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 2018. 2. 8 障害者の地域移行支援へ 相模原事件受け <神奈川県>
 2018. 2.17 高齢者虐待被害、認知症で多く 目が届きにくい“密室”環境で
 2018. 2.18 異例の警備会社、正社員の4割超が障害者 離職率は0% きっかけは社員の告白


■2018.2.8  障害者の地域移行支援へ 相模原事件受け <神奈川県>
入所施設で暮らす重度の知的障害者らが、グループホーム(GH)などを利用して街中での生活を始める「地域移行」を推進するため、神奈川県は来年度、受け入れるGHに独自に経費を補助する地域移行支援策を打ち出す。殺傷事件が起きた相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」の再建に際し、入所施設を小規模化して地域移行を促進する構想が決まったことを受け、同様の方針を県内全域に広げる。

県立障害福祉施設に入所中の障害者を受け入れるのに手厚い人員配置が必要なGHには、受け入れ1人当たり年155万円を補助。重度障害者の体験利用を受け入れるGHや体験利用をする障害者にも補助を出す。

地域移行は、障害者本人の意思が前提とされ、やまゆり園の再建構想でも、入所者の意思確認を進める「意思決定支援」の過程が重視された。このため支援策では、意思決定支援の要とされる実務経験の豊富な「相談支援専門員」を複数配置した場合などにも補助を行う。県の担当者は「地域移行促進に向けたカンフル剤になれば」と話す。

「施設から地域へ」との障害者福祉の理念が近年広がりつつあるが、GHの人材不足などから地域移行は思うように進んでいないのが現状だ。県によると、県内の13年度末の入所者5053人のうち、16年度末までに地域移行したのは193人で目標の約500人には届いていない。重度障害者は入所施設に残る傾向があるという。

■2018.2.17  高齢者虐待被害、認知症で多く 目が届きにくい“密室”環境で
老人ホームなどの施設内で高齢者が虐待を受ける事案は近年、増加の一途をたどる。厚生労働省の全国のまとめでは、2015年度に408件を数え、前年度に比べ108件増加。過去最多を更新した。施設での虐待で、被害者の4分の3を占めるのが認知症高齢者だ。意思疎通や記憶に困難を抱える入所者が、外部の目が届きにくい“密室”環境の中で、被害を受けるケースが後を絶たない。

虐待の発生原因(複数回答)では、「教育・知識・介護技術の問題」が約65%と最多で、「ストレスや感情コントロールの問題」が続く。高齢者虐待防止法は自治体などに対し、虐待防止に向けた専門的な人材確保などを求めているが努力義務にとどまる。埼玉県が施設職員らに虐待防止研修を義務付けた「虐待禁止条例」(今年4月施行)のような取り組みはまれだ。

高齢者虐待問題に詳しい京都ノートルダム女子大の三好明夫教授は「全国的に介護人材が不足し、十分な研修が受けられないまま、入所者と接する職員も多い。家族は『預かってもらっている』との負い目と退所させられる不安から苦情を言いにくく、虐待の一因になっている」と指摘。「内部だけで防止は難しい。外部の目を入れることが不可欠だ」と投げかける。

■2018.2.18  異例の警備会社、正社員の4割超が障害者 離職率は0% きっかけは社員の告白
長らく障害がある人には難しいとされてきた警備業で、その雇用が4割を超える株式会社がある。警備会社「ATUホールディングス」(福岡市博多区)は37人の正社員中、16人が障害者だ。ほぼ全員が警備員として1日8時間、フルタイムで働き、工事現場などでの交通整理から、博多港のクルーズ船の旅客対応までこなす。「誰でも働くことを通して、社会の一員として実感が持てる」と代表取締役の岩崎龍太郎さん(41)。社員に対する目線は、温かい。

障害のある社員は19〜65歳で身体が6人、知的が3人、発達障害などの精神が7人。国内の警備会社は9千社を超えるものの、障害者を警備員として雇用するのは極めて異例。精神や知的の障害者は2002年まで警備業法の解釈により事実上「業務を適切に行えない」と判断され、“門前払い”されてきたためだ。

02年当時、鹿児島市内の警備会社に勤め、支店長だった岩崎さん。入社して1年がたったある社員から「精神障害がある」と打ち明けられ、03年から障害者雇用を手掛けた。「ちょっと難しい子という印象だったが、ちゃんと付き合いができた。偏見がない段階から触れ合えたのが大きかった」と振り返る。

社員や弱者を大切にする企業経営を説く坂本光司・法政大大学院教授とも知り合い、「障害者が日の目をみる警備会社をつくろう」と一念発起。12年創業のATUに翌年、合流した。


官公庁の受付、花火大会の会場警備、博多駅前陥没事故現場での誘導…。障害のある社員たちもこうした場で働く。同じ場所に長時間居続け、ひっきりなしに通る車や人などを定められたエリアに案内する警備員の仕事は時に過酷となり敬遠されがちで業界の人手不足は深刻だ。

ただこうした障害者は一度記憶したことを忘れず、長く同じ作業を続ける能力が高い。岩崎さんは「警備員として大きな力を発揮する」と太鼓判を押す。

半面、マニュアル通りで融通がききにくく、人と相対し、臨機応変に対処することは苦手とされる。幸い、海外からのクルーズ船は外国人客で「ジェスチャーで通用し、トラブルにもなりにくい」と岩崎さん。「ある時、議員さんが通行禁止の場所を通ろうとして、絶対通さなかったこともある」と苦笑する。

就労前の研修は手順やルールがそれほど多くないにもかかわらず、一般の人より覚えるのに時間がかかる。服用する薬によっては、忘れる作用もある。

法定上の教育時間が30時間であるのに対し、同社は平均1カ月を費やす。障害者の職場適応を支援する4人のジョブコーチのうち、3人は障害者だ。自覚しにくい熱中症など、教えるのが難しい感覚でも「同じ立場だからこそ、スムーズに伝わりやすい」。

各現場は1〜3人。毎朝、それぞれの体調などを電話などでチェックし、全員の健康状態をスマートフォンで一覧にして、共有できるようにしている。常に社員同士が調子を把握しているからこそ、無理な勤務を事前に避け、長期欠勤につながるケースも少ない。

精神障害がある同区の男性(47)は昨年8月から働く。埠頭(ふとう)の警備や交通整理などに携わる。「現場で緊張することもあるが、社内に障害のある人が多くて安心。このまま長く働き続けられたら」と前向きだ。

同社は国からの就労継続支援の補助は受けていない。年間売り上げは約1億円あり、黒字経営を続ける。

「障害がある人もみな働きたい。助成を受けていない会社で、少しでも税金を納める立場になれば、社員は誇りを感じる」と岩崎さんは力を込める。社会人大学院生として坂本教授の研究室や学会に所属し、警備業の会社に障害者雇用を促す活動も続けており、全国から視察も相次ぐ。

同社の離職率は現在0%。「社員を大事にして良質な経営を実現すれば人材も集まり、競争力も生まれる」−。大企業でさえ非正規が少なくない昨今の雇用のあり方にも、一石を投じそうだ。

 

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