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 2021. 7. 2 大規模な院内感染 経験した医師ら3人が語ったこと【手記全文】 NHK
 2021. 7.21 厚生労働省は接種と因果関係があると結論づけられた事例はないとする見解
 2021. 7.21 東京都 新型コロナ 4人死亡 1832人感染確認 1800人超は1月以来
 2021. 7.22 「残念ながら最悪のシナリオを辿っている」東京五輪後に国民が被る大きすぎる代償
 2021. 7.27 東京で過去最多の2848人感染 半年ぶりの2千人超
 2021. 7.27 4連休、18万人が首都圏脱出 意外な施設で人出増
 2021. 7.27 菅首相、五輪中止の選択肢「ない」 人流減を理由に
 2021. 7.27 大阪で新たに741人が感染 5月以来の700人超え
 2021. 7.28 止まらぬ東京の感染拡大
 2021. 7.30 東京都内感染、2週間後には4532人の見通し…「経験したことない爆発的な感染拡大」
 2021. 7.30 岩手知事「東京はロックダウン必要」 感染急拡大で


■2021.7.2  大規模な院内感染 経験した医師ら3人が語ったこと【手記全文】 NHK
新型コロナウイルスの大規模な院内感染が発生し、患者43人が死亡した東京 台東区の永寿総合病院の病院長が1日、記者会見しました。この中では、大規模な院内感染を経験した看護師や医師、3人の手記が紹介されました。対応に追われた看護師と、患者23人が亡くなった血液内科で勤務する医師、そして、みずから感染して一時は人工心肺装置ECMOを使った治療を受けた内科の医師の手記全文です。

看護師「仲間を戦地に送り出しているような気持ちに」
患者さん109名、職員83名もの感染者を出し、原疾患で闘病中の患者さん43名が亡くなられました。亡くなられた患者さんのお荷物から、これまでの生活や大切になさっていたもの、ご家族の思いなどが感じ取られ、私たち職員だけが見送る中での旅立ちになってしまったことを、ご本人はもちろん、ご家族の皆様にもおわびしながら手を合わせる日々でした。

感染の拡大が判明した当初は、患者さんが次々と発熱するだけでなく、日に日にスタッフにも発熱者が増え、PCR検査の結果が病院に届く20時頃から、患者さんのベッド移動やスタッフの勤務調整に追われていました。なかなか正体がつかめない未知のウイルスへの恐怖に、泣きながら防護服を着るスタッフもいました。防護服の背中に名前を書いてあげながら、仲間を戦地に送り出しているような気持ちになりました。

家族がいる私も、自分に何かあったときにどうするかを家族に伝えました。幼い子供を、遠くから眺めるだけで、抱きしめることができなかったスタッフ、食事を作るために一旦は帰宅しても、できるだけ接触しないようにして、ホテルに寝泊りするひとり親のスタッフもいました。家族に反対されて退職を希望するスタッフも出てきましたので、様々な事情を抱えながら、永寿が好きで働き続けてくれるこの人たちを何とかして守らなければ、今の業務を統けていくことはできないと強く感じました。

4月4日、「頑張れ、永寿病院 地元有志一同」の横断幕が目に入り、「まだ私たちはここにいてもいいんだ」と思えました。涙を拭きながら非常口を開けたのを覚えています。支えて下さった地元の皆様には、本当に感謝しかありません。

私たちは、今回のウイルス感染症で多くのことを学びました。人の本質は、困難な状況に直面するとよりあらわになることを実感しました。困難な状況であるからこそ、思いやりのある行動や、人を優しく包むような言葉を宝物のように感じました。育児休業中のスタッフが「メディアで医療従事者が感謝されていますが、私はまだ何もできていない」と話してくれたときは、「その気持ちこそが宝物ですよ」と答えました。

少し前に、東京都看護協会から、院内感染が起きた他院への看護師の派遣を依頼されました。感染が拡大した頃の自分たちを思い出し、何とかしてあげたいところでしたが、精神科病棟への派遣なので、無理には頼めないなと思っていました。しかし、4人の看護師が志願して1週間の救援に参加してくれました。先週こちらに戻ってきて、「お役に立てるところがありましたので、大変でしたが行って良かったです」と報告してくれました。

これまで支えて下さった地域の皆様のため、支えてくれた家族やスタッフのため、地域の中核病院としての機能を再生させていかなければなりません。私たちはまだその途上にいますが、何よりも安心して医療が受けられる場を提供することが重要であると考えています。地域の皆様、関連する医療機関の皆様におかれましては、今後とも、より一層のご指導とご支援をお願いいたします。
内科医師「死ぬかもしれない 子ども達を頼む」
私は永寿総合病院に医師として勤務しております。動務中にコロナウイルス感染症にり患しましたが、入院治療にて回復し業務を再開しております。

私の場合、高熱と全身けん怠感で発症し、数日後に強い乾咳と呼吸困難が出現しました。当時、当院でもコロナウイルス感染者の受け入れを始めておりましたので、スタッフを含めて感染対策には細心の注意を払っておりました。

しかし、元々の病気で入院された方がいつの間にかコロナウイルス感染症を合併されるという状況が出現し、これは我々医療従事者でも予測困難な事態でした。私は、自らの発熱を認めた際に、症状の強さからまず間違いなくコロナウイルス感染症にり患しただろうと思いましたが、いつどこで感染したかが分からないことに慄然としました。

入院後、安静にしていても呼吸が苦しくなり、症状の強さと酸素数値の悪さから死を覚悟致しました。家族との面会はできず、妻には携帯電話で「死ぬかもしれない、子ども達を宜しく頼む」と伝えました。妻は大変なショックを受けただろうと思いますが、とにかく諦めずに治療を受けるよう励ましてくれました。

呼吸不全はさらに悪化し、人工呼吸管理を必要としましたが、それでも改善が得られず、ECMO(体外式人工肺)を導入することになりました。人工呼吸器使用中は鎮静剤が使われますので意識はありませんが、病状が改善して人工呼吸器が外れ、意識が回復した際には、生きていることが不思議でした。

入院期間は3週間以上におよび、退院後は、筋力の低下とコロナウイルス感染による肺障害から、日常生活を送れるようになるまで数週間のリハビリテーションを必要としました。思うように体が動かず歯がゆい日々が続きましたが、当院へ通院・入院されている方とそのご家族、そして共に医療に従事する仲間がきっと私の復帰を待ってくれているという思いから、頑張ることができました。

現在は体力が回復し、業務を再開しております。当院での新型コロナウイルスの院内感染により、入院されていた多くの方に感染が発生し、多大なご迷惑とご心配をおかけしたことを大変申し訳なく思っております。また、同感染によりお亡くなりになった方には、心よりご冥福をお祈りいたします。

外来・入院で担当しております患者様は、主治医が突然不在となったことにより、大変な不安を感じられたことと思います。当院は、通常の診療を取り戻すまでに、まだまだ時間を必要としておりますが、一日も早く安心して医療を受けていただくことができるよう尽力いたします。
血液内科医師「事態の重大さ その場に座り込んでしまった」
3月23日に院内感染が明らかになり、3月25日に2名の同僚が、微熱があるとのことで自宅待機となり、後日にPCR陽性しかも肺炎発症で長期離脱となりました。当初は5階病棟のみの集団感染と考えていましたが、4月上旬には8階の無菌室にまで広がっていたことが判明し、その時は事態の重大さにその場に座り込んでしまったことを思い出します。

とは言え、未感染の方を含め50人を超える診療科の患者様の命を守るべく、研修医ともども、少ない人数で日々防護服に身を包み、回診に当たる日々が1カ月以上続きました。また、休診により通院困難となった患者様への連絡にも明け暮れていました。

当院の患者層の特徴としては、大学病院など高度医療機関から依頼され、転院となった治療歴の長い、高度に免疫機能が低下した高齢者が多く、アビガンやその他の良いと思われる治療薬などを投入するも効果に乏しく、残念ながら最終的に血液内科だけで23名の患者様がお亡くなりになりました。

血液内科専門医が圧倒的に少ない城東地区において、深い反省を込めて、二度と院内感染を繰り返さない体制を整えつつ、患者様に安心して当院での血液疾患の治療を受けていただけるよう、一層の努力をして参る所存です。

■2021.7.21  厚生労働省は接種と因果関係があると結論づけられた事例はないとする見解
新型コロナウイルスのワクチン接種を受けたあとに死亡が確認された人について、厚生労働省は接種と因果関係があると結論づけられた事例はないとする見解を示しました。

これは厚生労働省が21日夜開いた専門家部会で報告しました。

それによりますと、今月11日までにファイザーかモデルナのワクチンの接種を受けた人は合わせておよそ3760万人で、このうち男女667人が接種後に死亡していたことが確認されました。

▽ファイザーのワクチンでは100万人に18.3人、
▽モデルナでは100万人に2.8人の割合となっています。

接種と死亡との因果関係については、664人が情報不足などで評価できず、3人は因果関係が認められなかったということです。

また、血小板減少症やくも膜下出血を起こして死亡した1人については、唯一「因果関係が否定できない」としていましたが、「因果関係は評価できない」という見解に改めました。

厚生労働省は、これまでに死亡が確認された人について「接種と因果関係があると結論づけられた事例はなく、統計的に因果関係が認められる症状もない」としています。

一方、ファイザーかモデルナのワクチンの接種を受けた男女30人に、心臓の筋肉や膜に炎症が起きる「心筋炎」や「心膜炎」が確認されました。

▽ファイザーのワクチンでは100万人に0.8人、
▽モデルナは1.1人の割合で、多くの人は軽快するか回復しているということです。

また、ファイザーかモデルナのワクチンの接種を受けたあとに、国際的な指標でアナフィラキシーに該当する症状が確認された人は合わせて327人でした。

▽ファイザーのワクチンでは100万回の接種につきおよそ6人、
▽モデルナは100万回におよそ1人の割合となっています。

厚生労働省は、現時点で接種体制に影響を与える重大な懸念は認められないとして引き続き接種を進めていくことにしています。

■2021.7.21  東京都 新型コロナ 4人死亡 1832人感染確認 1800人超は1月以来
東京都内では、21日新たに1832人が新型コロナウイルスに感染していることが確認され、ことし1月16日以来、1800人を超えました。水曜日としては最も多くなり、1週間前の水曜日よりも680人以上増えていて、感染の急拡大が続いています。都によりますと、21日は大きなクラスターが確認されていないにも関わらず1800人を超えたということで担当者は「市中で広く感染が広がっている。どこで感染してもおかしくない状況だ」と話しています。

東京都は、21日都内で新たに10歳未満から100歳以上までの男女合わせて1832人が新型コロナウイルスに感染していることを確認したと発表しました。
1800人を超えるのはことし1月16日以来で、水曜日としては最も多くなりました。
また、1週間前の水曜日より683人増え、感染の急拡大が続いています。
21日までの7日間平均は1277.6人となり、前の週の155.2%でした。
増加比が150%を超えるのはことし1月13日以来です。

都によりますと21日は大きなクラスターが確認されていないにも関わらず、1800人を超えたということで、担当者は「市中で広く感染が広がっている。どこで感染してもおかしくない状況だ」と話しています。

そのうえで、「感染の増加ペースが早く、22日からの4連休でさらに拍車をかける可能性もある。4連休は不要不急の外出自粛をいっそう心がけてもらいたい」と呼びかけています。

21日の1832人の年代別は▼10歳未満が76人、▼10代が130人、▼20代が577人、▼30代が410人、▼40代が294人、▼50代が233人、▼60代が64人、▼70代が25人、▼80代が13人、▼90代が9人、▼100歳以上が1人です。

感染経路がわかっている648人の内訳は、▽「家庭内」が最も多く374人、▽「職場内」が110人、▽「会食」が51人▽「施設内」が38人などとなっています。

また、東京オリンピックの選手村に滞在する外国籍の競技関係者1人のほか、大会の委託業者の3人の感染も確認されました。
これで都内で感染が確認されたのは19万3062人になりました。

一方、21日時点で入院している人は20日より78人増えて2466人で、ことし4月から5月にかけての第4波でのピークだった5月16日の2431人を上回りました。
「現在確保している病床に占める割合」は41.3%です。

都の基準で集計した21日時点の重症の患者は20日より4人増えて64人で、重症患者用の病床の16.3%を使用しています。

また、自宅で療養している人はことし2月上旬以来、4000人を超えて4068人となりました。
また、都は、感染が確認された▼60代の女性と▼70代の男性2人、それに▼80代の女性の合わせて4人が死亡したことを明らかにしました。

このうち、70代の男性1人は、インドで確認された「L452R」の変異があるウイルスに感染していたということです。
このウイルスに感染して死亡した人はこれで5人目です。

また、60代の女性は1回目のワクチン接種を終えていたということです。
これで都内で感染して死亡した人は2276人になりました。
インドで確認「L452R」変異ウイルス 最多681人感染
東京都は、21日都内で新たに681人がインドで確認された「L452R」の変異があるウイルスに感染していることを確認したと発表しました。

1日に発表される人数としてこれまでで最も多かったのは20日の317人ですが、21日はその2倍以上となり、急増しています。
検査数も多くなっていて、21日ははじめて1000件を超えて1488件となり、681人が陽性と確認されたため、割合は45.8%となりました。
この割合もこれまでで最も高くなりました。

都は、22日から4連休に入ることを受けて、検査機関からの情報の取りまとめを前倒しして行ったため、検査数や感染者数がふだんより多くなったと説明しています。
681人のうち感染経路がわかっているのは192人で、▼家庭内が104人、▼職場内が43人、▼会食が27人などとなっています。

これでこの変異ウイルスへの感染が確認されたのは、都内で2951人になりました。
小池知事「きょうの数字は非常に大きい」
東京都の小池知事は記者団に対し「きょうの数字は非常に大きいものがある。一方で、重症者は少し増えて64人だが、全体を見ると、やはりワクチンの効果は出ていると思う」と述べました。

そのうえで「ワクチンは本当に『爆速』で打ちたい。区市町村はいったん進めようとしていたのをキャンセルせざるをえなくなっているが、今、集中的に打っていくことが感染者数の拡大に少しでも歯止めをかけられるのではないか」と述べました。
都内入院患者 第4波のピーク上回る
東京都内で新型コロナウイルスの感染が確認されて入院している患者は、21日時点で2466人となり、ことし4月から5月にかけての第4波でのピークだった、5月16日の2431人を上回りました。

都は現在、新型コロナウイルスの患者のために5967床を確保していて、病床に占める割合は、41.3%となりました。

■2021.7.22  「残念ながら最悪のシナリオを辿っている」東京五輪後に国民が被る大きすぎる代償
PRESIDENT Online
磯山友幸 経済ジャーナリスト

6月20日の緊急事態宣言解除による「人災」ではないか
残念ながら最悪のシナリオを辿っている。日本の新型コロナウイルス対策と東京オリンピックを巡る政府の対応である。

7月12日に4回目の緊急事態宣言が東京都に出されて以降も、新規感染確認者数の増加は止まらない。オリンピックの開会式まで1週間を切った7月17日の東京の感染者は1410人となり、年明けの第3波以来の規模となった。減少に転じる気配はなく、7月23日の開会式は最悪の感染状況の中で行われることになる。

いったい6月20日の緊急事態宣言解除は何だったのだろうか。あの時点では多くの人たちが再び感染拡大が起きることを懸念、まん延防止等重点措置に「緩める」ことに違和感を抱いていた。それでも政府は解除を決め、専門家もそれを追認した。明らかにその結果が開会式を前にした感染拡大である。政府の政策の失敗の結果だと言っていいだろう。あるいは「人災」と言えるかもしれない。

なぜあの時点で解除に踏み切ったか。病床に余裕があるということを理由にしていたが、感染が終息に向かっているというエビデンス(証拠)はなく、再拡大が懸念された。政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長は1000人超えを「残念ながら想定内」だと発言しているが、想定内だったのならば、なぜ解除を認めたのか専門家としての姿勢が問われる。

「解除」によって「中止の声」を封じ込めた
多くの国民が、6月20日の解除は、オリンピックを開催するためだったと感じている。6月20日の段階になっても多くの国民が「オリンピックはできるのか」と疑問を感じ、世論調査でも「中止すべき」という声が多数を占めていた。これに対して政府は緊急事態宣言を解除し、定員の50%か5000人の少ない方という観客上限を設けてスポーツやイベントなどを認めることで、オリンピック開催に道を開いた。その段階で菅首相は「無観客」も考えると明言していたので、この解除によって最悪でも無観客開催ができる状態に政府がもって行ったわけだ。つまり、6月20日に解除しなければ、国民の間から「中止」の声が強まっていた可能性があったのを、「解除」によって封じ込めたとみていいだろう。

その段階で菅義偉首相は「賭け」に出ていた。ワクチン接種が進めば、感染者が減り、開会式までに状況が一変するのではないか。まさに「ゲーム・チェンジャー」としてワクチンに賭けたわけだ。自衛隊による大規模接種会場の設置や、企業による職域接種の開始で、ワクチン接種は一気に進むかに見えた。内閣支持率もやや持ち直す気配が見えていた。ところが再びワクチン供給が滞り、自治体では予約を取り消す動きが拡大。再び怨嗟の声に満ちた。ワクチン接種をした高齢者の感染者数が大きく減少、ワクチンへの「賭け」が正しかったことが証明されつつあったタイミングでのつまずきだった。

失敗に終わった「インド株の水際対策」
また、インド由来の変異型ウイルス(デルタ株)が予想以上に拡大したことも菅首相が賭けに「負ける」要因になった。変異株によって若年層での感染が爆発的に増加、重症化する事例も出始めた。感染力も重症化度も従来株以上という当初の見立てが証明されつつある。変異型の流行は、菅首相にとっては不運のようにも見えるが、実際はこれも政策の失敗に起因していた。「水際対策」の失敗である。

「文藝春秋」8月号で、政府分科会のメンバーである小林慶一郎慶應義塾大学教授が水際対策の「失敗」を暴露している。インド株を日本に持ち込ませないために水際対策を強化するよう分科会で主張。「インド等からの入国者の停留(検疫法が定める宿泊施設での待機)を豪州、NZと同じように十四日間にすべきだと言った」のだという。これに対して厚労省は「三日間の停留のあとは、十一日間の自宅待機となっていて、合計十四日間は待機しているから大丈夫だ」と答えていたという。国内でインド株感染者が次々に確認されるに及んで、5月28日から10日間の停留に延長されたが、遅きに失したことで、感染爆発へとつながった。小林教授は「インド株の水際対策は失敗に終わりました」と結論づけている。

「エビデンス」を示さないから、要請も無視される
小林教授は2020年夏の段階で、徹底的にPCR検査を実施することを政府に求める提言書を有識者と共にまとめた。検査の徹底でウイルス感染者を炙り出すことでウイルスを抹殺する戦略を求めたわけだが、結局、目立って検査数は増えなかった。結果、感染経路がほとんど解明できずにきた。感染経路や感染理由が明確に分からなければ具体的な対策のしようもない。飲食店が槍玉に挙げられ、アルコールが悪玉として排除されているが、多くの飲食店経営者などが酒を原因とする「エビデンス」が不十分だと感じている。

人々が納得できる「エビデンス」を政府が明確に示さないから、繁華街の飲食店で要請を無視して酒を提供す店が続出、若者を中心に店は満員盛況といった有様になっている。

そんな最中、西村康稔経済再生担当相が、要請に従わない飲食店に、取引先金融機関から改めて要請させることや、取引先酒販店に取引を停止するよう求めることを公表。そうした政府の「高圧的なやり方」に反発が広がった。西村氏は方針撤回に追い込まれたが、これも多くの国民が政府をもはや信用しなくなっていることの現れだった。

「安心安全な大会」が大きく揺らぎだした
菅首相は、まさしく壊れたテープレコーダーばりに「安全安心な大会を実現する」と繰り返して来た。ところが、その「安全安心」も大きく揺らいでいる。

選手団などからPCR検査で陽性になる人が続出。7月17日には15人、18日には10人が確認された。東京晴海の選手村の中でも感染者が確認されている。菅首相が国会答弁で繰り返した「国民と大会参加者の導線は完全に分ける」という施策も、「いい加減」であることが次々と判明している。到着ロビーでの動線が一般客と分離されておらず、トイレも同じだったことが野党の追及で明らかになった。また、ホテルに宿泊している経過観察中の記者などが15分以内ならコンビニに買い物に行けることになっていたことも分かった。ルールを破って外出している人も多く出ているという話も流れている。

国際オリンピック委員会のトーマス・バッハ会長も小池百合子都知事に会った際に、「日本の皆さんのリスクはゼロ」と発言。参加者から感染者が出ている中での「根拠なき発言」にネット上では大炎上する事態になっている。

組織委が赤字を払えなければ、都民にツケが回る
「菅首相は選挙しか興味がない」と自民党のベテラン政治家は言う。「会って飯を食っても選挙の話しかしない」と言うのだ。菅首相は、緊急事態宣言を出すかどうか、オリンピックをやるかどうか、無観客にするかどうか、もすべて「選挙に有利に働くかどうか」で決めてきたのかもしれない。菅首相からすれば、ワクチン接種を進めて「ゲーム・チャンジャー」にして、オリンピックを実施し、成功裏に終わらせれば、内閣支持率は一気に回復すると期待したのだろう。だが、残念ながら菅首相の思うようには進んでいない。

時事通信が7月16日に発表した世論調査(調査期間7月9日から12日まで)によると、菅内閣の支持率は29.3%と発足以来最低を記録、「危険水域」とされる20%台に沈んだ。不支持率も49.8%に急上昇した。これに続いて、ANNが7月19日に実施した世論調査でも内閣支持率が29.6%に留まった。ワクチン接種の進み具合について66%が「うまくいっていない」と答えており、菅首相の賭けが外れていることを示している。

「競技が始まれば、日本選手の活躍に熱狂して、やって良かったというムードに変わるんじゃないか」と幹部官僚は言う。だが、短い祭典が終われば、そのツケをどう処理するか、という問題に直面する。

無観客となったことで、観光収入など経済効果はほとんど見込めない。国立競技場の建設や道路工事などにすでに3兆円以上が使われたが、チケット収入もなく、赤字が残ることになりそう。赤字は組織委員会が負担できなければ東京都が被ることになっており、結局は都民に税金の形でツケが回る。各国の首脳などの来日キャンセルが続いており、いわゆる五輪外交のメリットもない。新型コロナ対策の経済政策もあり、国の借金は1200兆円を超えている。国民の大きな犠牲を横目に、オリンピックがいよいよ始まる。

■2021.7.27  東京で過去最多の2848人感染 半年ぶりの2千人超
東京都は27日、新型コロナウイルスの感染者を新たに2848人確認したと発表した。第3波の1月7日の2520人を超えて過去最多となった。2千人を超えるのは1月15日(2044人)以来約半年ぶりで、8日連続で1千人を超えた。埼玉、千葉、神奈川の首都圏3県でも感染は急拡大し、千葉県の熊谷俊人知事は28日にも政府に緊急事態宣言を要請する考えを示した。埼玉、神奈川両県も要請する方針。

東京都の27日までの1週間平均の新規感染者数は1762・6人で前週の149・4%。感染者数の急増は4連休中に医療機関が休診した影響もあるとみられるが、4度目の緊急事態宣言が12日に出てから2週間経っても、感染急拡大はいまだ収まっていない。

27日の感染者2848人の年代別では20代951人、30代610人で半数以上を占める。40代466人、50代301人、10代275人と続き、若年層に感染者が集中している。65歳以上の高齢者は78人だった。

都内では、感染力の強い変異株(デルタ株)が広がり、市中感染の広がりを示す検査の陽性率(週平均)は26日時点で15・7%に達し、過去最高だった1月7日を上回った。

感染者の急増に伴い、病床逼迫(ひっぱく)の懸念も強まる。人工呼吸器か体外式膜型人工肺(ECMO)を使用とする都基準の重症者数は27日時点で82人に上り、1カ月前の37人を大きく上回る。重症化しやすい高齢者のワクチン接種が進み、ピークだった1月20日の160人と比べると抑えられているが、増加傾向が続いている。都の吉村憲彦・福祉保健局長は27日夜、高齢者の感染が減っている点などを挙げ、「第3波のピークとは、医療に与える圧迫は違う」と強調した。ただ、入院患者数は27日時点で2864人に達し、1カ月前より1415人増えた。自宅療養者数も6277人に上り、1カ月前の6倍強に急増している。

まん延防止等重点措置を適用中の首都圏3県でも感染は急拡大。千葉県では26日に過去最多の509人、27日にも405人の感染を確認した。同県の熊谷知事は「直近の足元の感染状況を見ると、政府との協議が仮に整わなかったとしても要請に向けて手続きに入りたい」と述べた。

埼玉県でも27日、過去最多の593人の感染を確認。大野元裕知事は同日、「宣言も含めてすべての可能性がテーブルの上にある」と述べた。神奈川県内でも27日、758人の感染が確認された。第3波の1月18日(957人)以降で最多で、約半年ぶりに700人を超えた。黒岩祐治知事は21日、「千葉、埼玉でも、いよいよ国に緊急事態宣言を要請するレベルにきたら、3県で一体となって国に要請していきたい」と発言していた。

■2021.7.27  4連休、18万人が首都圏脱出 意外な施設で人出増
東京五輪が開幕した22〜25日の4連休。東京都の小池百合子都知事は「不要不急の外出、都県境を越える移動は控えて」と呼びかけていたものの、都外に「脱出」する動きが目立った。

NTTドコモの携帯電話の位置情報から推定したデータをもとに、東京都内に住む人たちが連休の初日の22日、どこへ移動したかを調べた。同日正午時点のデータを前日21日の同時刻と比べた結果、首都圏の1都3県(東京、神奈川、千葉、埼玉)以外の道府県に約18万人が移動していた。先週土曜日の17日と比較しても、約12万人以上が首都圏外に出ていた。

21日と比較して特に多かったのが静岡県で、約2万3200人増え、1・98倍。京都府が約6200人増で1・96倍。北海道が約6千人増で1・36倍だった。この日は羽田発の航空便が混雑し、日本航空が80%ほど、全日空は午前中だけでも約95%の予約率だったが、沖縄は台風6号の影響で大幅に欠航し、夏休みに人気の観光地だがほぼ東京からの人の動きは見られなかった。

人出の増加率、高かったのは……

都内で人出の増加率が最も高かったのは、五輪とは無関係と思われるある施設の周辺だ。4連休だった22〜25日と前週の土日とを比較し、1千人以上増えた地点に限ると、最も増加したのは板橋区の戸田競艇場周辺の地点で2・61倍。八王子市の帝京大がある地点で1・97倍、羽村市の自動車工場がある地点で1・50倍と続いた。五輪の開会式があった国立競技場周辺の増加率は1・20倍にとどまった。

一方で、自宅観戦した人も多かったようだ。

視聴率調査会社ビデオリサーチの推計で、生中継を全国で視聴した人の数は7061万7千人。およそ2人に1人が見ていた計算になる。

関東と関西の協力する1100世帯からテレビを見ている人の動態データを取得し、「ながら見」を排除した視聴率を調査する「ティービジョン・インサイツ」(東京)が、開会式のテレビ中継の見られ方を分析。開会式で最も視聴者の「視線」を集めたのは、開始約20分後に行われた俳優でダンサーの森山未來さんのダンスだったという。

フードデリバリーの利用も増え、宅配サービスの「出前館」では、五輪の競技が始まった先週1週間の注文数が前年と比べて2倍以上になったという。

■2021.7.27  菅首相、五輪中止の選択肢「ない」 人流減を理由に
新型コロナウイルスの感染拡大をめぐり、東京都の1日の新規感染者数が過去最多の2848人となったことを受け、菅義偉首相は27日、首相官邸で記者団の取材に応じた。開催中の東京五輪を中止する選択肢は「ない」と明言し、「不要不急(の外出)は避け、五輪・パラリンピックはテレビなどで観戦してほしい」と呼びかけた。

首相は「感染者数が下げ止まらない中で五輪を続けても大丈夫か」との質問に、「(首都高などにおける)車の制限やテレワークなど、みなさんの(協力の)おかげで人流は減少している。そうした心配はない」と説明した。さらに、重ねて「中止の選択肢はないのか」と問われると、「人流も減っているしそこはない」と述べた。

ただ、過去の緊急事態宣言時に比べ、都心部の人出の減少幅は小さく、観光地の人出は増加している。首相は、増加が止まらない新規感染者数については、「40代、50代の入院が増えており、デルタ株の割合も急速に増加している。4連休の人流も含めて分析することにした」と説明。「各自治体と連携しながら強い警戒感を持って感染防止に当たっていく」と語った。

また、北海道がまん延防止等重点措置の適用を求めていることには、「まず酒類の提供(自粛)を、やるべきことをしっかりやってほしい」と述べ、まずは北海道が対策強化に取り組む必要性を指摘した。

首相は6月9日の党首討論で、五輪による感染拡大リスクについて「国民の生命と安全を守るのが私の責任だ。守れなくなったら(五輪を)やらないのは当然だと思う。それは前提だ」などと話していた。

■2021.7.27  大阪で新たに741人が感染 5月以来の700人超え
大阪府は27日、新型コロナウイルスの感染者が新たに741人確認されたと発表した。1日あたりの感染者が700人を超えるのは5月15日以来。感染者数は延べ11万549人となり、11万人を超えた。死者は確認されなかった。

感染者を年代別にみると、20代と30代で計379人で半分以上を占めた。

■2021.7.28  止まらぬ東京の感染拡大
東京都内で27日、新型コロナウイルスの感染者が2848人に上り、冬の第3波を超えて過去最多となった。第3波時よりも厳しい酒類提供の制限がかけられていたのにもかかわらず、これまでの最多だった2520人(1月7日)超えを食い止めることはできなかった。4度目の緊急事態宣言が出てから2週間が過ぎたが、感染拡大は収まることなく、初めて3千人を超える懸念が強まっている。

■2021.7.30  東京都内感染、2週間後には4532人の見通し…「経験したことない爆発的な感染拡大」
新型コロナウイルスの感染拡大で、3日連続で新規感染者が過去最多を更新した東京都では、医療体制逼迫(ひっぱく)への懸念が高まっている。東京に隣接する埼玉と千葉、神奈川の首都圏3県と大阪府には29日、政府が緊急事態宣言を発令する方針を固めた。各地で警戒が強まる。

この日、新たに3865人の感染が確認された東京。1日当たりの感染者は前週比1・6倍のペースで増加している。都の新型コロナのモニタリング(監視)会議では、これと同程度の増加比で感染拡大が続くと、1週間後の週平均の新規感染者は2962人、2週間後には4532人になるとの見通しが示された。国立国際医療研究センターの大曲貴夫・国際感染症センター長は「経験したことのない爆発的な感染拡大に向かっている」と警鐘を鳴らした。

都医師会の猪口正孝副会長は、感染者の急増で入院調整が翌日以降に繰り越され、自宅待機を余儀なくされるケースが増えていると報告した。都によると、29日時点の入院患者は3039人で、1か月前に比べ倍増。自宅療養者は8477人で、ともに半年前の「第3波」時の水準だ。この日の死者は3人、重症者は前日比1人増の81人だった。

内閣官房のデータでは、28日時点の東京の確保病床使用率は47%だが、重症者用病床では64%に達している。猪口副会長は「余力があるように見えるが、決してそうではない。入院調整が遅れると、必要な医療が届けられず、状況は逼迫してきている」と訴えた。

神奈川県では29日、新たに1164人の感染が判明した。1日当たりの感染者が1000人を超えるのは2日連続で、過去最多を更新。黒岩祐治知事は同日夜、埼玉県の大野元裕知事と千葉県の熊谷俊人知事、西村経済再生相とのテレビ会議出席後、報道陣の取材に「感染者激増で病院の搬送調整も難航し始め、熱中症や他の病気でも病院が受け入れられない状況が間近に迫っている」と危機感をあらわにした。

感染は関西圏でも拡大している。大阪府の29日の新規感染者は932人だった。900人を超えるのは5月11日以来で、1週間前から471人増えた。30歳代以下が全体の67・8%(632人)を占め、60歳以上は5%(47人)にとどまった。

■2021.7.30  岩手知事「東京はロックダウン必要」 感染急拡大で
岩手県の達増拓也知事は30日の記者会見で、新型コロナウイルスの国内の新規感染者が1万人を超えるなど感染が急拡大していることについて、「欧州級の感染状況だ。東京はロックダウン(都市封鎖)的なことが求められていると思う」と述べ、大胆な対策をとる必要があるとの認識を示した。

知事は1週間の10万人当たりの新規感染者数が東京で100人を超えていることを挙げ、「ステージ4の感染状況に当たる25人ですら、あってはならない数字」と危機感を表明。五輪の後にはパラリンピックが控えていることにも触れ、「海外から大勢の人を受け入れ、都と他の道府県との間で人が盛んに動くと非常にリスクが高くなる」と懸念を示した。

そのうえで「昨年に五輪を1年延期すると決めたときにロックダウンのような徹底的な措置で人の動きを止めることを東京でやっておかなければならなかった」と主張。「今からでも遅くないので、そうした措置をとらないとパラリンピック開催のリスクだけでなく、東京都民や日本国民の感染リスクも非常に高まる危険な状態になっていく」と重ねて訴えた。

 

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