残しておきたい福祉ニュース 1996〜社会福祉のニュース

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残しておきたい福祉ニュース

 2014年 
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

 2014.11. 1 歯科治療:幼児にイラスト説明 自閉症児の父、アプリ開発
 2014.11. 3 ヘルパーができる事・できない事の説明はどう対応する?
 2014.11. 4 ある日突然、いなくなる…行方不明の認知症高齢者「年間5000人」の衝撃  行方不明の認知症高齢者に衝撃 名前、住所を話せないなどの問題も
 2014.11. 4 介護保険16年目の大改革 追い詰められる高齢者たち
 2014.11. 4 介護保険適用で有料ホーム短期入所を拡大…政府
 2014.11. 5 働く「60歳以上」は約550万人に - 高齢者の雇用状況調査
 2014.11. 5 生活保護世帯数、過去最多を更新 47%が高齢者世帯
 2014.11. 5 教諭体罰で奈良市が賠償合意…発達障害の生徒へ
 2014.11. 7 コミュニケーションは欲求と動機から始まる
 2014.11. 9 障害者芸術が持つ力模索 京都・亀岡で合同展
 2014.11. 9 制度外ホームで「拘束介護」 都内の高齢者マンション 約130人、体固定や施錠
 2014.11.10 優れた技術・技能持つ障害者 県、マイスター4人認定
 2014.11.10 社会福祉法人のチェック機能強化へ、会計監査人設置を義務化
 2014.11.10 介護報酬引き下げ阻止に業界必死、労働組合が19万人分の署名
 2014.11.12 世界初 血液検査でアルツハイマー病の発症前検出に成功
 2014.11.12 社会福祉法人のチェック機能強化へ、会計監査人設置を義務化
 2014.11.12 「拘束介護」区の調査時に隠す? 高齢者マンション
 2014.11.13 施設職員ら、送迎福祉車両の安全使用法学ぶ
 2014.11.13 所在不明の子供、全国に141人 最多は「大阪」…虐待の恐れ4人も含む
 2014.11.14 急速に人材不足? 介護報酬値下げで高齢者施設がさらなる悪循環へ
 2014.11.14 国は潰したい?“現場は掃きだめ”の小規模デイサービス
 2014.11.14 デイサービスは報酬減へ、認知症介護やリハの充実は高く評価
 2014.11.14 事故の悲劇教訓に 視覚障害者への接客、栃木県タクシー協会が学ぶ
 2014.11.14 「拘束介護」で立ち入り監査 都、訪問介護事業所など
 2014.11.14 「拘束介護」マンション、都が「指導対象外」と判断
 2014.11.16 サービス付き高齢者住宅 400棟超の大阪、なぜ突出? 経済の地盤沈下、生活保護受給者狙いも
 2014.11.16 親の介護理由の転職者 正社員は3人に1人以下
 2014.11.17 退職後は障害と老齢どちらが有利
 2014.11.18 全国会社会福祉法人経営研究会  施設経営の実相 内部留保「3億円」一人歩き
 2014.11.18 身長2センチ縮むと……介護リスク、女性は2倍に
 2014.11.19 LITALICO、障がい者雇用実施の企業担当者に対する調査結果を発表
 2014.11.23 視覚障害の子、標本触り科学を体感 京都府立盲学校
 2014.11.24 拘束介護 悪質な施設、チェックの仕組みを=池田敏史子<シニアライフ情報センター代表理事> /東京
 2014.11.25 スプリンクラー設置は負担大 茅ケ崎の企業が簡易消火設備を開発中  モリタ宮田工業
 2014.11.25 障害者虐待2266人 死亡3例 厚労省調査
 2014.11.26 障害者虐待 “密室”施設内、難しい認定「埋もれてしまいがち」
 2014.11.26 被害訴えにくい障害者、職員・父親暴行で死亡も
 2014.11.26 障害者虐待 “密室”施設内、難しい認定「埋もれてしまいがち」
 2014.11.27 ヤマト福祉財団/小倉昌男賞に北海道と愛媛県の2人
 2014.11.28 昨年度の鳥取県内での障害者虐待15件
 2014.11.28 昨年度の山口県内での障害者虐待20件
 2014.11.28 昨年度の神奈川県内での障害者虐待156人 通報は779件
 2014.11.28 昨年度の福井県内での障害者虐待35人
 2014.11.28 昨年度の和歌山県内での障害者虐待15件
 2014.11.29 高齢者に多い肺炎 「誤嚥性」は歯磨きで予防を  のみ込む力鍛錬も有効


■2014.11.1  歯科治療:幼児にイラスト説明 自閉症児の父、アプリ開発
虫歯などの治療を前に、治療内容をイラストなどで幼児に説明して不安を和らげるアプリを、さいたま市のIT会社役員、金子訓隆(のりたか)さん(47)が開発している。自閉症の長男、真輝(まさき)君(8)が歯科の治療機器を怖がって苦労した経験を生かす。既に一部の病院で試験導入しており、14〜16日に仙台市で開催される日本障害者歯科学会で開発の取り組みが発表される。

開発中のアプリ「はっするでんたー」は、タブレット端末「iPad(アイパッド)」用。子供のイラストや写真で説明する。登録されたさまざまな治療シーンから、個別の治療に沿って「エプロンをつけます」「お水が口の中に入ります」などのシーンを選ぶと、その日の治療の流れが分かる。一部の大学病院の外来などで試作機が試験稼働している。発売は来春を目指す。

開発の原点は、真輝君が5歳の時、虫歯治療に連れて行った際の経験だ。自閉症など発達障害のある子供は刺激が苦手で、音に敏感なことも珍しくない。多くの機器や鋭い治療音で真輝君はパニックに。危険防止の専用ネットで体を巻かれ、口を開ける器具を入れられた。真輝君は大泣きし、吐いた物が喉に入って呼吸困難を起こした。

金子さんは、真輝君が安全に治療を受けられる方法を求め、日本大松戸歯学部付属病院の取り組みを知った。手製の絵カードで診療内容を子供に説明していた。真輝君は納得して治療を受けられた。「自分がソフトを作れば、音や動画も入れられ、もっと多くの歯科で使える」。そう考え、国の障害者自立支援に関する補助金を獲得し、専門医の助言を仰いで一昨年、医療用試作機が完成。関係学会で紹介すると、国外の医師や障害と直接関係ない小児歯科からも反響があったという。

金子さんは発達障害児の父親で作るNPO法人「おやじりんく」の代表も務めており、「障害のある人への支援ツールは、健常者にも役立つ。幅広く利用してほしい」と話している。問い合わせはマイクロブレイン社

■2014.11.3  ヘルパーができる事・できない事の説明はどう対応する?
訪問介護の現場では、ヘルパーに任せきりにしていていると、管理者の知らないうちに不適正なサービス(ヘルパーが出来ない事)が行われ、結果として不正請求につながってしまう可能性がある。明るみに出にくい不適正事例を、どのように把握し対応していけば良いか、考えていきたい。

理解不足の現場では、不適切な対応が起きている!?

ヘルパーのサービス中にサービス提供責任者が訪問した際、不適切な対応を目の当たりにした。

ヘルパーは生活援助をしているが、ご本人の姿が見当たらない……。ヘルパーに尋ねると、「近くのコンビニにちょっと出かけられました。すぐ戻られると思います」との返答。サービス提供責任者は、その場で、ご本人が不在の状況ではサービスが実施できない事をヘルパーに指導した。間もなくご本人が帰宅され、「急な用事ができてすぐに出かけるから、終わったら鍵を閉めずに帰っておいてください」と……。サービス提供責任者はご本人にも説明したうえで、サービスを予定より時間短縮し、ご本人滞在時間のみを提供時間とした。

ヘルパーは入社1ヵ月で、入社時に研修をしていたが、利用者が不在時の対応については十分な説明ができていなかった。利用者も訪問介護を利用されたばかりで、介護保険制度で出来ない事をまだ理解されていなかった。利用者の中には、ヘルパーの事を、要望通りに対応してくれる家政婦のように思っている方も少なくない。

今回のように、「ヘルパーの出来ない事」を理解されていないと、サービス提供責任者の知らないうちに不適切な対応が行われる事になり、トラブルにもなりかねない。



できない事に対しての代替え案を相談する事が大切

介護保険制度では、ヘルパーが対応できる内容は日常生活を営むのに必要な援助とされ、「できる事」と「できない事」が決められている。「大掃除や、医療行為はヘルパーではできない」という話については、ある程度の理解はあるが、生活の中での細かな内容となると、その時々にならないと理解されにくい部分もある。


ヘルパーができる事 ヘルパーができない事

○ パウチに溜まった排泄物の処理
× 肌に接着したパウチの取り替え
○ 一回分が取り分けてある内服薬の介助
× 一回分の薬の取り分けや処方された薬の仕分け
○ 服薬を見守る
× 口を開けさせて薬を飲ませる
○ 受診の手続き代行、病院での支払い薬を受け取りに行く
× 本人の代わりに医師に説明し・説明を受ける
○ 本人の分の日常的な買い物の代行
× お歳暮など本人以外の分以外の買い物
○ 買い物などの日常的な外出の付き添い
× 酒、タバコなどの嗜好品の買い物
× 非日常的な買い物(デパート等)への付き添い
× 目的がはっきりしない外出の付き添い(気分転換の散歩など)

○ 利用者分の日常的な調理
× 利用者以外の分の調理
○ 本人が過ごす場所の掃除
× 本人が使わない部屋、ベランダ等室外の掃除
○ 金融機関や役所への付き添い
× 金融機関や役所での手続き代行
× 生活費などの金銭管理、財産管理

○ 介護技術や介護に関する相談
× 茶飲み話だけが目的の話相手
× 金銭や物の授受、利用者の入院先への見舞い


「処方された薬の仕分け」については、ヘルパーが万が一薬を入れ間違って問題が起きると責任を負えないため、ご家族や訪問看護師、居宅療養管理指導(薬剤師の訪問)での対応を相談する。又は、薬局で手数料がかかるが、複数の病院の薬を一包化(一袋にまとめる)ことも可能。ご本人が仕分けする場合はヘルパーが一緒に確認・声かけするのは可能である。

「本人が使用しない家族の部屋」については、高齢者夫婦であっても、同居家族の部屋は対象とならない。同居家族に疾病や障害などの理由がある場合は、ケアプランに位置づけて対応する事も可能。

「ベランダや玄関外の掃除」については、まずは、ご家族で対応頂けるかを相談。どうしても必要であれば、シルバー人材サービスでの対応を勧める事や、保険適用外サービス(自費サービス)として対応する事も可能(保険適用外サービス1,500〜3,000円/1時間と事業所によって値段はさまざま)。

「酒、タバコの買い物」については、健康悪化をもたらす要因を含む品である為、健康の維持向上を支援するヘルパーが購入するというのは、ケアプランに位置づけられない。代替え案として、酒屋やスーパーなどの配達サービスを活用してもらうのも一つだ。

大切なのは、要望があった利用者に対して、「ヘルパーは出来ませんとただ頑なに断るのではなく、どうすればその要望・困り事が解決するかを提案し、利用者に理解してもらうという事だ。

利用者への説明と状況把握がトラブル予防の鍵

この「できる」「できない」の線引きを上手く行えていないと、「あのヘルパーはしてくれたのに」とか「前の会社のヘルパーは何でもしてくれた」などと、利用者の不満になり、介護保険制度を遵守しない事業所となってしまう。では、トラブルを防ぐにはどのようにすればよいのだろうか?

一つは、サービス開始時に重要事項説明書等で、出来ない内容について説明し、利用者の生活の様子から、起こり得る事について注意を促す。

二つ目は、ヘルパーに十分な研修・指導を行い「できない内容」について細かく伝えておく。サービス時にいつもと違う要望があったときは、「これぐらいなら対応しても大丈夫かな」と勝手に判断せずに、サービス提供責任者の指示を仰ぐ事が必要である。

三つ目は、サービス提供責任者が自ら訪問し、利用者の生活状況に変化がないか把握し、また、ヘルパーが適切に対応できているかを実際に見聞きする事が重要だ。

内容によっては、ケアマネジャーに相談し、訪問介護以外の方法も検討する。

このように、「適正なサービス」としてきちんと見直す事により、利用者の本当に必要なサービスを提供し、追加の希望については段取りを踏んで対応する事でトラブルが防げると考える。

事業所の中には、「規模が小さな会社だから、多少融通をきいても大丈夫」と、誤った解釈をするサービス提供責任者・ヘルパーもいるようだが、介護保険制度のヘルパー事業所なのだから対応の差があってはならない。

各訪問介護事業所の「線引き」作業の積み重ねが、膨張する介護給付費の削減にもつながるのだ。

■2014.11.4  ある日突然、いなくなる…行方不明の認知症高齢者「年間5000人」の衝撃  行方不明の認知症高齢者に衝撃 名前、住所を話せないなどの問題も
ある日突然、家族がいなくなる−。

厚生労働省によると、平成25年度の1年間で行方不明になった認知症の高齢者は5201人。遺体で見つかったり、行方知れずのままだったりする人も少なくない。「なぜ出て行ったのか」「止める方法はなかったのか」。残された家族は自責の念にさいなまれる。大阪府警は9月、身元が分からないまま施設などで保護されている人の顔写真や特徴を記した台帳を作成し、府内全65署で閲覧できる取り組みを始めた。認知症高齢者らを念頭に、少しでも家族とのマッチングを図る狙いがある。関係機関の対策はようやく動き出した。

■風呂上がりに突然…

「車でも使って、もう少し追いかけていれば…」。大阪府岸和田市の田中八重さん(74)は、後悔を募らせる。

夫の孝明さん(77)は昨年1月25日夜、風呂上がりに突然、自転車に乗って出かけていった。少し追いかけたが、見失った。雪の舞う寒い日なのにパジャマ姿にサンダル。所持金もなく、常時身につけていたGPS付きの携帯電話は置いていったまま。警察に行方不明者届を出したが、今も行方知れずのままだ。

唯一明らかになった足取りは、6日後の同月31日、自宅から約1キロ離れた病院周辺に立ち寄っていたこと。知人女性がベンチに座る姿を目撃し、声を掛けると「犬がおらんようになった」と話したという。

2カ月後には、乗っていた自転車が貝塚市内の社会福祉法人の敷地で発見される。大阪府警も警察犬を出動させたが、手がかりは見つからなかった。

八重さんらは情報提供を呼びかけるチラシ数百枚を作り、岸和田市内各地に掲示。近隣の自治体や病院、介護施設に電話で問い合わせたものの、個人情報保護を理由に照会を断られた。

孝明さんは平成17年にアルツハイマー型認知症の診断を受けた。これまでも10回程度行方不明になったが、いずれも翌日までに無事に発見された。「すぐ見つかるという安易な気持ちがあった。行方不明にも慣れが生じていた」と八重さん。自転車にまたがったあの日の夫の後ろ姿が頭を離れない。

■名前、住所を話せない

行方不明になる認知症高齢者の存在は今年、クローズアップされた。「認知症患者の行方不明者が年間1万人」との報道が火付け役だ。警察や自治体の連携不足から保護されて数年も身元不明のままだったのが、報道をきっかけに家族と再会できた、という例が相次いだ。

兵庫県尼崎市では平成24年3月8日、帰宅途中に70代男性が行方不明になり、妻が同日中に県警の警察署に行方不明届を提出した。その際、家族は男性の服装や住所、氏名を警察に説明。顔写真は直近の写真がなかったため、20〜30年前のものを添付した。

3日後、男性は自宅から数キロ離れた大阪市内で保護された。重い認知症で氏名や住所を話せなかったため、大阪府警は保護当時の顔写真や着衣を基に全国の警察に照会した。だが、兵庫県警は県内48署の行方不明者届と照らし合わせたものの、同一人物と気づかなかったという。

しかし、約2年後の今年4月中旬、身元不明のまま施設で暮らしている男性がいるとの報道があり、知人から連絡を受けた家族が男性との対面を果たした。

一方、群馬県館林市の事例では、19年に保護された東京都内の60代女性について、群馬県警が全国の警察への照会書を作成する際、女性の衣類にあった名前を誤表記したこともあり、不明から7年もの間、家族と再会を果たせなかった。

■身元不明で30年以上保護の事例も

こうした状況に危機感を募らせた厚労省は今年6月、全国約1700の市区町村を対象にアンケートを実施。認知症が原因で徘徊(はいかい)するなどし、身元が分からないまま病院や施設などに保護されている人や行方不明者の状況を調べた。その結果が平成25年度の行方不明者が5201人という数字だった。

大半は同年度中に家族のもとや施設に戻ることができたが、383人は遺体で見つかった。行方が分からないままの人も132人いた。身元不明のまま保護されているのは今年5月末時点で35人。期間が10年以上になる人も6人おり、最長は30年以上になるという。「推定年齢」は70代が18人で、80代以上が10人だ。

■安心して徘徊できる町

関係機関は対策を加速させている。

大阪府内の各自治体から提供を受けた情報を基に台帳を作成する府警の「身元不明迷い人台帳」は全国初の試み。自治体が保有する身元不明者データを府警各署が共有し、身元確認を効果的に進める狙いがある。

「安心して徘徊できる町」を掲げ、平成16年から市民が見守る模擬訓練を実施しているのは福岡県大牟田市だ。

認知症の人が行方不明になった際には、家族などからの連絡を受けた警察や市役所が町内会や郵便局、市民らに一斉にメールを流し、町ぐるみでの捜索態勢を敷く。実際にメールを通じて捜索が行われるのは年20〜30件。大半が24時間以内に見つかり、鉄道事故や交通事故での死者はいないという。こうした手法は「大牟田方式」と呼ばれ、全国各地に拡大。100以上の自治体が模擬訓練を実施したという。

堺市は9月から、不明者の早期発見を目的に、行方不明になった際に写真や身体的特徴を記したメールを警察や消防に送信する「さかい見守りメール」を始めている。

公益社団法人「認知症の人と家族の会」(京都市)の小川正事務局長によると、これまでの行方不明者対策は「多くの自治体が個人情報に気をつかい、顔写真の公開などに積極的でない」という。

関係機関にはさらなる施策の充実が求められる。

■2014.11.4  介護保険16年目の大改革 追い詰められる高齢者たち
介護給付の拡大が止まらない。今や10兆円に達し、2025年度には21兆円まで拡大する見通しだ。このままでは制度の維持が困難とみた国は、スタートから16年目の来年、介護保険制度の大改革に乗り出す。中でも高齢者の負担が増えるという意味でインパクトは大きい。その中身を詳細に見ていくことにする。そのため、制度の維持を目的に制度改革が行われようとしている。



来年から介護サービスの自己負担が1割から2割に

都内のマンションで一人暮らしをしている末吉倫太郎さん(仮名)は今年88歳。一昨年、重い荷物を持とうとして腰を痛めてからというもの急に体調が悪化、最近になって介護認定を受け、訪問介護サービスを利用している。

そんな末吉さんは、先日、ケアマネジャーの言葉にあぜんとした。

「来年から介護サービスの自己負担が1割から2割になるらしいですよ」

月々の収入は年金などで26万円。そこから食費や光熱費などを支払った上で、ホームヘルパーの費用など介護サービスを利用する際の自己負担分を支払うと余裕はない。

「2割というかもしれないが、負担は2倍になる。受けているサービスを減らすしかないかなぁ」

末吉さんの表情は、それ以降曇ったままだ。

介護が必要な末吉さんにさらなる心痛を与えた原因は、6月18日に成立した「地域医療・介護総合確保推進法」だ。

この法律は、2000年に創設された介護保険制度を見直すもの。高齢化が一段と進み、介護保険の利用者が増える中でも制度を維持できるような仕組みを整えようという狙いがある。

少々、理屈っぽくなって恐縮だが、概要を説明しよう。ポイントは大きく2つある。

まず1つ目は、介護サービスを受ける際の「自己負担割合」だ。

これまで自己負担割合は、原則として1割だった。それを、15年8月から一定以上の所得のある人は2割に引き上げる。

対象となるのは、単身で年間の年金収入が280万円以上の人、夫婦であれば346万円以上の場合。これは所得水準で見た上位20%に相当する。

また2割負担になるかの判断は、世帯単位ではなく、個人単位で判断される点もこれまでと異なる。

分かりやすい例を挙げると、夫の年金が300万円で妻が60万円であれば夫は2割で妻は1割。夫婦の年金が共に180万円だった場合は、個人で280万円に達しないので2人とも1割負担となるわけだ。




低所得者に対する居住費や食費の補助の見直しも

2つ目のポイントは、低所得者に対する居住費や食費の補助を見直すというものだ。

特別養護老人ホーム(特養)などで居住費や食費は自己負担が原則。ただ、住民税を支払わなくてもいいような低所得者には、費用の一部を補助していた。それが今回、預貯金や有価証券を単身で1000万円以上持っている場合には、補助が打ち切られる。

こうした改革のベースには、介護保険制度の基本路線の大転換がある。これまでは「受けたサービスに応じた負担(応益負担)」の考え方に基づいていた。それを、相対的に負担能力の高い人に負担させる「応能負担」の考え方を一部に導入したというわけだ。

その結果どうなるか、以下の図表1-1に具体的な自己負担額の代表的な事例をまとめてみた。現役世代にしてみれば、大した額ではないかもしれない。だが、年金に頼っている高齢者にとっては、負担がずしりとのしかかる。



要介護3未満の希望者18万人は特別養護老人ホームに入れない

スタートから16年目にして大改革が行われる介護保険制度。その背景には、制度の維持が困難になってきたことがある。

上の図表1−2をご覧いただきたい。これは介護給付(総費用)と介護報酬の改定率、そして介護保険料(全国平均)の推移を、制度がスタートした2000年度から並べたものだ。

当初こそ、総費用は3.6兆円だったものの、毎年のように増え続け、14年度はついに10兆円に達している。この間、保険料も上がり続け、今では全国平均で5000円近くにまで上がっている。

これだけでもすごい金額なのだが、さらに驚くべきは、いわゆる「団塊世代」が全て75歳以上になる25年度の姿だ。

総費用は21兆円程度にまで増える見込みで、それを支えるために保険料も8200円程度まで上昇するとみられているのだ。

こうした将来が待ち受ける中、高齢者はさらに追い詰められる。

「一人暮らしは不安。特養に入りたいのだが」

都内で一人暮らしをしている72歳の田中ツネさん(仮名)は、膝を壊し、最近転んで腰も悪くした。つえなくしては歩くことができず要介護2と判断された。訪問介護サービスを受けているが、認知症とおぼしき症状も出始めており、不安な日々を過ごす。

そのため田中さんは、特養への入所を希望しているが、15年3月までに決まらなければそれ以降は入所が難しくなる。というのも、特養への新規入居が「要介護3」以上に限定されることになったからだ。

厚生労働省の調査によると、14年3月時点で特養の待機者は52万4000人。このうち、入居対象から外される「要介護1〜2」の人は全体の34.1%に当たる17万8000人に上る。

こうした介護難民の大量発生が見込まれる中で、受け入れ側の特養をはじめとする高齢者介護施設には、“もうけ過ぎ批判”が集まっている。

介護費用を削減するどころか、過剰なサービスを高齢者に施し、介護報酬を目いっぱい得た上にため込んでいる施設が少なからず存在するためだ。

朝から晩まで汗水流し、現場を支えているホームヘルパーや施設職員の待遇は一向に改善しないにもかかわらずだ。

もちろん全ての施設がそうだと言うつもりはないが、事態は深刻で、国も対策に乗り出す構え。10月8日、財務相の諮問機関である財政制度等審議会が、介護報酬を6%程度引き下げるよう厚生労働省に求めたのだ。


高齢者というカネのなる木に群がりおいしい思いをする人たちが跋扈

■2014.11.4  介護保険適用で有料ホーム短期入所を拡大…政府
政府は、老人ホームの規制を緩和し、手頃な料金で利用できる介護保険を使った短期入所(ショートステイ)を増やす方針だ。介護保険外でも割安な「お泊まりデイ」と呼ばれる一時宿泊サービスが急増し、不透明な運用が問題視されているためだ。政府はお泊まりデイへの規制を強化する一方で、短期入所の拡大で高齢者の受け入れ態勢の改善を目指す。

規制緩和の対象は、「介護付き有料老人ホーム」での短期入所。全国有料老人ホーム協会の調査(2013年7月)によると、介護付き有料老人ホームは全国に3308施設あり、老人ホーム全体の利用者の58・6%にあたる20万3914人が利用している。

現在は、〈1〉開設から3年以上が経過
〈2〉定員の80%以上の入居者がいる
〈3〉ショートステイの利用者が全体の定員の10%以内――などの条件を満たした施設しか、介護保険を使った短期入所が認められていない。高齢者が暮らすことが前提の老人ホームには、「短期入所は施設の本来の趣旨と異なる」との考えがあるためだ。

厳しい規制の影響で、介護保険での短期入所は全国で月数百人程度にとどまる。政府は「80%以上の入居者がいる」との条件は廃止し、空き部屋の多い施設で積極的に短期入所を受け入れる方向だ。また、事業者が他の施設で3年以上の運営実績があれば、対象施設が開設3年未満でも認めることも検討する。介護保険が適用されれば、経済的な理由で料金が安いお泊まりデイを使っていた高齢者らが、老人ホームを利用しやすくなる。

一方、政府は、お泊まりデイについて、都道府県への届け出を義務付けることを決めている。お泊まりデイの定員や連泊の限度数などを定めた運用指針も作成する考えだ。

■2014.11.5  働く「60歳以上」は約550万人に - 高齢者の雇用状況調査
厚生労働省は31日、6月1日時点の高齢者の雇用実態報告をまとめた「平成26年『高年齢者の雇用状況』」の集計結果を発表した。集計対象は全国の「常時雇用する労働者が31人以上」の企業14万5,902社、内訳は31人〜300人規模の中小企業が13万812社、301人以上規模の大企業が1万5,090社。

雇用確保措置実施済み企業はほぼ100%に

厚生労働省は、65歳までの安定雇用の確保を目的とした「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」に基づき、企業に「定年制の廃止」「定年の引き上げ」「継続雇用制度の導入」のいずれかの措置(「高年齢者雇用確保措置」、以下「雇用確保措置」と略)を講じ、その実施状況を報告するよう義務付けている。

6月1日時点での「雇用確保措置」実施済み企業の割合は98.1%で、未実施企業の割合は1.9%(2,723社)にまで下がっている。

措置の内訳は「継続雇用制度の導入」が81.7%で最多、「定年の引き上げ」は15.6%、「定年制の廃止」は2.7%にとどまった。

高齢者の雇用でも65歳と70歳では大きな差

「希望者全員が65歳以上まで働ける企業」は全体の71.0%に当たる10万3,586社(対前年差8,505社増)であった。企業規模別に見ると、中小企業は73.2%(9万5,755社/前年比7,927社増)であったのに対し、大企業では51.9%(7,831社/同578社増)であった。

同じ高年齢者雇用でも、「70歳以上まで働ける企業」となると、全体の19.0%に当たる2万7,740社にまで減少する。企業規模別に見ると、中小企業は19.8%(2万5,960社/同1,595社増)、大企業は11.8%(1,780社/同152社増)であった。

高齢者労働者の雇用状況は?

平成25年6月1日から平成26年5月31日までの過去1年間の60歳定年企業における定年到達者34万4,500人のうち、「継続雇用された者」は28万424人(81.4%)であった。「継続雇用を希望しない定年退職者」は63,183人(18.3%)、「継続雇用を希望したが継続雇用されなかった者」は893人(0.3%)となった。

年齢階級別の常用労働者数について、「31人以上規模企業」における常用労働者数は約2,877万人。うち、「60歳以上の常用労働者数」は9.9%(287万人)を占めている。年齢階級別に見ると、「60〜64歳」が195万人、「65〜69歳」が70万人、「70歳以上」が21万人となっている。

「51人以上規模企業」における60歳以上の常用労働者数は約260万人で、雇用確保措置の義務化前(平成17年)と比較すると、約155万人増加してたことが明らかになった。

今後は「70歳まで働ける企業」の普及・啓発に取り組む

厚生労働省は今後、雇用確保措置の定着に向けた取組雇用確保措置を実施していない2,723社に対し、都道府県労働局、ハローワークによる個別指導を強力に実施し、早期解消を図るとしている。

また、少子・高齢化の進行、将来の労働力人口の低下、団塊世代の65歳への到達等を踏まえ、65歳までの雇用確保を基盤としつつ「70歳まで働ける企業」の普及・啓発等に取り組み、生涯現役社会の実現に向けて活動していくとのこと。

■2014.11.5  生活保護世帯数、過去最多を更新 47%が高齢者世帯
8月に生活保護を受けていた世帯は160万9830世帯で、前月より836世帯増えて過去最多を4カ月連続で更新した。一方、受給者数は前月より564人減り、216万3152人だった。厚生労働省が5日、速報値を公表した。

受給世帯の内訳(一時的な保護停止世帯を除く)をみると、高齢者世帯が75万7118世帯で最も多い。前月より1308世帯増え、全体の47%を占める。働ける世代を含む「その他世帯」は前月より1613世帯減り、28万981世帯だった。同省保護課は「現役世代は景気回復の影響で減少傾向にあるが、単身の高齢者世帯が増えている」とみている。

■2014.11.5  教諭体罰で奈良市が賠償合意…発達障害の生徒へ
奈良市立小学校で2010年、当時5年で特別支援学級に通っていた発達障害の男子生徒(15)が、担任だった元男性教諭(61)(定年退職)に暴行を受けた問題で、生徒側が市を相手取って奈良簡裁に申し立てた民事調停が近く成立することがわかった。市が50万円の損害賠償を支払うことなどで合意するという。市教委などによると、元教諭は10年5月、教室で物を投げた生徒を大声でどなり、両肩を押さえるなどしたという。奈良県警が昨年3月に元教諭を暴行容疑で書類送検し、翌4月、奈良地検が不起訴(起訴猶予)にした。

市教委は当初、体罰にあたらないとしたが、市の第三者委員会は体罰と認め、学校や市教委の対応を批判した。市教委は昨年12月に元教諭を文書訓告とした。

生徒の父親(55)によると、生徒は12年春から市立中学校の特別支援学級に在籍しているが、不登校になっており、昨年10月に生徒と両親が調停を申し立てた。調停で市は「生徒が社会で生きる基礎を培えるよう努める」などと約束し、今月11日に成立する見通し。生徒の父親は「不登校は学校への不信感から。調停成立を改善のきっかけにしたい」と話した。中室雄俊たけとし・市教育長は「具体的な内容は言えない」としている。

■2014.11.7  コミュニケーションは欲求と動機から始まる
「コミュニケーション」という言葉は、20世紀終末期から21世紀初頭にまたがる時期に人間関係のキーワードの一つとして取り上げられるようになったと言われます。その背景には、「人」より「物」に価値をおき、「多面性」より「画一的」を重視し、「共存」よりも「相手をねじ伏せる」ことを選択してきたという状況があり、それに対するしっぺ返しの諸現象について、この言葉を用いて理解しようとしたのです。また、当時、予想もしなかった情報通信の発展による諸現象についても、この言葉を使って説明しようとしています。

コミュニケーションの基礎

「われわれはなぜコミュニケーションをとるのか?」この問いに対して私たちはどのように答えるのでしょうか?

コミュニケーションは日常的に当たり前のように行われる行為であり、福祉の分野でもコミュニケーションの重要性は至るところで語られています。しかし、その意味や目的、そこから生み出される効果などを体系的に説明できるかというと少し戸惑ってしまいます。

ディムブレビィとバートン(コミュニケーション学者)は、人のコミュニケーション欲求という視点から8つの側面を取り上げました。


人のコミュニケーション―8つの欲求

1.生き残るため・・生きるための物理的欲求を得るために行われる
2.協同するため・・社会集団を形成したいという欲求が、生き残るために協同したいという欲求につながっている
3.個人的な欲求のため・・「安心」「満足」といった個人的な欲求を、他者とコミュニケーションをはかることで満たしていく
4.社会的な欲求のため・・「他者と関わりたい」という欲求を私たちはもっている
5.実用的な欲求のため・・我々は自分たちの社会を一緒に保守するために、実用的意図からコミュニケートすることを欲する
6.経済的な欲求のため・・実用的・社会的欲求は、経済的欲求でもある。これは生き残り欲求の一つの拡張形態でもある
7.情報への欲求のため・・情報を与えたり受け取ったりしたいためにコミュニケートする
8.演技への欲求のため・・我々は概念や物語を演じたい(自己表現)のでコミュニケートする


これら8つのコミュニケーション欲求は、人間心理学者のマズローの「欲求階層説(生理的欲求・安全の欲求・所属と愛情の欲求・承認と自尊の欲求・自己実現の欲求)」の基本的欲求を満たす手段としてコミュニケーションがあるという考え方にも通じると言われています。

確かに、1の「生き残るため」は、欲求階層説の「生理的欲求」にあたり、2の「協同するため」は「安全の欲求」を得るために必要であり、それを実現させるための手段としてコミュニケーションは欠かせない要素であるように、人間の欲求や課題の多くは、その人一人で解決できる問題ではなく、他者との関わりの中から生み出され解決されていくものなのかもしれません。


対人コミュニケーションにおける6つの動機

ルビンは、対人コミュニケーションには6つの動機があると言っています。

1.楽しみのため・・楽しさ、刺激を求めて、娯楽的意図から
2.愛情のため・・他者を援助したり、勇気づけたり、ケアしたり、心配したり
3.包含のため・・誰かと話がしたい、自分の問題を話したい、さみしさを紛らわせたい、感情を分かち合いたい
4.逃避のため・・他の活動を回避したい、やらねばならないことを引き延ばしたい、責任やプレッシャーから逃れたい
5.リラックスのため・・話すことでくつろいだり、リラックスできる、緊張がほぐれる
6.コントロールのため・・誰かが自分のために何かをしてくれる、他者に自分のすべきことを語る
このように、我々はさまざまな自己の欲求や動機からコミュニケーションをしているのです。

これをケアの場面に置き換えるならば、介護者は、利用者の欲求や動機を感じ取り、その内容に寄り添うことで、利用者は「話して良かった」「聴いてもらって良かった」と感じることにつながるのでしょう。



傾聴は聴くことだけにあらず、相手のこころを感じる

「コミュニケーション」を学ぶことは、「共感」や「傾聴」を学ぶことにもつながり、そして目の前にいる利用者から「理解しようとしてくれる人」と思ってもらえる介護者になることとつながると思います。

私たちは、その人の全てを理解することはできません。また、自分が「理解しようとしている」と思っているだけであってもいけないと思います。この「理解しようとしてくれる人」と思ってもらうことこそが、介護職である私たちの目ざすべきところではないでしょうか。

 私は相談援助をおこなう際に絶対にしない事として、5つのルールを自分に課しています。
1.相手の話を遮らない
2.相手の意見を否定しない
3.相手の話題を盗まない
4.アドバイスを容易にしない
5.似た状況下にある他の家族のケースを持ち出さない
これらは傾聴の基本的な姿勢とされていますが、果たして、私たち専門職はこの姿勢を守れているでしょうか。

これまでの経験から、目の前にある相談内容の先が読めることで、話の途中で意見や質問、アドバイスをしてしまうことはありませんか? 私たちにとっては初めてではないタイプの相談かもしれませんが、その相談者にとってはどうでしょう。本人にとってはそこで相談する内容は、初めての体験なのではないでしょうか。それに、その話自体、過去に受けた相談と本当に同じ内容かといえば、全く同じということはないでしょう。

また、「建前と本音」の文化が根付いている私たち日本人においては、相談内容の核心部分を最初から伝えてくる事は少なく、まずは核心の周辺から語っていく傾向にあります。そのため、周辺の話を聴いただけで、「こうすると良いですよ」と容易にアドナイスをすることは、核心にたどり着く前に相談者の話す意欲を奪う事にもつながりかねません。

今でも私の記憶に残っているある家族からのひと言があります。「話したくても誰も聴いてくれる人がいなかった」―。この言葉は、“相談できる人は一人もいなかった”という意味ではなく、“話した結果、自分の話したかったことが満たされず、不完全燃焼のような状態で会話が終わっていた”という意味でした。

私たち専門職にとって、自らの専門分野への知識・経験は欠かせない要素であることは間違いありませんが、それと同時に、相手の「想い」を知ろうとする傾聴の姿勢を欠いてしまってはいけないと、私は考えます。

私たちが持っている、専門職としての経験に基づいた先を読む能力が、時に「真実を知ること」を阻むこともあるという事実を、相談支援の担い手は忘れることなく、多くの方の相談に寄り添って聴いていただけたら幸いです。

■2014.11.9  障害者芸術が持つ力模索 京都・亀岡で合同展
全国各地の障害者施設が運営するアール・ブリュット美術館4館の初の合同企画展「TURN(ターン)/陸から海へ」が8日、京都府亀岡市北町のみずのき美術館で始まった。監修を務めた美術家の日比野克彦さんが作品を説明し、来場者が聞き入った。

芸術と福祉の関連を探る企画展として、日本財団(東京都)などが企画した。亀岡市での開催後、広島県福山市、福島県猪苗代町、高知市で順次開かれる。

会場には作家16人の計38作品を展示。障害者の絵画や映像のほか、日比野さんが亀岡市の知的障害者支援施設「みずのき」に短期滞在した際、施設利用者の印象を表現した抽象画や、劇作家野田秀樹さんがエッセーを朗読した音源と彫像を組み合わせるなど個性豊かな作品が並ぶ。

開幕イベントでは、日比野さんらが各作品について、企画展の副題「ひとがほんらいもっている力」を感じるポイントを解説した。

みずのき美術館TEL0771(20)1888では来年1月12日まで。午前10時〜午後6時。月、火曜休館(祝日を除く)。入館料200円。




日本財団は、アール・ブリュット美術館の「みずのき美術館」(京都府)、「鞆の津ミュージアム」(広島県)、「はじまりの美術館」(福島県)、「藁工ミュージアム」(高知県)と協力して、初の4館合同企画展を2014年11月以降、順次開催します。

本展を監修する日比野克彦氏は、「アール・ブリュットとは何か」を普遍的に問うため、「TURN(生まれつき持っている)」をテーマに掲げ、「陸から海へ」というイメージを加えました。これまで 「海から陸へ」と進化した私たちが「陸から海へ」“ターン"しようという提案です。

本展では、「TURN(生まれつき持っている)」をキーワードに、アール・ブリュット=障害者アートというこれまでの画一的な概念を超えることを狙いとしています。

キックオフ・イベント「東京フォーラム」では、日比野氏による本展への抱負、合同企画展の概要、日比野氏と4館のキュレーター、映画監督安藤桃子氏との対談など行います。



合同企画展「TURN(生まれつき持っている)- 陸から海へ」 会期

2014年11月8日(土)〜
2015年1月12日(月・祝) みずのき美術館
(京都府亀岡市北町18)

2015年1月31日(土)〜
2015年3月29日(日) 鞆の津ミュージアム
(広島県福山市鞆町鞆271-1)

2015年4月18日(土)〜
2015年6月28日(日) はじまりの美術館
(福島県耶麻郡猪苗代町字新町4873)

2015年7月18日(土)〜
2015年9月23日(水・祝) 藁工ミュージアム
(高知県高知市南金田28藁工倉庫)

■2014.11.9  制度外ホームで「拘束介護」 都内の高齢者マンション 約130人、体固定や施錠
体の弱ったお年寄りが暮らせる住まいが圧倒的に不足しており、制度も追いついていない。特別養護老人ホームへの入居待ちは、全国で50万人を超える。行き場のない高齢者が制度外のホームに流れている。その一つで、徘徊(はいかい)や事故を防ぐためだとして、約130人の入居者がベッドに体を固定されるなどの「拘束」状態にあった。こうしたホームは行政の目が行き届かず、高齢者の尊厳が侵される恐れがある。


東京都北区に、家賃、介護費、医療費、食費などを含めて月約15万円で生活できるという「シニアマンション」3棟がある。敷金や入居一時金もいらない。有料老人ホームとして自治体に届け出ていない制度外のホームだ。マンション業者は医療法人と提携し、入居するには原則的に医療法人の審査が必要だ。ヘルパーは、医療法人運営の訪問介護事業所から派遣される。

ヘルパーら複数の医療法人関係者の証言と、拘束された入居者の写真や映像によると、8月末の3棟はほぼ満室で、入居者約160人のほとんどが要介護度5か4の体が不自由な高齢者だった。

多くの居室は4畳半程度で、ベッドが大半を占める。ほかに丸イス1脚と収納ボックスくらいしかない。ベッドは高さ30センチほどの柵で囲われ、下りられないようになっている。入居者によっては腹部に太いベルトが巻かれたり、ミトン型の手袋をはめられたりして、ベッドの柵に胴体や手首が固定されている。居室のドアは、廊下側から鍵をかけられる。「24時間ドアロック」と大きく書かれた紙などを張り、ヘルパーたちにドアの施錠を確認させている。

これらの行為について厚生労働省は「身体拘束」にあたるとして原則禁止している。例外的に許される場合もあるが「一晩中の拘束などは認められないし、24時間はなおさらだ」(同省高齢者支援課)としている。写真や映像、内部資料を朝日新聞が確認したところ、8月末時点で約130人でこうした「拘束」が確認できた。

入居者への介護は最大限でも1回30分または1時間で、1日3〜4回。これだけにとどまるのは、自宅にいる高齢者が受ける介護保険制度の「訪問介護」のためだ。要介護度が重い入居者でも、訪問介護以外の時間は原則的に対応しておらず、「拘束」状態が続く。

あるヘルパーは「かわいそうだけど、転倒事故が起きるかもしれない。徘徊などを防ぐために拘束せざるを得ない」と話す。




<高齢者への身体拘束> 厚労省の「身体拘束ゼロへの手引き」が示す例では(1)自分で開けられない部屋に隔離する(2)ベッドに体や手足を縛り付ける(3)ベッドを柵で囲む(4)指の動きを制限するミトン(手袋)をつける(5)自分で脱ぎ着できない「つなぎ服」を着せるなどの行為で、これらは高齢者虐待防止法に抵触する。

やむを得ず拘束するにしても、本人などの生命や身体が危険にさらされる「切迫性」、他の手段がない「非代替性」、最小限の時間にとどめる「一時性」という3要件をすべて満たす場合に限るとの考え方を示し、解除に向けて常に再検討するように求めている。

■2014.11.10  優れた技術・技能持つ障害者 県、マイスター4人認定
徳島県は、優れた技術や技能を持つ県内の障害者4人を本年度創設した「県障がい者マイスター」に認定した。障害者が作る製品の付加価値を高めるとともに、さらなる意欲向上や社会参加を進めるのが狙いで、県のホームページや広報紙でPRする。飯泉嘉門知事が10日の定例会見で発表した。

マイスターに認定されたのは、徳島市の社会就労センターかもなに勤める大林幸司さん(42)▽北島町の森正工芸で仏壇部品加工に取り組む長井義人さん(56)▽徳島市の姫野組で建築図面などを担う平井和貴子さん(31)▽鳴門市のグッドジョブセンターかのんでワイヤアートを手掛ける河野和真さん(24)。

大林さんは、書や絵画を紙、布などで裏打ちし、装飾を施して掛け軸や額に仕立てる仕事に従事。長井さんは仏壇作りのほとんどの工程を習得し、細かな部分まで正確に作り上げる腕前を持つ。平井さんは建築士の資格を持ち、障害者や高齢者に配慮したユニバーサルな視点による建築設計を行っている。河野さんは直感によるデザインを基に精巧なワイヤアート作品を制作している。

会見で知事は「障害を克服し、優れた技術、技能を習得されており、心から敬意を表したい」と語った。

自薦、他薦で25人の応募があり、10月末に有識者ら6人による認定委員会を開いて、独創性や正確性、技術習得までの努力や工夫といった観点から4人を選んだ。

12月14日に徳島市の県立障がい者交流プラザで開かれる「障がい者のつどい県民大会」でマイスター認定の表彰を行う。

■2014.11.10  社会福祉法人のチェック機能強化へ、会計監査人設置を義務化
厚生労働省は10日、社会福祉法人の改革を議論している審議会(社会保障審議会・福祉部会)の会合で、一定規模以上の法人に「会計監査人」の設置を義務付けることを提案した。運営状況のチェック機能を強化するためで、来年の通常国会に提出する法案に盛り込む方針だ。

会合では目立った異論も出ず、大筋で合意が得られた。設置を義務付ける法人の規模などについては、これから年末に向けてさらに協議を重ねる。

社会福祉法人にはこれまで、自治体による定期的な「指導監査」などが実施されてきた。ただし、専門的な見地からのチェックが十分に機能しておらず、不適切な支出や会計処理を招いてきたと指摘されている。

厚労省は今回の改革で、一定規模以上の社会福祉法人に「会計監査人」の設置を義務付けることで、運営の健全性を外部から監督する体制を強化したい考えだ。

■2014.11.10  介護報酬引き下げ阻止に業界必死、労働組合が19万人分の署名
国内最大の介護職員の労働組合「日本介護クラフトユニオン」は10日、来年度から介護報酬を引き上げるよう求める19万924筆の署名を、塩崎恭久厚生労働相に提出した。

来年度の介護報酬改定に向けては、老健施設の経営者でつくる「全国老人保健施設協会」などの団体も、同様の署名活動を展開して協力を呼びかけている。政府内で大幅な引き下げを求める声が強まるなか、業界はなんとか実現を阻止しようと必死だ。

介護報酬改定は、来年度予算の編成をめぐる議論の焦点の1つ。財政再建のために歳出を減らしたい財務省は、「経営実態調査」で多くのサービスが黒字になっていたことや、社会福祉法人が内部留保を抱えていることなどを根拠に、6%のカットを断行するよう政府に進言した。このほか、「経済財政諮問会議」でも大胆な引き下げを支持する声が上がっており、介護関係者の危機感はこれまで以上に強まっている。

■2014.11.12  世界初 血液検査でアルツハイマー病の発症前検出に成功
血液バイオマーカーを発見
国立長寿医療研究センターは、11月11日、アルツハイマー病変の発症前検出に有用と考えられる血液バイオマーカーを、最先端研究開発支援(FIRST)プログラムで開発された質量分析システムを用いて発見したことを発表した。

なお、この研究成果は、日本学士院発行の英文学術誌のオンライン版でも公開されている。

研究成果
現在、アルツハイマー病に特異的な脳内病変は、脳脊髄液検査やPETを用いたアミロイド・イメージングによって検出が可能だ。しかし、前者は身体に刺激が強く、後者は大型の設備が必要になるなどのデメリットがある。

同センターは、今回、世界で初めて、アルツハイマー病に伴う脳内変化を、臨床症状出現前に、侵襲度の低い血液検査で捉えること成功。

この研究成果は、アルツハイマー病の根治薬や発症予防薬(先制治療薬)の開発に大きく前進したと位置づけられる。


さらに有用性を確認
高齢社会に伴い、アルツハイマー病の罹患者数は増加中。早期に病変を検出し、発症予防につなげる、安全で容易な手段が求められている。

同センターでは今後、さらに多くの検体を対象に、他機関とも連携し、血液バイオマーカーの臨床的有用性を確認していく方針だ。

http://www.ncgg.go.jp/pdf/sonota/press20141111.pdf


2014年11月11日
(独)国立長寿医療研究センター

アルツハイマー病変の発症前検出に有用と考えられる血液バイオマーカーを質量分析システムを用いて発見

(独)国立長寿医療研究センター(総長 鳥羽研二)は、アルツハイマー病変の発症前検出に有用と考えられる血液バイオマーカーを、最先端研究開発支援(FIRST)プログラムで開発された質量分析システムを用いて発見しました。

アルツハイマー病の罹患者数は増加の一途を辿っており、早期に病変を検出し、発症予防につなげる安全で簡便な手法の確立が喫緊の課題となっています。現在、アルツハイマー病に特異的な脳内病変は、脳脊髄液検査やPETを用いたアミロイド・イメージングによって検出が可能ですが、前者は侵襲性が高く、後者は大型の設備を要し検査費用も高額です。

本発見は、アルツハイマー病に伴う脳内変化を、臨床症状出現前に、侵襲度の低い血液検査で捉えることに世界で初めて成功したものであり、アルツハイマー病の根治薬や発症予防薬(先制治療薬)の開発に大きく貢献するものと期待されます。今後、さらに多くの検体を対象に、他機関とも共同研究を行い、本バイオマーカーの臨床的有用性を確認して参ります。

これまでに行われた臨床研究にご協力下さった多くの患者様、地域高齢者の皆様、またそのご家族の皆様に、あらためて感謝を申し上げます。

本研究成果は2014年11月11日に日本学士院発行の英文学術誌「Proceedings of Japan Academy, Series B (PJAB)」のオンライン版で公開されました。

〈お問い合わせ先〉
伊藤 静孝 (独)国立長寿医療研究センター 総務課 総務係長
〒474−8511 愛知県大府市森岡町7-430

■2014.11.12  社会福祉法人のチェック機能強化へ、会計監査人設置を義務化
厚生労働省は10日、社会福祉法人の改革を議論している審議会(社会保障審議会・福祉部会)の会合で、一定規模以上の法人に「会計監査人」の設置を義務付けることを提案した。運営状況のチェック機能を強化するためで、来年の通常国会に提出する法案に盛り込む方針だ。

会合では目立った異論も出ず、大筋で合意が得られた。設置を義務付ける法人の規模などについては、これから年末に向けてさらに協議を重ねる。

社会福祉法人にはこれまで、自治体による定期的な「指導監査」などが実施されてきた。ただし、専門的な見地からのチェックが十分に機能しておらず、不適切な支出や会計処理を招いてきたと指摘されている。

厚労省は今回の改革で、一定規模以上の社会福祉法人に「会計監査人」の設置を義務付けることで、運営の健全性を外部から監督する体制を強化したい考えだ。

■2014.11.12  「拘束介護」区の調査時に隠す? 高齢者マンション
入居者の大半が「拘束介護」されていた東京都北区の高齢者用の「シニアマンション」で、居住者の要介護度認定で北区が調査に入る際に、一時的に拘束を外す運用になっていたことがわかった。拘束が行政に知られないようにするためだったとみられる。東京都は11日、このマンションに立ち入るなどの本格調査に入った。

介護保険サービスの利用者は、自治体の要介護度認定を受ける必要がある。そのために原則的に半年から1年に1回、自治体の調査があり、自治体職員やその委託調査員が自宅を訪れる。訪問前に本人や家族、ヘルパーに連絡がある。

「シニアマンション」では原則、そこにヘルパーを派遣している訪問介護事業所の責任者に認定調査の事前連絡が北区から入るようになっていた。内部資料などによると、北区からの連絡が責任者に伝わると「認定調査チェックカード」が作成される。それに基づいて調査前に拘束が確実に解除されたかどうかを確認していた。少なくとも6年前からこうした運用になっていたという。

カードには入居者名、介護認定調査の日時、調査員の名前が書かれている。「チェック表」には「転落防止帯等の抑制はあるか」と、拘束の有無を確認する項目がある。拘束があれば「外す物」の欄に「ドアロック」「手首ベルト」などの拘束具が記されている。

複数のヘルパーによると、調査の前日から当日の朝にかけて責任者がカードの内容をヘルパーに伝える。調査の約30分前にも、確認の電話がヘルパーに入る。ヘルパーは解除した拘束具などを天井近くの棚に置き、カーテンで覆っていた。調査が終わると、責任者から再び拘束するよう指示がある。あるヘルパーは「調査員から隠すため」と認識していたという。

このマンションへ認定調査に入ったことがある調査員は「調査は入居者の日常生活の状態を確認するのが目的なので、日常行っている拘束を外せば正しい調査ができない。当然、拘束していれば、こちらも何で拘束しているのかも聞く」と話している。

訪問介護事業所を運営する医療法人は朝日新聞の取材に「身体拘束を行う際は行政指導にのっとり、適法かつ適切に運営している。認定調査上の必要に応じて、調査が正しく行われるために身体拘束を外す場合がある」とコメントした。

東京都と北区は11日、この高齢者マンションに立ち入り、入居者の拘束状況などを確認した。北区はすでに医療法人の幹部から事情を聴いている。このマンションは有料老人ホームとして届け出ておらず、高齢者住宅として北区はこれまで指導できていなかった。

神戸市では2013年に、マンションに住む高齢者を徘徊(はいかい)させないために、ヘルパーらが外部からチェーンキーで施錠していた。これは虐待にあたるとして、神戸市は市内の訪問介護事業所などを営業停止にあたる6カ月間の指定効力停止処分にした。(沢伸也、丸山ひかり、風間直樹)

■舛添都知事「容認できない」

東京都北区の「シニアマンション」について、舛添要一東京都知事は11日の定例会見で、都と北区が調査していることを明らかにした上で、「(入居者の)権利擁護のため、しかるべき措置を取りたい。早急に是正したい」と述べた。

また、2000年に亡くなった母親を介護した経験について触れ「(当時は)介護保険制度の導入前で、身体拘束は当たり前だった。だが今では拘束は人権侵害だという認識が当たり前になっている。こうしたことがあるというのは、決して許されることではない」と話した。

■2014.11.13  施設職員ら、送迎福祉車両の安全使用法学ぶ
福祉車両の安全な使い方を学ぶ講習会が12日、上峰町民センターであった。県内外から介護福祉施設の職員ら約50人が参加。運転時の注意点を学び、車いすを乗せて車内に収容するリフトの実技指導を受けた。

福祉車両専門店などで作る「日本福祉車輌協会」(新宮勝則理事長)が主催。福祉車両での送迎中の死亡事故が近年増加している事を受け、年間10カ所で開催している。

講習では「日頃からメンテナンスすることで故障が減り、経費の削減につながる」と指摘。実技指導では、同協会のスタッフが車両を使って「リフトを使うときは必ずエンジンをかけて」「車いすを固定するワイヤは『八』の字になるようにして」などと注意点を説明した。

新宮理事長は「車両の取扱説明書はあるが、読んでいないという人も多いと思う。講習会を通して基本的なことを正確に理解してもらい、事故防止につなげたい」と話す。

■2014.11.13  所在不明の子供、全国に141人 最多は「大阪」…虐待の恐れ4人も含む
住民票の住所におらず学校にも通っていないなど、18歳未満の所在不明の子供が、10月20日時点で全国に141人いることが13日、厚生労働省が行った初めての調査で分かった。自治体が「虐待の恐れがある」と判断した子供も4人含まれており、同省は調査継続を指示した。

所在不明の子供の中にはドメスティックバイオレンス(DV)などから逃れるため住民票を出していない例もあるとみられる。

厚労省のまとめでは、141人の性別は男性75人、女性66人。就学前61人、小学生40人、中学生27人、それ以上が13人だった。地域別では、大阪府が27人で最多。兵庫県26人▽神奈川県16人▽東京都14人−と続いた。不明児童がいなかったのは25府県だった。厚労省は「子供の数が多い都市部に多いが、詳細はまだ分析できていない」としている。

所在不明の子供の虐待事件などを受け、厚労省は4月から調査を開始。5月1日時点で所在不明として報告された子供が2908人いたため、海外への出国記録や関係部署の情報共有を進めるよう指示していた。

その結果、1185人(約41%)は海外へ出国していたことが確認された。残る1723人について、各自治体は乳幼児検診などを行う母子保健部門と、児童手当や生活保護を担当する福祉部門、教育委員会などで情報を共有。親族や近隣住民などへの調査も行い、1582人の所在を確認した。この中には「虐待のリスクがある」とされた子供も93人含まれていた。




2014年10月2日
忽然と消えた2900人の子供たち…行方つかめず

学校も、行政も居場所をつかめない。そんな子供が日本全国に約2900人もいる。政府は8月、「居所不明」となっている子供の今年5月時点の数字を公表した。実際は記録などがないだけでどこかで暮らしていて、行政側の“追跡調査”が甘いため居所不明扱いになっている子供も多いとみられる。

だが、家庭ごと音信不通になるなどして、忽然(こつぜん)と世間から消えてしまった子供が一定数いることも確か。居所不明の子供は親から虐待を受けているリスクが高く、近年は育児放棄の末に衰弱死したり、暴行を受けて雑木林に捨てられたりした事件も発覚した。危機感を抱いた全国の市町村は、家庭訪問などによる確認作業を急ピッチで進めている。

「一度も乳幼児健診を受けていない子供がいる」

愛知県豊橋市。子育て支援課の担当者に、健診を所管する市こども保健課から連絡があったのは昨年秋のことだ。未受診だったのは4歳児。通常であれば「生後4カ月」「1歳半」「3歳」の段階で健診を受けているはずだが、いずれも未受診だった。

早急に所在を確認する必要があり、父親のもとに担当者を向かわせたが、「どこにいるのかさっぱりわからない」。父親によると、母親はアジア系の外国人で、すでに2人は離婚しており、児童は母親が引き取ったという。

入国管理局に照会すると、母親が出国した記録はあったが、児童の確認は取れなかった。児童は日本名以外でパスポートを取得していた可能性があったが、父親が外国人名を知らず、日本名でしか照会ができなかったことも理由と考えられている。

もちろん、出国しておらず、何らかの事件に巻き込まれている恐れもある。市は愛知県警に相談したが、児童は所在不明だと判明してから1年近くが経過した今年9月現在でも行方不明のままだ。

豊橋市では平成24年、女児(4)が両親に食事を与えられないなどのネグレクト(育児放棄)を受けた末、衰弱死したという事件があった。亡くなった加藤杏奈ちゃんは、市の健診を受けておらず、健診を担当する部署は所在もつかめていなかった。

一方、両親は、児童手当や子ども手当を受け取っていた。健診とは別の部署に提出された書類には父親の健康保険証の写しが添付されており、そこには勤め先も記載されていた。

杏奈ちゃんの所在を調べる重要な手がかりだったが、市内部で情報は共有されず、対策は取られないまま、杏奈ちゃんは命を落とした。

苦い記憶。事件以降、市は居所不明の子供の問題に積極的に取り組んでいるが、冒頭のような事例はまだ残っている。

市の担当者は「杏奈ちゃんの事件を重く受け止め、居所不明の児童がいればできる限り追跡している。だが、手がかりが途切れてしまうと、それから先には進めなくなってしまう」。

■居所不明、大阪が発端

居所不明の子供がクローズアップされたのは、大阪がきっかけだった。

24年4月、大阪府富田林市で、住民登録上は9歳のはずの男児が生後まもなくから行方不明になっていたことが発覚。14年9月生まれの男児は、実際は1歳になる前に死亡しており、祖母らによって15年2月、同市内の河川敷に埋められていた。

この事件により、男児と同じような居所不明の子供が全国に1千人以上いることが取り上げられ、社会問題化した。

これ以前から、文部科学省では学校基本調査で、居所不明の小学生や中学生を集計していた。ただ、同調査は「学校教育行政に必要な学校に関する基本的事項を明らかにすることを目的」としており、主な調査項目は「学校数、在学者数、教員数、卒業者数、進学者数、就職者数」など。居所不明児童・生徒に重きは置かれていなかった。

それが、富田林の事件により転換した。事件に巻き込まれた子供がいたことに国は危機感を強め、富田林の事件が発覚してから半年後の24年11月、学校や警察などの関係機関と連携して行方が分からなくなっている子供の実態を把握するよう、厚生労働省が市町村に通知した。

だが、その後も、25年2月に大阪市東住吉区で住民登録上は6歳の女児が実際は出産直後に殺害されていたことが分かり母親が逮捕されるなど、悲惨なニュースが報じられた。このため同省は今年4月、乳幼児を含めた18歳未満にまで対象を拡大し、居所不明児童・生徒の数を報告するよう市町村に要請。その結果、冒頭の2900人という数字が浮かび上がったという。

ただ、文科省の学校基本調査では、小中学生に調査対象が限られているものの平成23年度の1191人が26年度に397人となるなど、3年連続で減少している。

現場を預かる市町村は試行錯誤を続けている。

昨年4月、所在不明となっていた女児=当時(6)=が遺体で見つかった横浜市。過去に事件のあった自治体では関係機関の情報共有が失敗している傾向があったことを教訓に、市や児童相談所、学校、警察などそれぞれの役割をはっきりさせたフロー図を作成。今年4月からは、学校などから上がってくる長期間不登校の子供の情報などを、虐待を担当するこども家庭課に報告する仕組みも取り入れた。

親との関係の強化を模索する動きもある。

奈良県宇陀市は昨年度から、生後2カ月の子供がいる家庭に対し、予防接種の段階で、市内限定の1万円分の商品券を配るというユニークな取り組みを始めた。地域振興や子育て支援が主な目的だが、居所不明児童・生徒の問題への効果も期待されている。

一つは、生後2カ月時点での所在を確認できる点で、昨年度は新生児が148人いたが、全員が予防接種に訪れ、所在を確認することができた。

もう一つが、親との関係強化。この場をきっかけに家庭と自治体とのつながりを作り、その後、親が育児相談などをしやすい関係性の構築へとつなげる−。そうすることで、市側は小さな子供を持つ家庭の状況を把握でき、将来的に居所不明の子供が発生した場合も、その家庭に応じたアプローチができる、という想定もあるという。

同市の担当者は「子育ての状況を確かめることができ、コミュニケーションの場にもなる。自治体と親の関係強化につながる」と期待を込める。

花園大の津崎哲郎特任教授(児童福祉論)は「居所不明の子供は非常に多い。市町村のマンパワーでは調査にも限界がある」と指摘。それを踏まえ、効果的な対応を取る必要があるとして「虐待のリスクのある子供を見極め、重点的な対策を取る必要がある」と求めている。

■2014.11.14  急速に人材不足? 介護報酬値下げで高齢者施設がさらなる悪循環へ
介護保険制度施行から15年目を迎えた今年6月、医療・介護制度を一体で改革する「地域医療・介護推進法」が成立した。これまでのサービスや負担が大きく見直され、“負担増・給付縮小”とも言える厳しい内容が目を引く。制度開始以来の大改正だ。

安倍政権は日本の社会福祉をどのようにとらえているのか。

「介護報酬の増減は社会福祉に対する政府の意思の象徴。それを切り捨てて、公共事業を増やし、法人税を下げようとしているのは明確です」

そう断言するのは民主党の山井和則衆院議員だ。鳩山・菅内閣で厚生労働大臣政務官を務めた。今回、財務省が内部留保を持ち出してきたのは政府の“苦肉の策”だという。

「介護職の処遇改善などの社会福祉を充実させるために消費税を8%に増やしたはず。なのに介護報酬を下げると言いだしたのは、法人税減税の原資と公共事業費を増やしたいから。社福が狙い撃ちされていると思わざるを得ません」

6月に「介護・障害福祉従事者の人材確保のための介護・障害福祉従事者の処遇改善に関する法律」が全会一致で成立した。つまり介護職の賃上げは、いわば“既定路線”になっている。にもかかわらず6〜7割を人件費にあてる介護報酬を引き下げようとしている。それによって多くの介護関係者は、賃下げは免れないと見る。

「だから財務省は『たとえ介護報酬が下がっても、内部留保を使えば賃上げできる』という理屈を考えたわけですよ」(山井さん)

財務省が各省に予算削減を求めるなどして“蛇口”を閉め、その後に双方が綱引きし合うのが、通常の予算編成のプロセスだ。

「でも財務省の要求に対して塩崎恭久厚労相は言われるがままで、まったく反対しない。本来なら大臣は盾になるべき存在。それが今回の問題でいちばん根が深いこと。厚労省の役人たちは本当に脱力している」

今、多くの介護関係者は「一部の社福の内部留保を吐き出させることと、介護職の処遇改善は本来別の問題」と異口同音に言う。千葉県松戸市で定員70人の特養「秋桜」を運営する社福の理事の吉岡俊一さんも、

「人材確保が難しい地域では、人手不足で予定したサービスが提供できない施設が多い。なのに『内部留保があるから経営が好調』と判断されて報酬が引き下げられれば、ますます人件費を抑えざるを得なくなり、さらに人が集まらない“悪循環”に陥っていく」

介護の担い手不足は深刻だ。団塊世代が75歳以上になる25年には、介護職は新たに100万人の増員が必要とされるが、介護分野の昨年の有効求人倍率は2倍近く。業界内での転職が多いとはいえ、男性の平均勤続年数は5.3年と全産業平均の半分にも満たない。

介護福祉士養成校の入学者も減っている。1990年開校のある福祉専門学校は入学者数が年々減り続け、今年は定員80人に対し、わずか20人。うち9人が留学生だ。校長は肩を落とす。

「介護職がやりがいのある仕事だという認識が、置き去りにされている。少し回復の兆しがあるのに、処遇改善に水を差されたら、また人が集まらなくなるのではないか」

人材確保が厳しくなると不安を募らせるのは、収支差率11.2%と試算されたグループホームも一緒だ。

小規模多機能型居宅介護との複合施設「えいむの杜」(静岡市)を経営する橋本直美さん(50)は「まず人件費を削らざるを得なくなる」とため息をつく。

■2014.11.14  国は潰したい?“現場は掃きだめ”の小規模デイサービス
財務相の諮問機関である「財政制度等審議会」は10月、来年度に改定する介護報酬の「現行からの6%程度引き下げ」を厚生労働省に提案した。財務省は6%削ったとしても、「運営に必要な資金は確保できる」と主張しているのだ。

今回の介護報酬の引き下げについて、介護保険制度に詳しい淑徳大学総合福祉学部の結城康博教授には改定で大鉈をふるったほうがいいと考える分野がある。デイサービスだ。

「株式会社が運営するものが増え、利益を追求している。そこに規制をかけなかったのが政策の大失敗。介護給付費が無駄に出ていっています」

デイサービスは、訪問介護やショートステイと並び、在宅介護の三本柱の一つ。だが規制緩和により民間企業の相次ぐ参入で競争が激化する一方で、サービスの質は玉石混交。昨今、問題視されている。

「もう、いい加減なのは全部潰して、いったん“焼け野原”にしたらいいんですよ」

そう憤るのは7年前、ある企業とフランチャイズ(FC)契約を結んでデイサービス事業に従事してきた男性(42)だ。企業は空き家に出店する方式で急拡大し、現在、全国800カ所以上でFC展開している。

男性は「介護で社会貢献を」「月に100万円の収入は確実」との宣伝文句に夢を抱いて飛び込んだが「実際は悪夢だった」。

FC加盟料300万円を払い、事業スタートから2〜3年は順調だった。しかし次第に周りに競合する事業者が増えて経営はひっ迫。本社に相談しても「思いが足りない」と、らちが明かなかった。

本社へは毎月、ロイヤルティーなどの名目で20万円を納めねばならない。仕方なく人件費を抑えるとスタッフが集まらない。やっと採用しても疲弊してすぐに辞めていく。過酷な労働環境にスタッフ同士はいがみ合い、いじめが横行、入所者への暴行も頻繁に見受けられたという。

男性は心身ともに疲れ果てて、事業を清算中。本社を相手に裁判を起こすことも検討しているという。

「介護報酬が引き下げられれば、こうしたチェーン店は、ほとんどつぶれるんじゃないですか? でも、そのほうがまだマシ。現場は素人ばかりの“掃きだめ”のようになっている」

デイサービス事業者のずさんな運営実態が明るみに出るなか、厚労省も対応に乗り出した。来年度から人員体制や介護内容などを都道府県に届け出るよう義務付け、サービスの質を維持するためのガイドラインも策定した。

「そのせいで、真面目にやってきた私たちも厳しくなってきてしまった」

3年前から神奈川県でデイサービスの所長を務める女性(34)は嘆く。定員10人の小規模事業所を契約社員やパート、ドライバーなど約10人で、文字どおりギリギリで回している。だが来年度からは体操や手先を動かすレクリエーションなどの機能訓練指導員として、看護師などの有資格者を配置しなければならない。

「人件費が月額30万円ほど増える。今は週6日間オープンしていますが、スタッフと『私たちは休まずに利用者を増やすしかないかな』と話しています」

さらに介護報酬が引き下げられたら──。

「どうしていいかわからない。国は小規模事業所を潰したいんじゃないか」

結城教授が訴える。

「介護報酬の引き下げはすべての施設で一律にするのではなく、増やすべきところを増やし、確実にもうけていたりいい加減だったりする事業者は10%ぐらい下げるなど、メリハリを持たせるべきでしょう」

介護報酬引き下げによる労働環境の悪化で人材が集まらなくなり、介護保険制度自体が立ち行かなくなれば、“介護難民”が増える事態を招きかねない。

■2014.11.14  デイサービスは報酬減へ、認知症介護やリハの充実は高く評価
厚生労働省は13日、来年度の介護報酬改定に向けた議論を行っている審議会(社会保障審議会・介護給付費分科会)の会合で、デイサービスの報酬の見直しを提案した。

「在宅の限界点」を高めるケアを推進するため、事業所の機能に着目して報酬にメリハリをつけることが柱。認知症や重度の高齢者を多く受け入れていたり、より有効な訓練を行っていたりする事業所を優遇し、そうでないところは評価を下げる方針を示した。また、サービスのコストや実態を反映して適正化を図る観点から、小規模な事業所や要支援者の報酬を減らす考えも打ち出している。具体的な単価や詳細な要件は、早ければ来年1月にも公表する予定だ。

通所介護の報酬・基準についてこちら

厚労省の提案は、在宅で状態の重い高齢者が増えていく今後を見据えたもの。充実した体制でしっかりとケアに取り組むインセンティブを大きくし、高齢者を地域で支えていく基盤の強化につなげていく構想だ。サービスが多様化して玉石混交になったことや、「経営実態調査」で高い収支差率(11.6%)が出ていることを踏まえ、十分な機能を発揮していない事業所の対価を減らしたり、給付を効率化したりすることも目論んでいる。

より手厚く評価されるのは、重度者を積極的に受け入れている事業所。利用者の状態や職員の配置などを要件に据え、クリアすれば加算で支えていく手法が用いられる。

厚労省は具体的な要件として、

・認知症の日常生活自立度3以上を一定割合受け入れ、決められた研修を修了した職員を専従で1人以上配置する

・要介護3以上を一定割合受け入れ、看護職員を専従で1人以上配置する

などを提示。職員を指定基準から2人以上加配していることや、計画的な支援のプログラムを作成していることも、要件の中に盛り込んでいくとした。

厚労省はこのほか、質の高い訓練に取り組んでいる事業所も高く評価する意向を示し、既存の「個別機能訓練加算」の見直しをツールにあげている。計画をつくるときに居宅を訪問することや、目標・プロセスをより明確にすることなどを要件に加え、単価もセットで調整すると説明した。

これらの加算を取得しない事業所の報酬は、来年度から低くする方向で協議を進める。

小規模型の上乗せ率を圧縮、送迎なしは減算

報酬の変更は、「機能に着目したメリハリ」という切り口だけにとどまらない。厚労省は次期改定で、経営のコストを根拠に「小規模型」を引き下げる考えだ。

小規模型の事業所は、スケールメリットを生み出すことが難しく、運営にかかる経費が相対的に高くなってしまうため、通常・大規模型よりも多く報酬を受けてきた。現行では、事業所の規模ごとに支出を把握するための調査の結果を踏まえ、通常規模型より15%高い設定になっている。

厚労省は審議会で、来年度からこの15%を圧縮したいと表明。最新の調査結果を反映し、上乗せ分を半分近くまで減らす方針を打ち出した。

加えて、包括評価になっている予防給付の基本報酬もカットする。厚労省は要支援者のデイについて、「あくまでも介護予防を目的としたもので、いわゆる「レスパイト機能」を果たすためのものではないため、長時間の利用は制度の趣旨に合っていない」と説明。より短く使われるのが本来の姿だとして、それを前提に手当てを決めるべきだと主張した。

そのうえで、現行の要支援者の報酬をサービス1回ごとに割って計算すると、要介護1の305時間よりも高くなるというデータを紹介。包括評価の水準を引き下げ、こうした状態を解消していく考えを示した。

厚労省はこのほか、事業所が送迎を行っていない利用者の対価を減らすことも提案。本人が自力で通ってくるケースや、家族が送迎を担ってくれるケースについて、新たに減算の対象にする方針を明示した。

■2014.11.14  事故の悲劇教訓に 視覚障害者への接客、栃木県タクシー協会が学ぶ
宇都宮市で10月、全盲の男性が目的地と違う場所でタクシーを降ろされた後、車にはねられ死亡した事故を受け、県タクシー協会(植原和信会長)は13日、宇都宮市内のホテルで、視覚障害者への接客や乗降対応を学ぶ初めての講習会を開いた。

死亡した男性は自宅マンションから約300メートル離れた別のマンション前で降ろされた約20分後、道路を横断中にはねられた。遺族は「乗務員が目的地をしっかり確認してほしかった」と悔やみ、男性を乗せたタクシー会社は事故後、遺族に謝罪していた。

講習会には県内71業者の代表者ら約90人が参加。須藤会長は、乗務員が視覚障害者に周囲の状況を説明する際は「あの角を曲がってすぐ」などの抽象的な表現は避けることや、「降車後に利用者が目的地に向かっているか見届けてほしい」などと説明した。

質疑応答では、「女性のお客様をどう誘導すればいいのか」「盲導犬を連れた方にはどう対応すべきか」など活発な意見交換が行われた。須藤会長らは「乗務員のひじや肩に手を掛けてもらう」「盲導犬利用者は、ドアの場所さえ確認できれば自分で乗り込むことができる」などと丁寧に答えた。

■2014.11.14  「拘束介護」で立ち入り監査 都、訪問介護事業所など
東京都北区の「シニアマンション」で大半の入居者が「拘束介護」されていた問題で、都は14日にマンションにヘルパーを派遣していた訪問介護事業所などに、介護保険法に基づく立ち入り監査に入った。都は今後、行政処分を検討し、重い場合は事業者の指定を取り消す。

都や北区はこれまで、マンションを所有する不動産業者の同意を得ながら任意で立ち入り、拘束状況などを確認してきた。都は、入居者への訪問介護サービスが不適切だった疑いが強まったとして、行政処分を伴う強制力のある立ち入り監査に切り替えた。

この訪問介護事業所がシニアマンション3棟の入居者約130人をベッド柵に胴体や手首を固定するなどの拘束をしていたことが、朝日新聞の調べで明らかになった。都は、事業所内にある入居者全員の内部資料などから、これらの拘束が虐待にあたるかどうかや、介護報酬の不正請求があったかなどを調べる方針だ。

都が朝日新聞の報道から1週間足らずで監査に踏み切るのは、入居者の人権をすみやかに保護する必要があると判断したとみられる。舛添要一都知事は11日の記者会見で「(入居者の)権利擁護のため、早急に是正したい」と話した。

神戸市では2013年に、マンションに住む高齢者を徘徊(はいかい)させないためだとして、ヘルパーらが外部からチェーンキーで施錠していた。これは虐待にあたるとして、神戸市は市内の訪問介護事業所などを営業停止にあたる6カ月間の指定効力停止処分にしている。

■2014.11.14  「拘束介護」マンション、都が「指導対象外」と判断
東京都北区の「シニアマンション」で入居者の大半が「拘束介護」されていた問題で、東京都が2009年に「(指導監督の対象となる)有料老人ホームに該当しない」と判断していたことがわかった。翌年以降に北区が「該当するのではないか」と指摘したが判断は変わらず、マンションは制度外に置かれたままだった。

高齢者住宅を運営する場合、@食事A介護B家事C健康管理のいずれかのサービスを提供すると、有料老人ホームとして都道府県などに届け出る必要がある。届け出ると一定の職員数や設備の基準を満たすことが求められるほか、老人福祉法に基づいて行政の指導監督を受けることになる。

北区のシニアマンションでは、家賃は不動産業者に、そのほかのサービス料は不動産業者と提携する医療法人にそれぞれ払う。医療サービスは医療法人が、介護サービスは同じ医療法人運営の訪問介護事業所が、食事と家事のサービスは法人の親族会社が、それぞれ提供している。

このマンションを東京都は09年に、有料老人ホームに該当しないと判断した。その年の3月に、群馬県で有料老人ホームの届け出をしていない「静養ホームたまゆら」で入居者10人が火災で亡くなる事件があった。これを受けて、都は都内の「無届けホーム」を緊急点検した。北区のシニアマンションにも立ち入りしたが、部屋の賃貸借契約を結ぶ不動産業者と介護や医療サービスを提供する医療法人が別法人であることから届け出の必要はないとした。

マンションの運営が不適切であるとの情報があったことなどから、北区は10年に「シニアマンションは有料老人ホームに該当するのではないか」と指摘した。しかし運営形式などに変更がなかったこともあり、都は判断を維持した。その後も北区は入居者の要介護度認定のためにマンションに入った調査員などからの情報もあり、同様の指摘を続けたが変化はなかった。

結局、北区はマンションへの指導監督が十分にできず、実態が把握できずじまいだった。「朝日新聞の報道があるまで拘束が行われているとは、まるで知らなかった」(幹部)という。

全国でも無届けホームでのトラブルが相次いでいることから、厚生労働省は昨年5月、住居の提供者と介護などサービスの提供者が別々の場合でも、一体運営されていれば有料老人ホームに該当する場合があるとする通知を出した。

これを受けて東京都も、都内の無届けホームの再調査を進めていたが、都施設支援課は「このシニアマンションの再検討まではできていなかった。今回の報道を受けて調査を始めた」と話している。

■2014.11.16  サービス付き高齢者住宅 400棟超の大阪、なぜ突出? 経済の地盤沈下、生活保護受給者狙いも
高齢化を受け、国が整備を後押ししている賃貸住宅「サービス付き高齢者向け住宅」(サ高住)。全国でも大阪が突出して多く、最新の統計では施設数が400件を超え、東京都を2倍近く引き離していることが分かった。「なぜ大阪で、と言われても、はっきり理由が分からない」と行政の担当者は首をかしげるが、背景に地盤沈下が叫ばれて久しい“国内第2の都市”の窮状が透けて見える。 


「終の住処」安心感

大阪市住吉区の長居公園近くに、きれいな5階建てのワンルームマンションがある。玄関のオートロックから部屋の中まで完全バリアフリー。居室面積は25平方メートルで、ベッドを置いても広々とした印象だ。

ここは介護大手「メッセージ」が運営するサ高住。介護スタッフが24時間常駐し、要介護5の人でも受け入れが可能だ。家賃、サービス費などを合わせて月額14万3800円。別料金で1日3回の食事サービスも受けられる。

住人の野田栄一さん(91)は足が不自由で要介護4。老人ホームが見つからず、1年半前にここに移り住んだ。妻の和子さん(85)も隣の部屋を借りている。「何かあったときの安心感と毎日の食事が大きい。施設のように規則に縛られることもない。終(つい)の住処(すみか)と思っている」


施設数 東京の2倍

国土交通省などによると大阪のサ高住は10月末現在で全国最多の407棟(1万6491戸)。東京は4位で229棟(8746戸)と大阪のほぼ半分だ。ちなみに2位は北海道(310棟、1万1795戸)、3位は埼玉県(255棟、9042戸)だった。

一方、65歳以上の高齢者人口は東京がトップで291万人。大阪は2位だが、70万人以上の開きがある。

国の支援メニューは全国で変わらない。補助金は建設費の10分の1、改修費の3分の1(いずれも1戸あたり100万円が上限)。条件は同じなのに、なぜ大阪で建設ラッシュが続いているのか。


高齢者奪い合い

「大阪の場合は明らかに供給過多」と打ち明けるのは、あるサ高住の運営事業者。整備を促す国の政策に乗って各事業者がせっせと建てた結果、「高齢者の奪い合いが起きている」という。
サ高住の調査研究を行っている高齢者住宅研究所(大阪市淀川区)も「土地の利用法を考えた場合、東京と比較すると選択肢が少ないからでは」と分析。東京では商業施設を建てる選択があっても、大阪ではサ高住にした方が元が取れるという推測だ。それだけ大阪の経済力が衰えた、と見ることもできる。

さらに大阪特有の事情もある。大阪市は生活保護の受給者数が全国最多。府内全体でも保護率は高く、「受給者目当ての施設も少なくない」(先の事業者)という。大阪のサ高住の平均家賃は6万1598円だが、生活保護の住宅扶助(大阪の場合は単身世帯で最高4万2千円)と同水準の物件も少なくない。

受給者の介護利用料は全額公費で賄われる。一部のサ高住は系列の介護事業所を使ってもらい、「家賃収入より介護報酬を頼みにしている」(同)という。

ただ、特定の介護事業者の利用を強要する「囲い込み」は法令違反。自己負担のない受給者の場合、業者側が過剰サービスに走るリスクもはらむ。

大阪では昨年、受給者に介護サービスを提供したように装い、介護報酬をだまし取ったとして事業者が摘発される事件もあった。


行政のチェック不可欠

 関西国際大の道中●(=隆の生の上に一)教授(社会保障論)の話「特別養護老人ホームも、病院のベッド数もまったく足りていない。行き場のない高齢者が増える中で、手っ取り早く現状に対応しようとできたのが、サービス付き高齢者向け住宅だ。ただ一部の施設では、過剰なサービスを提供する『介護漬け』などの問題も指摘されている。行政の定期的なチェックが不可欠だが、果たして手が回っているのだろうか」




 サービス付き高齢者向け住宅 高齢者が生活支援サービスを受けられる賃貸住宅。事業者側は安否確認と生活相談の両サービスを必ず提供する。高齢者住まい法で平成23年10月に創設され、登録物件(今年10月末現在)は全国で5019棟、16万1517戸。一定の居室面積があり、キッチン、トイレなどを完備、バリアフリー構造であることが登録の基準。国が補助金や税制上の優遇措置を取り、整備を推進している。運営主体は介護・医療系の業者が8割を占める。

■2014.11.16  親の介護理由の転職者 正社員は3人に1人以下
親の介護を理由に転職した人のうち、転職先でも正社員として働いている人は、男性では3人に1人、女性では5人に1人にとどまるという調査結果がまとまり、仕事と介護を両立させる難しさが浮き彫りになっています。

この調査は、民間のシンクタンク「明治安田生活福祉研究所」などが、親の介護を経験した40歳以上の男女を対象にことし8月から9月にかけて行い、2268人から回答を得ました。
それによりますと、親の介護のため転職した人に、以前の勤め先をやめるまでの期間を尋ねたところ、1年以内の人が男性は52%、女性は56%と半数以上に上りました。
このうち、転職先でも正社員として働いている人は、男性は34%で3人に1人、女性は21%で5人に1人にそれぞれとどまりました。

また、転職の前と後で年収の平均を比べると、男性が556万円から341万円に、女性は350万円から半分の175万円にそれぞれ減少し、収入を維持しながら仕事と介護を両立させる難しさが浮き彫りとなっています。
調査を行ったシンクタンクでは「高齢化で働きながら介護する人が増えると予想され、会社側が今後、仕事と介護を両立できる制度などを整備する必要がある」と話しています。

■2014.11.17  退職後は障害と老齢どちらが有利
在職中に交通事故に遭い、3級の障害厚生年金を年額約58万円受給しています。幸い勤務は続けることができ、年明けに61歳で退職する予定です。退職時点での厚生年金加入期間は22年で4歳年下の妻がいます。老齢厚生年金も受給できますが約55万円なので、障害厚生年金を続けたほうがよいでしょうか。


A 老齢厚生年金は年額約55万円とのことですが、これは通常の計算をした場合です。障害年金3級相当以上の障害であれば、退職後に障害者特例の老齢厚生年金を受給することができます。

障害者特例では、65歳前の退職でも支給開始時から定額部分という65歳からの国民年金と同額の加算が付きます。さらに20年以上の厚生年金加入者に配偶者がいると加給年金という加算も年額38万円ほどもらえます。加給年金は配偶者手当のようなもので、配偶者が65歳になるまで加算されますが、本来は受給者が65歳から支給開始になります。

障害者特例で計算してみると質問者の場合、老齢厚生年金(報酬比例部分)年額約55万円、定額部分約42万円、加給年金約38万円で合計約135万円(月額12万円弱)となります。障害者特例と障害厚生年金はどちらかの選択ですので、質問者の場合は明らかに障害者特例が有利です。ただし、どちらが有利かはケースによって違いますので年金事務所で試算をして比較してから決めるとよいでしょう。

なお、障害者特例は障害年金を受給していることは条件ではなく、3級以上の障害状態であれば可能です。例えば、中途退職後の国民年金加入中に障害状態になっても、国民年金の障害基礎年金は2級までしかありません。そのため障害年金を受給できずにいた人でも、厚生年金の加入期間が1年以上あって老齢年金の受給資格を満たせば、請求時に3級以上の障害なら障害者特例の老齢厚生年金を受給することができます。

■2014.11.18  全国会社会福祉法人経営研究会  施設経営の実相 内部留保「3億円」一人歩き
長年にわたり我が国の福祉を担ってきた社会福祉法人に対して、厳しい視線が注がれている。内部留保に関する指摘をはじめ、ガバナンスの欠如や財務状況の不透明さなど、補助金や優遇税制の適用を受ける社会福祉法人として経営の在り方が問われており、現在、社会保障審議会福祉部会で社会福祉法の改正も含め検討されている。

特に社会福祉法人の内部留保については、一部で金額の多寡が一人歩きしている感もあり、法人経営者の中には、自法人の財務内容に照らして問題や課題はないか不安に感じる方も多いと思われる。

今回、全国の税理士・公認会計士で組織するTKC全国会社会福祉法人経営研究会(TKC社福研)として、社会福祉法人の現状等について報告する。


現預金残高ではない

いわゆる特別養護老人ホームの内部留保に関する指摘だが、社会福祉法人がもうけ過ぎているとの意見があり、あたかも内部留保=金庫や預金口座に現預金が眠っているかのようなイメージが付いてしまっている。多大な内部留保を保有しているのであれば、それを処遇改善や新たな事業に使うべきとの意見もある。

TKC社福研として内部留保を定義づけすると、「次期繰越活動収支差額+その他の積立金の合計額」となる。

当然ながら、これは「内部留保=自由に使える現預金」ではない。内部留保額がわずかでも、多額な負債と現預金を抱える法人もあれば、現預金はわずかでも、多くの固定資産(土地や建物等)を保有し内部留保が多大となる法人もある。あくまでも内部留保は、資金の使途の結果でしかない。

また、財政の逼迫化から、建物の建て替えや増築等に際して従前ほどの補助金が見込めないため、必然的に建て替え等に関する資金を積み立てる必要があり、内部留保が増える要因ともなっている。

2013年5月の社会保障審議会介護給付費分科会において発生源内部留保、実在内部留保の考え方が示されたが、実在内部留保は約1億5500万円とある。ただし、これも減価償却により蓄積した内部資金も含むとあるので、現預金残高ベ ースでいくともっと下がると思われる。当然に将来の特別な建て替え費用であるので、職員の処遇改善や新たな事業に使用することはできない。施設の歴史、規模、法人設立時の経緯等により内部留保額は千差万別である。一概に適正な内部留保額を示すことは、困難極まりないことである。

逆に、内部留保をもっって社会福祉法人の経営実態を示す指標とするならば、明確な内部留保の基準と内部留保の適正額の根拠を厚生労働省は示すべきである。

私見ではあるが、そもそも11年7月7日付の日本経済新聞に指摘された「黒字ため込む社会福祉法人」の記事が内部留保の発端だと思われるが、なぜ、施設を経営する約1万6000法人の合計と日本の一流企業の1社を比較して多いと決めつけられたのか。もっと有効に使えとの論調は納得いかず、3年たっても納得できない法人経営者も多いのではないだろうか。

前述のS―BASTから、特養の現預金残高は9900万円である。介護保険収入は2カ月後に入金されるため、収入の3カ月程度の現預金を保有することは運転資金の確保のために最低限必要なものであり、所轄庁からも要請される。また、人件費の支払いもあるため現預金をある程度準備することは不可欠であり、上記内部留保が特段高額と言えるようなものではない。

社会福祉法人は、株式会社と違い、持ち分はなく、配当として外部へ資金を流出することができない。また、資金の使途制限も厳しく課せられている。増資などの資金調達手段はあり得ず、設備投資資金は内部留保に頼らざるを得ない。また、多大な内部留保を職員の処遇改善や新たな事業に使うべきとの意見もあるが、繰り返しになるが内部留保は現預金の残高ではない。

以上のことから、内部留保をもって法人経営を語るのは無理があると言えるのではないだろうか。


TKC全国会社会福祉法人経営研究会(TKC社福研)

1万人を超える税理士・公認会計士で組織するTKC全国会の中で、社会福祉法人の事業の発展を支援する会員1,700人が加入している。TKC社福研会員と顧問契約を締結している社会福祉法人は全国で約3,800件、2割強のシェアを有している。

TKC社福研会員は、顧問先である社会福祉法人を、鰍sKCが開発した社会福祉法人向け会計システム(TKC会計システム)の利用を前提に巡回監査している。

TKC会計システムは、巡回監査後に確定した財務データのさかのぼっての修正や削除を禁止している。そしてTKC社福研では、毎年、TKC会計システムの財務データを集計し、「TKC社会福祉法人経営指標(S―BAST)」として発刊している。

S―BASTは、他の経営指標が主にアンケート形式で財務データを収集するのに対して、TKC会計システムで処理された財務データを何も加工することなく集計しており、TKC社福研会員による巡回監査後の財務データを用いていることからも信頼性が高い経営指標と言える。

■2014.11.18  身長2センチ縮むと……介護リスク、女性は2倍に
40歳代に比べて身長が2センチ以上縮んだ高齢の女性は、介護が必要になるリスクが2倍高くなる。こんな調査結果を厚生労働省の研究班がまとめた。姿勢が悪くなると肺炎などにかかりやすくなるほか、気付かないうちに背骨が折れていることもあるという。研究班は、身長を定期的に測ることで、要介護のお年寄りを減らせないかと期待する。

放射線影響研究所(広島市)で定期的に健診を受けている女性747人(平均年齢71歳)を調査。2005〜06年の時点で介助や介護が不要だった625人の状態を6年間追跡し、新たに介助や介護が必要になった人と、身長との関係を分析した。

6年間で、22%にあたる137人が介助や介護が必要になっていた。05〜06年時点の身長が40代のときの平均身長より2センチ以上縮んだ人は、ほかの要因を除いても、そうでない人より2倍リスクが高かった。男性は調査対象者が少なく、はっきり差は出なかった。

■2014.11.19  LITALICO、障がい者雇用実施の企業担当者に対する調査結果を発表
約9割が「満足」との回答
障がい者の就労支援や子どもの教育事業などを手がける株式会社LITALICOは17日、障がい者雇用の実態調査として、同社が運営する就労支援事業所「ウイングル」を通じて障がい者雇用を行った企業や、実習先となっている企業などを中心に、障がい者雇用に関するアンケートを実施したことを明らかにし、その結果を発表した。

対象となった企業は、障がい者雇用を行っている300社。10月、雇用部署担当者にメールでアンケートを依頼し、120社から回答を得た。まず雇用の満足度として、障がい者を雇用してどう感じているか聞いたところ、「とても良かった」が45.0%、「まあまあ良かった」が46.7%、「あまり良くなかった」7.5%、「良くなかった」0.8%と、9割を超える企業が満足感を得ていることが判明した。

具体的にどのような点が良かったと感じられているかについては、「社員の障がい理解が深まった」が70社で最多、次いで「本人が期待通りの活躍をしてくれた」が44社、以下「業務が整理された」25社、「職場の雰囲気が良くなった」17社、「備品の整理整頓がされた」17社などとなった(複数回答)。障がい者雇用を通じ、職場環境の改善や、マニュアル整備等による業務環境自体への好影響も生じているようだ。

担当業務選定とフォローが課題、モチベーションの向上が継続化では重要
障がい者雇用を初めて行う際の、事前に感じられた不安点では、「職場でのコミュニケーション」を98社が選択。また「担当業務の切り出し/選定」も73社と、多くが不安に感じているポイントであることが分かった。

雇用後に感じられた課題では、「担当業務の切り出し/選定」と「面談や相談員などの本人へのフォロー/配慮」がいずれも51社でトップ。次いで「職場でのコミュニケーション」が44社となった。コミュニケーション面は、雇用後に比較的不安が解消されているケースも多いが、障がい特性に応じた業務選定では依然不安を抱えている企業が多いことがうかがえる。また、個々のフォローへの難しさを改めて感じているケースも多いことが明らかとなっている。

今後、継続して雇用する上で必要だと思うことを尋ねたところ、「モチベーションを上げる仕組み(評価方法/キャリアパス/昇給/昇格/雇用形態変更など)」が43社で最も多く、全体の約35%を占めた。LITALICOによると、今年4月にウイングルを利用して就職した精神障がい者を対象としたアンケートでも、今後会社に求めることとして「昇給」や「雇用形態の変更」をあげる声が多かったといい、企業側・障がい者側の双方でモチベーションの向上が課題となっていることが判明した。

株式会社LITALICO プレスリリース
http://litalico.co.jp/news/9149

■2014.11.23  視覚障害の子、標本触り科学を体感 京都府立盲学校
視覚障害のある子どもたちに学ぶ楽しさを知ってもらう体験講座「科学へジャンプ!イン・京都」が22日、京都市北区の府立盲学校で行われた。参加者は、切り抜いた紙やサメの標本に触り「大きいな」などと口々に感想を述べていた。

近畿と福井県にある盲学校・特別支援学校のネットワークでつくる実行委員会が毎年開いており、7府県の小・中学生約30人が参加した。

午前と午後それぞれ9班ずつに分かれ、実験などを行った。「京都VS和歌山」がテーマの教室には小学3年の4人が参加。両府県の形に切り抜いた紙を触りながら、方角や府県の特徴を学んだ。

沖縄美(ちゅ)ら海水族館(沖縄県本部町)の学芸員が講師を務める「サメのふしぎ」では、ジンベエザメの背骨や小型のサメなどの標本を触り比べ、サメは軟骨があるのが特徴だと学習した。

また雌雄や卵生、胎生の違いを教わり、胎盤がついたままの赤ちゃんに触れた。オオメジロザメやアオザメの頭部などにも触れ、歯が鋭利ですぐに生え替わることを学んだ。

子どもたちは物おじせず標本を触り「ぼくの歯より大きい」「サメにもへそがあると分かった」などと口々に感想を話していた。

■2014.11.24  拘束介護 悪質な施設、チェックの仕組みを=池田敏史子<シニアライフ情報センター代表理事> /東京
以前、ある老人病院で目にした光景が忘れられない。男性の口に酸素マスクがあてがわれ、手がベッドに縛り付けられている。聞けば、大声で人を威嚇したり、暴力行為があるからだという。


こうした行為の問題化を受け、国は2001年、「身体拘束ゼロへの手引き」を作成し、高齢者ケアに携わる関係者に向けて「鍵を閉める」「縛る」「ベッド柵を囲う」「手にミトンをつける」「脱ぎ着できないつなぎ服を着せる」など、自由を奪う拘束をしないよう目を光らせてきた。

ところが先日、「制度外ホームで130人が拘束介護」という衝撃的なニュースが流れてショックを受けた。場所は医療機関が運営するシニア向け賃貸マンションで、実態は介護施設だ。通りがかりの場所で、いつもカーテンが閉まっていた。

報道によると、入居者のほとんどが要介護4・5の重度者で、医療機関から退院後、行き場がなかった人たちだ。実質的経営者である医療法人から訪問医療や訪問看護・介護サービスを受けていた。サービスを受けるとき以外は狭い個室に一人。転倒事故がないよう拘束していたという。

実は、これは氷山の一角とも見られていて、行き場のない人が低額な料金で入居できる施設に流れている。入院期間が短くなり、十分回復しないうちに退院を求められ、その受け皿がないことも問題ではある。が、このような場所への入居を判断する側にも責任があると私は思っている。

退院時に頼りとするソーシャルワーカーや地域包括支援センターなどに情報が十分行き渡っていただろうか。さらに気になるのが家族の存在だ。家族はきちんと確認して入居を決めたのか。入居後、一般の人の出入りはできなくても、家族の出入りは自由なはず。聞けば、このホームは以前から拘束の事実が指摘されていたという。

特養などの施設不足が続く限り、今後も空きマンションなどを利用した低額で質の悪い受け皿が増えることも予想される。自治体だけでなく、地域や第三者などが、いつでも内情をチェックできる仕組みが必要に思う。

■2014.11.25  スプリンクラー設置は負担大 茅ケ崎の企業が簡易消火設備を開発中  モリタ宮田工業
<u>スプリンクラー設置は負担大 茅ケ崎の企業が簡易消火設備を開発中  モリタ宮田工業</u>
<blockquote><p>全国の高齢者、障害者向けの小規模グループホーム(GH)関係者の注目を集める企業が茅ケ崎市にある。消火設備大手のモリタ宮田工業。小規模GHにスプリンクラーの設置が義務付けられたのを受け、高性能で低価格な簡易自動消火設備の開発を進める。スプリンクラー設置には多額の費用が掛かり、事業者側の負担が大きいためだ。2016年度中の商品化に向け、研究が急がれている。

横浜市消防局消防訓練センターと共同で進めている開発のテーマは「小規模な社会福祉施設等に適した簡易な自動消火設備の研究開発」。

この簡易自動消火設備にはモデルがある。同社が今年から販売している一般住宅向けの「スプリネックスミニ(8平方メートル対応)」。消火剤を散布して初期消火を行うもので、電池式の本体(高さ約85センチ、幅約20センチ、奥行き約20センチ)を壁際に設置し、細い配管を壁に伝わせ、天井に感知器と消火剤のノズルを付ける。室内作業で2時間もかからず設置でき、費用は工事費を含め10万円以下だ。

開発の課題は高性能で低価格、かつ設置のしやすさをいかに両立させるかだ。

「ミニ」が想定しているのは4畳半相当の居室だが、今年8、9月に横浜市内のGH約100カ所の間取りや可燃物の量、天井、壁の材質など調べたところ、居室は6畳以上が多かった。「可燃物はそれほど多くないが、路地の先や狭い敷地に立つGHもあり、避難時間を十分稼ぐ必要があると感じた」という。6畳以上の居室の部屋全体を防護する必要があるとして「ミニ」より一段上の性能を持った製品が求められていることが確認された。

生産統括本部の津田貴之技術部長は「もっと性能を上げて、小規模施設に合った製品を開発したい」と意気込む。価格は現在の高齢者施設の補助金額である1平方メートル当たり9千円が一つの目安になるとしている。

法令上の壁もある。簡易自動消火設備はスプリンクラーには当たらないため、現状では設置義務を果たしたことにはならない。「スプリンクラー以外の新しいカテゴリーが必要という法律上のハードルがある」と津田部長。消防用設備として必要な消火能力を算定して試作品を作り、スプリンクラーと同等な性能を持つことを実験で示す。その上で簡易自動消火設備と技術基準を法令に新たに位置付けてもらう必要があるという。

商品化の目標は17年春。改正施行令の適用は新設の場合は15年4月、既設は18年4月で事業者の検討時間などを考えると残された時間は多いとはいえない。

同社は15年3月末までに試作品を完成させて消火性能の検証実験を行い、施設にモデル的に設置して改良を重ねていくという。並行して、技術基準の法令改正を消防庁に求めていく。

横浜市内では13年、28人が火災で死亡している。23人(82・1%)が高齢者で、そのうち15人(53・6%)が1人暮らしだった。同社は「GH向けに簡易自動消火設備の開発をきっかけに、1人暮らしの高齢者宅など一般住宅にも普及させたい」としている。

◇多額の事業者負担

スプリンクラー設置の義務化は、13年2月に長崎市で12人が死傷するなど認知症高齢者GHで多数の死傷者を出す火災が相次いだことが背景にある。消防法施行令が昨年改正され、自力避難が困難な人が入所する社会福祉施設での設置義務対象が延べ面積275平方メートル以上から原則として全施設に広げられた。

スプリンクラー設置には各部屋に配管を通すなど大規模な工事と費用が必要だ。グループホーム学会(光増昌久代表)の会員が延べ面積約150平方メートルのGHについて試算した設置費は、水道直結式で約210万円、敷地にタンクを設置するポンプ設置式で490万円、パッケージ型消火設備で約600万円だった。

国などの一般的な補助金を使っても、自己負担額は障害者GHで約50万円から約400万円、高齢者GHでは約80万円から約470万円になる試算だ。

事業者からは「財政的に対応が難しい。新設もできない」と悲鳴が上がる。

一般住宅を転用したGHでは家主から配管工事の許可が得られるかも課題。学会事務局長の室津滋樹さんは「工事ができずに転居せざるを得ない事例も考えられる」と話す。

こうした中、室内作業だけで設置できる簡易自動消火設備を1室10万円程度で利用できれば、負担は大きく軽減される。居室5室、スタッフ室、居間、台所の8室のグループホームの場合、設置費は計100万円以下になる可能性がある。室津さんは「消防庁も簡易自動消火設備の導入を前提に動いている。一刻も早く商品化し、消防用設備に認定することが必要だ」と話している。

◇入居者しわ寄せ回避を

横浜市消防局は年明けから新たにスプリンクラー設置対象となりうるGH、入所施設の立ち入り検査、指導を行う。

検査対象は高齢者のGH、入所施設が計約120、障害者のGH、入所施設が計約150に上る。複雑な特例があり、建物の延焼抑制構造、壁や天井の不燃性、避難の容易さなどによって設置は不要と判断されることがある。

障害者GHの場合は、障害支援区分4以上の入居者が8割を超える場合に設置義務を負う。立ち入り検査で個々の実情を判断、ふるい分けをし、2018年4月までのスプリンクラー設置を指導する。

課題の一つは「8割を超える」という条件が流動的なことだ。市では、現時点や18年4月段階で該当しなくとも、高齢者が多いなど将来的に該当する可能性が高い場合は設置を指導するとしている。障害者団体は「設置費用を負担できないGHが、重い障害のある人に退去を求めたり、入居を断わるケースも出かねない」と指摘しており、設置費用の負担軽減は急務だ。</p></blockquote>

■2014.11.25  障害者虐待2266人 死亡3例 厚労省調査
家族や福祉施設の職員らに虐待を受けた障害者が今年3月末までの1年間で計2266人にのぼることが25日、厚生労働省の調査で分かった。同省は昨年、平成24年10月の障害者虐待防止法の施行から半年分の実態調査を実施したが、年間を通じた集計は初めて。約8割が家族による虐待だったが、外部の目が届きにくい福祉施設では全容を把握できていない可能性もある。死亡例は3例あった。

同省は職場での虐待被害者が同期間中393人だったとする集計を7月に公表しており、被害者総数は計2659人に及んだ。

今回の調査の内訳は、親や兄弟ら「養護者」が虐待したのが1764件、被害者は1811人。福祉施設の職員らによるものが263件、被害者は455人だった。虐待の種別(複数回答)は、殴るなどの身体的虐待が1264件で最多。暴言などの心理的虐待が678件、障害年金を取り上げるなどの経済的虐待が467件、日常の世話をしない「放棄・放置」が345件あった。

死亡例は家庭が2件、福祉施設が1件。福祉施設のケースでは、千葉県袖ケ浦市の施設元職員が入所者の少年の腹部を蹴り死なせたとして、今年3月に傷害致死容疑で逮捕されている。

■2014.11.26  障害者虐待 “密室”施設内、難しい認定「埋もれてしまいがち」
障害者虐待防止法の施行1年半時点での被害者数が明らかとなった今回の調査。自治体間で認定率に大きな差があるほか、施設内での虐待認定は進んでいないとみる専門家もおり、なお課題が残る。

「“密室”の施設では障害を持つ人の説明が通りにくく、埋もれてしまいがちだ」。障害者への虐待問題に詳しい藤岡毅弁護士はこう話す。例に挙げるのは、青森市の障害者支援施設で起きた暴行事件だ。

防止法施行から約1年後の昨年12月、施設に入所する男性が肋骨(ろっこつ)を骨折していたことが病院の診察で発覚。病院側が「虐待の可能性がある」として、市などに通報した。市は調査を行ったが、施設の元職員2人から「(男性は)ベッドから落ちた」と説明され「虐待は確認できない」と判断したという。

後に元職員2人は傷害容疑で逮捕され、暴行罪で略式命令を受けたことで市が再調査。今月、ようやく新規利用者の受け入れを1年間停止する処分を行った。

施設内虐待では、被害にあったとする本人や家族と、施設側の主張が異なることが多い。調査では388件と最も相談・通報件数の多かった神奈川県で、虐待と認定されたのは29件と7・47%にとどまった。藤岡弁護士は「施設内では職員同士が虐待の事実を隠し、かばい合うケースもある。国は問題点を洗い出し緻密な認定基準作りなど対策を進めるべきだ」と話す。

一方、調査で家族らによる虐待と認定されたのは、通報数の約4割。認定率は最も高い京都府で75%だったのに対し、高知県では20・83%など、ばらつきが目立っている。

「言葉による心理的な虐待は黒に近いグレー、白に近いグレーなど微妙なケースが多い」。東京都杉並区の担当者はこう話す。区では「どなる」「ののしる」など心理的虐待に該当する可能性がある項目のリストを作成。一律に当てはまらない場合、主治医やヘルパーなどからも聞き取りを重ねる必要があるという。国が虐待の明確な判断基準を示していないことも「ばらつき」の一因とみられ、横浜市の担当者は「内容から虐待の通報にカウントするかどうかも含め、認定の線引きは難しい。国による研修の機会を設けてほしい」と求めた。

■2014.11.26  被害訴えにくい障害者、職員・父親暴行で死亡も
2013年度に確認された障害者虐待は2280件に上り、2659人が被害に遭っていたことが25日、厚生労働省のまとめでわかった。

被害者の約6割は知的障害があり、施設職員や父親の暴行で死亡したケースもあった。被害を訴え出にくい人が虐待に遭いやすい実態が浮き彫りになった。

全国の1742市区町村と47都道府県に寄せられた相談・通報は7123件あり、12年度中に寄せられた相談も含め、被害が確認できた件数をまとめた。12年10月に障害者虐待防止法が施行されて以来、年間を通じた調査は初めて。

2280件のうち、家族らによる虐待が1764件(77%)と大半を占めるが、福祉施設の職員らによるもの263件(12%)や、職場の雇用主らによるもの253件(11%)も目立つ。被害者の障害(複数回答)は、知的障害が最多の1572人(59%)で、精神障害が772人(29%)、身体障害が658人(25%)だった。

虐待による死者は3人。千葉県の障害者入所施設で知的障害のある少年(当時19歳)が職員から暴行を受け、死亡したほか、大阪府では、重度の知的障害のある女性(同36歳)が自宅で父親にロープで拘束され、ロープが首に絡まって死亡した。ほかに、難病で体が不自由な千葉県の女性(同38歳)が看病していた父親に殺害された事件もあった。

■2014.11.26  障害者虐待 “密室”施設内、難しい認定「埋もれてしまいがち」
障害者虐待防止法の施行1年半時点での被害者数が明らかとなった今回の調査。自治体間で認定率に大きな差があるほか、施設内での虐待認定は進んでいないとみる専門家もおり、なお課題が残る。

「“密室”の施設では障害を持つ人の説明が通りにくく、埋もれてしまいがちだ」。障害者への虐待問題に詳しい藤岡毅弁護士はこう話す。例に挙げるのは、青森市の障害者支援施設で起きた暴行事件だ。

防止法施行から約1年後の昨年12月、施設に入所する男性が肋骨(ろっこつ)を骨折していたことが病院の診察で発覚。病院側が「虐待の可能性がある」として、市などに通報した。市は調査を行ったが、施設の元職員2人から「(男性は)ベッドから落ちた」と説明され「虐待は確認できない」と判断したという。

後に元職員2人は傷害容疑で逮捕され、暴行罪で略式命令を受けたことで市が再調査。今月、ようやく新規利用者の受け入れを1年間停止する処分を行った。

施設内虐待では、被害にあったとする本人や家族と、施設側の主張が異なることが多い。調査では388件と最も相談・通報件数の多かった神奈川県で、虐待と認定されたのは29件と7・47%にとどまった。藤岡弁護士は「施設内では職員同士が虐待の事実を隠し、かばい合うケースもある。国は問題点を洗い出し緻密な認定基準作りなど対策を進めるべきだ」と話す。

一方、調査で家族らによる虐待と認定されたのは、通報数の約4割。認定率は最も高い京都府で75%だったのに対し、高知県では20・83%など、ばらつきが目立っている。

「言葉による心理的な虐待は黒に近いグレー、白に近いグレーなど微妙なケースが多い」。東京都杉並区の担当者はこう話す。区では「どなる」「ののしる」など心理的虐待に該当する可能性がある項目のリストを作成。一律に当てはまらない場合、主治医やヘルパーなどからも聞き取りを重ねる必要があるという。国が虐待の明確な判断基準を示していないことも「ばらつき」の一因とみられ、横浜市の担当者は「内容から虐待の通報にカウントするかどうかも含め、認定の線引きは難しい。国による研修の機会を設けてほしい」と求めた。

■2014.11.27  ヤマト福祉財団/小倉昌男賞に北海道と愛媛県の2人
ヤマト福祉財団は11月27日、「第15回 ヤマト福祉財団小倉昌男賞」の2名の受賞者を決定し、授賞式を12月4日に行うと発表した。

選ばれた2名は、本物の商品を提供することに成功し、障がい者の生活・経済的自立を実現したことが、高く評価された。

受賞者は、北海道上川郡新得町の農事組合法人共働学舎新得農場の宮嶋 望氏と、愛媛県松山市のパーソナルアシスタント青空の佐伯康人氏。

宮嶋氏は、農場経営者として障がい者や社会適応の難しい70名の人々と共同生活しながら36年に渡り酪農を営み、乳製品を生産・販売。特に新得農場で生産されるナチュラルチーズは国内外のコンテストで幾多の受賞歴を持ち、美食家に幅広く知られるものとなっている。福祉の枠組みにとらわれず、農事組合法人として本物の商品を世に送り出し、障がい者の仕事と暮しを支え続けたことが高く評価された。

佐伯氏は、支援者の一人から小さな農地を借りたことがきっかけとなり障がい者の仕事として無農薬・無肥料・無除草剤の自然栽培にたどり着き、今では11haの農地で20名の障がい者に月額5万円以上の給料を支払えるほどになった。中でも、2haの水田で栽培される自然農法米は、市価の3倍以上の価格で毎年完売している。耕作放棄地の活用を進め、地道に栽培技術を磨いた結果、消費者の高い評価を得ることに成功し、全国の福祉施設へも惜しみなく指導していることが高く評価された。

「ヤマト福祉財団小倉昌男賞」は、障がい者の仕事創りや雇用の創出・拡大、労働条件の改善などを積極的に推し進め、 障がい者に働く喜びと生きがいをもたらしている人を対象に、毎年2名を選定している。

■2014.11.28  昨年度の鳥取県内での障害者虐待15件
鳥取県内で昨年度、障害者への虐待に関する相談・通報が50件あり、このうち虐待と判断された事例が15件だったことが26日、県の調べで分かった。被害者は22人で、家族など養護者が虐待した事例が11件(被害者18人)、福祉施設従事者らによる虐待が4件(同4人)。県や市町村が事実確認や改善に向けた指導を行った。

2012年10月に施行された障害者虐待防止法に基づいてまとめた。

県障がい福祉課によると、養護者による虐待の被害者は男、女とも9人。本人の収入を無断で使うなどの経済的虐待が8件と7割以上を占めた。被害者の障害種別は身体障害が7人、知的障害10人、精神障害(発達障害を除く)7人。

虐待した23人のうち、被害者の父親が9人と最も多く、続いて母親7人。虐待者の半数近くが60歳以上で、11件すべての事例で被害者と虐待者は同居していた。対応策として、市町村の虐待防止センターが虐待者との分離や助言・指導、成年後見制度利用などの措置を取った。

福祉施設従事者らによる虐待は、顔を平手でたたくなどした身体的虐待2件、障害について理解のない不適切な発言をした心理的虐待が2件あった。県は該当施設に対し、指導やモニタリングを実施。施設側は改善計画を提出し、職場内研修を行った。

同課は「障害への理解啓発とともに、障害者虐待に関して相談しやすい環境づくりや未然防止のための研修にさらに力を入れたい」としている。

■2014.11.28  昨年度の山口県内での障害者虐待20件
山口県は25日、厚労省が実施した障害者虐待防止法に基づく2013年度の調査について、県内市町の集計結果の概要を公表した。親や兄弟などによる家庭での虐待と判断されたのは16件、福祉施設やデイサービス職員らによる虐待は4件だった。

家庭での虐待について、虐待の種別をみると身体的虐待が8件、性的虐待が2件、心理的虐待が4件、放棄・放置が2件、経済的虐待が2件だった。父母からの虐待が7件で最も多く4割を占め、兄弟姉妹が5件、子が3件、夫・妻が2件だった。市町は、障害福祉サービスの利用や、医療機関への一時入院などの対応を取ったという。

施設職員らによる虐待と判断された4件は、デイサービスが2件、児童発達支援が1件、就労移行支援が1件。身体的虐待が4件、心理的虐待が2件で、管理者が虐待をしていた事案が1件、保育士が1件だった。県は、虐待があった施設に対し監査を実施。虐待防止マニュアルの作成や研修などを含む改善計画の提出を求めるなど、再発防止の体制整備を指導した。

■2014.11.28  昨年度の神奈川県内での障害者虐待156人 通報は779件
県は25日、2013年度に県内で家族や福祉施設の職員らから暴行や暴言などの虐待を受けた障害者が156人いたと発表した。通報は779件に上り、このうち153件で虐待の事実が認められた。

障害者虐待防止法に基づく調査の県内市町村分を県が集計した。加害者の内訳は、家族や親族が114件(被害者は114人)、福祉施設の職員らが29件(同30人)、雇用現場の使用者が10件(同12人)。

虐待の種類(重複計上)は、暴行などの身体的虐待が96件、暴言や差別的な言動をする心理的虐待が60件、障害者の財産の使い込みなどの経済的虐待が26件、放置・放任(ネグレクト)が22件、性的虐待が12件だった。

虐待を受けた障害者(障害の種類は重複計上)は、知的障害が最も多く、82人。次いで精神障害者(58人)、身体障害(24人)、発達障害(5人)、その他心身の機能障害(2人)の順だった。

障害者虐待防止法は12年10月に施行。前回調査では同月から13年3月までの半年分の結果が公表されており、県内で虐待が認められた事例は104件、虐待を受けた障害者は110人だった。

県障害福祉課は「障害者も家族も高齢になり、介護が重くなっていることが虐待につながっているケースもある。障害者福祉サービスの利用を勧めるなど、介護の負担が軽減されるようにしていきたい」としている。

■2014.11.28  昨年度の福井県内での障害者虐待35人
福井では22件35人が虐待を受けた。県によると、このうち家族らからの虐待が14件14人、施設などでの虐待が8件21人。性別は男性18人、女性17人だった。いずれも入院が必要となる深刻な被害はなかったという。

一つの施設で同時に複数の障害者が虐待されたケースがあり、件数と虐待された人の数に差が生じている。

虐待の種別(重複あり)では身体的虐待が最多の計14件、性的虐待は計3件、経済的虐待が計7件。家族らからの虐待では放置(ネグレクト)が3件あった。市町や県への相談・通報は計55件。

県などは被害の確認後、施設側への指導や、親から離すなどの対策を取った。

2012年10月〜13年3月の集計では、県内の被害は2件2人だった。被害が増えた理由について県の担当者は、障害者虐待防止法の普及を挙げ、「被害者や施設の同僚らが積極的に通報するようになった」と説明。施設従業員向けの研修会を開くなど、同法の周知をさらに図り被害防止に努めるとしている。

■2014.11.28  昨年度の和歌山県内での障害者虐待15件
和歌山県は27日、2013年度に家族や福祉施設職員らから虐待を受けた障害者の状況を発表した。虐待と認めたのは15件(21人)で、養護者からの虐待は12人、障害者福祉施設従事者からの虐待は9人だった。

親や夫、息子や兄弟といった養護者から虐待を受けたという相談・通報は33件あり、そのうち虐待と認めたのは12件(12人)。女性9人、男性3人だった。

虐待の内容は重複も含め、暴力を振るわれるなどの「身体的」は8件、暴言などの「心理的」と貯金を勝手に使われるなどの「経済的」が各3件、食事を与えないなど「放棄・放置」が2件、性行為などを強要されるなどの「性的」が1件だった。

被虐待者からみた虐待者の続柄は父3人、母2人、夫4人、兄弟姉妹2人などだった。

障害者福祉施設従事者から虐待を受けたという相談・通報は9件で、そのうち虐待と認めたのは3件(9人)だった。内訳は男性5人、女性4人。

身体的虐待が2件、心理的虐待が1件。虐待をした職員の職種は生活支援員2人、サービス管理責任者1人、管理者1人だった。

■2014.11.29  高齢者に多い肺炎 「誤嚥性」は歯磨きで予防を  のみ込む力鍛錬も有効
高齢者に多い肺炎のうち、特に注意すべきなのが、細菌が唾液や食べ物と一緒に肺に流れ込んで生じる「誤嚥性(ごえんせい)肺炎」だ。70歳以上で肺炎と診断された人の70%以上、90歳以上に限ると約95%が誤嚥性だといわれる。
年を重ねるとのみ込む力がどうしても衰える。口の中を清潔に保つとともに、のみ込む機能などを高める訓練を通じて予防に努めたい。

「たんが黄色く膿(うみ)のようで汚く、息が苦しい」と訴えて医師の診察を受けた東京都内在住の70代のBさん。レントゲンを撮ると、右の肺の背中の方に白い影があり、誤嚥性肺炎を発症していると診断された。Bさんはすぐ入院し、抗生物質による治療を始めた。

空気の通り道である気管は喉の奥のあたりで分岐して左右の肺に伸びている。東京医科大学の瀬戸口靖弘教授によると、右側の管の方が太く、角度も鋭いため食べ物などが入りやすい。誤嚥性肺炎では右肺に炎症が出る例が多い。

細菌が入り込む
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通常、口から食べたり飲んだりした物や唾液は喉から食道を通って胃に送られる。嚥下と呼ぶ機能だ。のみ込む際は、食道の隣の気管に間違って飲食物などが入らないよう、ふたが閉まる仕組みになっている。誤って入っても、せきをしたりむせたりして気管の外に押し出される。

ただ、こうした働きは年とともに衰えてくる。脳梗塞の後遺症があったり認知症を患っている高齢者も多い。この結果、神経の働きなどが低下し、誤って入った物をせきで外に出す力も弱まるという。

いったん胃に入った食べ物や胃液が気管に逆流し、その中に含まれる細菌が肺に達してしまうケースもある。「高齢女性などでは、横隔膜にあいた穴から胃の上部が肺の方に飛び出すヘルニアが起きることがあり、上部にたまった食べ物が逆流しやすくなる」と瀬戸口教授は説明する。食後の3時間はなるべく横にならないようにしたい。

唾液の成分が若い頃とは異なってくることも影響している。若い人でも、唾液や飲食物が気管に入って細菌などが肺に達することはある。そんなときなどに備えて、唾液中には細菌類の増殖を抑える成分が含まれており、肺での菌の増殖を防いでいる。しかし、この成分は「若い時は多いが、年を取ると減少してしまう」

口の中には約400種類の細菌類がいるといわれる。「健康な人の口の中に普通にいる菌が誤嚥性肺炎の原因になる」と福岡歯科大学高齢者歯科学分野の内藤徹教授は指摘する。

病気の後遺症や体力の低下などで歯磨きが不十分になると、歯と歯茎の間などに細菌の塊である歯垢(しこう)ができやすくなり、口の中の衛生状態が悪化する。嚥下障害とあわさって細菌が肺に入ってしまう。

高齢者に多い誤嚥性肺炎は「一般的な肺炎と異なり、何度も繰り返すことが多い」(内藤教授)のも特徴だ。入院したり、寝たきりに近い状態になると、喉周辺の筋力などが衰えがちになる。認知症なども進む結果、より誤嚥性肺炎になりやすくなる悪循環に陥りやすい。こうした中で、抗生物質が効きにくい耐性菌が出てきて治療が難しくなり、亡くなる人もいるという。

「ゴロゴロ」に注意

Bさんのように自分でたんの異常に気づいて来院できる場合はよいが、要介護状態の人ではたんを吐くのも難しい例も多い。瀬戸口教授は「寝たきりの人などでは、右肺あたりでゴロゴロといった音がしないかどうか、周囲の人が確認してほしい」と訴える。これは外に出せないたんが移動している音だという。

肺炎の主な原因である肺炎球菌には予防用ワクチンがあるが、誤嚥性がそれ以外の細菌で起こる場合まで防ぐことは難しい。そこで重要になってくるのが、口の中を清潔に保つケアだ。国内の高齢者福祉施設の入居者を対象に、口腔(こうくう)ケアの有無と肺炎の発症率を2年間追跡したところ、ケアによって発症率を約半分に減らせたとの報告もある。

内藤教授は「口腔ケアをするとせきの反射も改善するとの報告もある。気管に入った異物を外に出す力が高まることが誤嚥性肺炎の予防につながっている」とみる。高齢者を在宅で介護する家庭を訪れる訪問診療に口腔ケアを取り入れたところ、肺炎の再発件数が減ってきたという。

誤嚥する可能性が高いかどうかを、本人や家族などが確かめる簡易的な方法もある。喉仏あたりを人さし指と中指で優しく触れ、30秒間に何回、唾液をごっくんとのみ込めるかを調べる。「3回以下だと誤嚥する可能性が高い。耳鼻咽喉科か詳しい歯科医などに相談して詳しく調べてもらうとよい」は内藤教授は勧める。

のみ込む力を鍛えるために「家庭でもできる簡単な訓練法もある」と話すのは浜松市リハビリテーション病院の藤島一郎院長だ。例えば、緊張をほぐす目的で食べる前に首を回したり、舌を左右に動かしたりする。筋力強化には額に手を当てて抵抗を加えながらへそをのぞくといった動作が有効だ。「パ、パ、パ」などと声を出す訓練や、ペットボトルに穴をあけ水を少し入れて穴からストローをさしてストローでぶくぶくと吹く訓練なども実践したい。

 

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