残しておきたい福祉ニュース 1996〜社会福祉のニュース

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残しておきたい福祉ニュース

 2015年 
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 * * *

 2015. 3. 1 夫婦が二人三脚で車いす寄贈 青森 プルタブの会
 2015. 3. 1 中国残留帰国者ら、高齢化に対応 飯田に開所 /長野  NPO法人共に歩む会 羽場赤坂デイ
 2015. 3. 2 「おひさま発電所」が完成 京都・宇治、障害者施設で初
 2015. 3. 2 島根の飯南病院と京丹後の久美浜病院が姉妹病院協定 
 2015. 3. 2 職員「好きな仕事だけど…」 介護施設に浮かぶ構造的課題
 2015. 3. 2 認知症と身体拘束 介護の専門性を高めよ  毎日新聞社説
 2015. 3. 3 インクルーシブ教育を考えるシンポジウム:当たり前に学び、育つ社会を 200人参加し豊中で /大阪
 2015. 3. 3 社会福祉法人が温泉や巡回バス運営 赤字でも地域貢献  香川県 社会福祉法人香東園
 2015. 3. 4 ポータブルにも「温水洗浄」…介護用トイレ 快適に
 2015. 3. 4 過酷な夜勤は職員と利用者を危機に晒す
 2015. 3. 5 生活保護、161万8,196世帯で過去最多を更新…厚労省調査
 2015. 3. 5 重障児の放課後支援 デイサービス、碧の園増設、育成会「長年の夢結実」−伊東
 2015. 3. 5 「車いす社長」の父との思い出ヒントに新たな介護トラベルサービス開発  ハンディネットワークインターナショナル
 2015. 3. 5 故黒田裕子さんが活動けん引 神戸の被災者支援団体解散へ
 2015. 3. 5 黒田裕子
 2015. 3. 5 防災に障害者の視点は不可欠だ 日本財団会長・笹川陽平
 2015. 3. 6 奈良の社福法人が高齢者のための介護食レシピ本 一工夫で食べやすく
 2015. 3. 6 高齢者が食べやすいよう工夫 家庭の味の「介護食」レシピ本が完成
 2015. 3. 7 介護保険料6千円超の自治体が3割 65歳以上の月額
 2015. 3. 8 高齢者虐待が最多 県調査、介護施設で 昨年度 埼玉県
 2015. 3. 8 認知症カフェ、交流の場に 京都・南丹の福祉施設に開設
 2015. 3. 8 あるパラリンピック・チームドクターが見た「報道と現実のギャップ」
 2015. 3. 8 福島県東部の13介護施設、入所制限  介護職員の数が足りないのが原因
 2015. 3.10 障害者芸術・文化祭 県、来年度は独自開催
 2015. 3.10 東京都*届け出必要な「有料老人ホーム」と認定 岩江クリニックが運営する介護事業所が利用者を身体拘束していた問題
 2015. 3.11 老人福祉事業者の「休廃業・解散」動向調査
 2015. 3.11 障害者用駐車場に許可証発行へ 県新事業  和歌山県
 2015. 3.11 京丹後の3授産施設が焼きドーナツ共同開発 地元食材使い8種類
 2015. 3.11 老人ホームの基準緩和、厚労省 「無届け」減らし監督強化
 2015. 3.11 漫談・弾き語りで老人福祉施設慰問800回 大阪の男性「王さん超えたい」
 2015. 3.11 お年寄り、メークで輝きを 上田の福祉施設で若手美容師
 2015. 3.12 どうする「お泊まりデイサービス」 介護保険のはざま、数年の連泊も
 2015. 3.12 故郷の命守りたい 復興担う看護師めざす 陸前高田出身・名古屋市立大生
 2015. 3.12 宇都宮・保育児死亡:請求棄却求める 口頭弁論、宇都宮市など被告側 /栃木
 2015. 3.13 豊中の6歳男児不明:100人チラシ配布 服部緑地で /大阪
 2015. 3.14 ハンセン病への理解を /佐賀
 2015. 3.16 車いすが「人力車」に…緊急避難に威力、大和ハウスがベンチャーと提携し本格販売、自治体も活用
 2015. 3.16 障害年金支給に官民格差 公務員、自己申告で認定
 2015. 3.17 騎馬戦事故で賠償2億円の判決、確定へ 県教委控訴せず  福岡
 2015. 3.18 障害者世帯の55%「孤立症状」 滋賀・草津で実態調査
 2015. 3.20 障害者雇用状況を水増報告し 労働者健康福祉機構の担当者3人に罰金刑
 2015. 3.20 お兄ちゃん先生希望の春 - 県初、知的障害者が幼稚園に就労/斑鳩
 2015. 3.20 熊野の海岸部、高齢者低栄養 26%、たんぱく質量低く
 2015. 3.20 認知症高齢者の徘徊発見にも一役!防犯カメラ100台新設【大阪市淀川3区】
 2015. 3.20 廃校跡に福祉複合施設 伊豆・月ケ瀬で春風会が起工 
 2015. 3.21 2社会福祉法人、親族企業と多額契約 兵庫県の外部監査で判明
 2015. 3.24 知的障害者の盗み再犯防止 支援プログラム共同開発
 2015. 3.25 A型事業所の可能性 社会福祉法人の挑戦  社会福祉法人豊芯会  大阪府箕面市の社会的雇用助成制度
 2015. 3.25 「五月人形」制作ピーク 安靖氷見共同作業所
 2015. 3.25 <西武鉄道池袋線>沿線にトトロ出現
 2015. 3.27 嚥下食を増産 ニュートリー、16億円投じ本社工場増強
 2015. 3.27  「介護に疲れた」80歳母親が知的障害の54歳長男を殺害「情状酌量の余地」はあるか
 2015. 3.27 市長が「認知症の人を地域で支えるまちづくり」を宣言 下関市
 2015. 3.28 虐待:施設の子供、87件 届け出288件、09年度以降最多 厚労省
 2015. 3.28 黒田裕子さんNPO:震災弱者支えて20年 3月末で幕
 2015. 3.28 札幌・女性殺害:札幌地検、自殺の男不起訴  福祉施設職員、伊藤華奈さん
 2015. 3.31 「無届け介護ハウス」全国で961件


■2015.3.1  夫婦が二人三脚で車いす寄贈 青森 プルタブの会
五戸町のボランティアグループ「プルタブの会」が、今年で活動開始から20年の節目を迎えた。空き缶のプルタブやアルミ缶を集めて換金し、購入した車いすを医療機関や福祉施設に寄贈してきた。活動の中心は、代表の三浦ゑみさん(70)と夫の信也さん(72)の2人。夫婦二人三脚で地道に続けてきた取り組みにより、小さなプルタブは計41台の車いすに大きく姿を変えた。夫婦は「人と人とのつながりが支えてくれた」と感謝の思いを強くしている。

会は1995年に発足。きっかけは同年1月に68歳で他界した、ゑみさんの兄の存在だった。重い病気を患い、晩年は車いす生活を余儀なくされていた。

兄が亡くなった際、ゑみさんは親族との会話で、プルタブが車いすと交換できることを知った。「その時から車いす生活の人の役に立ちたいと思うようになった。心の中には兄への思いもあった」と振り返る。

しかし、当時は今よりリサイクル活動が普及しておらず、五戸町周辺では詳しい情報を得られなかった。それでも信也さんと根気強く調べ続け、車いすの交換事業を手掛ける静岡県内の環境団体を見つけ出した。

約4年かけてプルタブなどを700キロ以上集め、99年12月に記念すべき1台目の車いすが届いた。ゑみさんは「私たちの活動が初めて形となり、大きな励みにもなった」と話す。

夫婦の取り組みは、口コミや新聞報道などで少しずつ広がり、活動に賛同して協力してくれる地域住民や団体も増えた。「車いすを必要とする人の役に立ちたい」「自分も何か力になれれば」と、八戸市や十和田市などからプルタブを送ってくれた人もいたという。

信也さんは「ここまで続けてこられたのも、力を貸してくれた地域の方々のおかげ。お礼の気持ちでいっぱい」と感謝を込める。

2000年以降は、プルタブとアルミ缶をリサイクル業者などに売却して換金している。現在は約500キロ分の換金で車いす1台を購入できるという。プルタブ1個の重さは、わずか0・5グラム。アルミ缶はつぶす作業が必要で、一つ一つの小さな積み重ねが社会福祉の充実に貢献している。

09年度からは五戸総合病院に車いすを寄贈しており、本年度は3月中に3台を贈る予定。病院の服部勤事務局長は「歩行困難な患者や高齢者も多い。病院の財政が厳しい中で、とても助かっている」と謝意を示す。

人の絆と奉仕の心がつないだ20年。活動開始以来、寄付した総台数は41台となる。夫婦の目標は50台を寄贈することだ。

「年間3台ずつのペースでいけばあと3年。それまでは、何とかこつこつと頑張りたい」とゑみさん。長年にわたる活動を思い起こし、涙を浮かべる目に固い決意をにじませた。

プルタブとアルミ缶の回収は、五戸町下大町で三浦夫婦が経営する「三信金物店」で受け付けている。

■2015.3.1  中国残留帰国者ら、高齢化に対応 飯田に開所 /長野  NPO法人共に歩む会 羽場赤坂デイ
主に中国帰国者や、認知症の高齢者のためのデイサービス施設「羽場赤坂デイ」が1日、飯田市羽場赤坂に開所する。運営するのは、帰国者2世の妻で2000年から飯田で暮らす介護福祉士、馬場田正美さん(41)らが設立したNPO法人「共に歩む会」。馬場田さんは「地域に溶け込み、日本人も中国人も理解し合える施設を目指す」と意気込む。


施設は、馬場田さんの自宅脇に建設した平屋で約100平方メートル。8人のスタッフのうち、施設長の馬場田さんをはじめ3人は中国語が話せる。

馬場田さんによると、高齢の帰国者やその配偶者の中国人の多くは日本語がわからず、心細さを感じている。訪問介護などで接した帰国者から「中国語で思い切り話したい」「中国のテレビを見たい」という話をよく聞いていた。

また若年性を含む認知症の利用者の介護では、時間の流れが健常者と違うことを意識してきたという。

常勤スタッフの後藤美香さん(43)は「家族の負担を軽減したい」。馬場田さんは「皆さんが気軽に訪れ、利用できる場にしたい」と当面の目標を掲げる。将来はグループホーム運営も念頭に置く。

利用者サービスのない日曜日には施設を一般開放し、自治会の行事や施設主催の介護講座などに使ってもらう。問い合わせは赤坂デイ

■2015.3.2  「おひさま発電所」が完成 京都・宇治、障害者施設で初
京都府宇治市伊勢田町の障害者就労支援施設・イサク事業所どうほうの家に、「おひさま発電所」と名付けた太陽光発電設備が完成した。自然エネルギーの普及に取り組むNPO法人の協力を受けて設置し、売電を始めた。

おひさま発電所は、認定NPO法人・きょうとグリーンファンド(京都市下京区)が地球温暖化防止を目的に府内各地の幼稚園や保育所に設置している。寄付金や会費の基金で費用を賄っており、今回で18カ所目となった。障害者福祉施設での導入は初という。

3階建ての施設屋上に太陽光パネルを63枚取り付けた。出力は最大10キロワットで、発電した電力は全て売り、その収益を新たな発電所の整備に活用する。

イサク事業所でこのほど点灯式があり、利用者や職員らが環境にやさしい設備の完成を祝った。石崎蓉子施設長は「これを機に太陽光発電が宇治市内でも広まってほしい」と話していた。

■2015.3.2  島根の飯南病院と京丹後の久美浜病院が姉妹病院協定 
久美浜病院(京丹後市久美浜町)と飯南病院(島根県飯南町)の姉妹病院協定の締結式が久美浜病院で開かれ、医療・介護分野などで交流促進を目指すことになった。

久美浜病院の赤木重典病院長と飯南町の山碕英樹町長が、地域医療の研究会などを通じて親交があり、協定を決めた。

締結式には赤木病院長と飯南病院の安田勲病院長、京丹後市の中山泰市長、山碕町長らが出席し、中山市長は「まちづくりも含めた交流に発展させたい」とあいさつした。

両病院は今後、地域包括医療分野で連携するほか、それぞれの地域住民の健康増進についても協力する。

■2015.3.2  職員「好きな仕事だけど…」 介護施設に浮かぶ構造的課題

家族への愛「せめて最善の施設を選びたい」

 大阪府柏原市の自営業、加藤茂男さん(53)=仮名=は7年前、別居していた認知症の母、妙子さん(85)=同=を、同市の有料老人ホーム「アミーユ柏原」に入所させた。母を施設に預けることに抵抗感はあったが、仕事などの都合で同居は難しい。一方で、同じことを繰り返し話す母の周りからは友達が離れ、孤立を深めて症状が進む悪循環に陥っていた。

茂男さんは、入所先探しの過程でさまざまな施設を目にした。中には雑居ビルのフロアを3畳ほどの部屋ごとに仕切り、真っ暗な室内に高齢者を押し込めていたところもあり、「最低限の人権すら守られていない」と憤りを感じた。

「本来は家で母をみないといけないけど、それができない。だから最低限、環境はベストなところにいてほしかった」。最善の施設を選ぶことが、できる限りの母への愛だった。

アミーユ柏原では、入所者の自由を尊重するケアを目指しており、身体能力や判断能力に応じて単独での外出も許可している。運営会社「ケアステージ」の植田利弥社長(38)は「入所者の希望をできる限り優先している」と語る。

職員が事前に買い物などで入所者の能力をチェックし、家族とも相談して可否を判断する。行方不明になるのを防ぐため、位置情報端末や施設の連絡先を書いたメモを携行してもらう。

地元住民らに理解を得ることも重要だ。職員が地道に説明に回り、地域のケアマネジャーらとも情報を共有しているという。

「読書好きの母が図書館に出かけても、誰かが気付いてくれる」。茂男さんは、同施設に母を預け、安心を手にした。



施設不足は慢性的 しかも解消のめどただず
認知症の高齢者が入所する施設には、運営に公的資金が入る特別養護老人ホームや介護老人保健施設のほか、完全民営の有料老人ホーム、グループホームなどがある。ただ、希望者が増える中で数は不足気味だ。

厚生労働省によると、特別養護老人ホームの定員は平成25年10月現在で計約48万8千人。これに対し、入所希望者は52万人を超えており、最低でも2〜3カ月待ちは当たり前だという。

一方、民間施設への入所には経済的負担が大きい。特別養護老人ホームの利用料が月5万〜10万円ほどなのに対し、アミーユ柏原の場合、月額15万円の利用料など月20万円弱の支払いが必要となる。有料老人ホームによっては高額な一時金を求められるところもある。

収入が少ない家庭ほど、施設へ預けることがままならず、在宅で介護せざるを得ない傾向がある。政府が策定した認知症対策の初の国家戦略(新オレンジプラン)では、通所介護などの整備促進も盛り込まれたが、一方で公的資金がかかる特別養護老人ホームはこれ以上増やせないという事情があり、低所得層などでの慢性的な施設不足が解消される見通しは立たない。


人手も足りない 見合わない報酬の低さ
介護施設での人手不足も深刻な課題だ。昨年12月の有効求人倍率は、全体では22年9カ月ぶりの高水準となる1・15倍だったが、介護職は全国平均で2・10倍、大阪府は2・99倍だった。仕事のきつさに報酬が見合っておらず、敬遠されている実情が浮かぶ。

「やりがいのある仕事だけど、3K職種のイメージが強くて慢性的に人が足らず、1人の職員に対する負担が増える悪循環がある」。大阪市内の介護老人保健施設で働く介護福祉士、岡田栄治さん(33)=仮名=はため息をつく。

同施設では145床程度が常に埋まり、約70人の職員で対応している。岡田さんは症状が比較的重い認知症患者が入るフロアのグループリーダーで、心身ともに負担は大きい。

月給は手取りで20万円前後。独身で1人暮らしだが生活は楽ではない。いずれ結婚したいと考えているが、収入を考えると不安もある。厚労省が決定した平成27年度の介護報酬改定では、介護職員給与の平均月1万円程度の増加を目指す方針が掲げられたが、実現しても十分とはいえない。

岡田さんら職員を支えているのは、強い使命感だ。「小さなことでも毎日『ありがとう』と言ってもらえるし、やりがいを感じる。介護の仕事の良さは、やってみないと分からない」

介護現場を疲弊させる人手不足といかに向き合うべきなのか。「施設職員の給料はなかなか上がらず、長く仕事を続けるメリットがない。報酬面でもう少し改善されれば、介護業界を目指す人も増えるかもしれない」。岡田さんの言葉が、高齢化社会に重く響く。

■2015.3.2  認知症と身体拘束 介護の専門性を高めよ  毎日新聞社説
認知症の介護で疲弊する家族は多い。特別養護老人ホームなどの介護施設は受け入れを嫌がる傾向が強く、医療機関が認知症の受け皿になっている例は少なくない。精神科病院だけで5万人以上の認知症の人が入院している。


ベッドから落ちないよう縛る。柵でベッドを囲んで行動を制限する。そうした身体拘束を高齢者に行っていたとして、東京都北区の介護事業所が都から改善勧告を受けた。近くの民間マンション3棟で暮らす高齢者に食事やおむつ交換などの介護サービスを提供しており、130人程度に拘束をしていたという。

「医師の指導で行った」と介護事業所は主張したというが、それが本当であれば、医師の指導の妥当性や経緯についても都は調べるべきだ。

身体拘束は高齢者の心身に深刻な影響を及ぼす虐待行為である。徘徊(はいかい)などによる事故を防ぐためとも言われるが、実際は人手不足や支援技術の乏しさが原因であることが多い。

高齢者が長期間身体拘束をされていると、食欲の低下や脱水症状を起こし、関節が硬くなり筋力が低下して寝たきりになりやすくなるという。精神的にもストレスが高じてさらに「問題行動」がひどくなり、生きる意欲を失っていく人も多い。介護保険施設の運営基準で、緊急やむを得ない場合を除いて身体拘束が禁止されているのはそのためだ。

高齢者虐待防止法は家庭内と介護施設内での虐待が対象で、医療機関は調査の対象になっていない。このため、介護に手のかかるタイプの高齢者が医療機関に集まっているとの指摘が以前からあった。

最近は、厚生労働省が精神科病院への認知症の入院基準を厳しくしたこともあり、民間マンションなどで認知症の人を受け入れ、外部の介護事業所がヘルパーを派遣して生活を支える、というやり方が都市部を中心に増えている。介護施設ではないことからチェックの目が届きにくいとも指摘される。

医師や医療機関が介護事業所の経営に関与する例も少なくない。高齢者は複数の持病がある人が多く、医療と緊密に連携を取ることができれば、家族も安心だろう。だが、医療は患者を治療する機能を担っているのであり、認知症の人の生活を支える介護とは本質的に異なる。介護サービスに医療の感覚を安易に持ち込むと、たとえ悪意はなくても、過剰な治療や管理を招きかねない。

身体拘束せずに認知症のケアを実践し、穏やかな生活を支えている介護現場はいくらでもある。これから都市部を中心に認知症の人が激増していく。今こそ介護の専門性を構築しないといけない。

■2015.3.3  インクルーシブ教育を考えるシンポジウム:当たり前に学び、育つ社会を 200人参加し豊中で /大阪
障害の有無にかかわらず地域の普通学級で学ぶ意義を語り合う「第13回インクルーシブ教育を考えるシンポジウム」(毎日新聞社・豊中市教職員組合主催、同市・同市教委など後援)が先月14日、豊中市立大池小学校で開かれ、約200人が参加した。

第8回のシンポでも登壇した元内閣府「障害者政策委員会」委員の大谷恭子弁護士が「『ともに学び、ともに育つ』教育から共生社会へ〜『障害者権利条約』批准と『障害者差別解消法』」と題して講演し、条約と法律のポイントを紹介した。講演要旨と、障害のある当事者や若手教員らが参加したパネル討論を報告する(コーディネーターは遠藤哲也・毎日新聞学芸部副部長)。


◇山崎さん、高校の受け入れまだまだ 藤下さん、一人一人の支援探りたい 太田さん、娘通じ次世代へつながり 浜田さん、見守りで子どもに変化

山崎
25年前、(当時認められていなかった文字盤受験が署名運動の末、認められて)高校受験をしたが落ちてしまい、ずっと悔いが残っていた。(施設入所を経て)昨年、再挑戦し合格。先生から豊中の教育方針は「一緒にやる」ということを教えてもらってきた。もっと勉強したいと思い、頑張ろうと受験を決意した。

高校では、友人が「いつも頑張ってるね」と声をかけてくれたり、ゲームに誘ってくれたりする。先生もちゃんと見てくれていて、うれしい。いろんな経験ができて、高校に入って良かった。

藤下
桜塚高定時制には82歳から16歳まで約180人が在籍し、いろんな生徒がいろんな背景を持ち学んでいる。全日制で人間関係などに悩み「やり直したい」と来る生徒や、小中学校で不登校を経験した生徒も多い。外国にルーツがあったり、障害がある生徒もいる。

言語コミュニケーションがとれない生徒が何か言いたそうなそぶりをしていて、同じ教室のやんちゃな生徒が「トイレに行きたい言うてるで」と教えてくれたこともあった。「ここはどんな学校か」と聞くと、ほとんどの生徒が「いろんな人がいることが面白い」と答える。互いを尊重し合う雰囲気がある。

太田
長女は豊中の公立の小中学校を経て、4度目の高校受験で桜塚高定時制に入学した。地域の小中学校に当たり前に進学したので、高校もと思っていたが、選抜制度の壁は厳しかった。繰り返し受験をしたことは、選抜制度に一石を投じることにはならなかったが、出会った人の価値観に影響を与えられたと信じている。

今、同級生だった子たちが家庭をつくり「ご近所さん」になってくれていることがうれしい。同級生の子どもと娘との付き合いが始まり、娘がここで暮らすことが次の世代にも(当たり前のこととして)広がっているのは頼もしい。

浜田
大阪南部で育ったので、豊中では支援の必要な子がどの時間もクラスメートと一緒に過ごし、支援の先生も入らないことに驚いた。「その子に合わせた課題をその子に合った場所でやるべきではないか」と悩んだこともあったが、周りの子の笑顔を見て「このやり方は間違っていない」と思えるようになった。

クラスに支援の必要な生徒がいる。「支援の必要な子をクラスの子に任せすぎかも」と思った時期があり、つきっきりになったことがある。だが同僚に「見守る形にした方がいい」と言われ、距離を置くよう心がけた。すると子どもたちは「サポートするから一緒にやってみよう」と、支援の必要な子に一生懸命取り組むようになった。

大谷
刺激的な実践で、全国に共有化したい。「生徒に任せたら」とアドバイスできる先輩教師がいたことはすごく大きい。文字盤使用についても、「この人が入学するためには配慮が必要だから」と入試で採用し、時間延長をする。これこそ合理的配慮だ。さらに、全員が進級、卒業できるのに障害のために進級も卒業もできないという状況があるなら、評価の基準を変えることも考えていかなければならない。

遠藤
これから取り組まれることは。

藤下
生徒一人一人がどんな気持ちで、どんな支援を必要としているのか、チームで話し合いながら課題を浮かび上がらせて取り組んでいきたい。

山崎
高校への障害者の受け入れはまだまだだ。ハンディを持つ生徒の親や先生の意見を聞き、高校が障害者をもっと受け入れるよう行動したい。

大谷
インクルーシブは差別と闘う最も効果的な教育方法だ。差別をなくすことは人類にとっての永遠の課題。それぞれがそれぞれの場できちんと発言していくよう、お願いしたい。



◇豊中市が全国のモデルに 大谷恭子弁護士

豊中市は、共生教育の先進地だ。豊中にとって、今回の国連の障害者権利条約、障害者差別解消法はどういう意味があるのか、とらえ直したい。

条約の全編を貫くのは「分け隔てなく、共に」というインクルージョンの理念だ。それも、自由、平等と同レベルの理念としてとらえられている。40年前から皆さんが取り組んできたことが、人権として明確に位置づけられた。差別解消法は、障害者は差別されている存在ということを踏まえ、どう差別が解消できるか、差別の内容を規定した法律。これら人権条約や人権法は、奪われた権利を回復するため武器として使うものだ。

条約は、地域社会での生活を権利とし、区別、排除、制限を差別とする。これは国際社会の差別に対する共通理解だが、他の人権条約にはない概念が「合理的配慮がないことが差別」というもの。欧州では「間接差別」ととらえられている。例えば、授業が墨字(一般の文字)の教科書のみで行われた場合、教科書自体は差別を目的にしたものではないが、目の不自由な人にとっては差別になる。

日本の特別支援教育は、その子の能力を高める支援が提供されていれば、分離しても問題ないというものだ。条約では、支援は普通学級の中で保障し、個別支援が必要な場合は完全なインクルーシブを目的とするよう規定する。だが文部科学省は、個別支援を特別支援と意図的に読み替えて分離しており、許してはならない。近く差別解消法の基本方針が決まり(2月24日に閣議決定)、ガイドラインがつくられるが、低い水準となる恐れがある。ガイドラインは最低ラインに過ぎないが「これさえ守れば」と各地の実践の水準が下がらないか心配だ。

豊中市の実践は(条約のいう)インクルーシブ教育を超え、地域で当たり前に学び、育つ共生教育のレベルまで到達していたと思う。専門家でなくても、誰もが当たり前に、障害のある人に手を差し伸べる。対して、インクルーシブ教育は、権利を自覚し、その権利を行使することからのスタートだ。豊中から実践を全国に発信し、共生教育、共生社会への道筋を示してほしい。



■人物略歴  大谷恭子
78年弁護士登録。日弁連人権擁護委員会「障害のある人に対する差別を禁止する法律に関する特別部会」委員。主な著書に「共生社会へのリーガルベース 差別とたたかう現場から」(現代書館)など。


◆主催者あいさつ

◇山崎靖彦・豊中市教組委員長
「あなたを気にしている人がいる」「道なき道でも、道は作ればいい」と言い切れる社会は、インクルーシブ教育を目指す上で鍵となる。来年4月に障害者差別解消法が施行される。法律にのみ解決をゆだねるのではなく、ともに生き、学び、育つ、教育の原点を見失ってはならない。

◇小笠原敦子・毎日新聞大阪本社編集局次長
13回に至る皆さんの取り組みに敬意を表したい。大谷さんの「崇高な理念でなく、当たり前のことにしよう」との言葉が心に響いた。障害を持つ子の教育について「インクルーシブって何?」という声はまだ多いのではないか。共生教育が当たり前になればと願う。


◆来賓あいさつ

◇上杉敏行・豊中市教委教育監
豊中の小中学校では障害の有無にかかわらず、子どもたちが同じ時間を共有し、学び合う姿を当たり前に見ることができる。一人一人の可能性を伸ばし、より望ましい共生社会を実現するため、共生教育の支援に力を注ぎたい。



■ことば

◇インクルーシブ教育
障害の有無で学ぶ場を分けるのではなく、すべての子が地域の学校の普通学級で学び、必要に応じた支援や配慮が受けられる教育制度。



■人物略歴

◇山崎誠さん
府立桜塚高定時制1年。脳性まひがある。74年豊中生まれで、中学校まで地域の学校に通った。

◇太田祥代さん
30歳の長女に知的障害がある。「障害」児・者の生活と進路を考える会運営メンバー。56年生まれ。

◇藤下功一さん
府立桜塚高定時制教諭。57年生まれ。

◇浜田真羽さん
豊中市立第五中教諭。同校勤務2年目で、1年生を担任。88年岸和田市生まれ。

■2015.3.3  社会福祉法人が温泉や巡回バス運営 赤字でも地域貢献  香川県 社会福祉法人香東園
地域住民が無料で利用できる巡回バスや買い物バスを運行したり、高齢者世帯のための配食サービスや緊急通報事業を行ったりしている特別養護老人ホームがある。香川県の社会福祉法人香東園(石川憲理事長)が運営する岡本荘だ。施設併設の「椿温泉」と特養ホームの専門性を生かした地域貢献事業は、地域のセーフティーネットとして大きな役割を果たしている。

高松市の南西部・川岡地区にある岡本荘(香川元紀施設長)は1988年に開所した入所定員90人の特養ホーム。地域住民の交流の場になっている椿温泉を併設しており、開館の午前10時前になると多くの住民が訪れる。

椿温泉はラドン含有の単純弱放射能冷鉱泉で、痛風や動脈硬化症などに効用がある。大浴場のほか、打たせ湯、踏み湯、水流風呂、ジェットバス、サウナもあり、入館料(大人550円、子ども350円)を払うと、各種リハビリ機器やマッサージ器が無料で、プロのマッサージ師による施術が格安で利用できる。保健師の健康相談も受けられる。

温泉は91年の岡本荘の増床工事の際に掘り当てた。当時、施設長だった石川理事長が「温泉に行きたい」という利用者の声と、施設に近い香南町や香川町(平成の大合併で高松市と統合)の住民が利用できるデイサービスがないことを憂い、何とかしたいと業者にボーリングを依頼した。

地域住民が施設の行事の際には必ず手伝いに来てくれることへの感謝とその恩に報いたいという思いがあった。

椿温泉ができたことで香南町や香川町の住民は、デイサービスと同等のサービスを利用できるようになった。川岡地区の住民には気軽に利用できる憩いの場、サロンとして欠かせないものになった。

そんな椿温泉と特養ホームの専門性を生かし岡本荘は、さまざまな地域貢献事業を展開している。

一つは高齢者の健康づくりと福祉のまちづくり。施設職員が講師になり、週1回の介護予防運動や月1回の健康づくり講座などを行うと共に、認知症の人や家族が安心して暮らせるよう、サポーター養成講座や予防教室も開いている。

二つ目は施設のバスを活用したコミュニティバスの運行。1日3便運行する巡回バスは、椿温泉を発着点に12カ所の停留所を1周約40分かけ巡回しており、住民は椿温泉への送迎はもとより、停留所間を無料で乗り降りできる。

また、毎週木曜日運行の買い物バスは、軽費老人ホームの利用者用に運行していたものを地域住民に開放した。スーパーマーケットのない川岡地区の高齢者にとって貴重な足になっており、巡回バスで椿温泉に来て買い物バスで買い物し、温泉に入って帰る人も多いという。

三つ目は高齢者の安否確認。「しあわせ弁当」(1食500円)は、施設の厨房で栄養士管理の下に作った高齢者向け の食事を、独居・高齢者世帯宅に施設職員が週6日届けるもの。安否確認を兼ね、現在6世帯に届けている。

また、緊急通報事業は、民生委員が必要と判断した高齢者世帯に通報装置を設置し、通報先として岡本荘が対応するもの。通報があれば職員がすぐに電話し、連絡が取れなければ訪問する。

台風などで警報が出た際には施設側から連絡。連絡が取れない場合は民生委員に連絡し、安否確認してもらうシステムも確立している。

こうした地域貢献事業に使う費用は全額施設が負担している。椿温泉開館当初こそ1日300人もいた来館者は、今はデイサービスの利用者を含め60〜70人ほど。温泉を沸かす灯油代や維持管理費などを入れれば相当の赤字になる。

巡回バスなどのガソリン代も大きな負担だ。それでも公益事業を続けるのは「福祉は単なるビジネスではなく、地域に信頼される施設でありたい」という思いがあるからだ。

地域住民にとってなくてはならない地域貢献事業を展開する岡本荘。長年かけて培ったセーフティーネットの取り組みが、介護報酬の減額により縮小されたり、できなくなったりしないことを願わずにいられない。

■2015.3.4  ポータブルにも「温水洗浄」…介護用トイレ 快適に
家庭のトイレに普及した「温水洗浄」機能が、介護が必要な人向けのポータブルトイレなどにも広がりつつある。温水でおしりを洗う快適さだけではない。人に拭いてもらう必要がなく本人の尊厳が守られることや、清潔さを保ってかぶれを防げる点でも評価されている。

人の手借りず 気兼ねなく
離れた場所にあるトイレまで移動しなくても済むよう、ベッド脇に置くのがポータブルトイレ。注目され始めたのは、これに温水洗浄機能が付いたタイプだ。備えつけのタンクに水を入れ、リモコンや座面わきのボタンを操作すると、ノズルから温水が出ておしりを洗う。

福祉用具レンタル・販売大手、ヤマシタコーポレーション東京東営業所の福祉用具選定士、大野木麻亜美さん(27)は「ポータブルトイレの購入者のうち『温水洗浄付き』を選ぶ人は少しずつ増え、今は1〜2割程度になった」と話す。

購入理由は「毎日は入浴できないが清潔にしたい」「手が不自由だから」など。拭き残しによるかぶれやただれを防げるのも大きなメリット。排せつ後に人に拭いてもらうことに気兼ねし、水分を取るのを控える人も少なくないという。「人の手を借りずに用が足せるのはありがたい、と喜ばれる」と大野木さん。

家庭の普通のトイレに温水洗浄便座が普及し始めたのは1990年代初めごろ。内閣府の調査によると、現在、一般家庭への普及率は7割を超えている。こうしたトイレを日常生活で使ってきた人たちが、介護を受けるようになってからも温水洗浄を希望するケースも少なくないようだ。

温水洗浄機能付きポータブルトイレは、TOTOやパナソニックエイジフリーライフテック、アロン化成などが製造している。価格は税抜きで13万〜16万円程度。便座の暖房、脱臭機能の有無や、手すりが可動式かどうかなどにより価格が異なる。

ポータブルトイレは、国が介護保険の給付対象にしており、購入費のうち10万円までは1割負担になる。ただ、温水洗浄機能付きの商品は「ぜいたくでは」という意見もある。温水洗浄機能付きを介護保険の対象に含めるかどうかは、自治体それぞれで判断している。

寝室設置型も
さらに快適なトイレを目指して、TOTOが開発したのが「ベッドサイド水洗トイレ」だ。文字通り、寝室に設置できる温水洗浄機能付きの水洗トイレ。汚物を細かく粉砕してから、細いホースを経由して屋外排水管に流す仕組みだ。比較的簡単な工事で設置できる。このトイレなら、ポータブルトイレのように介護者が汚物を捨てる必要はない。価格は税抜き約53万円と高額だが、今年4月以降は介護保険の給付対象になる。

介護関連企業で作る「シルバーサービス振興会」総務部長の久留善武さんは、「福祉用具は、介護が必要になってもそれまでの暮らしをできるだけ続けるための道具であり、選択肢が広がるのはいいこと」と話している。

■2015.3.4  過酷な夜勤は職員と利用者を危機に晒す
日本医療労働組合連合会が、介護施設等における「夜勤実態調査」を公表しました。全体の8割以上が「2交代制」で、そのうちの66%以上が「16時間以上の勤務」など、厳しい実態が明らかになっています。介護保険スタート以降、介護職員の夜勤は大きな問題点の一つとして指摘されてきました。改めて「夜勤負担の改善」の必要性を考えてみます。

特に厳しい「小規模多機能とグループホーム」の夜勤

今回の調査では、特養や老健などと比べて、グループホームや小規模多機能型などの地域密着型サービスにおける夜勤実態の厳しさが目立っています。後者は、母体法人の規模が比較的小さいゆえに「職員1人あたりにかかる負担」がどうしても大きくなりがちです。一方で、後者の利用者はすべて「認知症である」ことが前提であり、見当識障害から昼夜逆転の状態にある人も少なくありません。

平成18年度に、グループホームの「夜間ケア加算」がいったん廃止されました。その頃、深夜帯におけるホームの状況をいくつか視察したことがあります。深夜になっても、「もうすぐ家族が迎えに来る」と思ってユニットのリビングでずっとお茶を飲んでいる利用者。夜間に目が覚めて「ここはどこですか」と、居室から出てくる人。かつては、まだ暗いうちから仕事に出かけたり、ご飯の支度をする習慣があった人は、夜中の2時くらいからそわそわと起きてくるケースもあります。

そのたびに、たった一人の夜勤職員が、多様な入居者の心理状況に合わせて対応をしていきます。寝起きでふらついたりする人を、緊張感をもって見守る様子などを見ていると、夜勤を体験した者でなければ分からない大変さがひしひしと伝わってきます。

夜勤が続けば職員の集中力・判断力も低下

その後、精神科の医師に取材をしました。すると、「継続的な夜勤が過重になってくると、体内リズムが崩れる危険が増す」としたうえで、「交感神経と副交換神経の切り替えがうまく行かなくなり、判断力や集中力の低下も起きかねない」という指摘を受けました。

問題なのは、職員の健康不安もさることながら、先に述べた集中力や判断力の低下によって、「利用者の夜間の事故を防ぐ」ことが難しくなる点です。それでなくても、認知症の人の場合、「日中は穏やかでも、夜間になると不穏になる」というケースがあります。不安定な心理状態から反射的な行動が強まれば、転倒などのリスクも高まっていきます。

つまり、職員側の不健康な状態と認知症の人の不穏状態が積み重なる中で、利用者の安全性が脅かされることになります。これを防ぐには、最低でも「夜勤に入る職員」の勤務時間を抑えて3交代制とし、「判断力の低下」をカバーしあえる夜勤人数を確保することが必要でしょう。それさえもクリアできないようであれば、国がかかげた新オレンジプランも看板倒れに終わってしまいます。

何のための基金&人材確保策なのか?

そもそも今回の報酬改定で、国は「認知症対応」を重点化策の一つとしてかかげたはずです。ところが、グループホームや小規模多機能型といった「認知症対応のカギ」となるサービスは軒並み基本報酬が引き下げられました。ケアの質が低い事業者の安易な参入を防ぐ狙いもあるのでしょうが、質の高いケアを行なう事業所ほど経営コストがかかるという面もあり、むしろ良質な事業者が撤退してしまう危険と背中合わせになるといえます。

国としては、夜間から深夜の時間帯にかけての人員配置基準をもう一度見直し、基準を引き上げたうえで相応の基本報酬を付けることが望まれます。ケアの質が低い事業者に対しては、国の責任で指導者派遣などを行なったりすることで底上げを図るべきでしょう。そうしたコスト補填のための「地域医療・介護総合確保基金」なのではないでしょうか。

過酷な夜勤は、働く人の気力を奪います。「賃金は低くても、介護の仕事で頑張る」という人の最後の砦を奪ってしまえば、どんな介護人材確保策も意味をなしません。

田中元 (介護福祉ジャーナリスト)

■2015.3.5  生活保護、161万8,196世帯で過去最多を更新…厚労省調査
厚生労働省は3月4日、平成26年12月分の被保護者調査結果を公表した。生活保護の受給世帯は161万8,196世帯となり、過去最多を更新した。受給者数は217万161人で、過去2番目の多さとなった。

平成26年12月の被保護世帯数は、前月より3,296世帯多い161万8,196世帯。月によって変動はあるものの、上昇傾向が続いている。

受給者数は、前月比3,388人増の217万161人。平成26年3月の217万1,139人に次ぐ規模となっている。

世帯類型別では、高齢者世帯が前月比2,015世帯増の76万4,693世帯ともっとも多く、全体の半数近くを占めた。それ以外では、働くことができる世帯を含む「その他の世帯」27万9,536人、「傷病者世帯」26万8,247人、「障害者世帯」18万8,143人、「母子世帯」10万9,250人だった。

調査は、生活保護法に基づく保護を受けている世帯と、保護を受けていた世帯の受給状況を把握し、生活保護制度や厚生労働行政の企画運営に必要な基礎資料を得ることを目的に毎月実施されている。

■2015.3.5  重障児の放課後支援 デイサービス、碧の園増設、育成会「長年の夢結実」−伊東
社会福祉法人城ケ崎いこいの里(竹安広峰理事長)が運営する伊東市荻の碧の園(小川礼子園長)は、放課後等デイサービス・みつばちの施設「クローバー」を増築した。重度心身障害児のための放課後支援施設として4月から使用を開始する。4日に記念パーティーを開き、関係者らが訪れ完成を祝った。

10年以上前から重度心身障害児の放課後支援施設が強く望まれていた。市の助成を受け、昨年9月から工事が始まり、1月31日に完了した。

広さは76・40平方メートル。床は畳とコルクタイルが半分ずつになっている。水道は手洗い用と汚物用の2カ所あり、クーラー2基とクロゼット3カ所も完備している。入り口はスロープ式。利用者の安全を考慮し、同時に使用できる人数は2人を予定している。

記念パーティーには施設関係者や市職員らが集まり、施設の見学などを行った。竹安理事長は「今後も市の障害者福祉の充実を図っていきたい」、小川園長は「竹安富治前理事長が重度障害者のための施設に力を入れていきたいと生前話していた。実現できてうれしい」と話した。

市へ要望書を提出するなど活動を行ってきた伊東市の手をつなぐ育成会の山本真由美会長は「いろいろな人に支えられ、協力し合い、長年の夢が実を結んだ」と喜びを語った。

■2015.3.5  「車いす社長」の父との思い出ヒントに新たな介護トラベルサービス開発  ハンディネットワークインターナショナル
介護医療分野で革新的な機器やサービスの開発を手掛けるハンディネットワークインターナショナル(大阪府箕面市)の春山哲朗社長が、従来にはなかった介護トラベルサービスを創案し販売を開始した。開発のヒントになったのは、父と楽しんだ濃密なる家族旅行の思い出だった。その父とは同社の創業者で、『闘う車いす社長』として活躍したものの、昨年惜しまれながら亡くなった春山満さんだ。

家族全員で楽しめるオリジナル旅行提案

春山哲朗社長が開発したのは「グッドタイムトラベル」。介護が必要な高齢者と出かける新しい家族の旅を、家族に代わって総合的にサポートする。

高齢者にとって、旅行はつねに人気調査で上位に入る半面、介護を受け始めると、旅行とは縁遠くなりがちだ。春山社長は「介護は家族の負担が大きい。旅行をすると、家族の負担はさらに重くなってしまう。高齢者は家族に遠慮をして旅行をあきらめ、家族も日々の介護に追われるうちに、旅行への関心が薄れていく」と分析する。

「グッドタイムトラベル」は、旅行に伴う家族の負担を徹底的に軽減。家族全員で安心して楽しめるオリジナル企画旅行を提案する。家族から問い合わせを受けた時点で、ヒアリングを実施。介護の状況やリクエストなどを面談方式で確認した上で、旅行プランを作成。予算の見積もり、最終打ち合わせを経て、旅行へ出発する。もっとも注目されるのは、介護旅行の専門スタッフ「トラベルケアアテンダント」制の導入だ。

「トラベルケアアテンダントは介護職員初任者研修(旧ヘルパー2級)の資格を持ち、当社の教育プログラムを受けて訓練されたケアスタッフです。介護が必要な高齢者おひとりに対して、トラベルケアアテンダントが1名ずつ旅行に同行し、ご家族に代わって介護を担当させていただきます」(春山社長)

「グッドタイムトラベル」事業の開始日は2月23日。昨年亡くなった春山満さんの命日だ。新事業の着想は満さんと出かけた家族旅行から生まれた。

忙しくても出掛けた家族旅行の本当の理由

昨春、春山社長は満さんがこよなく愛した淡路島を家族とともに訪れた。大黒柱を失った喪失感は大きかったものの、不思議な充実感がみなぎってくることに気づいたという。

満さんは20代で、全身の運動機能が低下する進行性筋ジストロフィを発症。難病と闘いながら、介護や医療が立ち遅れている現実と直面。ビジネスチャンスととらえて介護医療機器の自社開発などに取り組んだ。車いすで全国を駆け回ったが昨年2月、力尽きて亡くなった。

仕事に明け暮れる毎日だったが、年に3回の家族旅行だけは欠かさない。満さんを中心に、満さんを介護する妻の由子さん、長男の哲朗さん、次男の龍二さん。春山家の家族4人が、いつもいっしょだった。

東北のスキー場。満さんが「俺も頂上へ行きたい」と言い出す。家族は満さんを車いすごとゴンドラに乗せて、ベレンデに降り立った。夏は海へ。満さんは全身まひながら海へ飛び込み、家族と騒いで楽しんだ。
残された写真には、いつも家族4人の笑顔が浮かぶ。春山社長は「旅のだいご味は非日常性。旅人の心を開放してくれます。年3回の家族旅行を続けることで、春山家は心を開いて話し合い、お互いを知ることができた」と振り返る。

「日常生活では言いづらい重たいテーマも、旅先なら話せることがある。父は『俺が死んだらなあ』などと、冗談めかしながらも大切なことをしっかり伝えようとし、私も多くを学ぶことができた。春山家は春山満という超重度の障害者とともに家族旅行を続けてきた。この家族旅行の体験を、介護と向き合うご家族のために生かせるのではないかと考えました」(春山社長)

父の経営哲学「狭く深く徹底的に」を受け継ぐ

春山社長は1985年生まれ。『春山満の息子』と呼ばれるのが嫌で、反発した時期もあったと明かす。アメリカでの武者修行を経て2007年、ハンディネットワークインターナショナル入社。昨年2月、満さんの死去を受けて、社長の重責を受け継いだ。

満さんから薫陶を得た経営哲学は「狭く深く徹底的に」。「グッドタイムトラベル」でも、顧客の満足を引き出すために、一切の妥協を許さない。旅行のプランニング段階で、高齢者の介護計画を立てているケアマネジャーやホームドクターの意見を聞き、宿泊先とも受け入れ態勢を入念に吟味。高齢者の万が一の体調急変にも備え、旅行先周辺での医療機関の情報収集なども怠らない。

玄関先に介護タクシーが到着したら、あとはすべてまかせてもらう。徹底したワンストップサービス体制を確立して臨む。旅行料金に関しては、宿泊代などとは別に、「トラベルケアアテンダント」の料金として、1泊2日で10万円が基本となる。

「宿泊先に関しても、私自身が視察して納得できるところしか推薦しません。バリアフリーをうたっていても設備が味気なくて、旅の華やぎが感じられない宿泊施設が見受けられるのは残念。家族風呂に当社の開発した入浴介助装置が設置されているホテルは、ゆったり安心してご利用いただけます」(春山社長)

非日常の体験で、高齢者も家族も心が揺さぶられ、精気がよみがえる。日本の家族の旅が変わるかもしれない。

■2015.3.5  故黒田裕子さんが活動けん引 神戸の被災者支援団体解散へ
阪神・淡路大震災や東日本大震災の被災者らを見守り、支えてきたNPO法人「阪神高齢者・障害者支援ネットワーク」(神戸市西区)が3日、解散を決めた。活動をけん引した前理事長の黒田裕子さんが昨年9月に亡くなったこともあり、区切りを付けた。「助かった命」を重んじ、寄り添い続けた20年。メンバーは「思いは受け継ぐ」とし、活動は形を変え各地で残っていく。

「このままでは、お年寄りがバタバタ死んでしまう!」

震災直後の1995年1月20日、神戸市内で、後に同ネット発起人の一人となる中辻直行さん(故人)らが声を上げた。寒さに震え、食事やトイレに困っていた高齢者。急いで場所を確保し、医師らが対応したのが始まりだった。
6月には、同様の活動をしていた黒田さんも合流し、同ネットが発足。市内最大だった西区の西神第7仮設住宅に拠点を設けた。

「絶対に孤独死を出さない」が合言葉。行政の手が届かない24時間の見守りを始めた。同ネット理事長で医師の梁勝則(リャンスンチ)さん(59)は「そんな取り組みは例がなかった。まさに現場から出てきた発想」と振り返る。
仮設から復興住宅へと移ると、心の問題が浮かび上がる。

99年には、地下鉄伊川谷駅構内に「伊川谷工房」を設けた。お茶会を開き、寂しさを癒やす。
取り組みは、東北にも広がった。宮城県気仙沼市内の避難所や仮設住宅で24時間の見守りを実施した。

     ◇

中辻さんが2013年に亡くなり、14年には黒田さんも逝った。メンバーも多くが65歳を超えた。
伊川谷工房は3月末に閉じる。復興住宅から10年近く通った濁池文子さん(76)は「ここは最高やった。なくなるんはつらいですわ」と涙を浮かべる。
東北からも3月末で引き揚げる。気仙沼市面瀬中仮設住宅の尾形修也自治会長(70)は「神戸の方々に教わったように、地域で連携し支援が切れないようにしたい」と力を込めた。

同ネットの宇都(うと)幸子事務長(70)は「高齢者の見守りは今も不十分。黒田さんと同じようにはできないが、それぞれの現場で引き継いでいく」。今後は有志で任意団体を作り、復興住宅の支援を続けたいという。

■2015.3.5  黒田裕子
2014年9月24日
国内外で災害ボランティアに尽力 黒田裕子さんが死去

阪神・淡路大震災をはじめ、国内外の災害で被災した高齢者らの支援を続けてきたNPO法人「阪神高齢者・障害者支援ネットワーク」(神戸市西区)理事長で、看護師の黒田裕子(くろだ・ひろこ)さんが24日午前0時27分、肝臓がんのため島根県内の病院で死去した。73歳。島根県斐川町(現出雲市)出身。自宅は宝塚市。葬儀・告別式は家族、親族のみで行う。後日、お別れの会を開く予定。

看護師として終末期医療や在宅看護に取り組み、宝塚市立病院副総婦長を経て同市老人保健施設設立準備室事業主幹を務めていた1995年、阪神・淡路大震災の発生を機に退職。神戸市西区の仮設住宅を拠点にボランティア活動を始め、被災者の要望を聞きサービスにつなぐ訪問や入浴介助、医療相談、住民が集う「ふれあい喫茶」運営などに取り組んだ。医師らと共に同ネットワークを設立し、2004年の法人化後に理事長に就いた。

被災者が災害復興住宅に移ってからも、時には泊まり込みで見守り続けた。04年の新潟県中越地震や台風23号など国内のほか、トルコやスマトラ沖、中国・四川、ハイチなど海外の地震被災地でも奔走。東日本大震災の発生後は宮城県気仙沼市の仮設住宅を定期的に訪れ、震災関連死を防ごうと尽力した。被災者一人一人の暮らしに目を向け、寄り添う姿勢は一貫していた。

NPO法人「災害看護支援機構」「しみん基金・KOBE」の各理事長、「日本ホスピス・在宅ケア研究会」副理事長、宝塚市の政策アドバイザーなどを兼務。内閣府の災害時要援護者の避難対策に関する検討会、兵庫県の復興10年委員会健康福祉部会の各委員も務めた。各地の看護大学や看護専門学校で災害看護などの講義も担当。12年には本紙「随想」を執筆した。

1997年神戸新聞社会賞、2005年井植文化賞、08年防災功労者防災担当大臣表彰、11年兵庫県社会賞を受けるなどした。




2014年10月10日
患者と医師の橋渡しに 黒田裕子さん悼み足跡たどる

国内外の被災地支援に奔走し、先月24日、73歳で亡くなった看護師の黒田裕子(ひろこ)さん。災害看護分野だけでなく、終末期医療の分野でも「現場主義」を貫き、患者に寄り添い、医師と患者やその家族との橋渡しに尽力した。活動をともにした人たちに、足跡を振り返ってもらった。


1992年、終末期医療の在り方を考える「日本ホスピス・在宅ケア研究会」が、兵庫を拠点に設立された。医療とケア、在宅福祉支援の問題に関わる人が対等な立場で参加。黒田さんは設立に関わり、2000年のNPO法人化から副理事長を務めた。この夏まで理事長だっただいとうクリニック(姫路市白銀町)院長の大頭信義さん(72)は「市民目線を貫き、会の活動を通じてホスピスの理念を浸透させた」と、“相棒”をたたえる。

数えるほどしかなかったホスピスは現在、約300施設に増えた。理事会では、運営などをめぐって口論にもなったが、「彼女は直感を信じて進むタイプ。だからこそ周囲を巻き込む力はずばぬけていた」と大頭さん。

黒田さんが会長を務めた「ひょうごがん患者連絡会」(神戸市西区)で活動した梅垣由美子さん(46)によると、事務所近くに住む乳がん末期の女性から相談を受け、仕事の合間に家を訪れていたという。黒田さんが医師に女性の要望を伝えることもあった。連絡会の相談電話は、スタッフらと24時間受け付けた。「患者に『夜中でもいつでも、気にせず電話して』と言っていた。彼女の存在が、患者に安心感を与えていた」と話す。

「患者とその家族の声を医師に届けられていますか」

市民団体「広島ホスピスケアをすすめる会」代表で在宅ホスピス看護師、石口房子さん(62)は、94年の同研究会全国大会で聞いた、黒田さんのそんな問い掛けを鮮明に覚えている。

医師と患者やその家族との間に立ち、円滑なコミュニケーションのため尽力する。今でこそ普遍的な看護の姿勢だが、「先駆的で、終末期を担う看護師として本質を突く発言だった」という。石口さんはその後も、勉強会などを通じ黒田さんと親交を深めた。

黒田さんは近年、阪神・淡路大震災以降に取り組んできた、お年寄りの孤独死を防ぐ見守り活動を踏まえ、地域全体をホスピスと考え、社会資源を活用できないか、模索していた。大頭さんは「患者が残された時間を有意義に過ごすため、その質を問い続けた人だった」と振り返る。

古里、島根県のホスピスで臨終に立ち会った石口さん。亡くなる5日前、車いすで病院の屋上に出て、夕焼けの古里を眺めながら黒田さんが「これが見たかったのよ」と満足そうにつぶやくのを聞いた。「看護師約50年の労苦を癒やした瞬間だったのでは」と石口さんは話している。

■2015.3.5  防災に障害者の視点は不可欠だ 日本財団会長・笹川陽平
3回目となる「国連防災世界会議」が3月14日から5日間、宮城県仙台市で開催される。東日本大震災をはじめ各地の大災害では障害者や高齢者など「要援護者」が災害の矢面に立たされ、より多くの被害を受けた。

これを受け、向こう10年間の世界の防災戦略を策定するこの会議では、今回初めて「障害者と防災」が公式会議の正式なセッションに盛り込まれた。

 ≪横浜、神戸に次ぐ世界会議≫

会議には全国連加盟国193カ国の代表や国際NGOなど1万人を超す人が参加する。災害多発国としてハード、ソフト両面の豊富な知識を持つ日本は、今後の国際的な防災戦略を主導する立場にある。災害被害を少しでも減らすためにも会議では、要援護者を視野に置いた防災・減災害対策が打ち出される必要がある。

外務省の資料によると、2000年から12年までに世界で発生した自然災害で29億人が被災し、120万人が死亡。損害額は1・7兆米ドル(約202兆円)に上り、被害の90%が途上国に集中した。

こうした中、国連防災世界会議は1994年に横浜市、2005年には神戸市で開催され、横浜会議では「より安全な世界に向けての横浜戦略」が採択された。神戸会議では直前(04年12月)に22万人の犠牲者が出たスマトラ沖大地震・インド洋大津波が起きたこともあり、世界各国の閣僚級が参加して、15年まで10年間の「兵庫行動枠組」をまとめた。

兵庫行動枠組では防災を国や地方の優先課題に位置付け、早期警報の向上、防災文化の構築、公共施設やインフラの耐震性の強化などを打ち出したものの、障害者に関しては「最も脆弱(ぜいじゃく)な地域やグループに焦点を当て、災害準備や緊急事態対応計画を準備する」といった簡単な記述を盛り込むにとどまった。

しかし神戸会議の後、ミャンマーで13万人を超す死者・行方不明者が出た大型サイクロン・ナルギス(08年5月)、31万人の死者が出たハイチ地震(10年1月)、さらに11年3月の東日本大震災と大災害が続き、多くの障害者や高齢者、子供が犠牲となった。

≪向こう10年間の国際防災戦略≫

日本財団は1986年、世界の防災に顕著な功績を挙げた個人や組織を表彰する国連笹川防災賞を設け、国際防災の強化を目指してきた。今回はこれら関係機関とも協力して東京やニューヨーク、バンコクなど世界7都市で障害者と防災をテーマにした国際会議を重ね、最終的に世界会議に「障害者と防災」のセッションを盛り込むことができた。

東日本大震災で障害者手帳所有者1655人が犠牲となり、死亡率が当該地域住民の約2倍1・5%に達したことが初めて数字で裏付けられた点も契機となった。

災害が発生した場合、障害者にはあまりにも多くの困難が待ち受ける。聴覚障害者は避難の呼び掛けがあっても情報を受け取れず、視覚障害者は避難しようにも電柱や建物の倒壊など周囲の状況を把握できない。倒壊した家屋の中に取り残された聴覚障害者や言語障害者は「誰かいますか」と声を掛けられても、返答ができない。

車いすなど肢体不自由者が混乱の中で避難するのは難しく、避難場所に着いても車いすのため、人に遠慮せざるを得ない。避難生活で体調を悪化させ死亡する「震災関連死」も東日本大震災では既に約3200人に達し、阪神・淡路大震災の3倍を超えた。

世界会議では兵庫行動枠組の後継となる新たな国際防災の枠組みを策定するほか、日本が多くの災害から得た教訓や防災技術、ノウハウ、さらに東日本大震災の経験や被災地振興の現状を報告。障害者と防災のセッションでは地域防災と障害者の関わりなどについて議論が行われる予定だ。

 ≪復興、地域創生にも道拓く≫

今年は国際社会の共通の開発目標である「ミレニアム開発目標」(MDGs)の達成期限を迎え、9月の国連総会では「ポスト2015年開発アジェンダ」が採択される予定。年末には国連気候変動枠組み条約の「第21回締約国会議(COP21)」もフランス・パリで開催され、20年以降の世界の気候変動・温暖化対策の大枠が合意される見通しだ。

近年の異常気象が地球温暖化の影響か単なる自然現象か、専門家の研究を待つしかないが、地震に伴う大津波と同様、巨大台風が引き起こす高潮も大きな脅威となりつつある。世界規模の災害が今後、間違いなく増える気がする。経済成長が著しい東南アジア諸国連合(ASEAN)などで引き続き新たな開発が進む。その場合、障害者や高齢者を守る視点をどこまで持つかによって発生する被害の程度も変わる。「弱い人々」に目線を合わせ防災・減災対策を取れば、その分、人的被害は確実に減るということだ。

障害者に視点を当てた地域づくりこそ、安心して暮らせる地域社会の建設や東日本大震災の被災地復興、ひいては喫緊の課題である地域創生にも道を拓(ひら)く。(ささかわ ようへい)

■2015.3.6  奈良の社福法人が高齢者のための介護食レシピ本 一工夫で食べやすく
障害者の就労や生活支援を行う社会福祉法人「わたぼうしの会」(奈良市)が、家庭で調理でき、高齢者が食べやすいよう工夫を凝らしたレシピを紹介した料理本『わたしの幸せごはん 高齢者のための介護食』(かんよう出版)を刊行した。

「長芋の桜えびグラタン」「すき焼き風豆腐オムレツ」−。本には食欲をそそる90のレシピがずらりと並ぶ。どれも噛む力や飲み込む力が弱い高齢者などが食べやすいように調理された料理ばかり。焼き鮭には小さな切り込みを入れたり、じゃがいもは口に入れやすいようほぐしたり。食が細くなりがちな高齢者に十分栄養を取ってもらおうと随所に工夫がみられる。

本が作られたのは、同会とボランティア団体「友愛おべんとうグループ」(奈良市)、NPO法人「満天星」(生駒市)が共同し、平成21年から実施している「高齢者が楽しんで食べられる料理レシピコンクール」がきっかけ。4年間で集まったレシピの数は300近くに上る。同会職員で介護食士、家令牧(かれい・まき)さん(53)は「手元に置いておくだけでは宝の持ち腐れ。多くの人にレシピを伝えたかった」と話す。

「本にあるレシピはどれも、応募してくれたみなさんの『家庭の味』ばかり。高齢者だけでなく家族やお子さんにも楽しんで食べてもらえる」と家令さん。

本は非売品で現在600冊を用意。希望者には郵送で無料配布している。問い合わせは、わたぼうしの会(電)0742・40・1040。

■2015.3.6  高齢者が食べやすいよう工夫 家庭の味の「介護食」レシピ本が完成
障害者の就労や生活支援を行う社会福祉法人「わたぼうしの会」(奈良市)が、家庭で調理でき、高齢者が食べやすいよう工夫を凝らしたレシピを紹介した料理本『わたしの幸せごはん 高齢者のための介護食』(かんよう出版)を刊行した。

「長芋の桜えびグラタン」「すき焼き風豆腐オムレツ」−。本には食欲をそそる90のレシピがずらりと並ぶ。どれも噛む力や飲み込む力が弱い高齢者などが食べやすいように調理された料理ばかり。焼き鮭には小さな切り込みを入れたり、じゃがいもは口に入れやすいようほぐしたり。食が細くなりがちな高齢者に十分栄養を取ってもらおうと随所に工夫がみられる。

本が作られたのは、同会とボランティア団体「友愛おべんとうグループ」(奈良市)、NPO法人「満天星」(生駒市)が共同し、平成21年から実施している「高齢者が楽しんで食べられる料理レシピコンクール」がきっかけ。4年間で集まったレシピの数は300近くに上る。同会職員で介護食士、家令牧(かれいまき)さん(53)は「手元に置いておくだけでは宝の持ち腐れ。多くの人にレシピを伝えたかった」と話す。

「本にあるレシピはどれも、応募してくれたみなさんの『家庭の味』ばかり。高齢者だけでなく、家族やお子さんにも楽しんで食べてもらえる」と家令さん。

本は非売品で現在600冊を用意。希望者には郵送で無料配布している。問い合わせは、わたぼうしの会((電)0742・40・1040)。

■2015.3.7  介護保険料6千円超の自治体が3割 65歳以上の月額
4月に改定される65歳以上の介護保険料の見込み額について、政令指定市と県庁所在市、東京23区の74自治体に朝日新聞がアンケートしたところ、3割の自治体で基準額が月6千円を超すことがわかった。最高額は大阪市の6758円。500円以上の値上げとなる自治体が約6割に達した。

高齢者の急増で介護保険の給付費は膨らみ続け、2000年度の3・6兆円から14年度は10兆円に達した。今後も保険料の上昇は避けられない見通しだ。

65歳以上の保険料は、市区町村ごとに決める。3年に1度改定される。朝日新聞は2月下旬までに、74自治体に15〜17年度の介護保険料(所得による段階制保険料の基準となる額)を聞いた。71自治体から回答があった(回答率96%、試算段階や議会で議決前の数字含む)。

71自治体のうち、いまの介護保険料(12〜14年度の基準月額)が6千円を超す自治体はない。4月の改定で、大阪市のほか、和歌山市(6600円)、青森市(6394円)、東京都港区(6245円)、津市(6200円)、那覇市(6150円)など21自治体(30%)で6千円台にのる。

据え置き・減額となるのは3自治体のみ。現在と比べて500円以上上がる自治体は45。大津市(1千円)、東京都港区(995円)、横浜市(990円)など、約1千円の大幅値上げとなる自治体もあった。

また、介護保険がスタートした00年度と比べて保険料が2倍以上に上昇した自治体が34%あった。さいたま市では、制度導入時の1943円が4月から5263円となる見込みで、2・7倍になる。

いまから10年後、「団塊の世代」が75歳以上になる25年度の保険料も聞いたところ、44自治体が推計していた。月8千円以上が9割を占め、東京都千代田区など2自治体は月1万円を超すと見込む。

アンケートを送った74自治体の高齢者数は、全国の65歳以上人口の約34%にあたる。中小規模の自治体でも同様に値上げが相次ぐ見通しだ。国が1月に示した試算では、いまの全国平均4972円は、4月以降は5千円台半ばまで上昇すると見込まれている。


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■2015.3.8  高齢者虐待が最多 県調査、介護施設で 昨年度 埼玉県
昨年度の1年間に県内の介護施設で職員から虐待を受けた高齢者が前年度より1人増の16人に上り、統計を取り始めた2006年度以降最多だったことが県の調査でわかった。家族や親族から虐待を受けた高齢者も、前年度より5人増の624人に上っており、県が対策に乗り出している。

県高齢介護課によると、施設で虐待を受けた人の年齢別内訳は70代が3人、80代が7人、90代が5人、100歳以上が1人。いずれも自力で立ち上がったり歩いたりできない要介護度3以上の高齢者だ。身体的虐待が大半で、?をたたかれたり、入れ歯を無理やり口に押し込まれたりといった事例を把握したという。

また、家庭内で家族らから虐待を受けた高齢者のうち、8割近い483人が女性だった。一方、虐待した側の4割が息子で、2割は夫。9割近くが同居しているケースだった。虐待した側の半数近くが未婚の子――という家庭環境も浮かび上がった。

家庭内の高齢者虐待は周囲の人から見えづらいが、相談・通報件数は09年度以降、5年連続で1千件を超えている。特に増えているのが警察から自治体への通報で、09年度の186件から13年度は371件に倍増した。県の担当者は「地域の人の意識が高まっており、気づいたことがあれば110番通報をしているのでは」と推測する。

家族からの虐待は、介護ストレスの精神的負担が身体的虐待につながることがある。昨年3月には川越市で40代の息子が70代の認知症の母親を殴って死なせる事件も起きた。

虐待が深刻化する前に対応するため、県は06年度から「高齢者虐待対応専門員」の養成に力を入れている。今月までに、市町村職員や保健師、社会福祉士ら延べ1183人が研修を受け、市町村窓口や地域包括支援センターで相談業務に就いているという。

県の担当者は「専門員は、高齢者虐待の未然防止や早期対応に努めている。家族の負担を減らすために受けられるサービスがないか、市町村に相談してほしい」と呼びかけている。

■2015.3.8  認知症カフェ、交流の場に 京都・南丹の福祉施設に開設
京都府南丹市の「アイリス福祉会」は7日、認知症初期の患者や家族が和み、気軽に相談もできる「認知症カフェ」を、同市八木町西田の高齢者福祉施設に開設した。丹波での開設は京丹波町のNPO法人に続き2例目。月2回実施で、地域にも広く開放し、予防につながる交流も図る。

主に認知症初期や若年性認知症の患者ら、施設利用の少ない人の居場所づくりを想定する。予防事業も兼ねて、月2回のうち1回は機能訓練などを計画。既設の窓口で、本人や家族から認知症への対応や行政支援について相談も受ける。

開催日は飲み物と菓子のセットを100円で提供する。既存の喫茶コーナーを活用。ソファや景色を一望できるカウンター席、観葉植物を置き、ホテルのロビーのような、お出かけ気分を楽しめる場にした。

セレモニーでは、餅つきやぜんざいの振る舞い、地元グループによるよさこい披露もあった。開催日時の詳細は今後決める。問い合わせは同会グループホームかたらいの家

■2015.3.8  あるパラリンピック・チームドクターが見た「報道と現実のギャップ」
大分中村病院の理事長であり、社会福祉法人「太陽の家」の理事長でもある中村太郎氏。「パラリンピックの父」と呼ばれる父親の中村裕氏(ゆたか/1927年〜1984年)の遺志を受け継ぎ、パラスポーツにも深く携わっている。シドニー(2000年)、アテネ(2004年)のパラリンピックではチームドクターを務め、パラリンピアンのスポーツとの向き合い方を間近で見たことで、パラスポーツに対する考えも変わっていったという。そんな中村太郎氏に、まずはパラスポーツの現状などを語っていただいた。


伊藤数子(以下、伊藤)
2013年の9月に、2020東京オリンピック・パラリンピックが決まりましたが、中村先生は最初にどんな風に思われましたか?

中村太郎(以下、中村)
単純に良かったなと思いました。

伊藤
私ももちろん大喜びだったんですが、東京に決まって以降、何か変化は感じていらっしゃいますか?

中村
そうですね。今回の東京に決まったことで、マスコミやメディアが、「東京オリンピック」じゃなくて「東京オリンピック・パラリンピック」って必ずパラリンピックを一緒に挙げてるのがすごく新鮮な感じを受けます。

伊藤
そうですね。

中村
おそらく1964年の東京オリンピックの時に、パラリンピックがあったのを知っている人ってほとんどいないんですよね。今でもそうかもしれませんが、オリンピックはみんな覚えているでしょうけど、パラリンピックがあったというのは知らない。日本は世界で初めて2度目の、オリンピック・パラリンピックを開催する国になるんです。ロンドンも、オリンピック・パラリンピック両方を開催したのは2012年が最初ですよね。

伊藤
そうなんですよね。私も、1964年の東京パラリンピックは数年前に知ったんです。そういう意味では、こうして人々が知るようになったということは、50年前に比べると、ものすごい進歩ですよね。

中村
そう思います。

伊藤
こうして”パラリンピック”という言葉を知っている人が増えていく中で、パラスポーツに対する理解というところの広がりは、どう感じていらっしゃいますか?

中村
以前に比べれば本当に、知っている人が増えたと思います。例えば、車いすテニスの国枝慎吾さんなどが、全英オープンなどで優勝すると、普通のメディアもそのことを書くようになっていますし。本当にずいぶん変わってきたなと思います。

伊藤 そうですね。先生が2002年に書かれた著書『パラリンピックへの招待』の中で、2000年のシドニーパラで、大々的にパラ選手が取り上げられる機会も増えたことがうれしい反面、現実の選手とギャップを感じていたと書いていらっしゃいました。それはどういうことでしょうか?

中村 実は、98年の長野パラリンピックの時にも、朝のテレビのニュースでいきなりパラリンピックで誰が金メダルを取ったとかっていう報道が始まっていました。普通のスポーツ新聞にもパラリンピックの結果が載るようになっていて、なんでこんな急にパラリンピック盛り上がっているんだろうなって思っていたんです。その後、シドニーでオリンピック・パラリンピックが開催されて、マスコミの方も普段は何も取り上げないんですけど、パラリンピックが近付いてくると、だんだん選手の取材とかをしてくれるようになったんです。ただ、そういうマスコミの報道の仕方と、そんなに恵まれた環境でやっているわけではない選手の姿にギャップを感じて、こういう本を書こうという気持ちになりました。実際のところをみんなに知ってもらおうという思いでした。

伊藤
メダル中心の報道の中からは、パラリンピアンの実際の姿が見えてこないということですよね。

中村
そうですね。大体やっぱり、障害で1回落ち込んでスポーツに出会って社会復帰したみたいなストーリーが多いと思います。僕は実際にシドニーパラにチームドクターとして帯同して、多くの選手が競技スポーツとして取り組んでいるという、そういう印象を持ちました。

伊藤
パラリンピックに帯同されたのは、シドニーが初めてだったんですか?

中村
そうです。1984年に大学を卒業して、父親の関係もあって、大学を卒業してすぐにパラスポーツに関わってきました。大分の車いすマラソンや、当時のフェスピック(現在のアジアパラリンピック)で、ずっとチームドクターをしてきたんですが、パラリンピックにチームドクターとして帯同したのは、シドニーが初めてでした。

伊藤
チームドクターのお仕事は具体的にどんなことがあるのでしょうか?

中村
まずひとつは、障がいのレベルでクラス分けを行ないます。大分車いすマラソンなどでもクラス分けをしていたのですが、クラスファイアー(クラス分け委員)の資格を持っている人がやるわけではなくて、僕が先輩とか後輩の医者に声を掛けて、「今度車いすマラソンがあるから来てくれ」みたいなことでやっていました。でも、シドニーパラでは、すごくクラス分けが厳密で、それにドーピング検査もその時から始まったんです。

伊藤
日本国内で行なわれる大会とパラリンピックで違いを感じたんですね。

中村
正直、僕はずっと、広い意味でパラスポーツって社会復帰のためのリハビリだろうと、それまで思っていたところがありました。しかし、パラリンピックに行って、本当にこれは競技スポーツというか、エリートの方たちのスポーツなんだという認識に変わりました。

伊藤
そういうところで、報道と現場で見る選手たちの姿にギャップを感じたんですね。それを伝えていこうということで、執筆されたわけですものね。

中村
最初はもっと学術書みたいな感じで、医学書に近いものだったんですけど、編集者の方が、こういう一般向けに出しましょうというので、途中に選手のストーリーを入れた本になっていきました。

伊藤
読みやすくしていただいた感じですよね。

中村
そうですね。多分この本の中で課題にあげている、商業主義であったりドーピングの問題、先進国と途上国の車椅子の差などは、2002年当時とあまり今も変わってないと思いますけどね。

伊藤
本当にそう思います。パラリンピックのあり方のところで、IPC(国際パラリンピック委員会)がIOC(国際オリンピック委員会)に近づいて行って、オリンピックのステータスをもらってパラリンピックの地位を上げよう、価値を上げようとしているところに疑問を呈していらっしゃる。悪いことではないと思うんですけど、どうせだったらオリンピックとパラリンピックをひとつの大会として開催しようというような、あまりにも気軽にそういうふうに言う人が今増えてきているので。そこのところはすごいご指摘だなと思いました。

中村
パラリンピックはやっぱりパラリンピックの歴史とか文化を大事にしていけばいいと思うんですけどね。日本代表の誇りという部分と、トレーニングを重ねた上で代表に選ばれるという部分では同じなんでしょうけど、歴史的な背景だとか文化とかは違っているのかなと思います。


中村太郎(なかむら たろう)
1960年9月14日生まれ。大分県出身。大分中村病院の理事長と、社会福祉法人「太陽の家」の理事長を務めている。父である中村裕(ゆたか)氏は、1964年の東京パラリンピック開催に尽力され、「パラリンピックの父」と呼ばれているが、その意思を受け継ぎ、障がい者の方が社会復帰を目指すサポートや、パラスポーツにも深く携わっている。2000年のシドニーパラリンピック、2004年のアテネパラリンピックではチームドクターを務めた。パラスポーツに関する著書としては、2002年「パラリンピックへの招待―挑戦するアスリートたち(岩波書店)」がある。

伊藤数子(いとう かずこ)
新潟県出身。NPO法人STANDの代表理事。2020年に向けて始動した「東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会」では顧問を務めている。2003年、電動車椅子サッカーのインターネット中継を企画、実施。それをきっかけにしてパラスポーツと深く関わるようになった。現在、パラスポーツの競技大会のインターネット中継はもちろん、パラスポーツの楽しみ方や、魅力を伝えるウェブサイト「挑戦者たち」でも編集長として自らの考えや、選手たちの思いを発信している。また、スポーツイベントや体験会を行なうなど、精力的に活動の場を広げ、2012年には「ようこそ、障害者スポーツへ」(廣済堂出版)」を出版した。

■2015.3.8  福島県東部の13介護施設、入所制限  介護職員の数が足りないのが原因
東日本大震災と東京電力福島第1原発事故で被災した福島県東部15市町村にある特別養護老人ホームと介護老人保健施設計54施設(未再開の9施設を除く)のうち、約4分の1にあたる13施設が入所者の受け入れを定員未満に制限していることが県や市町村への取材で分かった。

津波や原発事故による避難者のうち若い世代の帰還が進まず、高齢化率が上がって入所希望者が増えたのに対し、介護職員の数が足りないのが原因。県は国と昨年4月から、県外からの介護職の就労を促す事業を始めたが、事業の利用者は伸び悩み、制限解除のめどは立たない。

受け入れ制限施設数が最も多いのが南相馬市だ。特別養護老人ホーム(特養)5施設のうち、宿泊が原則認められない避難指示解除準備区域の1施設を除く4施設が再開した。だが計300人の定員に対し、受け入れを254人(今年2月現在)に絞る。リハビリ中心のサービスを行う介護老人保健施設(老健施設)も、2施設のうち1施設が制限し、2施設を合わせたベッド稼働率は83・5%。

市によると、震災前に25・9%だった65歳以上の高齢化率は、今月1日現在で33・6%と上昇。高齢者が住み慣れた場所に戻る一方、若い層は介護職に就いていた人を含め20〜30代の女性を中心に避難先への定着が一部で進んでいるためだ。自宅介護の担い手を失って施設入所を望む高齢者が増えたのに対し、市内計6施設の介護担当職員は震災前の計81人から76人(2月現在)に減少。避難で抜けた中堅の穴を新人で埋めているため、減った数字以上に人手が足りない。一部の施設は再開後に増床したにもかかわらず、受け入れ制限せざるを得ない状況だ。

入所待機者は、震災前の1109人より約8割増の1973人。市の担当者は「今の職員の数では定員まで受け入れると適切な対応ができない」と話す。

避難者向けの仮設住宅や復興住宅を受け入れるいわき市は特殊な事情を抱える。昨年12月現在で2万4150人の避難者が暮らし、うち高齢者は6110人。避難元のうち3町は同市内で仮設による施設再開を目指すが、再開にこぎつけたのは楢葉町の老健1施設だけ。浪江町の施設再開は2016年度以降にずれ込む予定で、双葉町は再開時期のめどが立っていない。いわき市民も含め入所待機者は増える傾向だ。

国と県は県外から被災地域に介護職員を呼び込むため、就職準備金や研修費用を最大45万円まで無利子で貸し付け、1・2年間の勤務で返還を全額免除する取り組みを昨年4月から始めた。だが、利用者は20人と当初予定した数百人規模に遠く及ばない。

■2015.3.10  障害者芸術・文化祭 県、来年度は独自開催
昨年7〜11月に鳥取県内で開催した「全国障がい者芸術・文化祭とっとり大会」の実行委の解散総会が9日、鳥取市内で開かれた。県は、障害者への理解が深まった大会の成果を生かし、新年度も県独自に舞台芸術祭や作品展を行う方針を示した。

同大会には1745人が出演し、延べ4万3千人が来場。ボランティア1200人が参加し、県は障害者の社会参加意識の向上や交流、理解促進につながったと報告した。

新年度は同大会ほどの規模ではないが、音楽や演劇、ダンスなど舞台芸術の発表の場として10月に鳥取市で「あいサポート・アートとっとり祭り」を開催。12月には米子市美術館で障害者芸術・文化作品展を開く。

障害者芸術文化活動の情報発信拠点として、倉吉市の白壁土蔵群に「あいサポート・アートインフォメーションセンター」を設置。相談員2人が創作活動や発表に関する相談にも応じる。大会を契機に発足した障害者と健常者による「じゆう劇場」の活動支援も継続する。

■2015.3.10  東京都*届け出必要な「有料老人ホーム」と認定 岩江クリニックが運営する介護事業所が利用者を身体拘束していた問題
東京都北区の民間マンションで、医療法人社団「岩江クリニック」(同区)が運営する介護事業所が利用者を身体拘束していた問題を巡り、都は10日、このマンションが老人福祉法に基づく有料老人ホームに該当すると認定したことを明らかにした。都は同日、同法に基づく届け出をするよう指導するとともに施設への立ち入り検査を実施した。

一方、北区は2月に入所者159人中20人が身体拘束による虐待を受けたとして改善を指導したが、その後の調査で計95人に対する虐待を認定した。クリニックはホームページ上で、身体拘束について「利用者の生命・身体を保護するために必要やむを得ないと医師が判断し、家族に指示して行わせている」などと主張している。

都が無届けの有料老人ホームと認定したのは、北区内にある「稲付第一マンション」「シニアレジデンス赤羽」「シニアパレス赤羽」の3棟。これまでの調査を基に、同クリニックが利用者の受け入れを決め、食事サービスなどを提供する有限会社「メディワーク」、3棟を所有する不動産会社3社が一体となってホームを運営していたと判断した。

有料老人ホームは高齢者に住居や食事、介護などを提供する施設で、都道府県への届け出が必要となる。帳簿の保存や、サービス内容などに関する情報開示も義務付けられ、事業者がこれらに違反したり、「入居者の処遇に関し不当な行為」をしたりした場合、知事が改善命令を出すことができる。命令に従わない場合は刑事罰も設けられている。

■2015.3.11  老人福祉事業者の「休廃業・解散」動向調査
老人福祉事業者の休廃業・解散、3年で3倍に急増  〜 都道府県別では「北海道」が最多 〜
http://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p150305.pdf

帝国データバンクは、2005年から2014年までの10年間に休廃業・解散となった老人福祉事業者を抽出し、分析した。

調査結果(要旨)
1.2005年〜2014年の10年間に発生した老人福祉事業者の休廃業・解散は428件。2014年は130件となり、2005年以降で最多。近時の3年間で3倍に増加した

2.法人格別では、「株式会社」が169件(構成比39.5%)で最多となり、「特定非営利活動法人(NPO法人)」(114件、同26.6%)、「有限会社」(77件、同18.0%)と続いた

3.所在地別では、「北海道」が45件で最多となり、「東京都」(21件)、「岡山県」(17件)が続いた。



2014年は2005年以降最多の130件、3年間で3倍に急増

2005年から2014年までの10年間で休廃業・解散となった老人福祉事業者は全国で428件。年別にみると、2011年(43件)以降に急増し、2014年は2005年以降最多となる130件を記録。2011年以降の3年間で3倍に増えた。

老人福祉関連事業を手がける企業や団体は、2000年4月の介護保険法施行をきっかけに増加し、2001年に2万782だった訪問介護・通所介護施設・事業所数は2006年には4万357にまで増加(厚生労働省データ)し、競争は激化。そうしたなか、2006年4月に改正介護保険法が施行され、介護報酬の引き下げ、介護保険給付対象の除外項目増加など、経営環境が悪化する業者が増加。さらに近年は、労働環境・賃金問題などから人手不足に陥る事業者や施設の増加も加わり、休廃業・解散および倒産件数が急増しているとみられる。

2.法人格別動向 〜「株式会社」が4割を占め最多〜

2005年〜2014年に休廃業・解散となった428件の内訳をみると、「株式会社」が169件(構成比39.5%)で最も多く、以下、「特定非営利活動法人(NPO法人)」(114件、同26.6%)、「有限会社」(77件、同18.0%)、「合同会社」(31件、同7.2%)と続き、2014年(130件)においても、「株式会社」(52件、構成比40.0%)、「特定非営利活動法人(NPO法人)」(37件、同28.5%)、「有限会社」(21件、同16.2%)、「合同会社」(10件、同7.7%)の順となった。

3.所在地別動向 〜「北海道」が他を大きく引き離してトップ〜

428件の内訳をみると、「北海道」が45件で最多となった。以下、「東京都」(21件)、「岡山県」(17件)、「埼玉県」(16件)、「福岡県」(15件)と続き、18都道県で10件を上回った(表参照)ほか、2014年(130件)においても、「北海道」(16件)が最多となった。

北海道においては、医療機関が札幌地区に一極集中する一方、他地域では人口減少に伴う病院、医師の不足で身売りや再編が相次いでおり、老人福祉事業者においても同様の現象が起きていると考えられる。

まとめ

今回判明した428件の休廃業・解散前の年収入高を調べたところ(未詳の99社除く)、261件が年収入高1億円未満であることからも分かるように、大半が初期投資のかからない在宅介護サービスを行っていた企業(または、行う予定で設立されたものの稼動に至らなかった事業者)で構成されているとみられる。

今後、高齢化社会はさらに深刻化し、老人福祉関連サービスの需要は拡大することが予想される一方、利用者側の安心・安全面に重点を置いた大手事業者志向が高まりや新年度の9年ぶりとなる介護報酬引き下げなどを背景に、小規模事業者を中心とした休廃業・解散件数は、今後も高水準で推移することが予想される。

■2015.3.11  障害者用駐車場に許可証発行へ 県新事業  和歌山県
障害者が暮らしやすい社会を推進するため、県障害福祉課は新年度、障害者用駐車場の適正利用の促進など3つの新規事業に取り組む。駐車場は利用対象者に許可証を発行し、車いす利用者など必要な人が安心して駐車できる環境を整備する。

障害者用駐車場は車いすマークが表示された駐車場で、多くが店や施設の入り口近くに設けられている。現状では、健常者が駐車していても駐車場管理者は利用対象者の車かどうかの判断が難しく、結果、誰でも駐車できるような状況になっている。

 新事業では、利用対象者に許可証を発行し、車に掲示してもらうことで、利用対象者かどうかを明確化。駐車場管理者は許可証のない車に指導しやすくなる。利用者や駐車場管理者への周知、許可証の発行・駐車場登録などの期間を経て、来年1月から運用開始する予定。平成27年度当初予算に約220万円を計上している。

同様の取り組みは佐賀県が平成18年、全国に先駆けて「パーキングパーミット(身体障害者用駐車場利用証)制度」として始め、現在31の自治体が実施。近畿地方では和歌山県と奈良県が未実施で、奈良県も27年度中の運用開始を予定している。

その他、「重症心身障害児者等在宅医療等連携体制整備」事業では、医療依存度が高い重症心身障害児者が安心して在宅で生活できるように、地域の連携体制を整備する。県内4カ所の「医療型障害児入所施設」に1人ずつ専任職員を配置し、地域の病院を含めたチームの連携を調整する他、スキルアップ研修会などを開いていく。約3180万円の予算を計上している。

「早期退院・地域定着のための精神障害者支援体制整備」事業では、1年以上長期入院している精神障害者の早期退院などを支援するため、県内8圏域にある自立支援協議会の相談支援事業所に「地域移行促進員」を委託。促進員が長期入院患者に入院中から関わることで、退院意欲の喚起や、周囲の退院支援意欲を促進する体制整備などを行う。約1040万円の予算を計上している。

■2015.3.11  京丹後の3授産施設が焼きドーナツ共同開発 地元食材使い8種類
京丹後市内の社会福祉法人が運営する3授産施設が、地元産の原材料にこだわった焼きドーナツ(8種類)を共同で商品開発した。各施設の利用者らが手作りし、11日から同市峰山町の市障害者事業所製品販売所「クリエイトショップくりくり」(ショッピングセンターマイン2階)で販売する。

同製品販売所は、よさのうみと丹後大宮、あみの、久美の浜の市内4福祉会が、平成25年9月にオープン。関連施設の利用者らによる手芸品や菓子などを中心に販売しているが、「店舗の顔になる商品があれば」と、焼きドーナツが提案され、峰山共同作業所(峰山町杉谷)とかがやきの杜(久美浜町竹藤)、四つ葉ハウス(網野町網野)の3授産施設での製造が決まった。

使用する原材料や調理法については、洋菓子店「パティスリー・シェ・ノーリ」(舞鶴市安岡)のパティシエ、宮杉典明さんにアドバイスを求めた。

商品開発で誕生した焼きドーナツは、「ココア&チョコチップ」や「黒豆&黒豆きなこ」「豆乳おから&さつまいも」など8種類で、共通してフランス語で「おいしいドーナツ」を意味する「Bon beignet(ぼんべにえ)」と名付けた。

峰山共同作業所では、「シナモン&くるみ」など3種類の製造を担当。クッキー班の主任職員、藤原正人さん(25)は「琴引浜(網野町)の塩や峰山産の卵など地元食材にこだわり、何度も食べたくなるようなドーナツに仕上がりました」。同作業所の吉岡みや子・サービス管理責任者も「心も丸くなるドーナツで、8種類それぞれの風味を楽しんでもらえれば」と話している。

1個180円。11、12日は発売記念で半額となる。問い合わせは、クリエイトショップくりくり

■2015.3.11  老人ホームの基準緩和、厚労省 「無届け」減らし監督強化
厚生労働省は7月から、有料老人ホームの運営指針を見直す方針を決めた。設備面での基準を緩和することで事業者の届け出を促し、無届けのホームを減らす狙いがある。自治体による監督の強化につなげる。

老人福祉法によると、入居者に介護サービスや食事を提供すれば有料老人ホームに該当し、自治体に届け出る義務がある。だが、厚労省調査では2013年10月末時点で無届けのホームは全国で911施設に上り、不透明な業務実態の把握が課題となっている。

現行の指針では、一軒家などを改装したホームでは基準を満たすのが難しく、事業者が届け出を避ける一因となっている。

■2015.3.11  漫談・弾き語りで老人福祉施設慰問800回 大阪の男性「王さん超えたい」
大阪府豊中市内の老人福祉施設を訪れ、ボランティアで弾き語りや漫談を続けている平野量司さん(72)が9日、通算800回目となる公演を行った。

平野さんは市在住。そろばん塾経営のかたわら、民生・児童委員も務めており、「ジョージ平野」と名乗ってこれまで公演を続けて高齢者を楽しませてきた。

 この日は、市立高川老人デイサービスセンター(豊南町東)にカウボーイスタイルの平野さんがウクレレを弾きながら登場。約30人の高齢者から大きな拍手があがった。

「昔から『美人薄命』と言われますが、その点皆さんはお元気で大丈夫」など毒舌もまじえた漫談を披露すると、会場は笑いに包まれた。さらに60歳から始めたというピアノで、春にちなんだ唱歌や歌謡曲など約20曲を演奏した。

節目の公演を終えた平野さんは「王貞治さんのホームラン記録868本を超えるように頑張りたい」と、笑顔で話した。

■2015.3.11  お年寄り、メークで輝きを 上田の福祉施設で若手美容師
長野県美容業生活衛生同業組合青年部の有志10人は9日、上田市真田町長(おさ)の高齢者総合福祉施設「アザレアンさなだ」を訪ね、利用者19人にボランティアでメークを施した。高齢者に明るく元気になってもらおうと、昨年3月に長野市で初めて実施して以来、県内各地で続けており、東信地方では初めて。

施設の一室で、美容師が「痛くないですか」などと利用者に声を掛けながら、クリーム状のファンデーションを顔に塗ったり、眉毛を整え口紅をさしたり。メークが終わり、施設職員が「きれいになってよかったね」と声を掛けると、利用者は笑顔になり、Vサインで応じる人もいた。

成沢いちのさん(85)=上田市真田町傍陽(そえひ)=は「長い間、メークはしていなかった。今晩までのことかもしれないが、とてもうれしい」。デイサービスの管理者永井悦子さん(42)=同市真田町本原=は「利用者が生き生きとしてありがたい。また、ここでやってほしい」と話した。

青年部は、訪問する施設や部員を募っている。問い合わせは県美容業生活衛生同業組合事務局

■2015.3.12  どうする「お泊まりデイサービス」 介護保険のはざま、数年の連泊も
◇劣悪環境で事件、自治体が指針づくり 特養に空きなく、「制限で行き場失う」

通所介護(デイサービス)を利用する高齢者が、そのまま施設で寝泊まりできる「お泊まりデイサービス」について、連続宿泊の日数を制限するなど独自の指針をつくる自治体が相次いでいる。国の指針も4月に施行される。数年にわたり泊まり続ける例もあり、一部で安全管理上の問題があったためだが、「制限で、お年寄りが行き場を失う」との反発もある。鳥取から現状を伝えたい。

デイサービスは介護保険制度の対象で、日中に食事を提供したり、入浴の介助をしたりして、家族の負担を軽減する。一方、その延長にある「お泊まりデイ」は制度の対象外で、施設の自主事業と位置付けられる。

昨年秋のある日、鳥取県倉吉市のデイサービス施設「寿々(じゅじゅ)」を訪れると、午後6時になっても4人のお年寄りが食事や、数字を使ったゲームをするなどして過ごしていた。デイサービスの提供時間は午後5時までだが、そのまま高齢者たちは泊まった。

4人がいた懇談スペースの隣には約50畳の大部屋があり、中はベッド10床がカーテンで仕切られて並べてあった。数日分の衣類を入れる収納ケースが目に留まり、そばで別の4人が寝ていた。

「寿々」の日中の利用者は12、13人で、このうち8人ほどが「お泊まりデイ」も利用する。多くは1年近い連続宿泊で、最長5年連泊した人もいた。施設長の河本光司さん(61)は、背景をこう説明する。「家族に介護を拒否されたり、介護をしてくれる家族に暴力を振るうなどして自宅に帰れず、行き場を失った人もいる」



事業者でつくる「お泊まりデイサービス協会」(東京)によると、全国に約3万5000(2013年3月現在)あるデイサービスの施設のうち、約1割が「お泊まりデイ」を実施していると推計される。家族に急用ができた場合に、預け先を確保したいというニーズが高まっていることの表れだ。介護保険の対象になっている短期入所(ショートステイ)施設は予約で埋まり、急な申し込みに対応できないケースが多いという。

例えば鳥取県では、デイサービスの302施設中67施設で「お泊まりデイ」を実施する(13年12月の県調査)。利用者の半数以上が月に20日以上宿泊していた。一方、都市部の大阪府でも2320施設中235施設でこのサービスを行っている(14年6月の府調査)。

ニーズの高まりには、もう一つ理由がある。総じて利用料金が安いことだ。鳥取県によると、1泊の費用(夕朝食を含む)は大半が1000〜3000円だ。また、鳥取市のあるケアマネジャーの話では、月単位で宿泊すれば割り引く施設も多く、「お泊まりデイ」の費用は月額6万〜8万円で済むという。


では、有料老人ホームはどうか。月額で15万円近くかかるケースや、入居時に数十万〜数百万円の一時金を求められるケースがある。特別養護老人ホームなら月額10万円以下の施設も多いが、人気が高く、なかなか入所できない。「寿々」の河本施設長は「お泊まりデイは利用者のニーズから生まれ、セーフティーネットとして機能している」と話す。



「お泊まりデイ」は、定員や宿泊スペースの広さなどに法的基準がないため、行政の監視の目が届きにくい。それゆえ、問題も起きてきた。

広島県福山市の施設では13年11月、職員ら3人が指示に従わなかった利用者に暴力を振るい、逮捕される事件が起きた。男女が同じ場所で雑魚寝し、プライバシーがない状態で、1人当たりの床面積も4平方メートルほどと狭かった。こういった環境を施設側は行政に報告する義務はなく、広島県や福山市は内部からの投書があるまで事態を把握できなかった。

また、鳥取県の調査でもデイサービスの利用者を確保するため過剰に高齢者を受け入れるケースがあり、夜は雑魚寝をさせる施設が確認された。

こうした状況から鳥取県は昨年7月、いったん指針案をつくった。連泊は30日以内▽宿泊者数は日中の定員の40%以内▽宿泊状況を県に報告し、県はホームページ(HP)で公表するなどの内容で、担当課はある説明会で「将来的にはお泊まりデイの撤廃を想定する」と明言した。11年5月の東京都をはじめ、大阪や愛知など7都府県が既に指針を施行していた。事件のあった広島県も、利用者1人の最低限の床面積を7・43平方メートルにするなど指針をつくった。鳥取県はこれらの先行事例を参考にした。

しかし、鳥取県の考えに、施設の利用者や家族、施設側が猛反発した。県に寄せられたパブリックコメント66件のうち44件が反対意見だった。連泊の30日制限に異議を唱えたり、施設側から「長期利用者約300人の行き場が無くなる」との声も上がった。

鳥取県の高齢者施設でつくる「とっとり小規模ケア連絡会」は、日数制限の緩和などを求める要望書を県に提出。反発を受け、県はケアマネジャーが必要性を認めた場合に連泊数の超過を認める例外規定を設け、HPでの公表も今年1月から4月に延期するなど一部変更し、昨年10月15日に指針を施行した。




自治体の取り組みを追うように、厚生労働省も今月、指針案を公表した。連泊日数の制限は設けていないが、夜間の職員態勢や1人当たりの床面積の基準などを示し、事故発生時の自治体への報告も義務づける。来月1日、全国の自治体に通知して施行する。ただ、同省老健局振興課はお泊まりデイについて「あくまで、介護家族がやむを得ない状況で利用するもの。長期利用者を受け入れる場合、介護保険の対象となる施設に移行してほしい」と否定的だ。

鳥取大の竹川俊夫准教授(地域福祉)は「劣悪な環境で寝泊まりさせ、利益だけを追求する施設がある以上、指針は必要」と語る。さらに、こうも指摘する。「在宅に軸を置いた介護保険が現在の家族構成に合わなくなり、ひずみとして生まれたのがお泊まりデイだ。高齢者や1人暮らし、老々介護が増え、入所施設は需要に追い付いていない。介護保険制度の根本を考え直す必要がある」

■2015.3.12  故郷の命守りたい 復興担う看護師めざす 陸前高田出身・名古屋市立大生
名古屋市立大(名古屋市瑞穂区)看護学部2年の佐々木美紀さん(20)と松野綾夏さん(20)は、東日本大震災で市街地が津波にのまれた岩手県陸前高田市出身だ。帰郷し、看護師として復興の一助になることを目指し、勉強に励んでいる。

大学の実習室。白衣姿の2人は聴診器を使い、お互いに血圧を測る練習をしていた。学費などが免除される被災地の特別枠で、2013年度に入学した1期生だ。実家は津波に流された。両親ら家族は今も仮設住宅で暮らす。

4年前、2人は高校1年生だった。佐々木さんは吹奏楽部の練習中に大きな揺れに襲われ、校舎裏の高台にあるグラウンドに逃げた。「ゴー」という地響きとともに、茶色く濁った津波は校舎の3階までのみ込んだ。「高校生の自分は、見ていることしかできなかった。今度は自分が地元の人たちを助けられるようになりたい」と看護師を志した。

今年1月、成人式に参加するため、帰省すると、浸水した市街地をかさ上げするために土を運ぶトラックが走り回っていた。少しずつではあるが、復興してきているのを感じた。「私もしっかり勉強して、地元の力になりたい」

松野さんは震災後、約2カ月間、陸前高田市内の老人ホームで避難所生活を送った。避難所には全国から医師や看護師が駆けつけ、祖父も問診してもらった。その献身的な姿を見て、高校入学当初からの夢だった看護師への思いを強くした。

助産師の資格取得も目指している。現在、陸前高田市内には産婦人科医がいない。「多くの人の命が失われたこの陸前高田で、たくさんの新しい命を取り上げたい」

学生生活も間もなく折り返し。昨年12月、2人は学生が企画した名古屋市内の防災イベントに参加し、防災のあり方について話し合った。陸前高田市での被災体験も伝えていきたいと考えている。2人は11日、名古屋市内で開かれる追悼式に参加し、慰霊の祈りを捧げるつもりだ。

  ◇     ◇

被災地支援の一環として、名古屋市立大は13年度の入試から、看護学部に陸前高田市在住の高校生の特別枠を設けた。17年度までの5年間、毎年2人ずつ受け入れる。卒業後に陸前高田市の医療機関で働くことを前提に、入学料や授業料は免除される。

■2015.3.12  宇都宮・保育児死亡:請求棄却求める 口頭弁論、宇都宮市など被告側 /栃木
宇都宮市本丸町の認可外保育施設「託児室トイズ」で昨年7月、預けられていた山口愛美利(えみり)ちゃん(当時9カ月)が高熱を出して死亡した事故で、両親が施設を運営する「ウイン教育研究所」(同市本丸町)の経営者と保育スタッフの男女計5人と、指導・監督する立場にあった宇都宮市に計約1億1400万円の損害賠償などを求めた裁判の第
1回口頭弁論が11日、宇都宮地裁(岩坪朗彦裁判長)であった。被告側はそれぞれ請求棄却を求める答弁書を提出した。

訴状などによると、経営者らは昨年7月、出張のため宿泊保育で預かっていた愛美利ちゃんに下痢や発熱の症状が出た際、健康状態の確認や医師の受診を怠り死亡させたとしている。また、宇都宮市は昨年5月、同託児室を利用する保護者などから「息子の爪が剥がれていた」「職員が足りず、子どもを毛布で巻き、ひもで縛って動けないようにしている」などと抜き打ちの立ち入り調査を依頼する通報があったのにもかかわらず、予告したうえで施設を訪問するなど、指導・監督を怠ったとしている。

この日の意見陳述で、愛美利ちゃんの父親は「いまだに悲しみの中におり、常に娘のことが頭から離れない。施設の関係者は早く罪を認め反省し償ってほしい。市に対しては(行政対応について)自らの検証改善を行ってほしい」と訴えた。

一方、宇都宮市は「児童福祉法に基づく認可外保育施設の調査は、市の裁量で行える権限であって義務ではない」と主張。施設側は原告側代理人によると「死因と施設の対応の因果関係を具体的に示してほしい」という内容の答弁書を提出し、具体的な主張は今後の裁判の中でする方針を示した。

■2015.3.13  豊中の6歳男児不明:100人チラシ配布 服部緑地で /大阪
豊中市で行方不明になっている疋田逞大(ひきたていた)君(6)について、母親の友人やボランティアら約100人が12日、最後に姿が確認された児童施設近くの服部緑地でチラシを配り、情報提供を呼びかけた。

疋田君は先月28日夕、自宅から約2キロ離れた施設から行方不明となった。豊中南署によると、延べ約1200人を動員して捜索し、約40件の情報が寄せられたが、手がかりはないという。

チラシ配布は社会福祉協議会が呼びかけた。参加者は服部緑地を約2時間歩き、疋田君の顔写真や特徴が書かれたチラシを通行人らに手渡した。母親の友人女性(56)は「活発な子でこの公園の遊具が好きだった。お母さんと一緒に、逞大君が行きそうな場所を探しているが見つからない。どんなことでも何か気がついたら、警察に連絡して」と訴えた。

疋田君は身長約115センチで丸刈り。胴が茶色いトレーナーと青色ズボン姿で当時は裸足だったとされる。情報は豊中南署

■2015.3.14  ハンセン病への理解を /佐賀
「石井さん、元気にしとるかね」。携帯電話を取ると、懐かしい声が聞こえてきた。岡山県瀬戸内市にある国立ハンセン病療養所「長島愛生園」に入所する80代男性からの電話だった。張りのある声で、元気そうで何よりだった。前任地の岡山支局時代に取材させてもらった。

男性は10代で愛生園に入所。短歌を詠むことが生きがいで、ハンセン病に対する偏見の苦しみを歌に詠んでいる。視力が衰え、外出はあまりできないが、庭には四季を感じられるよう自ら育てた植物が並ぶ。1年前、佐賀支局に異動する時「がんばれよ」と送り出してくれた。

ハンセン病回復者はかつて国の誤った隔離政策によって厳しい偏見に苦しめられてきた。「家族に迷惑をかけられない」と偽名で暮らす人たちもまだいる。一方で、若い世代や療養所の無い自治体では、ハンセン病問題について考える機会は少ないと思う。

今月14日、佐賀市兵庫北3の佐賀市保健福祉会館でハンセン病問題啓発セミナーがある。国立ハンセン病療養所「菊池恵楓(けいふう)園」(熊本県)への入所勧告を受けていた男性が1962年、無実を訴えながら殺人罪などで死刑になった「菊池事件」をテーマにした映画「新・あつい壁」の上映もある。参加には申し込みが必要。詳しくは県健康増進課0952・25・7074。セミナーにぜひ参加して、ハンセン病問題について考えてほしい。

■2015.3.16  車いすが「人力車」に…緊急避難に威力、大和ハウスがベンチャーと提携し本格販売、自治体も活用
大和ハウス工業がベンチャー企業と業務提携し、車いすに取り付けるだけで人力車のように引っ張れる福祉器具の販売に乗り出したことが15日、分かった。坂道や悪路でも介助者が牽引(けんいん)しやすく、災害時などにおける高齢者や障害者の避難に役立つと期待される。

車いすは前輪が小さく、小さな凹凸や石でも負荷が掛かる。津波や地震で荒れた道路や上り坂は介助者でも押しにくく、避難に手間取り、介助者まで逃げ遅れる懸念が指摘されていた。

大和ハウスが販売する器具は「コ」の字形の金属製で、車いすの前部に装着。人力車のように介助者が前から車いすを引き、前輪を浮かせることで砂利道や坂もスムーズに移動できる。

開発したのはJINRIKI社(長野県箕輪町)で、すでに約3千台を販売。今後は大和ハウスの販路を活用し、医療介護施設のほか自治体や学校、商業施設にも売り込む。将来は海外展開も目指す。1台当たり3万〜4万円台。多角化を進める大和ハウスも新規事業の一環で力を注ぐ。

南海トラフ巨大地震が想定される三重県は津波を想定した避難訓練に活用しており、導入の動きが広がりそうだ。

■2015.3.16  障害年金支給に官民格差 公務員、自己申告で認定
病気やけがで一定の障害のある人が受け取れる国の障害年金で、支給の条件に官民で格差があることが16日、分かった。自営業者らの国民年金と会社員向けの厚生年金では、障害のもとになった傷病で初めて医療機関にかかった「初診日」がいつかを証明できなければ不支給となる。だが、共済年金に加入する国家公務員と一部の地方公務員は、本人の申告だけで支給が認められていた。

こうした不公平な官民格差は関係省令の違いが原因で、半世紀以上続いてきたとみられる。民間も公務員と同じ取り扱いであれば、より多くの人が障害年金を受け取れていた可能性がある。

■2015.3.17  騎馬戦事故で賠償2億円の判決、確定へ 県教委控訴せず  福岡
福岡県の県立高校で行われた体育祭の騎馬戦で男子生徒(当時)が騎馬から落ちて障害を負ったのは学校が安全配慮を怠ったからだとして、生徒だった男性(29)と両親が学校を設置管理する県に約2億9千万円の損害賠償を求めた訴訟で、同県教委は17日、約2億円の支払いを命じた福岡地裁判決を受け入れ、控訴しないと発表した。原告も控訴しない方針で、一審判決が確定する。

城戸秀明教育長が同日、「これ以上裁判を長期化することは適当ではない。当時、学校で行われた安全対策よりも高度な安全配慮義務が指摘されたことを真摯(しんし)に受け止める」などとする談話を出した。県教委は月内に、事前指導の徹底などを指示する通知を県内の市町村教委や県立学校に出すという。原告代理人の中村亮介弁護士は同日、「今回の判決を無駄にしないよう、再発防止を徹底してほしい」とコメントした。

原告の男性は同県立筑前高校(福岡市西区)の3年生だった2003年、体育祭の騎馬戦で、騎馬の上に乗る騎手として、相手と組み合った際に転落。首を骨折して首から下がほとんど動かなくなった。04年に身体障害者手帳1級を交付され、13年7月に県を相手取り提訴した。福岡地裁は今月3日、事前の練習が不十分だったなどとして、学校側の安全配慮義務違反を認め、県に約2億円の損害賠償の支払いを命じる判決を言い渡した。

■2015.3.18  障害者世帯の55%「孤立症状」 滋賀・草津で実態調査
滋賀県草津市の障害者の家族らでつくるNPO法人「草津手をつなぐ育成会」と市が、障害者世帯の孤立について実態調査を実施し、17日に市役所で結果報告会を開いた。55%の世帯に孤立症状が出ていることが分かった。

同市では2012年に高齢の母親が知的障害のある長女を殺害、放火した事件があり、障害者の孤立防止に取り組んでいる。孤立の度合いを養護者の精神健康度で分析しようと、市の委託で同NPOなどが調査した。昨年10、11月に市内の障害者家族会3団体の会員177世帯にアンケートを郵送し、有効回答は92世帯だった。

「神経が高ぶり眠れない」「うつ状況」などが数日以上続くとの回答が22%、「ふさぎこむ」「もう限界と思う」ことが数回以上あるなどの回答は33%で、これらを孤立症状と捉えた。

孤立症状が現れる世帯は、障害の程度やサービスの利用とは関係がないことも分かった。結果を分析した立命館大産業社会学部の峰島厚教授は「障害者家族会に入っていても、孤立する可能性はある。市全体で幅広い啓発が必要」と話した。

報告会は障害者やその家族、福祉関係者ら約60人が出席した。

■2015.3.20  障害者雇用状況を水増報告し 労働者健康福祉機構の担当者3人に罰金刑
全国の労災病院などを運営する独立行政法人「労働者健康福祉機構」(本部・川崎市)が平成24、25年に障害者の雇用状況を水増しして国に報告していた問題で、厚生労働省は20日、障害者雇用促進法違反(虚偽報告)の罪で横浜地検に刑事告発していた元理事ら3人が、罰金20万円の略式命令を受けたと明らかにした。

塩崎恭久厚労相は閣議後の会見で、「刑事処分に至ったことを厳粛に受け止め、国民の皆様からの信頼回復と再発防止に努めてまいりたい」と述べた。

厚労省によると、19日に横浜簡裁から機構に罰金30万円、24年の同機構総務担当理事と総務部長、25年の総務部長の3人に対してそれぞれ罰金20万円の略式命令が出たという。3人は、同法に定められた法定雇用率を達成していないにもかかわらず、達成したと虚偽の報告を行ったとして、厚労省が昨年12月に告発していた。

一連の問題を受け、厚労省は「障害の克服という課題に向き合う姿勢が十分でなかった」として改善策を検討。東京・霞が関の厚労省本省で27、28年度、労働基準監督官などに障害者を積極的に採用することを決めた。
現在は0・96%となっている本省の障害者雇用率を、法定の2・3%程度に改善することを目指す。出先機関などを含めた厚労省全体では、障害者雇用率は2・69%(26年6月現在)で法定雇用率を達成している。

■2015.3.20  お兄ちゃん先生希望の春 - 県初、知的障害者が幼稚園に就労/斑鳩
今春、県立西和養護学校を卒業した宮田啓太郎さん(18)=河合町在住=が4月から、保育補助員として斑鳩町立斑鳩幼稚園(小野隆秀園長)で働く。県内の幼稚園で保育に関わる職種に知的障害者が就労するのは宮田さんが初めて。同町の小城利重町長は「障害のある人の可能性を広げると同時に、子どもたちがさまざまな障害への理解を深めることにつながる」と期待を寄せている。

宮田さんは高校2年から同園をはじめ河合町内など計4カ所の幼稚園、保育所で取り込んだ職場実習を通して「子どもと関わる仕事に就きたい」との思いを強くした。

4月1日から斑鳩町の臨時職員として同園に勤務。園児が登園している時間帯は保育活動に参加するほか、園児が帰った後、翌日の保育の準備や園内の菜園の世話なども担当する予定。

事前研修初日となった19日は絵本の読み聞かせなどを行い、園児に「お兄ちゃん先生」と親しまれた。

宮田さんは「子どもが大好きなのでとても楽しい。みんなから信頼される『先生』になりたい」と表情を輝かせた。

■2015.3.20  熊野の海岸部、高齢者低栄養 26%、たんぱく質量低く
熊野市内の海岸部で暮らす七十五歳以上の人は、山間部や市街地と比べて低栄養状態にあることが市健康・長寿課の調査で分かった。栄養状態の指標とされる血液中のたんぱく質、アルブミン値が海岸部の四人に一人が低い傾向にあり、地元の医療関係者は「さらに内容を解析して対応したい」と話している。

調査は二〇一三年七〜十月、市内で後期高齢者医療健康診査を受けた千四百五十三人(七十五歳以上の全市民のうちの34・6%)のアルブミン値を基に行った。

市健康・長寿課によると、筋肉や骨の再生や修復をするたんぱく質、アルブミンの量が一デシリットル当たり三・八グラム未満なら「低栄養群」、三・八グラム以上四・〇グラム未満なら「低栄養予備群」とされる。

結果は、海岸部(磯崎、波田須、新鹿、遊木、二木島、二木島里、甫母、須野各町)で低栄養群の人は10・8%、予備群は15・6%で計26・4%。一方、山間部(飛鳥、五郷、神川、紀和、育生各町)は低栄養群3%、予備群6・2%で計9・2%。市街地(大泊、井戸、木本、久生屋、有馬、金山各町)は低栄養群6%、予備群9%で計15%だった。海岸部で低栄養群の人の割合は山間部の三倍以上だった。

調査結果について海岸部の荒坂診療所(二木島町)と山間部の五郷診療所(五郷町)で高齢者を診療する平谷一人医師は「健診を受けた各高齢者の持病や病歴の有無も調べないと確定的なことは言えない。これまでの健診結果も調べながら慎重に結論を出したい」と話し、過去のデータと比較しながら検証したいと話している。

■2015.3.20  認知症高齢者の徘徊発見にも一役!防犯カメラ100台新設【大阪市淀川3区】
「淀川3区防犯プロジェクト」
大阪市の西淀川区・淀川区・東淀川区の3区と3警察署は、防犯対策の一環として、各区境界エリアの公共空間を中心に、防犯カメラ100台を新たに設置し、平成27年3月1日から稼動を始めた。

同地域では、平成25年10月に「淀川3区防犯プロジェクト」共同宣言をおこない、「安全で安心して暮らせるまちづくり」推進への広域的な取り組みを進めている。

今回の防犯カメラの新設は、犯罪防止や犯罪捜査に役立てるほか、行方不明者や認知症の徘徊高齢者を探すことにも活用できるとして、注目されている。

各自治体の取り組み
認知症高齢者の徘徊については、各自治体がさまざまな取り組みで試行錯誤をおこなっている。

最近では、山梨県甲州市で、2月26日、バス・タクシー会社、郵便局、JR、介護保険事業所などが協力して「徘徊SOSネットワーク」模擬訓練がおこなわれた。訓練は今回で4回目。徘徊高齢者発見のシステムを浸透させ、発見から通報への速やかな連係をはかるのが目的だ。

岡山市では25日、徘徊中、警察に保護される身元不明の認知症高齢者を、市内の老人保健施設で一時的に預かるという事業を始めた。今後、警察からの連絡は市の高齢者福祉課に一元化。市内の特別養護老人ホーム5カ所を「調整担当老人施設」として窓口を定め、31カ所の中から受け入れ先を探す。


たくさんの人々の暖かい見守りを
大阪の防犯カメラ設置には、個人情報保護の問題も絡んでくるのだろうが、広範囲で連携ができるという点では、有意義な取り組みだ。

夜間など人の目が届かない時間帯には、とくに防犯カメラの映像は重要となる。とはいえ認知症高齢者が徘徊する姿に気づき、無事保護に結びつけるためには、やはりたくさんの人々の暖かい見守りのまなざしがまず必要となる。



「淀川3区 防犯プロジェクト」について

大阪市の淀川以北に位置する、西淀川区・淀川区・東淀川区の3区では、「安全で安心して暮らせるまちづくり」を推進することを目標に、行政区域にとらわれることなく、広域的に連携した防犯対策に取り組むため、平成25年10月に「淀川3区 防犯プロジェクト」共同宣言を3区長並びに3警察署長で行いました。
 そして、犯罪発生情報や分析を共有するとともに、防犯に関する新たな施策企画を合同で実施しています。


淀川3区境界エリアを中心に街頭用防犯カメラが稼動しました

淀川3区役所と3警察署の6者による防犯対策の一環として、区境エリアに防犯カメラを設置し、平成27年3月1日から稼動いたします。
 防犯カメラは、犯罪防止と逃走経路の把握等、犯罪捜査に役立てます。
 こうした大阪市初の取組みで、淀川3区は暮らしを脅かす犯罪のない安全で安心な街づくりをめざします。


淀川3区街頭防犯カメラの運用内容

1.各区境界エリアの高架下道路や交差点などの公共空間を中心に設置します。
2.西淀川区30台、淀川区40台、東淀川区30台の合計100台を設置します。
3.淀川3区内では、警察署との連携により、街頭犯罪など事案が発生した時間帯に関係なく、映像の確認を行います。
4.区境を越える逃走経路にも即応するため、事案の発生区が、他2区にもある映像の確認を行うことができるようにします。
5.プライバシーや個人情報の取扱いは十分配慮し、映像は犯罪捜査など適正な手続きのみに使用します。

■2015.3.20  廃校跡に福祉複合施設 伊豆・月ケ瀬で春風会が起工 
こども園や障害者支援


学校統合で廃校になった伊豆市の旧月ケ瀬小グラウンドで19日、福祉複合施設「ふらっと月ケ瀬」の起工式が行われた。認定こども園、障害者就労継続支援B型事業所、デイサービスセンター、地域交流センターを併設した同市初の複合施設で、来年4月にオープンする。市が土地を貸与し、社会福祉法人「春風会」(本部・沼津市、石川三義理事長)が施設を建設・運営する。

これにより天城地区にある市立の湯ケ島幼稚園、狩野幼稚園、しゃくなげ保育園の3園は15年度末で閉園し、同複合施設に統合する。

また、施設の老朽化が著しい市指定管理の障害者就労継続支援B型事業所「中豆授産所」(同市加殿)を15年度末で廃止し、機能を同複合施設に移す。中豆授産所は、春風会が指定管理を務めている。

定員は認定こども園が150人(長時間利用児、短時間利用児各75人)、就労継続支援施設が25人、デイサービスセンターが35人。

複合施設の全体面積は、2885平方メートル。今回は認定こども園(鉄骨2階建て1582平方メートル)の起工式で、残りの施設は15年度中に着工する。

■2015.3.21  2社会福祉法人、親族企業と多額契約 兵庫県の外部監査で判明
兵庫県内の2つの社会福祉法人が、理事長の親族企業と、土地、建物の賃貸借や業務委託などで多額の契約を交わしていたことが、県の外部監査で分かった。理事長が企業の報酬を得ていないことなどから、理事長や親族に資金は還流していないとみられる。

包括外部監査結果報告書によると、ある社会福祉法人は2012、13年度、理事長の親が社長を務める企業と土地、建物の賃貸借契約を複数結んだ。賃料は総額1億円を超え、不動産鑑定士の評価は受けていなかった。

そのうち施設建設用地として契約した土地は、50年間で4億5千万円を支払うことになっていた。土地の取得額は3分の1程度で、高額賃料を支払う内容だったといい、定款で定めた理事会の決議を受けていなかった。

別の社会福祉法人は、理事長の親が100%株式を持つ企業と、給食、利用者送迎などの業務委託や、土地、車などの賃貸借契約を多数結んでいた。13年度の支出は計約1億5千万円に上り、規定で決められた競争入札ではなく、随意契約で契約更新していた。

いずれも公費の補助金交付や税制優遇措置を受けており、監査人は、県が親族企業の決算書などを含め厳格に監査するよう求めた。

■2015.3.24  知的障害者の盗み再犯防止 支援プログラム共同開発
福島大、福島刑務所、福島保護観察所の3者が、知的障害者の窃盗犯罪の再犯防止に特化した社会復帰支援プログラムを共同開発したことが23日、分かった。大学と関係機関が連携して同様の支援プログラムを開発するのは全国で初めてという。福島市で23日に開かれた、福島自立更生促進センター運営連絡会議で同観察所が委員に説明した。

同観察所によると、支援プログラムは盗みの犯罪を犯した知的障害者が刑務所で服役した後、自立更生促進センターに入所、さらに福祉施設で自立するまで一貫して行う。盗みが犯罪だという自覚がないために繰り返すケースもあるといい、各機関がそれぞれの更生教育のノウハウを生かして連携し、継続的な更生教育に取り組むことで自覚を促し再犯防止につなげる。

4月以降、福島刑務所と、福島保護観察所が運営する福島自立更生促進センターが支援プログラムを試行して効果を検証する。

■2015.3.25  A型事業所の可能性 社会福祉法人の挑戦  社会福祉法人豊芯会  大阪府箕面市の社会的雇用助成制度
◇支援対象の拡大を

企業で就労するのが困難な障害者が、雇用契約を結んで働く就労継続支援A型事業所。その新たな可能性を探ろうとしているのが、2月に発足したNPO法人「就労継続支援A型事業所全国協議会」(全Aネット)で事務局を務める社会福祉法人豊芯会(東京都豊島区)だ。東京家政大教授で、全Aネット理事にも就任した上野容子理事長は「障害者だけでなく、さまざまな事情で一般企業で働けない人も対象にしたソーシャルファーム(社会的企業)に発展させたい」と語る。

ソーシャルファームは、障害者をはじめ高齢者、母子家庭の母親、ニート・ひきこもりの若者、刑務所出所者、ホームレスなど仕事を見つけにくい就労弱者に働く場を提供する事業体。通常のビジネス的手法を基本に市場原理の下で活動し、同じ労働者として従業員の対等性も重視する。公益的な仕事をビジネス的手法で行うソーシャルエンタープライズ(社会企業、社会的企業)の一形態にあたる。

欧州では、税制上の優遇措置や公共調達など公的支援制度も設けられ発展している。上野理事長は「日本の既存の制度ではA型事業所が一番近い」と語る。「障害者の労働者性を担保しているA型事業所は悪くない制度。いろいろな人が働けるように受け入れ対象の範囲を広げられないか考えていきたい」


■先取り

豊芯会は就労継続支援A型、B型(非雇用)、地域活動支援センター、生活訓練、グループホームなどの事業を展開し、精神障害者約180人(うちA型21人)が利用し、常勤17人、非常勤29人の職員を擁する典型的な障害者支援団体だ。

1978年、同区の精神科クリニックの医師が精神障害者の日中の居場所にと、自費でマンションの一室を借りたのが始まりだった。障害者のサポートにあたったのが、クリニックのソーシャルワーカーだった上野理事長。仕事も探したが、最初は1個70銭の雑誌の付録とじ。当時は内職仕事しかなかった。

地域作業所として93年に商店街で喫茶店をスタート。95年には社会福祉法人となり、さまざまな事業を展開していった。2001年から豊島区の「ひとり暮らし高齢者配食サービス事業」を受託するなどして「何人かに最低賃金を払えるようになった」。06年の障害者自立支援法施行を受け、08年から配食サービスなどをA型事業所とした。

そして現在の大きなテーマが障害者ではないが一般就労が難しい、制度の狭間(はざま)にある人たちの支援だ。

制度ができる前から必要に迫られて活動してきた上野理事長は「こういう仕事をしたい。そのためにどんな制度が使えるのか、どんな制度が必要かを考えるべきだ」と語る。


■二極化

豊芯会では重いアトピー性皮膚炎を患うTさん(45)をはじめ、長年ひきこもりだった男性、育児中の母子家庭の母親といった、障害者ではないが一般企業に就職できなかった人が4人働いている。

Tさんは就職2年目、結婚直後の24歳の時、職場の内装工事をきっかけに持病のアトピー性皮膚炎が重症化した。かゆさ、痛さから夜も眠れない。外出もできない闘病生活を送り、1年後に退職した。症状が緩和した数年後から職探しを始めたが、「フルタイムは難しいと言うと、どこも雇ってくれなかった」。

31歳の時、ようやく見つけたのが、豊芯会の配食サービスの運転手の求人だった。事情を説明し、午前中の2時間半だけの勤務で働き始めることができた。Tさんは「妻の支えがあったが、そのまま家に居続けていたら精神的におかしくなっていたと思う。本当に救われた」と当時を振り返る。7年前からはほぼフルタイムで働けるようになり、現在は病状を見ながら一般企業への就職を目指している。

A型事業所の非常勤職員としてTさんは、障害者の良き先輩役、目標になっているという。福祉の現場について「障害者と支援者の職員だけだと二極化して難しい。多様な人が一緒に仕事をすることが、あるべき姿ではないか」と語る。

自らの経験から「格差社会が進む中で、落ちこぼれた人や弱い人を支え、立ち直る場所が必要」とソーシャルファームに期待をかける。ただし、事業の厳しさは現場で日々実感している。「注文がなければ(障害者の)賃金は払えない。公的支援がないと難しい」とも指摘した。


◇制度の見直しも進行

国は現在、障害者総合支援法の「3年後の見直し」作業に入っている。障害者の就労の制度的枠組み、所得保障のあり方は大きなテーマだ。

障がい者制度改革推進会議総合福祉部会が2011年にまとめた「障害者総合福祉法の骨格に関する総合福祉部会の提言」では、就労移行支援事業、就労継続支援A型、B型、生活介護事業、地域活動支援センター、小規模作業所などを「障害者就労センター」(労働法適用)と「デイアクティビティーセンター」(非適用)に再編成。労働法適用における賃金補填(ほてん)の制度化の検討を求めていた。

多様な働き方の制度化について試行事業での検討も求めた。対象に挙げられたのが、障害者の最低賃金を確保するために賃金補填を制度化した大阪府箕面市の社会的雇用助成制度や障害のある人、ない人が対等な立場で働く滋賀県の社会的事業所などだ。

箕面市の社会的雇用助成制度は「同じお金(公的資金)を出すなら、障害者の手に乗るお金がより多くなる方法」を取るべきだとして、A型、B型事業所と比べて事業所の運営費、人件費への支給を少なくする一方、利用者の最低賃金の一定額を補填する。滋賀県の社会的事業所は、障害者を50%以上雇用するなどの一定条件を満たした事業所に賃金を含めた運営費、管理費などを助成している。

いずれも、障害者の最低賃金を保障することで就労機会拡大を図っている。箕面市の試算では、社会的雇用助成制度を国の制度にした場合、非就労による生活保護や日中活動のコストが減るため、年間430億円の社会的コスト削減になるとしている。

制度的枠組みの問題も、賃金補填と障害年金の関係が議論となる所得保障の問題も、多様な意見が交錯している難題。どこまで見直しが行われるかが注目されている。

■2015.3.25  「五月人形」制作ピーク 安靖氷見共同作業所
■地元の竹で手作業

5月の端午の節句に向け、氷見市阿尾の精神障害者通所施設「安靖(やすらぎ)氷見共同作業所」(金谷正和所長)で、地元の竹を使った「五月人形」の制作がピークを迎えている。通所者と職員の約20人が今月上旬から手作りしており、25日から販売する。

五月人形は2005年から制作。今年はモウソウチクとマダケで、かぶと飾りを表現した。やすりで削って形を整えるなどし、パーツを組み合わせた。1月から氷見市三尾の坂田恒男さんに竹の編み方などを学んだため、長さ4センチの竹を糸でつないで、かぶとの首回りを守る部分も作れるようになった。

かぶとは台座を含め高さ15センチ、幅17センチ。同作業所は「子どもの成長を願い、飾ってもらえればうれしい」としている。

50個制作し、価格は1個1500円。同作業所と同市比美町の福祉の店「はーとふる安靖」、ひみ番屋街「まるごと氷見1号館」で販売する。問い合わせは同作業所

■2015.3.25  <西武鉄道池袋線>沿線にトトロ出現
埼玉県所沢市と東京都東村山市の境を流れる柳瀬川沿いの林にアニメ映画「となりのトトロ」(宮崎駿監督)のトトロが出現した。近くの知的障害者の施設が宮崎監督の協力で自然環境の保護を訴えようと設けたもので、林を通る西武鉄道池袋線の乗客の目を楽しませている。

身長230センチ、横幅120センチのトトロが見られるのは、所沢駅−秋津駅間。所沢から池袋方面に向かう上り線の車窓から眺められる。

製作したのは、知的障害者38人が働く就労支援施設「あきつ園」(東村山市秋津町、押金稔園長)で木工を担当する6人。所沢市在住の宮崎監督が提供したデザインを元に木板にペイントし、約2週間かけて仕上げた。

トトロを設置した場所は、公益財団法人トトロのふるさと基金(所沢市、安藤聡彦理事長)が3年前に地権者の寄付を受け、「トトロの森17号地」と名付けて自然環境を保護する東京都側で唯一の「トラスト地」(1767平方メートル)。線路を挟んで真向かいの集合住宅に住む家族連れは「ネコバスも設置してほしい」とトトロに次ぐ登場キャラクターの出現に期待を寄せた。

■2015.3.27  嚥下食を増産 ニュートリー、16億円投じ本社工場増強
三井製糖子会社で病院・介護施設向け栄養補助食品メーカーのニュートリー(三重県四日市市)は、食べ物を飲み込むことが困難な高齢者向け嚥下(えんげ)食を手軽に作れるゲル化剤を増産する。約16億円を投じ本社工場を増強し、2016年9月の稼働を目指す。生産能力は年間約3600トンと3倍に増える。高齢化で成長を続ける介護食市場の開拓を進める。

一般食に加えてとろみをつけたり、ゼリー状にしたりして飲み込みやすい嚥下食にするゲル化剤「ソフティア」シリーズの生産設備を増強する。今年9月に着工する。主力商品の生産拡大で22年に15年比約2倍の売上高100億円を目指す。

ニュートリーはゲル化剤を全国の病院や介護施設に販売している。ソフティアを流動食に加えれば肉や魚の形状に成形することもできる点などが評価され、需要が伸びているという。


■2015.3.27  「介護に疲れた」80歳母親が知的障害の54歳長男を殺害「情状酌量の余地」はあるか
大切な家族に、もし介護が必要になったら——。施設に入れず、自宅で面倒を見たいと思う人は少なくないだろう。しかし、食事や排泄、入浴等の介助を行い、つきっきりで世話をする介護者の心身の負担ははかりしれない。ましてや介護者が高齢であり、終わりが見えない状況にあれば・・・。

介護疲れを理由にした家族間の殺人事件は珍しくない。3月中旬にも、生まれつき重い知的障害をもつ54歳の長男を殺害したとして、80歳の母親が逮捕された。報道によれば、母親は「介護に疲れ、将来を悲観した」と話し、容疑を認めているという。この日の未明、首をタオルで絞めたり、口や鼻を手でふさぐなどして窒息死させたとみられている。

夫が認知症で施設に入所していることもあり、母親は10数年前から一人で、食事や排泄が自分ではできない長男を介護していた。過去には、脳梗塞を患っていたため「体が言うことを聞かないときもあった」状態だったという。

今回の事件のように「介護疲れ」から殺害に至ったケースについて、情状酌量の余地はあるのだろうか? もし情状酌量が認められる場合、どのくらいの刑が科せられるのだろうか? 元検事で、刑事事件にくわしいコ永博久弁護士に聞いた。

●「介護疲れ」殺人に同情の余地はあるか

「殺人罪などの犯罪が成立した場合、諸々の具体的な事実関係を加味して、適正な刑罰を科すことになります。たとえば、以下のような事情が考慮されます。

(1)犯行に至る動機や事情について、同情する余地の有無
(2)計画性の有無(計画的な犯行なのか、一過性の過ちといった衝動的なものなのか)
(3)犯行態様(包丁で1回だけ心臓を刺したのか、執拗に全身を複数回刺したのかといった残虐性や、被害者に与えた苦痛の大小)
(4)犯行後の行動(遺体を放置したのか山中に埋めたのか、手足や頭をバラバラに切り刻んで駅や公園のゴミ箱に捨てたのか、といった証拠隠滅の有無や被害者の尊厳を損なう程度)
(5)反省の態度(後悔の念の有無、被害者又は遺族に対する謝罪及び損害賠償の有無)
(6)被害者や遺族の処罰感情の大小

これらをふまえて、刑が減軽または加重されることがあります」

コ永弁護士はこのように説明する。今回の事件については、どのような事情が考慮されうるのだろうか。

「本件では、80歳の高齢女性が一人で、食事や排泄が自分でできない長男を介護することによる疲労に加えて、『自分が死んだら息子は生活できない』という将来への悲観が原因となっていたものと思われます。

また、殺害方法も過度に残虐とまでは言えないことや、犯行後、母親が自ら長女に犯行事実を告白しており、逃走や証拠隠滅を図っていない点などから、刑が減軽される可能性は高いと思います」

具体的に、母親にはどのくらいの刑が科せられるのだろう。殺人罪の法定刑は「死刑または無期もしくは5年以上の懲役」だが・・・。

「実際に科せられる刑については、詳細な事実がわからないため推測になりますが、過去の同種事例からすると懲役3〜4年の可能性が高いでしょう。また、懲役3年以下の執行猶予付き判決になる可能性もありうると思います」

コ永弁護士はこのように述べていた。

■2015.3.27  市長が「認知症の人を地域で支えるまちづくり」を宣言 下関市
下関市は、3月23日、「下関市認知症の人を地域で支えるまちづくり宣言」を、山口県内で初めて行うことを明らかにした。

なお、この宣言は、平成27年第1回定例会において市長より行われる予定だ。

下関市は、認知症の人の増加に対し、認知症対策・施策の一層の推進を図るとともに、あらゆる世代の市民への普及・啓発活動に取り組んでいる。

しかし、1人暮らし高齢者や高齢者のみの世帯が増加する中、高齢者の徘徊による行方不明の事案が多く発生するなど、地域全体で取り組まなければ対応が難しい状況もあるという。

国は、認知症の人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域のよい環境で自分らしく暮らし続けることができる社会の実現を目指した「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)〜認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて〜」を策定。

下関市でも、新オレンジプランが目標とするところの実現を図り、かつ、施策の推進にあたって積極的に役割を担う意思を明確にしたい考えだ。

新オレンジプランを積極推進
日本は本格的な高齢社会を迎え、高齢者の約7人に1人が認知症であるといわれている。

下関市は、この宣言により、認知症の人を地域社会全体で見守り、支え合うためのまちづくりを、市民と一丸となって、推進していくかまえだ。

http://www.city.shimonoseki.lg.jp/www/contents/

■2015.3.28  虐待:施設の子供、87件 届け出288件、09年度以降最多 厚労省
厚生労働省は27日、児童養護施設などで暮らす子供への、職員らによる虐待が疑われる届け出件数が2013年度は全国で288件に上り、そのうち87件が虐待と認められたと明らかにした。いずれも厚労省が集計を取り始めた09年度以降最多だった。前年度は届け出が214件で、虐待件数は71件だった。

厚労省によると、全国の施設などで暮らす子供は約4万8000人で、このうち児童養護施設は約3万人、里親家庭は約4500人。集計の対象は全国47都道府県と、児童相談所がある22市の計69都道府県市で、18歳未満の子供を養育している児童養護施設や、里親家庭などで起きた事例をまとめ、同日あった同省の専門委員会で報告された。

虐待が最も多かったのは児童養護施設の49件(56・3%)で、里親家庭が13件(14・9%)。虐待の種類は身体的虐待が55件と6割以上を占めた。心理的虐待は17件、性的虐待が13件、ネグレクト(養育放棄)が2件あった。

被害を受けた子供は155人(前年度は173人)に上り、小学生が57人と最多。中学生が54人、高校生が23人、就学前児童が18人だった。一方、虐待をした職員や里親は105人で、実務経験年数は5年未満が50人と最も多かった。

09年度施行の改正児童福祉法は、職員らによる子供への虐待防止と対応を明記。虐待を見つけた場合は、関係者が自治体や児童相談所へ届け出ることが義務づけられ、都道府県が毎年公表している。

担当者は虐待件数が最も多かったことについて「届け出制度の周知が図られたことが一因と考えられる。虐待防止の対応策を普及していきたい」とした。

■2015.3.28  黒田裕子さんNPO:震災弱者支えて20年 3月末で幕
◇阪神や東北で活動、高齢者見守り、有志が継続
阪神大震災や東日本大震災で被災した高齢者らの支援に尽力し、昨年9月に73歳で亡くなった黒田裕子さんが理事長を務めたNPO法人「阪神高齢者・障害者支援ネットワーク」(神戸市)が、今月末で解散する。阪神大震災から20年がたち活動に区切りをつけるという。高齢者見守り活動は有志らが任意団体を組織して受け継ぐ。

同NPOは阪神大震災直後の1995年6月に医療・福祉関係者らが結成。副総婦長を務めていた病院を退職した黒田さんが中心となり、「孤独死」を防ぐため、同市西区の仮設住宅で24時間態勢の見守りを始めた。復興住宅でも活動を続けた。東日本では、宮城県気仙沼市面瀬(おもせ)地区の仮設住宅に看護師を24時間常駐させて被災者の健康相談に応じてきた。

解散は、黒田さんが亡くなって事業を支えきれなくなった事情もあり、今月3日の理事会で決定した。気仙沼市での見守りは今月末で終了する。神戸市須磨区の復興住宅「新大池東住宅」(180戸)での活動は、有志が同じ名称の任意団体を結成して継続する。

黒田さんは生前、同住宅の一室に泊まり込み独居の高齢者を見回ってきた。現在は週3回、集会所で「ふれあい喫茶」を開き、スタッフが住民の健康状態をチェック。異常があれば専門機関につなぐシステムをつくっている。同住宅は住民の9割超が高齢者で、半数が独居だ。住人の村川正徳さん(70)は「住民の居場所が残ってありがたい。住民同士の見守りにも取り組みたい」と喜ぶ。

同NPOは今月20日、閉鎖する同市西区の拠点施設「伊川谷工房」で最後のお茶会を開き、高齢者とスタッフら約50人が名残を惜しんだ。手工芸など生きがいづくりの場も提供してきた工房に、復興住宅から約15年間通い続けた濁池(にごりいけ)文子さん(76)は「なくなるのはつらいが、前向きに生きることが黒田さんへの恩返し」と涙ながらに語った。

新団体は他団体にも呼びかけ、一般公営住宅にも見守りを広げる方針。同NPO事務長で新団体代表となる宇都(うと)幸子さん(70)は「黒田さんは皆の心の中で生き続けていく。『一つの命に寄り添う』遺志をしっかり受け継いでいきたい」と決意を語った。

■2015.3.28  札幌・女性殺害:札幌地検、自殺の男不起訴  福祉施設職員、伊藤華奈さん
札幌市厚別区で昨年5月、福祉施設職員、伊藤華奈さん(当時25歳)が殺害され遺体が見つかった事件で、札幌地検は27日、殺人と死体遺棄などの容疑で書類送検された同市清田区の会社員の男(同33歳)を容疑者死亡で不起訴処分とした。

男は昨年5月4日、自宅マンションから出てきた伊藤さんを窒息させて殺害し、自宅から数百メートル離れた緑地に遺棄するなどしたとして今年1月に書類送検された。

男は昨年9月、道警が事情聴取する予定だったが捜査員の目前で逃亡し、同10月6日に仁木町の橋の下で首をつって死んでいるのが見つかった。

■2015.3.31  「無届け介護ハウス」全国で961件
法律で義務づけられた届け出を行わないまま空き家などで高齢者に介護サービスを提供する有料老人ホーム、「無届け介護ハウス」は去年10月の時点で全国で961に上り、前の年より50件増えていることが厚生労働省の調査で分かりました。

高齢者を入居させ食事や介護などのサービスを提供している施設は有料老人ホームとして都道府県に届け出ることが法律で義務づけられ、国のガイドラインでは個室の整備や広さに応じた防火設備の設置が定められています。

こうした届け出を行っていない施設について厚生労働省が都道府県を通じて調べたところ、去年10月の時点で全国で961に上ることが分かりました。これは前の年より50件多く、この5年間でおよそ2.5倍に増えています。

背景には、介護が必要な高齢者が増え続ける一方で、特別養護老人ホームなどが不足し行き場を無くした高齢者が増えていることがあります。

都道府県別にみますと、最も多いのは北海道で458件、次いで愛知県が68件、神奈川県が47件などとなっています。東京都は24件でしたが、NHKの取材ではことし1月の時点で86件と行政が把握している3倍以上に上っていて、全国でもさらに多くの無届けの施設が存在する可能性があります。

空き家などを利用する「無届け介護ハウス」のなかには家賃を低額に抑え手厚い介護を行っているところもありますが、部屋の広さや防火設備などが国のガイドラインを満たしていないところもあり、虐待や事故などの発見が遅れるおそれも指摘されています。
厚生労働省は届け出を促すため指導を徹底するよう都道府県に通知するとともにガイドラインの見直しを進めています。

 

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