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 2021. 6. 1 東京新聞<社説>コロナ禍の東京五輪 大切な命を守れるのか
 2021. 6. 2 「五輪中止の選択肢はない」言い切る官邸 専門家はクギ
 2021. 6. 2 五輪開催「今の状況でやるのは普通はない」と尾身氏、選手村への酒持ち込みも疑問視
 2021. 6. 2 東京五輪「再延期」「中止の決断を」…都議会過半数、開催に慎重論 知事は「着実に準備」
 2021. 6. 3 「五輪とワクチンで勝てる」 菅首相の解散戦略とリスク
 2021. 6. 3 スッキリ出演識者 尾身会長の「何のための五輪」発言に怒「何のための映画館停止」
 2021. 6. 3 五輪「開催ありき」に尾身会長がくぎを刺す理由 海外のメディア、スポンサーの行動に不安
 2021. 6. 3 「東京五輪中止を」小金井市議会が意見書を可決 全国初か 自民、公明は反対 
 2021. 6. 4 尾身氏発言に強硬論貫く政権「五輪は例外」?強まる批判
 2021. 6. 4 丸川氏、尾身氏発言に「全く別の地平から見てきた言葉」
 2021. 6. 4 「黙らせろ」尾身会長の”謀反”に菅首相が激怒 意地の張り合いで権力闘争が激化 
 2021. 6. 5 尾身会長の提言を「自主研究」苦言スルーの田村厚労相に異論噴出
 2021. 6. 5 尾身氏の五輪警告を批判する「政府高官・自民幹部」誰? ネット「国民の前で言え」
 2021. 6. 5 尾身氏、五輪感染リスクに連日警鐘「近く考えを示したい」…政府警戒「開催に影響も」
 2021. 6. 6 竹中平蔵氏 尾身会長の五輪発言を批判「明らかに越権」「ひどい」
 2021. 6.15 ダウン症のiPS細胞を研究の結果2種類の遺伝子が原因と突き止める


■2021.6.1  東京新聞<社説>コロナ禍の東京五輪 大切な命を守れるのか
新型コロナウイルスの感染拡大がこのまま続けば、今夏の東京五輪・パラリンピックは「安心・安全」とは程遠い大会になる。人の命を危険にさらしてまで、開催を強行することは許されない。

東京や愛知など九都道府県の緊急事態宣言が、二十日まで延長された。感染力の強い英国型の変異株が広がる。医療が逼迫(ひっぱく)し、自宅で命を落とす人もいる。頼みのワクチン接種は遅れている。
東京では、一日当たりの新規感染者の減少傾向は鈍い。今後、より感染力の強いインド型が広がる恐れがあり、宣言解除の糸口は不確かだ。

そんな中、政府や東京都、大会組織委員会は、国際オリンピック委員会(IOC)とともに「開催ありき」で突き進んでいる。海外からウイルスが持ち込まれ、大量の人の流れによって感染が拡大する懸念は拭えない。

◆専門家の懸念に耳を
五月二十八日の菅義偉首相の記者会見は、開催国の最高責任者として失格である。
緊急事態宣言中でも開催するかを重ねて問われ、最後まで正面から答えなかった。「イエス」も「ノー」も言わないのは、宣言中であっても開催する余地を残したいからだ、と多くの人は思う。

その一週間前、IOCのコーツ調整委員長が「答えはイエスだ」と開催を明言し、世論の反発を招いている。その二の舞いを避けたかったのだろうが、これほど重要な問題に言葉を濁し、大会への信頼が得られるはずもない。

競技場に観客を入れることについて、首相がプロ野球などを例に前向きな姿勢を示したことにも驚いた。「本当に人々の命が守れるのか」と問いただしたい。専門家の警告に、真摯(しんし)に耳を傾けるべきである。

例えば、政府の有識者会議メンバーの舘田一博・前日本感染症学会理事長は「宣言が出されている状況で大会ができるとは思わないし、やってはいけないというのは国民皆のコンセンサスと思う」と語った。東京都医師会の尾崎治夫会長も、開催目安として「都内の一日当たりの新規感染者が百人以下」と指摘。開催条件として「無観客」も示している。

大会の選手と関係者は計九万人を超え、国内スポーツとは規模が違う。当初の半数以下に減らしたというが、多さに驚くばかりだ。より大胆に削減するべきだった。
滞在中の健康管理や行動管理も万全とは言い難い。選手らのワクチン接種が進むのは歓迎するが、過信はできない。出国前と入国時に加え、滞在中に頻繁に課されるウイルス検査も、すり抜けるサンプルは一定割合で存在する。必ず「穴」はある。

また、原則的に公共交通機関を使わず、訪問先は練習会場や選手村などに限られるというものの、膨大な人数の行動確認が本当に可能かどうかは疑わしい。

医療従事者の大量動員にも懸念が募る。一日最大で医師二百三十人、看護師三百十人。スポーツドクターや離職中の看護師らを中心に八割程度を確保した、とされるが、地域医療への影響を検証する材料は示されていない。

◆意義消え、増すリスク
大会は本来「人類の祭典」のはずだった。平和な環境の下で一堂に会し、肉体と命のすばらしさを謳歌(おうか)する。性別、人種、宗教、国境…。お互いの差異を超え、友愛や平等など普遍的な価値観や人間性を実感する場だった。

だが、コロナ禍で選手の練習や競技環境が激変し、人々の交流も見込めない。失業や生活苦が広がり、大会の過剰な商業主義、膨大な経費への批判も高まっている。
開催の意義は色あせ、リスクばかりが増大している。そして政治と行政が大会を特別扱いし、優先する姿勢が、国民の拒否感に輪を掛けている。

五月に本紙が行った都内有権者への意識調査で、「中止」を求める声は60・2%に達した。
こうした民意に背を向けて開催を強行し、感染が拡大する事態になれば、日本の政治、世界のオリンピズムは取り返しの付かない不信にまみれるだろう。
何より大切なのは、人々の命と健康だ。開催できるのは、それが守られるという確信を多くの人が共有した時だけである。

■2021.6.2  「五輪中止の選択肢はない」言い切る官邸 専門家はクギ
東京五輪の日本選手団へのワクチン接種が「味の素ナショナルトレーニングセンター」(東京都北区)で1日、始まった。初日は選手ら約200人が接種。7月中旬までに約1600人の選手・関係者が2回の接種を終える見通しだ。日本選手団の総監督で、日本オリンピック委員会(JOC)の尾県貢・選手強化本部長は「選手から『これで安心して競技ができる』との声があった」と話した。

日本選手団へのワクチン接種もこの日開始され、大会への準備は加速している。医療体制への負荷や感染状況の予測が難しいことを踏まえ、「五輪が国民のためになるのか」(閣僚の一人)との危惧もあるが、官邸幹部は「中止の選択肢はない」と言い切る。

「いよいよ、そういう時期がきた」。ある官邸幹部は、豪州選手団の来日で五輪に弾みをつけたい考えだ。加藤勝信官房長官は5月31日の記者会見で「大会が近づいてきているということの実感にもつながる」。大会組織委員会幹部も「これから入国する選手のニュースが増えれば、空気が変わってくるだろう」とみる。

ただ、新型コロナの収束は依然、見通せない。1日付で経団連の新会長に就任した十倉雅和氏は、大会開催について「いま政府がワクチン接種を含めていろんな態勢をつくっている。それを見極めて、安全・安心な態勢ができた上で実施する。そうでなければ、なかなか世論的に難しいものがある」と指摘。安全・安心を見極める判断材料として、医療体制の逼迫(ひっぱく)が緩和されることなどを挙げた。

そもそも、五輪開催の可否を判断する感染状況の基準が明確でないことが批判の対象にもなっている。


専門家でつくる政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長は1日の参院内閣委員会で、東京五輪・パラリンピックについて、「緊急事態宣言を出すステージ4(感染爆発)で開催すれば、さらに医療への負担がかかるリスクがあるということは(分科会メンバーの)みなのだいたいの意見だ」と述べた。

東京都医師会の尾崎治夫会長は、感染者が少ない豪州からワクチンを接種してきた選手団についてリスクは小さいとみる。ただ「かなりの数の自治体が事前合宿の受け入れを中止したのも事実。一部でうまくいっているから『きっと大丈夫だろう』というのは違う」と指摘する。尾崎会長は、コロナ下の東京で五輪を開催するなら「無観客から検討すべきだ」と訴えてきた。プロ野球などが有観客だから「五輪も大丈夫」と、なし崩しになるのを懸念する。

■2021.6.2  五輪開催「今の状況でやるのは普通はない」と尾身氏、選手村への酒持ち込みも疑問視
政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長は2日の衆院厚生労働委員会で、東京五輪・パラリンピックに関し、感染対策を徹底するのは大会組織委員会の義務だと訴えた。「今の状況で(大会開催を)やるのは普通はないわけだ。パンデミック(世界的大流行)の状況でやるのであれば、開催規模をできるだけ小さくして管理体制をできるだけ強化するのは主催者の義務だ」と述べた。

同時に「何のために開催するのか明確なストーリーとリスクの最小化をパッケージで話さないと、一般の人は協力しようと思わない」と指摘。大会開催が国内の感染状況に与える影響を巡り「(専門家としての評価を)何らかの形で考えを伝えるのがプロフェッショナルの責務だ」と語った。

衆院内閣委では、感染最小化が組織委の「当然の責任だ」との認識を重ねて示した上で「どのような状況で感染リスクが上がるのか、しっかり分析して意見するのが専門家の務めだ」と強調。移動の自粛などを要請する中でのパブリックビューイング開催や、選手村への酒の持ち込みが可能な状況について「一般の人の理解、協力を得にくくなる」と疑問を呈した。

■2021.6.2  東京五輪「再延期」「中止の決断を」…都議会過半数、開催に慎重論 知事は「着実に準備」
東京都議選(7月4日投開票)を控えた都議会で2日、代表質問があり、東京五輪・パラリンピック開催について、最大会派の地域政党「都民ファーストの会」が「再延期」に言及し、共産、立憲民主両党も中止や延期を主張した。新型コロナウイルス感染の収束が見通せず、世論は開催に厳しい声が多い中、主要5会派のうち所属議員が合計で過半数となる3会派が慎重論を訴える事態となった。

「感染状況を見据えながらあらゆる可能性を想定するべきだ」
小池百合子知事が特別顧問を務める都民ファの党代表、荒木千陽氏が知事に迫った。昨年3月に大会の1年延期が決まって以降も一貫して都の開催方針を支持してきたが、最近は各議員の地元で、有権者から慎重な意見が寄せられていた。代表質問では「中止」こそ打ち出さなかったものの、「無観客や再延期」を視野に入れるよう求めた。

中止を明言したのは共産だ。コロナ禍前は注文を付けながらも大会を支持していたが、感染拡大で転換。質疑では曽根肇氏が「変異株の祭典になりかねない。中止の決断を」と迫った。

立民の中村洋氏は「感染状況に懸念が払拭できなければ」との条件付きながら、延期や中止を主張した。「知事は最終判断はいつだと考えるのか。IOC(国際オリンピック委員会)に早期決断を働き掛けるべきだ」と訴えた。

都民ファ、共産、立民の3会派の議員は計71人で、都議会定数127の過半数を優に超える。数字上は大会にブレーキをかける決議案も可決できる。

◆自民幹部「理解を求めるのが難しい」
一方、政権与党の自民は、登壇した秋田一郎氏が「安全安心な大会のため、関係者が一枚岩になり最後の総仕上げに取り組むべきだ」と訴えた。ただ観客の扱いなどで政府や都、大会組織委員会の方針が定まっていないこともあり、会派幹部は「どう理解を求めるのか難しい」と漏らす。

連立与党の公明は、高倉良生氏が「万全の対策を講じることが極めて重要。安全な大会開催に向けた道筋を、数値を含め明確に示すべきだ」と求めるにとどまった。支持層も開催に慎重意見が少なくなく、悩ましい立場に置かれている。

その他の会派や都議選に参戦予定の主要政党では、東京・生活者ネットワークが「中止」。日本維新の会の地方組織、東京維新の会は近く態度表明する。国民民主党は「開催できるかを検証し、難しい場合は再延期」との立場。古い党(旧NHK党)は統一見解は出さず、各候補に委ねる。れいわ新選組は「中止」を訴えている。

◆小池知事は主張変えず
小池百合子知事は2日の都議会代表質問で、東京大会について「着実に準備を続けていく」と繰り返し訴えた。都民ファや共産から延期や中止を検討するよう求められても「大会を成功に導くには安全・安心な環境を整えることが最優先。実効性あるコロナ対策が重要だ」とかわした。

懸念される医療体制には「地域の医療に影響が出ないよう丁寧に調整する」と答弁。「引き続き感染の再拡大を徹底的に抑え込むため、コロナ対策に全力で取り組む」と強調した。

■2021.6.3  「五輪とワクチンで勝てる」 菅首相の解散戦略とリスク
自公両党のトップが、今国会を延長せず16日に閉じる方針を確認した。菅義偉首相は東京五輪・パラリンピックの対応に全力を注ぎ、秋の衆院解散・総選挙につなげる構え。ただ、内閣や自民党の支持率は政権発足から最低水準にある。コロナ禍の中の政権の行方は見通せない部分も多い。

「会期で終わりたいということを確認し合った」。2日午後、首相との昼食会談を終えた山口那津男・公明党代表が記者団にそう語ると、即座に与党内に「会期延長せず」の情報が駆け巡った。首相に近い党幹部は「今後の政治スケジュールが固まった」。政権中枢も「解散は今やるわけがない。ワクチン接種などやるべきことを進めていく」と周囲に語った。

通常国会で実行力をアピールし、東京五輪の成功を追い風に衆院を解散して、政権の継続を国民に問う――。首相はかねてそんなシナリオを中軸に据えていた。今国会を会期通り閉じれば、五輪の前や期間中に再び国会を開いて解散に踏み切る選択は事実上困難になり、首相が当初から描く解散戦略で進む公算が大きくなった。

もっとも、政権の現状は首相の想定通りとは言えない逆風下にある。

■2021.6.3  スッキリ出演識者 尾身会長の「何のための五輪」発言に怒「何のための映画館停止」
3日放送の日本テレビ系「スッキリ」では、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長が2日に「五輪を何のためにやるか、目的が明らかになっていない」と発言したことを特集した。

この発言に対して、コメンテーターとしてレギュラー出演している経営コンサルタントの坂口孝則氏は、飲食店などの時短営業や美術館などの文化施設の休業要請に対してこそ「何のためにやったか分からない」「科学的にどういう効果がったのか」と問いかけた。

尾身会長は2日の衆院厚生労働委員会に出席。五輪開催について「今の状況で普通はない」とした上で「そもそもこの五輪は一体何のためにやるのか、目的が明らかになっていない。そのことをしっかりとはっきりと明言することが、人々の協力を得られるかどうかの非常に重要な観点」と指摘した。

放送ではこの発言を受け、坂口氏が「個人的に思うこと」として「僕なんかから言わせると、何のためにやったか分からない時短営業だとか、何のためにやったのか分からない美術館とか映画館の(営業)停止というのが具体的にどういう効果があったのか、科学的に教えてもらいたい」と気色ばんだ。

坂口氏が、尾身会長が当初、移動では感染リスクが少ないとしていたが、現在は人流が増えることに対して懸念する発言をしていることにも言及。これに対して、リモート出演した医師は「これを科学的に証明することは極めて難しい」と話した。

■2021.6.3  五輪「開催ありき」に尾身会長がくぎを刺す理由 海外のメディア、スポンサーの行動に不安
政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長は3日の参院厚生労働委員会で、東京五輪・パラリンピックについて「こういうパンデミック(世界的大流行)でやるのが普通ではない。やるなら強い覚悟でやってもらう必要がある」と話し、徹底した感染対策を求めた。近く専門家の考えを示すことも明らかにするなど、開催ありきの政府や五輪関係者にくぎを刺す発言が相次いでいる。

尾身氏は、五輪開催時は全国から会場への観客の移動、パブリックビューイングなどでの応援といった要因から新たな人の流れが生まれると分析。「スタジアムの中だけのことを考えても感染対策ができない」と指摘した。「ジャーナリスト、スポンサーのプレーブック(規則集)の順守は選手より懸念がある」と、来日する大会関係者らの行動制限にも不安を漏らした。

分科会は、政府のコロナ対策に専門的な知見から提言を行う組織で、五輪開催の可否には関与しない。会長の尾身氏は、世界保健機関(WHO)西太平洋事務局に長年勤務。重症急性呼吸器症候群(SARS)に事務局長として対応した経歴を持つ。尾身氏の最近の苦言は、感染症の専門家の意見が反映されないまま五輪が開催に突き進むことへの危機感の表れだ。

参院厚労委では「(東京五輪の)組織委員会から非公式に接触があり、個人的な意見を述べたが、専門家の意見の正式な要請は今までない」と説明。それでも専門家の考えを示していくことに関し「(大会を)やるならどういうリスクがあるのか申し上げるのがわれわれの仕事」と強調した。
 菅義偉首相は「専門家の方々も感染対策をしっかりやるべきとの意見だろうから、しっかり対応していきたい」と話すにとどまっている。

■2021.6.3  「東京五輪中止を」小金井市議会が意見書を可決 全国初か 自民、公明は反対 
東京都小金井市議会は3日、「東京オリンピック・パラリンピック開催の中止を求める意見書」を賛成多数で可決した。市議会議長名で近く、菅義偉首相や小池百合子都知事に送る。共産など7会派の11人が賛成し、自民、公明など10人が反対した。立憲民主系ら2人は議場を退席した。

意見書は「東京五輪を見切り発車で強行するのは人命、国民生活尊重の観点から許容限度を大きく逸脱する」と五輪の中止や感染防止の徹底を求めている。提案者の1人、片山薫市議は「五輪中止を求める意見書可決は全国の地方議会初ではないか。私たちの意見を受け止め、最善の判断をしてほしい」と語った。
五輪中止を求める動きとしては、5月に小金井市議会の有志11人が意見書と同趣旨の要請書を国と都に送付。多摩地域の市議ら約130人も同様の要請書を送っている。

■2021.6.4  尾身氏発言に強硬論貫く政権「五輪は例外」?強まる批判
コロナ禍の中での東京五輪・パラリンピックのリスクを指摘する専門家の動きに、政権与党が警戒を強めている。五輪で国民の祝祭ムードを高める政権の狙いに、水を差しかねないと見るからだ。感染防止対策で専門家の知見に頼りつつ、「五輪は例外」とするかのような政権の姿勢に批判も出ている。

4日午前の記者会見で、田村憲久厚生労働相は政府対策分科会の尾身茂会長らの動きに釘を刺した。五輪に伴うコロナの感染拡大リスクをめぐり、尾身氏らが「考え方」を示そうとしていることについて、「自主的な研究の成果の発表ということだと思う。そういう形で受け止めさせていただく」と述べたのだ。

田村氏の発言は、尾身氏らの考えについて、政府に助言する専門家組織の公式な意見としては受け入れない構えを示したものだ。政府と二人三脚でコロナ対応に取り組んできた尾身氏らの言動に、あらかじめ「枠」をはめたとも言える。

政権与党は、コロナ禍のもとでの五輪に対し万全なリスク管理を求める専門家に、神経をとがらせる。

尾身氏らは最近、専門家同士で連日のように意見を交わし、五輪開催によるリスクを議論している。東京の感染状況が、緊急事態宣言の目安となるステージ4(感染爆発)なら医療体制への負荷が大きく開催は難しく、ステージ3(感染急増)でも無観客や規模縮小などが必要との認識も共有した。

2日には国会で「いまの状況で(五輪を)やるというのは普通はない」と語り、開催する場合の規模最小化を求めた。翌3日は「感染のリスクや医療逼迫(ひっぱく)への影響について評価するのは、プロフェッショナルとしての責任」と述べた。

■2021.6.4  丸川氏、尾身氏発言に「全く別の地平から見てきた言葉」
東京五輪をめぐり、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長が「五輪をこういう状況のなかで何のためにやるのか」などと発言したことについて、丸川珠代五輪相は4日の閣議後会見で「全く別の地平から見てきた言葉」との見方を示した。

尾身氏は2日の衆院厚生労働委員会で、「普通は(五輪開催は)ない。このパンデミック(世界的大流行)で」と指摘。「そもそも五輪をこういう状況のなかで何のためにやるのか。それがないと、一般の人は協力しようと思わない」と述べた。

この尾身氏の発言について問われた丸川氏は、「我々はスポーツの持つ力を信じて今までやってきた。全く別の地平から見てきた言葉をそのまま言ってもなかなか通じづらいというのは私の実感」と、五輪開催の意義を強調した。「できる対策は何かということに懸命に取り組んでいる。ひとつひとつの積み重ねが、本格的に社会を動かしていく時の知見になる」とも話した。

一方、ソフトボール女子豪州選手団を受け入れた太田市の清水聖義市長が、選手団が週1回程度の買い物をできるよう内閣官房に提案したことに対し、丸川氏は「入国後14日間に関しては、活動計画書に記載して国が確認をした用務先以外は行かないというルール。基本的には買い物に出ることは想定していない」と述べた。入国15日目以降の対応は、必要に応じて協議する考えも示した。

■2021.6.4  「黙らせろ」尾身会長の”謀反”に菅首相が激怒 意地の張り合いで権力闘争が激化 
東京五輪・パラリンピック開催をめぐり連日、新型コロナウイルス感染リスクについて強い警告を発している政府対策分科会の尾身茂会長に対し、菅義偉首相が激怒しているという。

「『黙らせろ。専門家の立場を踏み越え勘違いしている。首相にでもなったつもりなんじゃないか』などと怒りを爆発させています。尾身会長を菅首相が最近、ひどく疎んじているのは間違いありません。もともと御用学者として側に置いていた尾身会長が謀反を起こし、自分の敵になったという意識が日に日に強くなっています」(政府関係者)

菅首相と尾身会長の対立が深まったのは5月14日、延長される緊急事態宣言に北海道などを追加で含めるか、否かを協議した時だという。

「自らの決定を尾身会長にひっくり返され、顔を潰された感が強いです。今回の緊急事態宣言延長でも日本ショッピングセンター協会などから陳情を受け、百貨店などの休業措置等の緩和を狙う菅首相と、集中的な強い措置継続が必要と主張する尾身会長ら専門家との間で攻防がありました。結果的に今回は菅首相が押し切る形となりましたが、緊急事態宣言期間は延長しながらも措置は緩和する、というチグハグな判断となりました」(同前)

一方の尾身会長はこれまで政府判断の追認役でしかなかったという。それが北海道の一件以降、自身がワクチン接種を受ける姿をSNSで発信するなど、政治家的な動きや言動が目立つようになった。

「尾身会長は元々、医師や感染症の研究者としての評価が高いというより、むしろWHOなどで権力ゲームを渡り歩いてきた人です。政府が約1年前に専門家会議を廃止して、新たに分科会を立ち上げた時、尾身さんは政府の方針を追従する専門家としての役回りを演じきり、専門家会議副座長から分科会トップに昇格しました。五輪に関する発言は、専門家としてまっとうなお考えなのですが、『五輪についての明確なビジョンがない』とより踏み込んだ発言が最近、目立っています。自分を『国を守るリーダー』のように少し思い込んでいる節も感じられます。そういう意味でどっちもどっちです。菅首相と尾身会長の対立は『決めるのは自分』とお互いが意地を張り合い、権力闘争になっている感があります。そんなことにうつつを抜かしている場合じゃないんですけど…」

一方で五輪の組織委員会は「東京2020大会における新型コロナウイルス対策のための専門家ラウンドテーブル会議」を設置したが、メンバーにこれまで新型コロナウイルス対策を主導してきた尾身会長の名はない。

立憲民主党がヒアリングで「尾身先生もメンバーに当然、入っているのかと思った」と尋ねたところ、「入っていない」と素っ気なく回答した。

「専門家としてハッキリと意見するようになった尾身氏が煩わしく、菅首相に忖度し、外したんじゃないかという話を聞いた」(立憲民主党幹部)

尾身会長は国会で6月4日、東京五輪開催につい自身の考え方を近く示す方針を明らかにした。だが、田村憲久厚生労働相は「自主的な研究の成果の発表という形で受け止めさせていただく」とスル―した。菅首相に近い自民党の国会議員はこう語る。

「菅首相が絶対に東京五輪開催と舵を切っている時、尾身先生は何を言うんだ。何のための分科会なんだ、という思いです。田村厚労相は『専門家に引っ張られるな』と菅首相に叱責され、萎縮している。『今回の尾身発言で東京五輪・パラ中止という世論の流れにならないか、心配だ』と首相は周囲に愚痴っています」

東京五輪・パラリンピックの開幕まで50日を切った。だが、新型コロナウイルス感染状況は収まらず、東京都はほとんどの項目でステージ4、緊急事態宣言も継続中だ。これまでも分科会と政府や菅首相の意向が一致しないことは何度かあった。

「今回ばかりは菅首相の怒りがすごい。『これ以上、厳しい意見が続くと分科会を開かせない』とストップがかかる危惧も出ています。首相の頭の中には、東京五輪を大成功させて、自民党総裁選でも勝って続投を決める。その勢いで衆院解散して、勝利というイメージであふれている。そこに誰も口をはさむことができません。『野球もサッカーも、クラスターは出てないじゃないか』『専門性ある意見を聞くためであって、五輪開催はこっちで決めるんだ』と菅首相はよく言っています。だが、五輪をやったはいいが、感染拡大となれば、菅政権は退陣でしょう。勝負をかけるのはいいが、国民まで巻き込んでさすがにやばくないか、と党内でも心配する声が聞かれます」(自民党幹部)

菅首相と尾身会長の対立は今後、目前に迫った東京五輪開催にどう影響するのだろうか。

AERAdot.

■2021.6.5  尾身会長の提言を「自主研究」苦言スルーの田村厚労相に異論噴出
政府の「新型コロナウイルス感染症対策分科会」の尾身茂会長(71)の提言を6月4日、田村憲久厚生労働大臣(56)が「自主的な研究の成果の発表」と表現。ネットでは、異論が噴出している。

ことの発端は6月3日、尾身会長が東京オリンピック・パラリンピックの開催について懐疑的な姿勢を示したことによる。尾身会長は国会で「本来はパンデミックのなかで開催するということが普通でない」「開催するのであれば、政府もオリンピック委員会も厳しい責任を果たすべき」といい、さらにこう続けた。

「何のためにやるのか、しっかりと明言するのが重要」

そして尾身会長は、“大会を開いた場合の感染リスクなどについて提言を示す”とも明らかにした。

昨年7月、分科会のトップに就任した尾身会長。それから1年近くもの間、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため政府とともに奔走してきた。そんな尾身会長による異例の“苦言”。しかし、田村大臣は意に介さなかったようだ。

毎日新聞によると尾身会長が提言することに対し、田村大臣は「参考にするものは取り入れていくが、自主的な研究の成果の発表だと受け止める」とコメント。さらに「自主的にいろんなことをおっしゃっている。参考にさせていただくものがあれば、政府の中に取り入れていくことはある」と話したという。

尾身会長の提言を“自主的な研究成果の発表”とする田村大臣。しかし感染症のエキスパートによる意見をそうして矮小化してスルーしようとすることは、はたして厚生労働大臣としてふさわしい言動だろうか? ネットでは田村大臣の発言に対し、非難が相次いでいる。

《政府分科会会長提言は「自主的な研究」ではない。利用するだけ利用し、意に反するものは認めない》
《オリンピックの開催を最優先と考えて、医学・科学の知見を否定するかのような発言です。厚生労働大臣の発言とはとうてい思えません》
《自主的な研究?なら何のための分科会だよ》

■尾身会長に対して、精神論で抗う五輪の重役たち

尾身会長の行動は、“東京オリンピック開催推進派”をざわつかせている。

「丸川珠代五輪大臣(50)は尾身会長の苦言に対して、『我々はスポーツの持つ力を信じて今までやってきた。全く別の地平から見てきた言葉をそのまま言ってもなかなか通じづらいというのは私の実感』と持論を展開しました。

また尾身会長は国会で“大会成功のためにはなるべく小規模で”とも話しました。しかし、JOCの山下泰裕会長(64)は『全くそのとおりだと思う』とうなずきながらも『国民に迷惑をかけないようさらにもう一段努力する必要がある』とコメント。

“スポーツの力”や“努力”など、五輪の重役たちは尾身会長に対して精神論で抗っているように見えます」(全国紙記者)

尾身会長をないがしろにする態度が相次いでいるがーー。そのたび「何を頼りにすれば」と不安を覚えるのは、我々国民ではないだろうか。

■2021.6.5  尾身氏の五輪警告を批判する「政府高官・自民幹部」誰? ネット「国民の前で言え」
政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長が、国会答弁で、東京五輪・パラリンピックについて「今の状況で(大会開催を)やるのは普通はない」「何のために開催するのか」と、開催リスクや危険性を警告したことに、「政府高官」や「自民幹部」が不快感を示したと伝える報道が続いている。

政府高官が「尾身氏は判断する立場にはない」、自民幹部が「言葉過ぎる」「やると言っている」となどと発言したと報じられているが、やたらと匿名が目立つ。

ネット上には「自民幹部って誰?一体何様?」「自民幹部が誰なのか教えてほしい」「自民党幹部や政府高官というのは誰?氏名を公開しなさい」と指摘する投稿が相次いでいる。

「尾身会長さんへ不満があるのなら表に出てきて国民の前で話すべき」「国民の前で堂々と非難して欲しい」「国民の前で堂々と言え!」と求めている。

田村憲久厚生労働相は、尾身氏が近く出すとしている五輪開催による感染状況への影響や対策などに関する独自提言に対して「自主的な研究成果の発表だと受け止める」と述べている。

■2021.6.5  尾身氏、五輪感染リスクに連日警鐘「近く考えを示したい」…政府警戒「開催に影響も」
政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長は4日、東京五輪・パラリンピックでの感染対策について、専門家による提言を独自にまとめる考えを示した。尾身氏は対策の不十分さに繰り返し懸念を示しており、政府は開催への否定的な声を喚起しかねないと対応に苦慮している。

「感染リスクについて近々、関係者に考えを示したい」

尾身氏は4日の衆院厚生労働委員会で、政府や大会関係者らに提言を出す考えがあることを明らかにした。

尾身氏は2日の同委員会で「今の状況で(五輪を)やるのは、普通はない」と述べて以降、国会で連日、五輪開催時の感染拡大に警鐘を鳴らしている。観客の移動などで人の流れが生まれるほか、海外から多くの報道関係者やスポンサー関係者らの来日が見込まれるためで、規模縮小や対策の徹底が必要だと訴えている。

政府や大会組織委員会は、会場の観客数上限を6月下旬にも決める。尾身氏としては決定に先立って提言をまとめることで、対策に反映してもらいたい考えだ。

尾身氏は、新型コロナ対策の専門家の中心人物で、菅首相の記者会見にも同席するなど、政府に対して大きな影響力を持つ。この1年半近くは、コロナ対策の最前線に立ってきたこともあって、国民の知名度も高い。

尾身氏は「五輪を開くかどうかを判断する立場にないし、権限もない」と強調するが、政府関係者の一人は、提言について「開催に影響を与えるかもしれない」と警戒する。

■2021.6.6  竹中平蔵氏 尾身会長の五輪発言を批判「明らかに越権」「ひどい」
慶応大学名誉教授でパソナ会長の竹中平蔵氏が6日、読売テレビで放送された「そこまで言って委員会NP」に出演。政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長が国会答弁で、東京五輪・パラリンピックについて「今のパンデミックの中での五輪開催は普通ではない」などと発言したことを「明らかに越権」「ひどい」と批判した。

竹中氏は「こないだの座長の発言なんかひどいじゃないですか。だって分科会がオリンピックのことを決めるわけじゃないのに、明らかに越権でね」と批判。「本当にエビデンスがないと私も思いますけど、人流を止めればいいんだとか、なってるでしょ。しかし、人流を止めてロックダウンした国でも抑えられなかったんですよ」と尾身氏の言う「人流」と感染拡大に関しては「エビデンスがない」とまで言い切った。

さらに怒りは収まらない様子で「分科会がまた変なことを言う可能性がある、“社会的に専門家だと思われてる”から」と皮肉り、「それ(分科会)に対して反対する決断をするのが政治的に難しくなる可能性があります。専門家として、個人で言うのはいいんです。しかし、国会で(分科会の)座長として言ってるんですから、あれは明らかに、矩(のり)を踰(こ)えてますよ」とヒートアップしていた。

小泉内閣で竹中氏が総務大臣を務めた際、菅義偉首相が副大臣を務めており、竹中氏は菅首相のブレーンの1人とされる。この日の番組で「菅総理のブレーンの…」と紹介されると、「ブレーンじゃないですけど言いますけど」と苦笑いしてスルーする場面もあった。

■2021.6.15  ダウン症のiPS細胞を研究の結果2種類の遺伝子が原因と突き止める
大阪大学の研究グループは、ダウン症の新生児から作ったiPS細胞を使い、脳の発達の妨げとなる遺伝子を発見。

大阪大学医学部附属病院の北畠康司准教授らの研究チームは、ダウン症の新生児の血液からiPS細胞を作り、ダウン症で脳の発達を妨げる「アストロサイト」と呼ばれる細胞に分化させて研究。

その結果、ダウン症のiPS細胞は、アストロサイトの増殖が著しく早く、2種類の遺伝子が原因となっていることを突き止めた。

ダウン症は先天性の疾患で、脳の発達に障害が起こることが知られているが、その理由はこれまで解明されておらず、北畠准教授は、「今回発見した2種類の遺伝子について研究し治療法の開発につなげたい」と話す。

 

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