残しておきたい福祉ニュース 1996〜社会福祉のニュース

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残しておきたい福祉ニュース

 2014年 
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

 2014. 1. 1 障害者と健常者 アートで感覚共有 /鳥取
 2014. 1. 1 全国障がい者芸術・文化祭とっとり大会:7月12日〜11月3日、県内各地で /鳥取
 2014. 1. 1 高齢者などが安心して利用できる駅施設を目指して!阪神電車の新しい取り組み
 2014. 1. 1 アール・ブリュット:「生の芸術」湖国で開花 古久保憲満さん/澤田真一さん/清水千秋さん /滋賀
 2014. 1. 1 アール・ブリュット:「生の芸術」湖国で開花 糸賀生誕100年、遺言今に /滋賀
 2014. 1. 2 北海道・石狩市の手話条例「大きな一歩」 全国市町村で初、「言語法」整備へ弾み
 2014. 1. 3 神戸・阪神地域で高齢者激増 福祉施設確保が急務
 2014. 1. 3 障害気にせず癒やしの温泉、「専用旅館」今秋オープン/厚木
 2014. 1. 3 精神障害者を民家で預かった歴史紹介 左京に資料館開館
 2014. 1. 3  アール・ブリュット 藍と白 変幻自在の「糸絵」に心揺さぶる力 萩野トヨさん(75)=滋賀県湖南市
 2014. 1. 4 アールブリュット:価値観への挑戦 眠った才能、調査本腰 半世紀経て「宝発掘」 /滋賀
 2014. 1. 5 障がい者芸術・文化祭、共生社会目指す/ジオパークのエリア拡大、観光客増へ期待 /鳥取
 2014. 1. 5 アールブリュット:価値観への挑戦 偏見社会、変えたい 専門性生かして連携 /滋賀
 2014. 1. 5 障害者働く機会、増やそう 産施設「掛川工房つつじ」施設長 滝口裕二さん(49)
 2014. 1. 5 都会のオフィスで働く障害者をよく見るようになったが…毎日新聞
 2014. 1. 5 【日本のアール・ブリュット、世界での評価】
 2014. 1. 6 これがブラック企業の“歪んだ論理”…理不尽な現状に手当てはないのか
 2014. 1. 6 <第16回ケアマネ試験>合格率は15.5%、前年より3.5%ダウン
 2014. 1. 6 栗東トレセン:競走馬のゼッケン、バッグに再生して人気
 2014. 1. 7 <改善指導>大阪のサ高住で700万以上の預かり金使い込みが発覚!
 2014. 1. 7 <ヒートショック対策>高齢者を守る温度管理を提言――都老研
 2014. 1. 7 患者21人、緑膿菌に院内感染か…11人死亡
 2014. 1. 7 妻が出掛けると人格豹変 連れ子小3男児に残虐ゲーム強要 介護士の男逮捕 京都
 2014. 1. 7 高齢者虐待防止の対応状況等について
 2014. 1. 7 県の手話CMで「間違い」 ろうあ団体が指摘
 2014. 1. 8 国立ハンセン病療養所でセクハラ 医長を停職処分
 2014. 1. 8 盲導犬、DNAで適性判断 「デザイナーベビー」も視野
 2014. 1. 8 【ケアマネアンケート】介護事業はサービス業だと思う?
 2014. 1. 8 <介護職員の虐待が増加>高齢者虐待調査結果を発表――厚労省
 2014. 1. 8 72歳女性殺害容疑、元介護職員逮捕…鳥取県警
 2014. 1. 9 老人施設:身体拘束、「手続き経ず」113人 県調査 /静岡
 2014. 1. 9 障害者に優しい施設 観光関係者らに説明
 2014. 1. 9 鳥取・米子の女性殺害:元自衛官逮捕に驚きの声 容疑者、護身術に精通 /鳥取
 2014. 1. 9 高齢者虐待:施設職員は1増3件 親族ら12増262件 12年度県内、前年度比 /茨城
 2014. 1. 9 米子・女性殺害容疑者逮捕「なぜ凶行」驚く知人
 2014. 1.10 袖ケ浦の少年死亡:養育園虐待 「更生園」も立ち入り 県、職員から聞き取り /千葉
 2014. 1.10 全従業員が障害者 田原の企業「同じ立場で」と社長
 2014. 1.10 瀬戸内海診療船「済生丸」が就航 4代目、15日から診療開始
 2014. 1.10 幸手市、高齢者向け軽度認知障害テスト実施へ パソコン使い判定
 2014. 1.10 特養入居待機 1万8000人…千葉県内3年連続
 2014. 1.10 障害者雇用状況:民間企業1万2729人、過去最高 法定雇用率の達成は45% 13年6月 /福岡
 2014. 1.11 電動車いす利用者登録 愛媛県安協、教習参加促す
 2014. 1.11 コンビニ商品のはさみで脅す 大阪・阿倍野で強盗未遂 逮捕の施設入所の男「金が自由に使えなかった」
 2014. 1.11 「障害者」⇒「障がい者」徳島県、表記スタート
 2014. 1.11 障害持つ子どもに配慮、国外退去を取り消す判決
 2014. 1.11 防災ベッドを障害者支援施設に設置 西条
 2014. 1.11 米子市で元介護職員が女性殺害容疑で逮捕
 2014. 1.11 大淀の高齢者福祉施設で感染性胃腸炎 /奈良
 2014. 1.12 認知症:115人が鉄道事故死 遺族に賠償請求も 高齢化社会の課題に 05年度から8年間
 2014. 1.12 大江健三郎さん講演へ 糸賀一雄氏生誕100年記念、3月に式典
 2014. 1.13 糸賀氏生誕100年、母子像とレリーフ修復 近江学園創設者
 2014. 1.14 大阪・門真の市有地、元市会議長側に無償貸与 相場は年1500万円
 2014. 1.14 福祉施設HP、2013年度の全国老人福祉施設協議会の広報コンテストで優秀賞
 2014. 1.14 <知的障害児の死亡>「10年以上前から日常的に暴行」
 2014. 1.15 虐待受けた障害者38人 2012年10月から半年間、府初調査
 2014. 1.15 更生園でも職員4人関与 9年前から暴行か 袖ケ浦の県立施設虐待
 2014. 1.16 ノロ集団感染か、肺炎で1人死亡…介護老人施設
 2014. 1.17 介護職員 25%増方針 山形
 2014. 1.17 「養育園」問題 12年前にも暴行発覚
 2014. 1.17 高齢者虐待高止まり 12年度158件  山口県
 2014. 1.17 ドラマ放送中止を…「赤ちゃんポスト」運用病院
 2014. 1.18 常務理事が過去に暴行 肋骨を骨折させていた
 2014. 1.18 千葉・施設虐待:トップも過去に暴行 県は把握後も放置
 2014. 1.18 養育園暴行 第三者検証委が初会合
 2014. 1.19 十人雑魚寝・口には…「無法状態」お泊まりデイ
 2014. 1.20 <苦情・相談>有料老人ホーム110番の結果を発表―― 全国有料老人ホーム協会
 2014. 1.20 <不正請求額約430万円>居宅を指定の一部効力停止に――熊本県
 2014. 1.20 高齢者83人、家庭内で虐待…昨年度、和歌山
 2014. 1.20 お泊まりデイ、3年で26人死亡…誤飲・徘徊で
 2014. 1.20 車いすの床擦れ防ぐ 富山のナレッジデザインがクッション開発
 2014. 1.21 <潜在看護職>50代以上で介護施設就職希望増――日本看護協会
 2014. 1.22 <23区内に140床規模>都内に新たな特養誕生!――都有地活用事業
 2014. 1.22 <認知症による窃盗>万引きの高齢者、理解力なしとして起訴取り消し
 2014. 1.23 介護保険事業者が虚偽申請、市が指定取り消し/横浜
 2014. 1.23 レジオネラ菌感染1人死亡 倉敷の介護老人保健施設
 2014. 1.24 2福祉施設で利用者ら36人食中毒/川崎
 2014. 1.25 土地使用料3億円超「タダ」、元議長系法人に「便宜供与」疑念…大阪・門真市の怪しすぎる選定経緯、“確信犯”の憶測も
 2014. 1.25 3職員「感覚がまひ」と暴行 「養育園」問題 県、2度目の改善勧告
 2014. 1.25 障害者施設でノロウイルスに感染…男性1人死亡
 2014. 1.25 養育園問題 県が福祉法人に追加改善勧告
 2014. 1.25 常総の介護施設 RSウイルス7人検出 集団感染2人死亡
 2014. 1.26 「障害者が住むようになると地価が下がる」 グループホーム開設に住民の反対相次ぐ
 2014. 1.27 バリアフリー目指せ…大学が本格的に取り組み
 2014. 1.27 準詐欺容疑:認知症男性から1000万円詐取 3人逮捕
 2014. 1.28 伝えられぬ苦しみ「吃音」 就職4カ月、命絶った34歳
 2014. 1.28 車いす、高齢者に優しいマップ完成 神戸市営地下鉄の全駅を網羅
 2014. 1.28 触法精神障害者「専用病棟」近畿で増床相次ぐ…重大犯罪“再犯率”0・7%でも被害者「根拠はどこに」
 2014. 1.28 介護施設の指定取り消し処分 効力停止決定
 2014. 1.29 認知症:不明・死亡578人 遠方で保護も 2012年分、毎日新聞全国集計
 2014. 1.30 袖ケ浦福祉施設虐待、県議らが現場視察 千葉
 2014. 1.31 <千葉・施設暴行>小腸の穴は外圧が原因か 医師が解剖所見
 2014. 1.31 <不正請求額1,540万円>訪問介護事業所を指定取消処分――横浜市
 2014. 1.31 大阪市 救急出動「搬送不要」2割超
 2014. 1.31 「人権意識低かった」 千葉県議会常任委が現地調査 袖ケ浦の施設虐待
 2014. 1.31 GH入居者から1千万円詐取 準詐欺容疑で「ふれあいの家 浜町」元管理者ら3名を逮捕 北九州市


■2014.1.1  障害者と健常者 アートで感覚共有 /鳥取
障がいを知り、共に生きる。障害者と健常者の共生社会を目指し、県が2009年に始めた「あいサポート運動」のスローガンだ。手話を言語と認める全国初の県手話言語条例の施行(昨年10月)、県内各地で今年開かれる「全国障がい者芸術・文化祭とっとり大会」(7月12日〜11月3日)など障害者を巡る一連の取り組みの背景には、このあいサポート運動の理念がある。共に生きる社会をつくるためには、まずどんな第一歩を踏み出せばいいのだろうか。健常者と障害者の垣根を越え、手を携え始めた2組の活動を紹介する。

大きさの違う円形の布の上に、赤や緑、オレンジなど色とりどりの曲線が躍る。

米子市蚊屋の県立米子養護学校の小学部6年、牛谷翔太君(12)と同市の絵本作家、玉井詞(つかさ)さん(62)が、水で薄めたカラフルなアクリル絵の具をしょうゆ差しに詰め、布の上から垂らして作った不思議なアート作品だ。昨年11月、鳥取市で開かれた県障がい者芸術文化祭で展示された。

2人は一昨年秋に出会った。障害者支援施設「もみの木園」(米子市富益町)の臨時職員で、普段は大人の障害者に美術を教えている玉井さんが、子どもの指導を依頼され、同養護学校を訪問。牛谷君はたまたま、その授業を受けていた。

授業終了後、玉井さんに県から「アーティストリンク」の提案があった。アーティストリンクは、障害者とアーティストが互いの感性や創造性を尊重しながら共同で作品を作る試み。今夏始まる全国障がい者芸術・文化祭を前に、県はその普及を進めている。玉井さんのパートナーには、授業で楽しそうに筆を動かしていたのが印象的だった牛谷君が選ばれた。

牛谷君はダウン症による知的障害があるが、教室から見える大山の絵を描いたり、工作をしたりする時には特に集中力を発揮する。玉井さんとの作業は、最初少し緊張気味だったが、ゆっくり絵の具をたらしたり、色を変えたりとすぐに制作に熱中。作品のテーマを「星のパーティー」に決め、布ごとに「ラーメン座」「ハワイ座」などと名付けて、楽しみながら作業した。

玉井さんにとっても、初のアーティストリンクは普段の指導と勝手が違い、少し不安があったが、牛谷君の取り組む表情を見て安心したという。「(牛谷君が)楽しそうにやっているのを見て、自分も楽しくできた。楽しくなきゃアートじゃない。牛谷君とはアートができた」と玉井さん。「楽しかった?」と問いかけると、牛谷君は「べつに」と照れ笑いを浮かべた。

玉井さんの経験によると、知的障害のある人には同じモチーフの作品制作を繰り返す傾向があり、一つのことをする集中力や、作品の色遣いなどに優れたセンスを持っている人が多いという。「感性には障害があるか、ないかは関係ない。健常者と比べるとコミュニケーションの難しさはあるが、感性を共有することは、両者が近づく一歩になると思う」

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◇一 あいサポート運動は

あいサポート運動は、さまざまな障害の特性を正しく理解し、日常生活のちょっとした配慮や手助けを実践することで、誰もが暮らしやすい共生社会を作ることを目指す鳥取発祥の運動。2009年に始まり、現在は島根や広島、長野、奈良などの県にも広まっている。

◇二 参加者は約15万人

障害を理解し、運動に参加する人は「あいサポーター」(障がい者サポーター)と呼ばれる。県内外のあいサポーターは14万9522人(2013年11月末時点)にまで増えている。

◇三 シンボルマークは

あいサポート運動のシンボルマーク=右=の二つのハートは、障害のある人とない人の心が重なる様子をイメージしたデザイン。あいサポーターに認定されると、このデザインのバッジが交付される。

◇四 サポーターになるには

あいサポーターになるには、県主催の研修を受ける必要がある。研修は無料で、約1時間15分。申し込み、問い合わせは、〒689-0201 鳥取市伏野1729の5県立福祉人材研修センター内の県社会福祉協議会地域福祉部

◇五 手話講習も盛ん

県手話言語条例の施行を機に、県内では手話の講習が盛んに開かれている。研修以外でも、こうした場で障害を知るのも第一歩だ。11月中旬に自治体職員を対象にした初心者向けの手話講習が鳥取市内で開かれ、約80人が参加。約3時間の講習で、「おはよう」「こんにちは」などのあいさつや自己紹介など簡単な手話を学んだ。

■2014.1.1  全国障がい者芸術・文化祭とっとり大会:7月12日〜11月3日、県内各地で /鳥取
第14回全国障がい者芸術・文化祭とっとり大会(愛称、あいサポート・アートとっとりフェスタ)は7月12日〜11月3日、鳥取市のとりぎん文化会館を主会場に県内各地で開かれる。同祭は、障害者の芸術活動への参加を通じ、障害者の自立を促進すると共に、障害者に対する健常者の理解と認識を深めることを目的に、各都道府県の持ち回りで開かれている。

 ◇主なイベント

★オープニングセレモニー(7月12日、鳥取市のとりぎん文化会館)

★知的障害者らの和太鼓集団「瑞宝太鼓」の和太鼓パフォーマンス(8月9日、倉吉未来中心)

★県内の特別支援学校による合唱やダンスの合同発表会(9月20日、倉吉体育文化会館)

★鳥の劇場と障害者らによる合同演劇発表(9月中旬、鳥取市鹿野町の鳥の劇場)

★障害者と芸術家が共同で作品を制作する「アーティトストリンク」の作品展(10月16日〜11月3日、とりぎん文化会館)

★国内外の障害者の美術作品を一堂に集めた展示(10月25日〜11月3日、鳥取市の県立博物館)

★クライマックスイベント(11月1〜3日、とりぎん文化会館)

■2014.1.1  高齢者などが安心して利用できる駅施設を目指して!阪神電車の新しい取り組み
駅係員すべてがサービス介助士(2級)の資格を取得
阪神電気鉄道株式会社(以下、阪神電車)が、高齢者などが安心して駅施設を利用できるように、駅に勤務するすべての係員(運輸部に所属する駅業務に従事するすべての職員)にサービス介助士(2級)の資格取得すると発表しました。

すでに、2014年1月には阪神電車に勤務するすべての駅係員がサービス介助士(2級)の資格を取得予定で、資格取得者の名札には「サービス介助士」の文字とマークが印字されます。

サービス介助士とは?
サービス介助士は、高齢者などに安心してもらいながらサポートできる、おもてなしの心と介助技術を学んだ資格取得者で、現在、駅や空港、デパートなど、さまざまな場所で約9万人のサービス介助士が活躍しています。

利用者が気持ちよく過ごせる駅施設
この他にも、阪神電車は、誰もが安心して駅施設を利用できるようにバリアフリー化を実施。施設面の充実はもちろん、利用者が気持ちよく過ごせる駅施設を目指して、駅の清掃を充実させた「clean UP!駅作戦」や「笑顔 元気 あいさつ」などの活動を実施しています。

「全ての駅係員がサービス介助士の資格を取得いたします」阪神電気鉄道株式会社※PDF
http://www.hankyu-hanshin.co.jp/news_release/pdf/

■2014.1.1  アール・ブリュット:「生の芸術」湖国で開花 古久保憲満さん/澤田真一さん/清水千秋さん /滋賀
草津市在住の澤田真一さん(31)の陶芸作品が昨年、世界最大の国際美術展「ベネチア・ビエンナーレ」に出品されて「アール・ブリュット」という言葉が注目を浴びた。「生(き)の芸術」という意味のフランス語で、正規の美術教育を受けていない人たちが手掛ける芸術だ。日本では、特に障害を持つ人たちの作品を指すことが多い。県内の作家は国内外で高く評価され、「滋賀は日本のトップランナー」ともいわれる。どんな人が、どんな作品を生み出しているのか。3人の作家の「アトリエ」である自宅や福祉施設を訪ねた。

◇「街」を創る 古久保憲満さん(18)

夢と現実、架空と実在が入り交じった街をボールペンで精緻に描き、72色の色鉛筆で鮮やかに仕上げる。「素材」は、自分で見聞きしたものや、テレビやインターネットを通じて知った情報。東近江市の古久保(こくぼ)憲満さん(18)の絵画には、自身の「興味」や「関心」が凝縮されている。

2013年に英ロンドンで開かれたアール・ブリュット展覧会に4点を出品。現地の新聞は「古久保の作品を見るだけでも(展覧会に行く)価値がある」と絶賛した。海外出品を持ちかけた東京都のアートディレクター、小林瑞恵さん(34)は「細部にストーリーがあり、緻密な表現から伝わるエネルギーが強い」と評価する。

小学生のころ、絵は古久保さんにとって「手段」だった。物音や同級生の言動が気になって教室を抜け出したくなったとき、気持ちを抑えるため絵を描いた。それが、八日市養護学校高等部で大きな紙に絵を描くことを勧められ「芸術が爆発した」(古久保さん)。夏休みに仕上げた大作「未来の上海ディズニーランド」が障害者の美術作品展で最優秀賞を受賞。ヨーロッパ巡回展につながった。

数年間で自身の環境はめまぐるしく変化したが、古久保さんは「お金や賞が欲しいと思えば、その気持ちが絵に表れる」。あくまで自身が楽しむため、自由に描き続けていくつもりだ。

◇「土」に込める 澤田真一さん(31)

「有名人」となった澤田真一さんは草津市のアパートで家族4人暮らし。家の中は笑いが絶えないという。ある日は、妹江里佳さん(20)のためにカップラーメンを用意したが、注がれていたのはお湯でなく水。江里佳さんは「せっかく作ってくれたけど食べられへん」と笑う。

栗東市の福祉施設に通い、山間の小さな小屋で作陶する。作品は、無数の小さなトゲと縄文土器のような紋様が特徴だ。父正己さん(64)は「最初はギョッとしたが、見ているうちに穏やかな気持ちになった」と話す。

小屋にはなじみの「ファン」たちが集まるが、澤田さんが口を開くことはほとんどない。作品と、たまに見せるほほ笑みが言葉代わりになっている。

◇「色」を織る 清水千秋さん(46)

机の前のポスターを見ながら、清水千秋さん(46)が濃緑の綿布に針を刺していく。机上には42色の綿糸を入れたクリアケース。作っているのは人気女優・壇蜜さんの顔だ。

まっ赤な唇とピンクの舌、紫の瞳。肌は複数の色を使って立体的に見せる。黒い髪が右になびいているのはポスターで彼女が寝転んでいるから。「セクシーなところが好き」

写真や画集を見て下絵を描く。モチーフは芸能人から有名画家の絵まで幅広い。ピカソの代表作「アビニョンの娘たち」を題材にした作品には「すっぽん祭り」と名付け、周囲を笑わせた。

「壇蜜」は昨年8月から手掛けるが、「完成はまだまだ」。深いため息を吐いた後、楽しそうに刺しゅうを再開した。


■人物略歴

◇こくぼ・のりみつ

1995年生まれ。小学1年で高機能自閉症と診断される。2010年に障害者の美術作品展「かんでんコラボ・アート21」で最優秀賞を受賞。12年からはヨーロッパで巡回展が開かれている。



■人物略歴

◇さわだ・しんいち

1982年生まれ。5歳で自閉症と判明。養護学校卒業後、2001年から第二栗東なかよし作業所のアトリエ(栗東市)で陶芸を始めた。ユーモラスで温かみのある作品は国内外で高く評価されている。


■人物略歴

◇しみず・ちあき

1967年、ダウン症と知的障害を持って生まれる。養護学校卒業後に洋裁を学び、87年から知的障害者通所施設「やまなみ工房」に通う。刺しゅうや織物に取り組む「こっとん班」所属。

■2014.1.1  アール・ブリュット:「生の芸術」湖国で開花 糸賀生誕100年、遺言今に /滋賀
なぜ、県内にはアール・ブリュット作家が多いのか。鍵を握るのは今年、生誕100年を迎えた「障害福祉の父」、故・糸賀一雄さん(1968年死去、享年54)だ。糸賀さんや仲間が全国に先駆けて取り組んだ障害者の職業教育や余暇活動は、県内各地に根を張った。そこには今も、糸賀さんの遺言「この子らを世の光に」を胸に障害者の創作を支える人たちがいる。「アール・ブリュット」をキーワードに現場をのぞけば、「未来の巨匠」に出会えるかもしれない。

 ◇アール・ブリュットを巡る主な出来事(敬称略)

1914年 糸賀一雄誕生

1945年 仏人画家のジャン・デュビュッフェが「アール・ブリュット」の概念を提唱

1946年 糸賀、池田太郎、田村一二の3人が近江学園(大津市、現在は湖南市に移転)創設

1954年 「放浪の画家」山下清がブームに

1955年 池田が信楽青年寮(甲賀市)創設。寮生は信楽焼工場に勤務しながら休日は作陶に取り組んだ

1976年 デュビュッフェの収集作品を展示する「アール・ブリュット美術館」がスイス・ローザンヌに誕生

1991年 絵本作家・田島征三と信楽青年寮生・村田清司が絵本「もりへさがしに」(偕成社)を出版。国際的に高い評価を受ける

2006年 アール・ブリュット美術館長が来県し、日本国内の作品を調査

2010年 フランス・パリで「アール・ブリュット・ジャポネ展」開催。県内から18人が出展

2013年 イタリアの「ベネチア・ビエンナーレ」に澤田真一が出品

 ■作品や創作現場が見学できる主な場所

   施設名                    連絡先

 ▽甲賀市(市外局番0748)

(1)やまなみ工房                86・0334

(2)信楽青年寮                 82・0588

 ▽湖南市(同0748)

(3)バンバン                  75・7110

(4)近江学園                  77・2811

 ▽栗東市(同077)

(5)第二栗東なかよし作業所          554・5601

 ▽野洲市(同077)

(6)びわこ学園医療福祉センター野洲      587・1144

 ▽近江八幡市(同0748)

(7)ボーダレス・アートミュージアムNOMA  36・5018

 ▽大津市(同077)

(8)県庁                   528・3993

 ※このほかに県立施設のロビーなどでも作品は展示中。旅先で作品を見る企画などもある。問い合わせは県「美の滋賀」発信推進室

■2014.1.2  北海道・石狩市の手話条例「大きな一歩」 全国市町村で初、「言語法」整備へ弾み
【石狩】手話を「ことば」の一つと位置づけ、手話を使う市民が暮らしやすい環境をつくろうと、石狩市で2013年12月中旬に制定された「手話条例」。全国の市町村では初めてで、手話を理解し、手話でコミュニケーションのできる市民が増える―と期待されている。聴覚障害者らは「手話言語法(仮称)の制定に向けた大きな一歩」と歓迎している。

条例の正式名称は「石狩市手話に関する基本条例」で7条から成る。手話について「市民が使いやすい環境にしていくことは市の責務」とし、市による環境整備や施策推進を義務づけたほか、市民に対し「手話への理解を深め、市の施策に協力するよう努める」と規定した。

「手話を使うことに恥ずかしさを感じてきた。条例ができて本当にうれしい」。今年4月の施行を前に、石狩聴力障害者協会の杉本五郎会長(66)が手話で喜びを語る。

杉本さんは生まれつき難聴で、いまは全く聞こえない。小さいころ、両親とは読唇と発声による「口話法」で会話したが、言っていることが理解できないことが度々あり、分かったふりをした。当時は、学校でも手話が禁じられ、街中で手話を使うと健常者から物珍しそうに見られた。

12歳になって、ほかのろうあ者と交流するうちに自然と手話が身についた。だが、「手話にためらいを感じながら暮らしてきた」と話す杉本さん。今、なぜ、石狩市で手話条例なのか。

 同市には聴覚障害者が約300人おり、このうち約50人が手話で生活をしている。健常者向け手話サークルが二つあり、約70人が活発に手話を学ぶ。

そうした中、国学院大生時代に言語学を学んだ田岡克介市長は、手話を言語ととらえる杉本さんらとの交流を深め「手話が市民に広がれば会話ができ、障害が障害ではなくなる」と考えた。

ただ、役所内では「『平和宣言』のように宣言ではだめか」「すでに市の手話通訳者もいる。十分では」などの反対意見もあった。

「条例ができれば具体的な施策を展開できる。誰が何をするか、市民の役割も明確になる」と田岡市長。12年の石狩聴力障害者協会の新年会で、「手話の地位向上を目指した条例を制定したい」と宣言した。

条例制定を受けて、市は、早ければ14年度にもタブレット端末を用いて遠隔地でも通訳できるサービスを提供したり、小学校などで手話学習を取り入れたりすることを検討している。

同様の「手話条例」は13年10月に鳥取県で全国で初めて成立した。道内では十勝管内新得町が今年3月定例町議会に提案し、4月施行を目指す考えだ。

こうした動きの先には、手話を言語として法律で位置づける「手話言語法」の制定がある。全日本ろうあ連盟(東京)は10年に法律の専門家らと研究会を立ち上げ、すでに6章21条から成る法案を作成、ホームページ上で公開している。

法整備されれば、災害時にテレビ放送で手話通訳や字幕が義務化されたり、乳幼児の聴覚に異常があった場合に手話による子育て支援を受けられたりすることが期待される。

手話言語法の制定をめぐっては、道内では札幌や釧路などの議会が、都道府県でも富山や鳥取の県議会が、制定を求める意見書を可決している。全日本ろうあ連盟の石野富志三郎(ふじさぶろう)理事長は「人口の少ない石狩市で条例が可決され、感激した。法律の制定に向けて大きな弾みになる」と喜んでいる。

■2014.1.3  神戸・阪神地域で高齢者激増 福祉施設確保が急務
厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所(社人研)が昨年3月に公表した2040年の将来推計人口で、兵庫県内では神戸・阪神地域で65歳以上の高齢者が激増することが明確になった。10年の国勢調査と比べ、三田市でほぼ倍増。神戸市西区で9割、西宮市なども6割を超える増加の見込みで、人口減少の影響が少ないと思われがちな都市部も深刻な課題に直面している。

社人研は10年の国勢調査を基に自治体別の40年の将来推計などを算出。県内人口は現在より約90万人少ない約467万人まで減る。

高齢者数の推移を見ると、県全体では約41万人増えて約170万人となり、高齢化率(65歳以上の割合)は36・4%となる。ただ、現在でも高齢化率が3割を超えるような過疎地域を中心に、全41市町のうち15市町では高齢者の数は減少。半面、都市部などで急激に増える=表参照。

大きな要因が、高度成長期に都市部に住居を構えた団塊の世代の子ども世代「団塊ジュニア」(1970年代前半生まれ)の存在。年代構成で突出して多い世代の高齢化が、高齢者数を一気に膨らませる。

また、75歳以上の後期高齢者はさらに高い増加率を示す。40年には県全体で10年比60・1%(約36万人)増の約97万人となり、人口に占める割合は2割強に達する見込み。三田市は2・7倍、神戸市西区や北区、猪名川町も2倍以上となる。

今から約10年後には団塊の世代が後期高齢者となり、福祉施設が不足し始める恐れなどが指摘される。地価が高いため施設整備が容易でなく、支え合うコミュニティーも活発でない‐。都市部特有の問題を乗り越え、激増する高齢者の暮らしや介護などにどう対応するか、行政や地域の知恵が問われている。

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■2014.1.3  障害気にせず癒やしの温泉、「専用旅館」今秋オープン/厚木
障害者も家族も、一緒に安らげる温泉旅館を−。厚木の奥座敷・七沢温泉の旅館の若き3代目が、そんな旅館の開業を夢見ている。重度障害のある弟を持ち、本人の苦労や家族の介護の大変さを知ればこそだ。「障害者と家族の癒やしのためにご奉仕したい」と、意気込んでいる。

温泉旅館「福松」(厚木市七沢)の3代目・古根村拓哉さん(25)。日本料理店の老舗「なだ万」で料理人の修業を積み、現在は父親の正広さん(47)を手伝う。

「障害者専用旅館」の着想の根底には、弟の健人さん(21)の存在がある。健人さんは重度の脳障害があり、普段は寝たきりで介助が必要な生活をしている。大きな風呂や色彩豊かな食事など「非日常」を楽しめるのが旅行や旅館の魅力だが、障害ゆえに設備が整わなければ楽しさを満喫することができない。移動や入浴で介護する家族にも通常以上の負担がかかる上、周囲の視線も気になり、「ゆっくりくつろげる空間であるはずの旅館が、負担を増やしてしまっている」と古根村さん。

また七沢温泉の近くには、全国的に有名なリハビリ施設・神奈川リハビリテーション病院があり、付き添いのため旅館に長期滞在する家族も。家族の気持ちを知るだけに、古根村さんは「家族のための癒やしの湯を」との思いを温めてきた。

専用旅館は福松の向かいの敷地に建設。これまでの介護経験を生かし、バリアフリー対応の平屋の一軒家に。車いす利用者も入れるひのき風呂などを備える。対面式のカウンターで、硬さやアレルギーにも配慮した鉄板懐石料理を拓哉さんが作る。「他人の目を気にせずくつろいでほしい」と、1日1組限定にする予定だ。

オープンは2014年秋の予定で、建設資金は日本政策金融公庫厚木支店が融資。一部は民間の投資ファンド運営会社「ミュージックセキュリティーズ」(東京都千代田区)を通じてファンドを立ち上げ、出資金を募っている。1口5万円で、同公庫の融資は目標額の1500万円達成が条件になっている。

旅館では健人さんも接客する予定で、拓哉さんは「初めて弟と一緒に働けるのも楽しみ」と夢見ている。

問い合わせは、福松電話046(248)0324。

■2014.1.3  精神障害者を民家で預かった歴史紹介 左京に資料館開館
京都市左京区岩倉で江戸時代から戦後直後にかけ、精神障害者を民家で預かった歴史を伝える資料館がオープンした。管理者の城守茂右衛門さん(64)は「岩倉地域で精神医療がどのように発展してきたかを見てほしい」と話している。

「城守保養所資料館」。元は1939年建築の「若狭屋」などの名称で精神障害者を預かっていた保養所で、事務室として使われた部屋を改装し、資料館とした。

資料館では、城守さんの祖父らが集めた資料約千点の一部が展示されている。展示品には、「心の乱れ」に効果があるとされた滝の由来を記した文書や、保養所で撮影された精神障害者が花見や体操をする写真が並んでいる。

また30年当時に岩倉で営業していた保養所の療養費や受け入れ人数、看護体制を記した資料や、明治期に保養所が一度営業が禁止され、後に再開した経緯などをまとめた年表もある。

城守さんは「いわれなき誤解を受けたこともあるが、岩倉の住民は精神障害者と温かく接していた。資料を充実させ、歴史をよく知ってもらえるようにしたい」と話す。

見学は予約制で土曜を中心に開館する。無料。
問い合わせは医療法人三幸会TEL075(721)1551

■2014.1.3  アール・ブリュット 藍と白 変幻自在の「糸絵」に心揺さぶる力 萩野トヨさん(75)=滋賀県湖南市
ちく、ちく、ちく−。

織物作業場の片隅にある黄色い椅子が定位置。軽く腰を掛け、黙って刺繍(ししゅう)針を運ぶ。手元の布地には、まっすぐに、あるいは波打つように、渦を巻くように、木綿糸が軌跡をつくっていく。

針と糸が描くのは花だったり、鳥だったり、無機的な円形や多角形、渦巻きだったり。それが何なのかを探るのはあまり意味がない。ついさっき「チューリップです」と説明してくれた図柄を、5分後、再度尋ねると「湖です」と屈託なく答える。重要なのは、藍(あい)と白の単調な線だけでつくられた、色彩や表情そのものなのだろう。

■ ■ ■

「刺繍」で芸術家の仲間入りを果たしたのは50歳のとき。遅咲きの「作家デビュー」だった。

滋賀県湖南市石部が丘の障害者支援施設「あざみ」では、織物班の一員。入所者たちは主に、束ねた毛糸を織機で織っていく「結び織」で、マットなどを作っている。でも彼女は、ずっとこの作業になじめないでいた。

ある日のこと。自作の小袋に、ちく、ちく、ちく−と刺繍針で、小さな円や四角のステッチを施している姿が、施設長の目に留まった。

「これよ。トヨさんの世界よ!」

形や針目に独特のぬくもりを感じたのだろう。施設長が思わず声を上げた。

結び織がいやで刺繍が好きな理由は、本人にも周囲にも分からない。でもその日、彼女の心の中にあった創作意欲のスイッチが、ONに切り替わったことは確かだ。誰に教わったわけでもないチェーンステッチの技法。糸の鎖を布地に埋めていく日々が始まった。

平成8年6月、同県草津市内のギャラリーで初の個展を開いた際、画廊主が彼女の作品群を「糸絵」と命名。このとき、作業所の製品が芸術作品に昇華した。

「刺繍のほうが熱中、なんです」−なのだそうだ。

■ ■ ■

彼女の手が覚えていた針仕事の記憶は、母親にたどりつく。

昭和13年に東京で生まれ、小学の低学年で終戦を迎えた。戦時中の思い出はないが、自分をどこに預けるのか、引き受け先を探す父母の姿は覚えている。

論理的な思考が苦手で、ふるまいにちぐはぐな点があった。現在の知的障害に当たる「精神薄弱」と診断された。当時、知的障害者に対する理解は恐らく教育現場でも希薄で、自身も両親も並みならぬ苦労を強いられたに違いない。

両親は、娘の将来を案じ施設での療育を望んだ。しかし、東京には適当な施設が見つからなかったようで、さまざまなツテをたどり、当時大津市内にあった「あざみ」にたどり着いた。望んだこととはいえ、18歳の娘を遠い滋賀へ置いて帰るのは、母親には胸が張り裂ける思いだったはずだ。

「トヨさんはお母さんが大好きでした。小さい頃、そばにくっついて針仕事を見ていたんでしょうね」。あざみの宮城てるみ副施設長(55)が言う。

■ ■ ■

「『身震いする』と言われたこともある」

彼女の弟、紘一(68)は東京都武蔵野市の自宅玄関に姉の作品を飾っている。こちらから説明することはないのに、しばしば訪問客に強烈なインパクトを与える。

「人の心を揺さぶる力が、姉の刺繍に秘められている」。こういう芸術の世界があるということを姉から教わったんだと話す表情に誇らしさがのぞく。

その言葉を裏付けるように、彼女の糸絵は2010(平成22)年にパリで開かれた「アール・ブリュット・ジャポネ展」に出展されるなど、国内外でひっきりなしに声がかかる。

自分の作ったものが大勢の人に見られるのは「恥ずかしい」。でも24年8月に来県された秋篠宮さまが、作品を気に入ってくれたことは何よりの自慢だ。

とはいえ、顔や手の皺(しわ)が増すにつれ、集中力も運針の速さも衰えが避けられなくなった。午後1時から4時まで続けていた作業は、今は3時で切り上げる。1日で仕上げていた仕事も、今では1週間かかるようになった。

でも、もちろん焦りなどはない。心の中に引いた刺繍の「設計図」は、以前と同じく、作業が進むのに並行して形を変えている。そのままがいい。

■ ■ ■

娘の将来を案じ続けていた母は、亡くなる10年前ごろから認知症の症状が現れた。晩年には、彼女以上にしゃべることやふるまいがちぐはぐになっていく。それでも、彼女は東京へ帰省するたび、論理的ではくなってしまった母の言葉に、一つ一つうなずいていた。気付けば、周囲にいる同年代の健常者たちも、負けず劣らずちぐはぐで同じ言葉の繰り返しばかりだ。

「老いる」とは、「障害」とは、何なのか。そんな訳知り顔の問いかけなど包み込んでしまうように、彼女は、ちく、ちく、ちく−とただ針を運ぶ。

■「日本的」な仕事や色調、海外で高評価

国内よりもむしろ海外で高く評価されているのが、萩野トヨ作品の大きな特徴だといえる。受けている点は、緻密なステッチから醸し出される仕事ぶりの丹念さ。白い布地の上へ、白い糸で刺繍(ししゅう)を重ねていくという、一見無駄な作業から、心地よい「厚み」が生み出されている。

ニワトリやチューリップなどの具象的なモチーフも、彼女独特のデフォルメが施されていて、造形の面白さが際立っている。

また、たまたま用意されていた素材だったのかもしれないが、藍(あい)色と白色を基調とした作品の色合いも民芸に通ずる趣があり、海外では「日本的」と受け止められるようだ。

【アール・ブリュットの滋賀県内での歴史】

滋賀では、日本有数の窯業地・信楽があることから、戦後間もないころから、県内の多くの福祉施設で職業教育として陶芸の指導が行われてきた。

「障害者福祉の父」として知られる糸賀一雄氏が設立した「近江学園」でも、当時の施設の敷地から優れた陶土が取れたことなどから、作陶を採用。当初は窯の温度が上がらず失敗が続いていたが、これで逆に用途にこだわらない「土による自己表現」という新しい発想が生まれたとされる。

この発想は、県内の各施設でも実践されるようになった。こうした歴史が、現在、日本のアール・ブリュットを滋賀が牽(けん)引(いん)する土台となっている。

■2014.1.4  アールブリュット:価値観への挑戦 眠った才能、調査本腰 半世紀経て「宝発掘」 /滋賀
◇自ら賞状書き続けた画家

2012年4月、アール・ブリュットを担当する県障害福祉課の安藤恵多(けいた)(30)は、ある県内の病院を訪ねていた。「面白い絵を描く患者はいませんか」。そう尋ねると、病院職員が、ネコの絵を見せた。人形劇に出てきそうな、ひょうきんなネコはプロが手掛けたような完成度も併せ持っていた。「やっぱり、まだ眠っていた」。芸術家・澤井実(72)が誕生した瞬間だった。


政府が2008年に設置した「障害者アート推進のための懇談会」は、病院や福祉施設で、優れた芸術作品がバザーのような値段で売られ廃棄されているとして、「発掘調査」が必要と結論付けた。県社会福祉事業団が運営する近江八幡市の「ボーダレス・アートミュージアムNO-MA」も同年、スイスのアール・ブリュット美術館と共同事業で、日本人の作品の発掘調査を開始。「大発見」は、こうした取り組みが動き出した矢先の出来事だった。

安藤から連絡を受けたNO-MAの学芸員は、澤井の病室を訪れ紙袋を見つけた。スナック菓子の包装紙などとともに中に入れられていたのは、絵が描かれたスケッチブックやぼろぼろの画用紙。何度もクレヨンで色を塗り重ね、よれよれになった作品は、ひっそりと眠っていたまさに「宝物」だった。1枚ずつ丹念に眺めては、うなった。

澤井は半世紀近い入院生活で数百点の作品を描きためていた。いくつかの絵の裏には「表彰状」「個人賞」などと自分で手書きした文字も。「誰かに認めてもらうのを待っていたのかもしれない」。ある病院職員がそう言った。


13年5月、久々の外出許可を取った澤井はNO-MAを訪れた。古民家を改造した館内の天井からは、透明のアクリル板に挟まれた自身の作品がいくつもぶら下がっていた。スポットライトに照らされ鮮やかに浮かび上がった「宝物」に思わず言葉を失った。

古希を超え、絵を描く体力がなくなってきた澤井は現在、NO-MAの展覧会の図録を眺めるのが日課だ。既に表紙は毛羽立ち、自身の作品を紹介するページは本から外れてしまっている。

20代の頃、広告会社に勤務していた。当時は、同僚と互いに褒め合い、批評し合った。最近、新しい夢ができた。「もう一度働きたい。そして仲間と一緒に絵を描きたい」

■2014.1.5  障がい者芸術・文化祭、共生社会目指す/ジオパークのエリア拡大、観光客増へ期待 /鳥取
今年は県内で「全国障がい者芸術・文化祭とっとり大会」(7月12日〜11月3日)が開かれるなど、障害者への理解を深め、共生社会を目指すイベントが数多く予定されている。また、山陰海岸ジオパークの鳥取市西部へのエリア拡大が認定見込みで、航空便の充実も含めた観光客増加への追い風も期待される。
同芸術・文化祭は、鳥取市のとりぎん文化会館や県立博物館などを中心に各地で開かれる。美術教育を受けていない人が自発的に生み出した芸術作品を展示する「アール・ブリュット展」や、障害者と鳥の劇場(同市鹿野町)が一緒につくる舞台演劇祭などを実施。同市出身で障害福祉の父と言われる故糸賀一雄の生誕100周年を記念したシンポジウムも予定されている。

3月に三朝町の三徳山エリアが大山隠岐国立公園に編入される。9月には鹿野、青谷などのエリアを拡大した山陰海岸ジオパークが世界ジオパークとして再認定される見込み。また、三朝温泉は開湯850周年。鳥取市の夏の風物詩「鳥取しゃんしゃん祭」は50回目の節目を迎える。県出身の漫画家、青山剛昌さんの「名探偵コナン」は連載開始20周年。

3月30日に鳥取空港の羽田便が5往復となり、4月には米子鬼太郎空港のスカイマーク便が羽田、那覇、新千歳の各空港にも就航予定。空の利便性が大きく広がる。智頭急行は12月に開業20周年を迎える。

スポーツでは、今年から新設されるJ3に降格したサッカー、ガイナーレ鳥取が3月9日に開幕戦を迎え、J2復帰に向けた戦いが始まる。同16日には、鳥取砂丘や中心市街地を巡る新コースで鳥取マラソンが開催。県内では4年ぶりのプロ野球公式戦、広島阪神戦が5月13、14の両日、米子市のどらパー市民球場で開催される。

■2014.1.5  アールブリュット:価値観への挑戦 偏見社会、変えたい 専門性生かして連携 /滋賀
◇付加価値高め、作家に還元

2013年10月下旬、大阪市中央区のビルは、服飾業界の関係者でにぎわっていた。全国のセレクトショップで14年に販売される予定のTシャツやスーツの発表会。壁にはそれらを着たモデルの巨大ポスターと並び、栗東市の知的障害者通所施設「やまなみ工房」に通う岡元俊雄(35)ら3作家の絵が飾られていた。洋服のデザインのベースとなった原画だ。

洋服のタグは「PR-y(プライ)」。アール・ブリュットの魅力を発信しようと、11年に大阪のデザイン会社副社長、笠谷圭見(よしあき)(44)が設立した。活動の輪はインターネットのフェイスブックで広まり、賛同者がそれぞれの専門分野で携わるように。その1人、東京でアパレル専門会社を営むファッションデザイナー、丸山昌彦(45)が絵の持ち味を生かした洋服を仕立てた。

定価はTシャツが8000〜1万4500円、ジャケットは3万8000〜5万8000円で、有名ブランド品と大差ない。12年は2日間で700万円を売り上げ、フランスやブルガリア、韓国など10カ国でも販売された。国内でも歌手の斉藤和義ら著名人が着用。経費を除いた売り上げの全額が施設や作家に渡されている。

洋服には、あえて「障害者アート」をうたっていない。笠谷は「服を気に入った人に、後で『この絵は障害のある人が描いた』と伝える方が、偏見の入る余地がないから」と語る。会場を訪れた大阪府豊中市にある特別支援学校の美術教諭、福吉久代(55)は「おしゃれでびっくり。福祉の世界では『どうせ安いんだから一つぐらい買ってあげよう』と障害者の作品が下に見られがち。ちゃんとした対価が得られるようになっていることに希望を感じた」と話した。

実は笠谷の長男侑生(ゆうき)(9)は自閉症だ。ただ、それが活動の理由だと思われるのが嫌という。「僕は単純にこの絵が好きで、それを描いた人に障害があった。障害者だからと色眼鏡で見る社会を変えたい。新しいことに挑戦したい。それが今、楽しい」

■2014.1.5  障害者働く機会、増やそう 産施設「掛川工房つつじ」施設長 滝口裕二さん(49)
「農業(アグリ)セラピーという考えがあります。土と触れ合い植物を育てることで心が癒やされ気持ちが落ち着く。とてもいい経験です」

知的障害者の授産施設「掛川工房つつじ」(掛川市長谷)の施設長を2013年4月から務める。就任後、通所利用者の働き場所として、雑草取りの仕事を引き受けた理由をこう説明した。

掛川市が12年から市民参加で進める「いのちを守る希望の森づくりプロジェクト」。昨年までに市内7カ所(総面積約2万平方メートル)に広葉樹の苗木約6万2000本が植えられた。森林再生と防災林の育成が目的だが、植樹後4〜5年間は雑草取りなどの手入れが必要になる。

この事業を主導するNPO法人・時ノ寿(ときのす)の森クラブから、植林場所のひとつである中東遠総合医療センター(同市菖蒲ケ池)の管理を頼まれたのが昨年初夏。2万3000本が植樹された約8000平方メートルの敷地で秋から本格的に作業を始めた。

作業料金は県の最低賃金を基準に支払われる。作業時間は毎回約2時間だ。

地面にしゃがみ込んで雑草を引き抜くのは根気がいるが、「丁寧な仕事は施設利用者に向いています」。約40人の通所者が交代で作業に出るが「また行きたい」と希望する人もいるという。

この授産施設での主な仕事は、祭りで家々の門口などに飾られる軒花作り。周辺の自治会などからの注文は年間20万本を超えるという。だが景気が上向きになってきたとはいえ障害者の就労環境は依然厳しい。「少しでも働く機会を増やしたい」と願う。

同医療センターでの植樹林の手入れは、掛川工房つつじを含む近隣の4施設が共同で請け負っている。「参加者をもっと拡大させたいですね」

掛川市は昨年4月、市自治基本条例を施行して「市民との協働のまちづくり」を推進している。障害者が木を育て森林再生事業に参加すれば、「協働の輪」はさらに広がる。

「今は草取りだけですが、やがて種から苗木を育てて販売したい」と夢は膨らむ。

■人物略歴

大学卒業後、肢体不自由児の施設「ねむの木学園」に就職。約20年間勤めた後、社会福祉法人・掛川芙蓉会に移った。掛川市在住。妻と1男の3人暮らし。

■2014.1.5  都会のオフィスで働く障害者をよく見るようになったが…毎日新聞
都会のオフィスで働く障害者をよく見るようになったが、ある大手企業の特例子会社で京都大学大学院卒の理系男子が働いているのを見たときには驚いた。

民間企業は全従業員の2%以上の障害者雇用が義務づけられている。特例子会社は一般就労が難しい障害者を雇うために認められたわが国特有の制度で、労働条件や賃金体系は一般社員と違うが、そこで働く人を親会社の雇用率に合算できるメリットが企業にはある。

知的障害や発達障害はコミュニケーションや認知機能に独特の偏りがあるのが特徴だ。いくら高学歴でも職場内の人間関係でトラブルになったり、障害特性に合った仕事を確保することが難しかったりするため、企業は敬遠する傾向が強かった。

「上から目線で偉そうにものを言っているように聞こえてしまう。それが障害特性だとわかっているのですが、かんに障(さわ)るんです」。京大院卒の彼が働く会社の管理者は苦笑する。ほかにも数人の発達障害者を雇用しているが、今のところ順調だ。

障害者福祉や発達心理の専門家ではないが、人事畑を歩いてきた管理者にはいろんな癖(くせ)のある社員と飯を食い、仲間として育ててきた経験がある。こういうところに日本の障害者雇用が伸びているカギがありそうだ。こんなにたくさんの知的障害や発達障害の人がオフィスで働いている国はほかにない。

「かんに障ると、これまで出会った上司や役員の顔を思い浮かべるんです」。気持ちが落ち着き、笑えてくるというのだ。「もっと偉そうで、自己主張が強い上司はたくさんいます。それに比べると障害のある社員は純粋なんですよ」

■2014.1.5  【日本のアール・ブリュット、世界での評価】
平成20年、滋賀県社会福祉事業団などがスイス・ローザンヌで、日本人アール・ブリュット作家12人の「ジャポン展」を開催。

来場した仏・パリのアル・サン・ピエール美術館の館長も感銘を受け、22年、同美術館で日本人作家63人の作品約1千点を展示する「アール・ブリュット・ジャポネ展」が開催された。3〜9月の間、各国から延べ12万人の来場者が訪れる盛況ぶりで、この後、ヨーロッパ巡回展が決定。イタリア・ベネチアのビエンナーレ国際美術展では沢田真一の作品が出展された。

こうした世界的な評価の高まりから日本でも見直しが進み、23年から全国の美術館で巡回展が始まったほか、多くの財団、社会福祉法人が作品の普及に乗り出し、今年から、国が本格支援に向けた取り組みを予定している。

■2014.1.6  これがブラック企業の“歪んだ論理”…理不尽な現状に手当てはないのか
「バカ!日本語分からないのか?」

「根本的に性格が悪い」

罵声を浴びながら働き、やがて心を病む。鬱(うつ)病となり休職しようとすると、即日解雇を言い渡される。違法な長時間労働などで若者を使いつぶす「ブラック企業」。ブラック企業とは、主にIT業界の劣悪な労働環境を指す言葉として使われていたが、今や外食、介護、保育などさまざまな業界にはびこるようになった。過剰労働で心身を病んだ若者は、不安定なアルバイトや、生活保護費の受給に頼らざるを得なくなるという「負のサイクル」も回りはじめている。そして最悪、過労死や自殺に追い込まれたケースもある。若者を取り巻く雇用環境の改善は急務だ。官民も連携して一刻も早い「ブラック企業包囲網」を敷く必要がある。

■パワハラで鬱病、即解雇…

ブラック企業で働き、苦悩する若者の「悲痛な声」は後を絶たない。特に、介護施設などでは少子高齢化による人手不足から若者を大量に採用し、過重な労働を課す傾向にあるようで、労働組合やNPO法人には深刻な相談が寄せられている。

「バカ!日本語分からないのか? お前、頭おかしいぞ」

東京都内の介護施設で働く20代後半の男性は、所長から毎日のように怒鳴り散らされるパワハラに遭い、鬱病となった。長時間労働や残業代未払いなども当たり前。月に100時間近く残業していたが、これまで1度も残業代が払われたことはない。

「能力が低い」

「根本的に性格が悪い」

利用者や同僚の前で人格否定の言葉を浴びせられるのも日常茶飯事だ。心療内科で処方された薬を飲みながら勤務を続けたが、心身ともに限界に。昨年9月、病気を理由に休職を申し出た。返ってきた言葉はこうだった。

「病気になったのはお前が悪い。会社のせいではない。迷惑だ」

そして、即日解雇を言い渡された。男性は労働相談を手がけるNPO法人に相談。現在は施設に対し、過重労働で体調を崩したことへの労災補償を求めている。

■「福祉は尽くしてナンボ」

関東地方の障害者施設で働く20代の男性も「もう辞めたい…」と劣悪な労働環境に苦悩する。15人ほどいる従業員のうち、年に3、4人が辞めていき、慢性的な人手不足が続く。

時間外労働は月120〜150時間に及ぶが、残業代は出ず、毎月手取り約18万円が支払われるだけだ。残業代について施設長に聞いたことがあった。施設長はこう言い放ち一蹴した。

「何言ってんだ。福祉は利用者に尽くしてナンボの仕事だろう」

1日5本ほど栄養ドリンクを飲み仕事をする。夜勤明けで車を運転していると、睡魔に襲われ対向車線に出てしまったこともある。

「とにかく残業代を支払ってほしい。いつも眠く、体調も悪い」

男性は職場環境を改善しようと労働組合に相談している。

■被害は社会全体に波及

連合のシンクタンク、連合総研が昨年10月に民間企業で働く2千人を対象に実施したアンケートによると、20代の23・5%、30代の20・8%が、自身の勤務先がブラック企業に当たると考えていると回答。多くの職場で違法な働かせ方がはびこり、不信感を抱く若者の実態が浮き彫りとなった。

若者の労働相談を行うNPO法人「POSSE」(東京都)の担当者は「ブラック企業に関する相談は、昨年は500〜1千件だったのが、今年は1500〜2千件ぐらい。それだけ過重労働で悩み、心身を壊している若者が増えたということ。以前は、相談もせずにひたすら自分を責める若者もいた」と話す。

ブラック企業で心身を壊し、働けなくなった若者が生活保護費の受給に至ってしまうという負のサイクルもできあがっている。

担当者は「ひどいパワハラや過重労働で鬱病になっても、企業側が自己都合退職を迫り、労災補償も受けられず、生活保護に頼らざるを得ない若者が出ている」と指摘。「ブラック企業の蔓延(まんえん)は、当事者である若者本人の人生が破綻するだけでなく、労働力の低下や社会保障費の増大にもつながる。被害は社会全体に及ぶ」と警鐘を鳴らしている。

■待ったなしの対策

厚生労働省は昨年から、全国一斉で無料の電話相談を受け付けたり、インターネット上の専門サイトや、セミナーを通してパワハラの予防を呼びかけたりといったブラック企業への対策を加速させている。

各地の労働基準監督署では昨年9月以降、従業員などからの苦情や通報を端緒に、離職率が極端に高く、ブラック企業と疑われる約5千社を対象に集中的に指導監督を実施。来年度には無料の電話相談を民間に委託する形で、夜間や休日にも拡充する方針だ。

さらに、東京、名古屋、大阪にある「わかものハローワーク」では来年度、離職しようか悩む若者の相談に職員が応じる専門窓口を常設する予定。「在職してても相談できる場所を作ることで、若者を使い捨てにするような会社への対応はもちろん、若者がささいなことで安易に会社を辞めるのを防ぐことができる」と厚労省の担当者は期待する。

一方、民間では昨秋、労働問題に詳しい専門家らが連携して「ブラック企業対策プロジェクト」(東京都)を発足させた。ブラック企業に関する情報発信や若者へのサポートを行うのが目的で、ブラック企業の相談を受けてきた労働組合やNPO団体、弁護士らがメンバーに加わっている。

ブラック企業に対する過剰な不安や警戒感を募らせる若者たちが増えているため、就職活動での不安を少しでも解消してもらおうと、「ブラック企業の見分け方」と題した冊子を作製。企業のイメージに惑わされず、離職率など客観的なデータを読み解く必要性や雇用契約の際に気をつける点についてアドバイスしている。

担当者は「ブラック企業かどうかを100%見抜くのは難しい。ただ、漠然とした不安を抱えている若者にとって、(冊子が)少しでも手がかりとなればいいし、在職中に自身の身を守るためにも役立つ労働の知識を提供したい」としている。

■2014.1.6  <第16回ケアマネ試験>合格率は15.5%、前年より3.5%ダウン
厚生労働省は、12月25日、第16回介護支援専門員実務研修受講試験の合格者数などを発表した。

第16回介護支援専門員実務研修受講試験は、2013年10月13日に実施。
受験者の総数は144,397人、合格者は22,322人で、合格率は15.5%。

第15回(2012年度)の19.0%よりダウンし、第14回(2011年度)の15.3%に次ぐ低い合格率となった。
受験者は144,397人で、第15回の146,586人より2,189人減少した。

各都道府県別の合格者数は以下のとおり。

北海道 1,155人 青森県 271人 岩手県 272人 宮城県 433人 秋田県 257人 山形県 253人
福島県 340人 茨城県 419人 栃木県 259人 群馬県 366人 埼玉県 1,041人 千葉県 846人
東京都 1,897人 神奈川県 1,335人 新潟県 462人 富山県 203人 石川県 196人 福井県 169人
山梨県 138人 長野県 425人 岐阜県 379人 静岡県 613人 愛知県 1,100人 三重県 314人
滋賀県 220人  京都府 529人 大阪府 1,635人 兵庫県 967人 奈良県267人 和歌山県 214人
鳥取県 149人 島根県 191人 岡山県 483人 広島県 566人 山口県 308人 徳島県 172人
香川県 182人 愛媛県 331人 高知県 158人 福岡県 919人 佐賀県 179人 長崎県 254人
熊本県 361人 大分県 295人 宮崎県 221人 鹿児島県 345人 沖縄県 233人

職種別合格者数は、多い順に介護福祉士 15,645人、相談援助業務従事者・介護等業務従事者 2,606人、社会福祉士 2,161人、看護師・准看護師 1,620人、理学療法士 673人だった。

■2014.1.6  栗東トレセン:競走馬のゼッケン、バッグに再生して人気
日本中央競馬会(JRA)の栗東トレーニング・センター(滋賀県栗東市)で競走馬が使ったゼッケンを、県内の障害者施設がバッグにして売り出し、人気を集めている。関係者は「世界に一つしかないバッグ。今年は午(うま)年なので、プレゼントにも喜ばれるのでは」と話している。

栗東トレセンは1969年に設立。競走馬を調教するさまざまな施設を備える。馬を識別するため、年齢によって緑、黒、白の布に番号を縫い付けたゼッケンを使っているが、毎年秋に交換するため、1年で約5000枚が廃棄される。これを知った滋賀県内の福祉関係者が再利用を提案し、2009年から同県守山市の聴覚障害者らの通所施設「びわこみみの里」で、トートバッグやセカンドバッグに再生する取り組みが行われている。

ゼッケンは激しい調教に耐えられるよう丈夫な作りで、耐久性の高いバッグができる。縫製を担当する西城明美さん(61)は「生地が硬くて分厚い。重ねて縫うとミシンの針が折れるので、そういう部分は手で縫っています」と手話で語る。「馬のにおいがする」などと喜ばれるという。

現在、11種類(3500〜1万6800円)があり、昨年は約250個を販売した。収益は施設の障害者らの賃金の一部に充てられている。ブランド名は英語で名馬を意味する「steed」。ホームページで購入できる。

■2014.1.7  <改善指導>大阪のサ高住で700万以上の預かり金使い込みが発覚!
大阪市は、12月24日、西成区花園北にある高齢者向け賃貸住宅「ロイヤル花園」において、入居者42名に対して養護者による虐待があったものと判断し、当該入居者に対して権利擁護を図るための措置を講じるとともに、ロイヤル花園に対して平成25年12月24日付けで改善を指導したと発表した。

ことの発端は、平成25年2〜3月にかけて、同施設において、「金銭管理者が複数の入居者の預かり金を使い込んでいる疑いがある」との通報を受け、全入居者について当該事実の確認調査を進めていたことにはじまる。その結果、入居者42名に対して養護者による虐待があったものと判断した。

「ロイヤル花園」は総戸数144戸で24時間介護スタッフが常駐、食事の提供、金銭出納管理などのサービスも提供すると広告しているが、福祉各法上に位置付けがなく、法的には一般の賃貸住宅であって高齢者福祉施設には該当しないため、高齢者虐待防止法及び障害者虐待防止法により改善指導を行ったもの。

■虐待の内容
虐待があったと判断した者 42名(65歳以上37名、65歳未満5名)
【内訳】 ※複数の虐待種別の重複ケースあり

(1)経済的虐待 36件
金銭管理の委任を受けている入居者36名の預貯金を明確な理由がないにもかかわらず不当に引き出した事実をもって金銭搾取があったと判断した。

・ロイヤル花園の金銭管理担当者が、平成25年2月18日から平成25年4月24日の間に上司の指示により入居者36名の口座から7,690,000円を引き出し、当該出金状況が記載された通帳を破棄し、各入居者の金銭出納簿にも記載せず、現金を紙袋に入れて持ち歩いていた。本市の調査において、出金した金銭の使途を尋ねても十分な説明が得られなかったことから、不適切な出金と認定し、本市の指導により入居者各人の口座に同額を返還させた。
・この他にも、不審な金銭の管理状況が多数あり、引き続き確認作業を行っている。

(2)身体的虐待 1件
入居者1名を居室内に閉じ込め行動制限を行っていた。

・内側からドアを開けることができない状況下で入居者1名を居室内に閉じ込めていた。

(3)ネグレクト 12件
パンフレットやホームページで「24時間介護スタッフ常駐」と広告し、要介護度が高い高齢者を受け入れていたにもかかわらず、12名の入居者についてロイヤル花園として十分な世話がなされていなかった。

・各居室には壁にインターホンが設置され「ナースコール」と称しているが、寝たきり状態の入居者は手が届かず助けを求めることができない状態に置かれていた。
・おむつが汚れた状態で放置、爪が伸び放題、室内の不衛生、シーツの不衛生、異臭など。

■被虐待者への対応
虐待を受けていた入居者には、別の施設への入所や公的な金銭管理の利用など権利擁護を図るための措置を講じている。

・分離保護 10件(老人ホームへの措置入所7名、入院中で退院後は施設入所が必要と判断した者3名)
・成年後見市長審判請求 11件
・あんしんさぽーと事業利用 16件
・ケアプランの見直し等を各高齢者のケアマネージャー等と順次協議中 11件

■今後の対応
平成25年12月24日付けで、ロイヤル花園に対し、次の事項について文書により改善指導を行った。

・入居者の心身の状況の変化を常に見極め、マンションでの単身生活の継続が難しくなった場合には関係機関と相談のうえ適切に対応されたい。
・入居者の金銭管理について、適切に行うことはもとより、厳格なチェック体制を構築されたい。
・虐待防止研修や人権研修を繰り返し実施するなど研修実施体制を充実し、従事者の知識と技術の向上を図られたい。


(参考)根拠法令
・高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律 (高齢者虐待防止法)
・障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律 (障害者虐待防止法)


(参考)用語説明
・養護者による虐待
高齢者虐待防止法では、「養護者による虐待」と「養介護施設従事者等による虐待」の二類型が規定されている。前者は家庭内での家族等からの虐待など日常的に何らかの世話をしている者による虐待であり、後者は老人福祉法や介護保険法に位置付けのある施設や事業の従事者による虐待である。後者については老人福祉法や介護保険法の権限を行使して対処することとされている。

・成年後見市長審判請求
市町村長は、高齢者、知的障がい者、精神障がい者について、その福祉を図るため特に必要があると認めるときは、民法の規定により、家庭裁判所に対して成年後見人等を付ける審判の請求ができることになっている。

・あんしんさぽーと事業(日常生活自立支援事業)
大阪市社会福祉協議会が実施する事業であって、認知症や知的障がい、精神障がいなどにより判断能力が十分でない方に対して、福祉サービス等の利用援助や日常的な金銭管理、貴重品の預かりサービスを提供している。

■2014.1.7  <ヒートショック対策>高齢者を守る温度管理を提言――都老研
東京都健康長寿医療センター研究所(東京都老人総合研究所)は、12月11日、これからの寒い季節に向けて、住居内の温度管理によるヒートショック予防と、居室の断熱改修による睡眠やアレルギー症状、血圧の安定化などの可能性について提言を行った。

冬の室温の低い脱衣所や浴室では、血圧が大きく変動し、失神や心筋梗塞、脳梗塞などを起こしやすくなる。これをヒートショックといい、高齢者で多く発生することがわかっている。
入浴中の急死にもつながるヒートショックは、脱衣所や浴室の温度管理や、入浴の仕方の工夫などで防ぐことができる。また、冬の室内を暖かく保つことも血圧の安定などに効果があるという。
提言を参考に、この冬、高齢者の健康管理につとめたい。

【住居内の温度管理によるヒートショック予防】
同研究所によると、2011年の1年間で約17,000人がヒートショックに関連した入浴中急死をしたと推計される。ヒートショックは医学用語ではないため、死亡診断書には「溺死」や「病死」と記入され、ヒートショックが原因と思われる死亡の正確な統計データはない。 しかし、家庭のお風呂で溺死する人は年間3,000〜4,000人いるという厚生労働省の統計と2012年に東日本全消防本部の81%の調査協力を得て実施した調査結果から推計すると、上記の数値になると推計される。そのうちの14,000人ぐらいが高齢者の方だと考えられる。
外気温が低くなる1月は、入浴中に心肺機能停止となる人が最も少ない8月のおよそ11倍で、増加する原因はヒートショックによるものと言える。

■入浴中の急死につながるヒートショック
ヒートショックとは温度の急激な変化で血圧が上下に大きく変動するなどによって起こる健康被害ととらえる事ができる。失神したり、心筋梗塞や不整脈、脳梗塞を起こすことがあり、特に冬場に多く見られ、高齢者に多い。
ヒートショックは体全体が露出する入浴時に多く発生する。暖房をしていない脱衣室や浴室では、室温が10度以下になることも珍しくはない。寒い脱衣室で衣服を脱ぐと、急激に体表面全体の温度が10度程度下がり、寒冷刺激によって血圧が急激に上がる。この血圧の急上昇が、心筋梗塞、脳卒中を起こす原因の一つと言われている。
さらに、一度急上昇した血圧は、浴槽の暖かい湯につかることによる血管の拡張で、反対に急激に低下し、この急激な血圧低下が失神を起こす原因の一つとなる。

■高齢者、生活習慣病の人はヒートショックの危険性が高い
日頃元気でも、血圧変化をきたしやすく体温を維持する生理機能が低下している高齢者はとくに注意。 また、生活習慣病の人も注意が必要。高血圧の人は、血圧の激しい上下変動により低血圧症が起きやすく、意識を失うこととなる。糖尿病や脂質異常症の人も動脈硬化が進行していることがあるため、血圧の変化には気をつける必要がある。

■暖房器具の設置、お湯はりの工夫でヒートショックを防ぐ
寒い季節、脱衣所や浴室を温かくすることで、ヒートショックは予防可能。トイレも体を露出させる場所なので温かく保つことが重要。

・脱衣所や浴室、トイレへの暖房器具設置や断熱改修
冷え込みやすい脱衣所や浴室、トイレを暖房器具で温める。窓周りは内窓を設置するなどの断熱改修で、外気温の影響を最少限に抑える。浴室をユニットバスへ改修することでも断熱性は向上する。

・シャワーを活用してお湯はりする
高い位置に設置したシャワーから浴槽へお温をはることで、浴室全体を温めることができる。

・夕食前/日没前に入浴する
日中は日没後に比べ、外気温が比較的高く、脱衣所や浴室がそれほど冷え込まない、また、人の生理機能が高いうちに入浴することで、温度差への適応がしやすい。

・食事直後/飲酒時の入浴を控える
食後1時間以内や飲酒時は、血圧が下がりやすくなるため、入浴を控える。

・湯温設定は41℃以下にする

・ひとりでの入浴を控える
可能な場合は家族が見守る、公衆浴場や日帰り温泉などを活用することで、ひとりでの入浴を控える。

【居室の断熱改修による睡眠、アレルギー症状、血圧の改善】
同研究所では、断熱改修の前後における居住環境と高齢者の健康について調査を行った。
東京と埼玉で築20年以上の戸建て住宅に住む高齢者18人(59〜85歳)を対象に、日中いることが多い居室を対象に内窓の設置、壁や床への断熱材取り付け、床暖房の設置などの断熱改修を実施。改修の前後で室温や協力者の血圧の測定、健康に関連するヒアリングなどを行い、2011年から約1年間をかけてデータをまとめた。その結果、断熱改修は健康に良い影響を与える可能性があることがわかった。

■居室の断熱改修は、睡眠やアレルギー症状に良い影響を与える
鼻や眼のアレルギー症状に関連する、くしゃみ、鼻づまり、涙目等の7項目について、それぞれ5段階評価でのアンケートを実施したところ、改修後では有意に症状が減ったという結果が出た。また、睡眠習慣について、睡眠の質に関連する、入眠に要する時間、睡眠時間等の7項目について調査したところ、改修後に睡眠の質が改善されたという結果が出た。

■居室の断熱改修は、血圧の低下や安定化に有用である可能性
同調査では、断熱改修後に、血圧の安定化を示唆する変化も見られた。また、同研究所が2010年度に実施した高齢者43人(77〜86歳)に対する血圧と室温の24時間測定によると、部屋全体が暖まっている「適温」での生活が血圧の上昇を抑え、安定化に効果的であることがわかった。

■居室全体を暖房し室温が高いと活動量や筋力も高い
同研究所が2008年度に実施した高齢者に対する冬場の暖房方式、室温、活動量の1週間計測によると、暖房方式と居室の室温、活動量には関係があり、部屋全体が暖まっている「適温」で生活をしている高齢者は、活動量が高いという結果が得られている。
また、2007年度に実施した、高齢者住宅の暖房状況と生活習慣・運動機能等の調査において、暖房状況と筋力やバランス能力にも関係があり、居間全体を暖房している高齢者は、筋力のレベルが高いことが明らかになっている。

◎東京都健康長寿医療センター研究所
http://www.tmghig.jp/

■2014.1.7  患者21人、緑膿菌に院内感染か…11人死亡
大阪府高槻市の私立病院「新生病院」(病床数225床)は6日、ほとんどの抗生物質が効かず、免疫力が落ちた人が感染しやすい多剤耐性緑膿(りょくのう)菌が、昨年1年間に入院患者ら21人から検出され、うち62〜92歳の男女11人が死亡していたと発表した。

院内感染とみられるが、感染と死亡に因果関係はないとしている。

同病院によると、昨年1〜6月の間に患者9人から菌が検出されたことが7月に判明。地元医師会などに相談し、原因を調べていたが、その後も検出が相次ぎ、同12月までに外来患者1人を含む計21人に上った。うち6人から検出された菌の遺伝子を検査したところ、同12月に全員の菌が同じ型で院内感染とわかった。

病棟は五つのうち四つにまたがっていることから、医師や看護師の手や、患者の口の中の洗浄に使う移動式の吸引器具などを介して感染が広がった可能性があるという。

死亡した11人は、いずれも心臓疾患や脳出血などの重篤な患者で、死亡前に体温や白血球数に大きな変化がなかった。こうした理由から、地元医師会による外部調査で感染による死亡ではなく、元々の病気が悪化したと判断されたという。

同病院は感染経路を調査中。今後、吸引器具のチューブを使い捨てにするなど、感染防止に努めるという。

この日、記者会見した同病院の後藤研三院長は「患者には大変申し訳ない」と謝罪した。

■2014.1.7  妻が出掛けると人格豹変 連れ子小3男児に残虐ゲーム強要 介護士の男逮捕 京都
妻の連れ子の男児に残虐な場面が含まれるテレビゲームをやらせたとして、京都府警木津署は7日、強要の疑いで、奈良県山添村切幡、介護士、川畑真麻容疑者(28)を逮捕した。同署によると、「ゲームを強要したことはありません」と容疑を否認している。

逮捕容疑は平成24年11月〜25年4月、京都府木津川市の当時の自宅で、妻(31)の連れ子の小学3年の男児(9)に、人を銃で撃ち殺したり、血が飛び散ったりする場面が含まれた18歳以上対象のテレビゲームを無理にやらせたとしている。

同署によると、川畑容疑者は24年10月に結婚。同11月から男児と3人で同居を始めたが、妻が家を空けると、男児に「あほ、ぼけ」「死ね」などと暴言を吐いたり、ゲームを無理にやらせたりしていたという。妻と男児は、現在は川畑容疑者と別居している。

男児が吐き気などの症状を訴え、ストレスによる自律神経障害と診断されたことから、25年5月に妻が同署に相談。同署は、別の医師からも意見を聴くなどして、男児の症状がゲームの強要によるものだと判断した。

■2014.1.7  高齢者虐待防止の対応状況等について
厚生労働省は、平成25年12月26日、介護保険最新情報Vol.351「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律に基づく対応状況等に関する調査結果を受けての対応について」の事務連絡を発出した。

これは、昨年7月に「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律に基づく調査」として実施されたものの結果を発表するもので、昨今、頻繁に報道されるなど社会問題化している高齢者施設等での介護者・擁護者による虐待の実態を明らかにするもの。

調査結果には、虐待の発生要因や虐待者の属性などが明らかとされており、なかでも認知症に対する無理解による虐待が多いのが目立つ。一方で、市町村などでの虐待防止のための体制整備は停滞しており、成年後見制度の普及促進を含め、問題が山積していることがうかがえる。

事務連絡の内容は、以下の項目から成っており、詳細はCMO無料書式よりダウンロードできる。

1.養介護施設従者等に対する対応
2.養護者に対する対応
3.市町村における高齢者虐待防止対応のための体制整備等
4.市町村に対する都道府県の支援
5.成年後見制度の利用促進
6.都道府県・市町村における調査結果の分析・活用
7.「高齢者虐待防止に関する研修会」への参加

■2014.1.7  県の手話CMで「間違い」 ろうあ団体が指摘
鳥取県が県手話言語条例の制定をPRするテレビCMで「手話の一部が誤っている」と、ろうあ団体などから指摘されていたことが6日、分かった。県は手話指導や収録を制作会社に任せており、放映前のチェックで間違いに気付かなかった。CMは県のホームページで閲覧可能で、県は注釈を加えるか公開を取りやめるか検討している。

CMは米子市出身の女優松本若菜さんが出演し、手話で条例の意義を呼び掛ける内容。昨年12月3〜9日にかけ、山陰の民放3局が36回ずつ、計108回放映された。

間違いを指摘されたのは、松本さんが手話で「聞こえる人」と表現する部分。口と耳の前に差し出した指を体から遠ざけて表現すべきところを、逆に外側から体に近づけて表現している。「はじめまして」も「会う」が「あいさつ」になっていた。関係者によると「支え合う」や「鳥取」を表現する際の手の位置など、ほかにも違和感のある部分があるという。

CM制作費は790万円(啓発用DVD作成費含む)。県はコンペを経て米子市の制作会社に委託し、松本さんへの手話指導は同社が依頼した元手話通訳者が実施した。11月末に県の担当者が動画をチェックしたが、分からなかった。

県障がい福祉課は「収録までの時間がなかったのも一因。県ろうあ団体連合会の関係者に立ち会ってもらえば防ぐことはできた」と反省し、今後は同団体に監修してもらう。

県内のろう者の女性は、松本さんを擁護した上で「県だけが前に進むのではなく、手話を使う私たちに確認してほしい。一緒に進んでこそ意味がある」と指摘している。

■2014.1.8  国立ハンセン病療養所でセクハラ 医長を停職処分
国立ハンセン病療養所の長島愛生園(藤田邦雄園長、岡山県瀬戸内市邑久町虫明)は8日、セクハラ行為や不適切な勤務態度があったとして、診療部門の男性医長を停職7カ月の懲戒処分にしたと発表した。

園によると、医長は約15年前から複数の女性看護師に対し、わいせつな言葉を投げかけたり、胸や尻などを触ったりするセクハラ行為を繰り返してきたという。また数十回にわたり、当直日誌に同僚医師や看護師を中傷する内容を書き込んだほか、園内規定に反して入所者から金銭も受け取っていたという。医長は辞職の意向を示しているという。

■2014.1.8  盲導犬、DNAで適性判断 「デザイナーベビー」も視野
犬のDNA(遺伝情報)のわずかな違いを調べて、盲導犬になりやすい犬を見分ける方法を、帯広畜産大が考案した。子犬のうちに調べれば効率よく盲導犬を育成でき、実際に試したところ、合格率は5割を超えた。父親と母親の遺伝子を調べ、盲導犬にふさわしい組み合わせを調べる犬版「デザイナーベビー」の実用化を2年以内に目指すという。

盲導犬には、集中力や記憶力があり、穏やかで気が散りにくいなどの性格が適していると考えられている。こうした性格を備え、体が大きいレトリバー系の犬が選ばれることが多い。1歳を過ぎたころに適性を調べ、訓練を始める。しかし盲導犬になるのは狭き門で、訓練後の合格率は3〜4割にとどまる。

鈴木宏志教授(家畜生命科学)のチームは、盲導犬になった犬となれなかった犬421匹の遺伝子配列のわずかな違い(SNP)を解析し、盲導犬にふさわしい性格に関連する10個のSNPを特定。SNPごとの特徴、組み合わせによって、盲導犬になれる確率が高い犬を見分けるモデル式を考案した。

昨年度、合否の判定前に28匹の犬に実際にこのモデルを試したところ、予測と一致した割合は5割強だった。今年度はさらに対象とするSNPや犬の数を増やし、予測の精度を7割以上に高めたいという。

このモデルを使えば、父親と母親の遺伝子の解析により、盲導犬になる子どもが生まれる確率の高い組み合わせを予測することも可能になる。チームは2015年度中に盲導犬の「デザイナーベビー」を実用化する計画だ。現在の育種の交配では通常、外見などをもとに選んでおり、遺伝子までは調べていない。

鈴木さんは7年前に特定の五つのSNPを持つ犬の合格率が高いことを発見したが、五つのSNP全てを持つ犬は0・5%程度しかおらず、実用化は難しいことがわかった。今回の方法は精度はやや下がるが、より多くの盲導犬の誕生につながると期待できるという。人の遺伝情報の取り扱いには倫理的な問題が多いが、犬では多くないとみている。

鈴木さんは「盲導犬になれるかどうかは、生まれてからの環境もあるが、遺伝的要因が大きい。効率よく盲導犬を育成できれば、視覚障害者の方の希望にも応えやすくなる」と話す。


《盲導犬》 目の不自由な飼い主の指示に従い、目的地に誘導するために訓練された犬。盲導犬候補の雄は生後半年ごろに去勢し、雌は1年以内に不妊手術をする。潜在的需要も含めると盲導犬を必要とする障害者は約7800人という調査結果もあるが、現在の盲導犬の活動数は約1千匹にとどまる。この10年で100匹ほどしか増えていない。

■2014.1.8  【ケアマネアンケート】介護事業はサービス業だと思う?
12月16日〜22日に実施した「介護事業はサービス業だと思う?」についての投票結果
http://www.caremanagement.jp/

Q 介護事業はサービス業だと思う?

「選ばれる立場だから100%サービス業」と回答したケアマネジャーは29%、「福祉的な要素も必須だが、50%程度はサービス業的要素も必要」と回答した人は39%、「お客様ではなく利用者だから、介護とサービス業は違うものととらえている」は4%、「サービス業的要素は少しは必要だが、やはり福祉としての立ち位置が重要」と考えているケアマネジャーは24%、「その他」4%という結果だった。

もっと、福祉寄りの立場を支持する人が多いと予想したのだが、ふたを開けてみれば、3割のケアマネは「100%サービス業」と考えており、「半分程度はサービス業」と考えている人を合わせると、7割のケアマネが、事業としての介護を「サービス業」ととらえていることがわかる。

「福祉としての立ち位置のほうが重要」より「100%サービス業」と考えている人のほうが多く、「サービス業ではない」と考える人はわずか4%にとどまったというのは、介護保険施行以来13年をかけて、福祉のなかでも大きな意識改革がなされたと考えていいのではないだろうか。

今回は、皆さんから寄せられたコメントが非常にバラエティに富んでいて、編集していた楽しかった。「介護」ではなく「介護事業」についての考え方がこれほどまでに千差万別であることが、すなわち、この業界の奥の深さを体現しているように思えた。

以下、皆さまから寄せられたコメントを抜粋して紹介する。


■選ばれる立場だから100%サービス業
・料金が発生しているため。(神奈川県 女性)
・利用者様から、お金を頂いてる以上サービス業だと考えます。報酬を得ているのですからお客様です。(東京都 男性)
・利用者や家族に選択権があり、希望が反映されるから。(埼玉県 女性)
・利用者が選べる立場にあるから。(東京都 女性)
・有料に勤務しているのでサービス業としか思えません。(栃木県 女性)
・友達の手伝いとは違う。(宮崎県 男性)
・保険制度とはいえ、お金を頂く訳ですから。(熊本県 男性)
・福祉だからと言って、待ちの姿勢では成り立たないと思う。(徳島県 男性)
・福祉そのものがサービス業である。(京都府 男性)
・特別な点など何もありませんね。立派な普通のサービス業です。(神奈川県 男性)
・直接人を相手にする仕事である以上、サービス業だと思います。(兵庫県 女性)
・但し、介護保険法の中に於いてであり、過剰なサービスやノルマなどはあってはならないと思う。(静岡県 女性)
・相手を第一に尊重する姿勢がサービスの根底にある以上は100%サービス業だと思います。(北海道 男性)
・選ばれるための努力が必要ですからね。(大阪府 女性)
・接客業。(京都府 男性)
・人を相手にした職業は全てサービス業的要素が重要だから。医療も早くそうならないといけない。(福岡県 男性)
・質や事業内容を評価されて利用者に選択される業種。利用者の満足度をどのように上げていくか…常に鍛練です。(北海道 女性)
・考えるまでもなく。サービスを提供して喜んでもらっての報酬だと思う。(岡山県 女性)
・居宅は福祉としての要素が大きいと思うが、サービス事業所は使いやすいと言った事が必要。サービス業と思える。(東京都 女性)
・介護保険が始まり、介護事業が民間に移った時点からサービス業になったと思います。(福岡県 女性)
・介護サービス、と言うし。(東京都 女性)
・営利法人が行っている以上、ビジネス以外にありえない。(大阪府 男性)
・より良いサービスをしようと思えば、サービス業です。(千葉県 男性)
・ボランティアなら福祉で良いけど、契約や支払いが発生しているのでサービス業。その意識がない事業者は淘汰されると思います。(神奈川県 男性)
・その方の最後を見るという点もあり、究極のサービス業。(千葉県 男性)
・サービス業と心得ています。(福島県 男性)
・サービス業という認識で介護に当たらないから、虐待が起こる。(茨城県 女性)
・サービス業。接遇態度等で他のサービス業と比して劣る面を、福祉と名乗って言い訳にしている。(北海道 男性)
・こんなにバランスの悪いサービス業は無い。(福岡県 女性)
・お金をもらっている以上はサービス業だと思います。(埼玉県 女性)
・お客様ご利用者あっての自分たちと思います。(沖縄県 男性)
・サービス業のつもりで従事すべき。福祉の気持ちは持ち合わせて当然ながら、サービス業の気概が無ければ、進歩・発展は無い。(埼玉県 男性)
・「付加価値」とされる部分が勝負の決め手になると思います。サービス業と言って間違いないでしょう!(北海道 男性)


■福祉的な要素も必須だが、50%程度はサービス業的要素も必要
・良くなってもらおうなどサービス精神がないと利用者の気持ちに入れない。(山口県 男性)
・両立は大変だが、どちらも必須だと考える。その達成を目指すのが理念であり、措置から契約へ転換したポイントだと思う。(新潟県 男性)
・利用者本位を基本にするとサービス業の役割が多い。(大阪府 男性)
・利用者も事業所も対等な立場が必要だと思います。(大阪府 男性)
・利用者の要望も聞かなくてはならない。(愛媛県 女性)
・利用者の生活の一部に関わることは、福祉というよりは支援事業。サービスは利用者本位であることが前提。(秋田県 男性)
・利用者が選び交代も自由なのでサービス業と思うが、100%とは思わない。(沖縄県 男性)
・有料施設はサービス業的要素が大きいと思います。(愛知県 女性)
・福祉的な要素、それはもちろん大切です。選ばれるサービスを目指すのでやはりサービス向上に力を入れてしまいます。(群馬県 女性)
・福祉的な考えだと、何時まで経っても給与面は上がらない。(広島県 男性)
・福祉の心を忘れないサービス業と思います。(埼玉県 女性)
・福祉という言葉に安住すべきでない。他と同じサービス業としての認識必要。(東京都 男性)
・不満を感じていても環境を変えることには抵抗のある利用者が多いので、福祉の視点と合わせて、おもてなしの視点で。(鹿児島県 女性)
・微妙・・・。(兵庫県 女性)
・半々ぐらいの感覚が丁度いいと思います。(大阪府 男性)
・半々くらいかな。(北海道 男性)
・全てサービスでは混乱してしまう。(茨城県 女性)
・選択権が利用者にあるから。(静岡県 女性)
・接客の要素が必要だからサービス業と思います。(東京都 男性)
・上から目線ではいけないとは思います。(兵庫県 女性)
・実際はサービス業であるとは思うが、望むことすべてをその通りに叶えてあげるわけにもいかない部分もあるので。(静岡県 男性)
・事業所を選んで頂けるように努力を惜しまず対応している。(大阪府 女性)
・資格を持ち仕事しているからサービス業とは考えたくないけれど、家族はサービスの内容で選択しているから、半々でしょうか。(岐阜県 女性)
・今や利用者様が選ぶ時代。でも、100パーセントはないですよね。(群馬県 女性)
・気持ちはサービス業です。制度上は半々の感覚ですね。(広島県 男性)
・完全にお客様にすると、何でもありになる。(東京都 女性)
・介護保険制度がそのようにしてしまったと思っています。(大阪府 女性)
・介護保険施行当初に言っていた、民間活力が近年文字通り活性化している。(鹿児島県 男性)
・介護職が対価をもらって、ケアーを提供する。言いなりサービスではいけないが、自立に向けてサービスを提供するため。(福井県 女性)
・やればいいという仕事ではなくその時に合わせて柔軟に対応しなければならないため。いつも自分を進化させていかなければならない。(宮崎県 女性)
・セクハラ、パワハラ、無茶…これはサービス業、と自制をかけなければ割り切れない要素が年を追うごとに増してきている。(埼玉県 男性)
・サービス業の一つであるとは思いますが、介護保険法の制約が沢山あるので、100%サービス業とは言いづらいのでは?(北海道 男性)
・サービス業としないなら、「デイサービス」・「サービス提供責任者」等の「サービス」との言葉は変更すべき。(東京都 男性)
・サービス業という意識でのおもてなしが必要。(岡山県 女性)
・サービスだからといって、何でも言いなりではダメ。福祉専門職が泣いてしまう。適切なサービスの在り方、それが重要。(新潟県 男性)
・ご利用者様に不快な思いをさせない接遇が必要なので。(岡山県 女性)
・これぐらいのバランスが必要かと。(大阪府 男性)
・いくら動いたところで実績が無ければ報酬は無いのは矛盾していると思うけれど、確かにサービス業要素は多いにある。(兵庫県 女性)


■お客様ではなく利用者だから、介護とサービス業は違うものととらえている
・保険を使ってる意味を考えてみると…。(長野県 男性)
・福祉・介護の仕事は(人対人であり)本質的にサービス業とは異なる。(熊本県 男性)
・税金を使って利用しているわけだからその意識を利用者も事業者ももたないといけないと思う。(東京都 女性)
・私は現在障害者ですが元はヘルパーをしていました、その前は水商売が長くこれこそが100%サービス業で介護職は半々と思います。(大阪府 男性)
・介護保険法の下でなされていることはサービス業とは考えにくい。プラスαで行われるものに関してはサービスでは?(和歌山県 男性)
・家族と施設が一緒に協力して初めて良い介護が出来ると思うので、サービス業ではないと思う。(鳥取県 女性)
・あくまでその人らしくをモットーに適切なアセスメントに基づいて、エンパワーメントすることが求められる。(神奈川県 女性)


■サービス業的要素は少しは必要だが、やはり福祉としての立ち位置が重要
・立ち位置はもちろん大切だが、上から目線の勘違いケアマネが多すぎる。(栃木県 女性)
・利用者の要望だけをきくわけではないから、もっとも必要なケアを提供していくわけだから。(石川県 男性)
・利用者の希望(それって単なるわがまま!って思うことも)を叶えようとしている時、ふとサービス業?と思うことが・・・。(福島県 女性)
・福祉産業とも言われるが、営利のみを目的に関わる企業を見ると腹立たしく思う。(大阪府 女性)
・福祉の精神で、適正なサービス導入を行う。(福岡県 女性)
・選ばれるという立場からはサービス業と言えるが、自社のポリシーは持っておくべきだと思う。(長崎県 女性)
・税金を投入された制度であり、自立支援という目的がある以上、いかに利用者の要望に応えながら、業としての立場を遂行するか。(石川県 女性)
・社会福祉協議会に勤務のためなのか、サービス業とは全然考えたことがありませんでした。新規の仕事はどんどんきます。(岩手県 女性)
・最近異業種の進出でサービス業のように成ってきたと思う。利用者の取り合いの感があります。(秋田県 女性)
・気持ちよく利用していただき不快感を与えないように…と言う気持ちは持っていかなくては?(山口県 女性)
・基本は福祉だと考えます。サービス業という観点だから余計なへりくだりや権利意識、介護技術の低下が見られる部分もあるのでは。(大阪府 男性)
・過疎で地域が広いため、民間事業者が参入しやすい地域ではない。競合できる事業であればサービス業ですが、今のところ福祉事業。(富山県 男性)
・一般のサービス業とは質が違うと思う。(東京都 女性)
・やはり事業をする以上は福祉とだけは言っておれないでしょ。利益を上げない事には。(岐阜県 女性)
・もちろん、サービス要素はありますが・・・。でも?(千葉県 女性)
・ホテル業等と同等に考えると違和感あり。介護全体としては、福祉のあり方という専門性がそこには介在するから。(新潟県 女性)
・はっきりとした区分けは難しいが、福祉の考えは必要。(東京都 男性)
・サービス業的要素が強いと行き過ぎサービスが行われる事が多くなる。(大阪府 女性)
・サービスを勘違いする利用者もおり、自立支援の阻害になるので別の表現があるといい。(岩手県 女性)
・サービスに走ると利用者の取り合いになる可能性があると思う。(長崎県 男性)
・ご本人の事を考えれば、福祉の立場で物を言う必要性が必ず必要。(長崎県 女性)
・シルバー産業の要素が強くなるとあの世までお金しだい・・になりますね。あくまでも国民支援の気持ちでいきたいです。(東京都 女性)


■その他
・要支援の方から重度の要介護の方まで幅広い部分をカバーする事業との観点から、その時々で割合は変化するものと思っています。(神奈川県 男性)
・保険扱いの限りサービスではない、良いサービスを提供するには金が掛かって当たり前なのに支払額は全て決められていますから。(北海道 女性)
・福祉の専門性とサービス業を兼ね備えた「福祉サービス」を制度(国)が目指していると思う。(山形県 男性)
・福祉としての立ち位置は必要だが、サービス業としての認識を持つことも重要と思う。(山口県 女性)
・選ばれる立場だからサービス業というのは サービスを知らない人の考え方と思います。サービスを40年以上実施してきたためです。(千葉県 男性)
・専門的な知識が必要で、常に利用者の立場に立って考える姿勢が必要。ほぼ完全にサービス業だと思うが、利益に走るべきではない。(石川県 女性)
・愚問ですね。福祉の立ち位置とは何か?上から目線と誤解されますよ。(北海道 男性)
学校で究極のサービス業と習いました^^;(京都府 男性)
・介護保険料から報酬が出ているのでサービス業というには違和感があります。個人的には上から4番目が意見が近いのですが…。(千葉県 男性)
・介護保険制度の限られた枠の中での経済活動なので、どちらともいえない。(静岡県 男性)
・100%サービス業でもあり、100%専門秘術職だと思いま。、決めれない、決めてはいけない職業だと思います。(新潟県 女性)
・「サービス業的」「福祉的」の定義がわからない…。(神奈川県 男性)

■2014.1.8  <介護職員の虐待が増加>高齢者虐待調査結果を発表――厚労省
厚生労働省は、12月26日、平成24年度の「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援などに関する法律に基づく対応状況」についての調査結果を発表した。

調査は、高齢者虐待について明らかにするため、全国の1,742市町村(特別区を含む)と47都道府県を対象に行った。それによると、高齢者虐待と認められた件数は、養介護施設従事者(介護施設・介護事業所の職員)などによるものが155件で、前年度より4件(2.6%)増加した。養護者(高齢者の世話をしている家族や親族)によるものは15,202件で、前年度より1,397件(8.4%)減少した。また、市町村等への相談・通報件数は、養介護施設従事者などによるものが736件で、前年度より49件(7.1%)増加したのに対し、養護者によるものは23,843件で、前年度より1,793件(7.0%)減少した。

調査では、養介護施設従事者・養護者別に、高齢者虐待の状況や要因、程度などについてもまとめている。主な内容は以下の通り。



【養介護施設従事者などによる高齢者虐待】


■虐待の内容は、「身体的虐待」が6割近く

相談・通報者862人のうち、「当該施設職員」が258人(29.9%)で最も多く、次いで「家族・親族」が177人(20.5%)だった。相談・通報の受理から事実確認開始までの期間の中央値は5日で、相談・通報の受理から虐待確認までの期間の中央値は10日だった。

虐待の発生要因は、「教育・知識・介護技術などに関する問題」が78件(55.3%)で最も多く、次いで「職員のストレスや感情コントロールの問題」42件(29.8%)、「虐待を行った職員の性格や資質の問題」40件(28.4%)だった。虐待の事実が認められた155件の施設・事業所のうち、39件(25.2%)が過去何らかの指導等を受けていた。指導の多くはサービス提供についての指導だったが、過去にも虐待事例が発生していたケースが3件あった。

虐待の事実が認められた施設・事業所の種別は、「特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)」が46件(29.7%)で最も多く、次いで「認知症対応型共同生活介護(グループホーム)」41件(26.5%)、「介護老人保健施設」14件(9.0%)だった。

被虐待高齢者の総数263人の虐待の種別では、「身体的虐待」が149人(56.7%)で最も多く、次いで「心理的虐待」115人(43.7%)、「介護等放棄」32人(12.2%)だった。虐待を受けた高齢者のうち「身体拘束あり」は48人(18.3%)だった。虐待の程度の深刻度の割合では、5段階評価で最も軽い「1-生命・身体・生活への影響や本人意思の無視など」が167人(63.5%)で、最も重い「5-生命・身体・生活に関する重大な危険」は14人(5.3%)。 被虐待高齢者の死亡事例はなかった。


■「経済的虐待」は居宅系の事業所で発生

被虐待高齢者総数263人のうち、女性が187人(71.1%)を占め、年齢は80歳代が130人(49.5%)だった。要介護度は3以上が205人(78.0%)で、「認知症高齢者の日常生活自立度2以上」の人は195人(74.1%)だった。施設種別ごとの虐待種別は、「認知症対応型共同生活介護(グループホーム)・小規模多機能型居宅介護等」では「身体的虐待」、「心理的虐待」が含まれるケースが他の施設よりも多い。「その他入所系」では「心理的虐待」が含まれるケースは他の施設よりも少ないが、「介護等放棄」、「性的虐待」が含まれるケースの割合が他の施設種別よりも高い。「経済的虐待」については大半が居宅系の事業所で生じている。


■虐待者では、男性と30歳未満の割合が高い

虐待者の総数221人のうち40歳未満が88人(39.9%)、職種は「介護職員」が176人(79.6%)だった。虐待者の性別は、不明を除いて「男性」89人(41.0%)、「女性」128人(59.0%)。虐待者の男女比は、介護従事者全体(介護労働実態調査)に占める男性の割合が21.4%なのと比べ、同調査での虐待者では男性の割合が高い。虐待者の男女別年齢では、介護従事者全体(介護労働実態調査)に占める「30歳未満」の男性の割合が22.9%、女性の割合が10.3%なのに比べ、虐待者に占める「30歳未満」の男性の割合が34.2%、女性の割合が19.0%であり、同調査での虐待者の方が男性、女性とも「30歳未満」の割合が高い。


【養護者による高齢者虐待】


■相談・通報の3割強がケアマネから

相談・通報者26,562人のうち、「介護支援専門員」が8,507人(32.0%)で最も多く、次いで「家族・親族」3,158人(11.9%)、「警察」2,812人(10.6%)だった。相談・通報の受理から事実確認開始までの期間の中央値は0日(即日)で、相談・通報の受理から虐待確認までの期間の中央値は1日(翌日)だった。
相談・通報24,725件(平成23年度中に相談・通報があり、平成24年度に事実確認したものを含む)のうち、市町村の事実確認24,069件(97.3%)は、「訪問調査」16,181件(65.4%)、「関係者からの情報収集」7,700件(31.1%)、「立入調査」188件(0.8%)により実施された。

虐待の発生要因は、「虐待者の障害・疾病」が1,152件(23.0%)で最も多く、次いで「虐待者の介護疲れ・介護ストレス」1,140件(22.7%)、「家庭における経済的困窮(経済的問題)」826件(16.5%)だった。養護者による被虐待高齢者の総数15,627人のうち、虐待の種別では、「身体的虐待」が10,150人(5.0%)で最も多く、次いで「心理的虐待」6,319人(40.4%)、「経済的虐待」3,672人(23.5%)、「介護等放棄」3,663人(23.4%)だった。 虐待の程度の深刻度の割合は、5段階評価で「3-生命・身体・生活に著しい影響」が5,515人(35.3%)と最も多く、次いで「1-生命・身体・生活への影響や本人意思の無視等」が4,822人(30.9%)で、一方、最も重い「5-生命・身体・生活に関する重大な危険」は1,551人(9.9%)を占めた。


■要介護度が重く、認知症があると虐待が深刻に

被虐待高齢者総数15,627人のうち、女性が12,127人(77.6%)、年齢は80歳代が6,608人(42.3%)だった。要介護認定の状況は認定済みが10,624人(68.0%)で、要介護度別に見ると、要介護2が2,280人(21.5%)、要介護1が2,250人(21.2%)の順だった。また、要介護認定者における認知症日常生活自立度2以上の人は7,393人(69.6%)であり、被虐待高齢者総数15,627人に対しては7,393人(47.3%)を占めた。

要介護度と虐待種別との関係では、「身体的虐待」と「心理的虐待」では、要介護度が重い人の割合が低く、「介護等放棄」ではその逆になる傾向がみられた。要介護度と虐待の程度の深刻度の関係では、要介護度が重い場合に深刻度が高い。
認知症の程度と虐待種別の関係をみると、認知症がある場合に「介護等放棄」を受ける割合が高くなる一方で「心理的虐待」は低くなり、自立度3以上でこの傾向は強い。虐待の深刻度との関係では、認知症がある場合に虐待の深刻度が重くなりやすく、自立度3以上でこの傾向は強い。


■「虐待者と高齢者のみ同居」世帯で虐待が発生しやすい傾向

虐待者との同居の有無では、「虐待者とのみ同居」が7,746人(49.6%)で最も多く、「虐待者及び他家族と同居」の5,759人(36.9%)を含めると13,505人(86.5%)が同居している事例だった。家族形態は「未婚の子と同居」が4,889人(31.3%)で最も多く、次いで「夫婦のみ世帯」3,022人(19.3%)、「子夫婦と同居」2,818人(18.0%)の順だった。

被虐待高齢者からみた虐待者の続柄は、「息子」が7,071人(41.6%)で最も多く、次いで「夫」3,114人(18.3%)、「娘」2,732人(16.1%)だった。被虐待高齢者からみた虐待者の続柄と同別居の関係をみると、被虐待高齢者は、虐待者である「夫」の2,257人(75.0%)、「息子」の3,133人(50.3%)、「娘」の928人(40.6%)とのみ同居で、「孫」も130人(24.2%)とのみ同居だった。

虐待者の年齢は「50-59歳」が3,859人(22.7%)、「70歳以上」が3,774人(22.2%)だった。続柄との関係では、「50-59歳」では「息子」が2,407人(62.4%)、「娘」が851人(22.1%)で親子関係が多く、「70歳以上」では「夫」が2,614人(69.3%)、「妻」が580人(15.4%)で夫婦間が多かった。


■ケアプランの見直しも対応策のひとつ

虐待事例への市町村の対応は、「被虐待高齢者の保護として虐待者からの分離」が6,794人(34.9%)の事例で行われた。そのうち、分離を行った事例では「介護保険サービスの利用」が2,600人(38.3%)で最も多く、次いで「医療機関への一時入院」が1,212人(17.8%)だった。分離していない事例では、「養護者に対する助言指導」が5,352件(49.9%)で最も多く、次いで「ケアプランの見直し」3,014件(28.1%)だった。

権利擁護に関しては、成年後見制度の「利用開始済み」が620人、「手続き中」が 387人で、これらを合わせた1,007人のうち市町村長申立は531人(52.7%)だった。市町村で把握している平成24年度の虐待などによる死亡事例は、「養護者による殺人」10件10人、「介護等放棄(ネグレクト)による致死」9件10人、「虐待(ネグレクトを除く)による致死」4件4人、「心中」1件1人、その他2件2人で合わせて26件27人だった。

■2014.1.8  72歳女性殺害容疑、元介護職員逮捕…鳥取県警
鳥取県米子市美吉の棟続き住宅の1軒で2日未明に起きた火災の焼け跡から、住人の角好江さん(72)とみられる遺体が見つかった殺人事件で、鳥取県警は7日、遺体は角さんと断定し、角さんの夫・清美さん(67)が利用していた介護老人福祉施設の元パート職員・泉修一容疑者(62)(米子市上福原、7日付で解雇)を殺人容疑で逮捕した。泉容疑者は同日朝、友人2人に付き添われ、大阪府摂津市の府警摂津署に出頭。容疑を認めており、県警は動機を追及するとともに、放火容疑でも調べる。

発表では、泉容疑者は1日午後5時頃から、火災が発生した2日午前1時30分頃までの間に、角さん方で、角さんの腹を殴るなどの暴行を加えたうえで窒息死させ、殺害した疑い。調べに対し、「角さんの口と鼻を両手で塞ぎ、殺しました」と供述しているという。

1日午後5時頃は角さんの最後の目撃時間。県警は死亡推定時刻については4日、司法解剖の結果、「1日頃」と発表していた。

県警によると、泉容疑者は事件後、摂津署近くに住む友人男性宅を訪れて相談し、7日午前6時55分頃、「正月に米子市で殺人をしました」と同署に出頭。県警は、泉容疑者が殺害後、証拠隠滅のために火をつけたとみて経緯を捜査し、また、焼け跡の室内には約20万円が残されていたが、強盗目的だった可能性もあるとみて詳しく調べる。

泉容疑者は市内の介護老人福祉施設で利用者を送迎する運転手として勤務。角さん夫妻とは顔見知りで、送迎で角さん方を訪れたこともあったが、事件後、無断欠勤が続き、解雇された。

角さんは清美さんと2人暮らし。清美さんは体が不自由で、昨年12月31日から泉容疑者の勤務先の同施設に泊まっており、事件当時は不在。角さん方の木造平屋は火災で全焼し、遺体は台所から見つかった。

一方、角さんについては事件前、「男性につきまとわれている」と米子署に9回の相談があったことがわかっているが、県警は、この男性は事件とは無関係としている。

勤務態度まじめ

泉容疑者が勤務していた介護老人福祉施設は1999年に開設し、職員は約100人。特別養護老人ホームや通所介護などの事業をしており、角さんの夫・清美さんは短期入所生活介護を利用していたという。

施設を運営する社会福祉法人理事長によると、泉容疑者の勤務態度はまじめで、トラブルを抱えた様子はなかったといい、「このような事態になって残念です」と話している。

泉容疑者と面識のある住民らによると、同容疑者は陸上自衛隊を辞めた後、数年前に米子市内に住む両親を世話するため、戻ったという。地元の60歳以上の住民でつくるソフトボールチームに所属し、全国大会に参加したこともあった。住民の1人は「年明けに見かけた際、あいさつをすると、『おめでとうございます』と答えてくれた」と話した。

■2014.1.9  老人施設:身体拘束、「手続き経ず」113人 県調査 /静岡
県介護指導課は、特別養護老人ホームや介護老人保健施設などを対象にした入所者の身体拘束に関するアンケート結果を発表した。回答のあった県内652施設(入所者計2万8718人)のうち、昨年8月時点で実際に拘束を受けていた入所者(被拘束者)は2・8%に当たる790人だった。調査は2002年からほぼ3年に一度行われ5回目だが、被拘束者の数や割合は今までで最低だった。

拘束は県の条例規則で原則禁止され、悪質な場合は高齢者虐待防止法に抵触する恐れもある。ただ(1)入所者の生命、身体の危険がある(2)他に介護手段がない(3)一時的の条件が重なった場合、家族の事前同意を得て例外的に認められている。

これらの適正な手続きを経ず拘束されたのは113人(被拘束者の14・3%)で、前回の10年調査の121人(12・1%)より割合が上がった。主な拘束例は多い順に、ベッドを柵で囲んで出られないようにする▽体をかきむしる行為等を防ぐためミトン型手袋をつけるなどだった。

ただ、入所者の家族915人に聞いたところ、86・9%が身体拘束の原則禁止を「知っている」と回答しながら、複数回答による意見で「十分な説明があり同意できれば拘束は仕方がない」(64%)「施設等に迷惑がかかるならやむを得ない」(35%)など容認する声が多かった。同課は「介護技術の向上により、拘束しなくても安全に介護できるようになった施設も多い。施設にも入所者家族にも、原則禁止の理解を求めていきたい」と話している。

■2014.1.9  障害者に優しい施設 観光関係者らに説明
県はこのほど、富士河口湖町と笛吹市で、ユニバーサルデザインをテーマにしたセミナーを2日間の日程で開いた。ユニバーサルデザインの重要性を感じてもらい、障害者が訪れやすい施設を増やしていこうと企画。

初日は富士河口湖町船津の富士レークホテルで開かれ、富士北麓地域の観光関係者ら約30人が参加した。車いすで生活し、バリアフリーについての講演活動などを行っている木島英登さんが講演し「誰もに何かしらの違いがある。障害者への対応でなく、単なる違いへの対応として考えてほしい」と訴えた。講演後には参加者が車いすに乗ったり、高齢者の感覚体験をしたりした。

■2014.1.9  鳥取・米子の女性殺害:元自衛官逮捕に驚きの声 容疑者、護身術に精通 /鳥取
米子市で全焼した集合住宅の一室から火災前に殺害されたとみられる住人の女性の遺体が見つかった事件で、殺人容疑で逮捕された老人福祉施設の元パート職員、泉修一容疑者(62)=同市上福原=の本格的な取り調べが8日、始まった。泉容疑者を知る人たちからは「礼儀正しく、事件を起こすような人ではない」などと驚きの声が上がった。
泉容疑者の近隣住民によると、自宅には90歳を超えた両親が住んでいるが、泉容疑者は別に部屋を借り、日常的には住んでいなかったという。泉容疑者は陸上自衛隊を退職後、3、4年前に関西から米子市に引っ越し、手術で入退院を繰り返していた両親の様子を見に来ていたという。

2012年12月からはシニアのソフトボールチームに所属。昨年10月には全国大会にも出場し、ポジションは投手だった。チームメートの男性(65)は「変化球の投げ方を教えると熱心に聞いていた。自衛官らしく礼儀正しかった。物静かで、すぐにカッとなるような人ではなかった」と振り返る。

また、別の知人男性(35)によると、泉容疑者は、首を絞められた際やナイフで襲われた際の対処法など、護身術を知人らによく披露していたという。身長は約170センチで、腕や肩回りが太くがっちりとした体形。知人男性は「いかにも自衛隊員という体付きだった。護身術を教えていた人が殺人を犯すなんて信じられない」と驚いた様子だった。

泉容疑者は殺害された角好江さん(72)の夫(67)が通っていた米子市内の老人福祉施設で12年2月からパート職員として勤務し、夫婦とよく顔を合わせていた。施設によると、最後に夫を送迎したのは昨年12月26日。事件後の今月2、4日も出勤していたが、殺人事件として捜査が始まったことが5日に報道されると、6、7日は無断欠勤し、7日付で解雇された。同施設は8日、「元職員が凶悪な事件を起こしたことは誠に遺憾だ。信頼回復にまい進します」とのコメントを出した。

■2014.1.9  高齢者虐待:施設職員は1増3件 親族ら12増262件 12年度県内、前年度比 /茨城
厚生労働省が先月発表した2012年度の高齢者虐待件数について、県長寿福祉課は県内の件数をまとめた。介護施設職員による虐待は前年度比1件増の3件、親族らによる虐待は同12件増の262件だった。

虐待があったのは特別養護老人ホームなど県内3カ所の介護施設。高齢者をたたくなどの行為があり、このうち特別養護老人ホームの職員1人は、80代前半と90代前半の男性2人と80代前半の女性1人の計3人をたたく身体的虐待をしていた。同じ施設の職員の通報で発覚。県は各施設に対し改善を指導した。

親族からの虐待は、息子による虐待が46・2%と半数近くを占めた。以下▽夫16・2%▽娘14・2%▽息子の嫁6・3%と続く。また虐待を受けた高齢者の86・9%が虐待者と同居。発覚は、介護事業所の職員による通報・相談が31・4%で最も多かった。

親族からの虐待行為の内容(複数回答)は▽たたくなど身体的虐待169件▽怒鳴るなど心理的虐待106件▽介護などの放棄・放任68件▽経済的虐待62件。

県長寿福祉課は「単身の息子が問題を一人で抱え込んで、虐待が起きるケースが多い。未然に防ぐため、民生委員らと地域のネットワークをつくる必要がある」と話している。

■2014.1.9  米子・女性殺害容疑者逮捕「なぜ凶行」驚く知人
米子市美吉の角好江さん(72)が殺害され、自宅の焼け跡から見つかった殺人事件で、介護老人福祉施設の元パート職員・泉修一容疑者(62)(米子市上福原)の逮捕から一夜明けた8日、現場周辺の住民らは安堵する一方、「なぜあの人が殺されなければならなかったのか……」と複雑な表情を見せた。泉容疑者を知る人たちも「問題を抱えているようには見えなかった」と驚き、真相究明を祈った。

火災発生から6日たったこの日も、角さん方はブルーシートで覆われたまま。近くの主婦(71)は連日不安を感じてきたといい、「これで夜はぐっすり眠れる」と逮捕を喜んだ。ただ、「角さんは話し好きで、トラブルを抱えているようには見えなかった」とも。別の主婦(63)は高齢の母親を違う施設に預けることがあり、「今回のような事件が起きると、不安を感じる」と漏らした。

一方、泉容疑者が所属していたソフトボールチームの男性監督は「なぜ、こんな事件を起こしたのか分からない」と信じられない様子。月に2回程度参加していた練習では、熱心に取り組む姿が印象に残っているといい、昨年12月上旬に行ったチームの忘年会でも変わった様子はなく、「トラブルなどは思い当たらない」と話した。

この日、県警は泉容疑者を殺人容疑で地検米子支部に送検。大阪府内の警察署から移送された前日夜は疲れ切った表情だったというが、落ち着いた様子で淡々と調べに応じているという。また、泉容疑者が勤めていた介護老人福祉施設を運営する社会福祉法人「博愛会」(安田明文理事長)は「職員が凶悪な事件を起こしたことは誠に遺憾」とのコメントを出した。

■2014.1.10  袖ケ浦の少年死亡:養育園虐待 「更生園」も立ち入り 県、職員から聞き取り /千葉
県立障害者支援施設「袖ケ浦福祉センター養育園」(袖ケ浦市蔵波)の虐待問題で、県は8日、同じ社会福祉法人が運営する関連施設「更生園」への立ち入り検査を始めた。10日まで実施する。虐待問題を受けた県の立ち入り検査は養育園を含め4度目。

更生園は成人の障害者が入所する施設で、原則未成年が入所する養育園と同じ敷地内にある。更生園の入所者は知的、身体障害などを持つ「第1支援グループ」50人と、行動障害を持つ「第2支援グループ」41人。今回の検査は第1支援グループを対象とし、第2支援グループは別の日程で検査する。8日は、県職員約25人が午前10時から担当職員から聞き取りなどを行った。

養育園では、入所していた19歳の少年が職員の暴行後に死亡していたことが昨年12月12日に発覚。疑い例も含め、入所者たちに暴行したとされる養育園や更生園の職員は、これまでの立ち入り検査や過去の県への報告から、計13人(解雇や退職者含む)に上っている。

■2014.1.10  全従業員が障害者 田原の企業「同じ立場で」と社長
従業員九人全員が障害者という企業が田原市にある。段ボール製品加工のINOUE FACTORY(イノウエ ファクトリー)。知的、精神、身体と九人の障害はそれぞれだが、働きがいや責任感にあふれている。

「大洋紙業」(田原市)の関連会社で二〇一二年三月に設立された。自動車部品を収めるパレットを作っている。

大洋紙業専務でもある社長の井上敦詞さん(37)は「障害者は何かと健常者と比較されがち。気の毒だ」と障害者の雇用にこだわる理由を話す。

妻で取締役の幸子(ゆきこ)さん(43)と二人が意識しているのは、自分たちから従業員の輪に入っていくこと。「仕事面では厳しく接することもあるけど、それ以外はフレンドリーに」と井上さん。頻繁に声を掛ける。

この方針は、大洋紙業での苦い経験に基づく。重度の知的障害がある男性の仕事ぶりを何度も厳しく指摘するうち、男性は辞めてしまった。「仕事への意欲をそがないよう、彼と同じ立場に立って接する配慮が足りなかった」と今も悔やむ。

従業員の八木俊介さん(31)には、自分の意思と無関係に別の人格が現れる「解離性同一性障害」がある。堅実な仕事ぶりが評価され、チーフ役に抜てきされた。八木さんは「働き始めるまではマイナス思考に陥ることが多かったが、周囲から必要とされるのを感じて、自信がついた」と話す。ここ二年近く別人格は出ていない。

井上さんは「皆、性格的にも、能力的にも成長している。障害をその人の個性と捉えて、今後も応援したい」と語る。

■2014.1.10  瀬戸内海診療船「済生丸」が就航 4代目、15日から診療開始
瀬戸内海の島々を巡回する日本唯一の診療船「済生丸」の新船(180トン)の就航披露式が10日、岡山市の港で開かれた。老朽化のため昨年11月に引退した3代目に代わり「済生丸100」として、15日から岡山県の笠岡諸島で診療を始める。

済生丸は、全国で病院や社会福祉施設を運営する「済生会」が1962年から運航。岡山、広島、香川、愛媛各県の島々で、年間約1万人が検診や診療に利用している。

新船は約6億6千万円かけて建造した。高齢者のため、エレベーターを設置して床もバリアフリー化した。乳がん検診ができるマンモグラフィーや糖尿病検査機器も搭載している。

■2014.1.10  幸手市、高齢者向け軽度認知障害テスト実施へ パソコン使い判定
幸手市は7日、高齢者が認知機能低下予防活動に積極的に取り組む動機付けを目的とする軽度認知障害スクリーニングテスト「あたまの健康チェック」を1月から実施すると発表した。

介護予防事業で、対象者は65歳以上。パソコンを使ってその場で判定、結果によって保健師などが運動や生活習慣の見直しなどをアドバイスしていく。

テスト時間は一人約10分。10単語を3回読み上げた後、関係ない質問を数回行い、最後に覚えた単語の記憶をテストする。答えられた単語、年齢と学歴などを総合的に判断して「問題ありません」「軽度認知症の疑いあり、注意が必要です」の結果が出る。

対象者は昨年12月末現在、1万4330人(男6739人、女7591人)。同市介護福祉課は、このうち15%をすでに認知症とみている。

費用は1回2500円だが、市で負担するため対象者は無料で受けられる。半年に1回のテストが望ましいという。29日と2月4日は同課主催の「脳の健康教室」受講者対象にテストを実施。2月27日、3月6、12、20日も行い、こちらは2月から予約を開始。同課では「4月以降も続けたい」と話し、認知症予防の普及を目指す。

認知症の前段階である「軽度認知障害」のリスクを97%という高い精度で確認できるテストを導入している自治体は愛知県尾張旭市、県内では小鹿野町。幸手市は全国で3番目という。

■2014.1.10  特養入居待機 1万8000人…千葉県内3年連続
千葉県内の特別養護老人ホーム(特養)の入居待機者が3年連続で1万8000人を超えたことが県の調べで分かった。県は2009年度から4年間で定員を約5000人増やしたが、待機者数は微減にとどまる。全国2番目とされる本県の高齢化の速度に、追い付いていないのが実情だ。

特養は、心身に障害があるため常に介護が必要な高齢者が入居する介護施設。入居者は食事や排せつ、入浴などの世話や健康管理を受ける。現在入居可能なのは、市町村の要介護認定を受け、要介護1〜5と認定された人。

県高齢者福祉課によると、先月1日現在で県内の特養は326施設、総定員数は2万459人。

県は、定員が約1万5000人だった09年度から定員増に取り組み、特養新設や増築に対し、受け入れ増員1人当たり400万円の補助金を出す制度を導入した。だが、昨年7月1日現在の待機者は1万8593人で、前年同期に比べ108人減にとどまった。

県高齢者保健福祉計画(12〜14年度)は、14年度末までに特養の定員を2万4054人に拡大するとしている。県の推計では、15年には要介護4以上の高齢者は5万人を超える見込みで、待機者解消は難しい状況だ。

県内の待機者のうち、要介護4以上で独居や家族の支援が受けられないなど緊急性の高い人は3400人と約2割。だが、比較的軽度でも「生活への不安から入居を希望する人が少なくない」(施設関係者)という。木更津市の男性(74)は「本当は家で介護を受けたいが、家族に迷惑がかかると思い入居を希望している」と明かす。

急増する介護ニーズに施設増だけで対応するには限界もある。厚生労働省は、緊急性の高い中・重度者が入居しやすいよう、新規の入居者を要介護3以上に絞る見直し案を示した。今年の通常国会に介護保険法改正案を提出し、15年度から実施したい考えだ。

軽度者の在宅介護への対応として、在宅支援の充実も求められる。県が高齢者を対象に行った世論調査では、74%が在宅介護を希望すると回答している。この声に応えるには、サービス付き高齢者住宅や、24時間対応の訪問介護・看護の普及などが課題だ。

同省は、要介護1〜2の軽度者向けの訪問介護と通所介護を、市町村の事業に移行する方針だ。県も、日常生活圏内で高齢者が必要とする介護や医療、生活支援サービスの提供が可能になるように市町村を支援していくという。

■2014.1.10  障害者雇用状況:民間企業1万2729人、過去最高 法定雇用率の達成は45% 13年6月 /福岡
福岡労働局は、民間企業や自治体などで働く障害者の状況(2013年6月1日現在)を発表した。民間企業の雇用者数は1万2729・5人(短時間労働者は0・5人で算出)で過去最高となった。実雇用率は全国と同じ1・76%で前年より0・07ポイント上昇したが、一定以上の雇用を義務づけた「法定雇用率」が今年引き上げられ、達成割合は45・6%と、前年より4・3ポイント下がった。

13年4月改正の障害者雇用促進法で、対象企業を従業員50人以上の規模まで拡大。法定雇用率は1・8%から2・0%(県や市町村など公的機関は2・3%、県教委は2・2%など)に変更された。法定雇用率の達成割合が低下した背景を、労働局は「福岡は企業規模も比較的大きく、雇用自体はしているが、より多くの障害者を雇うには至っていない」と分析している。

雇用者数は身体障害者1万27人(同5・4%増)▽知的障害者2108・5人(前年比13・8%増)。精神障害者は594人だったが、前年比50・6%増で、伸び率は最も大きかった。

未達成企業1743社のうち1人も雇用していない企業の割合は58・3%。労働局は「雇用経験がなく足踏みしている企業を訪問し、支援をしたい」としている。

一方、公的機関では県276人(実雇用率3・14%)▽市町村877人(同2・33%)▽教育委員会443人(同1・90%)など。

■2014.1.11  電動車いす利用者登録 愛媛県安協、教習参加促す
お年寄りが買い物などで乗る機会が増えた電動車いすの事故を防ぐため、利用者を登録する制度を、愛媛県交通安全協会が今月1日付で始めた。

教習の受講を勧めるとともに、盗難の早期解決につなげるのが目的。県警によると、高齢化で利用者が増え、交通事故も目立ってきたが、安全マナーが周知されていないなどの課題があった。同様の制度は全国初という。10日は八幡浜市で説明会が開かれ、利用者は「登録をきっかけに安全に乗りたい」と話した。

県安協によると、電動車いす利用者は販売店の調べで県内に3500〜5000人おり、毎年400〜500人ずつ増えているという。ただ、正確な利用状況は分かっていなかった。

県警交通企画課によると、交通事故は2012年に2件、13年は6件発生。横断歩道がない道路を横断して車と衝突したり、交差点で一時停止せずに車に巻き込まれたりした。

登録内容は、利用者の名前や住所、車いすの特徴や機種、車体番号などで、情報は県警が共有する。県安協は、利用者に交通安全教習への参加を促す。

制度化のきっかけは、電動車いすが絡んで07〜09年に毎年、死亡事故が発生したこと。県警は09年、車いすメーカーや販売店、各市町などと連絡協議会をつくり、協議会が購入者の名簿作りなどを検討してきた。

この日、八幡浜市広瀬の市総合福祉文化センターで、八西地区電動車いす交通安全対策協議会の総会が開かれ、老人クラブや八幡浜署などの関係者ら15人が出席。伊藤誠悟・同署交通課長が制度について説明した。

説明会の後、会場で同市松柏の林和彦さん(68)が登録した。2人乗りなどのマナー違反も見受けられるといい、「ルールを知らない人もいるので、定期的に教習を開くことも大事だ」と話した。すでに登録を販売店で済ませたという同市広瀬の主婦佐藤チヨノさん(72)は「ルールは守っているつもりだが分からないこともある。盗難などいざというときにも安心」と話した。(石黒彩子、梶原善久)

盗難時の備えにも

 Q どうして登録が必要なの?

 A 県交通安全協会によると、電動車いすの利用実態を把握し、安全利用につなげることが大きな目的という。

電動車いすは道路交通法の「車両」にはあたらず、歩行者と同じ。そのため運転免許や自転車の防犯登録などのような義務はない。安全教習を開いても、利用者を把握できていないため、参加者が限られていたという。県安協は2012年4月〜12月に計9回、安全教習を開いたが、参加者は実際の利用者の5%程度とみられ、宮脇哲・県安協専務理事は「利用者一人ひとりに、丁寧に安全指導できるようにしたい」と話す。

 Q 登録のメリットは?

 A 台数の増加で、車いすが盗まれる事件も懸念される。県警は、もし盗難があっても、登録情報により被害を正確に把握し、早期発見に生かせるという。

県安協は、右側通行や横断歩道を渡るのが原則となっていることなど、マナー周知にもつながると期待している。宮脇専務理事は「利用者は車を運転していた時の感覚で車道を曲がったり、左側通行したりしがち」と指摘する。

 Q 登録の方法は?

 A 県内の販売店、レンタル店、地区安全協会など計128の指定登録取扱所で申し込みができる。車体番号、住所、名前など12項目を申し込み用紙に記入し、登録証を受け取り、電動車いす本体に貼り付ける。無料で、自転車の防犯登録のように登録料(500円)は必要ない。

■2014.1.11  コンビニ商品のはさみで脅す 大阪・阿倍野で強盗未遂 逮捕の施設入所の男「金が自由に使えなかった」
10日午前8時半ごろ、大阪市阿倍野区松崎町のコンビニ「ハートイン阿倍野店」に男が押し入り、レジカウンターにいた女性従業員(65)に商品のはさみを突きつけ「金を出せ」と脅した。別の男性従業員が110番し、駆けつけた阿倍野署員が男を取り押さえ、強盗未遂容疑で現行犯逮捕した。

同署によると、逮捕されたのは同市生野区内の障害者施設に入所する無職の男(33)で、「施設では金が自由に使えなかったので、金が欲しかった」などと容疑を認めているという。

事件当時、店には数人の客がいたが、外に逃げるなどしてけが人はなかった。

■2014.1.11  「障害者」⇒「障がい者」徳島県、表記スタート
広報誌や施設名を変更

徳島県は今月から、県の公文書や組織名などに用いていた「障害」という表記を平仮名交じりの「障がい」に改める運用を始めた。公文書や広報誌、パンフレット、ホームページなど県が作成したり、発信したりするもののほか、「障がい福祉課」などの部署名、「障がい者交流センター」などの施設名も変更の対象となった。

一方、国の法令や団体の固有名詞として使用されている場合は対象外で、「電波障害」や「障害物」なども従来通りに漢字を用いる。行事や計画などですでに漢字表記されているものについては、今後、表記を改めるタイミングを検討する。

県障がい福祉課は「昨年から準備をしてきたので、職員の間でも大きな混乱はない。『害』の字によるマイナスイメージの払拭につながれば」としている。

■2014.1.11  障害持つ子どもに配慮、国外退去を取り消す判決
不法入国を理由に、東京入国管理局から国外退去を命じられたフィリピン国籍の男性(47)が国に命令の取り消しを求めた訴訟で、東京地裁は10日、男性の請求を認める判決を言い渡した。

永住資格を持つ同国籍の妻(44)との間にダウン症の幼児がおり、谷口豊裁判長は「原告が母国に送還されれば、残された家族の生活は極めて困難になる」と判断した。

判決によると、男性は1997年に入国。解体作業員などとして働き、日本で出会った妻との間に2人の子どもがおり、1人はダウン症で知的障害を抱えている。男性が送還された場合の影響について、国側は「妻が働き生計を立てることも可能で、特に支障はない」と主張。しかし、判決は、「入管の判断には、重要な事実について複数の誤りがあり、妥当性を欠くのは明らか」と指摘した。

■2014.1.11  防災ベッドを障害者支援施設に設置 西条
災害弱者を守ろうと西条産業情報支援センター(愛媛県西条市神拝)などが研究・開発した木製の防災ベッドとテーブルが10日、同市大浜の障害者支援施設「星の里」(菅野仁美施設長)に設置された。

ベッドとテーブルは保育園など地震発生時に逃げ込める机などがない施設で活用してもらおうと、センターが小林正美・京都大名誉教授らと数年前から研究を進めていた。2種類のフレームを組み合わせた地震に強いやぐら状の「入れ子フレーム構造体」を採用、県内の間伐材で作っている。

10日に星の里に搬入されたベッドは落下物から身を守る屋根付きで、高さ約2.2メートル。テーブル(2台)は直径1.2メートルの円形。センターの職員らが組み立て方法を説明し、星の里職員がカメラなどで撮影しながら興味深そうに見つめていた。

菅野施設長は「施設には足の不自由な人もいて、地震発生時に簡単に屋外に逃げられないこともある。訓練でベッドを使うことも習慣づけていきたい」と話した。防災ベッドとテーブルはセンターで販売している。

■2014.1.11  米子市で元介護職員が女性殺害容疑で逮捕
鳥取県米子市で、1月2日(木)未明に住宅が全焼し、焼け跡から殺害されたとみられる女性の遺体が見つかった。

遺体は住人の角好江さん(72)で、鳥取県警は7日(火)、角さんの夫が利用していた介護老人福祉施設の元パート職員・泉修一容疑者(62)を殺人容疑で逮捕した。

泉容疑者は、角さん方で角さんに暴行を加えたうえで、鼻と口を手で塞ぎ窒息死させ、殺害した疑い。7日朝に友人2人に付き添われ、大阪府摂津市の府警摂津署に出頭した。県警の取り調べに対し、殺害を認めており、「殺害後に家に火をつけた」との供述もしているという。

泉容疑者は、角さんの夫が利用していた介護老人福祉施設で、送迎車の運転手として勤務しており、角さん夫婦とは顔見知りであったことがわかっている。

容疑者の勤務態度は真面目で、トラブルを抱えた様子はなかったという。容疑者の知人は「なぜこんな事件を起こしたのかわからない」と驚きを隠せない様子だった。

容疑者の勤務先であった介護老人福祉施設を運営する社会福祉法人理事長は、「職員が凶悪な事件を起こしたことは誠に遺憾」とコメントしている。

■2014.1.11  大淀の高齢者福祉施設で感染性胃腸炎 /奈良
県は10日、大淀町下渕の社会福祉法人総合施設「美吉野園」の特養寮(入所者156人、職員86人)で感染性胃腸炎が集団発生したと発表した。26〜104歳の男女87人に発熱や下痢、嘔吐(おうと)などの症状が出て、うち50代の女性職員が5日間入院。4人からノロウイルスを検出した。いずれも軽症という。

■2014.1.12  認知症:115人が鉄道事故死 遺族に賠償請求も 高齢化社会の課題に 05年度から8年間
認知症またはその疑いのある人が列車にはねられるなどした鉄道事故が、2012年度までの8年間で少なくとも149件あり、115人が死亡していたことが分かった。事故後、複数の鉄道会社がダイヤの乱れなどで生じた損害を遺族に賠償請求していたことも判明した。当事者に責任能力がないとみられる事故で、どう安全対策を図り、誰が損害について負担すべきか、超高齢社会に新たな課題が浮上している。

鉄道事故については各社が国土交通省に届け出て、同省は「運転事故等整理表」を作成している。毎日新聞は情報公開請求で得た整理表と各事故の警察発表などから、「認知症」という言葉が介護保険法改正で取り入れられた05年度以降の事例を調べた。当事者が認知症であることを記載していない届け出も多く、件数はさらに膨らむ可能性がある。

事故の多くは認知症による徘徊(はいかい)や、危険性を認識しないまま、フェンスなどの囲いがない場所や踏切から線路に入って起きたとみられる。線路を数百メートルにわたって歩いた人や、通常は立ち入れない鉄橋やトンネルで事故に遭った人もいた。

08年1月に大阪市で当時73歳の女性が死亡した事故では、駅ホームの端にある職員用の鉄柵扉から入り線路に下りた可能性がある。本人がGPS(全地球測位システム)発信器を身につけていたが、間に合わなかった死亡事故もあった。

認知症の人による鉄道事故を巡っては、名古屋地裁判決が昨年8月、「家族が見守りを怠った」というJR東海の主張を認めて約720万円の賠償を遺族に命じた(遺族側が控訴)。家族会などからは「一瞬の隙(すき)なく見守るのは不可能。判決通り重い責任を負うなら在宅介護はできなくなる」と不安の声が上がっている。

毎日新聞はJR東海の事故を含め、被害者の氏名や所在地が判明した9社10件の事故について、遺族や関係者に話を聞いた。

遺族によると、係争中のJR東海のほか、東武鉄道が2件、近畿日本鉄道と名古屋鉄道が各1件で約16万〜137万円を請求していた。約137万円のケースでは会社側が事故で生じた社員の時間外賃金や振り替え輸送費などを求めていた。この事故を含む2件は双方の協議で減額されたが、4件とも遺族側が賠償金を支払っている。

他の5件は北海道、東日本、西日本、九州のJR4社と南海電鉄の事故で、いずれも請求なしだった。遺族によると、JR東日本は「認知症と確認できたので請求しない」、南海は「約130万円の損害が出たが請求しない」と伝えてきた。JR東日本は「そういった伝え方はしていない。事実関係に基づき検討し、請求を見合わせたのは事実」、南海は「回答は控えたい」とコメントした。JR各社で請求しないケースが目立つ一方、他社では「原則請求」の対応が少なくないとみられる。

12年度の鉄道事故死者数は295人、統計上別区分の自殺は631件だった。

 ◇「保険会社に相談を」

日本損害保険協会によると、遺族は「個人賠償責任保険」などと呼ばれる保険で損害に対応できる可能性がある。自動車保険や火災保険の特約として契約され、保険料は年数千円程度。ただし補償例が「ボールで窓を割った」「飼い犬が人にけがをさせた」などと記載され、鉄道事故を対象と考えない人もいるとみられる。協会は「種類により対象になる場合とならない場合があるので保険会社に相談してほしい」と話している。


 ◇認知症

脳血管や脳細胞の障害で記憶力や判断力が低下し、日常生活に支障が生じる程度に至った状態。以前は「痴呆」と呼ばれたが、侮蔑的で誤解を招きやすいとの理由で2004年12月、厚生労働省が行政用語を変更した。12年の患者数は「予備軍」と呼ばれる軽度認知障害の人(約400万人)を含めて約862万人に上ると推計され、高齢者の4人に1人に上るとみられる。

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 ◇認知症の人の事故と鉄道会社の対応例

 事故年月 鉄道会社 遺族への請求額 運休本数    影響人員

<JR>

07・12  東海   720万円   34本 2万7400人

09・5   九州    請求なし    6本   1200人

10・9  東日本    請求なし    8本   1900人

11・1  西日本    請求なし   30本 1万7000人

11・7  北海道    請求なし   37本 1万 500人

<その他>

05・12  名鉄    80万円   12本   5000人

09・11  南海    請求なし   34本 9万3000人

11・6   東武    16万円    6本   3900人

12・3   東武   137万円   52本 2万1000人

13・1   近鉄    80万円   33本 1万5000人

※いずれも遺族や関係者への取材による。請求額と影響人員は概数。JR東海の事故は、同社が遺族に賠償を求めて提訴し係争中

■2014.1.12  大江健三郎さん講演へ 糸賀一雄氏生誕100年記念、3月に式典
滋賀県で知的障害児施設の近江学園を設立し、日本の障害者福祉の基礎を築いた故糸賀一雄氏の生誕100年を記念し、3月に開かれる式典などの概要が決まった。作家大江健三郎さんの講演があり、詩人の谷川俊太郎さんと歌手の小室等さんが式典のために作詞作曲した楽曲が披露される。

式典は、県や県社会福祉事業団などでつくる実行委員会が昨年から展開している記念事業の集大成。会場は栗東市の栗東芸術文化会館さきらで、3月29、30日に行われる。

29日は県民参加パフォーマンスライブの日で、谷川さんと小室さんが手掛けた「ほほえむちから」を発表する。近江学園のほか県内の高齢者施設などから、歌やダンスのグループが出演する。サックス奏者の坂田明さん、ピアニストの谷川賢作さんも登場する。

30日の記念式典では大江さんが「次の時代への、本質的なモラル」と題して講演する。障害福祉の分野で活躍する人をたたえる糸賀一雄記念賞などの授賞式も行われる。

また、3月4〜30日には県立近代美術館で「糸賀一雄展」を開き、写真や直筆資料などで足跡を紹介する。会場では、54歳で亡くなる前日に大津市内で行われた講演の録音を初公開する予定で、記念事業実行委のホームページでは一部を先行公開している。

29日のライブは1月31日からチケットを発売する。中高生以上500〜1500円。定員650人。問い合わせは県社会福祉事業団TEL0748(46)8100。30日の記念式典は無料で、事前申し込みを受け付けている。定員700人。問い合わせは同実行委TEL077(528)3542へ。

■2014.1.13  糸賀氏生誕100年、母子像とレリーフ修復 近江学園創設者
滋賀県湖南市東寺の知的障害児入所施設「県立近江学園」は、ともに学園のシンボルとなっている母子像「世の光」とレリーフ「友愛」を修復した。日本の障害者福祉の基礎を築き、学園を創設した故糸賀一雄氏(1914〜68年)の生誕100年記念事業の一環。制作当時の姿に戻り、学園は「地域の人たちに見てもらい、交流を深めたい」としている。

両作品とも米原市醒井出身の彫刻家・故森大三さんの手による。森さんの親族の許可を得て2013年7月から11月まで修復作業を続けた。

母子像は高さ2・8メートル。1960年に作られた。かっぽう着姿の母親が幼児を抱き、彼女に寄り添う2人の子どもともども遠くを見つめている。糸賀氏の「子どもと職員が励まし合う学園のシンボル」との思いを込めた。レリーフは63年の制作。縦4メートル、横8メートルの大きさで、大人と子どもが手をつなぎ、「世界中に情愛が流れ、みんなが手をつなぐように」との願いを表した。

母子像は71年、学園が大津市南郷から現在地に移転した後、屋外に設置した。しかし、ひび割れなど傷みが目立ったのを直した。レリーフは南郷時代、講堂の壁面にあったのを2006年の解体とともに取り外して保存。今回、運動場の一角にコンクリートの土台を設けて修復した。

植田重一郎園長は「地域と連携して糸賀氏が社会に訴えた思いに触れてほしい」と話している。

■2014.1.14  大阪・門真の市有地、元市会議長側に無償貸与 相場は年1500万円
大阪府門真市が、園部一成市長と旧知の元市議会議長(72)が実質経営する社会福祉法人に対し、老人ホーム運営のために長期間にわたって市有地を無償貸与することを決め、さらに施設の経営状況の報告などを一切求めていないことが13日、市などへの取材で分かった。市有地の賃料相場は年間約1500万円で、貸与期間は21年間に及ぶ。園部市長は「担当課に任せており、詳細は分からない」としているが、市側からの「利益供与」とも受け取られかねず、対応が問題視されそうだ。

市有地は、周辺に工場などが立ち並ぶ同市四宮の1914平方メートルの空き地。老朽化した市立養護老人ホームの事業を民間に引き継ぐ必要から、負担軽減を図るため無償貸与を決めた。同時に、介護保険が適用される特別養護老人ホームなどの事業も認めている。市は事業者から企画提案を受ける「プロポーザル方式」で応募した3法人を審査し、平成22年7月に元議長の法人を選定。同法人は23年4月から市有地を無償貸与され、翌24年4月に施設をオープンさせている。

法人側は翌年、法人運営を所管する厚生労働省近畿厚生局に24年度分の経営資料を提出したが、無償貸与を受ける市には提出せず、市からも報告を求めなかった。法人側は「求められれば市にも資料提出する」との姿勢をみせているが、市の担当課は「監督官庁は近畿厚生局や府で、市は収支を把握する義務はない」などと消極的。「対応に問題はない」としており、今後も会計資料の提出を求めるつもりはないという。

地元の不動産関係者によると、周辺の土地取引から想定される市有地の賃料は年間約1500万円。産経新聞が入手した土地使用貸借契約書によると、貸付期間は23年4月〜44年3月。「貸し付け満了の日の半年前までに両者から申し出がないときは、さらに10年更新する」と規定しており、市側から異議がなければ無償貸与は自動的に延長され、最大で50年まで期間を延長できる。

法人を実質経営する元議長は「会長」という立場だが登記はなく、登記上の理事長は元議長の娘婿。園部市長とは旧知の間柄で、元議長は産経新聞の取材に「園部市長を一人の市民として支援している。市長が門真市議だった20年以上前からの付き合いだが、契約で不正なことは一切ない」と話している。

園部市長は門真市議や大阪府議を経て平成17年に初当選し、現在3期目。元議長は公明党所属の市議として連続7期計28年在籍し、15年に引退するまで4回議長を務めた。

多くの自治体が報告求める 際立つ門真市の“異質性”

自治体による民間事業者への公有地の無償貸与は全国各地で見受けられる。ただし、自治体の多くは公有地に建つ施設の経営状況も報告させており、報告を一切求めないという門真市の“異質性”が際立つ。

東京都練馬区では区有地に定員80人程度の特別養護老人ホームの整備を計画。民間の社会福祉法人に50年間、区有地を無償貸与し、平成29年度の開設を目指している。区は毎年、事業者に対して施設の経営状況を示す財務関係書類の提出を求めるほか、必要に応じて実地調査を行う方針。

練馬区の担当者は「土地は大切な区民の財産。公共の利益を目的に無償で貸し出すのだから、区が監督官庁かどうかにかかわらず施設の経営状況を把握するのは当然だ」と話す。

兵庫県西宮市では現在、市有地4カ所を特養の施設用地として無償で貸与し、各法人から年度ごとに収支報告を受けている。市の担当者は「無償貸与は補助金の支出と意味合いが同じ。行政が民間を支援する以上、収支をチェックする必要がある」と話す。近年は各法人の収支がプラスで推移していることから、昨年10月以降に新規開業する特養については、有償貸与に切り替えている。

福祉団体の運営に詳しい関西福祉大の谷口泰司准教授は「施設経営が悪化すれば、利用者へのサービス低下につながりかねない。土地を無償貸与する自治体にも責任が生じる可能性があるので、自治体も経営状況を把握する必要がある」と指摘している。

■2014.1.14  福祉施設HP、2013年度の全国老人福祉施設協議会の広報コンテストで優秀賞
社会福祉法人上越頸城福祉会(上越市大潟区犀潟)が運営する福祉施設「しおさいの里等複合施設」のホームページ(HP)が、2013年度の全国老人福祉施設協議会の広報コンテストで優秀賞に輝いた。施設紹介の充実やこまめなブログ更新などで、地域との結びつきを深めていることが評価された。

今回で8回目となる広報コンテストには全国77施設が応募し、8施設が入賞した。しおさいの里は最優秀賞(1施設)に次ぐ優秀賞(2施設)に選ばれた。同協議会によると本県関係の入賞は05年度以来2回目という。

しおさいの里は1999年にオープンした。敷地内に特別養護老人ホームをはじめ、障害者支援施設、デイサービスセンターなどがある。

HPは施設の事業内容を知ってもらい、地域からの理解も深めてもらおうと、2012年7月に開設した。コンテストには今回初めて応募した。

HPではシンプルながら見やすいデザインを心掛けてきた。審査員から「イベントやスポーツの様子など、充実した地域交流についても紹介されており、また施設を訪れたくなるような要素が多い」と評価された。

中でもブログ「うみまち通信」は、施設での食事やイベントの様子、上越の自然の風景などを紹介し、ほぼ毎日更新している。HPには月平均で約千件のアクセスがあるが、最も人気が高いのがこのブログだという。

HPの作成・管理を担う事務長(40)は「受賞は励みになるし、職員のモチベーションも高まる。今後も地域で暮らす人たちが元気になれるページをつくっていきたい」と話した。

■2014.1.14  <知的障害児の死亡>「10年以上前から日常的に暴行」
千葉県袖ケ浦市の県立障害者支援施設「袖ケ浦福祉センター養育園」で入所者の少年(19)が職員の暴行後に死亡した問題で、運営する社会福祉法人「千葉県社会福祉事業団」の元職員の男性が毎日新聞の取材に応じた。元職員は、1967年に開所した養育園や関連施設で少なくとも10年以上前から、一部で入所者への日常的暴行が繰り返されていたと証言した。県もこうした情報を把握しているとみられ、詳しく調査を続ける方針。

元職員は2000年代まで20年以上、養育園など同事業団運営の施設に勤務。この間の状況について「記憶の範囲では10年以上前から殴るなどの虐待は一部であった」「職員が集団で1人の入所者を暴行する場面も目撃した」などとし、暴力を伴う指導が長年続けられていたと証言した。

元職員によると、02年秋ごろに県の立ち入り検査が入り、事業団側に過去数年分の体罰の有無を報告するよう求めた。その際は、関連施設の職員で後に事業団の幹部になった男性が、入所者との旅行中に入所者の1人を殴ったことが報告されたという。

これまでの県の調べによると07年以降、10人以上の職員(解雇や退職者を含む)が、死亡した少年以外にも10人以上の入所者に暴行していた疑いが浮上している。

■2014.1.15  虐待受けた障害者38人 2012年10月から半年間、府初調査
京都府内で家族や福祉施設職員から暴行や暴言などの虐待を受けた障害者が、2012年10月からの半年間に38人いたことが、府が初めて実施した調査で分かった。家庭内での虐待が大半を占めていた。

虐待が疑われる事案を見つけた人に自治体への通報を義務づける障害者虐待防止法が12年10月に施行されたのを受け、府や市町村に寄せられた通報件数をまとめた。

13年3月末までの通報件数は84件で、うち、家庭で32件(被害者32人)と、福祉施設で4件(同6人)を虐待事案として認定した。職場での虐待事案はなかった。

虐待の内訳は、体をたたくなどの身体的虐待が22件で最も多かった。大声でしかるなど心理的虐待が15件、年金を取り上げるなど経済的虐待は10件、食事をさせないなど「放棄・放置」が6件、性的虐待も5件あった。虐待を重複して受けている障害者もいた。

家庭での加害者は、当事者の父親が38・9%で最多。母親、夫、兄弟姉妹がいずれも13・9%で、妻と息子がともに2・8%だった。知人などその他も13・9%あった。

家庭で虐待を受けた32人のうち、8人は施設入所など加害者から遠ざける措置を取った。また、虐待があった施設は「職員に行きすぎた指導が認められたが、軽微だった」として改善計画を提出するよう指導した。

府障害者支援課は「身体的虐待は比較的被害が見えやすいため件数が多いが、それ以外の虐待もまだ埋もれている可能性がある」とみる。家庭での虐待が多いことについては「介助の負担軽減など、虐待の原因を探りながら家族支援のあり方を市町村と検討したい」としている。

■2014.1.15  更生園でも職員4人関与 9年前から暴行か 袖ケ浦の県立施設虐待
知的障害がある児童らが入所する袖ケ浦市蔵波の県立福祉施設「養育園」で昨年11月、入所者男性(19)が職員から暴行を受けてその後死亡した事件で、県は14日、隣接する県立障害者支援施設「更生園」でも職員4人が暴行に関わっていたと発表した。養育園を含めて、暴行は少なくとも9年前から行われていた可能性がある。

更生園は、過去に事故報告書4件を作成しながら、県に提出していなかったことが判明。うち2件は暴行事件だった。また、入所者のけがの報告書について、現場のリーダーが昨年までの5年間で116件中72件を放置し、施設長に提出していなかったことも分かった。県はきょう15日から再び更生園の立ち入り検査を行い、詳しい実態をさらに調査する。

更生園は養育園と同じ社会福祉法人「千葉県社会福祉事業団」が同じ敷地内で運営。県障害福祉課によると、昨年4月、30代の男性職員が入所者男性の首にひっかき傷を負わせ、2009年9月には40代の男性職員が別の入所者にプロレス技を掛けるなどした。同課は事業団に対して、暴行に関与した職員を配置換えするように行政指導した。

このほか、06年には2人の50代男性職員がそれぞれ別の男性入所者に性的な虐待をしていたという。

4件の事故報告書が未提出だったことについては、県の検査に対して、当時の理事長ら幹部が「軽微なため」「事件性がない」「事が大きくなるので県に提出しない方がいい」などと話したとする証言があったという。

県が確認できただけで、養育園と更生園では05年から入所者への暴行があり、両施設で暴行や性的虐待などに関与した職員は計15人になった。

■2014.1.16  ノロ集団感染か、肺炎で1人死亡…介護老人施設
和歌山県は15日、同県田辺市の介護老人保健施設「あきつの」で、入所者ら48人がノロウイルスによる感染性胃腸炎とみられる嘔吐(おうと)などの症状を訴え、このうち、70歳代の女性入所者1人が誤嚥(ごえん)性肺炎で死亡したと発表した。

発表によると、8〜15日、入所者43人と職員5人が嘔吐や下痢の症状を訴え、13日に女性が死亡した。

80歳代の女性2人が入院するなど、現在も8人が症状を訴えているが、全員、快方に向かっているという。

■2014.1.17  介護職員 25%増方針 山形
県は、県内の介護職員数を2017年度までに、現在より25%多い1万9000人に増やす方針を決めた。教育機関や自治体などが連携し、離職率を抑えるとともに、県内の学校の卒業生の就業率を向上させる。職員確保に向けた施策をまとめた「県介護職員サポートプログラム」を今年度末までに策定し、実現を目指すことにしている。

県内の介護職員数は11年現在、1万5200人。離職率は12年度で13・2%に上り、特に3年以内の離職が全体の約6割を占めている。介護需要の拡大が確実視される中、質の高い介護サービスを担う人材の定着と安定的な確保は、喫緊の課題となっている。

プログラムの素案では、新規事業として「介護職員相談窓口の設置」「モデル給与・服務規程の作成」「合同入職式の開催」などを盛り込んだ。職員が職場での悩みを周囲に相談したり、キャリア形成など将来設計を具体化できるようにしたりすることで、17年度までに離職率を10%未満に抑えるのが狙い。

県内の大学や高校、専門学校の卒業生の県内施設への就業率も、08〜12年度平均61・6%を17年度は70%以上を目指す。県内の施設で働くイメージを持ってもらうため、「介護の日」(11月11日)に合わせたイベントの展開や、施設見学会や介護体験などの開催を現在よりも増やす方針だ。

県長寿安心支援室は「関係団体が連携し、介護職員が業務に専念できる環境をつくることで、課題の解消に努めていきたい」としている。

■2014.1.17  「養育園」問題 12年前にも暴行発覚
袖ケ浦市福祉センターの県立障害者施設「養育園」で職員から暴行を受けた少年(19)が死亡した問題で、同センターでは二〇〇二年にも暴行が発覚し、県が改善を勧告していたことが十六日、分かった。今回の問題を受け、これまで〇五年度の暴行まで確認されていたが、暴行が十年以上前から存在し、再発防止に至らなかった状況が明らかになった。

県議会の健康福祉委員会で、丸山慎一氏(共産)が当時の告発文を引用して指摘。県側は告発を受けて〇二年十一月に立ち入り検査し、運営者の県社会福祉事業団に改善を勧告したと説明した。懲戒処分も行われたという。

告発文では、成人の知的障害者らが入所する「更生園」などで、利用者を殴るといった暴行が日常的にあると訴えていた。暴行によるけがを「本人がベッドにぶつかったことにした」という隠匿も告発に含まれていた。現在もセンターで幹部を務める職員の名前も告発文に挙がっているが、県は当時の調査結果の詳細を明らかにしていない。

また、県は十六日、問題の原因や防止策を話し合う第三者検証委員会を設置した。福祉関係者ら六人で構成。本年度内に一定の結論をまとめるという。 



共産党 千葉県議会議員 丸山慎一氏 1月16日
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■県議会健康福祉常任委員会に出席
今日は、県議会の閉会中ですが、千葉県立知的障害者施設の職員による暴行死事件について調査するために、健康福祉常任委員会が開かれました。

この事件は、千葉県立知的障害者施設「袖ケ浦福祉センター」で起こりました。

昨年11月25日に入所者の一人が呼吸困難になり救急車で病院に運ばれましたが、26日未明に死亡。警察の検視の結果が伝えられ、暴行による死亡事件が明らかになりました。

その後、県が調査をした結果、昨年末までに10人の入所者に5人の職員が暴行虐待を行い、そのうち一人が死亡したということが明らかになりました。

今日の常任委員会ではその後の調査の結果、虐待にかかわっていた職員は、「身体的虐待(暴行)」10人、「性的虐待」2人、「心理的虐待」3人の計15人の他、疑義がある職員が4人いると報告されました。

また、過去10年にわたって繰り返し虐待が行われていた事実も明らかになりました。

これにたいして、なぜその時点で発覚しなかったのかが問題だとして、2002年の内部告発文書を提示しました。

そのなかには「入所者を血だらけになるほど殴りつけ大けがをさせているにもかかわらず、これを本人がベッドにぶつかったことで処理した」

「仕事に失敗した入所者に対して、角材をひざの裏に挟んで見せしめのように一日中、正座させていた」

「歯を折る、骨折させる、箒の柄を背中にさして正座させる、みんなで囲んでリンチまがいのことをする、食事を抜く」

などの虐待の実態が克明に記されていました。

これを読み上げ県としてどう対処したのか問いましたが、「是正勧告を行った」と答えるのみで、まったく是正されていない現実については語られませんでした。

さらに常任委員会では、あらためて職員のリストラが背景にあるとして、2004年4月に152名いた正職員が次の年には85人に減り、非正規職員が17名から69名に急増した事実を上げ、設置される第3者委員会では、こうした問題についても検証すべきだと求めました。

また、今日の常任委員会では委員会として袖ケ浦福祉センターに視察に入ることが確認されましたが、そのときに、職員からの聞き取りができるよう要請しました。

常任委員会では第3者機関を設置して年度内に一定の方向性をまとめることも報告されました。

■2014.1.17  高齢者虐待高止まり 12年度158件  山口県
2012年度の高齢者に対する山口県内の虐待件数は158件で、ピークの10年度からほとんど減っていないことがわかった。

今回、虐待の深刻度も初めて調べ、命に関わる重大な危険事案が9・2%あることも判明。県は「市町と連携して高齢者への虐待の未然防止に努めたい」としている。

調査は、高齢者虐待防止・養護者支援法に基づき、厚生労働省が06年度から毎年実施。県内分は、県長寿社会課が県内19市町の集計結果を基に発表している。

それによると、県内で12年度に虐待を受けた人は162人で、うち約8割の129人が女性だった。年齢別では、80歳以上が最も多く56・2%。70歳代は30・2%、65〜69歳は12・9%で、高齢になるほど、虐待を受けていた。

虐待の種類(一部重複)は、たたいたり、蹴ったりする身体的虐待が61・3%、暴言などを浴びせる心理的虐待が42・9%、生活費を与えないなどの経済的虐待が32・5%。虐待した人は、息子(44・5%)、夫(19・8%)、娘(13・2%)の順で多かった。

虐待件数は、10年度の168件をピークに減少しているものの、過去5年の件数は150〜160台で推移。県長寿社会課は、弁護士や社会福祉士を各市町に派遣して虐待防止について職員に助言を行ったり、福祉施設で働く職員を対象にした研修会を開いたりしているが、虐待件数が大きく減少するなどの効果は出ていない。

同課は「虐待件数については市町が判断すること。県としては、今後も高齢者が尊厳を保ち安心して暮らせるよう、啓発活動などを進めることで、虐待の防止や早期発見に努めたい」としている。

■2014.1.17  ドラマ放送中止を…「赤ちゃんポスト」運用病院
親が育てられない子どもを匿名でも受け入れる「こうのとりのゆりかご」(赤ちゃんポスト)を運用する慈恵病院(熊本市)の蓮田太二理事長らは16日、日本テレビ系列で15日に始まった連続ドラマ「明日、ママがいない」について、放送中止を申し入れると発表した。

養護施設に預けられた子どもたちの人権を侵害し、施設に偏見を与える不適切な場面があるとしている。

病院で記者会見した蓮田理事長らは、過去に赤ちゃんポストに預けられた設定の子役が「ポスト」のあだ名で呼ばれたり、施設職員役が里親に気に入られるために子役に泣くことを強要する演出があったりすることなどを問題視している。

日本テレビ総合広報部は「ドラマでは、子どもたちの視点から『愛情とは何か』を描く趣旨のもと、子どもたちを愛する方々の思いも真摯(しんし)に描きたいと思っています。最後までご覧いただきたい」とコメントした。

■2014.1.18  常務理事が過去に暴行 肋骨を骨折させていた
千葉県袖ケ浦市の福祉施設「養育園」で昨年11月、知的障害のある男性入所者が職員の虐待を受けた後に死亡した事件で、園を運営する「千葉県社会福祉事業団」の常務理事(60)が、関連施設の職員だった約20年前、利用者に暴行してけがをさせていたことが18日、県や関係者への取材で分かった。

県などによると、常務理事は事業団が運営する別の関連施設の職員だった1992年ごろ、利用者を押し倒して肋骨を骨折させた。

事業団は県に報告せず、県は2002年の立ち入り検査で初めて事実関係を把握し、03年に改善勧告。事業団はさかのぼって常務理事を戒告の懲戒処分とした。常務理事は「介護支援する中で行き過ぎた行為をしてしまった」と話したという。

常務理事には昨年10月に就任。過去に暴行で処分を受けた職員が就任したことに、県障害福祉課は「県に人事権はないが、適切だったかどうかは事件の検証中でもあり、結論が出せる段階ではない」としている。

■2014.1.18  千葉・施設虐待:トップも過去に暴行 県は把握後も放置
千葉県袖ケ浦市の県立障害者支援施設「袖ケ浦福祉センター」の3施設で利用者への虐待が相次いで発覚した問題で、県が運営を委託している社会福祉法人「千葉県社会福祉事業団」の田村邦夫常務理事兼センター長が、施設職員だった1990年代、利用者に暴行して肋骨(ろっこつ)骨折の重傷を負わせていたことが分かった。県は事実を把握しながら田村氏が事業団の実質トップになることを容認していた。

事業団関係者からは「暴力的指導をした人が幹部になっていく体質が今回の問題の温床になった可能性は否定できない」との指摘が出ており、県の姿勢が問われそうだ。

センターには「養育園」「更生園」「アドバンスながうら」の三つの入所施設があり、養育園に入所する少年(19)が職員から暴行を受けた後に死亡した事件など、疑い例も含め職員19人が多数の虐待に関わったことが相次いで発覚している。

幹部が虐待に関与していたとの指摘があり、毎日新聞は今月14日、田村氏に説明を求めた。取材に応じた田村氏は、センターの授産施設の現場職員だった92年ごろ、利用者ともみあいになった際、自身の肘が当たり利用者の肋骨が折れたと説明した。

事業団は県に報告しなかったが、2002年の立ち入り検査で県がこの事実を確認し、田村氏の行為を「体罰」と認定。事業団が田村氏を戒告処分とした。

当時の状況について田村氏は「興奮しやすい利用者だった。『私が抑えないといけない』という変な責任感があった。一生懸命な職員ほどそうなる」と釈明した。

一方で「反省し、その後は暴力が絶対ないよう徹底的に若い職員を指導してきた」と強調したが、相次ぐ虐待発覚に「結果からみて責任は十分ある」と述べ、3月末の任期切れ前に辞任する意向を示した。

センターは役員8人で構成する理事会が組織をまとめている。田村氏は養育園施設長などを経て、昨年10月に県OBの理事長に次ぐ常務理事となった。

県は66年からセンターの運営業務を事業団に委託、06年度から制度変更に伴い指定管理者とした。田村氏が事業団を取り仕切っていることについて、県障害福祉課は「人事は事業団が決めるもので、県は関与していない」と説明している。

これに対し、障害者福祉に詳しい淑徳短期大社会福祉学科長の亀山幸吉教授は「75年に国連が『障害者の権利宣言』を採択しており、『一生懸命な職員ほど抑制する』との説明は90年代当時でも通用しないのではないか」と指摘する。「模範となるべき県立施設で、そうした人が中心的立場になるのは信じがたい。県や理事会のチェック機能が働いていたのか疑問だ」と話している。

◇センター長「私の体重が乗っかって骨折」

14日に取材に応じた田村常務理事兼センター長との主なやりとりは次の通り。

2002年、県が立ち入り(検査)をし、田村さんが利用者に暴行したという報告があったと聞くが。

ええ。そうなってますけど。後ろから(利用者が)向かってきたんで、こっちも正面向いて。(2人とも)ベッドに倒れて、私の肘か何かが当たって。彼の上に私の体重が乗っかって、(あばら骨が)折れちゃった。

今の役職になるにあたり、周りから何か指摘されたりしなかったか。

(当初は仕事を)「やめた方がいい」とも言われた。当然です。言葉は悪いが、それがあったから一生懸命やってきた、家庭を顧みずに。若い人(職員)にそういうことがないように「暴力はだめだ」と徹底的に指導してきた。

常務理事兼センター長という立場についてはどうするつもりか。

初めて言うが、当然、進退伺を出すつもり。頑張ってきたとはいえ、結果がこれだから。責任は十分にあるわけですから。

http://social-welfare.rgr.jp/databox/ff888888ffig.PNG

■2014.1.18  養育園暴行 第三者検証委が初会合
知的障害児らが入所する県立福祉センター「養育園」(袖ケ浦市蔵波)での暴行問題を巡り、有識者や弁護士、障害者団体の代表らで構成する「県社会福祉事業団問題等第三者検証委員会」の初会合が17日夜、県庁で開かれた。センター内の施設で起きた暴行や性的虐待などの実態を解明するとともに、センターを運営する社会福祉法人「県社会福祉事業団」の運営上の問題点を洗い出す。

会合の冒頭、川島貞夫・県健康福祉部長が「本人や家族に苦痛を与え、県民の信頼を損なう事態を招いた。責任の所在や業務管理の実態などについて検証してほしい」とあいさつした。

委員6人の互選で、座長には、弁護士で県障害者虐待防止連携協議会副会長の佐藤彰一氏が選ばれた。

議論は非公開で行われた。県によると、この日は、〈1〉職員の資質、人材育成〈2〉事業団の管理体制〈3〉施設の透明性〈4〉施設と事業団の連絡体制――の観点から検証を行っていくことを確認。センターが2006年度に、県の委託から指定管理者制度に移行したことが、暴行の発生に影響したかなどについても検証していくことで合意した。

会合終了後に記者会見した佐藤氏は「典型的なひどい虐待のケースだ。こういうものが県立施設でなぜ起きたのか検証することが、今後こういった事態をなくすためにも大きな意味を持つ」と強調した。

委員からは「保護者、本人に会って状況を聞く必要がある」「学校や地域関係者への調査も必要だ」などと、幅広く調査を行うべきだとする意見が出たという。

検証委では今後、事業団や施設の職員から事情を聞き、現地視察も行う方針。2、3週間に1度の割合で会合を開き、年度内に一定の方向性をとりまとめ、報告書を県に提出することを目指す。

■2014.1.19  十人雑魚寝・口には…「無法状態」お泊まりデイ
宿泊サービス付きの通所介護事業所「お泊まりデイ」に関して読売新聞が行った自治体へのアンケート調査では、一部の施設が、利用者を狭いスペースで雑魚寝させたり、大声を出さないよう口に粘着テープを貼る虐待をしたりしていたことも判明した。

こうした悪質な運営が他にも広がっている可能性があり、自治体の間では、運営基準を作るなどチェックを強める動きが拡大している。業界団体も独自の基準作りを始めた。

◆劣悪な環境

「まるで無法状態だと驚いた」と、鳥取市の担当者が振り返る。昨年2月、設備変更に伴う調査で訪れた2か所の施設がいずれも、聞き取りに対し、仕切りを設けずに布団を敷き、男女約10人を雑魚寝させていたことを認めたからだ。改善を求めると、「臨時的な宿泊だから問題ない」などと反論されたという。

水戸市の施設でも2012年夏、市が実態調査を行い、仕切りのない8畳間で高齢者を6人も宿泊させているのを確認。前橋市では昨年8月、市職員が実地指導に訪れた際、食堂に折りたたみベッドを3台置いて利用者を寝かせているのを見つけ、「不適切だ」として改善を指導した。同様の例は相模原市でもあった。

昨年、利用者に暴行したとして介護士らが逮捕・起訴された広島県福山市の施設では、70平方メートルのスペースに17人が寝泊まりしていたことが判明している。

水戸市の担当者は「防火設備がない施設もあった。このままでは、高齢者の安全や尊厳を守ることはできない」と不安を漏らす。

■2014.1.20  <苦情・相談>有料老人ホーム110番の結果を発表―― 全国有料老人ホーム協会
公益社団法人全国有料老人ホーム協会は、1月10日、2013年度第1回「有料老人ホームなんでも相談 有料老人ホーム110番」の実施結果を発表した。

同協会では、1997年度より「有料老人ホーム110番」を実施している。2013年度第1回の「110番」は、昨年10月23日〜25日の3日間にわたって行われ、電話とFAX、文書、面談で寄せられた相談件数は140件。内訳は入居者や家族からの苦情・相談が70件、ホームに関する問い合わせが70件だった。
苦情・相談で多かったのは、職員の質や対応方法、ホームの運営懇談会についてが23件、介護サービスについてが12件、施設・設備がついてが9件だった。また、入居者の家族間のトラブルについての相談も12件にのぼった。苦情・相談の事例には、応対者がアドバイスをしているが、非加盟のホームの事例などは一般的な回答となっている。

以下、主な相談・苦情や問い合わせの例を紹介する。



【苦情・相談】


■食事の質が悪く、人手不足でサービスも低下
両親がホームに入居中。食事がまずい、食材が貧弱、冷めたカレーなどが出る。本社にも給食会社にも申し入れしているが、さしたる変化もない。ヘルパーの出入りが激しく、父親は人に慣れないでいる。人手が足りないせいかサービスが低下、コールをしても40分以上経過してからやっと来る。(入居者家族からの相談)

・対応
現在のホームの入居費用などを確認したうえで、他のホームを探してもよいのではと伝える。その際はお手伝いする旨も伝え、介護サービスについては行政や国保連という苦情受付の場があることを伝える。


■ホームの設備や仕様への苦情
住宅型ホームの設備や仕様のクレームは、どこかで指導してもらえるか。トイレは床と10cm以上の段差、シャワーとの水回り部分にも段差あり、ドブ臭い臭気がする。トイレットペーパーのホルダーが昔ながらの棒型なのもホーム側に改善要望を出してもダメ。ホーム側は、入居者の自己負担であればどうぞという姿勢で、自分の費用でやるならOKとの回答しか得られない。(入居者本人からの相談)

・対応
住宅型ホームの設備、仕様の内容、ルールについて説明をする。ルール上はホーム側に責任はないが、入居募集の観点からすれば入替時に改良していかないと競争力はなくなるため、法人の考え方次第だと思う旨も説明。


■オムツ交換などケアが画一的
有料ホームの画一的な介護サービスで母親が気の毒。オムツ替えの回数やオムツの品質など、何ともならないのはわかるが、オムツカブレの母親を見るのは申し訳ない。湿ったオムツの母親を見るのは辛い。自分では在宅で最善尽くしたが、努力の限界、疲労で有老ホームに入居してもらった。(入居者家族からの相談)

・対応
ホームにはホームのルールがあると思うが、ご自身の想いをホームに話してみたらいかがかと回答。例えば「面会に行った時は、従前使用していたオムツを自分で替えたい」など。
相談者は「話しを聞いていただき、楽になった。ホームに自分の思いを伝えてみる」と返答。


【入居に関する問い合わせ】


■身元引受人がいない場合の入居方法
身元引受人がいない場合の方法は、法的後見制度の他にはどんな方法をとっているのかの例を教えてほしい。(入居希望者本人)

・対応
身元引受人なしのケースで具体例は、ホームによってはあるケースがあるので、入居希望しているホームに、相談してみることをすすめる。自立型のホームで20年以上経過したホームでは、身元引受人なしとなる入居希望者も増えつつある状況を受けて、ホーム毎に身元引受人なしの方法を採用している事例があるはずと伝える。


■入居契約書や重要事項説明書についての質問
ホームで行う見学会や体験入居の時、入居契約書や重要事項説明書は常にもらえるかどうか教えてほしい。(入居希望者本人)

・対応
重要事項説明書は都道府県ごとにほぼ同じ様式で作成されており、求めに応じて渡す様指導されているので、渡してくれないホームなら入居を考え直してもいい状況である旨を説明。
入居契約書は必ずしも渡してもらえるかは定かではない。閲覧はさせてくれると思うが、渡してもらえるかどうかはホームにより差がある事と、様式もホームごとに差がある事も説明する。

◎全国有料老人ホーム協会
http://www.yurokyo.or.jp/

■2014.1.20  <不正請求額約430万円>居宅を指定の一部効力停止に――熊本県
熊本県は、昨年末、運営基準違反などで阿蘇郡の居宅介護支援事業所を指定の一部の効力停止処分にしたと発表した。

モニタリングの記録をしていないケースが多数あるなど適切に業務を行っていないにもかわわらず、介護報酬を減算せずに請求、受領していたことが理由。
不正請求額は県の監査で把握できた範囲で、少なくとも約430万円にのぼるという。
処分により、2014年1月1日から3月31日まで新規利用者の受け入れができなくなる。
同事業所は、介護保険制度がスタートする前年・1999年11月に指定を受けた実績のある事業所。

■事業者の名称:社会福祉法人白久寿会(理事長 田上 栄喜)
■事業者の所在地:阿蘇郡南阿蘇村大字一関1282番地

■事業所の名称:水生苑居宅介護支援事業所
■事業所の所在地:阿蘇郡南阿蘇村大字一関1282番地
■サービスの種類:居宅支援介護

■処分の理由:
・運営基準違反
介護保険法令に定める記録の整備が適切に行われていないもの、サービス提供状況の把握(モニタリング)の結果を記録していないものを多数確認した。
また、管理者が業務の実施状況の把握及び必要な指揮命令を行っていなかった。

・介護報酬の不正請求
居宅介護支援事業所の業務が適切に行われていないにも関わらず、介護報酬を減算せずに請求した。また、算定要件を満たしていないにも関わらず、介護報酬の加算を請求し、受領した。

■2014.1.20  高齢者83人、家庭内で虐待…昨年度、和歌山
和歌山県は2012年度中に県内の市町村などに寄せられた高齢者虐待に関する通報と対応の状況をまとめた。

通報・相談件数は前年度と同じ150件で、調査の結果、65歳以上の92人が何らかの虐待を受けていた。家庭で虐待を受けた人のうち、7割以上は虐待者以外の同居家族がいないといい、県は「高齢化が進んだ在宅介護の現場は厳しい。1人で悩まずに早めに相談を」と呼びかけている。

県長寿社会課によると、県内の通報・相談件数は、高齢者虐待防止法が施行された06年度以降増加傾向にあり、10年度は最多の176件を記録。11、12年度も150件と「高止まり」と言える状態が続く。虐待を受けたと確認された人数は、08年度は62人だったが、11年度は113人と倍近くにまで増えていた。

虐待は家庭、施設双方で確認されている。12年度のまとめによると、家庭での虐待についてはケアマネジャーや家族らから141件の通報があり、市町村職員が訪問や聞き取り調査をして83人の被害を確認した。

虐待を種類別に見ると、▽殴る蹴るといった「身体的虐待」54人▽暴言や無視など「心理的虐待」46人▽身の回りの世話をしない「介護放棄」26人▽無断で年金を使い込むなどの「経済的虐待」16人。1人が複数の種類の虐待を受けていたケースもある。

被害者は女性が71人と8割以上を占める。一方で、虐待を加えた人は、息子35人、夫27人、娘11人――と男性が多い。

同居家族から虐待されていた人は75人で、うち62人は虐待者以外に同居する家族はなかった。世帯構成は、「夫婦のみ」が最多の28人、「未婚の子と同居」の23人で続き、「夫や息子と2人暮らしの女性」が被害に遭っている状況がうかがえる。34人は、介護福祉施設や病院に入所・入院させるなど虐待者から引き離す措置をとったという。

施設では、「特別養護老人ホームの職員6人が入所者7人に暴言を浴びせる」「グループホームの職員1人が利用者2人の顔にパンストをかぶせるなどする」の計2件、9人の被害が確認された。

県長寿社会課は、家庭での虐待は、孤立化した介護現場でのストレスが一因とみて、市町村の相談窓口や地域による見守り体制の強化を進める。

■2014.1.20  お泊まりデイ、3年で26人死亡…誤飲・徘徊で
全国の政令市と県庁所在地、東京特別区の計74市区にある通所介護事業所(デイサービスセンター)の宿泊サービス「お泊まりデイ」で、宿泊時間帯に起きた転倒や誤飲などの事故が2010年度以降少なくとも296件あり、26人が死亡していたことが読売新聞の調査でわかった。

お泊まりデイは介護保険の適用外のため、施設側に事故の報告義務はなく、厚生労働省は「これまで夜間の事故の実態は把握していなかった」としている。同省は15年度からお泊まりデイを都道府県への届け出制とし、事故についても報告させる方針だ。

調査は昨年12月、20政令市と、政令市を除く県庁所在地の31市、東京23区にアンケートを送付して実施。すべてから回答を得た。

その結果、死亡事故は、食べ物を気管に詰まらせる誤嚥(ごえん)による窒息が9件と最も多く、就寝中の体調急変が6件。認知症患者が消毒液を誤飲したケースや、徘徊(はいかい)して屋外で死亡したケースもあった。負傷事故では、転倒・骨折が目立ち、薬の誤投与、食中毒などもあった。

■2014.1.20  車いすの床擦れ防ぐ 富山のナレッジデザインがクッション開発
福祉用具製造のナレッジデザイン(富山市)は、車いすを長時間利用する人向けの床擦 (とこず)れ予防クッションを開発した。最先端の3次元立体編み物とウレタン素材の組 み合わせで体圧を分散させ、姿勢も安定させられる。昨秋の国内最大の福祉機器展で好評 を得ており、今後、首都圏と北陸で販路を開拓する。
 床擦れは寝たきりの高齢者の課題で、車いすに長時間座り続ける人でも起きる。一度起 きると治りにくく、感染症の原因ともなるため予防措置が重要とされる。

既存の予防クッションは、エアやゲルを使用した、高価な医療機関向け商品か、機能性 や耐久性に課題のある安価な商品に二極化している。ナレッジデザインは、機能性と手頃 な価格を兼ね備えた製品づくりを目指した。

座面に用いたのは、大手自動車メーカーのカーシートにも採用されている旭化成の3次 元立体編み物「フュージョン」。高いフィット感と振動吸収性で体圧を分散させる一方、 通気性にも優れ、蒸れを防ぐ働きがある。

土台の部分は、硬度の異なるウレタン素材を幾重にも積み重ねる多層構造とし、安定性 、耐久性の確保とコスト低減を図った。赤や青、えんじなど7色で展開し、価格は1万5 800円に抑えた。

昨年9月、東京ビッグサイトで開かれた「国際福祉機器展」に出展したところ、持参し た試作品が完売するなど好評を博した。今後、本社と横浜営業所(横浜市)で医療機関や 福祉施設を回り、販路を求める。

これまでの営業では腰痛に悩む医療関係者らからの引き合いもあったといい、矢渕房江 代表は「使い手の立場に立った製品で高齢化社会に貢献したい」と話した。

■2014.1.21  <潜在看護職>50代以上で介護施設就職希望増――日本看護協会
公益社団法人日本看護協会は、1月14日、「潜在看護職員の就業に関する報告」を公表した。

報告書は、全国60か所で看護職の職業紹介や復職支援を実施する都道府県ナースセンターの登録データを分析したもので、2003年度から2012年度までの求職者や求人の動向をまとめている。
それによると、ナースセンターの求人倍率は10年間に2倍近く増加。求職者の特徴としては40代以上が増加し、年代が上になるほど介護施設での就職を希望する傾向が高いことがわかった。
結婚や出産などで退職するなど、潜在看護師は全国で55万人にものぼると言われている。介護施設や訪問看護ステーションで看護職の需要が高まるなか、潜在看護師の求職・就業動向を把握することは重要だが、高い年齢層を中心に介護施設・事業所への就職希望が高まるなか、就業実績(施設別の割合)は多くはないことがわかった。



■60代の約5割が介護保険施設・事業所を希望

10年間の求職者の推移を年代別にみると、40代以上で増加傾向にある。また、病院への就職を希望する求職者は年齢とともに減少している一方、介護保険施設・事業所への希望は年齢とともに増加し、20代が29.0%、30代が34.8%、40代が36.4%、50代が43.1%、60代が49.7%だった。特に60代では介護保険施設・事業所を希望する割合が約5割を占めており、他の年代と異なる求職ニーズとなっている。

就業形態では、多様な働き方を望む求職者が増えてきたことから、常勤を希望する求職者は減少傾向にあり、非常勤あるいは臨時雇用を希望する求職者の割合は増加傾向にあり、2012年度では合わせて45.7%と半数近くに上った。
施設が募集している求人は、2003年から毎年7万件以上で推移し、2010年度以降に増加の傾向が見られ、2012年度は、8万5,275件だった。施設種類別では、診療所、介護保険施設・事業所、訪問看護ステーションなどの病院以外からの求人を合わせた割合は5 割弱の水準で推移し、病院と同程度となっている。


■介護施設の就職が少ないのはミスマッチが原因?

2012年度の求職・就職などの状況は以下の通り。

・求職者は6万3,309人で、うち各都道府県のナースセンターにより求人施設に紹介された紹介者は1万8,092 人、紹介を経て就業した就職者は1万1,993 人だった。

・就職した看護職は66.3%で、最終的に求職者全体の18.9%が就職した。就業中の求職者の紹介率は21.5%、就職率は12.1%の一方、未就業の求職者の紹介率は36.7%、就職率は27.0%と高く、現在働いていない看護職がより就業に結びついている。

・求職者の年齢別の割合は、「20代」11.5%、「30代」35.5%、「40代」34.5%、「50代」12.9%、「60代以上」5.6%で、実際に就業した者の割合は、「20代」8.7%、「30代」27.1%、「40代」32.8%、「50代」17.7%、「60代以上」13.7%だった 。

・就職を希望する施設種類は「病院」50.6%、「診療所」51.0%、「介護保険施設・事業所」34.4%、「会社・事業所」33.9%、「地方自治体」31.8%、「訪問看護ステーション」13.4%など(複数回答)だった。

・施設へ紹介された者の施設種類は、「病院」22.6%、「診療所」12.7%、「介護保険施設・事業所」6.1%、「訪問看護ステーション」2.6%、「会社・事業所」13.1%、「地方自治体」4.0%、「その他」39.0% だった。

・就職した施設種類は「病院」23.7%、「診療所」8.6%、「介護保険施設・事業所」4.9%、「訪問看護ステーション」2.3%、「会社・事業所」7.8%、「地方自治体」4.6%、「その他」48.0%だった。

・求人した施設種類は「病院」50.2%、「診療所」11.8%、「介護保険施設・事業所」15.7%、「会社・事業所」3.7%、「地方自治体」1.6%、「訪問看護ステーション」6.0%などだった。

◎日本看護協会
http://www.nurse.or.jp/

■2014.1.22  <23区内に140床規模>都内に新たな特養誕生!――都有地活用事業
東京都では、用地確保が困難な都市部における、特別養護老人ホーム等の整備を促進している。その一環として、昨年7月に低廉な価格で貸し付けて整備・運営する事業者を公募していたが、今回、足立区内の都有地の事業者が決定したと発表した。

今回開設されたのは、都営花畑アパートの跡地で、面積は約4,551平方メートル。特養規模140床(ユニット含む)、ショートステイ20床、認知症対応型通所介護と居宅介護支援も併設する大規模なものとなっている。
これだけの規模の特養が23区内に誕生するのは珍しい。

■借受者:社会福祉法人聖風会
■所在地(地番):東京都足立区花畑四丁目20番1(都営花畑第2アパート跡地)
■敷地面積:約4,551平方メートル(契約締結時に確定)
■施設規模:
・特別養護老人ホーム(ユニット型定員100人、従来型定員40人)
・老人短期入所施設(ユニット型定員20人)
・認知症対応型通所介護(定員12人)
・居宅介護支援事業所

■貸付期間:50年(定期借地権設定契約)
■貸付料:通常に算定された額の50%減額
■保証金:貸付料の30か月分

■選定方法:都有地等利用事業者選定審査会において、適格性を審査
■応募状況:応募者数16法人

■借受者の法人及び提案内容の概要
法人名:社会福祉法人聖風会
理事長:近藤明
所在地:東京都足立区花畑四丁目39番10号
設立年月日:昭和30年1月6日
主な運営施設:特別養護老人ホーム 6施設、軽費老人ホーム 1箇所、老人デイサービスセンター 9箇所、老人短期入所 6施設、老人居宅介護 9箇所、障害福祉サービス 1箇所、認知症対応型老人共同生活援助事業 1箇所など

■提案内容の概要(審査のポイント)
・組織運営の適格性:都内において、複数の特別養護老人ホーム等多様な事業展開をするなど、本施設を運営するための十分なノウハウと経験を有している。

・財政運営の安定性:施設整備資金のほかに事業開始当初の運営資金が確実に確保されている。

・安全性が高く資金力も十分である。

・事業運営の確実性:地域連携について、足立区内の地域包括ケアシステムのモデル的存在となれるよう、ボランティアの活性化、認知症予防への取組みとネットワーク拡大等に取り組む。医療連携について、足立区内既存施設で既に連携している医療機関と協力関係を構築することで、開設当初から円滑な連携を図ることができる。

・事業計画の妥当性:当該施設を「クローバー大学」と称し、福祉について実体験を通して学べる場として位置づけ、地域に身近に感じてもらえることを目指している。自由提案として、認知症対応型通所介護及び居宅介護支援事業所を併設。

・総評:事業計画や過去の実績等から、適正・適格な事業者であり、長期にわたって安定した事業運営と質の高いサービス提供が期待できる。

■2014.1.22  <認知症による窃盗>万引きの高齢者、理解力なしとして起訴取り消し
福井新聞によると、大阪地検堺支部は、12月、窃盗罪に問われている82歳の女性と、65歳の男性を、認知症のため裁判の意味を理解する訴訟能力がないとして、起訴を取り消す判断を下していたことがわかった。

弁護人によると、起訴されていた女性は、2011年9月、堺市のスーパーで食料品を盗んだとして、現行犯逮捕されていた。一方、男性は、酒などを万引したとして窃盗罪に問われていた。

認知症による犯罪や事件では、昨年(平成25年)8月、認知症男性による列車事故で家族に損害賠償請求を求める判決が出ているが、起訴されていながら、当人の判断能力なしとして、起訴が取り消されるケースは稀。高齢者による万引きは年々増えていることが警察庁のデータでも示されているが、なかには認知症のための行動であるケースもあるのではないだろうか。

今回、起訴されていた女性の弁護人は「起訴時の検察の病状把握がずさんだった。当初から起訴すべきでなかった」と批判しているという。





<認知症男性の列車事故>判決に抗議――認知症の人と家族の会 2013/12/18

公益社団法人認知症の人と家族の会は、12月11日、名古屋地裁が8月9日に出した認知症男性による列車事故で家族に損害賠償請求を求める判決に抗議する声明を発表した。

判決は、2007年12月、要介護4の認知症の男性(91)が線路内に立ち入り、列車と衝突して死亡したことによって発生した損害額約720万円を遺族がJR側に支払うこと命じたもの。この判決については新聞や週刊誌でも大きく取り上げられ、疑義を述べる、または抗議する識者が多かったことを記憶する人も多いだろう。

今回、認知症の人と家族の会では、「認知症の人の徘徊は防ぎきれない」として、「家族に責任を押し付けた一審判決は取り消すべき」との見解を発表した。以下にその趣旨を紹介する。

■あまりに認知症と介護の実態を知らない判決に怒り
判決の理由として、「男性が家を出たのはデイサービスから帰宅した夕方であり、そのとき男性と二人暮らしだった妻がたとえ6,7分であったとしても居眠りをしていて気づかなかったことが注意義務を怠った」としている。また、男性の長男は、妻を両親宅の近くに転居させて介護に当たらせていたものの、自分も近くに住まなかったこと、民間の介護施設やヘルパーを依頼しなかったことなどが徘徊を防止する措置を講じなかったとして監督義務を怠ったとされた。

しかし、介護保険制度を使っても認知症の人を24時間、一瞬の隙もなく見守っていることは不可能で、それでも徘徊を防げと言われれば、柱にくくりつけるか、鍵のかかる部屋に閉じ込めるしかない。判決はそのような認知症の人の実態をまったく理解していない。
また、介護はそれぞれの条件に応じて行っているのであり、百家族あれば百通りの介護がある。判決は、そのような条件や努力を無視し、責めたてている。

認知症サポーターが440万人を超え、社会で認知症の人を支えようという時代に、今回の判決は、認知症への誤解を招き介護する家族の意欲を消滅させる、時代遅れで非情なものと言わざるを得ない。

■名古屋高裁で一審判決を取り消すべき
名古屋地裁の判決が前例になるなら、在宅で介護している家族の多くは在宅介護を放棄することになりかねない。それは「できるだけ住み慣れた地域で」という今日の流れにも反することになる。現在審理中の名古屋高裁において、一審判決が取り消されることを求める。

■認知症ゆえの行動により被害を受けた人に対する補償
認知症であるがゆえの固有の行動から生じた被害や損害については、家族の責任にしてはいけないというのが私たちの考えだが、その被害などは何らかの方法で賠償されるべきだ。例えば介護保険制度の中にそのための仕組みを設けるなど、公的な賠償制度の検討がされるように提案する。

■鉄道会社の対応と社会的な取り組み
鉄道事業会社において認知症の理解と事故防止のための対応が進むことを望む。また、認知症の人が社会で広く理解され、住民同士の協力で少しでも徘徊による事故が減少するように、企業、学校、地域などで認知症サポーターのさらなる養成や啓発活動が進むことを期待する。
「家族の会」もそのために今後も努力することを表明する。

◎公益社団法人認知症の人と家族の会
http://www.alzheimer.or.jp/

■2014.1.23  介護保険事業者が虚偽申請、市が指定取り消し/横浜
虚偽の申請で介護保険事業所の指定を受け、不正に介護報酬を受け取っていたとして、横浜市は23日、同市中区の「みなとみらいケアサービス」の介護保険指定事業者の指定取り消しを決定、通知した。取り消し日は2月1日。市健康福祉局によると、同事業所は、サービス提供責任者と介護職員が退職していたにもかかわらず、2人の名前を使って虚偽の申請を行い、2011年8月1日に介護保険事業所の指定を受けた。関係者から市に情報が寄せられ、監査を行った結果、虚偽申請が判明した。

市は不正に受給した介護報酬約1540万円(11年8月〜13年10月分の介護給付費1100万円と加算金440万円)の返還を求める。また、利用者(1割負担)への返還も指導する。

健康福祉局によると、14人の利用者のうち13人がほかの事業所に引き継がれており、残り1人も1月中に引き継ぎが行われる予定という。

■2014.1.23  レジオネラ菌感染1人死亡 倉敷の介護老人保健施設
倉敷市保健所は23日、同市東塚の介護老人保健施設・和光園(小橋秀廣施設長)の入所者4人がレジオネラ菌に感染し、うち80代男性が同日死亡したと発表した。残る3人はいずれも90代女性で、入院中だが命に別条はないとしている。

同保健所によると、9日に女性1人、18日に女性2人が発熱、せきなどの症状で医療機関を受診し、レジオネラ症と診断された。亡くなった男性は20日に発症、21日に入院した。死因は肺炎とされたが、感染との因果関係は不明という。

4人とも潜伏期間とされる発症前数日間は外出しておらず、同保健所は施設内での集団感染と判断。浴室の水の採取などで感染ルートを調べている。施設による10日の検査では、女性用浴槽の水から基準値を超えるレジオネラ菌が検出された。

他の入所者約60人や施設職員に感染は確認されていない。

岡山県健康推進課によると、同県のレジオネラ症患者の延べ人数は2008年25人、09年17人、10年19人、11年37人、12年29人、13年24人。03年には岡山市の病院での院内感染で1人が死亡した。

■2014.1.24  2福祉施設で利用者ら36人食中毒/川崎
多摩保健所に24日までに入った連絡によると、川崎市多摩区中野島6丁目の特別養護老人ホーム「多摩川の里」と「多摩川の里身体障害者福祉会館」の2施設で給食を食べた施設利用者と職員ら男女36人が下痢や嘔吐(おうと)などの食中毒症状を訴えた。

患者の便や給食で出た目玉焼きとハンバーグをパンで挟んだ月見バーガーからノロウイルスが検出されたことなどから、同保健所は月見バーガーを原因とする食中毒と断定。24日から26日まで施設内の給食施設を営業禁止とした。

同保健所によると、20〜90歳代の男性7人と女性29人は18日昼に提供された給食を食べた後、19日以降に集中的に症状が現れた。入院患者1人を含め、全員が快方に向かっているという。

■2014.1.25  土地使用料3億円超「タダ」、元議長系法人に「便宜供与」疑念…大阪・門真市の怪しすぎる選定経緯、“確信犯”の憶測も
「何が悪い」と言わんばかりの姿勢はすぐに覆された。市長と旧知の元市議会議長が実質経営する社会福祉法人に市有地を無償貸与した問題が発覚した大阪府門真市が、不可解な対応を続けている。老人ホーム運営貸与先を選んだ委員会の議事録が一切なく、老人ホームの経営状況の報告を求めていない問題まで指摘されながら、市は「特に問題ない」と強弁した。だが、報道から1週間もたたないうちに、いずれも非を認めて謝罪。対応を一転させた真意はどこにあるのか。

「事務処理誤りで…」

《本来であれば、全文筆記の会議録を作成する必要があったにも関わらず、担当課としては公表する会議録のみの作成で足りるとの認識から議事録を作成しなかったという事務処理誤りでありました》

門真市健康福祉部の担当者は20日、自らの非を認めるメモを記者に手渡した。ここにある「議事録」とは、無償貸与の市有地で老人ホームを運営する社会福祉法人を選ぶため、市が開いた選定委員会の議事録を指す。

市は平成22年5月、事業者側から企画提案を受ける「プロポーザル方式」で、市有地で老人ホームを運営する法人を公募した。老朽化した市立養護老人ホームの事業を引き継ぐという公益性の観点から、市有地は無償貸与されることになり、3法人が応じた。

各法人の提案を審査する選定委は22年7月に開かれ、運営法人を決定。市はわずか2ページ分の「講評」に選定結果をまとめたが、選定の過程を明らかにする議事録までは作成していなかった。

この理由について、市の担当者は昨年末の取材に「作成すべきとの規定がないので作成していない」と平然と答えていた。ところが、無償貸与の記事が掲載された1月14日以降は「後に調べたら、実は規定がありました」などと答え、対応を一転させた。果ては先述の謝罪文のようなメモまで用意してきたのだ。

3億円超も浮く計算

無償貸与された市有地は周辺に工場などが立ち並ぶ同市四宮の1914平方メートルの土地だ。老人ホームは貸与開始から1年後の24年4月にオープンした。地元の不動産関係者によると、市有地の賃料相場は年間約1500万円になるという。

土地使用貸借契約書によると、無償貸与の期間は23年4月〜44年3月の21年間。単純に考えれば、21年間で実に約3億1500万円が丸々浮く計算だ。「貸し付け満了の日の半年前までに両者から申し出がないときは、さらに10年更新する」とも規定しており、市側の異議がなければ無償貸与は自動延長され、最大でさらに30年間、期間を延長することができる。

民間事業者に市有地を長期間にわたって無償貸与するという“破格”の条件にも関わらず、市は法人側に対し、老人ホームの経営報告を一切求めていなかった。市の担当者はこの点についても昨年末時点では「経営状況の報告は今後も求めない」と主張した。ところが、報道直後の1月14日の記者会見では「市有地は市民の財産という観点から、今後は経営状況の報告を求める」と方針を転換させた。

実質経営者は元議長

市有地に建つこの老人ホームは現在、養護老人ホームのほか、デイサービスや特別養護老人ホーム事業なども展開している。サービス自体への批判は特に聞こえてはこない。

ただ、運営法人の「会長」の肩書きで実質経営するのは同市の元市議会議長(72)。市議として連続7期計28年在籍し、15年に引退するまで議長を4回務めた。昨年11月には地元の経済団体「守口門真商工会議所」の副会頭に就任。園部一成市長(75)とは、ともに門真市議だった20年以上前からの旧知の間柄だ。

不透明な市の手続きに加え、市長と旧知の元議長という関係は、当然ながら憶測を呼んだ。地元住民からは「恣意(しい)的に運営法人が決められた可能性があるのではないか」と疑問の声が上がった。

議員側には事前情報

無償貸与をめぐる不可解な経緯はまだある。

市は22年5月19日に無償貸与する事業者の公募を開始した。ところが、締め切りはわずか約1カ月後の6月17日で、公募前の告知などは一切なかったという。

「発表から締め切りまでの1カ月弱で、要求された応募書類を整えるのは難しく感じる。提出期限を延長してもらえないか」。応募を検討していたある法人からは、こんな“苦言”も市に寄せられていた。

だが、スケジュールに変更はなく、市は締め切りの翌月、市幹部や有識者ら5人が出席した選定委を開催。提案内容の評価が最も高かったという元議長が実質経営する法人を選んだ。

元議長の娘婿で法人の理事長を務める男性は取材に「募集は市の発表当日に知った」と答えた。ただ、ある市幹部は「議会には公募前に当然根回しをしている。発表の約2カ月前には公募の方針を議員サイドには伝えた」と打ち明ける。こうした事情から、一部市議は「市の説明を聞いた議員に近い立場であれば、公募の内容を事前に知り得ることができた」とも指摘する。

「出来レース」なのか

選定委は、各法人が提案した建物の規模やサービス内容などを点数化して運営法人を決めたというが、議事録がない以上、詳細な決定方法は不明のまま。また、選定委のメンバー5人のうち2人は市の幹部職員だったことも釈然としない。

社会福祉問題に詳しい関西福祉大の谷口泰司准教授は「こうした選定は、公平性を期すためにも委員のメンバーは外部の有識者で構成するのが常識。複数の市幹部が入るのは考えられない」と問題視する。

元議長は取材に対し「契約に関して不正なことは一切ない」と答えている。とはいえ、納得できる市民は多くない。ある市議は強い口調でこう指摘した。

「あまりにも不可解な点が多い。やはり『出来レース』だったのではないか」

http://social-welfare.rgr.jp/databox/ccccscccccc.PNG

■2014.1.25  3職員「感覚がまひ」と暴行 「養育園」問題 県、2度目の改善勧告
袖ケ浦市の県立障害者施設「養育園」で職員から暴行を受けた少年(19)が死亡した問題で、少年への暴行が確認された職員三人が県の調査に「他の職員の暴行を見て感覚がまひし、自分もやってしまった」と話していることが二十四日、分かった。県は同日、二度目となる改善勧告を運営する県社会福祉事業団に行った。

職員は、生前の少年に暴行が判明している五人のうちの三人。ほかにも、ある職員の態度が別の職員に影響したという証言があり、虐待が連鎖的に広がっていた様子が明らかになった。

県は勧告で幹部の監督責任を指摘し、虐待報告の徹底など運営の改善、職員研修などを求めた。今後、同事業団が運営する「アドバンスながうら」の検査などを続ける。

■2014.1.25  障害者施設でノロウイルスに感染…男性1人死亡
和歌山県は24日、同県上富田町の障害者福祉施設「南紀医療福祉センター」でノロウイルスに感染した入所中の60歳代男性1人が同日、急性呼吸促迫症候群で死亡したと発表した。

発表によると、14日から23日の間に入所者19人と職員12人が嘔吐おうとなどの症状を訴えた。施設で検査したところ、亡くなった男性を含む3人からノロウイルスが検出されたという。他の人は快方に向かっているという。

■2014.1.25  養育園問題 県が福祉法人に追加改善勧告
知的障害児らが入所する県立福祉センター「養育園」(袖ケ浦市蔵波)での暴行問題を巡り、県は24日、センターを運営する社会福祉法人「県社会福祉事業団」に対し、障害者総合支援法と児童福祉法に基づく改善勧告を出した。事業団が運営する別の施設「更生園」でも暴行などが確認されたことを受けた措置。県は昨年12月27日にも養育園での暴行を受け改善勧告を出しており、1か月以内の追加勧告は極めて異例だ。

県は1月中旬、7日間にわたり更生園に2度目の立ち入り検査に入った。新たな暴行は確認されなかった。

2009〜11年度に事故報告書4件が県に提出されず、このうち2件が暴行と認定された問題では、事業団が正式な手続きを経ずに、暴行した職員2人を諭旨免職処分としていたことが判明した。幹部は隠蔽の意図を否認しているという。また、複数の職員が「他の職員が暴行を行っているのを見て、自分も暴行に至った」などと供述していることも分かった。

改善勧告は、事故発生時の報告体制や職員の研修、理事長ら幹部の監視体制について改善を求めている。県は2月末をメドに、事業団に報告書の提出を求めた。1度目の勧告に基づき1月末にも報告書がいったん提出されるが、中間的な内容にとどまる見込みだ。

これに関連し、県は24日、障害福祉課に県立施設改革班を発足させた。一連の暴行問題の対応に主眼を置く。

■2014.1.25  常総の介護施設 RSウイルス7人検出 集団感染2人死亡
県は24日、常総市菅生町の介護老人保健施設「葵の園・常総」(若杉茂俊施設長、入所者91人・21日現在)で、RSウイルス感染症が疑われる発熱やせきなどを訴える症状の入所者が集団発生し、このうち男女2人が入院先の医療機関で死亡したと発表した。2人の死因と同感染症の関係は不明。県内の高齢者施設で同感染症が疑われる集団発生は初めて。

県健康危機管理対策室によると、亡くなったのは90代女性と80代男性。女性は9日、発熱やせきで入院していたが、13日になって肺炎と不整脈で死亡した。心不全や認知症の基礎疾患があった。男性は8日に発症し入院したが、誤嚥(ごえん)性肺炎と心不全により16日に死亡した。脳梗塞や認知症の基礎疾患があった。

施設は21日、「原因不明の発熱やせきの症状が出た入所者が約30人いて、死者も2人いる」と常総保健所に連絡した。同保健所が調べたところ、22日までに、60〜90代の入所者計33人と40〜50代の職員計2人が発症し、このうち入所者13人が入院した。24日現在、10人が入院中という。

県衛生研究所が22日、入所者10人の鼻水の検査を行い、このうち7人からRSウイルスが検出された。

同対策室は「感染が収束したと言い切れる状況ではない」と警戒を強めている。施設への1日平均の通所者は15人で、現在は通所サービスを休止している。

厚生労働省の通知によると、施設から保健所への連絡の基準は「1週間に2人以上の死者か重篤者」「10人以上に症状」としている。施設は発症者が10人を超えて計12人となった11日に連絡する必要があり、同対策室によると、連絡の遅れについて「入院患者が10人を超えた時と誤解していた」と説明している。

施設は、入院者が2人になった14日、同保健所に連絡の基準を電話で問い合わせ、同保健所はメールでも施設に基準を送っていたという。

同感染症が疑われる例は、昨年2〜4月に千葉県内の施設での集団発生があり、医療機関に入院した15人のうち3人が肺炎で死亡している。

★RSウイルス感染症

乳幼児の肺炎や気管支炎の主要な原因ウイルスで、感染力は強く、感染者のせきやくしゃみなどによるしぶきを吸い込んだり、鼻水、たんに接触したりして広がる。2歳までにほぼ100%感染する。特に初感染では13%が入院が必要なほど重症化するとされる。早産や心臓、肺に基礎疾患を持つ子どもについては、特に重症化の危険性が高い。高齢者もしばしば重症の気管支炎や肺炎を起こし、長期療養施設内での集団発生が問題となる場合がある。有効な治療法はなく輸液などの対症療法が基本。

■2014.1.26  「障害者が住むようになると地価が下がる」 グループホーム開設に住民の反対相次ぐ
国は、施設などで暮らす障害者に地域のグループホームなどに移って生活してもらう
「地域生活移行」を進めていますが、こうしたグループホームに対する周辺住民の反対運動が、
過去5年間に全国で少なくとも58件起き、建設断念に追い込まれるケースもあることが、
NHKの取材で分かりました。

国は、障害のある人に地域の一般の住宅で暮らしてもらう「地域生活移行」を進めていて、
各地でグループホームやケアホームの開設が進められていますが、
周辺住民から反対運動が起きるケースが全国で相次いでいます。

NHKが全国の都道府県と政令指定都市を対象に、過去5年間に起きた反対運動の件数を尋ねたところ、
少なくとも58件に上ることが分かりました。

また、精神障害がある人と知的障害がある人の2つの家族会にも同様の調査を行ったところ、
全国で合わせて60件の反対運動が起きていることが分かりました。

このうち家族会の調査では、反対運動を受けて、予定地での開設を断念したり
別の場所への変更を余儀なくされたりしたケースが36件に上っていました。
この中では、
▽精神障害者のグループホーム建設に対して、
住民が反対の署名を集めて自治体に提出したケースや、
▽障害者に差別的なポスターを予定地周辺に掲示したケース、さらに、
▽住民説明会で「障害者が住むようになると地価が下がる」と訴えて
建設反対を主張したケースなどがありました。

去年成立した障害者差別解消法の付帯決議では、グループホームの開設にあたって
周辺住民の同意は必要ないことが明記されましたが、障害者が地域で暮らすために
周辺住民との関係が大きな課題になっていることが浮き彫りになっています。

■2014.1.27  バリアフリー目指せ…大学が本格的に取り組み
和歌山大は、「障害者差別解消推進法」が2016年4月に施行されるのを前に、障害を持つ学生が学びやすいキャンパスの整備に本格的に取り組む。

2月には、学生も加わって学内の実態を調査するなど、大学が一体となって障壁や段差をなくすバリアフリー化を一層進めていく。

和歌山市栄谷の丘陵地に広がる和歌山大のキャンパスには、長く急な坂道や階段など、障害者にとって移動が難しい場所が点在している。大学はこれまで、車いすの学生が入学する際に、要望を受けてスロープを設置するなど対応してきた。

障害者差別解消推進法では、国などに対して公共施設で障害者が壁を感じずに生活できるよう配慮することを義務づけている。そこで、大学自らキャンパスの問題点を調査、解消していく積極的な姿勢をとることにしたという。

2月19日には、自身も車いすを利用し、立命館大学在学中の2010年に福祉コンサルティング会社を設立した垣内俊哉さんを大学に招いてセミナーを開催。参加した学生とともに車いすで学内を巡って調査し、当事者の目線で大学側に改善点を提案する。

また、車いすでも入りやすい多機能トイレやエレベーターなどを分かりやすく図示し、ホームページ上などで公開する「バリアフリーマップ」の作成も進めており、今年3月末までの完成を目指している。

学生支援課の担当者は「学生が調査に関わることで、障害者が暮らしやすい施設作りについて考えるきっかけにしてもらえれば」と話す。

同大学教育学部の江田裕介教授(特別支援教育学)は、「学内には、身体障害者にとって開閉の難しいドアや独力で進みにくい急なスロープもある。学生が相手の立場に立って問題点を発見することで、障害者への理解が深まる」と期待。今回のセミナーにも、ゼミの学生を積極的に参加させるなど協力する。

参加を予定している教育学部3年坂田夏巳さん(21)は「障害を持つ学生も、健常者と同じように楽しくキャンパスで快適に過ごせるように、力になりたい」と意気込んでいる。

■2014.1.27  準詐欺容疑:認知症男性から1000万円詐取 3人逮捕
福岡県警若松署は27日、認知症で判断力が低下し、施設に入所している北九州市若松区の男性(83)から1000万円をだまし取ったとして、介護事業所の施設管理者、松尾光信容疑者(48)=同市小倉北区高尾=ら3人を準詐欺の疑いで逮捕した。

他に逮捕したのは、同市八幡西区藤原、介護職員、矢野みゆき(52)、同区永犬丸、同、寺田香(30)の両容疑者。

3人の逮捕容疑は、男性が入所している施設に勤務していた2010年8月、若松区内の郵便局に男性を連れて行き、預金から現金1000万円を引き出させ、その場で受け取ったとしている。3人の認否について同署は明らかにしていない。

「ずさんな経理がある」との内部関係者の告発を受けて同署が捜査していた。3人は現在、この施設に勤務していないという。

■2014.1.28  伝えられぬ苦しみ「吃音」 就職4カ月、命絶った34歳
言葉が出にくかったり、同じ音を繰り返したりする吃音(きつおん)のある男性(当時34)が昨年、札幌市の自宅で自ら命を絶った。職場で吃音が理解されないことを悩んでいたという。自ら望んだ看護師の職に就いて4カ月足らずだった。100人に1人とされる吃音の人を、どう支えればいいのか。学会が創設され、議論が始まっている。

男性は昨年3月に看護学校を卒業し、札幌市内の病院で働き始めた。

幼いころから吃音で、話し始める時に言葉がなかなか出てこない「難発」と呼ばれる症状があった。「ん……」と無言が続き、足踏みを繰り返すなどの「随伴(ずいはん)症状」もあった。緊張すると症状はよりひどくなった。

家族によると、男性は病院で吃音が理解されずに苦しんでいたという。男性は自己紹介の用紙に自分の症状について書き、職場で理解してもらおうとしていた。「大声を出されると萎縮してしまう」「話そうとしているときにせかされると、言葉が出なくなる」

だが、伝わらなかった。男性が残した手帳には、追い詰められていく様子が書き込まれている。「どもるだけじゃない。言葉が足りない。適性がない」「全てを伝えなければいけないのに、自分にはできない」。その字は、次第に乱れていく。親友には「続けられないかもしれない」とメールを送っていた。

昨年7月末、病院からの連絡で母が駆けつけると、男性は自宅で死亡していた。携帯電話には家族宛ての未送信メールが残っていた。「相談もせずに申し訳ありません。誰も恨まないでください。もう疲れました……」。後になって、男性が昨年6月ごろからパソコンで「吃音と薬」「新人看護師と死」などを検索していたことも分かった。

吃音に悩んでいた男性がなぜ、話すことが求められる看護師を目指したのか。

姉は「話すことは好きだったし、人の役に立ちたいという思いが強かった」。

母は「息子のような悲劇を繰り返さないためにも、吃音者を理解し、受け入れる社会になってほしい」と話している。

■見えにくい障害、支援を模索

吃音で悩む人は少なくないのに、吃音を中心テーマとする学会はなかったが、昨年9月、日本吃音・流暢(りゅうちょう)性障害学会が発足した。

金沢市で開かれた第1回学会には、吃音のある当事者や言語聴覚士、研究者ら200人が集まった。学術的な研究だけではなく、就職活動での配慮など社会的な支援のありかたについても話し合った。

発起人の一人で副理事長の、川合紀宗・広島大教育学部教授(音声言語病理学)によると、吃音の原因は分かっていない。3歳前後で症状が出ることが多く、7割程度は自然に治るという。心理面からアプローチする方法などが提案されているが、決定的な治療法はない。また、吃音は見えにくい障害のため、本人や周囲がなかなか受け入れられないのも特徴だ。

成長してからは、就職活動が大きな壁になる。コミュニケーション能力が重視され、面接が重ねられる今の選考方法では、力を発揮できないまま「全滅」する人も多いという。

吃音についての認知が進まない中で、まずは障害として認められる必要があるとして、障害者手帳の取得を目指す動きもある。

自助グループ・NPO全国言友会連絡協議会理事長の南孝輔さんは「職場に吃音の人がいたら、言いたいことを言い終わるまで待ってあげてほしい」と話す。

■思いの丈「漫画なら…」

男性の本棚には吃音のある高校生を描いた漫画「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」があった。

主人公の志乃ちゃんは高校1年生。自己紹介でどもってしまう。母音が苦手。すべて作者の押見修造さん(32)が経験したことだ。

大学1年の春、クラスで自己紹介の順番が回ってきた。押見の「お」が言えなかった。教室に入れなくなり、その後中退。押見さんは「吃音がなければ、漫画家になっていなかったかもしれない。思いの丈をしゃべってはき出した経験がない。もやもやしたものが、漫画や文章だと出せる」。

男性は仲間に教えられて、押見さんの作品を購入したようだ。

押見さんは男性の気持ちを思いやる。「吃音から逃げちゃだめだ、という思いがあったのでは。気持ちはよくわかる。僕自身も、漫画家になれなかったらと想像すると怖い。何とか折り合いをつけているんです」

■2014.1.28  車いす、高齢者に優しいマップ完成 神戸市営地下鉄の全駅を網羅
車いすの障害者や高齢者らにスムーズに駅を利用してもらおうと、駅構内のバリアフリー情報などを発信しているNPO法人「まちの案内推進ネット」(大阪市)と障害者の就労支援を行うNPO法人「ウィズアス」(神戸市)が、ガイドマップ「えきペディア地下鉄バリアフリーマップ神戸」を作った。神戸市営地下鉄のすべての駅構内のエレベーターなどの設置状況がイラスト入りで紹介されている。1万部限定で、27日から地下鉄各駅や市内の観光案内所などで無料配布を始めた。

マップは、片手でも使えるB6判サイズで、神戸市営地下鉄と北神急行の全28駅を掲載。駅ごとに、構内のエレベーターやバリアフリーのトイレの位置などを、立体的なイラストと写真で分かりやすく紹介している。他の鉄道との接続が多い三宮駅と新神戸駅は乗り換えのルートも盛り込んだ。

まちの案内推進ネットはすでに、全国9都市の地下鉄計731駅について同様のマップを作製。ウェブサイト「えきペディア」で公開しており、小冊子にまとめるのは、大阪、横浜、京都に続き4都市目。4月からは、神戸市内の書店などで一般販売も行うという。

同ネットの岡田光生理事長(61)は「各鉄道会社が作るマップは情報が多すぎて、駅での移動が困難な人にとって必要な情報が分かりづらい。情報をできるだけシンプルにし、車いすの方だけでなく、ベビーカーを使う方にも使いやすいように工夫した。うまくマップを利用してほしい」と話している。

ガイドマップの問い合わせはウィズアス((電)078・381・6470)。

■2014.1.28  触法精神障害者「専用病棟」近畿で増床相次ぐ…重大犯罪“再犯率”0・7%でも被害者「根拠はどこに」
殺人などの重大事件を起こしながらも心神喪失や心神耗弱と診断され、不起訴処分や無罪になった「触法精神障害者」の社会復帰を目指す国指定の専用病棟の増床や新設が昨年、近畿で相次いだ。人口や事件数に比べて少ない実態を受けたもので、2施設38床しかなかったのが3施設89床に増強された。心神喪失者等医療観察法に基づき、治療とともに自省を促す対応が求められる難しい施設だが、新病棟では「座禅」を通じて自省を深めるプログラムも計画されるなど試行錯誤が続いている。

3メートルの二重フェンスも…内部は開放感

近畿では昨年、3月に大阪府立精神医療センター(同府枚方市)で新病棟が増床され、11月には滋賀県立精神医療センター(同県草津市)が新設された。平成22年8月開棟の国立病院機構やまと精神医療センター(奈良県大和郡山市)を含め、3施設が稼働中だ。

このうち、府立精神医療センターは新病棟を建設して5床から33床に増床した。新病棟は逃走防止のため周囲は高さ3メートルの二重フェンスに覆われ、玄関には警備員が常駐。個室の窓も10センチしか開くことはない。物々しいたたずまいだが、内部の印象は異なる。対象者はトイレがついた10平方メートル程度の個室で居住。廊下は吹き抜けで天窓が設けられ、開放感が漂う。

治療は、医師や看護師、精神保健福祉士などの5職種約60人が担当。医学的な治療も行うが、最も重要視しているプログラムは「内省」だ。

北海道や四国には施設なく

スタッフとの対話を通じ、犯罪に至るプロセスを振り返って問題点を整理したり、被害者の心情も学んだりする。わが身を振り返ってもらおうと、座禅のできる和室も設けた。

新たな治療の成果も期待されるが、センターの奥山修副看護部長(51)は「病状の改善だけでなく、患者が罪を反省し、治療を受け入れたときが退院の目安。ただ、そのタイミングに明確なものはない」と打ち明ける。

厚生労働省によると、こうした専用病棟は27都府県に791床あり、昨年の入院者数は700人前後で推移。退院者がいるものの新規入院は月平均20〜30人といい、早晩、破綻する可能性も指摘されている。

また、北海道や四国には施設がないなど地域偏在の問題もあり、同省は、各都道府県に最低1カ所は設置する方針で整備を進めている。

「再犯しない、根拠はどこに」

法務省によると、医療観察法が施行された平成17年7月から24年5月の間、同法に基づき1597人が入院し、759人が退院許可を受けた。このうち、殺人などの重大犯罪に再び手を染めたのは5人で、重大犯罪に限った“再犯率”は0・7%にとどまり、同省は「制度は順調に推移している」としている。

ただ、事件の被害者側は複雑だ。昨年5月、大阪市生野区で起きた通り

魔事件では、通行人の男女2人を相次いで刺したとして韓国籍の男(32)が殺人未遂容疑で逮捕された。大阪地検は11月、精神鑑定の結果、心神喪失を理由に男を不起訴処分とし、大阪地裁も同法に基づいた鑑定入院命令を出した。

事件で重傷を負った清掃員の女性(63)の義姉(70)によると、女性は昨秋に退院したが、事件が起きた商店街を通ることができず、精神的な傷は癒えていないという。

義姉は「時間がたてば彼はまた社会に出てくる。(再犯者は)統計的にはごくわずかなのかもしれないが、彼が出てきたとき、再び犯罪をしないという根拠はどこにあるのだろうか」と疑問を投げかけた。



心神喪失者等医療観察法  平成13年の大阪教育大付属池田小の児童殺傷事件をきっかけに17年7月に施行。裁判所が医師の鑑定をもとに指定医療機関への入院を命じることができ、入院期間は標準で1年半。退院後は通院治療を受けながら社会復帰を目指す。

■2014.1.28  介護施設の指定取り消し処分 効力停止決定
佐賀県大町町福母の認知症対応型グループホーム「ホームタナカ」の入居者が虐待を受けたとされる問題で、佐賀地裁は、杵藤地区広域市町村圏組合が施設に行った介護事業所の指定取り消し処分について、1審判決まで効力停止を認める決定を出した。決定は24日付。

組合は昨年11月15日付で、施設で虐待があったとして事業所としての指定を取り消したが、施設側は「虐待はなかった」として、処分の取り消しを求める訴訟を佐賀地裁に起こし、効力停止も申し立てていた。

決定によると、「処分は、施設側の社会的信用を著しく低下させ、緊急に効力を停止する必要がある。(虐待があったか)説明が尽くされておらず、訴訟で審理を尽くすべきだ」としている。

組合は「弁護士らと相談しながら今後の対応を検討する」としている。

■2014.1.29  認知症:不明・死亡578人 遠方で保護も 2012年分、毎日新聞全国集計
認知症またはその疑いがあって行方不明になり、死亡確認された人が2012年の1年間に359人に上ることが分かった。同年末までに見つからなかった人も219人いた。毎日新聞が全国の警察本部などに取材して集計した。合計すると578人で、認知症の人を巡る深刻な実態が判明した。

警察庁は認知症の人が当事者となった行方不明者届の数を12年分から公表しており、同年は9607人だったが、警察本部によって受理するまでの手続きに違いがあることも分かった。正式な届け出前に保護や死亡確認される人もいるため実際の行方不明者数は大幅に膨らむとみられ、死者数も増える可能性がある。

死亡確認された359人(届け出が同年より前の人を含む)は山林や河川、用水路のほか、空き家の庭や道路上などで発見された。未発見者219人のその後については、各警察本部は「統計上は未把握」などとしている。

9607人の行方不明者届のうち、最多は大阪府の2076人、次いで兵庫県の1146人。ただしこれは、両警察本部とも事件性の判断や捜索に生かすため、行方不明者の家族らに対し書面による正式な届け出を積極的にするよう促していることが背景にある。

一方、神奈川、千葉、埼玉3県には、正式な届け出の前に、電話などでの連絡と同時に「一時的所在不明者」として受理する制度がある。その段階で見つかる人もいて正式な届け出に至らないケースもあり、行方不明者届の数は神奈川262人▽千葉232人▽埼玉146人。また、東京の警視庁は3県のような制度はないが、正式な届け出前から捜索活動に取り組んで早期に見つかるケースがあり、行方不明者届の数は350人。他は愛知735人▽京都371人▽福岡357人▽茨城317人などだった。都道府県別の死者数は、大阪26人▽愛知19人▽鹿児島17人▽東京16人▽茨城15人▽北海道、福島、長野、兵庫各14人など。

認知症の人が遠くまで行ってしまう事例も判明した。大阪府警によると、12年8月の届け出翌日に門真市の男性(当時75歳)が松山市の港で発見▽13年1月に届け出を受けた大阪市の独居男性(同83歳)が22日後に北海道函館市のパチンコ店に迷い込み保護された。四国や北海道にたどり着いた経路や、その間の生活ぶりは分かっていない。

近年の行方不明者届は70歳未満の各年代がいずれも減少かほぼ横ばいで推移しているのに対し、70歳以上は急増。12年は全世代8万1111人のうち70歳以上は1万4228人で5年前の3521人(33%)増となり、認知症の人の増加が影響したとみられる。


◇受理手続きに地域差、実態さらに多く

行方不明となった認知症の人の数や死者数は、正確にとりまとめられていないのが現状だ。行方不明者届を巡る警察本部の対応の違いなどで、現行の集計に含まれない数がかなりに上るとみられるためだ。

どの警察本部も迅速な捜索活動を目指しているが、首都圏の3県は、書類提出に時間がかかる行方不明者届の前段階に「一時的所在不明者」という制度で受理し、いち早く捜索に着手している。その数を2011年の神奈川でみると、認知症の人だけで1947人。同年の認知症の行方不明者届248人の8倍近くに上る。

一方、正式な届け出を積極的に促すことで早期対応につなげている大阪府警管内の行方不明者届は、警察庁公表の全国集計の約2割を占め、突出して多いが、他の警察本部の行方不明者届の数よりも実態を正確に示していると言える。

国の認知症施策は、できる限り住み慣れた地域で暮らし続けられることを掲げる。地域生活のリスクを把握するためにも、国は実態を正確に示す全国のデータをとりまとめた上で対策を講じる必要があるだろう。

■2014.1.30  袖ケ浦福祉施設虐待、県議らが現場視察 千葉
袖ケ浦福祉センター(千葉県袖ケ浦市蔵波)の「養育園」で、少年=当時(19)=が職員から暴行を受けた後に死亡した事件を受け、県議会健康福祉常任委員会の委員10人が30日、センターの視察と、運営する県社会福祉事業団の幹部職員への聞き取り調査を初めて実施した。近藤敏旦理事長は「県民や利用者に深くおわび申し上げる」と改めて陳謝。「指定管理者制度の導入などで人件費削減の体質改善が必要となり、人材育成が難しい面もあった」と述べた。

同事業団は同日付で、センター長を兼任する田村邦夫常務理事について、「職員の管理監督責任を怠った」として解任し、事務局参事とした。

田村氏は関連施設職員だった約20年前に、利用者に暴行してけがを負わせていたことが判明している。近藤理事長は「過去の件は戒告の懲戒処分で一定のけじめがついている。(幹部職員となっているのは)これまでの役割や貢献を評価した結果」と述べ、問題はないとする認識を示した。

■2014.1.31  <千葉・施設暴行>小腸の穴は外圧が原因か 医師が解剖所見
千葉県袖ケ浦市の県立障害者支援施設「袖ケ浦福祉センター養育園」で入所者の少年(19)が職員の暴行後に死亡した事件で、司法解剖した医師が、死因の腹膜炎を起こすきっかけとなった小腸の穴について「外圧による可能性が高い」との所見を示していたことが捜査関係者への取材で分かった。職員による暴行か、事故や自傷行為を防げずに穴が開いた可能性が高まったといえ、園側の管理態勢が問われそうだ。

千葉県警や立ち入り検査を続けている県によると、少年は昨年11月24日午後3時ごろ、20代の男性職員から腹を数回蹴られた。同25日に、呼吸困難になって救急搬送され、翌日未明に死亡確認された。

捜査関係者によると、穴ができたのは24日の暴行時より前とみられている。県によると、24日に腹を蹴った職員を含め計5人の職員が過去にこの少年に暴行していたといい、いずれかの暴行が影響した可能性がある。

一方で、少年は自他を傷つけるような行動障害があり、園内の設備に体をぶつけるような行為もみられたという。潰瘍など内的要因による可能性も残っており、県警は暴行と死亡の因果関係を慎重に調べている。

■2014.1.31  <不正請求額1,540万円>訪問介護事業所を指定取消処分――横浜市
横浜市は、1月23日、虚偽の指定申請などによる不正請求が認められたことを理由に、市内の訪問介護事業所を指定取り消し処分にすると発表した。これにより、2月1日に指定が取り消される。

同市では、事業所が2011年8月から2013年10月分までに、不正に受給した介護給付費1,100万円に加算金440万円をあわせた総額1,540万円の返還を求める。

■開設者の名称:KARIN ISLAND株式会社(代表 窪田隼一)
■開設者の所在地:横浜市青葉区大場町174番地65
■事業所の名称:みなとみらいケアサービス
■事業所の所在地:横浜市中区本牧三之谷11−22
■サービスの種類:訪問介護、介護予防訪問介護

■処分の理由:
・虚偽の指定申請
指定日以前に退職していたサービス提供責任者及び介護職員の名義を用いて虚偽の申請を行い、介護保険事業所の指定を受けた。

・不正請求
虚偽の申請で指定を受けたにもかかわらず、介護報酬を不正に請求し、受領した。
また、サービス提供責任者としての資格要件を満たしていない者が訪問介護計画を作成していたにもかかわらず、適正な計画に基づく指定訪問介護サービスを提供したとして、介護報酬を不正に請求し、受領した。さらに一部の利用者について指定訪問介護サービスを提供した記録を作成していないにもかかわらず、介護報酬を不正に請求し、受領した。

■2014.1.31  大阪市 救急出動「搬送不要」2割超
単身高齢者 あわてて119番、通院に要請も

119番通報などを受けて消防が救急出動したものの、緊急性が低いなど、結果として「搬送不要」になるケースが、全出動の2割を超えていることが、大阪市消防局の集計で判明した。

10年前は1割余りだった。必要がないのにあわてて呼んでしまったり、到着してもけが人がいなかったりさまざまなケースがある。同市消防局は「救急業務を圧迫している」として、適正に救急車を利用するよう協力を呼びかける。

2003年には、救急出動数18万7396件のうち、搬送不要は13%の2万4035件だった。搬送不要の割合は増加傾向が続き、12年は出動総数の21%にあたる4万5073件。13年も4万5287件(速報値)で21%だった。

同市消防局が他の政令市を調べたところ、神戸市が17・3%、仙台市が15・1%などで、政令市平均は12・7%(いずれも12年)。大阪市が最も多かった。

12年に大阪市で搬送不要だったケースの内訳をみると、到着後、患者側が搬送を断る「拒否」が半数以上の54・1%。単身高齢者がベッドから落ち、特にけがはなかったがあわてて電話してしまったり、第三者が気を回して通報し、結果的に不要だったケースなどがあったという。

救急隊の応急処置で済んだ「現場処置」(16・6%)、駆けつけたら負傷者がいない「傷病者なし」(7・6%)などが続いた。

1日に複数回呼んだり、病院の予約に合わせて呼んだりする「頻回利用者」(170人)の通報だけで、搬送不要は2166件にのぼった。1人で1日48回、年189回の救急要請を行ったケースもあった。

搬送に支障を来しかねない日もある。最高気温36・8度の猛暑日だった昨年8月10日、熱中症の症状を訴える119番が相次いだ。同市消防局は、要請があればすべて出動するため、この日の出動は過去最多の803件に。午後9時48分には、25消防署にある救急車計60台のうち、52台が出動中になった。50台以上の出動は例がなく、幹部らは「限界を超える」と身構えたという。

52台が担当したうち、入院の必要がないとされる「軽症」が33人、入院が必要な「中等症」が12人だったが、搬送不要も7人あった。

大阪府内全43市町村は、24時間体制で、医師や看護師が応対する電話窓口「救急安心センターおおさか」(携帯電話、プッシュ回線の固定電話で#7119)を設置。症状などを聞き取り、緊急性が高ければ救急車を呼び、それ以外は最寄りの病院などを紹介している。同市消防局は、パンフレットなどを作り、この窓口の利用を勧めている。

市消防局救急課の林田純人係長は「近くの病院を知りたい、などの場合は#7119をぜひ活用して」と話す。

適正利用 各地で呼びかけ…救急相談窓口設置など

救急出動は、国などが救急車の適正利用を呼びかけた2007〜08年に減少したが、再び増加。

総務省消防庁によると、病院に収容するまでにかかる時間は、02年の平均約29分から、12年には約39分に延びた。救命率の低下につながりかねないとして、同庁は正しい利用への協力を求めている。

東京消防庁や奈良県なども、急病時に救急車を呼ぶべきかどうかの相談を受ける窓口を設けた。横浜市は08年10月、要請すべてに出動するのではなく、119番の内容を聞き取り、緊急度や重症度によって出動するかを判断する仕組みを全国で初めて導入した。

国士舘大の島崎修次教授(救急医学)は「高齢者の単身、夫婦世帯や老々介護が増える中、頼れる若い家族がおらず、すぐ救急車を呼んでしまうケースが増えている。救急医療の受け入れ態勢が限られる中、重症患者を優先するため、相談電話の利用を促すなどの対策が必要だ」と指摘する。

■2014.1.31  「人権意識低かった」 千葉県議会常任委が現地調査 袖ケ浦の施設虐待
知的障害がある児童らが入所する袖ケ浦市蔵波の県立福祉施設「養育園」で昨年11月、入所者男性(19)が職員から暴行を受けてその後死亡した事件で、県議会健康福祉常任委員会が30日、同施設と関連する県立障害者支援施設「更生園」の現地調査を行った。両施設を運営する社会福祉法人「千葉県社会福祉事業団」の近藤敏旦理事長らへの聞き取りも行い、近藤理事長は虐待の原因について「職員に人権擁護の意識が低かった」と答えた。

調査には、中台良男委員長(自民党)ら委員10人全員が参加。職員による入所者への暴行や性的虐待などが次々判明した両施設を職員の案内で約1時間かけて視察した。

聞き取りには近藤理事長のほか、田村邦夫常務理事、養育園の武田逸朗前施設長らが出席。「職員同士の風通しが悪かったのでは」との委員の指摘に、武田前施設長は「それぞれの職員が自分たちで解決するという考えになっていた。組織で対応する意識がなかった」と述べた。

近藤理事長は指定管理者制度と一連の虐待との関連などを聞かれると、「専門的な支援を計画的に行うことが難しくなった。経費削減のため若い職員が多くなったのも事実」などと回答した。

中台委員長は調査を終え、「今後、施設運営の改善点をあぶり出していきたい。指定管理者になって経費と人員の削減が求められたことが運営に影響を与えたか探っていく」と話した。

   ◇    ◇

同事業団は30日、田村邦夫常務理事を解任したと発表した。また、養育園などを含む「県袖ケ浦福祉センター」の総括責任者であるセンター長から事務局参事に異動させた。

■2014.1.31  GH入居者から1千万円詐取 準詐欺容疑で「ふれあいの家 浜町」元管理者ら3名を逮捕 北九州市
福岡県警察本部若松警察署は27日、北九州市内の認知症高齢者用グループホーム「ふれあいの家 浜町」(同市若松区浜町2-7-6)に入所していた認知症男性利用者(83)から約1,000万円をだまし取ったとして、同グループホーム元施設長、松尾光信容疑者(48)=同市小倉北区高尾=を準詐欺の容疑で逮捕した。

このほか同時に逮捕されたのは、介護職員・矢野みゆき(52)=同市八幡西区藤原4=と介護職員・寺田香(30)=同区永犬丸2=の両容疑者。松尾容疑者ら3人の逮捕容疑は、同グループホームに勤務していた2010年8月18日、同市若松区内の郵便局に入居男性を連れて行き、男性の口座預金から現金1,000万円を引き出させ、その場でだまし取ったとされる。

なお若松署では今のところ、3人が容疑を認めているかどうか認否について明らかにしていない。

不正が発覚したのは2012年5月ごろ。グループホーム施設関係者から若松署に「経理に不審点がある」とする情報提供が寄せられ、関係者らに事情聴取など捜査を進める過程で明らかとなった。

同ホームを運営する協栄興産株式会社(彌登章社長、福岡市早良区百道3丁目13-30)は、すでに3人を懲戒解雇したうえ、運営資金を横領した疑いでも被害届も出している。3人はホームを辞めているが、矢野・寺田両容疑者については別の介護施設で働いているという。

県警では今後、ほかの利用者にも同様に詐欺した疑いもあるとして、詐欺・横領した金銭の使途や余罪について調べを進めていく方針だ。

 

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