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残しておきたい福祉ニュース

 2019年 
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 2019.10. 3 2025年に看護師が6万〜27万人不足 厚労省の推計
 2019.10.13 令和元年台風第19号による被害状況等について  厚生労働省
 2019.10.15 台風19号 269の福祉施設が被災 避難は59施設、人数不明
 2019.10.15 福島県で4万3300戸「停電」 台風19号影響、医療・福祉施設も
 2019.10.16 高齢者の避難どうすれば 福島県の施設、原発事故の影響も
 2019.10.16 1階が水没の高齢者施設 早めの避難が全員の命救う  介護医療院とよの
 2019.10.16 59河川90か所で堤防決壊  台風19号
 2019.10.17 台風19号 269福祉施設被災 12都県で
 2019.10.17 台風19号、停電 介護・医療直撃 茨城・大子町
 2019.10.18 台風19号、約200の幼稚園や保育園が被災
 2019.10.21 幼稚園の浸水で大学が預かり保育 白鴎大学はくおう幼稚園
 2019.10.21 避難所もプライバシー重視 被災の長野、環境に格差
 2019.10.25 障害者補助犬 進まぬ理解 車いす男性同伴 白山(石川県)の病院拒否
 2019.10.27 石巻市と宮城県の上告棄却 最高裁
 2019.10.28 千葉県内の社会福祉施設や医療機関 11か所で浸水被害
 2019.10.28 台風襲来の前日に全員避難 宮城県大崎市の老人ホーム、岩手・岩泉豪雨の教訓生かす
 2019.10.30 台風19号の避難所でノロウイルス集団感染


■2019.10.3  2025年に看護師が6万〜27万人不足 厚労省の推計
厚生労働省は30日、看護師や准看護師などの看護職員が2025年に6万〜27万人程度不足するとの推計を発表した。高齢者が今後急増する都市部での不足が目立つ。厚労省は看護師養成のあり方や復職支援、地域偏在の対策を検討する。

25年に必要とされる看護職員数は、ワーク・ライフ・バランス(WLB)の改善を考慮し、残業時間の長さと有給休暇の日数で三つの設定にわけた。25年時点で必要な入院ベッドの数、将来の訪問看護や介護施設の利用者数をもとに計算すると、必要数はWLBの改善が進んだ順に@202万人、A190万人、B188万人だった。供給数の推計は175万〜182万人だった。

勤務環境が現状に近いAの設定で、供給数が175万人として都道府県別に結果をみると、不足数は東京で4万2千人。必要数に対する供給は77%にとどまった。大阪は3万7千人(75%)、神奈川は3万2千人(73%)だった。

一方、人口減少が始まっている地域などでは供給が上回り、20県で看護職員が足りる結果だった。ただし、厚労省の担当者は「足りているとされる所でも山間部などの病院や、訪問看護、介護分野を担う看護師が不足するところがある」という。

厚労省によると、保健師や助産師を含む看護職員は現在約167万人。年々増え続けているが、すでに地域や医療機関によっては深刻な状況に陥っている。夜間救急を中止したり、入院患者の受け入れを制限したりしている例もある。

神奈川県では、今年5月時点で県内14病院が「スタッフ(看護師)の不足」を理由の一つにして、休止や使っていない病棟があった。不足する看護師は14病院で少なくとも計199人。平塚市民病院(410床)では16年から稼働していない8床を稼働させるには9人の看護師が必要だという。担当者は「看護師の就業環境をさらによくして看護師の確保に努めたい」と話す。

ただ、今回の推計と自治体の見通しにはずれも見られる。供給が約6千人上回るとされた熊本県は17年度、独自に4千人近く不足すると推計。4万人ほど不足するとされた東京都の担当者も「今の右肩上がりの供給が続けば、そこまで不足する状況にはならないと考えている」と話す。

厚労省によると、保健師や助産師を含む看護職員は約167万人。年々増え続けているが、地域や医療機関によっては深刻な状況に陥っている。

徳島県那賀町の町立上那賀病院(40床)は4月、夜間の救急診療を休止した。25人の看護師のうち、夜勤ができる4人が3月末に辞め、夜勤のシフトが組めなくなったためだ。

勤務態勢を見直し、平日3日間は午後9時まで受け入れを再開したが、ほかの日は夜間の受け入れの見通しは立っていない。今年度、町の看護師募集に応じたのは1人。「町で看護師になる人が少なく、だんだん確保が厳しくなっている」と町の担当者は話す。

今回の推計で3万2千人ほど不足するとされた神奈川県によると、今年5月時点で県内14病院が「スタッフ(看護師)の不足」を理由の一つにして、休止や使っていない病棟があった。

不足する看護師は14病院で少なくとも計199人。このうち平塚市民病院(410床)では16年から8床が非稼働で、稼働させるには9人の看護師が必要だという。病院の担当者は「看護師の就業環境をさらによくして看護師の確保に努めたい」と話す。

ただ、推計の方法や前提には、疑問の声も上がる。供給が約6千人上回るとされた熊本県は17年度、独自に4千人近く不足すると推計している。県の担当者は、国の計算では、25年に必要な病床数が県の見積もりよりも少ないことなどを指摘し、「看護師が余るとは考えていない。政策には県独自の数字を使う」と話す。

4万人ほど不足するとされた東京都も「今の右肩上がりの供給が続き、離職防止策や就業支援の強化すれば、そこまで不足する状況にはならないと考えている」としている。

■2019.10.13  令和元年台風第19号による被害状況等について  厚生労働省
令和元年台風第19号による被害状況等について(第3報) 令和元年10月13日
https://www.mhlw.go.jp/content/000556894.pdf
http://chachacha.rgr.jp/databox/2019typhoon19-press_3.pdf

令和元年台風第19号による被害状況等について(第2報) 令和元年10月12日
https://www.mhlw.go.jp/content/000556893.pdf
http://chachacha.rgr.jp/databox/2019typhoon19-press_2.pdf

令和元年台風第19号による被害状況等について(第1報) 令和元年10月12日
https://www.mhlw.go.jp/content/000556891.pdf
http://chachacha.rgr.jp/databox/2019typhoon19-press_1.pdf

■2019.10.15  台風19号 269の福祉施設が被災 避難は59施設、人数不明
厚生労働省は15日、台風19号で被災した高齢者や障害者施設、保育所などの福祉施設が12都県で少なくとも269施設に上ったと発表した。このうち、停電や浸水で患者や入所者への治療や支援が難しくなり、他施設などに避難させている施設は59カ所。厚労省は同日、高齢者や障害者、子どもなどが避難を余儀なくされた場合、福祉施設などで積極的に受け入れるよう、自治体を通じ要請した。

■2019.10.15  福島県で4万3300戸「停電」 台風19号影響、医療・福祉施設も
東北電力によると、台風19号の影響で13日午後6時までに県内36市町村で延べ約4万3300戸が停電し、同時刻時点で13市町の約4900戸が停電中。このうち、伊達市と田村市を中心に約2300戸は14日朝までに復旧を見込む。

残り11市町の約2500戸は、河川の浸水や倒木で道路が寸断されたため立ち入りができず、同社は復旧の見通しは分からないとしている。

医療機関や福祉施設でも停電や浸水、断水が相次いだ。伊達市の特別養護老人ホーム「ラスール伊達」では停電と浸水で入所者4人を国見町の公立藤田総合病院に搬送。本宮市の谷病院では、断水と停電で透析患者ら10人を二本松市の枡記念病院などに転院させた。

主な被害状況(13日午後3時30分時点)は医療機関が断水5病院で停電2病院。福祉施設(中核市除く)は停電や浸水の高齢者施設が4施設。福島市、二本松市、伊達市、郡山市、田村市、石川町、浅川町、白河市、棚倉町、矢祭町、いわき市、南相馬市、飯舘村、相馬地方広域水道企業団の一部で断水している。1998(平成10)年8月27日の水害で甚大な被害を受けた西郷村の「太陽の国」を含む県社会福祉事業団の施設に被害はなかった。

■2019.10.16  高齢者の避難どうすれば 福島県の施設、原発事故の影響も
台風19号の通過で河川の氾濫、土砂災害が相次いだ福島県では、グループホームなど少なくとも27カ所の高齢者施設で浸水などの被害があった。15日現在、けが人や犠牲者がいるとの情報はないが、要配慮者を抱える施設の災害対応の難しさが改めて突き付けられた形だ。

「川が氾濫した」。13日午前1時ごろ、利用者99人がいた福島県伊達市梁川町の特別養護老人ホーム「ラスール伊達」の正面玄関を消防団員がたたいた。職員8人は慌てて、利用者を2階建ての施設上階へ避難させた。

それから15分ほどで浸水が始まり、漏電でエレベーターが停止。職員と消防隊員が膝まで水に漬かり、階段でベッドや車いすごと利用者を運び終えたのは午前2時ごろだった。

浸水は膝ほどの高さでとどまったが、安斎紳也施設長は「もっと高かったらと思うと恐ろしい」と判断の遅れを悔やむ。
施設の約2キロ先には福祉避難所がある。しかし施設は利用者が体調を崩すリスクに加え「100人近くを搬送するのは現実的ではない」として避難を想定していない。安斎さんは「利用者の命が最優先なのは言うまでもないが対応は難しい」と険しい表情で語った。

福島県本宮市では4階の介護老人保健施設「明生苑」と隣接する5階の病院が1階の天井近くまで浸水し、職員を含め約180人が一時孤立した。
浸水が始まった13日午前2時ごろから1階の資料を移動させたが、水かさが増して断念。入居者や患者の部屋は2階より上のため無事で、重篤な患者は窓からボートで救助された。渡辺雅俊事務長は「1986年の8.5豪雨の経験から浸水は想定していたが、予想以上だった」と話す。

福島ならではの困難もあった。東京電力福島第1原発事故で福島県葛尾村からの避難者が入居する三春町の「グループホーム楓」は13日午前1時ごろ、裏山の崩落で土砂が1階の窓を突き破って室内に流れ込んだ。
当時、施設にいた職員は2人。隣の福島県田村市から運営法人の職員が駆け付け、避難を始めたのは3時間後の午前4時だった。舞木幸子管理者は「法人から土砂災害の可能性を聞いてはいたが、大丈夫とばかり思っていた」と振り返る。
普段の連絡先は避難元の葛尾村が中心だった。被災して初めて、福島県三春町や地域との連携不足を痛感したという。「施設の避難訓練に地元の消防団が参加したことはなく、地域で施設の存在が知られていない。顔の見える範囲に支援してもらえないと心細い」

国は2016年の台風10号豪雨で岩手県岩泉町の高齢者施設入所者9人が犠牲になった被害を踏まえ、洪水や土砂災害の危険箇所に位置する福祉施設に避難マニュアル策定などを義務付けた。福島県によると、浸水想定区域内の県内の策定率は28.3%(19年3月時点)にとどまる。

■2019.10.16  1階が水没の高齢者施設 早めの避難が全員の命救う  介護医療院とよの
千曲川の堤防が決壊し、広い範囲で浸水被害が起きた長野市豊野町には、1階部分が完全に水没した高齢者施設があります。この施設には当時、およそ300人の高齢者がいたが全員無事だった。命を救ったのは早めの避難だった。

介護が必要な高齢者を受け入れている長野市豊野町の「介護医療院とよの」では、今月13日の朝、近くを流れる千曲川の堤防が決壊し、大量の水が押し寄せた。

そして1階部分が完全に水没した。

森佐知子施設長は当時の状況について「雨はそこまで強くなかったが、急激に水が流れ込んできて、1時間ほどで1階が水没した。こんな状態になるなんて『まさか』という感じで、予想もしていなかった」と振り返る。

施設は大きな浸水被害を受けたが、およそ300人いた高齢者は全員無事で、けがをした人もいなかった。

高齢者の命を救ったのは早めの避難だった。
施設では5段階の警戒レベルのうちレベル3に当たる避難準備情報が出たら、1階の入居者を上の階に避難させるとあらかじめ決めていた。

このため、川の水が押し寄せた時にはすでに全員が2階より上に避難していた。
その後、周囲の水がなかなか引かずに施設は一時孤立し、停電や断水も続いたが、職員が懐中電灯を使って入居者の介護に当たったほか、食料などはボートで届けられた。
そして災害派遣医療チーム=DMATや日本赤十字社の協力を得て、16日までにほとんどの入居者が近くの施設などに移った。

森佐知子施設長は、「この地域ではおよそ50年前にも浸水被害があったと聞いていたので、とにかく早めの対応を心がけ、避難訓練も実施していた。施設は被害を受けたが全員無事でホッとしている」と話している。

■2019.10.16  59河川90か所で堤防決壊  台風19号
台風19号がもたらした大雨の影響で、現在、全国59の河川、90か所で堤防の決壊が確認されている。

国交省によると、堤防の決壊が確認されたのは16日午後1時時点で、長野県の千曲川や、福島県の阿武隈川、茨城県の那珂川、栃木県の秋山川、埼玉県の都幾川など全国59の河川、90か所にのぼった。

■2019.10.17  台風19号 269福祉施設被災 12都県で
厚生労働省は15日、台風19号で被災した高齢者や障害者施設、保育所などの福祉施設が12都県で少なくとも269施設に上ったと発表した。このうち、停電や浸水で患者や入所者への治療や支援が難しくなり、他施設などに避難させている施設は59カ所。厚労省は同日、高齢者や障害者、子どもなどが避難を余儀なくされた場合、福祉施設などで積極的に受け入れるよう、自治体を通じて要請した。


厚労省が自治体に被害状況の提供を求め、15日午後2時までの報告をまとめた。避難者の数は集計していない。

特別養護老人ホームなど高齢者施設では、福島の44施設が最も多く、千葉(42施設)、茨城と静岡(ともに18施設)が続いた。このうち、浸水で入所者が避難している施設は47カ所、停電中の施設は48カ所。

保育所など児童施設では福島(35園)の被害が最多。栃木(8園)、長野(7園)でも被害が出ている。

このほか、医療機関では宮城と東京、長野の7病院が浸水。福島や茨城などの22病院で断水し、給水車などで対応している。

■2019.10.17  台風19号、停電 介護・医療直撃 茨城・大子町
台風19号による河川氾濫に見舞われた茨城県の被災地は、高齢者施設が停電のため厳しい運営を強いられ、医療機関にも影響が生じている。最も多くの死者、行方不明者が出た福島県では、家族を失った遺族が悲痛な思いを語った。

台風19号で久慈川などが氾濫し、一人が死亡し広範囲で浸水被害があった茨城県大子(だいご)町。久慈川の支流から約百メートル離れた介護老人保健施設「やすらぎ」の安達栄治郎施設長(69)は「幸いにして犠牲者は出なかったが、出てもおかしくない状況だった」と振り返る。

施設では約九十人が生活し、氾濫の危険性があるため十二日午後二時ごろから、一階の利用者三十七人を一時間半かけて二階に移動させた。

自宅にいた益子豊子看護師長(61)は十三日午前零時ごろ、施設に向かった。「どこも道路が冠水し、施設の電気も消えていた」。周囲は胸まで浸水し、なんとか施設にたどりついても、停電のため、たんの吸引器は動かない。吸引しなければ、入所者の命に関わる。懐中電灯を片手に、手動で吸引などに当たった。

今も停電し、復旧に約一週間かかる見込み。東京電力から自家発電機を借りて、たん吸引をしている。エレベーターが動かせないため利用者の移動は困難で、入所者に帰宅も勧めたが、住み慣れた施設に残ることを希望したという。安達さんは「たん吸引も十分ではなく、あと数日もすればインフルエンザが広まり始める可能性がある」と、ケアに細心の注意を払う。

医療機関も危機的だ。町健康増進課の見越信子課長補佐によると、町内の六医療機関のうち五つで床上浸水。診察できる病院もあるが、いずれも復旧のめどは立っていない。もともと、深刻な医師不足に台風が追い打ちを掛けた。

町の保内郷(ほないごう)メディカルクリニックの桜山拓雄院長(73)は「エックス線やコンピューター断層撮影(CT)の機械がすべて使えなくなった」と話す。パソコンも被害に遭ったといい「一番頭が痛いのは、患者のデータを失ったことだ」と嘆いた。 

■2019.10.18  台風19号、約200の幼稚園や保育園が被災
衛藤晟一少子化対策担当相は18日の記者会見で、台風19号に被災した地域で少なくとも195の幼稚園や保育園が浸水などの被害を受けたと発表した。衛藤氏は「甚大な被害で心を痛めている。関係省庁と各県と連絡を取りながら必要な対応をとりたい」と述べた。

被害を受けたのは、認定こども園、幼稚園、保育所が計174施設、企業主導型保育施設が21施設。

■2019.10.21  幼稚園の浸水で大学が預かり保育 白鴎大学はくおう幼稚園
台風19号で被害を受け、施設が使えなくなった栃木県小山市にある幼稚園では、同じ法人の運営する大学の教室を使って、預かり保育を行っている。

栃木県小山市大行寺にある「白鴎大学はくおう幼稚園」は、台風19号の影響で床上まで水につかって停電し、施設が使えなくなった。
幼稚園では、親が仕事に出ている家庭が多いことから、市内にある同じ法人が運営する大学の教室を借りて、午前8時から午後6時まで預かり保育を行っている。

21日は、園児13人が、教諭や手伝いに来た大学生とおもちゃで遊んだり、絵を描いたりして過ごしていた。
幼稚園は、今月24日から、水につからなかった建物の2階部分で運営を再開する予定。

30代の母親は「ふだんの場所と違うので不便ですが、仕事をしているので子どもを預かってもらえてありがたいです」と話していた。
多田博士副園長は「4年前の関東・東北豪雨に比べ、今回の水害では、流れ込んだ水が多く復旧が難しいですが、再開に向けて頑張っています」と話していた。

■2019.10.21  避難所もプライバシー重視 被災の長野、環境に格差
台風19号で被害を受けた長野県上田市では、避難所にテントのような素材の折りたたみ式の間仕切りを用意し、プライバシーを重視したスペースを確保した。利用者に好評だったが、こうした避難所はほとんどないのが現状。専門家は「被災者が避難をちゅうちょしない、快適な環境を整えるべきだ」と指摘する。

台風が通過した12日から15日朝まで、市立塩田中の体育館には、長さ約2メートル、高さ1.2メートルの間仕切りで四方を囲んだスペースが並んだ。床には冷気を防ぐアルミ製マットも。最大約70人が避難し、「就寝中もプライバシーが保てた」などの声が上がった。

市によると、間仕切りの導入は「災害時に授乳できる場所がほしい」という母親らの声がきっかけ。市内各地の防災倉庫に約300個を保管し、今回の台風で初めて使用した。市塩田地域自治センターの小林弘明センター長は「他人の目を気にせずに過ごせる場所を提供できた」と話す。

ただ、食料や水の提供を優先したこともあり、間仕切りは一部の避難所にしか届けられなかった。千曲川の堤防決壊で大勢が殺到した長野市の避難所では、硬い床にブルーシートを敷き、毛布にくるまって雑魚寝する被災者の姿が目立った。

2016年の熊本地震では、プライバシーのない避難所を避け、車中泊を選んだ被災者の健康問題が相次いだ。内閣府は同年、避難所運営のガイドラインを公表し、自治体に避難生活の質を向上させるよう求めた。

地域防災を支援する任意団体「インクルラボ」の高橋聖子代表は、避難所の環境は被災者の生命に直結する問題と指摘。「行政任せではなく、普段から地域全体で整備する努力をしなければならない」と訴えた。

■2019.10.25  障害者補助犬 進まぬ理解 車いす男性同伴 白山(石川県)の病院拒否
電動車いすで生活する男性が、長女の通う石川県白山市内の病院から、介助犬を連れて病院に入ることを拒まれた。男性の生活を支える介助犬の同伴拒否は、障害者差別解消法で不当な差別として禁止されている。男性の家族らは法律の趣旨を説明したが、病院は対応を改めず付き添うことができなかったため、長女は転院した。


男性は金沢市福増町北のボランティア団体代表平野友明さん(51)。二〇〇九年三月にケーブルテレビ設置の業務中に屋根から転落し、胸から下にまひが残った。妻の克美さん(51)の介助がなければ外出も難しかったが、一二年にラブラドルレトリバーの介助犬「タフィー」を迎えてからはタフィーがドアを開けたり、かばんから財布を取り出したりして買い物できるように。「タフィーは私の体の一部。自分そのものです」

平野さんの長女の後藤美咲さん(26)は妊娠に気づき三月、白山市の産婦人科病院で診察を受けた。夫(27)は仕事で忙しく、両親に付き添ってほしいと考え、父親の介助犬が入っていいか尋ねたが、病院から「犬は入れない」と言われた。

克美さんらは、介助犬は清潔でほえたりしないよう訓練されていると説明。五月には、県障害保健福祉課の担当者とNPO法人「日本補助犬情報センター」に相談して、病院と交渉してもらったが、理解を得られなかった。長女は介助犬を同伴できる金沢市上荒屋の佐川クリニックに転院し、十月十六日に出産した。

白山市の病院は本紙の取材に、職員が差別解消法を知らなかったと説明した上で「コメントは差し控えたい」としている。

石川県立中央病院(金沢市)は、補助犬を伴って入室できることを利用者に周知するため、病院内の掲示板にパンフレットを張っている。金沢市立病院も補助犬の入室を認めている。

障害者政策に詳しい慶応大の岡原正幸教授(社会学)の話 障害者差別解消法が、十分に理解されていない現状が明らかになった。病院経営が一般の民間業者とは異なり、公共性の高い存在であることを、経営者は肝に銘じなくてはならない。介助犬への無理解という次元ではなく、法律違反である。障害者本人の不利益だけでなく、娘さんの転院という事態も引き起こした。このようなことが続くなら、日本が目指す共生社会は絵に描いた餅でしかない。 


公共性の高い施設や交通機関での身体障害者補助犬の受け入れ拒否は、全国で相次ぐ。二〇二〇年の東京五輪・パラリンピックに向けて政府が掲げる共生社会の実現は遠い。
日本盲導犬協会の差別実態調査では、回答した全国の利用者二百六人のうち六割に当たる百二十三人が昨年一年間で盲導犬の受け入れ拒否を受けていた。

神奈川県内の六十代の女性は、福岡県内の九十代の父親が危篤との知らせを受け、独立行政法人が運営する福岡県の病院を訪れたが、盲導犬を伴っての入室を拒否された。病院は「他の患者の迷惑になる」と主張した。協会が電話で法律の趣旨を説明し続けると、四日後に盲導犬の入室を認めて謝罪した。

石川県内では一六年三月、金沢市内で盲導犬を連れた男性がタクシーに乗車を拒否された。北陸信越運輸局石川運輸支局によると、運転手は車内が汚れると乗車を拒否。支局は同年五月、道路運送法の引き受け義務違反で、このタクシー会社の車四台を十四日間、使用停止とした。

NPO法人「日本補助犬情報センター」が一八年十一月、飲食や宿泊、医療・福祉業に従事する二千人にアンケートし、千二百四十一人から回答を得たところ、補助犬を伴った人への対応について「知らない」と答えたのは76%。「少し知っている」は18%、「よく知っている」は6%だった。





身体障害者補助犬=手や足が不自由な人を支える介助犬、目が不自由な人を支える盲導犬、耳が不自由な人を支える聴導犬を指す。飼い主の指示に従うよう訓練を受け、一定水準をクリアして補助犬になる。犬は清潔に保たれ、定期的に動物病院などで健康診断を受けている。厚生労働省によると、3月現在で、全国の介助犬は65頭、盲導犬は928頭、聴導犬は68頭。石川県内で介助犬1頭、盲導犬15頭、富山県内で盲導犬7頭が活動する。

障害者差別解消法=2016年4月に施行され、介助犬や盲導犬の入室拒否を不当な差別と位置づけ、禁止している。法は障害のある人もない人も共に暮らせる社会の実現を目的とする。国の機関、地方自治体、民間事業者に、障害を理由とした差別を禁止し、合理的配慮を義務づけた。

■2019.10.27  石巻市と宮城県の上告棄却 最高裁
石巻市立大川小学校訴訟

最高裁第1小法廷

市と県に約14億円の賠償を命じた2審・仙台高裁判決(2018年4月)が確定

校長らは地震や津波の知識・経験を集め、蓄積する立場にあり、校舎の立地も踏まえると、市教委が学校に「危機管理マニュアル」の改定を義務付けた、10年4月末の時点で津波被害を予見できた。
そのうえで、学校から約700メートル離れた標高約20メートルの高台を避難場所としてマニュアルに記載し、避難経路や避難方法も示していれば、津波によって児童が死亡する結果は回避できたと指摘。校長らはマニュアルの不備を改定せず、市教委も不備を是正する指導をしなかったとして、組織的な過失を認めた。


1審
仙台地裁判決(2016年10月)は、津波到達の7分前の午後3時半ごろ、高台避難を呼び掛ける広報車が校舎前を通った段階で、教員らが学校への津波の襲来を予見できたと指摘。学校南側の裏山への避難を決断すべきだったのに、不適当な場所へ避難しようとしたとして、地震直後に在校していた一部の教員の過失だけを認めていた。

2審
仙台高裁判決(2018年4月)は、児童らが通学を法的に強制されている以上、校長、教員、市教委には児童の安全を確保する義務があったとし、それを前提に事実を認定した。市と県に約14億円の賠償を命じた。

東日本大震災の津波で犠牲になった宮城県石巻市の大川小学校の児童23人の遺族が訴えた裁判で、最高裁判所は石巻市と宮城県の上告を退ける決定をし、14億円余りの賠償を命じた判決が確定しました。

最高裁は、震災前の学校と行政の防災対策に過失があったと認めた判断を維持し、今後、全国の教育現場の防災対策に影響を与えるとみられます。




宮城県石巻市にあった大川小学校では、74人の児童が津波の犠牲になり、このうち、児童23人の遺族が石巻市と宮城県に対し、22億6000万円余りの賠償を求めた。

1審の仙台地方裁判所は、「広報車の避難の呼びかけを聞いた段階で、津波が来ることを予測できた。教諭らの避難誘導に過失があった」として、市と県に賠償を命じた。

一方、2審の仙台高等裁判所は、「学校は事前に避難場所や経路などを定める義務を怠った」として、1審よりもおよそ1000万円多い、14億3000万円余りの賠償を命じた。

津波で犠牲になった人の遺族が自治体などを訴えた裁判で、震災前の防災対策の不備を理由に賠償を命じた判決は初めてだった。
これについて、市と県が上告していたが、最高裁判所第1小法廷の山口厚裁判長は、11日までに上告を退ける決定をし、市と県に賠償を命じた判決が確定した。

決定は上告理由に当たらないとし、5人の裁判官の全員一致の意見となっています。
最高裁が震災前の学校と行政の防災対策に過失があったと認めた2審の判断を維持したことで、今後、全国の教育現場の防災対策に影響を与えるとみられる。


「事前防災」 全国に影響か

今回、最高裁の判断が全国の教育現場の防災対策に影響を与える可能性があるとして注目されていたのは、2審の判決が、学校や行政に対して、ふだんから高いレベルの防災対策に取り組む義務があるとしたからだ。津波からの避難をめぐり、遺族が学校や勤務先などに賠償を求めた裁判で、大川小学校の裁判の2審判決はほかのどの判断とも異なり、注目された。

【2審判決の特徴1 事前防災】
2審判決の1つ目の特徴は、「震災前の防災対策に過失があった」と判断したこと。大川小学校をめぐる裁判の1審判決や、そのほかの津波の避難をめぐる裁判の判決では、「地震が起きてから津波が来るまでの対応」に過失があるかどうかによって、賠償責任が判断されてきた。一方、2審判決は、震災前に、津波の予測や小学校の立地を詳細に検討すれば津波の危険性を予測するのは十分可能だったとした。そのうえで、震災前に危機管理マニュアルで、避難の経路や避難方法を定めておくべきだったのに怠ったと指摘した。

【2審判決の特徴2 児童の安全確保義務】
このように、学校側に高いレベルの防災対策を求める前提としたのが、学校には、「学校保健安全法」によって児童の安全を確保する義務があると、明確に判断したことだ。これが2つ目の特徴。校長や教頭らは、義務教育で児童を預かる以上、一般の住民よりも防災に対してはるかに高い知識や経験が必要だとした。大川小学校が津波ハザードマップで浸水予想区域に含まれていなかったことについて「児童の安全に直接関わるため、独自の立場から信頼性を検討すべきだった」などと指摘している。

【2審の特徴3 行政にも責任】
3つ目の特徴は、校長など教育現場だけにとどめず、教育委員会や行政の防災担当部局の関与にまで踏み込み、「市の教育委員会は学校の対策に不備があれば指導すべき義務があるのに怠った」と指摘した。

【全国の学校現場に影響か】
こうした2審の判断を最高裁が維持したことで、学校側の事前の防災対策が足りないと、災害で被害が出たときに賠償責任を負うケースがあることが明確になったと言える。今後、全国の教育現場に影響を与える可能性がある。児童や保護者にとっては子どもたちの安全確保に重きを置いた司法判断で、学校や行政がどのように受け止め、対策が進められるかが注目される。


「津波避難訴訟」相次いだ

東日本大震災での津波からの避難をめぐっては、大川小学校のほかにも、遺族が学校や勤務先などに対して責任を問う裁判が相次いで起こされた。

【野蒜小学校訴訟】
このうち、宮城県東松島市の野蒜小学校では、いったん学校に避難した児童が、同級生の親に引き渡されて浸水予測区域に囲まれていた自宅へ帰り、津波の犠牲になった。児童の遺族が起こした裁判では、学校側には災害時に児童を引き取ることになっていた家族が来るまで児童を保護する義務があったとして、東松島市に賠償を命じた判決が確定している。

【日和幼稚園訴訟】
石巻市の日和幼稚園の送迎バスが津波に巻き込まれ、園児の遺族4人が起こした裁判では、1審で「園長が十分に情報を収集せずにバスを海側に出発させたため、園児が津波に巻き込まれる結果になった」として幼稚園側に賠償を命じ、2審で和解が成立した。

【山元自動車学校訴訟】
宮城県山元町の自動車学校の教習生や従業員の合わせて26人の遺族が起こした裁判でも、1審で「教習生らを速やかに避難させる義務があった」として、学校側に賠償を命じ、2審で和解している。

【いずれも事後対応で過失認定】
これらの判決はいずれも、大地震が起きてから津波が来るまでの避難行動、つまり「事後対応」に過失があったと認めて、賠償を命じている。大川小学校の裁判でも1審は、事後対応の過失を賠償の理由とした。震災前の防災対策に不備があったこと、つまり「事前防災」の過失を賠償の理由としたのは、大川小学校の裁判の2審だけ。

【七十七銀行女川支店訴訟】
一方で、宮城県女川町にあった七十七銀行の支店で、高さおよそ10メートルの屋上に避難して津波の犠牲になった3人の遺族が起こした裁判では、「想定外の津波に備えるのは銀行の責任者に過大な義務を課すことになる」などとして、遺族側の敗訴が確定した。

【山元町保育所訴訟】
また、宮城県山元町の町立東保育所の園児2人の遺族が起こした裁判では、「海から1.5キロ離れた保育所に津波が到達する危険を予測できなかった」として遺族側の敗訴が確定している。

■2019.10.28  千葉県内の社会福祉施設や医療機関 11か所で浸水被害
千葉県が県内の社会福祉施設や医療機関の被害状況をまとめたところ、これまで人的被害は出ていませんが、11の施設で床上浸水の被害があった。

具体的には、茂原市が医療機関で2か所、高齢者施設で1か所の合わせて3か所、長柄町と酒々井町はいずれも高齢者施設で3か所ずつ、長南町は高齢者施設で1か所、市原市は県立循環器病センターの1か所となった。

このうち、数人の患者が入院している茂原市の医療機関では停電が続いていて、治療に大きな支障は出ていませんが、非常用の発電機がないため電源車の派遣を要請しているという。

また、長柄町の高齢者施設では一時30センチほど浸水し、39人の利用者が2階に避難した。この施設に向かう道路が、崖崩れによって通行できず孤立状態となっていて、現在復旧作業を進めている。施設では停電もしているため、道路が通行できるようになりしだいマイクロバスを使って利用者を隣の長南町にある施設に移動させたいとしている。

一方、長南町の別の高齢者施設では断水している。

千葉県によると、いずれの施設でもこれまでのところ、体調不良になった人がいるという連絡はないということだが、職員を派遣して詳しい状況を確認する。


孤立状態の施設も
長柄町にある特別養護老人ホームほしの郷では、25日午前10時すぎ、施設の横を流れる一宮川の水があふれ、1階部分がひざ下まで水につかる被害が出た。
施設によると、当時、39人の入居者がいたが、20人ほどの職員で事前にすべての入居者を2階に避難させた。
今のところけがをしたり体調を崩したりした人はいないということだが、漏電を防ぐため電気のブレーカーを落としたため、限られた明かりの中で不安な一夜を過ごした。水は25日夜遅くに引きましたが、26日朝から職員が泥かきなどの作業に追われていた。

道路が土砂で覆われて車での行き来ができなくなっていたことから、孤立した状態が続いていたが、26日夕方までに通れるようになり、孤立状態は解消されたという。施設では27日以降、入居者を一時的にほかの施設へ移すことを検討していて、入居者の健康への影響が心配されている。

施設長の加藤覚さんは「今まで川が氾濫したことはなく、本当にびっくりしました。安心して過ごせるよう早く元に戻したいですが、時間的にも金銭的にもどれくらいかかるのか見通せない状況です」と話していた。

■2019.10.28  台風襲来の前日に全員避難 宮城県大崎市の老人ホーム、岩手・岩泉豪雨の教訓生かす
台風19号豪雨で上流の吉田川が決壊し、水没した大崎市鹿島台志田谷地地区の有料老人ホーム「福祉の杜」は、台風襲来前日の12日に入所者全員を避難させ、全員の安全確保につなげた。3年前に岩手県岩泉町の豪雨被害で高齢者施設が被災した教訓を踏まえ、防災マニュアルに従って早め避難の手順を定めていた。

老人ホームには台風19号通過の際に80〜98歳、要介護3〜5の10人が入所。風雨の被害を受ける可能性が高まったため、スタッフが11日のうちに入所者の衣服などをまとめ、いつでも避難できる態勢を整えた。
市が高齢者らに対する避難開始を出した12日午後3時、約8キロ離れたJR鹿島台駅近くの関連施設に移動した。入所者8人は車いすだったため、役職員10人が車5台を出して対応した。

13日朝に吉田川が決壊し、志田谷地地区は185世帯が水没。13、14日には家屋2階などに取り残された住民51人が自衛隊のヘリなどで救出された。
老人ホームも事務所など木造2階の1階部分が、最大で1メートル50センチ浸水した。電動ベッドや寝具、電化製品、紙おむつなどの備品は水に漬かったが、職員を含めて全員が無事だった。

2016年8月の台風10号豪雨により岩泉町の高齢者グループホームで9人が死亡したのを受け、老人ホームは県の指導に従い、防災マニュアルを18年5月に改訂していた。
水害時の対応として、(1)前日からの情報収集(2)避難指示がなくとも危険と判断したらすぐ避難(3)安全な避難ルート確認−を定めた。訓練を重ねた成果が、迅速な初動につながった。

運営する株式会社「福祉の杜」の大友正社長(72)は決壊直後の13日朝、老人ホームに濁流が押し寄せ、ごう音とともに渦を巻いている様子を目撃した。
大友さんは「もし避難させていなかったら命の危険もあった」と振り返る。「介護を必要とするお年寄りなので、取り残されたらヘリやボートによる救出も難しい。早めに避難できて本当に良かった」と話し、胸をなで下ろした。

■2019.10.30  台風19号の避難所でノロウイルス集団感染
台風19号の被害で設けられた福島県いわき市の避難所で、ノロウイルスの集団感染が発生した。

いわき市の中央台公民館では92人が避難生活を送っていて、今月25日から20人に下痢やおう吐などの症状が確認された。症状が出た人からはノロウイルスが検出され、保健所は集団感染と判断し、保健師・看護師を配置したほか、施設の清掃を行った。

いわき市・小野雅彦主任「避難所は多数の人が生活、出入りされていて、感染を未然に止めるのは難しい」

20人の症状は快方に向かっているという。いわき市保健所は他の避難所でも予防対策を始めている。

 

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