残しておきたい福祉ニュース 1996〜社会福祉のニュース

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残しておきたい福祉ニュース

 2014年 
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

 2014. 9. 1 「障害基礎年金、1万円あがると思った」… 診断書を偽造 介護士の女
 2014. 9. 1 徳田虎雄氏を起訴猶予、難病ALSを考慮
 2014. 9. 1 障害者雇用優良事業所の「厚労大臣表彰」受賞者を決定
 2014. 9. 1 現場発:軽微犯罪起訴猶予の高齢者や障害者 釈放前から就労支援 熊本、大分、佐賀など20カ所で実施
 2014. 9. 2 災害備蓄用パン:命つなぐ保存食、好評 賞味期限5年 全国から注文相次ぐ 江差福祉会の授産施設 /北海道
 2014. 9. 2 船橋市:介護事業所、不正請求などで給付費3割減額 /千葉
 2014. 9. 2 約半数が「訪問サービスを増やしてほしい」 厚労省調査
 2014. 9. 2 半数が介護準備「なし」 単身高齢者アンケート
 2014. 9. 2 介護とお金 期間と費用は? 介護保険の利用
 2014. 9. 2 介護とお金 施設入居の場合
 2014. 9. 2 介護甲子園、決勝進出5事業所*決勝は11月9日
 2014. 9. 2 詐欺未遂:訪問介護、通帳持ち出す 容疑でヘルパーの女を逮捕 /大阪
 2014. 9. 3 裁判員裁判で初の心神喪失「無罪」…重度の知的障害と難病患う29歳長女殺害の母親に
 2014. 9. 3 自治体の障害者採用に壁 受験条件に「介助なし」「自力通勤」
 2014. 9. 3 不正申請:袋井の福祉施設、指定を取り消し /静岡
 2014. 9. 3 袖ケ浦の施設虐待 継続調査へ
 2014. 9. 3 災害食、家の材料で簡単に 仙台の主婦最優秀賞
 2014. 9. 4 紙すき機で生産アップ 大分市の福祉事業所「樫の木」
 2014. 9. 4 心身障害者と入浴イベント…裸の交流「壁」取り払う
 2014. 9. 4 兄弟の悲劇「忘れない」 栃木県小山市の兄弟殺害事件
 2014. 9. 4 アール・ブリュット:定義 はたよしこ 注目される「生の芸術」
 2014. 9. 5 盲ろう者、震災その時 状況つかめず「1人ならパニック」 NPO、体験者に聞き取り
 2014. 9. 5 アール・ブリュット 生の芸術、800点 米子市美術館で6日から
 2014. 9. 6 「オムツ外し」介護:高齢者の自立を促す 来月3・4日、甲府で講座 /山梨
 2014. 9. 6 障がい者の経済的自立促進を!ヤマト福祉財団が助成金
 2014. 9. 6 【ひとりで歩けるように 発達障害者の支えは】集団生活 夏休みに学ぼう ADHD 治療プログラム10年  くるめサマー・トリートメント・プログラム(STP)
 2014. 9. 6 介護の担い手、夫は「妻」に、妻は「施設の職員」と「娘」に期待
 2014. 9. 7 高齢層4人に1人が「老後はなるべく社会保障」 別居希望が半数占める
 2014. 9. 8 介護人手不足 仕事に見合う賃金に
 2014. 9. 8 施設職員が障害者殴る 市に報告せず 埼玉
 2014. 9. 8 高齢者の皮膚の傷 介護中、腕つかんだだけでも  スキンテア
 2014. 9. 8 障害者ら1811人、手をつなぎ世界記録  青森
 2014. 9. 9 障害者作ったキノコで「ご飯の素」 豊前 /福岡
 2014. 9. 9 広島土砂災害:間借りで笑顔再び 福祉作業所、3週間ぶり
 2014. 9. 9 介護予防にフィットネス 市町村事業に移行、企業参入増へ
 2014. 9. 9 社会保障のは・て・な  介護の人手不足
 2014. 9. 9 おいしく食べる「災害食」…幼児、高齢者向けに工夫
 2014. 9. 9 川越で全盲の女子生徒蹴られる つえにつまづいた腹いせか
 2014. 9.10 高齢者ソフト食で特許 宮崎市の潤和リハビリテーション診療研究所客員研究員の黒田留美子さん(64)
 2014. 9.11 社会福祉法人の改革を急げ
 2014. 9.11 盲導犬刺傷や全盲女生徒に蹴り…埼玉県の協会、視覚障害者の被害調査へ
 2014. 9.11 <同居希望は27%まで低下>老後と社会保障に関する意識調査――厚労省
 2014. 9.12 介護ベッド死亡事故7年で35人
 2014. 9.12 問われる介護の社会化  介護職員の離職率が16.6%という現実
 2014. 9.12 介護報酬を不正受給*デイサービスきよみず/静岡
 2014. 9.13 障害者雇用率ランキング トップ100  16.1%のエフピコがダントツ、ワタミも人員大幅増
 2014. 9.13 佐賀市長、結論は見直さず 障害者不採用  不採用の理由 伊東博己総務部長は「今回は一般職の採用で、異動もあることを加味して総合的に判断した」
 2014. 9.13 介護士・看護師受け入れ なぜ失敗したのか
 2014. 9.17 アシックス、西宮にデイサービス施設 運動訓練に特化  チャーム・ケア・コーポレーション(大阪市)と業務提携
 2014. 9.17 高齢者のいる世帯が2000万を突破、1人暮らしが急増
 2014. 9.18 訪問介護を受ける65歳以上の障害者のうち、86・2%の人がサービス利用時の自己負担を支払っている
 2014. 9.18 障害者に65歳の壁 実態明らかに
 2014. 9.18 認知症高齢者への非人道的扱いや貴重品窃盗の実態 防止策は?
 2014. 9.18 経団連が処遇改善加算の廃止を主張、「事業者自ら対応を」
 2014. 9.19 介護職員の労働組合、介護報酬引き上げへ1万6千超の署名
 2014. 9.20 認知症:保護35人 身元不明のまま施設に 厚労省調査
 2014. 9.20 認知症の身元不明者、全国に35人 6人は10年以上保護
 2014. 9.21 身障者の公務員試験、全盲者受験できず 九州4県市
 2014. 9.21 <袖ケ浦虐待>千葉県が最終報告の説明会
 2014. 9.23 65歳過ぎても働く 定年廃止、会社が慰留 経験、人脈は財産
 2014. 9.23 介護離職10万人 認知症 ともに歩む
 2014. 9.23 袖ケ浦福祉センター:虐待問題 保護者から不安の声 民営化促す内容に 最終報告書 /千葉
 2014. 9.23 90歳女性の介護装い現金窃取 64〜78歳の女3人を逮捕
 2014. 9.24 ベッドからトイレまでの移動を支援する介護ロボット  パナソニック 自立支援型起立歩行アシストロボット
 2014. 9.24 介護職:離職、勤務3年未満が65% 有資格者は約5割 県調査 /島根
 2014. 9.24 リハビリに最新機器 障害者支援施設ありすの杜 (茨城・水戸市)
 2014. 9.26 田辺市が県内で最高 障害者施設からの調達額
 2014. 9.26 「介護ストレスから殺した」自宅で母親とみられる女性殺害 自首の男を逮捕
 2014. 9.30 男子生徒に暴行受け女性講師重傷 秋田の特別支援学校


■2014.9.1  「障害基礎年金、1万円あがると思った」… 診断書を偽造 介護士の女
大阪府警北堺署は1日、障害者手帳の等級を上げようと医師の診断書を偽造したとして、有印私文書偽造・同行使の疑いで、堺市北区百舌鳥梅町、介護士、大塚正子容疑者(39)=別の窃盗罪などで起訴、公判中=を追送検した。

北堺署によると、大塚容疑者は「生活が苦しく、等級が上がれば障害基礎年金の額が1万円ぐらい上がると思った」と容疑を認めている。堺市によると、実際には年金額は変わらない。

送検容疑は1月、精神障害者保健福祉手帳の等級を2級から1級に上げようと、自宅で診断書を偽造し、市に提出したとしている。

市の審査会が2月、診断書に不自然な点があると指摘。病院に照会したところ偽造と判明した。

■2014.9.1  徳田虎雄氏を起訴猶予、難病ALSを考慮
2012年衆院選を巡る医療グループ徳洲会の公職選挙法違反事件で、東京地検特捜部は1日、難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)を患っている同会前理事長の徳田虎雄氏(76)を不起訴(起訴猶予)とした。

特捜部は虎雄氏を事件の首謀者として捜査したが、ALSで言葉と体が不自由なため、最終的に刑事責任を問うのは困難と判断した。

一連の事件では、虎雄氏の次男・徳田毅前衆院議員(43)(2月に議員辞職)の選挙運動で運動員買収を行ったなどとして、親族ら10人が同法違反で起訴された。特捜部は虎雄氏について、選挙運動を統括した「総括主宰者」だったと判断。ただ、ALSで公判への出廷が困難なことなどから、昨年12月にいったん捜査をやめる「中止処分」としていた。

■2014.9.1  障害者雇用優良事業所の「厚労大臣表彰」受賞者を決定
9月8日に全国表彰式を開催
厚生労働省では、毎年9月を「障害者雇用支援月間」としている。

これは障がい者が、職業を持ち社会に溶けこむことで人間らしい生活を送る意欲を促すとともに、事業主をはじめ国民が障がいのある人の雇用への関心と理解を深めることを目的とし、様々な取り組みを行っている。

模範的な業績をあげている優秀勤労障害者の表彰も
同省では「障害者雇用支援月間」にあわせて、今年度の「障害者雇用優良事業所等厚生労働大臣表彰」の受賞者を発表した。

これは、障がいのある人を積極的に多数雇用をしている事業所や、模範となるような業績をあげている障がい者個人に対して、厚生労働大臣表彰を行うもの。

今年度は、障害者雇用優良事業所として34件、優秀勤労障害者として22件が表彰対象に決定したという。

表彰式は、9月8日(月)の13時30分から、東京国際フォーラム(東京都千代田区丸の内3-5-1)で開催する。


啓発用ポスター原画や好事例に厚労大臣賞を授与
式では優良事業所の表彰のほか、「障害者雇用支援月間」の啓発活動の一環として、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)が、募集した啓発用ポスターの原画や「障害者雇用職場改善好事例」の厚生労働大臣賞の授与も行う。

また会場となる東京国際フォーラムの地下1階ロビーギャラリーでは、9月5日(金)から9日(火)まで「障害者雇用支援月間ポスター」入賞作品の展示会も開催するとしている。


平成26年度「障害者雇用優良事業所等の厚生労働大臣表彰」受賞者決定(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000055519.html

■2014.9.1  現場発:軽微犯罪起訴猶予の高齢者や障害者 釈放前から就労支援 熊本、大分、佐賀など20カ所で実施
◇検察と保護観察所、連携

軽微な容疑で逮捕されて起訴猶予となる高齢者や障害者らを、速やかに社会復帰させるための新たな取り組みが広がっている。検察と保護観察所が連携して、捜査段階から釈放後の支援の準備をする。法務省が昨年、熊本県など7カ所で試行し、今年5月には佐賀、大分県など13カ所での実施を決めた。3月までに全国で88人が支援を受けており、再犯防止に期待がかかる。

「今は仕事が一番楽しい」。今年6月下旬、熊本県菊池市の畑で男性(57)が、収穫間近のナスから、不要な葉を丁寧に摘んでいた。法務省の制度に基づく県内の自立準備ホームに入所し、農業生産法人に雇われてナスやピーマンなどの栽培に携わった。現在は別の施設で自立の準備を進めている。

以前は、解体の仕事に就き、住み込みで働いていた。辞めた後は住居も貯金もなく、農家のビニールハウスなどで寝泊まり。さい銭などを盗んではパンやカップ麺で空腹を満たしていたが、今年2月、県内の神社でさい銭20円を盗んだとして逮捕された。

捜査段階で新たな社会復帰支援の説明を受けて支援を希望し、同月に起訴猶予となった後、熊本保護観察所などの援助で住居と職を得た。「これからお金をためてアパートを借り、生活を立て直したい。もう泥棒はせんよ」。男性はそう言って目尻を下げた。

住まいがない執行猶予者などに対しては「更生緊急保護」という支援制度がある。しかし、熊本保護観察所によると、釈放前の容疑者への接見は弁護士などに限られており職員との面会は困難だった。新たな取り組みは制度を充実させたもので、逮捕後2日以内にされる送検の早ければ数日後に検察から職員に連絡が入り、面談することができる。早い段階から調整を進めることで、釈放後の速やかな住居の確保や就労支援、生活保護などの福祉サービスの受給につなげることができる。

熊本県では、昨年10月〜今年3月末に▽60代2人▽50代2人▽20代1人の計5人が新たな支援策を受けた。逮捕容疑は窃盗や無銭飲食などで、いずれも逮捕時に住居がなかったため、自立準備ホームや更生保護施設に入所させたという。

熊本保護観察所の川田香所長は「釈放前から何を必要としているかを聞くことで、より本人に適したサポートができる」と評価する。一方で「県内には自立準備ホームが少なく、増えれば支援の選択肢も広がる」と受け入れ体制の充実も望む。石川正興・早稲田大法学学術院教授(刑事政策、少年法)は「全国の地検と保護観察所で公平に運用されるべきで、統一的な制度になることを期待したい。更生保護施設などを出た後にも目を配る必要がある」と指摘している。


 ◇更生緊急保護

刑務所からの釈放や、執行猶予付き判決、起訴猶予処分で身柄拘束を解かれた後、援助を受ける親族がいない人などを対象に保護観察所などが宿泊場所や食事の提供、就職支援などをする制度。支援期間は原則6カ月間。2013年には全国で約9400人が支援を受けた。

■2014.9.2  災害備蓄用パン:命つなぐ保存食、好評 賞味期限5年 全国から注文相次ぐ 江差福祉会の授産施設 /北海道
江差町の社会福祉法人江差福祉会(樋口英俊理事長)が運営する知的障害者授産施設「あすなろパン」(厚沢部町)が、賞味期限5年の「災害備蓄用パン」を製造・販売し、東日本大震災以降、全国の自治体や企業から注文が相次いでいる。大雨による土砂崩れなど、今年も各地で大規模災害が発生しており、おいしく食べられる保存食の重要性が改めて認識されている。

「あすなろパン」が作る缶入りの災害備蓄用パンは、しっとりと柔らかいマフィン形のパン2個入り。チョコチップとミックスフルーツなど味の種類を増やし、食べ飽きないよう工夫した。

「あすなろパン」は2000年4月、閉鎖したパン工場を引き継ぎ開設。「檜山地方は人口が少なく、地元向けでは経営が成り立たない」と、全国に売り込むことができる災害備蓄用パンの開発に取り組んだ。

樋口理事長は、仙台市の東北福祉大学在学中の1978年、宮城県沖地震を経験。93年7月の北海道南西沖地震では自らが働く檜山地方が被災地に。被災者の生命をつなぐ備蓄食料の重要性を知るからこそ、おいしく長期保存可能な商品で差別化を図る。

2011年の東日本大震災では、ワゴン車に災害備蓄用パンを満載し、東北の被災地に救援物資として届けて回った。

「缶ごとお湯で温め、焼きたてのようなおいしさを避難者に味わってもらった」と樋口理事長は振り返る。現在では年間600万缶を生産。収益は知的障害者たちの工賃に反映されている。今後は、かさばらないアルミフィルム真空パックで密封した備蓄用パン、水を加えて練るだけで餅になる米粉などを次の主力商品に育てる考えだ。

■2014.9.2  船橋市:介護事業所、不正請求などで給付費3割減額 /千葉
船橋市は9月1日から3カ月間、通所介護等事業所「アットホームぬくもりの家」(同市松が丘3)の介護給付費を3割減額する。監査で訪問介護費の不正請求などが確認された。減額は計約440万円になる見込み。

市介護保険課によると、同事業所は一昨年、訪問介護で利用者がキャンセルした29回分もサービスを提供したように装い、6万8612円を不正請求。通所介護の管理者を常勤させないなどの違法な事実も認められたという。不正請求は時効が成立している。

昨年12月、市に情報提供があり、監査を実施したが、虚偽の説明や書類提出があったという。

■2014.9.2  約半数が「訪問サービスを増やしてほしい」 厚労省調査
在宅介護を望む人、約4割
厚生労働省は8月29日、「平成24年高齢期における社会保障に関する意識等調査報告書」を公表した。

調査報告書の中から、老後の介護についての調査結果を見ると、まず、介護が必要となった場合に生活をしたい場所では、「在宅」を希望する人が43.1%、「特別養護老人ホームなどの施設」を希望する人が29.8%、「医療機関」を希望する人が9.2%だった。

49.1%が「訪問サービスを増やしてほしい」と回答
自宅で介護を受ける場合、家族とホームヘルパーなどの家族以外の両方で介護してほしいと希望する人が61.3%となり、約6割を占めている。

住み慣れた自宅で介護を受けたいが、家族への負担が大きくなることを心配する人が多いことが伺える。

また、今後10年間で自宅の周辺に増えてほしいと介護施設で最も多かったのは、「訪問介護・看護サービスを提供する事業所」で、49.1%だった。

次いで「通い、泊まり、訪問が一体的に提供される小規模多機能型居宅介護事業所」36.5%、「自宅から通って利用するデイサービスを提供する事業所」33.3%、「高齢者のためのサービス付きの住宅」30.9%と続いた。



厚生労働省の報道発表資料
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000052977.html

■2014.9.2  半数が介護準備「なし」 単身高齢者アンケート
1人暮らしの高齢者の約半数が、自分に介護が必要になったときの特別な準備をしておらず、4人に1人は将来的に介護を受けたい場所を自宅か施設か決めていないことが、第一生命経済研究所の意識調査で分かった。

単身高齢者の多くに介護への備えが不足している実態が浮かび上がるが、介護を頼むつもりだった夫や妻に先立たれ、将来を決めかねている人も少なくないとみられる。
同研究所の北村安樹子(あきこ)研究員は「介護に必要なお金を計算したり、親族に希望を伝えたりする備えが大事だ」と話す。

調査は昨年12月、要介護認定を受けていない単身の65〜79歳の男女527人を対象に実施。自分の介護を見越した準備状況を複数回答で聞くと「特にしていない」が48%で最も多かった。準備している人では、預貯金(31%)、介護保険制度の情報収集(22%)、介護施設の見学(17%)−などだった。

■2014.9.2  介護とお金 期間と費用は? 介護保険の利用
将来の「介護」への不安からお金を使えない高齢者が増えているようです。

公益財団法人「生命保険文化センター」(東京都千代田区)の「生命保険に関する全国実態調査」(平成24年度)によると、世帯主、または配偶者が要介護状態となった場合、公的介護保険の範囲外の費用として必要と考える資金額は3285万円。初期費用は262万円、月々の費用は17・2万円でした。介護の必要期間は平均で14年1カ月と予想していました。

では、実際の介護ではどれくらいの費用と期間がかかるのでしょうか。

実はこの調査では、実際に介護を経験した人に対して、かかった費用と期間も尋ねています。それによると、一時費用(住宅改造や介護用ベッド購入など一時的にかかった費用)の平均は91万円。月々の費用は平均7・7万円。介護期間は平均56・5カ月でした。つまり、介護にかかった全体の費用は平均約526万円ということになります。

介護経験のない人が想像するより、実際の必要額は少ないわけです。資金面での支えとなっているのが介護保険。介護保険は状態の軽い順から、要支援1〜2▽要介護1〜5−の7段階あり、各段階で一定金額までの介護サービスを受けることができます。どの段階にあるかは、市区町村の窓口にサービス利用を申請した後、さまざまな角度から判定されます。

要介護1とは、日常生活で何らかの部分的な介護が必要な状態で、在宅サービスの支給限度額は1カ月約16万6920円。「最重度の介護を要する状態」である要介護5の場合、支給限度額は約36万650円。介護保険では、サービス利用でかかった費用の1割は自己負担となります。

ただし、限度額を超えたサービスの利用は全額自己負担となります。例えば、要介護1の人がサービス利用で20万円かかった場合、支給限度額との差額3万3080円は自己負担となります。支給限度額の1割分(1万6692円)と合計すると、自己負担額は4万9772円に。

このほか、介護のためのおむつ代や保険対象外の介護タクシー、家事代行サービスの利用料金なども全額自己負担です。

ちなみに、現在、自己負担は1割ですが、平成27年8月からは「合計所得が160万円以上」など一定以上の所得がある人は自己負担割合が2割に引き上げられることになっています。

■2014.9.2  介護とお金 施設入居の場合
お年寄りの介護は大きく分けて、(1)在宅サービスを利用しながら家で行う(2)施設に入居して介護サービスを受ける−の2つの方法があります。

家で介護する場合、家族の負担は決して小さくありません。ただ、介護サービスの利用料金は介護保険により1割の自己負担で済むため、保険対象外のサービスなどを利用しても月々の費用は3万〜5万円程度となるケースが多いようです。

例えば、毎月の自己負担額が3万円の場合。5年間で180万円、10年間では360万円となります。自己負担額が5万円だと、それぞれ300万円、600万円となる計算です。ただ、介護のため、年間約10万人が離職しているそうです。収入減を考慮すると、金銭的にはもっと大きな負担となる可能性もあります。

一方、施設に入居する場合。自宅介護よりも費用がかりますが、金額は施設によってさまざまです。

費用が比較的安いのは、特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)や介護老人保健施設、介護療養型医療施設など。特別養護老人ホームなら介護サービスの利用料金は月2万〜3万円(介護保険の1割負担を利用)。そのほか、施設に入居する賃料や食事代がかかります。賃料は相部屋、個室など部屋の種類によって変わります。これらを合計すると、毎月7万〜13万円程度の負担となります。

介護老人保健施設や介護療養型医療施設の場合、リハビリや医療行為も行うため、費用は特別養護老人ホームよりも少し高くなる傾向があります。

「割安な特別養護老人ホームを利用したい」という人も多いでしょうが、施設が足りず、現在約52万人が「順番待ち」の状態となっています。また、「地域医療・介護総合確保推進法」が成立し、平成27年4月以降、新規に入所できるのは原則、要介護3以上の高齢者のみとなります。

このほか、有料老人ホームやグループホーム、ケアハウスなどさまざまな施設があります。健康で自立した生活ができる人が入居対象の施設▽病気や障害がある人が入居対象の施設▽共同生活をしながら家族だんらんを楽しむ施設▽個室も用意されている施設▽医療ケアを行う施設・行わない施設−など内容も多様です。

通常、入居一時金に加え、月々の費用がかかりますが、これらの料金体系もさまざまです。貯蓄や年金などから費用を支出することになります。

利用を検討する場合、まずは地域の介護支援専門員(ケアマネジャー)に相談しましょう。

■2014.9.2  介護甲子園、決勝進出5事業所*決勝は11月9日
介護甲子園
エントリーした1236事業所の中から決勝に駒を進めたのは

第1ブロック 介護老人保健施設平成の家 (青森県)
第2ブロック 特別養護老人ホーム大井苑 (埼玉県)
第3ブロック たんぽぽデイサービス今伊勢 (愛知県)
第4ブロック シャローム泉北社労夢工房匠 (大阪府)
第5ブロック 栗林山荘介護ステーション (香川県)

決勝は11月9日(日)、東京の日比谷公会堂で開催
決勝では、各事業所・施設が活動VTRの紹介とプレゼンテーションを行う。優勝するのは「最も学びと気づきを与えた事業所」で、来場者が投票で決める仕組みだ。

■2014.9.2  詐欺未遂:訪問介護、通帳持ち出す 容疑でヘルパーの女を逮捕 /大阪
ヘルパーとして介護のために訪問していた家から持ち出した通帳で銀行から約200万円をだまし取ろうとしたとして、北堺署は1日、堺市北区百舌鳥梅町3丁、介護士、大塚正子容疑者(39)を詐欺未遂容疑で逮捕し、同容疑などで大阪地検堺支部に最終送検したと発表した。「娘が独立して生活が不安になり、金が欲しかった」と容疑を認めているという。

逮捕容疑は5月28日、堺市堺区に住む牧師の女性(84)の妹になりすまし、同市北区の銀行窓口で、女性宅から持ち出した通帳で約200万円を下ろそうとした、とされる。通帳がなくなったことに家族が気付き、警察に盗難届を出していた。

大塚容疑者は1月、自身の精神障害者保険福祉手帳の等級を2級から1級に上げるため、堺市北区役所に偽造した病院の診断書などを提出したとして、有印私文書偽造・同行使容疑でも送検された。北堺署は障害基礎年金の増額のためとみている。

■2014.9.3  裁判員裁判で初の心神喪失「無罪」…重度の知的障害と難病患う29歳長女殺害の母親に
大阪府吹田市の自宅で昨年10月、重度の知的障害で難病も患った長女=当時(29)=を殺害したとして、殺人罪に問われた母親(58)の裁判員裁判の判決公判が3日、大阪地裁で開かれた。田口直樹裁判長は「被告は犯行時、重度の鬱病(うつびょう)で心神喪失状態だった」として無罪(求刑懲役4年)を言い渡した。

最高検によると、殺人罪に問われた裁判員裁判ではこれまで6人に無罪が言い渡されている。心神喪失での無罪は初めてとみられる。

判決によると、母親は昨年10月8日、長女と無理心中することを決意。自宅浴槽に長女を沈めて窒息死させた後、自身も近くの池で自殺を図った。

長女は生まれつき重度の知的障害があったほか、事件の半年前には膠原(こうげん)病の一種の難病「全身性エリテマトーデス」を発症。母親が自宅で介護していた。

田口裁判長は判決理由で「被害者に愛情を注いできた母親が無理心中を決意したことを合理的に説明することは難しく、犯行の原因は重い鬱病以外には考えられない」と指摘。「被告は心神耗弱状態だった」とした検察側の主張を退けた。

大阪地検の北川健太郎次席検事は「判決内容を精査して、適切に対応する」とのコメントを出した。

■2014.9.3  自治体の障害者採用に壁 受験条件に「介助なし」「自力通勤」
市民団体「障害者欠格条項をなくす会」は、障害者対象の採用試験を実施している自治体の多くが「介助なしで職務遂行できる」「自力で通勤できる」などの条件を受験資格にしているとの調査結果をまとめた。同会は、これらの条件が理由で障害者が受験できないとして改善を求めている。

調査は、平成25年度に108の都道府県、政令市、中核市が行った計207の採用試験が対象。介助を必要としないことを受験資格とされたのは89%に上り、自力通勤が求められた試験も71%あった。受験資格以外でも点字による試験は44%と低水準にとどまった。同会は「受験資格の制限は公平性を欠くだけでなく、障害者の意欲と可能性を失わせている。調査結果を共生社会への取り組みに生かしてほしい」と訴えている。報告書は同会のホームページに掲載している。

■2014.9.3  不正申請:袋井の福祉施設、指定を取り消し /静岡
不正に障害福祉サービス事業所の指定を受けたとして、県福祉指導課は2日、袋井市上山梨3の「すてっぷ」(下山祐喜子社長)が運営する多機能型事業所の指定を障害者総合支援法に基づき、30日付で取り消すと発表した。訓練等給付費全額と加算金の計約920万円を返還請求する。

同課によると、2013年5月に指定を受けた同事業所は、2カ月後の県監査でサービス管理責任者の未配置が判明。その後、指定申請書に勤務予定のない者が記載されていた他、利用者ごとの個別支援計画の未作成など運営上の書類不備も明らかになり、悪質性が高いと判断した。

同事業所の利用者は4人で、資源リサイクルやペットサロンの補助に当たっていた。




障害者総合支援法に基づく事業者の指定取消し

1 概要
 障害福祉サービス事業所について監査を実施した結果、不正事実が明らかになったので、障害者総合支援法に基づき事業者の指定を取り消します。

2 事業者の状況
 (1)事業者
  ア 名 称  株式会社すてっぷ
(代表取締役 下山祐喜子(しもやまゆきこ))  イ 所在地  袋井市上山梨三丁目18番地の2
 (2)対象事業所
  ア 名 称  就労継続支援A型及び就労継続支援B型事業所 「多機能型事業所すてっぷ」
(管理者 池野谷幸良(いけのやゆきよし))  イ 所在地  袋井市上山梨三丁目18番地の2

3 指定取消日  平成26年9月30日(処分決定日:平成26年8月29日)

4 指定取消しの主な理由
 (1)勤務予定のない者を指定申請書に記載した、不正の手段による指定
 (2)サービス管理責任者を指定時から配置していないなどの、人員基準違反
 (3)個別支援計画を作成していないなどの、運営基準違反
 (4)サービス管理責任者未配置に伴う減算を行わないなどの、給付費の不正請求
 (5)従業者の勤務実態に係る、監査における虚偽報告及び虚偽答弁

5 今後の対応
 (1)指定日(平成25年5月1日)以後受領した給付費全額(約660万円)の返還請求をするよう、市に要請します。
 (2)利用者のサービス利用に支障が生じないよう、事業者を指導するとともに、市に要請します。


発表日 2014年9月2日
担 当 健康福祉部 福祉長寿局福祉指導課

■2014.9.3  袖ケ浦の施設虐待 継続調査へ
袖ケ浦市蔵波の県立福祉施設「養育園」で昨年11月、知的障害のある入所者男性が職員から暴行を受け、その後死亡した事件で、県は1日、同園などを含む県袖ケ浦福祉センターの改善状況を継続的に調査する進捗管理委員会を設置した。第三者検証委員会を改編したもので、任期は3年間。

県障害福祉課によると、障害者の権利擁護に携わる弁護士や福祉事業者ら、第三者委で委員を務めた4人を含む計6人で構成。10月以降に第1回会合を行う。

第三者委は8月7日、虐待の背景や「県の責任は看過できない」などとする最終報告をまとめ、2017年度末までを「集中見直し期間」に位置づけ、同センターの改善を進めるよう提言した。


一連の立入検査において確認された状況 (平成16年度から平成25年度まで10年間)
社会福祉事業団元職員(3月11日逮捕)を傷害致死罪で起訴
暴行確認者数 11人 (被虐待者数17人)  <被虐待者とは虐待を受けた者>
性的虐待確認者数 2人 (被虐待者数 2人)
心理的虐待確認者数 3人 (被虐待者数 4人)

合計 15人
被虐待者数23人
(延べ16人)

虐待(暴行)が確認された職員11人の暴行は、傷害致死容疑となった腹部を蹴ることのほか、頭を叩く、引っ掻くなど、その態様・程度は異なるが、うち5人は懲戒解雇(解雇)、5人は停職等の処分を受け退職した。1人は減給の処分を受け在職し施設長及びリーダーが重点的に管理監督している。

性的虐待が確認された職員2人のうち、1人は文書訓告の処分を受け退職し、1人は文書訓告の処分を受け在職し管理者が重点的に管理監督している。

心理的虐待が確認された職員3人のうち、2人(うち1人は上記暴行の1人に同じ)は厳重注意を受け退職し、1人は文書訓告の処分を受け在職し施設長及びリーダーが重点的に管理監督している。



被虐待者23人の方については、傷害致死容疑となった虐待(暴行)を受けた方や、支援時に暴言を吐かれ心理的虐待を受けた方など、その受けた虐待の態様・程度は異なるが、23人のうち、1人は当該暴行の後に亡くなり、1人は自宅に戻り、2人は短期入所終了に伴い退所し、1人は病気により亡くなっている。(なお、被虐待者23人の方の保護者に対しては、虐待の事実を事業団からご報告した。)

事件後、現場の改善に向けて取り組んでおり、その他現在利用している18人の方については、施設長やリーダー等が、支援を行う支援員に対して、重点的な指導監督を行い、適切な支援に努めることとしている。

■2014.9.3  災害食、家の材料で簡単に 仙台の主婦最優秀賞
仙台市青葉区の主婦佐藤美嶺さん(32)が、東京で7月に開かれた日本災害食学会の研究発表会で最優秀賞を受賞した。防災士の資格を持ち、3歳の娘を育てる佐藤さんは、乳幼児の母親ら向けに、家庭にある食材を使って災害食を作るワークショップを開いた取り組みを紹介。東日本大震災の教訓と子育ての経験を生かし、実践的な啓発活動を展開したことが高く評価された。

受賞作は、みやぎ生協(仙台市)の依頼でことし3月、母親ら13人を対象に開催したワークショップを題材にした研究。発表会の審査投票で最多票を獲得した。

ワークショップでは、母親らが冒頭、東日本大震災で困ったことなどを振り返った。その結果、災害食を作る際は(1)家にある食材を活用する(2)省エネで調理する(3)少ない調理道具で作る(4)気力がなくても簡単に作れる−の4点が重要になることを確認した。

次の段階ではこれらのポイントを意識し、多くの家庭で常備されている缶詰や野菜など、限られた食材を使うメニューを考え、実際に調理した。

完成したのは、サラダのり巻きやミネストローネ風スープなど10品。洗い物を出さないように食材をポリ袋に入れて調理したり、加工食品の塩分を生かして味付けしたりして工夫した。

佐藤さんは「災害発生時でも、アイデア次第で子どもに食事を用意できるという自信を身に付けてほしかった」と話す。

学会の守真弓事務局長は「災害時に手に入らない食材は使わずに調理してもらうなど、啓発活動としてよく練られたワークショップだった。発表も整理されていて分かりやすかった」と評価する。

佐藤さんは2012年、防災士の資格を取得した。共同研究者でもある夫の翔輔さん(32)=東北大災害科学国際研究所助教=の勧めがあった。13年から、防災・減災に関する講座やワークショップを仙台市を中心に開催している。

育児と両立させるため、講師を務めるのは月2回が限度だが、佐藤さんは「子どもの成長に伴って変化する親の視点を大事に、防災の取り組みを続けたい」と意気込む。

■2014.9.4  紙すき機で生産アップ 大分市の福祉事業所「樫の木」
大分市牧の障害者福祉サービス事業所「ワークスペース樫の木」(小手川恵管理者)が、利用者の工賃アップを目的に本格的な紙すき機械を導入。名刺印刷を請け負っている同じ法人内の事業所「どんぐりの家」と連携し、酒パックを再利用した名刺などの受注を始めた。他県では紙すきで自主製品を製造し収益を上げている事業所もあり、「利用者のやりがいにもつなげていきたい」としている。

樫の木では、利用者が空き缶つぶしのリサイクルや、下請けで食品パックのラベル貼り、袋詰め作業などに取り組んでいるが、いずれも収益は低いという。紙すきも三和酒類(宇佐市)から酒パックの無償提供を受け、手作業ではがきやカレンダーを作っていたが、イベントでの販売と関係者への配布に限られていた。利用者は重度障害者が多く、1人当たりの平均工賃は月5千円ほど。利用者の生活に直結する工賃のかさ上げが課題となっている。

今のところ紙をすく作業は支援員が担当。すいた紙の水分吸引や圧縮機械の操作に3人の利用者が携わっている。支援員の佐野由美さん(42)は「紙すきは材料費が掛からず、不良品も再利用できるため利益率が高い。機械の導入で作業の負担が軽減し、車椅子のままでも携われる工程が増えた」という。その上で「受注が増えれば、より多くの利用者が取り組める」と期待を込める。

現在、法人内や関係者から少しずつだが依頼が入っている。引き続きはがきやカレンダーも製作し、販売していく。サービス管理責任者の森島京子さん(42)は「紙をすく作業や機械操作のできる利用者を徐々に増やし、生産状況を見ながら、どんぐりの家とも連携して顧客や販路を開拓していきたい」と話している。

■2014.9.4  心身障害者と入浴イベント…裸の交流「壁」取り払う
銭湯で介助 歌や演劇も

「障害者に対する心の壁を裸の付き合いで取っ払おう」。そんな発想で、兵庫県尼崎市の福祉団体が始めた入浴イベント「劇場型銭湯」が面白い。

街中の銭湯に障害者と出かけ、地域の人と同じ湯船につかればみんな仲間。そんな楽しいバリアフリーの試みを取材した。

同市の住宅街にある創業約50年の老舗銭湯「光明こうめい温泉」に、夏の夕方、徒歩や車いす、ワゴン車で約40人が集まった。常連客でにぎわうこの銭湯に、皆で入るのだ。心身障害がある人の着替えを仲間が手伝い、まずは背中を流す。

記者が体を洗うのを手伝った、手足に障害がある村上さとみさん(58)は4回目の参加だ。女同士でこちらも裸だから恥ずかしくない。触れ合い、家族のことなど世間話を交わすと自然と笑顔になる。周りの手を借りて、広い湯船につかると、村上さんは「家のお風呂よりも広くて気持ちいいね」と上気したほおをほころばせた。

男湯の方では、障害のある人もない人も1列に並んで、背中の流しっこをしたらしい。

既に湯船につかっていた常連たちも、笑顔で見守る。夫婦で男湯女湯に分かれてつかっていた近所に住む藤岡雅史さん(61)夫妻は、それぞれ「こっちの湯船は熱いから気をつけてね」と声をかけた。「障害を持つ人が気持ちいい顔でつかっているのを見たら、こっちまで気持ちよくなったよ。いつもより人が多いなと思うぐらいで気にならない。大歓迎だ」と語る。

このイベントを昨年から始めたのは、自宅で暮らす重症の心身障害者にヘルパーを派遣している福祉系NPO法人「月と風と」だ。

発案した同法人代表の清田仁之きよたまさゆきさん(40)は「言葉でのコミュニケーションが難しい心身障害者の魅力を、地域の人にどう伝えたらいいかと考えて思いついたんです。皆、入浴介助でとてもいい表情をするし、血の巡りが良くなって体の緊張も和らぐ。ヘルパーでもない人が一緒に風呂に入るには、銭湯がいいとひらめきました」と語る。

同法人は、この銭湯入浴イベントだけでなく、心身障害者やその家族が地域で孤立するのを防ぐ試みとして、一般向けの書道や韓国語教室に障害者を参加させたり、障害者の父母を対象とした料理教室を開いたりしている。

夕方から銭湯イベントを行ったこの日は昼から、同法人の事務所でお祭りも開いた。障害の有無にかかわらず自作の歌やギター演奏をし、元舞台俳優だった清田さんのオリジナル脚本で演劇も披露した。銭湯の後は、地域の人と歌あり、踊りありの懇親会で盛り上がった。

演劇で主演の一人を務め、銭湯イベントや懇親会にも参加した車いすの竹下浩介さん(24)(西宮市)は、「障害を持っていても人と出会いたいという気持ちは健常者と変わりない。銭湯などリラックスした環境で、地域の人と会話を交わし、互いの気持ちを理解し合うことができるこうしたイベントが、もっとたくさんあれば」と願っている。

NPO法人「月と風と」 医療的なケアが必要な重症心身障害者を対象に、ヘルパーを派遣している。「重い障害を持つ人が地域に住めば、誰にとっても住みやすい町になる」を合言葉に、おふろプロジェクトなど地域の人を巻き込むイベントを数多く開催している。

■2014.9.4  兄弟の悲劇「忘れない」 栃木県小山市の兄弟殺害事件
10年前、小山市の4歳と3歳の兄弟が、同居の男の暴力を受け、川に投げ捨てられて死亡する虐待事件があった。この悲劇の記憶は、相次ぐ児童虐待のニュースの中で薄れつつあるかもしれない。だが、遺体が見つかった川岸には兄弟を思わせる地蔵があり、供養を続ける住民がいる。虐待防止へ啓発運動を続けるグループもある。これまでの10年、そしてこれから――。活動の根底にあるのは「絶対に風化させない」との思いだ。


◇小山地蔵に誓い10年

せわしなく車が通る間中橋から思川の下流を望むと、左岸の堤防の道路脇に大小2体の地蔵が見える。草地で穏やかに合掌する表情に悲劇の影はない。だが、近くで目を凝らすと、10年前の事件で亡くなった兄弟の名前と当時の年齢が刻まれていることに気付く。

大人の腰ほどの高さの地蔵は、事件の直後に見つかった。その2年後、隣に小さな1体が並んだ。誰が置いたのかは不明だ。一帯は県の管理地だが、撤去を望む声は聞かれない。

周囲はきれいに片づいている。市の元民生委員の菅原清子さん(69)や主任児童委員を務める望月晨子ときこさん(67)ら、福祉に携わる女性5人が清掃しているからだ。地蔵が見つかって間もなくから始まり、10年近く。月に1度の清掃は欠かしたことがない。

兄弟は、福祉の手では救われなかった。5人に共通するのは「冥福を祈りたい」という思いだが、現役の望月さんにとっては、自身への「戒め」でもある。「同じような犠牲者は出したくない。お地蔵さんの前では自然にそういう気持ちになり、一歩を踏み出せる」

児童委員は、家庭の相談に乗る中で、虐待の端緒をつかむことがある。多くの家族はそうした闇を隠す。むやみに踏み込むことは難しいが、望月さんは、学校に来ず、自宅の応答がない子の家庭でも「何度でも訪ねよう、ねばり強く対応しよう」と決めている。

5年前からは、兄弟の命日前になると、後輩の児童委員も供養に誘っている。「防げたかもしれない悲劇を忘れるな」。望月さんたちは、そう語り継いでいくつもりだ。


◇同居の男が殺害 関係機関の対応問題に

2004年9月12日未明、小山市神鳥谷の小林一斗ちゃん(当時4歳)、隼人ちゃん(同3歳)の兄弟が、一緒に暮らしていた男に殺害された。暴行を受けたうえ、眠っていたところを小山市間中に架かる間中橋から思川に投げ落とされて水死した。

兄弟は父親(同40歳)との父子家庭。男も2人の子を抱える父子家庭で、6人が同居していた。父親同士は同じ中学校の先輩・後輩の間柄だった。

逮捕・起訴された下山明宏被告(犯行当時39歳)は兄弟の家庭との同居に不満を抱き、日常的に2人に暴行を加えていたことが、捜査や裁判で明らかになった。05年9月、1審の宇都宮地裁で殺人罪などで死刑判決を受けたが、控訴後の06年6月、東京拘置所で病死した。

この事件は大きく報道され、その中では、関係機関の対応も問題視された。

事件の約2か月前、兄弟が立ち寄ったコンビニ店の店長が、体のあざに気づいて通報し、県南児童相談所が2人を一時保護した。父親の実家で暮らすことを条件に帰したが、2人は再び下山被告と同居させられていた。

児相は祖母からの連絡でこの事実を知りながら、有効な手を打たなかった。通報を受けた小山署も、2人を救う機会はあったのに、傷害・暴行容疑で十分な捜査をすることはなかった。

◇オレンジリボンで防止推進 カンガルーOYAMA 

兄弟の死をきっかけに、小山市内の女性たちが虐待防止の啓発活動を目的につくったグループがある。「カンガルーOYAMA」。虐待を受けた子供を預かる里親らが中心となり、「子供をおなかに包んで守るような子育てを」との思いを名称に込めた。

事件の1年後の設立当初から続けているのが、オレンジリボン運動だ。単にチラシを渡しても、記憶にとどめてはもらえない。明るい色のリボンを添えれば、衣服や小物のアクセサリーにもなり、ほんの少しでも関心を持ってもらえるかも――。そう考え、市内のイベントや街頭でリボンを配り続けた。

「関係ない」と素通りされることもあったが、市内の幼稚園や保育園の協力もあり、地道な活動が保護者らに徐々に浸透していった。趣旨に賛同したプロ野球チームも、試合用のユニホームの袖にリボンをつけてくれた。

運動は現在、国内各地に広がっている。カンガルーOYAMAの会員26人が手作りするリボンの数だけでも、年間1万個を数える。

ただ、悲劇を起こさないための活動には「終わり」がない。県警が認知した児童虐待は2013年で102件。前年より14件多かった。たとえ統計上の数字が減っても、実態を正確に反映しているとも言い切れず、「効果」は測れない。

会長の大久保幸子さちこさん(65)は、「私たちの活動がどれだけ役立っているのか手応えが感じにくいのも事実。でも、決して無意味ではない。今後も続けなければ、10年前の悲劇さえも忘れられてしまう」と話している。

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2005/09/08
栃木県小山市の兄弟殺害事件判決要旨
8日、栃木県小山市の兄弟殺害事件で、宇都宮地裁が下山明宏被告に言い渡した判決(量刑の理由)の要旨は次の通り。

▽理不尽な動機  被告は立ち寄った給油所で、自動車の掃除などをしていた際、帯同していた知人の二男小林一斗ちゃん=当時(4つ)=と三男隼人ちゃん=同(3つ)=に対し、言うことをきかないなどとして、給油所従業員の目も意に介すことのないごとくに、感情の赴くまま、あえて激しい暴行を加え、はた目にも痕跡が歴然のけがをそれぞれ負わせた。

かねて今度手を出した場合には、知人から厳しい制裁を加える旨の警告を受けていたため、知人に発覚した場合には、自身が半殺しの目に遭うだけでなく、小学6年の実娘や小学1年の実息子にも累が及ぶかもしれないとも危惧(きぐ)した。

善後策を思い巡らすなかで、知人から2児の居所確認の電話連絡を受け、いったん知らないと偽りの返答をした手前などもあり、最終的には自己の不始末を取り繕って制裁を免れるべく、短慮にも、2児の遺体が容易に発見され難い方法による抹殺をもくろみ、本件凶行に及んだものである。

そもそも約2カ月前にも2児に暴力を振るった結果、2児が立ち寄ったコンビニ店店員に通報され、警察や児童相談所も介入する事態となった。知人らから☆責(しっせき)され、警告されたが、被告はけがをさせないように配慮しながら手を掛けているうち、本件当日の暴行となったのであるから、犯行が偶発的なものではないことは明らかである。

許されない虐待を契機とする生命の尊さを軽視した余りにも短絡的、身勝手で理不尽な動機であって、酌量の余地は到底認めることはできず、物欲や情欲に基づく動機に比べても、他人の生命を犠牲にして自己の身勝手な利益を獲得するという点で、悪質性の程度において隔たりがあるともいえない。

▽確定的殺意
被告が2児に虐待を含め暴力を振るうようになった背景には、知人親子を居候させたことによる精神的重荷が影響していたことは間違いない。知人に暴力を振るわれ主従関係が逆転したかのような様相を呈し、被告は知人に直接向けられない不満のはけ口の意味合いも加わり、2児への暴力を増悪させた。

本件当日の暴行後、2児を遺体発見が困難な方法で殺害するしかないと決意し、当時噴火が報道されていた浅間山に捨てようと考えたり、渡良瀬川に投げ込もうと考えたりしたが、浅間山を探すのが面倒になり、渡良瀬川も付近の交通量が少なくない上、深くない川であることが分かった。

その後、ダンプカーで砂利などを運搬した経験があり、かねて知っている思川なら水深も深く急流で、小さな身体の2児は砂利のように流れて行くから絶対に発覚しないに違いないと見込み、思川への投棄を殺害方法として定めた。

2児に対する殺意は、善後策として思い付いたものであり、殺害方法の選定や変更にも場当たり的な面が見られなくもなく、一時実行を躊躇(ちゅうちょ)しなかったわけでもなかったが、遺体発見を困難ならしめる死体損壊や死体遺棄的側面を併せ持った方法との基本的枠組みによる確定的殺意は最後まで翻意しなかった。

綿密、周到に練り上げた計画的犯行とまでは評し得ないものの、被告なりに完全犯罪を企図し、計画的犯行と比肩すべき相当強固な確定的殺意に基づく卑劣な犯行といわざるを得ない。

▽犯行態様の残酷性
被害者は幼児にすぎないばかりか、思川の幅が広く、両岸もかなりの高さの土手で近くに人家は所在せず、深夜でもあり、当然付近には人気があるとも考え難い。悲鳴を上げるなどしたとしても助けが来る見込みは極めて乏しい状況下で、2児は眠ったままの状態で、橋中央付近から約5メートル下の川幅約25メートルの急流に投げ込まれた。

少なくとも直後には、一時的にせよ、暗闇の水中に顔を含めた身体が没入したと考えられ、夢うつつなどの場合はもちろん、すぐさま目を覚ましたとしても、水死を免れるのはおよそ困難と容易に推測できる。

本件殺害のやり方は殊更の執拗(しつよう)性はないまでも、致死の可能性が非常に高く、死体遺棄的側面を併せ持ち、絶命までに受ける苦痛や恐怖も甚だしい危険で残酷な態様というべきであり、かわいそうと思って避けたという絞殺に比し、悪質性が高いことも明らかである。

▽結果の重大性
2児は虐待を受けた後、助手席で並んで眠りに落ちていたところ、よもや夢想だにしなかったと推測されるが、橋上から突如急流に投げ入れられた結果、暗闇の川中で助けを求める術もなく、恐らくはもがき苦しみ、ついには水死させられた。

その苦痛や恐怖は想像に難くなく、絶命後日数こそ異なれ、川中を数日間漂流した末、それぞれ変わり果てた姿となって発見された。無念さは察するに余りあり、深い哀悼の念を禁じ得ず、幼児2人の尊い命が失われた結果が非常に重大であることは多言を要しない。

大変惜しまれるのは、結果論であるにしても、一緒に暮らしていた父親を含め、かかわりを持った大人の一部の者において、危険の兆候たる芽を未然に摘まなかったことである。

児童相談所は父親からの強引な要求で、虐待を受けたことが誰の目にも明らかな2児を引き渡した後、被告方に戻らないなどの条件が守られていない可能性が高いと警察から連絡を受けたにもかかわらず、具体的対策を講じた形跡がない。その在り方が問われかねない誠に遺憾な対応といわざるを得ない。

▽遺族感情
両親は本来なら極刑を望むのが当然とも考えられるのに、父親は死刑でも無期懲役刑で服罪するようにとの意向を証言し、母親は死刑を望まず、生きて苦しみを味わってほしいとの意思を表明した。それぞれ事情があり、2児を代弁するものとは必ずしもいい難い。

かわいい孫のためにできる限り何くれとなく骨を折ってきた父親方の祖母は捜査段階において、被告に死んで償ってもらうしかない旨供述し、一時期一斗ちゃんを引き取って面倒を見た叔母も極刑を望む旨証言した。

▽社会的影
本件各殺人は、親ともども居候させていた幼い兄弟に対し、世上頻発する偶発的とはいえない虐待を直接的契機として、殺害にまで及んだ事件にほかならず、一般予防の見地をないがしろにすべきではない。

全国的にも広く報道され、社会の耳目を集めたものであり、社会的影響も無視できない。

▽結論
被告は犯行を自白し、捜査段階の途中から真摯(しんし)な反省の情を表すとともに、公判でも事実関係を率直に供述して謝罪の念と冥福を祈る旨の深い反省の弁を述べた。また妻の出奔による離婚後、実娘と実息子を愛情を持って育ててきた。激情的性格で自己顕示欲が人一倍強い面があるものの、根は単純であり、生来の冷血人間とはいえず、矯正可能性が乏しいとまでは認められない。

しかしながら理不尽な動機、確定的殺意の強固さ、犯行態様の残酷性、結果の重大性などを総合的に直視したとき、被告の刑事責任は余りにも重大であって、罪一等を減じる事情があるとまでは言い難く、極刑をもって臨むのはやむを得ない。

■2014.9.4  アール・ブリュット:定義 はたよしこ 注目される「生の芸術」
「アール・ブリュット」(生〈き〉の芸術)という、このフランス語の言葉。「一般の美術世界の本流や教育とは全く関係を持たず、自己流の手法で密(ひそ)かに表現をしている人達が作った作品」を指す。英語圏ではアウトサイダー・アートとも呼ばれる。

今から約70年前、フランスの画家ジャン・デュビュッフェが精神科病院などを訪ねて、既成の美術にはない独創的な作品を集めて回った。これがアール・ブリュットの始まりである。

現在、日本でもこの分野の作品が調査や公募展などで発掘され、注目されている。ヨーロッパでは、日本の作品の大規模な展覧会が数カ国を巡回するなど、海外の評価も高い。

私がこの世界と出会ったのは遡(さかのぼ)ること23年前。絵本作家として仕事をしていたころだ。ある展覧会で偶然、不思議な作品に出会った。白い画用紙の端っこにクレヨンで描いた青い小さな点々が数個。近づいて見ると「○○養護学校」と書かれていた。なんとユニークなことか。衝撃を受けた私は、養護学校(現・特別支援学校)などを訪ね歩いた。こうして強引に一つの障害者施設に潜り込み、障害者が造形活動できるアトリエをはじめたのだ。今も多くの作品が誕生している。

アール・ブリュットは一般の美術界と関連がないと思われているが、実はそうではない。型や伝統にとらわれずに表現する現代アートの作品とともに展示すると、「人間が持っている表現することの原点の力は、共通している」とありありと感じられて大変興味深いのだ。



はた・よしこ 「ボーダレス・アートミュージアムNO−MA」アートディレクター。「アール・ブリュット」の展覧会を多数企画。

■2014.9.5  盲ろう者、震災その時 状況つかめず「1人ならパニック」 NPO、体験者に聞き取り
東日本大震災が起きたとき、目が見えず、耳も聞こえない盲ろうの人は、状況をどうやって知り、どう行動したのか。盲ろう者らでつくるNPO法人が東京都内の体験者から聞き取り、報告書にまとめた。都市における災害時に、健常者が盲ろう者に接する上でのヒントがある。

「何が起こっているのか、どういう状況なのか、それがわからない」「私は生きたい。だから(盲ろう者であることを)アピールしなければ」

盲ろう者や通訳・介助者でつくる東京盲ろう者友の会の報告書には、盲ろう者たちの切実な言葉が並ぶ。

厚生労働省の2006年の推計によると、視覚と聴覚・言語両方に障害がある人(弱視や難聴を含む)は全国で2万2千人。同会には95人の盲ろうの会員がいるが、けが人はなかった。自らも盲ろうの藤鹿一之理事長(48)は「災害時にどう行動すべきか、震災以前にも話し合っていたが結論は出ていなかった」。そこで同会は震災半年後の11年9月、災害対策委員会を設け、6人の盲ろう者に震災時の対応などを聞いた。

地震が起きたとき、6人中4人は通訳・介助者らと一緒にいた。弱視ろうの男性は通訳・介助者と電車に乗車中、地震に遭った。小学校の体育館に避難した。床で横になる人もいて、トイレなどに移動するのが大変だった。別の弱視難聴の男性は「(1人だったら)パニックになっていた」と振り返った。1人で自宅にいた全盲ろうの男性は、地震の1時間後に地域の手話通訳派遣事務所へ歩いて向かった。道に物が散乱しているかもしれないと不安で、いつもより時間がかかった。詳しい情報はわからず、1週間後にサークルに出て初めて知ったという。

委員会は、盲ろう者の三大困難とされる「コミュニケーション」「情報入手」「移動」が震災時はさらに難しくなると指摘。周囲に助けを求めるときに提示する「SOSカード」をつくった。障害の内容やコミュニケーション方法、緊急連絡先などを記載する。地元自治体に災害時要援護者として登録することを呼びかける。藤鹿理事長は「災害時には健常者の助けが必要。そばに来てほしい。手のひらにひらがなを書くなど、コミュニケーションがとれることを知ってもらいたい」と訴える。


■周囲の助け必要

調査に協力した30代で全盲ろうの福田暁子さん=東京都武蔵野市=は、東日本大震災が起きたとき、1人で外出していた。

「盲ろう者 DEAFBLIND 耳がきこえません 目がみえません 手に指で文字をかいて会話できます トントンたたいて呼んでください」。福田さんは震災前から、電動車いすのひじかけにプレートをかけている。当時の視力は0・01。補聴器を使っていたが、言葉を正確に聞き取るのは難しかった。

あのとき、病院へ向かう途中、JR三鷹駅改札外のエレベーターの中で衝撃を感じた。「故障かな」。エレベーターを降り、柱に触れると確かな揺れを感じた。だが大地震とは思わず、揺れが収まるのを待ってバスに乗った。

病院ではエレベーターが使えず、診察中止を告げられた。三鷹駅が封鎖され、慣れない道を遠回りして自宅マンションにたどり着いた。心配して駆けつけた知人とヘルパーにおんぶしてもらい、5階の自室に上がった。ようやく大地震が起きたとわかった。

健常者にできることはなにか。福田さんは「短く、わかりやすい言葉で、状況を伝えてほしい。人の命を救えるのは人だと思う」と話す。

■2014.9.5  アール・ブリュット 生の芸術、800点 米子市美術館で6日から
障害のある人らの独創的な作品を紹介する巡回展「そこにある美術―アール・ブリュット―展」(県など主催)が6日、米子市美術館で始まる。県内で開催中の「第14回全国障がい者芸術・文化祭とっとり大会」の一環。28日まで。

アール・ブリュットは仏語で「生(き)の芸術」の意味。英語では「アウトサイダーアート」と呼ばれ、専門的な美術教育を受けない人による独創的な作品をいう。日本では障害のある人の芸術作品を指すことが多い。

巡回展では、全国34人の作家が制作した作品約800点を展示。県内からは6人が出展する。小さくちぎった紙を貼り合わせるなど作風はさまざま。不思議な顔の陶芸作品やカラフルなオブジェなどが並ぶ。

企画したのはNPO法人はれたりくもったり(滋賀県)の井上多枝子さん(36)。ボーダレス・アートミュージアムNO―MA(同)などが特別協力した。NO―MAは国内の障害者の芸術作品を発掘し、2010〜11年にパリの美術館で「アール・ブリュット・ジャポネ展」を開いた。

NO―MAの活動に関わった井上さんは「人に見せることを意識していない作品は、鳥取砂丘の風紋のように自然の中で生まれてきた感じがする。自分の中の概念が壊され、見たことのないものにドキドキする」と障害者作品の魅力を話す。

入場無料。初日の6日は午前10時半から米子市立図書館で作家の田口ランディさんを招いたシンポジウムがある。10月9〜19日は倉吉博物館、同25日から11月3日は県立博物館(鳥取市)で開催される。

■2014.9.6  「オムツ外し」介護:高齢者の自立を促す 来月3・4日、甲府で講座 /山梨
高齢者の自立を促す介護のあり方を探る「オムツ外し学会2014in甲府」が10月3、4日、県立図書館(甲府市北口2)で開かれる。介護職関係者に限らず、広く参加者を募っている。


県内の介護職員らでつくる「ごく楽介護の会」が主催。同会によると、介護を受け始めると食事や排せつなどの機能が弱まり、オムツが外せなくなる高齢者も多い。「オムツ外し」は身体機能を保ち、自立した生活を促す狙いが込められている。

講演、介護体験者の対談、介護の実技指導など幅広い講座を準備。「介護をする側が何でもする」ではなく、「介護される人ができることをサポートする」という考えでプログラムを構成しているという。

同会の倉沢学副代表は「要介護者も介助者も楽になる方法を知ってほしい。『オムツ外し』の発想は互いの生活の幅を広げることになる」と話す。

■2014.9.6  障がい者の経済的自立促進を!ヤマト福祉財団が助成金
新規事業立ち上げや工賃アップ、生産性向上に寄与
公益財団法人ヤマト福祉財団は、平成27年度の福祉助成金として、「障がい者給料増額支援助成金」と「障がい者福祉助成金」の募集を行うと発表した。障がい者の社会的・経済的自立を支援し、施設や事業所の新規事業立ち上げや、生産性向上、および職場環境整備のため必要となる設備機器の購入をサポートする。

「障がい者給料増額支援助成金」は「ジャンプアップ助成金」と「ステップアップ助成金」の2種からなる。「ジャンプアップ助成金」は、すでに障がい者の給料増額に一定の実績がある施設や事業所に対し、さらに多くの給料を支給するために必要となる事業資金のうち、不足する自己資金の一部として定額500万円を助成するものだ。

助成件数は最大15件程度で、障がい者の給料増額のモデルケースとなるような、より本格的な仕組みを取り入れた事業を助成するとしている。応募要件として、すでに平均工賃として1人あたり月額2万円以上を支給していることなどが求められる。

「ステップアップ助成金」は、障がい者の給料増額に努めており、厚生労働省が発表した平成24年度全国平均工賃額14,190円以上の給料支給実績がある施設や事業所を対象とする。さらに多くの給料を支払うための事業の立ち上げや設備導入などを支援するという。助成金は上限200万円で、件数は最大30件だ。

共生社会を目指し、積極的な施設や事業所をバックアップ
「障がい者福祉助成金」は、上限100万円で、障がい者の自立を支援することを目的とした、会議や講演会、研修、出版、啓発、調査、研究、スポーツ、文化事業、その他活動に対する助成を対象事業とし、サポートする。助成件数は最大10件。

ヤマト福祉財団のホームページで、それぞれの助成金における申請書フォーマットが提供されており、応募する施設や事業所はこれに必要事項を記入し、提出することとされている。また「障がい者給料増額支援助成金」では、企画書と収入・給料支給実績、および支給計画の資料、収支決算書コピー、見積書やパンフレットなど価格を示せる資料などの添付資料が必要となる。一方の「障がい者福祉助成金」では、企画書とスケジュール、費用積算表が添付資料として必要だ。

応募期間は平成26年11月1日〜平成27年1月10日まで。応募を受け付けたのち、同財団の選考委員会で選考し、結果は平成27年3月下旬に文書にて通知するほか、ホームページにも掲載するとしている。詳細はホームページなどで確認を。


公益財団法人ヤマト福祉財団 平成27年度福祉助成金募集要項
http://www.yamato-fukushi.jp/works/subsidy/

■2014.9.6  【ひとりで歩けるように 発達障害者の支えは】集団生活 夏休みに学ぼう ADHD 治療プログラム10年  くるめサマー・トリートメント・プログラム(STP)
●医療、教育、心理の専門家連携 指導きめ細かく 久留米 

発達障害の一つである注意欠陥・多動性障害(ADHD)の子どもたちのため、福岡県久留米市の医師らが毎年開いている短期集中治療プログラム「くるめサマー・トリートメント・プログラム(STP)」が今夏で10回目を迎えた。夏休みの2週間、学校生活を模した集団生活の中で社会のルールを学ぶ国内初の治療プログラム。10年間で延べ約260人の児童をサポートしてきたほか、職種を超えて支援者をつなぐ役割も果たしている。

「今日は金メダル駄目だったけど、気を取り直して明日もっとポイント取ろうね」。8月下旬、1日の活動最後の反省会。臨床心理士に声を掛けられた小学4年の男児(10)が元気よくうなずいた。

会場は、夏休みで休校中の特別支援学校。ADHDの小学生23人が二つのグループに分かれ、勉強したり、スポーツしたりしながら集団生活を送る。

先生の言った通りにする、席を離れない、尋ねるときは手を挙げる−。活動は、「ルール」の紙を音読して覚えることから始まる。ADHDは、じっとしていられない「多動」や、結果を考えずに行動してしまう「衝動性」、苦手なことに集中できない「不注意」などの特性があり、学校生活の中に“暗黙”に存在するルールを守れず、叱られ続ける子どもが多いからだ。

ルールを守り、積極的に発表するなど望ましい行動をすればプラス10点、騒ぐなど望ましくない行動をするとマイナス10点。行動は全てポイントで管理され、減点が続くと1人で座る罰を受けるが、高得点が続くと「金メダル賞」を授与。皆の前で褒められ、移動時にエレベーターが使えるなどの特権が与えられる。

「そんなに序列化するのかと思われるかもしれませんが、現実世界はもっと厳しい。今行動を変えないと、本人は一生困ることになってしまう」。STP実行委員会の中心となって活動する久留米大医学部の山下裕史朗教授は強調する。

くるめSTPの原型は、米国ニューヨーク州立大学が約30年前に始めた包括的治療プログラムだ。同大で研修を受けた山下教授が日本流に改良し、久留米市教育委員会や臨床心理士、医学生や看護学生などで実行委員会をつくって2005年に開始。09年にはNPO法人化し、医療、教育、心理の各分野か
ら毎年約50人が参加している。

「各分野のプロが集まっているので、トラブルを起こし続けてしまう難しいケースでも、決して諦めることはない」と山下教授。減点が続いても臨床心理士らがきめ細かくフォローしてやる気を喚起し、プログラムの中で初めて成功体験を得る子どもが多いという。

子どもたちの通う学校の教員にも見学してもらい、「学校生活上のルールを当たり前と思わず、視覚化して教える大切さが分かった」など教員の学びにつながることも少なくない。プログラムの中で他職種の支援者が顔を合わせることで、久留米市では日頃の連携も取りやすくなった。ただ、このプログラムが10年間で子どもたちにどんな影響を与えたか、これから分析を行う予定だ。

市内外から毎年約100人の見学者が訪れ、島根県と岐阜県の2市でもくるめSTPを模した治療プログラムが始まったが、九州での開催はまだ久留米市のみにとどまる。山下教授は「今後はもっと多くの地域にSTPのノウハウを広げたい」と呼び掛ける。

NPOくるめSTPのホームページでは、学校と家庭で取り入れる際のノウハウを解説。支援者向けの出張セミナーも行っている。同NPO事務局(久留米大病院小児科)=0942(31)7565。

■2014.9.6  介護の担い手、夫は「妻」に、妻は「施設の職員」と「娘」に期待
団塊世代が一斉に75歳以上の「後期高齢者」となる2025年まで、あと11年。大都市にも介護・医療の問題が大きくのしかかるが、人々は自身の最期について、どのように考えているのか。第一生命経済研究所が、全国の50〜79歳の男女600名に聞いたところ、「理想の最期の迎え方」には男女で差があることが分かった。

調査は今年8月、全国の50〜79歳の男女600名に対し、郵送調査法で実施。545名から回答があった。将来、介護を受けたい場所について尋ねたところ、男性では「自宅派」が52.4%と、女性(36.8%)より15ポイント以上多かった。自宅で介護を受けたい人は、「住み慣れた家で暮らしたい」(87.2%)と考えており、施設派は「家族に負担をかけたくない」(79.8%)と考えているようだ。

また、「主として誰に介護してもらいたいか」を単一回答で聞いたところ、配偶者がいる男性は「配偶者」と回答した人が7割に上ったが、女性では3割にとどまった。女性は配偶者よりも、「施設の職員」に介護してもらいたいと考えている。また、「娘」と答える割合も、男性はわずか1.9%だったのに対し、女性は19.4%と5人に1人いた。男性は、妻がいれば妻に、妻がいない場合には「施設の職員」か「訪問介護のスタッフ」に介護してもらいたいと考えているようだが、女性の場合は夫よりも施設の職員に期待している。女性にとっては「娘」の存在も大きい。

第一生命経済研究所では、「(男性は)自分は妻より先に介護が必要な状態になり、妻より先に亡くなるという前提に立ち、自分が自立できなくなった後の処遇を妻任せにする」傾向が少なくないと指摘する。ただ、今後は男女ともに長寿化が進む。妻に先立たれたり、妻が先に要介護になるなどのケースが増え、全ての男性が理想を叶えるのは難しくなるだろう。大都市でも医療・介護の人手不足は深刻化すると見込まれており、「誰に最期を任せるのか」という問題に、多くの人が直面するのは確実だ。

■2014.9.7  高齢層4人に1人が「老後はなるべく社会保障」 別居希望が半数占める
超少子高齢化が進む中、公的年金を含む社会保障をどのように持続させるかが重要課題となっているが、社会保障に関する意識調査によると、若年層では4人に1人が「社会保障には期待しない」と回答しているのに対して、年齢層があがるにつれて「老後はなるべく社会保障でみてもらいたい」と考えている人が4人に1人に上るなど、年齢層によって社会保障に対する考え方が大きく異なることが改めてわかった。また同居希望は年々減少し続けており、今や半数が「別居でよい」と考えていることもわかった。

厚生労働省がまとめた「高齢期における社会保障に関する意識調査結果」で明らかになった。

老後生活と社会保障の関係については、「老後の生活の準備はまず自分でするが、全部は出来ないので、足りない部分は社会保障でみてもらいたい」とする者が52.8%と過半数を占めており、年齢別にみてもすべての年齢層で最も多かった。

一方で、年齢層によって2番目に多い回答には大きな差が出ていた。

20代では、25%が「老後の生活は自分が考えるべきで、若いときからその準備をする。社会保障にはあまり期待しない」と考えており、「将来のことは予測できない面があるので、自分で準備するといっても限界がある。社会保障のための負担が重くなってもよいから、老後の生活はなるべく社会保障でみてもらいたい」と考えるのは12%に留まっていた。

これに対し、50代以降の高年齢層では、「社会保障にはあまり期待しない」が1割未満で、「なるべく社会保障で見てもらいたい」が25%前後を占めるなど、若年層と高年層で回答が逆転していることがわかった。老後の生活形態については、子どもとの同居意識をみると、同居を希望する者は 27.1%となっており、過去の調査結果と比べて、ますます減少傾向となっていることがわかる。

同居を希望する者の内訳をみると、条件なしで「同居したい」とする者が15.7%、「元気なうちは別居し、病気になったら同居したい」が6.7%、「配偶者がいなくなったら同居したい」が4.7%と続く。1983年時の調査では、条件なしの同居希望が46.1%だったのに対して、今回調査では15%まで落ち込むなど、同居を希望する人が年々減り続けていた。

一方、別居については、「子どもが近くにいれば別居でもよい」が 38.3%、条件なしで「別居したい」が 11.0%となっており、合わせて49.3%に上るなど、別居肯定派が多数を占めることがわかる。

年をとって介護が必要となり、自宅で介護を受ける場合については、「ホームヘルパーなど外部の者の介護を中心とし、あわせて家族による介護を受けたい」とする者が34.2%、「家族の介護を中心とし、ホームヘルパーなど外部の者も利用したい」が27.1%となっており、家族と外部の者(ホームヘルパーなど)の両方からの介護を受けたい者が約6割を占めていた。

■2014.9.8  介護人手不足 仕事に見合う賃金に
二〇一五年度の介護報酬改定の議論が来月から本格化する。最大の焦点は介護職員の待遇改善だ。人手不足を解消し、これからの高齢化社会に備えるため、賃金の引き上げが必要だ。

職員が集まらないため、介護施設や訪問介護事業所を閉鎖せざるを得ない。サービスの提供を断らなくてはならないという事態が現場では起きている。

高齢化が進み、介護費用は膨張している。当然、担い手も増やさなければならない。制度が導入された二〇〇〇年度、五十万人だった介護職員数は、現在約三倍の百五十万人まで増えているが、需要に追いついていない。

最大の要因が、賃金の低さだ。介護労働安定センターの調査では、労働条件の不満の上位に「仕事内容のわりに賃金が低い」ことが挙がる。

常勤のホームヘルパー、施設職員の平均賃金は月約二十一万八千円。全産業平均よりも約十万円低い。介護職員の労働組合幹部は「せめて全産業平均並みに」と訴える。人手が足りないため、休みがとりにくいとの不満も出る。

このため、離職率も高く、短期間で辞める人も多い。介護という仕事にやりがいや魅力を感じて入る人が多いが、将来設計が描けず、志半ばで挫折してしまう。

介護保険からサービスに支払われる単価である介護報酬は政府が決める、いわば「公定価格」。三年に一度、改定されているが、過去二回、財政支出を減らすために引き下げられた。民主党政権は賃金四万円アップを目指したが、実現せず、制度導入当初と同水準で低迷している。

厚生労働省は二五年度までに、今よりも百万人増員しなければならないとしている。担い手がいなければ、介護サービスを受けたくても受けられない人が出てくる。介護保険が「絵に描いた餅」になりかねない。職員の賃金や待遇の改善は急務の課題だ。

このほか、キャリアが賃金に結び付くような仕組みづくりも重要だ。多くの職員は何年働いても賃金は上がらない。認知症高齢者のケアなどには専門的な技術やノウハウが必要になる。キャリアが評価されるようになれば、やる気も高まり、サービスの質の向上にもつながるだろう。

政府は消費税引き上げによる税収の一部を介護職員の待遇改善に充てるとしている。国民の老後の生活を守るためにも職員の待遇改善につながる改定を求める。

■2014.9.8  施設職員が障害者殴る 市に報告せず 埼玉
さいたま市社会福祉事業団が運営する障害者施設「春光園けやき」(同市)で7月、30代の男性職員が障害者の男性(18)を殴りけがをさせていたことが8日、事業団への取材で分かった。事業団は8月に職員を停職、園長を減給処分とした。

事業団によると、職員は7月30日、男性に頼みごとを断られて立腹、トイレで顔を2回殴り、口を切るけがを負わせた。

職員は同日、男性と家族に謝罪して施設に報告したが、施設は家族が納得したと考え、事業団や市に報告しなかったという。

家族が市に連絡して発覚した。事業団は「あってはならないことで、報告の徹底を含め再発防止に努める」としている。

■2014.9.8  高齢者の皮膚の傷 介護中、腕つかんだだけでも  スキンテア
高齢者は腕や足を軽くぶつけたり、こすったりしただけで、皮膚が裂けるほどの傷になることがあります。加齢や薬の副作用などで皮膚が薄く、もろくなっているためです。こうした外傷を「スキンテア」と呼んで、予防に力を入れる動きが広がっています。

スキンテアは介護を受ける高齢者に多くみられる。症状や処置の方法に詳しい東大大学院の真田弘美教授(創傷看護学)は「看護師や家族が、高齢者の腕や足に傷があるのを見て『虐待されたあとではないか』と誤解するケースもあります。介護する人たちに予防法を知って欲しい」と訴える。

    *

高齢者に多い皮膚の外傷として豪州などで注目されてきたが、日本ではまだよく知られていない。スキンテアになる人の割合や年齢、性別などの実態調査を、日本創傷・オストミー・失禁管理学会が始めたところだ。

日常の何げない刺激が引き金になる。たとえば、ベッドの柵に手足をぶつける、着替えで衣服がこすれる、ばんそうこうをはがす、などだ。介護する人が腕を強くつかんだだけで起きる場合もある。

ひふのクリニック人形町(東京都)の上出良一院長によると、高齢者の肌は、新陳代謝の衰えや弾力を保つコラーゲンの減少のため薄くなっている。皮膚の各層の結合ももろく、はがれやすい状態になっているという。

特に注意したいのは、ステロイドや抗凝固剤、抗血小板薬を使っている人たちだ。ステロイドは長く服用すると皮膚が薄くなる副作用がある。抗凝固剤などは皮下出血が起きやすくなる。いずれもスキンテアになりやすい。

処置にも注意が必要だ。まず、患部を水で洗う。はがれた皮膚が残っていれば、取り除かずに元に戻すと治りが早い。傷口は貼り付きにくいガーゼで覆うようにする。この時、皮膚がめくれた方向がわかるよう、目印をつけておく。ガーゼを換える際、皮膚を一緒にはがさないためだ。その後、看護師に相談するか、皮膚科の専門医を受診する。傷口が大きく、出血が治まらない場合は早めに受診したほうがよい。

    *

肌の保湿も心がけたい。保湿剤はローションやスプレー状のものがよい。クリーム状だと肌になじませることが刺激になり、逆にスキンテアの原因になりかねない。

予防するには、肌に余計な刺激を加えないことが大事だ。ベッドの柵はタオルで覆い、体位を変えたり車いすに移したりする時はなるべく2人以上で支えて腕や足をぶつけないように注意する。

上出さんは「スキンテアは注意すれば防げる。皮膚に余計な刺激が加わらないよう、介護を受ける高齢者の生活環境を見直してほしい」と話す。

■2014.9.8  障害者ら1811人、手をつなぎ世界記録  青森
手をつないでいる人数のギネス世界記録に挑戦する催しが7日、青森市の青い森セントラルパークであり、幾重もの大きな輪をつくった障害者ら1811人が、新記録を樹立した。

地元の医師会などで組織した手をつなぐ青森市民の会の主催。障害がある人もない人も、一緒になって一つのことを成し遂げようと企画した。

糖尿病に立ち向かう運動を象徴するブルー、乳がんの早期発見・早期治療を表現するピンクのリボンを腕に巻いた家族連れや小中、特別支援学校の児童生徒らは、隣の人の手首を60秒以上握り合う競技に1回目のチャレンジで成功した。

世界記録の認定証を受け取った工藤健会長(46)は「心を一つにして一生懸命やれば記録を達成できる。自信を持って勉強、仕事に取り組む糧にしてほしい」と喜んだ。

これまでのギネス記録は、北海道函館市で6月に樹立された1479人だった。

■2014.9.9  障害者作ったキノコで「ご飯の素」 豊前 /福岡
豊前市産のシイタケ、キクラゲ、ヒラタケを加工し、ご飯に混ぜるだけでおいしく食べられる「きのこご飯の素(もと)」が完成した。

同市青畑の就労支援事業所「きのこセンター翼」などで障害者が育てているキノコを使った。三毛門の食品製造業「よかろう」がしょうゆで味付けし、真空パックにする。昨秋から試食を重ね、香ばしく仕上げた。収益は障害者の給与となる。

翼の橋田健兒施設長(60)は「障害者の心が籠もったキノコです」、よかろうの金丸早苗社長(64)は「上品な味に仕上がった」と話す。280グラム入り475円。13日から道の駅「豊前おこしかけ」などで販売する。

■2014.9.9  広島土砂災害:間借りで笑顔再び 福祉作業所、3週間ぶり
広島市の土砂災害で、建物ごと土砂にのみ込まれた安佐南区の福祉作業所「八木園」が8日、他の民間福祉施設2カ所を間借りして約3週間ぶりに再開した。障害を持つ18〜72歳の31人が通所。縫製や工業製品の組み立てなどをしながら自立を目指している。災害後、生活のリズムが崩れて体調を崩したり、不安を抱えたりする人もいたが、久しぶりに職員や仲間と会い、笑顔がこぼれた。

職員が作業所の被災を知ったのは8月20日午前6時ごろ。「八木園が大変なことになっている」と親から電話で連絡を受けた。施設長の春木強さん(48)は「最初は近くの崖が崩れた程度だと軽く考えていた」と言う。しかし、バイクで出勤途中、平屋建ての作業所が土砂や木で覆われているのが分かった。「夜中の発生で中に誰もいなかったが、昼間だったらどうなっていたことか」

利用者と職員は自宅待機となった。施設の長期閉鎖は利用者に動揺を与えるだけでなく、親にも負担が生じる。通所にかかる時間などを考え、安佐南区と安佐北区の福祉施設に間借りして再開することにした。

安佐北区の仮の作業所には8日、利用者18人が元気な顔をそろえた。利用者の一人、田中成貴さん(33)は「皆と久しぶりに会えてうれしい。(別の作業所にいて)離れている仲間と早く一緒に作業がしたい」と語った。

■2014.9.9  介護予防にフィットネス 市町村事業に移行、企業参入増へ
フィットネスクラブの運動プログラムを取り入れた介護保険の介護予防デイサービス(予防デイ)が広がっている。介護度の軽い要支援者が対象で、従来の集団でのゲームや食事、入浴などから様変わりした内容だ。来年度に予定されている介護保険制度改正で、要支援者の予防デイが市町村事業に移行するのを控え、注目を集めている。

                   ◇

介護度の軽い要支援者向けの介護予防デイサービスセンター「悠悠いきいき倶楽部調布」(東京都調布市)。10人余りの高齢者が椅子に腰掛け、2つのボールを太ももと背面に挟んだまま、ゆっくり脚を上げる。参加者から「きつい」という声が上がる。

フィットネスクラブ運営のコナミスポーツ&ライフ(品川区)が介護度の進行抑制を目的に開発した運動プログラムで、動作をスムーズにする効果がある。同倶楽部は運動中心のサービスを提供、高齢者用の運動器械を使い1人で黙々とトレーニングに励む人もいる。利用者の9割が介護度を維持・改善しているという。

1回2時間のサービスに、週2回通う調布市の岩下実盛さん(80)は介護予防の対象となる要支援2。大学2年のときの事故で右の膝や足首を動かせず、現役時代には転倒する不安を感じていた。

「現状を維持するため、休まず来ています。運動のおかげで足首が動くようになり、転倒の心配がなくなりました」と喜ぶ。

悠悠いきいき倶楽部はベッドメーカーのフランスベッド(新宿区)が運営し、全国26施設。同社の担当者は「介護保険が使えるので自己負担は利用料の1割。送迎もあり高齢者には通いやすい。中重度の人もいる施設のプログラムは軽度の人には物足りず、運動したい人に好評」と話す。

◆団塊のニーズ

セントラルスポーツ(中央区)も、要支援・要介護認定を受けていない高齢者向けに市町村が実施する介護予防事業(地域支援事業)へプログラムを提供するほか、要支援者向けの予防デイも運営。筋力トレーニングの効果を個人別に測定したり、認知症予防を目的としたタブレット端末によるグループワークでウオーキングコースを企画したりする。同社の担当者は「これから予防の対象となる団塊の世代はフィットネス経験者も多く、お金を払って運動することに抵抗感が薄い」と、運動プログラムのニーズを見込む。

介護分野へのフィットネスの進出は、平成18年度の介護保険制度改正がきっかけだ。要支援者を対象に介護予防サービスが導入され、運動器機能向上などのプログラムが推進された。27年度改正では、介護予防サービスのうち訪問介護と予防デイが29年度までに地域支援事業へ移行、全国一律だったサービスの内容や価格は市町村が決めることになる。

しかし、市町村直営は難しく、企業の参入余地が広がるとみられている。フィットネス側も「自治体が税金を使う以上、予防の効果が求められる」などと得意分野の効果測定をアピール。地域支援事業をめぐっては、近いうちに要支援・要介護になる恐れのある高齢者の参加が低調なことが課題となっており、要支援者も合わせたサービス提供で利用が活発になるか注目される。

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介護予防

高齢者が要介護状態になるのを防いだり、要介護状態になっても悪化するのを防いで改善を目指すこと。平成18年度の介護保険制度改正で導入された。介護度の軽い要支援1や要支援2の人を対象とする介護予防サービスと、要支援・要介護認定を受けていない高齢者向けに市町村が実施する介護予防事業(地域支援事業)がある。

介護予防サービスの支給限度額は要支援1が月4970単位(1単位は約10円)、要支援2が月1万400単位(同)。利用者(25年11月)は要支援1が約46万9000人、要支援2が約57万4000人。

■2014.9.9  社会保障のは・て・な  介護の人手不足
仕事大変なのに低賃金


Q 介護の仕事をする人が足りなくて大変だって、ニュースでやっていたけど、本当なの?

A 老人ホームなどの施設で高齢者の世話をする職員や、高齢者の家庭を訪問して介護するホームヘルパーが足りないという話だね。介護の仕事をする「介護職」の人数は、介護保険制度が始まった2000年の約55万人から12年には約169万人と3倍に増えている。ところが、高齢化で需要も急増しているから人手が足りないんだ。今年6月の有効求人倍率(パートを含む常勤職員)は2・04倍で、全産業平均0・90倍を大きく上回っているよ。


Q 介護の仕事に興味がある人は大勢いるのでは?

A もちろんそうだよ。介護職の一つに「介護福祉士」という国家資格があるが、00年の約21万人が12年には約110万人に増えているんだ。でも、資格を持っていても、半数は介護の仕事をしていないのが問題なんだ。短期間でやめる人も多く、介護職場では職員の2割程度が1年間で入れ替わっている。

Q それはなぜなの?

A 最大の理由は、仕事の大変さに比べて賃金が低いことだろう。フルタイムで働く人の月給は全産業平均で約32万円だが、ホームヘルパーや施設の介護職員はそれより10万円ぐらい低い。ただ、介護職は勤続年数も平均より短く、同じ勤続年数で比べればあまり変わらないとの見方もある。それでも、優秀な人材を多く集めようと思えば、平均以上の賃金が必要だね。


Q それなら賃金を上げればいいんじゃないの?

A それが難しいんだ。介護保険では、サービスの内容と時間によって報酬額が決まっており、介護事業者はその範囲内で職員に賃金を払っている。経営コストを削減し、その分を賃金に回そうと努力する事業者もいるが、不十分だとの指摘もある。国は職員の賃金を増やすことを条件に、介護報酬を上乗せする対策にも乗り出してきた。さらに、来年度の報酬の見直しで引き上げを求める声もある。しかし、その財源は税金と、40歳以上の人が払う保険料だから、引き上げには慎重な判断が必要だね。


Q 人手が足りないのは賃金だけが理由かな?

A キャリアアップがしづらいことも問題なんだ。介護福祉士たちに過去に働いていた職場をやめた理由を聞くと、厳しい労働環境や、専門性や能力を発揮・向上できないことなどが上がった。また、努力して専門性を高めても、それに見合った賃金がもらえないこともある。そこで、国は研修や資格を整備してキャリアアップの仕組みを作ろうともしているんだよ。


Q いろいろな対策をしているんだね。

A 2025年には75歳以上が約2200万人になり、人口の2割近くになる。介護職も今より約80万人増やさないとならないから、大変なんだ。国は「きつい、汚い」といった介護職のイメージを払拭するために、中学生や高校生に授業の一環として介護の仕事を体験してもらったり、介護福祉士を目指す学生に修学資金を貸与したりもしている。

今後は日本の若者の数が減っていく。元気な高齢者にも介護を担ってもらうほか、技術の向上など介護職の専門性を高めることで、待遇改善を進めていくことが大事だね。

■2014.9.9  おいしく食べる「災害食」…幼児、高齢者向けに工夫
東日本大震災の教訓をもとに、被災後に命をつなぐ「災害食」が注目されている。

被災時にもできるだけ食べ慣れた食事を取り、健康を維持するためのノウハウや商品の開発が進められている。今週は防災週間、各家庭でも備えを見直したい。

「備蓄品を普段の生活に取り入れて」。先月27日、宮城県多賀城市で「子育てひろばママの立場で考える防災・減災」が開かれた。乳幼児と母親22組が参加。仙台市の防災士、佐藤美嶺さん(32)が備蓄の心得を説明し、市の備蓄品の乾パンを砕いてヨーグルトとバナナと混ぜるおやつを紹介した。乾パンをサラダのクルトン代わりにして食べるなど、備蓄を無駄にしないコツも伝えた。

佐藤さんは東日本大震災時に、乳飲み子を抱えて不安な時を過ごした。その経験を基に、被災時の乳幼児の食を考える「災害食ワークショップ」を昨年から開く。

「気持ちが不安定になった子どもの世話をしながら、作ったことのない料理は作れない。手間をかけずにでき、子どもが食べやすい食を知っておいて」と佐藤さん。親の目線で工夫する佐藤さんの試みは今年度の「日本災害食学会」の最優秀賞に選ばれた。

日本災害食学会は、研究者や食品メーカーなどが集まり、昨秋発足した研究会だ。副会長で「ホリカフーズ」(新潟県魚沼市)取締役の別府茂さん(61)は「東日本大震災のように被災が広範囲に長く続くと、子どもや高齢者などの要援護者、屋外で救援にあたる人など、それぞれのニーズに合わせた食が必要」と話す。

同社は、火がなくても発熱材で中華丼や牛丼などを温める「レスキューフーズ」を開発。救援・復旧作業にあたる人向けの高カロリータイプ、カロリー控えめタイプなど様々なメニューを提案している。

要援護者用の食料備蓄に取り組む自治体もある。10年前に中越地震があった新潟県魚沼市では2009年度から、乳児向けの粉ミルクやベビーフード、高齢・病者用のレトルト食品などを備蓄。市内の高齢者施設などと連携し、備蓄品を賞味期限が切れる前に使って、補充する方法を検討中だ。

従来の災害食には「我慢して食べるもの」「おいしくない」といったイメージがあったが、最近は商品開発が進んで味が向上。今年は各地でコンテストも行われている。

8月23、24日に横浜市で第1回の「災害食グランプリ」が開催された。15社36品が出品。来場者の投票で「ごはん」「パン・麺・菓子」など5部門のグランプリが決定。主催の一般社団法人「防災安全協会」は「様々な選択肢が登場していることを知ってほしかった」と狙いを話す。今月21日には新潟県長岡市でも「にいがた災害食グランプリ」が開かれる。



完成 パッククッキングで作った親子丼

日本災害食学会事務局長の守真弓さんによると、東日本大震災で救援物資が現地のニーズに合わなかったり、栄養の偏りが問題となったりして災害食の備蓄に注目が集まったという。「大災害ほど救援の手は遅れる。野菜不足を補うため、野菜ジュースをいつも余分に1本多く買っておくなど日ごろから家族に合わせた食の備えが必要だ」と話す。

温かく衛生的な調理法…ポリ袋に材料入れ加熱


災害時の調理法に「パッククッキング」が注目されている。ポリ袋を使って加熱料理する方法だ。

救援物資のおにぎりやパンは、幼児や高齢者が食べにくい場合がある。この調理法を普及啓発する「パッククッキング倶楽部防災部会」の阿部進さん(66)は「個人の体調や好みに対応した温かい食事を衛生的に作れる。災害時に役立ちます」。水を足しておかゆなどにすれば食べやすくなるからだ。

用意するのは、食材、ポリ袋、湯を張った鍋、カセットコンロ。電気が復旧したら、電気湯沸かし器でも。湯は何度でも使え、洗い物にも利用できる。

挑戦したのは、あんパンで作るぜんざい風の甘味や親子丼など。甘味はあんパン1個をちぎってポリ袋に入れ、水100ccと砂糖大さじ1杯を加え、15分加熱。親子丼は、洗わずそのままの米60グラムと重量の1・5倍の水(90cc)をポリ袋に入れて50分加熱。具は焼き鳥缶1缶、タマネギの薄切り50グラム、卵1個、しょうゆ小さじ1杯を入れ、加熱30分。

親子丼の卵はふわふわ、甘味はトロリと甘くほっとする味。鍋に入れておくだけで複数の料理を同時に作れるのも助かる。「やけどにさえ注意すれば、料理初心者でもできます」と阿部さん。袋に入れる食材次第で多彩な料理が作れ、阿部さんらがまとめたレシピ本「救命パッククッキング」(風人社)もある。

◇        ◇        ◇


作り方の手順


ポリ袋は、スーパーで食品を入れる時に使う、半透明で薄い「高密度ポリエチレン」を使う。最初に袋を振って空気を入れ、破れがないかを確認する。

中に食材を入れて袋の上から全体を軽く混ぜ、水を張ったボウルに袋ごと入れて空気を押し出すようにする。空気を抜くことで、少ない調味料でも味がしみやすい。手でぎゅっとしぼって抜いてもいい。

袋の口をくるくるとねじって、できるだけ上で縛って閉じる。破裂を防ぐために余裕をもって上の方を縛る。

湯を張った鍋に袋ごと入れて、沸騰させつつ温める

■2014.9.9  川越で全盲の女子生徒蹴られる つえにつまづいた腹いせか
県立盲学校「塙保己一学園」(川越市笠幡)に通学する全盲の女子生徒が登校途中、JR川越駅コンコースで何者かに足を蹴られる事件が発生していたことが9日、分かった。女子生徒の白いつえにつまずいた腹いせに暴行を加えたらしい。先月末には、さいたま市の全盲男性が飼っていた盲導犬が鋭利なもので刺される事件も発覚しており、度重なる事件に関係者は「社会的弱者に対する卑劣な行為」とショックを受けている。

同校と女子生徒によると、8日午前7時50分ごろ、川越市脇田本町、JR川越駅構内のコンコースで、点字ブロック上を歩いていた女子生徒の白いつえに前方から来た人がつまずいて転倒した。その直後、何者かが後ろから女子生徒の右足を1回蹴り、立ち去った。女子生徒は一瞬よろけたが、そのまま同駅西口のスクールバスのバス停に向かい、登校した。

相手は無言だったため、性別は分からず、暴行を受けた際、女子生徒は「あんた。何をやっているんだ」との近くで目撃した男性の怒声を聞いていた。女子生徒は登校した後に病院で診察を受けたが、膝の裏を蹴られたため、立ったり座るなどの屈伸をすると痛みを覚えるという。

女子生徒は今年4月から、鍼灸(しんきゅう)を専門に勉強する同校高等部専攻科に在籍。自宅から1人で電車通学をしている。女子生徒と保護者は近く、川越署に被害届を提出する予定。

9日、取材に応じた女子生徒は「以前からつえにつまずく人はいたが、暴行を受けたのは初めて。蹴られた時は何が起きたか分からず、怖かった。私を蹴った人には前を向いて歩いてほしいと思う。今後は、自分と同じ立場の後輩たちが同じ目に遭わないかどうかが心配です」と話した。

荒井宏昌校長は「無防備な女子生徒への暴行は許し難い。言いたいことがあるのなら、口で話してほしい。盲導犬が虐待された事件があったばかりだが、社会の中で障害者への配慮が欠けているように思う。障害者を見守り、助けてあげてほしい」と訴えている。

■2014.9.10  高齢者ソフト食で特許 宮崎市の潤和リハビリテーション診療研究所客員研究員の黒田留美子さん(64)
宮崎市の潤和リハビリテーション診療研究所客員研究員の黒田留美子さん(64)が開発した「高齢者ソフト食」が8月、特許を取得した。全国の病院や高齢者施設などで導入されており、黒田さんは「安全性が証明された。さらに普及に努めたい」と喜んでいる。


高齢者ソフト食3つの定義
(1)舌で押しつぶせる硬さであること
(2)すでに食塊となっているような形であること
(3)すべりが良く移送しやすいものであること

ソフト食のレシピ
http://softshoku.net/recipe/index.html

■2014.9.11  社会福祉法人の改革を急げ
介護や保育などの施設を運営している社会福祉法人の改革議論が始まった。税制優遇や補助金を受ける立場として本当にふさわしい事業を実施しているのか、透明性のある組織であるのか、などが問われている。

社会福祉法人制度は戦後の混乱期、海外からの引き揚げ者、戦災孤児など生活困難者があふれる中で生まれた。これらの人に対し、行政による対応だけでは限界があったことから、行政を補完する民間の組織に特別な法人格を与えたのが始まりだ。

混乱期を抜けた後も同法人は増え続け、今は全国に2万近くある。かつてに比べるとその位置づけも曖昧だ。特に2000年に介護保険制度がスタートし、介護事業に民間企業などが参入するようになると、矛盾が噴出する。

民間事業者は原則、介護保険から支払われる報酬で経営するが、社福法人は税制優遇と補助金を受けたうえで介護報酬も得て特別養護老人ホームなどを運営する形となったためだ。

優遇を受けた分で地域に貢献している社福法人も存在はする。しかし、1法人当たり3億円を超える内部留保を持つなど存在意義が問われるような状況が次々と明らかになっている。財務諸表を公開する法人も半数ほどにとどまり、経営内容も不透明だ。理事長による法人の私物化も指摘される。

このような問題を踏まえ、厚生労働省の検討会は、社福法人に対して、法人運営の透明性の確保などを求める報告書をまとめている。当然のことだ。一層の改革を実現してほしい。

心身の障害や貧困など様々な問題から支援が必要な社会的弱者は今また増えている。だが、財政が厳しいため、これらの人のすべてを社会保障制度で救うのは難しい。優遇を受けた社福法人の出番はたくさんある。

営利を目的とせず、地域福祉の向上に役立つのが社福法人の本分。それができないなら優遇を受ける資格はないはずだ。

■2014.9.11  盲導犬刺傷や全盲女生徒に蹴り…埼玉県の協会、視覚障害者の被害調査へ
全盲の女子生徒が蹴られるなど県内で視覚障害者に対する暴力などが相次ぐ中、県視覚障害者福祉協会(熊谷市)は10日、県内の会員約210人を対象に同様の被害を受けた経験があるかなど実態を調査することを明らかにした。

8日、JR川越駅コンコースでは、県立盲学校に通う女子生徒が足を蹴られる事件が発生。さいたま市では、男性の盲導犬が鋭利な物で刺されるなど、県内では視覚障害者が被害に遭う事件が相次いだ。

同協会理事の石川晶夫さんによると、9日に都内で開かれた視覚障害者による全国大会では、会員の間で「模倣犯が現れるのではないか」など不安が広がっているという。

同協会はこうした被害から実態把握に取り組む。石川さんによると、被害を受け「(弱視の視覚障害者が見えているのにつえを使っている」「盲導犬は痛くても泣かない」など、健常者による一部の「誤解」が広まっているという。同会では会員の実態を調査する中で、正確な情報を把握、発信する。

石川さんは「弱視でもつえを使って歩かないと危険だし、盲導犬も痛いときには何らかの声を出す。会員の中にはこれまで被害に遭い黙っていた人もいると思う。調査の結果はホームページなどを通じて広く伝えて生きたい」と話している。

■2014.9.11  <同居希望は27%まで低下>老後と社会保障に関する意識調査――厚労省
厚生労働省は、8月29日、「平成24年 高齢期における社会保障に関する意識等調査報告書」を公表した。
本調査は、 平成24年7月12日、平成24年国民生活基礎調査(所得票)の対象単位区から無作為に抽出した360単位区内の20歳以上の世帯員を対象に、老後の生活や社会保障についての考えを調査したもの。

【主な調査結果】
■老後に子どもとの同居を希望する人は 27.1%で、前回の平成18年の調査(30.0%)よりさらに低下した。調査が開始された昭和58年は68.2%であり、同居希望者は調査のたびに減少している。
同居の内訳は、条件なしで「同居したい」は 15.7%、「元気なうちは別居し、病気になったら同居したい」は6.7%、「配偶者がいなくなったら同居したい」は 4.7%であった。

■同居を希望する人の割合を年齢階級別にみると、40歳代で16.4%と最も少なく、70歳以上で42.1%と最も多かった。

■子どもとの別居については、「子どもが近くにいれば別居でもよい」が 38.3%、条件なしで「別居したい」が 11.0%であった。

■介護が必要となった時に生活したい場所は、在宅が43.2%[「住み続けた自宅(子どもの家への転居を含む)」18.7%、「高齢者のための住宅」14.1%、「グループホームなどの共同生活を営む住居」10.4%]であった。「特別養護老人ホームなどの施設」と答えた人は29.8%で、およそ3人に1人であった。

■「人生の最後をむかえるとき」にどこで生活したいかという質問では「住み続けた自宅(子どもの家への転居を含む)」が最多の37.5%で、次いで「病院などの医療機関」が 27.9%であった。

■自宅で介護を受けることになった場合、家族だけにみてもらいたいという人は8.1%にとどまり、家族だけでなく外部サービスを受けたいという人が61.3%であった。また外部サービスのみを受けたいという人も12.0%いた。

■今後10 年で自宅周辺に増えて欲しいと思う介護関係の事業所・施設は、「訪問介護・看護サービスを提供する事業所」が最も多く49.1%、次いで「通い、泊まり、訪問が一体的に提供される小規模多機能型居宅介護事業所」が36.5%、「自宅から通って利用するデイサービスを提供する事業所」が33.3%、「高齢者のためのサービス付きの住宅」が30.9%であった。

■老後生活と社会保障の関係については、「老後の生活の準備はまず自分でするが、全部は出来ないので、足りない部分は社会保障でみてもらいたい」とする者が 52.8%と過半数を占めた。ただし、年齢階級別にみると、若い世代では「老後の生活は自分が考えるべきで、若いときからその準備をする。社会保障にはあまり期待しない」の割合が多く、高年齢層ほど「社会保障でみてもらいたい」の割合が多くなっている。

■重要だと考える社会保障の分野は、「老後の所得保障(年金)」が71.1%、次いで「高齢者医療や介護」が48.2%、「医療保険・医療供給体制」が37.6%、「子ども・子育て支援」が29.5%、「雇用の確保や失業対策」が27.2%であった。

■少子高齢化が進行する状況における高齢者と現役世代の負担水準の考え方については、「現役世代の負担の上昇を緩和するために、高齢者の負担が今より重くなることはやむを得ない」とする人が30.4%、「高齢者の負担は現状程度で留めるべきであり、少子高齢化による負担増は、現役世代が負担するべきである」とする者は27.0%であった。

総合的にみて、いずれの世代でも、子どもとの同居・介護を希望する人は減少傾向にあり、かわりに外部サービスや社会保障の充実を求めていることがうかがわれる。

■2014.9.12  介護ベッド死亡事故7年で35人
高齢者や体の不自由な人が使う介護ベッドで、手すりの隙間に首を挟まれて死亡する事故などが相次いでいるとして、NITE=製品評価技術基盤機構が12日、記者会見を開き、注意を呼びかけた。

介護ベッドによる事故は、国への報告が義務づけられた平成19年以降、7年余りで67件が明らかになっていて、このうち半数を超える35件が死亡事故です。

NITEが調べたところ、事故は手すりに挟まれることによって起きることがほとんどで、首を挟み込んで窒息するケースや、背もたれを起こしたときに手を挟まれ、骨折するケースが目立つということです。

このためNITEでは、ベッドの手すりに首や手を挟み込む隙間がないか確認し、クッションやメーカーが配布している専用のカバーなどで、隙間を埋めるよう呼びかけています。

NITEの池谷玲夫課長は「介護ベッドの利用者は、体が挟まれても引き抜いたり、体を立て直すことが難しいケースが多く、重篤な事故につながる。介護する人が危険な隙間に気付いたら、対策を取ってほしい」と話しています。
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古い製品の利用で事故多発

相次ぐ事故を受けて、介護ベッドのメーカーは10年前から安全性の向上に取り組んできました。
国も5年前、介護ベッドの規格を改め、手すりの隙間を工夫して首が挟まれにくくするなど、事故の危険性を低減させました。

しかし、レンタル業者などを通して、規格が改められる前の古い製品を、危険性を知らないまま利用している人も少なくなく、事故は起き続けています。

このため、消費者庁は古い製品を使っている場合は、新しい規格を満たしたものに取り替えることや、それができない場合は、頭や首を挟まないよう専用のカバーやクッションで手すりの隙間を塞ぐよう、呼びかけています。

業界団体によりますと、国内には介護ベッドのメーカーが10社ほどありますが、国の規格が厳しくなる以前の製品では、ほぼすべてのメーカーのベッドで事故は起きているということです。

一方、NITEによりますと、新しい規格を満たした製品では、死亡事故は起きていないものの、手すりの隙間に足を挟んで大けがをする事故などは起きていて、使用にあたっては注意が必要だとしています。


カギ握るレンタル業者の取り組み

介護ベッドの業界団体によりますと、介護ベッドは購入して利用するのでなく、介護保険を利用してレンタルするケースがほとんどだということで、事故の防止のためには、レンタル業者による注意喚起が欠かせません。

東京などで、福祉用具のレンタルを行っている「ヤマシタコーポレーション」は、ベッドを貸し出す際、専門知識を持った社員が利用者に、事故につながる誤った使い方を説明しています。

ベッドの手すりに手が入っているときに、背もたれを上に上げると、手が挟まれるおそれがあることなどを、体で具体的に示して説明しています。

また、レンタルを始めてから10日以内に1度、そのあとも3か月に1度は、利用者を訪問し、介護ベッドが体に合っているかや、誤った使い方をしていないかなどについて、聞き取りを行っているということです。

そして、首や手が挟まるおそれのある製品には、隙間を埋めるためのカバーなどを着ける対策も取っています。

社員の松田貴博さんは、「利用者の中には手すりの隙間から物を取ろうとして腕が抜けなくなるなど、ヒヤリとする経験をした人もいた。定期的に訪問してコミュニケーションを取ることで、利用者の体の変化や誤使用に早めに気付き、リスクを減らしたい」と話していました。

■2014.9.12  問われる介護の社会化  介護職員の離職率が16.6%という現実
汚い、キツイ、危険の3K職場。以前は建築現場などの体力を必要とする肉体労働を指す言葉であったが、現在介護業界にむけて使われることが多い。
そんな中、介護労働安定センターの介護労働実態調査で2013年度の職員の離職率が16.6%であることが分かった。12年度より0.4%減少。しかし、同年度の全産業平均の14.8%年よりは以前高い数字となっている。

介護業界には国が進める介護の社会化を実現するために、人材の獲得と定着の2つの問題が大きくのしかかっている。
団塊の世代が全て65歳以上の高齢者となる15年問題。

厚生労働省の試算では、25年には介護職員が100万人以上不足すると見られている。またインドネシア、フィリピン、ベトナムの3か国から介護職員の受け入れを進めているが、なかなか上手くいっていないのが現状だ。このまま行けば、今も入居者待ちが数十万人単位でいる特別養護老人ホームの入居はほとんど不可能になり、在宅介護を望んでも介護士がいないのでケアをしてもらえない介護難民が溢れることになる。在宅介護を重点的に進める国の施策にも綻びが生じるだろう。

現在、訪問介護員の79%が非正規社員で90%以上が女性となっている。もともと業界の78%が女性であり女性の多い業界であるが、給与の少なさで将来が見えないなど、男性が勤めにくいという理由もある。

今回の調査結果によると、介護職員はやりがいを感じてはいるが、待遇面での不満を抱えている。一方で介護事業者は、人材確保の難しさと今の介護報酬では十分な賃金を払えないことが課題であると感じている。実際に全労連が調査したデータによると、平均給与が207,795円で全労働者平均の297,700円を90,000円も下回っていると言う。つまり現在の介護業界は、介護に携わる人の善意で成り立っているのが現状だ。

介護の担い手が不足しサービスの質が低下すれば、いずれ国民の負担となって返ってくる。在宅での介護も、施設での介護も叶わないとなれば家族で面倒をみる必要があり、減少を続ける労働人口に打撃を与え、経済の成長に影響を及ぼすだろう。介護の社会化をどこまで受け止める覚悟があるか、試されているのかもしれない。

■2014.9.12  介護報酬を不正受給*デイサービスきよみず/静岡
介護報酬を不正受給したとして、県福祉指導課は11日、沼津市大岡のヴィレッジワンが運営する介護事業所「デイサービスきよみず」(裾野市富沢)の指定を停止すると発表した。期間は10月1日から3カ月間。

同課によると、同事業所は利用者10人について、2012年8月から介護サービスなどの時間を水増しして介護報酬約15万円を不正受給。県調査にも虚偽報告したとしている。同社側は「ミスがあった。厳正に受け止める」と話しているという。県は報酬を支給した沼津市などに加算金を含め計約21万円を返還請求するよう要請する。

■2014.9.13  障害者雇用率ランキング トップ100  16.1%のエフピコがダントツ、ワタミも人員大幅増
エフピコはベテラン社員の障害者支援体制が充実

障害者を多く活用する企業はどこか。『CSR企業総覧』2014年版から、毎年恒例の障害者雇用率ランキングをご紹介する。対象は同誌掲載の1210社のうち、直近の2012年度で障害者を5人以上雇用している773社である。

1位は食品トレーや弁当・総菜容器最大手のエフピコとなった。障害者雇用率はダントツの16.10%で障害者雇用実人数も369人と多い。2010年度16.10%(同364人)、11年度16.32%(370人)と他社を寄せつけない圧倒的な水準を維持している。

障害者は市場から回収した使用済み容器の選別工場、折箱容器の生産工場を中心に、全国21カ所の事業所で雇用。リサイクル工程などで活躍する。職場には障害者支援のベテラン社員が配置されている。事故を防ぐための安全対策を大幅に増やすといったきめ細やかなサポート体制も整え、障害者が働きやすい環境を提供している。

同社はリサイクルの先進企業としても有名だ。使用済みトレーの店頭回収やPETボトルのリサイクルを、NPO(民間の非営利組織)と連携しつつ実施している。使用済みトレーを原料に戻して再び新しいトレーを作り出す、「トレーtoトレー」といった高い技術で低コスト化を実現。これが業績にも寄与しており、2011年度から4年連続増収と、好業績を持続している。リサイクルと障害者活用を両立して成功させている、障害者雇用のお手本ともいうべき存在だ。

2位は自動車向けなどの超硬工具メーカー上位であるダイジェット工業の6.75%(21人)。2010年度8.36%(23人)、11年度7.11%(21人)と高い水準を続けている。

3位は前年まで2年連続1位だったヒューリックの5.30%(6人)。ダイレクトメール発送等の業務を行う「ヒューリック杉並オフィス」などで障害者雇用に取り組んでいる。2010年度5.71%(6人)、11年度5.66%(6人)と人数は3年間同じだが、前回は調査に回答しなかった上位2社が今回登場し、ヒューリックの順位を3位まで下げた。

4位は価格比較サイト「価格.com」を運営するカカクコムで、5.08%(24人)。2010年度1.22%(4人)、11年度2.44%(10人)と人数、比率とも着実に向上している。

以下、5位サガミチェーン4.55%(23人)、6位リヒトラブ4.33%(11人)、7位ノーリツ鋼機3.89%(17人)、8位TOHOシネマズ3.87%(74人)、9位ハリマ化成グループ3.70%(15人)、10位ツムラ3.65%(103人)と続く。
障害者雇用人数では東芝の1788人が圧倒

雇用率から雇用人数に着目してみよう。ランキング100位内で最も多く障害者を雇用している会社は、85位の東芝で、その数1788人(2.24%)。以下、48位西日本鉄道704人(2.43%)、68位ブリヂストン546人(2.31%) 、53位ホンダ489人(2.38%)、1位エフピコ369人(16.10%)といった企業が並ぶ。会社規模を鑑みると、エフピコの存在感はここでも際立っている。

大きく人数を増やしているのが26位のワタミだ。2011年度の185人(1.94%)から、12年度は245人(2.73 %)と1年間で60人も増加している(対象はグループ合計)。

同社は複数の特別支援学校と提携して研修生を受け入れている。外食店舗での清掃、仕込み業務、クリーニング業務、事務補助などで障害者を積極的に活用する。他に19位の良品計画も、2010年度70人(2.09%)、11年度79人(2.07 %)、12年度130人(2.89%)と2年間で60人増加した。

陸運、医薬品が高く、不動産は低い

続いて業種別の集計を見ていこう。こちらは12年度の障害者雇用率を開示している967社が対象。全体の平均は1.74%だった。

業種別で雇用率の平均値が高いのは、陸運業の2.09%(15社)、医薬品2.03%(23社)、化学1.97%(78社)、精密機器1.94%(15社)など。一方で低いのは、不動産業1.17%(23社)、証券、商品先物取引業1.25%(8社)、倉庫・運輸関連業1.32%(9社)、情報・通信業1.39%(66社)などだ。



障害者雇用は義務から戦力化へ
さて、2013年4月から民間企業の障害者雇用の「法定雇用率」は、従来の1.8%から2.0%に引き上げられた。さらに2018年からは精神障害者の雇用も義務化される見込みだ。今後は各企業で障害者がより多く在籍することが予想される。彼らをこれまで以上に戦力化していく必要がある。

そもそも企業での障害者雇用推進は、国や自治体からの助成金やサポートも受けながら、社会全体で障害者の活躍の場を作ろうとするものだ。企業は障害者雇用を義務として捉えるばかりではいけない。本業のビジネスで、障害者を活用して利益を出す方法を考えることが求められている。


『CSR企業総覧』には障害者雇用に積極的な企業が数多く存在する。ただ、まだ補助業務中心の職場が多いのも事実だ。今後、各社が障害者活用を一歩ずつ進化させ、ランキングトップのエフピコのように、収益と雇用を両立する企業が続々と登場してくることを期待したい。

今回、ご紹介した障害者雇用率などの情報をまとめた『東洋経済CSRデータeBook2014 障害者雇用取り組み編』を電子書籍で発行している。障害者雇用率だけでなく、特例子会社の有無、各社の障害者雇用への取り組み情報を1149社掲載している(会社によって情報量の差はある)。ランキング結果とあわせて、日本の障害者雇用について考えるための資料としてご活用いただきたい。


ランキング1〜98
http://social-welfare.rgr.jp/databox/ioioioioioyyy5.jpg

ランキング52〜98
http://social-welfare.rgr.jp/databox/ioioioioioyyy9.jpg

業種別
http://social-welfare.rgr.jp/databox/ioioioioioyyy11.jpg

■2014.9.13  佐賀市長、結論は見直さず 障害者不採用  不採用の理由 伊東博己総務部長は「今回は一般職の採用で、異動もあることを加味して総合的に判断した」
佐賀市が職員採用試験で身体障害者枠を受験した男性(25)に合格通知を出した後、不採用にした問題で、秀島敏行市長は12日の市議会一般質問で「反省すべき点は確かにある。このようなことがないよう今後の糧にしたい」と、市の対応に問題があったことを認めた。

秀島市長は「本人も採用にかなりの期待を持っていたと聞いている。採用に至らなかったのは残念」と述べる一方、不採用を見直す考えはないことを強調。今後の障害者採用については「障害者の自立、雇用確保のため門戸を開いていきたい」と述べた。

また、不採用の理由を問われた伊東博己総務部長は「今回は一般職の採用で、異動もあることを加味して総合的に判断した」と答えた。

市は男性に合格通知を出した後、面談で動作確認を行ったうえ、職務遂行能力を判断するとして今年4月から2カ月間、非常勤で雇用し、最終的に採用を見送った。

◆質問状回答に「話にならない」 地方議員グループ

佐賀市は12日、障害者の不採用問題をめぐり、障害のある地方議員グループから出されていた32項目の公開質問状に対し、「差別的な取り扱いはしていない」などと回答した。

回答では、今回の原因について「受験資格の要件を、合格を通知する前までに確認できなかった」とし、今後は見直す方針を示した。第三者機関による検証も行う予定はないとした。

質問状を出した「障害者の自立と政治参加をすすめるネットワーク」は「話にならない。障害者の不採用が広がらないか不安」とし、今後、内容を精査し対応を協議する。

■2014.9.13  介護士・看護師受け入れ なぜ失敗したのか
日本政府が外国から介護士・看護師の受け入れを始めたのは2008年のことだった。政府間で結ぶ経済連携協定(EPA)に基づき、同年にはインドネシア、翌年にはフィリピンからの受け入れが始まった。これまで来日して仕事に就いた人材は2000人近くに上る。

筆者はフォーサイト誌で「2010年の開国 外国人労働者の現実と未来」(07年8月―10年4月)を連載していた頃、介護士らの受け入れの実情をリアルタイムでルポした。外国人介護士・看護師は国家試験に合格すると、日本で無期限に仕事ができる。ホワイトカラーの「高度人材」、南米諸国など出身の「日系人」らを除けば、日本が初めて外国人に永住の道を開くケースである。その意味で介護士らの受け入れの成否は、近い将来、日本が必ずや直面する「移民」受け入れの試金石になると私は考えた。

彼らは人手不足解消の切り札とも期待された。介護・看護分野での人手不足は深刻化する一方だ。厚生労働省によれば、介護職だけで2025年には100万人が不足するという。

EPAによる受け入れ開始から6年が経った今、介護士らはどうしているのか。かつて取材した外国人介護士たちの「その後」を追ってみた。

成功例はごく少数

大阪の中心街・梅田から急行電車で約20分。阪急「池田駅」でバスに乗り換えさらに10分ほど行くと、新興住宅地の間に田畑が増えてくる。そんなのどかな風景の中に、フィリピン人介護士のマリシェル・オルカさん(34歳)が働く有料老人ホームがある。

マリシェルさんは09年6月にフィリピンからのEPA第1陣の1人として来日し、このホームを運営する社会福祉法人の特別養護老人ホームで働き始めた。そして3年後の12年、介護福祉士の国家試験にフィリピン人として唯一合格した。

EPAで来日する外国人介護士たちは、日本で仕事を始めて3年後に国家試験を受験し、一発で合格しなければ帰国が義務づけられた。現在はある程度の点数を取った受験生に限って翌年の再チャレンジも認められたが、日本語での試験は外国人にとって難関だ。今年の合格率を見ても外国人は36パーセントで、日本人の65パーセントを大きく下回った。看護師の国家試験に至っては、日本人の合格率90パーセントに対し、外国人はわずか10パーセントに過ぎない。

マリシェルさんは国家試験合格後に正社員として採用され、職場は特養から有料老人ホームへと変わった。

「今の仕事では(特養よりも)さらに利用者の方、1人1人に合った対応が求められます。ほんまに大変ですが、やりがいはありますよ」

彼女と前回会ったのは国家試験合格直後の2年前だが、今では関西弁もすっかり板についた。職場ではリーダーを任され、正社員4人を含めて計6人の日本人部下も束ねている。

しかし、マリシェルさんのような成功例は少数だ。国家試験で不合格になった外国人は、日本人と結婚するなどして在留資格を得た人を除いて皆、母国へと帰国していった。さらには、合格しても日本に見切りをつけて去っていく者まで続出している。

2008年から昨年までに来日した1869人のインドネシア人、フィリピン人介護士・看護師のうち、国家試験に合格したのは402人。「読売新聞」6月27日朝刊によれば、合格者の約2割の82人がすでに母国へと戻ってしまったという。日本での就労機会を蹴ってのことだ。

EPA帰国者たち

国家試験合格者で帰国する割合がとりわけ高いのがインドネシア人だ。合格者の4人に1人以上が日本を去った。2012年にインドネシアに帰国したナニンさん(29歳)もそうした1人だ。

ナニンさんはインドネシアで看護大学を卒業した後、08年にEPA第1陣で介護士として日本にやってきた。配属先となった三重県の介護施設で働きながら国家試験に向けた勉強を続け、介護福祉士の資格を取得した。しかし、せっかく難関を突破したというのに、彼女は日本で仕事を続ける道を選ばなかった。その理由を尋ねると、流暢な日本語でこんな答えが返ってきた。

「仕事に不満はありませんでした。でも、両親からインドネシアに戻ってくるように言われたのです」

インドネシアに帰国すると、すぐに日系企業の通訳の仕事が見つかった。月収は6万円程度で日本にいた頃の半分にも満たないが、不満はなかった。ちなみにインドネシアの給与水準は、一般的な病院に勤める看護師で月4万円ほどである。

ナニンさんは帰国後、公務員のインドネシア人男性と結婚して子供をもうけた。出産で中断している通訳の仕事も、子供が少し大きくなったら再開するつもりだ。

「日本でまた働いてみたい気持ちもありますが、家族がいるので......」

首都ジャカルタ市内のクリニックで働くスリスさん(28歳)も、ナニンさんと同じく08年に介護士として来日した。国家試験には合格できなかったが、結果が出る前からインドネシアに戻ろうと決めていた。

「介護の仕事は大変でした。もともと私は、インドネシアで看護の勉強をしていましたから」

スリスさんも看護大学の卒業生で、インドネシアでは看護師の有資格者だ。日本にも看護師として行こうとしたが、応募資格の「2年以上の実務経験」がなく叶わなかった。そのため仕方なく、看護師の資格さえあれば応募できる介護士として申し込んだ。

彼女は今、看護師として働いている。勤務先のクリニックは日本語が通じることが売りで、患者の9割は現地在住の日本人だ。同僚の看護師にはEPA帰国組が16人もいて、そのうち2人は国家試験の合格者である。

「給料は月に8万円ほどです。(介護士として)日本にいたときの半分くらいだけど、仕事はとても楽しい」

スリスさんは希望した看護師として日本に入国できず、国家試験に不合格になって介護士としても「失格」とみなされた。そんな彼女がインドネシアで立派に看護師として、日本人駐在員やその家族を相手に仕事をしている。

「日本には遊びに行きたい。でも、働きたいとは思いません」

インドネシアでは日本企業の進出ラッシュが続いている。日本語が堪能で、しかも日本での生活で文化や慣習も覚えたEPA帰国者たちは、通訳や看護師として引っ張りだこだ。ただし、ひとつ忘れてはならないことがある。彼らは、私たちの税金を遣って育成された人材なのである。スリスさんらが日本での経験を生かして祖国で活躍するのは喜ばしいことだが、それはそもそもの政策目的に適ったことなのだろうか。

国の「支援」は有効か

国家試験に合格しながら帰国者が相次いでいることを報じた読売の記事は、介護人材の不足を指摘したうえで、「合格者の就労継続の支援や、不合格者の再受験の支援の必要性」を訴えて終わっている。これは同紙に限らず大手紙に共通するスタンスだ。毎年、外国人介護士らの国家試験の結果が発表になるたび、新聞各紙は揃って外国人への「支援」を促し続けてきた。だが、単に「支援」すれば問題は解決するのだろうか。

「支援」ということでは、これまでゆうに80億円を超す税金が投じられてきた。その大きな部分は日本語習得のための「支援」である。外国人介護士を採用した施設には、1人につき年23万5000円も支払われる。国家試験に向けた「対策費」の名目だが、実際は外国人を採用する施設が急減したことに慌てた厚労省が、受け入れ数を確保しようと始めた補助金のバラマキである。だが、結果的には採用施設は増えなかった。本来は当初の2年間でインドネシア、フィリピンから2000人の介護士・看護師を受け入れるはずが、6年経っても枠は埋まっていない。しかも、国家試験の合格率も大して上がっていないのだ。

ナニンさんやスリスさんを見てもわかるように、「支援」があれば日本で仕事を続けたり、国家試験に再挑戦したかといえば、そういうわけでもない。問題の本質は「支援」の有無ではなく、EPAの受け入れ「スキーム」自体にある(2012年4月4日「根本が間違っている『外国人介護士』問題」参照)。それは介護士たちの声に耳を傾ければ明らかだ。

インドネシアで看護師の資格を持つナニンさんやスリスさんは、母国では"エリート"とみなされる存在だった。しかしEPAには看護師として応募できず、どんなに日本でがんばっても「介護福祉士」以上の夢は描けなかった。大阪の有料老人ホームで働くマリシェルさんには、フィリピンで1人暮らしをしている母を日本に呼び寄せたいという思いがある。だが、そのために必要な永住権を取得しようとすれば、少なくともあと5年は日本で働かなければならない。親思いの彼女が、それまで辛抱できるかどうか。

こうした彼女たちの本音は新聞には載らず、厚労省も理解していない。そもそも厚労省はEPAが始まって以降、EPAによる介護士らの受け入れは「人手不足とは無関係」という態度を崩していない。目的すら明確にせず受け入れているのだから、いくら税金を遣おうと効果が出ないのも当然だ。

人材獲得競争

EPAによる受け入れは、今年からベトナムとの間でも始まった。一方で政府は、「外国人技能実習制度」で介護士を受け入れる方針も打ち出している。実習制度は今から20年以上前、発展途上国の若者が日本で技術を学ぶためにつくられた。ただし、それは建前に過ぎず、現実には日本人の働き手不足に悩む中小企業の工場や建設現場に対し、入国が禁じられているはずの「単純労働者」を供給する"裏口"の手段となってきた。就労期間を最長3年から5年に延長することが検討されているが、短期労働者の受け入れ策であることに変わりない。

介護現場に実習生を入れることは、ついに政府が介護の人手不足を認め、外国人に頼ることを意味している。しかし、それでは「人手不足とは無関係」としながら多額の税金を投じ、少なくとも形だけは国家試験合格を目標に受け入れてきたEPAとはいったい何だったのか。

厚労省を始めとする政府には、実習制度で介護士を受け入れる前にやるべきことがある。EPAの何が良くて、何が間違っていたのかを詳細に分析し、総括することだ。EPAに対する介護現場の期待は、時が経つにつれ萎んでいった。多額の税金をつぎ込みながら「期待外れ」に終わった原因すら総括せず、新たに実習制度を採用したところで同じ轍を踏むだけだ。

どういったやり方で外国人の人材を受け入れようとも、彼らの「質」を確保することは重要だ。とりわけ介護や看護は、私たちの暮らしや命に関わる仕事である。ただし、もはや日本は、アジアの若者にとって何が何でも働きたい「憧れの国」ではなくなった。とりわけ、ある程度のレベルに達した人材にとってはそうだ。その象徴が、国家試験合格者から相次ぐ帰国組の姿である。

アジア諸国では軒並み経済成長が続き、国内にいてもそれなりの仕事に就けるチャンスも増えた。わざわざ日本に「出稼ぎ」に来る必要もなくなりつつある。そこにきて最近では、日本にとっては手ごわいライバルも増えている。アジアの若い人材を巡って、先進国間で獲得競争が起きようとしているのだ。



出井康博
1965年岡山県生れ。早稲田大学政治経済学部卒。英字紙『THE NIKKEI WEEKLY』記者を経てフリージャーナリストに。月刊誌、週刊誌などで旺盛な執筆活動を行なう。

■2014.9.17  アシックス、西宮にデイサービス施設 運動訓練に特化  チャーム・ケア・コーポレーション(大阪市)と業務提携
アシックス(神戸市中央区)は24日、西宮市で整備していた同社初のデイサービス施設「Tryus(トライアス)西宮」を開業する。スポーツ事業で培った知見で独自のプログラムを作成、高齢者に運動訓練を提供する。運動機能を改善し、生活の質の向上や介護予防につなげる。

2階建て延べ床面積は264平方メートル。介護保険法上の通所介護事業所として指定を受けている。運営に当たって有料老人ホームを展開するチャーム・ケア・コーポレーション(大阪市)と業務提携した。

サービスは、「歩く・立つ・転ばない」をキーワードにした運動機能の訓練に特化。食事や入浴は行わない。転倒防止には頭と身体の連携が重要として、ゲーム感覚で体を動かしながら頭を使うトレーニングを組み込む。

午前と午後各30人の利用で、年間の4千万〜5千万円の売上高を見込む。尾山基社長は「創業以来蓄積してきた技術と知識を高齢化社会で生かしたい」としている。施設は西宮市用海町4の36。

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アシックスが介護施設公開 ジム感覚で体力づくり支援

アシックスは24日から、初となるデイサービス施設「Tryus西宮」(兵庫県西宮市)で利用者の受け入れを始める。軽度の要支援や要介護認定者を中心に、ジム感覚で体力を向上できるプログラムを提供する。

アシックスは健康関連事業に力を入れており、今後5年で同様の施設を20〜30カ所開設したい考え。尾山基社長は「スポーツの技術を少子高齢化社会に役立てたい。楽しみながら健康増進につなげられる施設にする」と抱負を語った。

利用者は入会時に「一人で買い物に行けるようになる」「つえ歩行ができるようになる」などの目標を設定。筋力や関節の柔軟性などをパソコン上で数値化し、目標達成に向けた運動メニューを個別に提供する。トレーニングの履歴はデータで管理し、効果を継続的に把握できるようにする。

利用料金などは症状によって異なる。アシックスは年4000万〜5000万円の売り上げを目指す。

■2014.9.17  高齢者のいる世帯が2000万を突破、1人暮らしが急増
総務省が敬老の日にちなんで公表した統計によると、65歳以上の高齢者がいる世帯の数は2086万世帯まで増加し、初めて2000万世帯を上回った。世帯全体に占める割合は、過去最高の40.0%まで高まっている。

公表された統計は、5年ごとに行われる「住宅・土地統計調査」にもとづくもの。2013年の結果がベースで、昨年10月時点の状況がまとめられている。

高齢者がいる世帯のタイプをみると、やはり1人暮らしの増加が目立つ。調査が始まった1983年と比べると、夫婦だけの世帯が4.0倍、子どもなどもいる世帯(上グラフ「その他」)が1.5倍に増えたのに対し、1人暮らしの世帯は5.6倍と伸びが大きかった。

1人で暮らす高齢者の世帯は、2008年の414万世帯から138万世帯増え、552万世帯まで膨らんでいる。夫婦だけの世帯(584万世帯)に迫ってきた数字は、高齢者の暮らし方のモデルが大きく変わったことを物語っている。

1人で暮らす高齢者の住宅は、一戸建てが320万世帯、共同住宅が210万世帯。5年前と比べると、一戸建ての増加幅が29.0%だったのに対し、共同住宅は45.6%と大幅に増えていた。

■2014.9.18  訪問介護を受ける65歳以上の障害者のうち、86・2%の人がサービス利用時の自己負担を支払っている
障害者が働く作業所でつくる団体「きょうされん」は17日、訪問介護を受ける65歳以上の障害者のうち、86・2%の人が介護保険への制度切り替えにより、サービス利用時の自己負担を支払っている、との調査結果を発表した。

障害福祉制度では低所得者がサービスを受けた時の自己負担はゼロだが、65歳以上になると原則1割負担の介護保険に切り替えられ、低所得者にも自己負担が生じることが問題視されている。厚生労働省によると、障害福祉サービスの利用者全体で自己負担を支払っている人は6・6%にとどまっており、65歳を境に多くの障害者に負担が発生している形だ。

■2014.9.18  障害者に65歳の壁 実態明らかに
障害のある人が65歳になると、障害福祉から介護保険のサービスに変わることで、サービスが減ったり負担額が増えたりするケースが各地で相次いでいる実態が、障害者団体の調査で明らかになりました。

調査を行ったのは、全国の障害者の作業所などで作る「きょうされん」です。
国は、65歳以上の障害者について、障害福祉サービスより介護保険サービスを優先すると定める一方、自治体に対しては利用者の状況に合わせて配慮するよう通知しています。
団体がことし5月、65歳以上の会員を対象に初めて実態調査を行ったところ、家事や介護などの訪問支援を受けていた289人のうち、21%の62人がサービスを打ち切られ、86%の249人が無料から新たに負担が生じたということです。

福岡県の女性のケースでは、入浴介助が週4回から3回に減ったうえ、新たに1万5000円の負担が生じ、貯金を取り崩す生活をしているということです。
きょうされん政策・調査委員会の小野浩委員長は、「国は実態調査をしたうえで改善すべきだ。65歳の区切りはなくして当事者が障害福祉と介護保険の両方からサービスを選べるようにし、どの自治体でも同じサービスを受けられるようにしてほしい」と話しています。
団体では厚生労働省に調査結果を伝え、改善を求めることにしています。
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障害者「これから先が怖くて不安」

福岡県田川市で1人暮らしをしている稲田博美さん(67)は、脳性まひで体の自由がきかず、日常的に介護が必要です。
65歳までは、週4回入浴サービスを受けられましたが、介護保険サービスに切り替えられたあとは週3回に減りました。
また、家事支援サービスの時間も減ったため、食事はできあいの弁当やパンで済ませることが多くなりました。
このほか、主に利用するデイサービスが、障害者向けから高齢者が多い施設に変わり、障害者どうしで悩みを打ち明け合うこともできなくなったといいます。
こうしたサービスの低下に加えて、費用はそれまでの無料から新たに1万5000円の負担が生じ、貯金を取り崩す生活です。
稲田さんは、「いくつになっても障害者は障害者なのに、65歳を境に、それまでどおりのサービスを受けられなくなるので悲しいです。貯金も減り続け、これから先、自分がどうなるだろうと思うと怖くて不安です」と訴えています。


田川市長「現場の声聞いて法律作るべき」

福岡県田川市の伊藤信勝市長は、障害者に対して独自にサービスを上乗せするなど柔軟な対応に努めているとしています。
そのうえで、限界も認めていて、「市としてできる体力というものがあり、体力がなくなった場合には、そういったサービスすらできなくなる。地方分権と言われるが、財源がないなか、制度だけがどんどん新しくなり地方にその責任を転嫁するようなことがないよう財源と制度をきちんと議論すべきであり、現場の声を聞いて法律を作るべきだ」と話しています。


厚生労働省「結果踏まえて対応」

厚生労働省は、障害福祉サービスより介護保険サービスが優先されることについて、「自助、共助、公助と言われるように、みずからできることをしたうえで、公的サービスが適用されるという原則に基づいたもの」としています。
そのうえで、「ただ、その結果、問題が起きていることは、大きな課題の1つと認識しているので、現状を把握しながら、結果を踏まえて対応していきたい」とコメントしています。

■2014.9.18  認知症高齢者への非人道的扱いや貴重品窃盗の実態 防止策は?
国民生活センターは9月11日、認知症などで判断能力が不十分な高齢者の消費者トラブルに関する相談が昨年度、約1万1500件に上り、過去最多となったと発表した。主な相談内容としては、健康食品などを送りつけて代金を請求する商法のほか、家のリフォームやインターネットに関する契約トラブルが増えているという。

高齢化社会に突入している今、誰もがこうしたトラブルに巻き込まれる危険があり、本人はもちろん、周囲の人も極力トラブルを回避するように留意しなければならない。

そこで今回、筆者の体験を基に、トラブルから高齢者を守るために気をつけるべき点を探ってみたい。

●非人道的対応の特養も

認知症高齢者が特別養護老人ホームに入所、または介護を受けるためには、まず要介護認定を受ける必要がある。筆者の祖父母は共に5級で、日常会話を交わすことは難しい状態だった。

ある時、老人ホームへ入所したが、数日もたたないうちに街中を徘徊しているところを警察に保護された。1カ月後にも再び徘徊しているところを保護されたため退所を申し出たが、施設側から「監視を強めるから大丈夫」などと説得され、入所を継続させた。

ところが後日、見舞いのために施設を訪問したところ、祖父と祖母が動けないようにベッドにロープで縛り付けられている姿を目撃した。施設としても限られた人数のスタッフで徘徊を防ぐために致し方なく行っていることは理解できるものの、非人道的な扱いをされていると感じたため、自宅で介護することにした。とはいえ、家族だけで介護することは困難なため、ホームヘルパーの派遣を要請した。

連日、気温が35度を超えていた真夏、祖父母に近寄ると悪臭が漂ってきた。明らかにしばらく風呂に入っていない体臭であり、ホームヘルパーに確認したところ、何日も入浴させていないことを認めた。派遣契約には、1日1回入浴させることが明記されており、契約違反であるため、ヘルパー派遣会社に連絡した。会社側は平身低頭の姿勢で、ヘルパーを交代させること、および再発防止することを約束したため、派遣契約は続行することにした。

しかし、ある日、驚く光景を目にすることになった。祖父は郵政省を定年退職した際に、金無垢の置き時計とオメガの金時計を贈呈品としてもらい、大切にしまってあったが、それが無くなっていた。ほかにも、希少価値の高い切手として知られる「月に雁」「見返り美人」や、限定記念切手、古銭、古貨幣、般若・おかめのお面など、祖父が趣味で収集していた多くのコレクションがすべて見当たらず、金庫の中に入れていた現金や有価証券も消えていた。

ヘルパー派遣会社に問い合わせたところ、祖父母から「是非受け取ってほしい」と申し出があったため受領したという。警察にも相談したが、VTRで窃盗の証拠があれば捜査するとの回答で、介入には消極的な姿勢だった。

ヘルパーに不審感を抱き、祖父母は社会福祉施設に入所させ、そこで最期まで面倒を見てもらった。

●注意すべき点

祖父母と同居していた筆者の両親と、ヘルパーについて怪しい兆候がなかったか改めて確認したところ、いくつか不審に思える点があったので、現在ヘルパーを利用している人や、今後の利用を検討している人の参考までに列挙してみたい。

(1)特に頼んでもいないのに、押し入れなどの掃除をしたがる
(2)掃除中には部屋に入らないように念を押す
(3)新興宗教団体のパンフレットやDVDなどが置いてある

実は、筆者が警察に連絡をした一番の理由は、祖父母の持ち物が無くなったからではない。ヘルパーが来てくれなければ、介護の負担は筆者の両親に大きくのしかかることになるため、ギリギリまで警察への届け出はためらっていた。しかし、新興宗教団体のパンフレットやDVDが置いてあるのを見て、届け出を決断したのだ。パンフレットには入会申込書のほか、すべての資産をお布施として提供する旨が書かれた誓約書なども挟んであった。印鑑証明書や実印は当方で管理していたため、大きな資産が没収されるような被害に遭うことは防げたのだと思う。

以上を踏まえると、リスク対策としては次の6つを徹底することが重要になってくる。
(1)被介護者の部屋へは、頻繁に様子を見に行く
(2)被介護者の部屋には貴重品は置かない
(3)ハンコは近親者が管理する
(4)できればヘルパーにはローテーションで来てもらい、担当を固定化させない
(5)VTRモニターを設置するなど、監視体制を構築する
(6)派遣会社との契約書において、ヘルパーが問題を起こした場合の保証を明記する

なお、高齢化社会においてヘルパーのニーズは高まっており、もちろん多くのヘルパーは真摯に仕事に取り組んでいると思われる。一部の心無いヘルパーのために業界全体の信頼が失墜することはあってはならない。高齢者と密室で過ごすことも多いヘルパーに対しては、単に試験を通れば資格を与えるという制度ではなく、モラル教育などの施策を整備することも重要になると考える。法整備を含めた抜本的対策を期待したい。
(文=尾藤克之/経営コンサルタント)

●尾藤克之(びとう・かつゆき)
東京都出身。経営コンサルタント。代議士秘書、大手コンサルティング会社、IT系上場企業等の役員を経て現職。

■2014.9.18  経団連が処遇改善加算の廃止を主張、「事業者自ら対応を」
来年度の介護報酬改定に向けた議論を行う審議会に参画している日本経団連は、介護職員の賃上げのために設けられている「処遇改善加算」を廃止すべきという立場だ。今月に発表した意見書では、「介護職員の処遇改善は他産業と同様、経営層が自ら取り組むべき課題。収入の使い道を公的に指示・監視する加算を存続させるべきではない」と主張している。

処遇改善加算の扱いは、次期改定の大きな焦点の1つ。賃金が下がるという懸念から存続を求める声が根強い一方で、廃止を声高に訴える勢力も存在する。そのうち、最も大きな団体の1つが日本経団連だ。

経団連は意見書で、「民間企業各社は、質・量両面で人材確保のために競い合って魅力ある職場づくりに取り組んでいる」と指摘し、介護事業者もこれに倣うべきだと持論を展開。「現行の介護報酬では限界があるとの声があるが、介護保険給付対象事業に限定せず広く事業展開を行うとともに、事業連携を強めるなどの取り組みを通じ、処遇改善に対応するよう求めたい」などとしている。




介護人材確保対策についての意見 日本経団連

足もとの労働市場は景気回復を背景に逼迫する傾向にあり、民間企業各社は、質・量両面で人材確保のために競い合って魅力ある職場づくりに取り組んでいる。

介護産業においても人材確保は喫緊の課題であるが、介護職員の処遇改善は他産業と同様、経営層が自ら取り組むべき課題であり、収入の使い道を公的に指示・監視する処遇改善加算を存続させるべきではない。

キャリアパス提示を含む処遇改善、労働時間をはじめとする職場環境の改善、大規模化を含めた効率的な事業運営などに取り組む事業者が介護産業の担い手として存続すべきである。労働市場が逼迫する状況下にあっては、事業者が差別化を図る好機として捉えるべきである。

現行水準の介護報酬では処遇改善を図るには限界があるとの声があるが、介護保険給付対象事業に限定せず広く事業展開を行うとともに、事業連携を強めるなどの取り組みを通じ、処遇改善に対応するよう求めたい。介護保険料が増加の一途をたどるなか、介護報酬での処遇改善には限界がある。

なお、処遇改善の取り組みの進捗状況については、介護事業者の自主調査などで把握してはどうか。

このほか、国全体として介護従事者を確保していくためには、国民全体の介護産業に対するイメージを向上させていくことは不可欠である。関係者が介護に携わることの魅力を広く国民に発信していく必要がある。

■2014.9.19  介護職員の労働組合、介護報酬引き上げへ1万6千超の署名
約6万7000人の組合員を抱える日本最大の介護職員の労働組合「UAゼンセン日本介護クラフトユニオン(NCCU)」は18日、8月からスタートした介護報酬の引き上げを求める署名活動で、17日までに1万6529筆が集まったと発表した。活動は10月まで続け、集まった署名は塩崎厚生労働相に提出するという。

NCCUは署名用紙で、「このままでは介護保険制度が働く側から崩壊してしまう」と主張。「介護従事者が希望と誇りを持って働き続ける処遇を実現することが、介護サービスの質の向上、ひいては介護保険制度の維持・発展に寄与する」として、介護報酬の引き上げを強く要請している。


NCCUは今後の署名活動に向けて、「制度維持に関わる国民的課題。ぜひ1人でも多くのご協力を」と呼びかけている。

■2014.9.20  認知症:保護35人 身元不明のまま施設に 厚労省調査
認知症の疑いで保護され身元不明のまま施設などで暮らす人が5月末時点で全国に少なくとも35人おり、認知症以外の人を合わせた身元不明者は346人に上ることが19日、厚生労働省による初の全国調査で分かった。同省は同日、地域の見守りや捜索体制強化に向けた通知を都道府県に出した。

調査は6月、都道府県を通じて1741全市区町村を対象に実施。身元不明の346人は139市区町村で把握され、認知症の他は精神疾患79人、記憶障害60人、脳血管障害58人など。

認知症は男性24人、女性11人。保護期間の最長は30年以上で、この人を含め10年以上が6人いた。推定年齢は80歳以上が10人、70歳〜80歳未満が18人など。保護されている病院や施設があるのは埼玉、千葉、東京、神奈川、静岡、愛知、京都、愛媛、福岡、沖縄の10都府県(26市区村)。ただし「個人情報保護条例の解釈は自治体の判断に任せている」として詳細な自治体名は公表しなかった。

2013年度の行方不明者数は5201人で、警察庁が今年6月公表した昨年1年間の認知症による行方不明者届の受理数1万322人を大きく下回った。行方不明者情報を把握していたのは855市区町村(49%)にとどまっていた。

行方不明者情報を自治体や警察、交通事業者などが共有する「徘徊(はいかい)・見守りSOSネットワーク事業」を実施するのは616市区町村(35%)。これを含め何らかの行方不明者対策を講じたのは1068市区町村(61%)だった。

■2014.9.20  認知症の身元不明者、全国に35人 6人は10年以上保護
厚生労働省は19日、今年5月末時点で医療機関や特別養護老人ホームなどで保護されている認知症の身元不明者が全国10都府県で35人いたと発表した。

35人は男性24人、女性11人。東京、埼玉、千葉、神奈川、静岡、愛知、京都、愛媛、福岡、沖縄の10都府県で保護されている。推定年齢は70代が18人で最も多く、80歳以上が10人、60代が6人、60歳未満が1人。保護期間は2〜3年が8人で最も多く、10年以上は6人いる。30年以上の人もいるという。

認知症以外に、精神疾患や記憶障害による身元不明者は311人いた。

全国の自治体が2013年度に把握した認知症の行方不明者は5201人で、発見されていない人は132人。発見されたが死亡していたのは383人だった。

厚労省は19日、全国の自治体に対し、地域での見守り体制づくりや警察との連携強化を求める通知を出した。同省は6月、行方不明になっている認知症の人を把握するため、全国の自治体に実態調査を要請していた。

■2014.9.21  身障者の公務員試験、全盲者受験できず 九州4県市
身体障害者を対象とした公務員採用試験で、全盲の人の受験をめぐり、九州の自治体の対応が割れている。西日本新聞が7県と県庁所在地、政令指定都市を取材したところ、佐賀県と佐賀市、熊本市、宮崎市が受験資格に条件を付け、全盲の人の受験を事実上認めていないことが判明した。自治体側は職務遂行に支障をきたす可能性などを理由に挙げるが、障害者団体からは反発の声も聞かれる。

各県と各市は雇用促進などを目的に、身障者対象の試験を実施。受験資格に(1)身体障害者手帳の交付(2)自力通勤や介護者なしで職務遂行が可能−などを盛り込み、佐賀県や熊本市など1県3市はこれらに加えて「活字印刷文による出題」に対応できることを条件としている。点字試験は実施しておらず、全盲の人は対象から外した形だ。

熊本市人事委員会は「業務は文書でのやり取りが中心で、全盲の人が職場での仕事を円滑にできるかの問題がある」と説明。宮崎市人事課は「これまで受験希望者がいなかった。今後は受験資格を検討していかないといけない」とする。

これに対し、厚生労働省障害者雇用対策課は「音声読み上げソフトなども普及しており、公的機関は率先して障害者雇用に取り組む立場にある。能力で判断するのが望ましい」とする。2002年度から点字試験を導入した福岡県人事委員会も「全盲の人が対応可能な業務は増えている」としている。

佐賀県視覚障害者団体連合会(佐賀市)は「受験者がいるいないにかかわらず門戸は開いておくべきだ。目が見えないから仕事ができないと決めつけるのはおかしい」と話している。

■2014.9.21  <袖ケ浦虐待>千葉県が最終報告の説明会
千葉県立障害者支援施設「袖ケ浦福祉センター」の虐待問題で、県は第三者検証委員会が最終報告書を公表したことを受けて先月、センター利用者の保護者を対象に説明会を行った。報告書は、県の対応を厳しく指弾し、将来的に民営化を促す内容となっているが、保護者からは疑問視する声が続出しており、支援が困難な強度行動障害者を抱える保護者らの不安が改めて浮き彫りになっている。

説明会は先月9日、同センター内で35家族・46人が出席し、非公開で実施された。

報告書は、県について「施設の設置者として利用者の生命と生活を守るという認識が乏しく、責任は看過できない」と批判。民間団体が運営に参入できる環境を整え、将来的に現在運営する県社会福祉事業団の「解体」も含めた見直しに言及した。出席者からは、センターについて「支援が困難な利用者を受け入れている実態があり、民間施設や地域で受け入れてもらえるか不安。センターは『最後の受け皿』と思っている」などと、提言を疑問視する意見が出た。

また、第三者委が実施した保護者アンケートでは、センターの「養育園」「更生園」への入所の継続を希望する家族が8割超に上った。利用者の保護者らからは「施設で安定して生活している利用者もいる」「利用者の意見や生活スタイルを無視し、一方的に地域移行を進めるのはおかしい」−−などの意見が出されているという。

民営化への転換ではなく、県立施設としての存続を望む意見が相次いだことに対し、県は「強度行動障害者支援を行っている民間施設では、ノウハウも育ってきている。民間を含め県全体での支援体制構築に向け、関係者との議論を踏まえて方向性を定めたい」と理解を求めている。

■2014.9.23  65歳過ぎても働く 定年廃止、会社が慰留 経験、人脈は財産
労働力人口が減り、女性と高齢者の活躍が期待されている。だが、脚光を浴びる女性に比べてシニアへの関心はいまひとつ。そんな中で65歳を超えても働いてもらおうという企業がある。再雇用の上限を70歳まで引き上げたり、定年をなくしたりする動きも出ている。



「65歳になる少し前に本部長から続けてもらえないかと言われ、喜んで引き受けました。若い人とふれあうのは楽しいし、経験を伝えられるのはやりがいもある」。こう話すのはダイキン工業サービス本部シニアスキルスペシャリストの篠崎信一郎さん(67)だ。

■経験、人脈は財産

1971年に入社。空調関連製品の研究に携わった後、86年にサービス部門に異動しエンジニアを束ねた。55歳の役職定年でサービス技術部長を離れ、後輩の教育を担当、フロン回収・破壊法の専門家としても活躍してきた。

ダイキン工業は60歳が定年だが、91年にはいち早く63歳までの再雇用制度を整備し、2001年には希望者全員を65歳まで再雇用する制度をつくった。さらに02年に「余人をもって代えがたい」人材は最長70歳まで働ける「シニアスキルスペシャリスト契約社員制度」を導入した。

ただし65歳以上の雇用はあくまで会社による選択。経験に裏打ちされたスキルやノウハウ、人脈を有する人に限られる。「コスト負担もあるし、若い社員の活性化も考えなければならない。会社にとってそこまでしても働いてもらいたい人という基準は譲れない」(今井達也人事本部部長)

開発部門で若手を指導したり、海外で現地社員に技能を伝えたり。地方都市での受注活動に欠かせない人もいる。現在135人の65歳以上のシニアが活躍中。週5日一日7.75時間のフル勤務で、年収は約500万円(公的年金含む)だ。

新潟県燕市で除雪機や芝刈り機を生産するフジイコーポレーションは、10年に65歳だった再雇用の上限を70歳に引き上げた。しかも希望者全員だ。「ベテランの経験や職人技は会社の大切な財産。微妙な擦り合わせが必要な場面で、大きな力を発揮する」。藤井大介社長は強調する。

神田勝弘さん(66)は、8月までプレス加工と鋼材事業の取締役事業長だった。9月からシニアアドバイザーとして後進の指導にあたる。「記憶力は少し衰えたが、まだ十分元気。先輩が150年守ってきた会社の伝統を次世代につなげたい」と言う。

社員139人のうち60歳以上が23人。うち7人は65歳以上だ。「皆、生活に困ってないから早くやめたがる。頼んで残ってもらっている」(藤井社長)。工場では台車を活用し、工具類はつり下げるなど力の弱い高齢者が働きやすいよう工夫している。

不動産仲介業の東急リバブルは今年4月に、再雇用の上限を70歳まで延長した。「65歳で急にスキルや意欲が落ちるとは思えない。有能な人材はつなぎとめたい」と人事部の中村香織ダイバーシティ推進課課長。

ただし同社も新制度の対象には一定の基準を課した。社員の7割を占める営業職は、よほど成績が悪くない限り全員対象になる。60歳過ぎて管理職を続けている人、特別な能力やスキルがあると会社が認めた人も残ることができる。それ以外は関連会社の派遣社員か28時間以内のパート社員としてなら働ける。

一方、介護大手のメッセージは4月から定年自体を廃止した。岩本隆博執行役員は「高齢者相手の仕事なのに雇用を年齢で区切るのは差別と考えてきた。会社に体力がついたし、雇用情勢の厳しさを考えると働く意欲がある人にはいつまでも働いてもらおうと決心した」と話す。

■制度の詳細手探り

職員のほとんどが現場の介護職。週40時間働く人から週5時間のパート社員まで多様だが、4月に全員を期間の定めのない無期雇用にした。仕事が同じなら給与も同じ。年齢を理由に管理職から外れることもない。すでに社員7446人のうち615人が65歳以上で、最高齢は80歳だ。

とはいえ岩本執行役員は「制度がうまくいくかどうかはまだわからない」とも言う。65歳までなら能力は極端に下がらないが、80歳となると難しい。会社として採算がとれるのか。人材育成や人間関係に悪影響がでないか。「1年かけて制度の詳細を詰める」

本人の意欲をそがず対外的にも働きやすいよう肩書をつけたり、現役社員に配慮し仕事の中身を限ったりといった工夫をする企業もある。人手不足が深刻になれば多くの企業がシニアのさらなる活用を考えざるを得なくなるだろう。



■「いつまでも」3割

年金の支給年齢引き上げに応じ、国は高齢者雇用安定法で雇用確保を求めてきた。2006年の改正で希望者全員を62歳まで、13年には経過措置付きで65歳まで雇うよう義務付けた。厚生労働省の調べでは31人以上の企業の66.5%が希望者全員を65歳まで雇用し、70歳以上まで働ける企業も18.2%ある。

内閣府が13年に行った調査によれば、60歳以上の23.6%が70歳くらいまで、10.1%が75歳くらいまで働きたいと答え、働けるうちはいつまでもという人も29.5%いる。1947〜49年に生まれた団塊世代は、14年中に全員が65歳に達する。65歳以上が働き続ければ、労働力人口の減少を緩和できる。

■2014.9.23  介護離職10万人 認知症 ともに歩む
介護か、それとも仕事か。退職を決意するまで悩んだ1年、したためては破り捨てた辞表は十数通に上った。将来への不安から震えが止まらなかった。

昨年6月、長野市の宮沢秀雄(55)は91歳で他界した母親をみとった。葬儀後、脳裏に浮かんだのはあの頃の葛藤だった。

母親は11年前、認知症を発症した。当時、宮沢は長野県内のゴム製品メーカーで受注生産品の製造責任者だった。父親(89)に介護を託したものの、すぐに限界が見えた。宮沢の手が必要となった時、「会社の支援は期待できなかった」。整体師として生計を立てる現在、母親に続いて認知症になった父親を施設に見舞う日々を送る。

今月19日、長野県東部の都市の高速バス乗り場。1人の男性(60)が東京行き便に乗り込んだ。実家で暮らす認知症の母親(85)を世話するためだ。5年前、県内の中堅商社を、課長職を最後に辞して以来、月に数回、自宅のある長野と東京を往復する。「会社勤めしながらではとても無理」と男性は語る。

総務省の就業構造基本調査によると、認知症の家族などの介護を理由に会社を辞める人は年間約10万人。働きながら介護している人は約240万人に上る。多くの企業にとって、組織を支える世代にのしかかる負担は、経営問題となりつつある。

「2016年には8割以上が介護に直面する可能性がある」。2年前、丸紅の役員らに40〜50代の社員の衝撃的な調査結果が示された。「まさかこれほどとは」。人事部員らは絶句した。ダイバーシティ・マネジメント課長の許斐理恵(40)は「このままでは離職や転勤拒否で重要ポストに穴が開いてしまう」と危機感を募らせる。

課題は社内制度の周知。短時間勤務、離れて暮らす親を見守る民間サービスの補助……。丸紅は産業界の中でも先んじてメニューを整えてきた。だが「いざという時に制度を知らず、悩みを抱え込む社員は多い」と許斐。同社は社員セミナーを通じて啓蒙を進める。

積水ハウスも動く。今年4月、法定期間(93日)を大幅に上回る通算2年の介護休業制度を導入した。「社員をつなぎ留めるには今から手を打つ必要がある」。人事部課長の一ノ瀬達也(44)は、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になる「2025年問題」を見据える。

認知症の家族を抱える社員をどうサポートするのか。企業も対応を迫られる。

■2014.9.23  袖ケ浦福祉センター:虐待問題 保護者から不安の声 民営化促す内容に 最終報告書 /千葉
県立障害者支援施設「袖ケ浦福祉センター」の虐待問題で、県は第三者検証委員会が最終報告書を公表したことを受けて先月、センター利用者の保護者を対象に説明会を行った。報告書は、県の対応を厳しく指弾し、将来的に民営化を促す内容となっているが、保護者からは疑問視する声が続出しており、支援が困難な強度行動障害者を抱える保護者らの不安が改めて浮き彫りになっている。


説明会は先月9日、同センター内で35家族・46人が出席し、非公開で実施された。

報告書は、県について「施設の設置者として利用者の生命と生活を守るという認識が乏しく、責任は看過できない」と批判。民間団体が運営に参入できる環境を整え、将来的に現在運営する県社会福祉事業団の「解体」も含めた見直しに言及した。出席者からは、センターについて「支援が困難な利用者を受け入れている実態があり、民間施設や地域で受け入れてもらえるか不安。センターは『最後の受け皿』と思っている」などと、提言を疑問視する意見が出た。

また、第三者委が実施した保護者アンケートでは、センターの「養育園」「更生園」への入所の継続を希望する家族が8割超に上った。利用者の保護者らからは「施設で安定して生活している利用者もいる」「利用者の意見や生活スタイルを無視し、一方的に地域移行を進めるのはおかしい」などの意見が出されているという。

民営化への転換ではなく、県立施設としての存続を望む意見が相次いだことに対し、県は「強度行動障害者支援を行っている民間施設では、ノウハウも育ってきている。民間を含め県全体での支援体制構築に向け、関係者との議論を踏まえて方向性を定めたい」と理解を求めている。

■2014.9.23  90歳女性の介護装い現金窃取 64〜78歳の女3人を逮捕
介護を理由に高齢女性宅に入り込みキャッシュカードで現金を勝手に引き出すなどしたとして、警視庁下谷署は23日、窃盗容疑などで、東京都文京区本駒込、ホームヘルパー、山形百代容疑者(64)ら女3人を逮捕した。

他に逮捕されたのはいずれも台東区谷中、無職の鈴木まき(78)、巻島桂子(75)の両容疑者。同署によると、山形容疑者は容疑を認め、ほかの2人は否認している。

逮捕容疑は、25年10〜12月、女性のキャッシュカードを利用して銀行の現金自動預払機(ATM)から現金200万円を引き出し盗んだなどとしている。

3人は平成24年7月ごろから、鈴木容疑者が住むアパートの大家の女性(90)方に介護を理由に通い始め、女性のキャッシュカードを利用するなどして26年3月までに台東区内の銀行や文京区内の信用金庫から計約1千万円を引き出したとみられる。

■2014.9.24  ベッドからトイレまでの移動を支援する介護ロボット  パナソニック 自立支援型起立歩行アシストロボット
パナソニックは、高齢者の起立と歩行を支援する「自立支援型起立歩行アシストロボット」と、高齢者の動作状況を検知する「みまもりシステム」の2製品について、開発発表を行なった。発売は2016年度を予定しており、価格や販路については現時点で未定。

高齢者の急激な増加に伴う「ロボット介護機器」の政策展開などを念頭に開発された製品。パナソニックとして、介護ロボットを展開するのは今回が初めてとなり、今後はパナソニックの技術やサービスなど既存の事業領域を活かしながら、積極的に展開していくという。

今回発表した2製品は、いずれもサービス付高齢者住宅や老人ホーム、介護施設向けに開発されたもので、介護者、被介護者ともに負担が少なくなるような工夫を施している。




2016年度の発売を予定している「自立支援型起立歩行アシストロボット」
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パナソニックは今回初めて介護ロボットに参入。技術やサービスなどパナソニックのリソースを活かしていく
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「自立支援型起立歩行アシストロボット」は、高齢者がベッドから起きて、トイレに行って戻るまでの一連の動きをアシストする。残っている体力機能を維持できるような、リハビリ的なアシストができる点が特徴で、電動アシスト自転車の原理と同様、使用者が力をかけた分だけアシストする。本体には、6軸のセンサーが搭載されており、使用者の意思や状態を推定し、起立や着席をアシストする。

なお、現時点では施設向けの製品として開発を進めているため、使用者のほかに介護者が必要だが、今後在宅向けなどニーズがあれば1人で操作できるような製品の開発も進めていくという。



「自立支援型起立歩行アシストロボット」
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体に残っている体力を使いながらリハビリ的に使える点が特徴
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ベッドからトイレにいくまでの一連の動きをアシストする
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使用時はこのようなベストを着用する
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立ち上がる時に前にかかる力を検知して、最適なアシストを行なう
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立ち上がってからは歩行をアシスト
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排便後処理などを行なうために、中腰状態で、しばらく静止することも可能
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6軸センサーが内蔵されているところ
操作ボタン
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サービス付高齢者住宅を2018年に100棟経営

パナソニックは、高齢者・介護向け事業を「エイジフリー事業」として展開。バリアフリー・ストレスフリー・ケアフリーの3つをエイジフリーとして掲げ、商品やサービスを展開している。

エイジフリー事業では現在、在宅向けサービス、施設、機器・設備、商品の販売などを展開しており、今回新たに参入した介護ロボットもエイジフリー事業に含まれる。同事業では現在、大阪で2棟のサービス付高齢者住宅を経営しており、今後さらに拡大を進め、2018年には同様の施設を100棟、売上100億円以上を目標として掲げる。

また、全体では保険制度への適応、介護ロボットなど新規事業の創出、海外市場への参入などを掲げ、2018年度の売上高として500億円を目指す。

■2014.9.24  介護職:離職、勤務3年未満が65% 有資格者は約5割 県調査 /島根
県内で福祉や介護職を辞めた人のうち約65%が3年未満に離職していることが、県の調査で分かった。ただ、介護福祉士の資格を持っている人に限ると、その割合は約5割まで減ることも判明。県は「資格を持っている人の割合を高め、介護職員の確保と定着を進めたい」としている。

県高齢者福祉課によると、調査は昨年8月、県内の福祉・介護事業所計1146カ所を対象に実施。758カ所から回答を得た。その結果、過去1年間の自己都合の退職者は1133人だった。このうち勤務3年未満の人は733人に達した。

1133人の退職者のうち、介護福祉士の資格を持っている人は438人、何の資格も持っていない人は239人だった。勤続3年未満で離職した人の割合は介護福祉士が49%だったのに対し、資格を持っていない人は77・4%と高かった。1年未満で辞めた人も資格を持っていない人の方が高かった。同課は「資格取得の機会をつくることが人材確保にとって必要」と分析する。

22日の県議会一般質問でも、平谷昭議員(民主県民クラブ)が介護現場での人材確保などを質問。原仁史・健康福祉部長は「介護福祉士は県西部の方が東部よりも人材確保が厳しい」などと現状を説明した。

■2014.9.24  リハビリに最新機器 障害者支援施設ありすの杜 (茨城・水戸市)
茨城県水戸市の障害者支援施設「ありすの杜」は、下肢の自律動作を支援するロボットスーツ「HAL@福祉用」など最新の福祉機器をリハビリテーションに活用している。利用者のチャレンジ意欲向上に役立てる取り組みは、機器の新たな可能性を教えてくれる。

介護職員が操作

社会福祉法人勇成会(伊藤勇一理事長兼施設長)が運営するありすの杜は、2001年に開所した入所定員52人、生活介護80人の身体障害者療護施設。開所当初から床走行式リフトを導入するなど積極的に福祉機器を活用してきた。

HALの両脚用を導入したのは11年。サイバーダイン鰍ゥら無償貸与を受け、約半年試した結果、機能回復の効果は薄くても、利用者の意欲向上には大きな効果があると思ったからだ。

同施設の利用者の大半は、拘縮などで関節が固定された状態で来所する。ほとんどの人が機能回復は難しく、リハビリも病院のような「維持・向上」でなく、「維持」が目標になる。

そんな利用者がHALを試用すると、車いすから立ち上がれたり、頸椎損傷で脳の指令が足に届かないはずの人の足が動いたりした。無理だと思っていたことができたことに利用者は大喜び。その姿を見て「意欲が向上すれば、さまざまなチャレンジにつながる」と正式に導入した。

ただ、同施設のリハビリスタッフは、マッサージ担当の非常勤の機能訓練指導員と、近くの病院から週1回来てもらう理学療法士(PT)だけ。最先端の機器を扱うことに不安はあったが、職員の大半が半日かかるメーカーの講習とテストを受け、装着やパソコン操作の方法、歩行のサポートの仕方などをマスター。介護職員だけでなく栄養士などさまざまな職種が、勤務体制に応じて臨機応変に対応している。



法人負担増も覚悟

毎週水・土曜日のリハビリは利用者の楽しみになっており、リハビリ目的で通所する人もいる。メニューも豊富で、マッサージを受ける人もいれば、機器を使った機能訓練に励む人もおり、各自が希望するリハビリを自分のペースで行っている。

現在、HALを使っているのは2人。当初は16人が使用していたが、高齢化や障害の重度化が進んだこと、一昨年から微弱電流を認識するための電極パッチ代(1回720円)を利用者負担にしたことで徐々に減ったという。

HALを使って4回目の伊勢山孝夫さんは「普段は歩けないが、HALを使うと歩くことができる」と歩行訓練に意欲的。これまでの訓練で力の入れ方が分かったのか、歩行器につかまり5歩ほど自力歩行。「やっているうちに歩きやすくなった。今日が一番良かった」とほほえんだ。

リハビリは意欲向上が主眼という同施設だが、PTの指導の下できちんとした機能訓練も行っている。

左下半身まひで右大腿骨を骨折した野邊勝己さんは、右足が曲がったまま硬直しないよう、オージー技研鰍フ起立訓練用傾斜ベッド「ティルトテーブル」を使って足を伸ばす訓練中。PTの指導を受けながら、懸命にリハビリに励んでいた。

「HALは法人内の別施設にも1台あるが、使用者は6〜7人。大切なことは使ってもらうこと。来年度から電極パッチ代を法人で負担し、無料にしたい」と話す伊藤理事長。HALのリース料は月額1台につき13万4000円で、これに電極パッチ代も入れば法人負担は相当な額になるが「それでも意欲向上につながれば良い」という。

広い視野と利用者主体の方針を持つことで、機器の使い道も大きく広がるようだ。

■2014.9.26  田辺市が県内で最高 障害者施設からの調達額
障害者が働く施設から、優先的に商品を買ったり仕事を発注したりするよう地方自治体などに求める「障害者優先調達推進法」に基づく和歌山県田辺市の2013年度調達実績は2501万7千円で、県内30市町村で最高であることが分かった。本年度は金額で100万円程度、件数で7割程度増える見通しという。

推進法は昨年4月に施行した。国や自治体が優先調達することで働く人の収入増や雇用機会拡大を支援するのが狙い。

田辺市の調達額で大半を占めるのが新庄総合公園と内之浦干潟親水公園の清掃業務、容器包装のリサイクルやペットボトルの選別業務の委託。3件の合計は2494万2千円で、いずれも法施行以前から委託している。

県の調査(6月時点)によると、30市町村の調達額合計は7853万4千円。8町村がゼロだった。田辺市に次いで多かったのは紀の川市の1777万7千円、紀南では上富田町の574万9千円。県は1756万6千円。

推進法が購入対象に想定しているのは、機械部品や弁当などの物品、清掃、データ入力などのサービス。県内のある自治体の担当者は「行政で使用する商品が少ない。優先調達の方針は庁内に伝達しており、施設側でも行政向けの商品を開発してもらえればありがたい」と話している。

推進法では、調達方針の策定や実績の公表を義務付けている。

■2014.9.26  「介護ストレスから殺した」自宅で母親とみられる女性殺害 自首の男を逮捕
自宅で母親とみられる女性を殴り殺したとして、兵庫県警姫路署は25日、殺人容疑で、兵庫県姫路市夢前町菅生澗(すごうだに)の無職、永浜正治容疑者(48)を逮捕した。「介護のストレスから殺した」と容疑を認めている。

逮捕容疑は15日午後1〜4時の間、自宅で母親とみられる女性の顔や首を殴るなどして殺害したとしている。同署によると、永浜容疑者は母親(74)と2人暮らし。25日午後1時ごろに同署を訪れ「母親を殺した」と自首。署員が自宅を確認したところ、2階の部屋で死亡している女性を発見した。

永浜容疑者の母親と連絡が取れなくなっており、同署は女性が母親とみて調べている。

■2014.9.30  男子生徒に暴行受け女性講師重傷 秋田の特別支援学校
教室で講師に暴行し重傷を負わせたとして、秋田県警秋田中央署は、傷害の疑いで秋田市内の県立特別支援学校高等部の男子生徒(18)を逮捕した。生徒には発達障害があり、責任能力を慎重に調べている。

逮捕容疑は、29日の授業開始前の午前8時40分ごろ、教室内で大声を出すなどして女性講師(29)に注意されたことに腹を立て、頭を机や床に複数回たたきつけ、脳挫傷などを負わせた疑い。講師は集中治療室で治療を受けている。

この学校の副校長によると、当時もう1人の教員と2人で指導していたという。「生徒は以前は物を投げるなどの行動があったが、ここ1、2年は安定していた。結果的に配慮が足りなかった」と話している。

 

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