残しておきたい福祉ニュース 1996〜社会福祉のニュース

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残しておきたい福祉ニュース

 2014年 
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 2014.10. 1 注意欠如・多動性障害(ADHD)の症状を和らげる良薬は「運動」であるという研究報告
 2014.10. 1 社説[介護職の離職]支える側の待遇改善を
 2014.10. 2 「刑事責任能力」とは 心神喪失者はなぜ無罪?
 2014.10. 2 健康寿命、男女とも延びる
 2014.10. 3 障害者虐待31件55人 施設職員などの行為増加 [熊本県]
 2014.10. 3 保育士が入所の知的障害児ら虐待 計4件、滋賀県が謝罪
 2014.10. 3 香川の会社が「世界最小車いす」 自身の不便さ商品に生かす
 2014.10. 3 車いす、ブレーキ進化 障害物で止まる 下り坂で減速
 2014.10. 3 介護保険事業者、利益率は安定 厚労省、報酬改定へ調査
 2014.10. 3 保育士が入所の知的障害児ら虐待 計4件、滋賀県が謝罪
 2014.10. 3 老人介護施設で集団感染か 南魚沼
 2014.10. 3 「有料老人ホーム110番」に寄せられた相談の内容がひどい
 2014.10. 4 医師ら35人を行政処分 厚労省
 2014.10. 4 福祉車両非課税を「悪用」、健常者の購入相次ぐ
 2014.10. 4 *出た!特別養護老人ホームの内部留保は「2兆円」!  *社会福祉法人の1兆円の濡れ雑巾を絞れ!
 2014.10. 5 <佐世保高1殺害>佐世保同級生殺害:容疑の少女の父が自宅で自殺か
 2014.10. 7 低賃金だけが退職理由か
 2014.10. 7 【障害福祉計画】「無支援」の人は出せない  高知
 2014.10. 7 介護報酬、来年度6%以上引き下げ…財政審提言
 2014.10. 8 介護老人保健施設のトイレにスマホ仕込む 男性職員を停職3カ月の処分
 2014.10. 9 特養ホームやデイサービスの利用料下げ検討 政府
 2014.10. 9 介護サービスに質の評価 「成功報酬」導入の自治体も
 2014.10.10 障害者と地域住民の「縁側」の家 奈良で構想
 2014.10.11 収支差率10%超の介護事業は3つ 居宅介護支援はマイナス
 2014.10.12 高砂の特養問題:「採算取れないと判断」 事業者辞退、再公募へ /兵庫
 2014.10.13 経産省「ロボット介護機器導入実証事業」に電動歩行アシストカートが認可
 2014.10.14 長時間飛行も安心=補助犬用トイレ開設―成田空港
 2014.10.15 介護分野の人手不足解消へ、資格要件を緩和
 2014.10.15 最重要課題は人材確保、厚労省が介護報酬改定の基本的視点
 2014.10.16 報酬大幅引き下げ「介護崩壊招く」−全国老施協、財務省の提案など受け
 2014.10.16 介護分野の人手不足解消へ、資格要件を緩和
 2014.10.16 要介護認定の有効期間を延長、更新時は一律で上限2年へ
 2014.10.16 介護報酬大幅減に審議会で異論続出、経団連は財務省を支持
 2014.10.18 長崎の障がい者通所授産施設が洋菓子工場を建設、全国販売に挑戦
 2014.10.20 「待機老人」大都市で増加 「特養入れず」12万人
 2014.10.21 高齢者や障害者の積極的採用を表彰
 2014.10.21 警察庁が全国に指示、犯罪被害「障害者に配慮」 盲導犬オスカー事件契機に
 2014.10.21 学童保育相次ぐ不祥事、定員増やして大丈夫?
 2014.10.21 社会福祉法人利用者ら、祖谷の畑でソバを栽培 地元農家が協力
 2014.10.21 報酬だけに頼らない 太陽光発電に取り組む社福法人
 2014.10.21 余剰金の福祉活動使用義務づけ…社福法人改革案
 2014.10.21 財務省、介護報酬6%以上のマイナス改定を提言
 2014.10.21 介護施設・事業所、24時間巡回参入進まず 厚労省13年調査
 2014.10.22 大阪府内限定保育士導入へ 知事表明
 2014.10.22 社説:介護報酬改定 人材確保を最優先に
 2014.10.22 ポットのお湯と牛乳だけで作れるおやつ!高齢者向けの栄養補給用食品ブランドから新発売
 2014.10.23 訪問介護の報酬・基準に関する見直し案―厚労省 介護給付費分科会
 2014.10.23 定期巡回・随時対応型訪問介護看護の報酬・基準に関する見直し案―厚労省 介護給付費分科会
 2014.10.23 小規模多機能型居宅介護の報酬・基準に関する見直し案―厚労省 介護給付費分科会
 2014.10.23 複合型サービスの報酬・基準に関する見直し案―厚労省 介護給付費分科会
 2014.10.23 介護現場の声を反映した「使い捨て防水シーツ大判タイプ」発売
 2014.10.24 特養でほろ酔い、増える笑顔 広まる「居酒屋」の日
 2014.10.24 地域福祉研修会:「指示待たず 市町村が在り方自ら考えよう」 丸亀 /香川
 2014.10.25 詐欺容疑:医療法人理事長を逮捕…元職員名義で不正受給
 2014.10.25 従軍慰安婦問題の報道に関わった元朝日新聞記者の退職要求 大学脅迫  福祉施設で管理人
 2014.10.25 都障害者スポセン:18年度までに改修 知事が視察 /東京
 2014.10.25 看護学生流出防げ…千葉県、修学資金貸付枠を拡大
 2014.10.25 特養の相部屋代1万円軸に調整 個室や在宅と公平化、厚労省
 2014.10.26 <佐世保高1殺害>佐世保・高1殺害:児相幹部がパワハラ
 2014.10.27 認知障害の生活支援アプリ「あらた」がすごい!〈ASAhIパソコン〉
 2014.10.27 大リーグ青木「清めの塩」は与論産 障害者施設で手作り
 2014.10.27 <佐世保高1殺害>佐世保高1殺害:「病院からの丸投げだ」事件前に児相幹部
 2014.10.28 <ミニ・シンポジウム報告>「ブラック化と家事ハラの介護現場、現状と課題を考える」
 2014.10.28 風船カーリングで介護予防・リハビリ 京都・与謝野で考案
 2014.10.28 介護職員確保へ数値目標、厚労省 賃上げ・資格緩和
 2014.10.29 介護人材不足 処遇の改善を急ぎたい
 2014.10.29 小学校跡地に障害者働くレストランや直売所 ふくちやま福祉会
 2014.10.29 介護人材があと100万人足りない!ケアの現場で待ったなし「移民」への道
 2014.10.29 <佐世保高1殺害>児相 支援打診拒否 精神科医が対応批判
 2014.10.29 特養相部屋:自己負担に 室料月1万5000円徴収案
 2014.10.30 介護福祉施設サービスの報酬・基準について―厚労省 介護給付費分科会


■2014.10.1  注意欠如・多動性障害(ADHD)の症状を和らげる良薬は「運動」であるという研究報告
注意不足や衝動的な行動をとるなどの特徴をもつ「注意欠陥・多動性障害(ADHD)」は、原因について脳機能障害説や環境原因説など議論が分かれており、いまだ根本的な治療法が見つかっていません。しかし、ADHDの良薬は「運動」であるという研究結果が発表されています。

注意欠陥・多動性障害(ADHD)は不注意だったり衝動的な行動をとったりという特徴がある発達障害や行動障害で、脳機能の障害が原因であると考えられており、遺伝的な問題であるとの指摘もありますが、根本的な治療法はいまだ確立されておらず、症状を和らげるために投薬がされることが一般的です。

ADHDの症状を抱える子どもは、幼少期には「ルールに従って行動できない問題児」と捉えられることも多く、衝動的・突発的な行動を抑制するために薬剤が処方されることがありますが、安易に投薬することで子どもに与える副作用の危険性を指摘する見解もあります。

そんな、ADHDに関して近年、「運動」によって症状が改善したという複数の報告が上げられています。

ミシガン州立大学のアラン・スミス教授は、幼稚園児から小学校2年生の児童200人に、12週間にわたって登校前に有酸素運動させる実験を行ったところ、運動プログラムに参加したすべての子どもが算数の学力や国語力がアップし、脳機能の向上が確認できましたが、驚くべき事に、運動プログラムに参加したADHDの症状を持つ子どもは、健常な子どもよりもはるかに脳機能の改善が見られたとのこと。

スミス博士は「今回の研究は、ADHDの症状を抱える子どもにとって、座学よりも体を動かす方がはるかに症状の改善に効果的であること示しています」と述べています。また、スミス博士は小学生に8週間にわたって毎日26分間の運動を行わせたところ、ADHDの症状が和らいだことも確認しています。

ハーバード大学のジョン・レイティ准教授は、ほんの軽い運動であってもADHDの症状を改善する効果がある原因について、「運動によって気分が高揚し認知能力が高まるのは脳内にテストステロンやドーパミンが放出されるからで、これは(ADHDの治療薬として投与されている)アデロールのような興奮剤と同様のメカニズムだと考えられます」と述べています。

なお、アメリカでADHDの症状を緩和するために薬を処方された数は2007年から2011年だけを見ても3480万回から4840万回に増加しており、近年、ADHD治療薬の市場は数十億ドル(数千億円)規模にまで拡大してきているとのことで、ADHD増加の背景に莫大な利益を上げる製薬会社の存在も指摘されています。

これまで薬物投与が常識と考えられてきたADHDの治療法として、適度な「運動」が「最良の薬」となるのか、今後のさらなる研究に期待したいところです。

http://link.springer.com/article/10.1007%2Fs10802-014-9929-y

http://jad.sagepub.com/content/17/1/70.refs?patientinform-links=yes&legid=spjad;17/1/70

http://www.theatlantic.com/health/archive/2014/09/exercise-seems-to-be-beneficial-to-children/380844/

■2014.10.1  社説[介護職の離職]支える側の待遇改善を
「人の役に立ちたい」という高い志を抱いて介護の資格を取り、意欲をもって働き始めたのに、厳しい労働環境から仕事を辞め、転職する人が多い。

厚生労働省所管の公益財団法人「介護労働安定センター」が実施した2013年度介護労働実態調査によると、高齢者の家を訪ねる訪問介護員や、事業所で働く介護職員の年間の離職率が16・6%に上った。

前年度よりわずかながら改善したものの、ほかの産業と比べ高い状態が続いている。

複数回答で聞いた、働く上での悩みや不安では「人手が足りない」「仕事内容のわりに賃金が低い」という声のほか、「業務に対する社会的評価が低い」との不満もあった。

一方、ひと月の平均賃金は訪問介護員が約18万8千円、介護職員が約19万5千円。全産業の平均を約10万円も下回っている。

離職の背景にあるのは低い賃金水準ときつい仕事内容だ。平均の勤続年数も5年ほどと短く、長く働き続けることが困難であることを示す。

県内のデータに目を移すと、その数値はさらに厳しい。離職率は17・2%で、介護職員の平均賃金は約17万円。実に離職者の9割近くが、3年もたたないうちの早期離職である。

お年寄りの人生を支える働きがいのある仕事だと思って就職したものの、頑張りすぎて燃え尽きてしまう状況が浮かび上がる。



介護される側の人間が爆発的に増え、高齢化の問題が深刻化するのが「2025年問題」だ。団塊の世代が75歳に達する25年には、国民の5人に1人が75歳以上となる。

年を取ると肉体的にどうにもならないことが多くなり、要介護となるリスクが高まる。高齢者の4人に1人が認知症とその予備軍という時代にあって、認知症患者も増加するだろう。1人暮らしや高齢者夫婦のみの世帯も増えていく。

離職率の高さが業界全体の人材不足を招き、国内の介護労働者は現在約150万人で、担い手確保に四苦八苦している。このままだと、25年には100万人も足りなくなるという。

政府が構築を目指す「地域包括ケアシステム」は、重い要介護状態になっても、地域で最期まで自分らしく暮らす仕組みだ。しかし医療や介護サービスが行き届かなければ「住み慣れたわが家」には居続けられない。



誰もが介護予備軍となる長寿社会。介護の担い手に求めるのは、お年寄りの尊厳を大切にしたケアだが、担い手の誇りや生活もまた守られなければならない。

来年度の介護報酬改定に向けて、厚労省の審議会で議論が始まっている。専門職である介護職の賃金アップなど待遇改善の方向性を示すべきだ。 

「量」の確保と同時に、「質」を高めていく施策も必要である。高齢者の介護という尊い仕事へのやりがいが継続する教育や研修システムの充実も求めたい。

■2014.10.2  「刑事責任能力」とは 心神喪失者はなぜ無罪?
神戸の小1女児遺棄事件で「刑事責任能力」という言葉が取りざたされています。逮捕された容疑者は知的障害者が持つ手帳を持っていて、警察が刑事責任能力の有無について調べていると報じられていますが、ネット上では「責任能力なしで無罪になるのか」などの書き込みが見られます。

今回の事件は別にしても、心神喪失状態だと不起訴や無罪になるとされます。それはなぜなのか、容疑者の刑事責任能力とはどういう考え方なのか。


「心神喪失」と「心神耗弱」

刑法39条は
1項 心神喪失者の行為は、罰しない。
2項 心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する。

としています。行為に対して人は責任を持ちます。罪と裁かれれば罰(報い)を受けます。犯罪者は非難されるべきだからです。罰もまた責任です。報いを果たさせて「もうこりごりだ」と思いこませるのが刑罰の基本。物事の良し悪しの判断がまったく付かない状態で、犯罪に当たる行為に及んだとしても責任(非難)の問いようもないので心神喪失=責任無能力の者は罰しないという考え方で西欧を中心に近代刑法が登場した19世紀頃すでにハッキリと現れています。その頃同じような主張をしたマックノートン・ルールなどが日本の刑法の基盤となっています。「責任なければ刑罰なし」の原則とも呼ばれます。

仮に心神喪失の者が殺人を犯して懲役20年の判決を受け確定したとします。しかし彼・彼女は何でそうしたのかも、そうした事実も認識できません。要するにわけがわからないのです。それを懲役という罰を与えて非難されても、やはり意味が理解できません。よって矯正(欠点を直す)効果も期待できないのです。

さて、心神喪失(しんしんそうしつ)=責任無能力と判断されるのはなぜでしょう。多くの場合、精神障害、知的障害、あるいは酩酊状態などの意識障害が該当します。行為の善しあしや判断が全くできない状態で、パーソナリティ障害はほとんど認められません。

心神耗弱(しんしんこうじゃく)は部分責任能力であり、行為の善しあしや判断が著しくつきにくい状態を指します。やはり精神障害、知的障害、意識障害などに多くみられるのです。パーソナリティ障害はやはり認められないケースが目立つものの「耗弱」レベルの検討は必要との意見もあります。


障害イコール喪失・耗弱ではない

もちろん障害があるからといってイコール喪失ないし耗弱と認められはしません。裁判では、酔っ払い運転で人をひき殺した場合、その瞬間は心神喪失であったとしても、大酒を飲んで運転したらどうなるか飲む前に予見できたはずだから当たらないという判決も出ています。

起訴するかどうかを決める検察が容疑者が39条にあたるかもしれないと考えたら精神鑑定を行います。短い簡易鑑定と比較的長期に及ぶ正式鑑定があります。その結果が心神喪失であれば、あくまで参考ながら不起訴の可能性が高まります。心神耗弱も罪によっては不起訴としたり、求刑を軽くしたりします。

起訴後にも裁判所の判断で行われる公判鑑定があります。たいてい被告弁護人の依頼を受けて裁判官が職権でするかしないかを決めます。以上の結果を踏まえて裁判官が39条に該当するかを含めて判決を下します。心神喪失と判断すれば無罪です。

裁判所が鑑定を踏まえてどう判断するかについて重要な判例は、5人を殺害し、鑑定で精神障害の1つである統合失調症とされた男に対する1984年の最高裁決定があります。「犯行当時の病状、犯行前の生活状態、犯行の動機、犯行の態様等を総合して判定」するとしました。すなわち精神障害があるから責任能力がないとただちに言えないというのです。この判例は以後の裁判でもしばしば踏襲されているのです。少なくとも裁判所は精神障害=心神喪失・耗弱と認めず、現に心神喪失で無罪という判決は減っています。また、この決定は知的障害者にも当てはめられ、重度の精神遅滞はともかく、中・軽程度であればイコール心神耗弱とはなっていません。

もっとも検察が心神喪失で不起訴とする数はあまり変わっていません。それでも簡易鑑定から正式鑑定への流れにはなっていて、病院などに2、3か月拘束する鑑定留置が広がっています。


池田小児童殺傷事件を契機に新しい法律

ところで前述のマックノートン・ルールも「裁けない」で終えているのでなく「治療せよ」と訴えています。戦後に限っても少なくとも1980年代ぐらいまで「治療せよ」の方に重きが置かれず、ともすれば「裁けない」ばかりが注目され、現に犯罪があり、被害者や被害者家族また遺族が存在するにも関わらず、まるでなかったようになってしまう理不尽を味わった方も大勢いらっしゃいました。

この流れを変えたのが01年6月、大阪府池田市で起きた小学校児童・教師23人殺傷事件です。犯人の男は1999年に別の小学校でお茶に毒を混ぜたとして逮捕されたものの、起訴前の簡易鑑定は「統合失調症」の診断を下した結果、不起訴(起訴猶予)となり措置入院となりました。措置入院は自分や他人を傷つける恐れがある精神障害者に施される強制入院ですが、言い換えるとその恐れがないと判断されれば退院です。現にたった1か月後に出た後に犯罪を重ねた末の凶行でした。殺傷事件で検察が行った鑑定は「責任能力あり」。この時点で先の簡易鑑定が男の偽装である可能性がにわかに高まりました。


賛否両論の中、2005年7月、「心神喪失者等医療観察法」が施行されました。殺人など人を害する重大な罪を犯したものの、心神喪失などで検察が不起訴としたり裁判で無罪となったり、有罪でも執行猶予がついたケースにおいて、検察官が申し立て、裁判官と精神科医による鑑定入院に基づく審判を行います。必要なしとみなされた場合を除いて、通院や入院を決めて指定病院に移します。退院した後も保護観察所による精神保健観察が原則3年間続きます。また、場合によっては却下の審判もあり得ます。つまり責任能力ありとの決定で、多くが検察の簡易鑑定を覆しています。その場合、検察はただちに起訴へと踏み出すのです。

強制入院になった場合、いつ退院できるかというと「対象行為を行った際の精神障害を改善し、これに伴って同様の行為を行うことなく、社会に復帰することを促進する」まで。法律の過程で浮上して消えた「再犯のおそれなし」と実際にはそう変わらないように読めます。すると下手すれば一生入っていなければなりません。そうならないよう法の趣旨通り「同様の行為を行」わないまで治療できるのかが課題でしょう。


刑法39条をめぐる論点・課題

刑法39条には他にも論点があります。1つは撤廃論。これは一部の精神障害者自身も訴えています。刑法40条にかつて「いん唖者ノ行為ハ之ヲ罰セス又ハ其刑ヲ減軽ス」とありました。聴覚や言語機能に障害がある人を対象としています。それが1995の「刑法表記の平易化」の際に削除されました。「いん唖者」から差別的との指摘を受けたからです。ならば精神障害者にも裁判を受ける権利(憲法32条)があるはずだとの主張です。それに対して39条は「いん唖者」といった特定をしておらず、精神障害者や知的障害者だから裁判が受けられないという内容ではないとの反論があります。

「正門からの脱獄」論というのもあります。常習犯など罪を犯しやすい者を何らかの形で強制的に矯正したり治療をする措置が社会の安定には必要だという「保安処分」を巡る是非論です。人権侵害などの反対論で立ち消えとなっていますが、心神喪失者等医療観察法制定の論議で「これは保安処分の一種ではないか」という批判もありました。

鑑定医の質向上も急務です。日本司法精神医学会は2014年から「学会認定精神鑑定医制度」を始めました。来年3月にも初の認定証交付が行われる予定です。


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■坂東太郎(ばんどう・たろう) 毎日新聞記者などを経て現在、早稲田塾論文科講師、日本ニュース時事能力検定協会監事、十文字学園女子大学非常勤講師を務める。

■2014.10.2  健康寿命、男女とも延びる
厚生労働省は1日、介護などの必要がなく、日常生活に支障なく過ごせる「健康寿命」が2013年は男性が71.19歳、女性が74.21歳だったと発表した。前回調査の10年時点より男性が0.78歳、女性が0.59歳、いずれも延びた。厚労省は健康意識の高まりが背景にあるとみている。

■2014.10.3  障害者虐待31件55人 施設職員などの行為増加 [熊本県]
県は2013年度、障害者が家族や福祉施設の職員などから受けた虐待の件数と人数が20件、31人だったとの集計結果をまとめた。熊本労働局(熊本市)が7月に発表した障害者を雇用する使用者による虐待11件、24人を含めると計31件、55人に上った。

12年度と比べると、障害者福祉施設などの職員による虐待が増えており、県障がい者支援課は「施設の代表のほか、入って間もない職員などへの研修に力を入れたい」としている。

12年10月に施行された障害者虐待防止法は、虐待を受けたと思われる障害者を見つけた場合、自治体に通報するよう定めている。同課によると、13年度の相談や通報が計92件あり、このうち31件で虐待を確認したという。

31件、55人の内訳は、
(1)家族や同居人など養護者による虐待13件、13人
(2)障害者福祉施設や障害福祉サービス事業所の職員による虐待7件、18人
(3)障害者を雇用する事業主や上司などによる虐待11件、24人。

(1)は殴る、蹴るなどの身体的虐待、
(2)は強い口調での叱責(しっせき)や「くさい」など不適切な言動をする心理的虐待が最も多かった。
(3)では最低賃金未満しか支払わなかった「経済的虐待」が、11件中7件を占めた。

県などは、虐待の事実を確認した施設から、再発防止策などを示した改善計画書などの提出を受けた。県は「虐待が疑われる場合は迷わず、相談してほしい」と呼び掛けている。

■2014.10.3  保育士が入所の知的障害児ら虐待 計4件、滋賀県が謝罪
滋賀県は3日、知的障害児らの入所施設、県立近江学園(湖南市)で、50代の女性保育士が小学生の女児の髪を引っ張るなど、3人に計4件の虐待をしていたと明らかにした。県は3人の保護者に謝罪した。

この日、県議会の厚生・産業常任委員会で報告した。

県障害福祉課によると、(1)6月21日、パニック状態にある女児を別室に運ぶ時に髪の毛を引っ張った(2)6月ごろ、中学生の女子が荷物の片付け中に走り出したため頭を1回たたいた(3)同月ごろ、同じ女子に「何もできない。いらんことだけして」などと暴言を浴びせた(4)同月ごろ高校生の女子に、就寝時には床の上に畳とマットを敷かないといけないのに畳を敷かなかった――の4件。

6月22日に別の職員が上司に「行き過ぎた支援があった」と報告し、県が調査していた。保育士は「当時は必死に対応していたので(何をしたか)よく覚えていない」と説明したが、後に自身の行為を指摘され、それは虐待だったと認めたという。

同園では昨年12月にも別の保育士が入所する児童に暴言を浴びせる虐待があり再発防止に取り組んでいた。県は「入所する児童や生徒、保護者の信頼を裏切ることになり心からおわびしたい」と話した。

■2014.10.3  香川の会社が「世界最小車いす」 自身の不便さ商品に生かす
香川県東かがわ市の手袋・キャリーバッグメーカー「スワニー」が“世界最小車いす”を開発した。生後6カ月でポリオ(小児まひ)にかかり、12年前に車いす生活を余儀なくされた同社の三好鋭郎(えつお)会長(74)が、不便に思った経験を商品に生かし、コンパクト化に成功。「出かける機会が増え、仕事の幅も広がる」と話している。

三好会長は「ポリオ症候群」のために3年間車いす生活を送った。そこで気づいたのが、市販品は足置きがさまたげになって洗面台に当たる、タクシーのトランクに入らない、駅の改札も通らない−などだった。

3年を費やして足置きを肘掛けの下に跳ね上げて収納させる仕組みを開発(特許申請中)。座席下にある「Xパイプ」を湾曲させることで座席シートを挟まず、車幅を約7センチ縮めた。さらに、ブレーキを車輪中心部に内蔵して6センチ狭くし、標準的な自走式の市販品と比べ、折りたたんだ全長が25センチ短い73センチ、幅が13センチ狭い22センチのコンパクトな車いすを完成させた。

「世界最小車いす」は、県の「新商品生産による新事業分野開拓者」に認定され、同車いすを県の施設で使用する場合、100万円分を県が買い取り、販路拡大を支援する。同車いすの価格は7万8千円(非課税)。これまでに介護タクシー運営会社などが購入している。

三好会長の思いは、売り上げよりも「理想の車いすを世に出すこと」。8年前にX金具を開発したが、既に特許が申請されていることなどから、商品化に至らなかった。

新商品開発にあたって、大きな戦力になったのが同社のバッグ事業部主任、板東慶治さん(44)だ。「足が不自由でも設計などの仕事ができる」という“強み”を生かし、三好会長のアイデアをコンピューターの設計図に起こし、商品化へ導いた。板東さんは「“こういう車いすを探していた”という言葉を購入者から聞いたときが一番うれしかった」と話す。

同社が障害者向け商品開発に優れている理由は、障害を持つ人と同じ目線で商品開発を行っていること。「障害者に愛されるものは、健常者にも喜ばれる」。その信念が、多くのファンを獲得している。

■2014.10.3  車いす、ブレーキ進化 障害物で止まる 下り坂で減速
車いすが、安全面で進化している。下り坂での急加速や段差での転倒事故を防ぐため、各社が仕組みづくりを競っている。車のような「自動ブレーキ」を付けた電動車いすの開発も進んでいる。

1日、東京ビッグサイトで始まった「国際福祉機器展」には、国内外約580社が、高齢者や障害者向けの介護用品など約2万点を展示。3日まで開かれる。

自動車メーカーのスズキは、試作中の電動車いす「UTコンセプト」=写真左=を展示。段差や障害物をセンサーで感知し、数十センチ前で停止する「自動ブレーキ」を付けたのが特徴だ。操作ミスを防ぐことができ、事故を減らすことができる。

ただ、実用化には壁もある。電動車いすは主に狭い歩道を走るため、歩行者や自転車に敏感に反応しすぎればかえって不便になる。障害物とそうでないものを見分ける「高い精度のセンサーが必要になる」(開発担当者)。

自動扉や鉄道ブレーキを作るナブテスコ(東京)は、手押し式の歩行補助車「コンパル」=写真右、昨年発売=に「自動ブレーキ」の機能を付けた。下り坂で自動で減速する。

■2014.10.3  介護保険事業者、利益率は安定 厚労省、報酬改定へ調査
介護保険サービスの値段である介護報酬見直しに向けて、厚生労働省は3日、施設や在宅サービス事業所の経営状況を調べた「経営実態調査」の結果を公表した。収入に対する利益の割合(利益率)は大半の事業所で5〜11%台を確保しており、担当者は「安定的に事業運営が行われる水準は確保出来ている」と評価している。

調査結果は、政府が3年ごとに行う介護報酬改定の基礎データとなる。全体的に高めの利益率だった背景には、介護職員の処遇改善を主な目的とした前回プラス改定(2012年度)の効果があったとみられる。

ただし13年の全産業の常勤労働者の平均給与額が月32万4千円なのに対し、介護職員は月23万8千円との別の調査結果もある。厚労省側は、介護職員の収入は依然低いとしてプラス改定を求める方針だが、財務省は今回の結果をもとに難色を示すことも予想される。今後、年末の決着に向けた攻防が本格化する。

調査は4月、無作為で抽出した約3万3千の施設や事業所を対象に実施。48・4%から回答を得た。

施設サービスの利益率では、介護老人福祉施設が3年前の前回調査より0・6ポイント減ったものの、8・7%だった。介護療養型医療施設は8・2%(前回比1・5ポイント減)、介護老人保健施設が5・6%(同4・3ポイント減)だった。地域密着型介護老人福祉施設は6・1ポイント増えて8・0%となった。

在宅サービスでは認知症グループホームが11・2%(同2・8ポイント増)、通所介護が10・6%(同1・0ポイント減)、訪問介護が7・4%(同2・3ポイント増)だった。一方、介護計画を作るケアマネジャーの事業所は赤字で、前回から1・6ポイント改善したもののマイナス1・0%だった。

■2014.10.3  保育士が入所の知的障害児ら虐待 計4件、滋賀県が謝罪
滋賀県は3日、知的障害児らの入所施設、県立近江学園(湖南市)で、50代の女性保育士が小学生の女児の髪を引っ張るなど、3人に計4件の虐待をしていたと明らかにした。県は3人の保護者に謝罪した。

この日、県議会の厚生・産業常任委員会で報告した。

県障害福祉課によると、@6月21日、パニック状態にある女児を別室に運ぶ時に髪の毛を引っ張ったA6月ごろ、中学生の女子が荷物の片付け中に走り出したため頭を1回たたいたB同月ごろ、同じ女子に「何もできない。いらんことだけして」などと暴言を浴びせたC同月ごろ高校生の女子に、就寝時には床の上に畳とマットを敷かないといけないのに畳を敷かなかった――の4件。

6月22日に別の職員が上司に「行き過ぎた支援があった」と報告し、県が調査していた。保育士は「当時は必死に対応していたので(何をしたか)よく覚えていない」と説明したが、後に自身の行為を指摘され、それは虐待だったと認めたという。

同園では昨年12月にも別の保育士が入所する児童に暴言を浴びせる虐待があり再発防止に取り組んでいた。県は「入所する児童や生徒、保護者の信頼を裏切ることになり心からおわびしたい」と話した。

■2014.10.3  老人介護施設で集団感染か 南魚沼
南魚沼市五日町の介護老人保健施設「越南苑」を運営する「越南会」は2日、62〜96歳の入所者17人が発熱し、このうち95歳女性と64歳男性が肺炎で亡くなったと発表した。ウイルスなどによる集団感染の疑いがあるとして、県と原因を調べている。

越南会によると、17人はいずれも認知症専門棟の寿棟(定員50人)の入所者で、9月27日から10月2日にかけて発熱。全員が風邪や肺炎と診断された。1日午後になって2人が死亡した。2日現在、死亡した2人を除く15人のうち9人は熱が下がっている。施設の職員や別棟の利用者などに症状は確認されていない。

越南会では1日、事実関係を県に報告。県とともにウイルスなどの検査を進めているが、原因などは分かっていない。施設では入所者への面会を制限し、マスク着用や手洗い、清掃の徹底などの対応をしている。

県によると、県内の他の高齢者施設では、同様の症状の集団発生は確認されていない。県高齢福祉保健課は「状況を把握してから今後の対応を決める」としている。

越南会の事務長は新潟日報社の取材に対し「現時点では発熱の原因は分かっていないが、感染拡大防止に向けて対応したい」と話した。

越南苑は越南会が運営する五日町病院に併設。2日現在188人が入所している。

■2014.10.3  「有料老人ホーム110番」に寄せられた相談の内容がひどい
有料老人ホームに関わる悩みや不満を相談できる「有料老人ホーム110番」が、10月28日から3日間の日程で今年も行われる。


受け付け時間は10時から16時。電話番号は0120ー180ー885だ。


企画・運営する全国有料老人ホーム協会は2日、昨年度に実施した相談で寄せられた苦情の内容を明らかにした。入居者の扱いがかなりひどかったり、報酬だけを考えるケアマネジャーがいたりと、劣悪な施設が存在している実態が報告されている。

苦情の内容には、

・食事がまずい。食材が貧弱で、冷めたカレーが出るなど愛情がこもっていない

・配管の型が悪いのか、ドブ臭いにおいがする

・職員の確保が難しいようで、入れ替わりが頻繁。施設長も年に4〜5回交代する。職員に誠意はなく極めて事務的な態度で、とても高齢者のケアに携わる人とは思えない

・要介護認定の調査のとき、ケアマネに「すべてできませんと答えてくれ」としつこく言われた。オーナーがケアマネに、入居者全員の要介護度を1ランク重くするよう指示し、報酬を増大させようと考えている様子

・買い物代行の日と違う日にバナナを頼んだら、1500円出せと言われた

・「おむつゼロ、車いすゼロ」を目指し、リハビリも充実しているとの営業で母が入居したが、十分な介護を受けられていない。薬を3週間飲ませておらず、症状が出始めて気付いた。尿路感染や褥瘡になり、おむつを使いたいと言われているなどがあった。似たようなケースが思い当たる人は、すぐにでも相談すべきだ。もちろん「有料老人ホーム110番」では、ここまでひどいケースでなくても話を聞いてくれる。

■2014.10.4  医師ら35人を行政処分 厚労省
厚生労働省は3日、医道審議会医道分科会の答申を受け、医師24人、歯科医師11人の計35人への行政処分を発表した。免許取り消しは6人、3カ月〜3年の業務停止は26人、戒告は3人。処分の発効は17日。

免許取り消しのうちの1人は大学院の教授(当時)で、自分の研究室の大学院生にわいせつな行為をし、有罪が確定した。また、飲酒運転などをした医師らに対し、これまでより業務停止の期間を長くした。

免許取り消し処分を受けた医師、歯科医師は次の通り。(呼称略、所属は当時)

井関正栄=覚醒剤取締法違反▽大沢歯科医院(東京都足立区)
秋場元=大麻取締法違反▽佐世保同仁会病院(長崎県佐世保市)
友広慎吾=殺人など▽介護老人保健施設銀玲(群馬県渋川市)
平形賢=傷害致死▽国保旭中央病院(千葉県旭市)
木村亮平=強制わいせつ、住居侵入など▽筑波大学(茨城県つくば市)
今川重彦=強制わいせつ

■2014.10.4  福祉車両非課税を「悪用」、健常者の購入相次ぐ
障害者向けの「福祉車両」を、健常者が買う例が相次いでいることが、自動車業界の調査で分かった。

福祉車両には消費税を課税しないという障害者向けの特例を「悪用」し、安さ目的で車を買うことが目立つという。車業界は、来年10月に消費税率が10%に上がれば、こうした事態がさらに増えるとして、政府・与党に対応を求めている。

福祉車両は、普通の車に、車いす用の昇降装置をつけたり、足が不自由な人向けに特殊なアクセルをつけたりしたものだ。2013年度の販売台数は4万4189台だった。

日本自動車工業会(自工会)によると、あるメーカーが顧客にアンケート調査をしたところ、車いす仕様の福祉車両では、今年6月までの2年間に販売された約1万2000台のうち半数近い約5500台が、障害とは関係なく通常の車として使われていた。

■2014.10.4  *出た!特別養護老人ホームの内部留保は「2兆円」!  *社会福祉法人の1兆円の濡れ雑巾を絞れ!
鈴木亘(すずき・わたる)学習院大学経済学部教授 1970年生まれ
上智大学経済学部卒 経済学博士(大阪大学)


出た!特別養護老人ホームの内部留保は「2兆円」! 2011年12月08日

かねてより黒字を貯め込みすぎているとの批判のあった特別養護老人ホームを経営する「社会福祉法人」であるが、12/5に行われた厚労省の審議会(社会保障審議会・介護給付費分科会)において、その驚くべき実態が正式に報告された。

厚労省・老健局が明らかにしたところによると、社会福祉法人立の特別養護老人ホームの内部留保は、一施設当たり平均 3億782万円で、施設の1年分の収入・支出を超えるものである。

公益法人として適正な内部留保とされるのは収入・支出の30%以下であるから、それをはるかに超える「黒字ため込み」の実態である。

今回のデータは、社会福祉法人が経営する特別養護老人ホームの約6分の1にあたる1087施設の平均値であるとのことなので、この金額を施設数分掛け合わせると、20,076億円、つまりざっと「2兆円」と言うことになる。


以前、私はこの呆れた社会福祉法人の内部留保について、その問題点も含めて詳しく記事を書いたことがある。

「税と社会保障の一体改革:社会福祉法人の1兆円の濡れ雑巾を絞れ!」


その際には、「社会福祉による社会への貢献を目的とする法人が、そのような露骨な黒字ため込みをするはずがない」「社会福祉法人に余裕がないからこそ、介護職員は低賃金にあえいでいる」等と、ずいぶん各方面からおしかりを受けた。

しかし、今回、厚労省が明らかにした実態は、私の想像をはるかに超える水準の「2兆円」という規模である。各方面の方々も、さぞ、びっくりされていることだろう。


内部留保に対する苦しい言い訳

つまり、特別養護老人ホームの経営者は、過酷な労働にあえぐ介護職員に十分な賃金の分配を行わなわず、老人ホームに入れない40万人の待機老人がいても施設を増やさず、ひたすらに黒字を貯め込んでいるのである。社会福祉の公益性を謳っている法人としては、まさに「社会に対する背信行為」というべきである。

結果の発表に際して、厚労省は、「内部留保には修繕のための積立金なども含まれている」と説明したという。これは、完全に間違いではないけれども、バイアスのある情報操作である。

施設の修繕などに充てる部分は、3億782万円の中の1/5程度を占めるにすぎない「その他積立金」の6581万円のうち、そのまた一部に過ぎない。内部留保の大半(4/5)は、毎年発生している黒字の累積額である「次期繰越活動収支差額」の2億4202万円なのである。

この膨大な内部留保について、特別養護老人ホームの経営者たちの業界団体は、「何十年後、施設を建て直す際に必要だから、今貯めているのだ」と説明することがある。これも、完全に間違いとは言えないが、大きな嘘が含まれる説明である。

実は、特別養護老人ホームには、施設を建てる際、施設整備費という補助金があり、建物の建設費の約半分の費用を自治体が公費(税金)で補助する制度となっている(2005年以前には、建設費の3/4が補助されていた)。残りの建設費も、厚労省の独立行政法人である医療福祉機構が、きわめて低利で貸付をしてくれる。

つまり、将来の建て替えには、何の心配も用意もいらないのである。加えて、社会福祉法人には、消費税や固定資産税、不動産取得税を含め、全ての税金が無税となっているという大盤振る舞いの優遇税制も付いている。


介護報酬引き上げを要求する前に、介護労働者に分配せよ

実際、株式会社やNPOが作る「有料老人ホーム」には、そのような補助金や優遇税制は全くなく、相対的に不利な経営を行っている。彼らは、銀行などから融資を受けて借金を背負い、土地建物をまずはじめに建設し、その投資資金を、介護報酬や入居費等の形で、何十年もかけて回収してゆくのが当たり前なのである。

そして、実は重要なことであるが、こういう普通の経営をするために、介護のサービス費用である「介護報酬」には、法律上、施設の整備代が上乗せされて含まれているのである。つまり、介護保険制度は、「建物の建設費は、介護報酬から回収しなさい」という制度に、そもそもなっているのである。

この介護報酬の状況は、特別養護老人ホームの場合も全く同じである。つまり、特別養護老人ホームを経営する社会福祉法人は、将来の建設費のために、内部留保を貯める理由など、ほとんど存在しないのである。

さらに、社会福祉法人の業界団体は、今回の介護報酬の改定で、介護報酬引き上げを要求しているが、これはまったく理解不能というべきである。彼らは、まず貯め込みすぎた内部留保を吐き出し、従業員にきちんと分配することから初め、公益法人としての襟を正すべきであろう。介護報酬引き上げに、我々の税金や保険料をつぎ込むのは、それからである。

また、待機老人を解消するために投資(拡張、新施設建設)を行わない社会福祉法人の内部留保には、大きく課税をするようにしてはどうか。もちろん、世襲する場合(社会福祉法人は、特定郵便局のように、事実上、世襲制の制度となっている)の相続税も徴収する。腰の重い社会福祉法人の2代目も、こうすれば新規投資をせざるを得なくなるだろう。

実は、今回、厚労省が公開したデータは、先日の行政刷新会議・提案型政策仕分けにおいて、仕分け人となった私が厚労省を問い詰め、その場で公開を要求したものである。私が厳しく問い詰める中で、さすがに、特養の肩は持てないと判断したのか、老健局長が公開を約束した。最後は、老健局長は笑い出しておられた。

介護報酬改定に間に合うように、作業を急いでくれた老健局長とその部下の老健局の方々には感謝したいが、まだ全体の1/6であるから、完全な公開を今後求めたい。

―ところで、マスコミから無意味だとさんざん批判された政策仕分けであるが、このように少しは役に立っている部分もあるのである。そのほかにも、重要なことがいくつも明らかになったり、決まったりしたが、マスコミはせいぜい財務省のブリーフィング通りの情報を流したり、厚労省の言い訳取材の情報を流したに過ぎない。年末で時間がなかなか作れないが、政策仕分けのことも、きちんと書いたり、話したりしたいと思っている。

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税と社会保障の一体改革:社会福祉法人の1兆円の濡れ雑巾を絞れ! 2011年02月17日

◇改革案を「請求書」と呼ぶ厚労省◇
現在、政府において、「税と社会保障の一体改革」の政策論議が急ピッチで行われている。

今 後、4月までに厚労省内で社会保障制度の改革案がとりまとめられ、6月までに消費税引上げを含む税制改革案が示される予定である。2月5日からは早速、各 界の有識者を集めた「集中検討会議」がスタートし、経済・労働団体やマスコミの公開ヒアリングが、順次行われることになっている。

こうした議論を主導する経済財政相に、与謝野馨氏が起用されたことからも明らかなように、今回の改革のベクトルは、完全に増税路線に向いている。具体的には、社会保障財源として、5%程度の消費税引上げが打ち出されることは、まず必至とみられる。

このため、4月までにまとめられる厚労省改革案は、消費税が引上げられることを織り込んで、またもや大盤振る舞いの公費投入、給付拡大案が提出される可能性が高い。厚労省内では現在、年金、医療、介護、子育て、雇用、貧困・格差対策の6分野で、各専門チームが組織され、改革の具体案作りが進んでいるが、彼らは驚くべきことに、自らの改革案を「請求書」と呼んではばからない。

つまり、消費税引上げを当て込んで、ここぞとばかりに理想的な公費拡大、給付拡大案をつくり、政府に請求書を叩きつけるというわけである。これでは、消費税が引上げられたとしても、右から左に財源が消えてしまうだけのことであるから、とても社会保障制度の赤字財政を再建し、将来も維持可能な制度をつくることはできない。



◇歳出削減を議論しないことは現実的か◇
それにしても、今回の改革論議の奇妙さは、給付効率化や無駄の削減といった歳出削減策がまったく議論の俎上に上っていないことである。社会保障財政を建て直すためには、じつは5%の消費税引上げ程度ではまったく財源は足りないから(もちろん、厚労省の請求書を受け付ければ、現状と何も変わらない)、歳入増だけではなく、歳出削減を図ることが車の両輪のように不可欠である。

民主党マニュフェストをもちだすのは、すでに「いまさら感」があるかもしれないが、しかし、マニュフェストには消費税増税ではなく、歳出の無駄削減や組み換えによって社会保障財源をつくることが明記されているのだ。そして、そのマニュフェストを信じて、国民は投票したのである。いまも国民の多くは、歳出削減を限界までやってから、消費税引上げを議論すべきと考えている。

これに対して、与謝野氏は、2月10日の衆院予算委員会で、「歳出削減は容易ではない。まずムダ削減をやり、次に経済成長、次に(増税で)税収となると、何もやらないのと同じだ」と述べ、歳出削減を行うことに否定的な考えを示した。

歳出削減は、医療、介護、保育業界の既得権に踏み込むことになる。与謝野氏の発言は、政権基盤の惰弱な菅政権には、とても既得権益団体からの反対を押し切る政治力がないとみての現実的判断かもしれないが、それでは「社会保障問題のプロ」を自認する政治家としては、余りにアイディアがないといわざるを得ない。

◇社会保障業界は濡れ雑巾状態◇
まず、事実認識として、社会保障業界には膨大な無駄・非効率がある。その高コスト体質を支えるために投じられている公費、補助金も莫大である。よく「乾いた雑巾をさらに絞る歳出削減策」などという表現があるが、医療、施設介護、保育業界は、水が滴る「ズブズブの濡れ雑巾」といってもよい状況である。

我が国の社会保障分野の供給面の特徴は、かつての金融分野と同様、「護送船団方式」をとって、医療機関、介護施設、認可保育所等を手厚く「産業保護」しているということにある。

すなわち、医療分野では診療報酬、介護分野では介護報酬、保育分野では保育料というように、すべての利用料金は公定価格に規制されており、経営努力の有無にかかわらず、ほぼ同じ料金が支払われている。これでは、努力するものが馬鹿をみる制度であり、効率化の動機がまったく働かない。

また、公立教育と同じで、優等生にレベルを合わせては脱落者が出るため、もっとも効率の悪い落ちこぼれでも経営が成り立つように公定価格が設定される。このため、大変な非効率が内包されることになるのである。

また、医療機関は医療法人、特別養護老人ホームは社会福祉法人、認可保育所もほぼ社会福祉法人というように、実質的に特殊な法人格のみに参入規制をしていることから、新規参入が進まず、競争相手が存在しないために高コスト体質が温存される。

参入が途絶え、競争にさらされない各事業者たちは、互いに仲間同士となり、巨大な業界団体をつくって、補助金増額や規制強化を求めての政治活動(レント・シーキング)を行う。こうして、天下り官僚や族議員を巻き込んで、社会保障分野に、「鉄のトライアングル」と呼ぶべき既得権益構造ができあがっているのである。

たしかにこの強固な既得権益構造を打ち破り、歳出削減に舵を切るのは容易ではないが、その攻略方法は皆無とはいえない。ボーリングのセンターピンのように、ここが崩れれば、既得権の塊が徐々に崩れだしてくるポイントがある。そのひとつが、「社会福祉法人改革」である。

◇社会福祉法人経営の恐るべき実態◇
「社会福祉法人(通称、社福)」といってもピンとくる人は少ないと思うが、社会福祉法人とは、主に特別養護老人ホームや私立認可保育所を経営する特殊な法人格である。公立の施設を除くと、ほぼすべての特別養護老人ホーム、ほとんどの私立認可保育所は、社会福祉法人によって設立されている。

社会福祉法人を設立するには、一般的に、オーナーが自分の土地を寄付しなければならないが、施設建設には建物代の約4分の3を自治体が補助金で賄ってくれる。残りの資金も厚労省の独立行政法人である医療福祉機構が、きわめて低利で貸付をしてくれる。

土地を寄付したオーナーには、その特権として家族・同族経営が認められており、相続税が無税であるために(そのほか、消費税、法人税、固定資産税などすべての税金が免除されている)、実質的にオーナーの二代目が経営を継ぐという、世襲制度となっている。

このため、家族・同族役員の役員報酬をお手盛りで高く設定できるほか、いずれ相続される施設設備を過剰に豪華にする動機があり、大変な高コスト体質が維持されている。一昨年、東京都の猪瀬副知事がプロジェクトチームをつくって調査したところ、東京都内の特別養護老人ホームの建設費は1ベットあたり約2千万円という、途方もない建設費がかかっていることが判明した(東京都「少子高齢時代にふさわしい新たな「すまい」の実現に向けて(少子高齢時代にふさわしい新たな「すまい」実現プロジェクト報告書)」)。

また、特別養護老人ホームの業界団体である全国老人福祉施設協議会(通称、老施協)が、昨年、札幌市で行った全国大会(第67回全国老人福祉施設大会)で明らかにしたところによると、社会福祉法人全体の内部留保の総額は、何と1兆円近くに上っているということだ(中村博彦・自民党参院議員(全国老施協常任顧問)の特別講演「介護新時代―押し寄せる団塊世代の高齢者」)。

特別養護老人ホームや私立認可保育所の収入のほとんどは公費や補助金であるから、驚くべきことに、彼らは国民の税金からこれだけの内部留保を溜め込んだのである。

よく考えれば、施設介護、保育のどちらの分野も、待機老人、待機児童問題が社会問題化しており、施設の供給増が期待されている状況である。また、やはりどちらの分野も、介護労働者、私立認可保育所の保育士の賃金はとても低く、労働力不足問題が深刻化している状態である。

それにもかかわらず、供給増を行わず、労働者に十分な賃金を分配もせずに、オーナーとその家族・同族が、高額の役員報酬のほかに、内部留保を1兆円溜め込んでいるというのは、社会的に許される問題ではない。社会福祉の公益性を謳っている法人としては、まさに「社会に対する背信行為」というべきである。

◇社会福祉法人改革は、改革のセンターピン◇
もし、社会福祉法人のこのような現状が国民に広く知られているのであれば、こうしたズブズブの濡れ雑巾を放置したまま、消費税引上げに納得する国民など存在するのだろうか。少なくとも消費税引上げの議論と同時並行で、社会福祉法人へ投じられている公費、補助金、さまざまな優遇措置を見直しがはかられるべきである。

実際には、社会福祉法人の会計は一般には公開されておらず(社会福祉法人会計という分かりづらい特殊な会計報告書を事務所におき、利用者や関係者が申し出た際にのみ、みせるということになっている。もちろん、会計報告を受けている各自治体や国は実態を把握している)、中村氏がうっかり口を滑らさなければ、われわれ研究者にも実態が分からなかったところである。

まずは、政府がこの内部留保の実態を明らかにし、待機老人、待機児童問題にまったく対処せずに懐を肥やす社会福祉法人について、国民的な議論を喚起すればよい。いくら政治力のない菅政権でも、厚労省が把握している統計を、国民に公開するぐらいのことはできるだろう。

これによって、社会福祉法人が国民の怒りを買うことは必然であるから、それに乗って内部留保の返還を求め、菅政権は、まずは1兆円の埋蔵金発掘という手柄を直ぐに立てることができる。また、社会福祉法人改革が進むことによって、その運営費の効率化が図られるから、毎年の歳出削減にもつながる。さらに、社会福祉法人改革の次には、医療法人改革、公立施設改革と飛び火してゆくことになるだろうから、社会保障業界全体の効率化、歳出削減に繋がることであろう。

国民の熱烈な支持があれば、既得権益の壁がいくら厚くても、歳出削減に取り組めることは、小泉政権で証明済みである。要は、やり方次第なのである。小泉政権で、政調会長として郵政改革に取り組んだ与謝野氏に、歳出改革ができないはずがない。与謝野氏の今後に期待をしたい。

■2014.10.5  <佐世保高1殺害>佐世保同級生殺害:容疑の少女の父が自宅で自殺か
長崎県佐世保市の高1同級生殺害事件で、殺人容疑で逮捕された少女(16)の父親が5日午後4時ごろ、同市内の自宅で首をつっているのが見つかった。その後、死亡が確認された。県警佐世保署によると、目立った外傷はなく、自殺を図ったとみられるという。

同署などによると、発見した関係者から119番があった。現場には、争ったような形跡はなかったという。

少女は、1人で暮らしていた同市内のマンションで、同級生の女子生徒(当時15歳)を殺害したとして7月27日に逮捕された。

父親は事件後、弁護士を通じて書面で「どんな理由、原因でも娘の行為は許されるものではない。おわびの言葉さえ見つからない」と述べていた。

■2014.10.7  低賃金だけが退職理由か
楢原多計志(共同通信社客員論説委員)

また介護職員の処遇改善が論点になっている。2015年4月の介護報酬改定をめぐる厚労省の社会保障審議会介護給付費分科会の審議では、「処遇改善加算の継続をお願いしたい」「基本報酬への繰り入れを」と介護事業者団体から報酬引き上げを求める要望が強く、最大の論点になっている。なぜ、介護職員が集まらないのか、どうして定着しないのか、介護事業者に責任はないのか。原因を正確に把握しない限り、慢性的な人材不足が続くだろう。


◆最大100万人
厚労省の予測によると、13年度に介護保険サービスの利用者は556万500人。前年より22万9,900人増えた。伸び率が高いのが要介護度の低い「要支援1」「要支援2」の利用者だ。要介護度が重くならないよう予防の視点から介護予防サービスを使うケースが増えている。

このまま進めば、介護の必要性が高まる75歳以上(後期高齢者)が25年には2,179万人に達し、全人口の約18.1%を占める。15年推計値より5%余も増える計算だ。65歳以上の高齢者世帯でみると、25年には世帯主が65歳以上の単独世帯や夫婦のみの世帯が25.7%となり、約4世帯に1世帯が高齢者世帯となる。

これに対し、介護職員や看護職員は慢性的に不足している。12年度データによると、介護職員数は約149万人。厚労省は25年問題をクリアするには237万人〜249万人が必要になる。つまり最大で約100万人以上を補充しなければならない。生産年齢人口(15歳から64歳)の減少もあり、必要な介護職員を確保できなくなれば、介護保険制度のサービス低下を招きかねない。


◆運営・理念に不満
全体として介護サービスが拡大しているにもかかわらず、なぜ介護職員が足りないのか。マスコミは「低賃金」「3K職場」と報じているが、内情は少し違う。

離職率をみると、全産業が14.8%なのに対し、ホームヘルパーなど訪問介護員14.0%、特別養護老人ホーム(特養)などの施設介護員17.7%。介護職員の離職率が飛び抜けて高いわけではない。非常勤の訪問介護員は全産業より低い。

賃金はどうか。単純に賃金水準の比較するのは難しい。あえて勤続1年未満の20歳〜24歳の所定内給与額を比べると、全産業が19万2千2百円なのに対し、福祉施設介護職員は男性17万9千5百円。女性17万6千4百円と低いが、零細な介護事業所が多いことを考えれば、大差とは言い難いだろう。

では、離職の理由は何か。財団法人社会福祉振興・試験センターの12年度調査によると、介護のプロともえ言える介護福祉士の離職理由(複数回答)のトップは「結婚、出産、育児」で、一般企業と変わらない。2番は「法人・事業所の理念や運営のあり方に不満があった」。3番「職場の人間関係に問題があった」と続き、「収入が少なかった」は4番目だ。賃金への不満もあるが、家庭の事情や事業所や経営者への不満や人間関係の悪化から職場を去るケースが多いことが分かる。


◆非就業率4割
厚労省や自治体が期待を寄せているのが国家資格である介護福祉士だ。13年9月時点、約108万6千人が登録しているが、実際に働いているのは約63万4千人にすぎず、介護現場で働いていない「潜在介護福祉士」が約45万2千人もいる。“非就業率”は実に41.6%。これでは国家資格が泣く。

一方、社会保障審議会福祉部会は人材確保とともに社会福祉法人の見直しを議題に審議を進めている。年度内に特養などを運営する社会福祉法人に対し、経営の透明化(財務情報のなどの開示や評議員会の設置義務化など)や監査の強化などの法制化を諮問・答申する見通しだ。

介護職員の離職には、賃金以外にも、「世襲的な役員人事」「不透明な役員報酬」「丼勘定の会計処理」「昇給制度や退職金制度の不備」などの不満が横たわっている。介護報酬の底上げも必要だが、介護事業そのものにメスを入れる時だろう。

■2014.10.7  【障害福祉計画】「無支援」の人は出せない  高知
障害者の中から、介助や施設入所などの支援を受けられなくなる人が出てくるかもしれない。

障害者総合支援法などの改正で来年4月から、福祉サービスを受ける際には「相談支援専門員」に支援計画を作ってもらうことが義務化される。ところが計画の作成率が低調で全国で4割、本県では3割にとどまっている。

支援を受けられない人など一人も出してはならない。行政の早急な対応が求められる。

障害者への福祉サービスは従来、本人や家族の希望に基づき市町村が認定してきた。2012年度から始まった新制度では両者の間に専門員が入る。ヘルパーによる介助や施設入所、就労支援などの内容を、「プロ」の目で総合的、長期的に決めるためだ。

本人の状況に応じて、きめ細かな支援を提供するとの狙いは理解できる。ただし実態が追い付いていない。最大の要因は専門員の不足にある。

専門員は福祉事業所で5〜10年の勤務実績を持つ人が対象。31・5時間以上の研修を受けた後に都道府県が認定するが、こうした人材の確保が難しいとされる。さらに、専門員の報酬の低さも増えない背景にはあるようだ。

とはいえ、対象者が2500人を超す高知市では、今年6月末で計画の未作成が2228人、作成率はわずか13・6%だ。このまま来春を迎えれば混乱は必至である。

高知市は市が委託する専門員の報酬を独自に上乗せする方針という。専門員の確保を急ぎ、対応を加速させなければならない。

計画の未作成は全国的な傾向だが、一方でそんな中でも作成率トップの愛知県は69%。本県以外の四国3県も62〜57%となっている。なぜこうした「格差」が生じたのか。

12年度から本年度までの3年間は猶予期間であり、この間の準備姿勢に自治体間で差があるとの指摘もある。他の自治体にできることが、なぜ進んでいないのか。しっかり検証することも今後の取り組みには欠かせない。

厚生労働省も事態を重視し、「(障害のある)利用者が困らないよう対応を考えたい」としている。

全国でこれほど計画作成が難航している以上、制度設計に問題はなかったのか。このまま来春の義務化をスタートさせるべきなのかどうかも含めて、慎重な検討を求めたい。

■2014.10.7  介護報酬、来年度6%以上引き下げ…財政審提言
財政制度等審議会(財務相の諮問機関)が、介護サービスを行う事業者に支払う介護報酬を、2015年度に全体で6%以上引き下げるよう提言することが分かった。

特別養護老人ホーム(特養)を独占的に運営している社会福祉法人の利益率を中小企業並みに下げ、税金と保険料、自己負担分から成る介護報酬(年間約10兆円)を6000億円以上圧縮したい考えだ。

同時に、来年10月に税率が10%に上がる予定の消費税を財源に、介護職員の処遇を改善するよう求める。

厚生労働省の調査によると、特養の利益率は8・7%で、一般の中小企業(2〜3%)を大きく上回っている。1施設あたりの内部留保は最大3億2300万円と試算され、見直しの必要性が指摘されている。15年度は3年ごとの介護報酬改定にあたる。財政審は提言で、初めて具体的な削減幅を盛り込むことにした。

■2014.10.8  介護老人保健施設のトイレにスマホ仕込む 男性職員を停職3カ月の処分
滋賀県長浜市立介護老人保健施設の男性職員が盗撮目的で施設内のトイレに侵入したとして建造物侵入容疑で、滋賀県警木之本署が職員を書類送検していたことが分かり、長浜市が7日発表した。市はこの職員を停職3カ月の懲戒処分とし、職員は同日付で依願退職した。

長浜市によると、元職員は今年7月16日夕、市立老人介護保健施設「湖北やすらぎの里」に出勤後、男女共用のトイレ内にあったごみ箱の中に盗撮目的でスマートフォンを仕込んだ。その後、トイレに入った別の職員がごみ箱の中にスマホがあるのに気づき、元職員が置いたことを認めたため、施設側が同署に通報。同署は今月6日、元職員を長浜区検に書類送致した。

元職員は「申し訳ないことをした」と謝罪。藤井勇治市長は「公務員としてあるまじき行為。再発防止対策を徹底したい」とコメントした。

■2014.10.9  特養ホームやデイサービスの利用料下げ検討 政府
政府は特別養護老人ホームやデイサービスの利用料金を2015年度に下げる検討に入った。介護サービス事業者が受け取る介護報酬の改定で、サービスの単価を引き下げる。単価が下がれば事業者の収益は減り、利用者の料金は下がる。介護の現場で深刻な人手不足の解消に向け、処遇改善への加算などを拡充する一方で、利益率の高い事業の単価を下げて歳出の効率化をめざす。

財務省の財政制度等審議会(財務相の諮問機関)は8日、15年度の介護報酬改定をめぐって議論した。

認知症など重度の要介護者を受け入れる特養ホームは国内で約50万人が利用する。事業所数は約8千あり、多くを社会福祉法人が運営する。厚生労働省による今年3月時点の経営実態調査では、利益率が8.7%に達する。毎年の黒字をため込んだ内部留保が総額2兆円あるとの試算もある。厚労、財務両省はその活用を促している。

自宅で介護を受ける人が施設に通って運動などをするデイサービスは約160万人が利用し、事業所数は約4万に上る。利益率が10.6%とこちらも高く、事業所数は10年で3倍に膨らんだ。ただ、サービスの中身が伴っていないとの指摘は多い。

厚労、財務両省はこれら高収益の事業の利用料を下げる必要があるとみており、来年度の介護報酬の引き下げで対応することを検討する。報酬を下げても経営に大きな影響はないとみている。これまでの改定でも利益が多い事業の報酬は下げ、利益が出ていない事業は参入を促すために報酬を基本的には上げてきた。

ただ、事業所側には報酬の引き下げで「事業撤退や経営破綻による介護不安を招きかねない」といった反論はある。仮に介護報酬の下げで利用料金が下がっても、高齢化などで介護保険料自体が上がる可能性は残る。

一方で、来年度に介護職員の賃上げにつなげる処遇改善の加算は拡充する。目下の人手不足に対処するだけでなく、25年度には今よりさらに100万人も職員が必要との推計もあり、職場環境の改善を急ぐ。来年10月に予定する10%への消費増税が決まれば、増収分の一部を財源にあてる。増税による経費の増加分も上乗せする方針だ。

税金や保険料も含めた国民負担は、介護報酬の総額の増減に左右される。財務省は8日の審議会で処遇改善加算の拡充だけでなく、採算性が低い在宅サービスへのてこ入れの必要性を表明した。だが、これら以外の報酬については少なくとも6%程度引き下げるべきだと訴えた。介護報酬の総額を1%減らせば、約1千億円分の国民負担減につながる。

介護報酬改定は年末にかけて改定率を決める作業が本格化する。財務省は歳出削減の観点から大幅な引き下げを求めるが、厚労省は介護サービスの充実のため引き下げには慎重だ。

■2014.10.9  介護サービスに質の評価 「成功報酬」導入の自治体も
■改善事業所に奨励金、職員の励みにも

介護が必要になっても機能回復に取り組み、食事や排泄(はいせつ)などは自力でしたいというのが、多くの人の願いだろう。だが、状態が改善すると、介護事業所の収入にあたる「介護報酬」は減る。事業所に改善する介護を促すため、サービスの質を評価し、成功報酬を導入する自治体もある。先行実施する自治体をリポートする。(佐藤好美)

                   ◇

東京都品川区の特別養護老人ホーム「かえで荘」。車いすの女性が、洗い上がって乾燥の済んだスタッフのエプロンをたたんでいた。入所者が仕事を手伝うのは、生活リハビリの一環。日常生活の中でできることを増やし、身体機能を回復するねらいがある。

介護職が「いつも手伝ってもらって助かっていますよ」と声をかけると、女性が「役に立たなくて…」と恥じらった。

奥田美紀施設長は「本人が持っている力を引き出すお手伝いをしています。要介護でも本人ができるなら、その方がいい。いかに本人の気持ちをもり立て、自然な形で力を引き出せるかです」という。

自宅では、食事どきしかベッドから離れなかった人も、入所後は少しずつ離床時間を延ばす。ベッド際でポータブルトイレを使っていた人も、歩行補助具で2、3歩から歩いてもらい、トイレに行けるようにする。次第に距離が延び、要介護4で寝たきりに近かった人が要介護1に改善したケースもあるという。

だが、事業所収入に当たる「介護報酬」は軽い人ほど低い。せっかく要介護度が改善しても、事業所には収入減になる。

このため、品川区は介護職の意欲向上のため、要介護度が改善した施設に区の単独事業で「奨励金」を出す。平成25年度に開始し、1人が1段階改善したら月2万円、2段階改善したら月4万円を最大1年間、事業所に支給する。同区の永尾文子高齢者福祉課長は「要介護度の改善で施設収入が下がる分を補う目的。努力を認めることで介護職の励みにもなるのでは」と解説する。

対象は特養ホームなどの入所施設。昨年度は施設間で改善度合いにバラつきはあったが、全事業所が改善を達成。区はトータルで47人分約700万円を交付した。

かえで荘は改善効果の大きかった施設の一つ。奥田施設長は「収入減の補填(ほてん)があるのはありがたい。ただ、奨励金を得るために要介護度を改善しているのではない。本人の機能が復活することは職員にとっても喜びになる」と話す。奨励金の使途に制約はないが、「職員ががんばった成果だから」と、ケアが楽になる介護補助具の購入を検討している。

■“成功報酬”導入 仕組みが課題

医療でも介護でも、「質」を評価する取り組みに注目が集まっている。

政府が今年6月に改訂した「日本再興戦略」も「介護の質の評価」に触れ、「今年度末までに検討し、その結果を公表する」とする。

厚生労働相の諮問機関「社会保障審議会・介護給付費分科会」でも検討されているが、どんな項目で「質が高い」と見なし、どう評価するかの制度設計は容易でない。

要介護度の改善は分かりやすい指標の一つ。だが、一般に軽い方が改善しやすい。「事業所が改善しそうな人ばかりを集める『いいとこ取り』が生じるのでは」との指摘も出る。介護の困難な重度の人をなるべく受け入れてほしいのに、本末転倒になりかねないとの懸念だ。

この点について、永尾課長は「品川区では、特養入所は、入所調整会議が管理しており、施設ごとの重度者の割合はそれほど違わない。入所の一元管理をしていない自治体では、制度設計は困難だろう」と指摘する。

滋賀県も質の高いケアに成功報酬をつける。対象は要介護の高齢者が日中通う「デイサービス」。改善指標はやはり「要介護度」で、改善の度合いに応じてポイントを計算。上位20位の事業所に、定員1人につき月1万円の交付金を原則1年出す。

カギは、対象となるデイサービスを▽身体機能のトレーニング(個別機能訓練)▽口腔(こうくう)機能向上▽栄養改善−などを行う事業所に限定した点。

いずれも、状態改善の効果が科学的に確認されているが、県内のデイサービス事業所で取り組むところはほぼ半数。同県の介護保険室は「事業実施でエビデンスのある機能訓練を導入する意識付けにもなった。利用者にうまく動機付けができた小規模事業所で改善実績が上がっている実感がある」という。

だが、いずれの自治体でも、利用者の状態を安定的、継続的に改善している事業所が適切に評価されたかとなると、多少のぶれは否めない様子。新規利用者が多い事業所で改善度が高く出たり、少数の改善が大きく寄与したりするなど、事業所の個別事情に影響される面もあるようだ。

岡山市は来年度にも「質の評価」を導入したい意向。対象は滋賀県と同じデイサービスだが、評価の指標に要介護度を使うことは見送った。代わりに▽認知症高齢者の受け入れ人数▽専門の機能訓練指導員の人数▽介護福祉士の人数−などを指標にすることを検討中。同市医療福祉戦略室は「政令市で1位、2位を争うくらいデイサービスの数が多く、介護給付費の3割がデイサービスの費用。量は達成されているので、質を高めて利用者の自立支援につなげたい」と話している。

■2014.10.10  障害者と地域住民の「縁側」の家 奈良で構想
ケアの仕組みが整った環境で、障害のある人が地域の人と支えあいながら暮らす。子どももお年寄りも、寝転んで本を読んだり、おしゃべりしたり。そんな、まちの「縁側」のような住まいをつくろうと、市民団体「たんぽぽの家」(奈良市)が準備を進めている。

「有縁(うえん)のすみか」と名付けた住宅は木造2階建て。重度の身体障害者も知的障害者も暮らせる福祉ホーム(定員12人)と、短期間滞在できるショートステイ・ルーム(定員2人)、カフェをつくる。奈良市六条西3丁目に2016年春のオープンを目指している。

カフェや中庭などの共有スペースは出入り自由で、地域の人たちもベンチで読書をしたり、絵を描いたりできる。地元の野菜を売る朝市や芸術・文化を語るイベント、料理教室なども構想。人々が集い、交わる空間を描く。災害時には、介護の必要な人のための福祉避難所にもなる。

かつて施設入所が障害者福祉の中心だった。しかし、「誰もが地域の中で、自分の意思で暮らせる社会に」という考え方が広がり、2000年代になって国は脱施設に方針転換した。

有縁のすみかの準備を進める一人、村上良雄さんはしかし、「障害者にとっては地域に受け皿が少なく、本当に自分が望む住まいや自由な暮らしを選べる人は多くない」と話す。

村上さんらは1998年、ケア付き集合住宅をつくった。障害の種別を問わず、地域に溶け込んで暮らせる住宅として注目されたが、運営費の補助を受けられたのは重度の身体障害者だけ。知的障害者は認められなかったという。

村上さんは「補助金を得るには国の制度に合わせざるをえないが、様々な制約を受けることにもなる」と話す。「地域での生活を促すなら、障害の種別で分離するのはおかしい」との思いが、縁側の家の構想につながった。

参考にするのが、昨年、鹿児島市にできた共同住宅「NAGAYA TOWER」(6階建て、37世帯)だ。江戸時代の長屋のように、住人が助け合いながら共同体を築くことを目指し、医師の堂園晴彦さんが建てた。台所や大浴場、空中庭園といった共有スペースを備え、平日の日中は社会福祉士が常駐して住民の相談に乗るほか、必要に応じて医療サービスを受けることもできる。

■先進事例を紹介 12日講演会

 「NAGAYA TOWER」の取り組みを学び、より多くの人に構想を伝えようと、有縁のすみか実行委員会は12日、講演会を開く。堂園さんが「命に寄り添う医療から、支えあいの住まいづくりへ」の題で講演し、大和高田市で障害者支援にあたるNPO法人「生活支援センターもちつもたれつ」の大竹美知世さん、天理市で子どもたちの自立支援に取り組むNPO法人「おかえり」の枡田ふみさんらと話し合う。

■2014.10.11  収支差率10%超の介護事業は3つ 居宅介護支援はマイナス
厚生労働省は、10月3日、平成26年の介護事業経営実態調査の結果を発表した。来年度の介護報酬改定に向けた議論の基礎資料となる。

調査は、平成26年4月に、全国の介護老人福祉施設や訪問介護、居宅介護支援などの21サービスの約33,000施設・事業所に対して行われ、約16,000施設・事業所から有効回答を得た。

収入に対する利益の割合を示す収支差率は、一部サービスを除いて5%以上を確保していた。

最も収支差率が高かったのは特定施設入居者生活介護の12.2%で、前回の平成23年調査の3.5%から大きく改善した。
そのほか、10%を超えていたサービスは、認知症対応型共同生活介護11.2%(前回8.4%)、通所介護10.6%(前回11.6%)であった。

反対に、収支差率がマイナスのサービスもあり、居宅介護支援は−1.0%、複合型サービスは−0.5%であった。ただし居宅介護支援は、前回と比べると1.6ポイント改善している。

収支差率が5%を下回っていたのは、夜間対応型訪問介護3.8%(前回4.6%)、福祉用具貸与3.3%(前回6.0%)、定期巡回・随時対応型訪問介護看護0.9%であった。

介護老人保健施設5.6%(前回9.9%)のように前回より大きく低下したものもあるが、それ以外は概ね前回の水準を維持あるいは改善していた。

■2014.10.12  高砂の特養問題:「採算取れないと判断」 事業者辞退、再公募へ /兵庫
住民の反対運動が起きていた高砂市内での市公募特養施設建設計画で、事業者だった社会福祉法人博愛福祉会(尼崎市)が市に辞退を伝えた。市は同福祉会を除き、再公募の意向を示している。


辞退理由について、市は「事業者が、建設にかかる総事業費を6・7億円と試算していたが、人件費や資材の高騰で9・3億円を超える見通しとなり、採算が取れないと判断した」と説明している。

特養計画を巡っては、予定地だった中島3で昨年12月、自治会所属の市職員が事業者の住民説明会で司会を務めるなどした計画手法が「建設ありきか」「市は強引」などの反発を招き、反対運動が起きた。また、生活環境悪化を懸念する声もあり、住民実施の署名活動で、空き家・不在の計8戸を除く82戸のうち71戸(86・6%)が建設地変更を求めた。事業者は今年6月、建設断念を市に伝え、市と代替地を探したが、市内で20カ所当たっても見つからなかった。市は昨年度の県補助金1億1600万円を全額返還、再公募の方針を県に伝えた。補助金の確保は未定。

市は「入所が急がれる待機者が100人超いる。団塊世代が75歳以上の後期高齢者になる2025年を控え、絶対必要」と計画を継続する姿勢。一方、市内には現在、特養が5カ所、類似施設が少なくとも8カ所あるため、市民の間で「財政に苦しい現状で、新施設が必要かどうか」「100人の待機数は多いと見るべきなのか」と疑問視する意見も一部であり、議論を呼んでいる。

■2014.10.13  経産省「ロボット介護機器導入実証事業」に電動歩行アシストカートが認可
RT.ワークスの「電動歩行アシストカート」
RT.ワークス株式会社は、公益財団法人テクノエイド協会が実施するロボット介護推進プロジェクトに応募、「電動歩行アシストカート」が認可を受けたと発表した。

ロボット介護推進プロジェクトについて
同プロジェクトは、経産省のロボット介護機器導入実証事業の一環として公益財団法人テクノエイド協会が実施するもの。

ロボット介護機器の量産化への道筋をつけることを目的に、実際に介護現場で活用しながらロボット介護機器の大規模な効果検証などを行う。

また、検証結果に基づく効果のPRや普及啓発や教育活動を通じて、ロボット介護機器導入の土壌を醸成する。


電動歩行アシストカートの特長
同社が開発した電動歩行アシストカートは、高度なアシスト制御機能で安全快適な歩行をサポートする。

多彩なセンシング技術を融合し、人とカートが一体化したような操作感を実現。使いやすいインターフェースにより、誰でも簡単に操作することができるよう工夫されている。

介護現場における活支援ロボットの実用化を目指す
今回、東名阪合計54施設において98台の実証事業を申請し認可されたとのこと。

実証事業を通じてより高い実用性、有効性と安全性を高め、介護現場での生活支援ロボットの実用化を目指して商品化に結びつけていきたいとしている。

RT.ワークス株式会社のプレスリリース
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/

公益財団法人テクノエイド協会 ロボット介護推進プロジェクト
http://www.techno-aids.or.jp/robocare/

■2014.10.14  長時間飛行も安心=補助犬用トイレ開設―成田空港
成田空港に14日、障害者をサポートする「補助犬」専用のトイレが開設され、公益財団法人日本補助犬協会によるデモンストレーションが行われた。

保安検査を済ませた人が出発便を待つ「制限区域」内に設置され、成田から出発する人だけでなく、航空機を乗り継ぐ人も利用できる。制限区域内の補助犬用トイレ設置は成田、羽田、関西、中部の4国際空港で初めてという。

同協会によると、盲導犬や介助犬などの補助犬を連れて公共交通機関を利用することは法律に基づいて認められており、国内では犬同伴で旅行などを楽しむ人も増えている。ただ、長時間飛行も多い国際線の場合、空港などでトイレを見つけられないと犬に我慢させてしまうことになるため、海外への同伴はためらう人が多かったという。 

■2014.10.15  介護分野の人手不足解消へ、資格要件を緩和
介護分野の深刻な人手不足を補うため、厚生労働省は、介護職の資格要件を緩和する方針を固めた。

現行の資格を取得しやすくするか、よりハードルの低い新たな資格を創設する。介護分野への外国人の受け入れも拡充し、2025年度までに約100万人の増員が必要とされる介護職の担い手の裾野を広げる。

現行では、介護の資格制度は、国家資格の介護福祉士のほか、研修時間によって2段階ある。厚労省では、そのうち、最短の130時間の研修で取得できる「介護職員初任者研修修了者」の要件を緩和して短い時間で取れるようにするか、新たに研修時間の短い資格を設ける。未経験者を対象にしたよりハードルの低い資格を設け、高齢者や子育てを終えた女性など、幅広い層の参入を狙う。有識者らによる新たな専門委員会を今月中にもスタートさせ、議論を進める。

一方、介護分野への外国人の受け入れについては、留学生が介護福祉士などの国家資格を取得すれば、国内で働けるようにする。

■2014.10.15  最重要課題は人材確保、厚労省が介護報酬改定の基本的視点
厚生労働省は15日、来年度の介護報酬改定に向けた議論を行っている審議会(社会保障審議会・介護給付費分科会)の会合で、今後の協議の前提となる「基本的な視点」を提示した。

「基本的な視点」では、介護を担う人材の確保が最重要の課題だと明記。「雇用管理の改善など、事業者自らの意識改革や自主的な取り組みを推進していくことが重要」、「事業者の取り組みがより促進される仕組みを構築していく」といった考えを打ち出している。

厚労省は今後、22日(水)に開催する審議会の次回の会合から、各サービスの基準・報酬を詳しく議論するステップに進む。今回の「基本的な視点」は、そうしたスケジュールを見据えて改めて示したもので、これから指針とする考え方を共有しておくのが狙いだ。そのため、具体的な施策の内容にはほとんど触れておらず、大原則となる認識だけを記載した内容となっている。

重点的に取り組んでいく施策には、在宅で暮らす中・重度者に対する支援の強化もあげられた。また、より効率的なサービスの提供体制を構築する努力が欠かせないとして、「必要なサービス評価の適正化や規制緩和を進めていく」との意向も示している。この日の審議会では、こうした内容を大筋で了承した。




今回の介護報酬改定に向けた基本的な視点

厚労省の提示資料から抜粋

第1の視点としては、地域包括ケアシステムの構築に向けた、在宅中重度者や認知症高齢者への対応の更なる強化である。特に、今般の制度改正では、在宅医療・介護連携の推進を地域支援事業に位置づけて取り組むこととしているが、今回の介護報酬改定においても、医療と介護の連携も含め、在宅中重度者や認知症高齢者への支援を強化することが必要である。

また、平成26年度の診療報酬改定や今後の地域医療構想に基づく病床機能の分化・連携の推進による医療機関から在宅復帰促進の流れにより、在宅医療・介護のニーズが高まり、在宅要介護者の中重度化が見込まれることからも、在宅生活の限界点を更に高めるための対応が必要である。

第2の視点としては、介護人材確保対策の推進である。介護人材は、地域包括ケアシステムの構築に不可欠な社会資源であり、その確保は最重要の課題である。また、将来的なマンパワー減少を見据え、質の高い介護人材を確保するとともに、効率的かつ効果的に配置するといった観点も重要である。

介護人材の確保にあたっては、雇用管理の改善など事業者自らの意識改革や自主的な取り組みを推進することが重要であるとともに、国・都道府県・市町村が役割分担しつつ、それぞれが積極的に取り組むべき課題であり、事業者の取り組みがより促進される仕組みを構築していくことが必要である。

第3の視点としては、サービス評価の適正化と効率的なサービス提供体制の構築である。地域包括ケアシステムの構築を図る一方、保険料と公費で支えられている介護保険制度の持続可能性を高め、限りある資源を有効に活用するためには、より効果的で効率的なサービスを提供することが求められている。

このような観点から、必要なサービス評価の体型化・適正化や規制緩和等を進めていくことが必要である。

■2014.10.16  報酬大幅引き下げ「介護崩壊招く」−全国老施協、財務省の提案など受け
財務省が来年度の介護報酬改定の引き下げを求める提案をまとめたことなどを受け、特別養護老人ホーム(特養)を運営する法人などで組織する全国老人福祉施設協議会(全国老施協)は15日、記者会見を開いた。石川憲会長や同協議会の関係者は、介護ニーズの増大が見込まれる中、大幅な報酬引き下げを行うことは「サービスの根幹を揺るがし、介護崩壊を招く」と強調。来年度の介護報酬改定では、少なくとも現行水準の報酬を維持するよう強く主張した。

厚生労働省は3日、来年度の介護報酬改定に向けた議論の基礎資料となる「2014年介護事業経営実態調査」の結果を社会保障審議会介護給付費分科会介護事業経営調査委員会に報告した。調査結果では、特養の収支差率が8.7%となるなど、大部分のサービスで収支差率が5%以上となったことが示されている。

この結果を受け、財務省は8日、介護報酬改定の引き下げ案などを財政制度等審議会財政制度分科会に提案した。案では、介護事業の平均収支差率が、一般の中小企業の水準を大幅に上回っている点を問題視し、「介護報酬の基本部分に係る適正化(少なくとも中小企業並みの収支差となるマイナス6%程度の適正化)が必要」と提言。特に特養については、「内部留保が蓄積しない水準まで介護報酬水準を適正化することが必要」としている。

■平均収支差率のみでの報酬改定論「大きなリスク伴う」

会見した全国老施協の関係者は、「2014年介護事業経営実態調査」で特養の収支差率が8.7%となっている一方、同協議会や東京都福祉保健局の調査では、収支差率は4.3%となったことや、福祉医療機構の調査では、従来型は5.7%、ユニット型は7.3%、一部ユニット型は5.8%という結果が示されたことを提示。調査主体によって異なる結果が出ている点について、関係者は、はっきりとした理由は分からないとしながらも、効率的な経営を行う事業所と、そうでない事業所の間の差が大きいことが影響した可能性があると指摘した。その上で、経営状況に大きなばらつきが見られるにもかかわらず、平均収支差率だけで報酬の在り方を論じることは、サービス提供を維持する上で大きなリスクを伴うとした。

また、仮に特養の報酬をマイナス6%とした場合、「5割を超す施設が赤字経営となる」とし、従来あるサービス提供すら阻まれかねないと分析。財務省が求める大幅なマイナス改定が実現した場合、「介護保険サービスの根幹を揺るがす介護崩壊を招くことにつながる」と訴えた。

■内部留保を理由にした報酬引き下げ論「されるべきでない」

特養を運営する社会福祉法人の内部留保が3億円余りに上っているとされている点については、その内訳には、実際の現金などの入金を伴わない項目や、建て替えの積立金なども含まれていると指摘。さらに、社会保障審議会福祉部会が、あいまいな特養の内部留保の明確化を目指し、議論を進めている段階であることから、「内部留保を理由にした介護報酬引き下げ論は、されるべきではない」と訴えた。

■2014.10.16  介護分野の人手不足解消へ、資格要件を緩和
介護分野の深刻な人手不足を補うため、厚生労働省は、介護職の資格要件を緩和する方針を固めた。

現行の資格を取得しやすくするか、よりハードルの低い新たな資格を創設する。介護分野への外国人の受け入れも拡充し、2025年度までに約100万人の増員が必要とされる介護職の担い手の裾野を広げる。

現行では、介護の資格制度は、国家資格の介護福祉士のほか、研修時間によって2段階ある。厚労省では、そのうち、最短の130時間の研修で取得できる「介護職員初任者研修修了者」の要件を緩和して短い時間で取れるようにするか、新たに研修時間の短い資格を設ける。未経験者を対象にしたよりハードルの低い資格を設け、高齢者や子育てを終えた女性など、幅広い層の参入を狙う。有識者らによる新たな専門委員会を今月中にもスタートさせ、議論を進める。

一方、介護分野への外国人の受け入れについては、留学生が介護福祉士などの国家資格を取得すれば、国内で働けるようにする。

■2014.10.16  要介護認定の有効期間を延長、更新時は一律で上限2年へ
厚生労働省は15日、要介護認定を更新する時の有効期間を延長する方針を示した。要支援者を対象にしたサービスの改革などが来年度から始まることを踏まえ、市町村の負担の軽減に向けて施行規則を改正する。

延長後の更新時は、一律で原則12ヵ月、上限24ヵ月と簡素化される。ただし、延長が認められる市町村は、予防給付の改革を実行に移したところだけ。適用の時期は市町村によって異なり、完全移行は2018年度からになりそうだ。

■2014.10.16  介護報酬大幅減に審議会で異論続出、経団連は財務省を支持
厚生労働省は15日、来年度の介護報酬改定に向けた協議を行っている審議会(社会保障審議会・介護給付費分科会)の会合で、今月3日に公表した介護事業者の「経営実態調査」の結果を報告した。

事業者を代表する立場の委員からは、財務省が今回の結果を受けて6%の引き下げを求めていることに対し、強い不満の声が続出。一方、大企業の健保組合や日本経団連の代表からは、「経営状況はおおむね良好」「マイナス改定でもいいのでは」といった意見があがっている。

厚労省が公表した経営実態調査は、来年度の改定をめぐる議論の基礎データとして活かされるもの。結果をみると、多くのサービスが黒字をキープしている現状が示されており、10%を超える高い収支差率のものもあった。膨張する費用を抑制したい財務省は、この結果を報酬カットに乗り出す根拠としてすぐさま使っている。

15日の審議会では、事業者の代表をはじめとするサービス提供サイドを中心に、「平均値だけで比べるのは乱暴」「この結果だけで判断するのは危険」といった批判が噴出。年末に向けた今後の議論を見据え、きめ細かい分析と冷静な判断、慎重な対応を求める声が相次いだ。

これに対し、日本経団連の代表者は、「経営状況はおおむね良好。今回の結果を上回る高い収支差率の事業所だってあるはず」と指摘。「介護職員の処遇改善は、やはり経営者が自らの努力で取り組むべきだ。高い収支差率のところが率先して処遇を改善していけば、働く人の移動が活性化し、介護事業の生産性が高まっていく」と持論を展開した。

このほか、大企業のサラリーマンらが加入する健保組合の代表者は、「産業全体の動向をみると介護事業の状況は非常に良い」、「今後の費用の増大を考えればマイナス改定でもいいのでは」などと述べた。

一方、塩崎恭久厚労相は15日の衆議院・厚生労働委員会で、6%の引き下げを打ち出した財務省の提案について、「議論のスタートライン」との見解を表明。「これまでに処遇改善を進めると説明してきている。何が一番良いのかしっかりと考えて伝えていくので、ぜひ結果をみてて欲しい」などと述べた。

■2014.10.18  長崎の障がい者通所授産施設が洋菓子工場を建設、全国販売に挑戦
長崎名産のびわを使ったお茶を生産
長崎県長崎市にある社会福祉法人出島福祉村が2002年、長崎半島の先端に開設した身体障がい者通所授産施設「三和ゆめランド」は、この地域がびわの産地ということで、びわ茶の製造をスタートさせた。

苦労の末、長崎ゆめびわ茶が全国区に
当初、有機栽培と手作りをセールスポイントにしたが消費者の反応は薄く、7年間は地元の道の駅や福祉ショップで販売するも、売り上げが上がらず施設利用者の工賃アップにはつながらなかった。

そこで手作り、有機栽培に加え味と香りにこだわり改良を重ねて販売した結果「長崎ゆめびわ茶」ファンが全国に。

2008年にはびわ600本、ざくろ50本、いちじく50本などを植えた「三和ゆめランド」の直営農園が完成。企業による農業の6次産業化で、社会福祉法人として初めて国の助成対象にもなった。
 

洋菓子工場を新たに建設
同法人が次に手がけるのは洋菓子。これまでは手作業だったため1日45個程度を作るのが限度で、販売場所も限られていた。そこで洋菓子工場をびわ畑などがある約5万平方メートルの所有地に建設する運びに。

来月に着工し、2015年3月から障がい者が働く授産施設として稼働を始める。事業拡大に伴い、障がい者を10人程度採用する予定。工場で生産されるのはびわを使ったチーズケーキやタルトなど。

東京都内で開催された食の見本市で試食品が好評を博し、大手流通系の通販会社が採用を決定、通販会社と組んで全国販売を展開する。

事業が成功すればますます障がい者の自立支援や雇用拡大につながる。農業と福祉、さらに他業種がタッグを組む新しい取り組みが期待を集めている。

社会福祉法人出島福祉村
http://dejimafukushi.or.jp/

三和ゆめランド
http://dejimafukushi.or.jp/sanwayume/

長崎ゆめびわ茶ストア
http://biwa-cha.com/

■2014.10.20  「待機老人」大都市で増加 「特養入れず」12万人
公的な老人ホームに入りたくても入れない「待機老人」が大都市で増えている。日本経済新聞が20政令市と東京都に特別養護老人ホーム(特養)の待機者数を聞いたところ、約12万人と全国にいる待機者の2割を占めた。高齢者人口に占める政令市と東京都の割合は2025年に3割に達する見通し。このままでは介護サービスの整備がさらに遅れる可能性が大きい。


食事、入浴、排せつなど日常生活の世話が受けられる特養ホームの最新の待機者数を10月上中旬に聞き取り調査した。最も多かった札幌は6571人、次いで名古屋は6236人。東京都は4万3384人だった。

65歳以上の高齢者人口のうち待機者の占める割合をみると岡山、新潟、広島の順で多かった。厚生労働省によると13年度の待機者は全国で52万人。大都市が23%を占める計算で、10年時点の高齢者人口に占める政令市と東京都の割合(28%)よりはまだ低い水準だ。

都市部には若年層の人口流入もあるため、地方に比べて高齢化の進行は遅かった。だが高齢者の絶対数は多く、特養ホームの待機者も急速に増えている。例えば13年までの3年間で、東京都では待機者が324人、広島市では486人増えた。

待機者の解消策として、浜松は特養ホームの定員を年250人分増やす計画だ。症状の重い「要介護4」以上で、自宅にいる待機者を18年度までにゼロにするため、民間企業が運営する有料老人ホームも増やす。熊本は今後3年間で特養ホームの定員を294人分増やす。仙台も今年度末までに約600人分整備する。

都市部では用地の取得が難しいため、訪問介護など在宅サービスを充実する自治体もある。岡山は今後3年間で、現在5カ所程度ある24時間の巡回サービスを充実する。札幌は症状の軽い人向けに在宅・訪問介護サービスを増やし、特養ホームに入る人を増やさないようにする。

名古屋は「特養を安易に増やせば保険料や税金の負担が重くなる」(介護保険課)とし、民間企業やNPO法人、ボランティアを使って介護予防サービスを拡充する。介護予防では症状の軽い人向けに運動や食事の指導を行い、介護が必要となる人を減らす。

都市部の高齢化は今後急速に進む。10年には政令市と東京都全体で65歳以上の高齢者が829万人いた。国立社会保障・人口問題研究所の推計では、25年には1095万人に増える。

高齢化は地方が先行して進んできた。すでに65歳以上の高齢者が占める割合が29.5%の秋田県や28.5%の高知県には、特養ホームの待機者がほとんどいない自治体がある。都市部と違い、地方では、特養の増設を控える動きも出ている。

■2014.10.21  高齢者や障害者の積極的採用を表彰
高齢者や障害者、非正規労働者らの雇用に関する理解を深めてもらう豊の国雇用促進フェスタ(大分合同新聞後援)が20日、大分市のトキハ会館であった。

大分労働局や県、県総合雇用推進協会などの主催。県内の事業所の労務担当者ら約150人が参加。障害者や高齢者の雇用に積極的に取り組んだ事業所などを表彰。労働政策研究・研修機構労働政策研究所(東京都)の浅尾裕前所長が「『全員参加の社会』の実現に向けて」と題して講演した。


主な被表彰者は次の通り。

【知事表彰】▽高年齢者雇用優良事業所 城東病院(大分市)中津太陽交通(中津市)
▽障がい者雇用優良事業所 三菱商事太陽(別府市)ホンダR&D太陽(同)
▽優良勤労障がい者 山村洋史(トキハインダストリー)後藤博文(日豊オノダ)安部民子(社会福祉法人安心会)


【県総合雇用推進協会長表彰】
▽高年齢者雇用優良事業所 浜脇記念病院(別府市)清瀬タクシー(宇佐市)
▽障がい者雇用優良事業所 永冨脳神経外科病院(大分市)八鹿酒造(九重町)
▽優良勤労障がい者 土谷岩男(オムロン太陽)下村和徳(平山産業)渡辺秋男(八鹿酒造)

■2014.10.21  警察庁が全国に指示、犯罪被害「障害者に配慮」 盲導犬オスカー事件契機に
盲導犬「オスカー」が刺されたとみられる事件など障害者に対する犯罪が注目を集める中、警察庁が障害のある犯罪被害者に対して配慮ある対応をするよう全国の都道府県警に指示したことが19日、分かった。同事件後、視覚障害者の団体から「警察に被害届を受け取ってもらえなかったことがある」と指摘されたことを受け、同庁は障害者に対してより適切な対応を取るよう警察全体に指導する必要性を認識。全国の現場レベルまで「障害者に優しい警察」が徹底されることになった。

同庁によると、指示は9月下旬以降、全国の都道府県警の代表が集まる会議などで行われ、同庁の松岡亮介・捜査1課長などが「障害者の被害者が置かれている状況に配慮した対応をとるように」と伝えている。

指示の内容は、各都道府県警の警察署や交番などの現場まで下ろすようにしているという。

オスカー事件を受け、超党派の議員連盟「身体障害者補助犬を推進する議員の会」(会長・尾辻秀久元厚労相)が9月10日、国会内で関係省庁から行ったヒアリングの席で、「全日本盲導犬使用者の会」の深谷佳寿副会長が「犯罪に遭って警察に届けようとしたところ『目が見えないから被害を確認できない』といわれ、被害届を出せなかったという声がある」などと話し、適切な対応を求めていた。

これに対し、出席した松岡課長が「申し訳ない。持ち帰って現場に徹底するよう指示したい。(オスカー事件では)被害届を出してもらい、捜査している」と応じていた。

同庁はこれまで、政府が定めた第3次障害者基本計画に基づき、障害者への理解を深める警察職員研修の実施や手話ができる警察職員の交番への配置、犯罪被害のイラストを集めた「コミュニケーション支援ボード」の活用などを行ってきた。

同庁捜査1課は「障害のある被害者にはハンディキャップがあることを考慮して相談を受ける必要がある。支援機関と連携し、補助者の立ち会いを求めるなどで対応できる」と説明。

特に、視覚障害者の犯罪被害については「目が見えないと犯罪に関する情報量が減ってしまうが、だからといって捜査できないわけではない。監視カメラや目撃者を捜すなどして期待に応えていきたい」と話し、より積極的に対応していく意向を示した。

常磐大学国際被害者学研究所の諸沢英道教授の話「犯人を特定するとき、心理学では目で確認するより耳で確認する方が確実とされている。外見は変えられても、声は変えられないからだ。障害者が犯罪に遭ったときは、全国に犯罪被害者支援組織があるので活用するといい。警察は障害者に(同組織を)紹介すべきだが、現場の認識不足もあるのではないか。組織の方もまだ認知度が十分ではないので、自治体や団体を訪問するなどしてもっと周知する必要がある。ホームレス襲撃や振り込め詐欺など、(社会的に)弱い人を狙う犯罪は増えている。周囲の人は弱者への犯罪に気づいたら行動に移すよう意識を変えていかなければならないだろう」

■2014.10.21  学童保育相次ぐ不祥事、定員増やして大丈夫?
小学生が放課後を過ごす学童保育施設で、子どもが性的被害に遭う事件が相次いでいる。政府は学童保育の定員を大幅に増やす方針を打ち出しており、現場や保護者に波紋が広がる。


■2人きり禁止、職歴調べ強化

札幌市の学童保育所の指導員だった男(38)が8月、強制わいせつ容疑で北海道警に逮捕された。2012年夏、児童らを引率して訪れたキャンプ場で、当時9歳の女児の下半身を触った疑いが持たれている。

男は4年前、妻と借家で施設を開設。近所の男性は「あいさつもするし、しっかりしている人だと思っていた」と驚く。小学生数十人が通い、市は運営費として年約500万円を助成。運営主体は学校関係者や保護者でつくる委員会だが、関係者は「帳簿管理も含め実質的には男と妻が運営していて、チェックが行き届かなかった」と言う。

再発防止を模索する自治体もある。学童保育施設の職員だった男が同容疑で3月に逮捕された北海道函館市。施設内で女児と2人のときに事件が起きたとされる。同市は4月、児童が職員と2人きりにならないようにし、やむを得ない場合は同性の職員が付くよう、同市内の全施設に指示した。

横浜市では11年8月、男児が性的被害を受け、指導員の男が逮捕された。昨夏、この男が別の学童保育施設で勤務していることが分かり、同市は採用時の職歴チェックを強化。児童へのわいせつ行為などで解雇・処分されたことがないと誓約させることにした。「被害を未然に防ぎたい」と同市の担当者は言う。

学童保育は児童福祉法に基づく事業で、留守家庭の小学生に「適切な遊び、生活の場」を与えるものとされる。厚生労働省によると、昨年5月現在で全国に2万1482カ所あり、小学生の13%に当たる88万9205人が利用。女性の社会進出を背景に、15年前と比べて施設数は2・2倍、利用児童数は2・6倍に増えた。


■「30万人増員」現場に不安感

政府が6月に閣議決定した成長戦略は、女性の活躍推進策として学童保育の定員を「19年度末までに30万人分増やす」とした。だが現場には不安も漂う。「今でも限界。これ以上受け入れたら手が回らない」。札幌市内の学童保育施設の男性指導員(29)は話す。

指導員について、厚労省は07年に出した通知で、保育士や幼稚園・小中高校の教諭のほか、児童福祉に2年以上携わった経験者などが「望ましい」とした。

だが、昨年5月現在で、指導員全体(約8万9500人)のうち約4分の1にあたる2万2936人は当てはまらない。


■指導員同士の目配りが大切

質の確保を図るため、同省は来年4月から資格の保持を省令で義務づける。ただ、学童保育に「類似する事業」に2年以上従事し、市町村長が適当と認めれば有資格者とするとしており、現在の指導員の多くは追認される見通しだ。

松浦善満・龍谷大教授(教育社会学)は「学童保育の指導員に一定の要件を設けたのは前進だが、身分を安定させ、モラルと技量をさらに高めるために、教員と同様に免許制にしたほうがいい。不祥事防止には、近隣施設も含め指導員同士が目配りし、支え合うことが大切だ」と話す。

■2014.10.21  社会福祉法人利用者ら、祖谷の畑でソバを栽培 地元農家が協力
社会福祉法人カリヨン(石井町)の障害者らが、今年から三好市東祖谷の久保地区でソバの栽培を始め、約200キロを収穫した。徳島駅構内でカリヨンが運営するそば店「麺家れもん徳島駅店」で12月にも「特選そば」として売り出すとともに、過疎が進む久保地区のソバ文化伝承にもつなげる。
 
カリヨンが運営する知的障害者通所施設「れもん」の利用者とスタッフら約10人が、久保地区の時谷トキさん(83)=農業=の20アールのソバ畑を借りて栽培した。標高800メートル超の高地にあり、昼夜の寒暖差が大きく、上質のソバが育つとされている。

今夏に種をまき、18日、成長したソバを刈り取った。

収穫したソバは天日で1カ月間乾燥させた後、実を石臼でひいてソバ粉にし、製麺。12月に行われる麺家れもん徳島駅店の開店3周年行事で提供する。

石井町のそば粉製造会社「谷食糧」がカリヨンに時谷さんを紹介。それをきっかけに、障害者による栽培と収穫が実現した。

一日平均30〜40食を販売する麺家れもん徳島駅店では、県西部の農協から仕入れたソバを年間800キロ使っている。このうち4分の1を自家栽培したソバで賄う。

れもんの藤河一夫総合施設長は「今後は休耕地を開拓して栽培面積を広げ、祖谷そばの灯を守りたい」と話した。

■2014.10.21  報酬だけに頼らない 太陽光発電に取り組む社福法人
宮崎県内に太陽光発電に取り組む社会福祉法人がある。「大樹会SocialWork日南」(片山紀子理事長)は県立高校があった土地を買い上げ、敷地に太陽光パネルを設営。障害のある人たちがメンテナンスなどを行っている。

高校跡地を購入

日南市の南郷駅から徒歩15分。16ヘクタールにも上る旧県立日南農林高等学校の敷地内には太陽光パネルがずらっと並ぶ。その数1万6000枚。

そのパネルの間で、知的障害や精神障害のある訓練生が黙々と雑草を刈り取っていた。現在、同法人には、就労継続支援A型として、20−40代の利用者が7人働いているという。ハローワークでの求人に応募した人たちで、工賃は最低賃金をクリアしている。

もともと同校は、統廃合のために2011年3月に廃校。当初は、企業誘致を模索したが、なかなか買い手が見つからなかったという。そうしたところ、宮崎県出身で、滋賀県内でも社会福祉法人を運営する嶋田鐵雄・同法人会長が手を挙げ、同校跡地を2億1500万円で購入したという。

同校跡地は、総合福祉施設「南風の丘」として整備する構想だ。運動場や畑を活用する太陽光発電や農業を行う障害福祉サービス事業のほか、校舎を改築したサービス付き高齢者向け住宅(50戸)、デイサービスなどを計画している。

第1発電所は14年3月、第2発電所は同6月から稼働を開始。サ高住は現在改築中で、来春にも竣工予定だ。

待遇もアップへ

なぜ、社会福祉法人が太陽光発電なのか。

嶋田会長は「社会福祉法人としての独立性を重視した結果」だと話す。介護報酬や障害報酬だけではなく、別の収益事業も行うことで、法人の財政基盤の安定につなげたいという。

太陽光パネルの設置費用は第1と第2合わせると10億円に上る。15年間の返済計画で銀行から借り入れた。年間発電量は422万キロワット時で、今年度の売り上げは約2億円になる見通しだという。

同法人は今後も新たに太陽光の発電所をつくりたい考え。嶋田会長は「安定した経営のため、電気の供給など社会が求めるニーズの中から収益を確保した上で、地域に還元することも社会福祉法人には求められているのではないか。そうして職員の待遇を上げれば、人材の質の向上にもつながる」と話している。

■2014.10.21  余剰金の福祉活動使用義務づけ…社福法人改革案
社会福祉法人改革に関して厚生労働省は20日、社会保障審議会福祉部会に改革案を示し、大筋で了承された。

財務運営について、事業で蓄えた余剰金を福祉活動に使うよう義務づけるほか、役員報酬に基準を設ける。厚労省では、来年の通常国会に社会福祉法の改正案を提出する方針。

社会福祉法人を巡っては、民間企業に比べて税制優遇されている一方で、一部の法人が多くの余剰金を抱え、役員に高額な報酬を支払っていることなどが批判されてきた。

厚労省の改革案では、社会福祉法人が所有する建物などを含めた全資産から、負債や運転資金などを除いた額を余剰金と定義。その余剰金を使って、生活困窮者支援や福祉分野の人材育成など、福祉制度を補う活動をするように義務づける。さらに、複数年にわたる活動計画を立てて、都道府県、または市の承認を受けることにする。

■2014.10.21  財務省、介護報酬6%以上のマイナス改定を提言
財務省は8日、2015年度の介護報酬改定について、6%以上のマイナス改定にする考えを財政制度等審議会財政制度分科会に示した。一方、介護職員の賃上げを図る現行の介護処遇改善加算は拡充する方針。社会福祉法人の内部留保が過大だとされる問題については「社会貢献に充てるのではなく、介護保険の地域支援事業など公費や保険料を充てて実施している事業に限定して活用すべき」とした。

介護報酬改定については、厚生労働省の社会保障審議会介護給付費分科会で審議中。厚労省は財務省と折衝して年内に全体の改定率を固め、年明けに同分科会に諮問する。財務省はこれまでも繰り返し介護給付費の抑制を要請してきた。

「マイナス6%」は、介護サービス全体の平均収支差率(8%程度)を一般の中小企業の平均値(2〜3%)に合わせる発想だ。介護報酬を1%引き下げれば、介護保険の総費用(約10兆円)は約1000億円減る。

財務省は特別養護老人ホームの多床室の室料を保険給付から外し、入所者の自己負担とすることも求めた。

次の介護保険法改正に向けては、@軽度者に対する訪問介護の生活援助(掃除、調理など)を地域支援事業に移すA在宅サービスで価格競争を促す仕組みを作るB利用者負担の引き上げ−の検討も求めた。


老健協「断固反対」

これらを受け、全国老人保健施設協会は10日、緊急の記者会見を開き、「老人保健施設の収支差率は平均5.6%。税引後は3.4%しか残らない。理不尽なマイナス改定には断固反対だ」とした。

■2014.10.21  介護施設・事業所、24時間巡回参入進まず 厚労省13年調査
厚生労働省は21日、介護サービス施設・事業所調査の2013年の結果を発表した。在宅でも手厚く介護できるようにと導入した24時間対応の定期巡回サービスは、事業所数が281と、12年4月の導入から1年半を経ても少ない数にとどまる。特別養護老人ホームなどの施設に比べて財政負担も少ない在宅介護の普及へ、新規参入を促す施策が必要になりそうだ。

調査は13年10月1日時点で、介護保険制度のサービスを手掛ける全国約34万の施設や事業所が対象。24時間対応の定期巡回サービスは281事業所で、前年同期の76事業所からは約3.7倍となったが、総数は少ない。

半面、日帰りで運動や入浴ができるデイサービスは、前年同期の3万4107事業所からさらに約12%増え、3万8127事業所となった。特養ホームも6754施設と、2.5%増えた。

厚労省の経営実態調査では、24時間定期巡回の利益率が0.9%と低いのに対し、デイサービスや特養ホームは10%前後と高いことが明らかになっている。来年4月の改定に向けた介護報酬の検討作業に影響しそうだ。

■2014.10.22  大阪府内限定保育士導入へ 知事表明
阪府の松井知事は20日、現在の国家試験とは別に、府が独自に試験を行い、合格後は少なくとも3年間、府内でしか働けない「地域限定保育士」の導入を目指す考えを明らかにした。

地域を絞って規制緩和を認める「国家戦略特区」の一環で、保育士の確保が狙い。

この日の府議会健康福祉委員会で、徳村聡議員(大阪維新の会)の質問に答えた。松井知事は「待機児童の解消は喫緊の課題だ。条件が整えば、早急に実施したい」と述べた。

保育士は国家資格で、試験は年に1回、各都道府県が同一の日程、同一の試験で実施。合格者は全国で働ける。府内では毎年約3000人が受験し、400〜500人が合格している。

「地域限定保育士」は、これとは別日程で試験を行い、合格者は3年間、特区内で勤務すれば、全国で働ける。ただ、府が試験を用意する必要があり、現在は受験料(1万2700円)の範囲内で賄われている費用に、新たに府の負担が生じる可能性があるという。まだ制度設計が定まっておらず、府子育て支援課は「国には急いでほしい」としている。

■2014.10.22  社説:介護報酬改定 人材確保を最優先に
来年度の介護報酬の改定に向けた議論が始まった。介護サービスを提供する事業所側は報酬アップを求めるが、逆に財務省は「6%カット」を提案した。職員の報酬を引き上げる財源を確保するため、内部留保に回っている分の報酬を引き下げる必要があるというのだ。

最も人口が多い年齢層である団塊世代が75歳を超える2025年ごろになると、介護が必要な人が爆発的に増える。限られた財源の中で介護サービスの拡充と人材の確保をどう実現するかに、知恵をしぼらなければならない。

介護報酬は事業者に支払われる介護サービスの公定価格で、3年に1度改定される。14年度の介護費用は総額約10兆円だ。これが25年度には倍以上の21兆円になると見込まれ、財務省は予算の膨張に歯止めを掛けたがっている。一方、現在約150万人いる介護職員を25年には250万人にまで増やさないと、団塊世代の介護需要に追い付かないとされている。人手不足の主な理由の一つは、介護職員の給与水準の低さだ。

介護現場で働く人の平均給与は月21万円台で、全産業の平均額約33万円とは落差がある。看護師約32万円や栄養士約23万円と比べても低い。時間に縛られない働き方を希望して非正規職員にとどまる人が多いのも事実だが、正職員として家庭を持った後も働き続けられるようにすべきだろう。

とかく問題視されるのが、非課税の社会福祉法人の経営が多い特別養護老人ホームだ。

利益率8.7%で、中小企業の平均2.2%より高く、内部留保は平均3億円を超えるとの調査結果もある。将来の増改築のために内部留保は必要などと経営者側は主張するが、社会福祉法人向けには低利の融資制度が各種用意されている。内部留保をもっと現場職員の賃上げに回すべきだとの指摘はもっともだ。

一方、24時間対応の定期巡回訪問介護サービスは、要介護度の高い人も自宅で暮らし続けられるサービスとして12年度に新設した目玉事業だが、事業所数は伸び悩んでいる。利益率が0.9%と低いためでもある。

介護サービスを担う人材の不足は、親の介護のために仕事を辞めざるを得ない「介護離職」に拍車を掛け、さらなる人手不足を招くという悪循環を生む。住みなれた地域で暮らし続けることを望む高齢者は多いが、在宅生活を支えるサービスは大幅に不足している。介護報酬を一律に削減するのではなく、24時間定期巡回訪問や小規模多機能型居宅介護は報酬を引き上げる必要がある。その上で介護事業の経営者にはさらなる経営努力を求めたい。

■2014.10.22  ポットのお湯と牛乳だけで作れるおやつ!高齢者向けの栄養補給用食品ブランドから新発売
新製品「やさしく・おいしくチョコっとプリン」
バランス株式会社は、高齢者向けの栄養補給用食品ブランド「やさしく・おいしく」の新製品「やさしく・おいしくチョコっとプリン」の発売を2014年10月20日(月)より開始した。

高齢者に不足しがちな栄養素を手軽に補給
「やさしく・おいしくチョコっとプリン」は、ポットのお湯(90度以上)と冷たい牛乳で簡単に作ることができる粉末タイプのチョコプリンの素。

カルシウムと食物繊維と鉄を配合し、おいしく手軽に高齢者に不足しがちな栄養素を補うことができる。


「やさしく・おいしく」ブランドについて
「やさしく・おいしく」ブランドは、加齢からくる食欲減退により1日に必要な栄養の摂取が困難になりがちな高齢者向けの栄養補給用食品だ。

栄養バランスなどの機能性だけでなく、食べやすい食感などにもこだわり「食べる楽しさ」を追求。おやつシリーズとして、牛乳と混ぜて冷やすだけでできるアイスや、ポットのお湯で簡単に作れるようかんなどを販売している。


「アレンジレシピ」も公開中
今回、同シリーズのラインナップに「チョコっとプリン」が加わることで、おやつシリーズのバリエーションもさらに広がった。

同社ホームページではこれらの商品を使った「アレンジレシピ」も公開中。食の細くなりがちな高齢者や病気療養中の方にも、楽しんで栄養を摂ってもらいたいとしている。

バランス株式会社のニュースリリース
http://www.balance-b.jp/news/news0283.html

バランス株式会社ホームページ
http://www.balance-b.jp/

■2014.10.23  訪問介護の報酬・基準に関する見直し案―厚労省 介護給付費分科会
10月22日、社会保障審議会の第111回介護給付費分科会が開かれ、平成27年度介護報酬改定に向けた議論が本格化した。
訪問介護の報酬・基準に関する、厚労省としての見直しの【論点】とその【対応】について案が示され、協議された。

見直しが必要として挙げられたのは、次の5つ。
1)20分未満の身体介護
2)サービス提供責任者の配置基準等
3)訪問介護員2級課程修了者であるサービス提供責任者に係る減算の取扱い
4)生活機能向上連携加算の見直し
5)予防給付が事業化することに伴う人員・設備基準

1)「20分未満の身体介護」について
【論点】
「在宅での中・重度介護者の支援を促進するため、定期巡回・随時対応サービスの普及とあわせ、1日複数回サービスを提供する選択肢の1つとして、20分未満の身体介護の算定要件を見直してはどうか」

【対応案】
・夜間・深夜・早朝時間帯について、日中時間帯と同様に、要介護3以上であって一定の要件を満たすものに限り算定を認める。
・「20分未満の身体介護」を算定する利用者に係る1月あたりの訪問介護費は、定期巡回・随時対応型訪問介護看護(一体型(訪問看護サービスを行わない場合))における当該利用者の要介護度に対応する単位数の範囲内とする。
・「20分未満の身体介護」を算定する場合、同一建物居住者へのサービス提供に係る減算割合を引き上げる。

2)「サービス提供責任者の配置基準等」について
【論点】
在宅中重度者への対応の更なる強化を図るとともに、効率的な事業運営を図る観点から、サービス提供責任者の配置等を見直してはどうか。

【対応案】
・中重度の要介護者を重点的に受け入れるとともに、人員基準を上回る常勤のサービス提供責任者を配置する事業者について、特定事業所加算による加算を行う。
・複数のサービス提供者が行う業務について効率化が図られている場合には、サービス提供責任者の配置基準を「利用者50人に対して1人以上」に緩和する。

3)「訪問介護員2級課程修了者であるサービス提供責任者に係る減算の取扱い」について
【論点】
サービス提供責任者の任用要件について、介護福祉士への段階的な移行を進める上で、平成27年4月から、減算割合を引き上げてはどうか。

【対応案】
・23年度の介護給付費分科会において提示した見直し方針に従い、27年4月から、サービス提供責任者減算の減算率を引き上げる。
・減算率は、「訪問介護員3級修了者である訪問介護員に係る減算」の取扱いに準じ、△30%とする。
・ただし、減算が適用される訪問介護事業所が、人員基準を満たす他の訪問介護事業所と統合し出張所(いわゆる「サテライト事業所」)となる場合は、平成29年度末までの間、減算適用事業所を統合する訪問介護事業所全体について、当該減算を適用しないこととする。

4)「生活機能向上連携加算の見直し」について
【論点】
リハビリテーション専門職の意見を踏まえた訪問介護計画の作成を促進してはどうか。具体的には、訪問リハビリテーション実施時に限定している算定要件について、加算対象となるサービス類型を拡大してはどうか。

【対応案】
訪問リハビリテーションを行った際にサービス提供責任者が同行し、リハビリテーション専門職と利用者の身体の状況等の評価を共同して行った場合に限定している算定要件について、通所リハビリテーションのリハビリテーション専門職が利用者の居宅を訪問する際にサービス提供責任者が同行した場合も加算対象とする。

5)「予防給付が事業化することに伴う人員・設備基準」について
【論点】
訪問介護事業者が、訪問介護と総合事業における訪問事業を同一の事業所において一体的に運営する場合の人員・設備の取扱いについて、現行の介護予防訪問介護に準ずるものとしてはどうか。

【対応案】
訪問介護事業者が、訪問介護と総合事業における訪問事業を同一の事業所において一体的に運営する場合の人員・設備の取扱いは、訪問事業の累計に応じて、以下のとおりとする。
@訪問介護と「現行の訪問介護相当のサービス」を一体的に運営する場合
→現行の介護予防訪問介護に準ずるものとする。
A訪問介護と「訪問型サービスA(緩和した基準によるサービス)」を一体的に運営する場合
→現行の訪問介護員等の人員基準を満たすことが必要。サービス提供責任者は、要介護者数で介護給付の基準を満たし、要支援者には必要数。

◎当日の資料
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000062102.pdf

■2014.10.23  定期巡回・随時対応型訪問介護看護の報酬・基準に関する見直し案―厚労省 介護給付費分科会
10月22日の第111回介護給付費分科会において、定期巡回・随時対応型訪問介護看護の報酬・基準についても、厚労省としての見直しの【論点】とその【対応】について案が示され、協議された。

見直しが必要として挙げられたのは、次の5つ。
1)訪問看護サービスの提供体制
2)通所サービス利用時の報酬算定(減算)
3)オペレーターの配置基準等
4)介護・医療連携推進会議及び外部評価の効率化
5)同一建物居住者へのサービス提供

1)「訪問看護サービスの提供体制」について
【論点】
定期巡回・随時対応サービスの利用促進のため、サービスの提供体制等について見直してはどうか。

【対応案】
一体型事業所における訪問看護サービスの一部を、他の訪問看護事業所との契約に基づき、当該訪問看護事業所に行わせることを認める。

2)通所サービス利用時の報酬算定(減算)
【論点】
定期巡回・随時対応サービスの提供実績は、通所サービス利用の有無により大きな差がないことから、減算率を見直してはどうか。

【対応案】
通所介護、通所リハビリテーション又は認知症対応型通所介護を受けている利用者に対して、定期巡回・随時対応サービスを行った場合の減算(定期巡回・随時対応サービスの1日あたり所定単位の2/3相当額)を軽減してはどうか。

3)「オペレーターの配置基準等」について
【論点】
夜間の人的資源の有効活用を図るため、兼務要件や勤務体制を見直してはどうか。

【対応案】
・夜間等のオペレーターとして職員を充てることができる施設について、併設施設に限定している要件を緩和し、同一敷地内にある又は道路を隔てて隣接する同一法人が経営する他の施設・事業所等の職員を充てることを認める。
・夜間等のオペレーター機能について、利用者の心身の状況に応じて必要な対応を行う観点から支障がない場合には、複数の定期巡回・随時対応サービス事業所の機能を集約し、通報を受け付ける業務形態について認める。

4)「介護・医療連携推進会議及び外部評価の効率化」について
【論点】
介護・医療連携推進会議と外部評価は、ともに「第三者による評価」という共通の目的を有しており、効率化してはどうか。

【対応案】
定期巡回・随時対応サービス事業所は、引き続き、自らその提供する定期巡回・随時対応型サービスの質の評価(自己評価)を行い、これを介護・医療連携推進会議に報告し、評価等を受けた上で公表する仕組みとする。

5)「同一建物居住者へのサービス提供」について
【論点】
同一の集合住宅の利用者とそれ以外の住居の利用者に対するサービスの提供実態を踏まえ、同一建物減算を導入してはどうか。

【対応案】
一定数以上の利用者が同一建物に居住する場合には、職員の移動時間が軽減されることを踏まえ減算する。

◎当日の資料
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000062105.pdf

■2014.10.23  小規模多機能型居宅介護の報酬・基準に関する見直し案―厚労省 介護給付費分科会
10月22日の第111回介護給付費分科会において、小規模多機能型居宅介護の報酬・基準について、厚労省としての見直しの【論点】とその【対応】について案が示され、協議された。

見直しが必要として挙げられたのは、次の10項目。
1)訪問サービスの機能強化
2)看取りの実施に対する評価
3)運営推進会議及び外部評価の効率化
4)看護職員の配置要件、他の訪問看護事業所等との連携
5)小規模多機能型居宅介護における地域との連携に係る取組の推進
6)同一建物居住者へのサービス提供
7)事業開始時支援加算
8)グループホームとの併設型における夜間の職員配置
9)小規模多機能型居宅介護と広域型特養との併設
10)中山間地域等における小規模多機能型居宅介護の推進

1)「訪問サービスの機能強化」について
【論点】
今後、小規模多機能型居宅介護の利用者の在宅生活を継続する観点から、訪問サービスの重要性が高まることが想定されることから、訪問サービスを強化した類型を創設してはどうか。

(1)訪問サービスを積極的に提供する小規模多機能型居宅介護事業所の評価
「訪問体制強化加算」を新たに設けてはどうか。

【対応案】
• 在宅生活を継続するための支援を更に強化する観点から、訪問サービスを積極的に提供する体制の評価を行うため、新たに「訪問体制強化加算」(仮称)を新設する。
• 算定要件は以下のとおりとする。
@訪問を担当する常勤の従業者を2名以上配置
特定の職員を訪問サービスに固定するものではない。
A1月あたり延べ訪問回数が一定回数以上の指定小規模多機能型居宅介護事業所
サービス付き高齢者向け住宅等を併設する事業所については、登録者のうち同一建物以外の利用者が一定以上を占める場合であって、かつ、同一建物以外の利用者に対して、上記の要件を満たす場合に算定対象とする。

(2)登録定員の見直し
現行の登録定員(25人以下)を引き上げてはどうか。

【対応】
小規模多機能型居宅介護は地域密着型サービスであることを踏まえ、登録定員を29人以下とする。

2)「看取りの実施に対する評価」について
【論点】
在宅中重度者への対応の更なる強化を図るため、看取りの実施に対する評価を導入してはどうか。

【対応案】
看取り介護加算を新たに設ける。

3)「運営推進会議及び外部評価の効率化」について
【論点】
運営推進会議と外部評価は、ともに「第三者による評価」という共通の目的を有しており、効率化してはどうか。

【対応案】
小規模多機能型居宅介護事業所は、引き続き、自らその提供するサービスの質の評価(自己評価)を行い、これを運営推進会議に報告し、評価等を受けた上で公表する仕組みとする。

4)「看護職員の配置要件、他の訪問看護事業所等との連携」について
【論点】
看護職員に係る配置要件や加算要件について、効率化の観点から見直してはどうか。

(1)看護職員の配置基準の緩和
小規模多機能型居宅介護の看護職員が兼務可能な施設の緩和

【対応案】
小規模多機能型居宅介護従業者のうち看護職員が兼務可能な施設・事業所について、「同一敷地内」の要件を見直し、同一敷地内又は道路を隔てて隣接する施設・事業所と兼務できるものとする。あわせて、兼務可能な施設・事業所の種別を見直すものとする。

(2)看護職員配置加算の加算要件の見直し
人材確保の観点から、常勤の(准)看護師の配置を要件とする看護職員配置加算の加算要件を緩和してはどうか。

【対応案】
看護職員配置加算(T)(U)の加算要件を見直し、常勤要件に替えて、常勤換算方法で1人以上の(准)看護師を配置する場合に加算対象とする。

5)「小規模多機能型居宅介護における地域との連携に係る取組の推進」について
【論点】
地域包括ケアシステムを推進する観点から、小規模多機能型居宅介護の地域との連携を更に推進していくため、必要な見直しを行ってはどうか。

【対応案】
小規模多機能型居宅介護事業所と同一敷地内に併設する事業所が「介護予防・日常生活支援総合事業(以下「総合事業」)」を行う場合には、入所者の処遇に影響がないという条件のもと、人員・設備について以下のとおりとする。
@ 小規模多機能型居宅介護事業所の管理者が、総合事業の訪問型サービスや通所型サービス等の職務と兼務することを認める。
A 小規模多機能型居宅介護事業所の設備(居間及び食堂を除く)について、総合事業の訪問型サービスや通所型サービス等との共用を認める。

6)「同一建物居住者へのサービス提供」について
【論点】
サービスの提供実態を踏まえ、現行の同一建物減算に替えて、同一建物居住者に対してサービスを行う場合の基本報酬を設けてはどうか。

【対応案】
・現行の同一建物減算は廃止する。
・新たに、利用者の居所(事業所と同一建物に居住するか否か)に応じた基本報酬を設ける。

7)「事業開始時支援加算」について
【論点】
今年度末までの経過措置であることから、現に定めるとおり、廃止してはどうか。

【対応案】
事業開始時支援加算は、現に定めるとおり、平成27年3月31日をもって廃止する。

8)「グループホームとの併設型における夜間の職員配置」について
【論点】
グループホームと小規模多機能を併設している場合の夜間の職員配置について、一定の要件の下で、兼務を認めてはどうか。

【対応案】
次の要件を満たす事業所について、グループホームの入居者の処遇に支障がないと認められる場合には、小規模多機能とグループホームの兼務を認める。
@ 小規模多機能の泊まり定員とグループホームの1ユニットあたりの定員の合計が9人以内であること。
A 小規模多機能型居宅介護とグループホームが同一階に隣接していること。

9)「小規模多機能型居宅介護と広域型特養との併設」について
【論点】
小規模多機能型居宅介護事業所と同一建物に併設できる施設・事業所について、見直してはどうか。

【対応案】
広域型の特別養護老人ホームなどの社会福祉施設と同一建物に併設することについては、小規模多機能型居宅介護の基本方針を踏まえた上で、個別に判断する仕組みとする。

10)「中山間地域等における小規模多機能型居宅介護の推進」について
【論点】
中山間地域等に居住している利用者に対して、通常の事業の実施地域を越えてサービス提供を行った場合を評価してはどうか。

【対応案】
小規模多機能型居宅介護については、「通い」「訪問」も実施していることから、中山間地域等に居住している利用者に対して通常の事業の実施地域を越えてサービス提供(送迎・訪問)を行う場合には、新たに加算で評価する。

◎当日の資料
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000062108.pdf

■2014.10.23  複合型サービスの報酬・基準に関する見直し案―厚労省 介護給付費分科会
10月22日の第111回介護給付費分科会における、複合型サービスの報酬・基準についての厚労省としての見直しの【論点】とその【対応】が示された。

見直しが必要として挙げられたのは、次の6つ。
1)報酬算定
2)複合型サービス事業所と同一建物居住者へのサービス提供
3)登録定員
4)運営推進会議及び外部評価の効率化
5)サービス普及に向けたサービス名称
6)事業開始時時支援加算

1)「報酬算定」について
【論点】
通い・泊まり・訪問介護・訪問看護のサービスを組み合わせることにより、医療ニーズのある中重度の要介護者の在宅療養生活を支援するサービスとして創設された複合型サービスであるが、現在の登録利用者にサービス提供されている訪問看護の実態に偏りがみられること、今後は利用者の重度化に伴い訪問看護の重要性が高まることが想定されることから、報酬算定を見直してはどうか。

【対応案】
現行の基本報酬をもとに、下記のような複合型サービス事業所の看護体制を評価した減算及び加算を設ける。
・訪問看護を実施していない利用者が一定割合以上の複合型サービス事業所については、適正化の観点から、基本報酬に内包されている訪問看護サービス部分について減算を行う。
・訪問看護を実施している利用者が一定割合以上を占めており、利用者の医療ニーズに重点的に対応している複合型サービス事業所については、そのサービス提供体制を評価して加算を行う。

2)「複合型サービス事業所と同一建物居住者へのサービス提供」について
【論点】
サービスの提供実態を踏まえ、同一建物居住者に対してサービスを行う場合の基本報酬を設けてはどうか。

【対応案】
利用者の居所(事業所と同一建物に居住するか否か)に応じた基本報酬を設ける。

3)「登録定員」について
【論点】
現行の登録定員「25人以下」を引き上げて「29人以下」としてはどうか。

【対応案】
・複合型サービスは、地域密着型サービスであることを踏まえ、登録定員を29人以下とする。
・現に事業を行う複合型サービス事業所が登録定員を拡大する場合には、「現に利用する者へのサービスの提供に支障を来さないよう、訪問サービスの提供など、必要な配慮を行うこと」を解釈通知に規定する。

4)「運営推進会議及び外部評価の効率化」について
【論点】
運営推進会議と外部評価は、ともに「第三者による評価」という共通の目的を有しており、効率化してはどうか。

【対応案】
複合型サービスは、引き続き、自らその提供するサービスの質の評価(自己評価)を行い、これを運営推進会議に報告し、評価等を受けた上で公表する仕組みとする。

5)「サービス普及に向けたサービス名称」について
【論点】
サービスの普及に向けた取組として、提供するサービス内容が具体的にイメージできる名称に変更してはどうか。

【対応案】
医療ニーズのある中重度の要介護者が地域での療養生活を継続できるよう、「通い」「泊まり」「訪問看護」「訪問介護」を組み合わせることで、利用者や家族への支援の充実を図るという方針が具体的にイメージでき、サービスの普及につながる名称「看護小規模多機能型居宅介護(仮称)」へ変更する。

6)「事業開始時時支援加算」について
【論点】
事業開始時支援加算の時限措置を平成30年度末まで延長し、継続してはどうか。

【対応案】
事業開始時支援加算については、平成27年3月末までの時限措置としているが、今後の整備促進を図る観点から、現在の加算の算定状況や収支状況等を踏まえ、平成30年度末まで延長する。

◎当日の資料
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000062110.pdf

■2014.10.23  介護現場の声を反映した「使い捨て防水シーツ大判タイプ」発売
生活用品の製造・卸を行うアイリスオーヤマ株式会社は10月23日より、マットレスの両端までシーツを巻き込み、マットレス側面の汚れを防ぐことができる「使い捨て防水シーツ大判タイプ」6アイテムを発売する。

ドラッグストアやホームセンター、総合スーパーなどを中心に販売し、初年度の販売目標は3億円を目指す。

高齢化が進むなかで、配偶者や親の介護は多くの人が直面する問題となっている。また、要介護認者の増加に反して、介護施設や介護士が不足しており介護現場の負担を軽減できる製品が求められているのが現状だ。

実際の介護現場では、尿もれ、尿失禁などの排泄物以外に食事や水分補給に伴い上半身部分の寝具を汚してしまうことや、ベッドや布団に乗り降りする際の失禁によるマットレス側面の汚れが多いという声が聞かれる。

今回発売する「使い捨て防水シーツ大判タイプ」は、120cmの幅広仕様で設計することにより、マットレスの両端までシーツを巻き込むことができ、今までカバーできなかった寝具側面の汚れを防ぐことが可能に。

また、目的によって選べる3サイズを揃えることで、介護現場の幅広いニーズに対応する。

アイリスオーヤマでは、介護される人はもちろん介護する人も「ユーザー」であると考え、拡大していく介護市場に対して新しい商品価値の提案に取り組み、市場創造に取り組んでいきたいとしている。

アイリスオーヤマ株式会社のプレスリリース
http://www.irisohyama.co.jp/news/2014/1022.pdf

■2014.10.24  特養でほろ酔い、増える笑顔 広まる「居酒屋」の日
高齢者が介護を受けながら生活する特別養護老人ホーム(特養)で、定期的に開く「居酒屋」が人気を集めている。自宅にいたころ晩酌が楽しみだった人にとっては、入居前の日常を一時的に取り戻せる場だ。笑顔が増え、機能の回復にもつながっている。

午後6時40分、神奈川県横須賀市の特養「太陽の家二番館」の交流スペースにお年寄りが車いすで集まってきた。「居酒屋」の開店時間の午後7時まで待ちきれない様子。

泡立つビールを片手に、下里喜一さん(81)は「かんぱーい」と周囲とグラスを合わせ、のどを潤した。のみ込む機能が弱っており、むせてしまうことがあるため、ビールにはとろみをつけてある。下里さんは「この日が来るのを毎日楽しみにしている」と話す。

居酒屋には9人が集まった。最高齢は96歳。認知症の人もいる。ビールや焼酎といった飲み物に加え、冷ややっこ、カツオのたたき、枝豆も用意されていた。カツオは、かむ力が弱い人には細かく刻まれている。日頃はスプーンを使う男性も、冷ややっこを前にすると昔のように自然と箸を持ち始める。

 カラオケもあり、「北国の春」「つぐない」などそれぞれの十八番が流れる。ほろ酔い気分で歌う人や手拍子をする人、会話を楽しむ人たちがいて、ゆったりとした時間が流れる。

2005年に開所した当時、施設側が入居者に夢を聞いたところ、「居酒屋に行きたい」「酒を飲みたい」という声が多かった。だが、介護が必要な度合いが高い人が多く、外食は難しい。だったら「自宅と同じように晩酌してもらおう」と月2回の居酒屋を始めた。代金は1回につき1千円だ。

安全面には注意を払う。参加できるのは、嘱託医の了解と家族の許可を得た人のみ。飲食中は職員が付き添い、看護師もいる。飲み過ぎないように量にも目を配る。感染症がはやっている時期は休み、提供した食品はサンプルを保管している。

■機能回復にも期待

横浜市保土ケ谷区の「レジデンシャル常盤台」も月2回の居酒屋を開催。ここでは入居者がつまみの用意を手伝っている。

肉じゃがとポテトサラダといったつまみを作るために女性10人が集まった。認知症やパーキンソン病の人が包丁を握り、ジャガイモやニンジンの皮をむき、見本通りの大きさに切っていく。「昔はよくやったのよ」「息子に料理をしていたって、伝えてね」と調理中も会話が続く。

入居者120人のうち、約3分の1が参加する盛況ぶり。人気の秘密は通常の食事より、濃いめで家庭的な味付けのつまみだ。食欲が落ちている人を、職員が誘うこともあるという。

家族も参加できる。席の一角では、カラオケに耳を傾ける入居者の向山一さん(74)に寄り添うように妻の章子さん(70)が座っていた。一さんは口から食べられないため、胃へのチューブで栄養をとっている。章子さんは「昔カラオケによく一緒に行っていた。大勢の人がいる場にいるのが刺激になっているようで、他の人の歌をニコニコしながら聞いている。いつかまた歌ってくれたら」と話す。

施設長の高橋好美さん(65)は「住み慣れたところから離れて集団生活を余儀なくされている。そうしたストレスを解消する場」と説明する。給仕をするのは介護職員ではなく、事務職員や管理栄養士だ。

個々の力を引き出す仕掛けもある。例えば、注文は、名前や部屋番号を言ってもらってからとる。酒飲み相手として、ボランティアの男性に参加してもらい、会話が弾む人もいる。高橋さんは「押しつけるのではなく、好きな人と楽しい時を過ごせるように工夫することが大事」と話す。

「特養居酒屋」は「明石二見特別養護老人ホームラガール」(兵庫県明石市)や「高齢者総合福祉施設清風荘」(青森県平内町)など全国で行われている。他の入居者や職員とコミュニケーションを取る場になり、笑顔が増える高齢者も多いという。昔の習慣や記憶を自然と思い出すことで意欲が湧いたり、機能回復できたりする期待もある。

生活とリハビリ研究所の三好春樹代表(64)は「施設内の居酒屋は広まっている。高齢者ケアが、医療から生活へという流れになってきたことが背景にあるのだろう」と分析する。

■2014.10.24  地域福祉研修会:「指示待たず 市町村が在り方自ら考えよう」 丸亀 /香川
地域福祉について考える研修会が、丸亀市の市民会館で開かれた。公益財団法人「テクノエイド協会」(東京都新宿区)理事長、大橋謙策さんが講演。「国や県の指示を待つのではなく、市町村自らが福祉の在り方について考えないといけない」と訴えた。また「福祉サービスはビジネスとしてもチャンスだ」として、民間企業にサービスへの参入を促した。

丸亀市社会福祉協議会が主催。福祉関係者や民間企業の幹部ら約120人が参加した。

大橋さんは最初に「みなさんは誰に老後を見てほしいと思っていますか」と問いかけた。男性参加者の多くが「配偶者(妻)」の答えに手を挙げたのを見て、実際に介護が必要となるのは85歳以上が多いと指摘。その頃、同じく高齢となっている配偶者が介護をするのは事実上、無理であると強調した。その上で福祉サービスの労働力は不足し、「ロボットの商品開発が本格化している」と話した。

さらに高齢者や障害者などに分けた縦割り的なサービスを改め、「市町村主権」で計画的な福祉行政が求められていると解説。また、東京などで民間企業が福祉サービスを始め、成功しているケースや、障害者が特性に応じて働いている事例を挙げ、福祉サービスは採算が合うビジネスになることを具体的に紹介した。

■2014.10.25  詐欺容疑:医療法人理事長を逮捕…元職員名義で不正受給
架空の診療書類を作って診療報酬を不正受給したとして、奈良県警は24日、医療法人「光優会」理事長で精神科医の松山光晴容疑者(54)=奈良市南登美ケ丘=を詐欺容疑で逮捕した。県警は、松山容疑者が2010年1月以降、光優会グループの元職員や患者ら少なくとも十数人の名義を利用して数千万円をだまし取ったとみて、余罪を追及する。職員として雇った患者の名義も使って、不正な受給を繰り返していた疑いもあるという。

逮捕容疑は、グループの元職員で、当時は東大阪市に住んでいた自営業男性(50)を法人が運営する「クリニックやすらぎ八木診療所」(奈良県橿原市、閉院)で08〜09年に月に6〜26日間診察したように装い、診療報酬明細書(レセプト)を県国民健康保険団体連合会に提出。11年3月に東大阪市から約362万円をだまし取ったとしている。松山容疑者は「(男性を)知っているが診療はしていない。(診療報酬を)請求したことは知らない」と容疑を一部否認しているという。

松山容疑者はクリニックの患者を職員として大量に採用。県警は架空請求の多くが、こうした職員の名義を利用したものだったとみて調べる。

13年10月の家宅捜索で押収した資料などから、年間に数億円の診療報酬を請求していることが判明。県警はクリニックは10年前後から架空請求していたとみている。松山容疑者のパソコンには元職員や元患者など約4000人分の患者データが残っていたという。

法人登記などによると、光優会は1998年3月に設立、クリニックは同年5月に開設された。同名の社団法人とともに、奈良、三重両県で自立支援訓練などの福祉サービスを行う事業所6カ所を運営していた。

内部告発を受けた橿原市が12年11月に刑事告発。報告を受けた奈良県は13年3〜4月、福祉サービスに対して支払われた自立支援給付費約170万円と、通院治療に支払われた自立支援医療費約100万円が不正受給にあたると判断し、それぞれ指定医療機関・事業所の取り消し処分をした。

■2014.10.25  従軍慰安婦問題の報道に関わった元朝日新聞記者の退職要求 大学脅迫  福祉施設で管理人
従軍慰安婦問題の報道に関わった元朝日新聞記者、植村隆氏(56)が非常勤講師を務める北星学園大(札幌市厚別区)に脅迫電話をかけたとして、北海道警札幌厚別署は23日、新潟県燕市新生町2、施設管理人、上村(かみむら)勉容疑者(64)を威力業務妨害容疑で逮捕した。道警によると、「自分で電話したことに間違いありません」と容疑を認めているという。道警は、朝日新聞の一連の報道に不満があったとみて、動機や背景を調べる。

同様の趣旨の脅迫文が北星学園大と、別の元朝日新聞記者(67)が教授を務めていた帝塚山学院大(大阪狭山市)にも届いており、道警は関連を調べる。

容疑は9月12日午後5時48分ごろ、自宅の固定電話から北星学園大の代表番号に電話し、対応した男性警備員に「(元記者は)まだ勤務しているのか。爆弾を仕掛けてやるからな」などと脅し、大学に不審物の捜索をさせるなど業務を妨害したとしている。大学と道警が不審物を捜したが見つからなかった。

電話の履歴などから上村容疑者が浮上した。道警は23日朝から上村容疑者の自宅を家宅捜索して資料を押収した。

北星学園大などによると、3月中旬から「非常勤講師を辞めさせろ」などとのメールやファクスが多数寄せられた。5月29日と7月28日には学長や教授会などに宛てて複数の脅迫文が届いた。文書はパソコンで打ったとみられる文字で「非常勤講師を辞めさせなければ、天誅(てんちゅう)として学生を痛めつける。釘(くぎ)を混ぜたガスボンベを爆発させる」などと書かれ、茶封筒に虫ピン数十本が同封されていた。

帝塚山学院大にも9月13日、「(別の元記者を)辞めさせなければ学生に痛い目に遭ってもらう。くぎを入れたガス爆弾を爆発させる」との脅迫文が届いた。この元記者は文書が届いた当日に教授を退職した。一連の脅迫について、道警と大阪府警が威力業務妨害の疑いで捜査していた。

◇元朝日記者「捜査見守りたい」

北星学園大の非常勤講師を務める元朝日新聞記者の植村隆氏(56)は23日、「容疑者逮捕の報にホッとしている。しかし、脅迫文との関連はわからず、今後の捜査を見守りたい。いずれにしても、このような卑劣な行為は許されない」と話した。

一連の脅迫事件を受け、作家の池澤夏樹さんらが呼びかけ人となり、北星学園大を励ますための「負けるな北星!の会」が結成された。呼びかけ人の一人で元高校教諭の新西(しんざい)孝司さん(85)=札幌市厚別区=は「容疑者一人の問題ではなく、背後には社会全体として意に沿わない意見への攻撃やヘイトスピーチなどが横行している問題がある」と話した。同じく呼びかけ人の内海愛子・恵泉女学園大名誉教授は「言論や表現の自由に対する脅威だ。名前を出して批判するならよいが、匿名という陰に隠れて脅迫することは許されない」と語った。【山下智恵、青島顕】

◇周囲「頭いい人」

新潟県燕市の上村勉容疑者の自宅近くの住民らによると、上村容疑者は妻と2人暮らしで、市内の福祉施設で管理人をしているという。野菜作りに熱心で、早朝、家庭菜園で収穫した野菜を持って歩く姿がたびたび見られたという。

上村容疑者の自宅車庫には、男性市議のポスターが張ってある。市議は「(上村容疑者の)家庭菜園が私の自宅の近くにあり、毎朝見かけるので『選挙で応援してくださいね』と声をかけたのが縁で、ポスターを渡した。政治的な話はしたことがない」と語った。

住民によると、上村容疑者が株式売買をしていることもよく知られていた。近所の男性(67)は「定年までは勤め先の会社の資産管理を任されていたと聞いた。頭がいい人だと思っていた。まさか逮捕されるなんて」と驚いた様子だった。近所の女性(62)は「朗らかな人という印象を持っていた」と話した。【柳沢亮】

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◇元朝日記者2人の勤務先への脅迫の経緯

 1月末  「朝日新聞記者の植村隆氏が関西の大学教授に就任予定」と週刊誌報道。この大学に「辞めさせろ」と電話やメールが殺到

 3月    関西の大学が植村氏と雇用契約解消。植村氏が非常勤講師を務める北星学園大にも電話やメールが届き始める

 5月29日 北星学園大に脅迫文届く

 7月28日 北星学園大にさらに複数の脅迫文

 8月 5日 朝日新聞が従軍慰安婦問題の検証紙面。

       植村氏の記事に「事実のねじ曲げはない」

 9月12日 北星学園大に「爆弾を仕掛ける」などと脅迫電話

   13日 別の元朝日新聞記者が教授を務める帝塚山学院大に脅迫文届く。元記者は同日付で退職

   30日 北星学園大が「大学の自治を侵害する卑劣な行為であり、毅然(きぜん)として対処する」との文書を出す

10月 6日 北星学園大を支援しようと、作家の池澤夏樹さんらが呼びかけ人となり「負けるな北星!の会」設立

   23日 北海道警が北星学園大への脅迫電話事件で上村勉容疑者を逮捕

■2014.10.25  都障害者スポセン:18年度までに改修 知事が視察 /東京
舛添要一知事は24日、北区の都障害者総合スポーツセンターを視察した。年間利用者は開館時の2倍強にあたる約20万人に急増し、手狭さや老朽化が問題になっている。都は2018年度までに施設の拡充や改修を終える方針だ。

センターは1986年に開館。体育館やテニスコート、陸上競技場などを備え、車椅子テニスの国枝慎吾選手らパラリンピックのメダリストも練習で活用した。

舛添知事はセンターで、パラリンピックの正式種目になっている球技「ボッチャ」や、視覚障害者による「サウンドテーブルテニス」などの練習を視察。パラリンピックのメダリストらから障害者スポーツや施設の現状について説明を受けた。

都の障害者専用スポーツ施設は他に国立市にしかなく、舛添知事は視察後、報道陣に「パラリンピックを目指し、もう少しこういう施設があるといい。(都の)長期ビジョンにもそういうアイデアを入れられれば」と語った。

■2014.10.25  看護学生流出防げ…千葉県、修学資金貸付枠を拡大
千葉県内で看護師不足が深刻化している。人口10万人あたりの看護師数が全国ワースト2位という絶対数の不足に加え、大病院への集中や地域ごとの偏在もあり、規模縮小を余儀なくされる医療機関も出てきた。

こうした状況に県は、看護学生への修学資金の貸付枠を50人拡大し、中国人看護師の受け入れに向けた調査も始めた。

4月に開所した東葛医療福祉センター「光陽園」(柏市酒井根)は、ベッド数80床で運営する予定だったが、現在、30床しか受け入れていない。理由は看護師不足だ。東葛地域初の重症心身障害者向け施設で、県も支援に乗り出したが確保のめどは立っていない。施設利用のニーズは高く、約50人が入所待ちしているという。

県によると、東葛地域は大規模病院が多いため、特に看護師の確保が難しい。同園の担当者は「特殊な看護となり慣れるまでに時間もかかる。待遇改善のための資金助成や特別な資格を設けるなど、公的支援がほしい」と訴える。

厚生労働省のまとめによると2012年末現在、県内の看護師数は3万5433人で、人口10万人あたりでは572人となり、埼玉県(528人)に次いで少ない。最も多い高知県(1223人)と比べると、半数以下だ。

県の昨年度の調査では、看護師不足を理由に一部病床を閉鎖しているのは38病院。閉鎖病床数は1373床に上っている。県が今年4月にまとめた25年時点の需要推計では、最大約1万5000人の看護職員(保健師など含む)が不足すると見込む。

大きな要因とされるのは、県内学校に通う看護学生の県外流出だ。昨年度、県内の看護学校を卒業した2007人中、県内の病院に勤務したのは1328人で、3分の1が県外に流れた。ベテラン看護師は「好待遇や高度な経験が積めるとの期待から、東京での勤務を望む人が多い」と語る。

県は、年度途中ながら、県内の看護学生らに対する貸し付け事業(最大月1万8000円)の枠を300人から50人拡大する。この貸付額も全国で最低水準だが、卒業後県内で5年間勤務すれば返還が免除される。

中国人看護師の受け入れに向けては、千葉大に業務委託して調査を進めている。中国人看護師を招いて日本の医療現場を知ってもらい、中国に戻った際の「講師役」として育てたい考えだ。県は「漢字が読める中国人なら外国人看護師の壁となっている日本語能力も乗り越えやすいのでは」とみている。

県看護協会が運営する県ナースセンターは今年度、出産などで一度離職した看護師が復職しやすいよう、県内での就職を希望する人向けに無料の講習会を開催している。同協会の沢田いつ子専務理事は「『確保』という視点だけでなく、再就業支援や、離職率を下げるための職場づくりが必要」と指摘している。

■2014.10.25  特養の相部屋代1万円軸に調整 個室や在宅と公平化、厚労省
厚生労働省は24日、特別養護老人ホーム(特養)の相部屋に関し、入所者から月1万円程度の部屋代を徴収する案を軸に調整に入った。数万円を払っている個室利用者や在宅の高齢者との負担の公平化を図る。

対象は低所得者を除き、一定以上の所得がある入所者とする方針だが、利用者側からは「負担が増え、入所しにくくなる」との反発も予想される。

厚労省は29日の社会保障審議会の介護給付費分科会で見直し案を示す。

特養の個室の部屋代は全額が自己負担。一方、相部屋は、介護保険の対象で、1割を自己負担する「施設介護サービス費」の中に部屋代相当分も含まれている。

■2014.10.26  <佐世保高1殺害>佐世保・高1殺害:児相幹部がパワハラ
長崎県佐世保市の高1女子生徒殺害事件の約1カ月半前に、逮捕された少女(16)を診察した精神科医からの通報を放置した県の佐世保こども・女性・障害者支援センター(児童相談所)で、部下にパワハラをしていたとして県が男性幹部を厳重注意処分にしていたことが25日、県関係者への取材で分かった。

県は、この幹部が精神科医からの通報の報告を受ける立場だったことから、当時の対応の詳細を調べている。

県関係者によると、児相幹部は勤務姿勢や業務上のミスについて、日常的に部下を厳しく叱責したり威圧的な態度を取ったりしていた。体調を崩し、長期休暇を取った職員もいるという。

■2014.10.27  認知障害の生活支援アプリ「あらた」がすごい!〈ASAhIパソコン〉
交通事故などでの脳の損傷や脳卒中などにより、脳の機能に障害が起こる「高次脳機能障害」。これにより、記憶障害や注意障害、遂行機能障害、社会的機能障害などが生じて、「次に何を行ったらいいかが分からなくなる」など、生活する上で大きな困難を抱えている。また、支援する側にも大きな負担を感じる人が少なくない。

このような障害を抱える人たちのために、大阪府豊中市にあるITベンチャー企業「インサイト」は、日本初となる認知障害を持つ人々を支援するAndroidタブレット用アプリ「あらた」を開発した。

「あらた」は、アラーム機能やスケジュール管理機能によって、高次脳機能障害を抱える利用者に「次に何を行ったらいいか」を教えてあげることで行動を促し、生活リズムを支援してくれるツールだ。

最初に出てくるメイン画面の「あらたパネル」では、一日のスケジュールをタイムライン形式で表示。「家の掃除をする」「病院に行く」など、次にどのような日常生活の行動を取ったらよいかを画面に大きく表示して教えてくれる。

また、予定の時間になるとキャラクターの「くーちゃん」が登場し、メロディーと音声で知らせてくれる機能も。この音声には、家族や介護士の声などを収録することも可能。

新たな予定をスケジュールに入力する時は、過去のスケジュール登録履歴から、候補を表示して選べるなど、簡単に登録できるようになっている。

さらに、チェックリスト形式で忘れ物を防ぐ機能も備えている。たとえば、病院に行く場合、「診察券を持つ」「お金の準備をする」「家の鍵を持つ」などのチェックリストを自動で表示、できたことからチェックしていき、最後に「できましたスタンプ」を押すことができる。こうすることで、行動漏れだけでなく、行動記録を残すこともできるのだ。

また、その日の行動を振り返って確認できたり、メモを作成して日付を指定しておくと、指定日に「今日見るメモ」として通知してくれたりする機能も。他にも、人の名前をなかなか覚えられない時に、顔写真と名前を登録して記憶の補助をしてくれる機能なども搭載。

このアプリは、厚生労働省の2013年度の「障害者自立支援機器等開発促進事業」で開発され、ITヘルスケア学会第8回年次学術大会で「製品賞」を受賞した。6都県の高次脳機能障害を持つ人たちと、家族会や大学病院などによる実証実験も行われ、支援をする人たちからは「本人に直接言わなくてもタブレットに従ってくれるので助かっている」「タイマー通知により自分で行動してくれるのでガスを使う時などに目を離しても安心」といった声が寄せられているという。

アプリは月額540円で利用できる。高次脳機能障害を抱える人々にとって、頼れるパートナーとなってくれるアプリかもしれない。

■2014.10.27  大リーグ青木「清めの塩」は与論産 障害者施設で手作り
 ワールドシリーズを戦う米大リーグ・ロイヤルズの青木宣親選手の活躍を、鹿児島最南端の島の名産品が支えている。与論島の障害者施設がつくる「命泉塩(めいせんえん)」。島を囲む美しい海の水から昔ながらの製法で作るミネラルたっぷりの天然塩だ。生産者たちは「光栄で励みになる」と青木選手を応援している。

「最高のプレーができるように体を清めたい」。青木選手は大事な大一番の試合の直前、「清めの塩」を全身に塗るという。

商品名に縁起の良さを感じ、ヤクルト所属だった2008年の北京五輪や09年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)、今月のア・リーグ優勝決定シリーズなどで愛用した。「身が引き締まる。僕にとって欠かせない大切なものです」と話す。

生産するのは、与論島南岸の障害福祉サービス事業所「秀和苑」だ。施設長の川畑喜久実さん(60)は塩の名前について「多くの人の恵みになる商品にしようとつけた。世界で活躍する選手の支えになるなんて本当にうれしい」と話す。

■2014.10.27  <佐世保高1殺害>佐世保高1殺害:「病院からの丸投げだ」事件前に児相幹部
長崎県佐世保市の高1同級生殺害事件で、殺人容疑で逮捕された少女(16)を診察した精神科医が、事件前に県佐世保こども・女性・障害者支援センター(児童相談所)に対応を求めたとされる電話について、担当の児相幹部が「病院からの丸投げだ」などと発言していたことが、県の調査で分かった。

県によると、発言は児相の職員から寄せられた内部告発や、職員への聞き取りで判明。精神科医は事件の約1カ月半前の6月10日、児相に「少女が人を殺しかねない」と電話した。幹部は翌11日に報告を受けており、県が経緯を調べている。幹部は関係機関からの相談に、日常的に「丸投げを受ける必要はない」などと発言していたという。9月24日には部下へのパワハラを繰り返したとして厳重注意も受けている。

児相は精神科医の電話を県警や県に伝えるなど、具体的な対応を取っていなかったが、「制度についての照会」として処理したと釈明していた。

児相の宮崎慶太所長は27日、「丸投げ」発言について「(幹部にも)確認したが、電話に対する指示でそうした発言があったとは聞いていない」とした上で「過去にはあったかもしれない」と述べた。「幹部の存在が児相の対応に直接的な影響を与えたとは考えていない」との認識を示しつつ「(具体的な対応をしなかった)要因の一つとの印象を持っている職員もいると思う」とも述べた。

■2014.10.28  <ミニ・シンポジウム報告>「ブラック化と家事ハラの介護現場、現状と課題を考える」
市民福祉情報オフィス・ハスカップは、10月16日、ミニ・シンポジウム「働く人だけの悩みじゃない!―介護職員の現状と課題―」を開催した。

今回のミニ・シンポジウムは、介護労働の何が問題なのかを『家事労働ハラスメント』(岩波新書)著者の竹信三恵子・和光大学教授が講演し、介護労働の現場の実態を日本介護クラフトユニオンの染川朗・事務局長が分析。さらに、電話相談「介護労働ホットライン」から浮かび上がってきた課題が報告され、問題提起がなされた。

■講演「ケア労働のブラック化と家事ハラ社会」
竹信三恵子氏(和光大学教授)


日本の社会では、保育や介護が安くていい加減に扱われている。
人の命や健康を預かる仕事で、スキルや負担度、責任度ともに、仕事の評価は非常に高いのに、家事労働に近いというだけで蔑視されている。

日本の福祉観は、家族が担う温かい福祉を企業が支援するというもの。
1973年に「福祉元年」を宣言し、公的福祉を始めたものの、オイルショックやバブル期を経て、「日本人はお金持ちなのだから自分で買えるはず」とする自己責任化が図られていった。
家庭福祉が重視され、夫はそれを養護する。妻は無償福祉だから、その延長上の子育てや介護にはお金を出さなくていいという意識。実際に、そういう言説をあちこちで聞いている。

現在、一部のケア施設のブラック化が起きている。
チェーン店が経営する施設では、長時間労働で過労死寸前、「早く」とせかされ、効率重視、人件費が抑えられ、回転を早くする。
嫁の奉仕という意識に、「働く機械」の働き方がドッキングしてしまっている。

腰痛の手当てもおろそかにされている。「腰痛小国」のデンマークでは、重量制限によるリフト使用が義務付けられている。日本では、「器械は冷たいからかわいそう」という意識や、効率のために使いにくい職場があることがわかった。
1980年代、デンマークでも腰痛やストレスで欠勤が増えたが、正規職員で人件費がかかるため、健康管理に熱心に取り組むようになった。日本の場合、賃金からの逆圧力が働かないので、働き手が全て被ることになる。
デンマークでは、訪問介護の初日に上司が家庭環境をチェックし、利用者に対して「職場の機能を整えさせてほしい」と、洗剤の変更や、ベッドの位置を変えさせるなど、働く人の権利が保障されている。日本では、訪問先でトイレを貸してもらえないケースがあるなど、あまりにも落差が大きい。

利用者へのしわ寄せも出ている。一人暮らしの車椅子の人の女性の下へは、質の悪いヘルパーばかりが来る。よく人が変わる、持ち物をもらっていく(断れない?)、「疲れた」と言ってテレビをずっと見ている、外国人が来て言葉がわからないなど。
金が安くて条件が悪化すると、働き方の劣化が進む可能性がある。

これからどうするのか。特区の中での外国人の「家事支援人材」の活用が考えられているようだ。特区である神奈川県知事が「介護実習生を活用したい」と発言。人がいなくなると実習生を使って、いらなくなったら故郷に帰すという構想が浮かんでくる。賃金を低く抑える「冷やし力」を狙っているのかもしれない。どういう構図なのか見えていないので、監視していく必要がある。

「事業所は儲けすぎているので、その分を圧縮してそれを労働者に回せばいい」という新聞記事が出た。厚労省からそういう情報を回されたのではないかという不安がある。本当にどういう報酬構造ならいいのか対案を出していかないと大変なことになる。

今、賃金の出され方を含めて大変なことになりつつある。バックにあるのは嫁介護の社会的偏見。安定して働けて、質のよい介護ができるような報酬が出せる仕組みを、介護保険を前提にしないで原点に返って、考えていく必要があるのではないだろうか。

■報告「介護従事者が求める処遇改善とは」 
染川 朗氏(日本介護クラフトユニオン事務局長)


私どもの組織は2000年2月に結成した日本では珍しい職業別労働組合。組合員は6,7万人。来年の改訂に向けて、きちんと評価される介護報酬を求める20万人署名をしている。

【組合員の意識調査について】
不安を抱えている人は7割で、一番多いのが「将来に対して」。
不満がある人は5割で、トップは「賃金」。何年働いても賃金が変わらないという職場が大変多い。「年休、有給が取れない」という声もある。「低賃金、人手不足、仕事量が多い、休みが取れない、将来が不安」という負のスパイラルが動いている。

「希望する賃金」は、現状を把握した控えめな数字「月給25.1万円」(現状、21.3万円)。この数字では100万人不足している介護人材を引き込むのはむずかしく、10万円の格差を埋めるのが急務だと考える。

「有期労働契約を無期への転換を希望する」人は35%。「辞めたいときに辞められなくなる」という正社員を見ていることや、拘束時間に不安を感じる人もいる。
健康面では「腰痛」に悩む人が70%。

「やりがいと働く意識」の質問では、「子どもを自社に入社させたい」人はわずかに3%。これまで組合員数は年間2,500人以上増え続けていたのに、この半年間で1,000人減。現状維持も難しい状況だ。
「仕事のやりがいと働く意識」については、利用者からの感謝、家族の笑顔、信頼関係、役立った喜びなど。こうした気持ちが介護現場を支えている。しかし、それも限界。昨日、人員基準が満たせないという理由で、事業所閉鎖の申し出があった。このままでは、人手不足で介護が受けられなくなるのではないか。

■電話相談「介護労働ホットライン」報告
藤沢 整氏(介護労働ホットライン実行委員会共同代表)

離職率の高さの理由を知りたいと、昨年から2回実施した。今年の相談は全国から78件。
【以下は複数回答の数字】
1)賃金、待遇の悩み(73件)
相談例:毎日8時間で手取り11万円。9年間時給700円のまま。残業代が出ない。有給を取らせてもらえない。不払い。タイムカードがない。あっても定時押しで残業する。違法がまかり通っているという印象。
2)職場の人間関係の悩み(61件)
相談例:パワハラ。人手不足。スキルアップができない。研修には自腹で参加。
3)勤務時間、勤務体制の悩み(57件)
相談例:長時間。ローテーションがきつい。30km往復する給料が出ない。一人での夜勤が過酷(法律上不可能)。休憩時間が取れない。

保障されるべき労働条件が保障されないという実態が見える。経営者、労働者の権利意識の欠落だけではなく、きつくてもがまんするのは「しわ寄せが上司や同僚、利用者に行ってしまうから」といった声が聞かれ、悩みが深いと感じた。

■問題提起「労働法制の危機と介護労働」
大江京子氏(介護労働ホットライン実行委員会共同代表)

憲法25条では生存権が保障されているが、それが大きく蝕まれていると訴えたい。
生存権、労働権の両面から攻撃されているのが介護労働の現場。1979年の「社会保障制度」で、家族相互の自助・自立が基本とされた。また、社会保険は受益者負担で、保険料を払わない人は保障が受けられない。憲法25条も、解釈によって改憲されてしまっている。非正規がものすごく増えると同時にワーキングプアが増え、4人に一人が年収200万円以下。長時間労働では、週60時間以上、年間3,000時間近く働いている。過労死が増え、人間らしい生活もできない。
政府は、成果によって賃金を支払う新たな労働時間制度を創設させようとしている。介護労働の現場で働いている人は、まさに嵐のど真ん中にいる。国民的課題として、今の介護労働条件、労働者全体でおかしいと声を挙げていく必要がある。

■質疑応答の中で
20年ヘルパーをしていて、賃金の据え置き、不払いなど、これ以上、踏ん張れない現状に追い込まれている、家事労働をどう評価したらいいのか、という質問に対して、竹信さんは、「まず、自分の仕事に自信をもってほしい」とした上で、「そもそも介護保険が始まったときはデフレの時期で低い賃金でも成り立った。出発した時点と状況が変わってきているのに、その中でやろうとしているのは無理がある。角度を変える一歩を進めないと無理ではないか。税金でやったほうがいいのかなど、考え直したほうがいい」と提言。「これからも、一緒に勉強しましょう」と締めくくった。

■最後に
実行委員会より「介護職員の賃金水準の改善など、直ちに具体的かつ早急に、有効な手立てを作るべき」とする「労働条件の抜本的な改善を求めるアピール」が読み上げられ、「介護労働から日本社会の労働環境を変えていきたい」という決意が語られた。

◎市民福祉情報オフィス・ハスカップ
http://haskap.net/

■2014.10.28  風船カーリングで介護予防・リハビリ 京都・与謝野で考案
重しを付けた風船を手でたたき、的を狙うゲーム「風船カーリング」を、高齢者のリハビリに携わる理学療法士、松本健史(たけふみ)さん(42)=京都府与謝野町明石(あけし)=が考案した。高齢者が避けがちな「前傾姿勢」を無理なく促し、介護予防やリハビリに役立てられるという。

松本さんは、NPO法人丹後福祉応援団のデイサービス「生活リハビリ道場」職員。もたれて座る姿勢をとり続ける高齢者は足腰の筋肉が弱り、食べ物も飲み込みにくいことから、前傾姿勢を促す方法を思案していた。通所者が、誕生日にもらった置物に付いた風船をはじいて遊んでいるのを見て、ゲームを思いついた。直径1メートルの的を床に敷き、囲んだ数人でカーリングのように、また一人でダーツのように的を狙う。風船を手で押し、歩行練習にも使う。

松本さんは「ゲームにすると、お年寄りも盛り上がって楽しみ、手がしっかり伸びて前傾姿勢になっている。レクリエーションなど幅広く応用できそうです」と話す。

7月に生活リハビリ道場で使い始め、京丹後市や伊根、与謝野町にある他の法人の4介護施設にも普及。26日には、宮津市世屋(せや)地区公民館の催しで住民が体験し、楽しんだ。

■2014.10.28  介護職員確保へ数値目標、厚労省 賃上げ・資格緩和
厚生労働省は27日、高齢化で人手不足が見込まれる介護職員を確保するための対策作りに着手した。

高齢化がピークを迎える2025年時点の需要に応じ、国全体の数値目標を定める方針だ。人手不足の原因とされる低賃金など処遇の改善策に加え、資格要件を緩和して高齢者らの参入促進や外国人の活用も検討する。サービスの品質維持と人員の確保をどう両立するかが大きな課題だ。

社会保障審議会(厚労相の諮問機関)福祉部会の下に設けた福祉人材確保専門委員会で27日、議論を始めた。30日には外国人の受け入れに向けた省内の検討会も立ち上げ、年内に具体策をまとめる。来年度予算案や来年の通常国会に提出する関連法案に盛り込む。

厚労省はこれまで粗い推計で、団塊の世代が75歳以上となる25年に約250万人の介護職員が必要だとし、現状からは約100万人増やす必要があると説明してきた。今回は、改めて都道府県単位での推計データを積み上げ、日本全体で25年までの精緻な数値目標を示すとした。

人手確保策も、25年までの需要の伸びに合わせ、短期的なものと中長期的なものとに整理して計画的に打ち出す考えだ。優先するのは介護職員の賃上げだ。厚労省は来年4月に改定する介護サービスの利用料(介護報酬)で、賃上げのための加算措置の拡充を目指す。

賃上げは実現しても最大で月1万円程度とみられ、若い世代をひき付ける効果は限られる。そこで、若者以外の高齢者や主婦などの参入促進にも乗り出す。介護の仕事に就きやすいよう、初心者向けの「資格」を創設することを検討する。

厚労省案は住民が介護の知識を学び体験できる研修などを設けるとし、研修を修了した高齢者らを介護職員の予備軍として地域ごとに確保する考えだ。既存資格である介護職員初任者研修で取得にかかる時間を短くするなどの要件緩和も、検討に上る可能性がある。

厚労省は法務省など関係省庁と連携し、外国人の活用にも動く。介護福祉士の資格を取得したら日本で働けるよう在留資格を与えたり、発展途上国への技術移転を目的とした技能実習制度で、対象を介護に広げたりすることを検討する。

これまでは経済連携協定(EPA)でインドネシアやフィリピンから介護福祉士の候補生を08〜13年度の累計で1091人受け入れたが、合格率は5割ほどと低い。そこで外国人を受け入れる間口をより広げる狙いだ。

外国人活用には介護職員側からの慎重な意見や移民論議への警戒感もあるため、厚労省は25年の数値目標には織り込まない考えだ。処遇改善や参入促進が柱となるが、資格を広げて介護の初心者を増やすと賃金水準が下がり「処遇改善に逆行する」との指摘も多い。

厚労省はかつてのホームヘルパー2級研修に代えて初任者研修を導入し、合わせて介護福祉士との間の資格となる「実務者研修」も設けて、介護福祉士へのステップアップを促した経緯がある。

これら一定の知識・経験を保証する上級資格をとることで賃金や待遇の改善を促しつつ、いかに人材の裾野を広げるかが問われることになる。

■2014.10.29  介護人材不足 処遇の改善を急ぎたい
介護の現場で担い手不足が深刻化してきた。その解消のため、厚生労働省は介護職員の資格緩和にかじを切ろうとしている。

資格取得に必要な研修時間を短くしたり、初心者が参入しやすい新資格の創設も浮上している。外国人技能実習制度の介護分野への導入も視野に入れるという。

厚労相の諮問機関・社会保障審議会は「専門委員会」を立ち上げ、具体的な議論を始めた。12月初めまでに具体策を詰め、厚労省は来春からの実施を目指す。

せっかく資格を持っていても、給与の安さなどから職を手放す人が少なくない。

介護を下支えする裾野を広げることも大事だが、定着を図る施策を優先して考えるべきだ。

介護職は国家資格の介護福祉士など三つに分かれる。全体で177万人(道内は8万人余り)が介護の最前線を担っている。

介護保険制度が始まった2000年当時と比べ、その数は3倍以上に増えた。しかし、人手不足は常態化しており、求人倍率は2倍を超えている。

団塊の世代が75歳以上になる11年後には、介護職は約100万人の不足が見込まれている。厚労省は来春以降、年7万〜8万人ずつ増やす必要があると試算する。

需要が増える一方で、離職者の多さが、人手不足に輪をかけていることは無視できない。

介護職は離職率が約17%で、全産業の中でも高い。介護福祉士の資格を持っていても実際に現場に立つ人は6割にとどまる。約45万人が離れている。

介護の担い手はなぜ定着しないのか。

深夜勤もある激務の割に賃金が低いことがその最大の要因だ。国の賃金構造基本統計調査によれば、介護職の平均月収は22万円弱で、全産業の平均よりも10万円以上安くなっている。

給与などの処遇、労働環境の改善に向けた対策を求めたい。

まず、事業者側は内部留保の活用などに知恵を絞ってほしい。

国には来春の介護サービスの利用料(介護報酬)改定に合わせた加算措置で、改善につなげてほしい。給与の原資として、介護保険の被保険者の枠拡大も検討してはどうか。

介護資格要件のハードルを下げるなどして「量」を確保しても、「質」が低下しては本末転倒だ。

超高齢社会に入り、「量」と「質」を同時に達成できる制度設計が欠かせない。

■2014.10.29  小学校跡地に障害者働くレストランや直売所 ふくちやま福祉会
福知山市奥野部の社会福祉法人ふくちやま福祉会(矢野利生理事長)が、勅使の旧天津小学校跡地で、来年4月に障害者が働くカフェレストランと直売所の「第3ふくちやま作業所(仮)」を開設する。27日に現地で起工式があった。

場所は市から無償で借り受けている国道175号沿い約4900平方メートルの土地で、06年に弁当、スイーツを製造する第2ふくちやま作業所を開所している。

第3作業所は国道そばの一角で、木造平屋建て延べ床面積約430平方メートルの建物を建てる。カフェレストラン、厨房、直売所、パン工房、食堂などが入る。就労継続支援B型事業所で定員は20人。

総事業費は約1億3300万円。法人自己財源のほか、国、府の補助も活用する。

起工式には、法人関係者、行政関係者、地元住民ら約30人が出席。あいさつに立った矢野理事長は「障害があるみなさんが、お客様に愛される商品の製造、販売を行い、より高い賃金が保証できる施設として努力していく決意。地元の方々とも協力して地域活性化にもつなげていきたい」と話した。

■2014.10.29  介護人材があと100万人足りない!ケアの現場で待ったなし「移民」への道
課題を抱える日本の高齢者医療・介護に対して「あるべき姿」を提言してきたが、もう一つ日本には特異性があり、これを打破する議論が求められている。それが「人材鎖国」の問題である。

高齢者の増加と共に医療や介護の必要者が増えると同時に、日本全体の人口は減少していく。当然のことながら医療、介護に関わる人材がこのまままでは相当深刻な不足状況に陥らざるを得ない。そこで、今回は介護人材に焦点を絞って考察を進める。結果として「移民国家」への大きな政策転換が必至とならざるを得ないと思う。

● 2025年までに介護職100万人増員へ 注目の外国人雇用が抱える課題

団塊世代が75歳に達する2025年には、今よりも看護職で50万人、介護職で100万人の増員が必要と政府は見ている。2012年度の介護職の総数は約168万人で、2025年には249万人の就業が欠かせない。増加分が100万人と言うわけだ。その対策にやっと視野が向いてきたが、まだ政策として確固とした肉付けがされていない。

打開策として議論され出したのが外国人への門戸開放策である。政府は6月24日にアベノミクスの第3の矢として骨太の方針と新成長戦略を決め、外国人の大幅な雇用拡大策を盛り込んだ。

働く人の減少が著しく、危機感を抱いた政府が既存の規制を自ら破って外国人に助けを求める新施策である。何しろ15〜64歳の働く世代が12年ぶりに8000万人を割り込んでしまった。前年比116万5000人減。さいたま市とほぼ同じ人口が消えたことになる。

そこで、女性と高齢者、それに外国人に働く現場に出て来てもらおうと安倍政権は考えた。なかでも注目されるのは、外国人雇用の特殊制度である「技能実習制度」に介護職を加えたことだ。

技能実習制度は、発展途上国から来日して技能や知識を身に付け、帰国後に国の発展に寄与してもらおうという趣旨で1993年に始めた。日本は外国人の単純労働者を受け入れていない。だが、この制度は技術移転であり、人材育成の国際貢献という名目を掲げて原則論の隙を突いた。本音は産業界の要望に応えた人手不足の一時的解消策なのは明白だ。

最長滞在期間を3年と期限付きにして、抵抗の多い「移民」論議も回避した。漁船漁業、養殖業、畜産、パン製造、建築大工、金属プレス加工、溶接、婦人子ども服製造など86職種の現場で約15万人が働いている。途中から他職種に移行できない。介護は「日本の技術が他国より優れているとは言えない」という理由で外されている。

それが一転、積極的に拡大することになった。新たな職種として林業と自動車整備、店舗運営管理、惣菜製造それに介護を検討すべきとした。受け入れ人数枠を増やし、滞在期間も最長3年から5年に延ばす。五輪需要を見込んで建設業はすでに5〜6年に延ばす措置がとられ、造船業も適用されている。さらに帰国しても再来日して2年程度の再実習ができるようにする。

いずれも法相の私的懇談会「出入国管理政策懇談会」の分科会が報告書としてまとめたもので、6月10日に谷垣法相に提出した。

だが、同制度は問題も抱える。

「最低賃金で酷使され、残業代が支払われない」という批判が絶えない。旅券や預金通帳を事業者が強制的に取り上げたり、労働基準法を守らない違法労働や法外な家賃――。過酷な労働現場は人権侵害とも指摘もされている。暴行事件で警察沙汰になることもあり問題が山積みである。

米国国務省からも6月に「技能実習制度には強制労働の現場がある」と批判された。同報告は世界の188ヵ国・地域の売春や強制労働のなどの実態について調べた2014年版の報告書に記載された。不適切な事例を挙げるとともに、「最低基準を十分に満たしていないが、改善に努めている」という評価だ。

そこへ、外国人が参入できる別ルートが突如出現し、脚光を浴びている。経済連携協定(EPA)に基づくインドネシアとフィリピン、ベトナムからの受け入れだ。来日3年後に介護福祉士を受験する決まりである。だが、今年の3月の試験ではインドネシアとフィリピンの両国併せて78人しか合格しなかった。日本人を含めた合格率は65%だが、外国人は36%と低い。合格すると日本で働き続けられる。始まってから3年の全合格者は242人と少ない。

この外国人参入の“別ルート”はもともと、主に日本の農産物の関税率を下げずに農家を守るため、小泉政権がやむなく受け入れて始まったものだ。厚労省にとっては想定外の「突然の意外な命令」であったといえよう。決して長期的な戦略に基づく介護職の人手不足対策ではない。多くのマスコミが人手不足を補う施策であるかのように報じているのは間違いである。

もう一つ、外国人活用が思わぬ方向で実現しようとしている。安倍政権の目玉である働く女性の支援策として、家庭での家事支援のために外国人の助けを得ようというものだ。

家事を支える人がいれば女性の社会進出が一挙に増えるはずという考えから生まれた。掃除や洗濯、育児などの家事や家族介護を理由に就職できない女性が220万人いるとの試算を政府は公表し、その根拠を明らかにした。国家戦略特区のうち、関西圏(大阪,兵庫、京都の3府県)での導入が検討されている。

ただ認可保育園と違って公的な制度が確立していないため、国や自治体からの助成金の投入は難しい。外国人に家事を頼めるのはかなりの富裕層に限られそうだ。

政府はこうして各種の方針を打ち出したが、法務省や厚労省が具体的な制度にのせるのはまだ先だ。

● 外国人労働者はたった1.1% 海外との比較でわかる「鎖国」状態

外国人への門戸開放策は国際的視野でみると当然の流れだろう。外国人労働者は約72万人に止まり、労働力人口比で1.1%に過ぎない。米国は16%、ドイツは9.4%、英国は7.6%と大差がついている。総人口比でも米国やドイツは13%台、英国とフランスは10%台なのに日本は207万人で1.7%。入管法や難民の拒絶策でも明らかなように、日本は人については「鎖国」状態に近い。

欧州を旅行するとヒジャブやブルカ、ニカブなどイスラム教徒独特の衣装をまとう人を繁華街でよく見かける。他国からの流入に寛容なオランダでは、モロッコやスリナム(南米の旧オランダ領)など国や宗教ごとに区分けされたデイサービスの部屋が並ぶ高齢者施設がある。外国人の受け入れに日本ほど消極的な先進国はない。

「職が奪われ、賃金が下方にシフトし日本人の給与も下がってしまう」「社会生活の考え方が違うので同じ仕事をするのは難しい」「日常生活でも習慣の違いで近隣トラブルが増える」との声が支配的だ。新成長戦略を議論する経済財政諮問会議で、担当大臣が「日本語や文化を十分理解していない外国人が関わるのは問題」と発言してしまう。多くの人の考え方を率直に言葉にしたのだろう。

そこで、技能実習制度を再度点検してみる。大きな問題は、在留期間を限定した雇用第一主義であることだ。長期間滞在していれば地域住民とならざるを得ない。単なる労働力の「拝借」では済まないことになる。家庭を持ち、生活環境が整った暮らしを望むのは当然のこと。子どもが誕生すれば学校に通い、病気になれば病院で受診、近所付き合いも深まる。普通の日本人と変わらない暮らしに近づいていく。

もはや、移民との違いは紙一重だろう。移民についての定義は確立していないが、国連では「通常の居住地以外の国に移り、少なくとも1年間住む人」とかつて示したことがある。技能実習生は明らかに移民と言わざるを得ない。

国際貢献という本来の理念とは乖離する。日本人と同じ生活者としての対応を迫られる。「移民とは全く違う」と政府は唱え続けるが、人数が増えれば移民としての処遇は避けられないだろう。「労働力」としてではなく「生活者」と認めるには移民の制度化が是非とも必要だろう。

日系のブラジル国籍者だけでも20万人近くが現実に居住している。バブル期の人手不足が追い風となって急増、リーマンショックで帰国者があったがそれでもこれだけの人が暮らしている。技能実習制度の外国人がその後継になる可能性は高い。

広く世界を見渡せば、異なる国や民族の居住者への対応が進みつつある。カナダと豪州では1970年代に「多文化主義」の概念をとり入れ、定着させている。多文化主義とは、異なる文化を持つそれぞれの集団やその文化をどれも対等に扱わねばならないという考え方だ。その結果、先住民や少数民族、移民の権利が確認され出した。英国やスウェーデン、フランスなどでも多文化主義が次々導入されてきている。

中でも豪州の政策転換は日本でもお手本となりそうだ。と言うのは、それまでは「白豪主義」を掲げて英国人を中心にした白人国家を主張してきた。元々英国からの囚人が送り込まれた英連邦の一員であり、19世紀中ごろにゴールドラッシュで中国系移民が急増、その後インド系や日系が増えていく。アジア系移民の増大に脅威を抱いた政府が移民制限法を成立させたのが1901年。選挙や労働の現場で白人優位の制度が確立していく。

1970年代に国際交流が深まるとともに国民の意識が大きく変わり始め、ベトナム戦争後のベトナム系難民を受け入れだして移民政策の転換が叫ばれ出す。そして、白豪主義から多文化主義へと国策の土台を覆すことになる。今や労働者の25%は国外出身者であり、少なくとも片親が国外出身者の子どもは40%に達する。

アイヌ系などの人がいるのにもかかわらず、「単一民族」意識が強い日本はかつて「白豪主義」に浸かっていた豪州と似ている。だが、世界的な国際協調路線に反するような国策を維持できなくなるのは、各国に共通しているはず。様々な文化を認め、尊重するのが歴史の流れである。

● 移民の受け入れで 日本は多様性の国に生まれ変われるか

スウェーデンやドイツでは成長する経済の現場での人手不足から外国人に頼らざるを得なかった。北欧の介護現場に視察に行くと、東欧やアフリカ系、アジア出身者たちが働いている光景に出くわすことが多い。

ドイツではトルコや南東欧からのなし崩しの移民が増え、政府は学校や社会保障政策を充実させることで、実質的な多文化主義を取り入れだした。定住外国人にドイツ語や文化を教える講座の受講を義務付けたり、スポーツなどを通じてドイツ人との交流機会を増やすなど「統合政策」を推進。定住を前提に社会に溶け込んでもらう施策を05年に移民法として結実させ、「移民国家」へと転換した。

「移民国家」に反対していた政党、キリスト教民主同盟(CDU)が05年に左右大連立政権のリーダーとなり、メルケル党首が首相に就任し政策転換を実現させた。経済界からの強い要望に応えたという側面もある。

それまでは、3年の期限を設けて帰国を促すなど中途半端な施策しかなかった。これは日本の現状と似ている。「移民は受け入れない」と主要政党が一致していたこともそっくりだ。

日本の介護業界にも「究極の成長戦略は移民の受け入れ」と明言する経営者がいる(7月28日付日本経済新聞)。サービス付き高齢者住宅(サ高住)の最大手、メッセージの創業者、橋本俊明会長である。

「技能実習制度の拡充は小手先の対応に過ぎない。移民としてきちんと受け入れ処遇する道を開くべきだ。移民を受け入れることで労働力が確保できるだけでなく、日本社会に多様性が生まれる。それはイノベーションにもつながり成長に大きく寄与するのではないだろうか。一方で日本社会も変わるだろう。そういう変化を受け入れる勇気、覚悟を持てるかどうかどうかが問われている」

真にもっともな考えである。

ワールドカップで優勝したドイツチームで外国の出身者が活躍した姿が目に浮かぶ。米国のワールドシリーズでもカリブ海諸国からの選手が目を引く。

最近の欧州諸国やEU議会などの選挙で「移民反対」を唱える右翼政党が躍進しているが、大局的にみると振り子の揺れに過ぎないだろう。歴史の歩みの中では、一時的な反動勢力が現れることはよくあること。一歩後退二歩前進の歩みは変わらないだろう。


浅川澄一 [福祉ジャーナリスト(前・日本経済新聞社編集委員)]

■2014.10.29  <佐世保高1殺害>児相 支援打診拒否 精神科医が対応批判
長崎県佐世保市の高1同級生殺害事件で、殺人容疑で逮捕された少女(16)を診察した精神科医から事件前に相談を受けた佐世保こども・女性・障害者支援センター(児童相談所)に関する県の追加調査の概要が28日、判明した。精神科医は警察や行政による協議会の開催を持ちかけたが、児相は該当しないケースと答えたという。精神科医は調査に対し「医師が児相に相談することがどれほど大変な事態か考えてほしい」と対応を批判している。

県は29日の県議会で報告する。報告書によると、精神科医は事件の約1カ月半前の6月10日、児相に「高1女児に関する相談がしたい」と電話し「父をバットで殴打し、自室で猫を解体するなどしている。放置すれば誰かを殺すのではないかと心配している」と伝えた。非行児童などに対応するため警察や児相、医療機関などで作る「要保護児童対策地域協議会」(要対協)などで支援できないかと相談した。

しかし、児相は「要対協で支援するケースとは思えない。医療が優先するケースではないか」と答えた。精神科医は支援が得られれば少女の氏名なども伝えるつもりだったが、それ以上の情報提供は控えたという。

精神科医は県への回答書(9月11日付)で「問題の発生防止の観点からなしうる現実的な支援はないのか、児相内でも協議し、教えてほしいと伝えたが、その後、児相からの連絡は一切なかった」としている。その上で「精神科医が児相にわざわざ相談するケースについて、どれほど大変な事態を内包しているか、思いを巡らせることが必要だ」と児相の対応に改善を求めた。

県は報告書で「児相は、会議を開催してケース協議を行うなど、より踏み込んだ対応を検討すべきだった」と結論づけた。

■2014.10.29  特養相部屋:自己負担に 室料月1万5000円徴収案
厚生労働省は29日、特別養護老人ホーム(特養)の相部屋の室料を、住民税課税世帯の入居者を対象に来年4月から全額自己負担とする案を社会保障審議会介護給付費分科会(厚労相の諮問機関)に示した。実費として月1万5000円を徴収する方針が出ている。電気、ガス、水道利用料(現在月1万円)も1000円程度値上げする。これで在宅、施設双方の事業所に払われる介護報酬の改定方針がおおむね出そろった。

在宅介護への移行を重視した2015年度の介護報酬改定案に盛り込んだ。厚労省は特養の個室化を進めているが、依然6割は相部屋(4〜6人)。個室料金は全額自己負担だが、カーテンなどで仕切っただけの相部屋は低所得の人が多く、介護保険を使って自己負担を1割に抑えてきた。

個室入居者は月5万円程度の室料を払っており、相部屋の人にも実費を求めることにした。ただ、特養入居者(約52万人)の8割は住民税非課税世帯。こうした人には補助を厚くし、室料、光熱水費とも増えないようにする。負担増となる人は5万〜6万人とみられる。

他に施設関係では、15年度から特養への入居が要介護3以上の中重度者に限られるのを踏まえ、有料老人ホームを特養に入れない人の受け皿とする方針を明示した。認知症の人を受け入れる体制を整えれば報酬を上乗せする。また重複する報酬を見直し、低賃金とされる介護職員の給与改善用に回す。「特養は内部留保が多額」との指摘を踏まえ、特養の基本サービス費カットも示唆した。

在宅介護の改定では、在宅介護に積極的な業者への加算新設や、介護職員不足を和らげるための人員配置基準を緩和する。通いだけでなく、宿泊や訪問サービスも受けられる「小規模多機能型居宅介護」では、訪問介護担当の常勤職員を2人以上配置するなどした事業所向けに「訪問体制強化加算」を新設する。

終末期の「みとり介護加算」も設ける。人手不足への対応として、訪問介護サービスを手がける責任者の配置を、今の「利用者40人に1人以上」から「50人に1人以上」へと緩める。

介護報酬は政府が今年末に改定率を決定し、年明けにサービスごとの料金を決める。



◆在宅・施設サービスの介護報酬の主な見直し案

【訪問介護】

・小規模多機能型居宅介護に「訪問体制強化加算」「みとり介護加算」を新設

・サービス提供責任者の配置を「利用者40人に1人以上」から「50人に1人以上」に緩和


【施設介護】

・特養の相部屋料金を、一定以上収入の人は全額自己負担とし、光熱水費を1000円程度値上げ

・介護職の賃上げに向け「処遇改善加算」を充実

・有料老人ホームなど向けに「サービス提供体制強化加算」「認知症専門ケア加算」を創設する一方、介護予防の基本報酬はカット

■2014.10.30  介護福祉施設サービスの報酬・基準について―厚労省 介護給付費分科会
10月29日、厚生労働省社会保障審議会の第112回介護給付費分科会が行われた。
今回は、施設における介護報酬改定に向けた議論が行われた。施設系については、次回も引き続き議論される。

今回、厚労省から見直しが必要として示された【論点】と【対応案】は次のとおりであった。
1)看取り介護加算の見直し
2)特別養護老人ホームの職員に係る専従要件の緩和
3)サテライト型特養の本体施設に係る要件の緩和
4)日常生活継続支援加算の見直し
5)在宅・入所相互利用加算の見直し
6)障害者生活支援員に係る加算の見直し
7)基準費用額の見直し
8)介護老人福祉施設の多床室の居住費
9)基本報酬の見直し

1)看取り介護加算の見直し
【論点】
入所者及びその家族等の意向を尊重しつつ、看取りに関する理解の促進を図り、介護老人福祉施設における看取り介護の質を向上させるために、看取り介護加算の充実を図ってはどうか。

【対応案】
・新たな要件として、@入所者の日々の変化を記録により、多職種で共有することによって連携を図り、看取り期早期からの入所者及びその家族等の意向を尊重をしながら、看取り介護を実施すること、A当該記録等により、入所者及びその家族等への説明を適宜行うことを追加し、死亡日以前4日以上30日以下における手厚い看取り介護の実施に対し、単位数を引き上げる。
・また、施設における看取り介護の体制構築・強化をPDCAサイクルにより推進する。

2)特別養護老人ホームの職員に係る専従要件の緩和
【論点】
「介護老人福祉施設」と「特別養護老人ホーム」における職員の「専従」の定義が不明確・不整合であることにより、「特別養護老人ホーム」の直接処遇職員による柔軟な地域貢献活動の実施が妨げられているのではないか。

【対応案】
「特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準について」(解釈通知)の改正等を行うことにより、特別養護老人ホームの職員に係る「専従」の要件は、特別養護老人ホームの職員配置基準を満たす職員として割り当てられた職員について、その勤務表上で割り当てられたサービス提供に従事する時間帯において適用されるものであり、それ以外の時間帯における職員の地域貢献活動実施等をも制限する趣旨のものではない、ということを明確にする。

※ 当日の議論では、上記【対応案】の中の「勤務表上で割り当てられたサービス提供に従事する時間帯」と「それ以外の時間帯」はいずれも勤務時間のことを示しており、前者は「特養における勤務」、後者は「特養以外の場所での勤務」を表すと補足された。

3)サテライト型特養の本体施設に係る要件の緩和
【論点】
現状、サテライト型地域密着型介護老人福祉施設の本体施設は、指定介護老人福祉施設、介護老人保健施設、病院、診療所に限られているが、地域密着型介護老人福祉施設についても本体施設となれるようにするべきではないか。

【対応案】
@制度が創設された平成18年4月以降、単独型も含めて、地域密着型介護老人福祉施設の整備が順調に進んでいること、A社会福祉法人など特別養護老人ホームの経営者による地域社会に根差したサービスの更なる推進を目指す必要があること等を踏まえ、地域密着型介護老人福祉施設についても、サテライト型地域密着型介護老人福祉施設の本体施設となることができるようにする。

4)日常生活継続支援加算の見直し
【論点】
日常生活継続支援加算については、サービス提供体制強化加算との要件が重複すること等を踏まえ、処遇改善加算の見直しと併せて、必要な見直しを実施してはどうか。

【対応案】
・「介護福祉士の手厚い配置」と「重度の入所者の受入れ」を同時に評価している日常生活継続支援加算については、同じく介護福祉士の手厚い配置を評価するサービス提供体制強化加算と要件が重複していることから、見直しを検討。
・その際、処遇改善加算の見直しとも併せて検討する必要がある。

5)在宅・入所相互利用加算の見直し
【論点】
地域住民の在宅生活の継続を支援するため、複数人による介護老人福祉施設への定期的・継続的な入所を実施するベッドシェアリングの取組を推進する観点から、在宅・入所相互利用加算の要件の見直し等を行ってはどうか。

【対応案】
・在宅生活を継続する観点から設けられた加算であり、複数人が在宅期間及び入所期間を定めて計画的に利用する居室が「同一の個室」であることは必ずしも必要とは言えないため、当該要件を撤廃することとする。
・介護保険法改正による「特別養護老人ホームの重点化」が平成27年度より実施されること等から、利用者を要介護3以上に限定するとしている加算の要件については撤廃することとする。
・在宅・入所相互利用加算における関係者との連携・調整の実施を適切に評価する観点から、単位数を見直すこととする。

6)障害者生活支援員に係る加算の見直し
【論点】
障害者生活支援員に係る加算の対象として、視覚・聴覚・言語機能の障害を有する者、知的障害者に加えて、精神障害者を新たに追加してはどうか。

【対応案】
・障害者生活支援員に係る加算の対象となる障害者について、65歳以前より精神障害を有し、特別なケアが必要と考えられる重度の精神障害者を新たに追加することとする。
・併せて、同加算で配置を評価している「障害者生活支援員」について、精神障害者に対する生活支援に関し専門性を有する者を新たに追加することとする。

7)基準費用額の見直し
【論点】
直近の家計調査結果における光熱水費を踏まえると、多床室における基準費用額(居住費負担)の見直しを行ってはどうか。(介護療養病床、老健等についても同様)

【対応案】
多床室における居住費については、家計調査における光熱水費の額を参考に設定しているが、直近(平成25年)調査の結果が基準費用額(1万円)を上回っているため、多床室における居住費負担についての見直しを行ってはどうか。

8)介護老人福祉施設の多床室の居住費
【論点】
「低所得者を支え得る多床室」との指摘もあることを踏まえ、一定の所得を有する者が介護老人福祉施設の多床室に入所する場合については、居住費負担の見直しを行ってはどうか。

【対応案】
・「低所得者を支え得る多床室」との指摘もある中で、死亡退所も多い等事実上の生活の場として介護老人福祉施設は選択されていることから、一定程度の所得を有する在宅で生活する方との負担の均衡を図るため、一定の所得を有する介護老人福祉施設の多床室の入所者から居住費(室料)の負担を求めることとしてはどうか。(低所得者に配慮し、利用者負担第1〜3段階の者については、補足給付により利用者負担を増加させない。)
・見直し後の多床室の基本サービス費は、人員配置基準が同じである従来型個室を参考に設定してはどうか。
・多床室のプライバシーに配慮した居住環境改善に向けた取組を進めることとする。

9)基本報酬の見直し
【論点】
介護福祉施設サービスの基本サービス費については、収支差が引き続き高い水準を維持していることや、閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2014」の内容等を踏まえてどのように対応するのか。

【対応案】
収支差が引き続き高い水準を維持していることや、以下のような様々な議論が提起されていることを踏まえると、介護老人福祉施設(地域密着型介護老人福祉施設を含む。以下同じ。)の基本サービス費の適正化を行うことについてどのように考えるか。


これらは厚労省からの提案であり、分科会ではこれらの案に対して様々な角度から意見が交わされた。
今後、それらの意見を踏まえたうえで、方針が決まっていくこととなっている。

 

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