残しておきたい福祉ニュース 1996〜社会福祉のニュース

Past news

残しておきたい福祉ニュース

 2015年 
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 * * *

 2015. 8. 1 高齢者らの送迎支援 3年で和歌山県の全市町村整備へ
 2015. 8. 5 廃寺改修し温泉福祉施設に…にぎわいづくり一役 石川
 2015. 8. 9 ぶさこブランド:誕生 障害者が描いた猫ロゴに Tシャツ、バッグ販売 出雲のNPO /島根
 2015. 8. 9 要介護認定600万人超す 1年で22万人増
 2015. 8.10 『障害者殺しの思想』 横田弘著
 2015. 8.12 帰国したフィリピン人看護師・介護福祉士候補者向けの就職説明会を実施
 2015. 8.12 健祥会グループ:ベトナム人6人に辞令 介護福祉士目指す /徳島
 2015. 8.13 ニチイ学館、4〜6月7年ぶり最終赤字 介護人材不足響く
 2015. 8.13 高齢者虐待:13年度、最悪1018件 介護疲れなど背景に 「サイン見つけ早めに相談を」 /北海道
 2015. 8.13 成年後見制度 不正防止へ改善を急げ
 2015. 8.14 介護業者の破綻が最多ペース 上期5割増、人件費など経営圧迫  ●高齢者増でも閑古鳥、老人ホーム破綻の不思議
 2015. 8.14 「グッド・トイ」賞:アイデア積み木に 川口の障害者施設 /埼玉
 2015. 8.23 スポーツ大会で奉仕、高校生と庭の手入れ… 高齢者の生きがい後押し 当別町が事業
 2015. 8.23 介護現場に外国人を 滋賀県、22日から養成事業
 2015. 8.23 介護人材の確保 待遇改善が欠かせない
 2015. 8.23 語られてこなかった障害者の戦争体験 日本や独ナチスでも抑圧の歴史
 2015. 8.23 重度障害児が学ぶ場は:鳥取養護・看護師辞職問題を追う/1 「数分の遅れ、命に関わる」 保護者と看護師「認識ずれ」 /鳥取
 2015. 8.23 重度障害児が学ぶ場は:鳥取養護・看護師辞職問題を追う/2 チームで支える体制を 看護師と教員、欠けた連携 /鳥取
 2015. 8.27 更生保護施設、高齢者・障害者向け福祉スタッフ倍増へ 出所者2千人受け入れ目指す
 2015. 8.27 更生保護施設態勢強化に歓迎の声「社会復帰の最後のとりで」
 2015. 8.27 職場での障害者虐待、483人被害 未払いなど「経済的虐待」が最多 26年度
 2015. 8.28 他人事ではない?「障害者は時給200円」という経済的虐待が発覚!
 2015. 8.28 青森の介護職員 月給、全国平均より3万6千円低く/5割が「不満」
 2015. 8.29 看護・介護、復職しやすく 離職者の人材バンク整備  厚労省、「2025年問題」に備え


■2015.8.1  高齢者らの送迎支援 3年で和歌山県の全市町村整備へ
和歌山県は、お年寄りや障害者の通院や買い物、墓参りなどの移動を支援する「福祉有償運送」を3年間で県内全市町村に広げる目標を立てている。事業開始や拡大する事業者に対し、本年度から車両購入費の補助を始める。福祉有償運送の事業者への補助は全国でも少ないという。


福祉有償運送は移動困難な要介護・支援者、障害者らを個別輸送する事業。乗車定員11人未満の一般車両が使用でき、定められた区域内を運行、戸口から戸口まで送迎する。
過疎化が進み、一人暮らしが多い山間部などでは、送迎を依頼する身内が近くにいなかったり、公共交通機関が発達していなかったりし、外出が難しい問題がある。

通院など、介護保険法や障害者総合支援法によるサービスでも受けられる移送支援があるが、目的や対象者が限定されたり、付き添いの乗車はできなかったりする。

福祉有償運送の場合は付き添いの乗車も可能で、利用目的は通院や買い物、墓参りなど、事業者が定められる。運賃は実費の範囲内と定められていて、目安としてタクシー運賃の半額以下とされている。利用希望者は会員登録した上で、予約する。

事業はNPOや社会福祉法人などが主体になる。事業開始には、市町村やタクシー事業者らでつくる「運営協議会」の合意や、和歌山運輸支局への登録が必要。運転者は国土交通省の講習を受講する。
県内ではすでに田辺市本宮町やすさみ町、北山村など7市町村で運行されている。県は新たに1年で13カ所、3年間で39カ所の整備を目指す。県内39カ所にある地域包括支援センターの管内1カ所ずつを目安に考えていて、全市町村をカバーしたい考え。

補助対象は事業開始や拡大のために必要な車両購入費用で、補助率は2分の1。車両代の上限は280万円で、改造費用も同様で、上限が60万円。

問い合わせは県長寿社会課高齢者生活支援室

■2015.8.5  廃寺改修し温泉福祉施設に…にぎわいづくり一役 石川
石川県小松市の荒れ果てた寺が、天然温泉の銭湯を備えた福祉施設に生まれ変わり、地域のにぎわいづくりに一役買っている。サービスを受ける高齢者や障害者に加え、一般の利用客も含めると、多い時で250人近くの人が訪れるという。

施設は三草二木西圓寺。2008年にオープンし高齢者のデイサービスや、障害者の生活介護と就労支援をしている。元は1473年創建の浄土真宗の寺。05年に住職が亡くなり廃寺となった。

お寺の外観をそのまま残した建物に入ると、元は本堂だった60畳間で高齢者がテーブルを囲み、笑い声を響かせていた。併設したカフェでは就労支援を受ける障害者が食事を運ぶ。一角にある駄菓子販売のコーナーは学校帰りの子どもの遊び場に。カフェは夜、近所のシニア世代が調理の腕を振るう居酒屋に変わる。

開設したのは同県白山市の社会福祉法人佛子園。「廃れた寺を何とかして」と町内会から相談を受け、高齢者がデイサービスを受けたり障害者が働いたりできる場にリノベーション(改修)することにしたという。

特に好評なのは地下約750メートルから涌き出る掛け流し温泉だ。土間や仏間を浴場に改装し、地域の69世帯には無料で、一般客には400円で開放している。

施設長の安倍真紀さん(39)は「ここはいろんな人が日常的に交流する場所」と話す。福祉施設に抵抗がある高齢者も顔なじみが多いため、お寺に行く感覚で気軽に立ち寄れるという。デイサービスを利用する女性(86)も「週4回は使っているが、毎回来るのが楽しみ」と笑顔を見せた。

■2015.8.9  ぶさこブランド:誕生 障害者が描いた猫ロゴに Tシャツ、バッグ販売 出雲のNPO /島根
障害者の感性を生かした芸術活動を通して自立を支援するNPO法人「サポートセンターどりーむ」(出雲市東福町)は、野良猫「ぶさこ」のイラストをロゴマークにした新しいブランドを誕生させた。ロゴマークは、障害のあるアーティストの絵がもとになっている。現在、Tシャツとトートバッグを販売している。


モデルになった「ぶさこ」は、NPOの理事長、土江和世さん(68)が引き取った野良猫。約20年前に亡くなった夫のお墓の前で、3年前に出会った。不思議な縁を感じて、自宅に、ぶさこの家を作った。

ブログに、ぶさこの写真や日常を掲載するうち、愛嬌(あいきょう)のある仕草が人気になり、ファンが増えた。年賀状も届くようになり、ぶさこ用の郵便受けを設けた。性別が分からない段階で名前を付けたが、雄と判明。年齢は4歳ぐらいとみられる。

NPOでは、障害のある人の芸術作品の販売を軸にした収益で自立支援をしている。障害のあるアーティストは現在21人。このうち、精神疾患のある20歳代の女性が描いた絵を中心に、ロゴマークをデザイン化した。Tシャツやバッグには、他のアーティストが描いた、ぶさこのイラストもあしらわれている。

土江さんの長男(39)も知的障害がある。土江さんは「障害のある人も居場所や、能力を発揮できる場が必要。野良猫のぶさこも居場所を求めていた。ぶさこブランドはNPOの理念にぴったり合う。アーティストの感性を感じてほしい。猫の手も借りて地方創生につなげたい」と言う。

NPOのプロデューサー、常賀信寛さん(70)は「ブランド化で定期的な収入を得て、障害者が生きていく糧にしたい。障害者アートの魅力、才能を世の中の人たちに知ってもらいたい」と話している。

Tシャツ(1500円)、トートバッグ(1000円)、ぶさこを描いた絵は、出雲ガスショールーム(出雲市駅南町3)で開催中の「吾輩(わがはい)はネコ展」で展示、販売している。ネコ展は11日まで(土、日曜は休み)。午前10時から午後4時半(正午から午後1時の間は休み)。

問い合わせは同NPO(0853・62・4872)

NPO法人サポートセンターどりーむ
http://sc-dream.net/index.html

■2015.8.9  要介護認定600万人超す 1年で22万人増
暮らしに介護が必要な高齢者が増え続けている。厚生労働省によると、2015年3月時点で要支援・要介護の認定を受けた人は606万人と前年同月に比べ22万人増えた。600万人超えは、年度末ベースでは初めて。国民のほぼ20人に1人にあたる。介護施設や職員の不足が一段と深刻になる。家族の介護離職が増えれば経済全体を下押しする可能性もある。

高齢化に伴い、認定者の数はこの10年で5割増えた。介護が必要な606万人のうち、女性が419万人、男性が187万人。女性の方が長生きで65歳以上の人に占める比率が57%と多いのに加え、介護を受けることへの抵抗感が男性に比べて小さいとの見方がある。14年度に実際に介護サービスを受けた588万人で見ても女性の方が多く、特に75歳以上の年齢層で女性の利用者が男性を大きく上回る。

14年度に利用者の伸びが目立つのは在宅サービス。自宅で受ける訪問介護や施設に出向くデイサービスを中心に322万人と3.7%増えた。一方、特別養護老人ホームなど、介護施設の利用者は121万人と1.6%の伸びにとどまる。特養ホームの入居待ちが全国で約50万人いるなど施設が不足しているためだ。

介護の認定者はさらに増える。民間調査団体のエイジング総合研究センターの見通しでは25年に800万人を超える。25年には「団塊の世代」が75歳以上になるため「増加のペースは一段と上がる」(同センター)。

これに伴い施設や介護職員の不足もさらに深刻になる。日本創成会議(座長・増田寛也元総務相)によると25年には東京都と周辺3県で合計13万人分の介護施設が不足する。厚労省の推計でも25年には全国で介護職員が38万人分足りなくなる。

公的な介護サービスを十分に受けられなければ、家族がしわ寄せを受ける。厚労省の雇用動向調査によると、家族の介護のために仕事を離れた人は13年に9.3万人と、前年から41%増えた。5年前の2倍だ。うち4分の3が女性で40代後半〜50代が多い。みずほ総合研究所の大嶋寧子主任研究員は「介護離職者は今後も増え、経済成長の足かせになる」という。

介護離職を少しでも食い止めようと厚労省は会社員が家族を介護するために取る介護休業制度を複数回に分けて取れるように制度を見直す方針だ。これまでは原則まとめて取らなければならなかった。三井住友海上火災保険は昨年10月、団体保険に介護の特約を付けた。契約者の親が要介護の認定を受けた時に、最大300万円を支払う。

介護保険の制度を維持するために、仕組みの見直しも急務だ。介護保険は入浴やトイレ、食事といったサービスを1割の自己負担で受けられる。残りの9割は40歳以上の国民が払う保険料と税金でまかなっている。これらの合計にあたる介護給付費は14年度で10兆円。25年度には21兆円に膨らむ見通しだ。資産や収入がある高齢者の自己負担を引き上げるといった改革が必要になる。

■2015.8.10  『障害者殺しの思想』 横田弘著
いわば“伝説の書”の復刊といっていいだろう。本書は、1979年に刊行(JCA出版)されたものの、その後、絶版となり図書館でもなかなか手にすることができなかった。

著者は脳性まひの重度障害者(一昨年死去)で、ドキリとするタイトルは、当時続発していた家族による「障害者殺し」を踏まえたものだ。

例えば1970年、横浜市で2人の障害児を育てていた母親が、下の娘をエプロンのひもで絞め殺すという事件が起こった。しかし事件後、母親に多くの同情が集まることとなる。母親を殺害に追い込んだのは、何より日本の福祉政策の貧困であり、母親もまた被害者であると、町内会や障害児をもつ親の会を中心に、加害者である母親の「減刑」を嘆願する運動が開始されたのである。

こうした動きに異を唱えたのが、著者らを中心とする障害者団体「青い芝の会」だった。殺した母親がかわいそうというなら、殺された子はどうなるのか。減刑は、障害者の「生存権」の否定である、として徹底した抗議行動を展開したのである。

彼らは「役に立たない人間は存在する価値がない」という社会の風潮や人間観そのものを撃ち、同時にわが子を愛しながらも障害児であることを恥じ、やがて自分自身の手で殺そうとする「親の愛」さえも撃った。

「『親』によって私たち『障害者』はどれ程の抑圧、差別を受けているか。(略)『愛』の本質に潜むエゴを見据えなければならない。そして、所詮しょせん自己執着から逃れ得ない人間の哀かなしみを確認し、その時点からの叫びをあげなければならないのだ」

鋭利な社会批判はもちろん、親子の愛憎を障害者問題の根本に据えた視点は、今日の出生前診断や家族介護を取り巻く問題を考える上でも重要で、深い。「増補新装版」である本書には、社会学者・立岩真也氏による解説も付され、社会福祉や生命倫理を学ぶための必読文献であるばかりか、わが身を切り刻むような問題提起が今なお異様な存在感を放つ。

◇よこた・ひろし=1933〜2013年。難産による脳性まひで不就学。1981〜83年、「全国青い芝の会」会長。
1933年、横浜市鶴見区生まれ。難産による脳性マヒのため不就学。60年、脳性マヒ者の組織「青い芝の会」に参加。64~67年、障害者解放コロニー「マハ・ラバ村」に参加。この間に結婚、長男誕生。70年に起きた、障害児殺しの母親に対する減刑嘆願運動反対の取組みを皮切りに、「青い芝」神奈川県連合会の一員として、映画『さようならCP』制作・上映、バス乗車拒否に対する闘争、優生保護法改定反対運動、養護学校義務化阻止闘争など、障害者の生存権確立運動を展開
 

http://social-welfare.rgr.jp/storage/s82kaj20538-djshs78_.jpg
現代書館 2200円

■2015.8.12  帰国したフィリピン人看護師・介護福祉士候補者向けの就職説明会を実施
日本は2009年から日・フィリピン経済連携協定(JPEPA)に基づき、フィリピン人看護師・介護福祉士候補者達の受入れを実施しているが、日本滞在期間中に国家試験に合格出来なかったため、約400人がフィリピンに帰国している。在フィリピン日本国大使館は、この帰国したフィリピン人の看護師候補者および介護福祉士候補者達を対象とした就職説明会をフィリピンの現地で8月28日(金)に開催する予定であることを発表した。

この制度で来日したフィリピン人の看護師・介護福祉士候補者達は、日本語での基本的な日常会話が可能であり、更に日本滞在中に医療機関などにおいて医療技術の習得を行っており、日本への理解が深い人材である。在フィリピン日本国大使館では、これらの帰国者達が日本滞在中に習得した能力や経験を生かし、日本とフィリピンと関係を強化する人材として活躍することを願っているため、現地の日系企業や医療機関等とともに、年に1回就職説明会を実施している。

今年の就職説明会は、8月28日にマニラ首都圏のタギッグ市のアスコット・ボニファシオグローバルシティ・ホテルで実施される予定である。昨年の就職説明会では、フィリピンに帰国した者から約50名が参加した。企業側は、日系企業を中心として様々な業種から26社が参加しており、実際に企業内看護師・通訳・事務職員などの職種で採用となったケースもあった。

■2015.8.12  健祥会グループ:ベトナム人6人に辞令 介護福祉士目指す /徳島
県内や関西に福祉施設を展開する健祥会グループ(徳島市)は11日、ベトナムとの経済連携協定(EPA)に基づいて受け入れたベトナム人6人への辞令交付式を徳島市内で開いた。ベトナム人の受け入れは2年連続。介護の専門知識や技術を有する介護福祉士の資格取得を目指す。

同グループはEPAに基づいて2008年から外国人の介護福祉士候補者を受け入れており、今月時点でインドネシア、フィリピン、ベトナムの計122人がグループの施設で働き、うち33人が介護福祉士資格を取得している。グループの担当者は「日本人職員が不足する中、彼らは重要な人材」と話す。

高松市の老人保健施設で6日から就労しているグエン・ティ・ヒエンさん(24)は交付式で「いずれ高齢化に直面する母国に日本の先進介護を伝える懸け橋となるため、努力することを誓う」と決意を述べた。

■2015.8.13  ニチイ学館、4〜6月7年ぶり最終赤字 介護人材不足響く
ニチイ学館が12日発表した2015年4〜6月期の連結決算は、最終損益が11億円の赤字(前年同期は1億4700万円の黒字)だった。4〜6月期としては08年以来、7年ぶりの最終赤字となった。ホームヘルパーなど介護職員の人材不足に伴い、サービス利用者が減少した。有料老人ホームの新規開設に伴う先行費用も重荷となった。

売上高は横ばいの678億円だった。4月からの介護報酬改定に伴うサービス単価の下落が響いて介護事業が減収となった。医療事務受託などの医療関連事業は大型案件の受注で増収だった。

16年3月期通期の業績見通しは従来予想を据え置いた。深刻化する介護現場の人手不足については「介護職員養成講座の引き合いも増えており、今後、人材確保に注力していく」(広報・IR担当)という。売上高が前期比8%増の2943億円、純利益が約6倍の26億円を見込む。

■2015.8.13  高齢者虐待:13年度、最悪1018件 介護疲れなど背景に 「サイン見つけ早めに相談を」 /北海道
道内で殴ったり怒鳴ったりするなど、高齢者に対する身体的・心理的な虐待の相談や通報件数は2013年度で1018件に上ったことが道の調査で分かった。前年度を84件上回り、06年度の調査開始以来、最悪となった。被害者数も13年度は前年度より24人増えて510人となり、最も多かった。背景には家族による介護疲れなどがあるとみられ、福祉関係者は「虐待のサインを見つけたら早めに相談を」と呼び掛けている。


道高齢者保健福祉課によると、虐待の内容は顔を殴るなどの身体的虐待が4割強と1番多かった。続いて、大声で怒鳴る、侮辱するなどの心理的虐待は約3割を占めた。さらに年金を使い込むなどの経済的虐待も約1割となった。

また、被害者の内訳は女性377人、男性133人。年齢別では80代が212人と最多で、次いで70代183人▽65〜69歳62人▽90歳以上53人の順だった。

一方、虐待していたのは高齢者の子どもが288人と半数を占め、配偶者が145人、子どもの配偶者や孫が104人で、家庭内の密室で虐待する傾向が強かった。特別養護老人ホームなどの施設職員は16人だった。

厚生労働省がまとめた全国調査によると、虐待の要因は介護疲れやストレス、経済的困窮などが多数を占めたが、中には被害者が認知症になったことや、以前の人間関係が原因のケースもあった。

虐待が判明した場合、自治体は被害者を虐待者から分離し、介護保険サービスをあっせんしたり、医療機関に一時入院させるなどの対応をとっている。道も自治体向けの対応マニュアルを作成するなどして歯止めをかけようとしているが、苦慮しているのが実情だ。

道は、介護する親族らが社会から孤立しないように、地域全体で高齢者や家族を支える「地域包括ケアシステム」などの整備を進めている。

道は「虐待のサインを見つけたり、介護で疲れた家族は相談窓口に連絡を」と呼びかけている。相談・通報は道高齢者総合相談・虐待防止センター(011・251・2525)や、各自治体の地域包括支援センターへ。



■高齢者虐待の主なサイン

▽説明のつかない傷や回復状態が異なる傷やあざ、骨折がある

▽たやすくおびえ、恐ろしがる

▽部屋や住居が異臭がする

▽寝具や衣服が汚れたまま

▽摂食障がいや不自然な体重の増減がある

▽自傷行為や睡眠障害

▽財政的に困っているはずがないのに「お金がない」と訴える

▽家族が高齢者の健康に関心が低く、乱暴な口をきく。あるいはお金をかけない

▽家から怒鳴り声や悲鳴などが聞こえる

▽昼間でも雨戸(カーテン)が閉まっている

▽家族と同居しているのに1人分の弁当を頻繁に買う

 (道高齢者保健福祉課調べ)

■2015.8.13  成年後見制度 不正防止へ改善を急げ
判断能力が不十分な認知症のお年寄りや障害者の財産・権利を守るための成年後見制度で財産流用などが相次いでいる。弁護士による不正も多く、家庭裁判所が監督の機能を果たせていない実態がある。

認知症の人は600万人を超え、今後も成年後見の必要な人は増えていく。自民・公明などは監督官庁の担当者を拡充し、不正防止や制度の活用を図るため成年後見制度利用促進法案を議員立法で今国会に提出する。内閣府に同制度利用促進会議を設置し改善策を議論するが、課題は多く、実効性のある改革に踏み込めるかが問われている。

成年後見の利用者は年々増え、現在20万人近い高齢者や障害者が後見人を付けている。だが、後見人による着服などは昨年だけで831件、被害は約57億円と過去最高となった。親族の後見人による不正が多いことから、最近は弁護士や司法書士などの後見人が増えている。

ところが、弁護士ら専門職による不正も2010年6月から14年末までに計62件、被害は約11億2000万円に上る。東京弁護士会の元副会長が4200万円を着服し有罪判決を受けた事件もあり、東京家裁は弁護士の後見人が一定額以上の財産を預かる場合は後見監督人として別の弁護士を付ける運用をしている。

後見人を選任し監督する家裁が人員不足などのため十分な業務ができていないことが背景にある。選任の際に必要な後見人候補の面接すら省略する家裁があるといわれる。

また、後見人への報酬は被後見人である高齢者や障害者が支払うことになっており、報酬額は家裁が判断するが、年金しか収入のない人にも最低で2万円程度の報酬を毎月弁護士に払わせる家裁が多い。

後見人の仕事は財産管理と、福祉サービスの契約や悪質商法被害にあわないようにするための身上監護があるが、弁護士の後見人の中にはほとんど被後見人に会いに来ない人も珍しくない。一度選任されると不正でもない限り解任されることはない。いったい誰のための後見制度なのかと疑いたくなる。

日本も批准した国連障害者権利条約では後見人の代行決定権や取り消し権が、障害者の権利を制限し過ぎるとして各国で問題化している。日本も見直しを迫られることは必至だ。

内閣府の利用促進会議での議論を経て、いずれは民法や成年後見法の改正が必要になる。現在は認められていない手術などの医療行為の同意権を後見人に付与することも検討するというが、後見人による不正防止と利用者の負担軽減こそ図らねばならない。身寄りのない高齢者は増えており改革を急ぐべきだ。

■2015.8.14  介護業者の破綻が最多ペース 上期5割増、人件費など経営圧迫  ●高齢者増でも閑古鳥、老人ホーム破綻の不思議
介護業者の破綻が最多ペース 上期5割増、人件費など経営圧迫

介護事業者の経営破綻が急増している。東京商工リサーチによると、今年1〜6月の倒産件数は前年同期比約5割増で、年間では過去最多を更新する勢いだ。高齢化で介護需要は高まっているが、人手不足に伴う人件費上昇と建築費高騰が経営を圧迫している。4月から介護報酬が2.27%引き下げられた影響でさらに増える可能性もある。

1〜6月の介護事業者の倒産(負債額1000万円以上)は41件で、前年同期を46%上回った。景気の回復を背景に全産業の倒産は10%減っており、介護分野の増加傾向が鮮明になっている。負債総額1億円未満が全体の8割以上を占めており、資金力に乏しい中小事業者が目立つ。介護保険法が施行された2000年以降、年間倒産が54件と最も多かった13、14年を上回る勢いだ。

異業種から介護事業に参入したが、ノウハウ不足に人件費高騰などが重なり破綻した例も多い。建設会社のコバヤシ・ファシリティーズ(横浜市)は10年ほど前に介護施設の建設、運営を始めたが、4月に横浜地裁から破産手続きの開始決定を受けた。地権者から建設を受注し、完成後に借り上げて施設を運営していたが、受注から着工までに時間がかかり、その間に人件費や資材が高騰して経営が圧迫された。

デイサービスのレジアス(札幌市)は14年7月の設立だが、利用者の低迷に人件費増が重なり、2月に札幌地裁から破産開始決定を受けた。

介護事業者の経営破綻後、施設を引き継ぐ業者が現れず、入居者に影響が及ぶこともある。6月に経営破綻したヴィータ(前橋市)の場合、運営する介護サービス付きマンションの入居者が退去を求められたという。



●高齢者増でも閑古鳥、老人ホーム破綻の不思議

4人に1人が65歳以上という社会情勢を受け、老人ホームや高齢者住宅のニーズが急拡大している。全国有料老人ホーム協会の調査によると、有料老人ホームの数は2013年7月時点で過去最高の8424件。3年で約1.6倍という急増ぶりだ。その一方で、帝国データバンクの調べでは、老人介護事業者の倒産件数は過去最悪となった2013年の46件に引き続き、2014年も45件と高水準で推移している。絶対数の不足が指摘されている老人ホーム・介護施設なのに、事業者の破綻が増えるという、一見矛盾した現象の背景には何があるのか。

■債権者説明会、怒号が飛び交う

2014年10月1日、長野県諏訪市を中心に有料老人ホームや高齢者集合住宅を運営する「聖母の会福祉事業団」(登記上の本社は東京都八王子市)が長野地裁に民事再生法の適用を申請した。その6日後、諏訪市文化センターで開かれた債権者説明会は騒然となった。

負債総額は17億円。それには地元信用金庫、地銀、政府系金融機関などからの借入金に加えて、当時施設に入居していた128人が支払った保証金も含まれていた。会社側はこの入居者の保証金の債務、総額5億1100万円が再生債権になると説明。再生債権とは再生計画がまとまるまで弁済が一時棚上げされる債権で、再生計画の内容によっては大幅なカットがあり得る。入居者やその家族が「預けているだけ」と思っていた保証金の一部が返ってこない事態に、会場では「詐欺だ」「だまされた」などの怒号が飛び交った。スポンサー候補として出席していた企業に詰め寄る者も出た。

聖母の会福祉事業団は、れっきとした株式会社、民間の営利企業である。資本金2000万円。代表取締役の鈴木丈史が筆頭株主となっている。諏訪市で1993年に介護付き有料老人ホーム「セント・ベル諏訪湖」を開業したのを皮切りに、2002年から09年にかけて4つの高齢者集合住宅を開設した。

ただ、開業当初から、バブル崩壊の余波をうけて入居者が少ない逆風のスタートだったようだ。こういった施設は、土地建物を自社で取得する「自社物件」ケースと、施設は別に所有者がおり介護事業者が借り受ける「賃借物件」タイプがあるが、セント・ベルは自社物件。金融機関からの借り入れで物件の取得資金をまかなったが、入居者数がもくろみを下回り、支払利息など金融負担が重くのしかかったという。実際、14年10月時点の借入金は10億7100万円で、年間売上高を大きく上回る水準にあった。

「自社物件は負担が重い」との反省もあったのか、2000年代に展開した高齢者集合住宅4施設は賃借物件だった。しかし、これらも軌道に乗ったとは言い難い。諏訪市内や周辺地域に同じような施設がどんどん設立され、競争が激化。入居者が一向に増えない事態が続いたためだ。

■保証金、負のスパイラル

社内データによれば、高齢者集合住宅の稼働率は最も高いもので88.8%。低いものだと40%となっている。施設の低稼働は業績低迷に直結。最近の経営状況をみると、2012年から3年間の年間売上高は4億5000万円、3億9000万円、5億7200万円で、一見持ち直したように見えるが、収益面でみると一度も経常黒字になることはなく、2億5000万円以上の赤字を累積している。

同業者間との競争で赤字経営が続く聖母の会を、更に窮地に追いやったのが入居者の死亡に伴う保証金の返還負担だった。このような高齢者向け施設の場合、入居者は最初に一定金額の保証金を入金することを求められる。保証金の制度には2つのパターンがあり、1つは入居期間とともに償却を進め、ある一定の期間を過ぎると返還金はゼロとなるタイプ。もうひとつは、入居者死亡などで契約期間が終了した後、全額返還されるタイプだ。

全額返済タイプの場合、入居者の死亡が増えると、当然、保証金の返還という事業者側からみればキャッシュアウトが増える。本来、新たな入居者が入ってくることでキャッシュインし帳尻が合うのだが、入居率を見る限り苦しい状況であったことがわかる。おのずと新規入居者へは保証金のディスカウントを余儀なくされ、採算悪化は負のスパイラルを描くことになった。

最終局面での資金繰りは、まさに綱渡りだったようだ。ローンの返済も滞るようになり、聖母の会は一部債権者による差し押さえを受けることとなる。診療、介護報酬など受け取るはずの約4700万円が差し押さえられ、口座に入金されなかった……。これがダメ押しとなり自主再建を断念、民事再生法の適用申請に至ることとなった。

■保証金以上のカネを預けていた入居者

前述の債権者説明会が混乱したのには、もうひとつの事情がある。定められた保証金を上回る金額を自主的に預け財産の管理を事実上聖母の会に任せていた入居者や、既に死亡などで入居者は退去したが保証金の返還を受けていなかった家族がいたのだ。入居者債権者一覧によると、保証金の債権は1件当たり100万円から200万円のものが多いが、なかには1000万円を超える金額もある。銀行預金の感覚で預けていた金が返ってこない。入居者や家族が激怒したのは、こうした背景があった。

高齢者向け施設の需要の急拡大が見込まれている中で、事業者の経営破綻が増える理由。聖母の会の事例が示すとおり、金融面でのサポートが難しいことが挙げられる。事業者が銀行などの金融機関に設備投資の融資を頼むケースは多いが、通常の住宅や病院と比較してまだ制度が確立されていないことから、積極的な融資が受けられているとは言いがたい。

銀行側から見ると、融資に消極的にならざるを得ない理由がある。介護事業は、介護報酬の引き下げや予防介護への転換など国の政策に大きく影響されるため、経営推移の予見が難しい。また入居者の募集の面でもマンションとは違い数カ月で「完売御礼」とならないため、資金繰り悪化による事業者の破綻リスクが比較的大きくなりがち。従来の不動産融資とは異なった判断を要する場面が多いのだ。

さらに入居保証金は、将来の負担増加を避けたい入居者や家族にとっては安心感のある制度だが、事業の安定性から見れば、一定期間ごとに利用料を払う「家賃」制度のほうが理にかなっていると指摘する専門家もいる。急速に拡張する高齢者施設のニーズに対して、事業者側の経営体力、金融機関の知見、行政側の制度などがうまくかみ合っていないのではないかという疑念がぬぐえない。

■重要事項説明書のチェックを

では、現時点で有料の高齢者施設を選ぶ場合、どのような点に注意すべきか。

まず各都道府県の保健福祉局などが公表している「重要事項説明書」を確認することだ。これには各施設の状況が記されており、誰でもホームページなどで閲覧が可能だ。室数と定員が示されているので、事業者側に現在の入居者数を聞けば、入居率を自分で計算できる。一概には言えないが、おおむね80%以上であれば経営環境は安定しているといえる。入居率を左右するのはその施設が「介護」サービスを提供しているかどうか。現在人気なのは「介護付き」物件なので、将来の入居率を予想する上でもポイントとなる。

さらに重要事項説明書では、従業員の配置もしっかり確認しておきたい。職員体制の項目で職員1人あたりの入居者数や、看護、介護職員数、常勤、非常勤などの雇用状況が記されている。

入居保証金の保全状況も確認できる。現在は法律によって500万円以下は保全措置が取られているが、2006年以前に設立された施設は今回の聖母の会のように保全されていないケースがある。(注 事業者によっては06年以前であっても保全措置を自主的に取っている)

また、500万円を超える高額保証金も、不動産投資信託(REIT)が出資しているケースでは保全されていることもあり、チェックが必要だ。

いずれにしても終(つい)のすみかになる可能性がある物件。しっかりと情報収集をして、場合によっては家族だけでなく専門家にも意見を求めて、細心の注意で選択したいものだ。

■2015.8.14  「グッド・トイ」賞:アイデア積み木に 川口の障害者施設 /埼玉
障害者らが働く施設「すいーつばたけ」(川口市安行)が製作した木のおもちゃが、NPO法人「日本グッド・トイ委員会」が推奨する「グッド・トイ2015」に選ばれた。


受賞作は「つみつみANIMAL」(定価3700円)。半円形の台座に、ハリネズミ、イヌ、ネコ、ウサギ、キツネ、クマ、馬のかわいい7種類の動物と、4色の星をかたどった模型を積み上げて遊ぶ。個々の積み木を自由に組み合わせられるのが特徴で、収納用の袋に動物たちを入れ、触った感触でどの動物かを当てるゲームも楽しめる。

「すいーつばたけ」はクッキーなどお菓子製造に加え、12年前に木工部門を開設し、おもちゃ作りにも挑戦してきた。これまでに、木製の車やガラガラ、四つ葉型の剣玉などを製作・販売している。

「つみつみANIMAL」は、昨春から新商品開発を進める中で生まれたアイデア。いろいろな動物を平面的に組み合わせるおもちゃは多いが、立体的なものは少ないことから思いついた。

木工部門スタッフの月永ちえみさん(31)は「今回の受賞は(製作にかかわった)みんなが喜んでくれ、自信にもなった。次も新しいおもちゃに挑戦したい」と意欲をみせた。

「つみつみANIMAL」は、年間入場者が12万人を超える東京おもちゃ美術館(東京都新宿区)で販売されるほか、年間を通じて全国を巡回している「移動おもちゃ美術館」でも展示される。問い合わせは「すいーつばたけ」(電話048・291・5047)。



http://www.medakafamily.jp/wood_6.html


つみつみANIMAL
材質:ひのき(国産)
サイズ:27×20×2.4
動物や星の形のつみ木たち。赤ちゃんが口に入れても安全なオスモ社の自然塗料を使っています。
舟のような形のパーツに動物を乗せて揺らしたり、逆さまに置くと丘のようになるので動物たちとごっこ遊びができます。
http://social-welfare.rgr.jp/storage/pht_w5_31L.jpg

■2015.8.23  スポーツ大会で奉仕、高校生と庭の手入れ… 高齢者の生きがい後押し 当別町が事業
高齢者が活動する場や若者と交流する機会を広げようと、町は昨年度から「高齢者が活(い)きる地域しごと支援事業」に取り組んでいる。町内で開催されるスポーツ大会でのボランティアや高校生と一緒に公共施設の庭の手入れをするものなど年間で約40日の活動日を用意。利用者からも「内容が多彩で、外出する機会が増えて楽しい」と好評だ。

21日午前、町学習交流センター(錦町)のふくろう図書館で、「地域しごと支援事業」の図書修繕講座が開かれた。4人が参加し、同センターの職員から本に保護用の透明フィルムを貼る方法を学び、1時間半ほどで20冊分を仕上げた。

参加した町内金沢の丸山牧子さん(68)は「日中、外に出て人と話す機会が増え、生活に彩りや変化を感じる」と笑顔を見せる。

同事業は町から委託を受けたNPO法人「ふれ・スポ・とうべつ」が運営。対象は60歳以上の町民で、広く参加を促すため町の生涯学習講座「ことぶき大学」の課外授業としても位置付けている。本年度は6月から来年3月まで約40日の活動日を設け、平均で1日10〜20人が参加している。

スウェーデンヒルズの土田悦子さん(69)は昨夏、同事業の読み聞かせ講習会に参加したのをきっかけに、ふくろう図書館で読み聞かせボランティアを始めた。「小さな子どもたちはとてもかわいくて、心がほっこりします」と話し、もっと上達しようと自宅で練習を重ねているという。

造園や陶芸など高齢者が身に付けた技能を子どもたちに教える活動もあり、同事業を担当するふれ・スポ・とうべつの吉尾恵子さん(54)は「高齢者の生きがいとともに若い世代が町に愛着を持つ機会にしたい」と話す。

活動内容など問い合わせは、ふれ・スポ・とうべつ事務局(総合体育館内)

■2015.8.23  介護現場に外国人を 滋賀県、22日から養成事業
介護現場で働く人を確保するため、滋賀県は外国人を対象にした養成事業を新たに始める。受講者が介護職員として働くために必要な日本語を学び、介護の基本的な知識や技術を習得する研修を受ける。事業所への就職も県が支援する。22日に草津市で開講式を開く。

県内の介護職員は2013年度時点で約1万6500人。県は団塊の世代が75歳以上となる25年に、県内で約2万5千人の介護職員が必要になると見込んでおり、これまで有資格者の再就職支援などに取り組んできた。介護人材を確保するための外国人養成事業は、静岡県や神奈川県など、外国人工場労働者が比較的多い県で事例があるという。

今回の研修は滋賀県内在住で、ブラジルやフィリピンなど4カ国の国籍を持つ20〜50代の男女19人が受講する。10月中旬までの日本語研修の後、就職に有利となる介護職員初任者研修(130時間)を受ける。研修事業はNPO法人に委託する。

県医療福祉推進課は「外国人を対象にした介護の研修は言葉の問題があり民間では少ない。研修後は県内の事業所で就職できるよう県として支援する」としている。


■2015.8.23  介護人材の確保 待遇改善が欠かせない
団塊の世代が75歳以上になる2025年度に、全国で介護職員が約38万人不足する恐れのあることが厚生労働省の推計で分かった。有効策を打ち出さなければ、必要な253万人の85%しか満たせないことになる。

介護保険制度が始まった2000年に55万人だった全国の介護職員は、13年度時点で3倍を超える171万人に増えた。それでも高齢化で膨らみ続ける介護需要にサービスの提供が追いついていかない将来像が、今回の推計で浮かび上がった。高齢者が必要とするサービスを十分受けられるよう人材確保の取り組みを急がなければならない。

介護職場の人手不足は現に進行中の課題でもある。推計では、不足分は17年度に12万人、20年度には20万人となる。本県では25年度、約2万6千人の必要数に対し1割強の2700人が不足する見通しという。

一昨年の厚労省調査では、介護従事者のうち就労後1年で離職した割合は16・8%で、全産業平均より4ポイント余り高かった。

介護は経験を積むほどサービスの質が向上するといわれる。専門技術を身に付けた人材は貴重な社会資源であり、離職は社会にとって大きな損失だ。慢性的な人手不足解消のため、まずは離職の歯止め策を講じたい。

離職の理由として考えられるのは賃金をはじめとする待遇面の問題だ。公益財団法人介護労働安定センターの14年度介護労働実態調査では、平均月収は21万5千円で全産業平均を10万円も下回っている。本県はさらに低く18万5千円だった。

介護職は精神的にも体力的にも厳しい仕事である。やりがいを感じていても、それに見合う賃金が保証されなければ長続きはしないだろう。

厚労省は本年度、介護報酬の改定で平均賃金が月1万2千円上がるよう手当てした。賃金増に道筋が示されたことは歓迎したいが、実際に待遇改善が進むかは不透明だ。介護報酬の総枠が9年ぶりに引き下げられ、事業者の多くが減収となるとみられるからだ。施設経営が苦しくなれば、職員を減らすという動きも出かねない。

国の財政を考えると、膨らみ続ける介護報酬を抑える必要があるが、介護報酬のマイナス改定で施設経営と職員待遇の悪化を招き、結果としてサービス低下につながるようでは本末転倒だ。報酬改定の実効性と影響を注視していく必要がある。

介護労働安定センターの実態調査では、本県の85事業所のうち人材不足を感じていると回答したのは52・9%で、このうち68・9%が「採用難」を理由に挙げた。

人材確保には若者の就労掘り起こしという視点も欠かせないが、生産年齢人口(15〜64歳)が減り続けるという厳しい現実もある。出産・育児で離職した女性の職場復帰や、元気なお年寄りの就労を促すことも真剣に考えたい。

■2015.8.23  語られてこなかった障害者の戦争体験 日本や独ナチスでも抑圧の歴史
戦後70年を迎えた今夏は、戦争関連のさまざまな報道や出版などが相次いだ。しかし、けっしてこれまで多くは語られてこなかった戦争体験がある。障害者から見た戦争だ。障害者に対する法制度がなかった戦時中、彼らはどのような体験をし、どう戦争を見つめたのか。「障害者と戦争」などをテーマにしたNHK Eテレの「シリーズ・戦後70年」を手がけるチーフ・プロデューサー、熊田佳代子氏に聞いた。

真っ先に切り捨てられるのは自分たち

いま障害者は、ある危機感を持っていると熊田氏は言う。「戦争などの有事の際には障害者は真っ先に切り捨てられる」というものだ。

日本の障害者運動をリードしてきた藤井克徳さんは「障害者がすべての前触れになる」とよく話すという。藤井さんは、自身も視覚障害があり、日本障害者協議会の代表を務める。世の中の“空気”が変わった時に真っ先に切り捨てられる、生きている価値がないとして「価値付け」の対象になってしまう、そういう「変化」が一番早く押し寄せるのは障害者なのだと。「平和じゃないと生きられない」ということを、先鋭的に肌身に感じているのが他ならぬ障害者たち自身だという。

これまで障害者の戦争体験はあまり語られてこなかった。

戦前は障害者に対する差別があり、家族も家に隠すなどして表に出したがらなかった。昨年6月に沖縄戦を扱った番組で、熊田氏らは沖縄の障害者の人たちの証言を集めたが、激しい地上戦が繰り広げられた沖縄だけに、あまりにも辛い体験だったことに加え、「大変なのは障害者だけじゃない」という状況で、思いを胸に閉じ込めてきた人が多かったのだという。

それがここ数年、生き残った障害者が少しずつ取材に応じ始めている。自分たちの年齢も考えて「伝え残さないと」という切迫感と、時代の空気に対する危機感から声を上げ始めているのだと、熊田氏は感じている。

日本兵「邪魔になるから殺せ」

沖縄戦をはじめとして多くの市民が犠牲になった沖縄では、障害者もまた、凄惨な体験をした。昨年6月の番組で、その体験が語られている。

1944年10月10日の「10・10空襲」。米軍機の大群が空を覆う中、左足にマヒがあった男性は一人で逃げられない。近くに爆弾が落ちたが、死を覚悟しながら何とか生き延びた。

沖縄戦が始まった4月。那覇から北へ避難しようとした家族には2人の障害者がいた。家族でサポートしながら逃げる最中、「障害者は足手まといになる」と周囲の人たちから嫌味を言われることもあった。そんな中、視覚障害のある娘は父親に「私たち2人は置いていっていい」と告げた。父親はそれでも最後まで家族を守り続けた。

障害を理由に殺されかけた事例もある。脳性小児まひで体に障害がある女性は、幼年時代、母親とともに満州から山口県に引き上げてきた。そこへ日本兵がやってきて「障害のある子供は有事の時に邪魔になるから殺せ」と母親に青酸カリを手渡したという。

戦争中、障害者は「穀潰し」呼ばわりされることもあった。右半身にマヒがある男性もその一人。障害のため、兵隊になって国のために戦えない。徴兵検査で不合格になり、「国家の米食い虫」と言われたという。

そうした負い目や軍国教育の影響もあり、国のために戦いたいと考えた障害者もいた。障害があっても人間魚雷になら乗れる、と訴えたり、また視覚障害者は耳がいいので敵機の音を聞き分ける防空監視員になったりして、なんとか役に立ちたいと願ったのだ。


ドイツでは20万人以上が虐殺

戦争中の障害者に対する差別・抑圧の歴史は、なにも日本だけではない。

熊田氏は、ユダヤ人を大量虐殺したナチス政権下のドイツで、障害者が虐殺された事例を挙げる。同胞のドイツ人を含む20万人以上の障害者らが、強制断種させられたり、「ガス室」に入れられ殺害されたりしたのだ。

藤井代表は、なぜこんなことが起きてしまったのか、なぜ止められなかったのか、関係者に聞きたいと、ドイツへ渡った。遺族に話を聞き、ガス室を取材したという。

当時のドイツでは、知的障害者や精神障害者をいかに効率的に殺すかを、ヒトラーや医師・科学者らで話し合い、ガス室が作られたという。それがアウシュビッツの“リハーサル”になったともいわれる。

こうした障害者の悲劇について、ドイツでも家族らは今まで声を上げてこなかった。沖縄の場合と同じで、当時障害者は差別の対象になっていたからだ。

医学界は、精神障害者らを殺害することは、優生思想や安楽死的な考え方から「正しい」と考えていた。むしろ積極的に殺りくに関わっていたわけで、ナチスはそれを利用した。加害者側の精神医学の学会は5年ほど前まで殺害を公に認めてこなかった。

なぜ止められなかったのか。街の声には「『おかしい』と言うと次は自分がターゲットになってしまう」という意見があった。藤井代表は「これくらいならいいだろう」とみんなが思っているうちに、とてつもないホロコーストへとつながって行ったとみる。そして警鐘を鳴らす。「ちょっとおかしいなと思った時に、誰かが声を上げて大きなうねりにしていかないと」。
.

今も変わらない「危機感」

戦後、日本は日本国憲法の下、新たな道を歩み始めた。1947年施行の憲法に「社会福祉」が初めて明記され、障害者への法制度もスタートした。先進国の中では「まだ遅れがある(熊田氏)」とはいえ、遅ればせながら2014年1月、国連の障害者権利条約も批准した(国連総会での採択は2006年)。現在の日本で、もし仮に再び戦争が起きたら、障害者の人権は、かつての戦争の時代よりも守られるのだろうか。

藤井代表は、4年前の東日本大震災での死者数を参考にこう指摘する。震災で亡くなった障害者の数は、一般の人の2倍だった。震災のような大災害は、普段の社会状況を「丸裸」にする。仮に戦争が起こった場合、「障害者が危険な状態にあることは、今も変わっていない」。

震災時にも、逃げ遅れる、置いて行かれる、情報が届かない、そういう状況が重なって障害者が命を落としている。被災地の避難所でも、医療機器がないと生きられない。しかし、そのためにみんなの貴重な電気を使えるか。また、発達障害のある子が声を上げてしまう。避難所では周囲から「眠れない」と言われ、居づらくなる。震災でも障害者は厳しい状況に置かれた。

戦争のような有事の際は、ともすると、国のためになるか、という「優先順位の社会」になりがちだ。そこでは、人間は平等であるという価値観が忘れ去られてしまう。それは私たち自身にも突きつけられる問題だ。「共同体の中で『優先順位の社会』になると、真っ先に切られるのは弱者」。藤井代表は、今も変わらない危機感を抱いている。

■2015.8.23  重度障害児が学ぶ場は:鳥取養護・看護師辞職問題を追う/1 「数分の遅れ、命に関わる」 保護者と看護師「認識ずれ」 /鳥取
児童の一人に付き添っていた母親が思わず声を荒らげた。「うちの子を殺す気か」。今年5月20日、鳥取市江津の県立鳥取養護学校の教室。叱責した相手は、重度障害のある児童生徒への胃ろうやたんの吸引などの医療的ケアを担う看護師だ。6人の看護師全員が一斉に辞職を申し出た問題の引き金となる出来事だった。

県教委が6月8日の県議会総務教育常任委員会で問題を報告した際、母親は「威圧的な言動をした」として一斉辞職の理由とされた。具体的にはどんな状況だったのか。「1時間おきのケアが数分でも遅れたら命に関わると伝えていたのに、8分も遅れた」。後日、毎日新聞の取材に応じた母親はそう訴えた。

母親によると、正午の経管栄養のケアの時、子供の血糖値が下がって顔が青ざめ、ぐったりとした。「その場に看護師が3人いたのに、手動でも動かせる機械が動かないといってケアをしなかった」。母親が抗議すると、「県教委は学校事故に値すると認めた」という。

一方、県教委は取材に「看護師は遅れは1〜2分だったと話している」「保護者と看護師の間に、数分の遅れによる影響について認識のずれがあったかもしれない」と説明する。事故ではないが、重大事故につながる可能性のある「ヒヤリハット」との位置付けだ。

だが、母親は「それ以前にもミスがあった」と話す。例えば▽鼻から胃にチューブを入れて注入する際、間違って肺にチューブが入っていないかを確認する基本的な作業をしない▽胃に空気が入っているのに抜かずに注入するなどだ。

5月24日に学校で開かれた保護者説明会では、他の保護者からも「看護師がやらないといけない事を忘れることが多々あった」「基本的な手技をしない時があった。保護者が詰め寄るのは当然で、そういうところを隠している」「保護者がそれだけ怒るとは事故があったのでは」などの声が相次いだ。

複数の保護者が主張した「看護師の不手際」。県教委は保護者と看護師の間で認識に食い違いがあったと説明し、真相を検証するのは難しい。一方、取材を進めて見えてきたのは、学校で学ぶ重度障害児の医療的ケアを支えるチーム体制や県教委によるバックアップの不十分さだった。

看護師の一斉辞職により医療的ケアが必要な児童生徒の一部が一時通学できなくなった鳥取養護学校。京都市に拠点を置くNPO法人「医療的ケアネット」の中畑忠久理事は「全国でも聞いたことのない異常事態だ」と指摘する。背景にある問題を探り、特別支援教育のあり方を見つめ直す。


◇鳥取養護学校の看護師辞職問題

重度障害児らも通う県立鳥取養護学校(児童生徒76人)で5月22日、6人の看護師全員が一斉に辞意を表明。7月22日までに全員が辞職した。学校は「保護者の威圧的な言動が原因」と説明。医療的ケアが必要な児童生徒33人のうち最大9人が一時登校できなくなった。学校は看護師の臨時派遣などで6月11日からケアの一部を段階的に再開したが、なお看護師不足は続いている。

■2015.8.23  重度障害児が学ぶ場は:鳥取養護・看護師辞職問題を追う/2 チームで支える体制を 看護師と教員、欠けた連携 /鳥取
看護師の一斉辞職で一部の児童生徒が一時登校できなくなった県立鳥取養護学校(鳥取市江津)。保護者からの叱責の他にも、県教委は辞職理由として▽保護者の要望を組織として受け止める体制の不十分さ▽看護師の要望を受け止める窓口の不明確さを挙げた。

特別支援学校では通常、保護者からの相談や要望を看護師が直接受けることは少なく、養護教諭や医療的ケア担当の教員らが窓口になることが多い。だが、鳥取養護学校ではその役割が十分に果たされていなかった。看護師が管理職や教員と直接コミュニケーションをとる場も少なく、看護師同士の間の情報共有ノートがあるだけだった。

「医療的ケアが看護師だけに委ねられてきた点に問題があったのではないか」。鳥取短大幼児教育保育学科の国本真吾准教授(障害児教育学)はそう推測する。同校の元看護師の一人は取材に対し「自分がいた時はそうではなかったが、今は主治医、校医、養護教諭、看護師の間の命令系統があいまいになっているのかもしれない」と話した。

一方、県看護協会の関係者によると、辞職した看護師の1人は「もっとやりがいのある仕事がしたい」と述べたという。看護師が重度障害児の教育を支えるチームの一員ではなく、ケアをするだけの存在として扱われたことへの不満がにじむ。

こうした学校組織の問題について、国本准教授は「医療を担う看護師と、教育を担う教員や管理職が領域を住み分けることでチーム体制がなかったことが背景にある」と指摘する。「お互いの職域への知識や理解が足りず、意味をくみ取れなかったり、共感を持てないこともある」という。

県立皆生養護学校(米子市上福原7)では5年ほど前、ヒヤリハットに該当する問題が相次いだ。その後、教員がたんの吸引をする代わりに排たんしやすい姿勢にするなど、医療行為に当たらない範囲で子供たちのケアに関わる体制を整えたという。

「重度障害のある子供には特に(看護師と教員が)役割分担せず、全体像を捉えなければならない」。小児科医で京都教育大教育学部の郷間(ごうま)英世教授(障害児医学)は指摘する。ケアも含め、子供たちの教育を総合的に支援するためには、看護師も含めた教職員が一緒に「チーム体制」をつくる。その必要性を、鳥取養護学校の問題が改めて示す形となった。

■2015.8.27  更生保護施設、高齢者・障害者向け福祉スタッフ倍増へ 出所者2千人受け入れ目指す
法務省が高齢者・障害者の出所者を受け入れる更生保護施設の福祉スタッフを倍増するなど体制強化を検討していることが26日、分かった。更生保護施設の稼働率向上を柱の一つとして、政府が目標とする出所者2千人分の“居場所”創出を目指す。東京五輪までに再犯防止を進め、「世界一安全な日本」を国際社会にアピールする狙いだ。

政府は昨年12月、東京五輪が開催される5年後までに居場所のない出所者を全体の3割(約2千人)減らす目標を決定した。居場所がないまま釈放された出所者が再犯に至るまでの期間が短いためだ。平成21年の犯罪白書によると、約6割が出所後1年たたずに再び犯罪に手を染めている。

これを受け法務省は、高齢者や身体障害者、知的障害者などを受け入れ、社会福祉士などの資格を持つ福祉スタッフを配置する「指定更生保護施設」を現在の57施設から全国の全更生保護施設(103施設)にほぼ倍増する財源を28年度予算で概算要求する方針。103施設に1人ずつ配置できる額だが、配置しない施設もあるとみられ、積極的な施設に複数配置できるようにして稼働率向上を図る。

福祉スタッフは、高齢者・障害者の特性に配慮した指導や福祉サービスを受けるための調整などを行う。国は施設に対し、通常の委託費のほかに福祉スタッフ1人当たり月額約40万〜50万円を支給する。

また、法務省は更生保護施設で出所者の自立を支援する非常勤職員1人1日当たり一定額が支給される委託費について、週3日が上限だった支給日数を5日に拡大。さらに、施設の改修や増築に対する補助金を拡充する予算も求める方針。福祉スタッフ倍増と合わせ、受け入れ体制強化を進める考えだ。

全更生保護施設の定員は計2349人だが、充足率はここ数年、70%台後半で推移。100%になれば、約500人多く受け入れることができ、通常は1人につき3〜4カ月滞在することから、受け入れ人数は年間で約2千人増える計算だ。

■2015.8.27  更生保護施設態勢強化に歓迎の声「社会復帰の最後のとりで」
更生保護施設で高齢者・障害者の出所者を指導する福祉スタッフをほぼ倍増するなど受け入れ体制強化の方向性を法務省が示した。通常より負担が重い施設を支援する施策に対し、関係者からは歓迎する声が上がっている。法務省は「社会復帰の最後のとりで」と呼ばれる更生保護施設だけでなく、自立準備ホームや民間企業の協力体制づくりも進めており、官民をあげた再犯防止の旗振り役を務めている。

更生保護施設は、保護観察所の委託を受け、釈放されたばかりの出所者に生活指導や就労支援を行う。出所者は施設で暮らしながら仕事を探し、やがてアパートへ転居するなどして社会に復帰していく。

元刑務官や犯罪者の更生支援を志す高齢者らが更生保護法人の一員として運営するが、「定員20人、職員4人程度の小規模施設で、365日、1日24時間、出所者を処遇する“極限状態”の施設も少なくない」(法務省保護局)という。

更生保護施設は、受け入れ人数や日数などに応じ、国から委託費を受給し運営費に充てる。限られた職員で運営しなければ経営が成り立たず、稼働率を上げられないところが少なくないため、同局幹部は「福祉の専門家や非常勤職員を増やせば、受け入れ人数の増加が期待できる」と話す。

「更生保護施設の積極的な取り組みに対し、政府が財政的な支援をしてくれるのは助かる」。東京都渋谷区で女性向け更生保護施設を運営する「両全会」の小畑輝海理事長は法務省の施策を歓迎する。両全会では滞在者の約6割が高齢者や障害者だ。専任の看護師の女性は「高齢者や障害者は就労が困難な上、指導も難しくなる。それでも本人がやる気をもって仕事を見つけ、自立した後に近況を知らせてくれると、再犯していないことが分かる」と現場の苦労と喜びを語る。

政府目標である出所者約2千人の“居場所”を確保するため、法務省は更生保護施設のほかに、自立準備ホームや民間企業の協力も求めている。自立準備ホームでは、保護観察所に登録された社会福祉法人など全国332事業者(今年3月末時点)が宿泊場所と食事を提供、自立支援も行う。出所者の新規受け入れ委託人数は、更生保護施設で6676人(平成25年)、自立準備ホームで1109人(25年度)だった。

一方、出所者の雇用に協力する民間企業は「協力雇用主」と呼ばれ、全国に1万4千社以上ある。このうち約670社で実際に出所者を雇用している。

政府は実雇用する協力雇用主を3倍に増やす目標も掲げるが、法務省は27年度に協力雇用主への奨励金制度を創設。直近4カ月で約120社増加したという。

■2015.8.27  職場での障害者虐待、483人被害 未払いなど「経済的虐待」が最多 26年度
職場で雇い主や上司から虐待を受けたことが平成26年度中に判明した障害者が483人に上り、前年度(393人)と比べ約23%増加したことが27日、厚生労働省のまとめで分かった。虐待があった事業所数も299(同253)と増加。集計結果の公表は障害者虐待防止法に基づき、今回で3回目(1回目は24年10月〜25年3月の半年間)だが、同省では「研修などで労働局職員の障害者虐待に対する理解が深まり、職員が事業所を訪問して発見することが多くなった」と分析している。

虐待を受けた483人の内訳は知的障害が362人、身体障害が67人、精神障害が52人、発達障害が11人(一部は障害が重複)。

虐待の種別では賃金未払いや、最低賃金を下回る金額しか支払わないといった経済的虐待が419人で最多。暴言や差別的発言などの心理的虐待が39人、身体的虐待が23人、性的虐待が8人だった。

■2015.8.28  他人事ではない?「障害者は時給200円」という経済的虐待が発覚!
厚生労働省の発表によると、平成26年に職場で虐待を受けたことが判明した障害者の人数は483人。これは前年度の393人と比べて23%増という数字であり、虐待のあった事業所の数も299件(前年は253件)に増加しているとのことです。
また、虐待の多くを占めていたのは、最低賃金以下の報酬しか支払わないといった「経済的虐待」であり(483人中419人)、なかには「時給200円」というケースもあったそうです。なぜこのような事態になっているのでしょうか。


◆障害者へのさまざまな就労支援

ここで注意しておかなければならないのが、障害者の雇用形態です。ひとくちに障害といっても、そこには知的障害、身体障害、精神障害、発達障害という種類があり、なかには重複障害といって、2つ以上の障害をあわせて持っている人もいます。障害の程度によって、障害者の雇用形態や就労支援にもさまざまな種類があるのです。

障害者自立支援法に基づき、障害者が仕事に就くためにおこなわれている支援事業には、一般企業に雇用されることが可能と見込まれる障害者への「就労移行支援」のほかに、「就労継続支援」というものがあります。
就労継続支援にはA型とB型の2種類がありますが、雇用契約を結んで就労するA型と、雇用契約を結ばないB型とでは、障害者に支払われる報酬にも大きな差があります。


◆「雇用」じゃないから「月給1万5千円以下」が当たり前?

ちなみに、冒頭に述べたような「経済的虐待」が問題となるのは、障害者が企業と雇用契約を結んで就労している場合であり、雇用契約を結ばない「就労支援B型」では、いくら報酬が安くても労働基準法の適用外のため問題にはなりません。

制度を利用する人の状況によって、職場に通う頻度や、仕事のペースもさまざまな「就労支援B型」の事業所(授産施設)では、就職や能力向上のための「訓練」をする施設という意味合いが強く、仕事の内容も単純作業(製品の袋づめなど)が多くなります。そこに通う人は労働者ではなく「訓練生」という扱いのため、報酬も平均月額1万4337円・平均時給178円(平成25年度・厚生労働省の調査)というものになっている状況なのです。

◆「福祉」と「労働」の線引きで見えない現場

雇用契約を結んで働いている障害者が直面しているのは、労働基準法に違反するような「経済的虐待」以外にも、障害を理由に職場で希望する仕事をさせてもらえないケースや、職場における暴言や暴力などの「いじめ」、性的虐待といった問題もあります。

さらに、職場で虐待の被害にあっている障害者の多くは、知的障害を持つ人たちであり(483人中362人)、これは事業主の障害者をサポートする姿勢が問われている状況といえるでしょう。国では、障害者虐待防止法に基づき、こうした実態の把握・指導に努めているそうですが、家族などが気づかず改善がなされないまま長いこと放置されているケースもあります。

スピードや効率が求められる資本経済のなかにおいて、私たちの働く環境は、昔と今では大きく変わってきています。福祉的就労は、「福祉」で囲い込んだままで、多様な人が働ける社会を実現することは、取り残されています。働くこと=「よりよく生きるため」であったはずが、生きにくさを感じてしまう社会へと向かっているようです。

若い世代を中心に、「働いても生活が苦しい」という貧困層の拡大している現在、社会的弱者の増大、状況の悪化は、決して他人事ではないのです。



厚生労働省
障害者の就労支援対策の状況
平成25年度平均工賃(賃金)月額の実績について
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/service/shurou.html

■2015.8.28  青森の介護職員 月給、全国平均より3万6千円低く/5割が「不満」
青森県の介護事業所で働く職員の平均賃金(月給)は17万8400円で、全国平均の21万5千円に比べ約3万6600円低いことが27日、公益財団法人・介護労働安定センター(東京)の「介護労働実態調査」で分かった。職員の意識調査では、賃金の低さに不満を抱く本県の職員の割合が5割近くに上り、人手不足が続く本県の介護現場で賃金アップが重要課題であることが浮き彫りとなった。

調査は昨年10〜11月に実施。特別養護老人ホームやグループホーム、訪問介護事業所など県内134事業所を含めた全国の8317事業所が回答した。

職種別で本県の介護職員の月給を見ると、訪問介護員(ヘルパー)が15万8631円(全国平均18万7128円)で最も低かった。(ヘルパー以外の)介護職員が16万6434円(同19万6131円)だったほか、介護支援専門員(ケアマネジャー)が22万3260円(同25万3705円)だった。

看護職員は22万575円で、全国平均の26万3368円に比べ、4万2千円以上低かった。
2013年10月から14年9月末までの本県の介護事業所職員の離職率は16.3%(全国平均16.5%)。そのうち、就職後1年未満の離職は44.3%(同40.1%)、1年以上3年未満の離職は31.4%(同33.8%)と早期離職が目立った。

本県の職員350人が回答した意識調査で、働く上での悩み・不安・不満を聞いたところ(複数回答)、「仕事内容のわりに賃金が低い」が47.7%(全国平均42.3%)となり、「人手が足りない」45.7%(同48.3%)、「有給休暇を取りにくい」44.0%(同34.9%)を上回った。

以前に介護職場をやめた経験がある人113人に、その理由を聞いたところ、「収入が少なかったため」が23.0%(全国平均18.3%)と、「職場の人間関係に問題があったため」28.3%(同26.6%)に続いて2番目に多かった。
 一方、事業所に対するアンケートで、「人員が不足しているが、採用が困難である」と答えた本県の37事業所のうち、その理由として6割以上が「賃金が安い」と答えており、事業所側も賃金アップしたいが実際は難しい現状をうかがわせた。

◇処遇改善「本腰を」青森県内関係者

本県介護職の給料が全国平均よりも低い現状について、本県関係者は「人材不足解消に向け、各事業所は職員の処遇改善に本腰を入れるべき」と指摘した。

県社会福祉法人経営者協議会の岩渕惣二会長(八戸市・特別養護老人ホーム瑞光園園長)は「県内では、株式会社やNPO法人などの民間が運営する事業所の賃金が安いと言われている。利用者の所得が低いので、有料老人ホームなどの利用料を安く設定し、そのため職員の給料を低くせざるを得ないという面もある」と解説。「他地域よりも仕事が少ない本県で最低賃金水準の求人でも人が集まっていたという側面もあるかもしれない」とも語り「人材不足が一層深刻になる今後は、賃金を上げるなど一層の処遇改善が求められる」と話した。

全国老人福祉施設協議会の中山辰巳理事(むつ市・特別養護老人ホームみちのく荘園長)は「事業所・施設側も賃金を上げたいと思っているが、限られた介護報酬の中で、人件費を上げるのは難しい」と語り「都会の介護報酬が、地方よりも高めに設定されているのは不公平。冬期間の暖房費や、職員の移動費など北国は特に経費が掛かる。地方の事業所・施設が、安定した運営ができる制度が必要」と話した。

県介護福祉士会の風晴賢治会長は「昇給や昇格の基準があいまいな事業所もあるので、職員の不満や不安を解消するためにも、明確な給与体系を示すべき」と提言した。

■2015.8.29  看護・介護、復職しやすく 離職者の人材バンク整備  厚労省、「2025年問題」に備え
厚生労働省は離職した看護師や介護福祉士を登録する人材バンクを作り、将来、復職しやすい環境を整える。看護師は10月から、介護福祉士は2017年度から離職時に氏名や連絡先などを届け出る努力義務を課し、届けた人に研修会や求人情報などを送る。団塊の世代が75歳以上になり看護・介護の人材不足が深刻になる25年に備え、離職者を勧誘し人手不足を補う。

政府の試算では高齢化が加速する25年には看護職員が3万〜13万人、介護の人材は約38万人不足する見通しで、財政負担も重くなる。この「2025年問題」をにらみ、資格を持ちながら職場を離れている看護師や介護人材の復職を後押しする。

看護師向け届け出制度は各都道府県のナースセンターが中心になる。病院をやめる看護師や資格を取ったものの、すぐに働かない人に届け出の努力義務を課す。助産師や保健師も届け出の対象だ。

看護師や助産師など看護職の資格を持ちながら、その仕事に就いていない人は約70万人にのぼる。結婚や出産などで退職する女性が多い。厚労省によると、現場から長期間、離れると復職の意思があっても、ためらうケースが少なくない。ナースセンターが離職者情報を蓄積し、まず復職に必要な研修会の情報を発信し、職場復帰への呼び水にする。

離職者が利用しやすいよう専用サイトを立ち上げ、インターネットを通じて届け出ができるようにする。離職者が同意すれば勤務先の病院が代わりに届け出ることも認める。

介護福祉士向けの離職者届け出制度は17年度に創設する方針だ。都道府県の社会福祉協議会が運営する福祉人材センターに離職届けを出すよう努力義務を課す。同センターが求人を出す介護施設と離職した介護福祉士をつなぐ。資格を持つ潜在介護福祉士は約50万人いる。

総務省が28日発表した7月の労働力調査によると、医療・福祉分野の雇用者数は743万人で前年同月に比べ26万人増えた。88カ月連続で増加したものの、なお人手不足が続いている。看護・介護の人材不足は人口の多い団塊世代(1947〜49年生まれ)が75歳以上になる25年に向け一段と加速する。

厚労省は都市部を中心に人手不足が目立つ保育士の復職にも力を入れる。厚生労働省は15年度から始めた保育士の離職届け出制度を拡充する方針だ。届け出を受け付ける拠点は14年7月時点で、33都道府県にとどまる。厚労省は全国に展開する方針だ。

厚労省によると、17年度には6万9千人の保育士が不足する見通しだ。一方、潜在保育士は約70万人にいる。


http://social-welfare.rgr.jp/storage/kw2ja55-qox8.jpg

 

トップへ フッターへ