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 2018. 4. 2 学習障害、タブレットで支援 音声読み上げや文字拡大活用
 2018. 4.19 補助金目的「障害者ビジネス」が横行する理由


■2018.4.2  学習障害、タブレットで支援 音声読み上げや文字拡大活用
学習障害(LD)など読み書きに困難のある児童生徒の学習を、情報通信技術(ICT)を使って支援しようとする取り組みが、京都府内の小中学校の通級指導教室で始まっている。音声読み上げや文字拡大ができるタブレット端末の機能やアプリを使い、子どもが課題とする能力を補って意欲の向上につなげる狙いがある。一方、本人に合った教材の開発や機器の準備など予算面での課題も残る。

タブレット端末に表示されたマークを押すと、「観光客数の推移…」とグラフに書かれた文言が読み上げられた。京都市北区の市立小学校。読み書きに困難がある男児(11)は端末を片手に、クラスメートと一緒に授業を受ける。「授業が分かりやすく、楽しくなった」と笑顔を見せた。

男児は4年時の冬から、板書をノートに書き写せなかったり文章を途中で読めなくなったりするなどLDが疑われる症状がみられ始め、特性に応じた個別授業である通級指導を受ける。読んで理解することに課題がある一方、話を聞き取ることはできたため、男児の通級指導を担当する女性教諭(54)や市教育委員会が授業で使う資料を読み上げる教材を作り、学習に役立ててもらっている。教諭は「『勉強が分かる』と笑ってくれた」といい、男児も「国語は好き。漢字をもっと覚えたい」と前向きだ。

LDは読み書きや聞く、話す、計算、推論など特定の能力に困難を示す発達障害の一種だ。一方、知的発達の遅れは基本的にないため、文字を拡大したり音声で読み上げたりするタブレットの機能やアプリを使えば、学習の理解につなげられるとの期待が持たれている。

2016年4月の障害者差別解消法施行で、公立学校で障害のある児童生徒に「合理的配慮」を提供することが義務づけられ、市教委では通級指導を受ける子どものための学習アプリを開発したり学校に機器の使い方を助言したりする専門主事を配置し、ICT活用を進める。府内の他の市町村でも府総合教育センターや小中学校の教職員らが研究チームを立ち上げ、16年度は6校、17年度は14校の通級指導教室で実施している。

一方、通級指導のためのICT機器の購入には特別な予算措置がなく、通常の学校予算などから捻出せざるを得ない。子ども一人一人の障害特性に応じた教材づくりも、学校や各教委が独自に対応しているのが現状だ。通級指導を受ける小中学生は昨年5月現在、府内で4千人以上おり、ICT機器の活用では今後、さらなるニーズの拡大もあり得る。立命館大の富永直也講師(教育方法学)は「ICTでやるべき部分と従来通り紙などで教える部分を見極めながら、子どもにオーダーメードの教材を届けられる恒常的な仕組みをつくらないといけない」と指摘する。

■2018.4.19  補助金目的「障害者ビジネス」が横行する理由
ホームレスや生活困窮者を囲い込んで食い物にする「貧困ビジネス」はよく知られているが、実は補助金目当てに障害者を雇用して適切な仕事を与えないという「障害者ビジネス」も問題となっている。

障害者を新規に雇用することにより3年間で1人当たり最高240万円の助成金を受け取れる制度を利用し、3年経ったところで事業所を閉鎖。新しい事業所で障害者を雇い直して再び助成金を得る法人まで存在するという。
なぜこのような事態になっているのか、またどのように対応すべきかを『新版 障害者の経済学』を上梓した慶應義塾大学商学部教授の中島隆信氏に解説してもらう。


■数百人規模の障害者が解雇された背景

2017年7月、岡山県倉敷市にある障害者施設5カ所が一斉に閉鎖され、そこで働く障害者約220人が解雇されるという問題が発生した。さらに、本年3月には同市において障害者施設を運営する営利法人が経営悪化を理由に約170人の障害者を解雇した。

浮き沈みのあるビジネスの世界では事業所の閉鎖や従業員の解雇は普通にありうることだが、障害者施設となると話が違ってくる。なぜなら、福祉は行政の制度によってできた官製市場であり、事業者はそのなかで活動をしているからである。

したがって、今回の倉敷での不祥事(以下では「不祥事」と呼ぶ)は、制度の不備がもたらしたモラル・ハザードと解釈すべきである。

「不祥事」の舞台となったのは「就労継続支援A型事業所(以下A型)」と呼ばれる障害者施設である。A型の役割は、障害者と労働法規に基づく雇用契約を結んだうえで、仕事によって得られた収入から障害者に給与を支払うことである。そして、A型の職員たちは障害者の仕事を支援し、その見返りとして補助金(自立支援給付費)を行政から受け取る。

報道によれば、「不祥事」を起こした事業所は仕事とは名ばかりのきわめて付加価値の低い単純作業しか障害者に与えておらず、事業収支は大幅な赤字状態だったとされる。

それでも事業が続けられたのは、障害者1人当たり1日5840円支給される自立支援給付費を障害者給与に充当させていたことに加え、障害者を新規に雇用することにより3年間で1人当たり最高240万円の助成金(特定求職者雇用開発助成金:特開金)を受け取ることができたからである。

昨年4月、厚労省が全国のA型に通達を出して給付費の給与充当を禁止したことから、経営が続けられなくなったとされている。ここでは、「不祥事」の背景として3つの要因を取り上げる。

第1の要因は、A型の会計制度である。行政から事業所に支払われる自立支援給付費という名の補助金は、そこでの作業内容や利用者の生産性とは無関係に何人の障害者が何日間通ったかによって決まっている。

たとえば、施設を利用する障害者の数が20人以下で、障害者7.5人当たり1人の職員が配置されている事業所では、障害者が1日施設を利用すると5840円の給付費が支給される。その事業所で障害者が1日5時間滞在するものとし、時給が900円だとすると、1日当たりの給与は4500円となる。

20人の障害者が年間200日施設に通ったとして、それを3年間続けると、給付費と特開金を合わせて1億1808万円の収入となり、障害者に支払う給与は5400万円なので、仮に事業収入がゼロだったとしても6408万円の利益が出る。

法人がこうした事業所を5カ所持っていれば合計で3億2040円の”儲け”が出る仕組みだ。特開金は3年分しか出ないので、3年経ったところで事業所を閉鎖し、新しい事業所で障害者を雇い直せば同じ”ビジネスモデル”を続けられる。


■障害者給与が補助金を上回るサムハルに学べ

こうしたモラル・ハザードを防ぐには、何もしなくても利益が出るような現行の制度を変える必要がある。A型の損益計算書上の収益は、行政からの助成金(補助金+給付金)、事業によって得る収入、そして障害者本人の自己負担金の3つから成り立っている。他方、費用は、事業を行うための経費、職員給与、そして障害者給与(利用者工賃)である。そしてこの両者の差額が当期利益とされる。

ここでよく考えてほしい。そもそも社会から与えられたA型のミッションとは、政府の補助金や障害者の負担金を受け取り、障害者の生活を支えるための給与を支払うことではないだろうか。そうだとすると、損益計算書上の収益はミッション遂行のためのインプットであり、費用はアウトプットに相当するはずだ。つまり、施設会計と社会会計は収支が逆転しているのである。

全国のA型事業所が作る組織である「全Aネット」の調べによると、障害者給与が補助金を上回っている”健全な”A型はわずか7%にすぎないとのことである。私が講演等で社会会計上の黒字をA型の経営目標にすべきだと話すと、ほとんどの施設長は「そんなことは無理に決まっている」と返答する。

だが、スウェーデンで2万人の障害者を雇用している国営企業サムハルは、2016年の損益計算書において528億円の補助金を受け取りつつも、障害者にはそれを超える712億円の給与を支払っている。つまり立派に社会収支の黒字を達成しているのである。

この「社会会計の黒字」をルール化すれば、補助金を目当てとする“障害者ビジネス”は起こりようがない。なぜなら、モラル・ハザードは、補助金のほうが障害者給与支払額より多くなるよう制度設計されていることによって生じているからである。

第2の要因は、A型のガバナンスの甘さである。2017年に「社会福祉法」が改正され、社会福祉法人のガバナンスはかなり強化された。しかし、このような強化策も今回のようなモラル・ハザードの防止にはほとんど効果がなかった。

なぜなら、厚労省はA型を増やす目的から、原則としてどのような法人にもA型の運営を認めているからだ。実際、「不祥事」を起こしたA型は社団法人や株式会社であり、規制強化の対象にはなっていない。

先に述べたように、日本にあるA型の9割以上が障害者給与を超える給付費を行政から受け取っていることを考えれば、それが適切に使われているかどうかをチェックする業務監査は法人格にかかわらず必須だろう。

■不適切な補助金受け取りは会計監査では見抜けない

さらに、営利法人によるA型には別の問題もある。株式会社がA型を運営するためには、新たに子会社を設立し、そこで障害者を雇う必要がある。このルールを設けているのは、補助金を親会社の業務に流用されないようにするためと推察される。

加えて、厚労省が給付費の障害者給与への充当を禁止したこともすでに述べたとおりである。しかし、こうしたA型への規制強化策も資本関係のある株式会社同士であればいくらでも抜け道はあるため、効果は薄い。

たとえば、親会社がA型を運営する子会社に架空の発注をして子会社の事業収入を意図的に増やして障害者給与を支払ったうえで、残った利益を親会社に配当として環流させた場合、会計監査だけでは税金の不適切な使い方を見抜けない。営利法人の会計において補助金は「雑収入」の扱いになるためである。

厚労省は直ちに営利法人のA型への参入を全面的に禁止するか、A型を運営する営利法人に対して業務監査を行う監査人の配置を義務づけるかいずれかの策を講じる必要があるだろう。

そして第3の要因は、”障害者労働市場の質の向上”が担保される前にA型への大量参入を認めたことである。2006年に「障害者自立支援法」が施行された背景には、それまでの授産施設など障害者の就労現場における驚くべき工賃の低さがあった。

その状態を改善する切り札と期待されたのが最低賃金を保証するA型事業所であり、A型の数を増やすことが障害者の所得を増やすことにつながると厚労省は考え、営利法人の参入など大幅な規制緩和を行ったのである。その効果はてきめんで、わずか6年でA型事業所は5倍近くになり、そのうち営利法人は10倍を超す増え方を示した。

■補助金目当ての官製「A型バブル」

しかし、冷静に考えてみるとこれは明らかに不自然な現象であることがわかる。なぜなら、その間に日本のGDPはわずか1.06倍になったにすぎないからだ。もちろん、特定の産業が短期間で爆発的に成長することもあるが、それは何らかの技術革新によって潜在需要が顕在化したケースに限られる。

障害者の働くA型事業所が行っている業務においてこうしたブレークスルーが起きたとは到底考えられないし、実際、この間、A型のほとんどが該当する中小企業の数は日本全体で9%も減少しているのである。

本来、障害者雇用の推進は”障害の社会モデル”とセットで考える必要がある。つまり、障害を作り出しているのは私たちの社会であるとの発想に立ち、働き方を人間に合わせるという意味での真の”働き方改革”が浸透することによってはじめて障害者は潜在的な能力を労働市場で発揮することができるのである。

こうした新しい考え方は、車いす用のエレベーターを設置するのとは異なり、現場で浸透するのに時間がかかる。いきおい、障害者の仕事量もゆっくりとしたペースでしか拡大しないのである。にもかかわらず短期間でこれだけA型が増えたということは”補助金目当て”の参入とみられても仕方ないだろう。まさに官製の”A型バブル”と呼ぶにふさわしい現象といえる。

今回の「不祥事」に対する行政の責任はきわめて重い。厚労省は「不祥事」を起こした事業者を「悪しきA型」などと称し、制度を悪用した側にすべての責任を押し付け、報酬規定の細分化/厳格化など規制強化に動き出している。何をか言わんやだ。行政の任務は、民間事業者をルールで縛ることではない。事業者のやる気を引き出し、その努力が社会全体の利益に結び付くような制度を作ることなのである。

 

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