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残しておきたい福祉ニュース

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 2020. 2. 4 政府がコロナウイルス「検査キット」を急ぐワケ
 2020. 2. 8 新型コロナウイルス感染を疑う症状 最初は風邪に似た症状、違いは…
 2020. 2.10 クルーズ船停留が及ぼす健康被害と「人権侵害」  日本が無意味な「水際対策」を推し進めるワケ
 2020. 2.11 クルーズ船集団感染に見る新型肺炎追加リスク  日本国内でも都市型感染拡大の懸念は残る
 2020. 2.14 新型肺炎、水面下で感染拡大の日本で起きること  80代女性死亡、医療関係者への対応も急務だ
 2020. 2.15 新型コロナウイルス症状、発熱と疲労感 せき、筋肉痛、下痢、頭痛伴う場合も
 2020. 2.17 新型肺炎 高齢者施設警戒を強化 面会制限、マスク・消毒徹底
 2020. 2.18 新型コロナウイルス感染判明で休校要請も
 2020. 2.19 新型コロナウイルス、介護福祉施設に休業要請も 感染拡大防止で厚生労働省
 2020. 2.20 有料老人ホーム 新設支援  介護離職ゼロへ受け皿 厚生労働省
 2020. 2.23 障害福祉、不正受給26億円 5年で急増、処分630件
 2020. 2.24 介護施設、相次ぐ「面会禁止」 都内の職員感染受け危機感
 2020. 2.26 介護施設の面会制限、国が要望 リスク高い高齢者を守る
 2020. 2.26 保育園がカフェを運営 子連れでも気兼ねなくくつろげる空間に
 2020. 2.27 首相、全小中高の臨時休校要請へ 3月2日から、学校で混乱も 保育所には一斉休園要請せず
 2020. 2.27 大阪市と堺市が一斉休校 全小中など29日から2週間
 2020. 2.27 遠野病院 医師2人辞意 看護師の労働改善求め
 2020. 2.27 コロナ感染拡大防止の備えが不十分と言える訳  今は下火だがインフルの脅威も看過できない
 2020. 2.27 コロナショックの先に待つ4つの最悪シナリオ
 2020. 2.28 休校で看護師出勤できず外来休診
 2020. 2.28 新潟市、市立学校と幼稚園を休業 3月2日から 子育て施設や児童館も
 2020. 2.29 市立小中学校の臨時休校で「子どもの昼食」支援 相模原のNPOが弁当配達


■2020.2.4  政府がコロナウイルス「検査キット」を急ぐワケ
新型コロナウイルス感染症の国内拡大を、国もようやく認め始めたようだ。安倍晋三首相が2月3日の衆院予算委員会で、国立感染症研究所や地方の衛生研究所でしか行われていない検査について、「民間の検査機関でもできる体制の構築に取り組んでいる。簡易検査キットの開発にもすでに着手した」と発言したという。

ただ、冷静に見れば、簡易検査キットが開発されても現状では特効薬がない。陽性と判明しても、特別な治療ができないなら意味がないのでは?と思われるかもしれない。

受診しても感染しているか調べられない
結論から言えば、新型コロナウイルスの簡易検査キットについては、開発と普及を大いに期待したい。

厚生労働省は2月1日、都道府県宛に「帰国者・接触者外来」を開設するよう指示した。担当させられる医師の心中は「確定診断の方法もないのに、なにを診察しろと? 国内で感染者が増えているのに、帰国者と接触者だけ診察して、何の意味があるのだ?」であろう。

私自身、内科医として日々診察にあたっているが、今は風邪やインフルエンザのトップシーズンでもある。発熱や咳などで受診された患者さんが、検査でインフルエンザ陽性とわかれば、今の状況ではある意味安心だ。インフルエンザには特効薬がある。

一方、インフルエンザ陰性だった場合、その患者さんが新型コロナウイルスに感染していたとしても、市中の医療現場では知るすべもない。初期症状が、風邪やインフルエンザと見分けがつかないことは、すでによく知られている。

もちろん、本人またはその近しい人に、過去2週間以内に中国・湖北省の滞在歴があれば、保健所に連絡して検査をしてもらうことになる。しかし、そのような条件を備えた患者さんには、私自身もいまだ1人も出会っていない。

そうして厚労省の課す“武漢しばり”から漏れた、実際ほとんどの患者さんたちは、とりあえず風邪と診断されて帰宅していく。万が一、彼らが感染者であれば、感染を広げ続けることになる。無症状感染者が確認された以上、もはや国内のどこで感染するかはわからない。そのうえ検査不能であれば、感染が確認できないままの潜在患者は増え続ける一方だ。

冒頭の「特効薬がないのだから、調べても意味がないのでは?」との疑問は、もっともだ。しかし、60歳以上の高齢者や、糖尿病など基礎疾患を有する人では、重症化するリスクは高くなる。少しでも不安があれば検査でき、当面は対症療法であれ治療できるようにしておくことには意味があるだろう。

症状の軽い人も、武漢しばりなく検査して陽性とわかれば、いち早く治療開始するのはもちろん、他者への感染予防も徹底できる。新型コロナウイルスの早期制圧のためには、できうる限りの手を尽くすしかない。

抗HIV薬で進む臨床試験、エボラ出血熱治験薬も
もう1つ、簡易検査キットの開発を急ぐべき理由がある。治療薬の開発が思いのほか早まるのでは、との期待が高まっているのだ。特効薬ができたとしても簡易検査が同時に普及していなければ、投与の判断がつかず、実用性は大きく損なわれる(耐性ウイルスの出現を阻止するためにも、むやみな予防投与は控えるべきだ)。

世界各国で今、主に既存薬から、新型コロナウイルス感染症の治療薬として有用なものを見つける作業が急ピッチで進められている。

1月24日の医学誌「Lancet」では、抗HIV薬である「ロピナビル・リトナビル」を使った臨床試験が中国内で行われていることが明らかにされた。中国当局も間もなくそれを認めている。

また、「Bloomberg」は、エボラ出血熱向けの治験薬「レムデシビル」の利用を研究中で、アメリカや中国の研究者および臨床医と協力していると報じている。

とくにHIV治療薬については、2月2日にもタイ保健省が、抗インフルエンザ薬「オセルタミビル」、いわゆる「タミフル」を併用して投与したところ、病状が回復しウイルス陰性となったと発表。タミフルはMERS(中東呼吸器症候群)でも効果があったと報告されていることから、併用に至ったという。

新型コロナウイルスについては、中国が国の威信をかけて分離と配列の決定に迅速に取り組み、1月初めにはゲノム配列の概要も発表されている。さらに日本も、国立感染症研究所が1月末に、ほぼ全長のウイルスゲノムの配列を確定。しかもその配列は、最初に中国が発表したウイルスの遺伝子配列と99.9%同じだったという。

これは朗報だ。ウイルスは一般に、バクテリア等よりもゲノムの変異が頻繁に起きる。しかし、感染や増殖に関わる部位が維持されていれば、治療薬や検査法、ワクチンの開発につながる。今回の新型コロナウイルス感染者の激増にどこまで追いつけるかは、わからない。それでも、もしコロナウイルス全般に有効な薬剤が開発できれば、今後いつまた発生するかもしれない未知のコロナウイルスの脅威から人類は大きく救われるだろう。

致死率は下がり、感染力は上がっていく
ところで幸い、新型コロナウイルス感染症の致死率は、今までのところ世界全体で2%超程度だ。しかも、武漢では5.5%との公式発表もあり、武漢以外で見れば0%に近い。2002〜2003年に流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)の致死率は約10%、2012年に発生したMERSは約34%だった。

ウイルス感染症の“常識”から言えば、この数字は、今後も下がることはあっても、急激に上がることはないだろう。

新型コロナウイルスの感染者全体を海に浮かぶ氷山に例えれば、見えている部分が症状の出ている人々で、その先端部分は重症や亡くなられた方、と解釈できる。しかし、水面下に隠れた部分がどれくらいの大きさなのか、つまり無症状感染者がどれくらいいるのかは、まったくわかっていない状況だ。水面下に隠れた部分が大きいほど分母が大きくなるので、死亡率は下がっていく。

ここで重要なのが、ウイルスの特性だ。変異の過程で毒性が強くなることはありうるが、通常、ウイルスは人の体に適応(馴化)し、症状が穏やかになっていくとされている。

ウイルスは体内でできるだけ増殖したいので、宿主をすぐ殺してしまわず、仲良くやっていこうとするのだ。症状が軽くなるほど、感染者は平気で出歩いて他者と交流するので、多くの人に感染が広がる。こうして致死率は下がり、感染力が上がっていくのである。

今回もおそらくそうなるだろう。無症状の人も検出できるようになれば、感染力の数値はさらに上がる。

ただし、いずれにしても現在、中国はそうした調査どころではない。絶え間なく押し寄せる、症状ある患者の対応で手いっぱいだ。ある程度終息が見えてきた後にようやく、千〜万人単位の血液検査を行い、抗体の付き具合を調べることで、どの程度感染が広がっていたかが明らかになるだろう。

大切なことは、感染力の上昇を目の当たりにするようなことがあっても、パニックを起こさず、ひたすら地道に予防に努めることだ。あちこちで繰り返し言い続けているが、コロナウイルスの場合、基本は飛沫・接触感染である。十分な睡眠と食事で体力を維持し、手洗いを励行していただきたい。

■2020.2.8  新型コロナウイルス感染を疑う症状 最初は風邪に似た症状、違いは…
新型コロナウイルスの感染者が増える中、患者の治療に当たった国立国際医療研究センターの大曲貴夫国際感染症センター長が2月7日、講演し「だるさや熱が非常に長く続く傾向があった」と話した。

大曲氏が対応したのは中国湖北省武漢市に滞在歴がある中国人1人と日本人2人。患者の状態の推移について、最初は微熱、だるさなどの風邪に似た症状があり、その後高熱や呼吸器症状が出てくる。さらに1週間前後経過すると改善した。

熱はインフルエンザや風邪では一般的に3日程度で下がるが、1週間ほど続くなら新型コロナウイルスへの感染を疑う条件になり得ると説明した。

これまでに海外の医学誌には症例や統計分析結果が多数報告されている。現状について「一部の重症、氷山の頂のところを見ていて、中国でも症状が軽い人は多いのでは」と指摘。軽症の人の数を分析に加えると、死亡率や重症度はより低く、感染力はより高い結果が出ると予想した。

講演は、日本感染症学会などが東京都内で開いた新型コロナウイルスに関する緊急セミナーの一部。学会の舘田一博理事長は「(病気の広がりの)全体像をみていくのが大切だ」と述べた。

■2020.2.10  クルーズ船停留が及ぼす健康被害と「人権侵害」  日本が無意味な「水際対策」を推し進めるワケ
乗客乗員3700人超が海の上で、今もいわば“軟禁”状態にあるダイヤモンド・プリンセス号。香港で下船した乗客が新型コロナウイルスに感染していたことがわかり、延べ336人の乗客が検査を受けた結果、70人が陽性と判明した。

感染率20%、とまで早合点する人はいないだろう。もしこれ以外に感染者がいなければだが、乗客乗員約3700人中の70人なら単純計算で感染率1.8%だ。そもそも感染者と濃厚接触があった、もしくは発熱や咳などの症状のあった、感染可能性の高い人だけを検査している。政府チャーター機による武漢帰国者の感染率とも大差なく、大騒ぎする数字ではない。

問題は、感染の広がりよりも、2週間の軟禁生活そのものが重大な健康被害をもたらしかねないことだ。本題に入る前に、この洋上停留が新型コロナウイルス以上にハイリスクで、世界的にむしろ非難を受けかねない、という話をしたい。

海上軟禁は健康リスクと人権侵害でしかない
メディアによる乗船客への電話取材合戦で、多くの乗客が狭い客室に閉じ込められ、不自由な生活で、ストレスや不安を抱えている実態が伝えられている。常用薬の不足も深刻だ。

実は私も、乗客の娘さんから相談を受けた。高血圧や腎不全の持病を抱えた83歳と80歳の両親が船上にいる。「薬が届くと言われていたけれど、届かなかった。具合が悪いので事務室に連絡をしようとしても、電話がつながらない。具合が悪かったら貼ってくれと言われているエマージェンシーのシールをドアに貼ったが、音沙汰がなく、大変困っている」という。

感染者の中には重症者も1人いると報道されているが、年齢や基礎疾患については不明だ。連日のストレスや不安に満ちた軟禁状態が、病状を急速に悪化させた可能性は否めない。むしろ新型コロナウイルスへの感染はなくても、狭い部屋の中でほぼ1日過ごす生活自体が、大きな健康リスクだ。

栄養の偏りと運動不足、ストレスが、体と心を蝕む。実際、鳥取県中部、新潟県中越沖、能登半島地震、東日本大震災、熊本地震などでは、避難生活により、静脈血栓塞栓症の頻発が報告されている。鬱や睡眠障害を発症する人も多い。

“水際”対策、つまり船の入港をストップして感染症の流入を防ぐ手法は、古典的だ。『MRIC』に掲載された海事代理士の関家一樹氏のメルマガによると、船舶検疫は15世紀にペスト対策としてヴェネチアが船舶乗員を離島などに隔離したことに始まる。その長い歴史の中でも、今回の「隔離と船舶検疫は、現状の国際標準から考えてかなり異常な行為」だという。

検疫に対する国際的な解釈は、「21世紀以降においては国際間移動人口の飛躍的な増加を受けて、むしろ検疫を受ける旅行者の人権保護に重点を置くようにシフトしている」と関家氏。

実際、新型コロナウイルス感染者が2人発生した地中海のクルーズ船(コスタ・スメラルダ号)では、イタリアで乗客・乗員6000人超が一時足止めされたものの、乗客は12時間余りで解放されたという。関家氏は、今回の停留は、過剰な検疫に対する警告を定めた国際保険規則32条に「違反している」と断じている。

水際対策という大義名分を振りかざした健康・人権侵害は、政府チャーター機での武漢帰国者にも言える。彼らは陸上でこそあれ、ホテルの狭い部屋に軟禁状態にあることは変わらない。

無意味な「水際対策」をなぜ続けるのか
もっと言えば、空港での水際対策自体、おそらく当初からほとんど意味はなかった。ヒト―ヒト感染が昨年12月中旬から起きていたならば、1カ月以上を経て武漢や湖北省からの入国を止めても仕方がない。とくに、無症状感染や最長12.5日の潜伏期間があるなら、空港での検疫方法はザルそのものだ。自己申告には期待できないし、熱がなければサーモグラフィーは感知しない。症状があっても解熱剤や風邪薬を飲めばいいだけだ。

もはや「頑張って食い止めようとしています」というポーズ、お役所のアリバイ作りでしかない。

【2020年2月10日18時45分追記】初出時、医系技官にかかわる他媒体記事からの引用に不正確な記述がありましたので上記のように修正しました。

国内感染はおそらく、確認されているよりずっと広がっている。湖北省しばり(武漢しばり)のために検査が受けられず、新型コロナウイルス感染者の実際の数を把握できていないだけだ。空港にしても、船での入国にしても、水際対策は潔く諦め、国内感染を前提とした検査・診療態勢の整備へと、速やかにシフトしていく段階にある。

まずはインフルエンザのように、市中の医療機関でも新型コロナウイルスの検査を可能にすべきだ。2月3日に安倍晋三首相が衆議院予算委員会で明言した、簡易検査キットの開発・普及は、基本的には歓迎できる。だが、海外で精度の十分な簡易検査が早々に実用化されたならば、患者目線で考えれば国産にこだわる理由はない。治療薬やワクチンも同じだ。

現在、中国で臨床試験の進んでいる抗HIV薬(カレトラ)やエボラウイルス感染症の治験薬(レムデシビル)で効果が確認された場合、その適応外使用を国としてバックアップし、あるいは特例承認を検討すべきだ。

ただ、本気で感染拡大を最小限にとどめたいなら、軽症の感染者に自宅にとどまっていただくのが1番だ。重症患者は自宅でなく病院での酸素吸入や集中治療が必要だが、自由に出歩けない分、感染は広げにくい。また、無症状感染者の感染力は、ゼロではないとしても非常に小さいとの見方が強まっている。何とか出歩けてしまう軽症感染者こそ、感染を広げやすい。

問題は医療機関の受診だ。対面診療が原則の現状では、受診のための外出が感染を広げる皮肉な状況がある。解決手段として、オンライン診療(インターネットのビデオ通話を利用したリアルタイムの遠隔診療)をもっと活用できるはずだ。これは実施している者としての実感である。

ナビタスクリニックでは、新宿と立川でオンライン診療を行っている。現在までのところ、緊急避妊薬(アフターピル)を求めての受診がほとんどだが、問診を基本とする診療内容であれば問題なく行える。例えば血圧などの簡単な検査を自宅で患者自身が実施し、その結果をもとにオンラインで指導や薬の処方を行う、といった具合だ。

新型肺炎に限らず、冬など感染症の流行時期の通院は、別の病気をもらうリスクが高い。対面診療の必要性に乏しければ、オンライン診療のメリットは大きい。

新型コロナウイルス感染症でも、そのうち簡易検査キットが開発されるだろう。鼻腔内の粘膜を採取して調べるものであれば、市販化して、自宅で行えるようにすればよい。陽性の結果と体温などをオンライン受診で伝えてもらい、体調などを問診すれば、確定診断が出せる。

体調のすぐれない中わざわざ医療機関に出向き、周囲に感染を広げることもない。医療機関としても、ネット環境があって、カメラ付きのパソコンモニターがあれば、オンライン診療自体はすぐに始められる。

摩訶不思議な「オンライン診療を受診できる条件」
残念ながらこうした革新的イノベーションは、日本の医療においてはなかなか進まない。新しい手法を認めることで、既得権が損なわれると考える人たちがここにもいるためだ。

黎明期にあるオンライン診療だが、すでに暗雲がたれこめている。厚労省が現在進めている「オンライン診療の適切な実施に関する指針」の改定作業は、「普及を推進するため」とうたいながら、患者目線で見ると利用の制限を強める改悪になる見込みだ。

例えば緊急避妊薬の処方では、初診からオンライン診療を受診できる条件として「仕事や家庭の事情」を認めず、担当できる医師を「産婦人科医又は厚生労働省が指定する研修を受講した医師」に限定。処方薬は「薬剤師の面前で内服」したうえで、3週間後には産婦人科に出向いて対面診療を受けなければならない、としている。

緊急避妊薬は、諸外国ですでに市販もされている。オンライン診療は、市販化が実現していないわが国における救済策でもある。希望する人の事情は、仕事で多忙であったり、プライバシーを気にしたりとさまざまだ。オンライン診療を実質的に制限する指針が、本当に患者に利するためのものとは思えない(なお、行政による「指針」「ガイドライン」は、民主的な手続きを踏んで定められたものでない以上、法的拘束力はない)。

ちなみに、ナビタスクリニックでのオンライン診療が今のところ特定の診療内容に集中しているのには、まったく別の理由もある。実は、主要ターミナル駅のエキナカという好立地のせいだ。先日も、慢性疾患で定期的に通院されている患者さんに、オンライン診療を勧めてみたが、当院は通勤途中に立ち寄れるから対面診療で問題ないと言う。そういう患者さんが何人もいた。

一般に医療機関の診療時間は、平日の日中だ。会社に毎日通勤しているビジネスパーソンにとって、待ち時間まで含めるとその時間帯の受診は現実的でない。そこで通勤や通学の途中に立ち寄れる“コンビニクリニック”として、ナビタスクリニックは誕生した。各院ともターミナル駅のエキナカに立地し、平日夜9時まで診療を行う。患者さんの利便性を追求した結果、都市部に通勤・通学する“医療難民”の人々をすくい上げることに成功している。

在宅勤務とオンライン診療を普及させるべき
ところが、感染症の拡大阻止を目的とするなら話は大きく違ってくる。人々が密室でひしめきあう都心の朝夕の通勤・通学列車は、効率的に感染者を作り、運んで拡散させる。本気で感染拡大を阻止するなら、勤務形態を在宅でのテレワークに一斉に切り替え、学校は自宅学習とするしかない。

実際、中国の金融センターである香港と上海では、新型コロナウイルスの感染拡大により、「在宅勤務は『してもよいもの』から『しなければならないもの』に変貌」した。「大規規模な在宅勤務の実験をする良い機会」だと『Bloomberg』は伝えている。

東京都が約2400社を対象に実施した調査では、東京パラ五輪期間中にテレワークを検討している企業が44%に上ったと報じられた(1月27日、時事ドットコムニュース)。今回の新型肺炎で、その“予行演習”に踏み切った企業もある。

だが、感染症対策に在宅ワークを導入しても、軽症患者が医療機関に押しかけ、ほかの病気で受診している人に感染させ、自宅に持ち帰ってしまう状況では意味がない。在宅ワークとオンライン診療の両者が足並みそろえて広く普及してこそ、感染症拡大の阻止という目的も果たされる。

わが国は、今回のピンチをうまくチャンスに変えられるだろうか。何をやめて何をすべきかの判断は、国民や患者の目線になれば難しいことではない。

■2020.2.11  クルーズ船集団感染に見る新型肺炎追加リスク  日本国内でも都市型感染拡大の懸念は残る
横浜港に停泊中のクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」。乗客と乗員およそ3700人のうち、2月10日までに135人が新型コロナウイルスに感染していることが確認されている。

このクルーズ船こそが、新型コロナウイルスのアウトブレイクの典型であり、都市型感染の縮図といえる。

私は、2003年に同じコロナウイルスによるSARS(重症急性呼吸器症候群)が猛威を振るった当時、中国、香港、台湾をまわって、感染ルートをたどった取材経験を持つ。そして、中国・広州市の野生動物の市場で発生したとされるSARSが、中国国外に感染が拡大していった決定的な原因はホテルであったことは、以前にも書いた(『新型肺炎、SARS流行時に学ぶ次の危険シナリオ』)。

ホテルでの集団感染が世界的に拡大
広州市で新しい肺炎(SARS)の治療にあたっていた医師が、香港の九龍にある「メトロポールホテル(京華国際酒店)」に宿泊したことから、同じフロアの同宿者に感染して、香港、カナダ、ベトナム、シンガポールへと拡散していった。

皮肉にも医師の泊まった部屋番号は北米の緊急通報電話番号と同じ「911」だった。この部屋のたった1人の感染者からはじまっている。

豪華客船とも呼ばれるクルーズ船はいわば「海に浮かぶホテル」である。

今回のダイヤモンド・プリンセスは、1月20日に横浜を出発、25日に香港に寄港、ベトナムや台湾を経て2月3日に横浜に到着した。途中の香港で下船した香港在住の1人の80歳男性が新型肺炎を発症したことから、船内での感染が疑われ、結果として130人以上から新型コロナウイルスが確認されている。

そうなるとホテルは、感染拡大の恐れが最もある場所といえる。東京や大阪などの都市部でアウトブレイクが起こった場合、ホテルからはじまると考えたほうがよい。

また、新型コロナウイルスの基本再生産数(感染率)は、暫定的に罹患者(りかんしゃ)1人に対して1.4〜2.5人と見積もられていた。中国疾病対策予防センター(CDC)の最新の報告でも、2.2人とされる。

しかし、ダイヤモンド・プリンセスの場合、1人の老人から感染が広まったのだとすると、その数をはるかに上回る。2次感染、3次感染が起きていたとするならば、感染者の潜伏期間にも差異が生じていることになる。

いまのところ2月19日までの待機期間を過ぎてから一斉に下船を認める見通しだが、その前に乗客乗員の全員の検査ができないか、厚生労働省がようやく検討に入った。やはり感染の規模が大きすぎる。

そして、さらに驚かされること。

いま、日本国内ではマスクの品不足が続いている。東京の新宿区内の商店街にあるドラッグストアでは、朝10時の開店前から数人がシャッターの前に並んでいて、開店と同時にマスクを買いあさっていく。多くが中国人だ。

彼ら彼女らは口々に、「自分のためだけじゃない。家族や友人のために買う」という。そう言われると、店員も文句は言えない。

その中国人たちは、ドラッグストアの隣にある、おそらくは東京オリンピックを見越して最近開業したばかりのコンパクトなホテルに帰っていく。

新型肺炎の影響で、中国人旅行客のキャンセルが相次いで、旅行業界からは悲鳴が上がっている。だが、いまでも着実に訪日する中国人はいる。

春節が終わっても、武漢以外も厳戒態勢
中国本土では、2月10日までに感染者が4万人を超えた。それも発生源とされる湖北省武漢市ばかりにとどまるのではない。

その隣の湖南省に住む旧知の中国人と電話で話したところでは、湖南省だけでも約400人以上が感染して入院しているという。中央政府から外出も控えるように指示されている。

黄海に突き出た山東省でも感染者は確認され、企業活動が再開した北京でも人通りは少なく、2月初頭からは外食が禁止された。

いってみれば、中国全土が”感染地域”となっている。その感染地域の住民が日本にやって来て、商店街に宿泊して、マスクを買いためて、また感染地域へ帰っていく。

いまだに日本人が気づかないだけで、すでに日本人の間に感染者がいてもおかしくはない状況だ。

その日本人が高熱を出したとしよう。最初は一般外来の医療機関を受診するはずだ。そうすると、医療機関から感染が拡大していくことが懸念される。その医療機関でも、「マスクが足りない」と悲鳴が上がっている。SARSでも医療関係者の感染は約2割と、最も多かった。

そうした状況を鑑みながら、クルーズ船から学ぶのであれば、公共交通機関による長時間の移動にも着目する必要がある。

例えば、日本の大動脈ともいえる新幹線。感染者が1人いるだけでも、コロナウイルスがまき散らされる。日本人で最初に感染が確認された男性は、バスの運転手で新型コロナウイルスが発生した中国湖南省武漢のツアー客を乗せていた。

手すりや座席などに付着したウイルスに触れて体内に取り込んだ接触感染と見られる。新幹線であればさらに人の乗り降りは多く、また長時間を車内で過ごすことになる。弁当を食べようものなら、より感染のリスクは高くなる。

SARSの取材当時、中国国内を移動するのにやはり高速鉄道を利用した。車内では車掌がまわって切符の確認の代わりに乗客の体温を調べていた。感染リスクの高い場所であることは間違いない。

同様に航空機においても感染リスクは高まるはずだ。やはりSARSの取材当時には、航空機を使うこともあったが、消毒、除菌を徹底した機内では、むしろ消毒液、もしくはアルコールの臭いが漂って、かえって目にしみたり、息苦しさを覚えた記憶がある。

振り返ってみると、SARSの現地取材から滞在先のホテルに戻ると、まず、ホテルの入り口でアルコールによる手洗いを求められ、体温をチェックされた。熱がなければ、小さなシールを胸元に貼られる。それから自室に戻ったときには、屋外に持ち出したカメラやバッグを殺菌効果のあるウェットティッシュで拭っていた。

体内から吐き出され、付着したコロナウイルスは、長くて48時間は死滅しないとされる。帰宅後の手洗いだけではなく、持ち物の消毒も必要になる。

とくに満員電車内でも、多くの人が取り出して操作するスマートフォンは、対応が必要なはずだ。スマホをトイレに持ち込むだけでも、大腸菌が付着することは知られている。

そこへいくと、感染したコロナウイルスは排泄物といっしょに体外に放出される。つまり、大腸菌と同様に手やスマホに付着する。

トイレでの感染拡大にも注意が必要
SARSの取材で訪れた香港では、中国語と英語でトイレを流すときにはふたをした状態でするように指示するポスターが貼り出されていた。

排泄後の手洗いは無論のこと、飛び散りを防ぐためにはふたをしてからのトイレ洗浄は重要になってくる。

SARSの教訓がそのまま噴出したようなダイヤモンド・プリンセスの感染事例。同様のアウトブレイクが、陸地でいつ起きてもおかしくはない。

マスク、手洗いが最大の予防策であることは言うまでもないが、それだけでは万全といえないところにまで、事態は進展している。過去の事例に学ぶのであれば、感染の危険はどこにあるのか、もっと個人ができることはあるはずだ。

■2020.2.14  新型肺炎、水面下で感染拡大の日本で起きること  80代女性死亡、医療関係者への対応も急務だ
新型コロナウイルスによる国内ではじめての死者が出た。

神奈川県内に住む80代の女性で、2月13日に死亡したあと、ウイルス検査で陽性が確認された。この女性の義理の息子で東京都内の70代のタクシー運転手の男性にも、同時期に感染が確認されている。

さらに同日、和歌山県の50代の男性外科医と、千葉県の20代の男性にも感染が確認された。いずれも中国などの流行地域への滞在歴はない。

また、和歌山の男性医師の勤務する病院では、同僚の外科医や男性患者4人が肺炎を発症していて、うち1人は陰性だったが、この病院に入院歴のある70代の男性が翌14日になって感染していたことが判明している。

私は、2003年に猛威を振るった当時のSARS(重症急性呼吸器症候群)の現地取材と、現在の日本国内の状況から、すでに日本人の間に感染者がいてもおかしくはないと指摘していた(『クルーズ船集団感染に見る新型肺炎追加リスク』)。それが同時多発的に現実のものとなったいま、これはもはや、日本でアウトブレイク(突発的感染拡大)がはじまった、といえる。

SARSの場合、発生源の中国が終息傾向に向かうのと前後して、次に感染者が多かった香港、台湾と順次、アウトブレイクがはじまり、その流行地域が移行していった。

都市型感染拡大のカウントダウン
新型コロナウイルスで、いま中国の次に感染者が多いのは、横浜港に停泊中のクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の218人を含め252人の日本だ。ただ、日本政府は日本上陸前だとしてクルーズ船の感染者は「その他」に区分して日本国内の感染者は34人としている(2月13日時点)。

そのダイヤモンド・プリセンスに乗り込んだ50代の検疫官の男性が、同ウイルスに感染していることがわかったのは、11日のことだった。厚生労働省の幹部によると「検疫官が感染するなんて聞いたことがない」と語ったという報道もある。

しかし、こうした感染の報告は、日本政府が新型コロナウイルスに対して、”どれほど甘く身構えていたか”を表している証左だ。

日本政府は、その発生源とされる中国湖北省に加えて、13日から、浙江省に過去14日以内に滞在歴がある外国人や、同省で発行した中国旅券を所持する外国人の入国を拒否する措置をとった。同省の主要都市である温州市で移動制限措置が講じられるほどに感染が拡大していることが理由だった。

もはやこの措置も遅きに失している。というより”無意味”だった。

詐欺などで指名手配されていた中国人が、「マスクを買おうと日本に戻ってきた」ところを関西空港で逮捕されたという事件が12日に起きている。

私が知る範囲でも、東京都内のビジネスホテルには中国人旅行者がいまでも宿泊して、商店街のドラッグストアでマスクをまとめ買いしていく。それで国内のマスクが品薄になる。

中国国家衛生健康委員会が14日に発表した中国全土の感染者数は6万3851人、死者は1380人とされており、感染拡大の一途をたどっている。いわば”感染大国”である。そこからいまでも訪日客がやって来て、公共交通機関を利用し、ひょっとすると感染が確認されたタクシー運転手に感染させている可能性も否定できない。

医療スタッフが感染者に追いつかないと起きること
今回のコロナウイルスは、致死率が低い、重症化することが少ない、と伝えられている。その点は本当だろうか。

連日のように感染者が増えていくダイヤモンド・プリンセスからは、指定医療機関に感染者が運ばれていく。それも関東だけでは足りず、長野県の医療機関にも収容されることになった。

国内での発症患者は感染の有無を問わず、最初に一般の医療機関を受診する。そこで医療関係者が新型コロナウイルスに接する。おそらくは、和歌山県の外科医のケースがこれにあたるだろう。そこへ他の疾患で訪れた患者も接することになる。さらなるアウトブレイクを呼び込んでいく。

専門の医療機関となっても、施設が足りないところへ、さらに医療スタッフの不足が重なれば、患者への十分な対応ができなくなる。

SARSの場合は、病院に収容しきれずに、出入り口脇の外に置かれたストレッチャーに患者が放置されていた。そこへマスクをしただけの家族が、点滴を持ちながら心配そうに佇む。

適切な処置が遅れれば、それだけ容体が悪化する。すなわち重症化して、ひどい場合には死に至る可能性もある。

湖北省武漢市で起きていることは、施設もスタッフも感染者に追いついていかない、この医療パニックのはずだ。重症化も死者の数も多い。

そもそもSARSでも、感染者の21%は医療関係者が占めてもっとも多かった。考えてみれば当たり前のことで、いくら厳重な防護服を身につけているとはいえ、患者を救うために自らウイルスに接触していかなければならない立場にある。細心の注意が必要になる。そこを怠れば、クルーズ船に乗り込んだ検疫官のように感染してしまう。

ところが、この防護服も負担になる。一度着て全身を包んでしまえば、処置が終わるまでトイレにも行けない。喉が渇いても、おいそれと水を飲むわけにもいかない。

いまの季節はそれほどではないにしても、これから気温が上がってくれば、暑さとも戦わなければならない。SARSで私が取材した北京の医療機関では、閉鎖された病室の中で看護師が暑さと疲労で倒れることも少なくなかった。ひどいときには脱水症状に陥る。

日本でも中国のような人員動員はできるのか
「あ、彼女が昨日、倒れた子よ」

北京のある医療施設の裏口では、交替で医療活動を終えたスタッフが一斉に出てくる。圧倒的に若い女性が多い。彼女たちは防護服を脱ぎ捨てたとはいえ、同じ色柄模様のユニフォームを着て、待機しているバスに乗り込み、同じ宿泊施設に移動する。感染者が出ても封じ込められるようにしている。

そのバスの前で1人の看護師に内部の過酷な実情を聞いていたら、そこに通りかかった他の1人を指差して教えてくれた。ペットボトルの水を手にしたその顔には、ちょっと恥ずかしいという面持ちに、疲労の色が見てとれる。

それでもあの当時、こうした大量の人員動員ができたのも、あるいは今回の新型肺炎の蔓延で人口1100万人とされる武漢市を封鎖できたり、昼夜を問わずの突貫工事でわずか10日で新しい病院を同市に建設できたりするのも、中国だからだ。これが日本で、たとえば人口1300万人の東京を封鎖する、なんてことができるだろうか。人権を尊重すれば、人の移動を制限することもできない。

これまで、私はSARS蔓延当時の取材経験から、日本に新型コロナウイルスが上陸したあとの最悪のシナリオを指摘してきた。残念ながら、日本政府の水際対策は失敗したとしか言いようがない。SARSの教訓もまったく活かされていなかった。

そして、このあとに続くであろう出来事。予測が的外れで終われば幸いだが、いま一度、コロナウイルスとはどのようなものであるのか、個人が正しく認識して、できることの最善を尽くすことが必要になる。

■2020.2.15  新型コロナウイルス症状、発熱と疲労感 せき、筋肉痛、下痢、頭痛伴う場合も
新型コロナウイルス肺炎はどんな症状が出るのだろうか。日本環境感染学会がまとめた資料によると、長く続く発熱や強い疲労感が目立つという。診療を経験した医師の一人は「インフルエンザでは3日程度で下がる熱が1週間ほど続いた」と話す。ほかに多いのが、せき、筋肉痛、呼吸困難。頭痛やたん、下痢を伴う場合もある。

糖尿病や高血圧といった持病のある人や、免疫を抑える薬を使っている人、妊婦は重症化のリスクがあるとされる。国内では死亡例も出たが、全体としては軽症が多い。

子どもの患者は新型肺炎の流行中心地の中国・武漢市でも報告が少ないが、感染症の専門家は「普段の風邪と明らかに様子が違ったら注意して」と話す。

新型肺炎が心配な人のために、厚生労働省や全国の都道府県は一般向けの電話相談窓口を設けている。厚労省の番号はフリーダイヤル(0120)565653(午前9時〜午後9時)。

■2020.2.17  新型肺炎 高齢者施設警戒を強化 面会制限、マスク・消毒徹底
新型コロナウイルスの感染拡大の動きに、重症化する可能性が高い高齢者が集まる老人ホームなどで警戒が強まっている。

東京都大田区の特別養護老人ホーム(特養)「千里」では、入所者が家族など来訪者からの感染を防ごうと、来客記帳簿に中国湖北省武漢市からの帰国者との濃厚接触についての申告を求める質問項目と、インフルエンザなどの感染症の症状がある人には入所者との面会を控えるよう呼び掛ける一文を加えた。

施設には五十代から百歳代の七十一人が入所する。施設長の須藤常好さん(67)は「潜伏期間を考えるとどれほど意味があるかはわからないが、高齢者の健康のための措置は当然のこと。限られた情報の中で手探りの状態だが、家族の協力も得られている」と話す。

名古屋市中川区の特養「あんのん」では以前からインフルエンザの流行期には、感染を警戒して高齢者と接する介護職員らはマスクを着用。各自で消毒液の専用ペットボトルを持ち歩き、一人の高齢者と接したらその都度消毒をする「ワンケア・ワンプッシュ」をあらためて徹底している。今後は現場責任者で新型肺炎に関わる情報を共有し、追加の予防策を検討する。

施設長の吉田貴宏さん(35)は「利用者の方で外に出歩く人は少ない。職員がウイルスの媒介者になる恐れがある」と話し、介護する側の注意の重要性を強調する。

感染症に詳しい元北海道小樽市保健所長で医学博士の外岡立人さん(75)は「集団感染が起きやすい高齢者施設では外部からの訪問者をできる限り抑えなければならない。家族の訪問に限定したり、中に入るときにはマスクなどの予防の装備、手洗いをきっちりやってもらったりする。集団感染が起きたらどうするかということをきちんとマニュアル化しておくことが必要だ」と話している。 

■2020.2.18  新型コロナウイルス感染判明で休校要請も
文部科学省は2月18日、学校の児童生徒が新型コロナウイルスに感染し、都道府県などが感染拡大防止のために必要と判断した場合、当該校に対し休校や学級閉鎖などを要請するよう、各教育委員会などに求める対応方針を公表した。当該校は感染した児童生徒について、回復までは出席停止とすることとした。

出席停止は、感染が確認されたケースのほか、厚生労働省が示した目安に準じて、37・5度以上の発熱が4日以上続く場合なども対象とする。都道府県には、児童生徒の感染が確定していなくてもその恐れがあり、必要だと判断した場合は、校長に出席停止措置を取るよう求めることとした。

■2020.2.19  新型コロナウイルス、介護福祉施設に休業要請も 感染拡大防止で厚生労働省
厚生労働省は2月18日、新型コロナウイルスによる感染拡大防止に必要と判断した場合、介護のデイサービス事業者や障害者福祉施設に休業を要請するよう都道府県に求める方針を決めた。高齢者が重症化するケースが相次いでいるため。

デイサービスは在宅の高齢者が入浴やリハビリのために介護施設に通うサービス。状態が重い高齢者が入所し、生活を送る特別養護老人ホーム(特養)は対象とならない見通し。

■2020.2.20  有料老人ホーム 新設支援  介護離職ゼロへ受け皿 厚生労働省
厚生労働省は2020年度から介護付き有料老人ホームの新設支援に乗り出す。公的施設の特別養護老人ホーム(特養)の入居待ちが深刻な状態が続く中、民間主体の施設整備を補助金で促す。施設開設に必要な介護人材の確保も後押しし、介護の受け皿を拡大する。介護を理由に仕事を離れる「介護離職」をゼロにするという政府目標の実現につなげる狙いだ。

介護付きの有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅など「介護付きホーム」と呼ばれる施設を対象に、新設時の費用の一部を負担する。裕福な利用者も多いことからこれまで国による支援は手薄だったが、近年は割安な介護付きホームも増えており、介護の必要な高齢者の受け皿として存在感が高まっている。中所得層でも入りやすい施設の整備を促す。

財源には介護施設の整備や人材確保などを進める「地域医療介護総合確保基金」を活用する。基金は財源の3分の2を国、3分の1を都道府県が負担する。東京都や大阪府などの大都市で施設を新設する場合1人当たり448万円を払う。地価上昇で施設整備が進まないことを踏まえ、大都市では用地取得の費用の一部も基金でまかなう。

高齢者向けの施設で最も整備が進んでいるのは社会福祉法人などが運営する特養だ。原則、介護の必要性が高い高齢者しか利用できないが、民間が主体の介護付きホームと比べて金銭面での負担が軽く、直近では約61万人が利用している。

高齢化の進展で介護を必要とする人の数は増え続けている。介護サービスを利用するのに必要な「要介護認定」を受けた人は18年3月末に641万人と、08年3月末比で4割増えた。団塊の世代が後期高齢者となる22年度以降はさらに増加する見通しだ。
国は介護ニーズの高まりを受け、国有地などを活用して特養の整備を進めてきた。だが特養は低所得者の住居費や食費の一部を公費で補助しており、財政面から急速な拡充は難しい。19年4月末で約29万人が入居待ちをするなど需要に供給が追いついていない。

一方、民間が主体の介護付きホームは財政面での自治体の負担は比較的軽い。介護付きホームは裕福な利用者も多く、これまでは公的支援が手薄だったが、最近は介護付きホームでも厚生年金で利用料をまかなえる手ごろな施設が増えている。

業界大手SOMPOケア(東京・品川)が展開する「そんぽの家」は入居一時金が不要で、東京都内でも月額20万円程度から利用できる。特養に入れない中所得層の高齢者の受け皿としての役割を担い始めており、新たに支援の対象を広げる。
海外でも介護付きのホームは需要の受け皿となっている。「ドイツなど介護保険制度のある国では介護度が重い人が多く利用している」(日本総合研究所の岡元真希子マネジャー)という。

国立社会保障・人口問題研究所によると、65歳以上の高齢者数は15年の約3350万人から40年には500万人以上増加する見通し。東京都では介護サービスの利用者が40年にかけて2倍近くに膨らむ地域もあり、このままでは介護施設不足が深刻になる恐れがある。
施設の不足とともに、介護人材の人手不足も深刻だ。介護関係職種の有効求人倍率は18年度に3.95倍と、全職種(1.46倍)を大きく上回る。厚労省によると、このままでは25年度に34万人が不足する。
政府は人手不足の解消策として、19年10月に経験・技能のある介護職員の処遇を改善した場合に介護報酬を上乗せする「特定処遇改善加算」を導入した。
さらに20年度から導入する介護付きホームの整備支援でも人材確保の支援を盛り込む。

施設の開設にかかる職員の研修費などに定員1人あたり最大83万9千円支援する。施設の負担を軽減し、雇用拡大につなげる狙いだ。施設整備と合わせて「介護離職ゼロ」の実現をめざす。

■2020.2.23  障害福祉、不正受給26億円 5年で急増、処分630件
障害者の生活や就労を支援する障害福祉サービスを巡り、運営事業者による国の給付費の不正受給が2014〜18年度の5年間で少なくとも約26億3千万円に上ることが22日、共同通信の全国自治体調査で分かった。事業者の指定取り消しなどの処分は計630件で、いずれも急増していた。

サービスの利用者は120万人余り。厚生労働省は不正受給や処分件数の集計を発表しておらず、全国的な状況が明らかになるのは初めて。サービスの普及を図る国の方針の下、営利優先の事業者が参入し、不正が拡大している実態が浮かび上がった。

不正受給はサービスの提供実績や職員数を偽るといった手口が多い。

■2020.2.24  介護施設、相次ぐ「面会禁止」 都内の職員感染受け危機感
新型コロナウイルスによる肺炎(COVID19)で、介護施設職員の感染が確認された。「感染弱者」に当たる高齢者は死亡や重症化リスクが高く命を守る防御が必要とされ、介護施設では外部からのウイルス持ち込みによる集団感染を恐れ、家族らの面会を禁止するケースが相次ぐ。国は二十四日にも施設での感染拡大防止に向けた留意点を示す方針だが、対応の遅さに批判が集まりそうだ。

「やはり出たか。これからは職員や入居者にも感染者が出ることを前提に対応をしないと」。埼玉県白岡市の特別養護老人ホーム(特養)「いなほの里」の施設長、山崎文博さん(39)は危機感をあらわにした。東京都が二十二日、都内の介護施設のドライバーが新型コロナウイルスに感染したと発表したためだ。

入居者は約九十人。百歳を超える人もいる。感染予防のため、二月一日から家族らの面会を禁止している。入居者が感染した場合には施設内の個室に隔離する予定だ。山崎さんは「病院とは違い、特養は高齢者にとって生活の場。職員は防護服を着るわけにもいかず、マスクや手袋着用で予防するしかない」と話す。

施設の種類によって国の対応は異なる。デイサービスについては厚生労働省は十八日、都道府県などの判断で施設側に休業を要請するとの指針を出した。

しかし特養は指針の対象外。対応は施設ごとの判断にゆだねられ、面会禁止を実施していない施設もある。厚労省は「特養は、みとりなど緊急の事態もある。国として一律に強制するのではなく、入居者の実情に応じて判断すべきだ」(担当者)との見解だった。だが都内の感染例を受け急きょ、二十四日にも原則面会禁止を施設に要請することにした。
     ◇

百歳を超える人も利用している岐阜市の特養「サンライフ彦坂」では、面会者や業者に対し、緊急時以外の立ち入りを断る方針を決めた。すでに、必要な通院以外では入所者の外出を制限しており、理事長の豊田雅孝さん(57)は「(介護施設職員のニュースに)感染拡大がここまで来てしまったかとショックだった。事態が落ち着くまでは制限を続けると思う」と話した。

名古屋市内の特養の担当者は「明日はわが身」と警戒感を高める。市内での感染者が確認されて以降、職員にはマスクの着用や、作業ごとの手洗い、うがいを徹底。体調が優れない場合は出勤しないように指示している。面会者にも、三七度以上の発熱や自覚症状があれば面会せず、帰宅してもらうよう依頼。担当者は「自覚症状が乏しい人もいると聞くので、今後さらに検討が必要」と話した。

■2020.2.26  介護施設の面会制限、国が要望 リスク高い高齢者を守る
リスクの高い高齢者らの新型コロナウイルス感染を防ぐため、老人ホームなどの社会福祉施設などでは「やむを得ない場合」を除いて家族らの面会を制限することなどを求める事務連絡を、厚生労働省が都道府県などに出した。自治体が事業者に対応を求める。

24日付の事務連絡では、特別養護老人ホームや障害者施設など利用者が入所する施設での面会は、「やむを得ない場合を除き、制限することが望ましい」と記載。面会をする場合も、面会者の体温を計り、発熱があれば断ることを求めた。職員の体温測定を徹底することなども求めている。

新型コロナウイルスは、高齢者や持病がある人が重症化しやすいとされ、対策が重要になっている。そのため、高齢者が事業所に通うデイサービスやショートステイで、利用者に感染者が出たなどの理由で都道府県などが施設に休業を求めた場合、スタッフが利用者の自宅を訪問してサービスを提供する▽休業になった事業所とは別の事業所や公民館などでサービスを提供する――などの特別な対応も認めている。

■2020.2.26  保育園がカフェを運営 子連れでも気兼ねなくくつろげる空間に
社会福祉法人が街中にカフェを構え、子連れの親や高齢者ら幅広い世代が安心して集える場を提供する――。東京都羽村市で二つの保育園を運営する松栄福祉会はこのような珍しい地域貢献事業を展開し、子育て世代を中心に好評を博している。

2月4日のお昼時。JR小作駅近くにあるカフェ「メリ・メロ」には子連れの父母や高齢者、サラリーマンら多世代が訪れた。

カフェは管理栄養士と法人の保育士ら計3〜4人ほどで切り盛りする。店内は授乳室やおむつ交換台など子育て世代に優しいつくりで、車いす利用者が利用できる広いトイレも配備するバリアフリー対応だ。
この日のランチは、豚のおろし煮など3種類、みそ汁やサラダ付きで500円。月曜を除く、平日のお昼時は必ず営業する。子ども向けのお話会などの子育てイベントも定期的に開催している。
「絵本やおもちゃがあり、店員は保育士さんなので『子どもが騒いだらどうしよう』という心配がない。食事は野菜が多く、安心して食べられます。週に1回は来ています」。生後7カ月の次女を連れた近隣の30代の母親は笑顔でこう話した。

メリ・メロは2018年5月、松栄福祉会が空き店舗を活用してオープン。橋本富明園長肝いりの事業で、社会福祉法人による地域貢献が義務付けられたことがきっかけだった。
ただ、分野が違う事業に対し、保育士には戸惑いもあった。「接客の素人である私たちでやれるのかなと、立ち上げの話を聞いた時は正直不安でした」。カフェ運営に携わる保育士の中村鮎美さん(36)はこう振り返る。

管理栄養士の式地亜矢さんらから、接客や盛り付けの基本を教わりながら、当初は目の前の業務をこなすことで精いっぱいだった。
「保育士がカフェにいる意味を考えてほしい」。そんな状況の中、橋本園長からの一言がきっかけで、子連れの母親への声掛けをしたり、積極的に育児相談に対応したりするなど、これまでの保育経験や知識をカフェ運営の中で生かすことを徹底し始めた。
その結果、育児に疲労こんぱいした母親が悩みを打ち明けてくれたことがあったほか、外出したものの、駅から半泣きの状態で駆け込んできた母親に寄り添ったこともあった。
「今ではとても楽しいですし、私たち職員の成長にもつながっています。管理栄養士に食育や離乳食の相談をされるお母さんもいらっしゃいます」

職員配置や集客、財源など運営面についてはどう対応しているのだろうか。

職員配置では、担当のクラスを持たず、忙しいクラスや行事の準備を手伝う「フリー保育士」が2園で10人以上いるなど職員配置が手厚いため、本業(保育園)が手薄になることはないという。
また、保育園とは違い、収益事業であるカフェ運営だが、「毎年赤字で、保育園からの収入でバックアップしています」。利用者は子育て世代を中心に1日平均20組前後だという。

ただ、「目的は収益の最大化ではありません。子育て中の母親らが気兼ねなくくつろげ、本音を打ち明けやすい空間にしておくことが大事。稼働率が高すぎてもダメなんです」。
そのため、広報は保育園、カフェでの張り紙やチラシなど最低限に絞っている。それでも、口コミで評判は広がり、昨今は遠方から訪れる人もいるという。

■2020.2.27  首相、全小中高の臨時休校要請へ 3月2日から、学校で混乱も 保育所には一斉休園要請せず
安倍晋三首相は27日、新型コロナウイルス感染症対策本部会合で、3月2日から春休みに入るまで全国の小中学校、高校や特別支援学校を臨時休校にするよう要請する考えを表明した。入試や卒業式を実施する場合は感染防止など万全の対応を取るよう求めた。異例の対応に教育現場では波紋が広がり、混乱が生じる可能性がある。首相は新型肺炎(COVID19)を招くウイルス感染を抑え、生活や経済への影響を最小とするために必要な法案を早急に準備するよう各閣僚に指示した。

臨時休校は、文科省が全国の教育委員会などに首相の要請を踏まえ通知。法的根拠はなく、対応は各自治体などに委ねられる。


新型コロナウイルスの感染拡大で政府が全国の小中学校、高校に臨時休校を要請すると表明したことに対し、厚生労働省は27日、保育所は一斉臨時休園の要請対象ではないと明らかにした。

■2020.2.27  大阪市と堺市が一斉休校 全小中など29日から2週間
大阪市は27日の幹部会議で、新型コロナウイルスの感染拡大を防止するため、市立の幼稚園と小中学校全てを29日から3月13日まで休校にすると決めた。期間中に予定されている卒業式は参加者を最小限に限り、時間を短縮して実施する。堺市も同じ期間、全ての市立幼稚園と小中学校、高校、特別支援学校を臨時休校にする。

大阪市の休校の対象は幼稚園52園、小学校289校、中学校130校で、園児・児童・生徒数は計約18万人。急な休校で保護者が対応できない場合は、各学校で預かるなどの対応をするよう校長に求める。

■2020.2.27  遠野病院 医師2人辞意 看護師の労働改善求め
県医療局は27日、遠野市の県立遠野病院で2019年度、正規6人を含めた計17人の看護師が退職または退職の意向を示し、医師2人が看護師の労働環境の改善を求めて辞職を申し出ていることを明らかにした。医療局は状況を調査し、医師の慰留に努めている。

県議会2月定例会で千田美津子氏(共産党)が取り上げ、斉藤信氏(同)が関連質問した。斉藤氏は「パワーハラスメントにより超過勤務の申請ができずにいる看護師がいる。状況の改善を求めた医師2人も辞職を申し出ており、異常な事態だ」と批判した。

医療局によると、同病院の看護師1人当たりの月超過勤務は17年度9・6時間だったが、19年度は0・4時間。医療局は看護師が2人一組で業務を協力する仕組みなどで残業が減ったと答弁した。ハラスメントの指摘に熊谷泰樹局長は「職員へのヒアリングを行い超過勤務の手続きや実績を調査している」と説明した。

■2020.2.27  コロナ感染拡大防止の備えが不十分と言える訳  今は下火だがインフルの脅威も看過できない
医療ガバナンス研究所理事長

新型コロナウイルスの感染拡大が続いている。2月24日、政府は基本方針をとりまとめた。軽症者は原則として自宅待機となり、症状が変化した段階で相談センター、あるいはかかりつけ医に相談することとなった。いきなり医療機関を受診するのではなく、まずは電話での相談が勧められた。

相談の目安は、37.5度以上の発熱が4日(高齢者や持病がある場合は2日)以上続いたり、だるさや息苦しさが強かったりする場合だ。

そして、相談センターや医師が、新型コロナウイルス感染の可能性が高く、受診が必要と判断した場合には医療機関を受診する。患者数の増加に備え、一般医療機関も受け入れが可能になった。その場合には、外来時間や動線などを工夫して、一般患者と感染者が接触しないようにする。

インフルと感冒、臨床的にはまったく区別できない
ただ、私はこれを「机上の空論」だと考える。なぜなら、新型コロナウイルスと感冒は臨床的にはまったく区別できないからだ。クリニックの受診患者の多くは感冒だ。感冒と新型コロナウイルス感染患者の動線を区別することは遠隔診断をしない限り不可能だ。現在、厚労省は遠隔診断を規制している。

新型コロナウイルス感染の診断にはPCR法と呼ばれる遺伝子診断が欠かせないが、日本では「入院を要する肺炎患者の確定診断」の場合に限定されている。厚労省によれば、2月25日現在、PCRの実施数は国内事例1017人、チャーター便829人だけだ。同日現在、韓国では4万0304件が実施されている。

政府の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の副座長を務める尾身茂氏は「国内で感染が進行している現在、感染症を予防する政策の観点からは、全ての人にPCR検査をすることは、このウイルスの対策として有効ではありません。また、すでに産官学が懸命に努力していますが、設備や人員の制約のため、すべての人にPCR検査をすることはできません。急激な感染拡大に備え、限られたPCR検査の資源を、重症化のおそれがある方の検査のために集中させる必要があると考えます」と説明している。

この説明は苦しいと思う。韓国にできて、日本にできない理由は考えにくい。さらに、アメリカは国内で流行が始まる前の2月25日に、米疾病対策予防センター(CDC)が開発した遺伝子診断キットを、全米の検査所で使用できるようにするため「緊急使用認可」としたと発表している。

尾身氏は元医系技官。さまざまな事情を抱えておられるのだろう。この点は外部サイトとなるが、Japan In-Deptの『遺伝子検査行う体制作り急げ』(2020年2月25日配信)で詳しく解説した。

無症状や軽症の人が病院に殺到すると重症患者の対応が遅れるという事情もあるかもしれないが、感染症の治療の基本が「早期診断、早期治療」であることは医学界の常識だ。

新型コロナウイルス感染は遺伝子検査をしなければ診断できない。診断しなければ、有望な抗ウイルス剤も投与できない。

中国疾病対策センター(CDC)の報告によれば、全体の致死率は2.3%で、10代から40代が0.2%から0.4%なのに対し、80代以上では14.8%と跳ね上がる。

高齢者のリスクは大きい
若年者は感染しても自然治癒する人が大半ということになるが、高齢者はかなりの方に命を落とすリスクがある。クルーズ船の乗客も既に4名が亡くなっている。彼らを救うには、早期診断・早期治療が必要だ。厚労省のやり方はいただけない。

もう1つ問題なのは、彼らがインフルエンザの存在を忘れていることだ。インフルエンザと新型コロナウイルス感染は臨床像からは区別できない。

日本では毎年1万人程度がインフルエンザで命を落とす。ただ、早期に診断すれば、タミフルやゾフルーザなどのインフルエンザ治療薬を投与できる。発熱の持続を1日程度短くするだけだが、体力の低下した高齢者には、その1日が大きい。今回の厚労省の指針は、インフルエンザの死者を増やす可能性がある。

幸い、今年インフルエンザは流行していない。昨年末までは流行していたが、今年に入り、一気に下火となった。暖冬は昨年から続いており、それだけでは説明できない。

私は新型コロナウイルスとの関連の可能性も考慮したほうが良いと考えている。昨年12月中旬の段階で、武漢では新型コロナウイルスがヒト−ヒト感染していることが判明しており、日本にも流入していたはずだ。

インフルエンザA型と風邪ウイルスは、しばしば競合する。昨年12月にはフロリダ大学の研究者たちが、『米科学アカデミー紀要(PNAS)』にインフルエンザA型と、風邪ウイルスであるライノウイルスは相容れないと発表した。何れかが優勢になると、片方がなりをひそめる。通常はインフルエンザA型がライノウイルスを駆逐する。同様のことが、インフルエンザA型と風邪ウイルスのRSウイルスでも生じる事が知られている。

武漢では12月中旬から新型コロナウイルスのヒト−ヒト感染が起こっていたことがわかっている。日本では1月13日の週がインフルエンザのピークで、減少に転じている。例年より数週早い。新型コロナウイルスとインフルエンザA型が競合関係にあったのか検証が必要だ。

今年は欧米でのインフルエンザの流行状況も異様だった。2月15日の米疾病対策センター(CDC)の報告によれば、今シーズンのインフルエンザの推定感染者数は約2900万人で、入院した患者が28万人。死者は1万6000人だ。これは、近年では2017〜2018年、2014〜2015年につぐペースだ。

インフルエンザにはA型とB型という2つのタイプが存在する。例年、A型が約75%を占め、残りがB型だ。A型の流行期は通常12月から3月で、B型は2月から春先まで続く。

A型はヒト以外にトリやブタなど多くの動物に感染し、短期間で性質を変えるため、流行するタイプは季節毎に異なり、時に大流行を起こす。

一方、B型は山形系とビクトリア系の2系統で、A型のような沢山の亜型はない。ヒト以外にはアシカに感染し、ウイルスは変化しにくく、大流行は稀だ。

今シーズンはB型インフルが多い
今シーズンの特徴はB型が多いことだ。約30年ぶりにビクトリア系が早い時期から流行し始めた。当初、全体の60%をB型が占めた。最近になってA型が増加し、B型とほぼ同数になったが、例年よりB型が多いことは変わらない。なぜ、B型が多いか、その理由はわからない。

アメリカ在住の内科医である大西睦子氏は「理由の如何に関わらず、B型の流行はアメリカ社会に深刻な影響をもたらします」という。

それは子どもに被害を与えることだ。彼女は1月25日現在、12の州の学校区で学級閉鎖が実施されていることに注目する。

アメリカで学級閉鎖が決断されるのは、生徒の10〜20%が感染した場合だ。日本の5%より学級閉鎖の閾値は高い。

この状況は1992〜1993年のB型が流行したときと同じだ。この時も大人より子どもに被害を与えた。

その理由については、いくつかの可能性が報告されているが、B型はA型と比べて変異が生じにくいため、高齢者は以前の感染により免疫を維持していることが影響しているとされている。

実は、この傾向はアメリカだけではない。欧州も同様だ。今シーズンの感染者数は2018〜2019年と変わらないが、B型が多い。2月10〜16日に診断されたインフルエンザの31%がB型だ。ちなみに2018〜2019年シーズンの同時期のB型の割合は0.8%だ。

ちなみに、その前年度にあたる2017〜2018年のシーズンは60%がB型だった。従来から、インフルエンザの感染予測は難しいとされてきたが、近年、その傾向は強まったようだ。もちろん、これはグローバル化の影響だろう。人の移動に伴い、感染症も移動する。

今後、世界が注目する感染症は新型コロナウイルスとインフルエンザだ。

B型インフルエンザにも注意
新型コロナウイルスが世界的な大流行であるパンデミックとなる可能性は高まっている。その際、アメリカや欧州で流行しているB型インフルエンザがどうなるか、誰も予想ができない。競合関係になるのか、あるいは重複感染がおこるのかわからない。後者の場合、被害は重大になる可能性が高い。日本では毎年春先にB型が流行する。今年はどうなるだろう。

このまま無事に開催できるかどうか不透明になってきているが、今夏は東京五輪が開催予定だ。全世界から多くの選手や観客が東京にやってくる。南半球からも大勢の人が来るだろう。その頃、南半球は冬だ。新型コロナウイルスがパンデミックとなっていれば、流行している可能性が高いし、インフルエンザの最盛期だ。彼らの流入が、日本にどんな影響を与えるか予想がつかない。

安倍首相は、今後、数週間が新型コロナウイルス対策のヤマ場との見解を表明した。一方、私の考えは逆だ。おそらく長期戦になるだろう。全世界から感染情報を収集し、グローバルな視点に立った対策が必要である。

■2020.2.27  コロナショックの先に待つ4つの最悪シナリオ
ニューヨークダウ平均が2日連続で1000ドル前後の下げを記録するなど、いよいよ新型コロナウイルスによる感染拡大の影響が経済にも波及してきた。加えて、韓国やイタリアでも感染拡大が起きており、中国・武漢から始まった今回の新型コロナウイルス感染拡大の恐怖を、世界中が認識し始めたと言っていいだろう。

一方で、日本の危機管理はその甘さが際立っている。日本への渡航自粛を求める国も現れ、7月に行われる東京五輪の代替地としてロンドンが名乗りを上げるなど、今や日本の経済を根底から覆しかねないリスクも顕在化してきている。

そんな中でささやかれ始めてきたのが、新型コロナウイルスによる経済への影響の深刻さだ。リーマンショック級とも、東日本大震災級とも言われる景気後退リスクに対して、日本政府は対応できるのか。そしてまた、われわれ国民もどんな準備をしていけばいいのか。現実には起こってほしくないが、新型コロナウイルス禍によって起こりうる最悪シナリオは4つある。

失敗した安倍政権の危機管理!日本が第2の“武漢”に!?
【シナリオ@】
首都圏マンションはバブル超え? 東京五輪中止で“五輪バブル”の崩壊

2020年は、さまざまな意味で日本経済にとっては重要な1年である。そのハイライトとも言えるのが7月から開催される東京オリンピックだ。その東京五輪の開催が、今回の新型コロナウイルス感染拡大によって中止に追い込まれる可能性が出てきている。

感染爆発の度合いにもよるが、すでにアメリカでは日本に対して渡航注意のレベルを1つ上のレベルに引き上げており、イスラエルでは日本と韓国からの渡航者を入国拒否とした。

それに対して、日本では2月24日現在、外務省の対応は中国の湖北省全域、浙江省恩州市に対しては「渡航中止勧告」となっているが、それ以外の中国は「不要不急の渡航中止」となっている。

外国人に対しての入国規制は、日本の場合かなり曖昧で外務省がきちんとアナウンスしているわけではない。春節の前に中国の新型コロナウイルス感染拡大が明らかになっていたにもかかわらず、外務省は何も手を打たずに莫大な数の中国人観光客の来日を認めた。

クルーズ船の受け入れに対しても、日本人乗客が多い、日本人乗組員も100人いるといった事情を鑑みて入港を認め、検疫という名目で14日間留め置き、その間に600人を超す感染者をクルーズ船の中で発生させてしまった。

問題は、この状況次第で日本国内に感染爆発が起こるかどうかだが、日本が数千人単位の感染者を出した場合には、世界各国が日本への渡航を控えるようになり、最悪7月の東京オリンピックの開催に間に合うぎりぎりの期限とも言われる5月までに、現在の感染拡大が収まるかどうかが問われることになる。

イギリス・ロンドン市は東京開催が中止になった場合、「代替地」として立候補すると表明しており、その可能性はゼロではない状況だ。

仮に東京五輪が中止となれば、どの程度の経済的損失が発生するか。

東京五輪の経済効果は、東京都の発表で「32兆円」という途方もない数字が発表されているが、この数字には交通インフラの整備やバリアフリー促進といった間接的な経済活動も入っている。いわゆる「レガシー(遺産)」効果だ。

施設整備費や大会運営費、放映料と言った「直接的効果」は約5兆2000億円で、レガシー効果はその5倍の約27兆1000億円。とりあえず、直接的効果だけを考えれば、約5兆円の損失。日本のGDPが約500兆円とすれば、その100分の1を失うことになるわけだ。

1990年代のバブル期を上回る「五輪バブル」
実際に、帝国データバンクが昨年の11月に行った調査によると、東京五輪開催が日本の持続的な経済成長のために「有効だと思う」と回答した企業は半数に満たない46.8%にとどまっている。国内企業の半数しか東京五輪の需要を当てにしていないということだ。

業界別で見た場合、プラスと答えている企業は、サービス(17.5%)、金融(16.8%)、運輸・倉庫(15.8%)、製造(15.5%)となっている。経済効果は、東京都で約20兆円、大会開催に伴う雇用誘発効果は東京都で130万人、全国で194万人と試算されている。壊滅的な経済危機に陥る、といった見方をする人もいるが、思ったほど大きくないかもしれない。

ただ問題なのは、東京五輪開催というアナウンス効果によって、過剰な投資を生み、「五輪バブル」に陥っていることだ。不動産経済研究所が発表した2020年1月の首都圏マンションの1戸当たりの平均価格は8360万円。1月だけ突出した価格ではあるものの、この価格はバブル期の1990年11月(7497万円)を上回り過去最高になった。

2019年の首都圏マンションの平均販売価格は5980万円となり、過去7年、平均で1500万円の上昇となっている。まさに東京五輪を起爆剤とした「不動産バブル」が再燃しようとしていると言っていい。

放映権などの影響で東京五輪を10月とか11月に延期するとか、あるいは1年遅らせるといった延期の可能性は低い。そう考えると、やはり4月までには現在の感染拡大が収まることを祈るしかないだろう。

【シナリオA】
消費は半減? 東日本大震災級の景気落ち込み!
能天気な「緩やかな景気回復」の化けの皮が剥がれる?

東京商工リサーチがこの2月20日に発表した『新型コロナウイルスに関するアンケート調査』によると、「現時点ですでに影響が出ている」と答えた企業が2806社(22.72%)、「現時点で影響は出ていないが、今後影響が出る可能性がある」は5401社(43.74%)、「影響はない」と答えた企業は、4141社(33.54%)となっている。

65%超の企業が「影響が出てくる」とみているわけだ。実際に、新型コロナウイルス感染拡大によって、さまざまな分野で影響が出ている。2月24日時点でわかっている影響を紹介すると次のようになる。

●札幌雪まつり……来場者数は前年に比べて202万人と71万人の減少
●インバウンド……三越伊勢丹では春節にあたる2月4〜10日の売り上げが昨年比2割減
●東海道新幹線乗客数……2月1〜19日の新幹線乗客数は対前年比で1割減
もともと日本経済は2018年末辺りから、景気が落ち込んでいると言われており、例えば民間設備投資の先行指標である「機械受注統計」では、2019年12月の数字が前月比12.5%と大きく下落した。機械受注は変動幅の大きな統計だが、コロナウイルスの感染拡大の影響を受ける前に、すでに2ケタの減少になっている。

日本経済が弱含みのときに、この新型コロナウイルスショックに襲われたわけだ。

最低でも3〜4カ月間、激しい落ち込みを覚悟すべき
一方、2月20日に発表された「月例経済報告」では、雇用や所得の環境が底堅いとして個人の消費は回復傾向にあり「景気は穏やかに回復している」と景気の見通しを発表している。

西村康稔・経済財政再生相は「能天気に持ち直していると言っているわけではない」と釈明したものの、市場関係者の多くは「能天気でなければうそをついているのでは……」という印象を持ったはずだ。日銀が何もできないために、景気後退を隠蔽しようとしているのではないか、と考える専門家が多い。

このままの状況で行けば、経済的なダメージはSARSなどの例を参考にするのではなく、東日本大震災のケースを参考にしたほうがいいのかもしれない。

例えば、2011年3月11日に発生した東日本大震災直後の総務省統計局の「消費動向」を見ると、全体では約2割の減少となり、東京電力による関東地方を中心とした計画停電時には、教養娯楽費などが瞬間的に6割台にまで減少している。乗用車新規登録・届け出台数なども最大4割近い水準まで落ち込んだ。

つまり、日本で感染爆発が起きた場合には最大で5割前後、消費が落ち込むことを想定しなければならない。ちなみに、東日本大震災では1カ月後には、全体的にみて通常の消費支出に戻っている。しかし、新型コロナウイルスではそうもいかないだろう。最低でも3〜4カ月の期間、激しい落ち込みを覚悟する局面もありえる。

世界の動きはどうなるかわからないが、日本の景気後退はかなり大きくなりかねない。

【シナリオB】
1ドル=125円超は悪性インフレへの入り口か?

ニューヨーク市場では、2月24日からの2日間で2000ドル近い下落となり、株式市場がいよいよ新型コロナウイルスのリスクを意識し始めたと言っていいだろう。アメリカ市場の流れを受けた2月25日の東京市場では、日経平均株価が一時1000円超下落した。

今後もしばらくは、株価が大きく下げることになりそうだが、日本の場合、こうした株価の下落は瞬間的なものでは終わりそうもない。日本は、消費税率アップや大型台風などの影響で2019年10〜12月期は、実質GDPが年率換算でマイナス6.3%となった。

そして、次の2020年1〜3月期もよほどのことがなければマイナス成長になるはずだ。2期連続でGDPがマイナスになると、いわゆる「リセッション(景気後退)」となり、海外投資家を中心に、日本の株式は大きく売られることになりかねない。ヘッジファンドや投資信託のファンドマネージャーやAI(人工知能)は、「リセッション=売り」とインプットされているからだ。

厚生労働省が、新型コロナウイルスのPCR検査の保険適応をいまだに認めていない現状を考えると、医療システムの崩壊を招くような感染爆発が起こる可能性もある。

そうなると、日本への飛行機の渡航が世界中から止められ、世界からの物資なども供給されなくなる。株価は大きく下落し、円が売られ、金利が上昇(債券価格の下落)することになる可能性が高い。

円安の影響で金融緩和すべき日銀にその余力はもうない
とりわけ心配なのが、新型コロナウイルス感染の世界的な拡大で、本来であれば安全資産であるはずの「円」が買われて円高になるはずが、2月に入って以降、逆の円売り=円安に進んでいることだ。

安全資産であるはずの円だが、感染爆発が起これば1ドル=120円台まではあっという間に行くことになるかもしれない。その場合、円安の「分岐点」になるのは「1ドル=125円」だろう。かつて、日本銀行の黒田総裁が「1ドル125円以上の円安は望まない」という趣旨のコメントを出したことがある。

「黒田ブロック」とも呼ばれているが、日本経済が許容できる円安の目安とも言われている。これを超えてくるようであれば、アベノミクスにとっては、未知の領域に入っていく。

プラス要因としては、日本の製造業、とりわけ輸出産業は潤うことになるが、問題はそのときに世界が旺盛な需要を保っているかどうかだ。とりわけ日本が得意としている電子部品など工業製品の需要がどうなっているのか不安だ。

マイナス要因としては、輸入物価の急激な上昇だ。日本は世界から莫大な量の食料品や石油などのエネルギーを輸入しているが、これらが円安の影響で急騰することになる。本来であれば、こういうときこそ日銀が金融緩和をすべきなのだが、現在の日銀にはその余力がない。マイナス金利拡大は、かえって社会を混乱させる可能性が高い。SARSのときは、日銀は2回金融緩和を実施できたものの、いまその余地は少ない。

打つ手を持たない日銀のために必要なのは、政府はイタリアや韓国がやったような積極的な感染症対策だろう。厚生労働省が、新型コロナウイルスのPCR検査の保険適応をいまだに認めていない現状は、感染者を野放しにしておくのと一緒だ。

【シナリオC】
日本の「武漢化」で全土が封鎖!健康保険、年金資金が枯渇する?

このシナリオが最悪のケースと言える。安倍政権の対応が遅れて、日本に感染爆発が起こり、医療システムが崩壊。日本のあちこちが中国・武漢と同じような状況になってしまうというシナリオだ。サプライチェーンの停滞で海外からの物流は途絶え、食糧不足などの物資不足に陥ることになる。

それどころか、日本中で企業活動が滞り、観光や娯楽といったサービス業も壊滅的なダメージを受けることになりかねない。海外からのヒト、モノ、マネーも遮断され、日本の輸出入もストップしてしまう。日本経済にとっては、まさに正念場となり、株価は底なしで下落する可能性がある。

ちなみに、医療システムの崩壊が指摘されている武漢市の致死率は4.9%、中国全体の平均致死率2.1%を大きく超えている。国土が狭く、人口密度の高い日本で感染爆発が起これば、まさに大惨事になるわけだ。

日本で限定的な感染爆発が起きた場合、経済的な損失は計り知れない。ただ、東日本大震災があった2011年のGDPは、震災被害の規模を16兆〜25兆円、GDPを最大0.5%押し下げると、当時の内閣府が震災直後に発表した。

実際には、2011年度のGDPはプラス0.4%となり、かろうじてプラスを保っている。リーマンショックは、2008〜2009年にかけて最大マイナス3%程度まで下落しており、金融危機のほうが実体経済に与える影響は大きいことを物語っている。

一方、新型コロナウイルスの感染爆発は別の不安を生み出す。医療システムの崩壊など国民の生活が壊滅的なダメージを受ける可能性があるのだ。

日本で感染爆発が起これば株価が大暴落し、その株式市場に莫大な資金を投資していた年金資金などクジラと呼ばれる公的資金が致命的な打撃を受ける。GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)も莫大な損失を出してしまうかもしれない。

高齢者の生活を支えている年金制度が資金不足となり、年金制度の崩壊=国民の生活が破綻するということだ。

「自民党」が戦後初めて迎えた試練
本来であれば、もう少し具体的な数字やシミュレーションを通して、最悪のシナリオを示したいのだが、現在の状況ではあまりにも不透明な部分が多く、将来の見通しが立たない。ひょっとしたら来月の今頃は、感染者数が激減して通常どおりの状況に戻っていくというシナリオも考えられる。

ただ感染症の専門家が指摘するように、現在の状況ではここ2週間程度が感染者数増加の山場になるわけだから、その間の国内外の金融市場では何が起こるかわからない。想定外の事態をある程度考える必要はあるだろう。

最大の問題は、安倍政権というよりも自民党政権が、こうした危機管理にあまりにも弱い体質が浮かび上がったことだ。振り返れば東日本大震災のときは、自民党ではなく旧民主党政権だった。

クルーズ船で4000人の対応に苦慮していた自民党政権に比べて、数十万人単位の被災者が出た東日本大震災では、市町村、都道府県にある程度の権限を委譲して、対応できたことを考えると、現在の自民党の姿は国民不在の姿勢が目立つ。自民党政権が目指すような中央集権型の危機管理には限界があると言っていいだろう。

そういう意味でも 今後の日本の行方は極めて不透明と言っていい。

PCR検査も、安倍政権を擁護する評論家などが「パニックになるからダメだ」という表現をしていたが、東日本大震災時と同様の危機感をいかに持てるか。まさに危機管理の問題だ。ここでの対応を誤れば、もっとすさまじいパニックになることも想像したほうがいい。

■2020.2.28  休校で看護師出勤できず外来休診
新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、道内では小中学校の臨時休校が27日から始まりました。十勝地方で最大規模の帯広市の帯広厚生病院は、子どものいる看護師の一部が出勤できなくなるとして、28日から学校の再開まで予約や救急以外の外来の診療をとりやめることになった。

帯広厚生病院は十勝地方では最大規模の病院で、1日あたり1600人の外来診療のうち、200人が予約外などの患者だという。
病院によると、臨時休校の影響で子どものいる看護師が出勤できないケースが相次いでいて、28日からは全体の2割を超えるおよそ170人が出勤できなくなることがわかった。
このため病院は、28日から学校が再開されるまでの間、外来は予約や救急のみとして予約外の患者の診療を休止することになった。

また来月1日以降は、入院病棟の一部の使用をとりやめることを決め、患者に入院日の延期をお願いするケースも出てくるという。
帯広厚生病院は十勝地方で唯一の感染症指定病院で、今後、出勤可能な看護師を院内で再配置し、新型コロナウイルスに感染した患者の受け入れや通常の診療態勢の両立を進める方針。

帯広厚生病院の菊池英明病院長は、「小中学生が家族にいる看護師は出勤できない人が相当数いると推測されるため外来の規模を縮小しないと十分な医療を継続できないと判断した。緊急性のない患者には後日、受診をお願いしたい。新型コロナウイルスの感染者が発生した場合にも安全に医療ができるよう準備に入っているので理解してほしい」と話していた。

■2020.2.28  新潟市、市立学校と幼稚園を休業 3月2日から 子育て施設や児童館も
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、安倍晋三首相が27日に表明した全国の学校に対する休校要請などを踏まえ、新潟市教育委員会は28日、市立学校と幼稚園を2日から春休みに入るまで臨時休業にすると発表した。学校のほか、子育て交流施設や児童館にまで休業範囲を拡大。市は、子どもたちが集まる場所の多くを閉鎖することで、感染リスクを抑える考えだ。

会見で前田秀子教育長は「準備の時間はなさ過ぎたが、子どもたちの健康、安全を考えれば、要請を受けざるを得なかった」とした上で、「保護者をはじめ多くの方に影響があると思うが、ご理解とご協力をお願いしたい」と強調した。

対象となるのは、市立の小中高と特別支援学校、幼稚園の計177校・園。不特定多数の親子が利用する市内の子育て支援センターや児童館・児童センターなど63カ所は3月1日から閉鎖する。一方で、就労中の親などが利用する保育園や認定こども園、放課後児童クラブは開園する。放課後児童クラブは市内小学生の3割弱が利用し、低学年の利用割合が5割弱と高い。

臨時休業の期間中、児童生徒は原則自宅で過ごすよう要請し、部活も中止する。しかし、1人で自宅で過ごすことが難しい子どもについては、幼稚園児〜小3と特別支援学校・学級の児童生徒に限って、それぞれの校・園で預かる。

高居和夫教育次長は「4年生以上は1人で留守番できると思うが、あくまで原則。保護者の要望を聞いて判断したい」と、柔軟に対応していく考えを示した。預かる場合、スクールバスを利用する学校は通常通りの時間で運行する一方で、給食は提供しない。学校と幼稚園での過ごし方については、今後検討する。

卒業式は「かけがえのない行事」だとして、中止はしない。市教委では式次第を工夫して時間を短縮したり、参加を卒業生のみとして人数を最小限にしたりするなど、感染拡大防止策を各校に要望する。修学旅行は、3〜5月に実施予定の52校は延期とする。市立高校2校の入試は予定通り実施する。

社会教育施設の小中高生の利用も控えるよう呼び掛ける。公民館や生涯学習センターの学習室などは利用を控えるよう要請し、図書館で見かけた場合は、職員が長時間いないように声掛けをする。また、社会教育施設で実施する親子および小中高生を対象にした事業は3月2日から中止する。

春休み以降の入学式の取り扱い、臨時休業による授業の振り替えや成績評価の在り方などは今後検討する。
高居次長は「今後の感染拡大の状況によっては、学校や園での子ども預かりを中止するなど対応を変更したい」と述べた。

■2020.2.29  市立小中学校の臨時休校で「子どもの昼食」支援 相模原のNPOが弁当配達
NPO法人相模原ライズアスリートクラブ(相模原市中央区淵野辺3)は3月2日より、臨時休校で子どもの昼食が用意できない家庭を対象に弁当を配達する。
新型コロナウイルス感染症の防止対策で、相模原の市立小中学校が臨時休校することを受け、当初予定していた「こども食堂」を延期。宅配と合わせて子どもの安全確認をすることで、「小学生の子どもを長時間自宅で過ごさせるのは心配」「昼食の準備ができずに心配」「何かあった時に頼れる人がいない」など、親の心配を和らげる。

対応エリアは、大野北小学校、淵野辺小学校、淵野辺東小学校、共和小学校の各学区。他エリアは相談を受け付ける。価格は1食250円(材料費200円、サポート団体への寄付50円)。和食居酒屋「散歩道」(同)が調理する。実施期間は3月27日まで。

 

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