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残しておきたい福祉ニュース

 2017年 
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 2017. 5. 3 障害者の働く姿や会社の声紹介 京都・舞鶴で「就労応援ブック」
 2017. 5.10 社福法人、止まらぬ不適切会計 監査義務づけへ法改正 対象は一定規模のみ、実効性に疑問の声も
 2017. 5.14 「善意の食事」運営危機 資金難、倉庫確保難航 芦屋
 2017. 5.16 里親への理解呼びかけ 赤ちゃんポスト10年
 2017. 5.18 障がい者向け学習支援のいま--文字入力はキーボード、音声読み上げも
 2017. 5.19 <魔法の車椅子>緊張ほぐれ、身体能力向上 作業療法士が製作
 2017. 5.20 おしゃれな牛革製 「障害者手帳カバー」が評判
 2017. 5.22 福祉施設に非常通報装置導入進む 相模原事件を契機に
 2017. 5.24 リサイクル事業者が社福法人を設立 金属ゴミ分別などで障害者雇用
 2017. 5.25 保育士試験、介護福祉士なら筆記の3分の1免除 来年度にも導入へ 厚労省方針
 2017. 5.25 福祉資格の人、保育士容易に 試験科目を一部免除
 2017. 5.26 障害児支援「放課後デイ」 運営厳格化に現場戸惑い
 2017. 5.26 障害者の挑戦、地元も応援 ブドウの木のオーナーに 「小牧ワイナリー」開設2年
 2017. 5.29 「学校に連れていってあげたい」医療的ケア児、通学の保障置き去り スクールバスに制限
 2017. 5.29 性犯罪の障害者更正支援
 2017. 5.29 医療的ケア児、8割が送迎 親の負担重い通学 特別支援学校


■2017.5.3  障害者の働く姿や会社の声紹介 京都・舞鶴で「就労応援ブック」
京都府舞鶴市内の企業や支援学校、市などでつくる市障害者就労支援検討会はこのほど、障害者の働く姿や雇用する会社の声を紹介する冊子「障害者就労応援ブック」を作った。創刊号を市内約1100社に配布し、障害者雇用への理解を深めてもらう。

市が2015年に実施した市内の企業へのアンケートで、障害者を雇用していない理由として「適した業務がない」「適した施設、設備でない」が46.3%に上った。多様な障害者の働き方を知ってもらい、5年以上の長期就労につなげようと初めて作った。

冊子では、看板製作や商品の仕分け、清掃が仕事の男女4人が登場。看板製作などをする会社の男性については、材料の切断や組み立てをする様子を写真で紹介し、「気を抜かずにがんばっています」との声を載せる。各社の社長や店長らが「周りが仕事をきちんと教えれば、それに応えて進んで自らしてくれるまでに成長してくれる」「毎日休まず熱心に仕事に取り組む」などと障害者の職場での様子を語る。

A5判、16ページ。1200部作成し、市役所でも無料で配布している。問い合わせは、市障害福祉・国民年金課TEL0773(66)1033。

■2017.5.10  社福法人、止まらぬ不適切会計 監査義務づけへ法改正 対象は一定規模のみ、実効性に疑問の声も
老人ホームや病院、保育園の運営など、市民生活に欠かせない施設を運営する社会福祉法人。その公共性ゆえに、補助金や税制上の優遇措置を受けているが、各地で不適切会計の発覚が相次ぎ、財務面の不透明さが指摘されている。4月からは一定規模以上の社福法人に公認会計士による監査を義務づけた改正社会福祉法が施行された。ただその対象は一部にとどまり、実効性には疑問の声も。一方、市場が拡大した会計士側は顧客獲得に期待感が広がっている。

改正法の適用枠外「中小の方がずさん」

会計監査の義務づけは利用者にとっては安心材料だが、法人側にはコスト増が避けられない。

近畿地方のある社福法人の場合、新規で契約した監査法人に払う費用は年に数百万円に上る見通し。男性理事長(69)は「上場企業の監査は投資家保護のためだが、社福法人は投資の対象ではない。財務の正確さを担保することは重要だが、監査費用に一円の補助金もないのは厳しい」と制度設計に納得いかないものを感じている。

会計監査は一定規模以上の法人のみに義務づけられる。先の理事長は「むしろ家族経営のような中小の法人の方が会計がずさんな傾向にある」と話す。

たとえば昨年末、幹部による約3億7千万円の着服が発覚した大阪市の社福法人の場合、改正法のもとでも会計監査の対象には入らない。第三者調査では「手口は極めて単純。残高証明や通帳を確認すれば瞬時に露見しただろう」と指摘されたが、同じような規模の法人の不正には法改正でも歯止めはかからない。

初年度対象はわずか1%…厚労省「全法人義務づけは非現実的」

制度導入を答申した厚生労働省の審議会でも、法人の適用範囲をどこまで広げるかが主な論点になった。
最終的には平成29、30年度は収益30億円超または負債60億円超の法人を対象とし、その後33年度まで段階的に対象を広げていくことで決着した。

ただ初年度の対象になるのは全国約2万法人のうちわずか220法人(25年度時点集計)、33年度でも1636法人(同)で、結局は全体の1割もカバーできない。
この着地点について、厚労省は「監査費用の負担や会計士の人員確保の問題から、全法人への義務づけは現実的ではない」と説明している。

会計士側には期待感も

一方、会計士側からすれば業務の拡大につながるため、関心は高い。最大手の新日本監査法人は、社福法人を専門的に扱ってきたチームを中心に社内教育に注力。経験値の高さを売りに、今年度対象となった法人の1割強と契約を結ぶことが決まったという。

日本公認会計士協会も、社福特有の会計上の規制などについて研修や情報提供を通じて後方支援を進めてきた。同協会が示した実務指針では、監査業務だけにとどまることなく「法人運営の課題と認識した事項について指摘し、改善を促すために助言を行うことが期待される」と社会的な要請にも言及した。

同協会の山田治彦副会長は「財務情報の信頼性の確保が第一」とした上で「最終的にガバナンス強化や経営の透明性の向上に資することが社会の期待。それを強く自覚するよう会員に求めている」と強調した。

■2017.5.14  「善意の食事」運営危機 資金難、倉庫確保難航 芦屋
大型スーパーなどの余剰食品を譲り受け、福祉施設などに提供している認定NPO法人「フードバンク関西」の活動がピンチだ。この10年で食品取扱量が2倍を超え、倉庫を兼ねた兵庫県芦屋市呉川町の事務所は既に収容能力が限界に達していたこともあり、家主からの退去の求めに応じて来春、退去することになった。ところが、移転先探しは資金などの条件に合う物件がなく難航。同法人は「移転準備もあり、今夏までに見つからなければ活動に影響が出かねない」と危機感を募らせる。

同法人は、2003年に芦屋市の米国人が設立した。包装の傷やラベルの印字ミスなどの理由で商品価値を失った食品を、「イオントップバリュ」(千葉市)などの食品企業などから回収。事務所で一時保管し、児童養護施設やホームレス支援団体、母子家庭などに提供している。

12年度からは、市役所などに生活保護の申請に来た人に対し、一時的に食料を提供する「食のセーフティーネット事業」を開始。16年度時点で芦屋、尼崎、伊丹、西宮、川西、宝塚の6市と提携を結んでいる。

さらに、自宅で食事を取れない子どもたちに温かい食事を提供する「子ども食堂」の支援を16年度に始め、今年4月末時点で10団体に食品を提供。2月には、兵庫県内各地の子ども食堂と、それぞれの課題解決に向けて協力する「兵庫子ども食堂ネットワーク」を設立し、同法人が事務局を担う。

同法人が現在の事務所に移転したのは06年。同年度の食品取扱量は70トンだったが、15年度には185トンとなり、食品の受取団体数も同時期の27団体から102団体に増えた。

現在の事務所は、会員から月約10万円で借りている木造2階建て民家。2階は事務スペースとして使っているため、倉庫として使えるのは実質1階だけとなっている。広さは30坪弱で、段ボール箱は天井に届きそうなほど山積みに。場所を確保するため、13年からは近くのアパートの1室も借りている。

同法人は会費や寄付金で運営し、行政からの補助金などはほとんどない。移転先は阪神間で50坪以上の平たんなスペースがあり、月の賃料は20万円まで−などを条件に探しているが、今も見つかっていない。

全国フードバンク推進協議会によると、全国には約80のフードバンク団体がある。近年、各地で子ども食堂の設立が相次ぎ、各団体が食材の供給源として大きな役割を果たしているが、資金不足は共通の課題だ。

同法人代表の浅葉めぐみさん(68)は「私たちが活動をやめるわけにはいかないが、このまま移転先が見つからなければ、活動に支障が出るかもしれない」と指摘。「CSR(社会的責任)活動の一環で倉庫を安く貸してくれる企業はないかなど、あらゆる可能性を探りたい」と話す。


【フードバンク活動】国連世界食糧計画(WFP)によると、食べられるのに廃棄される食品ロスは2014年度、全国で621万トンに上り、世界の食料援助量の2倍に相当。その一方で、子どもの貧困率が「16・3%」(12年、厚生労働省調べ)に達しており、食品ロスを有効利用するフードバンク活動は全国各地で盛んになっている。

■2017.5.16  里親への理解呼びかけ 赤ちゃんポスト10年
慈恵病院の「こうのとりのゆりかご(赤ちゃんポスト)」開設10年を記念したシンポジウムが14日、熊本市内で開かれ、ゆりかごの今後や、里親への理解や環境整備の必要性について議論を交わした。

シンポは、慈恵病院と、同病院が特別養子縁組を委託する一般社団法人「命をつなぐゆりかご」(埼玉県川口市)が、2015年に開いた続編として企画。母子支援に取り組む産科医や研究者らが取り組みの現状などを報告した。

基調講演では、同病院の蓮田太二理事長が、ゆりかごの匿名性を堅持する必要性を強調したうえで、「匿名で預けられた子どもは出自のことで悩むと思うが、早い段階から愛情のある家庭で育つことで、悩む程度が軽くなる」とし、家庭での養育への理解と協力を呼びかけた。

一般社団法人「全国養子縁組団体協議会」代表理事で静岡大の白井千晶教授(家族社会学)が、日本の里親委託率が世界的に低い現状を説明し、「日本は都道府県によっても委託率に差がある」と指摘。「養子候補児や養親適格者の全国のデーターベースを作ることが必要」などとした。

白井教授は、米国では10歳代の母親が通うことのできる高校があることにも触れ、「(昨年成立した)改正児童福祉法は妊婦の支援に触れておらず、更なる法整備が必要」と訴えた。

■2017.5.18  障がい者向け学習支援のいま--文字入力はキーボード、音声読み上げも
障がいがある人への差別を禁止し、行政や学校での合理的配慮を義務化する「障害者差別解消法」が、2016年4月に施行されてから1年が経った。同法により、学校や受験において障がいのある学生が希望すれば、自分の能力を十分に発揮できるようにする措置を学校側がとる必要があるが、障がい学生を取り巻く環境に変化はあったのだろうか。「DO-IT Japan」の近藤武夫氏と、日本マイクロソフト 技術統括室 プリンシパル アドバイザーの大島友子氏が、障がい者教育の現状と課題を語った。

近藤氏がプログラムディレクターを務めるDO-IT(Diversity Opportunities Internetworking and Technology)Japanは、同氏が准教授をしている東京大学先端科学技術研究センターが中心となり、2007年に発足したプロジェクトだ。ITによって、障がいや病気のある小中高校生・大学生の高等教育への進学と、その後の就労への移行を支援することで、将来の社会のリーダーとなる人材を育成する活動を10年にわたり続けている。

近藤氏は大学受験を例に挙げながら、この10年で少しずつではあるが障がい者向けの配慮の事例が増えてきたと語る。たとえば、2007年には筋ジストロフィー症の生徒が国立大学の一般入試でキーボード入力による解答用紙への記入を認められた。また、2009年には脳性麻痺のある生徒が筑波大学の一般入試で数学入力ソフトを用いて受験している。2015年には読み書き障がい(ディスレクシア)の生徒が、PCによる音声読み上げを申請し、認められなかったものの、代読での受験が認められている。

独立行政法人日本学生支援機構の実態調査によれば、2016年度にAOや推薦などの特別入試を配慮を受けて受験した障がい学生は786人で、前年度よりも175人増えている。また、特別入試以外の入試で配慮を受けて受験した障がい学生は2689人で、前年度より434人増えているという。

また、マイクロソフトでもWindows PCやタブレットにおいて、幅広いアクセシビリティ機能を提供してきたと大島氏は説明する。具体的には、教科書のテキストデータをワープロソフト「Word」で読み上げる機能や、話した言葉を認識して文章化する機能、プレゼンテーションソフト「PowerPoint」で集中させたい場所にアニメーションを付けられる機能などだ。デジタルノート「OneNote」を使って、先生の話を録画して授業後に1人で学習するといったこともできる。

近藤氏は、従来の障がい者教育は、健常な生徒と同じ方法で読み書きや計算ができるように繰り返し訓練する「治療教育アプローチ」が一般的だったと語る。しかし、いくら練習をしても機能障害によって上達に限界がある生徒もいることから、治療教育アプローチに加えて、生徒がITなどの代替手段によって読み書きができるようになる「機能代替アプローチ」も推進すべきだと訴える。

「障害者差別解消法」による変化と課題

これまで、教室における平等は「全員が同じ環境であること」と考えられることが多く、結果的に障がい者は特別支援学校などに行かざるを得なかった。2016年4月に前述した障害者差別解消法が施行されたことで、この状況が大きく変わりつつあると近藤氏は話す。合理的な配慮をすることが義務化され、実際に多くの学校がそうした配慮をするようになったからだ。

文部科学省も、対応指針におけるIT利用例として、試験などにおいて合理的配慮を受けたことを理由に、試験の結果を学習評価の対象から外したり、評価に差をつけたりすることを禁止した。また、入試において別室での受験や、試験時間の延長、音声読み上げ機能やタブレット端末の使用許可などを求めている。国内でも、2013年に発足した全国の80大学が参画するAHEAD JAPAN (全国高等教育障害学生支援協議会)のような、障がい者教育を支援する取り組みが急激に増えているという。

■2017.5.19  <魔法の車椅子>緊張ほぐれ、身体能力向上 作業療法士が製作
大阪府吹田市の作業療法士、野村寿子さん(54)がつくる車椅子が評判を呼んでいる。身体障害者の体を支える「座位保持装置」を一人一人の特徴に合わせてオーダーメードすることで、姿勢が安定し、体の緊張がほぐれるという。利用し始めてから、大幅に身体能力が向上した少女の母親は「娘にとっては魔法の車椅子です」と喜びを語る。

1984年に作業療法士の資格を取得した野村さんは16年間、吹田市の肢体不自由児施設で勤めた後、福祉用具製造会社「ピーエーエス」(同府箕面市)を設立し、車椅子の製造を始めた。

最初に利用者の筋肉の硬さや張り具合、痛みを感じる場所を直接触って確かめ、最適の姿勢を見極める。座り心地をよくするため、わずかなゆとりを残すのがポイントだ。ウレタンを削って座位保持装置を作製し、別の業者に特注する車輪部分に取り付けて車椅子を完成させる。

脳性まひで重度の身体障害がある滋賀県立甲良養護学校中学部1年、古池玲乃愛(れのあ)さん(12)の母敦子さん(48)は評判を聞いて昨年2月に野村さんに製作を依頼し、2カ月後に完成した。以前の車椅子はずり落ちないよう上半身の4カ所をベルトで締め付けるタイプで、乗ると常に体がこわ張っていた。野村さんの車椅子に座ると、緊張がほぐれ、手で物をつかむ動作が以前よりスムーズになり、表情も豊かになったという。

さらに作業療法士の野村さんのアドバイスもあり、以前は想像さえしなかった歩くことへの挑戦も始めた。歩行器を使ってゆっくりと歩き、昨年5月の小学部の運動会では初めて自身の足でリレーに出場。今年3月の卒業式でも歩いて卒業証書を受け取った。

野村さんの活動を知る北海道の士別市立病院の医師、澤口裕二さんは「野村さんの装置が利用者の下半身を適切なバランスで支えることにより、緊張がほぐれて上半身が動きやすくなる」と指摘。重度の身体障害者は姿勢を保つために多くの筋力を使うが、余分な力が不要な分、呼吸が楽になり、表情も豊かになるという。口コミで評判が広がり、野村さんには、今では年間300件ほどの製作依頼が寄せられている。

敦子さんは「野村さんの車椅子が、娘に新たな道を切り開くきっかけをくれた」と喜んでいる。

■2017.5.20  おしゃれな牛革製 「障害者手帳カバー」が評判
千葉県柏市のNPO法人Next-Creation(中尾康弘理事長)の障害者多機能型事業所I’llbe(あいびー)が製造・販売している牛革製の障害者手帳カバーが、おしゃれで使いやすいと評判を集めている。

手帳交付時にもらう塩化ビニール製カバーが破れたり、傷ついたりしたまま使っている人は多い。「申請すれば交換してもらえるが、交通機関の乗車時に開示するなど頻繁に使う人が多い。それならばおしゃれで長持ちするカバーを自分たちで作ろうと思った」と中尾理事長は製造のきっかけを話す。

たまたま、友人に皮革製品メーカーの社長がおり染色・裁断した牛革を仕入れられたことや、デザイナー経験者が職員に採用されるといった出会いもあり、カバーづくりは本格化。将来は会社として製造・販売することを目指し、オリジナルブランド「SLOWLY AND SURELY」を立ち上げた。

カバーは、手帳の四つ折りサイズ(約104ミリ×74ミリ)とバスの乗車カードなどが入る見開きタイプで、市販のストラップを付けて首からぶら下げられるフック付き。大人から子どもまで使えるようシンプルなデザインにした。
 利用者はメーカーが染色・裁断した部品をのり付けしたり、目打ちして縫い上げたり、切断面をコーティングする。その姿は職人そのものだ。

材質やデザインの良さが認められ、カバーは今年1月に千葉県などが主催する「はーとふるメッセ・オブ・ザ・イヤー」の非食品部門で大賞を受賞。「頒価は3500円と高いが、品質には自信がある。平均7000〜8000円の工賃を増やすためにも、今後は一般向け製品を作るなど、ブランド力を高めていきたい」と中尾理事長は話している。

NPO法人Next-Creation
http://next-creation.net/

■2017.5.22  福祉施設に非常通報装置導入進む 相模原事件を契機に
人命や財産に関わる緊急事態の発生をボタン一つで警察に伝える「110番非常通報装置」の導入が、兵庫県内の社会福祉施設で進んでいる。これまで導入例はなかったが、昨年7月に19人が刺殺された相模原市の障害者施設殺傷事件を受け、今年4月までに県内14カ所の施設で設置された。「利用者の命を守りたい」という施設側の切実な思いが表れている。

非常通報装置のボタンを押すと、施設内の異変が警察本部へ直接伝わり、管轄の警察署から警察官が駆け付け、付近のパトカーが緊急配備を敷くなどする。犯人に対応しながら作動させることができ、事件の早期解決や被害の拡大防止に役立てられている。

日本で110番制度が始まった1948年の5年後に開発され、主に金融機関の強盗対策に活用されてきた。普及業務を担う日本防災通信協会(日防災、東京都)のまとめでは、全国で昨年1年間にあった金融機関強盗27件のうち、25件でボタンが押され、12件で犯人の現行犯逮捕につながった。うち10件は現場での逮捕だった。

日防災兵庫県支部(神戸市中央区)によると、通報装置は県内の約1460カ所に設置され、約9割を金融機関が占める。残りは官公庁や病院で、社会福祉施設への設置はなかった。

ところが昨年7月に起きた相模原の事件後、通報装置の申請が殺到。設置には数十万円かかるが、昨年度は国が事業者負担を4分の1まで軽減する補助をしたこともあり、全国で221、県内で14の社会福祉施設が導入した。既存の防犯カメラと併用するケースが多いという。

社会福祉施設以外にも、訪問者とのトラブルに頭を悩ませる官公庁や病院からも関心が高まっている。ほかにも駅や高速道路の料金所、美術館に設置する地域もある。

【施設側「利用者の命守りたい」】

「どんなときに押したらいい?」「受話器を上げておくと周囲の声を拾える」

今年3月、特別養護老人ホームなどの5棟それぞれに110番非常通報装置を導入した兵庫県明石市の「明石恵泉福祉会」。日本防災通信協会兵庫県支部と設置保守メーカーの担当者が訪れた説明会で、職員が装置の仕組みなどを学び、熱心に質問した。

約600人の入所者に加え、家族や業者らがひっきりなしに出入りする。防犯カメラや警報装置はすでに備わるが、対策としてさらに一歩踏み込んだという。長生(ながいき)弘施設長は「使う場面がないのが一番だが、抑止力や安心感になる。職員全員が使い方を理解し、一人でも多くの命を守りたい」と表情を引き締める。

全国の福祉施設で実際に活用された事案はゼロ。同支部も施設側も実際どんな事案が起こりうるのか予測できない部分も残る。

同支部の中村茂樹統括支部長は「設置をゴールとせず、訓練や運用指導を小まめに続けて有用性を広めたい」と話している。

■2017.5.24  リサイクル事業者が社福法人を設立 金属ゴミ分別などで障害者雇用
障害者雇用とリサイクルを結びつけて開所した就労継続支援A型事業所がある。鹿児島市の社会福祉法人環和会が運営する「資源再生工場エコランド」(宇都久夫施設長)だ。リサイクルのプロが考えた障害者雇用の仕組みは、利用者の自立に大きく貢献。リサイクルの可能性を広げる活動としても注目されている。

環和会は、大手リサイクル事業者(株)荒川(荒川直文・代表取締役)の創業者で、2015年11月に亡くなった荒川文男会長が「社会に貢献したい。障害者を支援したい」という強い思いで、13年8月に設立した社会福祉法人。本業のリサイクルを障害者雇用に生かし、14年4月にエコランド(定員30人)を開所した。

民間企業が障害者を雇用する場合、特例子会社を設立する方法もあるが、故荒川会長は、景気などに左右されず継続的な支援をするには、社会福祉法人が良いと判断。(株)荒川が扱うさまざまな事業の中から、障害者でもでき、高い賃金を得られる金属ゴミの選別、電線むき、ガス・水道器具の分解などを作業の柱に据えた。

金属ゴミの選別は、(株)荒川で廃自動車など破砕し、ボディーなどの大型ゴミを取り除いた後のエンジンやラジエターなどの金属ゴミを分別する作業。大型クレーンでベルトコンベアに運ばれた金属ゴミを色や重さ、磁石に付くか否かなどで判断し、鉄、銅、アルミニウム、ステンレスなど14種類に分ける。選別能力には個人差があるが、少しずつ経験を積み選別できる種類を増やしていく。現在23人が従事し、3人が14種類を選別できる。

電線むきは、長い電線を1〜2メートルに切断した後、専用の機械で外側のゴムなどを取り除き、中の銅線を取り出す。ガス・水道器具は取っ手やパッキンなどを外して、真ちゅうや鉄などを分別する。

選別した金属ゴミは、(株)荒川が1キロ50円で引き取り、加工業者に販売する。毎月の引き取り量は約60トンで、収入は300万円に及ぶ。「選別すると販売価格が倍以上になる。材料費もかからず、収入のすべてを賃金に反映できる。利用者には最低賃金の1時間715円(鹿児島県)を払っており、平均月額8万〜9万円になる」と宇都施設長は話す。

また、前施設長の西元泰光理事は「金属ゴミの選別は、粘り強く真面目な障害者に向いている。エコランドで選別するようになって、(株)荒川は別の仕事ができるようにもなった。互いにプラスになっている」と話す。

精神障害者を中心に就労意欲の高い人が多いエコランド。開所後3年で3人が一般就労し、2人が溶接技術を学ぶために進学するなど次のステップに進む人も多い。そんな個々の希望に応じた支援ができるのも社会福祉法人だからだという。

今後の課題は、市の要請に応え、OA機器や廃家電のリサイクルを行うことだが、今の人数では手が回らない。人手は増やしたいが、金属片で手をケガするなどのリスクもあり、働ける人が限られる悩みもあるという。

「障害者の力を生かそう」と、数多い作業の中から金属ゴミの選別などを選んだ故荒川会長。リサイクルのプロが考えたその仕組みは、障害者雇用とリサイクルの可能性を広げる先駆的取り組みになっているようだ。

■2017.5.25  保育士試験、介護福祉士なら筆記の3分の1免除 来年度にも導入へ 厚労省方針
厚生労働省は24日、介護福祉士、社会福祉士、精神保健福祉士が保育士の試験を受験する際に、筆記試験の科目の3分の1を免除する方針を固めた。来年度にも導入したい考え。有識者会議に見直し案を盛り込んだ報告書を提示し、委員から大筋で了承を得た。

保育士の資格を取るためには、指定を受けた養成施設を卒業するか筆記・実技の試験に合格する必要がある。厚労省は今回の見直し案で、筆記試験に他の専門職が履修する内容と共通する要素が多く含まれていると指摘。介護福祉士、社会福祉士、精神保健福祉士が受ける場合は、筆記の全9科目のうち福祉職の基盤に関する「社会福祉」、「児童家庭福祉」、「社会的養護」の3科目を免除すべきとした。

学校の科目の一部も免除

報告書にはこのほか、介護福祉士の養成施設を卒業した人が保育士を目指して養成施設で学ぶ場合に、一部の履修科目を免除する方針も盛り込まれている。厚労省はすでに、保育士の学校を出た人を対象に介護福祉士の学校で科目の一部を免除しているが、今後はその逆も認めることにした。新たに免除されるのは必修科目の24科目中6科目。教養科目や選択必修科目の一部についても、保育士の学校がそれぞれ免除の可否を判断できるようにする。

政府は現在、医療系・福祉系の専門職を育てるプロセスで共通の基礎課程を設ける方針を打ち出している。複数の資格に挑戦しやすくすることで、限られた人材により幅広いシーンでの活躍を促す狙いだ。2021年度の実現に向けて検討を進めており、今回の見直しはそれまでの「当面の措置」という位置づけ。

■2017.5.25  福祉資格の人、保育士容易に 試験科目を一部免除
介護福祉士など福祉分野の国家資格を持つ人が新たに保育士資格を取りやすくするため、厚生労働省の検討会は24日、保育士の国家試験の科目を一部免除することを決めた。2018年度の試験から実施する方針。

対象は介護福祉士、社会福祉士、精神保健福祉士のいずれかの資格を持つ人。保育士試験の筆記試験9科目のうち、これらの資格の養成課程で既に内容を履修している「社会福祉」「児童家庭福祉」「社会的養護」の3科目を免除する。

また、介護福祉士の養成施設を卒業した人に限り、保育士を養成する短大などでの必修科目の履修も一部免除する。

保育士資格を取りやすくするための対応は、安倍政権が掲げた地方創生の一環。保育や介護など福祉分野では将来的に専門職の不足が予想されるため、いずれかの資格を持つ人には他の資格も取得しやすいようにして、少ない人手で地域福祉を担う仕組みづくりを進めている。

■2017.5.26  障害児支援「放課後デイ」 運営厳格化に現場戸惑い
障害のある児童が放課後や休日に通う「放課後等デイサービス」の報酬の不正受給やサービスの質の改善を目的にした厚生労働省の省令改正に対し、静岡県内の現場から戸惑いの声が上がっている。既存の事業所は現行では職員の資格は不要だが、1年の経過措置を経て来年4月以降は一定数で専門資格が必要となる。各事業所は「人材不足が加速する」「制度改正がサービスの質の向上につながるのか」と懸念する。

県内の放課後等デイサービスは4月1日現在、約340カ所。事業への参入のしやすさや需要の高まりを受けて、ここ5年で10倍近く増加している。

職員の新基準は利用者10人以下の場合、職員2人は社会福祉士などの「児童指導員」や保育士、2年以上の障害福祉サービス(放課後等デイサービス以外)経験者のいずれかが求められる。

ただ、資格のないパートタイムの主婦や大学生らが働く事業所も目立ち、人材確保が喫緊の課題。浜松市西区の障害福祉サービス事業所「アルス・ノヴァ」は、有資格の職員がいないため、既存の職員が保育士の資格を取るか新規採用するかなどを検討している。

一方で、久保田翠理事長は資格の有無にとらわれず障害者がさまざまな個性の職員と触れ合うことも必要と考える。「障害者は社会の中でどう生きるかが問われている。多様な人との関わりの中で豊かな人間性を育むことが大切」と話す。

支援の質の向上もより求められている。創作活動や運動機能訓練など、用意するプログラムは事業所ごとにさまざま。テレビを見せるだけといった不適切な事例も指摘され、支援の質に開きがある。

約50事業所でつくる浜松市障がい児放課後支援連絡協議会の稲松義人会長は「制度改正は参入ハードルを上げ、支援の質の低下に歯止めがかかる部分もある。サービスの向上は事業所同士や他機関との連携が重要になる」と強調する。


■個性に合わせ多彩な支援

各放課後等デイサービスは地域交流や自然体験、音楽活動など独自のプログラムで支援に取り組んでいる。

5月初旬、浜松市西区の「学童おおくぼ」に特別支援学校や小学校の発達支援学級などに通う小学1〜5年生10人が次々と集まった。自閉症やダウン症、知的障害など障害はさまざま。この日は「集団あそび」で、4人の職員が付いた。

何をするか、どんなルールを設けるかは子どもたちで考える。職員の支援を受けながらイス取りゲームやドッジボールに決め、友達と一緒に思い切り体を動かした。

指示の理解が難しい子どもには、一人の職員が後ろからそっと単語でポイントをささやく。個々の特性に応じた配慮が欠かせない。

ゲーム終了後は、感想を自分の言葉で表現する時間も設ける。松本知子施設長は「社会に出た時、コミュニケーション力や困ったことを発信する力が必要になる。幼少期にたくさんの体験を提供したい」と述べる。

■2017.5.26  障害者の挑戦、地元も応援 ブドウの木のオーナーに 「小牧ワイナリー」開設2年
知的障害者らが働く愛知県小牧市のワイン醸造所「小牧ワイナリー」が、開設から2年を迎えた。気候に適した品種探しなど試行錯誤しながら、ブドウの収穫量を少しずつ拡大。障害者は醸造や販売まで全てに携わり、自家製ワインの生産と自立した生活を目指している。そんな取り組みを後押ししようと、ブドウの木のオーナーになる地元住民らの輪も広がってきた。

4月29〜30日にワイナリーで開かれた「春の葡萄(ぶどう)酒まつり」。昨年に周囲の約2ヘクタールの畑で収穫したブドウなどで造った赤・白のワインが販売され、2日間で地元住民ら約1500人がその味わいや食事を楽しんだ。

ワイナリーは社会福祉法人AJU自立の家(名古屋市昭和区)が運営する。2015年4月、無償提供された市有地に障害者の就労支援施設として開設。10代から50代までの約30人が小牧、名古屋、春日井の各市から通い、AJU職員らと一緒にワイナリーや併設のカフェで働いている。

春の水やり、夏場の草取り、8〜9月の収穫。加えて障害者らは瓶詰めやラベル貼りなど全作業に携わる。平田光さん(20)は「房取りなどが楽しい。自分たちで造ったワインを多くの人に飲んでほしい」と話す。

ブドウ栽培は雨量など気候や土壌の影響を受けやすく、高温多湿な愛知では容易ではない。これまでも苦難の連続。畑は当初、雑草すら生えず、腐葉土をこまめに加えてブドウを育ててきた。

収穫できたブドウは一昨年が700キロで、昨年は2800キロに増えた。とはいえ、味わいはまだ途上。他のブドウを加えて醸造したり、取り寄せたワインとブレンドしたりして生産している段階だ。

最適の品種を見つけるため、AJU職員で醸造責任者の白井尚さん(33)は赤用・白用の計7種を育成中。「ワイン造りが『生きがい』になるよう、一緒に頑張りたい」と意気込む。

純粋な“小牧産ワイン”への挑戦に、地域住民らもエールを送る。約1200の個人や団体が会費を払ってぶどうの木のオーナーに。女性ソムリエの草分け、日本ソムリエ協会理事の島幸子さんもその一人で、ブレンドの仕方などを助言する。

ワインに適した実が育つには5〜10年かかるとされる。その中で畑を拡大し、約20トンのブドウを収穫して障害者が月10万円を得られるようにすることがワイナリーの目標。AJU常務理事の江戸徹さん(64)は「収入も増えれば自立できるようになる。時間はかかっても、おいしいワイン造りを続けたい」と話す。

■2017.5.29  「学校に連れていってあげたい」医療的ケア児、通学の保障置き去り スクールバスに制限
たんの吸引など医療的ケアが欠かせない子どもの親たちにとって、特別支援学校への送迎が「重荷」になっている−。こうした実態が、文部科学省初の調査で裏付けられた。同省はスクールバスに乗せること自体は禁じてはいないものの、各教育委員会の多くは「不測の事態に対応できない」などとして認めていない。一方、看護師同乗のタクシーで登下校をサポートするなど、医療や福祉、教育を連携させる自治体独自の動きも出始めている。

「私のせいであの子が通えないのかなと思うと、申し訳ない気持ちです」。福岡市内に住む女性(46)は、自宅の居間で座位保持椅子に横たわる長男(11)に目をやった。

生まれつき自力で座ったり歩いたりできず、てんかんも発症。リハビリのため療育センターに通い、市内の特別支援学校に進学した。スクールバスでほぼ毎日通っていたが小学部4年の秋、誤嚥(ごえん)性肺炎になったのをきっかけに呼吸状態が悪化。1年後に気管切開と胃ろうを作る手術を受けた。

たん吸引の頻度は少ないが、手術後は学校がバス利用を認めていない。車を運転できないため、登下校にはタクシーを使う。往復5千円は自腹。通学は週1回に減った。訪問教育も考えたが「学校で友達に会うと楽しそうに笑うんです。やっぱり連れていってあげたい」。体調が安定している時はバスに乗れるよう、学校に申請している。

「できるところから取り組む」自治体も

福岡市教委は「乗車の可否は、個人の状態を鑑みて学校ごとに判断する」との立場。ただ多くの自治体は、医療的ケアが必要な児童・生徒を一律で線引きし、スクールバスの利用を制限しているのが実態だ。

文科省が2011年、自治体に対し、バスでのたん吸引について「日常とは異なる場所での対応となり、移動中の対応は危険性が高いことなどから、看護師等による対応が必要であるとともに、看護師等が対応する場合であっても慎重に対応すること」を求めたことも自治体の判断に影響しているとみられる。

ただ大阪市教委は15年度から、保護者の付き添いなしで通学できると主治医が認めた児童・生徒に対し、看護師同乗のタクシーで登下校できる事業を独自に始めた。17年度は24人が対象となり、年間120日まで使えるようにした。予算額は約6300万円。担当者は「保護者から強い要請があった。しっかりサポートしたい」と意気込む。

神戸市教委は保護者が車の免許を持たなかったり、病気だったりする子どもがタクシーで通学できる制度を1977年度に設けた。保護者の同乗を求めつつ、代わりに保護者が頼んだヘルパーなどが乗ることも可能。1日平均22人が使い、年1200万円の費用は全額、市教委が負担する。

滋賀県教委は14年度から、訪問看護ステーションに委託し、登下校のタクシーに看護師が同乗する事業を実証研究中。年間1人10回まで、利用者が実費の1割を負担(1回数百円)する仕組みだ。子どもも親も安心できるよう、極力、子どもの日ごろの状態を知る訪問看護師が付き添うよう配慮。制度化には看護師の確保など課題も多いが「できるところから取り組む」という。

こうした動きは九州では広がっていない。福岡市は15年度、障害者の移動支援を考える有識者検討会を立ち上げたが、医療的ケアが必要な子どもの通学は対象外。市教委関係者は「たんの吸引が必要な子どもの通学をどう支えるか、早く議論をしなくてはいけない」と話す。

■2017.5.29  性犯罪の障害者更正支援
国立精神・神経医療研究センター(東京)が、知的・精神障害があり、性犯罪を繰り返す人を対象にした地域での再犯防止プログラムのモデル事業を今月、本県で始めた。性犯罪をした障害者に対する更生支援の仕組みは国内では整っておらず、同センターは成果が得られれば全国に普及させたい考えだ。

性犯罪は一般的に再犯率が高いと指摘されており、厳罰化に向けた法改正も議論されている。2004年に奈良県で起きた女児殺害事件をきっかけに国は06年、刑務所と保護観察所で性犯罪者向けの再犯防止プログラムを導入。しかし、対象者が出所したり保護観察期間を終えたりした後、地域で継続的にフォローする仕組みはできていない。さらに加害者に障害がある場合、障害の特性に応じて更生を支援できる人材が少なく、再犯防止の有効な手だてがないのが現状だ。

モデル事業では、英国で作成された更生・治療モデル「SOTSEC−ID」を基に、日本風に、分かりやすくイラストなどで解説を加えたワークブックを開発。強制わいせつなど性犯罪をした10〜30代の知的・精神障害者数人が県北地域の福祉施設に通い、「進行役」がワークブックに沿って解説したり受講者同士が議論したりしながら、性の知識や認知のゆがみ、被害者感情などを学んでいる。

同センターは昨年、本県で福祉施設の職員らを対象にした「進行役」の養成講座を実施。その参加者らが順番に進行役を務める。週1回2時間程度のプログラムを4カ月続け、効果を検証するという。

個別指導やグループワークを含めたプログラムを開発した聖マリアンナ医科大神経精神科教室の安藤久美子准教授は「性犯罪の加害者が刑務所を出て、社会に戻った時が再犯のリスクが高い。今後、プログラムを保健所や民間団体などに活用してもらうことで障害者の再犯防止につなげたい」。同センターの大塚俊弘上級専門職は「性犯罪の被害者を減らすためにも必要なプログラムだ」と話す。

15年版の犯罪白書によると、性犯罪のうち、10〜14年に婦女暴行や強制わいせつで刑務所に入っていた受刑者計約3300人の約6・4%に知的・精神障害などがあった。

■2017.5.29  医療的ケア児、8割が送迎 親の負担重い通学 特別支援学校
九州の特別支援学校に医療的ケアが必要な子どもを通わせている保護者の約8割が、登下校や学校生活に付き添っていることが、文部科学省による初の実態調査で分かった。親の代わりにケアに携わる看護師などの態勢が十分でないことが背景にある。昨年の法改正でこうした子どもの支援は自治体の努力義務と明記されたが、親たちの献身がなければ大多数が学校に行けない現実が横たわる。

調査は2016年5月1日時点で全国の公立特別支援学校に通学し、たんの吸引など医療的ケアが必要な5357人を対象に実施。九州7県・3政令市では在籍969人中、訪問教育などを除いて計553人が通学している。

1日の待機時間も長く「4時間以上」が46%

このうち週に1回以上、登下校や学校生活に付き添う保護者は、79・9%に当たる442人。内訳は登下校時が391人、学校生活までの付き添いも51人に上る。福岡県が94人と最も多く、鹿児島県69人、熊本県59人−と続く。

文科省は親の負担軽減などを目的に支援学校への看護師配置を推進し、16年度は全国で過去最高の1665人が各校で子どものケアに対応中。ただ看護師の活動範囲は校内に限定され、親がマイカーで送迎しているケースがほとんどだ。

九州で登下校時に付き添う保護者の主な交通手段は「車」が98・6%。また49%が「週平均10回以上」と答え、平日5日間、毎日マイカーで2往復している実態がうかがえる。学校生活まで付き添う保護者の1日の待機時間も長く、「4時間以上」が46%を占めた。

全国でも、こうした子どもの支援学校への通学に付き添っている保護者は3523人で、通学生全体の65・8%。同省特別支援教育課は「看護師の配置や医師との連携など、各自治体の支援態勢充実につながる施策を広げたい」としている。

【ワードBOX】医療的ケア

たんの吸引や管を使った栄養注入(経管栄養)など、気管切開したり口から食べられなくなったりした人に対して行う医療的な生活援助行為。医師や看護師のほか、2012年度から研修を受けた介護職員や教員も可能となった。医療の進歩とともにケアが必要な子どもが増え、特別支援学校ではここ10年で1・38倍の8116人(16年度)に。改正障害者総合支援法により昨年6月、医療、福祉、教育面で一層の連携を図って支援するよう、自治体に努力義務が課せられた。

 

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