残しておきたい福祉ニュース 1996〜社会福祉のニュース

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残しておきたい福祉ニュース

 2021年 
1月 * 3月 4月 5月 6月 7月 8月 * * * *

 2021. 4. 1 重大な児童虐待をなくしたい 大阪市で3か所目の児童相談所 1日開設
 2021. 4. 5 わいせつ教員対策強化 免職理由を官報に記載義務づけ 文科省
 2021. 4. 8 餓死の無戸籍女性と生前接点 大阪・高石市 説明矛盾
 2021. 4.14 「津久井やまゆり園」での採火式中止を求める要請書 【全文】


■2021.4.1  重大な児童虐待をなくしたい 大阪市で3か所目の児童相談所 1日開設
児童虐待への対応を強化するため、大阪市は1日、市内で3か所目の児童相談所をあす開設する。

「大阪市北部こども相談センター」は北区など7つの区を管轄し虐待の疑いがある子どもを一時的に保護するほか保護者の相談を受け付ける。大阪市では虐待の相談件数が2019年度までの10年間で約4倍に増えたことから新設され、保護される子どもたちの部屋はより家庭の環境に近づけようと市内の児童相談所では初めて1人1部屋が用意される。

大阪市の松井一郎市長は、「大阪の宝である子供たちが虐待によって将来を失うことがないように重大な児童虐待はゼロにしたいと思っている」と話した。大阪市は、5年後をめどにさらにもう一か所、児童相談所の開設を目指す方針。

■2021.4.5  わいせつ教員対策強化 免職理由を官報に記載義務づけ 文科省
文部科学省は教員がわいせつ行為などで懲戒免職になった場合、その理由を官報に記載することを今月から義務づけました。わいせつ行為などによる処分歴の有無を把握できるようにして、対策強化につなげたい考えだ。

教員が懲戒免職になって教員免許を失効すると、官報に氏名や失効日が記載されるが、処分の理由は記載されないため、欠格期間の3年を経過すれば再び免許が取得でき、教職に就けるようになる。

教員による児童や生徒へのわいせつ行為が後を絶たない中、文部科学省は対策を強化する必要があるとして、教員が懲戒免職になった場合、その理由も官報に記載することを今月から義務づけた。

具体的には「18歳未満の人または勤務先の学校の児童や生徒へのわいせつ行為やセクハラ」、「それ以外のわいせつ行為やセクハラ」、それに「交通違反や交通事故」、「職務上の不正行為」、「その他」の5つの区分で処分歴が記載される。

文部科学省は教育委員会や学校法人に、過去40年分の官報の処分歴を検索できるツールを配布していて、今回の改正によって、教員の採用時にわいせつ行為などによる処分歴の有無を把握できるようになる。

今回の改正について文部科学省は「わいせつ行為で処分を受けた教員を二度と教壇に立たせない観点からも、極めて有効な手段の1つだと考えている」としている。

■2021.4.8  餓死の無戸籍女性と生前接点 大阪・高石市 説明矛盾
昨年9月に大阪府高石市で無戸籍の高齢女性が餓死した問題で、女性が死亡する約4年前、夫の死亡届を提出するために同市役所を訪れていたことが8日、関係者への取材で分かった。市は問題発覚後、「生前に女性と接点はなく、無戸籍とは知らなかった」と説明しており、矛盾が生じている。女性が無戸籍であるとの情報が内部で共有されていれば、餓死を防ぐことは可能だったが、市は当時の経緯について「調査する必要はない」としている。

関係者などによると、女性は昨年9月に自宅で死亡。当時78歳だったとみられる。この家で約20年前から、内縁の夫と息子と3人で暮らしていたが、自身と息子は無戸籍だった。
平成28年8月に夫が死亡した際、女性は市役所に死亡届を提出。ただ、届け出人の欄には、届け出資格のない夫の知人男性の名前を書いており、窓口で職員に指摘されたという。

最終的に、死亡届は夫の入院先の病院長の名前で提出され、受理された。女性は自身が無戸籍のため、知人男性の名前を記入しており、窓口で理由についてやり取りをしたとみられる。知人は取材に対し、死亡届提出時に「市職員から電話があった。途中で奥さん(女性)に代わり、『(死亡届は)自分で何とかするので大丈夫』といわれた」などと証言。女性は切迫した様子だったという。

この後、女性は夫の遺産を頼りに息子との2人暮らしを始めた。昨年夏ごろに遺産が底をつき、最後は水や塩で飢えをしのいでいたが、9月に餓死した。看病していた息子は「自分たちは無戸籍なので助けを求められなかった」などと話し、自身も衰弱して一時入院した。
夫の死亡届を提出しにきた女性が、他人を届け出人としているのは不自然な状況だ。女性が無戸籍であることを把握し、支援の窓口につなぐなどすれば、直接の相談はなくても親子が孤立することはなかった。

高石市の阪口伸六市長は「(女性が)行政に相談がなく死亡されたのは残念」とし、同種事案の再発防止を掲げる。しかし当時、市としてどのような情報に接していたのか▽その情報はどこまで共有され、どう対処したのか−といった点を検証しないままでは、実効性があるのか不透明だ。

高石市は「死亡届が誰によってどのように出されたかを調べる必要はない。関係者への聞き取りの必要もなく、今後も調査する予定はない」と断言するが、淑徳大の結城康博教授(社会福祉学)は「経緯を真剣に調査しようとしないのは不誠実。再発防止の観点からも、踏み込んだ実態調査が必要だ」と話す。

一方、死亡届の後にも、市側が親子の状況を把握できる機会はあった。市によると、夫の死亡届が受理された後、税務課は夫所有だった自宅の相続者を特定するため、戸籍謄本を調べたが、親子の存在には気づけなかったとしている。夫の親族も相続を放棄し、自宅は誰も住んでいない家という扱いになった。

だが、実際は親子がその家で暮らし続けており、上下水道課は水道料金を徴収していた。無人の家から水道料金を徴収する−。この矛盾は約4年もの間、放置されていた。
市秘書課は「部署が職権で得た情報を別部署が目的外で使うのは、行政機関個人情報保護法で禁止されている」と説明。水道料金の情報などを内部共有するのは難しいとの見方を示す。

しかし、無戸籍者を支援する民間団体「民法722条による無戸籍児家族の会」の井戸まさえ代表は「個人情報の扱いは慎重になるべきだが、横断的な部署間連携を図れば、無戸籍であることを把握できるチャンスはあったはずだ」と指摘する。
国が把握する無戸籍の人は全国で約900人とされるが、同会の推計では約1万人に上る。無戸籍であることを悪いことと受け止めて自ら名乗り出ることができず、公的支援を受けられない人も多いという。

井戸代表は「行政が持つ既存のチャンネルを使いこなし、行政全体で無戸籍者を把握していくという姿勢が再発防止につながる」と話している。

■2021.4.14  「津久井やまゆり園」での採火式中止を求める要請書 【全文】
相模原市の知的障害者施設「津久井やまゆり園」で東京パラリンピックの聖火を採取することについて、遺族や家族が中止を求めて相模原市と神奈川県に提出した文書は以下の通り。

要請書
2021年4月13日
相模原市長
本村賢太郎 殿
神奈川県知事
黒岩祐治 殿
「美帆さん」遺族代理人 弁護士 滝本太郎
利用者尾野一矢 家族 尾野剛志

拝啓、ますますご清祥のことと存じます。

 2016年7月26日発生の、津久井やまゆり園事件に関しては、事件の後、さまざまな調整・ご努力を頂きありがとうございます。
 相模原市と神奈川県におかれては、日本国のものと比較して、より最重度の知的・重複障害者も生きる権利があると読めるメッセージを出していただいていることはありがたく存じます。
 ただ、相模原市と神奈川県にあっても、この事件が福祉国家を目指していた筈の日本の政策に正反対の、為政者による「偽りの安楽死」政策を求めてなされたテロ事件であるということを直視されておらず、その点が残念です。
 また、これらメッセージが、神奈川県が相応に関与して成立した「社会福祉法人かながわ共同会」における職員の育成の過誤・監督不十分による要因が確実にあったと思えるこの事件の後になってのこととなってしまったこと、まして、その他の問題を含めて、事件の背景となった利用者に対する虐待めいた事実が、同法人にあって未だ存在したと聞くにつけ、残念です。

 さて、本書では、今回のパラリンピックの「採火」の場所として、相模原市では神奈川県と協議して再建予定の「津久井やまゆり園」にてなすという計画であるとのことなので、この機会に下記の通り、要請します。

 本書は、遺族また被害者・家族らとして、それぞれにまとまった集まりをもつものではないため、一故人の遺族と一被害者家族の要請に止まりますが、おそらくは多くの遺族また被害者・家族らも同じ気持ちではではないか、と考え ます。
 要請者である「美帆さん」遺族は、殺された19人にはそれぞれに人生があったことを現実感をもって社会に示し、法廷で陳述もすることにより、あの刑事裁判を形ばかりの、あの被告人の思うままにさせなかった者であり、要請者である尾野剛志は、あの法廷で、被告人質問まですることによって被告人に対峙し、社会にも伝えてきた者です。

要請の趣旨
1 「津久井やまゆり園」でのパランピックの採火は、止められたい。
2 日本国に対し「最重度の知的・重複障害者も生きる権利がある、このようなテロ行為は決して繰り返させない。」と、7月26日の機会などに現地で宣言するなどしていただけるよう、強く働きかけられたい。
3 1の要請にも関わらず、ここでの採火を実施しようとする場合は、上記2の日本国の宣言が実現することを大前提とし、遺族や被害者・家族等々とも相談しつつ、採火式の開始前から採火した後まで終始、決してこれは「フェスティバル」ではない、「レクイエム」としての「採火」だと公然と、明白に分かり、その記憶として残るように、式次第、音楽、歌、言葉、鳴り物、衣服、車両、報道、記録等々、万事全般にわたり遺漏なきものとされたい。

要請の理由
1 要請者らが、この事実を知ったのは、3月23日の報道につき問い合わせがあったことによります。最初、なんのことなのか訳が分からず当惑するばかりでした。
 「美帆さん」遺族は結局、代理人を通じて、3月24日 「想像もしていなかったので驚きました。言うことはありません」というコメントを出したに止まりますが、これは正式に連絡などない段階で滅多なことを、まして公には言えず、もとよりオリンピック・パラリンピックとも本当に開催されるのか分からない状況でもあり、定めたコメントです。
 すなわち、同遺族は、これを知った当初から、下記の通りの感想を持ったものです。代理人弁護士への同日朝のメール内の文章から抜き出します。
@ 家族が犠牲になった場所で採火が行われるのは違和感があります。遺族の気持ちがないがしろにされるようで悲しい。残念に思う。
A 丸5年をむかえる今も悲しみは変わらない。歳月は関係ない。どんなに歳月が過ぎても悲しいままです。悲しいまま日々過ごしています。
B パラリンピックの採火を決めた方々には、感覚のズレを感じます。事件で自分の家族が犠牲になったらどんな気持ちになるか考えたことがありますか?どんな気持ちで日々いるのか考えたことがありますか? 自分の家族に 置き換えて考えて頂きたいです。

2 その後、3月末の正式発表の後の、4月に入ってから、神奈川県からは、下記の一文を含む「3月」付の文書が、全遺族あてとして届きました。

  3 東京2020 パラリンピック聖火リレーにおける採火式
 ・県では、県内の全市町村で生み出された火を一つに集める集火を行い、一つになった神奈川県の火を「ともに生きる社会かながわの火」とし、パラリンピック聖火リレートーチに点火して東京へと出立させる「集火・出立式」を実施します。
 ・市町村の採火式の具体的な内容については、各市町村において検討しているところですが、相模原市については、共にささえあい生きる社会の実現を願いながら相模原市の火を作ることとし、その採火式を「津久井やまゆり園」で実施することとしています。
 ・上記については、3月31日に記者発表いたしますので、その旨ご承知おきください。
 さらに、4月7日、「津久井やまゆり園園長」名の4月6日付文書が届き、そこには、
「事後報告となり申し訳ありません。別紙を添えておきましたので、お目通りをお願い致します。今後、相模原市からのお知らせ等が整いましたら、ご連絡させていただきますので、何卒よろしくお願い致します。」
とあり、そこには相模原市長の
「本市では、8月15日に津久井やまゆり園において、採火を実施することといたしました。」
なる記載を含む市長コメントの写しが届きました。
 これは、いったいいかなる経過なのでしょうか、まったく理解に苦しみます。ないがしろにされている、と感じます。

3 重要なことは、この事件が、43人が65分間の間に殺意をもって元職員に刺された事件であり、うち19人が亡くなったこと、それは一方的な「安楽死」政策をとるよう、男が国に求めたテロ行為の一環であったことです。
 一方、パラリンピックはまさに「祭典」です。「フェスティバル」の一環としての採火になってしまいます。これを完全に払しょくして「鎮魂・レクイエムとしての採火」にするのは、ほとんど不可能なことだと思われます。この点から遺族や被害者・家族はもちろん、多くの国民が違和感をもつことは、ごく自然のことです。
 上記のことから、ここで「採火」することは許し得ず、要請の趣旨に記載1の通り求めます。

4 もともと、パラリンピックは、その経緯・由来からして、知的障害者が参加できる余地は少なく、まして津久井やまゆり園の利用者のような最重度の知的・重複障害者が参加する余地はありません。
 それを、相模原市及び神奈川県は、分かっておられましょうか。
 どう工夫してみても、「フェスティバル」の一環としての採火になってしまう可能性が高いのに、ここで採火されるのでしょうか。43人の利用者が、一方的な「安楽死」政策をとるよう国に求めたテロ行為の一環として刺され、うち19人が亡くなった事件の場所で、探火するのでしょうか。
あの男や、一部にはいるとみられる同調者は、いったいどう感じ、どう記憶するでしょうか。

5 日本国は、未だ「最重度の知的・重複障害者も生きる権利がある、このようなテロ行為は決して繰り返させない。」という宣言をしてくれていません。 津久井やまゆり園の前でのみならず、首相や厚生労働大臣が示したどのメッセージにもそれがありません。あの男が要請した一方的な「安楽死政策」を、明白かつ明確に否定する言葉を、未だ示していないのです。
 事件は、障害者わけても自らの意思を明確に示すことなどできない最重度の知的・重複障害者の命という、まさに基本的人権の中核に関することであったことから、国内はもとより、世界に対して衝撃的な、歴史に残る事件であって、日本国と日本社会には、歴史的な課題として突き付けられたものでした。
 よって、要請の趣旨の2記載のとおり、求めます。

6 それでも、これを実施しようとされましょうか。もしするのであれば、せめて要請の趣旨3に記載の通り、するよう求めます。
すなわち、相模原市、神奈川県においてはもちろん、要請の趣旨2記載のとおり、日本国からも「最重度の知的・重複障害者も生きる権利がある、このようなテロ行為は決して繰り返させない。」との明白かつ明確なメッセージを、機会をとらえて発しさせて下さい。これが大前提です。
 そして、その上で、遺族や被害者・家族等々とも相談しつつ、採火式の開始前から採火した後まで終始、決してこれは「フェスティバル」ではない、「レクイエム」としての「採火」だと公然と、明白に分かり、そのとおりの記憶として残るように、式次第、音楽、歌、言葉、鳴り物、衣服、車両、報道、記録等々、万事全般にわたり遺漏なきものとされたい。
 以上の通り、要請します。
敬具

 

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