や乗馬を取り入れて注目された。

作家の故司馬遼太郎さんも、その活動に協力。正直さんは88年に毎日社会福祉顕彰を受けた。昨年10月に正直さんが84歳で、陽子さんも12月に80歳で亡くなった。

78年、ハンガリーでの療育のため脳性まひの子どもと付き添いの職員を送り出したこと、支援を依頼した司馬さんとの出会いと交流、北海道でのわらしべ園開設など、さまざまなエピソードと奮闘ぶりが描かれている。

作製したわらしべ会の丸山正雄理事長は「いい仕事をたくさんすることがお二人への恩返し。この本が出来上がり、改めてそう覚悟している」と話した。

A5判462ページ。ゆかりのある人たちが寄せた追悼文も掲載している。非売品で数に限りがあるが、入手希望者には相談に応じる。問い合わせは、わらしべ会(072・850・5507)。

■2011.12.10  生活保護見直しへ…資産調査・求職支援の厳格化
生活保護制度の見直し作業を進めている厚生労働省は9日、保護申請者の資産調査の強化や、求職者支援制度の運用の厳格化などを柱とする見直し案を固めた。

地方との協議で大筋合意しており、12日に公表される中間とりまとめ案に盛り込まれる。見直し案では、申請者の資産調査で、銀行などの金融機関本店に一括して預貯金残額などを照会できるよう制度の整備を進め、不正の芽を摘む。これまでは、本人申告などに基づき各福祉事務所が地域の銀行支店などに問い合わせていたが、調査の限界が指摘されていた。

今年10月に本格スタートした「求職者支援制度」は、月10万円の給付金を受けながら、パソコンなどの職業訓練を受講する仕組みで、生活保護との併用も可能。見直し案では、受給者が理由なく訓練を中止し、福祉事務所の指導でも復帰しない場合は、保護の停止や廃止を可能にする。これまでは明確な規定がなかった。

■2011.12.10  知的障害者に遊具規制 グリーンランド 一律対応に不満も / 他施設の例
熊本県荒尾市の遊園地「グリーンランド」が今秋から、知的障害のある来園者は一律に、施設内にある約6割の遊具の利用をできないよう制限している。園側は「未然に事故を防ぐためにやむを得ない」と説明する。しかし、以前利用できた遊具に乗れなくなった来園者は「楽しみにしていたのに」と不満の声を上げている。識者は「知的障害の程度は個々人でさまざま。個別対応する手段を講じるべきで、現状は知的障害者の人権を侵害している」と指摘する。

9月23日の休日、福岡市早良区の軽い知的障害のある20代の男女がグリーンランドをデートで訪れた。窓口で療育手帳を提示して障害者は割引になるフリーパスを購入しようとすると「ほとんど乗れませんが、いいですか」と説明を受けた。2人は仕事や公共交通機関の利用など日々の生活は1人で送れる。女性は母親に電話連絡し、母親が電話で園に抗議。園は、母親の話から「2人は健常者と変わりがない」として、この日2人の全遊具の利用を認めた。しかし、女性は「悔しい。二度と行きたくない」と傷ついてしまった。

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グリーンランドが知的障害者の利用の一律制限を始めたのは9月中旬。パンフレットによると、障害の程度を問わず、全65施設中41施設の利用を制限。園と遊具メーカーが1年半かけて実地調査し、制限遊具を決めたという。時速20キロで走る「てんとう虫コースター」は、ホームとコースターの間に体を挟む恐れがあるとして制限。「ベビーゴルフ」(パターゴルフ)は、知的障害者がボールをコース外に打ち出した事例があったとして利用できなくした。

一方、身体障害者は1人で乗り降りが可能か、など七つのチェック項目によって乗車の可否を判断することにした。

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知的障害者の事故はグリーンランドでは起きていないが、他施設には例がある。としまえん(東京)では2010年、11年に計2件発生。10年には水平のまま振り子状に動く「フライングカーペット」に乗った15歳の少年が数メートル下に落ち、重傷を負った。少年は安全バーから体を抜いて座席に横になっていたという。

としまえんは現在、従業員と付添人が相談の上、乗車の可否を決めている。スペースワールド(北九州市)や富士急ハイランド(山梨県)も同様の対応。東京ディズニーランド(千葉県)は特に制限を設けていない。

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グリーンランドは「一度でも事故を起こせば、それは園の責任。現場が遊具を一番理解しており、来園者に納得してもらうしかない」(遊園地事業部)と話す。制限をめぐり、電話での問い合わせが数件あったという。

遊具の安全問題に詳しい日本大理工学部の青木義男教授(安全設計工学)は「事故の責任を施設側に押しつける風潮があるため、防衛したのだろうが、一律制限は閉鎖的」と指摘。関哉直人弁護士(第二東京弁護士会)は「知的障害者の障害の程度はさまざま。障害者側の意見も交えて個別に利用できるか否かを判断すべきだ」とする。

佐賀市の知的障害者支援施設「かささぎの里」を運営するかささぎ福祉会常務理事村上三代さんは「みんなが楽しめるのが遊園地。制限は大変悲しい。障害をよく知る付添人や従業員がよく話し合えば柔軟な対応ができるはず」と話した。

■2011.12.13  大津の社会福祉施設で職員が入所者を虐待
滋賀県大津市の社会福祉施設に勤めていたケアワーカーが、入所者に頭を叩くなどの虐待を加えていたことがわかった。この職員は6月に自主退職している。

滋賀同仁会によると、運営する社会福祉施設「滋賀保護院」に、ことし6月まで働いていた38歳の男性ケアワーカーが入所者に対し、頭を叩く蹴るなどの暴行を加えたほか、寝たきりで介護が必要な入所者の排泄物の処理を怠るなど、計15件の虐待行為が確認された。

ほかの職員からの通報で発覚し、所長がこのケアワーカーに確認をしたところ、虐待の事実を認めた。虐待を受けた入所者には治療が必要なケガをした人はいなかったという。

滋賀同仁会は「今後、信頼回復に努め、職員の認識を高めて参ります」とコメントしている。

■2011.12.14  20回目の窃盗罪被告に猶予判決「福祉向上で更生を」
窃盗を繰り返してきた重度の知的障害がある男の被告(64)に実刑を科すべきか、刑を猶予して福祉サービスにつなげるべきか。更生のあり方が問われた裁判で、福岡高裁は14日、懲役10カ月(求刑懲役2年)とした一審・福岡地裁判決を破棄し、懲役10カ月保護観察付き執行猶予5年の判決を言い渡した。

陶山博生裁判長は「更生環境がなかったことが、被告が犯罪を繰り返した大きな要因だ」と述べた。知的障害がある累犯者らの更生支援で先進的な取り組みをしている社会福祉法人南高愛隣会(長崎県)によると、こうした被告に高裁が執行猶予付きの判決を出すのは全国で2例目。

被告は生まれつき耳が聞こえず、話すこともできない。過去に19回、同種の罪で有罪判決を受け、22年以上服役した。今回の事件の捜査段階で弁護人が簡易鑑定を要請し、初めて知的障害の疑いがあることが判明。一審後には精神年齢6歳10カ月の重度の障害だとわかった。

被告は昨年9月に福岡市内のアパートの一室に窓から侵入し、現金3万円を盗んだとして起訴された。一審判決は「障害は考慮するが、責任能力はあり、刑事責任は免れない」として実刑を言い渡した。

一審後、弁護側は南高愛隣会と連携。保釈が認められた被告は同会の更生保護施設で暮らしながら職業訓練を受け、手話も本格的に学び始めた。知的障害者が福祉サービスを受けるのに必要な療育手帳も取得した。

こうした状況を踏まえ、弁護側は控訴審で「懲役刑ではなく、生活訓練を受けることが被告を更生させ、再犯防止になる」として保護観察付きの猶予判決を求めていた。

判決は「障害を踏まえた更生環境が具体的に整い、改善の効果がすでに表れ始めている。更生につながる大きな変化で最大限尊重されるべきだ」と判断した。

■2011.12.14  海老名の福祉施設に72万円届く、名無しの善意に感謝/海老名市
海老名市は13日、同市上今泉の障害者支援施設「あきばデイサービスセンター」の郵便受けから現金10万円入りの封筒が見つかったと発表した。同センターでは、8月31日、9月5日にもそれぞれ12万円、50万円が入った封筒が発見されている。

市によると、今回封筒が見つかったのは12日午後。通常使われていない郵便受けに入っていたため投函(とうかん)された日は不明だが、11月下旬から12月初旬とみられる。

3回とも封筒に1万円札のみを封入し、二つ折りにしていることや、宛名や差出人、手紙などがない点が共通している。いずれも警察に届け出た。市立施設のため、一定期間が過ぎれば現金は市の所有となるが、内野優市長が「施設への寄付」と理解を示しているという。

同センターには市内から43人が通所。就職に向けた作業訓練や芸術活動、余暇などで利用している。開かれた施設で地域住民との交流も盛ん。同センターは「障害者施設と知って投函してくれたと思う。お金で利用者のためになるようなものを購入したい」と話している。

■2011.12.16  障害者スポーツ施設「廃止」反発 利用者ら署名提出
大阪府の9月議会に提案されている障害者スポーツ施設「稲スポーツセンター」(箕面市)の廃止条例案に反発の声が強まっている。利用者らでつくる市民団体は15日、存続を求める1万人余りの署名を松井一郎知事宛てに提出した。これに対し松井知事は、廃止の考えを変えていない。

同施設は1996年、府が障害者の社会参加の促進などを目的に、スポーツや文化活動ができる場として開館。利用者は増加中で、2010年度の年間利用者数は延べ約3万3千人に上った。

9月議会では、財政構造改革プラン案に基づき本年度で廃止する条例案が提出された。

11月に就任した松井知事は、15日の府議会本会議で同条例案の趣旨について「府と市町村の役割分担」と説明。「障害者にとって身近な地域でそのニーズにきめ細かく対応できるよう」市町村がスポーツを楽しめる場を用意し、府は「広域的、専門的な立場から、指導者の養成や派遣を通じて市町村を支援する」という理屈だ。

廃止後の一定期間の利用については「最大限の配慮」を打ち出すものの、「条例案を取り下げる考えはない」と断言した。

こうした方針に対し、利用者やその家族らでつくる市民団体「稲スポーツセンターを守る会」は反発。府はスポーツ関連の利用者の受け入れ先として、豊中市の施設などを複数提案するが、時間帯や利用日時は制約され、同市民団体の水原和弘副代表は「利用者がばらばらになり、家にこもってしまう人もでる」と不安視する。

また府は施設の廃止後、児童福祉施設への転用を打ち出しているため「共存するのは構わないので、現状のまま利用させてほしい」と訴える。

署名を担当部局に提出した片山友子代表は「私たちにとって本当に大切な場所。この気持ちが知事に届いてほしい」と話していた。

■2011.12.16  障害者施設運営のNPO法人が補助金不正受給 長野県
長野県松本市で障害者就労継続支援施設を運営するNPO法人「四炎(しえん)」(西村四郎理事長)が補助金を不正に受給していたとして、長野県は15日、補助金の交付決定を取り消し、全額の約1800万円の返還を求めたと発表した。

発表によると、同NPO法人は2009年7月、西村理事長が取締役を務める業者と豆腐製造設備を900万円で購入する売買契約を締結。同年11月に既に購入した豆腐製造設備の代金と建物の改修費用を含めた1800万円の補助金の交付を県に申請した。10年1月に工事費用から豆腐製造設備の費用を除外する変更契約をしたが県に報告せず、同年3月に補助金約1800万円を受けていた。設備の購入代金の一部を分割払いし、補助金を他の用途に流用したとしている。

県によると、購入済み設備は補助の対象外。県は補助金交付の前に工事内容などを調査したが、領収書は県の規則で調査対象外のため、調べていなかった。関係者からの情報提供で県が今年7月に領収書の提出を求めた際、理事長は偽造した領収書を提出していた。

西村理事長は一時的に法人の運営費に充てたことは認め、「支払先の変更なので問題ないと思った。偽造した領収書は動揺して出してしまった」と話しているという。

県は松本署に資料を提供し概要を説明した。法人は今年9月、県に活動の休止届を出している。

■2011.12.16  元行員と元記者が障害者雇用アップへ奔走…千葉
千葉県船橋市の元銀行員篠山生一さん(60)と、千葉市花見川区の元タウン紙記者水野香さん(47)が、船橋市の臨時職員として、市立船橋特別支援学校の生徒たちの就職率アップに奔走している。

元銀行員の篠山さんは、法人営業の経験を踏まえて訪問先の企業の経営状況を分析し、生徒たちの採用プランを提示。水野さんは記者経験を生かして分かりやすい説明で協力を求めてきた。この結果、半年間で約140社の実習受け入れ先を開拓。生徒2人の内定が決まりそうだという。

2人は4月に市の臨時職員に採用された。きっかけは、市商工振興課の担当者が、同校教諭から「生徒の就職が厳しいばかりか、実習先の確保も難しい」と相談されたことだった。市は国の緊急雇用創出事業を利用し、社会人経験のある臨時職員を急募。2人が選ばれた。

特別支援学校の生徒の実習先は通常、学校が企業と交渉して決めるが、今回は2人が受け入れ先の開拓を担当した。

2人はまず、同校に2週間通い、障害を持つ生徒らに適した仕事を具体的に調べた。並行して、市内の387社にアンケートを依頼。障害者雇用に関する企業側の事情や受け入れ可能性などを把握した。

こうした調査を踏まえ、2人は企業を訪問。元銀行員の篠山さんは、法人営業を担当した経験を生かし、個々の企業の経営状態を調べた上で、人手不足の解消につながる方法の一つとして、同校生徒の採用をアピールした。元タウン紙記者の水野さんは、障害者を雇用したことのない企業に対し、採用した場合の具体的なイメージをつかめるように提案をした上で、障害者雇用に関する市の補助金制度などを具体的に説明した。

こうした働きかけが実を結び、4〜10月だけで市内約140社が実習受け入れを快諾。高等部の生徒計約120人が実習を経験した。

同校では現在、来春卒業予定の3年生41人のうち、14人が内定や内々定を得たが、このうち2人は、篠山さんらの開拓した企業から内々定を得たという。

篠山さんは「生徒の力になれて良かった」と振り返り、水野さんは「企業には丁寧に説明するよう心がけてきたので、理解してもらえたのはうれしい」と喜びを語る。

同校では例年、進路指導の担当教諭が実習の受け入れ先を開拓する。半年以上かけてハローワークや新聞の求人欄をチェックし、約400社の企業を直接訪問するが、それでも実習を受け入れる企業は1割程度という。進路指導主事の尾崎貢一教諭は「今年はとても助かっている。市が支援していることも、企業側の安心感につながっているようだ」と話す。

市は支援対象を就職を希望する障害者に広げた上で、来年度も2人に引き続き活動してもらう考えだ。

ハローワーク船橋によると、船橋市など管内5市の障害者雇用率は、6月現在で1・74%にとどまり、法定雇用率1・80%を下回っている。

■2011.12.16  福祉事業所 4割不備 県調査、改善求める 長崎
県内にある福祉関係の法人や事業所2100カ所で県が昨年度、入所者や職員の処遇を調べた結果、935カ所で職員不足や不適切な運営が見つかった。調査対象のおよそ45%で何らかの問題があったことになる。県は不備があった施設や法人に改善計画を報告するよう求めている。

県や市町が管轄している社会福祉法人、社会福祉施設、介護保険事業所、障害福祉サービス事業所など、県内6035カ所から2100カ所を選んで調査した。社会福祉法人は113件(43.6%)、社会福祉施設は341件(55.3%)、介護保険施設・事業所は245件(30.7%)、障害福祉サービス事業所は236件(59.7%)で問題が見つかった。

職員の処遇面では、雇用保険の加入条件を満たしている人に加入手続きをしていなかったケースがあったほか、職員数が不足していたり、規定の給与や手当が支払われていなかった。

入所者に対しては、避難訓練をしていないなど災害への備えが不十分だったり、お金を預かる際、家族に定期的な報告をしていなかったりする問題が見つかった。身体拘束廃止のための指針が作られていないケースもあった。

経理面では契約額が100万円を超える工事や物品購入で契約書を交わしていなかったり、必要な競争入札をしていなかったりした。

県福祉保健部監査指導課は「指摘件数は年々減っており、制度の周知と監査の効果が出てきている面もある。今後も適正な運用を求めたい」としている。

■2011.12.16  障害者とお年寄り共生 県内初 同一敷地に4施設 富山
かつての保育所を新改築し、障害者、高齢者向けの四種類の福祉施設を同じ敷地内で運営する「富山型共生の里 あさひ」が十九日、朝日町大家庄で開所する。県によると、同様の施設は県内初の整備という。県東部新川地域で唯一、国の過疎指定を受ける朝日町。関係者は「年を取っても、障害があっても住み慣れた地域で支え合い住み続けられる施設として、地域活性化につなげたい」と意気込んでいる。

社会福祉法人・にいかわ苑(入善町)が手掛ける八カ所目の事業所。三年前に廃止された大家庄保育所を朝日町から譲り受け、国や県などの補助を受けて整備した。総事業費は約千八百五十万円。

十九日に開設するのは、認知症の高齢者向けの入所施設「グループホーム大樹」(定員九人)と知的障害者が入所する「ケアホームマーヤの家」(同七人)、認知症で要介護認定を受けた人の通所施設「デイサービスまめなけ」(同十二人)の三施設。来年四月には身体、知的障害者向けの通所施設が開業する。県障害福祉課は「四種類の施設が同一敷地で運用されるのは県内初」と期待する。

敷地面積は約四千百三十平方メートルと広い。建物内には個室や食事室、娯楽室、共有スペースなどを整備。お年寄り、障害者が日常生活の介護や機能訓練を受けたり、地域行事に参加したりする手助けをする。当面は新規雇用の職員約三十人で運営。利用の申し込みは朝日、入善両町と富山、魚津、黒部、滑川の四市からあり、親がグループホーム、子がケアホームを希望する例もあったという。

「障害者と高齢者がお互いに支え合える拠点をつくりたかった」と整備の意義を強調する代表の石丸真弓さん。「施設を整備したことで人口と仕事が増える。県内外から人を呼び込みたい」と、地域おこしの拠点となることも目指している。

■2011.12.17  重度障害者の福祉サービス、施設不足で利用できず…岐阜
在宅の重症心身障害者が、病院などの施設に短期入所する福祉サービスの利用を希望しても、施設不足で利用できないケースが年間で200人近くに上ることが16日、岐阜県の調査結果で分かった。

施設が県内に11か所と少ないことに加え、主治医でない場合、詳しい病状が分からないなどを理由に、施設側が受け入れを敬遠しているためという。県は来年度、施設を増やすとともに、看護師への研修を実施し、受け入れ態勢の強化を目指す方針だ。
調査対象は、身体的、知的な重度の障害を併せ持つ、在宅の子どもから大人までの807人。県では初の調査で、昨年10月から今年9月にかけて面接方式で行った。

結果によると、施設に数日から1か月程度、泊まり込んで介護などのサービスを受ける「短期入所」を希望する障害者356人に対し、実際に利用したのは158人にとどまった。198人が施設を利用できなかった実態が浮かび上がった。

日中のみ、施設を利用する「一時支援」についても、利用希望の286人に対し、実際の利用者は119人にとどまった。

県障害福祉課によると、県内には、重症心身障害者の受け入れ施設は、岐阜市の長良医療センターなど11か所あるが、飛騨地方には1か所しかないなど地域的な偏りがある。さらに、受け入れ施設でも1対1の看護が必要であることから、態勢の不十分さなどを理由に受け入れを敬遠するケースも多いという。

県は、今回の調査結果を基に、施設に対し、個室整備や医療機器の購入に補助金を出し、受け入れ施設の増加を目指す。また、施設が受け入れやすいように障害者の病状や成育歴を記した「かけはしノート」を作り、家族らへの配布を始めた。県障害福祉課では「障害者やその家族が社会生活を営めるように、社会全体で支えていく必要がある」としている。

■2011.12.17  介護報酬不正請求:長岡の福祉用具店、県が行政処分 /新潟
県は16日、長岡市高見町のリネン業などを展開する「新潟県厚生事業協同公社」が運営する同市堀金の福祉用具レンタル販売店「おもいやりの泉長岡店」が、数千万円規模に上る介護報酬の不正請求をしていたとして、介護保険法に基づき、同店に対し新規利用者へのサービス提供を2日から2カ月間停止する行政処分を行った。

県によると、長岡店は、介護保険サービス事業所として県から指定を受けないまま09年10月に開店した三条市須頃の「県央店」のサービス提供分について、長岡店が行ったものと偽り、報酬を不正に請求していたという。県の調査に対し長岡店は事実を認めているという。県央店は既に閉店している。

介護報酬は、市町村運営の介護保険制度に基づき、介護サービスを提供する事業者に支払われるもの。原則、1割を利用者が支払いで、9割を市町村などが保険料や税金でそれぞれ負担する。不正請求分については、今後市町村が返還を求めるという。

■2011.12.17  容疑者「知的障害」と通知 要請受け大阪地裁
大阪府警に窃盗容疑で11月に逮捕された男性(23)に知的障害があると、大阪地裁が国選弁護人を選任する際、候補者を指名する日本司法支援センター(法テラス)に知らせていたことが17日、分かった。

知的障害者は取調官に迎合しやすく、うその自白をしてしまう問題も過去に発生。事前の情報提供で、障害の特性に精通した弁護士の選任が可能になった。

大阪弁護士会が9月、容疑者に知的障害がある場合の通知を大阪地裁、大阪地検、府警に要請、このうち地裁が応じた格好。日弁連や法テラスによると、こうした通知は全国初とみられる。

■2011.12.18  「お願い手帳」配布 NTT西日本金沢支店
NTT西日本金沢支店は、石川県内の自治体や福祉団体に「電話お願い手帳」1千冊の 配布を始めた。耳や言葉の不自由な人が外出先で電話をかける際、手帳に用件や連絡先な どを書き込み、近くの人に協力を求めるために利用する。ファクス用紙の「ふれあい速達 便」も1千冊配る。

■2011.12.18  災害時の被災障害者への支援考える 宮城教育大でシンポ
東日本大震災の被災地の障害児、障害者への支援を考えるシンポジウムが17日、仙台市青葉区の宮城教育大で開かれた。宮城、岩手県内などから約100人が出席、福祉施設関係者ら4人が、避難生活の課題などを報告し、災害時に備えたネットワークづくりの重要性を訴えた。
 
石巻市の障害者施設「第二ひたかみ園」の斎藤康隆施設長は、自宅が被災した障害者や家族らを施設で受け入れ、福祉避難所としての役割を担った経緯などを報告した。「避難所を回り、支援が必要な障害者を探して受け入れた。障害者用の仮設住宅もできたが、今後も継続した生活支援が必要だ」と訴えた。
 
新潟県中越地震などの経験を基に、石巻市内で障害者施設の支援活動を行った新潟県の社会福祉法人「りとるらいふ」の片桐公彦理事長は「被災地の障害者のニーズと外部からの支援を結び付けるコーディネーターの存在が重要」と強調した。
 
今後の課題として、地域とのネットワークづくりの必要性も指摘。「障害児らの多くは地元の学校でなく特別支援学校に通っているため、近隣住民にあまり存在を知られていない。避難生活などを支えるためにも、地域との関わりを強める必要がある」と述べた。
 
シンポジウムは、宮城教育大特別支援教育総合研究センターが、福祉施設職員らを対象に開催した研修会の一環として行われた。

■2011.12.18  災害時「福祉避難所」導入へ 青森
八戸市事業者と協定70か所

八戸市は、災害時に高齢者や障害者らの避難を専門に受け入れる福祉避難所を導入する方針を決めた。22日に約50の介護・福祉事業者と協定を結び、今後は震災時に施設を開放してもらう。東日本大震災で不自由な避難生活を余儀なくされた障害者などからは歓迎の声が上がる一方、行政の支援が足りず事業者に設備・人員面で負担がかかるなど課題は少なくない。

市福祉政策課によると、福祉避難所として開放されるのは、協定先の事業者が市内や近隣自治体で運営する介護・福祉施設計約70か所。一般の公民館や学校など「1次避難所」に避難した住民のうち、特別な介護や配慮が必要な高齢者や障害者に設備やスタッフの充実した各施設へ移ってもらう仕組みだ。県内の自治体で福祉避難所を整備するのは6例目。

同市では、東日本大震災で最大9000人超が避難生活を送った。視力障害を持つ人が避難所のトイレの場所も分からずに困るなどした経験を踏まえ、震災後に福祉避難所の整備を市に要望した市視力障害者福祉協会長の田村政雄さん(64)は、協定締結に「大きな一歩前進だ」と期待を寄せる。

ただ、実情は事業者側の善意に頼る部分が大きい。今回協定を結ぶ市内のある特別養護老人ホームは、直前まで協定締結を見送る方針だった。避難所運営に必要な大型自家発電機の配備や大量の食糧備蓄が難しいためだ。最終的には、震災後に購入した小型の発電機2台など既存の設備でも乗り切れる「受け入れ人数6人」に限って協力を決めたが、担当者は「受け入れたい気持ちは強くても自前の施設だけでは不安がある。行政の手助けがほしい」と話す。

厚生労働省によると、災害後の避難所運営費は災害救助法に基づき国が補助するが、平時にかかる諸経費には適用されない。県にも財政的な支援制度はない。

6月に福祉避難所を導入したむつ市の場合、当初打診した31施設のうち、設備や職員数の不足を理由に断念する施設が相次ぎ、協定を結べたのは21か所だった。受け入れ可能人数は計634人にとどまり、市介護福祉課は「今後も数を増やしたいが、現状ではなかなか難しい」と打ち明ける。

そもそも1人では避難所にたどり着くこと自体が難しい高齢者や障害者の避難を、誰がどう支援するのか。こうした「要援護者」の問題も残されたままだ。

7月の総務省消防庁の調査によると、要援護者一人ひとりの個別支援計画を策定している自治体は、県内では9自治体のみ。八戸市は策定途中で、登録された要援護者約3600人のうち支援計画を作り終えたのはまだ1割程度だ。市は「避難所を整備しても、避難できなければ意味がない」として、自主防災組織の結成率を高めるなどして要援護者の支援にも力を入れる方針だ。

■2011.12.19  横浜のグループホーム、事故未報告相次ぐ 平均件数超え市が指導へ/神奈川
横浜市神奈川区の認知症高齢者グループホームで、介護事故を行政に報告していないケースが相次いでいることが、18日までに分かった。利用者がけがなどをした場合、市町村への報告が省令で義務付けられているが、施設側は「基準を知らなかった」と釈明。未報告の5件を加えると、2006年度から5年間での介護事故は市平均の10・5件を大きく上回る計16件に上る。市は「利用者対応などに問題がある」として今後、指導する方針。

この施設は、医療法人社団「廣風会」(廣瀬隆史理事長)が05年2月、神奈川区に開設したグループホーム(定員18人)。

ことし2月、入居女性=当時(91)=が、椅子からの立ち上がり介助中に転倒、骨盤部を挫傷するけがを負った。医療機関を受診したが、施設は事故報告書を提出しなかった。

女性はその後立ち上がれなくなり衰弱し、7月に死去。長男(64)が「亡くなったのは転倒事故で立ち上がれなくなったことが原因」と市に相談したことから、報告書の未提出が発覚した。この女性は入所中の09年2月と同3月にもけがを負ったが、どちらも報告書は出されていなかった。市はことし9月、適切に事故報告を行うよう文書で指導した。

ほかにも、ことし11月に実施された市の臨時監査で、06年度に他の入居者の事故2件が報告されていないことが判明している。

市の報告基準は「施設側の過失の有無を問わず、けがで医療機関を受診した場合」や食中毒などだが、施設長は「施設側に過失があったときだけだと認識していた」と釈明。その理由を「前任者から引き継ぎがなく、市の研修でも説明がなかった」と話す。

女性の死亡については、法人代理人の弁護士は「転倒は不可抗力で、衰弱や死亡との因果関係はない」と主張している。

グループホームの所管が県から市町村に移管された06年度以降、10年度までにこの施設で発生した介護事故は、未提出分も含め計16件。10年度は市平均2・3件に対し5件など、各年度とも市平均を上回る。内容も骨折が3件、頭部打撲3件(うち入院1件)など、重大な結果につながりかねない事故もあった。11年度も10月までに計3件起きている。

事故報告の提出義務化は、利用者の安全確保と再発防止が目的。市健康福祉局事業指導室は「この施設長も受講した管理者研修などで報告基準を説明している」と強調。施設に対しては「利用者側とトラブルになっており、対応に問題がある」として、家族への適切な説明を行うことなどを文書で指導する方針だ。

■2011.12.20  公的年金受給者、過去最高の6188万人
厚生労働省は19日、2010年度末の公的年金受給者数(延べ人数)が前年度末比3・3%増の6188万人で過去最高となったと発表した。

保険料を支払って年金制度を支える加入者数は、同0・7%減の6826万人で5年連続で減少した。公的年金の支給総額は同1・7%増の51兆1000億円で過去最高だった。公的年金は自営業者らの国民年金、サラリーマンらの厚生年金、公務員らの共済年金などが対象。

■2011.12.20  静岡生まれの「介護マーク」、全国へ- 厚労省が普及に向け事務連絡
厚生労働省はこのほど、介護する人が周囲から誤解・偏見を受けることがないよう静岡県が作成した「介護マーク」の周知を図るよう求める事務連絡を都道府県にあてて出した。普及を目指す静岡県からの要望に対し、藤田一枝厚労政務官が全国的な周知を図る意向を示していた。

介護マーク=図=は、「介護中」の文字に人が支え合うデザインを入れ、静岡県が今年独自に策定したもの。介護中であることを理解してもらうことを目的に、介護をする人が外出時に首から下げたり、必要なときに提示したりして使用する。

地域ごとに別のマークが使われると分かりづらいため、厚労省は静岡県のマークの普及を図る。同省の担当者は、「一つの県がつくったものを全国的に普及させる取り組みは珍しいのではないか」と話している。

■2011.12.21  社福施設の労災死傷者、昨年は5500人超−5年前より2000人増加・厚労省調査
老人介護施設や障害者施設など社会福祉施設における労働災害の死傷者は、2010年だけで5533人に達したことが、厚生労働省の調査で明らかになった。5年前に比べて約2000人増えている上、今年の被害者は、さらに増える可能性があることから、厚労省では、腰痛対策などの具体的な事故防止策をまとめた「社会福祉施設における労働災害防止のために」を作成。ホームページ上で公表するなどの対策に乗り出した。


調査結果によると、特別養護老人ホームや老健施設、訪問介護事業所などの老人介護施設や障害者施設、保育施設における労働災害に伴う死傷者数(事故によって、4日以上の休業が必要となった人の数)は、05年は3621人だったが、06年は4091人、07年は4338人、08年は4829人、09年は5065人と年々増加。10年は5533人となった=グラフ=。労災の事故の種類では、無理な動作などによって腰痛などを起こした例が35%で最も多く、以下は転倒が29%、道路における交通事故が7%、墜落・転落が5%と続いた。

■死傷者数の増加傾向、今年も続く

厚労省によると、社会福祉施設における労災の死傷者の増加傾向は今年も続いており、9月末までの死傷者数は10年が3462人だったのに対し、今年は既に3602人を記録しているという。

全産業で見ると、労災に伴う死傷者数が減少している中、社会福祉施設では増え続けている点について、厚労省では「社会福祉施設で働く人の数が増えた上、年齢も高くなってきたことが影響した可能性がある。今後、調査結果の分析をさらに進めたい」としている。

厚生労働省
腰痛対策などの具体的な事故防止策をまとめた「社会福祉施設における労働災害防止のために」
http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/111202-1.html

■2011.12.22  老人ホームで虐待 香川県が改善命令
認知症状の入所者をペット用の鉄柵に閉じ込めたり、バーベルの重りにつないだりするなどの虐待が行われた疑いがあるとして、香川県は22日、三豊市の有料老人ホーム「和楽の郷」の運営会社に老人福祉法に基づく改善命令を出したと発表した。

県によると、同施設では平成20年末から21年5月にかけて、職員がペット用の鉄柵(幅190センチ、奥行き96センチ、高さ105センチ)の中に布団を敷いて、90代の女性入所者を午後5時から翌朝7時まで閉じ込め、21年9月〜12月には同じ女性の胴にプラスチック製のチェーンを巻き付けバーベルのプレート(重さ6・8キロ)につないでいたという。

ほかにも食事を途中で下げて食べさせないなどの虐待を7人の入所者が受け、管理者や複数の職員らが関与していたという。

施設側は県への弁明書でバーベルにつないだことについて、「徘徊(はいかい)による事故を防ぐため」としているが、ペット用の鉄柵に入れたことなどは「事実無根」と主張しているという。運営会社の「和楽」(同市)は今月、同施設などの廃止届を県に出している。

■2011.12.22  障害者駐車場を使いやすく ルームミラーに利用証
障害者やお年寄り、妊産婦らが公共施設や医療機関、商業施設などで安心して車を止められるように、宮崎県は来年2月から、専用の駐車スペースを確保する「おもいやり駐車場」制度を始める。

許可された人に利用証(縦27センチ、横14・5センチ)を交付し、車のルームミラーに掲げて適正な利用をアピールする。県内600施設での運用を目指すという。

■「健常者が止める」「外見で分からないと利用しづらい」

県内で、障害者らが優先利用できる駐車場に健常者が止める不適切なケースが目立つ一方、心臓などに障害を抱えるドライバーから「外見で障害者と分からない人は利用しづらい」などの声が寄せられたことから、解消策として導入を決めた。

県や市町村の公共施設のほか、商業施設や病院、銀行などの駐車場に「おもいやり駐車場」のステッカーを貼るなどして、一般の駐車スペースと区別する。

利用できるのは、身体や知的、精神障害者のほか、「要介護2」以上の高齢者や難病患者、産後3か月までの妊産婦、車いすなどを使っているけが人。利用証を車のルームミラーに下げることで、駐車を許可されていることを示す。交付を受けた人が同乗する場合も利用できる。

利用証の交付を県障害福祉課や保健所などで受け付けており、希望者は身体障害者手帳や療育手帳、母子手帳、医師の診断書などを添えて申請する。申請は無料。今年度の事業費は約1600万円で、県は3年間で1万人の利用証交付を見込んでいる。

■全国21府県 九州では全県に

この制度は佐賀県が2006年7月に始め、今月20日までに京都府や長崎県など21府県が導入。今年度中に九州の全7県で実施される予定で、他県でも利用できる見込みという。

県障害福祉課は「本当に必要な人の駐車スペースを確保し、お年寄りや障害者、妊産婦に優しい街づくりを目指したい」と話している。

■2011.12.22  授産製品販売増へ支援 宇治のNPO2年かけ“大作戦”
障害のある人たちが福祉施設で作っている授産製品の販売を支援しようと、宇治市木幡のNPO法人「まちづくりねっと・うじ」が、「売り上げ倍増大作戦」に乗り出した。

カタログを作って市内の企業や団体に製品を売り込む計画で、イベントへの出店や、商品の質の向上を図る取り組みも始める。
 
授産製品は、福祉施設を利用する障害者が日常的に手がけている。しかし、同法人によると、販売の機会が少ないことなどが課題になっているという。
 
「製品が売れない」との悩みを聞いた同法人のメンバーが支援策を提案。市障害者施設連絡協議会や府、立命館大などと話し合い、府の事業として本年度から2カ年でサポート活動に取り組む。
 
今後は市内の企業300社を訪問し、営業活動を行う予定。現在は市内10施設の製品を掲載したカタログを制作しており、企業の粗品に使ってもらったり、社の一角に販売コーナーを設けることなどを提案していく。
 
このほか、商品を顧客のニーズに合わせるため、希望する施設に専門家を派遣してパッケージデザインを提案するほか、新商品の開発なども支援する。ホームページを作成し、インターネットでの販売も検討している。今秋には市内のイベントに出店して製品の販売も行っており、来年以降の催しにも参加する。
 
同法人理事の安江徹さん(69)は「ひと工夫を加えるだけで商品価値が変わる。企業や市民の協力を得て、少しでも販路が広がれば」と期待している。

■2011.12.22  福祉事業所の移動車、23日に始動 コロッケなど販売
障害者の職業訓練や就労支援を目的に、食品加工販売などを手掛ける「まる工房」(佐賀市)が、新たに移動販売車を走らせる。昨年4月の事業開始から委託販売を続けてきたが、直接消費者に届けることでリピーターを確保するとともに、利用者が実体験を積む場を増やす狙い。23日、佐賀市兵庫南のアロマセラピーサロンの3周年記念イベントに参加して“始動”する。

フライヤーや冷蔵庫、冷凍庫を備えた軽トラックにスタッフと利用者2人が乗り込み、手作りのオレンジソースや漬物などを運ぶ。おからコロッケやおからドーナツはその場で揚げて提供。委託販売では分かりづらかった消費者の反応を間近で感じ、今後の商品開発につなげる。

ドラッグストアやショッピングセンター駐車場などでの来春からの販売を目指し交渉中で、駐車場の利用が可能な企業があれば「昼食時間帯などに出かけていきたい」という。試作段階だが、シシリアンライスや弁当、カレーライスなどを「できれば1コインの金額で」と考案している。

小林幸子マネジャー(42)は「福祉事業所だから買ってくれるではなく、おいしいから買い、それが結果的に社会貢献にもなったというサイクルをつくりたい」と話す。

まる工房は、佐賀市のNPO法人「ステップワーカーズ」が、障害者が働く場としての受け皿と、実体験を通じ能力を高めるという二つの機能を目指し立ち上げた。食品加工販売のほか、パソコン入力など事務事業も行っている。

■2011.12.22  視覚障害者用「しゃべる線量計」、福島県で開発
福島県盲人協会(福島市)は、測定した放射線量を音声で知らせる視覚障害者用線量計「しゃべる線量計」を同県内のメーカーの協力で開発した。

縦12・5センチ、横5・5センチ、厚さ2・5センチで、線量を表示する液晶画面の下部にスピーカーを内蔵。本体の左側の音声スイッチを押すと測定した線量を読み上げる。

東京電力福島第一原発事故の影響で、協会には6月頃から「自宅周辺の放射線量が分からないため、怖くて外出できない」「自分で放射線量を測定したい」という声が会員から寄せられていた。職員が視覚障害者向けの線量計が市販されていないか調べたが、見つからなかったという。

協会が10月、線量計製造を手がけている同県大玉村の板金加工製造「三和製作所」に設計・製造を依頼。斎藤雄一郎社長(44)は「視覚障害者の一助になれば」と請け負った。同社は何度も協会に試作品を持ち込み、10人以上の視覚障害者から「音量調節つまみをつけてほしい」などとアドバイスを受けて今月上旬、完成させた。

■2011.12.22  障害者施設きれいに 愛産大工高生が奉仕活動
名古屋市中区橘の愛知産業大工業高校の生徒会や有志の生徒らによる「あけぼの学園奉仕活動」が21日、知的障害者が寮生活を送る名古屋市天白区植田山の同学園であった。

奉仕活動は「社会から喜ばれ歓迎される人材の育成を」と、40年前に始めた。当初は、1クラスで奉仕活動をしていたが、学校内に輪が広がり、生徒会主導の伝統行事となった。

3年生中心の有志の生徒37人による落ち葉拾いや寮の窓拭きがあった。今年初めて参加した1年で副会長の伊藤和真君(16)=名古屋市名東区=は「普段の掃除では、手が届かない窓まで拭いたので掃除のしがいがありました」と話した。

掃除後は、体育館でクリスマスミニコンサートも開いた。マーチングバンド部50人がクリスマス曲を演奏。生徒会のメンバーがサンタクロースにふんし、菓子をプレゼントして交流を楽しんだ。

1年の小倉将太君(15)=名古屋市中村区横井=は「窓がきれいになると“あぁきれいになったな”と感動した。別の学園でも奉仕活動がしたいと思う」と話した。 

■2011.12.23  季節の風景描く 障害者らがカレンダー作製 三田 
障害者の地域活動支援センター「のぞみ」(兵庫県三田市波豆川)で、通所者が描いた絵を掲載したカレンダーが完成した。知的障害がある13人が、個性あふれる筆致で毎月の風景画を描き、季節感を演出。中町の「のぞみショップ」で販売している。

同センターはNPO法人わかくさが運営。市内計3拠点に、現在25人が通い、簡単な箱詰め作業などを行っている。

カレンダーは、通所者らが絵を描いた衣類や小物が人気だったため、2002年から制作を始めた。10回目の今年は、布地にアクリルで描いた絵の中から毎月の12枚分と裏表紙を選び、写真に撮影してとじ込んだ。

表紙には「夢に向かって羽ばたこう」との思いを込め、25人全員で共同制作した色鮮やかなクジャクを掲載。各月には、13人が、同センターのかやぶき屋根に雪が積もった様子(2月)や、朝日を受けて輝く海(8月)などを描いている。

昨年まで市内の小学校で図工教諭を務め、今年からボランティアで通所者の絵を指導する上良眞紀子さんは「長年絵に親しみ、培ってきた素地があるから、みんな筆を握った途端にぐいぐい描いていく。そのエネルギーに圧倒された」と語る。

同センター支援員の片本ひとみさんは「メンバーの思いや感じていることを多くの人に見てもらいたい」と話している。

■2011.12.23  村支える唯一の医師 青森
岩手県野田村の村総合センター。一室に入る仮診療所で12月16日、村唯一の医師、押川公裕さん(62)が患者と向き合った。

「体脂肪が高けえな。こりゃ正月は何にも食べられねえぞ」

押川さんの親しみを込めた話しぶりに、患者は「先生、分かりましたよ」とにっこり笑ってうなずいた。

鹿児島県出身の押川さんが医師のいない村に「おしかわ内科クリニック」を開いたのは2005年。今年3月11日の津波で診療所は建物ごと流された。患者は送迎バスで避難させ、自分も高台に逃げた。

その夜、押川さんは避難所に「重傷者がいる」と聞き、駆けつけた。自動車で避難する際に津波に巻き込まれ、右足に大けがを負った女性だった。

治療したいが、医薬品や医療器具が何もない。「足を切らないといけないかもしれない」と伝えるのが精いっぱいだった。

「はい」と気丈にうなずく女性が救急車で搬送されていくのをただ見守った。「医師として何にも出来なかった」と悔しさがこみ上げた。

村民の大半は顔見知りだ。「顔を見せるだけでも、きっと安心してくれるはず」と、数日後、保健師に借りた聴診器と血圧計を手に、避難所や高齢者宅を回り始めた。行く先々で村民がみせる安堵(あんど)の顔が心の支えだった。

仮診療所を開設したのは3月下旬。かつて勤務した八戸市内の医者仲間などから、支援物資として注射器や薬、心電計などが届き、最低限の診察ができるようになった。

最近では、親族を亡くしショックを受けていた患者も、明るさを取り戻しつつあるという。だが、糖尿病や高血圧を患う人も多い。

そのほとんどは、仮設住宅で暮らす高齢者だ。

村の地域医療に携わって7年目。村民から「長生きできるのも、先生のお陰」「先生、村に残ってちょうだい」と声をかけられるたびに思いを強くしている。

「まだまだ離れるわけにはいかない」と。

■2011.12.23  お遍路さんに手作り土産/さぬきの障害者ら
遍路旅の思い出にどうぞ―。香川県さぬき市の障害者団体「たんぽぽの風企画」(石原龍仁代表)が地元のお年寄りで組織するグループらと協力し、歩き遍路に欠かせない金剛杖(づえ)を模した竹製のミニ金剛杖と、折り紙で作ったミニすげがさをセットにしたお土産作りに取り組んでいる。商品名は「杖のあと」で、来年1月中旬から市内2カ所で販売を始める予定。

たんぽぽの風企画は、昨年5月から旧志度小学校末分校(同市末)の施設を拠点に、障害者の自立や就労支援を目的とした活動を展開。市内に遍路旅を締めくくる上がり3カ寺(志度寺、長尾寺、大窪寺)があることから、今年6月からお遍路さんをターゲットにしたお土産の製作に着手した。

お土産作りには、趣旨に賛同した竹細工愛好家グループ「さぬき竹友会」などが協力。歩き遍路で共に旅した金剛杖を結願寺に奉納するお遍路さんが多いことをヒントに、2種をセットにした記念の飾り物を考案した。

製作は7月から週1回実施。同風企画のメンバーは竹細工愛好家と共に、専用の機械で竹を短く切ったり、商品に添える絵手紙を書くなど一点一点に思いを込めながら作業に取り組んでいる。

ミニ金剛杖は長さ20センチ・幅6ミリ。上部に鈴を付けたほか、「南無大師遍照金剛」のはんこを押している。価格は絵手紙付きで700円(500円で販売する簡易版もある)。計200セットを円通寺(香川県さぬき市志度)と平賀源内記念館(同)で販売を始める。

■2011.12.24  障害者の就職、チーム支援に効果 福祉施設とハローワークで
就職を希望する重い障害者に対し、福祉施設職員らがハローワーク職員とチームを組む就職支援が効果を上げている。求人情報を幅広く提供し、本人の性格や能力に合った職場探しをするのが狙いで、2010年度の就職者は07年度の約5倍の8500人に増加した。企業の障害者雇用への意識の高まりも追い風になっているようだ。

就職を目指す障害者へのチーム支援は、障害者自立支援法が施行された06年度にモデル事業として始まり、翌07年度から全国に拡大した。障害の程度が重いなど一人では就職活動が難しい人が対象で、ハローワーク側が本人の希望を聞いた上で支援を決める。

チームはハローワーク職員を中心に福祉施設職員や障害者支援機関の職員らでつくる。特別支援学校の卒業生であれば教諭らが加わり、障害者本人、家族らを交えて会合を開く。そこで本人の希望や性格、能力に合った仕事を話し合い、必要な職業訓練や生活支援を提案し、採用されるまでの支援計画を作成。面接訓練のほか、面接に付き添うこともある。

厚生労働省によると、就職を希望してチーム支援を受けた障害者は07年度が3568人だったが、10年度は4.7倍の1万6682人に増加。このうち就職できたのは10年度が8554人(51.3%)で、07年度の1778人と比べて4.8倍になった。チーム支援では就職後も障害者やその上司らが同席して本人と職場の改善点を話し合い、仕事への定着を図っている。

ハローワークで新規求職する障害者全体の数は10年度が約13万2千人となり、07年度と比べて2割増えている。10年度に就職できたのは約5万2千人(39.9%)だった。

厚労省の担当者はチーム支援が効果を上げていることについて、「支援によって障害者の就職への意欲が高まる。法律で障害者雇用率が定められ、大企業を中心に積極的に雇用する動きが広がっていることも後押ししている」と分析している。

■2011.12.24  障害者施設利用者に靴下贈る
佐賀市の社会福祉法人「めぐみ厚生センター」が運営する知的障害者施設「富士学園」(同市富士町)で23日、クリスマスパーティーがあり、同学園に隣接する生活介護事業所「ウィズ富士」の利用者を合わせて計140人にプレゼントの靴下が贈られた。

大手スーパーのイオンが取り組む地域貢献の一環。イオン佐賀大和店の従業員3人がサンタクロース姿で訪れ、クリスマスソングが流れる施設内で一人一人にプレゼントを手渡した。50代男性は「靴下

■2011.12.25  作業所外に働く場橋渡し 滋賀県就労振興センター
障害者の雇用促進に取り組む県社会就労事業振興センター(草津市)は障害のある人が企業や地域で働く機会を増やす取り組みを進めている。通所する人の社会参加に関心がある共同作業所をとりまとめ企業などと橋渡しする試みだ。

「地域協働作業所」と名付けた取り組み。同センターが企業などから仕事を請け負い、大津市と甲賀市の6作業所に振り分けている。所内作業など限られた場で暮らすことが多くなりがちな障害者に社会参加のきっかけを得てもらうのが狙い。

現在、2市の作業所に通う障害者約30人が週1〜3回、地域に出て働いている。請け負っている業務は、大津市の園城寺(三井寺)の清掃と甲賀市の照明器具製造・販売会社「ツジコー」のライン作業。

大津市の知的障害者授産施設「瑞穂」や「社会就労センターこだま」などに通う12人は12月中旬、園城寺の境内で清掃活動に従事した。竹ぼうきやちり取りを使って落ち葉などを掃き集めながら、参拝者とあいさつも交わした。おおつ福祉会の山形佳子さん(60)は「作業中に話しかけられることも多く、感謝されるのがうれしい」と笑顔を見せた。

同センターから受ける収入は時給約580円。1日4時間、月13日働いた人の収入は経費を差し引くと約2万3千円。作業所などで働く障害者の収入の全国平均約1万7千円と比べると高いが、最低賃金にはほど遠い。同センターの中塚祐起さん(26)は「障害にかかわらず、労働への正当な対価が支払われるようにしたい。まずは時給700円を目指したい」と意気込んでいる。

■2011.12.25  初開催「介護技術コンテスト」で嬉野高生が日本一に
全国産業教育フェア「高校生介護技術コンテスト」(17日・鹿児島市)で、嬉野高(坂本兼吾校長)の福祉系列3年の松尾多恵さんと松尾早也香さんペアが最優秀賞の文部科学大臣賞を受賞した。2人は「仲間と頑張ってきたので本当に良かった」と喜ぶ。

同コンテストは今年初めて開かれた。各都道府県予選の優秀校から書類選考で絞り込まれた10校が参加し、2人1組で介護を行った。処置や段取りの適切さなどが審査され、介護される人に対する尊厳の配慮や円滑なコミュニケーション力も問われた。

競技は、脳梗塞で左半身がまひした82歳女性の着替えとシーツ交換などを7分以内に行うという想定で行われた。

転落防止に配慮をしながら、動く方の右半身は自身で服を脱いでもらった。問題の中に「若い頃は華道の先生をされていた」という経歴に注目し、「今度お花を教えて下さいね」と優しい声をかけ、相手に寄り添った。最優秀賞に2人は「泣くしかなかった」と言い、喜びをそれぞれの家族に報告した。

大会前の練習では、14人の同級生がアドバイスを送るなど協力した。2人を含む3年生16人の次の目標は来年1月末の介護福祉士試験。多恵さんは「ケアマネジャーも取得し、安心して任せてもらえる介護士になりたい」、早也香さんは「介護、医療どちらにも強い看護師になりたい」と夢を膨らませる。

■2011.12.27  不正請求ほう助でケアマネ事業所取り消し- 熊本、系列2事業所も
系列事業所による介護報酬の不正請求をほう助していたとして、熊本県はこのほど、「有限会社ライトケア・コーポレーション」(天草市)が運営する居宅介護支援事業所「ライトケア」(同)の指定を介護保険法に基づいて取り消した。

また、介護報酬を不正に請求していたとして、同社が運営する訪問介護「ヘルパーステーションライトケア」(同)と、通所介護「デイサービスセンターアコウの樹」(同)の両事業所の指定も併せて取り消した。

県によると、居宅介護支援事業所のライトケアは、系列の訪問介護と通所介護の両事業所の利用者に対して、実際は提供されないサービスを組み込んだ虚偽の計画などを作成。両事業所が偽りの実績を報告して介護報酬を不正請求することをほう助していた。こうした不正は2008年2月から10年1月までの2年間続けられていたという。

県がこれまでに確認した不正請求額は300万円超。今後は、保険者の3市町が金額を確定させた上で返還を求める。

■2011.12.29  医療功労賞、島根県から2人 過疎化の町で「病診連携」//障害児の生活充実に力
困難な環境での地域医療活動や、障害者医療の向上などに尽力してきた人を表彰する「第40回医療功労賞」(読売新聞社主催、厚生労働省、日本テレビ放送網後援、エーザイ協賛)の都道府県功労者が決まり、島根県内からは医療法人「井上医院」(奥出雲町横田)の井上晃理事長(77)と、社会福祉法人「島根整肢学園東部島根医療福祉センター」(松江市東生馬町)の伊達伸也院長(56)が選ばれた。

◆過疎化の町で「病診連携」
井上医院理事長 井上 晃さん(77)

受賞の知らせに「町立奥出雲病院や診療所の先生たちのおかげ。私は特に何もしていません」と謙遜する。過疎化が進む奥出雲町で、町立病院と7か所の開業医との連携をはかり、地域医療サービスの向上に貢献したことが評価された。

松江市出身。医師だった父が奥出雲町で開業したのに伴い、家族で移住。小中学生時代を同町で過ごした。高校は再び松江、大学から27年間は長崎県で過ごしたが、1979年に父が急逝、医院の後を継ぐため島根に戻ってきた。

当初は知り合いもなく、「やっていけるのか」と、戸惑いも。しかし、町立病院の院長や近くの開業医らに支えられ、1年もたつと不安はなくなったという。

医療設備が充実した病院と地域の診療所が連携して患者を診る「病診連携」の重要性を説く。「夜間救急がしっかりとし、日曜・祝日の当番医制があると、患者も安心するし、医師の負担も軽くなる。奥出雲では、診療所同士で設備を補い合ったりもする」と話す。

3年前に息子の慎一さん(45)に医院を任せ、“老老介護”世帯や独居のお年寄りへの往診に精を出す。「心身とも元気だし、やれるところまでやっていきたい」と抱負を語る。(中村申平)

◆障害児の生活充実に力
島根整肢学園東部島根医療福祉センター院長 伊達 伸也さん(56)

重症心身障害児施設の運営に携わって20年。医師として障害児の健康を守るとともに、生活環境の充実に力を注いできた。受賞の感想を「目の前のやらないといけないことを、やってきただけ」と控えめに語る。

雲南市出身。鳥取大を卒業後、整形外科医としてスポーツ医学を指導していたが、1992年に退職、肢体不自由児施設だった現施設に赴任した。元々県立だった施設の移管を受け、96年から建物を全面改修。医療機能の拡充と障害児が暮らしやすい施設づくりに尽力した。

「施設の医・食・住の向上を常に目指している」という。入所者一人ひとりが安全に食事を楽しめるよう、粒状やペースト状にした食材で、すしやデザートの形と味を再現する。こうした食事の導入も自らの発案だ。

必要な時だけ施設で過ごすショートステイなど、在宅の障害児に対する取り組みも展開。障害児と家族が安心して暮らせる制度作りのために、「行政に働きかけることも自分の役割」と奔走する。

これからの施設の課題は「人づくり」。「障害児の人生をサポートする仕事。熱いハートのある人材を育て、つないでいかないと」。

■2011.12.30  新たに要介護、100人中3・6人…65歳以上
新たに要介護認定される65歳以上の高齢者は、毎年100人中3〜4人いることが、厚生労働省研究班(主任研究者=吉村典子・東京大准教授)の調査で初めて分かった。

握力が弱く、歩みが遅い人ほど認定を受けるリスクが高い傾向も浮き彫りになった。

厚生労働省は毎年、認定を受けた人の総数を集計している。だが、死亡などで認定が終わった人数は分からず、新規の認定者数は正確には把握していなかった。

調査は2005〜10年、和歌山、秋田、群馬の3県で実施。要支援認定も要介護認定も受けていない65歳以上の計2764人に、調査期間中に要介護認定を受けたかどうか聞いた。

その結果、新規認定者は年平均3・6%だった。65〜69歳は0・4%、75〜79歳では3・8%、85歳以上では13・5%と、高齢になるほど増えた。大半の年齢層で女性の方が男性より高く、85歳以上の女性では14・9%に達した。

■2011.12.30  障害者大会 準備進まず 少ない若手選手 福井
協会なし 組織整備も遅れ

毎年、国民体育大会の終了後に同じ開催地で開かれている全国障害者スポーツ大会。二〇一八年の福井国体も開かれることになるが、県内では国体開催の本格的な準備が始まった一方で、全国から約五千人が参加する障害者スポーツの祭典については、ほとんど手つかずなのが現状だ。関係者は「少しでも早く準備を始めないと」と危機感を強めている。

全国障害者スポーツ大会は二〇〇一年の宮城国体後から、例年三日間の会期で開催されてきた。陸上、水泳、車椅子バスケットボールなどの競技があり、今年の山口国体では正式競技として十三競技が実施された。

しかし、県内では障害者スポーツの組織整備が進まず、今年の山口大会には選手も五競技にしか出場していない。障害者対象の水泳教室「ブレイブドルフィンズ福井」代表の鴨田忍さん(39)は「一番の問題点は、競技人口のほとんどが五十歳以上ということ。若い世代が参加しないと、地元開催でも盛り上がらない」と指摘する。

若い世代の障害者になぜ、スポーツが浸透しないのか。鴨田さんは「周囲が消極的」という。特別支援学校の教諭や保護者らが「そんなことできるの?」と疑問視してしまうことが壁になっている。「始めてみれば、障害者でも早く競技に親しみ、成長できると実感するはず」と力説する。

全国障害者スポーツ大会の開催準備をするのは、国体開催都道府県と地元の障害者スポーツ協会だが、県内には協会がない。代役をこなす県障害者スポーツ指導者協議会長の小林靖幸さん(35)は「メンバーは仕事の傍らボランティアで指導しており、全国大会の準備をするには時間的に無理がある。各競技団体同士の連携すらままならない状態で、県としての組織整備が必要」と訴える。

県は、二〇一二年度内に国体準備委員会で全国障害者スポーツ大会検討会を設置し、組織整備を含めて話し合っていく方針。今年から体験教室も始めており、担当する障害福祉課は「福井県の競技人口は全国的にも少ない。早めに動いていかないと」と話している。

■2011.12.31  <国の未来像のヒント探る>幸福度日本一・福井県
震災からの復興や、高齢化による社会保障給付の拡大、経済の停滞と世代間格差…。数々の難題に直面する日本に抜本改革の先送りは許されない。一人一人が幸せを感じられる社会にするにはどうすればいいのか−。法政大大学院の「幸福度調査」で一位になった福井県や、国民総幸福量(GNH)を基に国づくりを進めるブータンに、国の未来像のヒントを探った。

午後零時半を過ぎ、生徒が続々とランチルームにやってきた。カウンターに並ぶご飯やおかずを取ってテーブルへ。カウンターの内側では、エプロン姿の「社員」が、皿などを補充する作業に追われている。

福井県の坂井市立丸岡南中学校。二〇〇六年の開校以来、給食業務は社会福祉法人「コミュニティーネットワーク(C・ネット)ふくい」の丸岡南中事業所が担う。校内の調理室で働くのは、雇用契約を結び、「社員」と呼ばれる知的障害者約十人と、健常者の法人職員二、三人。隣接する事業所施設で別の障害者らが調理して急速冷却した料理を校内で再加熱するなどして提供している。

二十分ほどで配膳が終了。C・ネット本部長の大西澄男さんは「最初は手際が悪く、一時を過ぎても食べられない生徒がいた」と振り返る。開校前は障害者による調理に保護者から不安の声もあったが、支障はなかった。生徒も障害者が働いていることを普通のことと受け止めている。

開校時から働く前田和昭さん(28)は「忙しくて大変な時もあるし、まだ上手じゃないけど、料理は楽しい」と笑顔で語る。中学生が元気に食べる姿を見るのも励み。「これからも頑張って、生徒さんにたくさん食べてもらいたい」

法政大大学院の研究チームが十一月、発表した四十七都道府県対象の初の幸福度調査で、人口八十万人の福井県が一位になった。四十指標の中で、「作業所の平均工賃月額」(〇九年)が一万六千六百二十一円と、最下位の大阪の二倍近くで一位。障害者雇用比率(一〇年)も2・25%で二位だった。

C・ネットは一九五五年、知的障害者の親らが組織。九一年に通所授産施設を開設し、「障害者も働き、可能な限りの自立を」と、県内各地に福祉工場を開いていった。現在は、十三事業所で各事業や就労移行支援、生活支援などに取り組む。埼玉県と大阪府で、障害者施設や福井の産品を販売する店も運営。「社員」は二百七十六人に上り、平均給料は八万円弱。

丸岡南中の給食業務は開校当時、旧丸岡町長だった林田恒正さん(72)が構想した。県職員だったころ、福祉に関わり「障害者ができることはもっとある」と思っていた。福井の幸福度が高い背景について「仏教王国で横のつながりが強く、助け合いがあるので生活保護なども少ないのでは」と推測する。

坂井市の隣、あわら市にあるC・ネットあわら事業所では障害者二十六人が働く。最近、地域の人に喜ばれている仕事が農作業。高齢化が進む中、果樹園の収穫や草取りなどの貴重な担い手になりつつある。理事の坂崎公則さんは「農家の方に叱られても楽しいようです。人と触れ合うのが大切」と話す。

ただ、施設外就労が増えるほど、一緒に働く法人職員が必要。より多くの障害者を雇用するのが基本方針なので、重度の人も一緒に働けるような工夫は欠かせない。新たな仕事を探す苦労もある。

「幸福度日本一」の福井県にも懸念材料はある。「一人当たりの地方債残高」が高く、下から数えて八番目。「地域の借金」が多いのは気になるところだ。人口が少ない県は高い傾向があるため、県財務企画課課長補佐の吉川幸文さんは「財政がいいとはいえないが、全国の真ん中ぐらいでは」と話す。

ただその財政は、原発の存在に支えられている面もある。県税収約一千億円のうち、一割が原発関連。電源立地地域対策交付金約百三十億円も小規模県にとっては大きい。

失業率が低く、有効求人倍率は全国一位(一一年八月)。「メガネや繊維、電子部品などのしっかりした製造業があるから」(吉川さん)といえる半面、原発が集中する県南部では、今後のエネルギー政策によって“幸せの基盤”の一角が崩れる心配もある。

 

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