残しておきたい福祉ニュース 1996〜社会福祉のニュース

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残しておきたい福祉ニュース

 2018年 
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 2018. 9. 1 創業者の名前冠して財団 スズキ会長、福祉貢献やスポーツ振興
 2018. 9. 2 障害者施設、切られる冷房 熱帯夜続いても「午後9時半まで」 福岡近郊、「熱中症が心配」
 2018. 9.13 平成30年度の「障害者雇用優良事業所等厚生労働大臣表彰」の受賞者
 2018. 9.24 分譲マンションでグループホームの運営は? 大阪地裁で係争中


■2018.9.1  創業者の名前冠して財団 スズキ会長、福祉貢献やスポーツ振興
スズキの鈴木修会長は31日、同社創業者の名前を冠した鈴木道雄記念財団を設立したことを明らかにした。鈴木会長が保有するスズキ株のうち25万株を財団に寄付した。31日終値換算で18億円。10月をめどに活動を始め、障害者や高齢者に福祉車両を寄贈したり、スポーツ振興のための助成を行ったりする。

鈴木会長は「今年1月に88歳の米寿を迎え、6月にはスズキの最高経営責任者を拝命してから40年の節目を迎えた。創業者の偉業をたたえるとともに、支援していただいた皆様に恩返しをしたい」と語った。

財団は今年1月に設立し、5月に公益財団法人の認定を受けた。





スズキの鈴木修会長は31日、私財を投じ、創業者で義理の祖父に当たる故鈴木道雄氏を冠した公益財団法人「鈴木道雄記念財団」を設立したと発表した。障害者や高齢者など福祉施設への車両寄贈、陸上などスポーツの普及・振興に資する助成を行う。
修会長が保有する全自社株57万株を拠出する。当初は25万株を資産財産とし、株式配当を財団運営に充てる。残る32万株は将来的に寄付するという。1月に一般財団法人を設立し、5月に公益認定を受けた。理事長は修会長が務め、10月から助成を始める。助成規模は年間1千万円程度。

同社は1920年3月、道雄氏が鈴木式織機として設立。52年に輸送用機器に進出して二輪車を発売し、55年には日本初の軽四輪自動車「スズライト」を市場投入した。90年に現社名となった。

浜松市南区のスズキ歴史館で記者会見を開いた修会長は「会社がここまで成長できたのは創業者の鈴木道雄、2代目社長の鈴木俊三をはじめとする鈴木家の存在がある」と振り返り、「土台を作ってくれた創業者の遺徳をしのんで財団を設立した。少しでも皆さんのお役に立てれば」と語った。

■2018.9.2  障害者施設、切られる冷房 熱帯夜続いても「午後9時半まで」 福岡近郊、「熱中症が心配」
岐阜市の病院で、エアコンが故障した部屋に入院していた患者5人が相次いで死亡する問題が発覚して2日で1週間。福岡市近郊の障害者支援施設に親族が入所中という女性から、特命取材班にSOSが届いた。「施設の冷房が午後9時半から朝まで消される。半身不随で感覚が鈍く体も不自由なので、熱中症が心配です」。こうした施設の暑さ対策はどうなっているのか。

女性が情報を寄せた施設は福岡県が設置主体で、社会福祉法人に経営を委託している。

女性によると、親族は脳梗塞で倒れ、リハビリのために入所している。この8月、夜に冷房がついたことは一度もなく、夜間は「送風」に設定されている。「熱い風が吹いている。窓を開けても風通しが悪くて涼しくならない。相部屋の人も『暑い』と言っており、冬場は寒くても暖房が切られるので毛布を着込まないといけない、と聞いた」
冷房を入れるよう施設側に頼んではと思うが、女性の親族は「やっと入れた施設に感謝している。苦情のようなことを言いたくない」と話しているという。

施設がある自治体に気象台の観測地点がないため、近隣である福岡市の8月の気温を調べてみた。午後11時の月間平均気温は29度。夜の最低気温が25度以上の熱帯夜でなかったのは1日だけだった。

施設に取材した。担当者は「確かに午後9時半〜午前7時半は冷房は効いていない」と認めた上で「窓は網戸付きで暑ければいつでも開けられる。扇風機の持ち込みも可能」と説明。夜間に冷房を切る理由を聞くと「以前からそう運用している。この夏も苦情などはなく、暑さで体調を崩した人もいない」と強調した。


九州各地の障害者支援施設に尋ねてみると、対応には「温度差」が浮かぶ。

熊本県社会福祉事業団の「県身体障がい者能力開発センター」(熊本市)は「毎日午前6時半から午前2時までエアコンをつけており、それ以降も暑ければ午前4時まで稼働する」。

鹿児島県社会福祉事業団の「ゆすの里」(同県日置市)では「常時エアコンをつけ、湿度や温度に応じて職員が調整する」という。

長崎県佐世保市の施設は昼夜問わず廊下だけ冷房を入れ、居室は入所者の希望に応じてつけたり、部屋の湿度や温度によって職員が調整したりしている。担当者は「1〜2人部屋で狭いため、冷えすぎて風邪をひく人もいる」と室温調整の難しさを語った。

一方で、経済事情もちらつく。ある障害者施設の職員は「経営が苦しく、電気代節約のため夜間はなるべくエアコンを切るよう指示された」と打ち明けた。



空調管理に関する国の基準はないのか。

厚生労働省によると、障害者自立支援法に基づく通知で「空調設備等により施設内の適温の確保に努めること」と定めている。同省障害福祉課は「エアコン稼働などは施設の判断」とした上で、「利用者の状況を踏まえて空調など適切な生活環境を支援するのは、基本の基本」と指摘した。

福祉サービスの苦情を受け付ける福岡県社会福祉協議会の運営適正化委員会の担当者は「施設利用者や家族、職員から『エアコンの効きが悪い。蒸し暑い』という相談がこの夏、数件あった。それでも夜間にエアコンを切るという施設は聞いたことがない」という。

気象庁が「命の危険がある災害」と表現した猛暑。意思表示が難しい障害者もいるだけに、家族の心配は尽きない。

女性が情報を寄せた冒頭の施設について、福岡県障がい福祉課は、本紙の取材をきっかけに「熱中症などの事故が起きないよう、必要に応じて冷房をつけるよう指導した」としている。

■2018.9.13  平成30年度の「障害者雇用優良事業所等厚生労働大臣表彰」の受賞者
厚生労働省は平成30年度の「障害者雇用優良事業所等厚生労働大臣表彰」の受賞者を決定した。 これは、9月の「障害者雇用支援月間」にあわせて、障害者の職業的自立の意欲を喚起するとともに、障害者の雇用に関する国民、とりわけ事業主の関心と理解を一層深めるため、毎年行っている。


平成30年度 障害者雇用優良事業所等厚生労働大臣表彰受賞者

障害者雇用優良事業所  21件

北海道
株式会社北海道健誠社 北海道旭川市7条通5丁目

岩手県
株式会社岩鋳 岩手県盛岡市南仙北2-23-9

宮城県
社会福祉法人永楽会 宮城県黒川郡大衡村大瓜字長町77-3

福島県
常磐パッケージ株式会社 福島県いわき市内郷白水町浜井場23-1

栃木県
株式会社栃木銀行 栃木県宇都宮市西2丁目1番18号

東京都
富士ゼロックス株式会社 東京都港区赤坂9丁目7番3号

東京都
第一三共株式会社 東京都中央区日本橋本町3-5-1

神奈川県
ハーベスト株式会社 神奈川県横浜市保土ヶ谷区岩間町2-120

新潟県
株式会社白旺舎 新潟県南魚沼郡湯沢町大字神立374-8

富山県
有限会社重松 富山県魚津市北中550-1

静岡県
株式会社村上開明堂 静岡県静岡市葵区伝馬町11-5

三重県
学校法人皇學館 三重県伊勢市神田久志本町1704

京都府
ローム株式会社 京都府京都市右京区西院溝崎町21

大阪府
タツタ電線株式会社 大阪府東大阪市岩田町2-3-1

鳥取県
社会福祉法人こうほうえん 鳥取県米子市両三柳1400番地

山口県
株式会社丸久 山口県防府市大字江泊1936番地

徳島県
株式会社キョーエイ 徳島県徳島市川内町加賀須野463番地15

長崎県
医療法人和仁会 和仁会病院 長崎県長崎市中里町96番地

熊本県
社会福祉法人ペートル会 熊本県球磨郡相良村川辺1771

大分県
フンドーキン醬油株式会社 大分県臼杵市大字臼杵501

鹿児島県
株式会社タイヨー 鹿児島県鹿児島市南栄3丁目14番地



優秀勤労障害者  23件

青森県
熊澤 隆
株式会社津軽新報社

岩手県
飯坂謙一
大井電気株式会社 水沢製作所

宮城県
早坂正信
ALSOK宮城株式会社

山形県
宮田徳彦
社会福祉法人恵泉会 特別養護老人ホーム永寿荘

栃木県
黒ア義仁
ヘイコーパック株式会社

東京都
並川 正
鹿島建設株式会社

神奈川県
小松智明
公益財団法人横浜市知的障害者育成会

新潟県
佐久間聡
大根田電機株式会社

静岡県
芹澤朋美
株式会社リースサンキュー

静岡県
神澤博幸
株式会社リースサンキュー

滋賀県
高嶋章光
株式会社平和堂 ビバシティ平和堂

兵庫県
倉内洋司
但陽信用金庫

和歌山県
稲住 明喜良
紀南パンジー株式会社

鳥取県
田村 利明
有限会社西川商会

島根県
石橋 直行
株式会社島根リネン

島根県
城市 貢
株式会社ジュンテンドー

広島県
吉川 真
社会福祉法人聖光みのり会

愛媛県
福山 壽
株式会社松山機型工業

高知県
門脇謙二
高知市農業協同組合

福岡県
村上浩子
株式会社ビー・ピー・シー

熊本県
早野浩行
九州武蔵精密株式会社

熊本県
田上えり子 
社会福祉法人敬愛会

鹿児島県
濱口 真
大口電子株式会社

■2018.9.24  分譲マンションでグループホームの運営は? 大阪地裁で係争中
障害者が暮らすグループホームを、住居用に販売された分譲マンションで運営することの是非が、大阪地裁で争われている。大阪市内にあるマンションの管理組合が、「住居以外の用途を禁止する管理規約に反する」と、グループホームを運営する社会福祉法人に対し使用禁止などを求めて提訴。法人側は「グループホームは利用者が共同生活を営む住居」として反論している。分譲マンションの利用を巡る訴訟はこれまでも司法判断が分かれており、グループホームが住まいとしての利用とみなされるか否かが注目される。

「住宅以外の使用は禁止」

訴状などによると、グループホームがあるのは大阪市内の15階建て分譲マンション。1階は店舗だが、2階以上(約250戸)は住戸となっている。
平成28年、管理組合は消防署からの指摘で、マンションの2室がグループホームとして使われていることを把握。管理規約では「住戸は『住宅』として使用することと定められており、他の用途に使うことを禁じている」として、法人に使用の中止を求めた。

だが、法人が応じなかったため、管理組合は規約に「専有部分をグループホームに供してはならない」という項目を追加。マンションの臨時総会での決議をへて、30年6月、法人に対する訴えを提起した。

管理組合側は訴えの中で、グループホームがあるとマンションは消防法上、映画館や病院、旅館などと同じ区分で、最も消防用設備や防火設備の設置基準が厳しい「特定防火対象物」とされ、規制や義務が重くなると主張。「放置すると他の違反行為も誘発しかねない」とも述べている。

「住宅として利用」と反論

こうした主張に、法人側は「利用者が生活し、住民票の登録もある」と述べ、“グループホームは住居”との視点から反論する。

訴訟資料や法人によると、住居の区分所有者に2室を借りてグループホームを運営。現在は知的障害のある40〜60代の女性計6人が暮らしている。利用者は平日、作業所で働くなどし、夕方に帰宅。夕食や入浴を終えると、部屋でテレビを見たりして過ごし就寝している。

法人側は、こうした実態にあわせ、障害者総合支援法が「共同生活援助(グループホーム)は障害者に対し、主として夜間、共同生活を営むべき住居で相談や入浴、食事の介護といった日常生活上の援助を行うこと」としていることを挙げ、管理規約には違反しないと反論している。

さらに、「防火設備の負担増加」の懸念は「マンション全体には及ばない」と否定した上で、「グループホームは約15年間もやってきて、過去の管理組合理事らは知っていた」「現在の利用者はここで8年以上も暮らしている」とも指摘。グループホームを禁じる規約改定は「狙い撃ちで、障害者差別を意図したもの」と主張している。

運営場所探しに課題も

分譲マンションの利用をめぐる訴訟は過去にもあり、判断は分かれている。

平成18年には、託児所の運営をめぐり、東京地裁が区分所有者の共同利益に反するとして管理組合側の使用禁止請求を認める判決を出した一方、17年には、マンション内に設けられた治療院に管理組合が営業停止を求めた訴訟で、東京地裁が「(マンションで)他にも同じようなことがあるのに、治療院だけに使用禁止を求めるのは権利の乱用」として請求を退けた。

一方、グループホームの立場からは違った問題点も浮かび上がる。

今回訴えられた法人は、マンションや一軒家など11カ所でグループホームを運営しているが、設置に難色を示されることもあり、「知人や不動産会社を通じて場所を探すことが多い」という。
また、大阪府生活基盤推進課は「土地や建物を確保してグループホームを整備すると多額の費用がかかる」と指摘する。

府と大阪市が26年に実施した障害者のグループホームに関する調査によると、回答があった府内のグループホーム1245戸のうち、67%が共同住宅(マンション、公営住宅など)にあり、戸建ての33%を大幅に上回った。同課は「集合住宅が多い都市部ならではの事情も影響しているのでは」と分析している。

大阪府では公営住宅でのグループホーム設置を後押ししているといい、障害者のグループホームがある共同住宅の64%を公営住宅が占めるという。

全国マンション管理組合連合会(東京都)の川上湛永(やすひさ)会長は「自らの『城』を守りたいという所有者の思いが、管理規約をめぐるトラブルの一因」としつつも、高齢化に伴い空室が目立つマンションも増えていると指摘。「共存、共生といった視点も必要になるのでは」としている。

 

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