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残しておきたい福祉ニュース

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 2017. 6. 4 「やまゆり事件」19人刺殺犯の肉声と、決して語られない施設の内情 【植松聖被告・面会記】
 2017. 6. 5 ハローワーク通じ就職の障害者 昨年度9万3229人
 2017. 6.10 大阪堺の特養がとった「職場」を変えるための秘策
 2017. 6.10 障害のある子供に動物とのふれ合いを 神戸どうぶつ王国 ドリームナイト・アット・ザ・ズー
 2017. 6.11 プレナス創業者遺族、佐世保市に1億円寄付 障害者福祉の基金創設へ
 2017. 6.11 イオン社会福祉基金が佐久市の施設に福祉車両を贈る
 2017. 6.11 各務原の障害者投票断念 市選管改めて謝罪
 2017. 6.11 知的障害男性投票できず 各務原市長選
 2017. 6.11 子も親も学べる場に 川崎・柿の実幼稚園が障害児積極受け入れ
 2017. 6.12 看護師夜勤、基準超え34% 離職率高まる一因に
 2017. 6.14 社会への一歩 引きこもり経験者らの店オープン 大阪
 2017. 6.19 渋谷の温泉施設爆発10年 負傷女性、障害者外出支援のNPO法人を設立
 2017. 6.19 障害者の地域生活をサポート 柏に24時間体制の拠点「あおば」完成
 2017. 6.21 「自分に何かあったら、病気で苦しんでいる人を助けて」脳死臓器提供の男児
 2017. 6.21 なければ母がつくる 医療的ケア児のデイサービス続々
 2017. 6.24 <東京都議選>「バリアフリー化」で障害者の投票サポート
 2017. 6.27 知的障害者の共同生活施設 整備・運営事業者公募  群馬県


■2017.6.4  「やまゆり事件」19人刺殺犯の肉声と、決して語られない施設の内情 【植松聖被告・面会記】
相模原市緑区の精神障害者施設で入所者19人が刺殺され、27人がけがを負った通称「やまゆり事件」。戦後日本の事件史に刻まれるであろうこの事件を起こした施設の元職員・植松聖被告(27)に、各マスコミに先駆けて接見した。

被告は多くを語らなかったが、そのことで逆に独善的な人物像が浮かび上がった。動機や事件に至った経緯の解明は欠かせないが、被告が障害者を支える側から一転、「障害者はいなくなればいい」という動機を先鋭化させたとみられる施設の検証は不十分だ。

「このたびは、私の考えと判断で殺傷し、遺族の皆さまを悲しみと怒りで傷つけてしまったことを心から深くおわび申し上げます。本当に申し訳ございませんでした。この言葉に嘘偽りはございません。それは、重複障害者を育てることが、想像を超えた苦労の連続であることを知っているからです。

そして、私の行為で、多大なご迷惑をおかけしたことを心から深くおわび申し上げます。どうか、ご勘弁下さい。本当に申し訳ございませんでした」

事件が発生した2016年7月26日以降、筆者は東京新聞横浜支局の神奈川県警担当キャップとして、この事件の取材に携わっている。被告は事件直後、同県警津久井署に出頭、緊急逮捕された。通常は逮捕・送致後、20日間で検察が起訴の可否を決定するが、責任能力の有無を調べるため、殺人容疑で3回目に逮捕された16年9月以降、5カ月にわたって精神鑑定を受けるために留置されていた。

「日本国と世界の為と思い、居ても立っても居られずに本日行動に移した次第であります」

事件を起こす5カ月前、被告が衆院議長公邸に持参した手紙に書かれていた言葉だ。警察の取り調べには、「(この犯行は)社会の賛同を得られると思った」という趣旨の供述をしたという。これらの言動から、被告は「自分は正しい」と思い込んで行動を起こしたと推測された。

ひょっとすると、過去の劇場型犯罪のように、社会に自分の犯罪を誇示したいと考えているのか、とも思えた。会えば、滔々と事件について語るかもしれない。何より、殺人事件において、戦後最悪の死者数とされるこの事件を起こした犯罪者本人と直接、向き合えるものなら向き合ってみたい。

そんな記者としての直感と本能を頼りに、とにかく接見手続きを取ってみることにした。

被告が勾留されていた神奈川県警津久井署を訪ねたのは2月27日月曜日。起訴されたのは24日の金曜日であり、弁護士を除いて接見ができない土日を挟み、第三者のマスコミが接見を申し込むことができる「初日」だ。

午前10時過ぎ、護衛の警察官2人に連れられ、面会室のアクリル板越しに姿を現した被告はまず、「とらえ方の違いで、誤解を受けることがあるので、きちんと話したいと思ったので面会を受けさせてもらいました」と述べた後、冒頭の言葉を訥々と語った。

黒とグレーの迷彩柄のダウンのジャケットを着た被告。事件当時の金髪は先の方に残っているだけで、前髪は目元にかかるほど伸びていた。事件から7カ月がたったという時間を感じさせた。

冒頭の言葉を発した後、机に額がつかんばかりに頭を下げた被告。緊張し、丁寧な口調で、申し訳なさそうにひと言ひと言区切りながら話す様子は、本当に恐縮しているようにも見えた。色白で気弱な若者のようにも見える被告は、凄惨な事件を起こした凶悪犯とつり合う見かけとは言えない。それに、こんなにあっさりと記者に対して謝罪の言葉を発するとは想定しておらず、正直戸惑った。

想定外の対応に、「直接、話を聞きたいと思った。正直に話してほしい」「裁判を待つ気持ちは」といった、あいさつ変わりに繰り出そうとしていた差し障りのない質問項目は頭から飛んでしまった。

事前に用意したA4版2枚、20問の想定質問は瞬時に捨て、「『ご勘弁下さい』と言ったが、遺族の方は簡単に許してくれないと思う。それは想像できますか」と、何とか二の句を継いだ。被告はしばらくの間、じっと考え込んだが、「以上となります」と言ったため、あわてて続けた「遺族に対しての謝罪はあったが、亡くなった人に対してはどう思うのか」という問いにも答えず、「終わらせていただきます」と述べて、面会は打ち切りとなった。

この間、わずか10分足らず。制限時間の15分を使い切ることもなかった。

「悲劇のヒーローというポジションで語っているのではないか。自分は良いことをした、保護者の苦労を解いてあげた、と読めなくない。典型的な『自己愛性パーソナリティ障害』の発想だ」

1面に掲載される、面会の様子を伝える記事に加え、被告の言葉に専門家や被害者家族がどんな反応を示したかを伝えるサイド記事を執筆するため、犯罪心理学に詳しい大学教授に接見内容を伝えると、開口一番こうコメントした。被告は起訴前の精神鑑定で、「自己愛性パーソナリティ障害」だと診断されたが、この人格障害の特徴は、主に次のようなものが挙げられる。

▽自分が特別で、地位の高い人にしか理解されない、または関係があるべきだ
▽過剰な称賛を求める
▽特権意識、有利な処遇、または自分の考えに従うことを理由なく期待する
▽共感の欠如。他人の気持ちや欲求を認識しない

確かに、被告は衆院議長公邸に持参した手紙の中で、「障害者は不幸しかつくることができない」「職員の少ない夜勤に決行致します」などと、犯行計画といえる内容を書いていた。そこでは、「心神喪失による無罪」「(逮捕後の)本籍、運転免許証等の生活に必要な書類」「金銭的支援5億円」といった特別待遇も求めていた。

事件前には、働いていた施設での面接で、障害者を差別する言動を大っぴらにしてとがめられたが、「考えは変わらない」と譲らず、退職に至っている。さらに、周囲の友人にも犯行をほのめかし、加わるように誘っていた。「自分は間違っていない」という独り善がりの信念に囚われていた様子がうかがえる。

接見で述べた内容も、遺族には謝罪しているものの、根本的に自分が間違っている、という言い方は避けられている。被害者、遺族への共感があるとは思えない。

捜査に関わった県警の捜査員も「取り調べで話している段階では、意思疎通はできた。でも、後で調書をよく読むと理解できない内容に違和感があった。自己愛性パーソナリティ障害と分かり、その特徴についてネットで調べてようやく腑に落ちた」と振り返る。

被告の取った言動は常軌を逸しているとしか思えない。しかし、自己愛性パーソナリティ障害の特徴だけを読めば、自分の周りに思い浮かぶ顔がある人も多いのではないだろうか。

部下の功績を自分の手柄とするパワハラ上司、不当な評価を受けていると愚痴ばかり言う部下…。高度なコミュニケーション能力と同時に成果を求められる職場環境、核家族化・少子化で過保護に育てられ、肥大した自己愛を抱えたままの大人―。

社会環境の変化にともない、自己愛性パーソナリティ障害を持つ人が増えているとの指摘もある。この事件は、現代社会が抱える深い病根の一つと、被告の人格や差別思想が結び付いて起きたとは言えないだろうか。


もっとも、自己愛性パーソナリティ障害には特有の症状がなく、診断もただちにはできないという。被告についても、事件を起こしたのでよく調べてみたらそうだった、というに過ぎない。無論、この人格障害のある人全てが凶悪な犯罪に手を染めるわけではない。被告の人格に、周囲の環境が影響して犯行に至った、と考えるのが自然だ。

植松被告を鑑定した医師は、捜査機関の協力を得て、家庭環境から幼児期の教育、勤務先の労働状況など、被告を取り巻く詳細なプロフィールを検討した上で診断を下したはずだ。

その内容は裁判で明らかにされるのを待つしかないが、ここでもう一つ、問題提起をしておきたい。被告が差別思想を深めていったと考えられる、職員として働いていた現場施設の環境が充分に検証されていない、ということだ。

現場となった施設「津久井やまゆり園」は、社会福祉法人「かながわ共同会」が運営している。1989年に法人を改組し、それまでの県営から「県立民営」での運営を始め、2005年には指定管理者となった。法人はほかに神奈川県内に3つの障害者施設を運営している。

事件後、法人は記者会見を開き、事件の経過や施設の問題点についての報告書も提出している。その中で、被告がいつこの職場に採用され、差別的な発言をして退職に至ったかなどが明らかにされている。しかし、職員の労働環境、例えば、入浴の補助はどうやっていたのか、職員数は足りているのかといった、被告以外の職員がどのように入所者に接していたのかという施設の環境一般については言及されていない。

記者会見を開いたまではいいのだが、その後はかん口令が敷かれ、何とか職員への取材ができた一部報道から漏れ伝わってくるもののほかには、内情を知ることはほとんどできない。


明らかにされるべきこと

「事件後、園からの連絡が全くなくなった。被告がどういう環境で働いていたのかを知りたいが、その術がない」

今からちょうど10年前、この施設に入所していた弟を事故で亡くした星野泰子さん(76)=横浜市鶴見区=が言う。

星野さんの弟は、食事に出された鶏肉をのどに詰まらせて窒息死した。星野さんは事故後、「弟と同じような事故を繰り返してほしくはない」と、家族会などを通じて園と関係を持ち続け、施設の環境改善を訴えてきた。

星野さんは、同施設が05年に指定管理者制度に移行後、効率化、経費削減という名の下、職員の質が低下し、入所者の家族と施設の情報共有も少なくなったと感じていた。「事件は福祉の民営化の弊害がもろに出てしまった結果だ」と無念さを隠さない星野さんも、法人が公開した内容では、なぜこの事件が起きてしまったのかの検証をするには不十分だと感じている。

一見、事件と直接関係のないように見える施設の環境などは、裁判で言及される可能性は低いかもしれないが、つまびらかにして社会で広く議論されるべきだろう。

被告は筆者の接見後、3つの新聞社の取材に応じた後、突如として他のマスコミの取材には応じなくなった。その後、筆者が送った手紙にも返事はない。被告が次に公に口を開くのは法廷になる可能性が高い。

障害者をめぐる差別や環境に関しても大きな議論を呼んだこの事件。被告の人格や育った環境のほかにも、施設の実態など、明らかにされるべき事柄はまだ山積している。




1980年、神戸市生まれ。2007年に中日新聞に入社し、岐阜支社報道部、警視庁担当などを歴任。2016年3月から横浜支局神川県警担当。
宮畑 譲

■2017.6.5  ハローワーク通じ就職の障害者 昨年度9万3229人
昨年度、全国のハローワークを通じて就職した障害者は延べ9万3000人余りに上り、過去最多を更新した。

厚生労働省によると、昨年度、全国のハローワークを通じて就職した障害者は延べ9万3229人で、前の年に比べて3038人、率にして3.4%増えた。就職者数が増えるのは8年連続で、過去最多を更新した。

このうち、精神障害者は前の年から7.7%増えて4万1367人、次いで身体障害者が3.8%減って2万6940人、知的障害者は1.9%増えて2万342人となる。

就職先の産業別では、医療、福祉が最も多く3万5386人と全体の38%を占め、次いで製造業が1万2268人、卸売業、小売業が1万1547人だった。

障害者の雇用をめぐっては、来年4月から、企業などに義務づけられた雇用率を算定する際、精神障害者が新たに対象となり、企業に求める雇用率は今の2%から2.2%に引き上げられることになっている。
厚生労働省は「過去最多を更新したとはいえ、3割の企業で障害者を1人も雇用していない実態があり、障害者雇用が促進されるよう引き続き指導や支援をしていきたい」としている。

■2017.6.10  大阪堺の特養がとった「職場」を変えるための秘策
大阪・堺市にある社会福祉法人・稲穂会の高橋義之理事長(47歳)が、介護報酬の引き下げの流れにより経営環境が厳しくなる中で、地域とのつながりを重視しながら、保育園から高齢者までを受け入れ、障がい者を施設のスタッフとして働いてもらうなど将来を見据えた新しい取り組みを実践、高齢者施設の職場を変えようと努力している。

稲穂会が運営するのは特別養護老人ホーム、ユニット型特別養護老人ホームの「やすらぎの園」と保育園等で、高齢者を受け入れるベッド数は100ある。

1975年に高橋理事長の祖父が「つくし保育園」を開園、これを継いだ父親が病気になったことから、高橋理事長が93年ころから特養老人ホームも始めた社会福祉法人の経営に参画するようになった。その後、理事長代理を経て2014年に理事長に就任した。堺市で育った高橋理事長のモットーは「稲穂会の施設を、社会を築き上げてきたお年寄りと、これからを担う子供たちとの、世代を超えた人間的な触れ合いの核にしたい」ことで、保育園から高齢者までを社会福祉の視点から手助けしていきたいという信念がある。

全国に社会福祉法人は約2万ある。社会福祉業界では、保育園と高齢者施設を同時に経営することはあまりないが、稲穂会では近隣で両施設を運営している。「保育園の子供たちは高齢者を見ると最初の5〜10分は馴染めないが、すぐに仲良しになる。約500m離れた隣町にある保育園の園児たちに高齢者がいる施設に誕生会などで来てもらったり、高齢者が園児の運動会を見に行ったりすることで、世代を超えた交流をするよう心掛けている。園児たちには高齢者と接することで、新しい経験を伝えられる。高齢者も子供と会うと、これまで施設のスタッフにも見せたことのないような笑顔を見せてくれる」と世代間交流の意義を訴える。

イメージを変える

社会福祉法人の社会的なイメージについて「世間の評価は低い。労働環境・作業内容が『 きつい』『汚い』『危険』ことを示す『3K職場』とみられがちだ。しかしケアの仕事をしている介護士のうち6割は介護資格を持っている。社会福祉の現場はイメージが先行しているため、正しい情報が伝わってない。施設の仕事はラクではないが、人の一生の最期に立ち会えることは貴重なことではないだろうか」と、高齢者を介護する仕事ならではのやりがいを強調する。その一方で「病院は入院患者が退院すれば病院の目的は達成されるが、老人ホームではケアする側にとって明確な目標が見出しにくいのが難しい点だ。このため世間からは高齢者施設を評価しにくい」と指摘する。

高橋理事長はこの数年、施設の中間管理職スタッフが組織の中に埋没してしまい、チームとしての機能が低下していることに悩んでいた。これを打開しようと医療・介護施設のコンサルティングが専門のBigtreeの吉田大祐代表(33歳)に入ってもらい診断を受けた。吉田代表は「社会福祉法人は公的なもので、利益を出してはいけないという心理が働きやすいため、積極的な組織運営が難しい面がある。固定費を抑えるため低賃金で従業員を雇用することに躍起になっている施設が多く、結果的に『3K』の職場環境になってしまいがちだ。また、高齢者施設はどうしても『姨捨山』的なイメージが残ってしまう。スタッフは仕事をしながら自分の仕事の意義について複雑な感情を抱くことがある。これを、わくわくするような仕事をしているように変えたい」として、スタッフに対してどうしたら自覚をもって介護の仕事ができるようになるか、試行錯誤している段階だという。

ネガティブなイメージを変えるため高橋理事長は多くのチャレンジをしようとしている。その一つが待遇面の改善で10年ほど前から業績給としてのボーナスを導入した。同時に年に2回実施する人事考課制度も取り入れた。スタッフにはあらかじめ目標を書いてもらい、それに対する達成度合いが評価の基準になるという。考課が高いとボーナスに反映される仕組みで、社会福祉法人の施設で人事考課制度を導入しているのが少ないという。「うちのスタッフの待遇は地元の中小企業の年収より低くない水準だ。良い仕事をしてくれたスタッフにインセンティブを与えるのは当然だと思う。将来に向かって何が足りないのかを理解してもらうために人事考課を行っている」と前向きにとらえている。

吉田代表は稲穂会の斬新なところは「従業員に対して本気の成長を願い、それを証明するように従業員の外部研修などを積極的に行い、人材育成にチャレンジしていることだ」と指摘する。

その一方で理事長は「スタッフは10年以上勤務したベテランが多いので継続性を大事にしている。スタッフと入所している高齢者との関係は、家族にはなれないが家族の次で、他人よりは近い関係を意識してほしい」と、家族的なつながりを重要視している。

障がい者をスタッフに

この数年の間に、社会福祉関係の法律、制度が改正されて、サービス付高齢者住宅(サ高住)と介護付有料老人ホームが急増した。中でも堺市はこの数年の間にサ高住が断トツで多くできたという。稲穂会が運営している特別養護施設には介護度が「3」以上でないと原則入所できないが、サ高住には介護認定が「3」以下でも入れることもあって、この数年は介護の必要な高齢者がサ高住や介護付有料老人ホームに取られる傾向にあるという。

これを表すように高橋理事長は「現在は、計画以上にベッドが空くこともあり、経営的にも入所者が入ってくれないと困ることになる。10年ほど前までは社会福祉法人は施設を建て替えするときは補助金を使うことができたため、貯えを多くしておかなくてもよかった。しかし、いまは制度が変わって、大部分で自前の資金が必要になり、社会福祉法人もある程度は貯え、繰越金が必要になる時代になっている」と、取り巻く経営環境は厳しさを増している。

さらに深刻になっているのがスタッフの人手不足だ。「いまのままだと人材がどうしても足りない。数年前までは外国人をスタッフとして使うのはチームワークや管理の観点から消極的だったが、ベトナム人の研修現場を見学してから見方が変わった。彼らは優秀で勤勉で、日本語も最低限度は話せる。介護現場に外国人を3〜4人入れる予定があるので、近い将来はフィリピンかベトナム人のスタッフを導入したい」と外国人雇用にも前向きだ。

稲穂会の独自の取り組みとしては、障がい者を施設のスタッフとして積極的に活用している。現在は3人がこの施設のスタッフとして働いている。その中の一人は勤務歴12年になり、単純な介護業務だけでなく洗濯、入浴補助などいくつもの仕事をこなしている。日勤だけだが、スタッフからは仕事を任せられる「戦力」になっている。このスタッフは初任者研修資格を得ようと、休みの日には研修も受けるなど、さらなる技量アップを目指している。障がい者に対してもできる仕事があれば、積極的に仕事の場を提供し、少しでもやりがいを持ってもらいたいというのが高橋理事長の考え方だ。

ジレンマ

高齢化が進んだことで認知症患者が急増している。これを踏まえて認知症ケアにも力を入れようとしている。高橋理事長は「もはや、認知症は高齢者だけの問題ではない。認知症になっても楽しく生きていけるような地域を作りたい。このため、スタッフには認知症ケアの研修に行ってもらっている」と、認知症への取り組みにも先手を打とうとしている。

高齢者施設を運営する理事長は地元地域とのつながりを大切にしてきている。そうした中で16年7月に神奈川県で痛ましい事件が起きた。高橋理事長は「あの事件が起きたことで、防犯に注意するように要請をされるようになった。この周辺は個人宅でも鍵を掛けていない家が多く、防犯は良い意味で気にしなくてもよかったが、そうもいかなくなった。そのせいで、誰もが気軽にうちの施設に立ち寄れなくなり、地域とのつながり、交流が少なくなる恐れが出てきている。防犯も大事だか、地域とのつながりも重要なので、どちらを優先するか悩ましい」と話す。


中西 享 (経済ジャーナリスト)

■2017.6.10  障害のある子供に動物とのふれ合いを 神戸どうぶつ王国 ドリームナイト・アット・ザ・ズー
1996年にオランダのロッテルダム動物園がガンを患った子供たち175人を閉園後の動物園に招待したことから始まった
世界38カ国279の施設で開催されている (2016年6月現在)


閉園後の動物園を開放して障害のある子供たちを招待する「ドリームナイト・アット・ザ・ズー」が9日夜、神戸市中央区の神戸どうぶつ王国で開かれた。計約1200人の親子らが動物たちとのふれ合いを楽しんだ。

平成8(1996)年にオランダで始まった取り組みで、同園では今年で2年目。同園は午後5時に通常営業を終了。その後、5時半から8時まで、招待した親子らに開放した。

辺りが薄暗くなるなか、子供たちは牧羊犬がヒツジを追いかけるショーや園内を歩くアルパカなどを見たほか、飼育スタッフから犬やミーアキャット、ウサギを抱かせてもらい、笑顔を見せていた。

長男の涼雅君(18)と訪れた同市兵庫区の大川智栄子さん(49)は「動物に触ることができて、息子もうれしそうでよかった」と話した。

■2017.6.11  プレナス創業者遺族、佐世保市に1億円寄付 障害者福祉の基金創設へ
佐世保市は9日、持ち帰り弁当店「ほっともっと」を展開するプレナス(福岡市)の創業者で、昨年12月に85歳で亡くなった塩井末幸氏の遺族から1億円の寄付を受けたと発表した。障害者の保健福祉事業に役立てる「塩井基金」を創設する。

市保健福祉部によると、「創業地である佐世保市の特に障害のある人のために役立ててほしい」という遺志を受け、遺族が3月に市に相談。6月1日に寄付を受けた。市は16日開会予定の定例市議会に基金創設の関連議案を提出し来年度からの活用に向け検討する。

朝長則男市長は会見で「大変ありがたく思う。塩井さまの気持ちに沿うよう活用したい」と述べた。

塩井氏は1960年、佐世保市内で事務機器を扱う会社を創業。80年に弁当業界に参入し、90年に本社を福岡市に移転した。「在福佐世保人会」初代会長。2002年にも佐世保市に3千万円を寄付している。





佐世保市の朝長則男市長は9日の定例記者会見で、持ち帰り弁当チェーン「プレナス」(福岡市)の創業者で、昨年末に亡くなった塩井末幸さん(享年85)の遺族から1億円の寄付を受けたと発表した。同社は佐世保が創業地で「障害のある方のために役立ててほしい」との遺志が示された。市は保健福祉目的の「塩井基金」を新設し、来年度以降に使途を具体化させる。

塩井さんは1960年、出身地の佐世保にプレナスの前身、太陽事務機を設立。80年から持ち帰り弁当チェーンのフランチャイズ店を展開した。

本社の福岡移転後の2002年にも市へ3000万円を寄付しており、朝長市長は「生前から貢献してくださり、大変ありがたい」と述べた。16日開会の市議会6月定例会に基金設置の条例改正案を提案する。

■2017.6.11  イオン社会福祉基金が佐久市の施設に福祉車両を贈る
マックスバリュなどを運営するイオングループが、佐久市の障がい者施設に福祉車両を贈った。

福祉車両を贈ったのはイオングループの90社が加盟するイオン社会福祉基金で、マックスバリュ長野の笹田直弘社長から佐久市の社会福祉協議会に目録が手渡された。
イオン社会福祉基金では従業員と会社が毎月それぞれ50円、1人あたり合わせて100円を積み立て、全国各地の障がい者福祉施設に毎年福祉車両を贈っている。

県内の施設への贈呈は今回が初めてで、福祉車両は「臼田共同作業センター」で来月から利用者の送迎などに使うという。

■2017.6.11  各務原の障害者投票断念 市選管改めて謝罪
四月二十三日に投開票された各務原市長選の期日前投票で、本人確認ができず重度の知的障害のある男性(18)が投票を断念していた問題で、市選管は十日会見し、改めて男性への対応に不備があったことを認め、謝罪した。

市選管によると、男性は四月二十一日、母親と一緒に期日前投票所である同市鵜沼市民サービスセンターを訪問。対応した男性職員は、本人確認のため尋ねた氏名は母親が一緒に言うことによって聞き取れたが、住所と生年月日を聞こうとすると、母親から「本人は言えない」と申し出があったという。
男性は投票を断念し、母親に付き添われて帰宅した。

会見で市選管の川瀬兼彦委員長は「本人確認の際に十分な配慮ができず、投票を断念される結果になった」と陳謝。市選管の聞き取りに対し、職員は療育手帳など別の証明書で本人確認をしなかった点について「別の方法に至らなかった」と話しているという。

市選管では現在、知的障害を含む障害者の投票支援のための手引きやマニュアルは定めていない。谷野好伸事務局長は「今後は障害者団体を通じて代理投票の手続き方法を周知し、職員に対しては障害者への投票補助への対応を徹底する」と約束した。

■2017.6.11  知的障害男性投票できず 各務原市長選
岐阜県各務原市選挙管理委員会は10日、4月23日に投開票された同市長選の期日前投票で、知的障害を持つ少年(18)が市職員の不適切な対応が原因で投票できなかったと発表した。

市選管によると、少年は4月21日午後2時頃、市内の期日前投票所を訪れ、付き添いの母親が代理投票を申し出た。対応した30歳代の男性職員は投票に必要な宣誓書を代筆しようと口頭で本人確認を始め、氏名を聞いた。この際、母親が「生年月日や住所は言えない」と説明して代わりに伝えようとしたが、職員が制止したため、少年は結局、投票できなかったという。

宣誓書は、本人であることを確認できる療育手帳などがあれば職員が代筆できるが、職員は提示を求めていなかった。市選管は9日、市役所で母親に謝罪したといい、「職員に代理投票の方法を徹底したい」としている。

■2017.6.11  子も親も学べる場に 川崎・柿の実幼稚園が障害児積極受け入れ
障害児や支援を必要とする子どもを積極的に受け入れている幼稚園として、川崎市麻生区上麻生の「柿の実幼稚園」が、全国の幼児教育関係者などから注目を集めている。

重度の障害児を優先的に入園させ、車いすや難病の子どもも多く通う同園。今春には、人を大切にし、人の幸せを実現する行動を続けている会社などを表彰する「『日本でいちばん大切にしたい会社』大賞」(人を大切にする経営学会主催)の厚生労働大臣賞に選ばれた。

「おはよう」。小島澄人園長(62)は毎朝、園の前に立ち、次々と登園してくる子どもたちに声を掛け、握手する。長年続く日課だが、笑顔で応える園児の中にはチューブを体に付けてバギーや車いすに乗る子どもの姿も。筋力が低下し呼吸障害のある難病の子どもや、心臓病、ダウン症、発達障害などさまざまな子どもが、市内だけではなく、横浜市、伊勢原市、都内からも通う。 園児約千人のうち約200人は障害児や支援を必要とする子どもたち。通常の幼稚園の倍はいるという。特別クラスを設けず、健常児と同じクラス。クラスは非常勤も含め職員2、3人で担当し、看護師や介護福祉士も常駐させている。

約200人いる職員の多くは卒園児の保護者で、感謝の気持ちが礎にある。小島園長が高校教諭を辞め、副園長として同園に入った37年前から障害児らの受け入れをスタート。口コミなどで徐々に増えた。「その頃は400人の定員で園児は350人しかいなかった。クラスの担当が複数いてきめ細かく面倒を見てくれると健常児を含めて希望者が増えた」と同園長。その後、園児が千数百人に上り、全国一の規模といわれた時期もあった。

とりわけ重度の障害児の受け入れは、設備や人材、医療的ケアなどの面から断る幼稚園は多い。 「子どもに24時間付きっきりでいるお母さんが4時間だけでもリフレッシュできたら」。そんな思いもあり、どこも引き取ってくれない子どもを優先的に入園させる。入園先を探して30カ所目に訪れ、その場で泣き崩れた母親もいた。

小島園長は「子ども同士、親同士が学んでいる。集合写真を撮る際、病気で椅子に座れない子がいた。園児の一人が『僕たちも寝て撮ろう』と言い出し、みんなで寝転んで写真を撮った。皆、やんちゃだけど優しい」と目を細める。

今春、同園を卒園した脳性まひの女児(7)の母親(37)は「他の園では『これができないと』と言われ、諦めざるを得なかった。ここでは『来てください。他の子たちも学ぶチャンスです』と言われ、気が楽になった」と振り返る。「バギーに乗せて通園していたけれど、園では自分の足で歩かせてくれ、他の子たちと一緒に遊具遊びや泥遊びもさせてくれた。大人では引き出せない成長を実感できた」と喜ぶ。 

全国の教育関係者や保護者から見学の申し込みや問い合わせが相次いでいる。賞の受賞もあってさらに注目を浴びる現状にも小島園長は冷静だ。「一つの園だけでは限界がある。受け入れる幼稚園や学校がもっと増えてくれれば」

■2017.6.12  看護師夜勤、基準超え34% 離職率高まる一因に
全国の病院で夜勤を含めた交代制勤務をしている看護職員のうち、夜勤抑制の基準となっている「月72時間」を超える夜勤をしている人が34.8%に上ることが12日までに、日本看護協会(東京)の2016年調査で分かった。12年の前回調査(32.0%)から微増。夜勤時間の長い看護職員が多い病院ほど離職率が高い傾向も確認された。

現行の労働法制に夜勤時間や回数の規制はない。診療報酬の入院基本料に関し「看護職員1人当たりの月平均夜勤時間数は72時間以下」の算定要件を設けることで、長時間の夜勤に歯止めをかけている。

調査は16年10月、全国8469病院を対象に実施し、3549施設から回答があった。これらの施設で夜勤に従事する看護師や准看護師(約18万人)の中で、月当たりの夜勤時間が「72.1〜80時間以下」だったのは14.5%。「80.1〜96時間以下」14.7%、「96.1時間以上」5.6%で、72時間超は計34.8%となる。

協会は、月72時間の夜勤は3交代制(夜勤8時間)の場合だと、月の夜勤回数が9回分に相当し、2交代制(夜勤16時間)では4.5回分に当たると説明している。
一方、夜勤時間と離職率の関係性を見ると、72時間を超える職員が10%未満の施設では離職率は9.1%だったのに対し、72時間超の職員が50%以上になると離職率は11.9%だった。

協会は「過重な夜勤負担は離職に直結する。慢性疲労が深刻化する上、注意力の維持も難しくなり、医療事故のリスクが高まる」と指摘。法令で夜勤時間や回数を規制するよう政府に要請している。

■2017.6.14  社会への一歩 引きこもり経験者らの店オープン 大阪
引きこもりを経験した人たちや支援者がスタッフを務める食品・雑貨販売店「びーの×マルシェ」が12日、豊中市宝山町の住宅街の一角にオープンした。社会への一歩を踏み出す場にしようと、市社会福祉協議会と市小売商業団体連合会が共同で運営する。

市社協は2011年度から、市の委託で、引きこもりの人の昼間の居場所づくりや社会関係づくりをめざす事業「豊中びーのびーの」を実施。これまで約90人が登録し、約30人が就労した。同連合会と協力し、日曜市の出店や買い物困難者の支援をしてきた。

今回、市内の社会福祉法人から事務所を無償で借りて、約40平方メートルの店舗に改装した。場所は阪急岡町駅の西約500メートル。スーパーがなくなり、お年寄りらが買い物に困っているという。
「びーの×マルシェ」では、野菜や果物、パン、菓子といった食品のほか、「豊中びーのびーの」手作りの小物や雑貨を取り扱う。東日本大震災や熊本地震の被災地を支援する物産展コーナーを常設。喫茶スペースも設け、コーヒー、紅茶、日本茶が各100円で、イートインもできる。

12日は、引きこもりを経験した20〜40代の男女4人が店頭に立った。市社協の勝部麗子・福祉推進室長は「お客さんと対面してやり取りし、自分たちの作ったものが売れることで自信を持ってもらえる。一歩一歩、ステップアップする場所になってほしい」と話す。

普段は引きこもり経験者3人ぐらいと市社協職員1、2人が店にいて、小売店の人たちも随時、手伝う。営業時間は月〜土曜日の午前8時〜午後6時。問い合わせは市社協(06・6848・1279)へ。

■2017.6.19  渋谷の温泉施設爆発10年 負傷女性、障害者外出支援のNPO法人を設立
2007年に東京・渋谷の温泉施設「シエスパ」で6人が死傷した爆発事故から19日で10年。負傷者で車いす生活になった元従業員の池田君江さん(42)はNPO法人を設立し、障害者が訪れやすい飲食店などを紹介する活動を続ける。原点には、失意の時期に客として訪れた自分を温かく迎えてくれた、ある飲食店チェーン社長との出会いがあった。

「障害者にとっては、どんな手助けができるか一緒に考えてくれることが一番うれしい」。4月下旬、横浜市のレストラン。従業員約30人を前に障害者へのサービスについて講演する池田さんの姿があった。

池田さんはシエスパで働き始めて1週間後に事故に遭った。控室で昼食中、ロッカーに体がたたきつけられ「気づいたらがれきの中で血だらけになっていた」。脊髄を損傷し、両脚がまひした。

趣味は食べ歩き。だが退院後、車いすで店に入ろうとすると「バリアフリー対応でないので」と断られる日々が続いた。気がふさぎ、家にこもりがちになった。

1年半が過ぎたころ、東京都内の自宅近くに大阪名物の串カツを出す「串カツ田中」の1号店ができた。「断られるだろう」と思いつつ、勇気を出して訪れた。

すると、店長だった貫啓二社長(46)は「車いすの客は初めて。どう手伝えばいいか教えてください」と言い、店員と4人がかりで車いすごと持ち上げ、店に入れてくれた。「お店の人次第でこんなに居心地が良くなるんだ」。気遣いがうれしく、心からくつろげた。

通うようになると店側も変わった。店員も習熟し1人だけの介助で店に入れるようになったり、車いすも入れるトイレを造ったり。「店員が他のお客にも積極的に声かけをできるようになった。来てくれてありがとう」。池田さんは貫社長の言葉が忘れられない。

こうした店を増やしたいと13年にNPO法人「ココロのバリアフリー計画」を設立。障害者を積極的に受け入れる飲食店やコンビニ、美容室などをインターネット上のサイトに登録してもらい、バリアフリー設備の情報を紹介する活動が中心だ。現在は全国の約1300店が登録する。

串カツ田中も全150店が登録済み。貫社長は「障害者を含めた全てのお客様に優しい店づくりを目指す」と意気込む。

飲食店などの社員研修での講演活動にも力を入れる池田さん。「事故で助かった私の使命は、障害者だけでなく誰もが出かけやすい社会をつくること」と話した。

■2017.6.19  障害者の地域生活をサポート 柏に24時間体制の拠点「あおば」完成
障害者に地域で生活を続けてもらおうと、柏市は今春、二十四時間体制で障害者や家族らからの相談や緊急時の対応に当たる施設「地域生活支援拠点あおば」を、県内で初めて同市高田に整備した。運営は社会福祉法人・青葉会に委託。今秋には、別の法人が運営する市内で二カ所目の同様の拠点「たんぽぽ」がオープンする。

あおばは、木造二階建ての計三棟で、市有地に建設された。障害者や家族らからの相談を二十四時間、年中無休で受け付けるのが、最大の特長。緊急時には専門機関に取り次ぐ「ワンストップ」の役割も担う。

障害者が自立に向けた練習などに取り組めるグループホームや、家族が休息を取るなどの際に利用する短期入所の機能も備える。昼間は定員二十人のデイサービスやヘルパー派遣の事業所などに利用され、社会福祉士や看護師らが常駐している。総工費は三億六千万円で、青葉会が二億七千万円を負担、国と市が計九千万円を補助した。

市障害福祉課によると、障害者の高齢化や、親が亡くなった後を見据え、地域で暮らすことを選択した障害者を地域で支える仕組み作りが、課題となっている。運営費のうち、相談の委託費として市は青葉会に千八百七十万円を支払う。

四月の開所後、五月末までに、あおばへ寄せられた相談は二百七十九件で、うち六件は、緊急対応が求められた内容だったという。「体験」という形で、短期入所を利用したのは、計七十人だった。

今秋に柏市柏下にオープン予定のたんぽぽは、社会福祉法人・ワーナーホームが運営。施設の建設費は三億円で、同法人と、国・市がほぼ折半する。

■2017.6.21  「自分に何かあったら、病気で苦しんでいる人を助けて」脳死臓器提供の男児
15歳未満の子どもとしては15例目の脳死臓器提供者(ドナー)となった男児の家族が、臓器提供を決めた経緯や思いについて発表したコメントの全文を紹介する。日本臓器移植ネットワークによると、家族としては、「今回の臓器提供を命の大切さを考える機会にしてほしい」と希望しているという。

コメントは以下

私たち家族は、普段から移植医療について話す機会があり、息子は、「もし自分に何かあったら、病気で苦しんでいる人を助けてあげたい」と話していました。正義感が強く、いつも周りの人のことを一番に考える息子らしい言葉だと思いました。

息子が助からないと分かった時、その息子の言葉を思い出し、臓器提供することを決めました。そのような意思を示してくれた息子を誇りに思います。
息子の優しさや思いが次の方へつながっていけば、息子も喜んでくれると思います。
どこかで息子の一部が生き続けて、今までと同じように、走り回ったり、元気に過ごしてくれることは、私たち家族の希望になります。

■2017.6.21  なければ母がつくる 医療的ケア児のデイサービス続々
障害児を育てる親が自ら、障害児を預かる施設を立ち上げるケースが相次いでいる。重症心身障害児や、日常的に医療的ケアが必要な「医療的ケア児」向けの施設は全国で大幅に不足。「なければつくればいい」という発想だが、行政にも対応を促す取り組みとなっている。

2児の母で看護師、施設を開所

茨城県ひたちなか市のビルにある多機能型重症児デイサービス「kokoro」。医療的ケアが必要な子どもたちがスタッフとプラスチック製ボールが入ったプールで遊んでいた。

施設を運営する社団法人の代表理事を務める紺野昌代さん(39)は、長女の蘭愛(れな)さん(13)と次男の愛聖(まなと)くん(10)が原因不明の難病で寝たきり。胃ろうから栄養を取り、夜間は人工呼吸器が必要だ。

県内には子どもたちを預けられる施設が少なく、あってもベッドに寝かせきりになることも。子どもたちを義母に預けて小児専門の病院で看護師として働いてきたが、預けられなくなり、昨秋に「子どもたちの居場所をつくる」と決意。3月にオープンさせた。

定員は5人。元同僚の看護師や機能訓練担当などのスタッフが、胃ろうから栄養を与え、リハビリにあたる。「私も殻に閉じこもった時期があった。母親にはもっと外に出てもらい、生き生きとした姿を子どもたちにみせてあげたい」

オープン前日は同じ障害があり、3年前に亡くなった長男の聖矢さんの命日だった。紺野さんはSNSでつぶやいた。「ママは聖矢にとって、自慢できるママでいられているだろうか」

■鹿児島ではNPO立ち上げ

鹿児島市の和田朋子さん(47)が医療的ケアを必要とする重症心身障害児を預かる「生活支援センターえがお」を始めたのは、2012年。現在は市内で三つの施設を運営している。

5日に亡くなった長女の愛奈(いとな)さん(13)は先天性の代謝異常で気管切開し、胃ろうもあった。和田さんは毎晩1時間おきに起きてたんの吸引などをしていたが、転んで足を骨折。それでも自分のために受診する時間がとれなかった。「私に何かあったら、この子はどうなるんだろう」と考えたのがきっかけだった。

放課後や長期休暇に障害児を預かる「放課後等デイサービス」などの制度が始まった時期。同じような立場の母親らに声をかけ、NPO法人を設立した。

現在は障害児のリハビリに特化した施設や、風邪などの際に診察を受けられるクリニックも運営している。「私も利用者のお母さんの気持ちがよく分かる。『初めてゆっくりランチができた』とか、喜んでもらえるのがうれしい」

■全国ネットワークがノウハウ提供

放課後等デイサービスは全国に約1万カ所あるが、このうち重症心身障害児を預かる施設は354カ所(昨年5月現在)。政府は20年度末までに各市町村に1カ所以上確保することを目指しているが、圧倒的に不足している。医療的ケア児は15年時点で約1万7千人いると推定されている。

このため、全国重症児デイサービス・ネットワーク(名古屋市)が、母親たちに自ら事業所を運営するよう促し、設立や運営のノウハウを提供している。同ネットワークの鈴木由夫代表理事は「母親は障害児のケアについての知識がある。研修を十分にすれば、社会進出にもつながり、メリットは大きい」と話す。

同ネットワークに参加する事業所160カ所のうち、障害児の家族が主体の事業所は23%、非営利法人が運営する事業所は62%に上る。「運営はゴールではなく、障害がある子どもたちが地域で暮らしていける社会にするためのスタートだ」と鈴木代表理事。施設に携わるメンバーは「母親が自ら施設を立ち上げているのは、それだけ施設が足りず、追い詰められてのこと。美談で終わらせず、行政は事態の解消に努めてほしい」と訴えている。

■2017.6.24  <東京都議選>「バリアフリー化」で障害者の投票サポート
東京都議選(7月2日投開票)に合わせ、視覚障害者がインターネット上で選挙情報を得るためのサイトができたり、知的障害者の投票をサポートするDVDが作られたりするなど、選挙の「バリアフリー化」が広がっている。都の統計では18歳以上の視覚、知的障害者は都内に計約10万6000人いるとされ、当事者が投票する際のハードルが下がることが期待されている。

IT大手のヤフーは告示前日の22日、特設サイト「Yahoo!Japan 聞こえる選挙」(https://kikoeru.yahoo.co.jp)を開設した。独自調査による「候補予定者を知る」(26日に『立候補者一覧』に差し替え)「マニフェストを比べる」「政策アンケートの結果」「都議選コラム」の4項目があり、それぞれをクリックすると、画面を読み上げる専用音声ソフトに対応して内容が音声で流れる。

視覚障害者に対しては、各地の選挙管理委員会が選挙公報の点字版とCD(音声)版を希望者に配布したり、総務省もネットに選挙公報を載せたりして、選挙情報を提供している。

だが、点字を読める視覚障害者が少ないことや、ネット上の選挙公報は改ざんを防ぐ目的で文書全体を画像化した「PDFファイル」で掲載されているため、音声ソフトが文字を識別できないといった問題があり、当事者が情報を得るのは簡単ではなかった。

視覚障害者の9割がネットを活用しているという総務省の調査結果もあり、自らも視覚障害者でサイトを監修した檜山晃さん(36)は「ネットはアクセスしやすく投票先をじっくり考える時間も生まれる。障害者のことをきちんと考えてくれる候補に投票したい」と話した。

また、東京都狛江市の知的障害者らの家族でつくる「狛江市手をつなぐ親の会」は昨年12月、当事者や支援者、自治体職員向けにDVD「投票に行こう!」を作製した。当事者が最初から投票をあきらめていたり、自治体側が支援のやり方が分からず投票できなかったりするケースがあるため、投票の流れや支援の方法を動画で分かりやすく解説している。

市選管などと協議しながら台本を作り、市役所内で実際に当事者が模擬投票をする様子を撮影した。公職選挙法に違反しないように候補者名を指し示したり、候補者名を書いたメモを補助職員に渡したりする「代理投票」のやり方を紹介。市は投開票日までに実施する職員向けの説明会で活用するという。

森井道子会長(60)は「事前に投票の流れを視覚的に理解しておくことで、見通しを持ち安心して投票に臨むことができる。大切な1票を投じることをあきらめないで」と呼びかける。

DVDは全国の特別支援学校や支援団体に口コミなどで広まり、約80枚が売れた。1404円(送料別)。問い合わせは富士通エフ・オー・エム公共サービスグループ(03・5401・8462)。




東京都議選(7月2日投開票)に向け、ヤフーは22日、視覚障害者向けに、画面読み上げソフトに対応した選挙情報サイト(https://kikoeru.yahoo.co.jp/)を開設した。23日の告示日以降、各選挙区の立候補者の選挙公報、各政党のマニフェストなどを掲載する。

視覚障害者の多くが読み上げソフトを使ってインターネットを利用しているが、選挙公報は画像形式のPDFで公開されるため、読み上げソフトでは読み上げることができなかった。

サイトに掲載する情報は、立候補予定者一覧、各党への政策アンケートの回答など(22日現在)。立候補者一覧は26日に確定したデータに更新するほか、28日には選挙公報をテキスト化して掲載する。投開票日翌日の7月3日以降には、開票速報をテキストで載せる予定だ。サイトの開設には早稲田大学マニフェスト研究所などが協力した。

パソコンOS(基本ソフト)のウィンドウズに付属している読み上げソフトなどに対応している。読み上げソフトを使わなければ、サイトを開いても音は聞こえないが、サイト内の「聞こえる選挙とは」欄にある「このサイトはどう使われるのか」で、音声を試聴できる。

■2017.6.27  知的障害者の共同生活施設 整備・運営事業者公募  群馬県
大泉町は26日から、知的障害者の共同生活施設を整備・運営する事業者の公募を始めた。町有地を30年間、無償で貸与したうえで、施設整備に伴う経費を町予算で補助する。公募期間は7月18日まで。9月に選定を終え、2018年度中の入所を予定している。

無償貸与する町有地は町中心部の東武西小泉駅近くの病院跡地(約760平方メートル)。近くに高齢者介護施設や町老人福祉センターなどがある。町は、障害者の保護者が高齢化し、施設に入所した後でも、互いに行き来しやすいよう、高齢者向けと障害者向けの各施設が近接した形での整備を目指す。共同生活を営む入所者の定員は6人。短期入所者用に1床以上の整備を求めている。

村山俊明町長は「保護者からの『この子を置いては死ねない』という声は切実。お互いが安心しながら暮らせる態勢作りが必要。身体障害者への対応など、さまざまなニーズに応えられるようにしたい」と話している。

町福祉課によると、療育手帳を持つ知的障害者は約250人。保護者の意向調査では、障害者が地域で共同生活を営む施設があれば「5年以内に利用したい」という要望が22人から寄せられた。

公募対象となる事業者は、県内か近県に事務所を置く社会福祉法人かNPO法人。施設整備の補助は約4000万円を想定している。問い合わせは町福祉課

 

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