残しておきたい福祉ニュース 1996〜社会福祉のニュース

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残しておきたい福祉ニュース

 2015年 
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 * * *

 2015. 1. 1 わかりあえたら:不寛容時代に -1  住民、漠たる不安 住宅街の障害者ホーム建設 「暮らし壊される」、過熱した反対運動
 2015. 1. 3 障がい者の作品普及に力 原画をデータ化し販売
 2015. 1. 3 介護報酬引き下げに見る社会福祉法人の隘路  藤田憲彦 元民主党衆議院議員
 2015. 1. 3 福祉バンク 障害者と共に
 2015. 1. 4 アール・ブリュット 不可解な「落書き」は「芸術」になった 大捕萌=おおとり・めぐみ(20)
 2015. 1. 4 アール・ブリュット むき出しの感情と波打つヒモ 武友義樹(51) 
 2015. 1. 4 【累犯障害者 塀の中の福祉(2)】 思うようにならないウルトラマンポーズ=c体動かし「不器用」克服し再犯防止 認知作業トレーニング
 2015. 1. 4 【累犯障害者 塀の中の福祉(1)】 「出所後にエロ本買いたい」…罪と罰どう理解させる PFI刑務所、社会復帰に向けた民間ならではの「福祉的支援」
 2015. 1. 4 【累犯障害者 塀の中の福祉(3)】 「パチンコ勧誘」題材に教育プログラム 犯罪の誘惑に負けない心…キーワードは「断る力」
 2015. 1. 4 【累犯障害者 塀の中の福祉(4)】 4割が仕事ないまま退所していく「現実」 更生保護施設入所の元受刑者 国は就労支援強化へ
 2015. 1. 4 障害年金の審査に地域差  「誤判定、確実に存在」  現場の医師、国に不満 
 2015. 1. 4 認定医の負担、地域差14倍/障害年金
 2015. 1. 5 介護度が高い人でも安心して入居可 看護師が開設したサ高住
 2015. 1. 5 特養の半数、職員定数割れ 都内の305施設中 人手不足、深刻 事業者団体調査
 2015. 1. 5 介護職離れ、負の連鎖 低待遇・負担敬遠で職員減り
 2015. 1. 5 増やせ保育所・特養 都が50億円出資しファンド設立へ
 2015. 1. 5 「日本の介護、支えます」 米国人の特養施設長
 2015. 1. 5 国民健康保険、18年4月に都道府県移管へ
 2015. 1. 5 未届けホームの2割超が建基法令違反−非常用照明の未設置など、国交省調査
 2015. 1. 6 豆腐なのに高カロリー 井村屋が高齢者向けに開発
 2015. 1. 6 東京の特養、深刻な人材不足が常態化−ショートやユニット閉鎖、受入抑制も
 2015. 1. 6 5年後、介護の関連市場は2兆7千億円超に−富士経済が調査
 2015. 1. 6 ついのすみか、ともに造ろう 建設費出し合い・各自で部屋設計
 2015. 1. 6 誓約書に「死んでも責任問わない」 フィリピン人女性が提訴したブラック=H介護施設の実態
 2015. 1. 7 障害者福祉、報酬減額へ 事業者向けを1%前後 15年度、政府最終調整
 2015. 1. 7 わかる:重症障害者に福岡県8介護施設指定 ショートステイ広がらず 「経験不足」受け入れ消極的
 2015. 1. 7 <自民>介護報酬等引下げに反対
 2015. 1. 7 「障害者でも挑戦を」 菊川の吉松さん、交通事故で両足まひも起業
 2015. 1. 7 障害者アート全国に 射水のNPO、トランクで作品交換へ
 2015. 1. 7 正月知事選:11日投開票 県の障害者ら就労支援事業 国の補助終了、存続の危機 /佐賀
 2015. 1. 7 北海道内の医師、あと千人必要 地方の不足さらに加速 道調査
 2015. 1. 8 認知症高齢者:5人に1人…10年後推計
 2015. 1. 8 特養定員、17年度3295人増 北海道の計画素案、高齢化率30%に
 2015. 1. 8 サ高住、県内3000戸超 松山は市区町村別全国一
 2015. 1. 8 介福士取得の留学生、訪問系での就労も視野−厚労省検討会、肯定的意見が優勢
 2015. 1. 8 認知症、2025年に700万人 高齢者の5人に1人
 2015. 1. 9 子育て支援で乗客確保 京阪が淀駅近くに保育園開設
 2015. 1. 9 道交法上は歩行者 電動車椅子、十分な練習を
 2015. 1.10 インフル集団感染1人死亡、広島 男性患者、院内歩き拡大
 2015. 1.10 かわいい赤ちゃん、ママと高齢者結ぶ デイケア施設、笑顔広がる
 2015. 1.11 障害福祉サービス:来年度報酬総額据え置き
 2015. 1.11 <介護報酬減額>待遇改善、停滞の恐れ
 2015. 1.12 介護報酬、下げ幅「過去最大」回避 政権、批判を懸念
 2015. 1.13 介護職不足 特養急増、薄い人手
 2015. 1.13 都内の公立保育園 職員の半数近くが非正規
 2015. 1.14 脳死女児両親コメントの一部削除 6歳未満脳死で 日本臓器移植ネットワーク
 2015. 1.14 脳死判定:6歳未満女児、3例目…重い心臓病で移植待機中
 2015. 1.14 女児からの臓器摘出手術を実施 阪大病院
 2015. 1.15 障害者虐待:認定58件 「家庭」最多の54件 府内13年度 /京都
 2015. 1.15 全国初!Visaプリペイドカードによる生活保護費の支給をモデル的に実施
 2015. 1.15 リスク高い機器使うしか… 脳死女児の両親、改善願う
 2015. 1.16 介護職員「25年度に30万人不足」 厚労省調べ  賃上げなど対策強化
 2015. 1.16 「親から虐待」半数超 里子・養護施設の子供4万8千人 厚労省調査
 2015. 1.16 ランドセル:今年も寄贈 四日市のかばん専門店・竹腰社長「未来へ明るい気持ちで」 /三重
 2015. 1.16 看護師、介護福祉士候補のインドネシアの4人着任 鹿島 /佐賀 日本とインドネシアの経済連携協定
 2015. 1.16 運転免許制度見直し 認知症見逃さず
 2015. 1.16 阪神大震災:神戸市営地下鉄、17日始発早める 追悼行事に合わせ
 2015. 1.17 阪神大震災 <兵庫県南部地震> 朝日新聞1面記事
 2015. 1.17 「生きにくさに気づけ」 弁護士と社会福祉士が罪に問われた障害者を支援
 2015. 1.18 介護報酬引き下げで現場に危機感 離職、サービス低下、倒産も
 2015. 1.19 “好きな作業”を通して患者さんを元気にする「作業療法士」
 2015. 1.19 デイサービス空き店舗で 大牟田の商店街に登場
 2015. 1.19 インフル集団感染で看護師死亡 松本、患者1人も
 2015. 1.20 無届け介護ハウス 「実情に応じ指導を」
 2015. 1.20 「無届け介護ハウス」かどうかを見分けるには?
 2015. 1.21 なぜ介護報酬引き下げ? 認知症施策推進総合戦略は新味なし
 2015. 1.21 福井の特別養護老人ホーム横浜進出 首都圏で施設不足、需要見込む
 2015. 1.21 最期の迎え方を選択 特養入居時、希望を確認  特養で看取る
 2015. 1.21 住友林業、デイサービス事業に参入=介護ビジネス、売上高60億円目指す
 2015. 1.21 高齢者増でも閑古鳥、老人ホーム破綻の不思議
 2015. 1.21 インフル院内感染2人死亡、福岡
 2015. 1.21 箕面市の病院でインフル集団感染 2人死亡
 2015. 1.21 北九州の病院で51人インフル感染 高齢者5人が死亡
 2015. 1.21 「娘の分身、頑張れ」 女児の両親、臓器提供の拡大訴え
 2015. 1.22 インフル集団感染、患者2人死亡 大阪・寝屋川の病院
 2015. 1.22 癒やしの「パロ」触れて 来月、介護ロボ展示会
 2015. 1.22 理学療法士の橋本さん 被災地に介護モデルを
 2015. 1.23 浜松のお好み焼き店 障害者支援4年 調理、接客「修業中」
 2015. 1.23 病院でインフル集団感染、入院患者男女4人死亡
 2015. 1.24 養護施設入所者の進学促進 静岡県、大学卒業まで補助
 2015. 1.24 介護職の不足 外国人頼みには限界ある
 2015. 1.24 ハンセン病認知度調査 8割が偏見・差別を認識
 2015. 1.24 ハンセン病療養所の歴史保存  世界遺産への登録を
 2015. 1.24 インフルエンザ集団感染、90代女性が死亡 滋賀・草津の特養
 2015. 1.24 病院でインフル集団感染1人死亡 広島
 2015. 1.24 <被災地の高齢者施設>介護報酬引き下げで悲鳴
 2015. 1.24 特養申込者2万人超 10年度以降で初 県内の今年度 /広島県
 2015. 1.24 触法障害者らの支援探る学会設立 全国で研修やシンポ
 2015. 1.25 <被災地の高齢者施設>介護報酬引き下げで悲鳴
 2015. 1.25 ベトナム女性 福山で介護
 2015. 1.26 ビル清掃や縫製の技術競う 県障害者技能競技
 2015. 1.26 インフルエンザ:集団感染 入院患者1人が肝不全で死亡 山梨県身延町の病院
 2015. 1.26 社会福祉法人の地域公益事業 「無料」または「低額」と定義
 2015. 1.26 独居の親が歩行困難に 老健の利用を推奨
 2015. 1.26 罪を繰り返す息子 /大阪
 2015. 1.26 芝浦工業大:民家を障害者交流施設に 大学院生3人が改修支援
 2015. 1.26 「素直に感謝できる人に」 知的障害者ら祝う 坂井 /福井
 2015. 1.26 卓球:障がい者らが 津でスポーツ大会 音出る専用球打つSTTも /三重
 2015. 1.26 「介護福祉士」取得しても待遇は… 仕組みは次々変更
 2015. 1.26 小児患者に不正麻酔問題、東京女子医大に立ち入り検査
 2015. 1.26 狭い玄関でも使えるリフト「リーチ」
 2015. 1.27 病院でインフル集団感染、男女4人死亡 秋田・鹿角
 2015. 1.27 外国人介護職、入国時は日本語能力「4級」で可
 2015. 1.27 外国人の介護実習生、日本語条件は「小学校低学年程度」
 2015. 1.27 「知的障害者の創作・感性が刺激に」 滋賀の福祉施設で芸術家が交流
 2015. 1.27 おにっこハウス拡大、2月3日新装オープン 熊谷で障害者らが運営
 2015. 1.27 乗馬施設が障害がある子の「放課後等デイサービス」事業
 2015. 1.27 京都・宮津、インフルで1人死亡 ケアハウスで10人発症
 2015. 1.27 おにっこハウス拡大、2月3日新装オープン 熊谷で障害者らが運営
 2015. 1.27 福岡県経営者協会会長 竹島和幸氏  労働制度、時代に対応した改革を
 2015. 1.28 監査人設置を義務付け=社会福祉法人の改革案
 2015. 1.28 田川市の社会福祉士 岩永さん 女子プロボクサー合格 [福岡県]
 2015. 1.28 事故から30年 25人の死「心に刻む」 犀川スキーバス転落 現場で献花
 2015. 1.28 広島)福山にも性的少数者の自助グループ発足
 2015. 1.28 免許センターに看護師 県警、認知症疑い発見へ
 2015. 1.29 障害者の春を泣かすな 特別支援学校で卒業前のアセス実施 横浜の関係者に懸念強く
 2015. 1.29 堺市役所食堂が障害者の働く場に 「笑顔でおもてなし」意欲
 2015. 1.29 障害者アート世界に発信 県、滋賀などと有志タッグ
 2015. 1.29 発達障害児も共に学び「不登校ゼロ」を実現した奇跡の小学校
 2015. 1.29 秋田)職員から感染拡大か 鹿角の病院、インフルの4人死亡
 2015. 1.29 <盲導犬>受刑者が育てたパピー 第6期修了、6頭日本協会へ−浜田 /島根
 2015. 1.29 {アール・ブリュット} 障害者アート世界に発信 県、滋賀などと有志タッグ
 2015. 1.30 体罰で教員3953人を処分 13年度、過去最多を更新
 2015. 1.30 介護プロ認定者輩出の事業所に助成金支給へ−1人認定で年50万円、東京都が4月から
 2015. 1.30 建設費1・5倍の90億円に 17年開設予定、障害児医療施設
 2015. 1.31 特養集団インフル「命預かる場で申し訳ない」…秋田


■2015.1.1  わかりあえたら:不寛容時代に -1  住民、漠たる不安 住宅街の障害者ホーム建設 「暮らし壊される」、過熱した反対運動
集会所の置き時計がむなしく時を刻んでいた。2014年3月30日、川崎市北部の住宅街に移転を計画する精神障害者のグループホームと、約20人の地区住民の話し合いは平行線のまま、3時間がたとうとしていた。

「原発も安全と言われながら事故が起きた。精神障害者は本当に安全なのか」「社会的地位の高い住民が多い地域に来ないで」

激しく畳みかける住民の言葉に、ホームの青野真美子所長(55)の顔はこわ張った。

同じ町内の老朽化した一軒家から1キロ離れた新築アパートへ移る予定で、工事は終わりかけていた。だが、話し合いからまもなく、さらに大きなショックが待っていた。工事業者から連絡を受け、駆けつけた青野さんの目に飛び込んだのは、10本近いのぼりと横断幕だった。「精神障害者 大量入居 絶対反対」。夕闇の中、赤い文字が揺らめいていた。

    ◇

炎を拡大させたのは近くに住む女性医師だ。経営する医院のブログに書き込んだ。「精神障害者にも幸せに暮らしてほしいが、まともに働いて税金を納めている人の生活を阻害してはいけない」。医院の受付に反対の署名用紙を置いた。共感は近隣住民から地区内の子供を持つ親へ広がり、署名は1カ月で1000人を超えた。

ホームの職員は動揺した。「入居者を傷つけるだけかもしれない」。撤退を促す意見も出た。青野さんは、入居者たちに反対運動が起きていることを打ち明けた。

「そういうのあると思ったんだ……」。刺し子が得意な60代の女性がうつむいた。

女性は家庭内のストレスから心を病み、10年前に精神科病院に入院した。2年半の入院後、家族と離れホームで暮らすことを決めた。小さな一軒家での共同生活。誰かが熱を出せばみんなでおかゆを作った。やっとたどり着いた穏やかな暮らし。同じ仲間とのきれいな新居での生活も楽しみにしていた。

6月、完成したばかりのアパートで、近隣住民にホームの雰囲気に接して障害への理解を深めてもらうための会が企画される。女性も住民と直接話したいと思って参加したが、誰も来なかった。その時、初めてのぼりを見て、肩を震わせ泣いた。

数日後、ホームを運営するNPOが市内のホールで文化祭を開いた。支援者ら約200人が見守る壇上に、女性はいた。

「あのアパートに住みたいんです。応援お願いします」

仲間に励まされ、小さな体が声を振り絞った。拍手が湧き、やまなくなった。NPOの三橋良子理事(61)は「偏見を一番知っているのは障害者自身。その彼女たちが強さを見せてくれたことがうれしかった」と振り返る。

7月、事態が動いた。NPOを支援してきた弁護士の呼びかけで弁護団が結成された。さらに、女性医師のブログが障害者のフリーライター、みわよしこさん(51)の目に留まり、「いつ誰が精神障害者になるか分からない」という反論の記事がインターネットに載った。

ネット上で批判が相次ぎ、ブログの書き込みは削除された。弁護団が住民に撤去を求め、のぼりは下りた。

    ◇

それから4カ月後、私は住宅街を歩いた。

予定より半年近く遅れ、秋からホームでは男女8人が生活を始めていた。周辺に家を構えていたのは、過熱した反対運動とは無縁に見える還暦を過ぎた住民だった。戦後の社会や経済をけん引した世代で、30年ほど前にマイホームを求めた。今は子供も独立し、仕事も一線を退いた。それぞれ口にしたのは静かな老後へのこだわりだ。「今の生活は我慢して作った財産。壊されたくなかった」。だが、心配の根拠は「問題が起きるかもしれない」といった漠然としたもので、障害への深い知識があるわけではなかった。

女性医師の家で玄関先に出てきたのは、医師らとともに運動の中心とされた70代の夫だった。大手企業の元役員だという。

「一番の当事者の住民には何も解決できない」。矛先を向けたのは、13年に成立した障害者差別解消法。グループホーム建設を巡っては各地で住民とのトラブルが起きており、障害者の人権を守るため、付帯決議で建設に住民同意は必要ないと定めた。「今は弱者が強くなっている時代。でも我々も強者ではない。普通の住民なのに」。唇が震えていた。

だが、言葉が途切れた後に、ふと表情が緩んだ。「私もいつか逆の立場になって(ホームの)お世話になるかもしれない。だから悩んだ」

ある住民も「老後の生活に困っても国には期待できない。自分で何とかするしかない」と訴えていた。住民たちも、グループホームの必要性は理解していたのだろう。だが、自分たちが忘れられていくような危機感を抱き、存在を示そうと掲げたのが、あののぼりだったのかもしれない。

    ◇

年末、ホームの前で、青野さんと入居者たちが白い息を吐き、落ち葉を掃いていた。住民のわだかまりは消えたわけではない。だが引っ越しのあいさつの時は、手作りのお菓子を受け取ってくれた。「一歩ずつですよね」。青野さんが言った。

坂道を下ってきた初対面の女性が、青野さんたちに声をかけた。

「きれいにしてくれて、ありがとう」

笑顔が広がった。


考え方が違う人、立場が弱い人への攻撃が激しい。多様な価値観や存在を受け入れられない社会の根底には、何があるのだろうか。わかりあえたら。そんな願いを込め、年初に不寛容の時代でもがく人たちと考えたい。




みわよしこ | フリーランス・ライター   2014年7月9日
「まともに働く」って? − ある精神障害者差別の論理
http://bylines.news.yahoo.co.jp/miwayoshiko/20140709-00037229/



精神障害者のグループホーム建設に対する地元の小児科医の反対運動です。
どんなことでもいいのでコメント下さい。
下記のリンクを一読して、思ったことをコメントして下さい。 2014年5月26日
http://www.watanabe-shounika.jp/?p=626
http://www.watanabe-shounika.jp/?p=654
http://www.watanabe-shounika.jp/?p=686

http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q13129638478

■2015.1.3  障がい者の作品普及に力 原画をデータ化し販売
大分市都町のデザイン会社「KASUGA Design Room」代表の古庄優子さん(45)は、障がいのある人が制作したアート作品の普及に取り組んでいる。

「どんな作品が出来上がるんだろうね」――。昨年12月上旬、臼杵市戸室の社会福祉法人「みずほ厚生センター」の就労支援センターを利用する佐藤龍男さん(55)が絵を描く様子を古庄さんらが見守っていた。

ダウン症の佐藤さんは、美容院で使うタオルを畳んだり菓子の箱を組み立てたりする仕事をしている。休憩時間に加え、寝る前のベッドの中でも描くほど絵に熱中している。2週間に1度は、大分市の障がい者施設などで絵を教える杉崎珠美さん(52)のアドバイスを受け、お気に入りのアニメのキャラクターやお菓子を題材にした水彩画を描く。

古庄さんは2005年、センターで働く吐合紀子さん(59)から、障がいのある人の作品を集めた展覧会「元気のでるアート!」のカレンダーの作成を依頼されたのがきっかけで、障がい者アートに出会った。

佐藤さんが女性を描いた絵を見て、「小手先だけでうまく見せようとせず、かっこいい」と衝撃を受け、「素晴らしい宝が埋もれている。たくさんの人に知ってもらいたい」と考えるようになった。

絵柄をスカーフに取り入れたいという服飾店や、封筒に使いたいという企業の人たちの声を聞いたことがあり、需要はあると感じた。

13年9月、14年間勤めていた大分市の印刷会社から独立。企業のパンフレットやホームページ(HP)をデザインする傍ら、障がい者アートを扱う事業「アートストレージ」を始めた。原画そのものを扱うのではなく、原画を写真撮影してデータ化して興味を持った企業や団体に販売し、印刷物などに利用してもらう。作家には著作権料を払い、古庄さんは、収益の一部を専用HPの維持管理などに充てる仕組みだ。

アートストレージは直訳すると「芸術作品の保管場所」の意味で、「作品を解き放つための場所にしたい」との思いを込めた。

現在はHP(http://artstorage.jp/)でダウン症や知的障がいの作家6人の作品を紹介しており、今年中に販売を開始する予定。古庄さんは「作家と、作品と関わりを持ちたい人たちの橋渡しを担いたい」と話している。

■2015.1.3  介護報酬引き下げに見る社会福祉法人の隘路  藤田憲彦 元民主党衆議院議員
3年ごとに見直される介護報酬改定が今年行われます。介護報酬は既に引き下げの方向が既定路線として進められており、全体の引き下げ幅は3%前後が軸となる見通しとも報道されています。

社会保障と税の一体改革で三党合意した介護職員の給与の月額平均1万円程度の増加は維持され、認知症対策や在宅介護の推進費もカットしない一方で、特別養護老人ホームは利益率が高いという理由で大幅に削減する考えです。このことから、今年の改定が社会福祉法人を狙い撃ちしたものであるという認識が広まっています。果たして社会福祉法人の事業は本当に「おいしい」事業なのでしょうか?

社会福祉法2条及び60条によれば、第一種社会福祉事業である老人福祉法上の特別養護老人ホームは国、地方公共団体又は社会福祉法人が経営することが「原則」と定められており、特別養護老人ホームは民間参入が阻まれている「非営利事業」となっています。非営利事業を行う社会福祉法人には様々な税制上のメリットがあります。社会福祉法人は法人税、印紙税、消費税、市町村都道府県民税、固定資産税、不動産取得税など、国税・地方税両方の分野で全部あるいは一部非課税措置がとられており、優遇されています。

また、厚生労働省の社会保障審議会第94回(平成25年5月31日)の配布資料によれば、特別養護老人ホーム1施設平均では、内部留保が約3.1億円、そのうち資金留保は約1.6億円との調査結果を発表しており、大きな内部留保を抱えていることも指摘されています。

これらのことから、法人税減税の代替財源として社会福祉法人にも課税ベースを拡大すべきであるという議論や、施設整備にかかる補助金の見直しをすべきだという風当たりが強まっているのです。厚生労働省も社会福祉法人改革には取り組んでおり、社会福祉法人の財務諸表の公開に踏み切るなど、透明化に務める努力はしていると思います。それでも、現状の介護保険費用の総額が10兆円、10年後には団塊世代が軒並み75歳以上となり、20兆円にも上るという試算がなされる中では、効率化の要請は非常に強く、もはや防ぎきれないという状況なのではないでしょうか?

しかし、私は社会福祉法人を槍玉に上げ、単に「儲けすぎだから削減しろ」という大号令は非常に危険だと考えています。なぜなら社会福祉法が「非営利」と定義されているからこそ生じる部分が見過ごされている感が否めないからです。会計基準においても、施設整備等の大型補助金が収入と処理されて、見た目上の内部留保が膨らんで見えるなど、営利企業会計と異なる側面も考慮しなければなりません。

社会福祉法人の中には、実態がブラック企業と化しているもの、公的側面が強いのにも拘らず私物化されているものなど、改善や指導が必要な法人はたくさんありますが、そのいぽうで懸命に地域との共生を模索し、医療連携にも取り組んで地域の核となっている法人もたくさんあります。実際、非営利だからこそ、真面目に取り組めば取り組むほど利益が減っていくという「隘路」に悩まされている法人が多いのです。

そうした中での一律の介護報酬引き下げは、良い法人も悪い法人も一斉に「あやめてしまえ」という乱暴な結果を招くことになってしまうのではないでしょうか?例えば個人タクシーには「マスター制度」というものがあり、優良タクシーには星が3つ付いているという「優良差別化」の仕組みがあります。厚生労働省も知恵を絞って、優良な社会福祉法人は経営の基盤が安定するような介護報酬上の優良差別化の取り組みを考えるべきではないでしょうか?

もっとも、厚生労働省の有能な官僚は間違いなくこう言うでしょう。「言われなくたってそんなことはとっくに考えている。だけど財務省が言うことを聞かないんだ。」ならば世論に訴えたらどうでしょうか?社会保障審議会にしても、公表しているとは言えまだまだ内向き。とても自ら世論をリードしているとは言えません。

■2015.1.3  福祉バンク 障害者と共に
1971年秋、馬場勝彦さんは1本の電話を受けた。

「作業所を退所させられた。家でごろごろしているより、死んだほうがましだ」

受話器の向こうにいたのは、脳性まひの青年だった。盛岡市職員を退職し、市議に初当選したばかりの馬場さんは、学生の頃に青年と知り合った。泣きながらの訴えに、「3年待ってくれ。君たちが働ける施設をきっと作る」と約束した。

41年、わんこそばで知られる老舗そば店「東家」(盛岡市)の3代目として生まれた馬場さんは、岩手大に通っていた頃から福祉施設訪問や子供会活動に取り組んでいた。青年の電話を受けると、家々を訪問し、施設で働く障害者を集め始めた。「身内に障害者がいることを隠そうとする家も多かった。それを変えて、『障害者も共に生きる街にしたい』というのが馬場さんの思いだった」。一緒に足を棒にした佐々木久美子さん(66)は振り返る。

どんな仕事ができるのか。当時の盛岡市長、工藤巌さん(98年死去)がヒントをくれた。家庭にある不用品を障害者が再生させ、販売する事業が米国で広がっていた。市水道部の古い庁舎を借り、事務所を構えた。

週末にリヤカーを引き、家々を回り始めた。庁舎の部屋はすぐに段ボールや古新聞で埋まった。土日のバザーには、大勢の市民が集まった。この活動が柱となり、75年2月に「盛岡市民福祉バンク」が発足した。

雑誌や瓶の仕分け、古着の洗濯、家具の修理……。集まった10人近い障害者は、自分にできることをした。「自殺予告」の電話をかけてきた青年もいた。

「馬場さんは『やらなきゃ(なら)ないことは、やらなきゃ(なら)ない』という人。周りの人を動かすだけでなく、常に自分も動いていた。休みがなく辞めようと思ったこともあったけど、ゼロから作り上げた時の達成感といったら」。佐々木さんは今もバンクの職員を続けている。

増え続ける商品と買い物客のために77年、盛岡市に常設店第1号を開いた。

「バンクはただの店じゃない。自分で行動するきっかけをつかむ場所」。バンクに勤めて30年になる伊藤裕二さん(50)は語る。

高校生の時、グラウンド整備のローラーに巻き込まれ、首から下が不自由になった。2年入院し、卒業後、バンクに就職した。当初は「ふてくされ、早く仕事を終えてパチンコに行きたいと思っていた」という。

しかし、「1日50時間ぐらい働いているようだった」という馬場さんの姿に触れ、仕事に対する思いが次第に変わっていった。売り上げを伸ばそうとデパートで古着のファッションショーを開催。バンクの店に来る若者たちをモデルに起用した。「バンクの職員は活動家であれ」という馬場さんの言葉が支えになっていた。

馬場さんは福祉への思いを次々に形にしていった。80年、障害者と歌手が一緒にステージに立つ「われら人間コンサート」を開催。90年に「盛岡・マニラ育英会」を作り、フィリピンの子供に奨学金を送り始めた。93年には障害者が農作業を行う社会福祉法人「いきいき牧場」を設立した。

活動の陰には家族の支えがあった。妻の洋子さん(69)は69年の結婚直後、馬場さんからこう言われた。

「僕は弱い人のために活動する。君は僕の分も、家族や身近な人のためにできることをしてほしい」

夫の期待に応えようと、3代目が留守がちな「東家」を切り盛りした。忙しい時は、従業員にこう声を掛けた。「私たちが店を守っているから、馬場は自由にできる。私たちが一生懸命働くことは、盛岡の福祉をよくすることにつながる」

馬場さんは2004年12月に63歳で亡くなった。没後10年。多くの人を巻き込み、高い理想に向かって突き進んだ夫を、洋子さんはこう表現する。

「まるで北極星のような人でした」

◇夢の続き実現へ今も

「いらっしゃいませ」「こちらにお並びください」

昨年12月20日、盛岡市紺屋町の勤労福祉会館は活気に満ちていた。福祉バンクの年末恒例「えびす講」の売り出し。割安なブランド品などを目当てに、午前9時半の開場前に約130人の列ができた。

市庁舎の一角を間借りして始まった「福祉バンク」。今は盛岡、滝沢、八幡平市に10店舗を構え、職員37人、障害者61人が働く。年間売上高は約1億7000万円に上る。

「まだまだやりたいことはあったはず」。天国にいる馬場さんをしのび、バンク事務局長の佐藤敏昭さん(56)が語る。

馬場さんは亡くなる前、「高齢者の力ももったいない。お年寄り版の福祉バンクも作りたいね」と話していた。「もったいない広場」と名付ける予定で、候補地も下見していた。

まだ実現していない「もったいない広場」。遺志を継ぐ佐藤さんは、力強く語る。「障害者も高齢化している。高齢者の居場所づくり、何とか実現させたいですね」

■2015.1.4  アール・ブリュット 不可解な「落書き」は「芸術」になった 大捕萌=おおとり・めぐみ(20)
水性ペンと画用紙の摩擦音。それに耳をそばだてるように、顔を机に近づける。カラフルな曲線や直線、円形や多角形が、ペンで紙に敷き詰められる。一つ一つをみると、それは音符のようだったり、宝石のようだったり。ネコの顔のようにもみえる円形の塊を、真っ赤に色づけしていく。

画用紙に広がるこれらの色彩や造形が何なのか、決して教えてくれない。いくら尋ねても答えは返ってこない。だが、ペンを強く握った手は迷いのない動きを続ける。紙の上に広がっていく色彩や図形は不可解だが、不思議な心地良さが残る。

2リットルサイズのペットボトルがお気に入り。作業中はもちろん、風呂やトイレの中、作業所の運動会で玉入れに出場したときも手放さなかった。中身は、決まって半分より少し多めの水。中の水を飲むわけではない。誰かが同じ量の水を注いでくれても、自分で入れ直す。

画用紙に向かうとき、ボトルを必ず机の上に置く。ふと作業の手を止め、ボトルに相談するかのように上下に振りながら、聞こえてくる音に耳を澄ませる。そんな“儀式”を繰り返し、再び意識は紙の上に戻る。


診断は「自閉症」

最初のキャンバスは、自宅の壁だった。3歳のとき、保育園で使うクレヨンを買ってもらうと、新築同然の家の中の白い壁は、ぶしつけな線ですぐに埋め尽くされた。

「何をするの」。たまりかねた母親がクレヨンを取り上げると、今度は色鉛筆や油性ペンを引っ張り出した。いくら叱られても、その衝動が収まることはなかった。

「視点が合わず、名前を呼んでも反応しない」

自閉症と診断されたのもそのころだ。症状が改善されれば−と、母はピアノや水泳の教室、学習塾など、さまざまな習い事に通わせてみた。だが、ピアノに向かうと鍵盤を両手でたたき付け、水泳教室ではプールに入ろうとせず、学習塾の教室では「いやー」「だめーっ」と力いっぱい叫ぶ。動物園や遊園地に連れていっても、車から出ないことがしばしばあった。

しかし、「描く」ことになると全く違う。時間を忘れて熱中した。最初は線だけだったが、6歳になり、大津市の養護学校に通い始めると、魚の鱗(うろこ)のような模様や、鳥の羽のような図形を描いて色とりどりに塗るようになった。

画用紙を取り上げると激しく怒り、返すと穏やかな表情に戻る。魚の鱗を描こうが、鳥の羽を描こうが、作品にタイトルはない。


悩みの種だった「落書き」

家族の大切な本や書類などにも躊躇(ちゅうちょ)なく描かれる、娘の不可解な絵。母にはどうしても「落書き」としか思えない。学校では、休み時間が終わり授業が始まっても、描くのを止めないことが多かった。集団行動や会話が苦手で、先生の注意も理解が難しい。一心不乱に描き続ける娘の姿は、母の悩みの種だった。

だが、中学2年の平成19年5月、放課後に通っていた児童施設の男性スタッフが、彼女の落書きを見て「個展を開こう」と提案してきた。

湖南市の「平和堂石部店」2階の片隅に設けられたギャラリー。立派な額に収められるなどした落書き40点が並ぶ光景は、母には信じがたいものだった。

もっとも、自分自身が個展に興味を示すことは全くなかった。会場に出向いても、水を半分よりやや多く入れたペットボトルを所在なく振りながら、照れもしなければ誇らしげでもない。「落書き」と思われようと、「芸術」とほめそやされようと、どちらでもよかった。


机にはみ出す「線」

高校を卒業後、創作活動を中心に据えた生活を選んだ。甲賀市の作業所と自宅で、毎日約8時間。休日はない。自分のペースで描きたいだけ描けるこの毎日が気に入っている。

京都を拠点に活動するファッションデザイナーの柊伸江さんが昨年9月、作業所のギャラリーを訪れ、大捕の作品と出合った。「可愛くて生活の身近なものに合う」と感じ、「萌さんの絵をブックカバーにしたい」と誘った。

2人のコラボ作品は、古書店などが主催するブックカバー展で入選。各地で展示販売された。

作業所で与えられる画用紙は、108センチ×76センチの大きなサイズ。だが、彼女は規格にとらわれない。引きたい線が、机にはみ出すこともたびたびある。作業所の山下完和所長は「自由に描いていい」と笑う。

「萌は絵を描くために生まれたのかもしれない」

母は最近そう思うようになった。そんな気持ちの変化とは無関係に、彼女は半分より少し多めに入ったボトルの水を揺らし、今日もまた色と線を重ねている。

従来の芸術の形式から逸脱した「アール・ブリュット」。携わる作家たちの呼吸、心臓の拍動といった生の営みがそのまま作品になる興味深さが関心を呼び、この一年で、滋賀県での普及の取り組みは大きく前進した。さらなる飛躍に向け、大きな可能性を秘めた滋賀の作家たちを紹介する。


やまなみ工房
http://a-yamanami.jp/

■2015.1.4  アール・ブリュット むき出しの感情と波打つヒモ 武友義樹(51) 
シュッー、シュッシュッシュッー。

田んぼの中にぽつんと建つ施設の、長い廊下の一番奧。ヒモが空を切る音が、ひたすら続く。ときに大きく速く、ときに小さく弱く。5メートルほどあるヒモは、なぜか決して絡まることはない。

「ヨンゴ、ヨンゴ」「ゲベダン、ゲベダン」。押し殺したようなトーンの呪文とともに、ヒモは滑らかに波打つ。描きたいのは激しい鼓動か、もどかしい感情か。誰にもわからない。ただ一心にヒモを振る。

彼にとって、ヒモは刺激的らしい。朝起きてから夜眠るまで、ヒモを振る動作が止むことはない。さすがに入浴時は手放した−と思ったら、脱いだ服を振り回していた。ヒモに入れ込んで徹夜したことも。寝不足は、しょっちゅうだ。



ずっと、ただの奇行と思われていた。だが近年、障害者の生み出す芸術が「アール・ブリュット」として注目されるようになる中、彼が暮らす施設の職員は考えた。「この行動も立派な芸術表現なのではないか」

滋賀県近江八幡市内で昨年開かれた障害者らの芸術作品展に、彼がヒモを振っている映像が「パフォーマンスアート」の一種として出品された。

「不思議で、謎めいている」「ヒモの曲線がなんとも美しい」

ヒモが脈打つさまは、訪れた人たちの心をわしづかみにした。しかし、自身は誰かに見てもらう気など毛頭ない。「生きるために必要な所作だから」と周囲は言う。



石油ストーブ用の給油ポンプに付けた粘着テープが持ち手となる。あとはビニールヒモを好きなだけ。

自作の大切な「分身」に他人が触ると、烈火のごとく怒りをぶちまける。命と同じくらい大事だから、相手に手を出すことだってある。自分の要求が通らないと顔面をいっぱいにゆがませる。かと思えば、ヒモを振る彼の近くを職員が通ると、右手を差し出して握手を求める。近寄りがたく、社交的だ。

月に1回ほど、施設から自宅へ帰る。彼がヒモを振らない施設内は、がらんどうのように静かで、少しさみしくもある。

自宅に帰ると、たいていヒモを新調して施設へ戻ってくる。ときにはその長さが50メートルに伸びていることも。新しいヒモは振り心地がいいらしい。持ち手を床に叩きつけ、納得のいく手触りにたどり着くまで微調整を重ねる。

彼は、どんな長さのヒモでも美しく波打たせるテクニックを獲得しているが、あまりに長いのは施設にとって迷惑な話。だから、職員たちは、彼が熟睡した夜中にこっそりヒモを切ることもあるそうだ。

施設は集団生活の場だけに、「彼だけ特別扱いできない」とヒモを取り上げたことがあった。すると、心のバランスが崩れたのか、一気に変調をきたした。振るものを探して施設の外をさまよったり、落ち着かず攻撃的になったりした。ヒモは身体の一部。決して欠けてはならないのだ。



生後間もなく、泣かなくなったのに家族が気付いた。高熱の影響で泣き声を出せないほど弱っていたのだった。「覚悟しておくように」。家族は医師からそう告げられたが、彼はなんとか一命を取り留めた。生まれつき体力はあったのか、その後は元気に育ち、体も丈夫になった。

だが、3、4歳になっても「パン」「ごはん」と、単語でしか話せない。周りの子供たちは熟語を話せるのに。知的障害が認められた。

7歳のころ、専門家に勧められ、親元を離れて施設で暮らしながら養護学校に通い始めた。ヒモを振るようになったのは、そのころからだ。カーテンのヒモやロープ、どこで見つけてくるのか、部屋には長さや材質の異なるさまざまなヒモが隠されていた。出入り業者のトラックからこっそり荷造り用のヒモをくすねてくることもあり、職員たちを悩ませた。



わが子の奇異な行動を心配した母は「何かに憑(つ)かれたのでは」と、すがる思いで占い師に相談した。

「ヘビのたたりかも」。占い師は母に告げた。言われてみると、クネクネとしなるヒモはヘビのように思えてくる。自宅の神棚にヒモや生卵を供え、わが子のおかしな癖が治るよう祈り続けた。

しかし、母を悩ませ、叱り続けた行動は、今や「アート」なんだという。母は「もう叱ったらだめやな」と言い聞かせる半面、やっぱり「そんなヒモばっかり、触らんといてや」と思うのが偽らざる心境だ。

そんな、母の心中の起伏など知るよしもなく、彼の喜怒哀楽を示す声が、長い廊下の一番奥から響いてくる。腕がしなり、ヒモは大きく波打っている。



県立大人間文化学部(ジェスチャー研究)、細馬宏通教授 大きく振った腕の動きが、遅れてヒモに伝わっていく。武友さんは、自分の視線の高さでヒモを振り、その動きから目を離さない。自分が起こした運動の結果がヒモの動きとして現れるのを見ることで、ちょっと落ち着いたり、不安を忘れたりしているのだろうか。

これは、生きるために必要な、切実な行為なのだろう。それを他人が見たとき「すごい」と感じる。今後、何かをきっかけに、武友さんがこの行為を「他人にみせたい」と意識したとき、何か面白いものに変化していくのかもしれない。



知的障害者施設「湖北まこも」 昭和58年4月、旧びわ町富田(今の長浜市)に知的障害者入所更正施設「湖北寮」として開所。生活介護支援事業などをおこなっている。現在は、約50人が施設で生活している。造形活動に関しては、利用者が週1回の余暇活動として、陶芸や絵画、織物などに取り組んでいる。利用者の集中力などを考慮し、時間は1時間程度に絞っている。

利用者が自由に、思うままに活動を楽しめているかというところに重点を置くが、アール・ブリュットとしての注目が高まる中、できあがったものを可能な限り作品として残せるよう、維持管理する。一部の作品については、作者本人や家族らと、購入希望者との相談の上で、販売している。武友さんも数年前まで陶芸に携わっており、壷のような作品を制作していた。ここで生まれた作品は、障害者の芸術作品を集めた展覧会などに出展されている。

■2015.1.4  【累犯障害者 塀の中の福祉(2)】 思うようにならないウルトラマンポーズ=c体動かし「不器用」克服し再犯防止 認知作業トレーニング
緑の刑務服を着た30〜40人の男性たちが作業台に向かい、布団用の大型洗濯ばさみを黙々と組み立てていた。腰を浮かせて上体をかがませたり、腕を力ませて不自然に交差させたりしている姿もみられる。

民間が運営に参加するPFI刑務所、播磨社会復帰促進センター(兵庫県加古川市)の「特化ユニット」。知的障害のある受刑者は、単純な刑務作業でもスムーズにこなせないことが多い。

作業療法士で、精神科病棟での勤務経験がある民間スタッフの男性(38)は、このことが気になっていた。「不器用なまま社会に復帰して、本当に仕事ができるのか。適応できずに犯罪を繰り返してしまうのではないか」

身体をうまく使うには、動かし方や力加減を覚え、どう動かすかを判断することが必要だ。スポーツと同じで、無意識にできる人もいれば、いくら教わってもできない人もいる。

障害が犯罪の原因では決してない。が、不器用さが周囲の理解を妨げ、再犯を誘発する恐れはある。男性は国側の了承を得て、身体感覚を改善させる教育プログラム「認知作業トレーニング」を導入した。


ほめて伸ばす

「あきらめないで」「ナーイス!」。刑務所内の体育館に、民間スタッフの明るい声が響く。

先生役は、導入した作業療法士の男性。ウルトラマンのように、胸の前で腕をL字に構えている。受刑者8人はポーズをまねるよう指示されるが、左右の手が逆だったり傾いたりと、思い通りの形にならない。

背中合わせで床に座った3〜5人が、押しくらまんじゅうの要領で立ち上がる練習もある。リンゴの皮むきのように、新聞紙をどれだけ細長くちぎれるかという競争もある。90分間の授業中、先生役を補佐する臨床心理士の男性(30)が笑顔で、こまめに話しかけていた。

「彼らは人生でほめられた経験が極端に少ない。障害者で犯罪者という二重苦を背負うからこそ、自信を持たせ、社会の一員としての自覚を促したい」。そんな願いが通じているのだろうか。受刑者たちの表情は明るく、失敗しても挑戦を繰り返していた。


犯罪避ける力

認知作業トレーニングは、週1回の矯正指導日に行われている。刑務作業の代わりに、講義を受け、読書や自習などの課題が与えられる日だ。「改善指導」という刑罰の一環なのだが、社会復帰を目標にした自立支援という性質は、限りなく福祉に近い。

プログラムはほかにもある。動物と触れ合って自尊心の回復につなげるアニマルセラピー。道化役を演じて自分自身の欠点をさらけ出すクラウニング。対人関係で直面する問題を想定した社会生活技能訓練(SST)。総数は5講座7種類にのぼるという。

センターは、知能テストなどの調査結果から綿密な処遇計画を立て、障害の特性や健康状態を見極めながら、受刑者一人一人にメニューを組んでいる。

なぜこうも手厚いのか。

センターによると、特化ユニットの収容者は全員が初めての服役で、約4割は窃盗などの比較的軽い罪を繰り返してきた。「累犯障害者」として刑務所と社会を行き来させないために、自ら犯罪を回避できる力を養うという考え方なのだ。

教育担当の山田浩平統括矯正処遇官(32)は言う。「犯罪の元になった問題を解決して、再犯防止につなげる。むやみに『反省しろ』と言うだけでは、彼らにとって意味がない」


産経 2014.12.28

■2015.1.4  【累犯障害者 塀の中の福祉(1)】 「出所後にエロ本買いたい」…罪と罰どう理解させる PFI刑務所、社会復帰に向けた民間ならではの「福祉的支援」
検察官が取り調べを録音・録画したDVDを法廷で再生している間、被告席に座っていた男は、何かをぼそぼそとつぶやいていた。明瞭(めいりょう)な言葉になったのは、録音された自分の声がこのくだりに差しかかったときだ。「刑務所に行くなら、死んだ方がましや」


刑務所嫌がり…「自殺する」

9月26日、自動車盗の常習累犯窃盗罪に問われた京都市内の男(37)の公判が、京都地裁で行われていた。「死んだ方がましや」。男は自らの供述をなぞるかのように、法廷でそう吐き捨てたのだ。

男は重度の知的障害があり、平成24年9月に犯した前回の自動車盗の後、精神年齢が「4歳7カ月」と鑑定されている。

25年8月、1審京都地裁で「無罪」とされ、塀の外に出た男は、半年後に再び車を盗んだとして逮捕された。検察側は、取り調べをすべて録音・録画して起訴し、公判にDVDを証拠として提出した。

傍聴席には音声しか流れてこない。それでも、男が犯行状況を筋道立てて説明できず、女性の取調官が調書を作るのに苦慮する様子はうかがえた。男は刑務所を嫌がって「自殺する」と言いだし、取調官は「悲しむ人がいっぱいいるよ。自殺なんてしなくていいよ」と諭していた。

そして、取り調べの最後に、男は唐突なひと言を口走った。「出所したらエロ本買いたい」と。


2審で逆転有罪

今回の事件でも無罪を主張している弁護人の西田祐馬弁護士(京都弁護士会)は「彼が取り調べの場をどのように理解しているかは疑問だ」と指摘する。


DVDの再生から1カ月後の10月24日、今度は男を精神鑑定した男性医師の証人尋問があった。

医師は「被告が真に反省している可能性は高い」としつつも「悪いことは悪いという経験を重ねることが必要ではないか」と、刑罰を受ける必要性を指摘した。

すでに前回の「無罪」は覆っている。今年8月、2審大阪高裁が懲役2年の逆転有罪を言い渡した。精神鑑定の結果から、男が善悪の判断や行動の制御ができない「心神喪失者」だったという結論を導いた1審判決を「誤解だった」と破棄したのだ。

弁護人は上告したが、男はこれからどこまで自らの罪と罰を理解できるのか。男のような再犯を重ねる知的障害者、いわゆる「累犯障害者」を生み出さないために、刑務所にできることはあるのだろうか。


官民協力し処遇

民間企業が運営に加わるPFI刑務所、播磨社会復帰促進センター(兵庫県加古川市)。JR加古川駅から車で約30分の山あいにあり、知的障害や精神疾患のある受刑者を収容する「特化ユニット」を備える。

7月末時点で、収容者の1割強に当たる85人が特化ユニットで服役していた。3つの工場に分かれて部品の仕上げやキッチン用品の包装といった簡単な刑務作業を行い、社会復帰に向けた教育プログラムや職業訓練も受けている。

処遇には国家公務員である刑務官と、大林組の関連会社や綜合警備保障などの民間企業のスタッフが協力して携わる。中でも、教育プログラムを企画立案し、実行に移しているのは民間スタッフだという。

国職員の大西洋調査官(53)は明かす。

「官と民がそれぞれの得意分野を生かしている。そして民間ならではといえる視点の一つが、福祉的支援だった」




刑務所に収容された累犯障害者はどのように更生への道を歩むのか。刑罰の実情に迫る。

用語解説】PFI

プライベート・ファイナンス・イニシアチブの略。民間の資金やノウハウを活用して公共施設の建設や運営を行う手法を指す。発祥は英国で、日本では平成11年から活用され始めた。PFI刑務所は全国に4カ所あり、官民協働で施設を運営することで、経費削減と地域雇用の創出を実現。13〜14年に受刑者3人を死傷させた名古屋刑務所事件の反省から、民間の視点を取り入れた処遇の向上にも力を入れている。


播磨社会復帰促進センター
http://www.harima-rpc.go.jp/index.html

構成企業
大林ファシリティーズ株式会社
株式会社綜合警備保障
マンパワーグループ株式会社
日本電気株式会社
コクヨマーケティング株式会社
株式会社 PHP研究所
東レ株式会社


産経 2014.12.27

■2015.1.4  【累犯障害者 塀の中の福祉(3)】 「パチンコ勧誘」題材に教育プログラム 犯罪の誘惑に負けない心…キーワードは「断る力」
「お金を返してくれへんかって、手ぇ出してしまった」。播磨社会復帰促進センター(兵庫県加古川市)の「特化ユニット」で服役し、軽度の知的障害がある20代の男性受刑者は、そう語った。

男性は3年前、とび職人として勤務していた建設会社の社長らとともに、同僚の男性=当時(29)=を殴って死なせ、傷害致死罪で実刑判決を受けた。

被害者は同居生活を送る親友。貸していたのは10万円弱だった。酒の勢いがあったとはいえ、社長が「殴りに行くぞ」と号令をかけたとき、断ることはできなかった。

もし現実は実行犯として利用されたのだとしても、人の命を奪った事実は消えない。男性は、遺族に謝罪の手紙を書き、賠償金を用立てた。どちらも受け取ってもらえていないが、償うという気持ちだけは持ち続けている。

「あんとき、あの場におらんかったら…」。男性は、絞り出すように後悔の念を口にした。


きっぱり意志伝達

「断る力」。平成21年に経済評論家の勝間和代氏が書いたベストセラーのタイトルだが、罪を犯した知的障害者にとっては不可欠な能力といえるかもしれない。

特化ユニットで行われる教育プログラム「社会生活技能訓練」(SST)。対人関係のトラブルを想定した実践訓練の中に「上手に断る」という単元がある。

「おう、お前暇やろ、パチンコ行こうや。新台出てんって」「さ、誘ってくれて、あ、ありがたいんですが、えーと、パチンコやめようと思ってまして…」

「お前」と呼ばれた男性受刑者は、実際に友人からの誘いを断りきれずパチンコにのめり込み、金に困って罪を犯した。ほかの受刑者たちの前で、当時と似た状況を再現していたのだ。

「先輩は新台が目的なので、この日だけどうしても用事があると言うのもいいですね」。先輩役を演じた臨床心理士の男性(30)は、断り方の選択肢を多く持つよう勧めた。そして、好意を示しつつきっぱりと意志を伝えることが大切だとも説いた。


訓練は「心の貯金」

民間の発想と福祉の視点を生かすPFI刑務所に、課題がないわけではない。

契約上、収容されるのは服役が初めての受刑者に限られている。障害の程度も軽い。精神年齢が4歳7カ月と鑑定された「累犯障害者」の男(37)が入所する可能性は、ないのだ。

処遇のレベルを一定に保つことも難しい。民間の提案で決まる教育プログラムの内容は、国側が毎年検証し、効果がないと判断すれば見直す。受刑者の入所時期によっては、訓練内容が変わってしまう。

これらは、刑務行政のかじ取り次第で解決する可能性はあるが、どうにもできない問題もある。大西洋調査官(53)が、悔しさをにじませつつ話した。

「刑務所から一歩外に出たら、われわれは手を差し伸べられない」

前掲書「断る力」には「自分の『コーチ』は『自分』しかいない」とあるが、知的障害を抱えた受刑者が出所した後で必要なのは、犯罪の誘惑に負けない心を持たせ続けてくれる「コーチ」の存在だろう。実社会では誰かの助けが必要になるのだ。

ある民間スタッフは、刑務所で知的障害者が受ける訓練を「心の貯金をためること」とたとえ、「社会で貯金を使い果たせば、また彼らは刑務所に戻ってくる」と危機感を口にした。

刑務所を出たばかりの累犯障害者は、どこでどんな支援を受けているのか。

■2015.1.4  【累犯障害者 塀の中の福祉(4)】 4割が仕事ないまま退所していく「現実」 更生保護施設入所の元受刑者 国は就労支援強化へ
3階建ての施設が、閑静な住宅街に溶け込んでいる。寝具と机、テレビを備え付けた広さ6畳の個室が40室。食堂と風呂は共有で、職員が24時間常駐する。寮やアパートと異なるのは、家賃と朝夕の食費がかからない点だ。

関西のある更生保護施設。住んでいるのは、刑務所を出たばかりの元受刑者たちだ。多くは身寄りがなく、社会に居場所がない。原則半年という法定の入所期限までに、仕事を探し、貯金をし、住居を見つけて自立への足がかりを築く。

全国に103カ所ある更生保護施設は、篤志家によって明治21年に設立された「静岡県出獄人保護会社」がルーツとされる。現在も浄土真宗などの仏教教団を含む民間の善意が支え、国の機関である保護観察所から元受刑者らの保護を委託されている。

刑務所では出所前から、本人の意向を踏まえて保護観察所などと調整し、受け入れ先となる更生保護施設を探す。切れ目のない支援を通じ、急激にでなく徐々に社会復帰を促すためだ。

「累犯障害者」にとっても、更生保護施設は社会の荒波から身を守る緊急避難所といえる。


障害に気づかず

「俺、障害なんてあったかな、と思った」。今年7月にこの更生保護施設に入った男性(45)が明かした。授業についていけずに高校を退学し、職場の同僚に計算ミスをからかわれた経験はある。それでも軽度の知的障害があることを、自分も周囲も、気づかないまま生活してきた。

男性は過去に3度、コンビニ強盗で逮捕されている。1度目は実刑を免れたものの、2度目は執行猶予中、3度目は刑務所を出て2カ月余りで犯行に及び、再び塀の中に入った。

前回の出所後、男性は別の更生保護施設で暮らしていた。手にした金をパチンコにつぎ込む日々。負けが込み、わずかに残った金でコンビニ強盗の凶器に使う刃物を買ったという。

男性が知的障害者と判定されて療育手帳を交付されたのは、今回の出所直前。障害を見過ごされたまま服役していた期間は、すでに10年を超えていた。

「もう刑務所に戻りたくない。ここでお世話になっている以上は、仕事を頑張って、自力で生活していきたい」。男性は語った。


「協力雇用主」に奨励金拡充

男性は9月から清掃会社で働いている。「仕事は楽しいし、職場の人も優しい」と笑顔で話せるようになるまで、苦労を重ねた。ハローワークや求人雑誌で職を探したが、工事現場の人間関係になじめず、就職した別の会社からは「段取りが悪い」との理由で出勤初日に解雇されたという。

平成24年版犯罪白書によると、更生保護施設に入所した元受刑者のうち、約4割は仕事がないまま退所していく。法務省統計では、無職の元受刑者の再犯率は仕事がある元受刑者の約4倍。そんな現状では、再犯防止の意味での就労支援が欠かせない。

職探しで頼りになるのは「協力雇用主」だ。元受刑者を雇って更生に協力する民間事業者で、国から奨励金が支払われている。

だが、登録済みの協力雇用主約1万2千のうち、実際に元受刑者を雇用しているのは約470。法務省は奨励金を来年度から約6倍に拡充し、1人の雇用につき最大72万円を雇用主に支給して雇用拡大につなげる方針だが、元受刑者にも努力は必要だ。

男性が入所する更生保護施設の施設長(67)はこう指摘した。「自立したいという意志さえあれば、社会でチャンスをつかむための支援は惜しまない。それが私たちの役割だ」


産経 2014.12.30

■2015.1.4  障害年金の審査に地域差  「誤判定、確実に存在」  現場の医師、国に不満 
障害がある人の生活を左右する障害年金で、審査に当たる医師(認定医)の負担に地域差があり、ばらばらの体制で支給・不支給が決められていることが分かった。「間違った判定が確実に存在すると思う」「事実上、流れ作業だ」。現場の認定医からは現状を問題視する声や、増員の努力を怠ってきた厚生労働省と日本年金機構に対する不満が出ている。


▽そのまま判定

障害年金では、症状が変動しない手足の欠損などは「永久認定」となって更新は不要だが、精神障害などは1〜5年ごとに更新手続きをして審査を受けなければならないことが多い。

認定医は新規申請に加え、更新の審査もこなす。1人当たりの審査件数が多いある県の認定医は「更新のシーズンになると山のように書類が届き、とてもじっくりは見られない。年金機構の担当者が『変化なし』と分類していれば、ほぼそのまま『支給継続』と判定する。丁寧に見たほうがいいとは思うが、件数が多すぎるので仕方がない」と話す。

厚労省は「障害の状態が適切に反映されるよう、認定医はきちんと判定している」との見解を示しているが、西日本のある認定医は「更新の場合は1件にかけられる時間は数秒から十数秒」と明かす。「支給されるべき人に支給されないとか、その逆のことが多くの地域で起きているはず。反省を込めて、この状況はいけないと思う」


▽増えない担い手

認定医は「外部障害」「内部障害」「精神の障害」で三つに大別されているが、さまざまな障害を審査しなければいけないことに加え、自身の診療と並行しての任務で負担が重いため、なかなかなり手がいないという。

首都圏の認定医は「障害年金の受給者は増えているのに、 私の地域では 認定医の数は増えていない。国は担い手の確保にもっと努力してほしい」と訴える。

地域間で支給・不支給の判定に大きな差が出ていることについては、複数の認定医が「ばらつきをなくすために定期的に開かれていた認定医の全国会議が開かれなくなったためだ」と指摘する。

1990年代後半までは毎年1回、各地の認定医を集めた会議が開かれていたが、それ以降は判定基準の改正などがあったときだけ開く形に変わったという。厚労省と年金機構は「昔の開催実績は資料が残っておらず、事実関係は確認できない」としている。

ある認定医は「不支給割合の地域間格差は、昔は今ほどひどくなかったはず。(前身の)旧社会保険庁時代を含め、年金機構が会議や指導をきちんとしてこなかったのが一因だ」と指摘した。

■2015.1.4  認定医の負担、地域差14倍/障害年金
国の障害年金の支給・不支給を審査するため都道府県ごとに置かれている医師(認定医)の人数にばらつきがあり、1人当たりの担当件数で見ると最も多い神奈川県と最少の鳥取県で約14倍の差があることが3日、共同通信の調べで分かった。

認定医の引き受け手確保が難しい地域が多く、国の対策も不十分なことが原因。認定医の負担が重い地域では、不十分な審査で支給されるべき人が漏れたり、基準に達していない人に年金が支払われたりしている恐れがある。認定医からは「更新のケースでは書類1件を十数秒で見ており、まともな審査はとてもできない」との声が上がっている。

障害年金を受け取るには、主治医の診断書などの書類を日本年金機構に提出する。人によっては1〜5年ごとに更新も必要。審査はほぼ書類だけで、多くの人が受ける障害基礎年金の場合、機構の都道府県事務センターから委託を受けた各地の認定医が審査している。

共同通信は、年金機構が開示した2013年度の障害基礎年金の新規請求件数と、各都道府県の認定医数を基に、1人当たりの担当件数を算出。神奈川では認定医が4人しかおらず、審査に至らず却下されるケースも含め、1人当たり年間1154件を担当する計算だった。鳥取は同80件で、14・4倍の開きがある。神奈川の人口は鳥取の約15倍だが、認定医数は鳥取の方が多く、5人いる。1人当たりの担当件数の都道府県平均は343件。

神奈川の次に負担が重いのは大阪(1人当たり年879件)で、兵庫(788件)、北海道(765件)が続いた。香川は認定医5人で、1人当たり年95件。

障害基礎年金をめぐっては、不支給になる割合に都道府県間で約6倍の差があることが分かっている。年金機構が原因を調べており、近く調査結果を公表する。

■2015.1.5  介護度が高い人でも安心して入居可 看護師が開設したサ高住
よい高齢者ホームとは、どんな施設なのか。「高齢者住宅経営者連絡協議会(高経協)」主催、高齢者施設事業者など「高齢者ホームのプロ」21人が選考した「リビング・オブ・ザ・イヤー2014」に選ばれた、優良施設を実際に訪問してみよう。ここで紹介するのは、同賞の優秀賞に輝いたサービス付き高齢者向け住宅「サボテン六高台」(千葉県松戸市)だ。

「重度障害者や介護が必要な人が安心して暮らせる施設がない。それなら自分たちで作ろう!」

看護師をしていた佐塚みさ子氏が一念発起。仲間を集めて開設したのがこの施設だ。1階の専用居室では、介護度が高い人のほか障害者、難病患者などを受け入れている。他施設では受け入れてもらえないことが多い、胃ろうや人工呼吸器などの処置が必要なケースでも対応可能。居室にバッテリーを設置し、突然の停電にも備える。

医療処置の必要ない入居者らも暮らす2階と、共用のリビング、ダイニングなどがある3階には全面床暖房が設置されている。足元から冷えないようにするための配慮だ。

この施設では、看護師もヘルパーも同じ制服を着用している。それにはこんな狙いがある。

「制服を分けてしまうと、どうしても意識に差が出てしまうことがあります。職員全員で入居者のみなさんの生活を支えようという思いを込めています」(佐塚氏)

医療処置が必要な人も利用できるデイサービスも併設されており、月に2回の宿泊が可能なため、近隣住民から喜ばれているという。入居者が語る。

「食事もちょうどいい薄味でおいしいですね。お菓子を毎日3時に持ち寄ってみんなとお話ししたり、塗り絵や書道をしたり、楽しく過ごしています」

小さな施設だからこそ実現できる、家族のような温かい空間があった。

■2015.1.5  特養の半数、職員定数割れ 都内の305施設中 人手不足、深刻 事業者団体調査
特別養護老人ホーム(特養)などの介護施設の職員不足が大都市を中心に深刻になっている。東京では職員が定数に満たない特養が続出し、新たな入居者の受け入れをやめたり部屋を一部閉鎖したりするところが出始めた。介護職員の有効求人倍率は全国平均で2倍を超えており、施設が職員を募ってもなり手が少ないという状況が広がりつつある。

東京都内で特養などを運営する社会福祉法人でつくる東京都高齢者福祉施設協議会は昨年12月、加盟法人が運営する特養445施設に職員の状況などを尋ねた。都内の特養の多くが対象になっている。

回答があった305施設のうち、それぞれが定めている職員の定数に満たないところが半数近い145施設あった。このなかには、国の基準で最低限必要とされる職員数にも満たないところも9施設あった。

どれだけ定数に足りていないかを聞いたところ、6割の87施設が「1〜3人」で、約3割の44施設が「4〜6人」だった。「10人以上」も4施設あった。

職員不足は利用者にも影響し始めている。職員が足りないため、部屋が空いても新たな入居者を受け入れないなどの対応をしている特養が9施設あり、このうち3施設は10〜40部屋を閉鎖していた。

また、自宅で暮らす高齢者を一時的に預かるショートステイをやめた特養が2施設、ショートステイの受け入れを減らした特養も7施設あった。

厚生労働省のまとめでは、昨年10月の介護職(継続して働く人)の有効求人倍率は全国で2・42倍になり、全職種(同)の1・02倍を大きく上回っている。この倍率は仕事を求める人1人あたりにどれだけ求人募集があるかを示しており、倍率が高くなると人手不足感が強まる。

景気が上向き、ほかの職種の雇用が増えたり給料が上がったりしている一方、介護職の平均月給は2013年までの5年で約2%増の約22万円にとどまる。このため、求人は多いのに介護職離れが進んでいる。

介護職の倍率は、東京都が4・34倍、愛知県が3・96倍、大阪府が2・77倍など大都市を中心に高い。東京以外の大都市でも、名古屋市で職員不足のためにデイサービス事業所が今月いっぱいで閉鎖する例が出始めた。東京都高齢者福祉施設協議会の田中雅英(まさえ)・総務委員長は「高齢化が進んで特養のニーズは増えているが、介護職員の不足でサービスは低下している。このままでは都市部の介護が崩壊してしまう」と心配する。

 <特別養護老人ホームの職員数> 国の基準では、利用者3人に対して介護職員(看護師も含む)1人が必要になっている。この基準を下回ると、介護保険から支払われる介護報酬が3割カットされる。特養は介護職員が24時間いなければならないため、夜勤もある。国の基準を満たすだけの職員数では、夜勤の回数が多くなるなど職員の負担が重いと考える施設もある。このため、利用者2人に職員1人といった手厚い職員定数を独自に定めている施設が多い。

■2015.1.5  介護職離れ、負の連鎖 低待遇・負担敬遠で職員減り
東京都心にある特別養護老人ホーム(特養)は、昨年9月から新たな入居者の受け入れをやめた。11月からは在宅で介護を受ける高齢者を一時的に預かるショートステイもやめた。

施設長は「介護職員の相次ぐ退職と採用難のダブルパンチ。入居希望者は大勢いるのに申し訳ない」と話す。

「心も体も疲れ切り、もう続けられません」。一昨年秋、30〜40代の職員3人が相次いで退職したのが職員不足の始まりだった。

この特養では入居者の定員約60人に対して常勤とパートなど約30人の職員がいた。3人がやめた穴をうめるために休日出勤が増えるなど負担が増すと、あとを追うように1人また1人とやめ、昨年夏までに10人余りが退職してしまった。

職員は土日など決まった休みが取りづらく、夜勤も多い。入居者の体調の変化に気を配り、けがなどをさせないよう、いつも注意していなければならない。

年収は勤続6〜7年の常勤職員で450万円ほどだ。都内の特養でも高いほうだというが、職員を引き留められなかった。

景気が回復するにつれてほかの職種の求人が増え、給料も上がった。この特養をやめた職員の半数近くは、電気設備会社の営業や小売店の販売など介護と関係のない仕事に転職した。

職員の補充も難しくなっている。退職者が出るたびにインターネットの求人サイトや新聞広告で募集したが、応募はまったくなかった。派遣会社などからのべ約20人を受け入れたが、介護経験の浅い人が多く、5人しか残らなかった。

都内などで五つの特養を持つ社会福祉法人は4月、東京23区内に六つ目の特養を開く予定だ。ところが、80人必要な職員がまだ約20人しか確保できていない。

この法人の施設長は「集まった職員で対応できる利用者数に絞って部分開業するしかない」と嘆く。

今年春に卒業する学生を採用しようと昨年1月から福祉専門学校などを回ったが、手応えがなかった。結局、内定者はまったく畑違いの学生が1人しかいない。5年前に特養を開いた時は10人採用できたのに、様変わりしてしまった。

中途採用も難航している。ハローワークや求人誌などで募集しても反応がほとんどなく、施設長は「面接に来てくれれば、採用する」という。厚生労働省東京労働局によると、昨年10月の東京23区内の介護職の有効求人倍率は5・81倍に達している。

  ◇

■他職種も求人 パート争奪

介護職員不足は東京だけの問題ではない。

名古屋市内にあるデイサービス事業所は1月いっぱいで閉じる予定だ。長く事業所を管理してきた職員が60歳を機に退職することになり、新しい管理者のなり手がいないからだ。

パートを含めて職員8人の小さな事業所だが、最近は職員を補充するのもままならない。経営者は「この2年ほどハローワークなどに求人を出してきたが、1人も採用できなかった。事業所を閉じるのは仕方がない」という。

愛知県は介護職の昨年10月の有効求人倍率が3・96倍になり、東京都に次いで高い。パートだけみると5・01倍とさらに高く、職員数を維持するのも厳しさを増している。ほかの職種の雇用が増えたり給料が上がったりして、パートで働く人の取り合いが激しくなっているからだ。

自宅で暮らす高齢者にヘルパーを派遣する訪問介護事業所は、パートのヘルパーに頼ることが多い。地方でもヘルパーの確保が難しい例が出始めた。

全国的に事業所を運営している訪問介護会社は今年春、徳島市と宮城県気仙沼市で隣接する事業所どうしを統合する。パート職員が事業所の管理者を務めてきたが、責任が重く、なり手がいなくなった。

介護で働く人が入る労働組合「日本介護クラフトユニオン」の染川朗事務局長は「全国で施設の一部閉鎖などが広がっている。訪問介護のヘルパーが減り、サービス提供を断る事業所もある。サービスを受けられず、介護保険料を払うことに疑問を持つ人が出るのではないか」と心配する。

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■給料アップ巡り見方は対立

都内にある福祉専門学校は今年度、介護福祉学科の定員40人に対して33人しか入学者がいなかった。定員割れは5年ぶりという。

「介護職はきつい仕事のイメージがあり、親も高校も生徒に勧めなくなっている」と学校長は話す。

日本介護福祉士養成施設協会によると、介護福祉士を養成する専門学校・専修学校は2008年度の434校をピークに13年度は378校まで減った。全国の総定員数に占める入学者数の割合は7割に満たず、学校の閉鎖も続いている。

政府は今春にも、介護保険から特養などに支払う介護報酬を全体で2〜3%下げる方針だ。財務省は、特養を運営する社会福祉法人が介護報酬をためこんでいるとして、報酬を下げても介護職員の給料を上げられると主張する。財務省の試算では特養1施設あたり3億円を超える「内部留保」があるという。

一方、東京都内にある社会福祉法人の役員は「都市部は仕事が多く、ほかの職業のほうが給料が高いので人材の確保が難しい。給料を上げたくても介護報酬が増えないと簡単には上げられない」と訴える。都市部は物価も高く、特養の内部留保は少ないという。

■2015.1.5  増やせ保育所・特養 都が50億円出資しファンド設立へ
乳幼児や高齢者の受け皿となる福祉施設が不足する東京都は2015年度、保育所や特別養護老人ホーム(特養)などの施設整備を促すため、「福祉貢献インフラファンド」を設立する方針を固めた。都が50億円を出資し、民間にも出資を募って総額100億円規模のファンドを目指す。

東京都は14年4月の待機児童数(8672人)、13年10月の特養への待機高齢者数(約4万3千人)ともに全国最多。現場の人手不足に加え、土地代や建設費などの初期費用がネックとなって受け皿の不足も大きな課題となっている。

ファンドは、ディベロッパーなどでつくる特定目的会社(SPC)に融資し、SPCが保育所や高齢者向けの福祉施設を新設する想定。ビルやマンションを新設、増改築する際に、建物の一角に福祉施設のスペースを確保する場合も融資の対象とし、保育所や特養などの運営事業者にスペースを貸し出し、その家賃収入を出資者に還元していく計画だという。

投資家から集めた資金でビルやマンションを建てる上場不動産投資信託「Jリート」の福祉施設版の位置付けで、都は15年度予算案に50億円を計上する方針。国内外の投資家から50億円規模の出資を募るほか、金融機関にもSPCへの100億円程度の融資を促して、ファンドと融資で総額200億円規模での事業展開を目指すという。

都内では、地方からの特養の進出が続く一方で、待機高齢者が増える杉並区が17年度に静岡県南伊豆町に特養の建設を決めるなど都外に建てる動きもある。舛添要一知事は「親の介護で遠くへ通うのは大変で、都外ではなく、都内で整備する必要がある。民間の力も借り、都がバックアップしていきたい」と話す。

都は待機児童の解消に向け、17年度までに4万人分の保育サービスの拡充や、高齢化対応でも特養の定員を25年度までに6万人分に増やす目標を掲げている。

■2015.1.5  「日本の介護、支えます」 米国人の特養施設長
日本に暮らす外国人は約200万人。人口の2%弱を占める。旅行などで訪日する外国人も年間1300万人を超え、存在感は増すばかりだ。少子高齢化が進む日本にとって共に暮らす外国人は強力な助っ人にもなる。

「おお、きょうの髪形、とてもすてきですね」

「あらうれしいわ。これはお礼よ」

神奈川県鎌倉市にある特別養護老人ホーム「ささりんどう鎌倉」。髪を三つ編みにした90代の女性がマシュウ・カラシュ(47)の手に軽くキスをした。

2002年に開かれた特養には介護が必要な高齢者約70人が暮らす。ショートステイ(短期入所)などを含めると利用者は100人を超す。

ニューヨーク生まれの米国人であるカラシュが施設長になったのは7年前のこと。外国人がトップの介護施設は極めて珍しいが、高齢者たちと過ごす風景に特段変わったところはない。

長身のカラシュがフロアを歩くと、あちこちの高齢者から声がかかる。一人ひとりに「元気?」「きょうは顔色がいいね」と語りかけ、スタッフにも「ありがとう」と声をかける。「施設長はとにかく明るい人で雰囲気が華やぐ。介護の現場では明るさは何より大事」と介護主任の市原郁(44)は話す。

初めから介護という仕事を志していたわけではない。米国の大学を卒業後、大手銀行に就職したが「向いていない」と退職。20代前半で来日し、東京で英会話教室を開いた。東洋武術が好きで、中国に行くための資金を稼ぐためだった。

だが、日本人女性と結婚し永住することを決意。娘を2人授かり、日本語もマスターした。そして30代半ばの時、誘われて始めたささりんどうでのボランティア活動で人生が一変した。

「かつて敵国だった米国人を日本のお年寄りは受け入れてくれるだろうか。そんな心配は杞憂(きゆう)だった」

流ちょうな日本語。明るくフランクな性格。カラシュはあっという間に人気者になった。自身も「こんなに必要とされ、ありがとうと感謝される仕事はない」と実感した。当初は英会話教室と二足のわらじだったが、思いは日増しに強まり、ヘルパー2級の資格を取得。いつしか英会話教室は閉め、ささりんどうの職員になっていた。

その後は夢中に仕事をこなす日々。働きぶりが評価され、前任の施設長が退職にあたり、カラシュを後継者に指名。07年末に施設長に就任した。

大変だったのはその後だ。

「若者は減るのに介護が必要な高齢者はどんどん増える。日本人だけでお年寄りを支えられますか」

着任当初、退職者が相次ぎ、運営に支障が出るほどの人手不足に陥った。「夜中に吐くくらいつらかった」。働けて幸せと思える職場づくりを地道に目指した。幸い3割あった離職率は13年に1割まで低下したが、「若い人が減り人手不足はどんどん深刻化する。手を打ち続けなければ」。目を向けたのは自分と同じ外国人だ。日本に住み日本人配偶者がいるなど、就労資格の心配がない人を探した。1人増え2人増え、今ではスタッフ約100人のうち外国人は6人に。国籍はフィリピン、ベトナム、ブラジルなど様々だ。

 
「日本人と外国人が尊重して協力しあえるチームを作りたい。いい介護はそんなチームから生まれると信じる」

カラシュが求める採用条件は2つ。「介護の心を持っていること、日本語ができること」。日本語の試験を課し、自分との会話も日本語のみと甘やかさない。14年から外国人スタッフ向けの日本語授業も始めた。専門家を招き、介護で必要な言葉を徹底的に覚えてもらう試みだ。

一方で外国人スタッフが働くときに感じる孤独感や戸惑いには気を配り、心を寄せる。「自分もそうだった。気持ちがわかるから大切にしてあげたい」

介護業界では国の後押しを受けインドネシアやフィリピンからの人材活用が進むが、言葉や文化の壁などでうまくいかないケースが少なくない。まずは身近にいる外国人の力を借り、グローバルな職場をつくる。国境を越えた介護人材の争奪戦が本格的に始まったとき、そんな職場こそが熱意ある外国人にとって魅力的な働き場所に映るはず。カラシュは確信している。

 
「この地域にいる外国人がリーダーになり、後に続く外国人とお年寄りたちを支える。そんな日も遠くない」

厚生労働省は10年後、現在より100万人多い240万人前後の介護職員が必要と試算している。若年人口が減少するなか、人材確保策の柱の一つと考えられているのが外国人の活用だ。

国は2008年度から経済連携協定(EPA)を通じ、インドネシアとフィリピン、ベトナムから累計1538人の介護人材を受け入れている。しかし、国家資格・介護福祉士の合格率は日本語能力の問題から5割程度。合格して働いているのは203人(13年10月現在)で、帰国した外国人もいる。

このため、国は外国人技能実習制度の職種に介護を追加したり、介護関連の国家資格を得た留学生の就労を認めたりするなどの対策を検討している。

■2015.1.5  国民健康保険、18年4月に都道府県移管へ
厚生労働省は、2018年4月に国民健康保険(国保)の運営を市町村から都道府県に移す方針を固めた。赤字に苦しむ国保の財政を立て直すためだ。移管に向けた財政支援のため、15年度予算では国費1700億円を追加投入。さらに大企業の会社員が入る健康保険組合(健保組合)などの負担を増やして財源を捻出し、国保の赤字解消を目指す方向だ。

今月下旬に始まる予定の通常国会で関連法の改正案を提出する。国保は公的医療保険の一つで自営業者ら約3500万人が入る。高齢者の割合が高く医療費がかさむ。無職の人も多く保険料収入は伸びない。財政は厳しく、市町村の6割強が税金で赤字の穴埋めや負担軽減をしている。「赤字」の総額は12年度、約3500億円に上る。

都道府県への移管は、政府の社会保障国民会議が13年に提案した。国保の「財布」を大きくし、財政基盤を安定化させる狙いだ。





【Q&A 国民健康保険の移管】 都道府県単位で規模大きく 財政基盤の安定が狙い 2014/10/30

厚生労働省は、国民健康保険(国保)を都道府県に移管するための具体案を社会保障審議会の部会に示しました。

Q 都道府県への移管とは。

A 国保は今、市町村が運営し、保険料を決め、集め、医療費を払うという一連の業務を担っています。厚労省は、運営を市町村単位から都道府県単位にして国保の規模を大きくするつもりです。2015年の通常国会に関連法案提出を目指しています。

Q なぜですか。

A 国保は自営業者や非正規労働者らが加入する医療保険ですが、三つの大きな問題を抱えています。
 (1)加入者の年齢が高い (2)財政基盤が不安定(3)市町村格差―です。国保の運営を危うくしており、解決することが移管の目的です。

Q 具体的には。

A 年齢層が高いと、若い人より病院に行く回数が多く、医療費がかかり、国保の支出が増える要因になります。また、会社員よりも所得水準が低く、保険料を労使で負担する健保組合と比べて加入者1人当たりの負担が重いため、納付率も伸び悩んでいます。市町村は税金で穴埋めしていますが、全国的に毎年3千億円規模の赤字で市町村の財政を圧迫しています。

Q 移管の利点は。

A 都道府県単位の方が加入者が多くなり、保険料収入が増え、財政が安定します。そうなれば、保険料を急激に上げたり下げたりせずに済み、市町村ごとの保険料の格差も減って負担を分け合うことができます。

Q 移管しても保険料は市町村ごとに違うの。

A 厚労省案は、納付率や医療を効率化する取り組みが保険料に反映する仕組みです。都道府県はその年に必要な医療費を推計し、市町村ごとに納めるべき保険料の総額を割り振ります。基準となる保険料率や納付率の目標も都道府県が示しますが、市町村がそれよりも多くの保険料を集め、納めるべき保険料の総額を賄えるなら、一人一人の保険料は安くてもいいというわけです。都道府県や広域の地域で同じ保険料額にすることもできます。

Q なぜそんな仕組みにするの。

A 都道府県と市町村の双方に、国保の財政を安定させて増え続ける医療費に歯止めをかける役割を担ってもらうためです。運営や医療費全体を効率化する計画作りは都道府県が行いますが、保険料の徴収や健康増進の取り組みは市町村が引き続き担います。保険料を安くできる仕掛けを盛り込み、積極的な取り組みを促したい考えです。

Q いつ始めるの。

A 13年に成立した社会保障改革に関するプログラム法では17年度までに実施することになっています。しかし、新たな運営主体となる都道府県側は、国保が積み重ねた赤字を解消するために国が財政負担しなければ、運営を引き受けないと主張しています。年末の予算編成に向け、交渉は激しさを増しそうです。

■2015.1.5  未届けホームの2割超が建基法令違反−非常用照明の未設置など、国交省調査
全国で届け出のない有料老人ホーム913施設のうち22%に当たる202施設に、昨年10月末時点で、避難のための非常用照明が設置されていないなどの建築基準法令違反があったことが、国土交通省の調査で分かった。自治体から是正指導を受けたのは392施設あったが、対応した施設は約半数にとどまった。

有料老人ホームを運営する事業者には、開設前に所定事項を自治体に届け出ることが老人福祉法で義務付けられているが、中には未届けの事業者もあり、サービスの実態把握が難しく、安全性やサービスの質を確保する上で課題とされている。

同省は、2009年に群馬県渋川市の老人ホームで発生した火災を受け、同年から毎年、未届けの有料老人ホームの建築基準法令違反に関する調査をしており、今回は昨年10月31日時点の状況について、都道府県などから報告を受けた情報を取りまとめた。

違反状態の未届け有料老人ホームの数を都道府県別に見ると、最多は東京で35施設。以下は、沖縄(30施設)、神奈川(25施設)、千葉(18施設)、大阪(13施設)などの順だった。違反の内容は、「非常用照明や排煙設備が設置されていない場合や、部屋や廊下の間仕切り壁に耐火性能がない」(同省の担当者)といったものが多かったという。

また、同省は認知症高齢者グループホームについても同様の調査を実施。それによると、昨年10月末時点で是正指導を受けた1792施設のうち344施設(19%)で法令違反の状態が続いていた。同省は自治体に対し、これら未届けの有料老人ホームや認知症高齢者グループホームの是正に取り組むよう要請するとしている。

■2015.1.6  豆腐なのに高カロリー 井村屋が高齢者向けに開発
食品大手の井村屋グループ(津市)は、高齢者向けの介護・栄養食品として、熱量を従来の二倍に増やした「高カロリー豆腐」を開発した。豆腐は低カロリーとの印象が強く、同社によると高カロリーを志向した製品の開発は国内で初めて。軟らかく食べやすい豆腐で、食事をしっかりとることが難しいお年寄りにも栄養をとってもらおうという「逆転の発想」で、今年夏ごろの商品化を目指す。

「肉まん・あんまん」「あずきバー」のロングセラーで知られる同社は、実は四十年以上前から豆腐を製造している。スーパーなどでの店頭販売のほか、三重県内の一部で学校給食にも採用されている。

新たなビジネス展開を考える上で注目したのが、食べ物をかんでのみ込むことが難しいお年寄りを主な対象にした介護食の分野。現在の市場では、野菜や肉などをムース状にしたり、誤嚥(ごえん)を防ぐためにとろみをつけたりした食品が主流となっているが、豆腐そのものに一工夫することを考えた。

介護食に関する農林水産省の補助事業の採択を受けて開発。同社の従来製品のカロリーは一個(七十五グラム)当たり四十九キロカロリーだったが、新製品は製造の過程で、体内にたまりにくくエネルギーになりやすい性質で注目を集める「中鎖脂肪酸」を加えることで、熱量を九十六キロカロリーに倍増させた。三重の地産地消もセールスポイントにしようと、県産の大豆「フクユタカ」や、県南部の尾鷲海洋深層水を使った天然にがりを使用した。

伊藤宏規技術戦略室長(61)は「豆腐は高齢者にとっておなじみの食品。お年寄り向けに軟らかくした製品を作るのではなく、もともと軟らかい食品に機能性を加えた食品を作りたかった」と製品開発の理由を説明する。

現在は、三重県の紹介を受けた伊賀市上野総合市民病院の在宅患者約五十人に、新製品を三カ月間食べてもらう実証試験を展開中。県内の六十五歳以上の要介護者約百人を対象にした別のアンケートも実施している。同社によると、アンケート対象者の半数以上が日常的に豆腐を食べている一方、しっかりかんだりのみ込んだりすることができないなどの理由で食事を十分にとれない、いわゆる「低栄養」の状態にある。最終調査結果は集計中だが「味は普通の豆腐とほとんど変わらない」との声が寄せられているという。

伊藤室長は「今後は、高カロリーな水ようかん、プリンの開発にもつなげたい」と話している。

■2015.1.6  東京の特養、深刻な人材不足が常態化−ショートやユニット閉鎖、受入抑制も
「人材が確保できないため、併設していたショートステイを閉鎖した」「人手が足りないため、入居者の受け入れを制限せざるを得ない」―。昨年末、東京都社会福祉協議会の東京都高齢者福祉施設協議会は都内の特別養護老人ホーム(特養)を対象に介護人材不足などをテーマとした緊急調査を実施した。調査には、半数近くの特養が計画通りに職員が配置できていなかったり、人手が足りない状態が半年以上続いている施設が80施設余りあったりするなど、深刻な人材不足が特養で常態化し、介護の質をもむしばんでいることを示す数字が集まった。

東京都高齢者福祉施設協議会では昨年12月、同会に加入する特養445施設を対象にファクスによる緊急調査を実施。305施設から有効回答を得た。

「現在、介護職員の人数は充足しているか」との問いに対し、「指定基準も、施設が計画上定める基準も満たしている」と回答した特養は47.2%で、半分に達しなかった。一方、人員に関する基準を満たせていないという回答は47.5%となった。このうち指定基準の人員を満たせていないと回答した特養も9施設あったという。

また、人員不足を感じている施設に対し、不足する人数を尋ねたところ、「1―3人」が60.0%で最も多く、以下は「4―6人」(30.3%)、「7―9人」(6.2%)などとなった。さらに、人員が不足している期間を尋ねた質問では、「6か月以上」が44.8%で最も多かった。

人員不足の対策として最も多かったのは(複数回答)、「派遣職員の雇用」の68.3%。次いで多かったのは「求職者面接会の開催、参加」(55.9%)だった。その次に多かったのは「施設内行事の中止、制限等」(19.3%)で、人員不足がサービスの質に影響を及ぼしている実態が浮き彫りとなった。さらに「ショートステイを閉鎖」(2施設)、「入居抑制」(9施設)、「ユニットの閉鎖」(3施設)など、人員不足がサービスの存続にも影響する例が出始めていることも明らかになった。

■マイナス改定、「介護人材確保に悪い影響」が96%超

人員不足を解消するための有効な手段について複数回答で尋ねた質問では、「給与などの処遇改善」(84.3%)が最多で、以下は「介護報酬地域加算の上乗せ割合の引き上げ」(76.1%)、「キャリアアップ制度構築 」(45.6%)、「介護の仕事のイメージアップのための取組み」(44.9%)、「無資格者の雇用」(43.3%)などの順となった。今年4月の介護報酬改定が減額改定となった場合の介護人材確保への影響について尋ねた質問では、83.6%の事業所が「たいへん悪い影響がある」と回答。「やや悪い影響がある」(13.1%)と合わせると96.7%の事業所が、報酬削減は介護人材確保に悪い影響をもたらすと答えた。

調査結果について、東京都高齢者福祉施設協議会は「東京の介護職の有効求人倍率が、他業種に比べて倍ほどの高さであることを考えても、東京の特養では、深刻な人材不足が常態化し、サービスの質や維持にまで影響を及ぼしているのは間違いない」としている。

■2015.1.6  5年後、介護の関連市場は2兆7千億円超に−富士経済が調査
各種市場の総合マーケティングリサーチを行う富士経済は、高齢者向けの家事代行サービスや食事宅配サービス、介護用品などを含む介護福祉・介護予防関連製品・サービスの市場規模が、5年後には2兆7829億円に達すると予測した調査報告をまとめた。2013年の市場規模と比べて82.3%の拡大で、富士経済では、「少なくとも65歳以上の世帯数がピークを迎えるといわれる25年までは、市場の拡大は続く」としている。

富士経済では、昨年6月から10月にかけて、高齢者向け食事宅配サービスや高齢者向け家事代行サービス、民間の介護保険など「サービス」8品目と、介護用電動ベッドや車いす(手動型)、福祉車両、高齢者向けコミュニケーションロボット、大人用紙おむつ、やわらか食などの「製品」35品目について、専門調査員による企業・団体などへのヒアリングなどを実施。「製品」と「サービス」について20年の市場規模を予測した。

その結果、「製品」の市場規模は6951億円、「サービス」の市場規模は2兆878億円となることが分かった。13年の市場規模(製品は5322億円、サービスは9945億円)と比べて製品は1.3倍、サービスは2.1倍の拡大が見込まれるという。「製品」と「サービス」を合わせた市場規模は2兆7829億円で、13年(1兆5267億円)と比べると1.8倍の成長が見込まれる。

また、対象となった43品目の「製品」や「サービス」を機能別に分類したところ、最も多かったのは、車いすなどを含む「移動」で、20年の市場規模は3532億円に達するとみられる。次いで多かったのは「食事」(20年の予測市場規模は3315億円)で、以下は「排泄」(同2819億円)、「睡眠」(同1229億円)などの順となった。

■2015.1.6  ついのすみか、ともに造ろう 建設費出し合い・各自で部屋設計
老後を考え、ついのすみかとしての共同住宅を自力で造る人たちがいる。老人ホームの要素を兼ね備えたマンションやアパート。共通するのは、他人同士でも見守り合い、助け合えるコミュニティーにしたいという願いだ。高齢化社会の新たな住まい造りとなるか。


茨城県龍ケ崎市にある2棟のマンション。中高年世代が建設費を出し合い、それぞれが住む部屋を自由設計した。1棟目(29戸)は2007年、隣の2棟目(20戸)は12年に完成した。

2棟目に入居する野々山進さん(59)と妻幾代さん(64)は東京都内の賃貸マンションから移り住んだ。進さんは東京・神田の映像関連会社に通勤する。

脳卒中で左足がまひした幾代さんは車いすで暮らす。「施設には入りたくない」と2人で住めるところを探し、建設に加わった。3階の自室内はバリアフリーで、外部連絡用のインターホンや緊急ボタンも備わる。午後6時半、常駐スタッフが2人の夕食を1階の食堂から運んでくる。土日は隣室の夫婦が食事をおすそわけしてくれる。

スタッフの運転でスーパーや駅、銀行、病院に車で行ける。幾代さんは転居前、連日20回ほど進さんに電話で頼み事をしていたが、ここに来て以来、ほとんど電話をかけていない。

野々山さん夫妻は「スタッフは夜中でも飛んできてくれる。お隣さんも家族同然」と言う。だれかが見てくれている安心感。できた時間で進さんはフルマラソンに挑戦中だ。

2棟目の価格は60〜76平方メートルで2400万〜3100万円。住民は主に首都圏から移住した50〜80代で、単身女性も多い。毎月5万円の管理・運営費を管理会社に支払い、スタッフからサービスの提供を受ける。

建設を呼びかけたのは千葉県我孫子市に住んでいた今美(いまみ)利隆さん(64)、久美子さん(64)夫妻。利隆さんは大手家電メーカーでリストラを担当していた。気持ちが落ち込み、51歳で希望退職した。

龍ケ崎市に住む両親は心臓病や骨折で入退院を繰り返していた。子育て、両親の世話、自分たちの老後――。「このままの生活が続けば自分たちが先につぶれる」。思いついたのがマンションと老人ホームを兼ねた共同住宅を親の所有地に建てることだった。04年にウェブサイトで賛同者を募集。報道で輪が広がり、3年後に1棟目が完成した。利隆さんは「介護と食、住にコミュニティーが加われば、新しい村ができる」と話す。


■他人同士で見守り

東京都杉並区のJR荻窪駅から歩いて10分弱。閑静な住宅街で新たな住まい造りが進む。名付けて「荻窪家族プロジェクト」。ここで生まれ育った瑠璃川正子さん(65)が「住人で助け合い、年を取っても暮らし続けられる家に」という夢の実現をめざしている。

工事中の住まいは3階建てで、1、2階は賃貸の共同住宅が計14室。各約25平方メートルでトイレ、シャワー、ミニキッチン付き。共用のキッチンやラウンジ、アトリエ、風呂もある。瑠璃川さん夫妻は3階に住む。

この住まいでは、一人暮らしの高齢者を居住者が見守り合うような関係づくりを目指す。1階の集会室は地域に開放し、趣味の集いや子育て支援の場に。入居者が、ラウンジや集会室で他の入居者や近隣住民とつながりを深めたり、看護師や福祉の専門家らに週1回程度相談したりできる仕掛けも考えている。月額費用は家賃や共益費など15万円程度を見込む。

両親を自宅でみとった経験から、瑠璃川さんはこの構想を思い立った。ヘルパーと家族で介護生活を乗り切ったが、介護保険は利用できるサービスの金額に上限があり、カバーできる範囲が限られることを痛感した。そのうえ今後は頼れる家族がいない人も増える。

ならば、他人同士でも「家族のような関係」を築けばいい――。父が残したアパートと自宅の建て替えに合わせ、建設を決めた。「最期まで地域で」を進める一歩にしたいと瑠璃川さんが願う「新たな我が家」は、2月末に完成予定だ。

■2015.1.6  誓約書に「死んでも責任問わない」 フィリピン人女性が提訴したブラック=H介護施設の実態
キョーエイグループ 株式会社 寿寿

死亡しても会社の責任は問わない−。大阪府東大阪市の介護施設で働いていたフィリピン人女性は、採用時にこんな誓約書を提出させられた。

「子供の日本国籍取得を援助する」と誘われて来日したが、待っていたのは逃げ出したくなるほどの過剰労働だった。連日夜勤を任され、休むことも許されなかった。退職した女性は昨年11月、「奴隷のような扱いを受けた」として施設の運営会社に未払い賃金や慰謝料など約580万円の損害賠償を求める訴訟を起こした。人手不足が深刻化する介護現場では近年、外国人労働者を劣悪な待遇で雇うブラック施設≠熨揩ヲており、今回のケースを「氷山の一角」とみる関係者もいる。


「子供のため」来日決意

《一、私は日本にいる間に自然な状況で死亡した場合、すべての金銭あるいは他の義務行為から会社、代表者、役員、管理者、社員に対し、永久に権利放棄します》

《一、私は自然死に関連し、会社、代表者、役員、代理人、社員を訴追しないことを保証します》

大阪や奈良で介護施設を運営する大阪府東大阪市の会社が、フィリピン人女性の採用時に提出させた「権利放棄書」の一部だ。

法的拘束力はないものの、業務中に死亡した場合に会社側を免責する内容が英語と日本語で記されている。会社は「あなたを守る書類だ」と説明し、サインを求めたという。

女性は石原チョナさん。平成8年、来日した際に知り合った日本人男性と結婚し、1男1女をもうけた。その後、男性とは離婚し、母子3人でフィリピンで暮らしていた。

石原さんによると、再来日のきっかけは、フィリピンにある同社の関連会社で行われた集団面接だった。

「日本で働けば子供の国籍取得手続きをする」と説明され、渡航費も貸し付けると説明を受けた。「子供のために」と再来日を即決。「日勤のみ、週休2日、収入約13万円」との労働条件が記された契約書にサインした。そこで配られた死亡時の「権利放棄書」の中身は見ていなかった。

24年3月、当時中学1年生だった長女を連れて再来日。社宅の4畳半のアパートに入居し、働き始めた。施設には他にも同じような境遇のフィリピン人女性が数十人働いていたという。


労災後も勤務強制

だが、間もなく夢は悪夢≠ノ変わる。

契約時に「日勤のみ」の約束だった勤務は、日本語が得意でないという理由で夜勤ばかりを割り当てられるように。しかも午後10時から午前6時まで「1人体制」。20人以上の要介護者の面倒をみなければならず、一睡もできなかった。何日も続けて夜勤が入るため、長女がアパートで1人で寝起きするような生活が続いた。

さらに24年11月、施設から会社の事務所に向かう際、自動車にはねられる事故に遭遇。足や腰をけがしたが、会社からは労働災害として扱われず、「いつまでも休むな」と早々に復帰を命じられた。休業を申し込んでも「借金が残っているうちは休むな」と一蹴されたという。


「借金」理由に酷使

実は会社側は石原さんを含むフィリピン人の職員に対し、ことあるごとに渡航費などの「借金」を理由に無理な勤務を強いていた。

石原さんの場合、会社からは60万円の借金があると言われ、月々の給与から「返済金」として2万円、「積立金」として1万円を天引きされていた。給与水準は日本人職員よりも低く、最低賃金以下の時給800円で働いていた時期もあったという。「借金を返すまで自由になれない」。それが会社の方針だった。

こうした厳しい管理下でも働き続けたのは、子供の日本国籍取得という目標があったからだった。しかし、国籍取得の援助は一向になく、精神的に限界となり、「借金が残っているうちは仕事は辞められない」と脅されながらも昨年4月に退職。弁護士に相談し、「子供の国籍が取れると欺かれ、過酷な労働を強いられた」として、会社に慰謝料など約580万円の賠償を求める訴訟を大阪地裁に起こした。


「安価な労働力」

日本では高齢化社会の到来で介護需要が増加の一途をたどる一方、介護の担い手不足が深刻化している。

政府はフィリピン、ベトナム、インドネシアの3カ国に対し、経済連携協定(EPA)に基づいて介護労働従事者を受け入れているが、これとは別に在留資格を持つ多くのフィリピン人が介護サービスに従事するため来日している。施設側がこうした外国人労働者を「安価な労働力」として酷使し、日本人職員との待遇格差をめぐるトラブルが多発している。

石原さんを支援した「とよなか国際交流協会」(大阪府豊中市)の担当者は、「今回のケースは氷山の一角だろう」と指摘。「ここ数年、介護現場で日本人には決してさせないような勤務を強制させられる外国人労働者からの相談が多く寄せられている。こんな待遇が続けば、国籍に関係なく介護の仕事が敬遠され、ますます現場の人手が足りなくなるのではないか」と話す。

提訴後、通訳を介して記者会見した石原さんは「当時のことは辛すぎるので思い出したくない」と多くを語らなかったが、提訴した理由を涙ながらにこう話した。

「これからやってくる仲間のためにも、日本で働く環境をもっとよくしてほしい」

■2015.1.7  障害者福祉、報酬減額へ 事業者向けを1%前後 15年度、政府最終調整
政府は、障害者への福祉サービスを提供する事業者に対し、おもに税金から支払う報酬を2015年度から引き下げる方向で最終調整に入った。介護事業者に支払う「介護報酬」を引き下げるのに合わせ、増え続ける社会保障費の伸びを抑えるねらい。福祉の現場で働く人の賃金にあてる報酬は引き上げる方針だ。


障害者施設でのサービスや、障害者の自宅でのサービスにかかる費用は、国が定める公定価格の「障害福祉サービス等報酬」に基づき、国や地方自治体が事業者にお金を支払う。所得に応じてサービス利用者が一部を負担する場合もある。

14年度の国の負担は約9千億円。利用者数は08年の約40万人から14年は70万人近くに増えており、15年度は国の負担も約1兆円に増える見通しだ。財務省や厚生労働省などは事業者向けを1%前後引き下げる方向で調整している。

いまの報酬制度が始まった06年以来、ほぼ3年ごとに報酬を見直してきたが、マイナスとなるのは初めて。12年度の改定では2%の増額だった。

財務省によると、事業者が実際にサービスに使っている費用より公定価格の方が高く、事業者の実質的な「もうけ」は過大だという。同省の試算では、障害福祉サービスの事業者では、企業の利益率にあたる「収支差率」が12%程度あり、介護事業者(8・7%)より多い。このお金をサービスの充実や職員の賃金に回せば、事業者への報酬を下げても障害者へのサービス切り下げにはつながらないとみている。

一方、現場で働く職員は月額1万円程度の賃上げになるよう、賃金向けの報酬である「処遇改善費用」をつける。


■<解説>社会保障費を抑制、福祉低下の懸念も

障害者福祉の事業者向けの報酬引き下げは、財務省が求めているものだ。消費税率10%への再増税の延期に加え、増え続ける社会保障費を抑えなければ、国の財政が立ちゆかなくなるとの危機感がある。だが、障害者が受けるサービスが悪くなり、「弱者の切り捨て」につながる懸念もぬぐえない。

障害者福祉サービスにかかる国の負担は、利用者が増え続けていることで、2009年度の約5千億円から15年度は約1兆円に倍増する見通しだ。今後も利用者数の増加が見込まれるため、財務省は歳出抑制が避けられないとの立場だ。

だが、すべての事業者にお金がたまっているとは限らない。障害者福祉の事業者は規模が小さいところが多く、引き下げを機にサービス縮小や廃業に追い込まれる事業者が出れば、助けを必要とする障害者たちが影響を受けかねない。

報酬改定を議論する厚労省の有識者会合では昨年末、「介護と一緒に(報酬を)落とされてしまうと継続が難しい所が出て、少し良くなってきた障害者の地域福祉が、また凍り付いてしまいかねない」との指摘もあった。報酬の改定が現場にどんな影響を及ぼす可能性があるのか。説明を尽くす姿勢が求められる。

■2015.1.7  わかる:重症障害者に福岡県8介護施設指定 ショートステイ広がらず 「経験不足」受け入れ消極的
酸素吸入やたんの吸引などの医療行為が必要な重症心身障害者の短期入所(ショートステイ)の新たな受け入れ先として、福岡県が九州で初めて、県内の介護老人保健8施設を指定した。これまで医療機関が担ってきたが、入所希望が増え、受け皿不足が全国的な課題となっていた。家族の負担軽減につながり、同様の取り組みの広がりが期待されるが、経験不足などを理由に受け入れに消極的な施設も多く、足踏み状態だ。

福岡県はこれまで、在宅の重症心身障害者で、家族が入院や外出などで介助できない場合、一時的に障害者を預かる短期入所を18カ所の病院で受け入れてきた。しかし、近くに住んでいなければ送迎に時間がかかるなど利便性が悪かった。また、家族の高齢化に伴い体力的、精神的な負担が大きくなっており、休息が必要なことからも短期入所の利用は増えている。

福岡県によると、県内で在宅の重症心身障害者は約1800人。アンケートの結果、回答した約4割が既に短期入所を利用していたが、3割強が使ったことがなく「今後利用したい」と答えた。受け入れ病院の一つ、同県久山町の「久山療育園重症児者医療療育センター」では、短期入所や日帰り利用がこの5年ほどの間、毎年600件前後と高水準で推移している。昨年度は満床などのため47件について断り、受け入れに限界があるという。

このため県は、常勤の医師・看護師がいる介護老人保健施設に、空きベッドが出た場合に受け入れてもらえるよう要請。医療的なケアが欠かせない障害者には専門的な知識と対処が必要なことから、希望する施設に対し、久山療育園のスタッフが実習を交えて指導し、昨年10月以降に8施設が指定された。施設側には高齢者が利用するより報酬単価が高い利点があるという。

短期入所の受け入れ施設拡大は全国的な課題となっているが、福岡県のように介護老人保健施設を指定しているのは兵庫、山口両県やさいたま市などにとどまる。

高齢者のケアと違いがあるため、適切に対処できるか施設側が不安で受け入れに消極的だという。宮崎県の担当者も「施設側に協力を求めているが、人員不足など態勢の問題や経験がないなどを理由に手を挙げてもらえない」と話す。

久山療育園の宮崎信義センター長は「短期入所先の充実は障害者の在宅生活を可能にする上で鍵になる。介護老人保健施設が受け入れを広げることで、障害者の生活の支えになってほしい」と話している。


◇負担軽減へ家族に期待と不安

重症心身障害者を介助する家族側にも、対応に不慣れな介護老人保健施設に預けることへの不安があり、短期入所の利用が進まない側面もある。

福岡県福津市に住む石井千鶴子さん(53)は、脳性まひで常時介助が必要な長男信康さん(25)と2人暮らしをしている。最近受けた定期検診で、信康さんは筋肉の萎縮や体の変形が進み、嘔吐(おうと)を起こしやすくなっているとも言われた。

体重約40キロの信康さんを着替えや入浴の際に一人で抱え上げなければならない。近くに住む母親(79)の介護もあるため、千鶴子さんは月2回1週間ずつ、信康さんを車で30分前後の場所にある医療機関に短期入所で預けている。他にも希望者が多く「希望通りに受け入れてもらえることは少ない」。

そんな中、自宅から5分の介護老人保健施設が昨年12月に短期入所施設に指定された。信康さんは初めて行く場所に緊張し、人見知りもある。千鶴子さんには不安もある。それでも、新たな受け入れ先に期待を寄せる。「短期入所先がなければ家族も本人も困る。施設側と意思疎通を図り、体験利用を重ねながら理解を広げ、お互いの壁を乗り越えたい」と話した。

■2015.1.7  <自民>介護報酬等引下げに反対
自民党は7日、社会保障制度に関する合同会議を開き、事業者に支払われる介護報酬や障害福祉サービス報酬の2015年度改定について、引き下げに反対する要望書をまとめた。8日にも麻生太郎財務相に提出する。

介護報酬改定について、要望書は「事業者が安定して質の高いサービスを提供するために必要な改定率を確保」するよう求めた。

しかし、政府は既に介護報酬の減額方針を固めている。昨年末時点では財務省が3%強の減額を求め、厚生労働省が反発していたが、財務省は年明け、首相官邸に2.5〜3%減とする意向を伝えた。厚労省や自民党は事実上プラス改定を断念している。

一方、障害福祉サービス報酬を巡っては、1%程度のカットを迫る財務省に対し、自民党厚生族は「野党から障害者いじめと国会で追及され、春の統一地方選にも影響する」と引かない構えで、7日の会合では「政権を倒す気か」との批判も飛び出した。

■2015.1.7  「障害者でも挑戦を」 菊川の吉松さん、交通事故で両足まひも起業
交通事故で脊髄を損傷し、車椅子生活を余儀なくされた菊川市堀之内の吉松豪次郎さん(45)が福祉用具貸与・販売「アイエル」の経営に奮闘している。障害者の自立した生活の手助けになればと願って設立した会社は徐々に軌道に乗り、10周年の節目を今年迎える。「足が不自由でもやろうと思えば仕事はできる。自分の姿を見てチャレンジする障害者が増えてくれたら」と期待する。

吉松さんは大学卒業後、大手総合建設会社に就職。工事現場の監督業務に日々汗を流していた。25歳の時、オートバイで仕事場から会社の寮へ帰る途中、信号待ちの乗用車に追突した。入院して3カ月後、両足の完全まひで2度と歩くことはできないと告げられた。親を不安にさせないために悲しむ間もなくリハビリに取り組んだが、「一人でいると涙が出そうになることもあった」と振り返る。

会社を退職後、設計事務所に勤務し、製図や積算といったデスクワークで生計を立てた。将来の展望は描けなかったが、仕事先で「税金を払える障害者になりなさい」と励ましの声を掛けられたことをきっかけに自身の障害を受け入れるようになった。

2005年に一念発起してアイエルを設立した。年に100件ほど受注する手すりの取り付けや段差の解消工事は、上半身を頼りにほとんど一人でやり遂げた。時間は人の2倍かかっても、誠実に対応することで顧客の信頼を獲得していった。

13年には磐田市に支店を設置し、現在は社員5人を抱えている。社会から養われているという障害者のイメージに「雇用の助成はあっても、起業の支援はない。商売を始める障害者を応援する仕組みがあってもいいはず」と訴える。

■2015.1.7  障害者アート全国に 射水のNPO、トランクで作品交換へ
知的障害者のアート活動を支援する射水市のNPO法人「工房ココペリ」が2月、トランクに詰めた作品を全国の福祉団体と送り合い、各地で展覧会を開く「トランクプロジェクト」を始動させる。施設の余暇活動にとどまりがちな障害者アートへの理解を広め、埋もれた才能を発掘するのが狙い。関係者は「障害者アートの活動は、多様な価値観を認め合う社会の象徴となり得る。全国から作品を集めたい」と意気込む。

芸術分野で才能を発揮する知的障害者による作品は「アール・ブリュット」と呼ばれ、独創的な作風が近年、美術界の注目を集める。滋賀や京都では街なかに専用の美術館や創作スペースを設け、障害者の社会参加に生かす取り組みが進められているが、一部地域に限られ、大半が福祉施設の余暇活動にとどまっているのが現状だ。

トランクプロジェクトは、手軽な方法で多くの人に障害者アートを見てほしいと企画。全国の福祉団体と作品を詰めたトランクを送り合い、各地域の美術館やギャラリーで展覧会を開いてもらう。ココペリ副理事で、日本画家の米田昌功さん(49)=富山市追分茶屋=は「アート活動に力を入れたいが、やり方が分からない団体は多い。他県の団体とつながりを持つことで、ノウハウも学べる」と話す。

ココペリは2009年、高岡支援学校の卒業生とその保護者らで結成。現在は知的障害のある20代の男女8人が、射水市小島(大島)のアトリエで月に数回、創作に励む。美術公募展「越中アートフェスタ」で入選・入賞を重ねるほか、高岡市古城の射水神社などで作品展を開いてきた。メンバーの一人、末永征士さん(24)=射水市戸破・小杉=は「人に作品を見られるのはうれしい」と話す。プロジェクトは、メンバー8人の作品を障害の有無を超えて全国に発信することも目的の一つだ。

プロジェクトの手始めとして、2月に滋賀県内で開かれる障害福祉関係者による全国会議「アメニティーフォーラム」でPR活動を展開する。千人以上の関係者が集まるフォーラムで米田さんらがプレゼンを実施。幅広い参加を呼び掛けた上で、県内の美術館での展覧会開催を目指す。井上浩美理事長(49)=富山市四方=は「障害者アートの普及を志す全国の団体とネットワークを作り、活動の幅を広げたい」と話している。


◆アール・ブリュット◆
「生(き)の芸術」という意味のフランス語。正規の美術教育を受けていない人が自発的に生み出した、既存の流派や傾向にとらわれない絵画や造形を意味する。狭義には知的障害者による作品を指すことが多く、日本では山下清が知られる。

■2015.1.7  正月知事選:11日投開票 県の障害者ら就労支援事業 国の補助終了、存続の危機 /佐賀
障害者や難病患者の就労を支援する県の「レッツ・チャレンジ事業」が苦境に立たされている。
事業は当事者から相談を受けた県が事業所と委託契約を結び、事業所が当事者を正規雇用する代わりに県が賃金などを支払う。前知事時代の肝煎り事業で2010年8月から計56人が利用したが、14年度で国基金による補助が終了。「15年度以降の見通しは立たない」と担当者も話し、関係者からは新知事に存続を期待する声が上がっている。

事業では介護福祉士やパソコン検定などの資格取得もサポートする。利用者はDV被害者や刑務所出所者らも含まれる。
委託を受けた事業所は半年の契約後、改めて雇用を継続するかを判断する。県によると、委託先で継続雇用されているのは19人で事業終了後、別の事業所に雇用されたのは16人。

県は07年、障害福祉課に就労支援室を設置。障害者の就労の機会を広げるため、就労支援コーディネーターを企業に派遣する「チャレンジド(障害を持つ人)と企業の架け橋事業」などを県独自で実施した。結果、障害者の法定雇用率(2・0%)達成企業の割合が4年連続で全国1位になるなど、障害者らの雇用支援に力を入れてきた。

就労支援室によると、事業の当初予算額は約2700万〜7200万円で、ほとんどに国の緊急雇用創出基金を充てていた。15年度予算は県の一般資源で負担し、14年度のおよそ3分の1の約1200万円の予算案を2月議会に提案する。予算が減ることで、半年間の雇用期間を3カ月に縮小する。

担当者は「決算額は毎年約1000万円で、今回の予算額でも事業が滞ることはない」と話すが、利用者からの相談窓口となる県難病相談・支援センターの三原睦子所長は「3カ月でどれだけスキルを付けられるか。資格の取得も厳しくなる。知事も替わり、事業自体がどうなるか、わからない」と不安視する。

難病「もやもや病」を抱える佐賀市中の館町の介護福祉士の女性(47)は「今の自分があるのは事業のお陰が大きい」と強調する。11年1月に県難病相談・支援センターの紹介で事業を知り、佐賀市内の介護事業所に勤めた。

もやもや病は脳内の頸(けい)動脈が何らかの原因で細くなり、周辺の毛細血管が拡張し、頭痛や重度になると脳梗塞(こうそく)などに至る病気。女性は印刷会社に勤めていた08年に診断され、退職。独学でヘルパー2級の資格を取得した後、事業を利用した。

■2015.1.7  北海道内の医師、あと千人必要 地方の不足さらに加速 道調査
道が、道内の医療機関を対象に必要としている医師の数を尋ねる「必要医師数実態調査」を実施したところ、昨年6月1日時点で、必要な医師が1万3157人だったのに対し、実際にいる医師の数は1万2013人で1144人不足していることがわかった。

実際の医師の数に対し、何倍の医師が必要かを示す倍率「必要度」でみると、道内21地域の「2次医療圏」のうち、宗谷が1・23倍で最も高かった。

調査結果は道が6日、道議会保健福祉委員会で報告した。調査は2010年に厚生労働省が全国一斉で行い、11年には道が独自に実施。3回目の今回も道の独自調査で、道内の病院572カ所、有床診療所468カ所の計1040施設を対象に行い、767施設から回答を得た。結果は、一般的な医療サービスの提供を地域内で完結できる単位である「2次医療圏」ごとに分析した。

■2015.1.8  認知症高齢者:5人に1人…10年後推計
◇政府が国家戦略案

全国の認知症の人の数は、2025年に最大で約730万人にのぼることが7日、厚生労働省の研究班の推計でわかった。認知症の人は、12年時点で約462万人(厚労省の別の推計)で、65歳以上の7人に1人とされるが、25年には5人に1人に増加することになる。

推計は認知症の有病率が各年齢層で一定の場合と上昇する場合の2通りで試算した。

政府は同日、この推計値を踏まえ、認知症施策を総合的に進めるための国家戦略案を、自民党の部会に示した。政府は今月中にも国家戦略を正式決定する方針。

国家戦略案は「適時適切な医療・介護の提供」「認知症の人やその家族の視点の重視」など七つの柱で構成され、認知症になっても生きがいを持って暮らせるよう、就労継続のための支援や、ボランティア活動など社会参加のための支援の強化を盛り込んだ。

65歳未満で発症する若年性認知症の人向けには、都道府県の相談窓口に、支援団体と本人をつなぐ調整役を配置する。地域での見守り体制の整備や、詐欺などの消費者被害の防止、介護者の負担軽減のための介護ロボットの開発支援、仕事と介護の両立支援環境の整備なども盛り込まれた。

認知症の予防・治療では、早期の認知症の診断方法を15年度までに確立し、日本発の根治薬の治験を20年度ごろまでに始める目標を掲げた。

また、一連の認知症施策を企画・評価する際には、認知症の本人や家族の意見を政策に取り入れたり、プランの評価に加わる機会を設けたりすることとした。

国は13年度から「認知症施策推進5カ年計画(オレンジプラン)」をスタートさせたが、医療・介護が中心で、まだ介護がいらない認知症の初期段階の人の支援や、暮らし全般のサポートが乏しいことが指摘されていた。「国家戦略」はオレンジプランを発展させ、厚労省のほか、内閣府、消費者庁など、関係省庁が横断的に取り組む。国家戦略の対象期間は25年まで。

◇認知症対策の国家戦略案

国家戦略案では、認知症施策の充実のため、次の具体策を掲げている。(新は新規事業)

・「認知症初期集中支援チーム」の設置推進--医療・介護の専門職がチームで認知症の人を訪問し支える。18年度からは全ての市町村で実施

・看護職員に認知症対応力向上研修(新)--認知症の状態に応じた適切なケアが可能となるよう実施

・新人の介護スタッフにeラーニング導入(新)--認知症ケアで最低限必要な知識や技能を習得させる研修

・認知症対応力向上研修を受けるかかりつけ医を17年度末までに6万人に拡大

・「認知症サポーター」を17年度末までに800万人養成--認知症に関する正しい知識と理解を持ち、地域で認知症の人や家族を手助けする。

■2015.1.8  特養定員、17年度3295人増 北海道の計画素案、高齢化率30%に
道は、2015年度から3年間の高齢者政策の指針となる「第6期道高齢者保健福祉計画・介護保険事業支援計画」の素案をまとめた。高齢者の増加に伴い、計画最終年度の17年度までに、特別養護老人ホーム(特養)の定員を15年度当初から3295人増やすことを達成可能な目標として掲げた。
入所待機者数がなお多いことから、日常生活圏内で必要な介護を受けられる「地域包括ケアシステム」の構築も目指す。

素案は、各市町村の推計を基に高齢化率や介護サービスの必要量をまとめ、7日の道議会少子・高齢社会対策特別委員会で報告した。それによると、17年度の65歳以上の高齢者数は160万1千人で、15年度より5万6千人増加。高齢化率は1・5ポイント増の30・1%で、高齢者のうち介護認定を受ける人は同3万3千人増の33万8千人となる。

定員増の目標値は、こうした数値や、特養の入所要件を原則要介護3以上に限定した昨年の法改正などを基に市町村が計画し、道がまとめた。特養は15年度当初の定員を2万5616人と想定し、17年度末までに2万8911人に増やす。道は、事業者が新たに施設を整備する際などに費用を助成する。介護老人保健施設(老健)は15年当初より定員を865人増の1万7630人とする。

8日から意見公募を行い、これも参考に介護人材の必要人数推計などを加えた計画案を作成。3月までに決定する。

■2015.1.8  サ高住、県内3000戸超 松山は市区町村別全国一
愛媛県内の「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」登録数が7日時点で118件3084戸に上っている。県が高齢者居住安定確保計画で2020年の整備目標とする3千戸を既に超過。県内の約6割が集中する松山市は市区町村別(政令市の区も含む)で全国トップの林立状態だ。

サ高住制度は11年10月にスタート。入居者の安否確認と生活相談に必ず対応し、バリアフリー構造などで環境を調えた賃貸住宅で、高齢者住まい法に基づく。国の建設補助や税制優遇、金融機関の後押しもあり、多業種が参入した。

松山市は、国土交通省が昨年11月に発表した登録戸数(1766戸)が全国で最多だった

■2015.1.8  介福士取得の留学生、訪問系での就労も視野−厚労省検討会、肯定的意見が優勢
外国人介護人材の受け入れについて議論する厚生労働省の検討会が8日、東京都内で開かれた。

この日は、日本国内の養成施設を卒業し、介護福祉士の国家資格を取得した外国人留学生が、国内で働き続けられるよう制度を見直すための検討が行われた。

EPA(経済連携協定)の枠組みでは認められていない介護福祉士の訪問系サービスでの就労について、委員からは、地域包括ケアシステムを構築する必要性から、実務経験や日本語能力といった一定の条件を付けた上で、将来的には就労を認めるべきという声が多く上がった。

現在、「高度に専門的な職業」に就く外国人は日本で働くことが認められている。具体的には医師や看護師などがこれに当たるが、介護福祉士は含まれておらず、田中博一委員(日本介護福祉士養成施設協会副会長)によると、養成施設を卒業して資格を取得しても帰国してしまう留学生が少なくないという。

こうした実情から、昨年6月に閣議決定された「日本再興戦略」では、日本の養成施設を卒業し、介護福祉士などの国家資格を取得した外国人留学生について、「引き続き国内で活躍できるよう、在留資格の拡充を含め、就労を認めること等について年内を目途に制度設計等を行う」とされていた。厚労省は当初、昨年末までに議論を取りまとめる予定だったが、衆院選の影響などで遅れが生じているため、同省は早期に次回会合を開いて取りまとめ案を示す。

今回の在留資格拡充の対象者の範囲について同省はこの日、「介護福祉士の国家資格取得を目的として養成施設に留学し、介護福祉士資格を取得した者を想定する」との対応案を示し、これについて委員から反対意見は出なかった。

また、EPAの枠組みで働く外国人については、在留の状況を適切に管理する必要性などから、介護福祉士取得後も訪問系サービスには従事できないとされている。同省はこれを踏まえ、介護福祉士資格を取得した留学生が、利用者と1対1でサービスを提供することが想定される訪問介護など訪問系サービスで働くことについて、外国人労働者の人権を守る観点などからどのように考えるべきか、委員らに議論を促した。

石橋真二委員(日本介護福祉士会長)は、「実務経験や日本語レベルなどある程度の条件の下であれば、将来的に訪問介護を認めてもいいのでは」と発言。白井孝子委員(学校法人滋慶学園東京福祉専門学校ケアワーク学部教務主任)も、「卒業後すぐに在宅サービスに就くのは難しいだろうが、経験を積む中では在宅も視野に入れられるよう(就労を認める範囲の)幅を持たせるのがいい」と述べ、他の委員からも同様の声が上がった。

一方で、熊谷和正委員(全国老人福祉施設協議会副会長)からは、「これまでの諸外国の例を見ると、訪問系は1対1なので介護する側への人権侵害もあると聞いている」とし、慎重な議論を求めた。

■技能実習、訪問系は対象外とすべきとの声が優勢

同日の会合では、技能実習制度を通じた外国人介護人材の受け入れについても議論した。これまで同検討会で4回にわたり話し合ってきたが、この日は検討課題として残っていた「適切な実習実施機関の対象範囲」などについて検討した。

同省は、技能実習制度の対象職種に介護分野を追加する場合、適切な実施機関の対象範囲として、「『介護』の業務が行われていることが制度上想定される範囲に限定すべき」とし、具体的には、介護福祉士の国家試験の受験資格要件を満たすための実務経験として認められている施設などとする案を提示した。この中には特別養護老人ホームや介護老人保健施設、病院、診療所などが含まれており、さらにその中でも、経営が一定程度安定しているところに限定すべきとした。

これについて多くの委員が賛成したが、訪問系サービスについては、実習実施機関の対象外とすべきという意見が数多く上がった。「外国人実習生が訪問介護に行った場合、利用者は不安を抱くだろうし、本人もうまく実習ができないということが考えられる」と石橋委員が述べたほか、白井委員も、「訪問系ではいろいろな利用者がいるため何が起きるか分からないし、他の人が手を差し伸べてあげられない状況では、実習生の人権を守るために避けた方がいいのでは」とした。

■外国看護師の国内就労、「乱暴な議論」との意見

同省はこのほか、介護人材を確保するため、外国の看護師資格取得者が日本の介護分野で働けるようにすべきかどうかも論点として提示した。

しかし、平川則男委員(連合総合政策局生活福祉局長)は、これまでの同検討会では、いかに介護の質を担保するかを前提に議論してきたにもかかわらず、「日本語能力について何ら検討もされておらず、単に外国で看護師資格を取得したことをもって日本の介護分野で働けるようにするのは相当乱暴な議論だ」と述べた。他の委員からも、外国人介護人材の受け入れについては、まず技能実習生や留学生の国内就労の議論を深めるべきとの声があった。

■2015.1.8  認知症、2025年に700万人 高齢者の5人に1人
厚生労働省は、10年後の2025年に認知症の人が約700万人に達するとの新たな推計を、2015年1月7日に明らかにした。65歳以上の高齢者の5人に1人にあたる。この推計を盛り込んだ、認知症対策の新たな国家戦略案「認知症施策推進総合戦略」(新オレンジプラン)をまとめ、あわせて公表。自民党の厚労部会などの合同会議に提示したあと、正式決定する運び。

厚労省研究班の推計によると、65歳以上の認知症の人は12年時点で約462万人。新たな推計では団塊の世代が75歳以上になる2025年には675万〜730万人になる。

一方、新たな国家戦略案は、厚労省と警察庁、内閣府など関係府省庁が作成。「認知症とともに、よりよく生きていくための環境整備が必要」として、取り組むべき課題に「本人や家族の視点の重視」などの7つの柱を掲げている。

■2015.1.9  子育て支援で乗客確保 京阪が淀駅近くに保育園開設
関西で私鉄各社による保育園や学童保育施設の開設が相次いでいる。京阪電気鉄道は9日、今年4月に淀駅(京都市伏見区)近くで保育園を開設すると発表した。人口減少で乗客の先細りが懸念される中、子育て支援事業を通じた乗客確保を競っている。

京阪電鉄は、淀駅近くの線路の高架下にあるスペースを利用して保育園を整備する。鉄骨平屋建てで床面積200平方メートル。定員は0〜1歳児の30人で、社会福祉法人「淀福祉会」(同)が近くの淀白鳥保育園の分園として運営する。

同社の保育園開設は樟葉駅(大阪府枚方市)近くに続いて2カ所目で、「沿線の付加価値を高めて、将来の定住人口を拡大させたい」(経営統括室)とする。

関西では、阪急電鉄が今年4月に大阪府豊中市の阪急豊中駅構内で学童保育施設を開業する。近畿日本鉄道は昨年3月に開業した超高層ビル「あべのハルカス」(大阪市阿倍野区)内で保育園を開設した。

阪急電鉄は「働く女性を応援することで、将来も沿線に住み続けてもらえれば」(広報部)としている。

■2015.1.9  道交法上は歩行者 電動車椅子、十分な練習を
足腰の弱った高齢者らが電動車椅子に乗って移動中に交通事故や踏切事故に遭うケースが後を絶たない。消費者庁の消費者安全調査委員会(消費者事故調)は再発防止策の検討に向け、これまでの事故を新たに調査対象とすることを決めた。メーカーなどの関係者らは「道路交通法上は歩行者扱いだが、交通ルールを守って踏切横断はなるべく避けるなど安全運転に徹してほしい」と呼びかける。

●道交法上は歩行者

「高齢者が利用するものという視点を考えながら、(再発防止のために)さらにできることはないか、と調査することにした」。消費者事故調の畑村洋太郎委員長は昨年11月の記者会見で、電動車椅子事故を調査対象に選んだ理由をこう語った。

電動車椅子には「ジョイスティック型」と「ハンドル型」がある。ともに1回の充電で20〜30キロ程度を走行できる。1970年代から市販されており、メーカーなどで構成する電動車いす安全普及協会がまとめた85年以降の累計出荷台数は約63万台。消費者事故調の調査対象は、このうち約47万台と7割超を占めるハンドル型だ。道交法上は歩行者扱いで運転に自動車の免許は必要なく、高齢者を中心に利用されている。

●5年間で31人死亡

家庭用製品の事故を調査する製品評価技術基盤機構(NITE)によると、2009〜13年度に報告があった電動車椅子による事故は59件あり、31人が死亡した。また消費者庁によると、14年度も昨年11月時点で死亡・重傷者の報告が計3人あったという=表<左>。

NITEの分析によると、使用期間別では使い始めてから1年未満での事故が19件と最も多かった。製品に不慣れだったことが原因の一つと推測されるという。

状況別では、走行中に運転操作を誤るなどして路肩に寄りすぎて側溝や川、田んぼなどに転落したり、坂道で転倒したりするなどの「転倒、転落」が全体の約半数を占めた。

次いで踏切内で列車と衝突する事故が多かった。JR東日本や西日本によると、障害物検知装置が設置されている踏切も多いが、「乗用車など大型の障害物を検知するためのもので、車椅子の大きさでは必ずしも検知できるとは限らない」という。

一方、警察庁によると電動車椅子が絡む交通事故では一般の歩行者と同様、道路横断中の発生が目立つ。「買い物」や「訪問」の途中に事故に遭う場合が多い。こうした中、電動車いす安全普及協会は各地で安全講習を開催。またNITEや消費者庁も定期的に注意喚起している。

●バッテリーも確認

では、利用者は具体的にどのような点に気をつければいいのだろうか。

NITEは使用開始から1年未満の事故が約3割を占めることから、「初めて運転する時は安全な広い場所で十分な練習をして、操作や速度に慣れてほしい」と呼びかける。また、地域で開かれる安全運転講習にも定期的に参加し、正しい使用法を学んでほしいと訴える。

さらにバッテリーの残量やタイヤの減り具合など日常点検を怠らないようにすると共に、路肩に寄りすぎないことや、踏切の横断をなるべく避けるなど、運転時の注意事項=表<右>=にも気を配ってほしいと強調する。

高齢による身体機能の衰えなどの理由で運転免許証を自主返納し、代わりに運転経歴証明書の交付を受けた人は12年に8万1711件に上る。安全普及協会では「こうした人にとって、行動範囲がぐっと広がる便利なものでもある。『歩行者』としての交通ルールを順守し、日常点検をしっかりして使いこなしてほしい」と話している。

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 ◇運転時の注意事項

▼運転時は路肩に寄りすぎない

▼坂道を下る時は、速度を遅めに設定

▼踏切の横断はできるだけ避ける。やむを得ず横断する場合は、脱輪などをしないようにハンドルをしっかり握り、線路に対してできるだけ直角に進む

▼初めて使用する場合は十分に練習する。定期的に安全運転講習会に参加する

▼バッテリー残量やタイヤの減り具合を確認するなど、日常点検を怠らない

 ※製品評価技術基盤機構の資料などを基に作成

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 ◇最近の主な電動車椅子の事故

2012年10月 電動車椅子と共に川で発見され、死亡確認(静岡県)

2013年 3月 下り坂でブレーキが利かずに歩道に乗り上げ転倒、負傷(宮崎県)

      9月 下り坂で壁に激突し、死亡(東京都)

2014年 6月 踏切内で列車と接触、負傷(福岡県)

      9月 踏切内で列車にはねられ、重傷(大阪府)

       同 工事現場の穴に転落、死亡(宮崎県)

■2015.1.10  インフル集団感染1人死亡、広島 男性患者、院内歩き拡大
広島県竹原市の安田病院は10日、入院患者や職員ら計93人が院内でインフルエンザに集団感染し、入院していた女性患者(81)が死亡したと発表した。

病院によると女性は5日に発症し、インフルエンザ肺炎で9日に死亡した。感染者は入院患者46人、病院と同じ医療法人が併設する介護老人保健施設「まお」の入所者20人、両施設の職員27人の計93人。県の医務課によると10日現在、有症者は30人に減少したという。

病院側は「説得はしたが、最初に感染した男性患者が院内を歩き回るのを止めることができなかった」と説明。「感染が広まり、申し訳なく思う」と入院患者と家族に謝罪した。

■2015.1.10  かわいい赤ちゃん、ママと高齢者結ぶ デイケア施設、笑顔広がる
高齢者向け在宅ケアセンター「なごみ」(熊本市南区城南町舞原)で、赤ちゃんとふれ合うイベントが先月あった。乳幼児とのふれ合いを通して、高齢者の癒やしにつなげ、母親にとっては社会参加や子育てノウハウを知ることができる。施設の利用者約30人が参加し、赤ちゃんをなでたり、母親と子育ての話をしたりした。

NPO法人「ママの働き方応援隊」(神戸市)が2012年から始めた「赤ちゃん先生プロジェクト」の一環。全国に拠点があり、乳幼児と子育て中の母親が学校や施設に出向く。

この日は、「こんにちは赤ちゃん」の歌に合わせ、母親と9カ月〜1歳4カ月になる赤ちゃん3人が登場。一緒に冬の歌である「たき火」を歌ったり、赤ちゃんをなでたりしながら、母親と子育ての話をしたりした。利用者は「可愛かあ」と声を掛けたり、泣き出す赤ちゃんにも動揺せず「元気だね」と笑顔で抱き寄せたりした。

■2015.1.11  障害福祉サービス:来年度報酬総額据え置き
政府は10日、障害福祉サービスを手掛ける事業者らに支払われる報酬について、2015年度は総額を据え置く方針を固めた。現行の報酬制度になった06年度以降の2度の改定ではいずれも引き上げており、0%改定は初めて。

同報酬の改定率を巡っては財務省が0・7%減を主張。しかし最終的に首相官邸が0%を指示し、決着した。

介護報酬に関しては、全体で2・27%削減することが確定した。ただ、低賃金が指摘される介護職員の給与を平均で月額1万2000円引き上げるため、別枠で1・56%増分を確保する。さらに介護の必要度が比較的重い人を担当する職員向けに、さらに0・56%を上積みする。障害福祉関係の職員向けにも同様の措置をする。

いずれも、11日に麻生太郎財務相と塩崎恭久厚生労働相が協議して決定し、15年度政府予算案に反映させる。

■2015.1.11  <介護報酬減額>待遇改善、停滞の恐れ
麻生太郎財務相と塩崎恭久厚生労働相は11日、2015年度予算について、障害福祉サービスを手がける業者への報酬は据え置く一方、介護事業者に支払われる介護報酬は2.27%(1%で約1000億円)減額することで合意した。厚労省は障害福祉、介護職員の給与を平均で月1万2000円アップする分は別枠で確保したと説明している。しかし、介護の業界団体からは「職員の処遇改善は確実に停滞する」との不満が出ている。

15年度の介護報酬改定では、財務省が特別養護老人ホーム(特養)を「もうけすぎ」と狙い撃ちし、報酬の大幅カットを求めた。「特養は非課税の社会福祉法人による経営が多いにもかかわらず、平均利益率が8.7%と中小企業平均の2.2%を上回り、内部留保をため込んでいる」との指摘だ。厚労省は有効な反論ができず、早々にマイナス改定方針が固まった。

ただし、今回は両省とも「職員の賃上げ分は確保した」と説明している。介護職の平均給与は月額21万円程度と全労働者平均の7割弱にとどまっており、人手不足を招いていることを踏まえたものだ。

月給を平均1万2000円アップできる財源として1.65%分を確保し、業者に支払う「処遇改善加算」を充実させる。同加算向けの報酬は職員の月給に回すことが義務づけられており、厚労省は「賃上げ効果は高い」と言う。これとは別に認知症の人への対応が手厚い小規模事業所などには0.56%分を加算する。

しかし、特養の全国組織「全国老人福祉施設協議会(老施協)」の石川憲会長は減額改定を受け、「赤字施設が3割近くに及び、賃下げもあり得る危機的状況に陥る」との談話を出した。背景の一つに、処遇改善加算は月給に充てる必要はあっても、ボーナスに回す必要まではないことがある。東京都内の特養経営者は「加算で月給を増やしながら、ボーナスを削って賃金全体を減らす施設も出かねない」と漏らす。

これに対し、厚労省は「今回は規制を強め、抜け道をふさぐようにする」と反論している。ただ、同加算は介護職にしか適用されず、同じ施設で働く看護師や調理師ら他の職種の人の分はない。今回、人件費分を除いた介護業者の収入は実質4.48%の減だ。老施協の熊谷和正副会長は「マイナス改定では介護職以外の処遇改善が難しくなる」と話す。

■2015.1.12  介護報酬、下げ幅「過去最大」回避 政権、批判を懸念
介護サービスの公定価格にあたる「介護報酬」の3年に1度の見直しは、2・27%の引き下げで決着した。2006年度のマイナス2・4%以上の「過去最大の下げ幅」となるのを避けるため、首相官邸が最後に動いた。介護職員の待遇改善を促す加算は手厚くするというが効果は不透明。マイナス改定で人手不足がさらに深刻になるとの懸念の声があがっている。

マイナス改定を強く迫ったのは財務省だ。高齢化で介護にかかるお金が急増しているからだ。税金と保険料から出す介護給付費は、00年度から12年度にかけて2・5倍に膨らんだ。団塊の世代が75歳以上になる25年度には、さらに2倍以上の20兆円近くになる見通しだ。

介護報酬を1%下げれば、投じる税金は520億円少なくて済む。財務省は当初、3%台の大幅引き下げを狙った。そこで目を付けたのが、特別養護老人ホーム(特養)などを運営する社会福祉法人にたまっているはずのお金だった。

財政制度等審議会(財務相の諮問機関)の資料では「全国の特養で計2兆円以上の内部留保がある」と指摘。昨年10月には「特養は平均8・7%の収支差率(もうけ)を出している。中小企業は2%台」との数字を突きつけた。

「マイナス3%の改定をしたい。総理も了承しています」。年末の与党への説明でも、財務省は強気の姿勢を崩さなかった。

プラス改定を主張していた厚労省は劣勢に立たされ、自民党の厚労族議員からでさえ「業者はもうかっている」との声が上がった。攻防がヤマ場を迎えた8日、介護業界の報酬引き下げ反対集会に姿を見せた自民党議員は十数人だけ。「政治家に逃げられた」と業界関係者は唇をかんだ。

大幅減額の流れを変えたのは首相官邸だ。過去最大の引き下げとなれば、「福祉軽視」との批判が出て、今春の統一地方選に影響が出かねない。菅義偉官房長官は年明けから「過去最大の引き下げは許さない」とのメッセージを官僚に伝えた。

麻生太郎財務相は菅氏に「数字の中身の内訳がわかっているのか」とかけあったが、菅氏は「私は社会保障は詳しくない」とかわしたという。政権のリスク回避を優先した結論だった。


■待遇改善、現場は疑問視

「この9カ月、介護福祉士はハローワークで募集しても問い合わせゼロ、応募ゼロだった。有料求人誌などに出し、やっと2人を採用できた」。千葉県松戸市で特養を運営する吉岡俊一さんは現状を嘆く。

人手不足の大きな要因は、厳しい労働条件に対して低いとされる給料だ。マイナス改定で待遇改善ができるのか。政府は可能と主張する。待遇改善に使い道を絞った加算金を月1万2千円の給料アップができる額だけ上積みするからだ。

だが、現場では懐疑的な見方が強い。まず加算金の対象は介護職員に限られる。特養などでは調理師や看護師、事務職員らも働く。施設経営者の団体は「介護職員の給料だけ増やすわけにいかず、他職種も(賃上げ)となると持ち出しになる」と訴える。

加算金を請求する事業所には、賃上げをチェックするため都道府県などへの待遇改善計画と実績の報告を義務づけている。計画と違えば加算分を返さねばならない。ただ改善を約束する項目は基本給か手当か賞与か、事業者が選べる。このため現場では「基本給を上げても賞与を減らすなどして収益を確保するしかない」とささやかれる。

厚労省は「手続きなどを厳格化し、確実に賃金が上がる方策を考える」とする。政府の狙い通りに進まなければ、人手不足がさらに深刻になる恐れがある。

淑徳大の結城康博教授(社会福祉学)は「介護事業者の多くはサービスの質を確保するため国の基準以上に職員を配置している。こうした増員をやめ、質が下がるおそれがある。今後、人手不足に拍車がかかってサービス不足が進み、介護で仕事を辞める『介護離職』が増えるなど、長期的にデメリットが顕在化してくるだろう」と話す。


■障害福祉予算、全体で据え置き

障害者福祉に充てる予算をめぐっても政府・与党内で激しい攻防があった。

障害者へのサービスに応じて主に税金から支払う「障害福祉サービス等報酬」は、介護報酬と同時にほぼ3年ごとに改定される。財務省は当初、福祉の現場で働く人への賃上げ分を考慮してもマイナス改定とすることを目指したが、事業者向け報酬の実質減額と、賃上げ分を相殺する「据え置き」で決着した。

財務省は当初、障害者福祉の事業者の収支差率が12%あり、マイナス改定してもサービス低下にはつながらないとみていた。

だが、7日の自民党の部会では、「政権を倒したいのか」などと猛反発にあった。政権幹部は「ゼロ改定は安倍晋三首相(の意思)だった」とも明かす。

■2015.1.13  介護職不足 特養急増、薄い人手
4階建ての特別養護老人ホーム(特養)は、真新しいホテルのような外観がひときわ目立つ。昨年、東京23区内にオープンしたばかりだ。
ところが、個室100室のうち40室がいまも使われていない。空き部屋のベッドにはマットが包装されたまま置かれていた。

一度に入居すると混乱するため、オープンから少しずつ入居を進めてきたが、数カ月で受け入れられなくなった。原因は介護職員の不足だ。
70人ほどの職員が必要だったが、50人ほどしか集まっていない。若い人のなり手が少なく、新卒採用ができなかった。

50歳以上の中高年の応募は多かったため、施設長は「60歳以上でも採用した」という。だが、介護職の経験者が3割ほどしかおらず、経験が浅い職員ばかりでは入居者を増やすわけにはいかなかった。


■1年で17施設

東京23区は高齢化で特養の入居を望む人が増えているため、特養の新設ラッシュが起きている。昨年1年間で17施設がオープンし、介護保険制度ができた翌年の2001年の14施設を上回って過去最多になった。

最も新設が多かった足立区は5施設がオープンした。足立区介護保険課は「特養の建設は2年はかかる。介護職不足はこの1年余りで深刻になったので想定外だった」と説明する。
しかし、23区内のある特養の施設長はこういう。「ハコをつくっても人がいなければ意味がない。職員の養成や待遇改善を後回しにしてきたつけだ」


■夜勤、月7日泊

特養は全国で急増している。厚生労働省によると、09年の約6500施設から14年には約9千施設まで増えた。

一方、施設で働く介護職員の月給は、13年時点で全職種の平均より約10万円低い約22万円にとどまる。さらに人手不足から、職員は厳しい勤務を続けている。

福島市の隣の伊達市にある特養「孝(こう)の郷(さと)」では、入居者60人に対し、介護職員が41人、看護師が4人いる。だが、夕方から翌朝までの夜勤ができる職員らは限られてしまう。

夜勤は、看護師1人、介護職員2人の3人体制だ。看護師は4人のうち2人がパートだったり幼い子どもがいたりして夜勤に入れないため、2人が1日おきに泊まらざるを得ない。どちらかが病気などで入れず、3日続けて泊まることもあるという。

介護職員もパートなどを除く25人ほどしか夜勤に入れない。どうしても若い男性の職員にしわ寄せがきて、月に6〜7日泊まる職員もいるという。

入居者の多くは認知症で、歩き回る人もいて目が離せないため、3人体制ではほとんど眠ることもできない。八島利幸施設長は、夜勤をする職員の昼間の負担を軽くするなどして体調や休みに気を配る。

「いまのままではきつくて汚い仕事の代表と言われてしまう。ほかの仕事に流れるのが人情です」。八島さんはそう心配する。


■預け先を探し

介護職不足は利用者や家族にも大きな問題だ。

働きながら母親(87)を介護する女性(53)は昨年秋、母を短期間預けるショートステイの施設をかえざるを得なくなった。

東京23区内で2人で暮らしている。母が股関節を骨折して歩けなくなった一昨年春から、近くの特養のショートステイを月2回利用してきた。

仕事がある昼間はヘルパーを頼むが、帰宅後は食事や排泄(はいせつ)の介助でくたくたになる。3〜4泊のショートステイは、心も体も休める貴重な時間だった。

しかし、この特養は昨年11月、ショートステイの受け入れを休止した。職員が10人以上退職し、人手が足りなくなったからだ。

区内のほかの特養に問い合わせると、ショートステイはどこも2カ月先まで予約でいっぱい。仕方なく隣の区にあるショートステイ専門の施設に預けたところ、すべて個室のため、4人部屋だった特養より1泊約2千円多くかかった。

入所は午後、退所は午前と決められているため、どちらも仕事で立ち会えず、利用するときはヘルパーを頼む。「超高齢化社会と言われているのに人手が足りず、どう支えていくのでしょうか」と女性はいう。

■「虐待心配も」

「飲ませる薬をまちがえたり、歯磨きが不十分で気管に食べかすが入ってしまったり。職員が忙しすぎて深刻なミスが続いている」。東京23区内の別の特養の介護職員はそう明かす。

この特養の入居者の定員は100人。職員は約50人いるが、フルタイムで働けるのは20人に満たない。残りは勤務日数が少なく短時間しか働けないパート職員のため、日中でも1人の職員が10人の入居者を世話しなければならない。

一昨年にオープンしたときはフルタイムの職員が30人近くいたが、給料の低さなどを理由に相次いでやめた。この職員は「ストレスがたまって虐待をしてしまわないか。そんな心配までしています」という。


■高校生や外国人、就業へ模索 介護報酬論議、待遇改善は先見えず

山形県鶴岡市で特養などを運営する社会福祉法人「山形虹の会」は介護の学校に今春入る人向けに、虹の会に将来就職すれば返さなくてもいい奨学金制度をつくった。月に5万円を支援する。

井田智事務局長によると、介護の学校に通う学生の多くは奨学金を使うが、介護の仕事では奨学金を返すだけの給料が得にくく、ほかの業界に流れやすい。これを防ぐねらいだ。

青森県内の特養は今年度から、野球や吹奏楽の強豪として知られる山梨県の高校と連携し始めた。練習試合などで交流する高校に特養を紹介してもらい、介護に関心がある生徒につないでもらう。今年度は沖縄県・石垣島の高校生1人の採用が内定した。今後、連携する高校を広げるという。

滋賀県彦根市の特養「近江第二ふるさと園」では、フィリピン人のサンティアゴ・ロベルト・アルバさん(33)が働いている。日本とフィリピンの経済連携協定に基づき、介護福祉士候補として受け入れた。

経済連携協定に伴う外国人受け入れは2008年に始まった。原則4年間(特例あり)の滞在中に介護福祉士の国家試験に受からないと、帰国しなければならない。

ふるさと園を運営する社会福祉法人はまた、04年から中国や韓国などの大学の学生を1〜2カ月受け入れ、介護を体験してもらっている。これまでに368人の学生がきた。

大久保昭教(あきのり)理事長は「アジアの学生は明るくて意欲も高い。国は早く本格的な受け入れを進めてほしい」と話す。政府も外国人を最長3年間受け入れる技能実習制度の職種に介護職を加えることを検討している。

ただ、厚生労働省は25年にはいまより70万人ほど多い約250万人の介護職が必要になると予想している。一定の日本語を話す必要があるなど外国人の受け入れには時間がかかり、「決定打にはならない。国内の人材確保の強化が基本だ」(担当者)という。

しかし、介護職不足への対策は後手に回る。政府は今年4月、予算や介護保険の支出増を抑えるため、介護サービスに払う介護報酬を全体で2・27%下げる。介護職員の待遇改善をする施設には給料を月1万2千円増やすための加算もするが、それだけで待遇改善が十分に進むとはいえない。

■2015.1.13  都内の公立保育園 職員の半数近くが非正規
東京都内の公立保育園で働く保育士などの職員は、半数近くが非正規雇用で、一部では正規雇用の職員と同じような働き方をしているのに給与などの待遇に格差があることが、専門家の調査で分かった。

子どもの特性など仕事に必要な情報を十分に伝えられていないケースも多く、専門家は「非正規職員の職場環境の改善が必要だ」と指摘している。

この調査は、東京都日野市の明星大学が、自治体職員で作る労働組合の1つ「東京自治労連」と協力して行ったもので、都内の自治体と公立保育園にアンケートを配布し、このうち31の自治体と非正規雇用の職員3600人余りから回答を得た。

それによると、公立保育園で働く保育士などの職員のうち、臨時や非常勤などの非正規雇用の割合は平均でおよそ45%で、自治体によっては70%を超えているところもある。
待遇面では、非正規雇用のおよそ15%の人が正規雇用とほぼ同じような時間で働いているうえ、全体では月給が15万円未満の人がおよそ58%に上り、複数の仕事を掛け持ちして生計を立てている人もおよそ20%いた。

また、公立保育園の非正規職員は雇用期間が原則1年未満に限られていますが、契約の更新を繰り返して昇給などがほぼないまま10年以上働いている人が25%いるなど、待遇に格差があることが分かった。

さらに、保育園の職員会議などに参加できている人は少なく、全体の80%余りの人が、子どもの特性や家庭環境など仕事に必要な情報が非正規の職員にまで十分伝えられていないと答えている。
都内の公立保育園で17年間、非正規雇用で働く保育士の三井文代さん(47)は「安全管理や保護者への対応など責任の度合いや仕事の内容も年々重くなっている現状を知ってもらいたい」と話している。

また、18年間、非正規雇用で働く保育士の岩下和江さん(64)は「子どもにとっては非正規も正規も関係なく、子どもに丁寧に接していける職場環境が必要だが、保育労働者全体が厳しく、非正規、正規ともに待遇を改善していかなければ、保育の質はよくならないと思う」と話している。

公立保育園で非正規雇用の職員が多い背景には、自治体が財政難から正規雇用の職員の削減を進めた一方で、その不足分を人件費が抑えられる非正規雇用の職員で補ってきたことなどがあるということだ。
調査した明星大学人文学部の垣内国光教授は「保育の仕事はもはや非正規職員の力なしには成立しない。保育の質を保つためにも職場環境の改善を急がなければならない」と話している。

■2015.1.14  脳死女児両親コメントの一部削除 6歳未満脳死で 日本臓器移植ネットワーク
大阪大病院で脳死と判定された6歳未満女児の両親が提供の思いを述べたコメントの一部を、日本臓器移植ネットワークが削除して公表していたことが14日分かった。移植ネットは「両親の了解を得て削除した」としているが、コメント全文を公表した大阪大病院によると両親から「全文を公表してほしい」と強い申し出があったという。

削除された部分で両親は、国内では子ども用の補助人工心臓が認められておらず、やむなく簡易な機械を使っていたことを説明し、改善を求めている。両親は「娘が命をかけて伝えたかったメッセージだと思う」としている。

■2015.1.14  脳死判定:6歳未満女児、3例目…重い心臓病で移植待機中
日本臓器移植ネットワークは13日、大阪大病院(大阪府吹田市)に入院していた6歳未満の女児が臓器移植法に基づき脳死と判定されたと発表した。2010年の改正臓器移植法施行以来、脳死判定基準がより厳しい6歳未満の脳死臓器提供は3例目となる。女児は特発性拡張型心筋症という重い心臓病を患い、心臓移植を希望して待機中で、渡米して移植を受ける準備も進めていた。

女児は臓器提供の意思表示をしていなかったが、家族が肺、肝臓、腎臓、膵臓(すいぞう)、小腸の提供を承諾した。膵臓と小腸は医学的な理由で提供を断念した。14日午前に臓器摘出手術が同病院で行われる。心臓移植の待機中の患者が、脳死判定後に臓器提供するのは初めて。

移植ネットや両親が公表した談話によると、女児は昨年4月に幼稚園へ入園後、心臓病が分かった。昨年12月に容体が悪化し、補助人工心臓を付けた。

脳死の直接的な原因は、補助人工心臓を付けたためにできた血栓が脳の血管に詰まり、脳梗塞(こうそく)を起こしたこととみられる。今年1月11日午前、担当医が女児を「脳死とされうる状態」と判断。家族からの要望で移植コーディネーターらが制度などを説明。同日午後6時ごろ、父母を含め家族8人の総意として臓器提供を承諾した。病院は児童相談所などに照会して虐待がないことを確認。院内の倫理委員会の了承を得て2回の脳死判定を行い、13日午前に脳死を確認した。女児は米国での心臓移植が決まり、渡航の準備をしていたという。

両親は移植ネットを通じ「国内では臓器提供が少ない現状を強く感じていたので、迷わず娘の臓器を提供したいと申し出ました。私たちは娘の発病からの3カ月間、暗闇の中にいました。同じような気持ちの方に少しでも光がともせたらと思っています」との談話を発表した。

■2015.1.14  女児からの臓器摘出手術を実施 阪大病院
国内で3人目になる6歳未満で脳死と判定された女児からの臓器摘出手術が14日午前、入院先の大阪大病院(大阪府吹田市)で実施された。肺と肝臓は岡山大病院でそれぞれ10歳未満女児と50代女性への移植手術が進められている。腎臓は大阪医科大病院の40代女性と兵庫医科大病院の60代の女性に移植される。腎臓移植を受ける患者1人が変更になった。

女児は、昨年4月の幼稚園入園後に特発性拡張型心筋症と診断され、短期間の使用が原則の補助人工心臓をつけていた。現在、治験段階の長期使用に適した別の人工心臓を使うことも目指したが、使用要件を満たせず、海外での移植を目指した。受け入れ先が決まった米国に渡る準備をしていた時、人工心臓でできた血の塊が脳の血管に詰まる「心原性脳梗塞(こうそく)」を起こし、脳死になった。移植を待つ患者の脳死臓器提供は成人で1人あったが、子どもでは初めて。

大阪大病院は14日午後に開いた記者会見で、13日に日本臓器移植ネットワークを通じて公表された両親のコメントが一部削除されていたことを明らかにした。 削除されていた部分には、「子供用の補助人工心臓は海外では何年も前から使われているのですが、日本では使用の許可が下りておりません。他のお子様とご家族に同じことが起こらないためにも一刻も早く改善して頂きたいと心から願っております。それが、娘が命をかけて私達に伝えたかったメッセージではないかと思っております」などと記されていた。

■2015.1.15  障害者虐待:認定58件 「家庭」最多の54件 府内13年度 /京都
府は、2013年度の府内の障害者虐待状況をまとめた。相談・通報は103件で、このうち虐待認定は58件で、虐待を受けた障害者は59人にのぼった。

12年度は障害者虐待防止法施行(10月)からの半年間で相談・通報84件、認定36件、被害者38人だった。いずれも発生ペースは落ちているものの、府障害者支援課は「統計は始まったばかりで増減の意味はあまりない。家庭や施設での未然防止の取り組みは不十分で、研修などを充実させたい」としている。


発生現場を「家庭」「施設・事業所」「職場」に3分類で調査。このうち「家庭」が通報72件、認定54件、被害者54人で、前年度に続いていずれも最も多かった。「施設・事業所」は通報26件、認定4件(障害者支援施設1件、生活介護2件、就労継続支援B型1件)で被害者は5人。「職場」は、通報5件で認定は0件だった。

虐待認定58件の内容(重複被害あり)は、「身体的虐待」が最も多く34件、次いで年金を渡さないなどの「経済的虐待」が23件、暴言や無視など「心理的虐待」が22件。支援を放棄する「ネグレクト」が7件、「性的虐待」も1件あった。

被害者59人を障害種別(重複障害あり)でみると、
▽知的障害38人▽身体障害20人▽精神障害12人▽発達障害5人だった。

虐待が発生した施設には府などが指導して改善を図った。家庭では15件で、各市町村が被害者を施設に保護した。

障害者虐待防止法は、虐待の発見と防止を「国と自治体の責務」とし、家庭と施設、職場で虐待やその恐れのある状況を発見した人に通報を義務づけ、各市町村に通報・相談窓口「虐待防止センター」を設けている。

■2015.1.15  全国初!Visaプリペイドカードによる生活保護費の支給をモデル的に実施
平成26年12月26日 発表

大阪市では、生活保護費の支給方法について、家計管理や金銭管理が必要な方への支援ツールの一つとして、全国で初めてプリペイドカードによる生活保護費の支給をモデル的に実施します。

近年、金銭管理等の各種生活支援を必要とする被保護者(とりわけ単身高齢者)が増加しており、今後も増加すると見込まれています。また、平成25年12月に成立した改正生活保護法では、収入、支出その他生計の状況を適切に把握することが受給者の責務として位置づけられました。 さらに、ギャンブルや過度な飲酒等に生活費を費消し、自立に向けた生活設計を立てることが困難な方等への支援も求められています。

こうした中、本市において生活面等に着目した支援について検討を行ってきたところであり、平成26年12月25日に本市と三井住友カード株式会社及び株式会社富士通総研の三者において協定を締結し、本モデル事業を実施することとなりました。

今後、平成27年2月頃から生活保護受給者に利用希望を募り、支払準備が整い次第利用を開始します。

半年から1年程度のモデル実施の状況を検証し、特定業種に対する使用制限や一日あたりの利用限度額を設けるなど機能追加の検討も行い、本格実施につなげていきます。

協定の概要

生活扶助費の一部をプリペイドカードにより支給することで、自らの収入、支出その他生計の状況を適切に把握することを被保護者の責務として位置づけた生活保護法第60条に着目した生活面等の自立に向けた支援が効果的に実施できることの確認を行うことを目的とします。

(協定締結相手)

 三井住友カード株式会社、株式会社富士通総研

(三者の主な役割)

大阪市:発行主体者、事業説明、利用者の募集、利用者へのカード発行及び配布、利用者からの問い合わせ対応 等

三井住友カード 株式会社:プリペイドカード発行に関するシステム業務、各実施機関(区保健福祉センター)へのカード納品 等

 株式会社 富士通総研 :モデル事業企画、実施体制構築、報告書とりまとめ 等



事業の概要

•利用申し出のあった被保護者に、Visaプリペイドカードを貸与して生活保護費のうち生活扶助費の一部(モデル実施においては一律に月額30,000円)をチャージ(入金)する。

     ※生活扶助費:生活保護費のうち衣食その他日常生活の需要をみたすために支給される扶助の一つ。
•利用者はVisaカードブランドの加盟店でチャージ(入金)額までの買い物などで利用できる。



事業によるメリット

•利用者が利用明細を活用することで家計管理を行うことができる。
•実施機関(区保健福祉センター)においては、必要に応じて金銭管理支援を行うことができる。
•紛失や盗難時に、自らがカードの利用停止と再発行の手続きをすれば引き続き残高が利用可能となる。

■2015.1.15  リスク高い機器使うしか… 脳死女児の両親、改善願う
国内3例目となる6歳未満の子どもからの脳死臓器提供で、脳死と判定された女児から提供された臓器の移植手術は14日夜までにすべて無事終了した。摘出手術をした入院先の大阪大病院の担当者は会見で、「リスクの高い(心臓の)機械しかつけられない日本の現状を一刻も早く改善してほしい」という女児の両親のコメントを明らかにした。

肺は岡山大病院で10歳未満女児へ、肝臓も同病院で50代女性へそれぞれ移植された。腎臓は大阪医科大病院の40代女性と兵庫医科大病院の60代の女性にそれぞれ移植された。腎臓移植を受ける患者1人が変更になった。

阪大病院などによると、脳死と判定された女児は昨年、特発性拡張型心筋症と診断された。約2週間の短期間使用が原則の心臓の機能を補う装置をつけて治療を続けていた。現在治験段階にある長期使用できる補助人工心臓を使う準備を進めていたが、要件を満たさず使えなかった。海外での移植を目指したが、装置でできた血の塊が脳の血管に詰まる「心原性脳梗塞(こうそく)」を起こし、脳死になった。阪大病院によると、装置は血の塊ができるリスクが高いが、別の装置が使えないため、本来の使用期間を超えて使わざるを得ない状況だったという。

2012年に東京大で、子ども用のドイツ製補助人工心臓を設置する国内初の臨床試験(治験)で執刀した村上新・金沢西病院副院長(心臓血管外科)は「承認を待っている人工心臓も、移植までしのげるのは基本的に1年間程度。海外との承認の差は、臓器提供者の不足と併せて解消しなければならない問題だ」と話す。岡山大病院の佐野俊二教授(心臓血管外科)は「現在使える機械は2、3週間が限度。ドナーが少ない現状では、移植までつなぐ時間を長くとれれば助かる子どもも増える可能性がある。子ども向けの補助人工心臓が早く認可されてほしい」と語る。

また、阪大病院は会見で、13日に日本臓器移植ネットワークを通じて公表された両親のコメントが一部削除されていたことを明らかにした。削除されていた部分では、海外で使える医療機器が日本で使えない現状を指摘。「他のお子様とご家族に同じことが起こらないためにも一刻も早く改善して頂きたいと心から願っております。それが、娘が命をかけて私たちに伝えたかったメッセージではないかと思っております」などと記されていた。

■2015.1.16  介護職員「25年度に30万人不足」 厚労省調べ  賃上げなど対策強化
介護に携わる職員の数は、高齢化がピークを迎える2025年度時点で30万人程度不足する見通しであることが、厚生労働省の調べでわかった。各都道府県の推計によるもので、25年度には約250万人の職員が必要だが、現状のままでは供給が追いつかない。厚労省は15年度から職員の賃上げや介護未経験者の活用といった対策を強化し、人手確保を急ぐ。

介護職員は、13年度で非常勤も含め約177万人。仕事の労力が重い割に賃金水準が低く、慢性的に人手不足が続いている。厚労省によると昨年11月の介護サービスの有効求人倍率は2.51倍で、全産業の2倍以上だ。

一方、介護が必要な高齢者は軽度の人も含め約564万人。団塊の世代が75歳以上になる25年度にはさらに膨らむ。厚労省の推計では、25年度時点で約250万人の介護職員が必要になる。厚労省はこれまで12年度時点の数から100万人増やす必要があるとしてきたが、25年度にどれだけ職員数が確保できるかの見込みはなかった。

そこで各都道府県に推計を求めたところ、25年度時点の職員数は220万人程度となる見通しとなった。12年度時点からは約70万人増える計算だが、それでも必要人数には30万人足りない。

介護職員の不足を埋めるため、厚労省は15年度から職員の賃金を1人あたり平均月1万2千円上げる賃上げを実施する。サービス単価である介護報酬を改定する。

さらに都道府県に設ける介護サービス向けの基金を使い、介護未経験の高齢者や女性に研修を施したり、若手が辞めないよう企業内保育所での子育て環境を整えたりする。介護職員の登録制度を設け、いったん辞めても再就職を促せる仕組みもつくる。

今後人口減が進むこともあり、外国人の活用も必要になりそうだ。厚労省は、途上国への技術移転を目的とした技能実習制度の対象に介護を加えることを検討している。

■2015.1.16  「親から虐待」半数超 里子・養護施設の子供4万8千人 厚労省調査
家庭の事情で児童養護施設に入所したり、里親に預けられたりした子供は平成25年2月時点で約4万8千人で、このうち5割超が親から虐待を受けた経験があることが16日、厚生労働省の調べで分かった。親による虐待が入所や委託の主な理由となったケースも4割近くあるなど、虐待被害の割合はいずれも前回調査(20年)を上回り、同省家庭福祉課は「虐待の相談件数自体が増えており、施設側もきめ細やかなケアや家庭的な養育環境が必要だ」としている。

調査は保護が必要な児童の福祉増進などを目的に原則、5年に1度行われており、児童養護施設や乳児院、里親家庭で暮らす子供などが対象。

調査によると、施設などで暮らす子供は計4万7776人で、前回調査より378人減少。施設別では児童養護施設が2万9979人▽母子生活支援施設6006人▽里親家庭4534人−などだった。

このうち「虐待を受けた経験がある」と答えたのは、全体の54・3%(前回50・9%)にあたる2万5947人。児童養護施設に限定すると、59・5%(同53・4%)の1万7850人が虐待を受けており、全体の平均を上回った。

一方、それぞれの養護問題が発生した理由について尋ねたところ、一般的に虐待とされる「両親の放任・怠惰」「養育拒否」などの合計は37・6%(同33・9%)。両親の精神疾患や入院、死亡のほか、破産などの経済的理由も挙げられた。

■2015.1.16  ランドセル:今年も寄贈 四日市のかばん専門店・竹腰社長「未来へ明るい気持ちで」 /三重
義父の遺志を継ぎ、半世紀以上にわたって児童福祉施設などの新入学児童たちにランドセルを贈り続けている四日市市諏訪町のかばん専門店「タケコシ商事」の竹腰葵社長(68)が15日、同市役所を訪れ、今年も6個のランドセルを寄贈した。これまでに寄贈されたランドセルの総数は今回分も含め、計2510個になった。

寄贈は1958年、竹腰さんの義父・良次郎さん(故人)が始めた。良次郎さんは、店でランドセルを見ていた子どもを母親が引きずるようにして帰っていった姿に接し、「多くの子どもたちにランドセルを背負わせて登校させてやりたい」と寄贈を思い立ったという。以来、施設や生活保護家庭などの新入学児童向けに、市を通じて毎年真心のこもったプレゼントをし、竹腰さんが引き継いだ。

竹腰さんは「最近は子どもを巻き込んだ事件が目立つほか、(経済状況の悪化などで)大人でも耐えられないほど厳しい境遇の中にそのまま放り込まれているケースも多い」と子どもたちを取り巻く社会の状況を危惧し、「そうしたお子さんの所にランドセルが届けば、つらい環境の中でも、未来への希望や明るい気持ちにつながるのでは」と期待していた。

■2015.1.16  看護師、介護福祉士候補のインドネシアの4人着任 鹿島 /佐賀 日本とインドネシアの経済連携協定
日本とインドネシアの経済連携協定(EPA)で来日した看護師、介護福祉士候補のインドネシア人女性4人が、鹿島市の特定医療法人「祐愛会」(織田正道理事長)の織田病院と介護老人保健施設「ケアコートゆうあい」に着任した。日本の国家試験合格に向けて仕事と勉強の両立に励む。

看護師を目指すマイムナ・マリアティカさん(25)とピピット・オクタビアナさん(27)、介護福祉士候補のロシダ・ロンバンガオルさん(24)とミンド・ベトニシフォンビンさん(22)の4人。16日に同病院を訪れ、職員や10人のインドネシア人の先輩らの歓迎を受けた。

■2015.1.16  運転免許制度見直し 認知症見逃さず
◇高齢者事故、減少期待

警察庁は15日、道路交通法改正試案を公表し、75歳以上が運転免許更新時に義務づけられている認知機能検査を活用、不十分だった認知症の進行具合の確認を強化する方針を明らかにした。高速道路の逆走事案の半数近くを75歳以上が占めるなど、認知機能低下が懸念される高齢ドライバーへの対応が急務となった事情がある。一方で専門家からは、生活手段として車が不可欠な地方の高齢者らへの支援が同時に必要だとの声も上がる。認知症と高齢ドライバーを取り巻く現実を追った。

今月7日。東京都板橋区の首都高5号池袋線。逆走していた茨城県稲敷市の男性(83)の軽乗用車が大型トラックと衝突し、男性が死亡する事故があった。警視庁高速隊によると、男性は前日正午ごろに自宅から外出したままで、家族が地元の警察に届け出ていた。家族は「認知症だった」と説明したという。

警察庁によると、2013年の免許保有者10万人当たりの死亡事故件数で、75歳以上は75歳未満の約2・5倍。道交法は、認知症だと診断された場合、免許の停止・取り消しを定めているが、幹部は「認知症の人が見逃されてきたことは否定できない」と認める。

実施されている認知機能検査は、30分にわたって当日の年月日を質問したりイラストの記憶力を調べたりして、認知症の進行度を3段階で判定する。

ただ、認知症の恐れありという最も深刻な第1分類と判定されても、過去1年間に逆走や一時不停止などの違反行為がなければ医師の診断を受けることなく免許を更新できた。警察庁によると、13年に検査を受けたのは約145万人に上り、このうち約3万5000人(2・4%)が第1分類と判定された。しかし医師の診断を受けたのは524人だけで、最終的な免許の取り消し・停止は118人だった。

第1分類と判定された後も車に乗り、事故につながるケースもあり、13年は少なくとも7件の死亡事故があった。検査が導入された09年に診断を義務づけなかったことについて、警察幹部は「反発を考えるといきなりの義務づけは難しかった」。昨年6月施行の改正道交法では、認知症などの患者を診察した医師が任意で各都道府県公安委員会に届け出ができるようになったが、都内では昨年末時点で3件にとどまるなど、高齢者本人の意向に左右されかねない事態が続いてきた。

試案では、第1分類と判定されれば医師の診断が義務づけられ、認知症と確定すると違反行為がなくても免許が取り消される。

また、認知機能の低下が深刻ではないと判定された第2、第3分類の人たちへの対策も強める。現行制度では、こうした人たちが更新後に逆走などの違反をしても、次の更新時期(3年後)までは検査や医師による診断機会はなかった。

しかし認知症の進行度合いには個人差がある。昨年4月、広島県の高速道で89歳の男性が運転する軽トラックが約5キロを逆走。男性は「自宅に帰るつもりだった」と話したが、方向は逆だった。男性は11年11月の更新時の検査では第3分類で、この後に認知機能が低下したとみられる。警察庁が1回目の検査で認知症の恐れがなかった人についてサンプル調査したところ、次回検査では1割以上の人の機能が低下していた。

試案では、第2、第3分類と判定された人でも一定の違反があった場合は臨時検査を義務づけ、機能低下の恐れがあれば講習を受けてもらう。検査で第1分類とされれば医師の診断が必要となる。

◇生活の足、代替必要

認知機能が低下した人が運転することは、どんな危険性をはらむのか。

車の運転には「認知、予測、判断、操作」の能力が必要だが、認知症で行為や行動に影響が出てくると安全な運転が難しくなる。認知症の種類によって運転に表れる特徴が異なる。アルツハイマー病では運転中に行き先を忘れる・駐車や幅寄せが下手になる▽ピック病では交通ルール無視・運転中の脇見・車間距離が短くなる▽血管性認知症では運転中に「ボーッ」とするなど注意散漫になる・ハンドル操作などが遅くなるなどの特徴が見られる。

ただ、認知症と車の運転を研究している高知大医学部の上村直人講師(老年精神医学)は「『こうなったらやめさせるべきだ』という医学的基準について、完全なものは世界中でまだできていない。認知症だから運転能力がない、というわけではない。軽い人では能力が落ちていない人もいる」と説明する。

車の運転ができないことは本人や同居する家族の生活の「足」を奪われる深刻な問題だ。島根県の精神科医、高橋幸男医師は、認知症の本人や家族からたびたび相談を受ける。

高橋医師は「運転をやめるよう助言すると、『先生は私を殺す気か』と言われることもある。認知症になっても買い物など本人の暮らしは続く。運転をやめさせるなら、暮らしや生きがいを支えるための代替手段が必要」と指摘する。

認知症で運転を中止しなければならない時の家族や周囲の対処の仕方について、国立長寿医療研究センターの荒井由美子・長寿政策科学研究部長らが作成した家族介護者向けの「家族介護者のための支援マニュアル」が公開されている。

マニュアルでは認知症の人が運転できなくなった場合、まずは家族や知人・友人で代わりに運転してくれる人を確認したり、地域で使える公共交通機関や移動支援サービスを市区町村窓口で尋ねたりするよう勧める。荒井部長は「ご本人にとっての運転の意味を確認したうえで、家族や周囲が代替移動手段を確保していく支援をすることが必要だ。運転に『楽しみ』や『生きがい』など移動手段以外の意味を感じている人も多い。運転に代わって楽しめる活動を見つけることも大切だ」と話す。

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 ◇軽度認知症の運転チェックリスト

 □センターラインを越える

 □路側帯に乗り上げる

 □カーブをスムーズに曲がれない

 □車庫入れに失敗する

 □普段通らない道に出ると急に迷ったり、パニック状態になったりする

 □話しかけると、運転に集中できなくなる

 □車間距離が短くなる

(1項目でも頻発するようなら、運転をやめることを考える)作成・池田学熊本大大学院教授

■2015.1.16  阪神大震災:神戸市営地下鉄、17日始発早める 追悼行事に合わせ
神戸市は、阪神大震災20年となる17日限定で市営地下鉄の始発を繰り上げ運行する。ポートライナーと六甲ライナーも始発を早める。同市中央区の東遊園地で、午前5時から開かれる追悼行事「阪神淡路大震災1・17のつどい」に合わせた措置。

市は、地震発生の午前5時46分に行う黙とうに沿線住民が間に合うよう、市営地下鉄西神・山手線の西神中央駅を午前4時13分(通常土日ダイヤは午前5時23分)に出発する臨時電車を走らせる。最寄りの三宮駅には4時43分に到着する。

ポートライナーは午前5時21分に中埠頭駅を出発し、5時半に貿易センター駅に到着。六甲ライナーは5時5分にマリンパーク駅を出発し、JR東海道線に乗り換えれば5時34分に三ノ宮駅に到着する。

昨年9月に亡くなったNPO法人「阪神高齢者・障害者支援ネットワーク」の黒田裕子理事長らが署名を集め、臨時ダイヤ運行を市に要望していた。

■2015.1.17  阪神大震災 <兵庫県南部地震> 朝日新聞1面記事
1995年1月17日夕刊1面記事
http://social-welfare.rgr.jp/databox/1995y-01-17ddd.jpg

1995年1月18日朝刊1面記事
http://social-welfare.rgr.jp/databox/1995y-01-18vvv.jpg

■2015.1.17  「生きにくさに気づけ」 弁護士と社会福祉士が罪に問われた障害者を支援
罪に問われた知的障害者らを、裁判で判決が確定する前の段階から支援しようという動きが広がっている。被疑者あるいは被告人の担当弁護士が社会福祉士に協力を求め、本人が福祉施設などで暮らせることを「更生支援計画」にまとめる。検察や裁判所がそれを判断材料とする例も増えてきた。弁護士と社会福祉士の組織的な連携が進んだからだ。関係者の合言葉は「見えづらい生きにくさに気づけ」だ。


■もう盗みはしない

「あの時捕まって本当に良かった。もう罪を犯さなくて済むから」。

神奈川県内のグループホーム(GH)で暮らす、知的障害のある太郎さん(仮名・29)はこう振り返る。

親とのいさかいから2009年に実家を飛び出し、路上生活を開始。生きるための盗みを重ね、13年3月末、スーパーで万引きした時に警備員を小突いて逮捕・起訴された。

「人懐こい若者だな」。留置所で太郎さんと初めて会った社会福祉士の牧野賢一さんはこう思った。本人の意向を受け、GHに住むことなどを盛り込んだ更生支援計画を作成。その結果、5月末に執行猶予付きの判決が出た。

太郎さんは判決の出たその日に現在のGHに移った。牧野さんと会ってからわずか1カ月後のことだ。太郎さんの生育歴を関係者から聞き取り、福祉事務所などと話をつけた牧野さんの早わざが功を奏した。

太郎さんは現在、障害者の就労支援事業所に通いながら就職活動に励む。将来の希望は一人暮らしだ。「もう盗みはしない。今は夢があるから」。

本人の生育歴や将来の支援体制などを記した更生支援計画に法的な位置づけはなく、決まった書式もない。単に執行猶予や減刑を目指すものでもない。本人の生きにくさを文章化し、再出発への道筋を示すものだ。

太郎さんは知人から偶然得た情報で牧野さんとつながった。そうではなく、弁護士が被疑者や被告人の障害に気づいたら社会福祉士に協力を求める仕組みができないか----。そんな問題意識を持つ横浜弁護士会は13年から神奈川県社会福祉士会との連携を模索。14年11月に協定を結んだ。

同弁護士会は「社会福祉士には知的障害のある人との接見に同行してもらいたい。限られた時間で本人と信頼関係を築き、情報を分析して福祉施設を探し、更生支援計画を作るには社会福祉士の力が必要」としている。

県社会福祉士会は弁護士会からの要請に応じられるよう、あらかじめ研修を受けた人を登録する。その登録名簿から個別の案件ごとに弁護士会に推薦する仕組みを設けた。


■変わる検察の意識

検察も社会福祉士を意識し始めた。

万引きで捕まった知的障害のある次郎さん(仮名・40代)は被疑者のまま救護施設に入所。検事は弁護士に更生支援計画を提出するよう求めた。就労に向けた見通しを気にしたからだ。

計画作成に時間をかけていると検事から督促が入った。弁護士がその後提出した結果、次郎さんは14年4月、不起訴になった。計画作成を担当した大阪社会福祉士会の宮田英幸さんは「検察が計画を重視するようになった。以前は考えられなかった」と振り返る。

検察の組織にも変化が見られる。13年4月の東京地検を皮切りに、仙台、大阪の地検が社会復帰支援室を設け社会福祉士を配置。横浜地検も15年4月に同様の体制を組む。

検察が新規に受理する被疑者は年間約148万人。そのうち起訴されるのは3割で、刑事施設に入るのは2%未満(11年)。「身元引受人がいない」「事実関係や自分の気持ちを正確に話せない」といった人は不起訴や執行猶予になりにくい。刑事司法の世界では周知の事実だ。

この点で知的障害者や高齢者は不利になりがちだ。刑事施設に入ることが更生につながるとは限らないことも知られてきた。

この問題に大阪弁護士会は先駆的に取り組み、地元の社会福祉士会をはじめ福祉団体との連携を組織的に進めてきた。それが冒頭のように神奈川などに広がっている。

ただし、社会福祉士の活動にはどこからも報酬が出ない。

被疑者や被告人段階の本人と面会する機会が限られ、判決が出るまで居室を空けて待つ福祉施設の負担も軽くはない。

そこで国や政党が動き出した。法務省の有識者検討会は14年6月、高齢者や障害者の司法アクセス権強化を提言し、公明党は同12月の衆院選公約に同様の記述を盛り込んだ。

神奈川県社会福祉士会の山下康会長は「私たちの取り組みはいずれ制度化される」と会員らに呼びかけている。


■罪に問われた知的障害者らを複数受け入れている障害者支援施設「かりいほ」(栃木県大田原市)石川恒施設長の話

更生支援計画の実行にあたっては、集団生活のルールに沿った「枠の支援」だけでは不十分だ。「枠の支援」を「人と人との関係性の中での支援」に変え、一人ひとりの特長を生かして社会とかかわれるようにすることが施設職員の役割だ。

かりいほの入所者30人のうち10人が刑余者だが、私は他の20人と同様「それぞれ生きにくさを抱えた人」と捉える。問題を起こさない「良い人」にする支援はしない。本人の衝動性、盗癖といった生きにくさを認める。これはわがままを許すのとは違う。本人の安心できる居場所を作ることで他者とのかかわり方が初めて見えてくる。

大事なのは本当の意味で本人を知ること。それには時間がかかる。人手もいる。刑余者に限らず、そういうかかわりの必要な人が増えている。このことを社会全体で共有する必要がある。

■2015.1.18  介護報酬引き下げで現場に危機感 離職、サービス低下、倒産も
介護サービス提供事業者に支払われる報酬が2015年度から、引き下げられることになり、福井県内の事業所からはサービス低下を懸念する声が上がっている。国は介護職員の処遇改善に充てる報酬は増やす方針だが、事業者にとっては大幅な減収が見込まれるため、実現を疑問視する声もある。特別養護老人ホームなどの施設サービスは、単なるお世話型から、高齢者の自立支援へと変わってきている。人への投資が欠かせない中での引き下げについて、多くの関係者は「離職が進んでサービスが低下し、倒産するという負の連鎖に陥る可能性がある」と訴えている。

●おむつゼロ

東野秀子さん(82)=仮名=は、7年前に特別養護老人ホーム「水仙園」(福井県越前市萱谷町)に入所したとき、左半身まひでほぼ寝たきりだった。まずは座る練習から始まり、歩行訓練などを経て2年ほどで、つえをついて歩けるまでになった。要介護度は5から3に軽くなった。

入所当時、2人の介助で用を足していた東野さんは「見られるのは恥ずかしかった。今は何とか自分でできるようになった」と喜ぶ。機能が回復すれば、気持ちも前向きになる。山登りが趣味の東野さんは「雪が解けたら富士山に登りたい」と笑う。

同施設の入所者は87人。朝夕計45分の歩行訓練や水分・栄養摂取管理、下剤使用中止などを徹底し、昨年は入所者の「おむつゼロ」を達成した。

●高い専門性

介護保険制度が始まって15年。県老人福祉施設協議会の荒木博文会長(60)は「サービスはお世話型介護から自立支援型へと大きく変化した」と説明する。

 一方で、職員にはより高い専門性が求められるようになった。同協議会は13年度から「科学的介護実践講座」を年に6回開催。「おむつゼロ」や「骨折ゼロ」「拘束ゼロ」を目指す。荒木会長は「研修や講座など人への投資はますます重要になる」と力を込める。

水仙園では、おむつゼロ達成のためにトイレを改修したり、能力に応じた歩行器を購入したりした。介護福祉士やケアマネジャーなど、職員の資格取得も積極的に行っている。三田村康行施設長(69)は「入所者の自立した生活を目指すには設備、人の充実が不可欠」と話し、コスト増は避けられないとする。

●強い危機感

介護保険制度が始まった00年度の介護費用は約3兆6千億円だったが、14年度は約10兆円。国が15年度の介護報酬引き下げを決定した背景には介護費用の急増を受けた財源問題がある。一方、人手不足に対応するため、介護職員の賃金アップに充てる報酬は確保する方針という。しかし複数の関係者は「経営が圧迫されれば、人件費を上げるのは無理。離職率が高まり、サービスが低下するという負の連鎖が始まる」と強い危機感を口にする。

帝国データバンクによると、00年〜13年の老人福祉事業者の倒産件数は全国で210件。13年は46件で最多となった。同社は「競争激化による経営悪化、低賃金に伴う人手不足や労働環境悪化など雇用問題の深刻化が進んでいるとみられる」と分析する。

報酬引き下げの背景には、特別養護老人ホームが多額の内部留保を抱えていることもあるとみられる。しかしある関係者は「毎月数千万円かかる運営費を数カ月分は手元に残しておかなければ資金ショートにつながる。将来を見据え増設費や修繕費を確保しておく必要もある。報酬引き下げにより、倒産する法人がさらに増える可能性がある」と警鐘を鳴らす。

■2015.1.19  “好きな作業”を通して患者さんを元気にする「作業療法士」
医療現場において“リハビリの専門家”として患者さんと接する「作業療法士」。

立つ、歩くといった基本動作のリハビリを行う「理学療法士」とは異なり、「作業療法士」は食事や入浴などの日常生活に必要な動作や、料理、編み物といった趣味に関わる“作業”のリハビリを行う。患者さんが“楽しく生活できるように心も体も支援する”のが仕事だ。

作業療法士は国家資格で、国が指定する専門学校や短大・大学などの作業療法士養成施設を卒業して、国家試験に合格する必要がある。

そんな作業療法士として働き始めて3年目の蓑輪(みのわ)かおりさん(25)に、この仕事を選んだ理由を聞いた!

■患者さんに自分ならではのアプローチができる!

「作業療法士は“患者さん自身がやりたいこと”をできるようにするのが仕事なので、まずは『何をしている時が楽しいか?』を一緒に探すところから始まるんです。そんな風に患者さんと1対1で深く関われる仕事は他にはないなと思って、この職種を選びました」

相手と深く関わる仕事だからこそマニュアルはなく、「自分で考えた方法でひとりひとりにアプローチできるのが楽しい」と蓑輪さんは言う。

「以前、足を骨折して入院してきた高齢者の方がいたのですが、最初の頃はやりたいことを聞いても『わかりません』としか言ってくれなくて…。そんな時、『一緒にちぎり絵をやりましょう』と声をかけてみたんです。ちぎり絵をしながらふと食べ物の話になった時、『私、みたらし団子が食べたい…』とポツリと言ってくれたんですよ。それで、一緒にみたらし団子を作って食べたら、初めて笑顔を見せてくれて! これをきっかけにリハビリにも徐々に意欲的になってくれました。『やりたいこと』『楽しいこと』を一緒に発見できた時はすごく嬉しいですね」

お菓子作りがリハビリになることも! 患者さんごとに価値を置いている作業は様々だそう

また、患者さんのやりたいことが少しでもスムーズにできるように、様々な“道具”を作るのも作業療法士の仕事のひとつだそう。

「病気で手が上がらないけど『髪をとかしたい』と思っている患者さんには、持ち手の長い櫛を手作りしたり、握力が弱まっているけど『絵を描きたい」という患者さんには、スポンジを巻いて持ち手を太くした筆を作ったりと、リハビリの時間以外はほとんどモノ作りに追われています(笑)。仕事帰りも患者さんのことを考えながら、100円ショップをまわることが多いですね」

そんな蓑輪さんに、作業療法士に必要な資質を聞いてみると、「一番大切なのは、どれだけ“人に興味を持てるか”ということですね。『この作業は、患者さんにとってどういう意味を持つんだろう?』と、相手の気持ちになって“想像”をする力がとても必要だと思いますね」とのこと。

■患者さんが喜ぶ姿を見た瞬間が最高に嬉しい!

そして最後に、蓑輪さんがやりがいを感じた瞬間を教えてもらった。

「病気やケガで入院されている患者さんは、最初は落ち込んだ顔をしてらっしゃる方がほとんどです。でも、やりたい作業が見つかって、一生懸命訓練に取り組み、やっとの思いでそれができるようになった時に、喜びの笑顔を見せてくれるんです。その瞬間は、本当にこの仕事をやっていてよかったと思います」

患者さんと一緒に“やりたいこと”を実現していく作業療法士。その現場では、日々患者さんと作業療法士の“挑戦”と“笑顔”が生まれているのだ。

■2015.1.19  デイサービス空き店舗で 大牟田の商店街に登場
大牟田市の中心部にある築町商店街の空き店舗に、同市社会福祉協議会が運営する小規模デイサービス施設「まちの縁側 築町えいる」がオープンした。定員10人の施設に、誰もが自由に使えるオープンサロンを併設。催しを随時開くなどして商店街のにぎわいづくりにも取り組む。

約10年前まで婦人服店だった建物の1階を借り、昨年10月から約1600万円をかけて改装。同年12月16日に落成式を開いた。

名前の由来は、英語で「応援」を意味する「エール」。浴室、キッチンなどを備えるほか、明るく気軽に入りやすい空間を心がけ、国道208号に面した壁面をガラス張りにした。

営業は毎日午前9時半〜午後4時(1月1〜3日を除く)で、オープンサロンもそれに合わせて開放する。近くの停留所でバスを待つ人や買い物客らに休憩所として気軽に利用してもらいたい考えだ。手芸教室などの催しも随時企画する。

10年前は40を超す店があった同商店街だが、現在は空き店舗が5割に達した。市社協の進出を商店街振興組合は喜び、落成式には多くの組合員が集まって祝福した。荒木輝信理事長は「新しい人の流れが生まれ、商機になる。共に街を繁栄させたい」と歓迎した。

市社協の西村直会長も「若い人からお年寄りまで幅広い世代が集う場を目指す。にぎわい創出の一翼を担いたい」と話していた。

■2015.1.19  インフル集団感染で看護師死亡 松本、患者1人も
長野県松本市の国立病院機構まつもと医療センター松本病院は19日、入院患者21人と看護師4人がインフルエンザに集団感染し、うち入院していた70代の男性と40代の女性看護師が死亡したと発表した。

病院によると、25人は14〜18日に発症。70代の男性は15日に発熱の症状を訴えた。女性看護師は16日に高熱を出して意識障害で救急搬送され、検査の結果、2人はインフルエンザA型の陽性反応が出た。

その後、治療を受けたが男性は17日にインフルエンザ肺炎で、女性看護師も同日にインフルエンザ脳炎で亡くなった。

病院には10日にインフルエンザの患者3人が入院しており、亡くなった女性看護師が担当していた。看護師は予防接種を受けていた。
他の23人もA型に感染していた。

病院は14日以降、全入院患者と職員に予防薬としてタミフルを投与し、院内でのマスク着用や面会制限の徹底をしている。

会見した北野喜良院長は「感染された方々に深くおわび申し上げたい。感染拡大防止に努める」と述べた。

■2015.1.20  無届け介護ハウス 「実情に応じ指導を」
法律で義務づけられた届け出を行わないまま空き家やマンションなどで高齢者に介護サービスを提供する有料老人ホーム=「無届け介護ハウス」が、自治体が把握している以上に東京都内にあることがNHKの取材で明らかになったことについて、塩崎厚生労働大臣は実態の把握を進め実情に応じて届け出を指導するよう自治体に求める考えを示した。

高齢者を入居させて食事や介護などのサービスを提供する施設は「有料老人ホーム」として都道府県への届け出が法律で義務づけられ、国のガイドラインでは高齢者の居住環境や安全を守るため個室の整備や広さに応じた防火設備の設置が求められている。

こうした届け出を行っていない施設についてNHKが東京都内で独自に調べたところ、都が把握している3.6倍に上る86か所あることが明らかになった。

これについて塩崎厚生労働大臣は20日の閣議のあとの記者会見で「これまでも届け出を出していない施設で事故が起こっている。
そのようなことがないよう万全を期していかなければならないと考えている」と述べた。そのうえで、実態の把握を進め、施設の実情に応じて届け出を指導するよう自治体に求める考えを示した。

■2015.1.20  「無届け介護ハウス」かどうかを見分けるには?
「無届け介護ハウス」とは
保育園を探したことがある人なら、「認可」や「認証」、「認定」といったお墨付き制度が保育園にあることをご存知かと思います。老人ホームにもそのような仕組みがあるのを知っていますか?

今、NHKの番組やニュースなどで「無届け介護ハウス」が話題となっています。必要な設備の基準などを守らずに運営し事故が発生したり、虐待していても行政が気づいてくれなかったりする恐れも・・・。

施設を探している人が誤って「無届け介護ハウス」に選んでしまうことがないように、見分け方を紹介します!


これだけある!設置に届出が必要な入居系介護施設
入居して過ごす介護施設のうち、開設時に届出がいるものには以下のようなものがあります。いずれかの名称がついていない施設は「無届け介護ハウス」の可能性も。まずはこうした正式名称を知っておき、施設側からの説明事項と照らし合わせてどの基準に該当する施設なのかを確かめることが大切です。

介護付き有料老人ホーム
住宅型有料老人ホーム
サービス付き高齢者向け住宅
グループホーム
ケアハウス
軽費老人ホーム
特別養護老人ホーム
介護老人保健施設
介護療養型医療施設

このうち介護付き有料老人ホームと軽費老人ホームなどでは「特定施設入居者生活介護」という指定を受けて運営されています。この「特定施設入居者生活介護」という記載や指定番号があるかどうかも重要な見分け方です。


もしかしてそれ、「無届け介護ハウス」かも・・・
上記のような施設区分と紛らわしい名称がついていて、一見、分かりにくいものがあります。例えば、

★介護付老人ホーム・・・介護付き有料老人ホームと紛らわしいが、指定を受けずに介護サービスを提供している可能性も

★高齢者向け賃貸住宅・・・サービス付き高齢者向け住宅と紛らわしいが、単に高齢者を優先的に受け入れている賃貸住宅かも

★グループハウス・・・グループホームと紛らわしいが、専門的な認知症ケアができるようなスタッフはいないかも

認可外の保育園であってもきちんと運営しているところがあるように、すべての施設が身勝手な運営をしているわけではありません。今利用している施設がこのような名称だったとしたら、もしもの時にどのような対応がされるのかを今一度確認しておくとよいでしょう。

複雑化した施設区分が見分けにくくしている!
そもそも老人ホームや介護施設のお墨付き制度が多すぎるから、利用者が「無届け介護ハウス」かどうか見分けにくくなっているのではないでしょうか?

保育園であっても、認可/認可外のほか、自治体によって認証や認定といった考え方があって混乱した、という人も多いと思います。老人ホームはそれよりもっと複雑! 急に介護度が上がりバタバタしながら施設を探していたら、それらしい説明をされたし大丈夫かな、と思ってしまう人がいてもおかしくないでしょう。また、こうした届出制度や施設区分があるということを教えてもらえる機会のない人もたくさんいるのではと思います。



複雑化したのにもさまざまな事情があります。それは、介護が一言で表せないさまざまなサービスの集合体だから、必要な設備やサービスも異なってきてそれに合わせた基準がたくさん必要になる、というのも理由の一つ。背景を理解して選ぶ側が賢くなる必要がありますね。



節約のつもりで選ぶと後悔するかも?
「無届け介護ハウス」であるということを認識しながら、低価格だからといって利用する方もいるかもしれません。でも、もしそこで何かが起きたら・・・?事故はどこの施設でも起こりうること。しかし、きちんとした施設であればその後の対応も違ってくるはずです。

悔やむに悔みきれないということがないよう、慎重に選ぶようにしたいですね。

■2015.1.21  なぜ介護報酬引き下げ? 認知症施策推進総合戦略は新味なし
来年度の予算編成の一環として介護報酬が改定された。介護報酬は3年ごとに見直され、この4月が第6期目にあたる。1月11日の麻生財務相と塩崎厚労相の会談で正式に決着したもので、前期より2.27%のマイナスとなった。9年ぶりのマイナス改定で事業者団体は一斉に反発している。

ほぼ同時期の1月7日には、厚労省がやはり4月から始める認知症の新しい長期総合計画を策定し自民党に示した。認知症ケアは、介護保険にも含まれる。介護保険は当時の歴史的経緯から身体介護に軸足を置いた制度として2000年にスタートしたが、その後、認知症介護の重要性が高まってきたため、認知症に特化した新戦略を構築しなければならなくなった。そこで今回は、介護保険の総費用と認知症介護の長期プランという2つの決定事項について考えてみる。

● 介護報酬2.3%減に事業者・厚労省大反発 財務省の先制パンチが効いた? 

まず、介護保険のマイナス改定である。以前から財政均衡に拘る財務省は、社会保障費の突出を抑えようと策を凝らしてきた。財政制度審議会を通じて介護報酬の改定に早くから積極的に介入し、そこへ消費税の10%アップの先延ばしで、予定財源が減少したこともあり相当に強腰だった。

財務省が一貫して主張してきたのは、「介護事業者の『収支差率』は8%ほどあり、2%ほどの中小企業を上回る」「その結果として特別養護老人ホームは、過剰な内部留保を抱えている」という点だ。いわば「儲け過ぎ」と言わんばかり。「内部留保を吐き出せばいいのだから、報酬はこれまでより下げるのが当然」という考え方だ。

当初は一般企業との差を考慮して6%減(8%-2%)を唱えていたが、4%減に下げて厚労省と折衝を続けた。対する厚労省は「介護現場の人手不足は深刻な状況に陥っている。一般産業より平均賃金が10万円も安いからだ。総費用を減額されて人件費が頭打ちになればますます人が集まらなくなる」と訴えた。

そこへ官邸から「過去最大の下げ幅の2.3%を上回らないように」との声が届き、最終的には小数点2ケタという異例の細かい数値で折り合うことになった。安倍首相が「社会保障に冷たい政権」とのイメージが広がることを恐れて指示を出した、と言われる。

早い段階からのマイナス改定のムード作りが功を奏した。財務省の「社会福祉法人の儲け過ぎ」という強烈な先制パンチが効いたことは確かだ。当事者の全国老人福祉施設協議会は「計算方法がおかしい」と財務省の数字を躍起になって否定し、「費用の抑制はサービスの劣化をもたらしかねない」とも主張。報酬減に反対する署名集めに奔走した。

財務省は一方で社福法人の体質の見直し、改革論議を財政制度審議会で重ねてきた。不透明な会計報告、家族経営、親族企業からの設備購入、自治体や議会との癒着――。税の投入を受けながらの不明朗な運営に一部のマスメディアも追及し出した。こうした勢いに押されて厚労省も重い腰を上げる。審議会で検討し始め、地域貢献の義務付けや役員報酬の透明化などの法改正案をまとめた。

社福法人の不透明な体質が「儲け過ぎ」をもたらした、という確信が財務省側にはあったようだ。収支差率という具体的な数字は説得力を持つ。社福法人を槍玉にあげることで、巧みにマイナス改定の土俵を作ったともいえるだろう。

そのとばっちりを受けたのは、熱意をもって地道にケアに取り組む各地の小さなNPO法人や中小の企業のようだ。

だが、マイナス改定はサービスの総和。厚労省は「認知症や看取りなど重要なサービスは評価する」と原則論を言い続ける。各在宅サービスや施設などのそれぞれの報酬がどのようになるかはまだ明らかではない。

2月6日に開かれる社会保障審議会介護給付費分科会の最終会合で厚労省から提案される。その内容を見ないことには、ただちに一概に介護サービスの劣化につながるとは言えない。ただ、施設から在宅へのケアの大きな流れに加速がつくのは間違いないだろう。

同分科会で事業者側から強い要望があった職員の「処遇改善加算」の扱いも注目される。財務省は「全体の報酬を下げても、賃金に回すこの加算で月収は1万2000円アップさせられる」とアピールしてきた。

● 実は大きく異なる 認知症ケアと身体ケア

介護保険の報酬改定が耳目を集めている割に、注目度が低いのが認知症ケアの長期プランだ。しかし、今後の高齢者介護で最も重要なのは認知症への関わり方である。

脳梗塞やくも膜下出血などいわゆる脳卒中による身体障害に対するケア、つまり身体介護はかなりの程度その道筋が明らかにされ、介護の手法も確立されてきた。また、「寝かせきり」「オムツ」「機械浴」「身体拘束」「下剤」などをできるだけ止めていく、減らしていくことをケアの目標とする法人が各地で現れてきた。高齢者本人の側に立って、より良い介護を目指す動きは広がっている。集団での管理主義に基づく介護から、個々人の生活に寄り添った個別介護への転換が多くの現場で意識され出したからだ。

介護保険の前段階施策だったゴールドプラン(1990年から94年)と新ゴールドプラン(1995年から1999年)では「寝たきり老人ゼロ作戦」「ベッドからの起床」が謳われた。

つまり、身体麻痺を想定した介護であった。介護保険もその範囲内で多くのサービスや施設が運営されてきた。介護の目標とその手立てが軌道に乗りつつあるといっても過言ではない。

ところが、認知症介護は様相が全く違う。

例えば、介護保険を初めて使う時に欠かせない要介護判定の聞き取り調査。「片足で1秒ほど立てますか」という項目は身体介護が必要な高齢者には、適切な問いかけだが、認知症の軽度者にはほとんど意味を成さない。簡単にクリアできる。身体機能に衰えがないからだ。記憶や判断能力を問う設問が必要なのである。

脳細胞の障害によって暮らしが成り立たなくなる。その支援活動である認知症ケアは身体ケアとは大きく異なる。心の中に分け入ったうえで接しなければならない。外見からは窺い知れない心の葛藤の見極めが不可欠だ。認知症は介護保険制定時には、要介護者の一類型としか見なされなかった。それが今や、社会全体で取り組まねばならない最重要課題になりつつある。

家族介護が続けられなくなって施設入居を迫られるのは認知症だからというケースが大半だろう。身体障害だけなら意思疎通ができるので、車いす生活でも在宅サービスをフルに使えば何とか同居できる、という声が聞かれる。意思疎通がままならないと介護は別次元に転化する。認知症ケアはそれほど難しい。

正直がっかりした 「新オレンジプラン」の中身

そこで、厚労省は認知症への基本的な介護対策を介護保険とは別に打ち出さざるを得なくなった。2012年9月に決めた「認知症施策推進5か年計画」(オレンジプラン)である。その経緯については、連載の第9回と第10回に記した。まだ5か年計画の3年目なのにもかかわらず、今回新たに「認知症施策推進総合戦略」(新オレンジプラン)を作り練り直した。

昨年11月、東京で開かれた「認知症サミット日本後継イベント」での会場。各国の専門家を前にして安倍首相が「新たな戦略の策定を厚労大臣に指示します」と宣言したことによる。急遽、オレンジプランを修正してできたのが新オレンジプランというわけだ。厚労省は1月7日に自民党に披露、その後に公明党の了承を得て正式に発表される。

新プランの中身であるが、残念ながらオレンジプランの域からほとんど出ていない。がっかりである。安倍首相が国際会議で大見得を切るほどの内容ではなかった。

プランは7つの柱で構成している。

(1)認知症への理解を深めるための普及・啓発の推進
(2)認知症の容態に応じた適時・適切な医療・介護等の提供
(3)若年性認知症施策の強化
(4)認知症の人の介護者への支援
(5)認知症の人を含む高齢者にやさしい地域作りの推進
(6)認知症の予防法、診断法、治療法、リハビリテーションモデル、介護モデル等の研究開発の推進
(7)認知症の人やその家族の視点の重視

これらの多くは、オレンジプランの踏襲であり、また認知症介護の現場では既に実践されていることの追認に過ぎない。

オレンジプランとの違いがはっきりしているのは(2)で挙げている獲得目標の人数だろう。いずれも次の介護保険改訂時である2017年を目標時点としている。

まず、一般国民が認知症の関連講演を聞くだけで得られる「認知症サポーター」。2017年度末までに600万人を目標としていたが、800万人に引き上げる。早期診断できる医師を増やすための「かかりつけ医認知症対応力向上研修」の受講医師を5万人から6万人に増やす。さらに、より認知症に詳しくなって地域の医師に指示を出せる「認知症サポート医」の養成研修受講医師を4000人から5000人に増やす。

さすがに、これら人数の上乗せだけでは物足らないと判断したのか、もうひとつ加えた。「認知症初期集中支援チーム」を2018年度には全国すべての市町村で整備するとした。かなり思い切ったいい提案である。

「認知症初期集中支援チーム」は、オレンジプランの中で最大の目玉だった。看護師やリハビリなどの専門職が認知症の人の家を訪問して、家族に支援法をアドバイスしたり、かかりつけ医と連携して自立生活を手助けするものだ。認知症の初期の段階の人へ集中的に関わることで進行を遅らせることができる。既にモデル事業として始めているが、現在わずか41市町村でしか実施されていない。あと3年間で1741の全区市町村に広げようという方針だ。その意気込みには拍手である。

認知症高齢者がすでに受診している病院やかかりつけの診療所医師と「連携しながら」と厚労省は謳っているが、実際は「押しのけて」特別チームを介入させようという制度だ。現行の医療制度では、きちんと認知症を診ることができる医師が少ないため、いわば特別な訓練を受けた特殊部隊を投入しようという作戦ともいえる。それだけに、既存組織の抵抗は大きい。

新オレンジプランで唯一の高評価を得られる項目だろう。

日本の認知症ケアが欧米諸国と比較する際に必ず問題となるのが精神科病院への入院である。(4)の中で言及した。「その必要性を見極めたうえで、標準化された高度な専門的医療サービスを短期的・集中的に提供する場として、長期的・継続的な生活支援サービスを提供する介護サービス事業所や施設と適切な役割分担が成されることが望まれる」と記す。精神科病院を「短期・集中の場」と明確に区分けした。そして「精神科病院等からの円滑な退院や在宅復帰を支援する」と結ぶ。

脱病院策として前向きではあるが、現在の認知症入院者をいつまでに何人に減らすかという肝心の数値目標は相変わらず出て来ない。踏み込み不足と言わざるを得ないだろう。一方で、欧州諸国は数字を掲げて、脱病院への道筋をつけてきている。

● なぜ認知症の「訪問介護」はないのか

では、現行の介護保険の中で認知症高齢者向けのサービスはどのようになっているのか。(2)のなかで、「認知症グループ―ホームは認知症ケアの拠点」と位置付け、「認知症対応通所介護(デイサービス)」の展開が期待されているとある。共に、介護保険スタート時から設けられたサービスだ。今更強調すべきことではないだろう。

この2つのサービスは「入所」と「通い」である。ではなぜ「訪問」がないのだろうか。「認知症対応訪問介護」というサービスが、単なる訪問介護とは別に設定されてもいいのではないだろうか。認知症ケアに精通したヘルパーが自宅に来て、お茶を一緒にしたり昔のアルバムを見ながら思い出話の相手になってもらう。長い時間をかけて話を聞くだけでもいい。介護家族はその合間に買い物や趣味の時間を採ることができる。

掃除や洗濯など決められた作業を極めて短時間にこなす現行の訪問介護は、身体介護を必要とする要介護者向けのものである。認知症者向けが別にあるべきだろう。天気の話から始まって、トランプや百人一首、歌、手芸、リンゴの皮むき、キャベツの千切りなど、本人が得意なこと好きなことを付き合う。5〜6時間も一緒に過ごすことができれば、家族にとってレスパイト(*)
効果は大きい。 実は、認知症高齢者が好みの時間、気持ちが休まる時間を過ごせるように支援することこそ認知症ケアそのものであるはず。遠方まで外出するデイサービスや入所のグループホームでは実践されている。同じことを自宅で楽しむ、それが認知症訪問介護である。

新オレンジプランで盛り込んでいれば、評価が高まったはずだ。

■2015.1.21  福井の特別養護老人ホーム横浜進出 首都圏で施設不足、需要見込む
福井市で特別養護老人ホーム(特養)などを運営する社会福祉法人「一乗谷友愛会」が県外に進出し、横浜市に特養を建設中だ。首都圏は団塊の世代の高齢化が急速に進み介護施設が不足しており、待機者らの需要を見込む。2月末に完成し4月にオープンする。県長寿福祉課は「現時点で県外に進出した県内の特養はほかにない」としている。

地方の社会福祉法人が東京など都市部に続々と進出する動きがあり、一乗谷友愛会もその一つといえる。福井県は特養など介護施設の整備率が全国でも高く、進出は事業拡大の好機。施設長の山本高之さん(45)は、約5年前に東京から特養整備の説明会の案内が届いたのをきっかけに「首都圏は待機者が多く、ニーズが高い」と検討した。

横浜市が2012年度に募集した民設民営方式の特養整備に応募。事業計画が採用され、横浜市青葉区に「青葉あさくら苑」を建設している。敷地面積6546平方メートル。鉄筋コンクリート3階、地下1階建て。延べ床面積は5227平方メートル。定員100人に加え、ショートステイ(短期入所)22人とデイサービス(通所介護)10人を受け入れる。総事業費約17億円のうち横浜市が約4億5千万円を補助する。

山本さんは「福井は介護施設が多く、利用者や家族が選択している状況。その競争が質の高さにつながっている。福井でやっているサービスを横浜でもできれば」と話し、入所予定者の面談や近隣のあいさつ回りをしている。福井市で運営するグループホームから、関東にいる家族に近いとして横浜の特養に移る利用者もいるという。

ただ、介護分野の人手不足は課題で、山本さんも「リスクは高い。人が集められるか心配だった」とも言う。80〜90人の職員を集めるため早い段階から募集をかけ、既に50人余りを確保。計画通りに進んでいるという。横浜市は「地方で多角的に経営して実績を積み、雇用をしっかり確保している点にも期待したい」とする。

一方、政府は介護サービス提供事業者に支払われる介護報酬の15年度改定で2・27%引き下げを決め、特養などは大幅減収となる。山本さんは「影響は大きいが、致し方ない」と語り、「介護サービスの質を落とさないようコスト削減と人の配置を考える」と強調する。

地方創生の流れも重要とみる。東京都杉並区が静岡県南伊豆町などと共同で、17年度にも区民が入所できる特養を同町に整備する事例も出てきた。横浜進出は逆パターンだが、「都市と地方に拠点を置くことで自治体間の懸け橋となるきっかけになれば」と思い描く。県内で首都圏への進出に追随する表立った動きはないものの、福祉関係者は取り組みを注視している。

■2015.1.21  最期の迎え方を選択 特養入居時、希望を確認  特養で看取る
入居時、本人や家族は、看取り指針・体制について説明を受け、最期を迎えたい場所や救急搬送時の意向を確認される。救急搬送時の対応とは、脳卒中など突発的な病気になったときに、心肺蘇生や人工呼吸器の装着をするかについて、確認するものだ。

「医学的に回復の見込みがない」と診断された時点で、看取り介護の段階に入る。改めて、施設で最期を迎えるかの意思を確認される。その後、心身の状態に変化があれば説明を受ける。看取り介護を始めた後に、在宅や病院で最期を迎えるよう希望を変更することもできる。

特養に看取りを頼んだ場合、利用者は入居費などと別に、施設が介護報酬として得る「看取り介護加算」の1割を負担する。加算がつくのは、死亡日からさかのぼり30日以内で、死亡日が近づくほど費用は高くなる。市町村によって異なり、横浜市の場合、利用者の負担額は死亡日=1349円▽死亡日の前日・前々日=716円▽死亡日以前4日〜30日=84円となる。

●実績調べや見学重要

どんな特養を選べば良いのか。施設に問い合わせる際のポイントをまとめた。

(1)これまでの看取りの実績(いつから行っているか、年間の看取り人数、施設で看取った割合)
(2)看取りの体制(常勤医がいるか、非常勤医の場合どこまで関与するか、看護師の人数や夜間の対応)
(3)医療的処置(口から食べられなくなった際に点滴はするのか)
(4)実際に看取った利用者のエピソード(利用者に職員がどうかかわったか、家族の反応はどうだったか)――などだ。できれば、施設を見学し、職員から直接話を聞いた方がいい。


●突然死への対応課題

連載では、看取る施設側が抱える課題も浮かび上がった。

例えば、延命治療の可否を事前に文書で意思表示する「リビングウィル」をもった利用者が、突然の脳梗塞(こうそく)などで救急搬送され、病院で亡くなるケースだ。リビングウィルは法的効力がないため、看取り介護同意書をとっていない場合、救急搬送せず施設で看取りをすると、家族から訴えられるリスクがある。仮に看取りをしたとしても、加算はつかない。

こうしたケースを経験したグリーンヒルケアマネジャーの小山輝幸さん(39)は「高齢化とともに、今後増えてくるだろう。リビングウィルの法制化とともに、突然死についても、施設で看取れば加算がつくようにしてほしい」と訴える。

家族に看取りの話をするタイミングも難しい。「太陽の家」(横須賀市西浦賀)の看護サービス部長、青木幸代さん(61)は「利用者とご家族の人間関係など、それぞれの方の背景をみて、お話をするタイミングを考える」と話す。また、「施設での看取りがすべて善というわけではない。病院での最期を希望する人があれば、当然その意向を尊重する」ともいう。

◆家族以上の職員、介護報酬アップを

約3カ月にわたり、特養での看取りを取材してきた。昨冬に本連載2部で採り上げた「在宅でみる」と同様の「温かさ」を感じた。太陽の家では、看取り段階に入ると、職員が医務室の利用者一覧に「家族」というシールを貼る。「利用者を職員の家族と同じように大切に接する」という考え方からだ。

根気強く食事をたべさせ、話を聞く介護職員の姿を見ていると、家族以上にも見える。そんなかかわりが、利用者の幸せな最期につながるのだと思う。

介護職員の地道な努力に報いるためにも、国は看取りに関する介護報酬を上げてほしい。自治体も、介護施設向けに研修を実施するなど、支援を急ぐべきだ。団塊世代が75歳以上になる2025年には、病院や在宅だけでは看取りきれなくなるのだから。

■2015.1.21  住友林業、デイサービス事業に参入=介護ビジネス、売上高60億円目指す
住友林業は21日、有料老人ホームを運営する完全子会社のフィルケア(横浜市)を通じ、デイサービス(通所介護)事業に参入すると発表した。入所型の介護施設に加え、通所型も用意し、利用者の選択肢を増やす。フィルケアの売上高(2014年3月期で23億円)は19年3月期に60億円に拡大したい考え。


グループ会社で有料老人ホームの運営を行うフィルケアにおいて、今後3カ所のデイサービス事業所を開設。高齢者介護ビジネスの裾野を広げ、さらなる事業拡大を目指す。同社では住宅事業で培った設計力を生かし、自宅と同じようにくつろげる居室空間の提案や複数のプログラムによる自由度の高いサービスなど、ハード・ソフト両面において地域に必要とされる質の高いデイサービスを提供していく。

■2015.1.21  高齢者増でも閑古鳥、老人ホーム破綻の不思議
4人に1人が65歳以上という社会情勢を受け、老人ホームや高齢者住宅のニーズが急拡大している。全国有料老人ホーム協会の調査によると、有料老人ホームの数は2013年7月時点で過去最高の8424件。3年で約1.6倍という急増ぶりだ。その一方で、帝国データバンクの調べでは、老人介護事業者の倒産件数は過去最悪となった2013年の46件に引き続き、2014年も45件と高水準で推移している。絶対数の不足が指摘されている老人ホーム・介護施設なのに、事業者の破綻が増えるという、一見矛盾した現象の背景には何があるのか。

■債権者説明会、怒号が飛び交う

2014年10月1日、長野県諏訪市を中心に有料老人ホームや高齢者集合住宅を運営する「聖母の会福祉事業団」(登記上の本社は東京都八王子市)が長野地裁に民事再生法の適用を申請した。その6日後、諏訪市文化センターで開かれた債権者説明会は騒然となった。

負債総額は17億円。それには地元信用金庫、地銀、政府系金融機関などからの借入金に加えて、当時施設に入居していた128人が支払った保証金も含まれていた。会社側はこの入居者の保証金の債務、総額5億1100万円が再生債権になると説明。再生債権とは再生計画がまとまるまで弁済が一時棚上げされる債権で、再生計画の内容によっては大幅なカットがあり得る。入居者やその家族が「預けているだけ」と思っていた保証金の一部が返ってこない事態に、会場では「詐欺だ」「だまされた」などの怒号が飛び交った。スポンサー候補として出席していた企業に詰め寄る者も出た。

聖母の会福祉事業団は、れっきとした株式会社、民間の営利企業である。資本金2000万円。代表取締役の鈴木丈史が筆頭株主となっている。諏訪市で1993年に介護付き有料老人ホーム「セント・ベル諏訪湖」を開業したのを皮切りに、2002年から09年にかけて4つの高齢者集合住宅を開設した。

ただ、開業当初から、バブル崩壊の余波をうけて入居者が少ない逆風のスタートだったようだ。こういった施設は、土地建物を自社で取得する「自社物件」ケースと、施設は別に所有者がおり介護事業者が借り受ける「賃借物件」タイプがあるが、セント・ベルは自社物件。金融機関からの借り入れで物件の取得資金をまかなったが、入居者数がもくろみを下回り、支払利息など金融負担が重くのしかかったという。実際、14年10月時点の借入金は10億7100万円で、年間売上高を大きく上回る水準にあった。

「自社物件は負担が重い」との反省もあったのか、2000年代に展開した高齢者集合住宅4施設は賃借物件だった。しかし、これらも軌道に乗ったとは言い難い。諏訪市内や周辺地域に同じような施設がどんどん設立され、競争が激化。入居者が一向に増えない事態が続いたためだ。

保証金、負のスパイラル

社内データによれば、高齢者集合住宅の稼働率は最も高いもので88.8%。低いものだと40%となっている。施設の低稼働は業績低迷に直結。最近の経営状況をみると、2012年から3年間の年間売上高は4億5000万円、3億9000万円、5億7200万円で、一見持ち直したように見えるが、収益面でみると一度も経常黒字になることはなく、2億5000万円以上の赤字を累積している。


同業者間との競争で赤字経営が続く聖母の会を、更に窮地に追いやったのが入居者の死亡に伴う保証金の返還負担だった。このような高齢者向け施設の場合、入居者は最初に一定金額の保証金を入金することを求められる。保証金の制度には2つのパターンがあり、1つは入居期間とともに償却を進め、ある一定の期間を過ぎると返還金はゼロとなるタイプ。もうひとつは、入居者死亡などで契約期間が終了した後、全額返還されるタイプだ。

全額返済タイプの場合、入居者の死亡が増えると、当然、保証金の返還という事業者側からみればキャッシュアウトが増える。本来、新たな入居者が入ってくることでキャッシュインし帳尻が合うのだが、入居率を見る限り苦しい状況であったことがわかる。おのずと新規入居者へは保証金のディスカウントを余儀なくされ、採算悪化は負のスパイラルを描くことになった。

最終局面での資金繰りは、まさに綱渡りだったようだ。ローンの返済も滞るようになり、聖母の会は一部債権者による差し押さえを受けることとなる。診療、介護報酬など受け取るはずの約4700万円が差し押さえられ、口座に入金されなかった……。これがダメ押しとなり自主再建を断念、民事再生法の適用申請に至ることとなった。

■保証金以上のカネを預けていた入居者

前述の債権者説明会が混乱したのには、もうひとつの事情がある。定められた保証金を上回る金額を自主的に預け財産の管理を事実上聖母の会に任せていた入居者や、既に死亡などで入居者は退去したが保証金の返還を受けていなかった家族がいたのだ。入居者債権者一覧によると、保証金の債権は1件当たり100万円から200万円のものが多いが、なかには1000万円を超える金額もある。銀行預金の感覚で預けていた金が返ってこない。入居者や家族が激怒したのは、こうした背景があった。

高齢者向け施設の需要の急拡大が見込まれている中で、事業者の経営破綻が増える理由。聖母の会の事例が示すとおり、金融面でのサポートが難しいことが挙げられる。事業者が銀行などの金融機関に設備投資の融資を頼むケースは多いが、通常の住宅や病院と比較してまだ制度が確立されていないことから、積極的な融資が受けられているとは言いがたい。

銀行側から見ると、融資に消極的にならざるを得ない理由がある。介護事業は、介護報酬の引き下げや予防介護への転換など国の政策に大きく影響されるため、経営推移の予見が難しい。また入居者の募集の面でもマンションとは違い数カ月で「完売御礼」とならないため、資金繰り悪化による事業者の破綻リスクが比較的大きくなりがち。従来の不動産融資とは異なった判断を要する場面が多いのだ。

さらに入居保証金は、将来の負担増加を避けたい入居者や家族にとっては安心感のある制度だが、事業の安定性から見れば、一定期間ごとに利用料を払う「家賃」制度のほうが理にかなっていると指摘する専門家もいる。急速に拡張する高齢者施設のニーズに対して、事業者側の経営体力、金融機関の知見、行政側の制度などがうまくかみ合っていないのではないかという疑念がぬぐえない。

■重要事項説明書のチェックを

では、現時点で有料の高齢者施設を選ぶ場合、どのような点に注意すべきか。

まず各都道府県の保健福祉局などが公表している「重要事項説明書」を確認することだ。これには各施設の状況が記されており、誰でもホームページなどで閲覧が可能だ。室数と定員が示されているので、事業者側に現在の入居者数を聞けば、入居率を自分で計算できる。一概には言えないが、おおむね80%以上であれば経営環境は安定しているといえる。入居率を左右するのはその施設が「介護」サービスを提供しているかどうか。現在人気なのは「介護付き」物件なので、将来の入居率を予想する上でもポイントとなる。

さらに重要事項説明書では、従業員の配置もしっかり確認しておきたい。職員体制の項目で職員1人あたりの入居者数や、看護、介護職員数、常勤、非常勤などの雇用状況が記されている。

入居保証金の保全状況も確認できる。現在は法律によって500万円以下は保全措置が取られているが、2006年以前に設立された施設は今回の聖母の会のように保全されていないケースがある。(注 事業者によっては06年以前であっても保全措置を自主的に取っている)

また、500万円を超える高額保証金も、不動産投資信託(REIT)が出資しているケースでは保全されていることもあり、チェックが必要だ。

いずれにしても終(つい)のすみかになる可能性がある物件。しっかりと情報収集をして、場合によっては家族だけでなく専門家にも意見を求めて、細心の注意で選択したいものだ。

■2015.1.21  インフル院内感染2人死亡、福岡
北九州市は21日、同市門司区の鳥巣病院(195床)で入院患者41人と職員10人がインフルエンザに集団感染し、うち80〜100歳代の男女の患者5人が死亡したと発表した。2人はインフルエンザが原因で死亡、残る3人もインフルエンザの影響が否定できないとしている。

市によると、11日に90代の女性、16日に80代の男性がそれぞれインフルエンザによる肺炎のため死亡。80〜100代の女性3人が19〜21日に相次いで亡くなった。

■2015.1.21  箕面市の病院でインフル集団感染 2人死亡
箕面市の「箕面市立病院」で入院患者ら12人がインフルエンザに集団感染、うち91歳と100歳の入院患者が死亡した。7日、同じ病室の2人が最初に感染、20日までに入院患者9人と看護師3人の計12人がA型と診断された。全員同じ階の病室だった。

■2015.1.21  北九州の病院で51人インフル感染 高齢者5人が死亡
北九州市は21日、同市門司区吉志(きし)5丁目の鳥巣(とりす)病院で、入院患者41人と職員10人の計51人がインフルエンザに集団感染し、86歳の男性患者が16日に死亡したと発表した。この病院では11日にも91歳の女性患者がインフルエンザによる肺炎で死亡。19〜21日には84歳、91歳、103歳の女性患者3人が、インフルエンザにかかった後に持病を悪化させて亡くなったという。

病院によると、最初の発症者は病院職員の男性介護士(24)とみられ、8日に発症して勤務を休んだが、10日に男性が担当する病棟の患者を含む4人が発症。その後も続々と患者が増え、市は病院を立ち入り検査した。病院によると、160人の職員全員と約190人の入院患者の大半は、昨年12月上旬までにインフルエンザの予防接種をしていた。発症者はその都度、別の病室に隔離し、消毒も徹底して、発症者が出た病室の入院患者や病棟の職員にはタミフルを予防内服させていたが、感染の拡大を防げなかったという。

21日現在、症状があるのは患者2人。今井達也院長は「二度と起こらないよう努める。感染経路なども今後調べていく」と話した。病院は現在、全病棟で面会を禁止し、新規の入院患者も受け入れていないという。

■2015.1.21  「娘の分身、頑張れ」 女児の両親、臓器提供の拡大訴え
大阪大病院で脳死と判定されて臓器を提供した6歳未満の女児の両親が19日、朝日新聞の取材に応じた。女児は重い心臓病で移植を待つ身だったが、治療が及ばず脳死になって臓器提供する側に転じた。移植の現場に立ち会った経験をもとに「移植医療への理解が広がることで、臓器提供という選択肢をできる限り多くの方がもってほしい」と訴えた。

女児は昨年4月の幼稚園入園後、かぜのような症状から病院を受診し、特発性拡張型心筋症と診断された。12月に容体が悪化。心臓の機能を補う装置をつけて海外での移植をめざしていたが、装置でできた血の塊が脳の血管につまる「心原性脳梗塞(こうそく)」をおこし、脳死状態になった。

両親は、脳死かどうか判断する現場に立ち会った。細かい検査を多くの医療関係者で進めていた。瞳孔が開いている、脳の機能が失われているなど検査項目が進むごとに「もう奇跡は起きない」と覚悟ができていった。娘を囲んで「アナと雪の女王」の歌を歌ったり、一緒に手形をとったり、温かい雰囲気で過ごした。

■2015.1.22  インフル集団感染、患者2人死亡 大阪・寝屋川の病院
大阪府結核予防会大阪病院(同府寝屋川市寝屋川公園)でインフルエンザの集団感染が発生し、入院中の71歳女性と81歳男性の2人が死亡したと、同病院が22日発表した。病院側は院内感染があったとした上で、死亡と感染の因果関係は不明だが、「インフルエンザが原因の可能性は否定できない」としている。

発表によると、今月9日に病院職員4人がインフルエンザを発症。その日から出勤を取りやめたが、同13日に入院患者と職員計12人がインフルエンザと診断され、19日までに計31人が感染した。

このうち気管支拡張症で入院していた71歳女性が18日に同症で死亡。肝臓がんで入院していた81歳男性が21日に肺炎で死亡した。

22日時点の感染者は入院患者4人で、終息に向かっているという。

相良憲幸院長は「誠に申し訳ない。これまで以上に院内感染の防止に取り組んでいく」と話した。

■2015.1.22  癒やしの「パロ」触れて 来月、介護ロボ展示会
介護ロボットの展示会が2月22日午前10時から、佐賀市の県在宅生活サポートセンターで開かれる。「世界で最もセラピー効果がある」とギネスに認定されている愛らしいアザラシの赤ちゃん型ロボット「パロ」などを展示。実際に触れながら使い心地を試すことができる。

パロはセンサーや人工知能の働きで、人間の呼びかけに反応。抱くと喜んだり、人間の五感に働きかける動物らしい反応をする。認知症の高齢者や、自閉症の子どもたちにもセラピー効果が見られるという。

そのほか、会話ができるコミュニケーションロボット「パルロ」や、排せつを関知して汚物を吸い込み、臀部(でんぶ)の洗浄、除湿まで行う全自動の排せつ処理機などを展示する。

午後1時半から研修会も実施。専門家が「福祉用具・介護ロボットの位置づけ」をテーマに講話を行うほか、滑らせて移動させることで介護者の負担を軽減し、介護される側のリスクも減らせる「トランスファーボード」などを使った研修も行う。

■2015.1.22  理学療法士の橋本さん 被災地に介護モデルを
震災後のボランティア活動がきっかけとなり、移住先の石巻市でデイサービス施設を開いた理学療法士の橋本大吾さん(34)が、高齢者の介護に取り組んでいる。「10年後には団塊の世代が75歳以上になる。要介護者が急増して支えきれなくなる」と、介護予防に重点を置いた事業もスタート。被災地にモデルケースを作る意気込みだ。

茨城県鹿嶋市出身の橋本さんは、理学療法士の資格を取得後、埼玉県の介護施設などに勤務した。震災後は岩沼市や名取市などで、体を動かす機会が減った避難所や仮設住宅の住民らに対し、「生活不活発病」の予防を図る体操を指導するなどのボランティア活動に携わった。

2011年の夏から活動するようになった石巻市の郊外には理学療法士が少なく、住民の高齢化も進んでいたことから、「同じ仕事をするなら、緊急性も重要性も高い地域で仕事がしたい」と決意。その年の12月に埼玉県ふじみ野市から石巻市に移住し、要介護者らの支援を続けながら、資金調達などデイサービス施設を整備する準備を進めた。

自らが代表を務める一般社団法人「りぷらす」を設立し、石巻市河北地区に施設を開いたのは13年5月。理学療法士や作業療法士ら7人で運営し、高齢者のリハビリなどに当たっている。利用者は年間で延べ約3000人に上るという。

将来を見据え、もう一つの事業の柱になると考えているのが、昨年9月に始めた「おたがいカラダづくりサポーター(おたカラ・サポーター)」の養成。市内の40歳以上を対象に、4日間の講座で関節や筋肉の働き、介護の知識などを教え、介護予防の担い手となる住民ボランティアを育てる事業で、家族や友人に簡単な体操の指導を行うなどして住民の健康意識を高めてもらうのが狙いだ。

「介護が必要になってからでは遅い。予防することが重要だ」と橋本さん。「少しでも長く、生き生きと暮らしてもらうため、体作りの面から支えていきたい」と力を込めた。

■2015.1.23  浜松のお好み焼き店 障害者支援4年 調理、接客「修業中」
浜松市のNPO法人「地域生活応援団あくしす」が中区早出町で障害者の就労支援を目的に運営する「お好み焼き こなこな」が2月、開店4周年を迎える。知的、精神などの障害がある20〜40代の男女11人をスタッフ3人がサポートし“卒業生”を企業に送り出すという目標に、あと一歩のところまでこぎ着けた。

地元の浜松祭りの手拭いを飾った調理場で、入店2年目の従業員(21)=磐田市=がコテを握る。人気の豚玉(690円)を丁寧に焼き上げ、同時並行で焼きそばも準備する。

最初は人と接するのが怖かった。客に何を聞かれるか分からず不安でたまらなかったが、調理に自信を持てるようになると「仕事が楽しくなった」。

スタッフで生活支援員、作業療法士の堀米美紀さん(24)は「一人一人の特性が違うことを理解し、言葉や接し方に気を付けたり、作業をパターン化したりすることで、きちんと働ける」と話す。

開店当初は周囲から「調理や接客時の細かい判断は無理だろう」と心配されたが、トラブルはほぼなかった。
仲間の1人が他界するなど精神的動揺が危惧される事態もあったが、乗り切った。
現在のメニューはたこ焼き、いか焼きを含め数十種類。客のリクエストでたくあん入りのお好み焼き「遠州焼き」も始めた。「おいしいに(おいしいよ)」との評判が口コミで広がった。

従業員の中には仕事の合間に勉強を重ね、調理師免許を取得した努力家も。就職を目指し、市内の食品企業でラベル貼り作業に取り組み始めた人もいる。

同NPOの小田敏行副理事長(55)は5年目突入を前に「この店で学んだ経験と技術を何とか一般企業や飲食店への就職につなげたい」と言葉に力を込める。

■2015.1.23  病院でインフル集団感染、入院患者男女4人死亡
愛媛県西条市の西条中央病院は23日、インフルエンザの集団感染で入院患者4人が死亡したと発表した。

同病院によると、死亡したのは80歳代の男性2人と90歳代の女性2人。いずれも慢性腎不全などの基礎疾患を抱えており、13〜15日に亡くなった。4人のうち3人は予防接種をしていたという。

同病院では、今月5〜16日に入院患者17人と職員12人の計29人がインフルエンザを発症していた。

■2015.1.24  養護施設入所者の進学促進 静岡県、大学卒業まで補助
静岡県は2015年度、児童養護施設の入所者らを対象に大学などでの修学を支援する事業に乗り出す。児童福祉法に基づく支援が解除される20歳から卒業までの間、生活費などを補助する。関連経費を新年度当初予算案に計上する方針。

大学や短大、専修学校などを卒業するまでの支援制度を設けることで進学を促し、児童養護施設利用者の安定的な自立を図る。施設で暮らす子どもたちの将来の目標になるような進学、就職を果たすモデル人材を育成する狙いもある。

県によると、児童福祉法に基づく施設利用者への措置は0歳から18歳に達するまで。自立を図るために20歳に達するまで延長が可能だが、20歳以上は対象外となっていた。このため、20歳以上の対象者に卒業まで一定額の補助を検討している。

これまで、児童養護施設利用者は大学などに進学する学力があっても経済的事情で断念するケースが多数あり、進学率も低い傾向がみられた。十分な教育が受けられないことで就職などの際に不利になり、貧困につながる可能性もある。こうした連鎖を断ち切ろうと新制度の創設方針を決めた。

■2015.1.24  介護職の不足 外国人頼みには限界ある
介護職の人手不足を外国人で補おうとしても、限界がある。

政府が外国人介護職の受け入れ態勢拡大に向けた検討を進めている。介護福祉士資格を取得した留学生が働き続けられるようにするだけでなく、外国人技能実習制度の対象に加える考えだ。

だが、「安い労働力」に飛びついて大量に受け入れた場合、後になって外国人抜きには介護現場が回らなくなる危うさはないだろうか。外国人の流入で、日本人職員の賃金が低く据え置かれることにつながるのも困る。

介護は人間の尊厳にかかわる仕事といえる。まず、日本人が誇りをもって働ける職種にするとの考えが抜け落ちてはなるまい。

団塊世代が75歳以上となる平成37年には、今より約100万人多い職員が必要になるとの試算もある。外国人の活用を選択肢にするのは分かるが、とにかく「働き手」を手っ取り早く確保したい、という本音が透けて見える。

介護福祉士取得者の就労について、留学生が日本の高等教育機関を卒業した場合に限定するというのは現実的な判断といえる。取得に向けた勉強に打ち込めるよう、留学生の支援を強化すべきだ。

問題は実習制度による受け入れだ。途上国の人々に技能や知識を身につけてもらう制度の趣旨から逸脱していないか。

というのも、政府が介護以外の職種も次々と実習制度の対象にしようとしているからだ。なし崩しに拡大し、単純労働の事実上の解禁につなげるようなやり方は、不適切と言わざるを得ない。

介護の仕事は、技能だけでは十分とはいえない。専門用語はもとより、方言への対応など高い日本語力が問われる。わずかな表情の違いや短い言葉から、要介護者の体調の変化をつかみ、医師に伝えることなども求められる。実習生に対応できることではない。

厚生労働省の「中間まとめ」は実習生の受け入れ条件として、日本語によるコミュニケーション能力を求めた。これは介護福祉士取得者にも共通する。数合わせで受け入れては現場が混乱する。

政府は介護報酬改定で処遇改善を図ることにしたばかりだ。日本人職員がキャリアを積むシステムを整え、やりがいのある職場にする。そこに魅力を感じた外国人がやってくる、というのが物事の順番ではないか。

■2015.1.24  ハンセン病認知度調査 8割が偏見・差別を認識
日本財団は1月25日の「世界ハンセン病の日」を前に、ハンセン病の認知度調査を実施した。

調査は全国18〜69歳の男女3,012人を対象に、2014年12月22日〜23日に実施、結果は次の通り。


「ハンセン病 認知状況」

ハンセン病の認知率 64.4%
●性別では男性66.4%、女性62.5%で、男性の方がわずかに認知率が高いが、大きな差は見られない。
●年代別では、10-20代では52.3%だが、60代では80.7%と8割を超えており、男性・女性とも年代が高くなるにつれて、認知率が高くなっている。
●エリア別では、北海道・東北62.2%に対し、九州・沖縄では72.4%となっており、西日本で認知率が高くなる傾向が見られる。



ハンセン病認知者の認知度は7割の人が「少し知っている」と回答
●「少し知っている」が71.0%と7割を超えており、ハンセン病を知っていても認知度が高いとはいえない。
●年代別では、10-20代で「よく知っている」が10.9%と他の年代より多く、認知率は低いものの、認知者の認知度は比較的高い。
●エリア別では、「よく知っている」が最も高いのが九州・沖縄10.4%で、次いで中国・四国7.1%てなっており、認知率と同様に西日本で認知度が高い。



ハンセン病の認知経路は「新聞やテレビ」が8割以上
●「新聞やテレビ」が83.9%で、これに次ぐのが「学校の授業」18.9%となっており、認知経路は圧倒的に「新聞やテレビ」が占めている。
●「新聞やテレビ」は、10-20代は65.3%で他の年代より20%近く低いが、逆に「学校の授業」は10-20代は49.3%で他の年代より30%以上高くなっている。



「ハンセン病 偏見・差別について」

ハンセン病の認知内容は8割の人が「偏見や差別がある病気」と回答
●ハンセン病について「偏見や差別がある病気である」が79.5%を占めており、「偏見や差別がある病気」という意識が強い。特に女性の40代以上は8割を超えており、年配の女性であるほど「偏見や差別がある病気」という意識が強い傾向が見られる。



ハンセン病の「偏見・差別」についての認知事項は「隔離される」が8割以上
●「隔離される」が84.6%と圧倒的に多く、すべての性別・年代・エリアで7割以上の認知率となっている。ハンセン病が「隔離」というイメージと一体化していることが想定される。



ハンセン病の患者・回復者に「会ったことがある」4.7%
●実際に「会ったことがある」のは、いずれの性別・年代でも1割に満たない。ただし、エリア別では「九州・沖縄」10.4%、「中国・四国」7.1%で他のエリアよりも多く、西日本で比較的高くなっている。



ハンセン病の「偏見・差別」をなくすための施策は「学校」「メディア」「政府」
●「学校で正しい知識を教える」が81.5%と最も多く、すべての性別・年代・エリアで7割以上の回答となっている。
●次いで「メディアが積極的に報道、紹介する」63.3%、「政府が積極的に差別撤廃のために取り組む」43.8%で、特に政府は60代が5割以上の回答となっており、高齢者は政府による施策が必要という意識が強い傾向が見られる。

■2015.1.24  ハンセン病療養所の歴史保存  世界遺産への登録を
ハンセン病療養所を、隔離や差別など社会の「負の歴史」を刻んだ遺産として保存しようと、国内外で取り組みが進んでいます。海外では日本の経験を教訓に、各国で資料館建設や遺構保存、回復者による語り部活動などが始まりました。日本では療養所の世界遺産登録をめざす活動も本格化していますが、実現までの道のりは厳しそうです。


■世界遺産への登録を

岡山県瀬戸内市の国立ハンセン病療養所長島愛生園。隔離政策の歴史や入所者の暮らしを伝える施設「歴史館」には昨年、1万2千人が訪れた。年間来館者数が初めて1万人を超え、2003年の開館以来の累計は昨年11月に10万人を突破した。

来館者の増加は「世界遺産運動の効果」と、歴史館の田村朋久学芸員(38)は話す。同じ長島にある邑久光明園と愛生園の関係者が13年9月に「長島の世界遺産登録をめざす準備会」を発足させると世界遺産がらみの報道が増え、人権研修や社会見学など団体の訪問が急増したという。

準備会は世界遺産登録の意義について(1)偏見と差別、人権侵害の歴史を継承する(2)入所者らの差別に立ち向かう姿を示せる(3)建築、遺構、文書や生活資料など全てが保存対象となる(4)市民の関心が高まる(5)日本が過ちを認める成熟した国と示せる――ことをあげている。

背景には入所者の高齢化と減少がある。国内13カ所の国立療養所入所者数は昨年5月現在で1840人に減り、平均年齢は83歳。230人が住む愛生園で隔離の歴史や体験を証言した入所者はかつて25人いたが、いまも語り部を務めるのは5人だ。

資料の収集や展示は当初、入所者自身の取り組みとして進められてきた。しかし高齢化が進み、02年以降は東京都東村山市の国立ハンセン病資料館▽熊本県合志市の菊池恵楓園社会交流会館▽群馬県草津町の栗生楽泉園重監房資料館▽愛生園歴史館――の4カ所で学芸員が着任。資料整理や展示の業務を引き継いだ。他の療養所でも、資料室や展示室の設置が相次いでいる。

歴史館が開館した03年に学芸員資格を取得した田村さんは、啓発活動について「以前は入所者自身の名誉回復が重視されていたが、それとともに今は市民が自分の問題として社会の差別を考える時代に入ったのではないか」と語る。

歴史保存の道は平坦(へいたん)ではない。愛生園は国立療養所を所管する厚生労働省に対し、04年から施設内の建造物の保存措置を求めてきた。11年には、地元の岡山県や瀬戸内市の教育委員会に登録有形文化財の申請を打診した。世界遺産をめざす運動も、こうした取り組みの延長上にある。ただ、全国13療養所の入所者自治会でつくる全国ハンセン病療養所入所者協議会で結論が出ていないため、厚労省は「まだ正式に要望された段階ではない」との立場だ。

「それでも、世界遺産をめざす意義は大きい。差別の解消には関心の高まりが大切。運動を始めたことで新たな人的つながりが増え、療養所が、差別の歴史を市民が学べる『負の遺産』でもあるとの理解が広まってきた」と田村さんは説く。


■差別・教訓、忘れない

ハンセン病施設の歴史保存は海外でも進みつつある。

20世紀初頭に世界最大級の療養所が造られ、ピーク時には6千人の患者が収容されたフィリピン・クリオン島。世界保健機関(WHO)とともに世界各国でハンセン病対策を支援してきた笹川記念保健協力財団(東京都)によると、治療が進み、新たに見つかる患者が年2千人に減ったのに伴い、フィリピンでも療養所の今後が問題となっている。総合病院を併設し近隣の外来患者を受け入れるなど地域開放を進めるほか、偏見や差別の歴史を記録し、資料館として残す取り組みも始まった。

クリオン島の療養所開設100周年にあたる06年には、日本からの支援も得て資料館が造られた。島へ患者を運んだ小船や治療器具、隔離された療養所内でのみ使える園内通貨や、後遺症のため足を切断した患者が使った義足などが展示された。

財団は12年と14年、フィリピンや台湾、マレーシア、ブラジル、コロンビアなどのハンセン病関係団体や政府職員、歴史研究者らを日本に招き「国際ハンセン病歴史保存ワークショップ」を開いた。

参加者の注目を集めたのは、日本の歴史保存が療養所入所者自身により進められたことだった。

東京都東村山市の多磨全生園に住む平沢保治さん(87)や佐川修さん(83)は、数十年かけて入所者の手で進められてきた資料収集が、現在の国立ハンセン病資料館の展示に結実したと説明。「資料を残さないと我々の生きた歴史が埋没してしまうとの思いで集めた」などと述べた。2人が現在は資料館運営委員を務め、自身の体験を語る「語り部」の活動に取り組んでいることも紹介した。

参加者のうち各国の政府職員や医療関係者は、医療史や医療政策の視点からハンセン病の歴史をとらえる見方が主流だったといい「入所者側の視点からの歴史には思い至らなかった。語り部活動を自国でも導入したい」との声が相次いだという。フィリピンの国家歴史委員会や国立公文書館の代表者は「歴史保存に国家として取り組む」と表明。同国内8カ所の療養所に歴史担当官を置き、論文集の編集を進めている。

クリオン島で資料展示のまとめ役を担ったアルトゥーロ・クナナン医師(56)も、新聞記事やビデオなどの資料を集めるほか、島に暮らす回復者や家族からの聞き取り調査を進めてきたという。歴史保存の意義についてこう語った。

「ハンセン病にかかった人たちの思いや声を生きた証しとして残すことで、隔離政策による偏見や差別の実態を後世の人が知り、考えることができる。当事者自身の手で歴史を編み上げることが、真の人間回復につながる」

■2015.1.24  インフルエンザ集団感染、90代女性が死亡 滋賀・草津の特養
滋賀県草津市上笠1丁目の特別養護老人ホーム「ぽぷら」は24日、インフルエンザA型の集団感染があり、入所していた90代の女性が死亡したと発表した。ほかに80〜90代の入所者7人と、職員5人が発症し、入所者2人が今も入院して治療中という。

同ホームを運営する社会福祉法人「みのり」によると、発症した13人は1月11日から18日にかけて発熱などの症状を訴えた。うち、11日から入院していた90代女性が、23日午後にインフルエンザによる心不全で亡くなったという。

同ホームでは昨年10月、入所者50人のうちアレルギーなどを除く48人が予防接種を受けていたという。

■2015.1.24  病院でインフル集団感染1人死亡 広島
広島県安芸高田市の病院で、今月20日から24日までに入院患者と職員の合わせて25人がインフルエンザに集団感染し、このうち入院患者の80代の女性が死亡した。

インフルエンザの集団感染が起きたのは、安芸高田市八千代町にある八千代病院。
広島県によると、今月20日に、病院の職員1人がインフルエンザに感染し、その後、入院患者や職員が相次いで高熱などの症状を訴えていたということで、24日までに入院患者16人と職員9人の合わせて25人がインフルエンザと診断された。このうち入院患者の80代の女性が23日に死亡したという。

病院では22日から病棟での面会を制限しているほか、薬の予防投与を行っていて、これ以上の感染拡大の可能性は低いとしている。一方、保健所では病院で現地調査を行い、十分な対策が取られているか確認するとともに、終息が確認されるまで指導することにしている。

病院では「亡くなった方については十分、手が尽くせなかったことは申し訳なく思っております。保健所への報告を密にし、感染の予防と拡大防止に努めていきたい」とコメントしている。

広島県内では、竹原市の病院で起きたインフルエンザの集団感染で今月9日にも入院患者の80代の女性が死亡している。

■2015.1.24  <被災地の高齢者施設>介護報酬引き下げで悲鳴
国が打ち出した介護報酬の引き下げ方針に対し、東日本大震災被災地の高齢者施設に戸惑いが広がっている。再建途上にある経営基盤が揺らぎかねない上、ただでさえ苦しい求人事情への悪影響も懸念されるためだ。関係者からは「福祉向上の長期的視点がない」との嘆きが漏れる。


<求職者も敬遠>
「サービスを削るわけにはいかない。物品を丁寧に扱うなど経費削減に知恵を絞っていく」。気仙沼市の特別養護老人ホーム恵心寮の吉田寛施設長が語る状況は切実だ。

震災の津波で全壊し、昨年7月に内陸部で建物を再建した。定員70人の全個室型に切り替えたものの、利用者は現在20人止まり。2階は全て空きベッドの状態が続く。

理由は人手不足だ。震災前47人だった職員は25人に半減した。求人への反応は鈍く、心労などで退職した職員の補充すらままならない。「感謝されることが多い仕事なのですが…」と千葉綾子主任介護士。せっかくの施設を生かし切れず、収入は伸び悩む。

介護職の求人にあえぐのは気仙沼の施設だけではない。主な沿岸被災地の有効求人倍率は表の通り。復興工事や工場再開などに伴って高止まりの状態が続く中、高齢者施設の苦闘ぶりが鮮明になっている。
 岩手県内の介護施設でつくる県社会福祉協議会・高齢者福祉協議会の渡辺均会長は「報酬削減で業界の暗いイメージが広がり、求職者に敬遠されかねない」と心配する。

<好循環を築け>
削減の代償として、政府は月給を1万2000円アップできる加算金を打ち出した。一定の賃上げが可能になるとはいえ、業界に求人難解消への期待感は薄い。吉田施設長は「若者の福祉への関心を高めるなど、中長期的に人材を育てる対策が不可欠」と指摘する。

政府判断の背景には、2兆円に膨らむ全国の特養施設の内部留保がある。だが、宮城県沿岸部の運営法人理事長は「多くは改修に備えた積立金。新築や補修に充てた被災地の施設は経営が苦しくなる一方だ」と憤る。

震災で核家族化が進んだこともあり、被災地では介護サービスの需要増が見込まれる。立教大の森本佳樹教授(社会福祉学)は「被災地は全国の郊外宅地の近未来の姿でもある。国と自治体は、福祉が雇用と利益を生む好循環を築かねばならない」と話している。

[介護報酬]介護サービス提供事業者に支払われる公定価格。原則3年に1度改定される。政府は2015年度予算案で2.27%の引き下げを決定。マイナス改定は9年ぶり。報酬は利用者が1割を負担、残る9割は40歳以上が支払う保険料、国と地方の税金が2分の1ずつ充てられる。

■2015.1.24  特養申込者2万人超 10年度以降で初 県内の今年度 /広島県
増え続けている県内の特別養護老人ホーム(特養)の入所申込者数は今年度、2万1千人に達した。少なくとも2010年度以降で2万人を超えたのは初めて。要介護度が低い人からの申し込みの増加率が高いという。

県内にある全ての特養216カ所への入所申込者数を市町が調べた。県介護保険課によると、特養の定員1万1539人(昨年3月末)。一方、昨年4月時点で2万1137人が入所を申し込んでいた。

申込者のうち、自宅にいる人は52%、病院や介護老人保健施設(老健)など自宅以外にいる人が48%だった。対前年度比では自宅にいる人が3・2%増だったのに対し、自宅以外にいる人は8・7%増だった。

県介護保険課によると現在、特養の入所者の8、9割は要介護3以上の認定を受けている。だが、今年度の入所申し込みは要介護3以上の人に比べ、要介護1、2の人の方が前年度からの増加率が高かった。

同課は「将来、心身の機能が低下した場合に備えて早くから申し込む人が増えているのでは」とみる。

4月からは特養に新たに入れるのは原則、要介護3以上の人に限定される。担当者は「一人暮らしでも自宅で暮らせるように居宅サービスを充実させたい」と話した。県内の特養の定員は今年度末までに1万1997人(前年度比458人増)となる見込み。

■2015.1.24  触法障害者らの支援探る学会設立 全国で研修やシンポ
知的障害や発達障害のある人が孤立し、犯罪を繰り返してしまう――。いわゆる触法障害者らへの適切な支援のあり方を探ろうと、福祉関係者や医師、弁護士らが24日、「日本司法・共生社会学会」を設立した。今後、全国で研修やシンポジウムを開く予定だ。

学会は「裁判と障害者事件をめぐる課題」や「地域で支える〜生きにくさを抱えた人たちへの福祉支援の課題をめぐって」など10テーマの分科会をつくる。司法や医療、福祉など様々な職種をつなぐネットワークづくりを目指し、支援の実践にいかす考えだ。

会長には、発達障害の支援に詳しい内山登紀夫・福島大学大学院教授が就任した。知的障害者の事件などを担当してきた弁護士らが理事となった。

学会設立の中核となったメンバーは、これまでも障害者の権利擁護のための啓発や人材育成を進めてきた。内山教授は「障害者たちが抱える生きづらさを理解し、支えることが、再犯の防止や安全な社会づくりにつながる」と話した。

■2015.1.25  <被災地の高齢者施設>介護報酬引き下げで悲鳴
国が打ち出した介護報酬の引き下げ方針に対し、東日本大震災被災地の高齢者施設に戸惑いが広がっている。再建途上にある経営基盤が揺らぎかねない上、ただでさえ苦しい求人事情への悪影響も懸念されるためだ。関係者からは「福祉向上の長期的視点がない」との嘆きが漏れる。


<求職者も敬遠>

「サービスを削るわけにはいかない。物品を丁寧に扱うなど経費削減に知恵を絞っていく」。気仙沼市の特別養護老人ホーム恵心寮の吉田寛施設長が語る状況は切実だ。

震災の津波で全壊し、昨年7月に内陸部で建物を再建した。定員70人の全個室型に切り替えたものの、利用者は現在20人止まり。2階は全て空きベッドの状態が続く。

理由は人手不足だ。震災前47人だった職員は25人に半減した。求人への反応は鈍く、心労などで退職した職員の補充すらままならない。「感謝されることが多い仕事なのですが…」と千葉綾子主任介護士。せっかくの施設を生かし切れず、収入は伸び悩む。

介護職の求人にあえぐのは気仙沼の施設だけではない。主な沿岸被災地の有効求人倍率は表の通り。復興工事や工場再開などに伴って高止まりの状態が続く中、高齢者施設の苦闘ぶりが鮮明になっている。

岩手県内の介護施設でつくる県社会福祉協議会・高齢者福祉協議会の渡辺均会長は「報酬削減で業界の暗いイメージが広がり、求職者に敬遠されかねない」と心配する。


<好循環を築け>

削減の代償として、政府は月給を1万2000円アップできる加算金を打ち出した。一定の賃上げが可能になるとはいえ、業界に求人難解消への期待感は薄い。吉田施設長は「若者の福祉への関心を高めるなど、中長期的に人材を育てる対策が不可欠」と指摘する。

政府判断の背景には、2兆円に膨らむ全国の特養施設の内部留保がある。だが、宮城県沿岸部の運営法人理事長は「多くは改修に備えた積立金。新築や補修に充てた被災地の施設は経営が苦しくなる一方だ」と憤る。

震災で核家族化が進んだこともあり、被災地では介護サービスの需要増が見込まれる。立教大の森本佳樹教授(社会福祉学)は「被災地は全国の郊外宅地の近未来の姿でもある。国と自治体は、福祉が雇用と利益を生む好循環を築かねばならない」と話している。

[介護報酬]介護サービス提供事業者に支払われる公定価格。原則3年に1度改定される。政府は2015年度予算案で2.27%の引き下げを決定。マイナス改定は9年ぶり。報酬は利用者が1割を負担、残る9割は40歳以上が支払う保険料、国と地方の税金が2分の1ずつ充てられる。

■2015.1.25  ベトナム女性 福山で介護
◇経済協定で来日 「日本語で国家試験」目標
日本とベトナムの経済連携協定(EPA)に基づき、昨年に来日したベトナム人女性2人が介護福祉士を目指して、福山市東村町の特別養護老人ホーム「生寿園」で実務経験を積むため、勤務に励んでいる。2人は勉強熱心で、施設側も人材不足が続く中、「長く働いてもらえれば」と期待している。

働いているのは、グエン・ティ・トゥイさん(23)とファム・ティ・ホアさん(24)。昨年6月に来日し、千葉市内で日本語などの研修後、同8月中旬から勤め始めた。

EPAに基づく外国人介護福祉士候補者の受け入れは、2008年度に開始。原則4年以内の滞在中に介護施設で働きながら勉強し、日本語で国家試験合格を目指す。当初のインドネシアに、09年度にフィリピン、14年度にベトナムが加わった。

2人は母国で看護学校を卒業したが、安定した公立病院就職の道は狭く、介護施設などもないという。日本について、グエンさんは子どもの頃から、「ドラえもん」や「おしん」などのテレビ番組に親しみ、ファムさんも景色がきれいと好印象を持っていた。「母国で学んだ知識を生かせるのでは」と、受け入れ制度に応募した。家族も応援してくれたという。13年12月にハノイで行われた日本の受け入れ施設との面談会で、同園の桑原博昭施設長と面談。電子メールのやり取りなどを通じて意志を固めた。

現在は日中、食事やベッドから起きる際の介助などを担当。日本語も日常会話に支障はなく、女性入所者が髪形を変えると、「髪を切ったんですね。すてきですね」と話しかけるなど、すっかり溶け込んでいる。

グエンさんは「入所者に『声をよく覚えてる。遠くから来た人だね』と声をかけられ、覚えてもらえた」と喜び、ファムさんも「飲み物を渡すと、『ありがとう』と言われてうれしかった」と話す。畑を借りて大根や白菜を育てるなど、近所の人らとも交流を深めている。

方言や漢字の読みは難しく、職員に尋ねることも多いが、2人は「日本語をペラぺラ話せるように頑張り、試験に合格したい」と意気込む。桑原施設長も「真面目で明るく評判も良い。介護施設は人材の確保が難しい状況が続いているので、試験に無事合格し、ずっと働いてもらえれば」と期待している。2月頃からは、夜勤も担当する予定。

県によると、県内で現在、べトナムから、介護福祉士の候補者として実習中なのはグエンさんとファムさんら3人で、ほかにインドネシア人10人、フィリピン人6人。

■2015.1.26  ビル清掃や縫製の技術競う 県障害者技能競技
第37回県障害者技能競技大会が20、24の両日、佐賀市のポリテクセンター佐賀などであった。ビルクリーニングや縫製など6競技7種目に51人が出場し、日ごろ培った技術を競った。

事業所で働いたり、特別支援学校で学んだりしている16〜64歳が挑んだ。ビルクリーニング競技は弾性床と机上の清掃。机といすが置かれた4メートル四方で、モップ掛けなどの作業手順や所要時間を審査した。このほか接遇マナーをみる喫茶サービス、木箱をつくる木工、表計算を行うパソコンもあった。

大会は障害者の職業能力向上や雇用促進を目的に、佐賀障害者職業センターと県が開いている。障害者の就労先について主催者は「これまでは製造業中心だったが、近年は喫茶やビルメンテナンス、スーパーといったサービス業が増えている」と話した。

■2015.1.26  インフルエンザ:集団感染 入院患者1人が肝不全で死亡 山梨県身延町の病院
山梨県身延(みのぶ)町の身延町早川町組合立飯富病院(朝比奈利明院長、病床数86)は26日、患者や職員計23人が院内でインフルエンザに集団感染し、肝不全で入院していた男性患者(76)が死亡し、女性患者(80)が重症となったと発表した。

病院によると、最初の発症は15日。以後、患者18人、看護師や介護職員5人が高熱を出すなどしインフルエンザと診断された。男性患者は16日に発症し、同日死亡した。死因は肝不全だが、病院はインフルエンザの影響について「全くなかったとは言えない」としている。重症の女性患者は下血の治療を終え22日に退院したが、23日に発熱、意識不明となった。

病院担当者は「申し訳なく、反省している。マスクの着用、手洗いなどをさらに徹底していく」と話している。

■2015.1.26  社会福祉法人の地域公益事業 「無料」または「低額」と定義
厚生労働省は16日、社会福祉法人に義務づける「地域公益事業」の修正案を社会保障審議会福祉部会で明らかにした。

社会福祉事業や公益事業のうち「公的な給付のないもの」としていたが、「無料または低額な料金により行う公益事業」に改めた。余裕財産の使い道も、地域公益事業の優先順位は社会福祉事業に次いで2番目とした。これまでの委員の意見を反映した。厚労省は今通常国会に関連法案を提出する。

修正案は2段構えで社会福祉法人の公益性を担保するものだ。

まず、すべての社会福祉法人に無料または低額な料金により福祉サービスを提供することを法律上の責務とする。その実績を所轄庁に報告し公表することも義務づける。

次に、余裕財産(利益剰余金から必要経費を引いたもの)のある法人には、社会福祉事業または公益事業の新規実施・拡充計画(再投下計画)の作成を義務づける。同計画は、公認会計士や法人の評議員会、所轄庁の承認を経て決める。

同計画に位置づけるため昨秋の同部会で議論した「地域公益活動」(社会福祉事業や公益事業のうち公的な給付のないもの)は、無料または低額な料金による「地域公益事業」に改め、公益事業の一部とする。

同計画の内容は
@社会福祉事業
A地域公益事業
B A以外の公益事業の順で検討する。

社会福祉事業への再投下の例としては、施設の新設・増設、新サービスの展開、人材養成などを想定。公益事業の内容は厚労省が通知に例示しているが、厚労省は今回の法改正を機に見直す。

結果的に、@のみを実施する法人の再投下計画が承認されることはあり得る。その場合、政府の規制改革会議がすべての社会福祉法人に「社会貢献」の義務化を求めた趣旨とは開きが生じる可能性もある。

修正案には同部会の委員の意向が強く反映された。

厚労省は昨秋の同部会で、余裕財産のある法人は必ず地域公益活動を行い、それでもお金が余れば地域公益活動以外の社会福祉事業や公益事業に充てるよう提案した。

これに対し、余裕財産はまず社会福祉事業に充てるべきとする意見が複数の委員から上がった。地域公益活動を「公的な給付のないもの」とする定義案は、公金が少しでも入った事業は公益性が高くても地域公益活動に当たらなくなることが問題視された。

■2015.1.26  独居の親が歩行困難に 老健の利用を推奨
「在宅で1人暮らしをしていた母親が歩けなくなってしまい困っている」。先日、こんな相談が舞い込んだ。もちろん、まずは原因を突き止めることが一番だが、ただちに家族の支援が得られない場合は、老人保健施設(老健)の利用を勧める。


リハビリを目的とした施設にリハビリ回復期病院があるが、利用できる条件は「脳血管疾患の発症から2カ月以内」と限定的だ。これに対し、老健は介護認定1以上であれば誰でも利用できる。高齢者医療確保法に基づく施設で、医師の常駐が義務づけられ、看護師も多数常駐する。医療と介護の両方を兼ね備えた介護保険施設の一つだ。

本来は、退院後すぐの自宅生活が難しい人のために、短期間のリハビリを行って帰宅する目的でつくられた施設だが、最近は認知症を抱える人も多く利用している。

利用期間は原則3カ月、長くても6カ月までとなっているが、徐々に長期化しているのも事実だ。都市部のように利用希望者が多い場合には、この期間を過ぎると他の老健に転居する人が多い。リハビリは原則週2回、専門家が付いて20分ほど受けられるが、一人で機器などを扱える場合には、より柔軟に対応しているようだ。

費用は、居住費、管理費、食費、水道・光熱費、雑費など。所得によって食費や居住費は軽減措置が取られる。要介護3の人が利用する場合、4人部屋で月約8万円、個室になると17万円ほどが平均的な額だ。しかし、新しい施設では、個室で30万円近くになるところもある。

利用の際、医療機関にかかっている人は注意が必要だ。老健の場合、対応できない医療行為についてのみ、外部の医療機関を医療保険で利用できる。施設内の診療では、医薬品は老健の医師が処方し、介護保険内で適用されるため、高額の医薬品が必要な場合や頻繁に外部の医療機関を必要とする場合には入居が難しいこともある。

満期後も再度利用したい場合、退去時に申し込みをして帰り、自宅から通院や医薬品の処方を受けながら空きを待つ方法もある。<シニアライフ情報センター代表理事>

■2015.1.26  罪を繰り返す息子 /大阪
2年近く前のある夜、大阪市内を走るJR電車が線路上の異物をはねました。

異物は長さ約3メートルの棒でした。電車は脱線を免れ、けが人もいませんでしたが、大惨事になったかもしれません。

約2カ月後、女性(61)の自宅に警察から電話がありました。
「息子さんが事件を起こしました」

目撃情報などから、警察は女性の長男(35)を列車往来危険容疑で逮捕しました。長男はフェンスのすき間から棒を入れて線路上に置いたのです。
女性は警察に駆け付けて警察官に頭を下げました。そしてため息をつきました。

長男が警察の世話になるのはもう10回近くになります。
最初は20代です。マンションの玄関に水をまいたり、駅の便器にトイレットペーパーを詰め込んだりしました。
他人の家の新聞を何度も盗んだ際には、女性が1年分の新聞代を弁償しました。

4年前には洗濯物を盗んだ罪で初めて起訴されて有罪判決を受け、今回は執行猶予中に起こした事件でした。
長男は「イライラして棒を置いた」と供述しました。

女性によると、長男は小学生の時から勉強の成績が悪く、「落ちこぼれ」でした。
それでも毎日、元気に学校へ飛んで行く姿に目を細めていました。
しかし、専門学校を出て就職してから、人が変わってしまったようです。女性は次第に「もう息子と縁を切りたい」と思い詰めていました。

線路に棒を置いた事件の裁判で、長男は広汎性発達障害だとわかりました。
いたずらのような罪を繰り返すことに不審を抱いた弁護人が精神鑑定を求めたのです。長男の35年の人生で誰も気付かなかったことです。

裁判所は昨年夏の判決で再び執行猶予を付けました。刑務所よりも、障害者支援の施設で訓練を受ける方が更生しやすいと判断したのです。

長男は今、施設で梱包(こんぽう)の仕事をしながら訓練を受けています。
「障害があると知って複雑でしたが、二度と人に迷惑をかけることがないよう、息子と向き合いたいです」

知的障害や精神障害があり、罪を繰り返してしまう累犯障害者の社会復帰は、女性ら家族にとっても重い課題です。

■2015.1.26  芝浦工業大:民家を障害者交流施設に 大学院生3人が改修支援
相模原市中央区相生に4月、民家を改修した障害者施設がオープンする。この民家の改修設計にボランティアで取り組んでいるのが、芝浦工大豊洲キャンパス(東京都江東区)大学院で建築工学を専攻する学生たち。「障害者だけの限られた施設にとどまらず、近隣住民や子供たちにも開放した地域活性化の拠点にしたい」と張り切っている。

施設は、社会福祉法人「アトリエ」(磯部伸之理事長)が手がけるもので、障害者がさまざまな人たちと交流し、地域社会で自立した生活を営むことができるよう支援することを目指す。施設として築45年の木造2階建て民家(延べ床面積約101平方メートル)を使用するが、民家は外観も部屋も古く、大幅な改修が必要だった。

改修にあたり、同社会福祉法人のメンバーで、近くに住むアートディレクターでデザイナーの有井慎さん(28)が、プロジェクトのリーダーとしてデザインを担当。有井さんの知人で、同大学院でまちづくりなどを研究する田中直人さん(24)=修士課程2年=の紹介で、静岡県東伊豆町で古民家再生の経験を持つ守屋真一さん(24)、荒武優希さん(23)、門井慎之介さん(23)=いずれも建築工学専攻修士課程1年=の3人が改修設計を担当することになった。

守屋さんらは昨年夏、施設となる民家を2回訪れ、建物の構造や強度を調査。今月15日には豊洲キャンパスで、有井さんとともに改修作業を詰める打ち合わせをした。

完成する施設には、藍染めや機織り、茶の湯体験のアトリエ、作品展示のギャラリー、カフェのあるスタジオなど、地域住民と交流するパブリックスペースを用意する。有井さんは「スタジオには絵本や芸術関係の本を集めた図書館を設け、無償で貸し出す。茶室も設け、着付け体験や和三盆などのモノづくりや展示の場の交流スペースになる。年齢や階層を超え、互いに生きる喜びを得られる場になればいい」と語った。

■2015.1.26  「素直に感謝できる人に」 知的障害者ら祝う 坂井 /福井
知的障害がある人たちの成人を祝う「あなたの成人を祝う会」が25日、坂井市三国町緑ケ丘4の三国観光ホテルで開かれた。今年度成人を迎えた6人が出席。保護者や特別支援学校教諭ら関係者約40人に見守られ、大人への一歩を踏み出した。

祝う会は、坂井市心身障害児者福祉連合会(伊藤聖一会長)が開催。来賓の坂本憲男・坂井市長は、市が全国の「住みよさランキング」で毎年高評価を受けていることを紹介し「皆さんに『坂井市出身で良かった』と実感してもらえるよう頑張りたい」とあいさつした。

昨年度に成人を迎えた「先輩」女性(20)は「できることを精いっぱいやり、成長していこうとする気持ちを持つことが大人への第一歩。できないことも多いかもしれないが、諦めないで頑張りましょう」と激励した。

新成人代表の黒川大貴さん(20)は「周りの人に協力をお願いすることがたくさんあると思う。素直に感謝できる人になれるよう努力したい」と誓った。

■2015.1.26  卓球:障がい者らが 津でスポーツ大会 音出る専用球打つSTTも /三重
県主催の「障がい者スポーツ大会」の卓球部門が25日、津市一身田大古曽の県身体障害者総合福祉センターであった。

障がい者やボランティア同士の交流を深めようと年1回開かれ、今年で17回目。過去最多の131人が出場し、一般的な卓球と、転がると音が鳴る、金属の入った専用の球を打ち合う視覚障害者向けの「STT」(サウンドテーブルテニス)を行った。

卓球で大会に参加するのが5回目という亀山市の会社員、宮村正秋さん(59)は「普段から練習を重ねて大会を迎えた。今年こそ優勝したい」と意気込んでいた。

運営にはボランティア約50人も携わり、審判員を務めた高田高校卓球部の田中真優主将(17)は「選手の皆さんから笑顔で『ありがとう』と言われるとやりがいを感じる」と話していた。

成績上位の4人は10月に和歌山市で開かれる「第15回全国障害者スポーツ大会」に出場する。

■2015.1.26  「介護福祉士」取得しても待遇は… 仕組みは次々変更
「介護福祉士」の資格は、待遇を大きく変えてはくれなかった。埼玉県内の介護福祉士の男性(55)は昼はデイサービス事業所に勤め、夕方からはスーパーでアルバイトをする生活が続いている。

介護福祉士は、介護の専門的な知識や技術を持つ人に与えられる国家資格で、1989年に始まった。介護職員の中核になって高齢者を世話する人たちだ。

男性は機械の整備・販売業を営んでいるが、業績が伸び悩んで厳しくなり、約5年前から介護職員として働くようになった。介護福祉士は3年の実務経験があれば受けられるため、昨年春に国家試験を受けて合格した。

ところが、資格をとっても給料は変わらなかった。デイサービス事業所からの月給は手取りで10万円ほど。これでは夫婦2人で暮らせないため、スーパーのアルバイトで月に手取り5万円ほどを稼いでいる。

「実務経験を積み、試験も9割正答したが、なんのための資格かわからない。もっと評価される資格にならないと意味がない」。男性はそう言う。

昨年春に試験を受けたとき、会場に集まった受験者は同じ年配が多かった。若い人は少なかったという。

介護福祉士は国家試験のほか、専門学校などの介護の養成学校を卒業すれば資格がとれる。厚生労働省の検討会は、介護福祉士の質を一定以上にするため、2017年から卒業生にも国家試験を義務づけることができるかを議論してきた。

だが、昨年8月、先延ばしする方針を決めた。関係者によると、養成学校などから、介護を学ぼうとする若い人がさらに減ってしまうという声が出たという。

■「段位」登場に現場困惑

資格は本来、就職や昇給に役立つものだ。だが、資格づくりや仕組みの変更ばかりが目立ち、逆に現場をとまどわせる例もある。

12年秋、東日本大震災の被災地で「キャリア段位制度」が始まった。介護職員の技術や能力を七つの段位(レベル)に認定する仕組みだ。

しかし、その年、当時の民主党政権による「事業仕分け」で早々に「廃止」という結論が出た。すでに介護福祉士などの資格があり、ちがいがはっきりしなかったからだ。

それでも段位制度は廃止されず、13年秋からは全国に広がった。入浴や食事、トイレの介助など実技の評価に重点を置くようにして、これまでの資格とすみわけることにしたという。

段位を認定するのは、社団法人のシルバーサービス振興会(東京都)だ。元厚労事務次官の水田邦雄氏が理事長を務めている。

段位はまず、介護施設の職員が振興会の講習を受けて評価者になる。この評価者がほかの職員の仕事ぶりをみて段位を決め、振興会に認定してもらう。

東北地方にある介護施設では、評価者になった職員が昨年5月から同僚1人の評価を始めた。3カ月で終わる予定だったのに、半年以上たったいまも終わるめどさえたたない。

チェックするのは約150項目に及ぶ。たとえば、食事の介助では献立を説明するなどの声かけ、食べたいものを聞いているか、食事や水分の量の記録をしたかなど多岐にわたる。

評価者は自分の仕事をこなしながら、同僚について回ってチェックしなければならない。「ただでさえ人手が足りず、評価の時間をとれない。休日を使って評価することもある。約80人の職員の評価には何年かかるんだろうか」という。

厚労省は、職員の給料を引き上げるなどの待遇改善の条件を満たした施設には、介護報酬に加算をしている。その条件のひとつが段位制度の利用だ。

14年度は、評価者の講習費用などのために振興会に約1億5千万円の予算をつけた。15年度からは予算をつけず、講習費は施設が負担する。振興会に段位を認定してもらうのも、1回につき7100円かかる。

しかし、段位は七つあるのに、いまのところ具体的な基準が整っていて認定を受けられるのは下から4段階までだ。評価に手間もかかるので、振興会が認めた評価者は約8千人いるのに、段位を認定された人は200人余りしかいない。

「段位に応じて給料を上げようにも、手間がかかって昇給できないようでは本末転倒だ」。東京都内にある特別養護老人ホームの施設長はそう指摘する。

■2015.1.26  小児患者に不正麻酔問題、東京女子医大に立ち入り検査
東京女子医大病院で人工呼吸器をつけていた小児患者らが原則禁じられている麻酔薬プロポフォールを使用された後に死亡した問題で、厚生労働省と東京都は26日、医療法に基づき同病院に立ち入り検査に入った。この問題では昨年6月にも立ち入り検査をした。

同病院では2013年12月までの6年間、集中治療室でプロポフォールを使用した小児11人が死亡。病院が組織した外部評価委員会は昨年12月、このうち5人はプロポフォールの使用が「悪影響を及ぼした可能性を否定できない」とした。

同病院は「集中治療室での情報共有の徹底」「ハイリスク薬の適正使用の管理」などの安全管理体制の強化策を公表。厚労省や東京都は立ち入り検査で、これらの対策がとられているかを確認する。

■2015.1.26  狭い玄関でも使えるリフト「リーチ」
狭い場所でもOK。モルテンの据え置き型コンパクトリフト
医療・福祉機器メーカーのモルテンは2月2日、狭い玄関にも設置できるコンパクトリフト「リーチ」を発売する。

「リーチ」は“玄関の上がりかまちにスロープが使えない”、“狭くてリフトが使えない”という段差問題を解消するための、据え置き型のコンパクトサイズのリフトである。

これまでは狭いスペースの玄関の場合、車いすに乗せた高齢者を数人で抱え上げていた。「リーチ」なら車いす1台分のスペースさえあれば簡単に設置でき、ワンタッチで上下移動できるので、一人の介護者でも対応できる。

介護者一人でも対応できるペダル式
高さ40センチまでの上がりかまちに対応でき、高さの調節は自由。セット時のサイズは長さ110センチ。幅は100センチ、107センチ、114センチの3段階に調節することが可能だ。

上げ下げには電気を使わず、ペダルを足で軽く踏んで移動させる。電気を使わないのでコンセントがなくても利用可能。電気代も不要だ。

素材はスチールで本体の重量は62キロ。耐荷重は150キロとなっている。希望小売価格は25万4,880円(税込み)。

株式会社モルテンのニュースリリース
http://www.molten.co.jp/corporate/jp/news.pdf

■2015.1.27  病院でインフル集団感染、男女4人死亡 秋田・鹿角
秋田県鹿角市十和田大湯の大湯リハビリ温泉病院で、入院している高齢者がインフルエンザに集団感染し、27日までに80〜90代の男性1人と女性3人が相次ぎ死亡したことがわかった。

病院によると、最初の患者は6日に発症し、その後感染が拡大したという。

県大館保健所が27日午後会見し、感染拡大の詳しい経緯などを発表する。

病院は医療法人楽山会が運営し、内科、整形外科、リハビリテーション科、精神科、歯科などの診療のほか、介護療養型医療施設(定員42床)を併設している。介護療養型医療施設は多床型で、2人部屋が3室、4人部屋が9室ある。

■2015.1.27  外国人介護職、入国時は日本語能力「4級」で可
外国人技能実習制度に介護分野を加える方針を決めていた厚生労働省は26日、実習生の受け入れ要件などを盛り込んだ報告書を有識者検討会に提示、大筋で了承を得た。

受け入れは2016年度に始まる見通し。

焦点だった実習生の日本語力の要件が当初より引き下げられ、「ハードルを低くして多くの実習生を入れたい」という国の意向が反映された形だが、介護の質の確保に関する懸念も出ている。

報告書では、具体的な要件として、国際交流基金などが実施している日本語能力試験の3級(日常的な日本語をある程度理解できる)程度を基本としつつ、入国時(1年目)は、より簡単な4級程度とした。2年目も働き続ける場合には、3級程度を要件にした。

■2015.1.27  外国人の介護実習生、日本語条件は「小学校低学年程度」
厚生労働省は26日、外国人が日本で働きながら技術を学ぶ技能実習制度で受け入れる介護人材について、その条件とする日本語の能力を、入国時点で「基本的な日本語が理解できる」レベルにする方針を決めた。小学校低学年程度にあたる能力という。

主な日本語の能力試験は読む力と聞く力を試し、5段階で認定している。厚労省の有識者検討会はこれまで、小学校高学年程度とされる第3段階の「日常的な場面で使われる日本語をある程度理解できる」レベルを軸に検討してきた。

ただ、介護業界の委員から、実習後に帰国する外国人にあらかじめ求める能力としては高すぎるとの意見が出ていた。さらに実習1年目は指示された作業をその通りやることが中心と想定されることもふまえて再検討。26日の議論とりまとめの検討会で、入国時点では1段階レベルが低い小学校低学年程度の試験に合格すれば受け入れを認めることにした。

ただ実習2年目を迎える時に高学年程度のレベルに合格することを求め、不合格なら帰国しなければならないようにする。厚労省は2015年度中の受け入れ開始を目指している。

検討会はこのほか、海外からの留学生が介護福祉士の資格を取得した場合、介護現場で働ける新たな在留資格を与えるべきだとの意見もまとめた。

■2015.1.27  「知的障害者の創作・感性が刺激に」 滋賀の福祉施設で芸術家が交流
滋賀県東近江市上中野町の障害者福祉施設「きらり庵」で、施設に通う知的障害者と県内の芸術家らが、創作活動を通して交流を続けている。制作に打ち込む障害者の無心の姿が芸術家に新鮮な刺激を与え、障害者側もヒントをもらい制作の幅が広がるなど、相乗効果が生まれている。2月には、交流を通じて生まれた作品の展覧会を共同開催する。

知的障害者ら約10人が通う同施設では、通所者が絵を描いたり手芸したりと思い思いの創作を楽しんでいる。平成25年7月から、県内で活動する画家や版画家ら6人がほぼ毎週月曜に交代で施設を訪れ、障害者の制作の様子を見学したり、手助けしたりしている。

ある日の作業場で、通所者がクチナシの枝を手に取って絵を描いていた際、「この枝を切ったから木は死んだんかな。せめて絵で生かしてあげたいな」と言いながら背景の色使いに悩んでいた。これに気付いた画家の吉田友幸さん(31)が思いをじっくり聞き、「白やとクチナシが際立つよ」と助言した。

吉田さんは「こんな線は自分にはとても描けない、と驚かされることもしばしば。彼らの制作に打ち込む姿勢はとても刺激になる」と交流の効果を口にした。

障害者の創作活動が近年、正規の教育を受けていない感性のままの芸術「アール・ブリュット」として注目される中、彼らの活動を充実させたいと望む福祉施設関係者は少なくない。

しかし、職員は芸術分野に疎く、手法に悩むケースが多い。きらり庵では、芸術関係のNPO法人で働いた経験を持つ職員が、個人的なつながりで芸術家らに呼びかけ、今回の交流活動を実現させた。

芸術家らは、個々の障害者の特徴や性格を観察し、接し方を考えた。絵を描くのが好きな人には、題材となる季節の花を渡したり、今とは別の画材を提案したり。切り絵に打ち込む人には、作業がスムーズに進むよう手順を教えたりした。

障害者側も、芸術家と接することで創作活動への意欲が湧き、手がける作品に幅が出てきた。

こうした取り組みの成果を披露しようと、近江八幡市永原町上の「ボーダレス・アートミュージアムNO−MA」で2月4日から、展覧会「月曜日のきらり庵」が開かれる。交流に参加する版画家の野田拓真さん(36)は「これまで福祉施設に出入りする機会はほとんどなかった。一緒に過ごした楽しい時間の形を展示で表現したい」と開催を心待ちにしている。

■2015.1.27  おにっこハウス拡大、2月3日新装オープン 熊谷で障害者らが運営
熊谷市板井のNPO法人「おにの家」が運営する地域活動支援センター「おにっこハウス」が移転し、規模を拡大して2月3日に新装オープンする。敷地外にあったみそ加工所も併設し、一体感のある施設として生まれ変わる。

おにの家は1987年、障害者施設の元職員と障害者が小さなみそ屋さんを開業したのが始まり。「心身のハンディを問わず働く場を提供する」をモットーに掲げ、12人の障害者が働いている。

地域に溶け込みたいという思いを込め、童話「泣いた赤鬼」から命名。手作りみそや地卵の販売などを行っている。

新施設は現施設の東約500メートルに立地。約5700平方メートルの敷地に、木造平屋建ての喫茶レストラン兼農産物販売所(約300平方メートル)と、みそ加工所(約230平方メートル)が建ち並ぶ。昨年4月に着工した。

喫茶レストランは屋内37席のほか、屋外のウッドデッキにも12席を設けた。みそ加工所はこうじ室に自動温度管理設備を導入したほか、みそ仕込みなどが楽しめる体験教室も。地元野菜の取り扱いも充実させるという。

尾島茂施設長は「『おにっこ』の名称にちなみ、節分の日にオープンすることにした。移転を機に、より地域に身近に感じてもらえる施設を目指したい」と話している。

営業時間は午前10時〜午後5時半。年末年始は休業。

■2015.1.27  乗馬施設が障害がある子の「放課後等デイサービス」事業
島根県浜田市金城町久佐の乗馬施設・かなぎウエスタンライディングパークは、障害のある子どもを対象とした「放課後等デイサービス」事業を始めた。施設の特色を生かして、学校の放課後や休日に、馬の世話や乗馬を通して療育を行うホースセラピーなどを実施する。同市は島根県内の自治体で唯一、同デイサービスを行う事業所がなく、子どもの能力向上や家族の負担軽減に効果が期待される。

同パークは1995年に開業。業績不振で指定管理者の第三セクターが解散し、2012年度は乗馬体験などの営業を休止していたが、同町七条の社会福祉法人いわみ福祉会が新たな指定管理者になり、13年4月に営業を再開した。障害者福祉の事業所として、施設運営に障害者も雇用している。

同デイサービス事業は、障害児の生活能力向上や社会交流の促進を図るのが目的で、今月1日付で県の指定を受けた。

ホースセラピーは、馬との触れ合いを通じてコミュニケーション能力が身に付くほか、心療や身体的な効果もある。同パークによると、餌やりや厩舎(きゅうしゃ)の掃除、乗馬などを行うほか、状況を見てグループワークも実施する計画。

平日の放課後と休日の両方で利用でき、対象は身体、発達、知的などの障害のある小学生から18歳まで。利用には各自治体で発行される障害者認定の受給証明が必要になる。

これまでもホースセラピーを目的に同パークを利用する子どもたちはいたが、放課後等デイサービスとして運営することで助成があり、利用料を10分の1程度に抑えられるという。同パーク管理者の大石寿さん(55)は「家族の負担を軽減し、ホースセラピーの普及にも努めていきたい」と話した。

■2015.1.27  京都・宮津、インフルで1人死亡 ケアハウスで10人発症
京都府宮津市日置で複合型老人福祉施設を運営する社会福祉法人「成相山青嵐荘」は27日、施設内の「ケアハウス青嵐荘」でインフルエンザA型の集団感染があり、入所する82歳の男性1人が死亡したと発表した。ほかに80〜90代の入所者9人が発症、うち2人は現在も入院している。

法人によると、計10人は23日から26日にかけて発熱やせきの症状を訴え、病院で受診しインフルエンザA型と分かった。亡くなった男性は、26日午後に発熱を訴え、病院で受診し施設に戻ったが、翌27日朝に亡くなった。

ケアハウスは27人が入所。発症した10人は予防接種を受けていた。京都府丹後保健所は、発症していない入所者や職員も治療薬を服用するよう指導した。

■2015.1.27  おにっこハウス拡大、2月3日新装オープン 熊谷で障害者らが運営
熊谷市板井のNPO法人「おにの家」が運営する地域活動支援センター「おにっこハウス」が移転し、規模を拡大して2月3日に新装オープンする。敷地外にあったみそ加工所も併設し、一体感のある施設として生まれ変わる。

おにの家は1987年、障害者施設の元職員と障害者が小さなみそ屋さんを開業したのが始まり。「心身のハンディを問わず働く場を提供する」をモットーに掲げ、12人の障害者が働いている。

地域に溶け込みたいという思いを込め、童話「泣いた赤鬼」から命名。手作りみそや地卵の販売などを行っている。

新施設は現施設の東約500メートルに立地。約5700平方メートルの敷地に、木造平屋建ての喫茶レストラン兼農産物販売所(約300平方メートル)と、みそ加工所(約230平方メートル)が建ち並ぶ。昨年4月に着工した。
喫茶レストランは屋内37席のほか、屋外のウッドデッキにも12席を設けた。みそ加工所はこうじ室に自動温度管理設備を導入したほか、みそ仕込みなどが楽しめる体験教室も。地元野菜の取り扱いも充実させるという。

尾島茂施設長は「『おにっこ』の名称にちなみ、節分の日にオープンすることにした。移転を機に、より地域に身近に感じてもらえる施設を目指したい」と話している。

営業時間は午前10時〜午後5時半。年末年始は休業。

■2015.1.27  福岡県経営者協会会長 竹島和幸氏  労働制度、時代に対応した改革を
間もなく春闘が本格的に始まりますが、労働を取り巻く環境は、だいぶ上向いています。福岡県では、昨年10月の有効求人倍率が1・01倍に達し、(昭和38年の統計開始以来)初めて求人数が求職者数を上回りました。

とはいえ、現状に批判的な声もあります。例えば昨年12月の衆院選では、野党は「増えたのは非正規雇用ばかりだ」と大合唱でした。しかし、「非正規が良くない」と単純に決めつけるべきではありません。

企業業績が回復したことで仕事が増えます。この結果、60歳で定年退職した人が嘱託で働き続ける。あるいは、主婦業と両立できるパートが増え、働きに出る人もいるでしょう。これら積極的な動きも、「非正規」に分類されます。

働く人が求める労働の形態は多様化しているのです。この流れの中で政府は、働く時間を自分で管理する代わりに残業代の支払いなどを適用しない「ホワイトカラー・エグゼンプション」や、勤務地や職種、時間などを限定して働く「限定正社員」の導入・普及を進めています。この動きに対し「残業代ゼロ法案」「正社員の名目で安く働かせる制度だ」など批判もありますが、私は肯定的にとらえています。

労使関係のルールは、時代に合わせて作るべきなのです。

福岡県経営者協会の役割は、こうした新たなルール・制度について、県や労働局と連携しながら地場企業に周知徹底することです。経営者や人事・労務担当者を対象に、定期的な研究会や弁護士による無料法律相談会を実施したり、労働法制改正に合わせたセミナーを開いています。



今年は経済再生のラストチャンスの年です。

景気回復の勢いは、昨年4月の消費税増税後、失速してしまいました。ここを乗り越えなければ、日本は貧しい国になってしまう。

平成29年4月の再増税までに、賃上げにより個人消費が拡大し、物価が上がり、企業業績も上向くという好循環を生み出さなければいけません。昨年の衆院選直後には、政府、労働界、経済界の代表による「政労使会議」が開かれ、春闘に向けて「経済界は賃金引き上げに向けた最大限の努力を図る」という合意文書がまとまりました。

大半の企業経営者はその重要性を強く認識しており、業績のよい企業は当然賃上げをすべきです。

とはいえ、企業それぞれの事情もあります。福岡県内で事業者数の97〜98%を占める中小企業には、アベノミクス効果はまだまだ行き届いておらず、賃上げできる状況にない企業も多いでしょう。

安倍政権は今年の成長戦略の目玉に「地方創生」を掲げています。創意工夫に富み、意欲のある地方の中小企業を支援し、賃上げできる状況にしてほしい。もちろん、経営者も努力しなければなりません。

 

成長戦略のもう1つの柱が「女性の活躍推進」です。

県経営者協会は昨年9月、北欧と英国の労働事情を視察しました。現地の経営者団体や行政にさまざまな話を聞きましたが、印象に残っているのが、女性の社会進出が目覚ましいノルウェーの(エルナ・ソルベルグ)首相の言葉です。

「女性の労働の価値は、(産油国である)ノルウェーの石油資産に相当する」。その通りだと思います。労働力は国の富なんですよ。

私が会長を務める西日本鉄道では、結婚・出産や介護を理由に辞めた女性が元の職場、待遇で戻れるという制度を導入しました。県経営者協会としても、県の子育て支援策に協力・参加するなどして、女性が働きやすい環境づくりに取り組んでいきます。

ところで、最大の成長戦略は原発再稼働ではないでしょうか。海外に(火力発電用の燃料費として)年間3・6兆円が流出しています。原発が再稼働すれば、このお金は国内に落ちるのです。しかも、環境への負荷も小さい。再増税までに経済再生を確実なものにするには、安全が確認されたすべての原発の有効活用が不可欠です。

私たち団塊の世代は若い頃、「明日の日本は今日より良くなる」と希望を持って働いていました。今の若い人たちにはその希望がない。今こそ経済再生を果たし、夢と希望を持って働ける時代に変えるときではないでしょうか。

                   

【プロフィル】竹島和幸

たけしま・かずゆき 大分県日田市出身。慶応大商学部卒業後の昭和46年、西日本鉄道入社。主に経理や都市開発畑を歩み、平成20年6月に社長、25年6月に会長に就任した。労務問題などに関する経営課題解決に取り組む福岡県経営者協会の会長には、25年4月に就任した。九州経営者協会会長も兼任する。

■2015.1.28  監査人設置を義務付け=社会福祉法人の改革案
自民党の厚生労働部会社会福祉法人改革プロジェクトチーム(PT、座長・福岡資麿参院議員)は28日、高齢者施設や保育所を経営する社会福祉法人について、経営の透明性向上に向けた改革案をまとめた。大規模法人に会計監査人の設置を義務付け、内部留保は地域の福祉サービスに充てるよう提言した。

社会福祉法人は税制上の優遇措置を受けながら、支出管理が曖昧だったり、家族経営で組織が閉鎖的だったりする問題が指摘されていた。 

■2015.1.28  田川市の社会福祉士 岩永さん 女子プロボクサー合格 [福岡県]
筑豊ボクシングジム(田川市糒)に所属する田川市の社会福祉士岩永有紗さん(25)が昨年12月、プロテストに合格し、同ジム初の女子プロボクサーになった。デビュー戦は決まっていないが「ボクシングに興味を持ってくれる女の子が増えるように格好良くKOで勝ちたい」と練習に励んでいる。

大牟田市出身の岩永さんは、三池高の柔道部で主将を務めた。県立大を卒業後、筑豊地区の介護施設に就職。ストレス発散のためにキックボクシングを始めたが、「本気で戦うリングに上がりたい」との気持ちが高まり、昨年5月、プロボクサーを目指して同ジムに入門した。ミット打ちや男子選手とのスパーリングをこなし、出勤前には5キロを走り込む。

身長161センチ、体重40キロ台の岩永さんは女子最軽量級のアトム級だが、昨年12月に山口県下関市であったプロテストでは階級が上の選手と対戦。KOは奪えなかったものの、2ラウンド(各2分)のスパーリングで丁寧なワンツーを繰り出し、審査員から高い評価を受けた。

プロ一本で食べていくのが理想だが、新人女子のファイトマネーは6万円程度が相場とされる。当面は社会福祉士と二足のわらじを続けるつもりだ。岩永さんは「化粧やおしゃれにも興味があるけど、今は練習が一番。いつかチャンピオンになりたい」と夢を語った。

■2015.1.28  事故から30年 25人の死「心に刻む」 犀川スキーバス転落 現場で献花
長野市信更町の犀川ダム湖に日本福祉大(愛知県)のスキーバスが転落し、学生ら25人が死亡した事故から30年となった28日午前、同大学の関係者らが、若い命が失われた事故現場を訪ね、静かに手を合わせた。

事故は1985年1月28日午前5時45分ごろに起きた。下高井郡山ノ内町の志賀高原に向かっていた三重交通(津市)の大型バスが国道19号からダム湖に転落。21人が自力脱出したが、運転手2人と教員1人を含む25人が死亡した。

この日は午前9時ごろ、当時バスに乗っていた職員ら大学関係者6人が近くの正源寺で法要を行い、事故現場の慰霊碑を訪れて献花した。

犠牲になった山形結可さん=当時(19)=の高校の同級生で、同大学学長補佐の原田正樹教授(49)は「こんなに冷たいところで川に落ちたのかと、いたたまれない気持ちになる。今後も事故を心に刻んでいきたい」と話した。

日本福祉大学の美浜キャンパス(愛知県美浜町)でも同日午後、慰霊碑がある「友愛の丘」で追悼集会が開かれた。

■2015.1.28  広島)福山にも性的少数者の自助グループ発足
「LGBT」と言われる同性愛や両性愛、性同一性障害などセクシュアルマイノリティー(性的少数者)の悩みを抱える人の居場所を作ろうと、福山市の有志が自助グループを結成した。昨年8月の結成後、メンバー10人ほどが定期的に食事会をしたり、勉強会を開いたりしている。

グループ名は「『かも?』Cafeびんご」(かもカフェ)。毎月第2日曜に定例会を開いているほか、「朝かも」「昼かも」と名付け、福山駅前を中心に食事会も催している。メンバーは20〜40代の学生や社会人。いずれも性別について「戸籍」「心」「恋愛対象」が異なっていたり「中性」だったりする。

かもカフェは、相手探しの出会いの場の提供や社会運動をする場ではなく、交流による「居場所づくり」にこだわっている。他のメンバーを否定する言動や秘密を明かすことは禁止。その代わり、「『セクマイ』(セクシュアルマイノリティー)かも?」と思う人や、支援をしたいと思う人は誰でも参加できる。

■2015.1.28  免許センターに看護師 県警、認知症疑い発見へ
県警と県は2月から、県運転免許センター(菊陽町)に看護師2人を配置し、免許更新時の運転適性相談でドライバーに認知症の症状がないかを早期に発見する取り組みを始める。認知症が原因とみられる交通事故防止が狙い。県警運転免許課によると、免許センターへの看護師配置は全国初という。

運転適性相談は認知症をはじめ、てんかんや統合失調症などの疑いがある人が免許を更新する際、警察職員が実施している。

ただ、警察職員だけでは病状把握に限界があるため、医療の専門知識を持つ看護師を配置。看護師は警察職員と一緒に相談を受け、認知症などが疑われる人には病院の受診を促し、免許の自主返納を勧めることもあるという。

看護師2人は既に免許センターで研修を受けており、2月2日から相談業務に当たる。任期は1年。

県警運転免許課によると、2013年に全国で起きた75歳以上のドライバーによる死亡事故は458件で、このうち3割以上が認知機能の低下が原因とみられる。

県内では昨年、75歳以上のドライバーが第1当事者となった事故は15件発生し、うち8件に認知症の疑いがあったという。同課は「看護師を配置することで一人一人の病状に応じて適切な判断、助言をしていきたい」と話している。

■2015.1.29  障害者の春を泣かすな 特別支援学校で卒業前のアセス実施 横浜の関係者に懸念強く
特別支援学校卒業生の春を泣かすことになるのではないか…。
横浜市内の福祉関係者から不安の声が上がっている。厚生労働省は2015年度から、特別支援学校高等部3年生が卒業後に就労継続支援B型事業所を利用する場合、在校中に就労移行支援事業所でアセスメントを受ける必要があるとした。生徒数が多い同市では生徒の障害特性に合った事業所が見つかるのか懸念が強い。関係者はアセスメントへの疑問、不安を抱きながら準備を急いでいる。

障害者の福祉的就労の中心を担っている非雇用型の就労継続支援B型事業所は、一般企業や雇用型のA型事業所で就労を継続できなかった人、就労移行支援事業所でB型が適当と判断された人らが利用する。特別支援学校高等部卒業生の場合は、在校中に就労移行支援事業所でアセスを受けることが厚労省から求められていた。アセスメントは最低3日間、2カ月以内の範囲で作業実習などを行うとしている。

ただ、アセスメントには就労移行支援事業所の整備や学校、事業所、市町村の連携が欠かせない。厚労省も実施を猶予する経過措置を続け、自治体からも「特別支援学校在学中の進路指導や実習の過程などでB型の利用が適当と判断できる場合も多くあり、一律に就労移行支援の利用を義務付けることは本人や保護者にとって大きな負担になる」(東京都)といった強い異論も出ていた。

しかし、厚労省は13年4月に経過措置を14年度末で終了するとの通知を行い、現在のところ、通知に変更はないとしている。



■不安視
厚労省が経過措置を再延長する可能性も考えられたことや情報不足などもあり、対応が遅れた自治体も出た。関係者の不安が表面化したのが横浜市だ。

県内の特別支援学校高等部(46校)の15年度の3年生(現2年生)は約1440人だが、半数の約720人が横浜市内在住。13年度の3年生を見ると、同市内在住約670人のうち約80人がB型事業所の利用者になった。

市内の県立特別支援学校の進路指導担当教諭は「B型利用希望者のほか、一般企業への就労、A型利用を希望する生徒も、希望がかなわなかった場合にB型を利用する可能性があり、アセスメントが必要。かなりの数の生徒がアセスメントを受けなければならない」と話す。

一方、市内の就労移行支援事業所は35事業所。事業所で作業内容が異なるほか、南、旭区には事業所がないなど所在地の偏りもある。支給決定など実務担当は区になる。

ある事業所の職員は「精神障害者へのパソコン指導が中心で、知的障害への対応は難しいという事業所もある。また、定員をオーバーして受け入れるとペナルティーがあるので、空きがないと受け入れられない」と語る。空きができるかは利用者の状況次第のため、予測は難しいという。

このため、知的、肢体、視覚など生徒の障害特性を基に、定員の空きに合わせて事業所とスケジュールを組むのは難航も考えられる。市内の特別支援学校高等部は県立8校、市立11校、国立1校、私立2校の計22校。県立の分教室も入れると30校にもなる。市外の学校に通学している生徒もおり、学校間の調整も複雑だ。

進路担当教諭は「調整のための明確な仕組みも決まっておらず、情報も入ってこない。きちんとスケジュールを作れるのか不安だ。本当にできるのか、保護者からも不安の声が出ている」と現状を語る。



■未知数
今後の対応について市障害支援課は「区ごとに学校との連携を図り、生徒一人一人の受け入れ先を探し、対応を決めていくことになる。卒業と同時にスムーズに進路が決まるようしたい」と述べ、関係機関の連携、体制づくりを急ぐとしている。市教委特別支援教育課も「一番の課題はスケジュール。関係機関と連携して情報共有を進め、先生、保護者が混乱しないようにしたい」と厳しい表情だ。

市は26日、市内の就労移行支援事業所に対する説明会を行った。出席した事業所の担当者は「マッチングがうまくいくのか疑問がある。全く未知数だ」と述べ、アセスの必要性への疑問や、市の準備態勢への不安を語った。



施設多く準備進む 藤沢市「情報交換密に」
一定の人口規模、生徒数、事業所数、これまでの福祉施策などを背景に、準備が順調に進んでいる自治体もある。

人口約42万人の藤沢市では、市内在住で2015年度の特別支援学校高等部3年生は約60人。市内の県立、市立の2校のほか、横浜、鎌倉、茅ケ崎市など近隣の学校に通っている。毎年数人が卒業後にB型施設を利用しており、今春の卒業生では3人という。藤沢市は交通の要衝ということで福祉施設が多く、就労移行支援事業所も9カ所ある。

市では毎月1回、市内在住の生徒が通う特別支援学校の進路担当教諭と市ケースワーカーの会議を開いており、実習の調整などを行っていた。市障がい福祉課は13年4月の通知を受け、会議を通じて「できるだけ就労移行支援事業所のアセスメントを受けてからB型を利用するようお願いしてきた」という。このため、すでに13年度から、B型事業所利用を希望する3年生数人が在校中の3月、または卒業後すぐの4月に就労移行支援事業所でアセスを受ける体制になっているという。

同課は「関係者の情報交換を密に行ってきたことと就労移行支援事業所が多くあり、定員に余裕もあることに助けられている。就労移行支援事業所のない市町村もあり、そこでは大変だと思う」と話した。



◆特別支援学校高等部3年生向けのアセスメント 
特別支援学校高等部3年生に求められたアセスメントは、進路の一つである就労継続支援B型事業所の利用を厳格化する狙い。生徒の一般就労の可能性を見極め、それが困難と判断された場合にのみB型への進路を認める。

障害者への訓練を行う就労移行支援事業所で、最低3日間から基本1カ月、最長2カ月までの実習を行い、作業能力、作業態度、社会性などを観察し評価する。
就労継続支援事業所は一般企業などで働くことが困難な障害者に働く場を提供し、必要な訓練を行う施設で、
A型(雇用型)は働くことを中心に最低賃金が適用される。
B型(非雇用型)は、一般企業やA型での就労が困難だった人の日中の居場所を兼ね合わせた施設で、最低賃金は適用されない。

■2015.1.29  堺市役所食堂が障害者の働く場に 「笑顔でおもてなし」意欲
堺市役所地下1階の食堂を社会福祉法人「コスモス」(同市東区、河野直明理事長)が運営することになり28日、竹山修身市長らが出席して内覧会が行われた。「森のキッチン」の名称で2月2日にオープン。食のプロたちの協力を受けながら障害者がキッチンやフロアに立ち、ランチやカフェメニューを提供する。

「森のキッチン」では、障害者7人を含む14人が勤務し、障害者は盛りつけや品出し、コーヒーの提供などを行う。営業時間は平日午前10時〜午後5時。席数は82席。メニューは日替わり定食(650円)2種類やめん類、どんぶり物、カレーなど。クッキーを含む授産品の販売もある。

内装は森のイメージに全面リニューアルし、窓際には子供が遊べるスペースも設けた。

また、食材などは地元農家でつくる「堺南いきいきファーム推進協議会」が地元産野菜を提供し、上島珈琲貿易(堺市美原区)がコーヒーマシンを寄贈。大阪市立大学生活科学部の管理栄養士がメニューを開発、人気菓子工房「T・YOKOGAWA」(和泉市)のシェフパティシエが店内販売商品の開発に協力する。

河野理事長は「障害者の社会参加の機会を逃したくないとの声に押された。おいしかったと思っていただけるよう頑張りたい」とあいさつ。聴覚に障害がある松浦佐衣子さん(41)は「配膳などは経験がありますが、接客は初めてでドキドキ。笑顔のおもてなしを心がけます」と話した。

堺市では、平成16年の現庁舎完成から食堂を運営してきた事業者が採算面を理由に昨年11月末で撤退。市が障害者を雇用することを条件に、賃料を大幅に下げるなどして事業者を公募していた。府内自治体では、松原市や河内長野市でも食堂を障害者雇用の場にしている。一方、東大阪市では、2業者が撤退するなど苦戦している。

■2015.1.29  障害者アート世界に発信 県、滋賀などと有志タッグ
鳥取県は2020年の東京五輪・パラリンピックに絡め、東京都や滋賀県など都道府県有志と連携した障害者の芸術文化振興に取り組む。五輪憲章にも規定され、開催国で展開される文化プログラム「カルチュラル・オリンピアード」で、障害者アートの魅力や可能性を世界に発信することを目指す。昨年県内で開催した「全国障がい者芸術・文化祭とっとり大会」の経験を生かす。

カルチュラル・オリンピアードは、スポーツだけでなく文化芸術の振興も同時に図るため、前大会終了後から4年間に展示や舞台公演などが行われる。

鳥取県は障害者の絵画や彫刻など作品展示のほか、障害者と健常者が共に舞台に立つ演劇などを行った昨年の同芸文祭で、「共生社会の実現に手応えを得た」と実感。カルチュラル・オリンピアードに障害者アートを位置付けてもらうため、志が同じ都道府県と連携して、障害者芸術振興の取り組みを推進することにした。

具体的な活動は今後、関係都道府県と協議するが、作品展や舞台芸術祭(和太鼓や神楽、音楽、ダンスなど)をブロック単位や参加県の持ち回りで開催することを想定している。

現在、鳥取県の呼び掛けに、滋賀県と東京都が賛同。滋賀県は障害者による独創的な芸術活動「アール・ブリュット」が盛んで、かつて「障害者福祉の父」と呼ばれた鳥取県出身の糸賀一雄が活躍するなど、鳥取との関わりが深い。

鳥取県は障害者芸術活動が活発な他の都道府県にも働き掛けるほか、障害者の芸術文化振興を提唱する超党派の国会議員連盟とも連携を進める。

県障がい福祉課は「有志の都道府県で障害者アートを広め、2020年に向けた全国的な活動に発展させたい」と話している。

■2015.1.29  発達障害児も共に学び「不登校ゼロ」を実現した奇跡の小学校
「不登校ゼロ」の公立小学校の映画ができたと聞いて、試写を観に行った。

舞台は大阪市住吉区にある大空小学校だ。


隣の小学校の児童数が増えすぎたことをきっかけに、2006年4月に開校した。

全校児童は約220人。発達障害のある子や、自分の気持ちを上手くコントロールできない子などの特別支援の対象は30人を超える。それでも、すべての子どもたちが同じ教室で学ぶ。

教職員は、クラスや担当の垣根を越えて、みんなで子どもたちを見守る。地域のボランティアや保護者も、サポーターとして子どもたちを支える。

校舎に貼ってあるのは、「みんながつくる、みんなの学校、大空小」。開校以来、木村泰子校長を中心に、みんなが一緒になって、誰もが通い続けることのできる学校を作り上げてきた。

そんな“誰にとっても居場所のある学校”づくりの取り組みを取り上げた関西テレビのドキュメント『みんなの学校』は評判を呼び、2013年度に様々な賞を受賞。そのドキュメンタリーを拡大する形で製作したのが、今回公開される映画『みんなの学校』だ。

● みんなの学校、唯一のルールは 「自分がされていやなことはしない」

監督は、番組でディレクターを務めた関西テレビ報道局報道番組部の真鍋俊永さん。実は、同校の取材を始めたのは、職場の同僚で妻でもある迫川緑さんで、真鍋さんは引き継ぐ形で、本格的な長期取材を始めたという。

「(彼女は)元々、障害者の方々と関わる機会が多く、学校で障害を持った子がどのように過ごしているのかを何度か取材していました。その中で、大阪市内にこんな学校があるよと教えてもらったのが大空小との出会いのきっかけです」

10分ほどのニュース内での特集にした後、迫川さんは、子どもたちの自然で生き生きとした表情を引き続き取材したいと交渉。同じ部署にいた夫の真鍋さんが後を継いで、2012年4月から翌年3月まで、取材を続けたという。

「私自身は、詳しくなかった状況で、1年間の取材が始まったんです。やはり、いろいろな子が同じ教室にずっといてるというのは、驚きました。世界的に見れば、当たり前だということは、後になって知っていくのですが、自分の中では、当たり前とは思えていなかったんです」(真鍋さん)

大声を出しながら歩いていく子がいる。そんな中で、普通に授業が行われている。

「“冷たく見えるやろ、周りの子ら”って、校長は私に説明しましたが、実際に周りの子らは障害のある子を無視しているように見えかねないほどに自分のやることに集中している。そんな映像を映画の中でも使っていますが、こういう環境でも学んでいけるんだということが、驚きでした。難しい環境に置かれている子はゼロではないですけど、その子たちを見捨てずに、必ずアプローチするので、みんなとのつながりを持てているように、私には見えました」(真鍋さん)

いじめについても、ないわけではなく問題を認識して解決へと向かう。ただ、市教委から調査依頼が来れば、いじめのような問題を隠すことなく記述する。なかったことにするのではなく、解決に向けて可視化できることが誇るべきことだと、木村校長は話しているという。

同校の唯一のルールは“自分がされていやなことは人にしない。言わない”。

子どもたちは、このたったひとつの約束を破ると、やり直すために“やり直しの部屋”という名前の校長室にやって来る。

映画の中で、木村校長が全校児童だけでなくそこにいる教職員や地域の大人も含む全員に、こう問いかけるシーンがある。

校長「大空小学校は誰が作りますか? 」
児童「一人ひとりが作ると思います」
校長「一人ひとりって誰ですか」
児童「自分」
校長「自分って誰ですか? 手を上げてください」

すべての人たちが手を上げる。
校長「大空小学校は、自分の学校だから、自分が作るんです」


● 学校から飛び出す児童には 校長自ら追いかけて話しかける

映画の出演者は、「大空小学校のみんな」。中でも象徴的な存在は、大阪市内の別の小学校から転校してきたセイシロウ君だ。

校長は、全校児童にこう紹介する。
「セイちゃんは4年生になりましたが、みんなのように毎日、学校へ行くことができませんでした。行けても2時間くらい。それは、セイちゃんが学校で1人でいることが落ち着かなかったからです。でも、今日から大空小学校に来て、みんなと一緒に安心して暮らします」

そんなセイちゃんの最初の課題は、1日中学校にいること。何度も学校を飛び出していくセイちゃんに、校長は自ら追いかけていき、話しかける。

「友だちのことを信用せなあかんと思う。人を信用してへんから、セイが居にくいと思うんや。でも、大空小学校は、みんなでつくっている学校です。セイが安心して居れないわけがない」
 
安心できる場とは、周りの支えとつながりがカギを握っているのだ。
また、6年生のカズキは、5日間、学校に来ていない。毎朝、なかなか学校に来ることができないため、先生たちが迎えに行く。

校長は、こう言う。
「(カズキが新入生として入学して来るとき)あの子が大空へ行くのなら、みんな大空はやめとこうという噂が広がった。あの子のそばにいたら、怪我させられるし、落ち着かない。でも、そんな子は、じゃあどこへ行けばいい? 」

ユニークなのは、同校ではPTAとは呼ばないことだ。親と教員ではなく、サポーター(保護者と地域の大人)と教職員で作る「大空SEA」と呼ぶ。

さらに、授業参観も家庭訪問もない。学校の窓ガラスも、すりガラスから透明なガラスに入れ替えた。
いつも授業は開かれているし、家庭訪問も問題が起きたときに、担任が自主的に行けばいいという考え方だそうだ。

どんなことも、決まりごとを一度解体して、新たに構築する感じがしたという。
こうした全国にも前例がないであろう「大空文化」を6年かけて作りだしてきたという。


● 不登校がなくなったのは 「周りの子」が変わったから

木村校長は、「学校に来られない子がなぜ来られるようになるのか」と言う問いかけに、こう答える。
「その子が学校に来れるのは、周りの子が変わったから。その子を見る目が変わったから。だって、彼は何も変わってへん。彼は、彼やから」
このコメントは、不登校にとどまらず、「大人の引きこもり」をはじめ、様々な社会的課題の当事者への向き合い方を考える上でも、大きなヒントになるのではないか。

真鍋さんは、映画の「ディレクターズノート」の中で、こう振り返る。
<校長は「“みんな”の中には“関西テレビの真鍋さん”も入ってますよ」と言っていた。
私にはその言葉が指すものがよく分かっていなかったが、1年間、学校に通い続けることが、私自身にとっても「ともに学ぶ」日々であったことが、終わってみれば良く分かった。学校とは、教師が一方的に子どもたちに知識を与える場ではなく、様々な人が関わり合って学び合うところであった。そして学校だけではなく、社会という存在そのものが「大きな学校」であり、いろいろな人たちが関わり合うことで、学び合う場だと、いまは感じている>

筆者も映画を通して、木村校長がどのようにしてこのような考えに至ったのか。ぜひ、この学校へ学びに行きたくなった。
社会という大きな学校の中で、自分は何ができるのか、映画の中から大事な何かが見つけられるかもしれない。

『みんなの学校』は、2月21日(土)から、渋谷「ユーロスペース」ほかで順次公開される。

■2015.1.29  秋田)職員から感染拡大か 鹿角の病院、インフルの4人死亡
病院内でインフルエンザの集団感染があり、80〜90代の入院患者の男女4人が相次いで死亡したことが27日明らかになった鹿角市の大湯リハビリ温泉病院(同市十和田大湯)。インフルエンザの予防接種を受けていない職員らが多数感染し、患者らへのタミフル投与も後手に回った。病院関係者からは「初動体制が甘く、お粗末だった」と反省の言葉が相次いだ。

大館保健所で会見した小笠原真澄院長は「ご心痛、ご心配をおかけした。巻き込まれた患者さん、亡くなった人、ご家族におわびしたい」と謝罪した。

小笠原院長によると、リハビリ病棟3階でリハビリを担当する20代の女性職員に6日、発熱の症状があり、別の病院でインフルエンザA型と診断された。この職員は予防接種を受けていたという。

病院側はこの職員を出勤停止としたものの、11日以降、患者や職員の間で感染が一気に広がった。

15日には簡易検査でリハビリ病棟45床で入院患者9人、職員3人の感染が判明。病院は県に集団感染を報告した。

県は16日、感染症法に基づく調査を実施。病院は院内感染マニュアルに基づいて面会制限や感染防止対策の徹底を図ったが、18日から26日にかけて男女4人が相次いで死亡した。

18日に死亡した90代の男性は昨年末にうっ血性心不全で入院した。11日から発熱があり、15日に感染を診断されてタミフルを投与された後、いったん快方に向かったが、18日午前3時の巡回で呼吸が止まっているのが見つかった。

3女性は重症の肺炎や気管支炎などで昨年10月から年末に入院していた。

ただ、4人とも、タミフルを投与されたのは感染が拡大した後だった。病院側が全館で面会制限の感染防止対策を講じたのは、男性が死亡した後の19日になってからだった。

■2015.1.29  <盲導犬>受刑者が育てたパピー 第6期修了、6頭日本協会へ−浜田 /島根
官民共同で運営するPFI刑務所「島根あさひ社会復帰促進センター」(浜田市旭町丸原)で26日、受刑者が盲導犬候補の子犬(パピー)を育てる第6期パピープロジェクトの修了式があった。昨年3月から10カ月間、受刑者29人が生活を共にしながら世話をしたラブラドールレトリバー6頭が日本盲導犬協会側に引き渡された。

オス5頭、メス1頭のパピーたちは生後2カ月で刑務所にやって来た。刑期や適性などから選ばれた受刑者たちが6班に分かれ、班ごとに決められた1頭を担当した。班員たちは協会の訓練士のアドバイスを受けたり、仲間と相談したりしながら、排せつなどの基礎的訓練やブラッシングなどの世話を続けてきた。

修了式では、高野照文センター長が「経験を今後の人生に生かして下さい」と式辞を述べた。その後、受刑者たちは班ごとにパピーたちと最後のスキンシップを楽しんだ。30代の男性受刑者は「寂しさとほっとした気持ちが半々」と語り、20代の男性受刑者は「パピーのことを話し合うことでスムーズに人と話せるようになった」と感謝していた。

パピーたちは、センター敷地内の訓練施設に移り、適性があれば約1年間、本格的な訓練を受ける。昨年までにセンターのプログラムを終えたパピー計28頭からは6頭の盲導犬が誕生している。

■2015.1.29  {アール・ブリュット} 障害者アート世界に発信 県、滋賀などと有志タッグ
鳥取県は2020年の東京五輪・パラリンピックに絡め、東京都や滋賀県など都道府県有志と連携した障害者の芸術文化振興に取り組む。五輪憲章にも規定され、開催国で展開される文化プログラム「カルチュラル・オリンピアード」で、障害者アートの魅力や可能性を世界に発信することを目指す。昨年県内で開催した「全国障がい者芸術・文化祭とっとり大会」の経験を生かす。

カルチュラル・オリンピアードは、スポーツだけでなく文化芸術の振興も同時に図るため、前大会終了後から4年間に展示や舞台公演などが行われる。

鳥取県は障害者の絵画や彫刻など作品展示のほか、障害者と健常者が共に舞台に立つ演劇などを行った昨年の同芸文祭で、「共生社会の実現に手応えを得た」と実感。カルチュラル・オリンピアードに障害者アートを位置付けてもらうため、志が同じ都道府県と連携して、障害者芸術振興の取り組みを推進することにした。

具体的な活動は今後、関係都道府県と協議するが、作品展や舞台芸術祭(和太鼓や神楽、音楽、ダンスなど)をブロック単位や参加県の持ち回りで開催することを想定している。

現在、鳥取県の呼び掛けに、滋賀県と東京都が賛同。滋賀県は障害者による独創的な芸術活動「アール・ブリュット」が盛んで、かつて「障害者福祉の父」と呼ばれた鳥取県出身の糸賀一雄が活躍するなど、鳥取との関わりが深い。

鳥取県は障害者芸術活動が活発な他の都道府県にも働き掛けるほか、障害者の芸術文化振興を提唱する超党派の国会議員連盟とも連携を進める。

県障がい福祉課は「有志の都道府県で障害者アートを広め、2020年に向けた全国的な活動に発展させたい」と話している。

■2015.1.30  体罰で教員3953人を処分 13年度、過去最多を更新
子どもに体罰をしたとして2013年度中に処分された公立小中高校の教員は3953人にのぼり、過去最高だった前年度を1700人上回った。文部科学省が30日に発表した。体罰の多くが、12年末に大阪市立桜宮高校で暴力を受けた男子生徒が自殺した後の緊急調査で発覚したという。

緊急調査では、12年度中に体罰をした公立校の教員は5415人。一方、12年度中に処分されたのは2253人にとどまり、残りの多くが13年度に懲戒免職や減給、訓告などの処分を受けた。これらの処分の対象がいつの体罰なのかは調べられていないが、文科省の担当者は13年度中に新たに発覚した体罰は減ったとみている。

体罰を受けた児童生徒は8880人にのぼった。体罰のあった状況は、小学校は授業中(61・4%)、中学校と高校は部活動(それぞれ38・5%、43・4%)が最も多かった。内容は「素手で殴る」が小中高とも6割前後。中学校の「蹴る」(11・5%)、高校の「殴る及び蹴る」(9・1%)も目立った。

発覚のきっかけを複数回答で聞くと、「教員の申告」が全体で48・6%と最も多く、「児童生徒の訴え」(41・4%)、「保護者の訴え」(37・1%)が続いた。

また、わいせつ行為やセクハラで処分を受けたのは、前年度から18人増の205人で、過去最高だった。被害者の属性別では、「自校の児童・生徒」が5割近くにのぼった。内容は「体に触る」が56人、「盗撮・のぞき」が37人。「性交」も30人いた。電子メール送信などによる「文書・画像による性的いやがらせ」は、前年度の6人から19人に増えた。処分は、すべて男性だった。

一方、教員の精神疾患による病気休職者数は5078人で、前年度から118人増えた。期間は「1〜2年」(22・7%)、「6カ月〜1年」(17・9%)などが多かった。



2013〜14年度、小中学校など全国の262校で、校内の人事が教職員自身による選挙や投票で決められていた。文部科学省が30日、そんな調査結果を発表した。校長の人事権を定めた学校教育法の趣旨に反するとして、昨年6月に是正を求める通知を出すとともに、調査していた。

調査は、昨年4月、大阪市や神戸市の学校で実質的に教職員が人事を決めていたことが問題視され、全国の公立学校を対象に実施した。現在は、こうした実態は解消されているという。

選挙で「教務主任」や「進路指導主事」といった校内の配置を決めていたのは、高校181校、中学校55校、特別支援学校25校、小学校1校だった。都道府県別では、大阪が159校で最も多く、51校の長野、19校の和歌山が続いた。また、教職員が「人事委員会」を設置し、人事案を決めていたのは211校。うち大阪は93校、長野は85校だった。

いずれも、明文化された規定が存在する事例もあったという。文科省の担当者は「関西圏など特定の地域で、以前からあった慣習がそのまま残っていたのではないか」と話す。

■2015.1.30  介護プロ認定者輩出の事業所に助成金支給へ−1人認定で年50万円、東京都が4月から
東京都は4月から、介護プロフェッショナルキャリア段位制度の認定者を出した事業所に助成金を支給する方針を決めた。来年度の都の予算案に盛り込まれたもので、具体的な支給額は、認定者への手当も含めて一人当たり平均で50万円。同制度の実施機関であるシルバーサービス振興会によると、地方自治体がこうした活動に乗り出すのは、全国でも初という。

介護プロフェッショナルキャリア段位制度は、サービス種別を問わず業界全体で活用できる能力の基準を示すことで、効率的な人材育成と新たな人材の参入促進を目指す制度。主に実践的スキルを重点的に評価する。段位認定は各事業所で行われるが、認定を行うには、日々の実践的スキルを評価するアセッサーを職員の中から選ばなければならない。シルバーサービス振興会によると、今年1月段階で全国に265人の認定者がいる。

東京都は、この制度に着目。人材の定着とキャリアアップを支援するため、認定者を輩出させた事業所に助成金を支給する方針を決めた。

支給する助成金は、職員が認定を受けた段位によって異なるが、「平均では認定者に月2万円、年で24万円の手当が支給されるようにする方針」(福祉保健局介護保険課)という。同時に事業者に対しては、アセッサーの選出など、認定者を輩出させる上で必要な活動を支援する狙いから、平均で年間26万円を支給する予定だ。

助成金の上限は一事業所当たり年間200万円となる見込み。各事業者への助成は3年間行われる予定で、「来年度には約600事業所に助成を行うことを想定している」(同)という。


レベル認定者検索
https://careprofessional.org/careproweb/certified_view

■2015.1.30  建設費1・5倍の90億円に 17年開設予定、障害児医療施設
県が津市内で2017年6月の開設を予定している「こども心身発達医療センター」(仮称)の建設費が、当初見込みから1・5倍の30億円増加し、約90億円の規模になる見通しであることが分かった。県は建築資材や人件費の高騰などを理由に挙げる一方、県内外で問題化している大型公共工事の「入札不調・不落」を免れるための対応にも迫られている。

新センターは、国立病院機構三重病院(津市大里窪田町)の敷地の一部を購入して建設。病院と連携して高度な医療・福祉サービスを提供する。津市内にある草の実リハビリテーションセンターと小児心療センターあすなろ学園、児童相談センターの言語聴覚機能を集約し、特別支援学校・学級を併設する。

県は基本デザインや配置計画をまとめた二〇一三年度の「基本設計」で建設費を約六十億円と算出していた。

しかし一四年度に、より詳しい構造や工法、設備などを調べて詳細な設計をまとめる「実施設計」を実施し、高騰する直近の市場価格も反映したところ、建設費は約九十億円に達するとの見通しが明らかになったという。

大型公共工事の入札をめぐっては近年、応札者がいない「不調」や落札者が決まらない「不落」が各地で続出。県内でも津市産業・スポーツセンターや桑名市総合医療センター、紀南病院で不調・不落を余儀なくされた。背景には、東日本大震災の被災地の建築需要や全国的な公共事業の増加、名古屋駅前の再開発、職人の減少などがあるという。

県はその対策に、特注ではない一般向けの製品や等級を抑えた備品、人手が少なくて済む工法を採用。工期も当初の十七カ月から二十一カ月に延ばし、業者の負担を軽減する。併せて、電気設備や空調設備、建築物といった専門分野ごとに工事を分割することで、業者が応札しやすい条件を整える手法の導入も検討している。

子ども・家庭局の担当者は「従来の施設は老朽化に加え、療育の環境も古い。ハンディキャップを持っている子どもや家族の皆さんは新しい施設を望んでいる」と述べ、予定通り一七年度の開院を目指す意向を示す。

県は一五年度当初予算案に約五億円の建築工事費を盛り込むとともに、複数年度にわたって九十億円の予算を組む「債務負担行為」を設定する議案を提出する方針。残りの約八十五億円は、一六年度予算案に計上する予定。

■2015.1.31  特養集団インフル「命預かる場で申し訳ない」…秋田
インフルエンザの集団感染で、女性入所者(96)が死亡した秋田県井川町の特別養護老人ホーム「さくら苑」(特養50床、ショートステイ10床)の幡宮正光施設長は29日、「命を預かる場所でこういう結果になり、申し訳なく、反省している」と陳謝した。

職員と入所者は全員、ショートステイ利用者も大半が予防接種を受けていたが、感染の拡大を防げなかったという。

幡宮施設長によると、死亡した女性を含む感染者12人の内訳は、83〜99歳の入所者男女5人と20〜50歳代の職員7人。16日に50歳代の女性職員がインフルエンザA型と診断され、19日に入所者1人と職員3人にも拡大。25日にかけて、さらに7人に感染が広がった。

死亡した女性は21日に発症。22日に診断を受け、同苑で点滴などの投薬治療を受けていた。24日午前1時30分頃に呼吸が弱まり、救急搬送先の病院で約1時間後、呼吸不全で死亡した。

女性を除く11人のうち、入所者4人と職員5人は既に回復。症状が残っている職員2人も快方に向かっており、ほかに症状を訴えている人はいないという。

同苑では、感染者が7人に増えた21日、秋田中央保健所に状況を説明し、24日に県への報告基準の10人に達したことから、週明けの26日に集団感染と女性の死亡を報告した。保健所の指示で27日から面会を禁止している。幡宮施設長は「昨年暮れから、面会の制限やうがい、手洗い、施設内の消毒など感染予防策を取ったが、100%防ぐのは難しかった。再発させないよう見直しを含めて対策を徹底する」と釈明した。

県内では今月に入って、「大湯リハビリ温泉病院」(鹿角市)でインフルエンザの集団感染があり、患者4人が死亡している。

 

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