残しておきたい福祉ニュース 1996〜社会福祉のニュース

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残しておきたい福祉ニュース

 2015年 
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 * * *

 2015. 2. 1 <別大マラソン>「気持ちを切らすな!」相棒の声援受け完走
 2015. 2. 1 聴覚障害者に県が支援拠点 手話通訳者ら養成
 2015. 2. 1 奈良で「障害者芸術祭」開幕 復興願い「幡」を東大寺に奉納
 2015. 2. 2 東京都葛飾区で「世界ダウン症の日」記念イベント - 奥山佳恵さんら登場
 2015. 2. 2 介護の現状、どう対応 足りぬ施設と人手、関係者に聞く  舛添要一 竹浦史展氏(NPO法人「エスエスエス」事務局長) 宮島俊彦氏(内閣官房社会保障改革担当室長)
 2015. 2. 2 沢田真一さん新作など200点 28日まで栗東の授産施設で作品展
 2015. 2. 2 筋肉の動きを記憶して動く「節電義手」ほか最新介護技術を紹介
 2015. 2. 2 「香りでも春感じて」 南足柄市・農家が平塚盲学校に桜の幼木寄贈
 2015. 2. 3 都道府県の半数以上で特養建設できないケース NHKのアンケート調査
 2015. 2. 3 サ高住 35%が併設・隣接する事業所を利用させる―国交省
 2015. 2. 3 感染症発生による事業所の休業損失を補償する保険を販売―損保ジャパン日本興亜
 2015. 2. 3 「長寿日本一」の食文化を発信…長野
 2015. 2. 3 熱中症警告もしてくれる…健康管理住宅とは
 2015. 2. 3 吃音理由の身障者手帳申請を却下 取り消し求め提訴
 2015. 2. 3 修理車いす寄贈1999台に 栃木工業高校
 2015. 2. 3 夕方なのに郵便受けに朝刊 高齢者の異変、配達員気づく 世田谷のASA
 2015. 2. 3 阪神大震災:兵庫・西宮市、退去通知へ 借り上げ復興住宅、期間満了で
 2015. 2. 3 大崎事件:服役した女性の再審請求を棄却 最高裁
 2015. 2. 4 日歯連「迂回献金」内部から批判 責任者「問題ない」
 2015. 2. 4 日歯連、5千万円迂回寄付か 石井みどり氏後援会へ
 2015. 2. 4 障害福祉施設「育成会会館」が完成 戸畑 /福岡
 2015. 2. 4 24%のサ高住 入居者50人に対し職員4人未満―国交省
 2015. 2. 4 病院や介護施設を一体運営する新法人、制度化へ厚労省が素案
 2015. 2. 4 インフル集団感染、高齢女性1人死亡 京都・福知山の施設
 2015. 2. 4 山形敬寿園、有機EL照明を導入 県内の福祉施設で初
 2015. 2. 4 自閉症の原因に新事実が判明、脳の免疫を担う「ミクログリア」が関与
 2015. 2. 5 介護の現状、どう対応 足りぬ施設と人手、関係者に聞く  舛添要一氏(東京都知事)
 2015. 2. 5 最年少5歳で手話5級合格 妹「お兄ちゃんと話せる」
 2015. 2. 5 亡き人へ…届かぬ手紙、預かります 瀬戸内の漂流郵便局
 2015. 2. 5 首都高速への誤進入、2割に認知症の疑い 対策強化へ
 2015. 2. 5 てんかん治療薬、不適切服用で4人死亡 重篤な皮膚障害
 2015. 2. 5 滋賀 特養に不登校の子どもらの「居場所」
 2015. 2. 5 インフル集団感染、96歳の女性死亡 福知山の高齢者施設
 2015. 2. 5 高齢者虐待475件最多/家庭内4割息子から 京都
 2015. 2. 5 ネットで人気の「ぬくもり商品」 障害者作業所で製造
 2015. 2. 5 障害者の学習、さらに楽に 支援マウス開発  黒川高(大和町)電子工学科3年の生徒
 2015. 2. 5 木工ぐんまちゃん人気 障害者支援施設製造
 2015. 2. 5 止まらない咳、痰…雑な加湿器使いが招く「急性肺障害」
 2015. 2. 5 触法障害者を支援 司法、福祉、医療など連携し学会設立
 2015. 2. 5 老後は「刑務所」で悠々自適!?衣食住に困らず医療はタダで友だちもいる
 2015. 2. 5 障害者アートに海外への道…大阪府が販売を支援
 2015. 2. 6 介護報酬、認知症高齢者受け入れる施設には加算
 2015. 2. 6 福祉施設の虐待、調査に限界/通報23件に対し確認3件/2013年度の青森県内/関係者「体制充実を」
 2015. 2. 6 介護報酬の個別サービス改定案提示 在宅支援手厚く、特養は軒並み引き下げ
 2015. 2. 6 子ども虐待 制度で守れ 「ネグレクト防止ネットワーク」山田不二子理事長に聞く
 2015. 2. 6 介護老人保健施設で結核集団感染 3人死亡 茨城・利根町
 2015. 2. 6 集団感染:12人が結核に 結核と肺炎で3人死亡 茨城
 2015. 2. 7 ◆長崎グループホーム火災2年:今年度内にスプリンクラー    ◆繰り返されたグループホーム火災
 2015. 2. 7 外出困難な認知症高齢者、虐待受ける傾向 13年度・滋賀県調査
 2015. 2. 8 64歳長男が急死、介護必要な91歳母も息絶える 岩手・奥州市の山間集落
 2015. 2. 8 <「マクロスライド」>初適用 低年金層対策、置き去り  【マクロ経済スライド】4月から初適用 実質目減り
 2015. 2. 8 車いすの「斜め座り」 寝たきり防ぐ技術、スカンジナビア半島の最先端  背もたれへの圧力と座面への圧力の分散に意味


■2015.2.1  <別大マラソン>「気持ちを切らすな!」相棒の声援受け完走
大分県で1日開催された別府大分毎日マラソンには全国から3000人を超す市民ランナーが挑んだ。福岡市中央区の歯科医、樋口敬洋(たかひろ)さん(39)もその一人。普段は視覚障害者のマラソン日本記録(弱視のクラス)を持つ道下美里さん(38)=福岡県太宰府市=の伴走を務めているが、この日は1人でレースに臨み、応援に駆けつけた道下さんに笑顔で出迎えられた。

「気持ちを切らすな!」。25キロ過ぎ、沿道から道下さんが樋口さんに声をかけた。「思ったように足が動かなかった」という樋口さんは、20キロ過ぎからペースが落ちていた。声援を受け3時間18分14秒でフィニッシュ。道下さんと参加するレースを優先してきたため、1人で完走するのは2年2カ月ぶりだ。

2人は3年前に知人を介して知り合い、伴走をするようになった。難病のため中学時代に右目を失明し、成人後に左目の視力もほぼ失った道下さんは7年前からマラソンに挑戦していた。

週末に福岡市の大濠公園で練習を重ねてきた2人。樋口さんは人一倍努力する道下さんに驚かされた。「練習メニューを落とそう」と提案すると「ここを越えないと強くなれない」と反発する。樋口さんが伴走した昨年末の大会で前年に記録した自らの日本記録をさらに更新し、2時間59分台で走りきった。

樋口さんの長男(10)には発達障害があるが、道下さんの伴走をするようになり「人の可能性のすばらしさに気付かされた」という。「何でもいい。いつか息子も自分でチャンスをつかんでくれたら」。笑顔の道下さんに迎えられ、改めて思っている。

■2015.2.1  聴覚障害者に県が支援拠点 手話通訳者ら養成
聴覚に障害がある県民の支援拠点「県聴覚障害者情報センター」(みみサポみやぎ)が、仙台市青葉区の県本町第3分庁舎に開設された。聴覚に特化した県内唯一の情報提供施設として、障害者をサポートをする。

センターは相談室や交流スペースなどを備える。スタッフは手話通訳者や要約筆記者ら計10人で、聴覚障害者や家族らの相談に無料で応じる。

手話通訳者や要約筆記者を養成。聴覚障害の基礎知識やコミュニケーションに関する出前講座も行う。災害時は行政と連携して聴覚障害者を支える。

1月30日の開所式には関係者約40人が出席。村井嘉浩知事は手話を交え「東日本大震災後、平時の支援体制と大規模災害への対応を検討してきた。開所式を迎えられたことは大変な喜びだ」と述べた。

運営する県聴覚障害者福祉会の小泉正寿理事長は手話で「聴覚障害者の暮らしを充実させ、安心した地域づくりにまい進する」と強調した。

開館時間は午前9時半〜午後5時半(日曜休館)

■2015.2.1  奈良で「障害者芸術祭」開幕 復興願い「幡」を東大寺に奉納
障害のある人とない人が交流を深めながら制作した作品を披露する「県障害者芸術祭HAPPY SPOT NARA2014−2015」が31日、奈良県文化会館などで開幕、東大寺大仏殿でオープニングセレモニーが行われた。

同芸術祭は平成24年から行われていて今回で4回目。セレモニーでは、「ビッグ幡(ばん)in東大寺」として、東日本大震災の復興などを願い、県内と東北3県の障害者が描いた作品を組み合わせた「幡」の奉納法要が営まれた後、境内に6本掲揚された。

幡は全長7メートル、幅0・9メートルで、「花鳥風月」をテーマに202人が制作した計171点の絵を組み合わせて仕上げている。作品を応募した、香芝市の吉原成信さん(24)は「月夜の星の形など描いた。たくさんの人に見てもらいたい」と話していた。

芸術祭は2月8日まで、近鉄奈良駅周辺の商店街や県文化会館などで作品の展示やワークショップなどさまざまな企画が行われる。問い合わせは芸術祭の事務局

■2015.2.2  東京都葛飾区で「世界ダウン症の日」記念イベント - 奥山佳恵さんら登場
日本ダウン症協会(JDS)は3月21日、国連の国際デーである「世界ダウン症の日」にちなんだイベント「STEP FORWARD TOGETHER みんなで一緒に前へ進んでいこう2015」を、かめありリリオホール(東京都葛飾区)で開催する。

「世界ダウン症の日」は、2011年12月の国連総会で承認され、正式に国連の国際デーの一つとして制定された。

同イベントは、「世界ダウン症の日」である3月21日に実施。ダウン症のある人たちの姿を多くの人々に実際に見て知ってもらい、人間の多様性について考えるきっかけを作ることを目的に、同イベントを開催する。大人から小さな子どもまで楽しめるイベントを開き、ダウン症そのものやダウン症のある人について伝えることで、社会へ向けて広く啓発を図っていくという。

イベントは、ダウン症のある人とその家族、支援者だけではなく、ダウン症に関わる専門家、医療・福祉・教育等の関係者とそれらを学ぶ学生、一般の方を含め、誰でも参加できる。クロストークショーでは、ダウン症の子供を持つ、奥山佳恵さん(女優、タレント)、たちばなかおるさん(マンガ家)、玉井邦夫JDS代表理事が登場する。

そのほか、韓国から参加するダウン症がある人と日本のダウン症がある人による合同演奏を行う「ゲストステージパフォーマンス」、フラメンコダンスやエレクトーン演奏、コントなど公募によるダウン症がある人々のステージパフォーマンスも実施。また、JDSからのアピール、ダウン症のある人からのメッセージも聞くことができる。

時間は、13:00〜16:00(予定)。会場は、かめありリリオホール。

■2015.2.2  介護の現状、どう対応 足りぬ施設と人手、関係者に聞く  舛添要一 竹浦史展氏(NPO法人「エスエスエス」事務局長) 宮島俊彦氏(内閣官房社会保障改革担当室長)
療養不安
連載「報われぬ国」では、都市部を中心に介護施設が足りず、行き先がない高齢者がいることをお伝えしました。介護職員の待遇が改善されず、人手不足が深刻になっている実態も取材してきました。こうした療養不安にどう対応すべきか。東京都の舛添要一知事らに考えを聞きました。


■入居待ちゼロへ、定員1.5倍目標 舛添要一氏(東京都知事)

東京都は昨年暮れの「東京都長期ビジョン」で、いまは4万人余りの特別養護老人ホーム(特養)の定員を2025年に6万人に増やす目標を掲げた。在宅の高齢者で施設に入る必要性が認められた人は、待たずに入れるようになる。

東京は地価が高い。だから、目標を実現するために都有地を相場の1割程度で貸し出す。また、都営住宅などを建て直すときには、たとえば5階建てだったものを10階建てにして、増えた分を特養や保育所にする。あらゆる方法を使って整備していく。

特養の建築にはベッド1床あたり600万円を補助する。定員を6万人にするため、この補助金だけで1千億円以上かかる。都の税収は法人税が多く景気の影響を受けやすいので、税収が減っても計画を進められるように15年度予算で400億円の基金をつくることにした。

介護は在宅がいいか、施設がいいかという議論はおかしいと考えている。

わたしは北九州市に住んでいた母を遠距離で介護しながら仕事をしたことがある。その経験から言えば、要介護度が低い時には自宅で、ある程度重くなったら施設に入れたい。そうしないと介護する側の生活が壊れてしまう。さらに弱って動けなくなったら、家に連れて帰りたい。平日は施設で、週末はいっしょに暮らすことがあってもいい。

そのためには、在宅と施設の組み合わせを自由に選択できることが理想だ。施設は常に2割ぐらいの空き室があり、介護職員も余るぐらいがいい。それぐらいのゆとりが、介護をする側が倒れなくてすむ条件だ。

施設が足りず、どうしようもないところに預けざるを得ない例もある。施設は少し競争させたほうが介護全体のレベルが上がる。

介護職員の待遇改善では15年度から、「キャリア段位」(国がつくった制度で、職員の介護技術などに応じて七つのレベルに認定する)を認められた人に月に2万円を支給する。ただ、初めての取り組みなので様子を見たい。

東京は住まいにお金がかかるから、介護職員は簡単に集まらない。職員寮を整備した事業所に補助金を出したいところだが、そうすると、なぜ介護だけに出すのかということにもなる。改善しなければならないことは多いが、すぐには進められない。

外国人労働者を入れるというが、介護はコミュニケーションが重要だ。母は同じ方言を使うヘルパーが来ると会話がはずみ、元気になった。外国人に来てもらうなら学生時代から来てもらい、日本の学生と一緒に学んで日本語を覚えてもらいたい。そのために奨学金制度をつくってもいいだろう。

    *

ますぞえ・よういち 東大助教授などを経て、2001年に参院議員、07年に厚生労働相。10年に自民党を離党して「新党改革」を結成し、代表を務める。14年の都知事選で初当選。66歳。

 

■施設と在宅の中間が必要 竹浦史展氏(NPO法人「エスエスエス」事務局長)

エスエスエスは、おもに路上生活の人に「無料低額宿泊所」を提供し、自立を支援してきた。近年は、自宅や寮にいた人が経済的に困ったり病気になったりして居場所を失い、宿泊所に来る例も少なくない。

入所者のうち高齢者の割合は増え続け、いまは約4割にのぼる。若者は一時的な入所で自立できる例が多いが、低所得の高齢者はほかに行き場が少なく、滞留しがちだ。

要介護の状態でなくても、1人で買い物や家事ができないなど、サポートがなければ日常生活がままならない人は多い。こうした高齢者は家族がいなくて地域のつながりもなければ、自宅で暮らすのは難しい。要介護度の認定を受けていないと、費用が比較的安い特養などの介護保険施設にも入れない。

介護が必要になっても、特養は入居待ちが多く、すぐに入るのは難しい。うちの宿泊所で入居待ちをしている人もいる。

そこで2007年から、高齢者や傷病者向けの宿泊所「ハッピーホーム」をつくってきた。基本的にスタッフが介護保険の制度外で入所者のケアをする。利用料は3食付きで月に12万円程度。今年度中には、東京都の新事業として補助金を受け、介護保険サービスが使える「寄りそい型宿泊所」も始める予定だ。

支援が必要な高齢者が増える一方、財政は厳しいので、特養などの施設を増やしていくやり方には限界がある。社会的コストをかけずに持続可能な仕組みを考えないといけない。

宿泊所はアパートや社員寮などを丸ごと借りて、3〜6畳ほどの個室か相部屋に住んでもらう。コストは低く、介護施設に移るまでの中間的な居場所として応急措置になる。宿泊所は「貧困ビジネス」とみられる場合もあり、業界全体で質を上げる必要がある。社会もいぶかしげにみるだけでなく、ポジティブな面もみいだしてほしい。

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たけうら・ふみのり 社会福祉士。2002年にエスエスエスに入り、12年から事務局長を務める。38歳。エスエスエスは00年設立。職員やボランティアなどが約870人いて、首都圏で無料低額宿泊所など約140施設を運営している。

 

■在宅中心に発想を変えよ 宮島俊彦氏(内閣官房社会保障改革担当室長)

ひとり暮らしや夫婦だけの高齢者世帯が増え、日本では「自宅では無理。施設に」となりがちだ。しかし、施設一辺倒でいくのは現実的に難しい。

65歳以上の高齢者の割合はいまは約25%で、2050年には約40%になる見込みだ。施設ですべてみられるだろうか。とくに東京など都市部は土地も少ないし、地価も高い。特養などを大幅に増やすのは難しいと思う。

発想を転換し、在宅中心に立て直すべきだ。地域で暮らし続けられるように、リハビリなどを受けられる通所施設、24時間対応の訪問介護事業所などをミニサイズでつくっていく。

ケアのあり方も変えないといけない。いまは一方的に世話する人とされる人という関係だが、これでは乗り切れない。要介護になってもお互い支え合えることがある。そのためにも、住み慣れた地域、人間関係のなかで生きていくことが大事になる。

結局のところ、介護の問題はお金と人手だ。介護職員不足をなくすには、キャリアアップしたら賃金が上がる仕組みをつくること。奥の深い仕事だということを業界が発信し、イメージを変えていく必要がある。

看護やリハビリなども、日常的な部分は介護職員ができるようにしたほうがいい。仕事の幅を広げれば専門性が高まり、賃金増にもつながる。ロボットなどの技術開発を進めて入浴介助などに生かし、人手を補うことも大事だ。

若い人の税金や保険料負担を抑えるため、介護も自立支援や予防の観点が重要だ。日本は「至れり尽くせりがいい」という意識が強い。だが、高齢者もできるだけ元気で自分のことをやれるようにするのが介護であり、そのためにまわりが支援する。そんなスタイルに変わっていかなければいけない。

    *

みやじま・としひこ 1977年に厚生省(現厚生労働省)に入り、国民健康保険課長や人事課長などを経て2008〜12年に介護政策を担う老健局長を務め、退職した。14年3月から現職。岡山大学客員教授なども務める。62歳。

■2015.2.2  沢田真一さん新作など200点 28日まで栗東の授産施設で作品展
知的障害者らの通所授産施設「第二栗東なかよし作業所」(栗東市小野)で1日、利用者の創作活動の成果を集めた作品展が始まった。世界屈指の現代美術展「ベネチア・ビエンナーレ」に出展するなど国内外で注目を集める陶芸作家、沢田真一さん(32)=草津市=の最新作など約200点が並び、訪れた人たちが独特の造形に見入っている。28日まで。

作品展は、障害者への理解を深めるきっかけにしようと、同作業所を運営する社会福祉法人などが昨年から開催。

同作業所ではパン製造や下請け作業などをおこなう一方で、作陶や絵を描く活動なども実施。作品展では、これらの活動で利用者が制作した陶芸や刺し子、絵画作品などが並んでいる。

このうち、専門的な教育を受けず、感性のままにつくられた芸術作品「アール・ブリュット」の代表的な作家として知られる沢田さんは、昨年制作した鬼やお面がモチーフの最新作を展示。沢田さんが自宅で制作しているバスや車のミニチュア作品もある。

この日会場には、家族連れなどが多く訪れ、写真を撮ったり、顔を近づけて作品をじっくり観たりして楽しんでいた。

作品の多くは、手で触れることも可能で、その質感や緻密さを感じられる。

また、会場は同作業所の喫茶スペースを活用しているため、利用者が作ったパンを食べたりコーヒーを飲んだりしながら作品を鑑賞できる。

沢田さんの陶芸活動を支援している陶芸指導専門員の池谷正晴さん(82)は「障害のある人たちの特異な才能や、その作品の魅力を感じてもらえたらうれしい」と話している。

入場無料。開場は午前10時〜午後4時。土・日・祝日は休みだが、最終日の28日は開場。

問い合わせは第二栗東なかよし作業所(電)077・554・5601

■2015.2.2  筋肉の動きを記憶して動く「節電義手」ほか最新介護技術を紹介
サポートする側もされる側も精神的・肉体的負担が大きい介護。介護職員の不足も取り沙汰されるなか、ロボットによる介護が注目を集めている。

例えば、人は歩行しようとするとき、脳が神経を通して、微弱な電気信号を筋肉に送る。その電気信号を皮膚につけたセンサーがキャッチして装着者の思った通りに脚の動きをアシストするのがサイボーグ型ロボット『HAL(R)』(サイバーダイン、2013 年レンタル販売開始)だ。

「自分の思い通りに歩行することで、脚から脳に歩けたという信号が送られます。脳が“正しい動き”を学習することを促し、高齢者や障害者の歩行訓練に大きな役割を担います。片側半身マヒだったかたが、『HAL』のトレーニングで約2か月後に元気に歩いて退院された例もあります」(広報担当者)

個人向けのレンタルは行っておらず、福祉施設や病院などで利用できる。これまでの移乗介助機器は体をつりあげるリフトタイプが主流だったが、『移乗介助サポートロボット』(富士機械製造、2015 年販売開始予定)は体を下から支え、要介護者の胸部を保持して抱きかかえるタイプなので、利用者の体の負担が軽減される。

「個人の体格や車いすなどの座面高に応じてロボットが最適な動作を算出。クッションのついた保持部に上体を預け、スイッチを押すと、人が立ち上がるときの上体の動きにあわせてせり上がります。利用者が自分の力で立ち上がろうとする意志をサポートします」(開発センター事業開発部部長・五十棲丈二さん)

価格は100万〜150万円で今春発売を予定している。

電気通信大学発のベンチャー企業・メルティンMMIが開発中の義手『筋電義手』。従来の義手とは違い、筋肉の動きを記憶する機能を持つ。

「人間の体には無数の電気信号が流れており、それぞれ特性があります。それを信号別に分けて計測することで、例えば“えんぴつを握る”“箸を使う”という細かな動作が義手でも可能になります。さまざまな動作をする際の腕の力の入れ方を記憶させておくので、装着した人は、自分が思ったとおりに動かせます」(広報担当・石井利明さん)

同時に開発中の爪をつけた人工皮膚を装着すると、小さなコインも正確につかめるようになるという。

■2015.2.2  「香りでも春感じて」 南足柄市・農家が平塚盲学校に桜の幼木寄贈
目の不自由な人にも香りや手触りで春を感じてほしいと、南足柄市の農家・古屋富雄さん(62)が贈った桜「春めき」の幼木が、県立平塚盲学校(平塚市追分)で植樹される。香りが強く早咲きの桜は3月の卒業式で、生徒の門出を祝福する。

春めきは2000年3月、古屋さんが品種登録した。たわわな薄紅色の花びらが、ぼんぼりのように枝先までを彩る。甘い香りが強いのが特長だ。ソメイヨシノより早い3月中旬に開花するため、「卒業式にも見られる」と全国各地の小中学校などに請われ、これまでに3千本を寄贈してきた。

「目の見えない人にも、この桜を楽しんでほしい」と古屋さんが思うようになったのは10年。南足柄市内の桜の名所でトレーニングした視覚障害のあるランナーとの出会いがきっかけだった。「香りで春を感じる」ということに驚くと同時に、心打たれた。快く苗木を譲っただけでなく、「いつか、目の不自由な子どもたちにも」との思いを温めるようになった。

つてを頼り昨秋、県内では県立唯一の平塚盲学校に打診。幼稚部から高等部まで3歳から60代までの生徒64人が在学、植物との触れ合いを大切にしてきた同校は快諾し、今春の植樹が決まった。

名執(なとり)宗彦校長は「香りだけでなく、手で触れて感じることも視覚障害者には重要」と話す。春めきを植えるときには、まずは生徒たちに幼木をよく触ってもらうつもりという。根、幹の肌、細く伸びる枝ぶり、まだ固くも確かに芽吹き始めている小さな芽…。「春めきは春を感じさせてくれるだけでなく、生徒たちの感性を豊かに育ててくれる」と名執校長。いずれつぼみを付け、花びらが開いていくさまを、鼻や手、耳を通して感じてほしいと願う。

同校は2月2日に植樹式を、3月12日に卒業式を行う予定だ。贈られた8本のうち樹齢5年の幼木は、今春にも花を咲かせる見通しという。

「ようやく思いが実現した」と喜ぶ古屋さんは、「目の不自由な人が通う全国の学校にも贈り、香りで春を感じてほしい」と話している。

■2015.2.3  都道府県の半数以上で特養建設できないケース NHKのアンケート調査
介護が必要な高齢者が増え続けるなか、全国の都道府県の半数以上で、この3年間に計画されていた特別養護老人ホームの建設が中止や延期になっていたことが、NHKが行ったアンケート調査で分かった。

背景には介護現場の人手不足があるとみられ、施設を運営する事業者からは高齢者に提供するサービスに支障が出るおそれがあるという声が上がっている。

NHKは、特別養護老人ホームの整備状況などについて全国の都道府県にアンケート調査を行った。

その結果、全体の55%に当たる26の都府県が、この3年間に計画していた施設の建設が中止や延期になったことがあると回答した。
その理由については「事業者の応募がなかった」と答えた自治体が最も多くなっている。

このうち東京・北区では、ことし区内で最大規模の施設の建設が始まる予定だったが、介護職員を確保できないことや事業者に支払われる介護報酬がこの春引き下げられることを理由に事業者が突然撤退し、中止になったという。

このほか、介護職員の不足などから「利用者の受け入れを制限している施設がある」と答えた自治体も、全体の4分の1近くに上る。
特別養護老人ホームを巡っては、4月から介護報酬が引き下げられる見通しだが、事業者からは人手不足がさらに加速し高齢者へのサービスに支障が出るおそれがあるという声が上がっている。

■2015.2.3  サ高住 35%が併設・隣接する事業所を利用させる―国交省
訪問介護サービスが必要な入居者すべてに、併設・隣接する訪問介護事業所を利用させているサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は約35%あることがわかった。
1月22日に行われた、国土交通省のサ高住の整備等に関する検討会で示された。

また、住宅に併設・隣接していないにもかかわらず、同一グループが運営する訪問介護事業所を、サービスを必要とするすべての入居者が用いている割合も16%あり、入居者の囲い込みとも呼べる実態が明らかになった。
入所者のケアプランを作成する居宅介護支援事業所についても、「同一グループ」が61%にのぼり、「別法人」(27%)を大きく上回った。

さらに、生活保護受給状況に応じて家賃・共益費の設定をしているサ高住では生活保護受給者の入居率が高く、 またその入居割合が高いほど要介護度の高い人が多い傾向であることもわかった。

■2015.2.3  感染症発生による事業所の休業損失を補償する保険を販売―損保ジャパン日本興亜
損害保険ジャパン日本興亜は、介護事業者を対象に、集団感染発生時の休業補償保険を今月上旬に販売する。
天災などによる通常の店舗休業保険に、「食中毒・感染症による休業損失補償追加特約」を付帯した。

施設や通所介護事業所等では、インフルエンザやノロウイルス等による感染性胃腸炎の発生は、経営における大きなリスクとなる。集団感染は収益喪失に直結し、経営を圧迫する可能性が高くなる。
本商品は、感染症発生による施設閉鎖・利用者受入れ停止から、営業再開までの最長15日間の収益を保障する。

【商品概要】
■保険種目:店舗休業保険
■販売対象:介護事業者
■補償内容:通常の店舗休業保険リスク(火災、落雷、風災などによる収益減少)
+食中毒・感染症による休業損失補償特約(結核等の感染症法上の1類~3類感染症、食中毒による収益減少)
+食中毒・感染症による休業損失補償追加特約(新設)(インフルエンザ(新型インフルエンザを除く)、ノロウイルス等による収益減少)

■2015.2.3  「長寿日本一」の食文化を発信…長野
長寿日本一の県の食文化を発信する「長野県長寿食堂」が3月7日、長野駅ビル「MIDORI長野」3階にオープンする。

飲食店の開発運営を手がける「きちり」(大阪市)が運営し、県や県栄養士会などがメニューづくりに協力する。野菜が豊富で塩分控えめな定食を提供し、長寿県のブランド力を高める。

食堂では信州野菜の食べ放題をつけた「一汁三菜」の定食を提供する。メインは、郷土料理研究家の横山タカ子さん考案で、二十四節気ごとに信州の旬の食材や調理法を用いた献立と、県栄養士会考案の月替わりの献立。高原野菜や伝統野菜、みそなど発酵食品を取り入れ、ダシを効かせて塩分を減らす。価格は1280円〜1580円。

県は、民間企業と連携して健康長寿の食文化の発信に取り組む方針で、その第一弾。健康長寿に関わる店舗の県内出店を模索していた同社を最初の連携先に選び、協定を結んだ。県職員や県栄養士会、横山タカ子さんらで作る会議が食堂の運営に助言する。協定の締結式で阿部知事は「県の優れた食文化を一緒になって発信したい」と語った。

■2015.2.3  熱中症警告もしてくれる…健康管理住宅とは
積水ハウスが、体に装着するウェアラブル端末と室内のセンサーを組み合わせ、居住者の健康を管理するシステムを開発し、実証実験を進めている。

居住者の心拍数や血圧、室内の湿度や温度などを計測し、寒暖差で血圧が急変して失神などを引き起こす「ヒートショック」や熱中症の危険性を事前に警告する。人口減などで住宅着工が伸び悩む中、健康に暮らせる住宅で需要を掘り起こす。

居住者の左胸に貼ったパッチ型のウェアラブル端末(長さ11センチ)や、各部屋に設けたセンサーなどから、無線で自動的にデータセンターへ情報を送る。

リビングと脱衣所の温度差が激しい時、高血圧の人のタブレット端末に「ヒートショックに注意」と警告文を表示する。夏に室温が高い場合は「熱中症の危険あり」などと警告する。

実証実験は昨年12月、65歳以上の高齢者ら100人を対象に始めた。今年12月に結果を検証し、早期の事業化を目指す。

東京都健康長寿医療センター研究所によると、ヒートショックで死亡した人は全国で約1万7000人(2011年)と、交通事故死者の3倍を超えた。夏場は熱中症で倒れる高齢者が続出し、自宅で死亡につながる事故も増えている。

■2015.2.3  吃音理由の身障者手帳申請を却下 取り消し求め提訴
吃音(きつおん)を理由に身体障害者手帳の交付を申請して却下されたとして、仙台市の40代男性が2日までに、市に却下決定の取り消しを求める訴えを仙台地裁に起こした。

訴えによると、吃音症の男性は昨年8月、音声・言語機能障害による身体障害者手帳の交付を市に申請。市は9月に「障害の認定基準となる喉頭の障害や形態異常などは認められなかった」などとして却下した。

男性側は「市は認定基準を誤って限定的に解釈した。吃音症の原因は未解明で、客観的に意思疎通が困難であれば認定すべきだ」と主張。「吃音のために就職できないでいるが、障害者雇用という枠内であれば就職の道が開かれる」と訴える。

市は「訴状が届いたばかりで詳しい分析をしておらず、コメントは差し控えたい」との談話を出した。

■2015.2.3  修理車いす寄贈1999台に 栃木工業高校
栃木工業高校(栃木市)が不用になった車いすを修理してアジアの国々に贈る活動を20年以上続け、1月末で1999台に達した。寄贈した国もタイを中心に22か国にのぼり、同校は「今後も活動を続けたい」と意欲を見せている。

同校は1993年に修理した車いすの寄贈を始め、全国の学校などが同様に車いすを贈る活動の先駆けとなった。

車いすは地元の福祉施設などで使われなくなったもので、修理や部品交換を行って使えるようにする。東日本大震災後は東北地方も対象にし、これまでにタイに787台、スリランカに451台など計1999台を贈ってきた。

今年1月には、生徒の代表10人がタイのチャイナート国立病院で10台を寄贈し、現地の車いす20台も修理した。型が古い上に雨ざらしでさびがひどく、外れないネジもある中、ねばり強く作業を続けて修理した。生徒たちは出発前にタイ語や患者への接し方なども学んでおり、リーダーで機械科の青木誠也さん(3年)は「タイ語でありがとうと言われた。使う人の喜ぶ顔を見て、ものづくりのやりがいを感じた」と満足げに話す。

タイの情勢が不安定だったために2010年12月を最後に車いすの寄贈を中断しており、訪問は今回が約4年ぶり。生徒たちは小児病棟の子どもたちとの交流や日系企業訪問など現地の様子も学んでおり、引率した金田晋教諭(51)は「今後も活動の幅を広げ、海外で活躍できる生徒を育てたい」と話していた。

■2015.2.3  夕方なのに郵便受けに朝刊 高齢者の異変、配達員気づく 世田谷のASA
世田谷区の自宅で倒れた独り暮らしの高齢の女性が、朝日新聞配達員の機転で助け出された。区によると、女性は前日に転倒したショックで動けなくなっていたという。

朝日新聞販売所のASA経堂と区によると、先月28日夕方、経堂地区に住む70代後半の女性宅の郵便受けに朝刊が入ったままになっているのを、夕刊を配達中の従業員山城竜也さん(40)が気づき、販売所に報告。店長が区地域包括支援センターに連絡した。

センターの職員と民生委員が駆けつけると、電気がついているがインターホンや電話に応答がなかった。救急隊が中に入ると、女性が寝室で布団に入り、動けなくなっていた。命に別条はなく、約2週間の入院が必要だという。

センターは「異変に気がつくのは配達先のことをよく見ているからだと思う」と感謝した。山城さんは「配るとすぐに新聞を受け取る人なのでおかしいと思った。命が救えてよかった」と話した。

■2015.2.3  阪神大震災:兵庫・西宮市、退去通知へ 借り上げ復興住宅、期間満了で
兵庫県西宮市は、阪神大震災の被災者向けに都市再生機構(UR)から借り上げた復興住宅の一部を、今年9月末の期限までに明け渡すよう、週内にも入居者に通知する。応じなければ、状況によって法的措置を検討する。公営住宅法に基づく手続きとしては、阪神大震災の借り上げ復興住宅で初めて。神戸市などでも近く同様の期限を迎える。


西宮市は20年の期限で市内の5棟を借り上げ、昨年12月末現在で220世帯330人が入居している。5棟は2018年3月までに順次期限を迎え、最も早い9月末が期限の住宅に暮らす27世帯53人に、まず通知する。期限の6カ月前までの通知を定める公営住宅法に基づくと、通知のリミットは3月末だった。

重度障害者などのいる「要配慮世帯」に対して市は、空き部屋が見つかるまで最長5年間の明け渡し猶予を認めるとともに、住み替えを希望する市営住宅を複数選んで予約し、空き室を待つ制度も設けた。入居者に対する約30万円の支援金制度もある。市住宅部の岩田宏之参事は「買い取った場合の財政負担も重く、粘り強く説明したい」と話す。

これに対し、5棟の住民らによる「西宮UR借り上げ市営住宅連絡会」の松田康雄代表(67)は「高齢者や障害者には、20年間住んだ場所を離れて新たな人づきあいを始めるのは難しい」と入居継続を求める。

他の自治体では、兵庫県や神戸市が条件を満たす高齢者や障害者には継続入居を認める。ただ神戸市は、一部の住宅について民間家主から返還を求められ、高齢者らも含む入居者に期限での明け渡しを既に求めている。同県宝塚市は全戸の入居継続を決め、伊丹市も同様の方針で調整している。尼崎市と大阪府豊中市は未定だ。

■2015.2.3  大崎事件:服役した女性の再審請求を棄却 最高裁
鹿児島県大崎町で1979年に起きた「大崎事件」の第2次再審請求審で、最高裁第1小法廷(金築<かねつき>誠志裁判長)は2日付で、殺人罪などで懲役10年が確定し服役を終えた原口アヤ子さん(87)の特別抗告を棄却する決定を出した。原口さんの請求を退ける判断が支持され、再審が開かれないことが確定した。

確定判決は、原口さんが当時の夫ら3人=いずれも有罪確定=と共謀して79年、自宅で寝ていた原口さんの義弟(当時42歳)をタオルで絞殺したとした。原口さんは逮捕直後から一貫して関与を否定したが、原口さんが関与したとする3人の供述を主な根拠に有罪が確定。満期出所後の95年に再審請求した。

第1次請求審では鹿児島地裁が2002年、「3人の供述に変遷があった」などとして再審開始を決定。しかし04年に福岡高裁宮崎支部が決定を取り消し、最高裁で確定した。

2次審で原口さん側は「3人には知的障害があり、供述は警察官の強制や誘導の疑いが残る」と主張。遺体写真から「絞殺の痕跡が見当たらない」とする鑑定書も新証拠として提出した。しかし鹿児島地裁、宮崎支部ともに、供述には整合性があり、客観証拠とも矛盾しないと退けた。

また小法廷は同日付で、併せて審理していた当時の夫(93年死去)の遺族が起こした再審請求についても特別抗告を棄却した。

◇弁護団、近く第3次再審請求へ

「(福岡高裁)宮崎支部の再審請求棄却からわずか半年。軽々な決定で許せない」。原口さんの弁護団の森雅美弁護団長は3日、鹿児島市で記者会見し最高裁の決定を批判した。十分な立証がされていないとして、近く第3次再審請求をする方針を示した。

老人介護施設に入所している原口さんは現在、体調を崩しており、棄却決定はまだ伝えていないという。鴨志田祐美事務局長は「原口さんの年齢が心配。一刻も早く3次再審請求したい」としている。一方で森弁護団長は「DNA鑑定など明白な新証拠がないと認められない。再審請求の壁がすごく高くなっている」と話した。


◇大崎事件
鹿児島県大崎町で1979年10月、農業の中村邦夫さん(当時42歳)が自宅敷地内で遺体で見つかった。県警は原口さんら4人を殺人や死体遺棄容疑で逮捕。原口さん以外の3人=既に死亡=は容疑を認め、1審で懲役1〜8年が確定。無罪主張した原口さんは最高裁で81年に懲役10年が確定した。

■2015.2.4  日歯連「迂回献金」内部から批判 責任者「問題ない」
日本歯科医師連盟(日歯連)をめぐり、法規制をすりぬけるような政治資金の操作疑惑が発覚した。会員の間には、11年前の「ヤミ献金事件」の記憶がまだ鮮明だ。「疑われるような会計処理はもうやめて」。批判も聞こえる。

「いわゆる迂回(うかい)献金がなされるようではだめ」「『グレーゾーン』はやめましょう」――。今年1月23日、東京都千代田区の歯科医師会館。日歯連の臨時評議員会が開かれていた。組織を代表する石井みどり参院議員を支援する政治団体「石井みどり中央後援会」の資金処理について、出席した評議員が質問した。

会議録などによると、日歯連の会計責任者は、「法的に問題はない」と述べた。ただ、2012年10月に石井氏を参院選に擁立すると決めたのを念頭に「(13年)7月に選挙という短期間で、金を移さねばならなかった」とも答えた。

一方で、13年に同後援会に渡った計9500万円の使途を朝日新聞が尋ねたところ、日歯連は「資金はすべて後援活動を行うためのもので、選挙資金ではありません」と回答した。

同後援会の13年の収支報告書によると、日付と使途がわかっている約9160万円のうち、98%が13年の1〜8月に使われていた。複数の国会議員秘書は「通常は選挙の翌月まで、後払いの選挙運動の関係支出があるものだ」と話す。使途のうち高額なのは、「支援者名簿データ化」の約1300万円や、約30件の「印刷代」計約3400万円。支出先の一つの印刷会社は「選挙向けの資料類を印刷した」と話した。

日歯連をめぐっては、04年に発覚した自民党・旧橋本派への1億円ヤミ献金事件などで、党への寄付に見せかけて特定政治家に金が渡る「迂回献金」疑惑が浮上。これをきっかけに政治資金規正法が05年に改正され、政治団体間の寄付に、年間5千万円の上限が設けられた経緯がある。

今回の問題と「迂回」の構図は違うが、複数の日歯連関係者は「全く反省がない」と組織を批判する。今年1月の臨時評議員会でも「10年前に戻らないように、しっかりと会計処理をしてもらいたい」と警鐘を鳴らす発言があった。

日本大学法学部の岩井奉信(ともあき)教授は「巨額の献金を抑えようと設けた上限規制には、ほとんど効果が無かった」と指摘。石井氏ら日歯連の組織内候補だった議員の選挙区である参院比例区について、「選挙で当選させるのに多額のお金がかかる実態も浮き彫りになった。ともに制度改正の検討が必要だろう」と話した。

〈日本歯科医師連盟〉 全国の歯科医で組織する、公益社団法人の日本歯科医師会(日歯)を母体とする政治団体。会員数は約5万3千人で、厚生労働省登録の歯科医師の半数が加入する。過去約60年にわたり、参議院選挙のほとんどで全国区や比例区に組織代表を擁立。2007年参院選では日歯常務理事だった石井氏を自民党から、10年参院選では歯科医師の西村氏を政権与党だった民主党から擁立した。13年には再び自民党から石井氏が出た。13年の政治資金収支報告書によると、会員からの会費収入は約10億円。

■2015.2.4  日歯連、5千万円迂回寄付か 石井みどり氏後援会へ
政治団体「日本歯科医師連盟」(日歯連)が2013年に支出した政治資金のうち、同年の参院選で擁立した石井みどり参院議員(自民)の後援会に計9500万円がわたっていたことが、内部の会議録でわかった。政治団体間の寄付の法定上限は年間5千万円。だが日歯連は、いったん別の政治団体に9500万円のうち5千万円を寄付し、そこから即日、石井氏の後援会に同額が寄付されていた。日歯連内部からも「迂回(うかい)献金」なのではとの批判が出ている。

政治資金収支報告書によると、日歯連は13年1月23日、10年の参院選で日歯連が擁立した西村正美参院議員(民主)を支援する「西村まさみ中央後援会」に5千万円を寄付。同後援会は同日、石井氏を支援する「石井みどり中央後援会」に同額を寄付した。日歯連は2カ月後、4500万円を石井みどり中央後援会へ寄付した。政治資金規正法は、政治団体間の寄付を年間5千万円までに規制している。

この上限は、04年に発覚した日歯連の自民党・旧橋本派への1億円ヤミ献金事件を機に設けられた。西村まさみ中央後援会の13年の収入は、この5千万円以外は、前年から繰り越した約11万円だけだった。

今年1月23日の日歯連臨時評議員会で、複数の評議員が「迂回献金だ」などと問題視。西村氏はその後、事実関係を知ったという。取材に対し、「後援会は日歯連内部の団体で、私自身は運営に関与できない」とし、一連の資金の流れは知らなかったと説明した。

日歯連は「(二つの後援会を含む)3団体は独立しており、活動目的も異なる。資金処理は合法的に後援会活動を行うためだ」などと文書で回答。石井氏の事務所は「資金の流れなどについて把握していない」とコメントした。3団体の代表はすべて高木幹正・日歯連会長で、事務所も東京都千代田区の「歯科医師会館」にある。電話番号や事務担当者も同一だ。

政治資金に詳しい日本大学法学部の岩井奉信(ともあき)教授は「上限規制を免れるための脱法的行為で、規制の趣旨に反する」と話している。

■2015.2.4  障害福祉施設「育成会会館」が完成 戸畑 /福岡
社会福祉法人「北九州市手をつなぐ育成会」が建設を進めていた、複合型障害福祉施設「育成会会館」が完成し、2月中旬に運営を開始する予定だ。

老朽化が進んでいた市立の「とばた工芸舎」の建物と土地を、同法人が建て替えを前提に有償で譲渡を受け、再整備した。

完成した会館は5階建て。災害時などに障害者や高齢者を受け入れる「福祉避難所」やカフェがあり、地域の福祉交流拠点の役割を担う。

短期入所ができる「ショートステイとばた」や、障害児向けの学童保育「ほっとハウスとばた」も新たにできる。とばた工芸舎から名称変更した「インクルとばた」も入り、障害者が就労できるほか、生活訓練の支援も充実する。

■2015.2.4  24%のサ高住 入居者50人に対し職員4人未満―国交省
入居者50人に対し日中の職員数が4人未満のサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は約24%と、有料老人ホームの約9%を大きく上回ることがわかった。
国土交通省の調査より、1月22日、明らかになった。

入居者のうち、自立〜要介護2の軽度要介護者が占める割合は、有料法人ホーム(54%)よりサ高住(約65%)のほうが大きい。しかし入居者のなかには、要介護3〜5の重度要介護者も31%いることから、今後、サ高住の職員増員が求められそうだ。
2013年の同省の調査では、サ高住に住み替えた入居者から最も多く聞かれた不満は「職員の数が少ない」であることがわかっている。

また、サ高住には、常に介護を必要とする認知症判定基準Wの入居者や、専門治療の必要性がある判定基準Mの入居者も約8%存在している。
医療処置を要する入居者が10人以上いるサ高住はいまのところ5%程度だが、今後の高齢化でその数はさらに増えると見込まれる。

■2015.2.4  病院や介護施設を一体運営する新法人、制度化へ厚労省が素案
地域内の病院や介護施設を1つのグループに束ね、それぞれが補い合うように協調してサービスを提供することで、同じ機能が重複しない効率的な体制へと転換し、限られた資源が有効に活用されるようにしていきたいという。

厚生労働省は3日の自民党の会議で、複数の病院や介護施設を一体的に運営するホールディングカンパニー(持ち株会社)型の法人について、具体的な制度の素案を提示した。株式会社の参画は認めず、非営利の法人だけで構成する組織にする考え。現場の関係者から意見を聞き、それを事業の指針に反映させる仕組みも盛り込むなど、地域の実情に応じた体制づくりを促す設計にしている。

持ち株会社型の法人を創設する構想は、政府が昨年6月に閣議決定した成長戦略で打ち出した。サービス提供体制の効率化につなげるのが狙いで、これから地域包括ケアシステムを本格的に築いていくうえで、各プレイヤーの役割分担を進める有力なツールと位置づけられている。

職員のキャリアパスも法人全体で

厚労省は素案で、新たに制度化する持ち株会社型の法人の名前を、「地域医療連携推進法人」としてはどうかと提案。病院や診療所、介護施設・事業所などを運営する非営利の法人でつくり、余剰金の外部への配当を認めないことや、営利法人の役職員を運営に関わらせないことを説明した。法人の設立や理事長の人選には、都道府県知事の認可を必要とする決まりにするという。

より効率的な運営に向けては、参加するすべての法人をまとめる統一的な指針を策定させる。ここでは、それぞれの連携・協働に関する具体的な戦略を必須の内容にするほか、地域の関係者が入った協議会を開催して意見交換を行い、そこから現場の意向を汲み取ることをルールにするとした。

このほか、
◆「地域医療連携推進法人」全体で職員のキャリアパスを構築していく
◆医薬品や医療機器などの共同購入を可能にする
◆参加法人どうしで資金の貸付を行える
といった方針も打ち出している。

「小さい法人は飲み込まれるだけ」

もっとも、関係者からは慎重論も含めて様々な声があがっている。新たな法人が生まれれば、将来の病院や介護施設の経営と密接に関わってくるだけに、有力団体は極めて強い関心で議論にコミットしてきた。この日の自民党の会議でも、「理想はわかるが本当にうまくいくのか?」「規模の小さい診療所や介護事業所は、吸収されて飲み込まれるだけではないか」といった指摘も出た。

厚労省は今後、来週9日に開催する省内の有識者会議で素案を固める予定。与党との調整もさらに進め、3月にも医療法の改正案を正式に決定し、今国会への提出までこぎ着けたい考えだ。

■2015.2.4  インフル集団感染、高齢女性1人死亡 京都・福知山の施設
京都府福知山市榎原の特別養護老人ホーム「サンヒルズ紫豊館」は4日、インフルエンザA型の集団感染があり、入所者の女性(96)が死亡したと発表した。ほかに80〜90代の入所者9人と短期入所者1人、女性職員2人が発症したが、快方に向かっているという。同施設では昨年末から今年1月初めにかけて集団感染があり、2人が死亡していた。

施設によると、今回の計13人は1月28日〜2月3日に発熱の症状が出た。施設内の検査でインフルエンザA型と分かった。死亡したのは重度の心疾患で寝たきりの状態の女性で30日に発症、3日に亡くなったという。対策として、予防のための薬剤投与や職員の出勤前検温などを実施する。

サンヒルズ紫豊館では集団感染が終息した1月14日以降、面会やショートステイを再開していた。京都府中丹西保健所は2度目の集団感染について「外部からの感染で広まったとみられる」とし、今季は例年に比べ府内の高齢者福祉施設で発症が相次いでいるという。

■2015.2.4  山形敬寿園、有機EL照明を導入 県内の福祉施設で初
山形市の社会福祉法人敬寿会(金沢寿香理事長)が運営する同市妙見寺の老人福祉施設山形敬寿園で2日、有機EL照明の点灯式が行われた。同法人によると、県内の福祉施設での導入は同園が初めて。

有機EL照明は、紫外線や熱が出ないのが特徴で、肌や目に優しく、自然光に近い色彩を再現できる。同園ケアハウスの1階ロビーに導入された照明は、電球色6枚、白色12枚の有機ELパネル(15×15センチ)を組み合わせたシャンデリア型で、30〜90ワットの5段階で明るさを調整できる。天井からつるすワイヤの数を増やして安全性を高め、中央に敬寿会のロゴをあしらった。米沢市内の企業などでつくる有機EL照明実用化研究会(和田宏代表)が開発した。

点灯式には、入居者や職員ら約70人が参加。カウントダウンで照明がともされると、歓声が上がった。会場には雛人形も飾られ、参加者は甘酒を飲んで導入を祝い、一足早い雛祭り気分も味わった。入居者の芳賀啓さん(83)は「見たことがない形でアイデアがいい。優しい光で、新聞が読みやすそう」と笑顔を見せた。

敬寿会は県外にも施設を展開する全国法人。山形発の産業を全国に発信していこうと、県の補助金を活用して照明を導入した。

■2015.2.4  自閉症の原因に新事実が判明、脳の免疫を担う「ミクログリア」が関与
自閉症の発症原因を遺伝子レベルで探るための大規模トランスクリプトーム解析が行われ、脳の免疫細胞「ミクログリア」の活発な活動と、自閉症の脳で神経細胞が正しく働かないことに関連があると判明した。


自閉症の発症は一筋縄ではいかない
米国のジョンズホプキンス大学医学部を中心とした研究グループが、有力科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ誌2014年12月10日号で報告したものだ。

最近のゲノム研究により、自閉症には決定的な原因遺伝子があるわけではなく、ある人ではこの遺伝子、またある人では他の遺伝子が関連している、という具合に、とてもばらついていると分かってきた。
しかし、それならば、自閉症の発症原因の手がかりや規則性を見出そうと、今回研究グループは、大規模な「トランスクリプトーム解析」を試みた。


大規模トランスクリプトーム解析を実施
トランスクリプトームとは、取ってきた組織ごとに、実際にその場で働いている遺伝子を全ていっぺんに調べる方法で、今回は「大規模RNAシーケンス」という手法を用いた。そして、自閉症の脳と正常の脳の、同じ部位の組織につき比較をし、自閉症で働きがおかしくなっている「神経細胞」や「ミクログリア」の遺伝子を探索した。

「ミクログリア」は、脳内で免疫を担当している「自然免疫細胞」だ。脳には白血球が入り込めないかわりに、ミクログリアが存在する。ミクログリアは、場合により、炎症を起こすM1と、炎症を抑えるM2という2つの状態を取る。

自閉症の脳ではミクログリアの働きが活発であると、これまでの研究で知られており、自閉症との関連性が注目されていた。


ミクログリアに異常な動き
自閉症と正常の脳を比較した結果、自閉症の脳で、M2状態のミクログリアが活発に活動し、さまざまな関連遺伝子が働いていると、その後に神経細胞で働く遺伝子が減ってくると確認された。

つまり、自閉症の脳で神経細胞が正しく働かない原因に、ミクログリアの異常な動きが関係ありそうだと分かった。

今回の発見により、ミクログリアがどのような経緯で神経細胞に影響を与え自閉症を起こすのか、関連遺伝子を含めて注目が集まると研究グループは見ている。
ゲノム研究の進歩により、病気の原因も全体像として調べられるようになってきたようだ。

■2015.2.5  介護の現状、どう対応 足りぬ施設と人手、関係者に聞く  舛添要一氏(東京都知事)
介護職員の待遇が改善されず、人手不足が深刻になっている実態
療養不安にどう対応すべきか、東京都の舛添要一知事らに考えを聞いた

入居待ちゼロへ、定員1.5倍目標 舛添要一氏(東京都知事)
東京都は昨年暮れの「東京都長期ビジョン」で、いまは4万人余りの特別養護老人ホーム(特養)の定員を2025年に6万人に増やす目標を掲げた。在宅の高齢者で施設に入る必要性が認められた人は、待たずに入れるようになる。

東京は地価が高い。だから、目標を実現するために都有地を相場の1割程度で貸し出す。また、都営住宅などを建て直すときには、たとえば5階建てだったものを10階建てにして、増えた分を特養や保育所にする。あらゆる方法を使って整備していく。

特養の建築にはベッド1床あたり600万円を補助する。定員を6万人にするため、この補助金だけで1千億円以上かかる。都の税収は法人税が多く景気の影響を受けやすいので、税収が減っても計画を進められるように15年度予算で400億円の基金をつくることにした。

介護は在宅がいいか、施設がいいかという議論はおかしいと考えている。

わたしは北九州市に住んでいた母を遠距離で介護しながら仕事をしたことがある。その経験から言えば、要介護度が低い時には自宅で、ある程度重くなったら施設に入れたい。そうしないと介護する側の生活が壊れてしまう。さらに弱って動けなくなったら、家に連れて帰りたい。平日は施設で、週末はいっしょに暮らすことがあってもいい。

そのためには、在宅と施設の組み合わせを自由に選択できることが理想だ。施設は常に2割ぐらいの空き室があり、介護職員も余るぐらいがいい。それぐらいのゆとりが、介護をする側が倒れなくてすむ条件だ。

施設が足りず、どうしようもないところに預けざるを得ない例もある。施設は少し競争させたほうが介護全体のレベルが上がる。

介護職員の待遇改善では15年度から、「キャリア段位」(国がつくった制度で、職員の介護技術などに応じて七つのレベルに認定する)を認められた人に月に2万円を支給する。ただ、初めての取り組みなので様子を見たい。

東京は住まいにお金がかかるから、介護職員は簡単に集まらない。職員寮を整備した事業所に補助金を出したいところだが、そうすると、なぜ介護だけに出すのかということにもなる。改善しなければならないことは多いが、すぐには進められない。

■2015.2.5  最年少5歳で手話5級合格 妹「お兄ちゃんと話せる」
全国手話検定試験(全国手話研修センター主催)の5級に、幼稚園生の阿萬(あまん)暖々果(ののか)ちゃん(6)=宮崎県西都市=が昨年10月、最年少となる5歳で合格した。兄に聴覚障害があり、生まれたときから手話が身近だった暖々果ちゃん。「お兄ちゃんといっぱい話せるから、手話は楽しい」

暖々果ちゃんには小学2年生の兄、和春(にこはる)君(7)がいる。内耳や聴覚神経に障害がある感音性難聴の和春君のため、清香さん(32)と祐典さん(33)夫妻は、暖々果ちゃんが生まれた年に手話を習い始めた。いまでは、和春君以外の家族同士でも、口に食べ物が入っているときや、家の窓越しに外と中で話すときは、手話を使っている。

暖々果ちゃんが初めて手話を使ったのは1歳のとき。ご飯を食べながら手のひらをほっぺたにあて、「おいしい」と伝えた。自然なしぐさだった。それから、「ありがとう」や「それだめだよ」などと手話で言うようになった。

昨年、清香さんと手話のDVDテキストを見ていた暖々果ちゃんは、読み取った手話の意味をすらすらと口にした。その理解力に驚いた清香さんは、検定への挑戦を娘に提案した。

試験は昨年10月。当時5歳の暖々果ちゃんは、宮崎市の試験会場入り口で清香さんと別れ、試験会場に。「ひとりぼっちでドキドキしたけれど、みんながお世話してくれたから大丈夫になった」と振り返る。

面接試験では「好きなことは?」と聞かれ、練習していた通りに「ピアノを弾くことと料理をすること」と答えた。次の質問の「嫌いなことは?」は想定外だったが、「お兄ちゃんと弟とけんかすることです」とその場で思ったことを伝えた。結果は合格だった。

和春君は暖々果ちゃんのことを「けんか友だち」とうれしそうに言う。清香さんは「娘がお兄ちゃんに憧れを持つのも手話で会話できるから。2人が当たり前のように手話でけんかする姿が、うれしい」と話す。

「もっとたくさん話せるようになりたい」という暖々果ちゃんは、幼稚園の友だちに手話を教えることもある。22日には西都市である「まちなか地域福祉まつり」で、和春君と弟の陽尚(あきなお)君(4)、園の友達25人で手話を交えた歌を披露する。

■2015.2.5  亡き人へ…届かぬ手紙、預かります 瀬戸内の漂流郵便局
亡くなった家族へ、未来の私へ。届け先がなく漂う思いを預かる郵便局が、瀬戸内の島にある。その名は「漂流郵便局」。開局から1年余りで、流れ着いた便りは3500通を超えた。

《浩太君 はがきはとどきましたか。読んでくれましたか。おとうさんのことを思い出してくれましたか。おとうさんは君のことをみんな覚えています。あいたい あいたい あいたい。もう一度君を両のうででだきしめたい。かなわぬゆめです。でもかなってほしい》

香川県三豊市の粟島。漂流郵便局の中田勝久局長(80)が、そう記されたはがきを手にしたのは昨春。

浩太君という名に見覚えがあった。以前届いたはがきに、同じ差出人の名を見つけた。

《テレビの朝番組で漂流郵便局を知りました。私にも返事をもらえなくても思いを伝えたい人がおります。はがきを送らせていただきます。どうか受け取ってください》

漂流郵便局は、一昨年開かれた瀬戸内国際芸術祭で生まれた。東京芸大大学院生の久保田沙耶さん(27)が制作した、古い郵便局舎を利用した現代アート作品だった。

島で実際に郵便局長を務めた中田さんが所有する局舎で、届け先の分からない手紙やはがきを受け取り、展示する。会期の1カ月間で約400通が寄せられた。記された言葉は重く、閉じるのが忍びなくなった。やがてテレビ番組などで紹介され、届く手紙も増えた。

《浩太君 漂流郵便局さんのおかげで 君にはがきを書くことができるようになりました。これでようやく思いをとどけることができます。君と別れて19年。生きていてくれたら どんな人になっていることでしょう。おとうさんには想像もできません。11歳の君の姿しかしらないんだから》

届いた手紙は、中田さんが局舎内の「漂流私書箱」に入れる。浩太君への手紙は今年、60通を超えた。

《君の最後のことばは「おかあさん」 君はおかあさんが大好きで、お年玉を貯(た)めて指輪をプレゼントしたよね。近頃おかあさん 君の指輪をしていない。太って入らなくなったって。でも時々指輪をそっと見ているそうです》

昨夏、年配の夫婦がここを訪れた。1時間ほど私書箱の手紙をじっくりと読む。帰り際、中田さんに話しかけてきた。浩太君の両親だった。浩太君は生まれつき心臓が悪かったという。父親は中田さんに「悲しいのは自分だけでない。気持ちが落ち着いた」と語ったという。

この日は、母親が手紙をつづった。

《浩太君へ お父さんと二人で来ましたよ。私には何も言わなかったんですが、お父さんは浩太へお便りしてたのですね。

ここに来るとあなたに会える気がしました。いい所ですね。ありがとう》

中田さんは毎月第2、第4土曜の午後1〜4時に郵便局を開けている。中で手紙やはがきを熱心に読んだり書いたりする人を見ながら、扉に鍵をかけるのを少しだけ待つこともある。

「行き場のない思いは、誰しも持っている。そんな思いをつづって心を癒やし、気持ちに整理をつけてほしい」。それが中田さんの思いだ。

手紙の宛先は〒769-1108 香川県三豊市詫間町粟島1317の2 漂流郵便局留め。差出人の住所や名前は不要。問い合わせは三豊市産業政策課(0875・73・3013)へ。



漂流郵便局には、東日本大震災の被災者からも便りが寄せられている。

《おとうさん、今でも毎日思い出しています。手紙を書けば少しは気持ちが楽になると想(おも)い、返事がなくても書きました。私の事を一生まもってくれると言うてたのに》

《コロは津波でいなくなっちゃったんだよね。家族はみんな助かったのに、どうしてコロだけ。こんなことになるなら、もっとコロをかわいがって、いっしょに遊んで散歩して。4月からはいよいよ中学校デビューだ!! コロにも見せたかったな》

未来の自分にあてた手紙もある。

《いつかまたお逢(あい)しましょう。楽しい話を一杯提げて 幸せ一杯胸に抱いて 未来のあなたへ。とても大切な未来のあなたへ 大好きな私より。》

■2015.2.5  首都高速への誤進入、2割に認知症の疑い 対策強化へ
首都高速道路は4日、誤って首都高速に入ってきた歩行者や自転車を運転していた人の2割に認知症の疑いがある、との調査結果を発表した。死亡事故も起きており、対策を強化する。

昨年12月までの1年9カ月間に起きた391件を分析。要因別では単純な誤進入は34%で、認知症の疑いが21%、酒酔いが10%、外国籍であることが10%だった。年齢別では65歳以上が45%で、30〜64歳が35%、30歳未満が15%。時間帯では夜間(午後7時〜午前7時)が48%を占めた。

死亡事故は2011年4月以降で6件あり、歩行者4件、自転車2件。昨年12月には3号渋谷線の出口から誤って入った自転車の男性(当時25)が、トラックと衝突して死亡した。首都高は大半の出口に料金所がなく、誤進入を招きやすいとして、警視庁が対策強化を求めていた。

首都高は4日、対策の取り組み状況も公表。認知症の人向けには外部機関との研究で効果がみられた赤い「×印」のLED表示板、外国籍の人向けには英語で併記した警告表示板を増やす。3月からは、誤進入を検知して「ただちに引き返して」などと音声を流すシステムを一部の出入り口で試験的に始める。

■2015.2.5  てんかん治療薬、不適切服用で4人死亡 重篤な皮膚障害
てんかんなどの治療薬「ラミクタール」の不適正な服用で昨年9〜12月に重篤な皮膚障害が出た4人が死亡したとして、厚生労働省は4日、製造販売会社グラクソ・スミスクラインに対し、使用上の注意を改訂し、医療関係者らに注意喚起するように指示した。

厚労省や同社などによると、ラミクタールはてんかんやそううつ病の治療薬として2008年12月に発売。定められた用法や用量を超えて服用した場合、重篤な皮膚障害が出る可能性が高くなるため、これまでも同社が複数回にわたって注意喚起をしていた。

同薬の推定服用患者は昨年12月までに約37万6千人。4人のほかに、因果関係が不明なものも含め、重篤な皮膚障害が出て死亡した患者が12人報告されていた。

■2015.2.5  滋賀 特養に不登校の子どもらの「居場所」
不登校の子どもたちに、学校でも家でもない「居場所」をつくろうとする取り組みが17日から、大津市の特別養護老人ホームで始まる。取り組む団体関係者は、施設の職員や入所者との食事やおしゃべりを通して「社会に心を開く一つのきっかけになれば」と願う。

文部科学省児童生徒課の担当者は「福祉施設を不登校の子の居場所として支援する取り組みは聞いたことがなく、興味深い」としている。

県介護福祉士会や社会福祉法人など200以上の組織で昨秋発足した「滋賀の縁(えにし)創造実践センター」(事務局・県社会福祉協議会)の試みだ。

支援が届きにくい人たちを支えようと、不登校の子どもやその親らの「居場所づくり」を検討。メンバーの一人で、大津市月輪1丁目の特別養護老人ホーム「カーサ月の輪」の日比晴久施設長(46)が手を挙げた。

施設には24時間職員がおり、子どもがいつでも訪ねられる。共有スペースが広く、自宅と違う環境でゆったり過ごせる設備があることから「居場所に向いているのではないか」と考えた。入所者も子どもと交流ができれば、生活にはりができる効用も期待しているという。

日比施設長は「職員やボランティアの大学生らと夕食を食べたり、勉強したりできる。環境に慣れて入所者の食事の配膳の手伝いなどをすれば、人に頼られるという充実感が得られるかもしれない」と話す。

17日から毎週火曜午後5時半〜同9時に受け入れる。不登校児らに対応する県教委のスクールソーシャルワーカー(SSW)らと協議しながら、施設から近い大津、草津両市の小学校高学年や中学生を受け入れる予定だ。

センターの谷口郁美所長は「大津での試みをモデル事業に、各地に同じような居場所を広げたい。今後、県や市町の教育委員会とも連携しながら、それぞれの子どもや親に合った支援をしていきたい」と話している。

■2015.2.5  インフル集団感染、96歳の女性死亡 福知山の高齢者施設
社会福祉法人「成光苑」(大阪府摂津市)が運営する複合型高齢者福祉施設「サンヒルズ紫豊館」(京都府福知山市榎原)は4日、施設内でインフルエンザの集団感染があり、入所する96歳の女性が死亡したと発表した。

同施設によると、1月28日から3日にかけ、80〜90代の利用者10人と職員2人が、相次いで発熱などの症状を訴えた。96歳の女性は1月30日に発症、2月3日に施設内で亡くなった。この女性以外は全員、快方に向かっているという。

■2015.2.5  高齢者虐待475件最多/家庭内4割息子から 京都
京都府は4日、府内の2013年度の高齢者虐待件数を発表した。

高齢者虐待防止法が施行された06年度以降では「家庭」、「施設・事業所」とも件数は最多となった。
家庭が472件(前年度比47件増)で487人(同46人増)、
施設・事業所が3件(同2件増)で3人(同2人増)だった。府は「高齢化の進展と、行政として早期相談の呼びかけが浸透した結果ではないか」とみている。

府によると、家庭内の虐待の相談・通報は714件で前年度より78件増え、このうち472件が虐待と認定された。虐待を受けた487人の内訳は女性376人、男性111人だった。

虐待内容は暴力を振るう「身体的虐待」が317件でトップ。暴言などの「心理的虐待」が216件、「介護・世話の放棄・放任」が120件、年金や預貯金の無断使用などの「経済的虐待」が107件と続いた。

虐待を行ったのは、息子が201件と全体の約4割を占め、夫が113件、娘が101件。男性が多い状況を、府は「介護疲れもあり、力が強いため、手が出てしまうのでは」と分析する。家族と同居の場合は、相談・通報を受けた市町村が親類宅や医療機関で一時保護してもらうなど対処しているという。

一方、施設・事業所の相談・通報は前年度より9件増の14件。特別養護老人ホームなどで男性職員が80歳代の女性入所者に後方から抱きついたり、返事をしなかった80歳代の男性入所者に男性職員が罵声を浴びせたりしていた。入所者の口に職員が指を入れて不快な思いをさせたケースもあった。

府は「虐待を受けた人の特定につながる恐れがある」として施設名を公表していない。いずれも継続的な虐待ではなかったといい、府は施設を指導し、改善計画を提出させた。

府は「高齢化が進んで、老々介護も増えている。虐待を未然に防ぐ対策と、虐待の早期発見、早期解決を目指す対策を市町村と連携して進めたい」としている。

■2015.2.5  ネットで人気の「ぬくもり商品」 障害者作業所で製造
障害者の作業所で製造された商品の販路拡大に向け、兵庫県が開設しているサイト「+NUKUMORI(ぷらすぬくもり)」の掲載商品の売り上げが好調だ。

通信販売とバザーなどでの販売を合わせると、2014年度は13年度の倍以上で推移。作業所の技術向上により掲載商品も増えており、県はさらなる認知度向上を目指す。

県は13年9月に同サイトを開設。商品は、パティシエや販売促進コンサルタント、商品デザイナーら専門家でつくるプロジェクトチームが選び、掲載している。

14年度は県が社会福祉法人などに委託し、技術向上指導員8人を雇用。県内各地の作業所に派遣し、商品の質やデザイン性の向上に向けたアドバイスを行っている。また県単独で設備投資への助成も開始。こうした取り組みもあり、サイト開設時に50点だった商品掲載数は114点に増えた。

一方、13年度の月平均が約20万円だった売り上げは14年度、55万円以上に増加。掲載商品の一部が、兵庫など5府県が作業所の品質向上に向けて開く「スウィーツ甲子園」で上位入賞したりしていることなどが効果を上げているという。

障害者の工賃底上げまでの道のりはまだまだ険しいというが、県障害者支援課は「障害者が一般販売できる商品を作っていることをネットを通じて広げ、少しでも購入を増やしたい」としている。

■2015.2.5  障害者の学習、さらに楽に 支援マウス開発  黒川高(大和町)電子工学科3年の生徒
黒川高(大和町)電子工学科3年の生徒8人が、障害者にも使いやすいパソコン用マウス「支援マウス」10個と、発光ダイオード(LED)で2桁の数を表示して数を数える学習を補助する「カウンター」4個を製作し1月30日、県小松島支援学校(仙台市青葉区)に寄贈した。

支援マウスは、通常のマウスに大きな押しボタンを接続し、指先が不自由な人でも簡単にクリック動作ができる工夫がされている。カウンターは、ボタンを押す度に表示される数字が一つずつ増え、数の増減を体を使って覚えられる。

1年かけ、回路図考案や部品調達、基盤製作など一から取り組んできた。4月に看護の専門学校に進学する庄子文佳君(18)は「3年間で学んだ技術をつぎ込んで作った。支援学校の生徒がパソコンに触れたり算数を学んだりするのに生かしてほしい」と話した。

寄贈式には支援学校の生徒7人も出席し、実際にマウスをクリックしてみた。受け取った中学部の女子生徒は「大切に使いたいと思います」と述べ、お礼に手作りのティッシュケースを贈った。

■2015.2.5  木工ぐんまちゃん人気 障害者支援施設製造
群馬県昭和村川額(かわはけ)の障害者支援施設「たけのこ学園」(品川玲子園長)の利用者が作る「ぐんまちゃん」をモチーフにした木工品が注目を集めている。

ぐんまちゃんが「ゆるキャラグランプリ2014」で初優勝すると注文が増え、製品によっては一時、1カ月待ちの人気に。同園は「製品が広く認知され、利用者の社会参加の一助になれば」と期待している

■2015.2.5  止まらない咳、痰…雑な加湿器使いが招く「急性肺障害」
風邪や乾燥肌を予防するため、冬は加湿器をフル回転させている家庭も多いだろう。
 たしかに、さまざまな不調の原因となる乾燥を防ぐには加湿が有効だ。しかし、その加湿器が健康を害してしまうケースもある。しっかり見直したい。

昨年末、Mさん(40)は、しつこい咳や痰に悩まされた。外出しているときはなんともないのに、帰宅すると咳が止まらず、痰が絡む。微熱が続いて、体のダルさが抜けないことや息苦しさを感じる日もあった。

市販の総合感冒薬を飲んでも、症状は一向に改善しない。〈タチの悪い風邪だろう〉と思って病院で検査を受けたところ、「過敏性肺臓炎」だと診断された。ロクに清掃もしないまま加湿器を使い続けていたことが原因で、アレルギーを起こしたという。

国際医療福祉大学臨床医学研究センター/山王病院アレルギー内科の足立満教授は言う。
「<加湿器病>や<加湿器肺>と呼ばれる症状です。
エンドトキシンという毒素を持つグラム陰性桿菌や、カンジダなどの真菌類(カビ)が加湿器の水の中やタンク内で増殖し、加湿器によって飛散されたそれらを吸い込むことで起こります。カビによるアレルギー性の過敏性肺臓炎や、細菌の毒素に対する炎症反応が複雑に関与していると考えられていて、発熱、悪寒、咳、痰、全身倦怠感といった症状が出ます。急性の肺障害を起こしたり、呼吸困難などの重篤な症状を招くケースもあるので、甘く見てはいけません」

■浄水はNG

抗生物質が効かず、炎症を抑える作用があるステロイド薬や、他の治療が必要になるケースもある。加湿器を使うと体調がおかしくなる場合は、早めに受診したほうがいい。もちろん、加湿器病になる前にしっかり予防しておくことが大切。細菌やカビの繁殖を防ぐためには、加湿器のタンクは小まめに洗い、水は毎日取り換えるのが鉄則だ。

「さらに、必ず水道水を使うようにしてください。浄水器を通した水をつぎ足して使っていた人が過敏性肺炎になったケースが報告されています。浄水器を通した水のほうがなんとなく清潔なイメージがありますが、残留塩素が少なくなって、細菌が繁殖しやすくなってしまうのです」(足立教授)

加湿器の種類も見直したい。加湿器には、超音波式、加熱式、気化式、ハイブリッド式などいくつも種類があるが、注意しなければならないのは超音波式だ。

超音波式は水をつぎ足して使い続けることができるため、水が汚染されやすい。しかも、その水を粒子の大きい霧状にして飛散させるので、部屋中に細菌をまき散らしてしまうことになる。また、フィルターに水を染み込ませ、風を当てて自然に気化させる気化式も、フィルターを小まめに交換しないと細菌やカビが繁殖する危険がある。

「その点、加熱式は加熱することによって細菌の多くを死滅させることができる。加湿器を使うなら加熱式がおすすめです。ただし、熱に強い高熱性微生物もいるので、加熱式だからといって絶対に安心というわけではありません。やはり、小まめなタンク清掃と、毎日の水交換は必要です」(足立教授)

加湿器病から身を守るために、まめな手入れを心がけたい。

■2015.2.5  触法障害者を支援 司法、福祉、医療など連携し学会設立
事件や犯罪にまきこまれやすい知的・発達障害者の支援に司法、福祉、医療、教育など多様な分野の専門職らがかかわっていこうと、「日本司法・共生社会学会」(会長=内山登紀夫・福島大大学院教授)が設立された。

1月24・25両日に都内で開かれた設立総会には、権利擁護や再犯防止に取り組んできた弁護士、医師、社会福祉士、教諭などが集まった。

基調講演したリチャード・ミルズ・英国リサーチオーティズム研究部長は、自閉症スペクトラム障害と触法に関して「社会的孤立やいじめの経験、不安やパニックなどが重なって問題となる。しかし重大な罪を犯すことはまれで、被害者になりやすい」などと解説。

内山会長は、発達障害者の対応困難ケースに関する研究をしており、「専門家を対象としたテキストの作成や政策提言、支援システムの提言をしていきたい」としている。

学会は
▽裁判と障害者事件▽地域生活定着支援センターと保護観察所の役割
▽司法精神医学、矯正、社会内支援
▽メディア研究など10テーマの「対話の場」を設け、ネットワークをつくり実践に生かしたい考えだ。

また、学会設立メンバーらはこれまで、厚労事務次官の村木厚子さんが郵便不正事件で無罪となった際の国家賠償金による「共生社会を創る愛の基金」を活用し、人材養成に取り組んできた。

この活動について浦アェ泰弁護士は「学校、福祉の相談支援センター、警察などさまざまな分野の機関があってもはざまがあり、どこにも結びつかない人がいる。それらをつなぐ人材が『トラブルシューター』。障害により福祉的支援が必要と思われる被疑者・被告人の支援などをしてきたが、事件になる前から連携しておけるようにしたい」などと発表した。

■2015.2.5  老後は「刑務所」で悠々自適!?衣食住に困らず医療はタダで友だちもいる
滅多に窺い知ることができない刑務所の中だが、実は福祉施設並みの居心地のいい場所だった。塀から出れば地獄、入れば天国という志願者で、いまや高齢受刑者が急増中という。「真相チェイス!直撃御免」コーナーで、塀の中の今を取り上げた。

5人に1人が2年以内に舞い戻ってくる高齢受刑者

女子専用では最大の栃木刑務所(栃木県栃木市)と男子専用の黒羽刑務所(栃木県大田原市)。

まず訪れたのは、60歳以上が2割を超えるという女子専用の栃木刑務所(栃木県栃木市)だ。70代の受刑者に話を聞くと、タクシーの無銭乗車で逮捕され、詐欺罪で一昨年に懲役2年10か月の実刑判決を受けていた。執行猶予が付けられなかったのは、「出所して5日目にまた事件を繰り返したため」で、なんと塀の中はこれで8回目だという。そしてこんな話をする。「兄弟にも見放されて独りで生活するのも大変だし、ここにいれば友だちもいるし」と笑う。

実は高齢受刑者の再犯率は7割以上で、5人に1人は2年以内に再び塀の中に舞い戻ってくるという。だから友だちが多いのだ。

男子専用の黒羽刑務所(栃木県大田原市)には、普通の刑務所では生活が困難な高齢受刑者を収監する「病棟」と呼ばれる特別施設があり、現在38人が収容されている。70代の受刑者は「点検の時間ですから布団を畳みなさい」と再三注意されても反応なし。

スーパ−で万引を繰り返し窃盗で服役中のこの受刑者は、昨年9月から認知症が出てこの病棟に移された。ようやく布団を畳み、点検を終えた後もまた横になっていた。もはや刑務所にいることも分からないらしい。「ここは静かだし良い。ここでゆっくりしようって思う」なんて話している。

刑務官「刑務所の役割とは何だろうと考え込んでしまいます」

刑務所「病棟」では受刑者一人ひとりの健康状態に合わせ、「減塩食」「粥食軟菜」などの食事メニューが作られる。風呂も介護の刑務官が付き頭などを洗ってくれる。さらに准看護士の資格を持つ刑務官が巡回し、体調チェックもしてくれて、症状が悪化すれば外の病院で専門医に診てもらえる。すべて無料だ。手厚い看護も、刑を全うさせ社会に復帰させるためというが、税金で賄われる刑務所の医療費はこの10年間で約2倍に跳ね上がり、年間58億円にのぼる。

黒羽刑務所で刑務官が最後に案内したのは墓地だった。刑務所内で死去し引き取り手のいない受刑者のためにつくられたという。墓石に刻まれた言葉は、誰もが皆一つの浄土に戻るようにと「會一處」だった。

塀の外に出れば自己責任、中なら極楽状態。栃木刑務所の女性刑務官は「刑務所に来た方は、食べ物は出るし着る物はあるし、生活に困らないという面ではそう思っている人はいるでしょう。自分たち刑務官はボランティアではないですし、刑務所としての役割となると頭を抱える部分もあります」と率直に話していた。

司会の小倉智昭「受刑者以下の生活をしている善良な市民は結構いると思う。そこが問題ですね」

■2015.2.5  障害者アートに海外への道…大阪府が販売を支援
大阪府は、障害者が手がけた美術作品を海外に売り込む取り組みを2015年度からスタートする。芸術的に高い評価を得た障害者の作品でも、国内では販売ルートが少なく収入に結びつかないことが多いが、海外では高値で取引されていることに着目。海外に芸術作品の取引ルートを持つ事業者を障害者に引き合わせ、事業者や作者の海外渡航費などを補助することで、障害者の経済的自立を後押しする狙いだ。

 福祉施設では、障害者が絵画や工芸品を創作することも多い。知的障害者を中心に、著名な作家もいるが、多くの障害者作品はイベントなどでの展示にとどまり、販売にまでは至らない。

一方、欧米では、芸術性の高い障害者の作品を「現代アート」として評価する土壌がある。障害者や子供ら、正規の美術教育を受けていない人の作品を「アール・ブリュット(生きの芸術)」と呼び、自由で独創的な作風が高い価値につながることが多い。

取引額も国内より大幅に高額で、日本で10万〜50万円の作品が、欧米では100万〜1000万円とされることも。欧米で注目された日本人の作品が「逆輸入」されることで、国内での評価が上がることもある。

府は、行政が橋渡しする形で、海外事情に詳しい画廊などと障害者を結び、海外へ売り込むことにした。

海外取引のノウハウや現地とのつてを持つ非営利組織(NPO)などの事業者を公募。府が10年から開いている障害者向けの公募展で最優秀賞や優秀賞に選ばれた作品を対象に、作家や事業者が売り込みのために渡航する費用や、現地滞在費を支援する。補助総額は、15〜17年度の3年間で約1500万円を見込む。

計画は公募展が始まった時からあったが、「一部の障害者のために公費を支出しがたい」との意見もあり、府の予算はつかなかった。

府自立支援課の職員らが、企業や団体からの寄付集めに奔走したが、目標の900万円に届かず、一度は断念した。今回、寄付金に加えて、府の拠出金などでつくる府福祉基金を使うことに方針転換。外部専門家らから、基金の使途としてふさわしいかの審査を受けた上で、実現にこぎつけた。

同課は「作品が正当に評価されて、収入につながる仕組みを作ることで、新しい障害者の自立のあり方を確立したい」としている。

■2015.2.6  介護報酬、認知症高齢者受け入れる施設には加算
厚生労働省の社会保障審議会介護給付費分科会は6日、2015年度からの介護報酬をまとめた。

社会保障費の抑制のため全体で2・27%引き下げられ、基本的なサービスを提供した場合の報酬の大部分が下がった。一方、在宅サービスや介護の必要性が高い中重度者や認知症の人向けのサービスを充実させた際に、加算を手厚くするなど、報酬にメリハリをつけた。質の高い事業者を増やし、介護を受けながら自宅などで暮らせるようにするのが狙い。

個々の利用者から見た場合、各サービスの基本料金は下がるが、質の高い介護を受けた場合には負担が増えるケースもある。

介護保険サービスの公定価格である介護報酬は、3年ごとに見直されている。マイナス改定は06年度以来、9年ぶり。今回の改定では、住み慣れた地域で暮らし続けられる「地域包括ケアシステム」という仕組み作りに重点を置いた。

例えば、24時間いつでも呼び出しに応じる訪問介護について、医師や看護師などと連携してサービスを提供する場合の報酬加算(1か月1人あたり1万円)を新設。日中に通うデイサービスでは、認知症の高齢者を積極的に受け入れる施設に、1日1人あたり600円を加算する。

■2015.2.6  福祉施設の虐待、調査に限界/通報23件に対し確認3件/2013年度の青森県内/関係者「体制充実を」
福祉施設で職員から虐待を受けた−など、県内各市町村に寄せられた福祉施設の虐待通報は2013年度23件で、そのうち虐待の事実が確認されたのは3件だった。

通報内容は、市町村担当者が調査を行った上で虐待の有無が判定されるが、障害者が状況をうまく伝えられなかったり、外部の目が届きにくい施設の特殊性などから、調査の限界も指摘されている。県内の福祉関係者は、調査体制の一層の充実、風通しの良い施設の環境づくりの必要性を強調する。

12年10月に施行された虐待防止法では、家庭や福祉施設、職場などでの障害者虐待を予防、早期発見するため、各市町村に通報窓口を設置することとされている。

12年10月から13年3月までの半年間で、施設職員による虐待が疑われた通報は17件で、そのうち虐待認定はゼロだった。
13年度の通報は23件で、市町村担当者による聞き取り調査を経て虐待と認められたのは性的虐待2件、身体的虐待1件の計3件。虐待があった施設名や虐待内容は、プライバシー保護の観点から公表されていない。虐待有無の判定に当事者が納得できない場合、さらに調査を行う上部機関はなく、県障害福祉課の担当者は「民事訴訟以外、解決を見いだす方法は見当たらない」と語る。

一般社団法人・権利擁護あおい森ねっと(弘前市)の三上富士子代表理事は「障害者施設で不適切な職員の関わりがあったとしても、その事実を訴えられない障害者も多く、虐待の立証は難しい。施設の閉鎖性によって、何事もなかったように処理される場合もある。虐待の有無を調査する行政が、福祉の専門家でない場合、虐待の事実を見落とす恐れもある」と調査体制の一層の充実を求める。

福祉サービス利用者からの苦情相談に応じる県運営適正化委員会委員長の沼田徹弁護士は「障害者虐待については、いろいろな面から慎重に評価していかなくてはならない」と指摘。「利用者と施設側の誤解や疑念を生まないように、施設側は風通しの良い環境を整え、利用者と施設側が自由に話をできるようにしなければならない」と語る。

■2015.2.6  介護報酬の個別サービス改定案提示 在宅支援手厚く、特養は軒並み引き下げ
厚生労働省は6日、平成27年度から3年間、介護サービスを提供する事業者に支払う介護報酬の改定案をまとめ、社会保障審議会介護給付費分科会に示した。高齢化の進展で施設による受け入れには限界があることを踏まえ、介護の中心を住み慣れた自宅に誘導するため、介護の必要度が高い要介護者や認知症高齢者の在宅支援に重点配分した。

介護報酬は3年に1度改定する。政府は27年度改定で、膨らみ続ける介護費の抑制を目指し、報酬全体で9年ぶりに2・27%の引き下げを決めた。これを受け、個別のサービス報酬を示した改定案は、在宅支援を手厚くする一方、利益率が高水準の特別養護老人ホーム(特養)などに支払う基本報酬を軒並み引き下げた。

在宅支援では、通いを中心に宿泊などを組み合わせる小規模多機能型居宅介護について、高齢者宅への訪問サービスを充実させた場合を想定し、「訪問体制強化加算」を新設する。高齢者の家族が仕事と介護の両立ができるよう、受け入れ時間を延長した場合の「延長加算」も設ける。

通所介護(デイサービス)でも、認知症高齢者や要介護度3以上の高齢者を積極的に受け入れている事業所に報酬を加算する。リハビリテーション専門職を配置するなどした介護老人保健施設(老健)にも報酬を手厚くし、入所者の在宅復帰を後押しする。老健や特養で、終末期の「みとり」ケアに取り組む態勢整備も評価し、報酬を高くする。

報酬見直しでは基本報酬引き下げに加え、有料老人ホームなど集合住宅での訪問サービスに関しても、事業所が集合住宅と同じ敷地内や隣接しているケースでは、移動コストが低く済むことから、報酬を10%減額する。通所介護で利用者の送迎を実施しない場合も減額する。

一方、深刻化する介護職の人手不足を解消するため、労働環境の改善などに取り組む事業所を対象に、1人当たり平均月額1万2千円の処遇改善加算を設けた。介護福祉士を6割以上配置している老健や特養などにも報酬を加算した。

■2015.2.6  子ども虐待 制度で守れ 「ネグレクト防止ネットワーク」山田不二子理事長に聞く
◆「権利擁護センター」7日に開業
虐待についての聞き取りをワンストップ化して子どもの負担を減らし、児童相談所や警察などの関係機関のつなぎ役を果たす−。「子どもの権利擁護センターかながわ」のオープンはNPO法人子ども虐待ネグレクト防止ネットワーク理事長で内科医の山田不二子さん(54)にとって悲願といえた。「子どもを虐待から守るには思いだけでは足りない。制度や仕組みが不可欠だ」。その信念に至るまでには数々の苦い思いを胸に刻まねばならなかった。

中学1年生の女子生徒の膣(ちつ)から見つかったのは乾電池、それも最も大きい単一形だった。

「体調不良を訴えたので私が診療し、検尿の結果、異常な数値が出た。紹介した先の病院で受けたエックス線検査で映ったのが電池だった。長期間放置されていたため電池が液漏れし、膣内で癒着し始めていた」

同居する家族による虐待が強く疑われた。誰に入れられたのか、少女は決して口にしようとしなかった。「ひどい仕打ちを受け、しかも1カ月以上たってどうにもならなくなるまでSOSすら出せない。性虐待が子どもに負わせる傷の深さ、残酷さを目の当たりにし、衝撃を受けた」

子ども虐待ネグレクト防止ネットワークを立ち上げた1998年当時に直面した事例だった。家庭から引き離し、養子縁組によって少女が困難な状況を脱するまで3年を要した。「今であれば即保護されるケース。当時は態勢が整っておらず、最後は家出をさせて保護するという形を取らざるを得なかった」。子どもを虐待から守る難しさ、ハードルの高さ、多さを知り、「被虐待児から聞き取りをする専門機関」の必要性を思い続けてきた。


■致命的遅れ■
児童福祉法は虐待が疑われるケースを発見した場合、児童相談所などに通告することを発見者に義務付けている。子どもに聞き取りを行う際、やってはいけない行動をまとめた「DO NOT(ドゥー・ノット)リスト」というものがある。

最たる例が「加害者と疑われている人物に虐待について聞くこと」だ。「虐待をしていて本当のことを言う親はまずいない。自らの犯罪を隠そうと子どもにうそをつかせたり、脅したり手口が巧妙化する」

虐待の早期発見には、子どもが多くの時間を過ごす学校の教職員の果たす役割は小さくないが、直接家庭に話を聞きに行くのは「完全に逆効果」と言い切る。問題解決や再発防止のための努力にも見えるが、「原則は加害者に嫌疑を悟らせないこと。日本では学校に調査権を与え、やってはいけないことを推奨する制度になっている」。

活動を続けるうち、虐待防止に取り組む米国の医師らと出会った。専門の面接者が子どもに聞き取りをし、そこに児童相談所職員と警察官、検察官が同席する「司法面接」という手法や実行するための「多機関連携チーム」が実績を上げていることを知った。

そして、口々に言われた。「日本の職員や個人の力量や熱意は米国に引けをとらない。ただ、それを十分に発揮させ、機能させられる制度やシステムの整備が致命的に遅れている」。自身が活動を通して痛感してきたことだった。


■情報を共有■
2012年に横浜市南区のアパートで虐待死した山口あいりちゃん=当時(6)=の事件も「制度の整備によっては防げた可能性がある」と悔しがる。

あいりちゃんは両親が離婚後、母親に引き取られ、母親とその交際相手の男から暴力を振るわれ、亡くなった。住まいは千葉県松戸市や秦野市、横浜市などを転々とし、学齢期に達した後も不就学だった。学校に通っていないことを不審に思い、各自治体の教育委員会が追跡調査などで連絡を取り合っていれば異変に気づけた可能性があった。

山田さんが例として挙げるのが、米国などが実施する「クロスリポート(相互通告)」だ。虐待の疑い例を認知したのがどの機関であれ、関係する機関が全体で情報を共有する。深刻さを判断し、必要な機関が必要な行動を単独、あるいは共同で取っていく。

「あいりちゃんの件も虐待死に至る前に、はだしで徘徊(はいかい)している妹を警察が家に送り届けている。そこで警察が育児放棄を強く疑い、児相と一緒に動きだしていれば、その後の展開は違っていたはず。『自分たちの仕事はここまで』と児相への通告止まりになってしまうのが今のやり方。各機関が連携し、最悪のケースを念頭に動いていれば、あいりちゃんは死ななくて済んだはず」

子どもの権利擁護センターかながわの波及効果として期待するのは、まさにその点だ。司法面接を実施することによりセンターが児相、警察、検察の結節点となり、効果的な連携へとつなげていく。それを制度化し、確立していくことが目標だ。


■実効性の壁■
司法面接を可能にしたセンターだが、警察や検察の協力をどこまで仰げるかという課題がある。また、日本では原則、警察や検察が直接聞き取った証言以外は証拠採用されない。警察官や検察官がその場で指示をするとはいえ、一義的には面接官が聞き取った証言に法的効力を持たせられるかは未知数だ。

山田さんが望みを託すのが、検察の「検察官面前調書」という制度だ。検察官の面前での供述を録取した書面を指し、証拠としても採用され得る。「聴取の録音・録画に肯定的な検察がセンターでの聞き取りを適用してくれれば、かなり有効になる」と期待を込める。

センターが持つ機能の十分な発揮や目指す多機関連携の実現には数々の困難が待ち受けている。

「それでも」と山田さんは言う。「いまの日本同様、米国でも当初は各機関の縦割りが障壁となっていた。それを実践を通して変えていったジャン・ベイズという小児科医は30年近く前、自身のクロゼットを三つの小部屋に改装し、子どもの権利擁護センターの原型をつくった。彼女は言っていた。『最初は小さくても、とにかく始めることよ』と。だから、私も始めるんです」

7日のオープンを前に、すでに数件のヒアリングが予定されているという。

▽山田不二子(やまだ・ふじこ) 1960年横浜市生まれ。内科医。山田内科胃腸科クリニック(伊勢原市)副院長。児童虐待防止活動に取り組み、98年に「子ども虐待ネグレクト防止ネットワーク」を設立。2001年のNPO法人化に伴い理事長に就任。

■2015.2.6  介護老人保健施設で結核集団感染 3人死亡 茨城・利根町
茨城県は6日、利根町の介護老人保健施設「もえぎ野」で結核の集団感染があり、発病した入所者と利用者の患者計5人のうち70〜90代の男女3人が死亡したと発表した。ほかに職員7人にも感染が確認された。

県は、食事やレクリエーションを行う共有スペースを利用する中で感染が広がったとみて、接触者の経過観察を続ける。

県によると、最初の患者の90代男性は昨年9月に確認され、10月に死亡した。その後の健康診断でさらに4人の発病が分かり、うち2人は12月に死亡。ほかの2人はいずれも90代女性で命に別条はないが、1人が入院した。

患者のうち4人の結核菌を検査した結果、遺伝子パターンが一致し、集団感染と判断した。

■2015.2.6  集団感染:12人が結核に 結核と肺炎で3人死亡 茨城
茨城県は6日、同県利根町もえぎ野台の介護老人保健施設「もえぎ野」で、利用者5人、職員7人の計12人が結核に集団感染し、昨年10〜12月に70〜90代の男女3人が死亡したと発表した。死因は感染源とみられる90代男性が結核で、70代男性と80代女性は誤えん性肺炎だった。

同施設によると、90代男性は昨年9月に発熱し、当初は肺炎と診断された。転院して結核であることが判明したため、施設入所者らの胸部レントゲン検査などを実施したが、集団感染を防げなかったという。

■2015.2.7  ◆長崎グループホーム火災2年:今年度内にスプリンクラー    ◆繰り返されたグループホーム火災
長崎グループホーム火災2年:今年度内にスプリンクラー
5人が死亡した長崎市の認知症高齢者グループホーム「ベルハウス東山手」火災から8日で2年になるのを前に、市は6日、関係部局による連携会議を開き、今年度内に市内の全グループホームにスプリンクラーが設置される見通しとなったことなどが報告された。

スプリンクラーが設置されるのは68グループホームと27小規模多機能型居宅介護施設。この他、年2回程度だった各事業所の避難訓練の毎月実施を義務付けることなどの取り組みが報告された。

施設の規模に関係なくスプリンクラーの設置を義務付ける改正消防法施行令が今年4月1日に施行され、既存施設についても2017年度末までの改修が求められている。長崎市は13年6月、国の動きを先取りする形で新設のグループホームなどに設置を義務付けるよう条例を改正。既存施設は「努力義務」としていたが、年度内に既存施設も含め設置が完了する見通しとなった。

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繰り返されたグループホーム火災 NHK解説委員 山ア登  2013年2月15日
先週、長崎市のグループホームから火が出て、入居者の女性など4人が亡くなった火災から、今日で一週間です。
最近の火災では、こうした高齢者施設の被害が目立っていて、施設の所有者や管理者の防火意識の向上と対策の強化が指摘される中、また悲劇が繰り返されてしまいました。高齢化社会を迎え、こうした施設は急増しています。そこで今晩は、この一週間で分かってきたことを整理しながら、グループホームの防火対策をどう高めていけばいいかを考えます。

◆長崎市のグループホーム火災  現在までに分かっている火災の概要のまとめ◆
2月8日の午後7時40分過ぎ、長崎市の観光地、オランダ坂の通りに面したグループホーム「ベルハウス東山手(ひがしやまて)」から火が出た。
建物は4階建てで、1階と2階がグループホームとして使われ、3階と4階は事務所と住宅になっていました。火は2階から出て部屋や廊下などを焼いて、およそ2時間後に消し止めらた。入居者と3階に住んでいた77歳から88歳までの女性4人が亡くなった。いずれも煙を吸い込んだことによる一酸化炭素中毒。その後の現場検証では、2階の中央付近の部屋にあった加湿器のコードにショートしたような跡があったことから、警察が出火原因との関連を調べている。

◆増えるグループホーム火災◆
グループホームは、5人から9人と比較的少人数の高齢者が介護スタッフとともに共同生活をする施設。
居室は原則として個室になっていて、食堂やリビングなどの共用部分があります。今回の施設には認知症の高齢者が入っていたが、家族的な雰囲気でのケアは精神状態が安定しやすいなどの効果があるとされている。
このため、グループホームは増える傾向にあり、現在、全国におよそ1万1000ヶ所余りあって、10年前の16倍に急増している。利用者は16万3000人となっている。

しかし、残念なことに火災の被害も相次いでいます。平成18年には長崎県大村市のグループホーム火災で7人が亡くなり、平成22年に札幌市のグループホーム火災で7人が亡くなった。
グループホームのような社会福祉施設では、火災が起きた際の死者数はホテルや旅館、病院など、ほかの建物に比べて圧倒的に多くなっている。
平成22年までの10年間の死者数を、火災100件あたりで比べると、ホテル・旅館は1.7人、病院・診療所が1.3人だが、社会福祉施設は4.9人。しかも広さが300u未満の施設でみると20.6人にもなる。

◆高齢者を火災から守る◆
こうしたデータや最近の火災から考えなくてはいけないことは、施設で暮らす高齢者は1人で避難することが難しかったり、避難に時間がかかる人がほとんどだという。
グループホームでは、職員の配置は日中の時間帯は入居者3人に1人、夜間は入居者の人数に関わらず1人と定められていますが、この配置は日常的なケアに必要な人数で、火災の際の避難誘導に十分なものではない。
防火対策にとって最も重要な点は、火災が起きないようにすることと、万一起きた場合の初期消火をいかに早くするかという点だ。グループホームなどの社会福祉施設では、防火対策を徹底して行う高い防火意識が求めらる。

◆施設の所有者の防火意識◆
まず求めたいのは、施設の所有者や管理者の防火意識です。今回火災が起きた施設では、3年前に長崎市から建築基準法上の不備を指導されていた。
階段に火災の延焼を防ぐための防火扉が設置されてなかった。こうした建物の防火対策の基本的な考え方は、火や煙を出火した区画の中に閉じ込めてしまおうというものだから、防火扉がないと、短時間の内に煙が建物全体に充満して避難が難しくなったり、一酸化炭素中毒になる恐れが高まる。

先月18日、前橋地方裁判所は、平成21年に群馬県渋川市で10人が亡くなった高齢者施設「たまゆら」の元理事長に、禁固2年、執行猶予4年の判決を言い渡した。その際、裁判長は「施設には火災の危険性が常にあり、入居者の生命の安全を確保する立場にあった」と指摘する。

こうした火災が起きるたびに、建物の構造や防火管理の問題が指摘されるのは残念なことです。施設の所有者や管理者に防火意識の向上を強く求めたいと思う。

◆火災を起こさない対策◆
2つめは、なるべく火災が起きないように、高齢者の身の回りを燃えにくい環境にしていくことだ。最近は、燃えにくいように加工された繊維で作られたカーテンや布団、シーツ、パジャマなど様々な防炎製品が作られている。

現在、グループホームなどの社会福祉施設などでは、カーテンと絨毯は防炎製品を使うことが求められているが、そのほかの布団やシーツ、パジャマなどには定めがない。

火災の原因として寝たばこの危険があるし、布団が燃えて高齢者が亡くなった火災もあった。今後、社会福祉施設で使う用具を防炎製品に変える不燃化をすすめ、タバコやライターの火くらいでは火災にならないようにしていくべきだと思う。

◆スプリンクラーの設置を進める◆
3つめは、万一火災が起きたときに、自動的に火災を感知し、水を撒いて、火を消し、煙をおさえるスプリンクラーの設置を進めることだ。

現在は275u以上の施設にスプリンクラーの設置が義務づけられているが、今回のグループホームは、広さが270.3uで、スプリンクラーを設置しなくていい施設だった。

スプリンクラーというと、ホテルや病院などに設置されている大がかりな設備を思いがちだが、小規模な施設では、もっと簡単なタイプが認められている。
ホテルなどで使われるスプリンクラーは、水を貯めるタンクやそれをくみ上げるポンプ、それに非常用電源などを設置することから、規模によっては1000万円を超える工事費がかかる。ところが簡易型は水道の配管を天井に回してスプリンクラーヘッドをつけるもので、工事費は1uあたり1万から2万円です。

この工事費のうち、厚生労働省は1uあたり9000円を補助している。今回のように設置義務のない小規模施設で、この制度を利用したのは600ヶ所余りにとどまり、まだ全国の1300ヶ所余りの施設にはスプリンクラーが設置されていないものとみられる。

総務省消防庁は、今回の火災の発生を受けてグループホームの防火対策を検討することにしているが、これまでのように、スプリンクラーの設置基準を火災が起きた施設の広さに合わせて引き下げるのではなく、規模の大小を問わず、すべての社会福祉施設に義務づけるべきだ。
また厚生労働省は補助金の制度を広く周知するとともに、規模の小さい施設ほど財政状況が厳しい実態を踏まえて、制度の充実をはかり、すべてのグループホームへの設置を急いで欲しいと思う。

◆まとめ◆
またも繰り返されたグループホーム火災は、防火対策を高齢化社会に対応したものに変えていかなければいけないことをはっきりと示している。
これまでの防火対策は、建物の大きさや中にいる人の人数によって基準を決めてきたが、どんな人がどのような状態でいるかによって対策を考えるべきだ。消防と福祉の関係者が密接に連携し、今後、同じような高齢者施設火災の悲劇を繰り返さないようにして欲しいと思う。

■2015.2.7  外出困難な認知症高齢者、虐待受ける傾向 13年度・滋賀県調査
滋賀県は2013年度の高齢者虐待に関する調査結果をまとめた。通報や相談を受けて市町が調査し、虐待と判断した事例は286件、295人で、前年から12件、11人減った。認知症があり、要介護度は低いものの外出が困難な高齢者が家族から虐待を受ける傾向が出ているという。

19市町が13年度新たに通報・相談を受けたのは458件で、介護支援専門員からが4割を占めた。虐待の種類(重複あり)では身体的虐待が179件、心理的虐待が133件、介護の放棄(ネグレクト)が78件、経済的虐待が44件だった。

虐待を受けた人の78%が女性で、75歳以上が8割に上る。虐待者は息子が1113人で最も多く3割で、夫64人、娘63人、息子の配偶者が41人だった。

被虐待者の8割近い226人が要支援や要介護の認定を受けており、このうち要介護3以下の人が180人、認知症を有する人が168人だった。今回初めて聞いた被虐待者の「寝たきり度」では、5段階評価で中程度の「屋内の生活は自立しているが、介護なしに外出しない」が約4割の89人で最も多かった。

県医療福祉推進課は今回の結果から、「認知症の高齢者がいる家族が、介護が必要になってきた段階で対応が分からず、ストレスや悩みを抱えて虐待につながっている傾向がある」とみており、市町と介護、医療機関との連携を強化していく。

■2015.2.8  64歳長男が急死、介護必要な91歳母も息絶える 岩手・奥州市の山間集落
岩手県奥州市の山間部の一軒家で先月、2人暮らしの親子が遺体で見つかった。長男が病気で急死し、高齢の母は介護を受けられなくなり死亡したらしい。「老老介護」手前の家族に周囲のケアが行き届かず、孤立死につながったとみられ、専門家は「高齢でなくても1人で介護する人たちを広くケアしていく必要がある」と指摘する。

◇もう孤立させない
死亡したのは、水沢区黒石町の佐藤ミツさん(91)と、無職の長男武さん(64)。1月9日、市社会福祉協議会のケアマネジャーが発見した。前日、武さんの送迎で週1回利用するデイサービスセンターにミツさんが顔を見せなかったため、自宅を訪れたという。

ミツさんは玄関に続く廊下に倒れ、武さんは居間のこたつで亡くなっていた。ミツさんの死因は低体温症、武さんは急性肝炎で、2人とも死後数日だった。近所の板垣セイ子さん(68)は「武さんが急死した後、ミツさんは足腰が悪いながらも助けを求めようと玄関に向かったのだろう」と語る。

地区には約110人が暮らす。親子の自宅の周囲にはかつて3軒あったが転居などでなくなり、最も近い住宅まで約500メートル離れていた。東京都内に住む次男は「兄は元気そうだったので母の介護を任せていた」と語った。

普段は市社協が委託するボランティアらが、高齢者世帯などに異変がないか不定期に見回っている。
ミツさん宅を市社協のケアマネジャーが12月下旬に訪れた際に異常はなかったという。
また同様に地域の見回りをしている民生委員、佐々木尚子さん(67)は「冬は寒いので回数が減る」と明かす。
近くの畜産業、佐々木譲(じょう)さん(33)は「武さんは冗談で人を笑わせる人。年末に『体調が悪い』と言っていたが深刻に受け止めなかった」と残念がる。

一方、市社協の岩井憲男会長(74)は「武さんが元気に見え、地域住民とも隔絶していなかったので、特に注意が必要な世帯と認識していなかった」と話す。
市長寿社会課の鈴木良光課長(55)は「優先すべき1人暮らしの高齢者も多く、全てを十分に見るのは難しい」と打ち明けた。

孤立死の再発を防ごうと、住民有志は「ろばだ(炉端)の会」を作った。外出が減る農閑期に月1回、地区の集会所に住民を集め、近況や悩みを話し合う場とする予定で、今月中にも初会合を開く。呼びかけ人の佐々木尚子さんらは「高齢化や過疎化、介護などに対応するにはまず住民が立ち上がらないと。集まる回数を徐々に増やしたい」と話す。

早稲田大学社会科学部の久塚純一教授(社会保障法)は「介護者が64歳でぎりぎり高齢者に含まれず、普段は元気そうに見えたことも盲点の一つだったのだろう。非常事態に介護者、被介護者が容易にSOSを出せる通報システムの拡充が必要だ」と指摘する。

■2015.2.8  <「マクロスライド」>初適用 低年金層対策、置き去り  【マクロ経済スライド】4月から初適用 実質目減り
4月以降、公的年金はこれまでのように増えなくなる。物価が上昇に転じ、デフレ下で凍結されてきた年金抑制策「マクロ経済スライド」が初めて機能するためだ。今後も物価の上昇基調が続けば、若者が将来受け取る年金はひと息つく半面、低年金のお年寄りは打撃を受ける。にもかかわらず、セットで進めるはずの年金の底上げ策は先送りされようとしている。

◇月6万円 「1%抑制でも死活問題」

「家計は今までもギリギリ。物価が上がっても年金がほとんど増えないのでは生活できない」。東京都足立区の都営住宅で1人暮らしをする田中実さん(78)は、物価が2.7%増なのにマクロ経済スライドによって年金は0.9%増にとどまることに肩を落とす。

毎月の収入は約6万円の国民年金(基礎年金)と、5万〜6万円のパート代。以前は家賃や光熱費を払っても余裕があったのに、消費増税や値上げのあおりでスーパーに行く回数は減り、商品は「本当に必要か」と吟味してから買い物カゴに入れるようになった。

パートは週3回。真冬の今も、朝から夕方まで室温8度の冷蔵室で野菜を詰める作業だ。生活費だけでなく、趣味の囲碁と手芸教室に通う費用をひねり出すため10年前から頑張ってきた。それが今やパート代の多くは生活費に消える。

田中さんはいずれ働けなくなる時に備え、毎月少しずつ蓄えてきた。だがそれもできなくなった。収入減を思うと、風邪をひいてもパートは休めない。「年寄りは体を壊して早く死ねということか。年金額が低い人にとっては、1%の抑制でも死活問題です」

2014年度の国民年金は満額で月6万4400円。15年度はマクロ経済スライドが響き、6万5008円と608円増にとどまる。スライドの期間は43年度まで約30年続く。この間、年金の伸びは物価や賃金の伸びに追いつけず、実質価値が下がり続け、現役との収入格差も広がる。とりわけ国民年金は今より3割も目減りする。

マクロ経済スライドの影響は、障害年金で暮らす人にも及ぶ。さいたま市の実家に1人で住む統合失調症の女性(48)は、精神障害者として月6万4400円の障害基礎年金を受けている。千葉にいる両親が蓄えを崩して光熱費や食費の一部を助けてくれ、どうにか生活できているという。

8年前まで入退院を繰り返し、症状が落ち着いた今も仕事には就けない。医療費のほか、就寝中の失禁に備えるおむつ代に月1万〜2万円かかることもある。毎月4000円を封筒に入れて積み立て、洋服や下着代に充ててきた。だが、それも生活費に回さねばならなくなるかもしれない。高齢の両親が亡くなれば、今の暮らしを維持できなくなる、との不安に襲われる。

 「満足に服も買えず我慢を強いられるなら、ストレスで病状が悪化しないか」。女性はそう感じている。

◇制度見直し、小手先のみ 世代間の差縮小/国民年金は3割減も

横浜市の大学生、吉田孝太郎さん(20)は国民年金保険料(月1万5250円)を猶予される手続きをしている。とはいえ、親の勧めに従っただけ。もう更新はせず、保険料も払わないつもりだ。「将来、年金があるとは思えないし」

04年の年金改革は若者の年金不信払拭(ふっしょく)を狙った。厚生年金保険料を17年度以降年収の18・3%で固定、マクロ経済スライドで高齢者の年金を抑え、若い世代に回すことが柱だ。

65歳になってもらい始める時の、厚生年金の所得代替率=現役男性の平均的手取り月額(約34万8000円)に対する年金額の割合=で見てみよう。

04年当時、モデル世帯(夫と専業主婦の妻)の所得代替率は59.3%(妻の基礎年金含む)。これを07年度からじわじわ削り、23年度に受給し始める世代の水準を50.2%に減らした時点で、下げるのをやめる予定だった。スライドをかけなければ若い世代の年金は底なしで下がりかねなかった。

それが物価や賃金の下落時にはスライドをかけないとの規定が、計画を狂わせた。制度発足時からデフレが続いたことで14年度までスライドは一度も機能せず、年金の下げ幅は現役の賃金の下げ幅より小さかった。14年度に受給し始めた1949年度生まれのモデル世帯(夫婦とも65歳)は、54%に下がっていたはずが逆に62.7%へ上がった。

厚生労働省が昨年、計画を練り直した結果、スライドの適用期間は2043年度まで延びた。所得代替率は一生もらい始めの水準を維持できるわけではない。1949年度生まれはもらい始めこそ62.7%あるが、2024年度(75歳)に51.6%、39年度(90歳)は41.8%まで下がる。

一方、1984年度生まれ、30歳の夫婦世帯は、2049年度の受給開始時(65歳)に50.6%まで下がっているものの、その時点で既にスライドは終了している。もらい始めた後の下がり方は緩やかで、69年度(85歳)でも40.4%。最終的に1949年度生まれとの差は縮まる。

マクロ経済スライドは、自営や非正規で働く人ら国民年金のみの人により響く。会社員の厚生年金は国民年金と報酬比例年金の2階建て。目減りも2割だ。その点、国民年金は3割減。国民年金しかない単身者の所得代替率は現在18.4%。これが30年後には13%まで下がる。今の価値に直すと4万円台に過ぎない。

国民年金だけでは生活できなくなる−−。そんな有識者らの声に応じ、厚労省は昨年、2案を示した。非正規雇用の人に厚生年金加入への道を開き「国民年金のみ」の人を数百万人減らす案と、国民年金の加入期間を今の40年から45年に延ばし、給付を増す案だ。

だが、財源難から与党は先送りに傾いている。また今年10月から低年金の人に最大で月5000円を支給する制度も、消費増税の延期で1年半延びた。

慶応大経済学部の駒村康平教授は「マクロ経済スライドは必要」と指摘しながらも、「国民年金は年金としての機能を失いつつある。政府が近視眼的に対策を見送るなら、より重いツケが回ってくる」と語る。

■2015.2.8  車いすの「斜め座り」 寝たきり防ぐ技術、スカンジナビア半島の最先端  背もたれへの圧力と座面への圧力の分散に意味
車いすの「斜め座り」

身動きに不自由する人にとって必要な「座り」の技術。知っておいて損はない。寝たきりに陥らせない技術だ。


要支援、要介護の人は約550万人
厚生労働省によると、今や要支援1、2、要介護1〜5という介護保険法の下で要支援や要介護の認定を受けている人は約550万人に達している。こののうち、座ることも難しい要介護3〜5の人だけでも200万人もいる。

座ることがままならないと、寝たきりになりかねない。

こういう人にとっては一般的な車いすは難儀だ。背もたれを倒せばいいとも思われる。ここが落とし穴で、座るのがままならない人はお尻がずれてしまう。結果として、そもそも長く座っていられず、座面への圧力や摩擦で床ずれになりやすい。
斜め座りは、背もたれだけではなく、座面にも傾斜をつけるというものだ。


座面が傾く価値
リクライニングのいすならば、介護と関係のない人でも座ったことはあるかもしれない。同じリクライニングのいすでも、背もたれが倒れるだけではなく、座面も傾斜がつくものがある。膝が少し上がりお尻がはまり込むような形になる。

背もたれが後ろに倒れると同時に、座面も膝が上がるように傾斜が付く。一見何でもないことのように見えるが、実は大きな変化になる。

背もたれが倒れるだけの車いすでは座面をお尻が滑っていた。これがなくなる。結果として、お尻が安定。圧力も背もたれと座面に分散されて、床ずれも起こりにくくなる。
何より継続的に座っていられる。座れないはずの人が座れるわけだ。


値段は高いが
背もたれと座面が調整できる車いすは価格としては20万円を超える。一般的な車いすが数万円で収まるのと比べると高額であるのは否めない。介護保険ではレンタルする場合は一般的な車いすは介護保険を使うと月300円から500円で借りられるのと比べると、1000円から2000円がかかる。

介護度の高い人を寝かしきりにさせないために必要な投資ととらえられるかだ。その判断基準が背もたれと座面の傾斜の意味合いを知っておくことだろう。

車いすの斜め座りによって、座れない人が座っていられるというのが価値。


「ティルト」とは?

座りの技術に関わって、車いすの適切な利用を普及するNPO日本シーティング・コンサルタント協会理事長の木之瀬隆氏は、「国内では座位の取れない利用者には背もたれだけ倒れるタイプを使うのが一般的。すべり座りを助長して床ずれを促す。1日1回程度しかつかわず、寝かせきりも助長する」と言う。

「スカンジナビア半島では、ティルト・リクライニング車いすと言われる座面のティルト(傾斜)、背もたれのリクライニング、足を支えるエレベーションが基本で寝かせきりがない。日本でもティルト・リクライニング車いすとシーティング(座り)による選定と適合の技術の普及が急務」と説明する。

高齢者だけではなく、身体障害者にとっての車いすも同じような考え方が適用できる。車いすを選ぶ機会があれば、頭に置いておくと役立つはずだ。

 

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