残しておきたい福祉ニュース 1996〜社会福祉のニュース

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残しておきたい福祉ニュース

 2015年 
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 2015. 5. 1 高齢者らの観光に一役 - 奈良近鉄タクシーが特別車
 2015. 5. 1 増える介護保険料 自治体に格差
 2015. 5. 1 介護保険料、10年後に8000円台 南日本新聞試算
 2015. 5. 1 <セルフネグレクト>高齢者からの介護拒否に苦慮
 2015. 5. 2 「よりあい」流の特養開設 福岡市 木造2階建て、カフェとも連動 「地域福祉の拠点」目指す
 2015. 5. 2 介護保険料 県平均5371円…65歳以上  山梨県
 2015. 5. 3 新潟)基準額、県平均5956円 介護保険料、26市町村で上昇
 2015. 5. 5 <養護施設>職員の2割、児童から暴力被害 けが、心身不調
 2015. 5. 7 <障害者事業>販路拡大デザイナーや広告のプロが乗り出した
 2015. 5. 7 累犯障害者、負の連鎖を断ち切りたい 札幌の自閉症男性 出所後の支援へ連携
 2015. 5. 8 街の自転車屋さん、車いすも整備 「安全整備士」資格者、ただいま増加中
 2015. 5. 8 地域公益活動の義務化、「社福の9割反対」−NPO法人が調査
 2015. 5. 9 高知市の介護福祉士が考案の簡易トイレ 遠出、災害時に重宝
 2015. 5. 9 愛媛・道後温泉本館などで浴衣再利用のバッグ販売
 2015. 5.10 認知症社会  「ゴミ屋敷」に老夫婦、年金使い込む息子
 2015. 5.10 (認知症社会)認知症と生きていく
 2015. 5.10 (認知症社会)年金の日、あの子が来る 娘婿ら、大半持って行った
 2015. 5.10 ハンセン病療養所:来月、ボランティア養成講座 「ゆいの会」受講者を募集 /岡山
 2015. 5.10 認知症社会  「年寄りだまして大もうけ」群がる業者
 2015. 5.10 認知症社会  「おふくろがそんなこと…」 思わぬ遺言で相続争い
 2015. 5.10 認知症社会  いつの間にか養子縁組、遺産相続の遺言書
 2015. 5.13 奈良・天川村の介護保険料8686円、全国一の高額
 2015. 5.15 カメのお菓子で福祉に貢献 京都・亀岡の障害者事業所
 2015. 5.16 県営住宅用地に介護施設…貸し付け第1号  群馬
 2015. 5.16 障害者の就職 過去最高4245人…昨年度
 2015. 5.16 大変だったけど貴重な時間 高校生が看護師体験
 2015. 5.16 高齢者への多剤投与 15種類服用で認知症状悪化
 2015. 5.17 知的障害者施設:安らぎの家、完成…福島県内外へ避難4年
 2015. 5.17 障がい者の就労促進  三浦市社協 市内初の移行支援事業
 2015. 5.17 福祉施設に全財産を取られかける 認知症だった高齢女性
 2015. 5.19 石井の障害者施設の移動スーパー1年 利用者増え、事業順調
 2015. 5.19 熱中症、1週間で480人搬送 2人死亡、消防庁集計
 2015. 5.21 赤ちゃんポスト預け入れ 4年ぶり10人上回る
 2015. 5.23 廃校再生 介護の場に
 2015. 5.23 児童虐待相談が過去最多 香川
 2015. 5.23 病院にアート、患者に癒やし 山本容子さんが阪急うめだで展覧会
 2015. 5.23 障害者の就職3155件 5年連続で過去最高更新 埼玉
 2015. 5.23 バリアフリー・トイレマップ:狭山「車椅子の会」、小冊子製作 希望者に配布 公共施設や病院など調査 /埼玉
 2015. 5.24 「トマトジュースで健康」本当? 北海道・栗山、1年間飲み検証へ
 2015. 5.24 重度障害児の学童開設 看護師らが医療ケアも
 2015. 5.26 車いす貸し出し、台数減りピンチ 名古屋で活動40年
 2015. 5.26 児童虐待通告、過去最多に 「早期の相談増えた」
 2015. 5.26 栗原類さん、発達障害を告白 「子供の頃、先生が逆ギレして...」
 2015. 5.26 栗原類さんADD(注意欠如症)を告白!発達障害者の周囲が経験するカサンドラ症候群とは?
 2015. 5.26 社会生活で孤立させない!大人のADHDとアスペルガー症候群を理解する
 2015. 5.26 子どものADHD(多動・注意欠陥)を理解するためには?
 2015. 5.26 「アスペルガー症候群」という名前が消える?「自閉症スペクトラム障がい」とは
 2015. 5.26 もう筆談は不要です 斉藤区議に400万円の「声」と「耳」
 2015. 5.26 生活介護施設:当事者の思い形に 障害者の母親ら開設 NPOを発足、3年で実現 桜井 /奈良
 2015. 5.27 進む議会のバリアフリー化 音声変換システムや手話通訳を導入
 2015. 5.27 <介護士課程2割減>給与の低さや過酷労働で学生敬遠
 2015. 5.27 高齢の親任せ、介護の危機 障害のある我が子を80歳の母が殺害、現場を歩く  
 2015. 5.27 パチンコで認知症予防…手を動かし脳に刺激 
 2015. 5.27 看護師に「短時間常勤」 人員確保へ導入進む
 2015. 5.27 ベトナム人看護師候補第2期生151人、いよいよ日本へ
 2015. 5.29 やせている人、要介護リスク高く 県・鴨川市調査
 2015. 5.30 介護必要な人と家族生活 新形態の施設、出雲に開設へ
 2015. 5.30 介護大手のニチイ学館が大幅減益、背景に介護業界の労働環境の悪化が
 2015. 5.30 熱々の一杯、高齢者に 函館元祖バスラーメン、福祉施設を訪問
 2015. 5.30 ADHD、目の動き注視 阪大研究、通常より速度遅め
 2015. 5.30 認知症患者500万人、「社会費用」年14.5兆円に
 2015. 5.30 障害者福祉 拡充ぜひ  きょうされん、共産党と懇談
 2015. 5.30 枝豆収穫機:社会福祉法人に寄贈 角田 /宮城


■2015.5.1  高齢者らの観光に一役 - 奈良近鉄タクシーが特別車
奈良近鉄タクシー(奈良市、古川俊男社長)は、JTBと連携し、高齢者や足の不自由な人が楽に乗降できて観光が楽しめる「ケア観光タクシー」の運行を始めた。後部座席に約90度回転するシートを取り付けるなどした特別なタクシー31台を導入。介護と観光の両資格を持つ乗務員が運転する。増加する高齢者らの観光需要に一役買うことが期待される。

同社は平成15年4月からホームヘルパー2級の介護資格を持つ運転手が乗務する「介護タクシー」を導入。JTB国内旅行企画仕入販売部(大阪市)が、観光要素も加えた今回のタクシー運行を商品化した。

■2015.5.1  増える介護保険料 自治体に格差
65歳以上の高齢者が支払う介護保険料は、今年度から全国の平均で月額5514円となることが厚生労働省のまとめで分かった。
これまでより10%余り引き上げられ、介護保険制度が始まって以来初めて5000円を超える。

介護サービスを利用する高齢者が増え続けるなか、ほとんどの自治体が介護保険料を引き上げた一方で、全体の1.7%とごく僅かながら保険料の引き下げに成功した自治体もある。


保険料に現れ始めた格差の背景

増える保険料 自治体に格差
65歳以上の高齢者が支払う介護保険料は、それぞれの市町村が見込まれる介護費用をもとに3年ごとに決めている。
市町村ごとにみると、今回保険料が最も高くなったのは奈良県天川村の8686円。次いで福島県飯舘村の8003、円奈良県黒滝村と岡山県美咲町が7800円などとなっている。

一方、最も低いのは鹿児島県三島村の2800円。次いで北海道音威子府村の3000円、北海道中札内村の3100円などとなっている。
保険料が最も高い自治体と最も低い自治体の差は6000円近くと、市町村間での保険料の格差が明らかになった。


長引く避難生活 保険料にも影響

このうち、東京電力福島第一原発の事故で12万人近くが避難を続けている福島県では、避難区域にある4つの町と村が介護保険料が高い自治体の上位10位に入った。原発事故から4年余り。避難生活の長期化でお年寄りたちの体や心に与える影響が現れ始めている。
村の全域が避難区域に指定されている福島県飯舘村では震災後、介護サービスが必要になるお年寄りが増え続け、その数は現在、震災前の350人から4割増えて500人に上った。

飯舘村の住民が暮らす福島市内の仮設住宅で1人暮らしをしている高橋好明さん(83)は、原発事故の前、毎日のように畑に出て野菜を育て、医師にかかることもめったにありません。
しかし、避難先で暮らすようになってから体を動かす機会はほとんどなくなり、おととし、脳梗塞で倒れた。高橋さんは「要支援2」に認定され、いまは週に3回、訪問介護のサービスを受けている。

住民どうしの集まりからも次第に足が遠のき、家の中で過ごすことが多くなった。
高橋さんは「避難生活が長引くにつれ、外出しなくなってしまう。まるで収容所のように区切られた仮設住宅で暮らしていると、精神的にも閉じ込められたような気持ちになってしまいます」と話している。

福島市内の市営住宅で暮らす熊久保文夫さん(85)は原発事故の前、村で農業を営みこれまで介護サービスを受ける必要はなかった。しかし、避難生活の中で妻の認知症が悪化し介護施設に入所。長年連れ添ってきた妻と離れ離れになったことをきっかけに、熊久保さんも体調が悪化し去年「要介護1」の認定を受けた。

熊久保さんを担当する介護ヘルパーの須田重子さんは「家も家族も失う状況におかれても前向きな考えで暮らしていこうという元気なお年寄りは少なく、諦めの気持ちが広がっている。原発事故の避難者に対する介護の需要は今後も増えてくると思う」と話している。


増大する介護需要 将来の負担は

原発事故の避難区域では現在、65歳以上の高齢者については介護保険料が全額免除される特例措置がとられているが、この免除措置が打ち切られることになれば、避難生活で増大した負担が自治体と住民にのしかかりるおそれがある。

飯舘村の菅野典雄村長は「介護保険料の上昇は仮設住宅などでの避難生活でかかるストレスや運動不足など住民がおかれている窮状を物語っている。国には原発事故による長期避難という現状をふまえて適切な支援を続けてもらいたい」と話している。


保険料増は高齢者の暮らしを直撃

今回、保険料が上昇した自治体の中には中山間地にある町も少なくない。
山県美咲町では保険料が月額で7800円とこれまでの5390円から45%近く増えた。保険料の上昇は高齢者の生活にどう影響しているのか?美咲町で1人暮らしをしている84歳の女性を訪ねた。
女性は月に6万8000円の年金で生活している。所得に応じて減額される介護保険料はこれまで月額4042円だったが、今月からはおよそ1800円上がり5850円になる。

女性は高血圧などの持病のため病院に通院していて、薬代だけで月に5000円かかっている。隣町にある病院までの交通費を節約するため通院の頻度を2か月に1回に減らした。食費も節約していますがそれでも、毎月貯金を切り崩す生活だという。
女性は「年金は増えないので少しずつ蓄えを崩してきましたがそれも少なくなってきましたし本当に今回はどうしようか、ことしは持つかなという気持ちです」と話していた。


山間の町ならではの事情が

美咲町は高齢者全体に占める介護が必要な人の割合が24.5%と全国平均よりも7%高いうえ、このうち施設に入所する高齢者が5人に1人に上り、介護にかかる費用が増え続けている。

人口密度が低く移動に時間がかかる山間部では、在宅での介護サービスを提供する事業者が少ないため、施設に頼らざるえないからだ。
美咲町で介護保険を担当する保険・年金課の桑元英昭課長は「地域のお年寄りが孤立化するなかで、安心を求めて要介護認定を受けたり施設サービスを選んだりしているのではないか」と話している。


保険料引き下げに成功した自治体は

介護が必要になる高齢者を減らすことで保険料の引き下げに成功した自治体がある。
大分県の豊後高田市の保険料の月額は5100円と、これまでより140円低くなった。
ここでは、2年前から介護が必要になるおそれのある高齢者を対象に無料で運動教室を開いている。利用者は踏み台昇降やダンベルを使った簡単な体操などを週に2回、2時間かけて行う。教室では毎回、握力や歩く速さ、それに片足でどれだけ立っていられるかなどを細かくチェックする。

3か月後に運動機能が改善していれば教室を「卒業」できるしくみ。
教室に参加している80歳の植木キミ子さんは「教室に通ってから歩くことが苦にならなくなりました。皆で取り組めるので楽しく続けられます」と話している。


数値に現れた効果

豊後高田市ではことしの2月時点で介護が必要だと認定された人の割合は16.7%と、取り組みを始める3年前に比べて3ポイント余り減少した。その結果、介護にかかる費用も最も多かった平成22年度に比べ年間で6200万円余り削減することができ、保険料の引き下げにつながったという。

豊後高田市保険年金課の飯沼憲一課長は「今後も高齢化によって介護費用や保険料が増加することは避けられないが、介護状態の悪化を食い止め予防の取り組みを広げることで増加の幅を少しでも抑制したい」と話している。


超高齢社会にどう備える

介護保険料の全国の平均額は10年後の平成37年度には月額8165円に上ると見込まれている。
介護保険制度導入から15年となることし。負担が増す一方でサービスは住民のニーズに十分応えられているのか。制度を運営する自治体はこれまで以上に創意と工夫が求められている。

■2015.5.1  介護保険料、10年後に8000円台 南日本新聞試算
南日本新聞は、団塊世代がすべて後期高齢者(75歳以上)になる2025年度の介護保険料について、鹿児島県内の全43市町村が第6期(15〜17年度)事業計画に盛り込んだ推計値などを基に集計・試算した。

65歳以上の高齢者(1号被保険者)が支払う保険料基準月額は県平均で8060円程度となり、4月の改定で過去最高額となった第6期(5719円)から40%ほど引き上げられる可能性がある。

■2015.5.1  <セルフネグレクト>高齢者からの介護拒否に苦慮
◇行政の介入に法的根拠や基準なく

認知症などが原因で身の回りのことができなくなる「セルフネグレクト(自己放任)」の状態にある高齢者への対応について、公益社団法人「あい権利擁護支援ネット」(東京都)が全国の市区町村に調査を実施したところ、福祉や介護サービスを拒否するケースへの対応に苦慮すると回答した自治体が4割に上った。セルフネグレクトに対して行政が介入するための法的根拠や基準がないことが、背景にあるとみられる。【金秀蓮】

調査は厚生労働省の補助事業として昨年10〜11月に実施。全国1749の市区町村の高齢福祉担当部署と4453の地域包括支援センターにアンケートを送付し、713(40.8%)の市区町村と1731(38.9%)の地域包括支援センターから回答を得た。

このうち市区町村への調査では、セルフネグレクト状態にある高齢者への対応で、どのようなことに困難を感じているかという質問(複数回答)に対し、42.1%の市区町村が「(対象の高齢者が)介護、福祉サービスを拒否する」を挙げた。「受診・治療を拒否する」を挙げた自治体も40.1%に達した。「不衛生・不十分な家屋に居住している」を挙げた自治体は29%、「近隣住民らとトラブルを抱えている」は13.7%だった。

対応が困難な理由を記入式で問うたところ、「介入の法的根拠がないため、ぎりぎりまで見守ることしかできない」「自己決定権をどこまで尊重するか迷う」「本人の気持ちの尊重と客観的判断との基準があいまいで、セルフネグレクトとしての認定が難しい」などが目立ち、積極的な支援を後押しする法令や基準がないことが支援の壁になっている実態が浮かんだ。

セルフネグレクトの状態にある高齢者354人について、認知症の有無の把握状況を調べたところ、診断が出ているのは15.8%。一方、「疑い」あるいは「不明」といった判然としないケースは62・5%を占め、適切な受診に至っていないケースが多い状況もうかがえる。

あい権利擁護支援ネットの川端伸子理事は「判断力がどれほど低下しているかを自治体が把握する手立てがなく、『支援を望まない』という本人の意思によって介入を諦めているケースがある。支援しやすくなるように、国は制度や医療体制の整備に取り組んでほしい」と話している。

◇セルフネグレクト

1人暮らしなどの高齢者が生活への意欲や能力の低下によって身の回りのことができない状態に陥ること。認知症や精神疾患によるもののほか、本人の意思によるものもある。不衛生な住環境で暮らす▽食事が適切にとれない▽必要な治療や介護を受けようとしない−−などのケースがある。

■2015.5.2  「よりあい」流の特養開設 福岡市 木造2階建て、カフェとも連動 「地域福祉の拠点」目指す
高齢者が住み慣れた自宅や地域で暮らし続けるためのケアを実践する福岡市の宅老所「よりあい」。国の介護保険制度の枠にとらわれないサービスを提供する「よりあい」が今春、地域密着型特別養護老人ホーム(特養)「よりあいの森」(定員26人)を開設した。従来の特養に象徴された、大規模介護施設のあり方を問うかのように登場した「よりあい」が今なぜ、特養なのか。開設したばかりの「よりあいの森」を訪ねた。

入所型の高齢者介護施設では珍しい木造2階建て。新緑の木々に囲まれた福岡市城南区別府の住宅街の一角に、よりあいの森は新築された。支援者などから寄せられたという使い込まれた中古のソファやテーブルが温かな雰囲気を醸し出す。全室個室。現在、70〜102歳の21人が入居している。

宅老所「よりあい」は1991年、福岡市中央区の寺の一角で、92歳の独居女性の居場所をつくるため、始まった。認知症の高齢者の行き場はなく、介護する家族が疲弊していく中、行き場のない高齢者の居場所として浸透した。現在、福岡市内3カ所でデイサービス(通所介護)施設を運営している。自宅で暮らし続けることを目的に、高齢者本位のケアを実践している。

ここ数年、デイサービス利用者の「泊まり」が増えた。よりあいではデイサービスの延長の「ナイトケア」と位置づけ、介護保険を利用しない自主事業で提供してきた。よりあいの森施設長の村瀬孝生さん(50)は「利用に上限がある介護保険に泊まりが組み込まれると、デイサービスの利用が制限されるし、緊急時にも対応できない」と、あえて自主事業としての受け入れを続けてきた。

次第に職員の負担は重くなり、デイサービスの運営も圧迫するようになった。「単身高齢者が増え、家族や地域の介護力も低下した。核家族化と高齢化が進んだ社会が、抱えるべくして抱えたひずみが表れた」と村瀬さんは語る。今後も「泊まり」が増えるのは歴然としており、介護保険を利用できる「ついのすみか」として特養開設に至った。

ただ、通常の特養とはひと味違う。建設資金のうち約1億7千万円を賛同した市民からの寄付やカンパ、物品販売などで賄った。特養とはいえ、ケアは従来の宅老所「よりあい」と同じ。決まったプログラムはなく、入所者は自宅にいるように思い思いに過ごす。職員も入所者に寄り添ってその思いをくみ取る。

内部だけでなく、外部も「よりあい」流だ。リビングからウッドデッキでつながる先には古民家を利用した「カフェ」。地域住民が集い、多世代が集う。特養の支援者として通う人に異変があれば、職員が気に掛け、地域住民に見守りなどを働きかける。

カフェを名乗るが、実質は「地域福祉の拠点」を目指す。村瀬さんは「地域に介護を返し、将来の高齢者が老人ホームに入らないで済むための老人ホームにしたい」と強調した。

■2015.5.2  介護保険料 県平均5371円…65歳以上  山梨県
4月に改定された65歳以上の高齢者の介護保険料について、県内の全27市町村の基準月額は、県平均で5371円と改定前より461円増え、早川町を除く26市町村で保険料が引き上げられたことが、県のまとめでわかった。

介護保険料は、各市町村が要介護者の人数や介護サービス量を踏まえ、3年ごとに改定する。今回の保険料は2015〜17年度分。高齢化に伴って保険料負担は年々増しており、県平均では、制度が始まった00年度の2354円から2・28倍になった。県は25年度には、県平均が8101円になると試算している。

今回、引き上げ額が最も大きかったのは昭和町で、1185円増の5500円。次いで大月市が1075円増の4992円、小菅村が960円増の4800円と続いた。

最高額は道志村の6000円(900円増)、最低額は北杜市の4000円(167円増)だった。

県長寿社会課は「高齢化の進展で介護需要が急増しており、1人当たりの負担が大きくなっている」としている。

■2015.5.3  新潟)基準額、県平均5956円 介護保険料、26市町村で上昇
地域包括ケアの核となる介護保険が2000年に始まって15年。第6期計画(15〜17年度)で、主に各自治体ごとに定められる65歳以上が支払う保険料(第1号保険料)の基準額=表=がまとまり、厚生労働省と県が発表した。介護保険は、自治体が中心となって運営されるため、保険料には地域の実情が反映されやすい。「保険料」から各自治体の介護の現状を探る。

同計画での全国の第1号保険料(加重平均)の月額は5514円で、前期よりも542円上がった。県(同)は、全国よりも442円高い5956円。前期よりも322円上がった。ただ、前期からの伸び率では、全国が10・9%増だったのに対して、県は5・7%増で、大分県(4・6%増)に次いで全国2番目に低かった。

県内で最も高くなったのは、弥彦村(前期比450円増)と聖籠町(同720円増)の6400円。最も低かったのは、湯沢町の5千円(同200円増)だ。

一方で、前期は6680円で全国、県内ともに最高額だった関川村は、380円下げて6300円。県内で2番目に高かった上越市も167円下げて6358円になった。このほか、下がったのは糸魚川市で25円減の5835円。村上市は増減なしだった。

この4市村を除く自治体では保険料が上昇。上げ幅が大きかったのは、田上と津南の2町でいずれも1千円上がり、それぞれ5800円、6千円になった。

■利用量跳ね返る

「自分の財布以上に介護保険料のことが気になって、夜も寝られないことがあります」と話すのは、県内一となった弥彦村の住民福祉課の担当者だ。

村の人口は約8500人。高齢化率(14年6月末)で26・2%。65歳以上の高齢者約2240人のうち介護保険のサービスを使うのは約350人だ。

介護保険は各自治体ごとに一般会計とは分けられた特別会計で運営され、保険料は、各自治体ごとに介護サービスの利用量などを予測して決める。このため、高齢化率や介護事業者の数などの地域の状況に応じて保険料に差が出る。

人口規模の小さな自治体では、1人の高齢者が自宅で過ごすか、介護施設に入るかによっても介護サービスの利用量が大きく変わり、保険料に跳ね返ることになる。

村では、第1期で高齢者向けのグループホームを整備するなど先進的な取り組みを進めてきた。村内に特別養護老人ホームがあるほか、近隣の新潟、長岡、燕の各市には様々な介護事業者があるため、高齢者のサービスの利用量も多くなりがちだ。

特別会計は厳しい状況が続き、1〜4期では、市町村の財源不足を補うために県に設けられた財政安定化基金から総額4230万円を借りていた。5期までに全てを返済し、「6期の保険料の上げ幅は抑えられた」(同課担当者)。

ただ、村内は、単身高齢者の世帯割合(10年)は6・5%で、県の7・8%よりも低いものの、同居する家族は働きに出ている世帯が多い。

村では6期計画で、高齢者が介護度が高くなっても自宅で暮らし続けられるように、通所介護と訪問介護と短期間の宿泊を組み合わせた小規模多機能型居宅介護の整備を盛り込んだ。

■特養整備で上昇

同じく県内で最も保険料が高くなった聖籠町。保険料アップの理由について、町民課の担当者は「昨年度から町内の新しい特別養護老人ホームの入所が始まったため」と説明する。

これまで、町内と隣接する市などにある特養で対応していたが、待機者は100人ほどにのぼっていた。特養整備を望む町民の声は多かった。新たな特養ができたことで施設の整備は一段落した。7期以降の保険料の上昇幅は、一定程度抑えられると見込む。

厚労省九州厚生局長などを務めた青柳親房・新潟医療福祉大特任教授は「介護保険は3年の計画ごとに各自治体で保険料やサービスを見直すことができる点が利点だ。人口減少の時代を迎え、今後は過疎地を中心としたサービスの維持や介護労働者の確保などが課題になる。介護ロボットの活用なども検討していく必要がある」と話す。

■2015.5.5  <養護施設>職員の2割、児童から暴力被害 けが、心身不調
保護者からの虐待や家庭の事情を理由に18歳未満の子どもが親元を離れて暮らす児童養護施設で、職員の22.8%が子どもからの暴力が理由で心身に支障があったことが、神戸学院大学総合リハビリテーション学部の岡田強志・実習助手(36)の調査で分かった。児童養護施設の子どもから職員への暴力に着目した全国的な調査は珍しく、その傾向が明らかになるのは初めてとみられる。

調査は独立行政法人日本学術振興会の研究費助成事業で、全国の児童養護施設全600カ所(2014年8月時点)を対象に14年9〜12月に実施した。施設長▽勤続5年以上の職員▽3年未満の職員に分け、1施設当たり職員5人、計3000人を対象にアンケートをした。施設長199人(回答率33.1%)▽5年以上の職員358人(同29.8%)▽3年未満の職員321人(同26.8%)が回答した。

その結果、在職中に子どもからの暴力で負傷したり、精神的にダメージを受けたりした人が回答者878人のうち200人(22.8%)に上った。

また、施設長と5年以上の職員に、13年4月〜14年3月の1年間に子どもから暴力を受けた経験を問うたところ、17.2%が「ある」と回答。48.3%が「自分以外の職員への暴力を目撃した」と答えた。更に14年4〜7月の4カ月間では、3年未満を含む職員のうち12.3%が子どもからの暴力を経験していた。

心身への影響を聞いた記述式(複数回答)の設問には、打撲やあざ、ひっかき傷など軽傷を負ったとの回答が多かったが、中には肋骨(ろっこつ)や鼻骨の骨折など重傷のケースもあった。また、不眠やうつ、過食や拒食などの症状を訴えた人も45人いた。

09年施行の改正児童福祉法は、職員らによる子どもへの虐待防止と対応を明記している。虐待を見つけた場合は、児童相談所などへの通報が義務づけられ、都道府県が毎年公表している。厚生労働省によると、児童養護施設職員や里親による虐待が疑われる届け出件数は13年度に全国で288件で、うち87件が虐待と認められた。いずれも統計を取り始めた09年度以降最多だった。岡田実習助手は「子どもが暴力を振るう背景には虐待を受けた経験などさまざまな要因がある。そうした子どもへのケアと同時に、職員を暴力から守り、安心して働けるようにする施策も必要だ」と話している。

■2015.5.7  <障害者事業>販路拡大デザイナーや広告のプロが乗り出した
障害者が手がけたイラストや食品、雑貨などの販路拡大を支援しようと、デザイナーや広告のプロたちが、商品企画・販売を担う株式会社「ふくしごと」を福岡市博多区に設立した。九州の障害者施設で作られた製品をインターネットで紹介・販売し、障害者の賃金アップや自立につなげる。

設立メンバーで、福岡市南区の障害者福祉サービス事業所「工房まる」代表理事、樋口龍二さん(41)はこれまで、通所の障害者が描くイラストをプリントした手ぬぐいやカレンダーなどの雑貨を製作、販売しながら、障害者の賃金(工賃)の増額に努めてきた。ただ、日常の福祉業務も抱える中で、広告や営業には十分に手が回らない。「福祉スタッフはそもそも販売のプロではない。イベントで一時的に売れても、売り続けるのは難しい」と限界を感じていた。

そんな時、障害者施設の商品をPRするため開催された福岡市の事業で、1級建築士でデザイナーの橋爪大輔さん(46)と出会った。樋口さんから悩みを聞いた橋爪さんは福祉施設に出向き、丁寧にものづくりに打ち込む障害者の姿勢に共感。市内在住のウェブディレクターなど、若いデザイナーらを誘って2月に福祉施設の製品を企画・販売する株式会社を設立した。

取り扱う商品に「日々のてまひま」と共通のブランド名とロゴをつけた。第1号の商品は、福岡県糸島市の障害者福祉サービス事業所「香月(かつき)福祉会MUKA」が作るオリジナルパスタのギフトセット(税込み1380円)。鮮やかなオレンジ色の化粧箱は、福岡市内の創作グループ「アトリエ ブラヴォ」の障害者アーティストが描いたかわいらしいイラストで彩られた。同封するしおりには、パスタに練り込む野菜を収穫したり、製麺機を操作したりする障害者の写真をプリントした。「それぞれが自分の役割を果たして出来上がった商品の『てまひま』も味わってほしい」(樋口さん)との思いが込められている。

今後、障害者が描くイラストのデータを一括管理し、有料で使用できるシステム作りも進める。5月には、エフコープ生活協同組合(福岡県篠栗町)と協力し、障害者のアーティストが描いた野菜をデザインしたランチョンマットも販売する。

厚生労働省によると、一般就労が難しい障害者が働く「就労継続支援B型事業所」の平均賃金(2013年度)は月額1万4437円。国は07年度以降、賃金向上に力を入れてきたが、障害年金と合わせても経済的に自立するには厳しいのが現状だ。

樋口さんは「『ふくしごと』が販売、営業を担うことで、施設は利用者の生活ケアと物作りに集中できる。自立した暮らしを願う障害のある人たちの思いに応えたい」と話している。

■2015.5.7  累犯障害者、負の連鎖を断ち切りたい 札幌の自閉症男性 出所後の支援へ連携
自閉症の50代男性Aさんが昨年6月下旬、札幌市内で盗みの疑いで現行犯逮捕された。以前の罪で服役していた札幌刑務所を出所して1カ月のことだった。懲役2年の実刑判決を受け、「塀の中」の生活に戻ったが、8度目の今回は従来と違った。Aさんの弁護士の呼び掛けで福祉関係者が出所後の再犯防止のため、受け入れ施設を確保。社会生活を営めるようにする支援計画も整えて「Aさんの負の連鎖を断ち切りたい」と連携を深めている。
 
事件は「花フェスタ」会場の大通公園で起きた。昨年6月29日未明のことだ。起訴状などによると、Aさんは会場内のテントに入り、飲み物5本を持ち去ったところ、警備員に取り押さえられた。所持金はわずか数百円。北関東出身で、親元を離れた30代後半から万引などの軽微な罪を重ねた累犯障害者で、札幌刑務所を出たばかりだった。7回刑務所に入り、出所後に身を寄せる場もなかった。

こうした人は再犯防止のため、地域生活定着支援センターを通じ、福祉施設に受け入れてもらう支援の対象となるが、Aさんはなぜか外れた。

札幌刑務所は独自に受け入れ施設に男性を預けようとしたが、Aさんは施設に向かう途中に拒み、街に消えた。その後、街で声をかけられた不動産業者の紹介でアパートに住んだAさんだが、居づらさを理由に1週間ほどで出てしまい、ホームレス生活に。たどり着いたのが大通公園だった。

逮捕当日、札幌弁護士会の刑事弁護センター当番だった弁護士がAさんに接見。「話のやりとりに違和感があり、健常者とは少し違う」と思った弁護士は面識のあった地域生活定着支援センター元支援員の小関(こせき)あつ子さんに相談。小関さんが自閉症を疑い、自閉症の人の生活を支える「ぼぬーる」(札幌市北区)の中野喜恵(なかのきえ)副所長に協力を仰いだ。さらにホームレスら生活困窮者を支える「なんもさサポート」(札幌市北区)の高野一明(たかのかずあき)さんにも関わってもらうことにした。

「こだわりが強く、欲しいと思った物を盗ってしまう。善悪がつかず、失敗から学べず、繰り返してしまう背景に自閉症がある」。こうした特徴についての中野さんの指摘を踏まえ、高野さんがAさんの出所後に施設で預かり、衣食住を用意。中野さんがそこに定期的に通い、日常生活のルールを教え、再犯防止につなげるという支援計画を裁判所に提出。中野、高野さんの2人は裁判官らに再犯防止のために福祉的支援が必要と訴えた。

「被告人を懲役2年に処する」

昨年9月22日、札幌地裁。裁判官が判決文を読み上げると、Aさんは淡々と聞き入った。罪状は窃盗罪より刑が重い常習累犯窃盗罪。過去10年間に3回以上窃盗罪で懲役刑を受けた人が罪を新たに犯すと、3年以上の有期懲役に処せられることになっており、Aさんは対象だった。

しかし、懲役3年6カ月の求刑に対し同2年の判決。Aさんの弁護士は「事件の背景に自閉症という障害があり、それに応じた支援を用意しているとの訴えが、判決文に反映されたことが評価できる」と振り返った。

小関さんは「出所前に支える態勢ができたことは前進だが、戻ってきたら、トラブルは絶えないかもしれない。それでも刑務所に戻るような事態を何とか避ける支援が必要」と話す。

思いはそれぞれだが、1年半後に社会に舞い戻ってくるAさんをどう支えるのか。関係者の力が試される。

■2015.5.8  街の自転車屋さん、車いすも整備 「安全整備士」資格者、ただいま増加中
街の自転車屋さんが車いすを整備するケースが増えている。購入者の「近所で修理を頼める場所がない」という悩みに応えるためだ。業界団体によると、専門資格の「車いす安全整備士」の取得者も増加中という。車いす整備も手がける自転車販売店主は「『修理のために製造業者へ送らなくても済んだ』などと喜んでもらえ、こちらも励みになる」と話している。

キュッ、キュッ、キュッ−。店頭販売している自転車を背に、慣れた手つきで車いすをひっくり返し、不具合がないかどうか目をこらす。自転車販売店「石本自転車」(兵庫県尼崎市)の経営者、石本雅映(まさてる)さん(57)は昨年9月、福祉用具の安全性を評価する一般社団法人「日本福祉用具評価センター」(JASPEC、神戸市)が認定する車いす安全整備士の資格を取得した。

公表されている取得者の中で、自転車店の経営者としては関西初。「車いすのタイヤに空気を入れに来たお客さんが、保守点検を頼める場所がないと悩んでいたので、何かできないかと思った」と話す。今では近所の福祉施設に出張修理に出向くこともあるという。

JASPECによると、車いすは、介護保険に基づいてレンタルで利用している人は貸出業者が保守点検を行う。だが、身体障害者らが市町村の助成を受けて購入する場合は自ら整備する必要があり、身近な自転車店に依頼するケースが多い。

だが、車輪が座席の前後に並ぶ自転車と、座席の左右に並ぶ車いすでは構造上の特性が異なる。さらに、車いすは安全や衛生面で留意すべき点も多い。自転車店の自転車整備経験は分解や組み立て作業に役立つが、車いすの整備には専門的な知識や技術を習得する必要があるという。

現在の認定登録者は約800人。車いすメーカーの営業担当者や福祉施設の職員らが大半を占め、自転車店経営者らで登録名簿を公開しているのは全国で7人にとどまるが、有資格者は着実に増えているという。

自転車店にとっては、福祉への貢献とともに、新たなニーズを獲得できる面もある。石本さんは「量販店ではできない、かゆいところに手が届く、街の自転車屋さんならではの取り組みとして続けていきたい」と話す。

車いすが故障すれば利用者は即座に生活に困ることになるだけに、JASPECの西山輝之管理部長(44)は「暮らしに身近な街の自転車屋さんの手で保守点検が広く適切に行われるようになるのは良いことだ」と歓迎している。

■2015.5.8  地域公益活動の義務化、「社福の9割反対」−NPO法人が調査
国会で審議中の社会福祉法改正案に盛り込まれた「地域公益活動の義務化」について、9割余りの社会福祉法人が反対しているとする調査結果を、NPO法人日本障害者センターが8日までにまとめた。また、社会福祉事業に株式会社などが参入したことで、事業全体が質的に低下したと考える法人は7割近くに達することも分かった。

国会で審議中の社会福祉法の改正案には、▽任意設置で諮問機関となっている評議員会を、必置の議決機関とする▽事業継続に必要最低限の財産を「控除対象財産」、それ以外は「再投下財産」と位置付け、「再投下財産」はすべて社会福祉事業や公益事業に活用する▽運営の透明性を確保するため、定款や貸借対照表、収支計算書、役員報酬基準の公表を法律上で位置付ける▽役員報酬は定款の定めや評議員会の決議によって決定する-などの内容が盛り込まれている。

こうした改正案の内容が、社会保障審議会福祉部会での議論などを通じて明らかになったことを受け、日本障害者センターでは、昨年12月から今年2月にかけて全国の社会福祉法人に対し、郵送によるアンケート調査を実施。2156件の有効回答を得た。

すべての社会福祉法人に対し、地域公益活動への取り組みが義務化される見通しである点についての質問では、「社会福祉法人の性格上、地域貢献活動はすでに実施しており、あらたな事業を義務付けるのはおかしい」とする回答が38%で最も多く、次いで「新たな地域貢献事業は実施すべきだが、法制化などで強制すべきではない」(31%)、「人的にも財産的にも地域公益活動を行う余裕はない」(24%)などと続き、地域公益活動の義務化に反対する声が93%に達した。一方、義務化に賛成する意見は、全体の1%しかなかった。

■社会福祉事業の市場化「質的低下招いている」が7割

社会福祉事業の市場化による影響について尋ねた質問では、「量的拡大はあるが利用者処遇や職員待遇など質的な面で低下している」と答えた法人が68%を占めた。一方、「営利事業の参入で社会福祉事業は発展している」と答えた法人は5%にとどまった。

また、各法人に「再投下財産」に相当する財産があった場合の活用方法については、「社会福祉事業の質・量の拡充、職員の処遇改善に使うべき」と答えた事業所が79%を占めた。一方、「社会貢献に活用すべき」という回答は5%だった。

8日に記者会見した日本障害者センターの関係者は、社会福祉法人には多額の内部留保があるという前提に立ち、改革の議論が進められた点を問題視。また、現状でも人手が不足しているのに、社会福祉法の改正によって地域公益事業の義務化などが実現すれば、さらに社会福祉事業の質が低下し、支援が必要な人の生活もより困窮する恐れがあると指摘した。

■2015.5.9  高知市の介護福祉士が考案の簡易トイレ 遠出、災害時に重宝
高齢者の排せつ不安軽減
パッド型の紙おむつとごみ袋で作ることができる簡易トイレを考案し、普及に励んでいる女性がいる。介護福祉士の藤原真知子さん(65)=高知市大津甲。遠出をした時や災害時に、高齢者らの心理的負担を減らそうと考えた。「排せつとは生きること」を信念に、「どこででも無料講習会を開く。悩みを気軽に話せる場にしてほしい」と呼び掛けている。

藤原さんが考案したのは、底と角をセロハンテープで補強したごみ袋に、パッド型の紙おむつを固定して和式便器のような形にして使う簡易トイレ。使用後は汚物に触らずに捨てることができる。また、使わない時は手のひらほどの大きさで、携帯時もかさばらない。

介護をしている家庭ならどこにでもある材料でできる▽「折る」と「テープで貼る」という作業の繰り返しで、お年寄りや子どもでも短時間で作ることができる―のが長所だ。

藤原さんは、40歳ごろから高齢者介護の仕事を始めた。これまでに、福祉用具販売やホームヘルパー事業所運営、ホームヘルパー研修の講師などを経験し、よさこい鳴子踊りのチームを立ち上げ福祉施設訪問もした。

在宅と施設、両方の介護現場に関わって感じたのは「気持ち良く排せつできることの大切さ」。元気なおじいちゃんが「トイレが近い。もらしたらいかんき」と遠出を避けたり、足腰が弱ったおばあちゃんが「トイレに行くのを手伝ってもらうのが申し訳ない」と水分摂取を控えたりしていたという。

防災講習会で聞いた東日本大震災など災害時のトイレ問題の深刻さも、藤原さんを動かした。避難所に行っても、災害用トイレが屋外にあったり、水道が止まって汚物が流れなくなったりして、普段は当たり前の「だれでも、いつでも排せつできる生活」が、被災地ではすぐに崩れてしまっていた。

藤原さんはこうした状況を聞き、古里の吾川郡仁淀川町を思い出したという。高知県の中山間地域は台風が近づくと避難勧告が出る地域が多い。震災だけでなく、日常の備えとして排せつの問題を考えなければとの思いが募った。

「トイレのために楽しみを我慢したり、体調を崩したりする人がいた。排せつはだれだって人に見せたくない。心理的負担を少しでも軽くしたかった」と藤原さんは言う。既に市販品はたくさん出回っていたが、「自分たちで作れば安いし、作りながら自然に排せつの悩みを話せる場にもなるのでは」と考え、市販品も参考にして簡易トイレを考案した。

今年3月末に一線を退いてから、本格的に普及活動をスタート。これまでに高知市内などで数回、講習会を開いた。参加したお年寄りらには、「人の車で出掛ける時は余計心配でね。これ持っちょったらえいね」と好評だった。さらに、「もう一回、そこやって見せて」などと参加者同士で会話も弾み、みんなの表情も明るくなったという。

「作り方を教え合うことで、人の役に立っていると思えるのでは」と藤原さん。退職後にできた自由な時間は、「手を動かしながら、楽しくトイレを語る講習会」に費やすつもりだ。

 連絡先は藤原さん(090・8697・1900)。


■作り方■
材料=パッド型の紙おむつ、ごみ袋(45リットル)、セロハンテープ(写真では分かりやすくするために黒いビニールテープを使用)

(1)ごみ袋の底を2センチほど折り、端から端までセロハンテープで留める

(2)ごみ袋の底の一方の角を三角形に折り返し、テープを貼って固定する。もう一方の角は裏側に三角形に折り返し、同様にテープで固定する。防水面(外面)を上にして広げた紙おむつの中心線に、ごみ袋の底部((1)で補強した部分)を合わせテープで留める

(3)紙おむつとごみ袋を貼り付けた線を軸にして、紙おむつを外側に折る(紙おむつの肌に当たる部分が見えるようにする)。ごみ袋の長い辺に沿って三つ折りにし、コンパクトに折り畳んでいく

(4)ごみ袋の口をテープで留めて、できあがり。使う時はごみ袋を広げて口を外側に折り返し、底に紙おむつがくるようにする

「簡単にできる割には丈夫。男性なら立てて使うこともできる」と話す藤原真知子さん(高知市神田のホームヘルパー事業所)

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■2015.5.9  愛媛・道後温泉本館などで浴衣再利用のバッグ販売
松山市社会福祉協議会は道後温泉本館(松山市)の古くなった貸し浴衣をリメイクした「湯玉トートバッグ」を開発、同館などで販売している。昨秋作ったクッションに続く第2弾で、色が選べるオーダーメードも取り入れている。

貸し浴衣はもともと、雑巾(ぞうきん)などでの再利用しかしていなかったが、同協議会は昨年秋に、市内の女性クリエイター集団「和音ファクトリー」の協力で「おじゃみ(お手玉)クッション」を開発。「松山トリコ(TORICOT)」のブランド名で販売し、土産用などとして観光客らの人気を集めている。

トートバッグはこれに続く商品。クッションと同様、障害者就労支援事業所「なないろ工房」が、市から提供された浴衣の古着を染め、高齢者グループ「和洋裁リメイク工房」が縫製を担当した。

バッグはL(縦、横各約40センチ)とM(縦約30センチ、横約40センチ)の2サイズで、浴衣染め地の色は、Lがこげ茶、紺、黄緑の3色、Mが黄緑、赤、グレーの3色。それぞれ、湯玉型でブランドロゴを入れた木製のタグを付けている。

また、取っ手、浴衣生地、帆布は、それぞれ用意した6色から選んで組み合わせるオーダーメードも可能(後日発送、送料が必要)。

価格はいずれも5千円。本館のほか、同協議会でも販売している。

■2015.5.10  認知症社会  「ゴミ屋敷」に老夫婦、年金使い込む息子
「お願いです。病院に連れていって」

昨年の冬、岡山県内の自宅で自治体の職員に保護されたとき、70代の妻はそう叫んだ。そばには80代の夫。ともに、認知症を患っていた。
自宅は「ゴミ屋敷」になっていた。捨てられずにたまったゴミの袋が山積みになり、古くなった弁当や汚れたオムツが床を覆っていた。同居していた40代の息子は外出していた。
夫婦は二十数年前、夫の定年を機に故郷の岡山県に移り住んだ。年金は夫婦で月約30万円あり、安心した老後を送れるはずだった。

だが、2人の暮らしは、認知症によって大きく変転した。
移り住んで10年ほどすぎた頃、夫は脳梗塞(こうそく)を起こし、車いすでの生活になった。妻の話を忘れる。過去の記憶と現在を混同する。脳梗塞の後遺症で認知症も進んだ。
「老老介護」は重労働だ。妻はデイサービスも利用しながら夫の生活を支えた。介護疲れから酒を飲むようになり、やがて認知症になった。家が荒れ始めたのは、数年前からだ。

そんなときに、県外にいた息子との同居が始まった。

それからの夫婦の暮らしぶりについて、福祉関係者の記録にはこう残っている。「何カ月も入浴できず、適切な食事もとれず、ネグレクト(介護放棄)状態であった」

息子は独身で無職。借金もあった。夫婦の年金が振り込まれると、決まって20万円が消えていた。夫名義のカードの借り入れも約300万円にのぼった。
近所などからの通報で、自治体もこの家の異変に気づいた。昨冬、自治体職員が息子の留守を見計らって家に入り、夫婦の保護に踏み切った。
夫婦はいま、自治体などの支援を受け、同じ老人ホームに入っている。息子は同じ家に住み続けている。

今月、記者が夫婦を訪ねた。

「お父さん、昔は気難しくてね」「息子はしっかり者だったの」。苦しんだころの記憶は抜け落ち、妻が語ってくれたのは楽しかった時代の思い出ばかりだ。部屋には、夫がリハビリで書いた手紙が貼ってあった。震える字で、こう書かれていた。



■娘婿ら「搾取」、預金残高908円

「年金は全部オロスナ」

福岡県に住む認知症の女性(90)の2012年ごろの預金通帳には、こんな走り書きがある。

症状が進み、介護施設で暮らす今、当時のことはほとんど覚えていない。だが、女性に代わって財産を管理したり、介護の契約をしたりする「成年後見人」に会うと、「お金はたまっていますか」と何度も尋ねる。「搾取され続けたことで、お金への執着が強くなってしまった」と、後見人はみる。

女性がアパートでひとり暮らしをしていたころ、偶数月の15日になると、きまって娘婿と孫2人が顔を出した。その日振り込まれる女性の年金をもらうために。年金額は、夫の遺族年金を含めて月30万円近く。娘婿らは女性と一緒に郵便局に行ってお金をおろし、大半を持っていった。

女性は家賃2万〜3万円のアパートに住み、弁当が1日1回宅配されていた。
女性の窮状を知った自治体が12年に後見人をつけたとき、預金の残額は908円だった。
きっかけは、十数年前の娘婿の事業の失敗だった。女性は保証人になっていたため、土地と家を失った。けがもして収入がなくなった娘婿は、女性の年金をあてにして生活するようになった。
女性が介護施設に入ると、娘や娘婿からの連絡は途絶えた。「搾取は許されないが、そこまで追い込まれた家族への支援も必要だ」と女性を支えた自治体の職員は話す。

「母と父(の介護)のせいで仕事につけない。自分が自由にお金を使うのは当たり前だ」

東京都内の80代夫妻の後見人が12年、両親の年金を使っていた当時60代の長男(昨年病死)に理由を尋ねると、こんな答えが返ってきた。ハローワークに通ったが、仕事が見つからなかったという。
夫婦は飲食店を営み、夫は長男を厳しくしつけてきた。その夫にがんが見つかり、その後、夫婦で認知症を発症したことで、親子の力関係は逆転した。
財布を握るようになった長男の金遣いは荒くなった。数千万円あったとみられる夫婦の預金は、数年で700万円に減っていた。

■行政支援で親子関係改善も

自治体や後見人の支援で親子関係が改善したケースもある。

愛知県に住む認知症の女性(90)は09年まで、月10万円の年金の大半を、同居していた50代の長男に使われていた。家に食べ物はカップ麺ぐらいしかなく、女性は栄養失調に近かった。

女性は介護の必要度が最も高い「要介護5」だったが、介護保険で最大限受けられるサービスの1割程度しか利用していなかった。
女性は早くに夫を亡くし、10年ほど前に離婚した長男と孫2人と暮らしてきた。長男は間もなく事業に失敗し、うつ病に。女性の年金に頼る生活を始めた。

09年、自治体の判断で女性に後見人をつけ、特別養護老人ホームに入所させた。後見人らは当初、長男に居場所を教えなかった。だが「親子の関係を切るべきではない」と、後見人らが立ち会って再会させた。

1年半ぶりに役所で母と再会した長男はお守りを手渡し、「元気そうでよかった」と声をかけた。母親は泣いた。
13年から、親子はホームで自由に面会できるようになった。収入が少ない長男に、女性の年金から月3万円を渡すようにもした。孫の誕生日のプレゼント代なども贈っているという。


■求められる「生活全体立て直す」支援

年金や財産をめぐるトラブルで目立つのは、認知症でお金の管理ができなくなった親の年金などを、職業や収入が不安定な子が使い込むようなケースだ。

厚生労働省の調査(13年)では、「65歳以上の高齢者と独身の子のみ」で暮らす世帯は444万世帯と、この15年で2倍超に増えた。高齢者への虐待の実態を調べた厚労省の別の調査では、13年度に親族らから虐待を受けた高齢者は1万6140人で、その2割にあたる3486人が、年金搾取などの「経済的虐待」を受けていた。

山田祐子・日本大学文理学部教授(日本高齢者虐待防止学会理事)は「仕事に就けずに困窮するなど、ストレスを抱えながら認知症の親と同居する子が増えていけば、虐待やお金のトラブルも増えていく。そうした『子』の介護負担を軽減させるだけでなく、生活全体を立て直すための支援が重要だ」と指摘する。

■2015.5.10  (認知症社会)認知症と生きていく
私たちは、認知症と無関係ではいられない社会を生きている。65歳以上の認知症の人は2012年時点で462万人。高齢者の7人に1人だ。10年後には700万人で、5人に1人になる。医療・介護の問題に取り組むのはもちろん、認知症の人を社会的にどう受け入れていくかが今後の大きな課題となる。今年は初の国家戦略もできた。自分が認知症になる可能性もある。現状や制度を知り、「認知症社会」のあり方を考えたい。


■どんな症状?

認知症は脳の細胞が壊れたり働きが悪くなったりすることで障害が起こり、認知機能が低下して日常生活や社会生活に支障をきたすようになった状態をいう。
最も多い「アルツハイマー型」は認知症の人の約半数を占める。発症から5〜10年以上かけて進行する。このほか「レビー小体型(しょうたいがた)」「脳血管性」「前頭側頭型」などがある。

症状の出方は人によって様々だ。

脳の細胞が壊れることで起こる症状としては、アルツハイマー型では記憶障害が多い。例えば、朝食のおかずを思い出せないのは加齢によるもの忘れだが、認知症の場合は食べたこと自体を忘れる。ほかに、時間や場所がわからなくなる見当識障害などがある。これらは「中核症状」と呼ばれる。

これに、周りの人との関係や環境の変化などがからんで出るのが「周辺症状」と呼ばれるものだ。主に、暴力や徘徊(はいかい)といった行動症状、意欲の喪失や物を盗まれたという妄想などの心理症状がある。

若年認知症は65歳未満で発症した場合をいう。また、認知機能の低下はあっても日常生活に支障はなく認知症と診断できない状態は「軽度認知障害」(MCI)と呼ばれる。MCIの人すべてが認知症になるわけではない。

65歳以上の認知症の人が2025年に約700万人になるという推計は、厚生労働省が、人口に占める認知症の人の割合(有病率)の研究データなどをもとに割り出した。各年齢層の有病率が12年以降は一定と仮定した場合は675万人、上昇すると仮定した場合は730万人で、その中間の値にあたる。


■10年後、「5人に1人」の時代

認知症は「呆(ぼ)け」「痴呆(ちほう)」と呼ばれていた。有吉佐和子が義父の介護をする女性とその家族を描いた「恍惚(こうこつ)の人」が出版され、社会の関心を集めたのは1972年だった。

2000年に介護保険制度がスタート。支える仕組みは大きく変わった。公的な介護サービスが整い始め、認知症の人のグループホームも増えた。お金の管理などで、判断能力の不十分さを手助けする成年後見制度も始まった。

04年には、厚労省が呼び方を「認知症」に変えた。「痴呆だと、何もわからず何もできないという誤解を招きやすい」というのが理由だ。
今年1月には、認知症の人への支援を強化する初の国家戦略「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」ができた。25年に高齢者の5人に1人が認知症になるとの推計を提示。基本的理念に「認知症の人の意思が尊重され、住み慣れた地域のよい環境で自分らしく暮らし続けることができる社会の実現」を掲げた。安倍首相は「社会全体で取り組んでいかなければならない」と話した。

認知症の人を支える制度や偏見を除く取り組みは徐々に進んできた。地域で徘徊の人を見守るネットワーク作りも各地に広がっている。一方で、支援が十分に行き届かず苦しんでいる人たちは多い。
認知症の人を受け入れる精神科病院で、長期入院を余儀なくされている人もいる。特別養護老人ホームに入りたい人が入れない状況も続いている。施設や病院での不必要な拘束、虐待が明らかになることも。認知症の人が行方不明になって亡くなる例や、悪徳商法の被害者になったり財産トラブルに巻き込まれたりする例も後を絶たない。


■変わらない家族の介護負担

介護保険サービスを受けている認知症高齢者のほぼ半数は自宅で暮らしている。公的な介護サービスが増えても、介護する家族に大きな負担がかかっていることに変わりはない。「今日が終わればそれでいい。そんな思いで毎日を過ごしています」。働きながら、認知症の母親を10年以上、自宅でみている東京都の女性(42)はこう話す。
公益社団法人「認知症の人と家族の会」が12年にまとめた調査の報告書からも、家族の大変さがうかがえる。

会員ら557人がアンケートに回答。「気持ちがつらい、苦しい、悲しいと感じるのはどんなことか」という質問への自由記述では「同じ質問・会話を何回もするが、その都度答えないと機嫌が悪くなる」「排泄(はいせつ)の世話、夜中のおむつ交換」「優しくしたいのにできない時、自分に嫌悪感を感じる」などがあった。

時にはそれが家族を追い詰める。家族や同居人による高齢者虐待は13年度の1年間で約1万6千件報告されている。虐待された人のうち、少なくとも6割に認知症があった。
介護疲れによる殺人や心中もなくならない。同会は09年に「死なないで! 殺さないで!」という題のリーフレットを作った。「死んでしまいたい」「殺してしまいたい」と思ったが、とどまったことのある会員の声を載せ、「生きよう」と呼びかけている。

介護負担の重さは、少子高齢化で家族の形が変わってきたことも影響している。13年の国民生活基礎調査で、高齢者がいる世帯のうち、夫婦のみの世帯は3割、親と未婚の子のみの世帯も2割を占める。1989年と比べると、8〜10ポイント増えた。「老老介護」は多く、認知症の人が認知症の人をみる「認認介護」も少なくはない。
今後、より深刻になるのは、一人暮らしの認知症の人の増加だ。高齢者のうち単独世帯は2割強。地域での支援の充実が欠かせない。


■自ら語り始めた当事者たち

認知症を発症した本人が思いを語り始めている。

昨年10月、「日本認知症ワーキンググループ」ができた。40〜80代の認知症の11人で発足。認知症の本人がメンバーで、認知症でないパートナーが協力して運営する。
「認知症の理解は進んでいるが、地域に戻ると『何もわからない人、できない人』と見られる。自分たちの声で変えたい」。3人いる共同代表の一人、神奈川県の中村成信さん(65)は設立会見でこう語った。認知症の人の意見を集めて提案をまとめたり、国や自治体の施策づくりに参画したりすることをめざす。
国内で本人たちが中心メンバーとなって団体をつくり、会見や政策提言を本格的にするのは初めてとみられている(問い合わせはメールで事務局へ。mizutani@toujisya.3tsu.jp)。

認知症の本人が公の場で語るようになったのは、日本では04年ごろからだ。豪州の元官僚クリスティーン・ブライデンさんの影響が大きい。彼女は04年に京都で開かれた国際アルツハイマー病協会の国際会議に参加し「認知症は心が空っぽだという偏見によって引き起こされる社会の病気でもある。偏見を取り除くたたかいで、みなさんが同志になってください」と訴えた。

当時73歳の茨城県の男性も聴衆を前に、自身の症状や不安な思いを話した。日本の認知症の人がこうした国際会議で語るのは初めてだった。

06年には京都で本人たちが集まる会議が開かれ、会見で「少しの支えがあれば、できることがたくさんあります」などの17項目のアピールを発表。今年1月の国家戦略にも、認知症の人の視点の重視などが盛り込まれた。
認知症の人がどう感じ、何に困っているのかがわかれば、適切に接し、必要な支援をすることができる。また、自身や周りの人が認知症になったときに何をすればいいのか、どう受け止めればいいのかを考える際の助けになる。


■事件事故、責任問われる訴訟も

認知症の人が増えるに従い、加害者側として本人や家族が責任を問われるケースが出てきた。
07年に愛知県に住む認知症の男性(当時91)が駅構内で列車にはねられ亡くなった事故では、JR東海が遺族に対し、損害賠償を求めた。名古屋地裁は13年、遺族に約720万円を支払うよう命じる判決を出した。14年の控訴審判決も妻の監督責任を認め、約360万円の支払いを命じた。遺族側とJR側の双方が上告しており、最高裁の判断が注目される。
「閉じ込めておけばいいのか」「完璧に見守るのは不可能だ」。同じように介護する家族や事業者からは驚きや不安の声があがっている。

宮崎県で男児3人が軽トラックにはねられ、1人が重体となった事故では、自動車運転過失傷害などの罪に問われた70代男性に懲役1年2カ月の実刑判決が出た。

判決は男性に認知症の症状を認めた上で、事故を「回避することが困難だったとは言い難い」と判断した。その後被害者の家族が男性と家族に損害賠償を求め、宮崎地裁に提訴。現在も係争中だ。
認知機能の低下が原因とみられる交通事故や高速道路の逆走が問題になり、今年3月には改正道路交通法案が閣議決定された。75歳以上で運転免許を持っている人の記憶力や判断力を調べる機会を増やす内容だ。


■早期に正確な診断を

認知症の治療では、まず、本当に認知症かどうかを正しく診断することが欠かせない。治療と介護の方針に影響してくるからだ。
アルツハイマー型認知症と違って、レビー小体型や前頭側頭型は「もの忘れ」から始まらないことも多く、特に初期の段階は診断が難しい。

東京医科歯科大の朝田隆特任教授は「初老期のうつ病との見極めが大切だ」と語る。筑波大の研究グループが、同大精神科の入院患者でレビー小体型と確定診断された50歳以上の55人分のカルテから、かかりつけ医らの初期診断を調べると、46%が「うつ病」としていた。

診断後も状態の変化に注意し、別タイプの認知症や別の病気とわかれば、すぐに方針を改めることが求められる。

現時点では、認知症を根治できる薬はない。進行を遅らせることが期待される薬は、アルツハイマー型で4種類、レビー小体型で1種類ある。朝田さんらによると、薬を飲み、適切な介護や運動、作画、クイズなどを組み合わせると、薬だけよりも進行を遅らせる可能性があるという。

生活習慣病の予防や治療をすることは、認知症にも効果があるといわれている。糖尿病は認知症になるリスクを高める。認知症で糖尿病も患っている場合は、血糖値をきちんと管理すると、記憶などの認知機能が改善することもわかってきた。

ただ、早期に診断を受けることで、患者や家族が絶望してしまうことも多い。熊本大の池田学教授は「認知症の多くはゆっくり進む。できることや生活しやすくする工夫を説明し、『一緒に考えましょう』と語りかける。少しでも前向きに暮らしていく気持ちになれるようにすることが必要だ」と指摘する。

■2015.5.10  (認知症社会)年金の日、あの子が来る 娘婿ら、大半持って行った
◇お金のトラブル

「年金は全部オロスナ」

福岡県に住む認知症の女性(90)の2012年ごろの預金通帳には、こんな走り書きがある。

症状が進み、介護施設で暮らす今、当時のことはほとんど覚えていない。だが、女性に代わって財産を管理したり、介護の契約をしたりする「成年後見人」に会うと、「お金はたまっていますか」と何度も尋ねる。「搾取され続けたことで、お金への執着が強くなってしまった」と、後見人はみる。

女性がアパートでひとり暮らしをしていたころ、偶数月の15日になると、きまって娘婿と孫2人が顔を出した。その日振り込まれる女性の年金をもらうために。年金額は、夫の遺族年金を含めて月30万円近く。娘婿らは女性と一緒に郵便局に行ってお金をおろし、大半を持っていった。

女性は家賃2万〜3万円のアパートに住み、弁当が1日1回宅配されていた。
女性の窮状を知った自治体が12年に後見人をつけたとき、預金の残額は908円だった。

きっかけは、十数年前の娘婿の事業の失敗だった。女性は保証人になっていたため、土地と家を失った。けがもして収入がなくなった娘婿は、女性の年金をあてにして生活するようになった。女性が介護施設に入ると、娘や娘婿からの連絡は途絶えた。「搾取は許されないが、そこまで追い込まれた家族への支援も必要だ」と女性を支えた自治体の職員は話す。

「母と父(の介護)のせいで仕事につけない。自分が自由にお金を使うのは当たり前だ」
東京都内の80代夫妻の後見人が12年、両親の年金を使っていた当時60代の長男(昨年病死)に理由を尋ねると、こんな答えが返ってきた。ハローワークに通ったが、仕事が見つからなかったという。

夫婦は飲食店を営み、夫は長男を厳しくしつけてきた。その夫にがんが見つかり、その後、夫婦で認知症を発症したことで、親子の力関係は逆転した。
財布を握るようになった長男の金遣いは荒くなった。数千万円あったとみられる夫婦の預金は、数年で700万円に減っていた。


■行政支援で親子復縁も

自治体や後見人の支援で親子関係が改善したケースもある。

愛知県に住む認知症の女性(90)は09年まで、月10万円の年金の大半を、同居していた50代の長男に使われていた。家に食べ物はカップ麺ぐらいしかなく、女性は栄養失調に近かった。

女性は介護の必要度が最も高い「要介護5」だったが、介護保険で最大限受けられるサービスの1割程度しか利用していなかった。
女性は早くに夫を亡くし、10年ほど前に離婚した長男と孫2人と暮らしてきた。長男は間もなく事業に失敗し、うつ病に。女性の年金に頼る生活を始めた。

09年、自治体の判断で女性に後見人をつけ、特別養護老人ホームに入所させた。後見人らは当初、長男に居場所を教えなかった。だが「親子の関係を切るべきではない」と、後見人らが立ち会って再会させた。
1年半ぶりに役所で母と再会した長男はお守りを手渡し、「元気そうでよかった」と声をかけた。母親は泣いた。
13年から、親子はホームで自由に面会できるようになった。収入が少ない長男に、女性の年金から月3万円を渡すようにもした。孫の誕生日のプレゼント代なども贈っているという。


■「生活全体、立て直す支援を」

年金や財産をめぐるトラブルで目立つのは、認知症でお金の管理ができなくなった親の年金などを、職業や収入が不安定な子が使い込むようなケースだ。

厚生労働省の調査(13年)では、「65歳以上の高齢者と独身の子のみ」で暮らす世帯は444万世帯と、この15年で2倍超に増えた。高齢者への虐待の実態を調べた厚労省の別の調査では、13年度に親族らから虐待を受けた高齢者は1万6140人で、その2割にあたる3486人が、年金搾取などの「経済的虐待」を受けていた。

山田祐子・日本大学文理学部教授(日本高齢者虐待防止学会理事)は「仕事に就けずに困窮するなど、ストレスを抱えながら認知症の親と同居する子が増えていけば、虐待やお金のトラブルも増えていく。そうした『子』の介護負担を軽減させるだけでなく、生活全体を立て直すための支援が重要だ」と指摘する。



■生き抜く手がかり考えたい

記憶力や判断力が低下することで、暮らしの土台が揺らぐ。認知症の人は65歳以上の7人に1人、約462万人とされる。10年後には5人に1人、約700万人になるという。私たちはそんな「認知症社会」を生きている。

周りを見渡せば、認知症をとりまく問題でいっぱいだ。高齢の母を、高齢の息子が介護する家がある。認知症の夫を、認知症の妻がみる家もある。親の介護のために仕事をやめた人がいる。気になるのは、ひとり暮らしの認知症の人が増えていることだ。

介護疲れによる虐待などのニュースが珍しくなくなり、徘徊(はいかい)したまま行方不明になった人の届け出は年間1万人を超すという。交通事故などの加害者として、本人や家族が責任を問われるケースもある。こうした問題に、私たちの社会は対応できていない。

一方で、「何もわからなくなる」という偏見を越えて、主に若年認知症の人たちが自らの症状や思いを語り始めている。彼らの言葉は、当事者の声を政策に反映させるヒントになる。
やがて誰もが認知症と無関係ではいられなくなる。認知症社会を生きていく手がかりを、読者のみなさんとともに考えていきたい。

■2015.5.10  ハンセン病療養所:来月、ボランティア養成講座 「ゆいの会」受講者を募集 /岡山
瀬戸内市邑久町虫明の国立ハンセン病療養所「長島愛生園」「邑久光明園」で暮らす回復者を支援するボランティアの養成講座が6月、光明園などで開かれる。主催のボランティア団体「ゆいの会」(事務局・北区)は、両園などがハンセン病を巡る歴史を後世に伝える世界遺産登録を目指す活動も進めており、講座でも登録の意義を考えたり、協力を呼びかける予定だ。


講座は2003年から開催。受講者のうち計約200人が、ボランティア活動メンバーとして登録している。

両園の回復者計約360人の平均年齢は84歳を超え、高齢化が進む。同会は、希望者を訪ねて話をしたり、買い物の付き添いなどをするほか、患者への人権侵害の歴史などを伝える愛生園の展示施設「歴史館」での解説や、園で書かれた文芸作品の調査・研究もする。

講座は6月7、14日(瀬戸内市邑久町山田庄の市総合福祉センター)、同20、27日(邑久光明園)の計4回。ハンセン病の歴史や世界遺産登録構想などの講義のほか、患者が強制隔離された時代の園内施設や監房跡などを巡るフィールドワークもある。定員30人、参加費1000円(学生500円)。応募は5月29日まで。問い合わせは、ゆいの会事務局の山本勝敏法律事務所(086・234・1711)

■2015.5.10  認知症社会  「年寄りだまして大もうけ」群がる業者
判断力が不十分なまま、業者から高額な商品を買わされたり、お金をだまし取られたりして財産を失ってしまう認知症のお年寄りが後を絶たない。

■営業電話「主人よりよっぽどやさしい」

「認知症」「ボケ」「頭ヤバ」――。高血圧や糖尿病にも効果があるなどとうたい、高齢者らに電話で勧誘していた健康食品販売会社(東京)の顧客名簿には、住所、氏名、電話番号の下に、こうした走り書きが残っている。「認知?」とメモされた顧客には、3カ月間に4人の営業担当者が9回、電話をした記録もある。

消費者庁は4月、この会社に対し、うその説明をしたほか、「認知症の消費者の判断力の不足に乗じ、売買契約をさせた」などとして、3カ月の一部業務停止を命令した。認知症の人に分割払いで約8万円の健康食品を売るなどしていた。顧客は31都道府県に広がり、5割以上は80歳以上のお年寄りだったという。

「団塊の世代が定年を迎える。年寄りをだまして大もうけができる」。同社の元従業員は、幹部が言い放った言葉が忘れられない。

元従業員らによると、営業方法はこうだ。過去に他社で健康食品を購入した高齢者ら23万人以上の名簿をもとに、パートが電話をかける。割安のサンプルを買った顧客には、社員が電話で販売攻勢。「以前に電話したこと自体を忘れているなど、10分話せば認知症かどうか分かった」という。

営業担当の社員は約10人いて、高齢の女性2人が電話口で友達のように「もう少し飲む回数を増やしたら」と勧誘し、契約を重ねるのを見聞きした。一度に数十万円分を販売することもあったという。

元従業員はいま、自らが加担してしまったことを後悔している。

消費者庁によると、商品の成分はコラーゲンやビタミンなどで、メーカーからの卸売価格は1箱120粒で70円。これを別の会社を通して1万8千円で仕入れ、顧客には8万8千円で売っていた。だが、同庁の調査にこう語る高齢者もいたという。「頻繁に電話をくれて、主人よりよっぽどやさしい」

同庁の処分について販売会社は今月8日、取材に「判断力不足に乗じた契約は断じてない。認知症の疑いのある顧客には販売せず、リストから抹消する作業をしてきた。後にそのような事実が発覚した際も真摯(しんし)に対応している」などと文書で回答した。

■90代女性、被害ほぼ1億円

金融商品などを次々に売りつけられ、財産を失った認知症の高齢者もいる。

2012年、東京都心に住む認知症の90代女性に代わって財産を管理する「成年後見人」に就いた司法書士は、女性の部屋をみて驚いた。投資や社債、健康食品、化粧品などのパンフレットがあふれていた。少なくとも1億円近くあったとみられる財産は、約100万円に減っていた。

一人暮らしの女性には月4万円の年金と、所有するビルのフロアのテナント収入も月40万円あった。だが、10年ごろに異常が発覚する。女性が銀行でお金を振り込もうとしているのを、「振り込め詐欺」を疑った行員が止め、警察に通報したのだ。疎遠だった親戚に連絡が入ったが、すでに預金の大半は失われていた。女性は「6千万円振り込んじゃった」と話した。

財産の大半を失った後も、女性には月々40万円以上の収入があった。

女性は預金を失った後も投資会社の男性営業マンと頻繁に会い、お金を引き出したいときに通帳を渡していた。女性は「30万円を私が受け取り、残り10万円を定期預金にしてもらっているの」と話したが、定期預金の記録はない。司法書士が男性にただすと、「おろした金はすべて渡した。私は一銭ももらっていない」。お金の行方は分からないまま、女性は13年夏、老衰で息を引き取った。

国民生活センターによると、「認知症等高齢者」の契約などのトラブルは昨年度、全国で9965件と、ここ数年、1万件程度で推移している。統計がある04年度の約1・5倍だ。8割は家族ら本人以外からの相談で、リフォームなどの訪問販売、健康食品などの電話勧誘が多い。

センターの担当者は「高齢者の相談は年々増えているが認知症の場合は、本人からの相談が少なく、被害が潜在化しやすい。契約の経緯を覚えていないことも多く、被害の回復も難しい。被害を防ぐには、親族や地域など周囲の見守りが大切だ」と話している。

実際、地域の「目」が被害の一部回復につながったケースもある。

神奈川県内の認知症の一人暮らしの男性(89)は08年秋、リフォーム業者をかたる男2人に勧められ、実態のない工事に約500万円支払った。さらに「追加工事費680万円」を迫られ、支払う代わりに家と土地を差し出す契約まで結ばされた。男たちは男性をアパートに転居させて家を壊し、土地を売り払った。

住民からの連絡で異変に気づいた地元の民生委員は、登記簿から男たちと関係する業者を割り出し、法的トラブルの解決を助ける「日本司法支援センター」(法テラス)に相談した。男性の後見人は預貯金や土地の返還を求めて提訴し、業者側が計1千万円を払う和解が成立した。男性はいま、そのお金をもとに別のアパートで静かに暮らす。(小寺陽一郎、松田史朗、本田靖明)

■認知症高齢者らを見守る家族や周囲へのアドバイス

《見守りから相談まで》

@日ごろから、本人の家の様子や言動におかしな点がないか気をつける

・不審な契約書や請求書、宅配業者の不在通知などはないか

・同種の商品、通信販売のカタログやダイレクトメールなどが大量にないか

・生活費が不足するなど、お金に困っている様子はないか

・預金通帳などに不審な出金の記録はないか

A変化に気づいたら声をかけ、経緯を確認。消費生活センターなどに相談する

《トラブルを防ぐために》

@地域の見守り活動や、成年後見制度の利用も検討する

A市販の通話録音装置や、不審な電話番号からの着信を拒否する装置を使う

B認知症などの症状があれば、トラブルに備えて医師の診断書を得ておく

■2015.5.10  認知症社会  「おふくろがそんなこと…」 思わぬ遺言で相続争い
認知症の人が残した遺言をめぐり、親族間のトラブルが起きている。決着がつかず裁判で争う人もいる。父や母の「最後の意思」はどこにあったのか。

「おふくろがそんなことするはずがない」

2007年に亡くなった母の遺言を目にしたときのショックを、神奈川県の60代男性は忘れられない。息子である男性と妻、孫と長年暮らした家も、預貯金もすべて、母の妹(おば)に遺贈する内容だった。

実母を早く亡くした男性は、子どもの頃から実母の姉に育てられた。授業参観や遠足にも来てくれた。「私にとっては実の母と同じ」。男性は12年前に、正式に養子となった。

母とおばは親しく親類づきあいをしていた。とはいえ全財産を譲るのが母の真意とは――。男性はおばを相手取り、横浜地裁に訴訟を起こした。東京高裁は10年7月、母は認知症だったとして遺言を無効とした。

判決などによると、遺言作成までの経緯はこうだ。

男性は母と30年間同居し、妻が母を介護した。母は04年ごろから認知症が疑われる症状が進んだ。知り合いの顔がわからない。昼夜逆転し、深夜にテレビの音量を上げる。現金や通帳の管理が難しくなり、「お金がなくなった」と訴える。05年3月には認知症と診断されていた。

男性が知らぬ間に遺言が作られたのは、母が数カ月間、施設に入っていた時。05年12月、当時87歳の母とおばは、司法書士と一緒に公証役場に行った。「不動産、預貯金その他一切の財産を○○(おばの名)に遺贈する」。遺言にはそう明記されている。

だが判決は、母がはっきり述べた内容を遺言にしたからといって、息子たちが暮らす家までおばに渡すという重大性を理解して、遺言を残す能力があったとはいえないと結論づけた。母は遺言時、「(男性夫婦に)財産をやらない」ともおば側に語っていた。こうした発言も「被害妄想の一つの表れ」と判断した。

男性は「判断能力が落ちた母が翻弄(ほんろう)された」と憤る。おば側が引き出した預貯金の返還を求めて別の裁判も起こした。昨年末、約2千万円の返還命令は出たが、おば側の経済事情から手元には戻っていない。

■作成時の症状、証拠集めに奔走

遺言時に認知症だったのかどうか、どの程度の症状だったのか、死後に判断するのは容易ではない。

東京都のケアマネジャーの女性(60代)は、90歳で亡くなった父の遺言の無効を求め、姉を相手に訴訟を起こした。遺言には不動産など数千万円相当の遺産をすべて姉に相続させるとあった。

70歳まで会社勤めを続けた父。まじめを絵に描いたような人だった。だが女性によると、晩年は、突然意味不明なことをしゃべったり、街で徘徊(はいかい)して警察に保護されたりした。遺書を書いたときは有料老人ホームに入居していたという。

父が遺言を書けたとは思えず、仕事の合間をぬって証拠集めに奔走した。まず確認したのは筆跡。父が書いた銀行の振込用紙などを見つけ、遺言は「本人の筆跡でない」との鑑定を得た。病院や介護施設にも文書で請求し、脳のMRI画像や介護記録なども手に入れた。資料は500枚以上に。筆跡や医師の鑑定に約100万円かかるなど、収入の多くを費やした。

裁判で「遺言書の存在が不可解」などとする医師の鑑定書を提出すると、姉側の態度が一転。昨年12月、姉妹で折半する内容で和解した。父の死から4年半が過ぎていた。

姉妹は絶縁状態のまま。「父が元気な間に相続について話しておけば、こんなことにならなかった」との思いが女性の胸に残る。



〈相続と遺言〉 民法の規定では、例えば配偶者と子が相続人の場合は、遺産の半分を配偶者、残り半分を子が受け継ぐ。遺言があると、その内容に基づく遺産分割が優先される。「自筆証書遺言」は全文と日付、氏名を自分で書き、押印する。死後、家裁で相続人らが立ち会って確認する「検認」手続きが必要。「公正証書遺言」は証人2人以上が立ち会い、遺言者の口述を公証人が文書にする。複数の遺言がある場合は、種類によらず新しい遺言が優先される。

■健康なうちに協議を

認知症であっても残した遺言がすべて無効になるわけではない。症状が軽い場合や症状に波がある場合などで遺言能力が認められることがある。遺言内容の複雑さや結果の重大さなどによっても判断は変わる。

相続に詳しい弁護士らによると、トラブルを防ぐため、遺言時に心身の状態を医師に診察してもらう例もあるという。

争いを避ける基本は、何より家族の事前の話し合いだ。「心身が健康なうちに、遺産分割について家族の間で共通認識をもつことが大事」と小堀球美子(くみこ)弁護士は言う。遺産の話は、受け取る側からはしにくい。「盆や正月など家族が集まる時に親から話をしてみては」と提案。家族の理解を得たうえで、生前に贈与する方法もある。

■2015.5.10  認知症社会  いつの間にか養子縁組、遺産相続の遺言書
東京23区内に住む80代の女性は2013年、遠い親戚にあたる中年の女性と養子縁組をした。縁組から約2週間後、「(財産は)養女にすべて相続させる」という遺言書がつくられた。

女性には、親から相続した1億円相当の土地建物や預金がある。以前には、長年付き合いのある団体に「すべて寄付する」と周辺に繰り返し語っていた。女性に実子はおらず、いずれは養女が財産を相続することになる。

女性は数十年ずっと一人暮らしだったが、08年ごろから「人と会ったことをすぐに忘れる」といった認知症の症状が出始めた。養子縁組した13年ごろには、部屋は足の踏み場もなくなるほどゴミが散乱していた。いま、遠戚の女性と養子縁組した当時の経緯はほとんど覚えていない。

女性はヘルパーに介助されながら今も自宅で一人暮らしを続ける。外出はめったにせず、家で長時間、テレビを見て過ごす。

東京都内に住む認知症の90代男性にも養女がいる。10年以上前、繁華街のカラオケスナックで知りあった当時60代の女性だ。

妻に先立たれ、自宅で一人暮らしだった男性が、この女性と養子縁組したのは08年。男性はこのころ、すでに認知症の症状が出ていたとみられる。11年には、養女が本人に代わって財産を管理する成年後見人になった。男性の自宅を3千万円で売却し、その一部を男性の老人ホームの入居費にあてるなど、介護に必要なお金の手当てをしていた。

一方で養女は後見人の義務として、男性の財産の状況を家庭裁判所に報告していた。しかし、報告に不審な点があるとして家裁は12年、養女を調査する監督人をつけた。

監督人の調べによると、養女は男性の預金から多くのお金を自分の口座に移し、1年で約1500万円を使っていた。残りの預金もいずれ養女が相続する。

じつは、男性は12年、もう1人の女性とも養子縁組していた。男性の自宅に訪問介護に来ていた30代の女性ヘルパーだ。だが、1人目の養女がヘルパーの事業所を通じて離縁を求め、ヘルパーが応じる形でこの養子縁組はわずか1週間で解消された。

日本では、養子縁組の手続きは比較的簡単だ。2人の戸籍謄本と「養子縁組届」を自治体に提出するだけで「親子」の権利関係が生まれる。筆跡の鑑定もない。養子の縁組や解消は双方の同意を前提としているため、縁組後、親が認知症で判断力が低下した場合などは、仮に周囲が縁組の解消を望んだとしても、養子側が縁組の継続を望めば、離縁するのは難しい。

今年1月、関東北部に住む70代の認知症の女性に養女から一通の文書が送られてきた。「2千万円で離縁に応じる」というものだ。

夫に先立たれ一人で暮らす女性には数千万円の資産がある。この女性は11年、自宅近くに住む知人の20代女性と養子縁組した。

この縁組を不審に思った親族は、家裁に対し「親族が女性を扶養する権利」があることを確認し、養女に「離縁」を求める審判を起こした。親族の一人は「親族に一言もなく、赤の他人が養子縁組しているとは驚いた」と話す。審判では、女性の預金が計70万円以上減ったこともわかった。

この審判の和解案として、養女側が示してきたのが「2千万円で離縁」という条件だ。家裁の結論はまだ出ていない。

■早めに後見人予約も

日本では毎年約8万件の養子縁組がある一方、認知症高齢者の縁組をめぐるトラブルは各地で起きている。後見人の司法書士らでつくる「成年後見センター・リーガルサポート」の川口純一・東京支部長は「財産狙いの縁組への対策を早急に打つべきだ」と話す。

しかし、養子縁組が財産狙いかどうかチェックするしくみはない。早稲田大学法学学術院の岩志和一郎教授(民法)は「行政に当人たちの『意思』を審査する権限はなく、要件がそろった届け出は受理しないわけにはいかない」と話す。

財産を管理する後見人も、結婚や養子縁組など、家族制度の根幹にかかわる行為には立ち入れない。民法は、養子縁組について「後見人の同意を要しない」と明記している。大阪大学大学院の床谷文雄教授(民法)は「後見を受けている高齢者を守るには、民法の『後見人の同意を要しない』を『要する』と変えるのも一案だ」と言う。

今できることはあるのか。元気なうちに後見人を予約する「任意後見」を使うなど、早めに面倒を見てくれる人を探しておく方法もある。そうすれば財産狙いの縁組をさせられないようアドバイスを受けることもできる。後見人がついた後に縁組がなされた場合、養子側は相続権は持つが、日ごろの財産管理の権限は後見人側が持ち続ける。

■2015.5.13  奈良・天川村の介護保険料8686円、全国一の高額
県は平成27〜29年度の65歳以上の高齢者が負担する介護保険料(基準月額)を発表した。各市町村の平均は前回(24〜26年度)と比べて639円増の5231円だった。全国平均は5514円で、高い順から数えると県は全国40位。一方、天川村は8686円で、全国で最も高い保険料となった。

保険料は介護保険制度が始まった12年以降、利用者数の見通しなどを考慮し、市町村が3年ごとに基準額を決定する。各市町村の平均額は3年ごとに増加しており、今後高齢化率が上がるにつれて負担額は増えるとみられる。今回、県内各市町村では、明日香村が据え置いた以外はすべて引き上げられた。

天川村は人口約1600人のうち、65歳以上が4割を超え、介護施設に入所している高齢者も増加している。また前回、財政安定化基金から1800万円を借り入れたことから、今回はその返済も重なって高額となったという。
次に高いのは黒滝村の7800円で、全国3位。続いて十津川村の6750円だった。

一方、保険料が最も低かったのは御杖村で3900円、続いて川上村の4500円、下北山村の4725円だった。
実際の保険料は前年度の所得に応じて決まり、6〜7月ごろに、各市町村から利用者へ通知される。


保険料基準額の低額保険者 高額保険者
http://social-welfare.rgr.jp/storage/kaigohokenryou-shuukei.jpg

第6期計画期間(平成27年度〜29年度)
介護保険の第1号保険料について、全国の市町村の動向
介護保険事業計画のサービス見込み量等について、都道府県より報告を受け、とりまとめ。
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-12303500-Roukenkyoku-Kaigohokenkeikakuka/shuukei.pdf

■2015.5.15  カメのお菓子で福祉に貢献 京都・亀岡の障害者事業所
京都府亀岡市大井町の障害者福祉サービス事業所「ワークスおーい」は、カメをイメージした抹茶風味のパンとクッキーを開発した。同事業所のベーカリーカフェ「ぱすてる」で14〜28日(日曜休み)に期間限定で販売し、売り上げの一部を地域福祉に寄付する。

メロンパン(200円)とクッキー(100円)。抹茶の配合を変えることでカメの体や甲羅の色を表現した。それぞれ価格の1割が、市内の障害者や高齢者、児童など各福祉活動の財源となる。

京都府共同募金会と市社会福祉協議会と連携して開発した。全国の共同募金会が展開する「募金百貨店プロジェクト」の一環。商店などと協力して寄付つき商品を販売し、各地域の福祉に活用する取り組みで、山口県共同募金会が2012年に初めて導入した。12府県に広まっており、府内では2例目。

ワークスおーいは今春、共同募金の補助でパン工房の機器を購入した縁でプロジェクトに参加した。商品は、市社協のマスコットキャラクター「ふくかめ」をイメージした。

同事業所を運営する社会福祉法人松花苑は「障害者は支援される側になりがちだが、自分たちの作った商品で地域貢献できる」と喜ぶ。府共同募金会は「今後も各地で寄付つき商品を増やしたい」としている。

■2015.5.16  県営住宅用地に介護施設…貸し付け第1号  群馬
高崎市金井淵町の金井淵県営住宅の隣接地に、介護と住民交流の一体型施設「じゃんけんぽん金井淵・地域支え合いセンター」が今月オープンした。福祉施設の整備を条件に県営住宅用地を貸し付ける県事業の第1号で、軌道に乗れば、県は他地区でも事業展開する方針だ。

同施設は、認知症高齢者グループホームなどを運営するNPO法人「じゃんけんぽん」(同市棟高町)が市の補助金を活用して整備。木造平屋建て、延べ床面積約460平方メートルで、県有地約1570平方メートルを借り受けた。

24時間態勢で介護と看護を行って自宅復帰を支援する居宅介護、利用者が必要な時に自宅を訪ねる訪問介護看護の最新の2介護保険事業と、無料開放の地域支え合いセンターからなる。

同センターは厨房を含めて約140平方メートル。定年退職者や子育てを終えた主婦らの趣味・イベント交流の場とするほか、高齢者の安否確認を兼ねた配食サービスも行う。同法人はボランティアによる同様の拠点を5年前に本部に設けて好評だという。

県住宅政策課によると、県営住宅の入居者のうち、60歳以上の割合は平均37%だが、金井淵は56%と高い。金井淵の住宅を平屋から3階に建て替えて創出された県有地を活用し、居宅介護施設の整備を計画。2013年6月、高齢者見守りサービスや生活相談などの提供を条件に公募した。事業提案書を提出した3団体の中から同法人が選定された。

県営住宅7棟と市営住宅15棟(計280戸)を含め、金井淵と隣接地区の高齢者は約6000人で、このうち要介護者は2割弱という。同法人の佐塚昌史事務局長は「元気なうちから結びつきを強め、要介護状態になっても地域で支える態勢を作りたい」と話す。

県住宅政策課の担当者は「金井淵の事業を検証して軌道に乗りそうなら、高齢化率の高い他の県営住宅でも進めたい」と話している。

同法人は地域支え合いセンター運営のボランティアを募集している。

■2015.5.16  障害者の就職 過去最高4245人…昨年度
厚生労働省北海道労働局は、2014年度の1年間で道内の障害者の就職人数が4245人(前年度比10%増)となり、過去最高を更新したと発表した。就職率は49・0%(同0・1ポイント増)だった。

新規就職申込件数は8672件(同9・8%増)だった。就職人数の内訳は、身体障害者1374人(同1・6%増)、知的障害者872人(同4・6%増)、精神障害者1791人(同18・5%増)など。

就職先は、医療・福祉が1861人と最も多く、卸売業・小売業(521人)、サービス業(344人)などが続いた。

北海道労働局は、「事業主の障害者雇用への理解が進んでいることや、就職希望の障害者が増えているためではないか」としている。

■2015.5.16  大変だったけど貴重な時間 高校生が看護師体験
看護師を目指す高校生らが医療現場を経験する「ふれあい看護体験」が15日まで、東胆振の各医療機関などで行われた。参加者らは看護師の仕事や現場の雰囲気を肌で感じながら、「看護の心」を学んだ。

「看護週間」(10〜16日)に合わせ、高校生などを対象に毎年行われている催し。今年は11日から15日までの期間で、苫小牧市や白老町、むかわ町の医療機関など15カ所で展開された。

このうち、王子総合病院(大岩均院長)では15日、市内や白老町の高校生17人が参加。院内で看護の仕事を間近で見学した他、現役看護師の講演に耳を傾けた。

患者と直接交流する場面では、足浴や洗髪などの仕事に挑戦。卒業後、看護の道に進むことを考えているという長谷川萌さん(苫小牧東高3年)は「緊張したけれど、患者さんときちんと話すことができた」と笑顔を見せた。

患者との会話を楽しみながら洗髪を体験した石井洸太君(道栄高3年)は「とても大変なだったけれど、貴重な経験でした。患者さんとのコミュニケーションの大切さを学びました」と話していた。

■2015.5.16  高齢者への多剤投与 15種類服用で認知症状悪化
高血圧、関節痛、糖尿病、不眠…。多くの症状を抱える高齢者は薬も増えがちだ。年を重ねれば、内臓機能も低下し、副作用も出やすくなる。だが、服用している多種の薬を横断的に判断してくれる人はいないのが現状だ。なかには、薬が状態悪化を招いていることもあるという。

神奈川県に住む鈴木正三さん(87)=仮名=は、認知症の妻(80)が薬を減らしてからの変わりように驚いたり、あきれたりしている。

「以前は『助けてえっ』と大声を出して、有料老人ホームのスタッフをたたくなど興奮状態だったのに、薬を減らしたら劇的に落ち着いた。寝たきりだったのが歩くようになり、今は会話もできる。まさか、薬が原因だなんて思わなかった」と言う。

妻は50代で慢性疼痛(とうつう)に悩まされるようになり、以来、薬と縁が切れない。プールに通ったり体操したりしても治らず、鬱状態になり、精神科でも薬をもらうように。「血圧が高い」「血糖値が高い」と言われ、内科にも通うようになった。

診療科が増えるたびに薬も増えた。数年前に有料ホームに入居したときには、ペインクリニック、内科、精神科、整形外科から計15種類の薬をもらっていた。1日に飲むのは27錠。薬を受け取る調剤薬局は1カ所だったが、鈴木さんは「薬の作用が違うから、薬剤師さんは口をはさめなかったのだろう。今の医療は主治医不在。司令塔がないのが問題だ」と憤慨する。

転機は半年前。知人の紹介で、たかせクリニック(東京都大田区)の高瀬義昌医師に診てもらうと、高瀬医師は薬を5種類7錠に変更。鈴木さんの妻は、数日後には歩けるようになった。暴言や暴力など、認知症の周辺症状(BPSD)だと思われていた行為も治まった。

在宅医療に携わる高瀬医師は、薬を減らすことで高齢者の生活の質(QOL)と身体機能が上がる経験を何度もした。歩けなかった人が歩くようになるケースは珍しくない。「患者が症状を訴えるたびに薬が増える。医者も専門領域でない薬の副作用には気付きにくい」とする。

また、高齢者には注意が必要な薬もある。「慎重投与すべき薬が安易に出されていたり、分量が多すぎたりする」と指摘する。

高瀬医師が特に問題視するのが睡眠薬。「広義のベンゾジアゼピン系のデパス、ハルシオン、レンドルミンなどは効果が切れるとき、高齢者には意識混濁や幻覚が出やすい。そもそも、眠れないのには原因がある。認知症と診断されて不安だとか、家族との関係が悪いとか。話を聞いて眠れない原因を探り、カウンセリングをしながら対処していくことが必要です」

とはいえ、患者や家族が勝手に薬をやめたり減らしたりするのは危険な行為だ。まずは、医療機関に安易に薬を求めないこと。「高齢患者さんは大抵、看護師や薬剤師や介護職などと接点がある。みんなで情報を共有し、本人の状態を観察し、医師と相談しながら減らす方法を考えることが大切」と高瀬医師。「薬の量は大丈夫かなとか、床に落ちているのは飲めていないからではないかなど、薬についての感性を養うことから始めてほしい」と話している。
                   

■かかりつけの医師・薬局が必要

6剤以上の多剤投与では、有害作用を引き起こす割合が高まり、抑鬱とも関連するとの調査結果が、東京大医学部の秋下雅弘教授らの研究にある。

多剤投与の相談にも応じる東京城東病院(東京都江東区)の徳田安春医師は「高齢者は高血圧、糖尿病、心不全など、1人で多くの病気を持っている。各診療科にかかると、それぞれから薬が出て、いつの間にか15〜20種類の多剤併用になる」と説明する。作用が真逆の薬が出ていたり、薬の影響で他の薬の効果が過剰になったり効かなかったり。薬の副作用を抑える薬が、さらに別の副作用を招くケースもある。

徳田医師らは平成23年に茨城県の病院で、救急外来にかかって入院した高齢者700人を調べた。「多剤併用と有害事象の発症には強い相関があり、WHO(世界保健機関)の基準で判定すると、20人に1人が薬の副作用が原因の入院だった」と言う。

背景には、トータルに患者を診ることのできる「かかりつけ医」が不在だという問題のほか、「かかりつけ薬局」が機能していない問題がある。患者側が処方された薬の名前や量を記載したお薬手帳を持参せず、複数の調剤薬局を利用したり、薬剤師側も医師の書いた処方箋に疑問を持つのをためらう雰囲気があると、多剤投与は進む。

徳田医師は「患者はまずは、何でも相談できるかかりつけ医を作ることが大切。かかりつけ薬局を作るのも有効です。今後は、各専門診療科のドクターと相談しながら、薬剤をトータルに見て薬剤調整をする医師や薬剤師が必要。国もそういう方向に診療報酬をつけるべきだ」と話している。

                   

ベンゾジアゼピン系の薬剤

睡眠薬としてのほか、抗不安薬として認知症の人にも広く使われている。だが、厚生労働省の研究班が平成24年度に作成した「かかりつけ医のためのBPSDに対応する向精神薬使用ガイドライン」は、「厳密な比較対照試験はほとんど行われておらず、BPSDに対する客観的な評価は得られていない」としている。また、睡眠導入薬としての利用についても「転倒、せん妄、認知機能の低下などのリスクを考え、注意深く観察しながら漸減ないし、非ベンゾジアゼピン系の薬剤への切り替えを考慮すべきである」と指摘している。

■2015.5.17  知的障害者施設:安らぎの家、完成…福島県内外へ避難4年
東京電力福島第1原発事故で福島県川内村から避難している知的障害者の入所施設「あぶくま更生園」の新施設が15日、避難先の同県田村市で完成した。入所者46人は事故後、避難のため県内や千葉県を転々とし、手狭な施設と避難生活の長期化でストレスを抱え暮らしていた。入所者の家族は「これでようやく落ち着ける」と胸をなで下ろしている。

新しい施設は木造平屋建てで延べ床面積は約2900平方メートル。現在暮らしているプレハブの仮設住宅をつなぎ合わせた施設の2.8倍だ。15日午前には入所者の家族や職員らが集まり、木の香りがする新施設の中で落成式が行われた。震災前から施設長を務める三瓶直人さん(56)は「ようやく入所者も家族も安心できる施設ができ、本当によかった」と感慨に浸った。

同園は1988年4月、川内村で開園。福島第1原発から約12キロの山あいで、野菜や鶏を育てながら、20〜60代の知的障害者の食事や入浴、排せつなど生活を支えてきた。

2011年3月12日、同原発1号機の水素爆発が生活を一変させた。より原発に近い福島県富岡町の4施設から逃れてきた約200人とともに、村の体育館に避難した。その日の夜、環境の変化によるストレスで入所者が奇声や大声を出した。居づらくなり、翌13日に西隣の田村市にある通所施設に移った。

40人規模の施設に約250人が寝泊まりした。一つの布団を2人で使うなど「すし詰め状態」(三瓶施設長)。薬も不足して5、6人がてんかんの発作を発症し、別施設から避難していた1人が亡くなった。

広い施設を求め約1カ月後に千葉県鴨川市の県立青年の家に移ったが、福祉施設でないため階段が多いなどの不便もあった。震災前に18人いた職員も次々と辞め、残ったのは三瓶さんら2人だけ。

「やっぱり古里に帰りたい」。三瓶さんは12年2月、入所者を連れて田村市の仮設住宅を改造した施設に移った。部屋は狭く、男性は8畳(約13平方メートル)の部屋を2人で使用。入所者1人当たりの床面積は障害者自立支援法の基準の半分近くしかなかった。

川内村は昨年10月、村内のほとんどの地域で避難指示が解除された。しかし、村から近い精神科のある大熊町の総合病院は避難指示解除の見通しもなく、閉鎖したままだ。「川内村では入所者を支える環境を整えられるか不安がある」と田村市での再起を目指した。

新施設では入所者ごとに約10平方メートルの個室があり、共用スペースも増える。家族会会長で弟が入所している馬渕和年さん(69)は「避難に次ぐ避難だったから、広い施設に落ち着いて本当にうれしい。弟には新しい場所に早く慣れてほしい」と喜んでいた。

■2015.5.17  障がい者の就労促進  三浦市社協 市内初の移行支援事業
三浦市社会福祉協議会が運営する障害福祉サービス事業所「どんまい」は、従来の就労継続支援B型事業に加え、就労移行支援事業をスタートした。主に喫茶店営業と野菜の栽培・販売の訓練を通して、就労に必要な知識と能力を向上させ、知的・精神障がいなどを抱える人の企業への就職を支援する。

2006年に施行された障害者自立支援法(現・障害者総合支援法)で定められている障がい者の就労支援事業には、意欲はあるが様々な事情で就労が難しい人に労働機会を与える「継続支援」と、職業体験を通して知識や能力を高めて一般企業への就職をサポートする「移行支援」の2通りある。

これまで「どんまい」では継続支援として日替わり宅配弁当事業を展開。併設された厨房で調理を行っているが、今年4月から就労支援環境の充実強化を図るため新たに移行支援事業をはじめた。

同事業の開始に併せて、市総合福祉センターの1階ロビーを開放し、売店と喫茶スペース「三遊間を抜けました」を開設。コーヒーや軽食の提供、加工食品などの販売を行うことで就労体験の機会を提供する。また、生産活動の一環として、市内農家から無償で貸与を受けた農地で無農薬野菜を栽培。収穫した作物は今後、同売店で販売する予定だという。

求職者の環境改善

今年4月現在、三浦市内の就労移行支援施設数は1件と、求職する障がい者を取り巻く環境は依然として厳しい。

今回の事業拡充によって改善が期待されるのは、特別支援学校卒業者が関係する通称「ダイレクトB問題」。通常、卒業者は就労移行支援事業所に通所し、適正を見た上で進路を決めなければならないが、同事業所数が少ないことから、卒業後の受け皿(経過措置)としてやむを得ず継続支援事業所へ通所するケースが起こっているという。本来、継続支援(B型)が受けられる対象は、就労経験があり年齢や身体的事情で一般企業での雇用が難しい人や、就労をめざしたが雇用に結びつかなかった人などと法律で定められており、「地域内で移行支援事業をスタートすることで、より法の理念に則った事業展開を実践することができるのではないか」と担当者は話している。

■2015.5.17  福祉施設に全財産を取られかける 認知症だった高齢女性
余生の安心を託すはずだった福祉施設に、全財産を取られかけた認知症のお年寄りがいた。

契約は財産管理能力の劣った老人である原告に一方的に不利で、公序良俗に反し、無効である」

2013年末の東京地裁の判決。認知症だった女性の遺族が有料老人ホームに対して「財産を返してほしい」と求め、それを全面的に認めるものだった。

東京23区内で一人暮らしをしていた当時80代の女性が、このホームに入ったのは06年。のちに後見人についた弁護士によると、女性には、着物の帯の商いをしていた夫が残した遺産などで約1億2千万円の預貯金があったほか、自宅の敷地内のアパートからの賃貸収入が年約300万円あり裕福だった。その女性が入居後、ホームとこんな契約を結ぶ。

「土地と自宅、アパートを3千万円でホームに売る。ホームはその代金を、女性の入居一時金1千万円と月50万円の利用料40カ月分と相殺する」

女性が持つ不動産をホームに売ったお金で、2部屋分の割高な入居費や利用料をまかなう契約だった。3千万円の売値も周辺の相場をはるかに下回る額で、契約後ただちに所有権をホームに移す条件もついた。「死亡時は一切の財産をホームに贈与する」との契約まで結ばされた。

女性宅とアパートは取り壊され、ホームはそこに別のアパートを建てた。

不審に思った住民の通報で東京都の職員がホームに立ち入り、一連の契約が発覚した。女性の後見人は11年、土地の返還や約2千万円の損害賠償を求めて提訴。裁判でホーム側は「契約は女性の希望だった」などと主張して高裁まで争ったが、女性側の全面勝訴の判決が確定した。ホームは判決に従って賠償金を支払い、アパートも撤去して土地を遺族に返した。

女性は裁判中の12年、老衰のため亡くなった。女性のおいは「叔母の認知症に乗じて、非道な契約を結ばせた。許せない」と話す。ホームの施設長に取材を申し込んだが、16日夕までに回答はなかった。

金銭トラブルに詳しい別の弁護士は「孤独でお金がある認知症の人の場合、施設に割高な料金を払わされたり、死後に財産を寄付する契約を結ばされたりするケースはある」と話す。

訪問介護の現場でもお金のトラブルは起きた。

1月60万円、2月60万円、3月130万円……。大阪府豊中市で一人暮らしをしていた認知症の70代の男性の二つの預金口座からは10年、8カ月間で計842万円のお金が引き出された。親族が気づいたときには自宅に924円の現金しか残っていなかった。

引き出したのは、男性が住むアパートに訪問介護サービスで来ていた40代の女性ヘルパーだった。
男性は10年冬に亡くなり、その後、遺族がお金の返還を求め、ヘルパーを派遣した訪問介護事業所を提訴した。

事業者側はヘルパーがお金を引き出したことは認めつつ、着服は否定した。ヘルパーは男性と親密に交際していたとし、「男性から結婚を迫られ、ペアリングを作った」「男性から180万円の現金を手渡された」などと主張した。

訴訟では、事業所が最終的に管理責任を認め、遺族に500万円を支払う和解が13年に成立した。ヘルパーは取材に応じず、知人によると「体調を崩し、取材に答えられる状況にない」という。

■後見人利用しトラブル回避を

認知症の人が福祉施設に入った際、通帳を預けるなどしてお金を管理してもらう人は少なくない。多くの施設は適切にお金を管理しており、訪問介護に携わる人がお金のトラブルを起こすのもまれだ。

ただ、「悪意」で身寄りのない認知症の人らのお金が狙われると監視の目は届きにくい。トラブルを防ぐにはどうすればいいのか。

認知症の人に代わって財産を管理する「成年後見人」は、施設入居など介護に関する契約も本人に代わって結ぶことができる。後見人には親族や弁護士らのほか、社会福祉協議会やNPOなど法人がつくこともある。適切な福祉サービスを受けられているか見届けるのも後見人の役目だ。

東京の品川区社会福祉協議会でも、被害の深刻化を未然に防いだことがあった。数年前、70代の認知症の女性宅に出入りしていたヘルパーを名乗る人から、架空とみられる介護サービス料金が請求されているのに気付き、ヘルパーとしての詳細な活動報告を求めたところ、請求はこなくなったという。

品川社協の斎藤修一・成年後見センター所長は言う。「だれしも認知症でお金の管理や契約ができなくなる可能性がある。施設でも在宅でも、介護サービスを受け始めたら成年後見制度の利用を考えるべきだ」

■2015.5.19  石井の障害者施設の移動スーパー1年 利用者増え、事業順調
石井町石井の知的障害者通所施設「れもん」が、高齢者宅に食料品などを届けながら安否確認を行う移動スーパー「みまもりレモン」を始めて1年がたった。きめ細かいサービスに利用者の評判は上々で、売り上げは当初目標の2倍近い1170万円に上った。4月には販売車を増台するなど、事業は軌道に乗っている。

スタッフは現在、通所者6人と職員5人。週4日、同町のスーパーから買い取った生鮮食品や日用品約700点を車に積んで訪問しており、同町のほか徳島、美馬両市と上板町の88世帯が利用している。

「このメーカーの商品がいい」「次は線香を買ってきて」といった個別の要望にも応じており、利用者に好評だ。売り上げは一日平均5万円前後あり、昨年6月以降は毎月100万円を売り上げている。利用増に対応するため、4月中旬に石井町専用の2号車を購入した。

スタッフと利用者のつながりも強まっている。施設職員の塚原唯さん(29)は「買い物の用件以外の雑談も多くなってきた」と話す。最近では、車の到着を知らせる音楽を流す前から待っている利用者もいる。

見守り活動では、「体調が悪そうだ」「食欲が落ちていると話していた」といった様子を利用者の介護に当たる人らに知らせている。石井町内の女性(96)は「足が悪い者の味方。決まった日時に来てくれるので安心感がある」と言う。

通所者にとっても利用者からの感謝の言葉が活力になっているという。塚原さんは「利用がさらに増えてくれれば、通所者の自立支援にもつながると思う」と今後を見据えている。

移動スーパーは2014年5月、施設を運営する社会福祉法人カリヨンと町が高齢者の見守りや買い物支援に関する協定を締結してスタートした。町が高齢者のみの世帯の情報などを本人同意の上でカリヨンに提供。県の障害者就労支援事業を活用して販売用ワゴン車を購入するとともに、施設が高齢者宅を回って利用登録を呼び掛けた。

■2015.5.19  熱中症、1週間で480人搬送 2人死亡、消防庁集計
総務省消防庁は19日、熱中症により11〜17日の1週間で480人が救急搬送され、このうち2人が死亡したとの集計結果(速報値)を発表した。今後は暑さが本格化するとみられ、同庁は小まめな水分補給や室温管理を呼び掛けている。

集計によると、3週間以上の入院が必要な重症が11人、短期間の入院が必要な中等症が131人だった。年齢別では65歳以上の高齢者が半数近くを占めた。

都道府県別では東京都の39人が最多で、埼玉県37人、沖縄県33人の順。死亡は長野、愛知両県で各1人だった。

消防庁は毎週集計し、火曜日にホームページで公表する。

平成27年都道府県別熱中症による救急搬送人員数
http://www.fdma.go.jp/neuter/topics/heatstroke/pdf/270519-sokuhouti.pdf

■2015.5.21  赤ちゃんポスト預け入れ 4年ぶり10人上回る
熊本市は20日、親が育てられない子どもを匿名で受け入れる慈恵病院(同市)の「こうのとりのゆりかご」(赤ちゃんポスト)に、2014年度は11人が預け入れられたと公表した。10年度以来、4年ぶりに10人を上回り、07年5月の開設以来の合計は112人となった。

14年度の内訳は、男児6人、女児5人。預入数は10年度まで15〜25人だったが11年度以降、1桁台が続いていた。

11人のうち10人が生後1カ月未満の新生児だった。命に危険のある体重1500グラム未満の子どもが初めて預けられるなど診療が必要な子は6人いたが、虐待が疑われるケースはなかった。ゆりかごの扉の外に置かれた子もいたが「子どもを置いた」と病院に電話があり、無事だった。

8人は親や祖父母の住所が判明。このうち初めて東北からの預け入れがあった。預けた理由は「生活困窮」と「未婚」が最も多かった。

■2015.5.23  廃校再生 介護の場に
◇神石高原旧安田小 地元NPOが運営

神石高原町安田のNPO法人「高齢社会を活きる会」(三原豊理事長)が、廃校になった元小学校舎で、介護施設を運営している。講堂は演芸の発表会、運動場もグラウンドゴルフ場に使われ、子どもの姿はなくなったが、住民の交流の場になっている。

町立安田小は2005年3月、少子化で131年の歴史に幕を閉じた。校舎は1980年建築で、鉄筋コンクリート2階建て。2006年から、1階がグループホーム(定員9人)、2階は2年後に小規模多機能型居宅介護事業所(同15人)となり、70歳代〜90歳代の町民が利用する。

社会福祉士や介護福祉士の資格を持つ三原理事長は、介護支援などを通じて住みやすい町をつくろうと、03年に同会を結成。同小跡について、住民アンケートで福祉の拠点にするよう望む声があったことなどから、介護施設運営を目指し、地元に説明したり、町と話し合いを持ったりした。

その結果、校舎と土地を、町から無償で貸与を受けた。屋根の補修や浄化槽の設置は、町が実施。同会は、教室に間仕切りを設けて個室に改修したほか、職員室は事務所、調理室は利用者の食事調理に使い、食器棚や放送設備もそのまま活用している。

廊下は長く、広いため、手押し車や歩行器でも歩きやすく、リハビリや体力作りに役立っている。疲れた時には休めるよう、所々にいすを設けた。

講堂では老人会や婦人会が利用者に踊りや歌などを披露する。校庭で住民が週2回グラウンドゴルフをプレーする様子や、夏には近くの広場で開かれる盆踊りも、部屋から眺められる。食事には、住民が提供する野菜も並ぶ。

小規模多機能型居宅介護事業所のショートステイを利用する、瀬戸田登美枝さん(93)は「眺めも良く、きれいな部屋でうれしい」と満足そう。

施設所長を務める三原さんは「花見や写経に出かけ、廊下から盆踊りの様子が楽しめるのは、地域の拠点を活用した施設だからこそ、できることだと思う。地域にとっても、かつての学びやに明かりがともっている光景は、ほっとするのでは」と話している。

■2015.5.23  児童虐待相談が過去最多 香川
平成26年度の香川県内の児童虐待に関する相談件数が前年度比32%増の727件にのぼり、統計を始めた2年度以降で過去最多となった。県は「児童虐待は非常に深刻な状況。社会全体で解決すべき大きな課題」としている。

虐待の種類別では心理的虐待が1・7倍の369件と全体の50・8%を占め、2年連続で最も多かった身体的虐待を上回った。「子ども虐待対応の手引き」の改正(25年8月)により、他の兄弟への虐待の目撃も心理的虐待としてとらえられるようになったことや、子供の面前で行われるDVの増加が要因とみられている。

このほか身体的虐待が223件、育児放棄が127件、性的虐待が8件で、いずれも前年度より増えた。

虐待を受けた子供は、小学生が全体の約40%に当たる296人、3歳から就学前が165人、中学生が108人、3歳未満が101人など。

 一方、虐待をする側では実母が341件で全体の46・9%、次いで実父が292件、養・継父が77件、養・継母が3件など。養・継父母を含む数では初めて男親(369件)が女親(344件)を上回った。子供の面前DVによる通告の増加が一因という。

子供が虐待を受けていると疑われる場合の連絡や相談は県子ども女性相談センター(電)087・862・8861、県西部子ども相談センター(電)0877・24・3173のほか、市町の児童家庭相談窓口で受け付けている。

■2015.5.23  病院にアート、患者に癒やし 山本容子さんが阪急うめだで展覧会
病院内に美術作品を飾り、患者らの心を和らげる芸術活動「アート イン ホスピタル」に取り組んでいる銅版画家、山本容子さんの展覧会が、大阪市北区の阪急うめだ本店で開かれている。柔らかく繊細なタッチで描かれた壁画の原画や版画など約70点が展示されており、来場者の心も癒やしている。

「アート イン ホスピタル」は、殺風景な病院を安らぎのある場にする活動として、各地の医療現場に普及している。

山本さんが関心を持ったのは平成3年。病院で長い闘病生活の末に父親が亡くなったことがきっかけだった。

「人生の最期に見た景色が病院の無機質な天井なのは悲しい」と、ライフワークとして医療現場で壁画や天井画の制作を始め、数々の作品を仕上げた。

展覧会の会場に並ぶのは、実際に病院にあるものと同じ作品。会場内を「待合室」や「産婦人科」「小児科」などに分けて、それに合わせた作品を展示している。

赤ちゃんをあやす母親を描いた「オーヴェルニュの子守歌」や、ハトとオリーブの木で生命誕生の喜びを表した「鳥の歌」など、明るい色調で心安らぐ作品ばかり。

訪れた富田林市の主婦、冨永友美さん(37)は「繊細な感じで色づかいが素晴らしい。こんな作品なら病院でも見てみたい」と話していた。

■2015.5.23  障害者の就職3155件 5年連続で過去最高更新 埼玉
平成26年度に県内でハローワークを通じて障害者が就職した件数は3155件で、前年度比182件(6・1%)増となり、5年連続で過去最高を更新したことが厚生労働省埼玉労働局のまとめで分かった。新規の求職申込件数も8337件(同647件増)で過去最高。就職、求職ともに身体、知的、精神の障害種別すべてで増加した。

就職件数の障害種別の内訳は、身体993件(同8・6%増)、知的805件(同1・1%増)、精神1357件(同7・4%増)。求職申込件数は身体3034件(同2・9%増)、知的1483件(同6・8%増)、精神3820件(同13・9%増)だった。

職業別の就職状況は生産工程・労務(建設、清掃など)が49・9%と約半数を占め、事務23・3%▽サービス9・1%▽専門・技術6・9%−など。障害種別で割合が最高だったのは身体が事務33・6%、知的が生産工程・労務71・3%、精神が同49・5%だった。

産業別では(1)医療・福祉24・7%(2)卸売業・小売業19・0%(3)製造業15・1%(4)複合サービス事業13・8%−の順。同労働局は「企業側の理解が深まっており、業務の担当分野を工夫している。今後も就職しやすい環境づくりに努めていきたい」としている。

■2015.5.23  バリアフリー・トイレマップ:狭山「車椅子の会」、小冊子製作 希望者に配布 公共施設や病院など調査 /埼玉
狭山市車椅子と仲間の会(苅谷浩三会長、会員32人)は、同市内の公共施設や病院、スーパー、コンビニなどのバリアフリートイレ調査を実施し、設置場所をまとめた「さやまバリアフリーおでかけトイレマップ」(B5判、16ページ)の小冊子を手づくり製作した。

今年で結成35周年を迎える同会は「障害を持つ当事者から見たバリアフリーマップが必要」として一昨年から独自に調査してきた。マップは市内を6エリアに分け、左ページに地図、右ページに施設名▽住所▽電話番号▽設備内容を一覧表で掲載。見開き展開で一目で分かるようになっている。

マップでは、人的支援やホスピタリティーの高さなど評価が分かれる点には触れず、車椅子使用者と重度肢体不自由者の立場から物理的なバリアフリー化が実現しているかをまとめたという。

市内の障害者就労支援施設で500部を印刷し、市役所1階の障害福祉課や市社会福祉会館などで希望者に無料配布している。問い合わせは同課

■2015.5.24  「トマトジュースで健康」本当? 北海道・栗山、1年間飲み検証へ
栗山町と東京医科歯科大の研究グループは、体に良いとされるトマトジュースが健康に与える効果を検証する研究に取り組む。町民を対象に1年間飲み続けてもらい、健康診断でどのような変化が見られるかを調べる。 

同大の医療プロジェクトで、町が協力して行う。20歳以上75歳未満の町民200〜300人を対象に、1日コップ1杯程度を1年間飲み続けてもらう。飲む前と飲み続けた後に、メタボリック症候群予防などを目的とした特定健康診査(特定健診)を受けてもらい、血糖値やコレステロール、中性脂肪などを測定し、影響があったか検証する。

トマトジュースにはリコピンやカリウムなどが豊富で、抗酸化作用や健康改善に役立つとされる。同大は4月、女性の更年期症状の改善に効果があったとの研究を発表している。

町は「研究参加を機に健康への関心を高めてもらい、全道平均(24・7%)を3・7ポイント下回っている特定健診の受診率を向上させることできれば」(町保健福祉課)と期待する。町が医療や健康面で大学と一緒に研究事業に取り組むのは初めて。

現在、参加者を募集しており、22、24、26日と6月5日の4回、しゃるるや南部公民館などで説明会を開く。問い合わせは町保健福祉課

■2015.5.24  重度障害児の学童開設 看護師らが医療ケアも
重度の心身障害児が放課後の時間を過ごす学童保育施設「児童デイサービス・太陽の子」が、さいたま市中央区八王子にオープンした。看護師の石井歌子さん(62)が中心になって、三男で施設長の石井清行さん(32)とともに準備。市の障害福祉課によると、看護師による同様の施設の設立は同市では初めてで、近隣自治体でも珍しいという。

身体と知的障害が重複した重度障害児の学童施設は、医療ケアが必要で看護師を常時配置しなければならないため、県内でも数が少ない。家族が病気になった時や、何人も子どもがいる家庭では、障害がある子を預かってくれる場所がないことは悩みの種だった。

そんな現状を知った歌子さんは、家族に相談して同施設の開設を決意。看護師、介護士、保育士合わせて約6人のスタッフで運営を始めた。利用対象は、主にたんの吸引など医療ケアを必要としている小学生から高校生まで。石井さんが病院や施設で長年勤務した経験を生かして自らケアをする。

スタッフはほぼボランティア。室内の照明やカーペットなども、賛同した企業や友人が一部寄付をしてくれた。日常の運営費は、利用者が1割負担(残りは市が負担)することで成り立っているが、1日の定員が少人数に限られているうえ、急な欠席も考えると安定した運営資金を得ることは難しいという。

施設長の清行さんは「皆さんの力を借りてできた施設。足りない所はあるけど、重い障害のある子を持つ家族の助けになりたい」とほほえむ。

7歳の長女をつれて1時間かけて来たという南区の母親は「『看護師が対応できない』といくつもの施設に断られた。ここは救いの光。スタッフの方も温かく、ありがたい気持ちです」と話していた。

問い合わせは、太陽の子

■2015.5.26  車いす貸し出し、台数減りピンチ 名古屋で活動40年
名古屋市昭和区の福祉団体「AJU車いすセンター」が車いすを無料で貸し出す事業を始めて40年。保有する車いすの台数がピーク時の3分の1に減り、在庫はぎりぎりだ。活動継続が難しくなっている。「困ったとき誰でも気軽に借りられるセンターは不可欠」と寄付を募っている。

1日夕、昭和区の住宅街にあるセンターの本部に、男性が訪ねてきた。90歳の父親が熱を出して歩けなくなり、ケアマネジャーに紹介されて来たという。約15分で貸し出しの手続きを終えると、「おやじを病院に連れていくのが楽になって助かる。元気になったら公園にも連れ出したい」と話し、車いすを車に積み込んだ。

スタッフの水野基樹さん(41)は「予約なしで、いつでも借りられる場所が必要なんです」と話す。ただ、男性に貸し出した後、本部に残る在庫は3台になった。センターの貸出場所は愛知、静岡に計30カ所あるが、いずれも在庫が少ない状況が続く。

■2015.5.26  児童虐待通告、過去最多に 「早期の相談増えた」
◇虐待件数は減少

横浜市内に四つある児童相談所が2014年度に受けた児童虐待の「相談・通告受理件数」は4507件に上り、前年度(4209件)に続いて過去最多を更新した。一方で、14年度に新たに把握された児童虐待を受けた子どもは1072人で、過去最多だった前年度(1159人)から87人減った。市が25日、発表した。

市担当者は「市民の関心の高まりにより早期の相談・通告が増えた。そのため、虐待に至る前の支援につなげられ、虐待件数の減少となったのではないか」と話している。

市によると、新たに把握した1072人のうち、心理的虐待が529人で前年度に引き続き最多。身体的虐待338人、ネグレクト(育児放棄)186人、性的虐待19人と続いた。

虐待者別では実母が482人で最も多く、実父476人、実父以外の父82人、実母以外の母11人だった。

市内に4カ所ある児童相談所に通告した機関は、警察が554件(554人分)で前年度から45件減少したものの、全体の半数以上を占めた。次いで学校122件、福祉保健センター95件、近隣・知人77件、家族・親戚54件と続き、虐待者本人からは29件、児童本人からは5件だった。

市担当者は「夫婦間の家庭内暴力(DV)を子どもに見聞きさせることは心理的虐待にあたり、現場に駆け付けた警察官からの通告が多い」と指摘。「14年度に市会で子どもを虐待から守る条例が可決されるなど、児童虐待への関心は高まっている。引き続き、早期の相談・通告を適切な支援につなげていきたい」と話している。

■2015.5.26  栗原類さん、発達障害を告白 「子供の頃、先生が逆ギレして...」
モデルで俳優の栗原類(20)さんが、5月25日放送のNHK『あさイチ』で、発達障害の一つである「注意欠陥障害(ADD)」であることを告白した。アメリカに住んでいた子供のころに診断されたという。栗原さんは、「早期に診断・治療したことで、自分の弱点や、できること・できないことがわかりやすくなった」と述べ、前向きな姿勢を示した。

発達障害は、忘れ物や失くし物が多かったり人の話を一定時間集中して聞けなかったりする症状がある「注意欠陥・多動性障害(ADHD)」、人の気持ちを理解することや習慣・予定の変更が苦手な「自閉症スペクトラム障害(ASD)」、特定の分野の学習だけが極端に苦手な「学習障害(LD)」などの総称。ADDはADHDのうち、多動の少ないものの通称だ。

日本では2004年に成立した発達障害者支援法により、早期発見や支援について定められたが、発達障害という概念が知られるようになってきたのはごく最近であるため、周囲からも理解されず、大人になっても生き辛さを抱えている人もいるという。

■「子供の頃、音楽の授業で…」

この日、番組では「どう向き合う? 夫の発達障害」というテーマを特集。栗原さんは、番組で紹介された発達障害の特徴の一つ「変化が苦手」ということについて、「冷蔵庫の中に、お茶がいつもの場所に置かれていなかったりすると、ダメとまでは思わないが気持ち悪くて、いつもの位置に戻してしまう事がある」と紹介。また、「音に対する感覚が過敏」という症状についても、子供の頃の経験を次のように話した。

「アメリカにいた頃は、普通に音楽の授業も受けることができたが、日本では、正しい音程や発生で歌うことよりも、元気に歌うということが良しとされてるようだったので、子供たちが怒鳴るように歌うことに我慢ができなくて、耳をふさいだり、教室から逃げ出したりということがあり、先生に叱られていた。

親が『アメリカにいた頃は、子供たちは正しく歌っていたので、授業を受けられていた』と先生に話したところ、先生からは『楽しく歌う子供を批判するんですか』と逆ギレされ、僕は“歌を楽しむ情緒がない子供”とみなされた。

今も、テレビの大きい音や、人の大きい声は苦手。でも、『音を小さくしても良いですか』とか『大きい声が苦手なので、もう少し小さい声で話してもらえますか』と言えるよになった」。

■「あさイチ出演は、いい機会だった」

栗原さんはこの日、自身のブログも更新。「多くの人に発達障害について知ってもらう凄くいい機会だった」と振り返り、発達障害の人も、共に社会で生活することについて、「皆と合わせるのが当然かもしれないと言うのは学校や集団の中に属していたらそれは避けられない事かもしれません。だけど、その中に理解してくれる人、調整役となってくれる人、そんな人がいたらそれだけで過ごしやすい環境が少しずつ出来ていくのではないのか」と思いを綴った。

さらに、栗原さんは自身が発達障害であること知ったからといって「“笑っちゃいけない”とは思わないでください」とファンに呼びかけた。

「僕が発達障害者であっても、そうでなくても僕は僕だし。
僕の個性が人を笑わせられるほど面白いのであれば
それはコメディ俳優を目指している僕にとっては本望です」。

■2015.5.26  栗原類さんADD(注意欠如症)を告白!発達障害者の周囲が経験するカサンドラ症候群とは?
ファッションモデルでタレントの栗原類さんが、25日放送『NHKあさイチ』で、発達障害のADD(注意欠如症)であることをカミングアウトしたことが話題となっています。
子供のころアメリカに住んでいて、ADDであることを早期に診断・治療できたことがよかったと本人も述べていました。
「今は早期診断されて自分の弱点とかできること、できないことが主治医や親に言われて、より分かりやすくなったと思いましたね」と、前向きに取り組んでいる姿勢に、ネットでは称賛の声が上がっています。


◆ADD(注意欠如症;AttentionDeficitDisorder)とは
発達障害は現在、神経発達障害と呼ばれ、「生まれつき親の育て方によらない生物学的な脳の機能不全を基盤とした、発達の顕著な偏りがあり、社会で生き辛さを抱える人」と定義されます。症状としてはASD(自閉症スペクトラム症)とADHD(注意欠如・多動性症)および両者の合併とに分類されています。
栗原さんはADD(注意欠如症;AttentionDeficitDisorder)とアメリカで診断されたとのこと。最新のDSM-5ではADHDと診断されるでしょう。
ADDを含むADHDは、脳に何らかの機能不全があって、行動上に問題が引き起こされる場合を指し、一般には「不注意」「落ち着きのなさ」「衝動的な行為」の3つを主症状としています。


◆脳の選択的統御が働きにくいADDの「不注意」
ADDの「不注意」には、興味の薄いものに対して集中できない、話していたり勉強していたりしても周囲のちょっとした動きや物音に反応し気が散ってしまう、忘れ物やケアレスミスが多いなどが挙げられています。
また、こうした行為の原因は、多くのことのうち何が大切で、何が大切でないかということを判断し、選別する脳の機能がうまく働かないからだろうと言われています。
結果として、たくさんのことから優先順位をつけて取り組むことを苦手とし、作業中に外の音に気を取られて作業を放り出したり、どうでもいいことを忘れずに大事なものを忘れるなどが起こり、周囲から、人に合わせない、決め事にこだわるといった印象をもたれてしまいます。


◆共通する感覚の過敏さ
栗原さん自身も「音への敏感さ」を告白していました。彼の場合は「大きな音」がストレスで集中をかき乱されていたとのこと。
この感覚の過敏さはADDに限らず、ASDにも共通しています。周囲の人にはなんでもなく思えることが、このタイプに非常に苦痛に思えることがあります。それで、家族や学校、地域など集団生活に支障をきたしてしまうことが多くあります。


◆発達障害者の周囲が経験する苦悩:カサンドラ症候群(カサンドラ情動剥奪障害)
発達障害を抱える本人も「生き辛さ」を経験していますが、周囲の家族もまた苦悩を抱えています。
とくに、男性に該当者が多いので妻が経験する場合が多くありますが、夫と気持ちの交流ができず、不満があっても自分が悪いと思ってしまい、孤独に陥り、偏頭痛、パニック障害、うつ病などを発症したり、世間には問題なく見える夫の不満を口にしても、他の人から信じてもらえなかったりする葛藤・ストレスにさらされます。

これを「カサンドラ状態」あるいは「カサンドラ症候群;カサンドラ情動剥奪障害」と呼びます。カサンドラの由来はギリシア神話に登場するトロイの王女の名で、「人から信じてもらえない預言者」でした。2003年に「カサンドラ情動障害」という名で公表されましたが、まだ正式な医学用語ではありません。


◆漫画を使って本人や経験者と語り合う
『あさイチ』でも取り上げられた「カサンドラ症候群」。
漫画『旦那(アキラ)さんはアスペルガー 奥(ツナ)さんはカサンドラ』(野波ツナ著、宮尾益知監修)を使ってご夫婦が障害について話し合ったり、ASDのパートナーをもった人たちの情報交換会が好評でした。
漫画のように視覚的な媒体を使って、現状を理解することが発達障害の人には理解しやすいこと、結果として、そこから役割分担や要望を明確にしていくことが関係改善に有益とのことでした。
逆に、インタビューを受けた人たちからの様子だと、発達障害者へのかかわり方を改善するのに、認知行動療法などは、あまりピンと来ていない印象が見受けられました。

■2015.5.26  社会生活で孤立させない!大人のADHDとアスペルガー症候群を理解する
大人の発達障害という言葉を聞いたことがありますか?発達障害を抱えていることに、大人になってから本人や周囲が気づくというものです。発達障害の中でも特に大人になるまで発見されにくいのが、ADHD(注意欠陥多動性障害)とアスペルガー症候群。なかなか自覚できないために、強いストレスを感じながら社会生活を送る人が増えているようです。




発達障害は見た目にわかりにくい

発達障害は脳機能の発達が関係する、生まれつきの障害です。コミュニケーション力や社会適応力の欠如など、日常生活を送る上で困難を感じる症状があります。子供のころに現われはじめますが、障害といっても見た目には分かりにくく本人すらも自覚しにくいものです。特に知的障害を伴わない発達障害は、周囲にその行動や態度から「個性が強い子」という印象を持たれながら、そのまま障害に気づかず大人になってしまうことがあるのです。



大人に見られるADHDの特徴とは

かつては子供特有の病気であると認識されていましたが、最近では大人になってADHDの症状に悩み、日常生活や仕事に支障をきたすことがわかっています。大人のADHDの症状は大きく分けて3つに分類されます。

不注意

ケアレスミスをする、忘れ物や物をなくすことが多い、約束や締め切りを守れない、片付けが苦手、物事を順序立てて行うのが苦手…など。

多動性

落ち着かない、貧乏ゆすりをする、自分のことばかりしゃべる、疲れるほど活動してしまう…など。

衝動性

衝動買いが多い、思ったことをすぐ口にする…など。



大人に見られるアスペルガー症候群の特徴とは

アスペルガー症候群は広い意味での自閉症のタイプのひとつです。自閉症のように幼少期に言葉の遅れがないため障害があることがわかりにくいですが、成長とともに不器用さが出てきます。

コミュニケーションが苦手

空気が読めない、言葉の裏の意味を理解できない、質問に的確に答えられない、自分ばかりしゃべり続ける、会話が成り立ちにくい…など。

想像力が欠けている

相手の感情を察することができない、臨機応変に対応できない、物事を順序立てて進めるのが苦手、物事を同時に進められない、環境の変化が苦手…など。

社会性に乏しい

場面に合わせた行動がとれない、言葉や作法の使い分けができない、年相応の社会常識が身についていない…など。
このほかにADHDに似た多動性や不注意の行動を見せたり、五感が鋭すぎる・鈍すぎるなどの症状が見られたりすることもあります。



自覚による自己コントロールと周囲の支援がカギに

大人になるまで気づきにくいと言われる2つの障害。就職や結婚など社会との関わりが増えていくにつれて、症状が現われて良好な対人関係が築けずに孤立し、うつ病や依存症などの二次障害に発展してしまうケースが現在問題になっています。それを防ぐためには障害の自覚と周囲の理解が不可欠です。
大人の発達障害であると思い当たるようであれば、まずは医師に相談を。診断が下されれば自分を責めたりする気持ちも軽減し、障害を受け入れて今後の生き方の指針を得ることもできます。周囲には本人の障害の欠点にだけ目を向けないよう理解することが求められます。症状に合ったサポートをすることで本人は自己肯定感を得られ、その特性を活かせるようになります。それまでは、社会全体があたたかく見守るということが重要なのかもしれません。

■2015.5.26  子どものADHD(多動・注意欠陥)を理解するためには?
近年よくADHDという単語を耳にするようになりました。ADHDとは何かというと、英語のattention-deficit hyperactivity disorderの略ですが、日本語では注意欠陥、多動性障害と言われており、一般の人よりも注意力が欠けるとか、多動で衝動性を持つという障害です。
ここでは、 ADHD(多動・注意欠陥)について、簡単に解説します。



ADHD(多動・注意欠陥)とは?

以前は、親のしつけが悪いとか、教育の問題だと思われていたような子どもの行動が、脳障害の一部だと診断されるようになり、専門家によってADHDかどうかを判断されます。幼少期からの早期発見と適切なプログラムを受けることによりかなり改善が見込めると言われています。

ADHDの症状は、大きく3つに分類されています。その3つとは「不注意」「多動性」「衝動性」です。

文部科学省の定義によると、 「不注意」とは、1つの事に集中できない、意識がそれやすい、必要なものを失くすなどで、 「多動性」はいつもそわそわしている、じっと座っていられない、走り回ったり高い所に上る、しゃべりすぎる、そして「衝動性」は順番を待てない、他人にちょっかいを出す、質問が終わる前に答えてしまうなどの項目に当てはまり、その状態が少なくとも6か月以上続いてるとされています。

注意障害は、女の子に多いといわれていますが、あまり目立たないため発見が遅れることが多々あります。多動性、衝動性は男の子に多く、暴れん坊な子だと思われがちです。また、注意障害と多動・衝動性を併せ持つ症状の子どもも見られます。



ADHD(多動・注意欠陥)の子どもたちって?

こうしたADHDを持つ学童期の子どもは日本では全体の10%前後だと言われていますが、その中でも特に症状が目立ち、日常に影響がある子どもは3%だと言われています。

ADHDの子どもは、自分で努力して頑張ってもどうしても宿題を忘れてしまうなどの症状がみられるため、学校や親に叱られがちです。そのため、自尊心を失い自分に自信を持てなくなってしまう子どもが多くみられます。一般的にADHDの症状は年齢を重ねるにつれよくなり成人になる前に症状が無くなる人も多くみられますが、成人後も症状が続く人がいます。



ADHDの診断はどこで受ける?

ADHDの診断ですが、心療内科で受けることが可能です。こうしたADHDの症状は、それに適したプログラムやサポートを受けていくことでかなり改善がみられます。
また、親も子ども障害を理解し、プログラムに沿った教育方針を強いていくことが大切です。
こうした子どもたちは、放っておけば劣等感や自信を失っている子がほとんどで、そのために情緒障害や不登校、学習障害を引き起こすことがあります。
自分に自信を持たせるための周囲のサポートがあり、また、自尊心を持つことができ、知的能力に障害がなければ、適切な治療を受けていけば治るとされています。

■2015.5.26  「アスペルガー症候群」という名前が消える?「自閉症スペクトラム障がい」とは
「自閉症スペクトラム障がい(ASD)」という言葉をご存じですか? これは重い自閉症から「自閉の傾向はあるが社会的にはほとんど問題なく生活できる」という人までをスペクトラム(連続体)の中で捉える概念のことです。2013年に、米国精神医学会が定める世界的な精神医学の診断基準「DSM」において、アスペルガー症候群や自閉症が「自閉症スペクトラム障がい」に含まれる形に改訂されたことから、日本でもこれに習い「アスペルガー症候群」という分類名は使用されなくなるのではないかと言われています。




ASDと自閉症の違いとは?

自閉症スペクトラム障がい(以下ASD)の最大の特徴は、これまで個別の障がいとされてきた「自閉症」「アスペルガー症候群」「非定型広汎性発達障がい」「小児崩壊性障がい」などを分類せず、すべてを包括して ASDと定義することにあります。また、自閉症の診断基準として採用されてきた「社会性」「コミュニケーション」「想像力」の3分野の診断領域を、「社会的コミュニケーション」と「限定した興味と反復行動」の2つに絞ったことも大きな特徴といえるでしょう。



これまでの定義の「曖昧さ」の改善が目的

ASDという診断基準が採用された理由として、これまで日本で採用されてきた「知的障がいを伴わない自閉」傾向にある人も「高機能自閉症」と「アスペルガー症候群」という2つの分類に分けられていましたが、患者の障がいをこの2つに分類することがとても難しいという指摘もあります。また、「非定型広汎性発達障害(=特定の難しい広汎性発達障害)」に関しても、その診断基準が非常に曖昧なため、「精神面で問題がある」とされる子どもの多くがこの障がいに分類されてしまうという懸念も、新たな定義が導入された理由のようです。



障害・非障害の間に境界線を引かない

ASDという概念が導入されたことにより、「発達障害」は大きく分けて学習障害(LD)、注意欠陥・多動性障害(ADHD)と自閉症スペクトラム障害(ASD)の3つにカテゴライズされることになりました。
ASDにおいては、自閉的な傾向を連続体として捉えることから、「障害・非障害の間に境界線を引かない」画期的な診断基準という見方もあるようです。しかし、そのために「ややこだわりが強い」「ひとりでいるのが好き」「物事に熱中しやすい」などといった、いわば「誰にでもある」ような特徴にもASDという診断がされてしまう可能性も指摘されており、ASDという名称の使用には慎重さも求められています。

■2015.5.26  もう筆談は不要です 斉藤区議に400万円の「声」と「耳」
4月の東京都北区議選でトップ当選した、「筆談ホステス」こと聴覚障害者の斉藤りえ区議(31)=日本を元気にする会=の議会活動を援助するため、区議会が25日、議場に導入した「音声認識システム」を報道陣に公開した。同システムは、「音声同時翻訳ソフト」や「音声読み上げソフト」を用いて議会、委員会での他議員の発言をタブレット端末に表示したり、斉藤区議がパソコンに打ち込んだ文字を音声に変換するもの。26日に初めて議会に参加する斉藤区議は「やっとスタートラインに立てた」と笑顔を見せた。

斉藤区議を支援するために、北区議会が、全国に先駆けて導入した「音声認識システム」が明らかになった。

この日、北区議会の議場で本会議で行われる「質疑応答」の場面を想定したデモンストレーションが約10分間行われた。斉藤区議役の女性職員が、パソコンを持ち演台に立ち機器を操作すると、打ち込まれた文章通りの「コンピューターの女性の声」が議場に響いた。

また、区長役の男性職員が演台に立ち答弁すると、ほとんどタイムラグがなく斉藤区議役の席に置かれているタブレット端末に文字変換されて表示された。書記官の早い説明などにも対応し、誤表記はほとんどなかった。

区議会事務局によると、導入した「音声同時翻訳ソフト」や「音声読み上げソフト」の文字認識率は約90%。文字はタブレットの画面を下から上に流れ、いっぱいになると上から消えていく。発言者のマイクからのみ音声を拾うため、多少のヤジは影響ない。ただし、イントネーションが付いていたり、単語が連なると、認識率が悪くなるという。

翻訳ソフト入りのノートパソコンを議場と所属する委員会に各1台設置、同様に音声の文字翻訳を確認するタブレット端末も4台ずつ導入。端末計8台は本人用、正しく文字変換されているか確認する議長用と事務局職員用、聴覚障害者の傍聴用となる。システム全体の導入費用は計約400万円。ちなみに手話通訳は年間約700万円かかるという。

この日午前の議員らに対して行われた実演に立ち会った斉藤区議は、取材に対しソフトを使い「一部読めない部分もありましたが、ほっとしています」と「音声」で答えた。ただし、パソコンのタイピングに関して自信がなさそうな様子で「速く打てるように努力します」と苦笑い。斉藤区議の議会デビューとなる26日の臨時会では、質問の機会はないとみられるが「大変楽しみ。不安はありません」と胸を張った。

■2015.5.26  生活介護施設:当事者の思い形に 障害者の母親ら開設 NPOを発足、3年で実現 桜井 /奈良
障害がある子供を持つ桜井市在住の母親ら8人が中心となり、今月1日に生活介護施設「日和(ひより)」を同市浅古に開設した。「当事者だからこそできる支援を」とNPO法人を発足させて3年。地域住民や行政の協力も得て完成させた待望の施設だ。


桜井市郊外の住宅地にある「日和」。「安心して気持ち良く過ごせる場所を作りたかったんです」。同施設を運営するNPO法人「ひかりの森」理事長の小野弘美さん(54)は、手足のマッサージを受ける長女満美(まみ)さん(32)を見つめて言った。

「日和」は心身に重い障害のある人たちを対象に、食事や入浴の介助のほか、体の動きを良くするストレッチなどのサービスを提供。利用者がゆったりとつかれる大きなバスタブ、明るく広々とした機能訓練室などを備えている。



「ひかりの森」は小野さん、副理事長の樋上千香さん(56)ら母親8人が2012年に設立した。8人は同市の「肢体不自由児・者父母の会」で知り合い、20年以上にわたって交流。その中で「重い障害のある子は養護学校を卒業後、家で過ごす例が多い。子供や家族がゆとりを持つ時間が必要と考えた」(小野さん)という。

重度障害者らの日常生活のサポートを目指し、同年5月から訪問介護事業を始めた。ただ、樋上さんは「訪問では限界があった」と振り返る。当時は入浴や食事の介助が主な業務内容。1〜2時間の訪問中、家族は外出せず家で立ち会うケースがほとんどだった。

子供たちを預かり、家族の負担を減らす場所が必要だと感じ、施設建設を目標に据えた。

土地は所有者の賛同を得て、駐車場になる予定だった場所を提供してもらい、借り受けた。県の担当者とは許認可や補助金について折衝。「これまで書いたことがない」(小野さん)ほどの書類を作った。国と県の補助金、メンバーがためた積立金、居宅介護の収益で費用約6000万円のめどを付けた。


そしてたどり着いた開業。小野さんらは「奇跡のよう。本当に多くの方々に助けていただいて今日がある」と喜ぶ一方、「これからがスタート」と気を引き締める。

今後はレクリエーションなどサービスを充実し、手足の機能を高めるマッサージの勉強会を開くほか、現在は仕出し弁当などの食事も自前調理を検討中だ。さらに居室を活用した宿泊を伴うショートステイの受け入れを目指している。「地域の方にも恩返ししていきたい」。小野さんらメンバーは意気込んでいる。


月〜金の午前9時半〜午後3時半に開所。土日祝日、年末年始は休業。定員20人。問い合わせは日和

■2015.5.27  進む議会のバリアフリー化 音声変換システムや手話通訳を導入
4月に行われた統一地方選挙では、聴覚障害を持つ2人の議員が誕生した。東京都北区議の斉藤里恵さん(31)と、兵庫県明石市議の家根谷敦子さん(55)。「聞くこと」と「話すこと」にハンディキャップを持ちながら、障害者らが暮らしやすい社会の実現のため、政治の世界に飛び込んだ。そんな議員の活動を後押ししようと、議会のバリアフリー化も手探りの中で進められている。(今仲信博)

26日午前、白のスーツ姿の斉藤さんが、筆談で使うボードなどを手に、北区議会の議場に入っていった。

「筆談ホステス」として知られる斉藤さんは、1歳の時に聴力を失い、話すこともスムーズにできない。そのため、同区議会は聴覚障害者への対応として、同日の区議会臨時会から音声変換システムを導入した。

発言者の声は、音声同時翻訳ソフトで文字化され、区議会が貸与するタブレット端末に表示される。また、斉藤さんが発言する際は、パソコンに打ち込んだ文字を音声変換ソフトが読み上げる仕組みだ。

この日は斉藤さんの発言機会はなかったが、タブレット端末の文字を熱心に見たり、議長を決める選挙では立会人を務めたりした。記者会見を開いた斉藤さんは「区長」が「苦労」に誤変換されたことなどを指摘しつつ、「来月の定例会では質問するつもりで、自分の思いが伝えられると思うと今から楽しみ」と話す。

明石市議会では、生まれつき耳が聞こえず、話すこともできない家根谷さんが議員活動をスタートしたことを受け、本会議や委員会で原則として手話通訳者を配置することを決めた。

これまで、同市議会では傍聴席に手話通訳者を入れることはあったが、同市議会事務局は「議場に入れるのは初めて。試行錯誤している」とする一方、「全ての議員は市民からの負託を受けいるので、しっかりと活動できるような支援をしていきたい」と強調した。

全日本ろうあ連盟によると、聴覚障害者の議員第1号は、平成13年の長野県白馬村議選に当選した桜井清枝さん。同村議会事務局によると、1期務めた桜井さんは手話通訳者や要約筆記者を置いて活動していた。

障害を抱えながら、政界に進む人たちを、新潟県長岡市議を3期務め、全国で初めて盲導犬とともに議場に入った全盲の藤田芳雄さん(67)は歓迎する。

「大変なことだが、障害を持つ人が福祉などを訴えることが、障害者の理解を得るのに一番良い方法」と藤田さん。「議会や行政には、議員活動がスムーズにいくような環境を整えてほしい」と訴えている。

■2015.5.27  <介護士課程2割減>給与の低さや過酷労働で学生敬遠
介護福祉士を育てる大学・短大や専門学校などの全国の養成課程の数が、ピークだった2008年度の507課程(434校)から、13年度の412課程(378校)へと、わずか5年で約2割減っていることが、厚生労働省や日本介護福祉士養成施設協会(東京都千代田区)への取材で分かった。介護需要の高まりで現場の人手不足が続く一方で、学生は介護職を敬遠し、養成機関が危機にひんしている格好だ。

介護福祉士の養成機関は厚労相が指定する。00年に介護保険制度が始まる以前から、多くの大学や専門学校が介護福祉士養成課程を設け、08年度まで増加が続いた。しかし、給与水準の低さや過酷な労働実態が知られて入学希望者が減少し、09年度から課程数は減り続けている。入学定員でみても08年度の計2万5407人から13年度の1万8861人へ約25%減少し、定員充足率は13年時点で69.4%。

一方、介護人材の不足は深刻だ。介護関係の職種の有効求人倍率(14年7月)は2.19倍で、全職種平均の0.95倍を大きく上回る。厚労省によると介護福祉士の登録者は、14年9月末で約129万人いるが、実際に介護職に就いているのは55%程度という。

団塊の世代が75歳以上になる2025年には約248万人の介護職が必要とされるが、現状のままでは約30万人の人手不足に陥ると厚労省は推計する。

介護福祉士になるには、3年以上の実務経験を経て国家試験に合格するか、養成機関を卒業する方法がある。厚労省は資質の向上を目的に、「社会福祉士及び介護福祉士法」の07年改正で12年度から国家試験を義務付けることにしたが、人材不足を受け、2度にわたり改正法施行を延期。今国会では、17年度から5年間かけ、段階的に受験義務付けを進める内容の法案を提出している。

厚労省福祉基盤課は「これまで学生に就学資金を貸し付けたり、離職者の訓練機関として位置付けたりするなど、介護福祉士を目指す学生確保に向けた政策を実施してきた。入学者の確保が困難となっていることは重く受け止めている」としている。

■2015.5.27  高齢の親任せ、介護の危機 障害のある我が子を80歳の母が殺害、現場を歩く  
特集ワイド:続報真相  毎日新聞 2015年4月3日

「疲れた。私が死んだら息子は生きていけない。今のうちに天国へ連れて行ってあげたい」。知的障害がある長男(54)の首を絞めて死なせたとして逮捕された80歳の母は、警察の調べにこう述べたという。先月、大阪市旭区で起きた事件。最悪の事態を防ぐことはできなかったのだろうか。現場を歩いた。

◇私が死んだら息子は生きていけない…

大阪府警旭署が発表した概要はこうだ。3月15日未明、自宅2階で寝ていた長男の首をタオルで絞めたり、口を塞いだりして窒息死させたとして、母の栢森敞子(かやもりしょうこ)容疑者を殺人容疑で逮捕した。同署によると、長男には生まれつき知的障害があり、トイレや食事、入浴がひとりでできなかった。栢森容疑者の夫は認知症で施設に入っており、長男の世話は栢森容疑者がほとんど1人で抱えていた。調べに対して「息子のことが苦になり、手が止まらずに殺してしまった」と述べたという。

事件があった旭区は、大阪市北東部に位置する。地下鉄の出口からしばらく歩くと、市営住宅や木造の民家が建ち並び庶民的な雰囲気が漂う。その一方で、真新しいマンションがあちこちにそびえ立っている。

2階建てのその自宅は、入りくんだ狭い路地に面していた。引き戸の玄関の斜め前に、銀色の雨よけシートをかぶった自転車がぽつんと置いてあった。

「その自転車は栢森さんのやで」と近所の男性(73)が教えてくれた。20年来の親交があるという。

男性によると、長男は電車に乗って作業所に通っていた。「栢森さんはいつも自宅の前で見送るんだけど、5分くらいすると自転車で追いかけていくんや。心配になるんやろうね」。長男を見送る小柄な栢森容疑者の姿は、近所の住民の朝のひとコマになっていたようだ。

また男性は「栢森さんは認知症の夫が入所する施設にも、月2回ほどこの自転車で面会に行ってたよ。片道40分もかけて。大きな道路を通らんとあかんのにね。施設の利用料金を引き落としにすれば手間が省けるんだけど、『手渡しにせんと、足が遠のいてしまうから』と通ってたんやで」と話す。80歳の高齢で交通量の多い道路を自転車で走るのはさぞ大変だっただろう。

ここでどんな生活を送っていたのか。男性は時々自宅に様子を見に行っていたが、いつもほこりがほとんどなく、きれいに掃除されていた。しかし2、3年前から、長男の状態が悪化した。夜尿症がひどくなり、栢森容疑者は「自分も年だし、体力の限界。どうしよう」と訴えていた。

知的障害者は外出時の付き添いや、数泊程度のショートステイなどの福祉サービスを受けられるが、男性は「利用しているところはほとんど見たことがない」と証言する。

「以前に息子さんを施設に入所させようとしたんだけど、息子さんが嫌がったらしい。でも最近は、決意して入所の手続きを進めようとしていたみたいだ」。そして「これを殺人事件だとは考えたくない。息子にあんなに深く愛情を注いではったんやから」とうなだれた。

事件発生から3日で約3週間。大阪地検は今日にも起訴するとみられる。

高齢の母親が将来を悲観するあまり知的障害のある子をあやめてしまう−−こんな悲しい事件は、今回だけではない。

大阪市では昨年11月にも、浪速区のマンションで母親(73)が知的障害のある次男(44)の首を絞めて死なせたとして逮捕されている。次男には重度の身体障害もあり、ひとりでは歩けない状態で、母親と長男が介護していた。

母親は調べに対して「また今日も介護が始まるかと思った。この生活から抜け出すために殺しました」と供述している。

事件が続いた大阪市の障がい福祉課の担当者は「個人情報が含まれるため何も話せない。完全な防止策は難しいだろうが、区と情報を共有し、相談業務などの場で感度を上げて異変やサインに気付くような努力を続けたい」と語る。旭区の保健福祉課は「(相談支援センターなど地域の関係者から成る)自立支援協議会で検討していきます」。その協議会のメンバーは「今回の件に大きなショックを受けています。相談員や施設の間でもっと連携を密にして、障害者の状況把握に努めなければならないと痛感しています」と打ち明けた。対応に問題はなかったか、施策として何が足りなかったのか……。検証やその公開がないままで、再発防止はできるのか。

「残念ですが、このようなケースがまた起きる可能性は高いと思います」と語るのは、佛教大准教授(障害者福祉論)の田中智子さんだ。田中さんは知的障害者を抱えている家族の家計調査などをしてきた。親が子を手にかけても大きなニュースにならず、埋もれている事例をいくつも耳にした。背景には、親子ともに高齢化して親の負担が増え、親の死後への不安も強まる実情がある、と指摘する。

市民団体「大阪障害児・者を守る会」(大阪市)が2013年に府内の重度障害者1620人を対象にした調査では、主に母親が介護をしている割合は95%以上。うち母親が60歳以上なのは28・6%だった。「高齢になるほど回答率が低かったので、実際の比率はもっと高いと考えられます」(播本裕子会長)

障害のある人たちが働く小規模作業所や授産施設などの全国組織「きょうされん」(東京都新宿区)が10年に行った調査では、主な介護者である母親の年代はもっと高い。50歳代37%▽60歳代32%▽70歳代14%▽40歳代13%−−だった。中には94歳の父親が58歳の娘(精神障害)を、93歳の母が72歳の息子(知的・身体障害)を介護している例もあった。

◇「地域移行」で施設は減少

現在国は、障害者の「地域移行」を進めている。施設に“隔離”するのではなく、地域での生活を支援することを趣旨とした「障害者総合支援法」は13年に施行された。現在、障害者個人ごとに生活環境や障害の程度に合った福祉サービスを盛り込んだ「サービス等利用計画」の作成が進められている。

だが大阪障害児・者を守る会の播本会長は「『利用計画』ができても、親の不安はなくなりません」と打ち明ける。「例えばショートステイを利用したくても、施設のスタッフ不足が恒常化しているために、なかなか予約が取れず、利用しづらい状況に変わりはありません。障害者を支える社会的な基盤が整っていないのです」と訴える。

知的障害者が関わった事件を多く担当してきた大阪弁護士会の辻川圭乃(たまの)弁護士は、「『地域で障害者を受け入れる』という方向性自体は間違いではない。ただ、それと引き換えに、グループホームなど入所できる施設の数は減少し、かなり重度の障害者しか入れなくなっている。家庭の事情で入所を希望しても、入れない人たちが出ていることに配慮が必要です」と訴える。

また播本さんは「子どもを施設に預けたいと希望するのは50代の親の比率が最も高い。それ以上年を取ると『一緒にいたい』親が増えてくる。苦労はあっても相互依存的な関係が固定化されてしまっている」と実情を語る。

田中さんも「幼少期から家族以外から支援を受けることに慣れていないと、親が高齢になったからといって急には使えないようです」と解説する。「長い間にわたってケアをしていると、『あー』と言えば『水が欲しい』と分かるとか、親子の間でしか分からないあうんの呼吸で意思疎通がされている。そのような状態で福祉サービスを利用しましょうとアドバイスされても、他の人に子供を理解してもらえないのでは、とためらってしまう」

田中さんによると、障害者を抱えた親の間では「子どもをみとった翌日に死ぬのが最も幸せ」とまでいわれている。

「『地域移行』が進んでいますが、経済面を含めた家族の負担は大きいままです。障害者を第一に支えるのは家族だ、との意識が今も社会に根強いからです。この意識を変え、社会全体で障害者を支えるという考えを定着させていくことが、親の安心につながる第一歩だと思います」

取材の最後、もう一度現場を訪れた。前日、郵便受けに無造作に突っ込まれていた宅配ピザのチラシはきちんと抜き取られていた。一見して留守宅と悟られないための配慮のようだ。

「近所の誰かがやってくれてるのとちゃうかな」と前出の男性。温かい人情を感じただけに、よけいにやるせなさが募った。

■2015.5.27  パチンコで認知症予防…手を動かし脳に刺激 
光や音で娯楽を演出するパチンコを介護現場で役立てようと、群馬県桐生市の中古パチンコ台販売会社が、福祉向けの台の開発を続けている。

先月末からは市内のデイケア施設など2か所に試験的に設置。関係者は、玉の方向を考えたり、指先の力を調節したりすることが認知症予防につながると期待する。

「あらやだ。大当たりがきちゃったわよ」。桐生市川内町の通所介護施設「モン・クール」に週2回通っている女性(90)が声を弾ませた。

広場の脇に設置された台が赤く点滅し、玉を引き込む中央の「羽」がパタパタと動き出す。「ここからの微妙な力加減が難しいのよ。どこに打てば入るかって考えながら打つから夢中になっちゃう」と、玉の行方を真剣に見つめる。

施設長を務める柿沼博昭さん(47)は「試験的に導入したが、予想以上に楽しんでいる人が多い。考えながら指先を動かすのでリハビリにもなります」と振り返った。

台を設置したのは、全国に中古台を通信販売する「グローバルスタンダード」(桐生市小梅町)。利用者が玉を口に入れないように受け皿の上にアクリルのカバーを付け、音や光も控えめに調整した。

社長の野口智行さん(32)が介護現場向けの台の開発を始めたのは、2年前。テレビ番組で「お年寄りがゲームセンターに集まっている」というニュースを見たことがきっかけだった。同時期に、全国の老人福祉施設からの注文も増え、本格的な開発を始めた。

軟らかいボールを握る動きや、カスタネットを鳴らす動きなど、介護現場でリハビリとして導入されている動作を使った操作方法も開発しており、今後、実用化を検討する。

野口さんは、「パチンコというとギャンブルというイメージを持つ人もいるが、目や耳、手足を複合的に動かすことで脳の刺激にもなる。パチンコを経験した施設利用者も増えるので、専門家にも意見を聞きながら開発を続けたい」と話した。

高崎健康福祉大保健医療学部講師で、理学療法士の山上徹也さん(36)は「玉の行方を考えることは、注意力や集中力をつかさどる前頭葉の刺激になり、認知症の予防につながるのではないか。点数を表示すると競争意識も芽生え、効果が高まると考えられる」と分析した。

■2015.5.27  看護師に「短時間常勤」 人員確保へ導入進む
団塊世代が七十五歳以上となる二〇二五年には、現在より五十万人多い二百万人の看護師が必要とされる。医療現場では、「短時間常勤」という働き方の選択肢を増やし離職率を下げたり、負担の軽い業務から始められる制度を導入し潜在看護師を掘り起こしたりするなど、対策が進んでいる。十月からは、看護師等人材確保促進法の改正により復職支援を看護師が受けやすいよう離職時に届け出る制度が導入される。

「フルタイム勤務だと、辞めるか、(長時間無理してでも)頑張るかしかないと思っていたけれど、選択肢が多くなり助かった」

川崎幸病院(川崎市)の外科病棟で働く小林奈津子さん(32)はほほ笑む。看護師歴十二年目(育休期間含む)の今年一月、長男(1つ)を院内保育所に預け、正職員として復職した。

同病院は〇八年、勤務時間を四〜六時間で選べる短時間正職員制度を導入。利用している約三十人の正職員の大半が育児・介護中だ。小林さんは復職当初には四時間勤務で、現在は午前九時から午後二時半まで働いている。

短時間勤務とはいえ、パートなどの非常勤職員と異なり、週末勤務をしなければならないが、制度導入後には出産と育児のための離職率が半減した。佐藤久美子看護部長は「結婚適齢期の看護師は現場のリーダークラスで、辞められると病院が困るものの、自由に休める非常勤職員が増えると、常勤職員への負荷が重くなる。職場の基盤である正職員を増やしたかった」と導入理由を説明する。

看護師資格を持っていながら、現在は働いていない潜在看護師を発掘する取り組みもある。大阪府済生会吹田病院(吹田市)は〇八年から、原則経験三年以上の看護師を対象に、週一日、一日二時間から働ける「くわいナース」制度を始めた。掘り起こして収穫する地元の伝統野菜「くわい」にかけた名称。受け持ち患者をなくし、食事介助など離職中のブランクが影響しない業務を担う。家族の急病で休めるなど自由度が高い一方、休日取得などに制約がある。時給も他の職員より三百円安い。現在約七十人が登録。その六割が育児中の看護師だ。くわいナースの導入で、正職員一人当たりの月間残業時間は半減した。

日本看護協会の調べ(一二年)では、看護師や助産師などの看護職二百二十五万人のうち、三割を超える七十一万人が資格を生かした仕事をしていない。井伊久美子専務理事は「負荷が重い勤務をしていた人ほど心理的に戻りにくい」と説明する。

十月施行の改正法には、復職研修や求人情報が受けやすいよう、離職時に都道府県ナースセンターへの届け出を促す制度が盛り込まれており、協会は二五年までにさらに五十万人の確保を目指す。

厚生労働省の看護職員就業状況等実態調査(二〇一一年)によると、働いている看護職員の八割以上が夜勤や残業がある正社員。一方、再就職希望者が求める雇用形態はパートやアルバイトが48%を占め、短時間正社員を含めると七割。フルタイム勤務と家庭生活の両立に不安がうかがえる。(合計が100%にならない場合も)

■2015.5.27  ベトナム人看護師候補第2期生151人、いよいよ日本へ
経済連携協定(EPA)に基づき日本がベトナムから受け入れる看護師・介護福祉士候補の第2期生151人が26日夜、日本へ向けてベトナムを発つ。労働傷病兵社会省と在ベトナム日本国大使館は25日午前、紅河デルタ地方フンイエン省で壮行会を開催した。

今回日本へ派遣される151人は、第2期生180人のうち訪日前研修を修了し、且つ日本語能力試験でN3(日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することができるレベル)に合格したメンバーだ。

第2期生は日本で、日本語研修や看護・介護の導入研修を受けた後、受け入れ先の病院・介護施設での就労を開始する。彼らは実地で経験を積みながら、看護師・介護福祉士の国家試験合格を目指す。

3月には、第1期生の1人が看護師国家試験に合格し、日本で初めてのベトナム人看護師が誕生した。現在、第3期生180人がベトナムで訪日前研修を受けており、2016年にも日本へ渡る見通しだ。

■2015.5.29  やせている人、要介護リスク高く 県・鴨川市調査
やせている人やたんぱく質をとる量の少ない人は要介護になるリスクが高まるという調査結果を県がまとめた。県は「肥満の健康へのリスクは知られているが、やせすぎの人も注意が必要」とし、今後、健康づくりの施策に生かしていくという。

県は鴨川市と共同で、2004年1月時点で同市に住む40歳以上の男女6494人を対象に、食生活や身体活動などについてアンケートを実施。その後10年間追跡調査をしたところ、1085人が要介護認定を受けたという。

要介護認定を受けた人とそうでない人の調査結果を分析した結果、体重(キロ)を身長(メートル)で2回割った体格指数「BMI」が18・5未満とやせている人は、標準的な体格(BMI22・5以上25未満)の人に比べ、要介護となるリスクが男性で1・75倍、女性で1・47倍高くなった。

■2015.5.30  介護必要な人と家族生活 新形態の施設、出雲に開設へ
社会福祉法人ことぶき福祉会(島根県出雲市塩冶有原町、槻谷和夫理事長)は、高齢者や障害者と、その家族が一緒に生活する福祉施設を出雲市内に開設する。「小地域相互ケアホーム」と銘打った県内初の施設形態で、敷地内に住宅10棟と交流ハウスを整備。相互扶助を理念に掲げ、入居者同士が24時間体制で支え合う態勢を構築する。2016年春の供用を目指している。

同市古志町の2900平方メートルの敷地に、1〜2人暮らし用の平屋5棟(家賃月3万8千円)、同2〜4人用の同3棟(同4万5千円)、家族用の2階建て2棟(同6万5千円)を整備。住宅の中心に交流ハウスを設置する。

国が認める施設形態にはなく、補助金が受けられないため、同法人が全額自己資金で賄う。全施設バリアフリーで、総工費は1億8千万円。

「社会福祉の原点である助け合いの精神を具現化する施設をつくりたい」と槻谷理事長(62)が2年前から準備を進めてきた。要介護度や障害の程度を問わず、誰でも入居できるのが特徴。入居者は面談で決める。

施設名は「ことぶきの里」で、家事や買い物支援など日常生活で入居者同士が支え合う仕組みをつくる。交流ハウスには各種相談に応じる職員を常駐させ、介護予防活動や地域住民との交流イベントで活用する。

グループホームをはじめとした福祉施設は、集団生活を前提に建築されているが「一つの住まいで家族と一緒に過ごすことで、病状や状態の安定が見込める」(槻谷理事長)と戸建てにした。
同法人は市内3カ所の福祉施設を運営している。入居者は今秋以降に募る。問い合わせは同会

■2015.5.30  介護大手のニチイ学館が大幅減益、背景に介護業界の労働環境の悪化が
前期は微増収大幅減益

介護業界大手のニチイ学館が前期の決算を発表した。主な数字は次の通り。

売上高:2718億円(2014年比+0.2%)
営業利益:51億円(同-18.2%)
経常利益:31億円(同-36.3%)
当期利益:4億円(同-85.3%)

部門別の売上高と営業利益は次の通り。

【医療関連】
売上高:1064億円(2013年比+0.5%)
営業利益:91億円(同+5.5%)

【介護】
売上高:1446億円(2013年比+1.1%)
営業利益:116億円(同-7.2%)

【ヘスルケア】
売上高:40億円(2013年比+8.1%)
営業利益:2億円(同+8.0%)

【教育】
売上高:167億円(2013年比-9.5%)
営業損益:79億円の赤字(72億円の赤字から赤字幅拡大)

【その他】
売上高:16億円(2013年比+25.0%)
営業利益:3億円(同+664.6%)

同社は4月に決算予想を下方修正しており、概ね下方修正した数字に沿った結果だ。

発表によると、介護部門が人手不足だったことから、利用者の減少により収益が悪化したこと、教育部門が介護職員初任者研修の受講生の減少が続いたことから、赤字拡大になったとしている。

改善されない介護業界の雇用環境

資料には「雇用環境の改善による資格取得ニーズの低下」とあるように、同社の介護部門と教育部門の収益悪化の根っこは共通している。

つまり「働く場所がなければ、介護業界の厳しい待遇でも働くけど、もっと良い待遇の職場があるなら、そっちで働くよ」と言うことだ。

介護業界における、給与水準の低さや待遇の悪さは、新聞やテレビなどでも度々報道されてきた。

国は人材確保を目的として、介護で働く人の給与アップを打ち出しているものの、一向に改善される気配がない。それどころか他業種に離職する人が増えたことで、現場では人手不足に拍車がかかっているとの報道もある。

ニチイ学館の強みがネックに

同社の強みは、同社で資格を取得したり育てたりの人材育成と、同社が仕事を紹介したり派遣したりの就労創出の両方を兼ねていることだ。

それ故、資格取得に高めの費用がかかることや、就職先の待遇がいくらか悪くても、全体を踏まえて同社を選ぶ人が少なからず存在した。

しかし人手不足による賃金アップや雇用環境の改善が進められると、同社の高めの費用や就職先の待遇の悪さは、二重の悪条件となる。

根本的にこうした部分を直さない限り、同社の収益は改善しないのではないだろうか。

気になる部門変更

決算資料を見ると部門変更の発表があった。内容は次の通り。


“組織変更およびマネジメントアプローチの観点から、教育部門の医療事務講座、介護職員初任者研修等の資格系講座につきましては、医療関連部門、介護部門にそれぞれ組み入れてまいります(教育部門は、語学講座および趣味・教養講座となります)。
保育事業につきましては、これまで院内保育は医療関連部門、その他を介護部門に計上しておりましたが、保育事業の規模拡大、事業の重要性等を鑑み、保育部門としてセグメント表示いたします。
また、株式会社ニチイグリーンファームの業務(花卉・種苗等の生産・販売、観光施設の運営・管理、ペット犬の飼育・販売等)をその他よりヘルスケア部門へ移管いたします。”

こうした変更は、事業推移を見守る意味で、継続性が断たれる側面もある。不振の続く介護部門や教育部門の悪い部分を隠すような変更とならないか、注意する必要がありそうだ。

なお今期の予想数字は次の通り。

売上高:2943億円(前期比+8.3%)
営業利益:89億円(同+72.0%)
経常利益:61億円(同+94.0%)
当期利益:26億円(同+524.9%)

数字の通りであれば、急回復を想定しているが、果たして上手く行くだろうか。

■2015.5.30  熱々の一杯、高齢者に 函館元祖バスラーメン、福祉施設を訪問
思いのこもった一杯をどうぞ―。函館・湯の川温泉街などで営業する移動式ラーメン店「函館元祖バスラーメン」が函館市内と近郊の福祉施設を訪れ、注文に応じて出来たてのラーメンを提供する訪問営業を行っている。代表の丸山憲雄さん(70)は「皆さんの笑顔が何よりの喜び」と語り、今後も続けていく考えだ。

丸山さんは37年前から、調理場と食事用のいす席を取り付けた小型バスを使って営業。訪問営業は通常、30杯以上の注文がある場合に限っているが、幼少時にラーメンのおいしさを教えてくれた母ヨシエさんが亡くなる前、市内の老人ホームに入居していたことから、この10年ほどは「高齢者に熱々のラーメンを味わってもらいたい」と、30杯に満たない注文でも小規模な福祉施設を訪れている。

「作りたてを食べられる」と口コミで人気が広がり、これまでに北斗や函館市戸井地区などの20施設以上を訪問。動ける人はバスに乗り込んでもらい、難しい人には施設内で、みそ、塩、しょうゆなどのラーメンを定価で提供している。

24日には函館市湯川町2のはこだてケアセンター「そよ風」を訪れ、施設利用者18人と職員から注文を受けて、みそラーメンを提供。妻寿子さんが施設内に出来たてのラーメンを運び「バスラーメンですよ」と呼びかけると、利用者は「ありがとう」と感謝を伝え、熱々の麺をすすった。

同施設での訪問営業は3回目で、杉本貞之センター長は「施設利用者は店に行ってラーメンを食べる機会が少ない。皆さん『おいしい』と喜んでいた」。丸山さん夫婦は初めて訪れた市内の福祉施設で91歳の男性がラーメンをすすり、「もう死んでもいい」と感激した言葉が忘れられないといい、「移動販売だからこそできることがある。1人でも喜んでくれる人がいる限り続けたい」と誓っている。

■2015.5.30  ADHD、目の動き注視 阪大研究、通常より速度遅め
発達障害のひとつ、注意欠陥・多動性障害(ADHD)の子どもは、視線を素早く動かす速度が、通常より遅いことが大阪大の研究で分かった。早期の診断などに生かせる可能性があるという。研究成果は28日、米科学誌プロスワン電子版に掲載される。

ADHDの診断は子どもの普段の行動について、親や教師などへの医師の聞き取りが主な方法だ。

阪大の喜多村祐里准教授(環境医学)らは、「サッカード眼球運動」と呼ばれる、視点を固定したり、素早く移したりする目の動きに着目。ADHDと診断された5歳〜11歳の37人に、画面中で様々なパターンで明滅する印を目で追ってもらうと、ADHDでない子では、反応する速度が0・02〜0・04秒速くなるパターンでも、ADHDの子の場合は変わらなかった。ADHDの子どもは、目の動きを制御する脳の働きに何らかの異常がある可能性があるとみている。喜多村さんは「早期発見や治療の効果を調べることができるかもしれない」と話している。

■2015.5.30  認知症患者500万人、「社会費用」年14.5兆円に
認知症にかかる医療・介護費と家族介護の負担も含めた「社会的費用」が、年間14・5兆円に上ることが、厚生労働省の研究班(代表・佐渡充洋みつひろ慶応大助教)の推計で初めて明らかになった。

家族介護の負担は年6・2兆円と、費用全体の4割超を占めた。認知症の人は約500万人に上り、政府は今年1月に認知症国家戦略を策定したが、家族の負担軽減策を急ぐなど、政策の強化が求められそうだ。

推計は、医療・介護サービスを利用している認知症の人を対象に、2014年時点の1年間の費用を計算した。医療・介護費は、国の医療保険や介護保険などのデータを基に計算。医療費は年1・9兆円、介護費は年6・4兆円に上った。

一方、家族による介護負担の費用は、家族約1500人について、実際に介護にかけた時間を調査。認知症の人1人当たり平均で年間延べ1300時間を費やしていた。このうち、トイレ介助などは、介護保険サービスの費用に置き換え、1時間当たり4955円で計算。食事の支度などは、介護をする代わりに働いていれば得られた賃金として、1時間当たり965円で換算した。その結果、認知症の人1人当たりの家族介護の費用は年間382万円。全体では6・2兆円と、認知症の人が使う介護保険の費用に匹敵した。

将来推計では、団塊の世代が85歳以上になる35年には総額22兆9244億円にまで膨らむと試算した。

全医療費の3分の1に

認知症ケアに社会全体でどれだけの費用がかかっているかが明らかになった。推計で年間14・5兆円と、国民全体の医療費43兆円(2014年度予算)の3分の1にあたる規模だった。

認知症の人は、2025年には約700万人まで増える。今回の推計は医療・介護費や家族負担に限定されたもので、詐欺被害や徘徊はいかい中の事故、見守りの負担も含めれば、将来的には、費用がどこまで膨らむか想像も付かない。対策は、まさに火急の課題だ。

認知症にかかる社会的費用については、世界保健機関(WHO)が、12年に「10年時点で世界で6040億ドル(約75兆円)」と報告。米国では、10年時点で年2150億ドル(約27兆円)と試算している。

欧米では認知症が及ぼす経済的影響を明らかにし、対策を強力に推し進めている。日本も、今回得られた推計をもとに、効率的な施策づくりを急ぐべきだ。

■2015.5.30  障害者福祉 拡充ぜひ  きょうされん、共産党と懇談
障害者団体「きょうされん」(西村直理事長)は28日、日本共産党国会議員団と国会内で懇談しました。高橋千鶴子、堀内照文両衆院議員と小池晃参院議員の秘書が参加。

赤松英知常務理事は「昨年4月から消費税が上がり障害のある人たちの生活を圧迫しているのに、年金引き下げや生活保護費の削減がある」と指摘。兵庫県から参加した男性は「障害年金6万円程度と給料1万円では生活ができない。年金を上げて」と要望しました。

松江市内の障害者支援事業所の職員は、障害者が65歳になると介護保険に移行させられる問題を訴えました。「障害のある仲間を最低賃金で雇用しているが、仲間は65歳で対象外になり仕事を続けられなくなる。収入はわずかな障害年金だけになるので、希望者は働き続けられるようにしてほしい」

高橋議員は今国会に提出された社会福祉法改悪法案が社会福祉法人の運営を困難にすることにふれ、「与党議員とも改悪阻止で一致できるところもある。共同をつくっていきたい」と述べました。

きょうされんは同日、障害者福祉に関する法制度拡充を求めた請願署名110万人分を持って、全国会議員に要請。400人が行動しました。厚生労働省にも要請しました。

■2015.5.30  枝豆収穫機:社会福祉法人に寄贈 角田 /宮城
障害者の就労施設「虹の園」などを運営する角田市の社会福祉法人「臥牛三敬会」(湯村利憲理事長)に25日、公益財団法人イオンワンパーセントクラブから特定非営利活動法人「難民を助ける会」を通じ、枝豆収穫機が寄贈された。

同法人は角田市や川崎町などで就労施設を運営しているが、多賀城市と山元町の2施設が東日本大震災の津波で被災。枝豆収穫機は注文生産した最新型で、県南地方では初めて導入された。豆を引き抜いて、そのままコンテナに収納するもので、引き抜く、運ぶなどの手間を省ける。

虹の園は角田市枝野地区で農家から3・5アールの畑を借り受け、利用者と生産者約10人が「秘伝豆」を栽培。年間約1・5トンを収穫し、塩釜市のかまぼこ業者に納入している。

贈呈式で湯村理事長は「農業従事利用者も高齢化しており、労働軽減と時間短縮につながる。大切に使い、利用者の賃金アップを図りたい」とあいさつした。

 

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