残しておきたい福祉ニュース 1996〜社会福祉のニュース

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残しておきたい福祉ニュース

 2012年 
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

 2012.12. 3 ニート、発達障害者を戦力に 大阪府内で取り組み進む
 2012.12. 4 有老ホーム・訪介事業所の運営会社が破産- 東京
 2012.12. 4 両陛下、京都市の障害福祉事業所を訪問
 2012.12. 4 ノロウイルス:大阪で集団感染、入院患者2人死亡
 2012.12. 5 豊岡会2病院、指定取り消しで譲渡へ- 来年3月1日付、不正請求計33億円
 2012.12. 5 津山の老人福祉施設から石綿 6日以降、立ち入り禁止に
 2012.12. 5 障害者雇用率:1.59% 全国41位 15年連続、法定率割る /群馬
 2012.12. 5 食中毒:宝塚のホテルで17人症状 /兵庫
 2012.12. 6 都が「感染性胃腸炎流行警報」 都立児童福祉施設では集団食中毒
 2012.12. 6 補聴器のデコレーションサービス、女性の聴覚障害者らに人気 関西企業も協力検討
 2012.12. 6 損害賠償:デイサービスで転倒、将来の介護費など832万円支払い命令 /青森
 2012.12. 6 難病患者への福祉サービス、まず130疾患 厚労省
 2012.12. 6 長崎新聞連載記事が本に 累犯障害者の「声」拾う
 2012.12. 6 障害者虐待で調査 西東京の施設 都「不適切な行為把握」
 2012.12. 7 入所者殴り骨折させた容疑で介護福祉士を逮捕
 2012.12. 7 低収入ほど野菜不足…厚労省栄養調査
 2012.12. 8 ノロウイルス変種、全国で検出 流行拡大の恐れ
 2012.12. 8 誤嚥性肺炎を防げ 篠山で介護者向け講習会
 2012.12. 8 民家床下から女性遺体=義母ら遺棄容疑で逮捕―福岡県警
 2012.12.10 介護福祉 「仕事に見合った待遇得られる施策を」
 2012.12.11 ノロウイルス?集団感染 社会福祉施設で死者 大阪
 2012.12.11 ロボットで排せつ処理 大和ハウスが福祉事業
 2012.12.11 障害者も地域で共生 栃木で福祉講演会
 2012.12.11 65歳以上の外来患者が最多 23年調査
 2012.12.12 2万個のLEDで装飾 白浜の福祉施設
 2012.12.12 新型検査 進歩する技術 体制づくり必要
 2012.12.12 ご用心! 今度はサポウイルス 修学旅行生ら91人が京都で集団食中毒
 2012.12.12 生活保護受給者、213万3905人 過去最多を更新
 2012.12.12 温泉施設からレジオネラ菌 埼玉、4人が下痢などの症状
 2012.12.12 愛知の旅館で14人食中毒 8人からノロウイルス
 2012.12.14 ボリショイがブログで福祉施設出身告白
 2012.12.14 ダウン症候群 育てる決断支える社会に…
 2012.12.14 暴行:医療福祉センター入所者に 容疑で准看護師を逮捕 江津署 /島根
 2012.12.15 入所者虐待 栃木県も福祉法人に勧告 「愛と光の会」
 2012.12.15 名古屋市、ノロウイルスで警報 患者200人突破
 2012.12.15 広島で1000人超が食中毒 配達弁当でノロウイルス
 2012.12.17 食中毒:1381人が症状、弁当原因か…ノロウイルス検出
 2012.12.17 「エンゼルケア」では、家族の意向に配慮を- CB医療従事者向けセミナー
 2012.12.18 声が出なくても、触って話せる文字パッド アプリ発売へ
 2012.12.18 ノロ、北海道内でも急増…集団感染70件
 2012.12.19 特養入所者に理容奉仕 高知の父娘ら
 2012.12.19 ドクターヘリ活躍 想定超える出動件数 鹿児島
 2012.12.19 誤飲しても安全な抗菌剤開発 歯磨きジェル、来春発売へ
 2012.12.19 入浴中の死亡事故、厚労省調査へ 高齢化進み急増
 2012.12.19 北九州市戸畑区菅原、養女(40)を床下に埋めた母(59)と娘(35)
 2012.12.20 豪雨被害の特養ホーム再開 奄美・住用の園移設
 2012.12.20 「セックスレス夫婦」は4割超 性交渉に関心ない“草食男子”も増加
 2012.12.21 介護施設の高齢者虐待、1.5倍に急増- 過去最多を5年連続で更新・厚労省調査
 2012.12.21 昨年度の養護者による高齢者虐待死は21人- いずれも自宅など・厚労省調査
 2012.12.21 全社連運営の社保5病院が不明金計上- 特別損失5億円など
 2012.12.21 口から食べ続けるには 介護食は機能に応じた形態で
 2012.12.21 3人に1人が朝食抜き 25〜34歳、2食化の傾向
 2012.12.21 [広域避難・高齢者のケア](下)認知症患者 戸惑わせない
 2012.12.21 震災後、循環器系の病気急増…宮城
 2012.12.22 福岡市の特養ホーム、向精神薬50錠紛失
 2012.12.22 骨粗鬆症予防にミカン 黄色い色素が骨を増やす
 2012.12.23 障害者の芸術作品発表の場に 福祉ギャラリー日光にオープン
 2012.12.23 ノロウイルスで入院患者6人死亡 宮崎の病院
 2012.12.23 RSウイルス猛威、乳幼児注意 「高齢者も警戒を」
 2012.12.24 老いてさまよう:鳥かごの家から 1・高齢者囲い込み
 2012.12.24 老いてさまよう:鳥かごの家から 2・「自宅」扱い、責任不在
 2012.12.24 老いてさまよう:鳥かごの家から 3・リハビリもできず
 2012.12.24 老いてさまよう:鳥かごの家から 4・話し相手もなく
 2012.12.24 老いてさまよう:鳥かごの家から 5・介護選択肢なく
 2012.12.24 老いてさまよう:鳥かごの家から 6・誰とも交わらず
 2012.12.24 老いてさまよう:鳥かごの家から 7・制度のはざまで
 2012.12.24 老いてさまよう:鳥かごの家から 8・とにかく住まいを
 2012.12.26 福島の子供に肥満急増、原発避難で運動不足か
 2012.12.26 社会福祉法人に改善命令 20年超不正と熊本市
 2012.12.27 障害者雇用:法定雇用率達成 県内対象企業、69.4%の318社 2年連続全国1位 /佐賀
 2012.12.28 ノロウイルス感染か、2人死亡 東大阪の老人ホーム
 2012.12.28 高校生が知的障害者?に嫌がらせ 動画をLINEに投稿
 2012.12.28 給付費不正受給:障害福祉2事業所、県指定取り消しへ /和歌山
 2012.12.29 ノロ院内感染か、入院患者4人死亡…99人症状
 2012.12.29 民間ハンセン病療養所「待労院」が閉所へ
 2012.12.29 30人が下痢などの症状 ノロウイルス検出 京都・南丹の宿泊施設
 2012.12.29 ノロウイルス8人感染、1人死亡 松山の病院
 2012.12.30 横浜ノロ感染、発症105人に 市が病院を立ち入り調査
 2012.12.30 兵庫・姫路の飲食店で8人食中毒 6人からノロウイルス検出


■2012.12.3  ニート、発達障害者を戦力に 大阪府内で取り組み進む
就労や就学をしていないニート状態の若者や、コミュニケーションなどが苦手な発達障害者たち。いざ就職をしようとすると企業側から敬遠されることも少なくない。しかし、一方では力の生かし方次第で戦力になりうると、その手法を企業関係者らに発信する取り組みも始まっている。大阪で進む直近の動きを追った。

■一緒に考えよう

「ミスは発達障害だからするのではなく誰でもする。あなたにミスをしやすい特性があるのなら、周りの人がどうすればいいのかを一緒に考えよう」

知的障害者の入居施設に勤める看護師の元村祐子さん(42)は、上司の言葉に胸が熱くなったという。

臨機応変の対応ができない▽一度に多くのことを言われても覚えられない−。こうした特性から38歳の時に広汎性発達障害と診断された元村さん。

職場ではサポートの手法が検討され、人からの指示を元村さんがメモする際、一つのメモが終わらないうちに次の指示は出さない▽指示内容の優先順位は明確にする−などの決まりを設けた。

その結果「とても働きやすく」なり、職場のサポートに報いようと「自分のできることを全力でやりたい」と元村さんは話す。

11月27日に大阪市内で開かれたセミナーの一幕。発達障害者自身が働きやすい職場について企業関係者らに語った。大阪府委託事業の一環でNPO法人発達障害をもつ大人の会(大阪市福島区)が実施。発達障害と企業の“懸け橋”となる活動をしようと、雇用側の理解促進、本人の特性理解に努めている。

広野ゆい代表は「発達障害に対応できる職場環境は、誰もが働き続けられる環境」と訴える。

■ノウハウを共有

ニートのうち働く意志を持って行動する若者を「レイブル(遅咲き)」と呼び、大阪府が支援団体や企業らと連携して行う就労支援事業「大阪一丸」では、働きづらさがある若者の多くに離職経験がある点を踏まえ、企業や個人が実践している「働きやすい職場環境づくり」を発信していく事業に乗り出す。

事業受託するNPO法人スマイルスタイル(大阪市西区)の塩山諒代表は、ニート状態の若者の雇用について「ノウハウやメリットがいるものの、それが世の中に出ていない」と指摘。「次世代ワークスタイル研究所」と称して実践者を招いた講演を開き、内容をホームページで公開する予定で、「全国の企業が共有できるようにしていきたい」という。

第1回は11日に大阪市住之江区の大阪府咲洲庁舎で、お好み焼き専門店で知られる千房の中井政嗣社長を招いて開く。同社が取り組む元受刑者の採用に関する仕組みづくりなどについて話を聞く。

■2012.12.4  有老ホーム・訪介事業所の運営会社が破産- 東京
東京都大田区で有料老人ホームを運営していた「株式会社ファミリーホーム・サン」(金子くみ子代表)と訪問介護事業所を運営していた「有限会社ファミリーホーム・サン」(同)が破産手続きを開始していたことが分かった。開始は11月14日付で、帝国データバンクによると、負債総額は2社合計で約2億8840万円。

都が2008年に、株式会社ファミリーホーム・サンが運営していた有料老人ホームを実地検査したところ、入居者に必要な身体拘束を行う際に不可欠な書類を作成していなかったことなどが発覚した。改善を命令したが、同社はこれに応じず、事業廃止届を提出。翌年6月に受理された。当時残っていた9人の入居者については、区がその転出先を手配した。
 
また、有限会社ファミリーホーム・サンの訪問介護事業所は、人員基準違反や介護報酬の不正請求などを理由に、08年11月24日付で指定を取り消されていた。

■2012.12.4  両陛下、京都市の障害福祉事業所を訪問
天皇、皇后両陛下は4日、京都市の障害福祉事業所「京都太陽の家」を訪問された。

障害者に働く場を提供し、自立した生活を支援する施設で、1986年に制御機器大手のオムロン(京都市)の協力で設立された。両陛下は、制御盤などに使用されるソケットの生産ラインを視察。車いすの男性の作業を、皇后さまは体をかがめて見つめ、「よい仕事をなさってね」と励まされていた。

■2012.12.4  ノロウイルス:大阪で集団感染、入院患者2人死亡
大阪府は4日、同府大東市内の医療機関で入院患者や職員ら計48人が嘔吐(おうと)や下痢の症状を訴え、うち入院患者の女性(88)と男性(76)の2人が死亡したと発表した。死亡した女性を含む発症者6人からノロウイルスを検出。府は医療機関内での集団感染とみているが、死亡との因果関係は不明という。

府によると、先月27日に入院患者の1人に症状が出始め、2日までに入院患者39人と職員9人が発症。死亡した女性は先月29日に発症して30日に心不全で、男性は1日に発症して2日に誤嚥(ごえん)性肺炎でそれぞれ死亡した。他の患者や職員は快方に向かっているという。

■2012.12.5  豊岡会2病院、指定取り消しで譲渡へ- 来年3月1日付、不正請求計33億円
東海北陸厚生局は3日、医療法人豊岡会(愛知県豊橋市)が運営する「岡崎三田病院」(同県岡崎市、医療療養型162床、介護療養型60床)と、「はまなこ病院」(浜松市、医療療養型116床)に対し、来年3月1日付で保険医療機関指定を取り消すことを発表した。いずれも「療養病棟入院基本料2」の施設基準要件である看護要員について、故意に虚偽の報告をしていたというもの。厚生局の発表では、不正請求額は保険者負担分だけで計20億7000万円超。法人の調査では、患者負担分を入れて33億円に上る見込み。同法人はこの日記者会見を開き、指定取り消しの2病院を譲渡する方針を明らかにした。譲渡先は決まっていない。

同法人は昨年、岡崎三田病院、はまなこ病院を含む7施設で約28億4400万円の介護報酬の不正受給が明らかになっている。

今回の不正請求は、東海北陸厚生局静岡事務所が2010年10月にはまなこ病院に適時調査に入った際に発覚。その後愛知の事務所と同時並行で12年1月から5月にかけ、両病院に監査に入った。療養病棟入院基本料2(25対1)の要件では、看護要員1人当たりの月平均夜勤時間数は72時間以下となっているが、勤務実態はこれを超えており、病院は虚偽の体制を報告していた。

不正請求額は、岡崎三田病院が約15億8600万円(対象患者1093人)、はまなこ病院が約4億8900万円(同503人)で、監査対象の期間はそれぞれ、06年7月−11年7月と、06年7月−11年11月。同法人の調査では、不正請求はより長期間にわたっていたことなどから、保険者に対する不正請求は岡崎三田病院で16億2700万円、はまなこ病院で12億7300万円となる見込み。患者負担分を入れると、総額は計33億円になるという。2病院では今年10月から、新規患者の受け入れを停止している。

同法人は、昨年発覚した介護報酬の不正受給では、保険者の加算金を入れると、36億9000万円となる返還金を返済中であるほか、2−6か月の新規利用者受け入れ停止、介護報酬の上限を通常の5割とするなどの行政処分を受けている。

■2012.12.5  津山の老人福祉施設から石綿 6日以降、立ち入り禁止に
津山市社会福祉協議会は5日、同市皿の津山老人福祉センターからアスベスト(石綿)を含む吹き付け材が見つかり、6日から立ち入り禁止にすると発表した。健康被害は確認されていないという。

11月の調査で1階の回廊天井と天井裏から発見。同センターによると、1989年に除去工事をしたが、含有量などが当時の規制基準に達しておらず、漏れたとみられる。

今後、石綿の空中浮遊濃度などを詳しく調査。飛散防止措置を講じ、利用を再開する。

同センターは鉄骨平屋940平方メートルで、1972年建設。2010年度の利用者は約1万7500人。


■2012.12.5  障害者雇用率:1.59% 全国41位 15年連続、法定率割る /群馬
今年の県内企業の障害者雇用率は1・59%(6月1日現在)で、全国41位の水準だったことが群馬労働局のまとめで分かった。15年連続で法定雇用率(1・8%)を割り込む状況。来年4月には法定雇用率が2・0%に引き上げられることもあり、県は企業や関係団体間のネットワークづくりに乗り出した。

同労働局によると、県内企業の障害者の雇用数は3726・5人(短時間労働者は0・5人で計算)。障害の種別では、身体障害者2725人▽知的障害者886・5人▽精神障害者115人−−だった。前年から133人(3・7%)増加したが、法定雇用率を達成した企業の割合は47・8%にとどまった。

障害者雇用が低調な理由について、県労働政策課は「企業の採用担当者などに、障害者の働くイメージが十分伝わっていないのではないか」と分析。11月20日、企業や特別支援学校、関係機関の約40人を集めてディスカッションや交流を行う「障害者雇用促進セミナー」を初開催した。

参加企業からは「特別支援学校の生徒が、どんな職業訓練をしているか分かった」「他業種の取り組みが参考になった」などの声が寄せられた。同課は「企業や学校などが気軽に連絡しあえる環境をつくれば、インターンシップなど就職につながる機会も増えていくはず」と期待する。

■2012.12.5  食中毒:宝塚のホテルで17人症状 /兵庫
県生活衛生課は4日、宝塚市湯本町の「ホテル若水」で、職泊客3グループの男女17人がノロウイルスが原因の食中毒を発症したと発表した。

同課によると、ホテルを11月30日〜12月2日に利用した426人のうち、27〜90歳の男女17人が吐き気や発熱、下痢などの症状を訴えた。ホテルの食事が原因とみられる。県は、同ホテルの飲食部門を4日から3日間、営業停止処分にした。

■2012.12.6  都が「感染性胃腸炎流行警報」 都立児童福祉施設では集団食中毒
東京都は6日、ノロウイルスなどによる感染性胃腸炎の患者報告数が基準を超えたとして「感染性胃腸炎流行警報」を出した。

都によると、昨週の小児科医療機関の平均患者者数は23・6人にのぼった。同時期の1週間当たりの数としては平成11年の調査開始以来、最多となった。

こうしたなか、都立の児童福祉施設「誠明学園」で11月30日以降、11〜18歳の子供や職員計39人が発熱や嘔吐などの症状を発症。都は6日、ノロウイルスによる集団食中毒と断定した。西多摩保健所は施設で提供した食事が原因としている。

■2012.12.6  補聴器のデコレーションサービス、女性の聴覚障害者らに人気 関西企業も協力検討
補聴器販売の専門店「あいち補聴器センター」(愛知県岡崎市)が、補聴器本体に花柄やビーズなどのデコレーション(飾り)を施すサービスを始めた。アクセサリー感覚で装着できるのが特徴で、補聴器に抵抗を感じる聴覚障害者の人気を集めている。関西でも問い合わせが相次いでおり、宣伝・広告面などで新事業に協力を検討している関西企業も出てくるなど、反響を呼んでいる。

 「隠すのではなく、格好よく見せられる補聴器を作りたかった」

昨年6月にサービスを始めた同店の天野慎介店長はきっかけについて、こう話す。ヒントは、携帯電話をビーズやアクリルガラスなどで装飾するデコレーション。顧客から注文を受けて約1週間、補聴器を預かってネイルサロンに外注するシステムで、花柄や動物などのデザインをオーダーメードできる。

すでに女性を中心に4〜80歳代の30人以上がサービスを活用。現在は愛知県内の利用が多いが、関西からの問い合わせも増えつつあり、関西企業数社がサービスに着目してPRの協力などを検討しているという。

補聴器をつけることに抵抗を感じる視覚障害者は少なくないといい、天野店長は「補聴器をつければ多くの音に触れることができ、言語の習得につながる。しかし周囲から見られることを意識して、補聴器の装着を拒む子供もいる」と指摘する。

補聴器装着の“外見”の問題を解消するため、国内ではこれまで補聴器の小型化に向けた開発が進んできたが、「おしゃれ」なデザイン性を追求することはなかったという。

同社は、補聴器のデコレーションの知名度を高める取り組みも本格化。補聴器の模型を使って、マニキュアやシールなどでデザインを体験できるイベントを開催しており、来年は大阪での開催も検討している。

天野店長は「将来的に補聴器が眼鏡のように、ファッションの一部として受け入れられるようにしたい」と話している。

料金はデザインを施す面積によって変わり、千円〜3千円(送料別)。

■2012.12.6  損害賠償:デイサービスで転倒、将来の介護費など832万円支払い命令 /青森
老人デイサービス施設で入浴中に転倒し、介護老人保健施設に入所せざるを得なくなったとして、弘前市の女性(92)が同市の事業者を相手取り、将来の介護費用など損害賠償約1480万円を求めた裁判の判決が5日、青森地裁弘前支部であった。森大輔裁判官は事業者に転倒防止義務違反を認め、将来の介護費用の6割分を損害と算定するなど計832万円を支払うよう命じた。

判決によると、女性は右足骨折で歩行が不自由だった08年4月から入浴介護サービスを受けた。09年3月末、浴場で介助者が目を離したすきに車椅子に乗り移ろうとして転倒、左足を骨折した。森裁判官は、自立歩行が困難だった原告が転倒事故がなくとも入所介護を必要とする可能性を考慮し、将来の介護費用は「6割を転倒事故による損害」と認定、平均余命から約260万円と算出した。

■2012.12.6  難病患者への福祉サービス、まず130疾患 厚労省
厚生労働省は6日、2013年4月から施行される障害者総合支援法の障害福祉サービスの対象として、パーキンソン病などの難病130疾患と関節リウマチの患者を加えることを決めた。市町村が日常生活に支障があると認定すれば、食事や入浴などの介護が受けられる。同日開かれた厚労省の専門家委員会で了承された。

身体障害者手帳を持っている難病患者はこれまでも障害福祉サービスを受けられたが、症状が安定せずに手帳の交付を受けられない患者もいた。

厚労省は現在、難病患者に対する医療費助成の見直しを進めており、現行の56疾患から300疾患以上に対象を広げる方針。新たな医療費助成の範囲が決定すれば、これに併せて障害福祉サービスの対象見直しも検討する。

6月に障害者自立支援法が改正され、障害者総合支援法に名称変更。難病患者も障害者の範囲に加えられた。


■2012.12.6  長崎新聞連載記事が本に 累犯障害者の「声」拾う
長崎新聞社は、福祉の支援を受けられず罪を繰り返す「累犯障害者」や家族、司法や福祉の関係者らに取材し、現場の声をまとめた「居場所を探して〜累犯障害者たち」を出版した。

長崎新聞は昨年7月から7部62回にわたり、長崎県雲仙市の社会福祉法人「南高愛隣会」で、累犯障害者を刑務所ではなく福祉の場で更生に導く先駆的な取り組みが行われていることを中心に取材し連載記事を掲載。2012年度の新聞協会賞を受賞した。

本では、記事を収録するとともに、連載終了後の動きをまとめた1章を加えた。

328ページ、1680円。問い合わせは長崎新聞出版室、電話095(844)5469。

■2012.12.6  障害者虐待で調査 西東京の施設 都「不適切な行為把握」
西東京市の知的障害者施設で入所者への暴力、罵声が続いているとの通報を受け、都と西東京市は施設職員らへの聞き取り調査を始めた。都は近く、施設側を指導する。都の担当課長は「不適切な行為を把握している。人権意識に欠ける面がある」と話している。
 
問題になっているのは、社会福祉法人が運営する定員五十人の知的障害者更生施設。虐待発見者に自治体への通報を義務づける障害者虐待防止法(十月施行)に基づき、関係者が十一月二十七日に都と市に通報、受理された。
 
都障害者施策推進部は市と先月二十九日から立ち入り調査を始め、関係者に事情を聴いている。都によると、不適切行為には命令口調や罵声、暴力を含むさまざまなレベルがあるとみており、調査結果が出次第、適切に対応するという。
 
施設側の担当者は取材に「すべて弁護士に任せているのでノーコメント」と語った。

■2012.12.7  入所者殴り骨折させた容疑で介護福祉士を逮捕
長崎県警は7日、身体障害者向け施設の入所者を殴って重傷を負わせたとして傷害容疑で、長崎県島原市、介護福祉士金子修容疑者(29)を逮捕した。

男性は骨折などのけがを繰り返しており、県警は金子容疑者が日常的に虐待していた疑いもあるとみて調べている。県警によると、金子容疑者は容疑を否認している。

逮捕容疑は、2007年12月14日午後5時40分ごろ、社会福祉法人「幸生会」が運営する島原療護センター(島原市)で、体に障害がある寝たきりの男性(76)の介助中に右腕を殴って骨折させた疑い。

県警によると、今年秋ごろ、被害者の関係者から「虐待の疑いがある」との相談を受け、捜査していた。男性は体にあざができたり、骨折したりすることが頻繁にあったという。県警は他の入所者にも暴行していなかったか調べる。

長崎県監査指導課によると、今年に入って虐待の情報が入ったため、同課が10月から特別監査している。施設の関係者は「事実関係を確認できていないので、今はコメントできない」と話した。

■2012.12.7  低収入ほど野菜不足…厚労省栄養調査
世帯の収入が少ないほど生鮮野菜の摂取量も少ない――。そんな傾向が6日、厚生労働省が発表した2011年の国民健康・栄養調査で明らかになった。

厚労省は、収入格差が日々の食生活に影響を与えている可能性があるとみている。

調査は11年11月、東日本大震災の被害が集中した岩手、宮城、福島3県を除く44都道府県で実施。回答した3021世帯を、高収入層の「600万円以上」、中収入層の「200万円〜600万円」、低収入層の「200万円未満」に3分し、生鮮食品の野菜や肉などの1日当たりの摂取量を集計した。

その結果、野菜は、高収入層が男女とも283グラムだったのに対し、中収入層は男性266グラム、女性271グラム、低収入層は男性259グラム、女性267グラムにとどまった。

■2012.12.8  ノロウイルス変種、全国で検出 流行拡大の恐れ
感染性胃腸炎の原因となるノロウイルスで、遺伝子が変異したタイプが全国で検出されていることが、新潟県や国立医薬品食品衛生研究所などの調査で分かった。7日に発表された国立感染症研究所(感染研)の調査では6週連続で患者が増加。免疫をもたない人が多いとみられ、流行の拡大が懸念されている。

感染研によると、全国3千カ所の小児科で最新の1週間(11月19〜25日)に確認された感染性胃腸炎の患者数の平均は13.02人。2週連続で10人を超えた。九州では宮崎や鹿児島など平均20人を超える県も複数あった。多くはノロウイルスが原因とみられる。

変異したウイルスは、10月に新潟県内の2カ所の福祉施設であった集団感染の患者から見つかった。その後、10月までに新潟に加え、北海道、東京、千葉、大阪、広島、島根、大分、沖縄の計9都道府県で確認された。8月には香港でも見つかり、世界的に広がっている可能性もある。


■2012.12.8  誤嚥性肺炎を防げ 篠山で介護者向け講習会
脳血管疾患に代わり、日本人の三大死因の一つとなった肺炎。高齢化を背景に今後も増え続けることが懸念される。うち半数以上を占める誤嚥(ごえん)性肺炎について、兵庫医科大ささやま医療センター(篠山市)が介護者を対象にした講習会を開催。その内容から、家族や介護サービスを担う施設の職員が知っておくべき誤嚥の仕組み、肺炎の対策をまとめた。

同センターは、地域でリハビリ支援の中核となる「圏域リハビリテーション支援センター」の一つ。近年、病気や加齢による摂食・嚥下(のみ込み)障害への取り組みが課題となっているため、介護・福祉関係者向けの講習会を開いている。

胃ろうでも 誤嚥性肺炎は誤って気道に入った食べ物などに含まれる細菌に、肺が感染することで生じる。ただ、問題となるのは食事に伴う誤嚥だけではない。唾(だ)液(えき)、胃から逆流した食べ物などの誤嚥もある。「(胃ろうなど)経管栄養の患者さんも誤嚥性肺炎になる」と同センターリハビリテーション科の内山侑紀医師。

一方、健康な人でも誤嚥は起こるが、肺炎にはならない。吐き出す能力や体力、免疫力など体の防御力が十分にあるからだ。内山医師は「普通に食べてこられた高齢者が肺炎になった場合、唾液を夜間に誤嚥したか、免疫力低下や全身状態の悪化など『予備能』(病気の時などに発揮される体の最大能力)が破綻した可能性がある」と話す。

また、肺は構造上、下の部分(下葉)は後ろ(背中側)の方にあり、寝ていると重力で肺に入った物は後ろにいく。内山医師は「誤嚥性肺炎を疑うときは、背中から肺の音を聞くこと」とアドバイスした。

嚥下反射鈍く 誤嚥性肺炎の対策は、食事に伴う誤嚥を防ぐ▽食事以外での誤嚥対策▽防御力を高める▽早期発見・治療‐に分けられる。嚥下障害がある人を担当する言語聴覚士ら専門職によるリハビリのほか、自宅や介護施設でできることに飲食物の形態や体位の工夫がある。

お茶や水などさらさらした飲み物は喉を通るスピードが速いため、気道を閉じる「嚥下反射」が鈍くなっていると、誤嚥しやすい。固形物では、ゆで卵や焼き芋、焼き魚など口の中でばらばらになるものは誤って気道に入りやすい。

液体にはとろみを付けたり、ゼリー寄せやテリーヌなど塊で流れるようにしたりといった形態の工夫で改善できるケースも多い。「嚥下の反射は一瞬の反応なので、水と牛乳のわずかな粘度の差でも飲み込みやすさに違いが出る」と同センターリハビリテーション室の言語聴覚士、福岡達之さんは説明する。

また、とろみのつけ方を介護者の間で統一することも大切だ。言語聴覚士の荻野直子さんは「『ポタージュ状にして』などと言葉のイメージに頼ると、人によってかなり粘度が違う」と指摘。「とろみ剤の量を一定にしたり、市販されている粘度の測定板を利用したりするなど、なるべく数値で表してほしい」

また、体位を工夫すれば、重力で食べ物を食道に流しやすくなる。一般的には背もたれの角度は約30度で、やや顎を引く姿勢が誤嚥しにくいといわれている。

初期のサイン 食事以外では、口腔(こうくう)ケアも肺炎の防止に役立つ。誤嚥性肺炎の原因となる細菌は、もともと自分の口の中にいる細菌がほとんど。口の中の掃除によって肺に到達する細菌も減らせる。

体の防御力を高めるには栄養に気を配ることに加え、水分補給も重要だ。「たんを柔らかく、出しやすくする」と内山医師。

せきも、誤嚥に対する防御力の一つ。出しやすくするには姿勢を整えることが基本だが、自力で整えられない人は椅子に座った状態から前傾姿勢で下を向き、テーブルにひじを付けて、足はしっかり床に降ろすと出しやすいという。

早期発見のためには、肺炎で着目すべき症状が高齢者と若い人では違うことを頭に入れておきたい。

一般的にはせき、たん、発熱のいずれかで気付く。これに対し、高齢者は感覚が弱っているためにせきが出ないことや、体の水分が足りないためにたんが出ず、熱を出す体力もないケースがある。元気がない▽食欲不振▽意識の低下▽失禁や転倒‐などが肺炎の初期のサインになる。

内山医師は「普段と比べて何か様子が変わったり、ちょっと変だと思ったりしたら、すぐに医療機関に相談してほしい」と呼び掛けている。

■2012.12.8  民家床下から女性遺体=義母ら遺棄容疑で逮捕―福岡県警
北九州市戸畑区菅原の民家床下から7日、住人の女性(40)の遺体が見つかり、福岡県警捜査1課などは同日、死体遺棄容疑でこの家に住む義母の看護助手吉村久美子(59)、娘の林麻衣子(35)両容疑者を緊急逮捕した。容疑を認めている。

逮捕容疑は9月下旬ごろ、自宅1階床下の土中に女性の遺体を埋めた疑い。

吉村容疑者は11月1日、「義理の娘が9月末に家出した」と捜索願を出した。説明に不審な点があり追及したところ遺棄を認め、供述通り遺体が見つかった。同課は身元確認を急ぐとともに、司法解剖して死因を調べる。 

■2012.12.10  介護福祉 「仕事に見合った待遇得られる施策を」
11月半ば、熊本市のホテルで開かれた福祉施設の合同就職面接会。グループホームへの就職が第1希望という女性(33)=菊池市=の姿があった。

大学で社会福祉士の資格を取得し、大阪の高齢者施設に就職したが、殺伐とした職場だった。「チェッ、またトイレに行くんか」。高齢者の世話をしながら舌打ちを繰り返す職員。聞くに堪えない差別発言。「ここはアカン」と、ベテラン職員でさえ次々に辞めていった。

やりがいのある職場を夢見て就職したが、心が折れ、通勤できなくなった。今回の就職活動は、故郷でもう一度やりがいを見つけるための第一歩だという。

県内の福祉分野の有効求人倍率は1・36倍(10月末現在)。景気低迷の中、売り手市場が続く。ハローワーク熊本の志賀哲朗・介護労働専門官は「介護職の離職率が高く、求人が多いため」と説明する。

介護職の離職者を対象にした調査では、「利益優先経営になじめない」「思っていた介護と違う」などと理想と現実のギャップや少ない休日、低賃金などが辞めた理由の上位を占める。

民主党は2009年衆院選のマニフェスト(政権公約)で「介護労働者の賃金4万円引き上げ」を盛り込み、介護職の月給を平均1万5千円引き上げる「処遇改善交付金」を新設。一時的に給与は上がったが、同交付金は11年度で廃止された。

「もちろん賃金は大事ですが、次の就職先は利用者と職員の笑顔が絶えないところがいい」。女性の切実な願いだ。

日本認知症グループホーム協会県支部の高橋恵子支部長は「夜間は1人で50人を介護する施設もある」と一部の福祉現場の現状を憂う。ただ、「介護はやりがいがある仕事。政治には、質の高い仕事に見合った待遇が得られるような施策を求めたい」と訴える。

これから高齢化が進むにつれ、より多くの介護労働者が必要になる。厚生労働省は11年の149万人に対し、25年にはその1・5倍以上が必要との見通しを示している。

賃金引き上げの政権公約は頓挫した格好となり、介護現場には失望が広がった。今回はどの政党が高齢者が安心して暮らせる社会の青写真を示してくれるのか。「まだ全然見えない」。判断材料の乏しさに、女性は投票先を決めかねている。

■2012.12.11  ノロウイルス?集団感染 社会福祉施設で死者 大阪
大阪府は11日、同府門真市の社会福祉施設でノロウイルスが原因とみられる感染性胃腸炎が集団発生し、入所者の女性(91)が死亡したと発表した。ほかに入所者9人と職員10人が嘔吐(おうと)や下痢の症状を訴えたが、いずれも快方に向かっている。

府によると、同施設では11月29日から発症が相次ぎ、3人の便からノロウイルスが検出された。女性は12月7日に発症し、翌日亡くなった。死因は不明という。


■2012.12.11  ロボットで排せつ処理 大和ハウスが福祉事業
大和ハウス工業の樋口武男会長は十日、大阪市内で開かれた関西プレスクラブの会合で講演し、寝たきりの高齢者などの排せつを自動処理するロボット「マインレット爽」の販売を始めることを明らかにした。

大和ハウスは、ロボットを開発した介護機器メーカーのエヌウィック(仙台市)と販売代理店契約を結ぶ一方、同社に一億円を出資して約14%を握る筆頭株主になった。来年一月七日から、福祉用具のレンタル事業者向けに一台五十九万八千円で販売する予定。

一般利用者は、ロボットを事業者からレンタルする。介護保険の適用を受けられ、手ごろな価格で使える見通し。介護する人の負担を大幅に軽減できるとしている。

利用者は、おむつのようなカバーを装着。センサーが排尿、排便を感知すると、自動的に吸引、温水シャワーで洗浄し、温風で乾かす。排せつ物のタンクを取り出し、トイレで流せる。においはほとんど漏れないという。

販売目標は年三百五十台。問い合わせは、大和ハウスのロボット事業推進室、フリーダイヤル(0120)556308

■2012.12.11  障害者も地域で共生 栃木で福祉講演会
障害者が普通に地域で暮らせる社会などを考える講演会(市、市社会福祉協議会、県知的障害者育成会栃木支部主催)が8日、市大平健康福祉センター(ゆうゆうプラザ)で開かれ、市民約160人が参加した。

同講演会は、来年4月の障害者総合支援法施行を前に、将来的な入所施設の在り方や支援内容について、より多くの人に考えてもらう契機とすることなどが狙い。

新潟県上越市で社会福祉法人「りとるらいふ」を運営する片桐公彦理事長が講演した。

片桐理事長は「地域との共生」を掲げた総合支援法の付帯決議「小規模入所施設」のデザイン案として「地域拠点となる多機能型」を提示。定員25人程度の規模としながらも、通所や指定相談支援、居宅介護といった各種事業で病院や学校、地域住民などとつながること。虐待時のシェルターや在宅の緊急支援も含め、そこに暮らす多くの人たちを支える多様な機能を持つ「地域のセーフティーネットを構築する」との考え方を示した。

さらに、障害者が施設の中だけで生活するのでなく、当たり前に地域の構成メンバーとして、行事などに参加できることの重要性を強調した。将来的な障害者福祉の在り方についても触れ「障害者と考えず、困っている人への手助けという意識を持つことが大切だ」などと訴えた。

■2012.12.11  65歳以上の外来患者が最多 23年調査
65歳以上の1日当たりの外来患者が平成23年は332万9900人と推計され、前回20年調査から約25万人増えたことが、厚生労働省の患者調査で分かった。統計が現在の形になった昭和59年以降で最多。65歳以上の1日当たり入院患者は91万4900人で、前回からやや減少した。

厚労省は「医療の進歩や在宅医療を希望する患者が増えたことなどで、入院から外来への振り替えが進んでいるのではないか」としている。

調査は3年ごとに実施。病院と診療所計約1万3千施設を対象に昨年10月の特定日の入院、外来患者数などを調べ、全国の状況を推計した。東日本大震災の影響で、宮城県の5市町と福島県全域の医療機関は調査対象から除いた。

それによると、1日当たりの外来患者総数は726万500人で、前回から39万5500人増えた。うち65歳以上での増加分が25万3100人だった。

一方、昨年9月の1カ月間に病院から退院した患者の平均在院日数は34・3日。都道府県別では、高知が54・7日と最も長く、佐賀52・1日、山口52・0日の順。最短は神奈川の25・5日で、長野は26・8日、宮城は27・4日だった。

■2012.12.12  2万個のLEDで装飾 白浜の福祉施設
和歌山県白浜町湯崎、サービス付き高齢者向け住宅「ソルマーレ白浜」は、施設の建物やフェンス、庭木などを2万個の発光ダイオード(LED)で飾り付けた。遊園地のような雰囲気を演出しており、クリスマスまで一般公開する。

電飾を施したのは施設の入り口付近の壁面、中庭内に植えたデイゴやヤシの木、通路、建物など。職員3人が4日間かけて準備した。

サンタクロースをかたどったもの、雪が降っているかのように点滅するものなどさまざまな「仕掛け」が工夫されている。白、青、緑、赤、オレンジと色とりどりのLEDがともり、近くを通る人を楽しませている。

施設では玄関付近に「一般公開中」と記した「お知らせ」を掲示している。公開時間は午後5時〜8時。「気軽に入って見てください」と呼び掛けている。

■2012.12.12  新型検査 進歩する技術 体制づくり必要
母親の血液を採取し、血液中のDNA断片から胎児のダウン症候群など染色体異常の可能性を調べる新型出生前検査。国立成育医療研究センター(東京都世田谷区)など一部の医療機関が臨床研究を計画し、注目を集めている。

「新しい出生前検査で、不必要な羊水検査を減らすことができる」

臨床研究の世話人を務める、国立成育医療研究センターの左合治彦周産期センター長は妊婦へのメリットについて、こう強調する。

広がる誤解

確定診断ができる羊水検査は、日本産科婦人科学会の見解で、高齢出産の場合や染色体異常の子供を産んだことがある場合などに限られている。だが、羊水検査は、検査によって300人に1人の流産のリスクがあるとされる。

臨床研究で導入予定の米国・シーケノム社の検査では、陰性と出た場合、胎児が実際にダウン症候群でない確率は99%と極端に高い。臨床研究の対象は、同社の臨床データがある高齢出産などの妊婦が対象で、国内での羊水検査の対象と重なる。新しい出生前検査は妊婦から採血するだけなため、流産のリスクがなく、不必要な羊水検査による流産を減らせると考えられている。

注意したいのが、陽性と出た場合でも実際にダウン症候群でない場合もあることだ。あくまで可能性を調べる検査のため、確定診断には羊水検査や絨毛(じゅうもう)検査を行う必要がある。

また、陽性と出た場合、実際にダウン症候群である確率「陽性的中率」は検査を行った集団の罹患(りかん)率で変わる。胎児の染色体異常は妊婦の年齢が上がるほどその確率も上がる。

左合センター長によると、今回の研究における、予想される陽性的中率は約80〜95%。今回の臨床研究の対象外だが、一般の妊婦の集団では、50%台の可能性もある。

検査をめぐる統計や確率の用語が分かりづらく、一部で「精度99%」との説明や報道がなされ、確定診断との誤解も広がった。

高い関心

新しい出生前検査は、米国などでは既に始まっている。国内では8月下旬、臨床研究について報道されると、医療機関には問い合わせが殺到した。高齢出産が増える中、妊婦の出生前検査への関心は高い。

一方で、国内のカウンセリング体制は不足しており、不十分な体制で検査が行われ、命の選別につながるのではないかと懸念を持つ人も多い。日本ダウン症協会は、検査が一般化しないよう日本産科婦人科学会に要望書を提出。同学会は新型出生前検査の指針案を作成、15日の理事会後に発表する見込みだ。

指針を受けて臨床研究が開始されることになるが、左合センター長は「日本だけが新しい出生前検査の導入を避けることはできないだろう。それならば、臨床研究によってしっかりとした出生前診断の体制をつくる必要がある」と話す。



近い将来、胎児の遺伝性疾患が母体血で診断できるようになるといわれる。国内では、中絶につながる恐れがあるとして、出生前診断の議論は放置されてきた。妊娠の継続と中絶はどう選択されるのか。現状を追った。



臨床研究、十数施設が計画

新しい出生前検査の臨床研究を計画しているのは、国立成育医療研究センターなど十数施設。参加施設は、出生前診断に精通した臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーが複数所属するなど適切な遺伝カウンセリングが行えるとしている。

研究目的は、検査を適切に運用するための遺伝カウンセリングの基礎資料の作成で、米国のシーケノム社の検査を使う。研究対象は、日本産科婦人科学会の見解で羊水検査の対象となる35歳以上の高齢妊婦や、染色体異常の子供を妊娠分娩(ぶんべん)したことがある人。費用は20万円前後が予定されている。

■2012.12.12  ご用心! 今度はサポウイルス 修学旅行生ら91人が京都で集団食中毒
京都市は12日、修学旅行で同市中京区朝倉町のホテル「ウオジ苑」に宿泊した青森県内の高校2年生ら91人が下痢や嘔吐(おうと)などの症状を訴え、便からサポウイルスを検出したと発表した。集団食中毒と断定し、同ホテルに14日までの営業停止を命じた。

市保健所によると、生徒らは今月4〜6日に同ホテルに宿泊、その後症状を訴えた。市と県が検査したところ、生徒ら25人と同ホテルの調理担当者1人からサポウイルスを検出した。

市内では今月上旬、岩手県から修学旅行に訪れていた高校生ら約100人が下痢などの症状を訴え、旅館の食事が原因の集団食中毒と判明。便からノロウイルスが検出されていた。

サポウイルスはノロウイルスと同類で、発症すると下痢やおう吐などを引き起こすが、重症化することはほとんどないという。

■2012.12.12  生活保護受給者、213万3905人 過去最多を更新
9月時点で生活保護を受給している人は213万3905人で、過去最多を更新した。前月より2894人増えた。厚生労働省が12日、速報値を公表した。

これまでに比べ、伸びは緩やかになってきているが、厚労省は「増加が落ち着いたかは、まだわからない」としている。

世帯数は155万7546世帯で過去最多。前月より2543世帯増えた。世帯別では、高齢者世帯が最も多く67万5238世帯、病気やけがをした人が前月より583世帯減って29万8060世帯、働ける世代を含む「その他」が28万5642世帯。

また、東日本大震災の影響で生活保護を受け始めたのは、10月時点で計1425世帯となっており、世帯別では働ける世代を含む「その他」が681世帯で最多。被災地別では、福島県が660世帯、宮城県474世帯、岩手県146世帯となっている。


■2012.12.12  温泉施設からレジオネラ菌 埼玉、4人が下痢などの症状
サイボクハム(埼玉県日高市)は11日、同社が運営する温泉施設「まきばの湯」から、発熱などの症状を引き起こすレジオネラ菌が検出されたと発表した。

同社と県狭山保健所によると、11月下旬から12月初めにかけて、まきばの湯を利用した県内や東京、大阪の50〜80代の男女4人が発熱や咳、下痢などの症状を訴え、全員が入院中という。保健所が1日に湯を採取して調べたところ、基準を超えるレジオネラ菌が検出された。同社は6日から営業を自粛している。

サイボクハムは「消毒方法や入浴の仕方、施設そのものに問題がないかなど原因を究明したい」としている。まきばの湯は2004年にオープン、年間約30万人の利用客がいる。泉質にこだわり、一般的な塩素消毒ではなく、銀イオンで消毒していたという。

■2012.12.12  愛知の旅館で14人食中毒 8人からノロウイルス
愛知県は12日、同県南知多町日間賀島の旅館「癒しの宿 風車」で夕食を食べた愛知、岐阜、静岡、兵庫4県の10〜69歳の男女14人が下痢や腹痛などの食中毒症状を訴え、うち8人からノロウイルスが検出されたと発表した。全員が快方に向かっている。県は同日、旅館を営業禁止処分にした。

県によると、家族旅行などで旅館を訪れ、11月24日にふぐ料理や刺し身などを食べた4グループ計30人のうち14人が25日正午ごろから発症した。

■2012.12.14  ボリショイがブログで福祉施設出身告白
JWPの24日後楽園大会に向けての記者会見が14日、都内で開かれ、コマンド・ボリショイが自らのブログで、初めて“女版タイガーマスク”ともいえる経歴をつづったことを告白した。

ブログで、ボリショイは大阪・淀川区十三の「児童養護施設・社会福祉法人博愛社」の出身であること明かし、12日には同施設を訪問したという。来年2月17日に地元で興行を行うボリショイは「今回、博愛社出身ということを初めて公表しました。これで子供のころお世話になった先生と一緒に写真を撮れます」と話した。

■2012.12.14  ダウン症候群 育てる決断支える社会に…
「母体血中の胎児情報がトリソミー以外のDNA情報に広がる日が来る。どんなDNAの人なら生まれてきていいのか、という問いを立ててください」

11月13日、日本産科婦人科学会の公開シンポジウムで、日本ダウン症協会の玉井邦夫理事長は訴えた。「ダウン症に関するさまざまな知識が、まだまだ世の中に届いていません」

母親の年齢が上がれば、染色体異常の赤ちゃんが生まれる確率は高くなる。だが、もともと生まれてくる赤ちゃんは誰でも先天異常の可能性がある。生後間もなく分かるような先天異常は出生児の約2%。そのうち、染色体異常は約5%にすぎないという。

ゆっくり発達

ダウン症候群は1866年、イギリスのダウン医師が臨床例を報告したことで、その名前が付いた。一般的に21番目の染色体が3本あることで起こる。

東京逓信病院の小野正恵小児科部長は「ダウン症候群は生まれてくる染色体異常の中では頻度が高い」と指摘する。どの夫婦にも起こる可能性がある先天異常だ。近年の高齢出産の増加に伴い、現在は600人に1人程度と推定される。

筋肉の緊張が弱く運動発達がゆっくりで、歩き始めは通常より平均1年程度遅れる。小柄で顔立ちに特徴があり、目尻はつり気味。小野部長は「もちろん、ご両親にもよく似ていますよ」と話す。

心臓の合併症を持つことが多く、消化管奇形などもある。生命予後は合併症の重さに左右されるが、「最近は心臓手術も積極的に行われるようになり、生命予後が良くなっている。合併症がなければ60代の方もいます」

知的発達はどうか。小野部長は「ゆっくりと成長します。個人差が大きく、うまく話せない子もいれば、大学に進学した子もいます。成人後は身の回りのことができ、簡単な作業ならできる人も多いです」。生活習慣病や認知症の症状が早く出るという報告もあるが、積極的な支援や治療がされている。得意な能力を伸ばして活躍する例もある。今年のNHK大河ドラマ「平清盛」の題字を書いた書家、金澤翔子さん(27)はダウン症候群だ。

検査をどう使うか

障害を持つ子供を育てるという決断は、社会や福祉制度の充実の有無に左右される側面が大きい。小野部長は「親だけで子供の一生の面倒を見ることはできない。完璧な人間はいないし、ましてや障害を持った子供が生まれたら、社会が支えていくのは当然だ」と指摘する。

治療のできない先天異常が分かる出生前検査は、障害者の排除につながるという懸念があり、国内では長い間、倫理的影響を危惧し、積極的な導入が控えられてきた。

一方で、欧米では、出生前検査は希望する妊婦が状況に応じて選択できる国も多い。技術の進歩で、出生前に分かる病気や障害は増えていくだろう。

国立成育医療研究センター(東京都世田谷区)の左合治彦周産期センター長は「医療技術として確立されている以上、適応条件を満たした出生前検査を希望する妊婦がいたら断ることができるのか。検査をどう使っていくか、社会として議論していくことが必要だ」と話している。

障害受け入れる準備期間に

出生前診断をめぐり、ダウン症の当事者や家族は複雑な思いを抱えている。

3人の子供の母、原香織さん(34)=東京都渋谷区=は、長女の未来美(みくみ)ちゃん(8)がダウン症候群だ。妊娠7カ月でダウン症候群だと分かったが、「障害を受け入れる準備期間になって良かった」と話す。しかし、未来美ちゃんの弟や妹の出産では出生前診断を受けなかった。

「障害を持って生まれてもこんなにかわいいんだ、と未来美を育てて分かりました。次に生まれてくる子供に何かあったとしても全部受け止めたいと思った」

未来美ちゃんは特に重い合併症もなく、元気に小学校の特別支援学級に通っている。原さんの夫や両親など家族の協力も得られている。原さんは「もし、未来美の知的障害や合併症が重かったり、家族関係が今とは違ったものだったら出生前診断を受けていたかもしれない」と漏らす。

一方、日本ダウン症協会は、検査前の事前説明の充実や、検査が一般化しないよう求めた要望書を日本産科婦人科学会に提出。「障害の有無やその程度と本人および家族の幸・不幸は本質的には関連がない」と訴えている。

■2012.12.14  暴行:医療福祉センター入所者に 容疑で准看護師を逮捕 江津署 /島根
江津署は13日、障害児者支援施設「西部島根医療福祉センター」(江津市渡津町)の入所者2人に暴力を振るったとして、施設職員で准看護師、押越富由紀容疑者(40)=同市都野津町=を暴行の疑いで逮捕した。

逮捕容疑は、11月27日午前11時10分ごろ、同センターの入所男性(53)の頭を平手で1回たたき、翌28日午前11時過ぎにも、別の入所男性(26)の肩をつかんでベットに押し倒すなどの暴行を加えた、としている。2人ともけがはなかった。同署によると、押越容疑者は「たたいたりしていない」と容疑を否認しているという。

同センターは、社会福祉法人・島根整肢学園(木原清理事長)が運営。センター側の調査に対し、押越職員は暴力を加えたことを認めたという。同センターの中寺尚志・院長は13日夕に記者会見し、「多大な迷惑をかけ、申し訳ない」と陳謝した。

■2012.12.15  入所者虐待 栃木県も福祉法人に勧告 「愛と光の会」
運営する精神障害者の福祉施設で入所者を虐待したとして逮捕された東京の社会福祉法人の元理事長が、栃木県内の施設でも入所者などに虐待行為をしていたなどとして、栃木県は法人に対して改善を求める勧告を出した。

勧告を受けたのは、栃木県大田原市で精神障害者福祉施設を運営する東京・荒川区の社会福祉法人、「愛と光の会」。

「愛と光の会」は、千葉県内の施設で入所者への虐待があったとして、先月、元理事長が傷害の疑いで警察に逮捕されている。
このため、栃木県が大田原市の施設に2回にわたって立ち入り調査を行った結果、この施設でも、元理事長が入所者などを平手でたたいたり、暴言をはいたりしていたことが確認できたという。

また、昨年度、施設に入所していた27人に対して、家賃や食費などとしておよそ1400万円を余分に支払わせていたことなども分かった。
このため、栃木県は、14日、この法人に対し、元理事長を施設の運営に関与させないことを含め虐待を防止する体制を整備することや、入所者から余分に受け取った費用を返還することなど改善を求める勧告を出した。

「愛と光の会」は「勧告の内容をまだ承知しておらず、今の理事長も不在のため、コメントできない」と話しています。

■2012.12.15  名古屋市、ノロウイルスで警報 患者200人突破
名古屋市は14日、ノロウイルスが原因で下痢や嘔吐(おうと)を繰り返す食中毒に関して11月に発令した注意報を「警報」に引き上げた。同ウイルスによる食中毒(9月1日〜12月13日)は名古屋市で5件、患者数は213人。同時期で7件、388人だった2006年以来の多さで、市は手洗いや食品の十分な加熱などの徹底を呼びかける。

ノロウイルスはヒトの小腸で増殖し、感染性胃腸炎を引き起こす。中心温度85度で1分以上加熱すれば死滅するものの、「アルコールや逆性せっけんはそれほど効果がない。幼児や高齢の方は特に注意してほしい」(市食品衛生課)。

名古屋市は11月16日にノロウイルス食中毒注意報を発令。12月14日に発令した警報の期間は21日まで。22日以降は自動的に注意報に戻って来年3月末まで効力が続く。


■2012.12.15  広島で1000人超が食中毒 配達弁当でノロウイルス
広島市保健所は14日、ダイヤス食品(山口県宇部市)の広島支社で製造された配達用弁当を食べた企業の社員ら計1052人が下痢や嘔吐(おうと)などの症状を訴え、計10人からノロウイルスを検出したと発表した。保健所はノロウイルスによる集団食中毒と断定、同支社の営業禁止を命じている。

弁当は広島県内で1日あたり約4800食が提供されており、発症がさらに増える可能性もある。

保健所によると、弁当は広島県内の企業や行政機関向けに昼食として配達され、配達先は計285カ所に上る。重症者はいないが、1人が入院。保健所は、潜伏期間の関係から10日か11日の弁当が原因とみている。

■2012.12.17  食中毒:1381人が症状、弁当原因か…ノロウイルス検出
弁当製造会社「ダイヤス食品」(本社・山口県宇部市)の広島支社(広島市安佐北区)が製造した給食弁当が原因とみられる集団食中毒があり、広島市保健所によると16日夕方までに1381人が下痢や嘔吐(おうと)などを発症した。重症者はいないが、患者11人と従業員1人の便からノロウイルスを検出。同支社は10、11日に各約4700食を配達しており、ノロウイルスを原因とした集団食中毒では過去最多に迫る可能性がある。

厚生労働省によると、1000人超の集団食中毒は今年初めて。ノロウイルスによる集団食中毒では、06年に奈良県で製造した仕出し弁当を食べた1734人の発症が最多という。

同市保健所によると、弁当の届け先は主に広島市内の事業所で、発症者は402カ所に及ぶ。10日と11日のメニューのうち、おかずは空揚げ南蛮やキャベツ、ハンバーグ、エビフライなど。13日付で同支社に当面の営業禁止を命令した。

同支社によると、工場の従業員は消毒済みの専用手袋をし、食品以外に触れた場合は取り換えを指導している。幾野彰支社長は「大変つらい思いをさせてしまい、おわびの気持ちでいっぱい」と語った。

■2012.12.17  「エンゼルケア」では、家族の意向に配慮を- CB医療従事者向けセミナー
キャリアブレイン主催の医療従事者向けセミナー「エンゼルケアが分かる!―死後まで看取りをやり遂げるためのポイント―」が15日、東京都港区のキャリアブレイン東京本社で開催され、看護師で作家の小林光恵さん(エンゼルメイク研究会代表)を講師に迎えた。この中で小林さんは、看護師が中心の死後処置でなく、家族と一緒に行うエンゼルケアでは、家族の意向に十分に配慮する必要があると話した。

従来、医師による臨終の告知の後、本人と家族の「お別れの時間」が設けられ、その後、家族が退室し、看護師がチューブ類を外したり、清拭やメイクなどをしてきたが、一部の病院や施設では、「お別れの時間」の後も、家族が部屋に残り、看護師と一緒に、シャンプーやメイクなどを行ったりしている。

小林さんは、エンゼルケアを通じて看取りをやり遂げるためには、家族とのコミュニケーションが重要になってくると指摘した。エンゼルケアを家族が一緒に行うためには、家族への声の掛け方にも工夫がいるという。小林さんは、「家族の方も一緒になさいませんかと声を掛けると遠慮してしまうので、家族の方もお願いしますと言います」と具体例を紹介した。

また、エンゼルケアの時間の大切さについて小林さんは、「家族の方には、その時間が最後なのです。葬儀の方が来れば、もう儀式モードになり、儀式の準備になってしまいます」と強調。その上で、看護師などが、家族が髪を洗ったり、つめを切ったりする作業をサポートする方向がいいのではないかと提案した。

小林さんは、年間死者数が急増する多死の社会で葬儀に対する考え方が大きく変わる中で、エンゼルケアの場面が一層重要になると予想している。小林さんは、「不況により、葬儀にお金を掛けたくないとして、通夜や告別式などの儀式を行わず、自宅または病院から直接、火葬場に運び、火葬にする『直葬』を選ぶ傾向が急激に強まっています。エンゼルケアは、本人と家族が濃厚に接する貴重な時間になり、グリーフ(悲嘆)ケアの観点からも大事になります」と話した。

■2012.12.18  声が出なくても、触って話せる文字パッド アプリ発売へ
福祉用具販売のジャパンアイテムコーポレーションは、病気などで声を出しにくい人の代わりに発声してくれるiPadとiPhone向けアプリ「話せる文字パッド」を19日に売り出す。50音順に並んだひらがなで短文を作り、再生ボタンに触れれば声が流れる。税込み1千円で、米アップルのサイトで購入できる。

■2012.12.18  ノロ、北海道内でも急増…集団感染70件
今冬、保育所や病院などでノロウイルスの集団感染が相次いでいる。10月以降に道内で発生した10人以上の集団感染は今月14日現在で70件あり、計1744人が下痢や嘔吐(おうと)の症状を訴えた。

道保健福祉部では「例年より速いペースで集団感染が起きており、嘔吐物の適切な消毒や、こまめな手洗いで感染予防を」と呼び掛けている。

道などによると、10月以降の集団感染は保育所や病院などでも発生しており、昨年10〜12月の3か月間の発生件数(8件計189人)を大幅に上回っている。

今年11月中旬には、十勝地方の保育所で園児58人と職員15人の計73人が下痢や嘔吐などの症状を訴え、今冬最大規模の集団感染となった。帯広保健所の調査で「嘔吐物の消毒の際に使用する次亜塩素酸ナトリウムの濃度が薄かったため、感染が拡大した可能性がある」と判明した。同保健所によると、ノロウイルスは感染力が強いため、アルコールによる消毒は効かず、次亜塩素酸ナトリウムが効果的という。

また、12月上旬には、小樽市の病院で患者や職員計50人の集団感染が発生。入院受け入れを一部制限する事態になった。小樽市保健所は「嘔吐物に対する処置はしていたと思うが、手が回り切らなかったことで、感染拡大につながった可能性もある」としている。

ノロウイルスによる感染性胃腸炎では、2006年10〜12月の3か月間に、道内で集団感染が181件発生して計6021人が症状を訴える大流行があった。

道保健福祉部では「感染を予防するために手洗いをこまめにし、適切な濃度の次亜塩素酸ナトリウムによる消毒をしてほしい」としている。

■2012.12.19  特養入所者に理容奉仕 高知の父娘ら
美しい髪形で新年を迎えてもらおうと、高知市春野町東諸木の特別養護老人ホーム「はるの若菜荘」で18日、同市伊勢崎町の理容師中山明さん(73)が娘の竹嶋奈巳さん(43)と夫、毅さん(49)の3人で散髪ボランティアを行った。

なじみ客の職員から、入所者がなかなか理髪店に行けないことを聞き、1996年からほぼ毎年実施。前髪の長さや好みのヘアスタイルなどを聞き取り、約30人の髪を整えていった。

森茂子さん(93)は鏡で仕上がりを確かめると、「髪を切るのは3か月ぶりで、すっきりした。きれいになった姿を家族にも見てもらいたい」と喜んだ。中山さんは「身だしなみに気を使うのは、年齢に関係ない。おしゃれを楽しめば元気になれる」と話していた。

■2012.12.19  ドクターヘリ活躍 想定超える出動件数 鹿児島
医師が初期治療を行いながら患者を搬送する県のドクターヘリが、運航を開始して間もなく1年になる。昨年12月26日の運用開始から今年10月末まで約10か月間の出動件数は、県の年間想定の400件を超える432件。大きな病院がない地域の人命救助に貢献している。(浦上太介)

県のドクターヘリは鹿児島市立病院を基地病院とし、県本土から種子島、屋久島、トカラ列島の中之島までの約210キロが飛行範囲。患者が乗る学校の校庭などの「ランデブーポイント」(RP)は11月末で732地点を数える。

今年の元日に指宿市で80歳代の女性が頭に大けがをしたケースでは、出動要請から23分後に同市のRPに到着。女性を乗せて折り返し、50分後には市立病院のヘリポートに戻った。

県内の医師や消防でつくる検証組織が、当初約3か月間の出動82件について検証したところ、119番からRP到着までの時間は平均24・8分で、全国平均の33分よりも早かった。

県内では119番で「倒れている」「閉じ込められた」などの重大事案を示唆する言葉が一つでも含まれていた場合、原則として、消防がドクターヘリの出動を要請する「キーワード方式」を導入。迅速な出動に寄与しているという。

検証組織は82件の成果について、「救命」「後遺症軽減」「搬送時間短縮」などの6項目に分類。救命は16件(19・5%)、後遺症軽減は10件(12・2%)、搬送時間短縮は26件(31・7%)で、7割近くで出動の成果が認められた。

同病院の吉原秀明・救命救急センター長は「全国と比べても遜色ない成果が得られた。周知のあり方やキーワードの見直しなどを今後も検討し、傷病者のため、さらなる迅速化を図っていきたい」と話している。

■2012.12.19  誤飲しても安全な抗菌剤開発 歯磨きジェル、来春発売へ
九州大は19日、虫歯と歯周病の原因菌の両方に強く効き、誤って飲み込んでも安全な天然抗菌剤を開発したと発表した。

大学院農学研究院の園元謙二教授(応用微生物学)が、福岡県久留米市のベンチャー企業「優しい研究所」と共同開発した。虫歯の原因菌に効く抗菌ペプチドのナイシンAに梅エキスを一定の割合で混ぜ、歯周病の原因菌を抑える効果を高めた。これまでの抗菌剤は誤飲で下痢などを起こすことがあったが、この抗菌剤は天然成分で安全だという。

誤飲しやすい高齢者らを対象に、この抗菌剤を使った歯磨き用ジェルなどを開発中で、早ければ来年春にも発売される予定という。


■2012.12.19  入浴中の死亡事故、厚労省調査へ 高齢化進み急増
お風呂場での死亡を防ごうと、厚生労働省が対策に乗り出した。入浴による事故や死亡は冬に多く報告され、多くは高齢者だ。浴槽につかる習慣のある日本独特の「生活習慣病」ととらえ、実態を把握するための調査をしたうえで予防策を検討する。

厚労省は今年、研究班を立ち上げ、山形、東京、佐賀の3都県に協力を依頼した。入浴に関連した死亡例、搬送例などのデータを集めている。死亡や回復に至った治療経過などを検証。北と南、都市と地方で地域差が出ていないかどうかも検討する。

厚労省の人口動態調査では、「浴槽内での溺死(できし)」は2001年に3001人だったが、昨年は4554人に増えた。高齢化が進んだことが背景にあると考えられ、昨年は65歳以上が9割近くを占めた。

ただ、この数字は「事故死」に分類されたもののみ。入浴が引き金になって脳卒中や心筋梗塞(こうそく)などになっても、「病死」として扱われると数字にはあがってこない。このため、実際の死亡者はもっと多い可能性があるという。


■2012.12.19  北九州市戸畑区菅原、養女(40)を床下に埋めた母(59)と娘(35)
自宅の床下に女性の遺体を遺棄したとして、福岡県警は7日、北九州市戸畑区菅原、看護助手○○久美子(59)と娘の林麻衣子(35)の両容疑者を死体遺棄の疑いで逮捕し、8日、福岡地検小倉支部に送検した。

吉村容疑者の養女(40)の行方がわからなくなっており、両容疑者は「2人で穴を掘って養女を埋めた」と供述。

捜査関係者によると、遺体は布にくるまれ、土をかぶせられてコンクリートで固められていたという。

県警は捜査本部を設置、共犯者の有無についても調べる方針。

発表によると、両容疑者は共謀し、9月下旬頃、女性の遺体を自宅の床下に埋めて遺棄した疑い。

捜査関係者によると、遺体は、住宅の1階階段付近の床下に掘られた深さ1メートルほどの穴に埋められていたという。

■2012.12.20  豪雨被害の特養ホーム再開 奄美・住用の園移設
2010年11月の奄美豪雨で浸水被害を受け、休園していた奄美市住用の特別養護老人ホーム「住用の園」の新しい施設が完成した。散り散りになっていた入所者や職員が戻り、サービスが再開されている。

豪雨では、裏山が崩落して土砂や濁流が流れ込み、入所者やデイサービス利用者、職員ら約130人が一時孤立。建物の被害も大きく、入所者50人は奄美大島内の12施設に転居した。

新施設は旧施設から約4キロ離れたところに開設。11月17日から業務を再開している。建設費は約7億4000万円で、うち約4億円は、国、県、奄美市から補助金や助成金を受けた。

延べ床面積は旧施設の約1・25倍の3469平方メートル。入所定員は50人、短期入所定員は8人。個室28室、2人部屋3室、4人部屋6室を備える。建物を開放感のあるデザインにし、随所に奄美の伝統工芸品である大島紬を取り入れている。

今月15日に落成式があり、土持圭子理事長が「入所者や利用者のみなさんが幸せになるよう、職員一丸となって介護に努めたい。安全第一を心がけ、避難訓練も定期的に進めていきたい」と話した。島唄による祝い唄や、職員によるエイサーなども披露された。

休園した約2年の間に、入所していた22人が転居先の施設で亡くなったが、再開に伴い、25人が戻ってきた。約70人いた職員も半数が解雇されたが、デイサービスなどで施設に残った職員と戻ってきた職員、新規採用の職員を合わせ、66人で再スタートした。

男性職員の1人は「解雇された職員のほとんどが戻ってきて、また一緒に仕事ができるようになったのがうれしい」と話していた。

■2012.12.20  「セックスレス夫婦」は4割超 性交渉に関心ない“草食男子”も増加
結婚適齢期とされる20〜34歳の若年層で、性交渉をすることに関心がない男性が増加していることが20日、日本家族計画協会(東京都新宿区)が9月に行った「男女の生活と意識に関する調査」で分かった。北村邦夫専務理事は「経済的理由より、若い世代のコミュニケーション能力が不足していることが大きい」と分析している。

調査では、性交渉をすることに「関心がない」「嫌悪している」と答えた男性の割合は、20〜24歳で4人に1人に当たる24・6%。平成22年の前回調査より3・1ポイント増えた。25〜29歳では14・1%(同2ポイント増)、30〜34歳では13・4%(同7・6ポイント増)と倍増した。

性交渉に関心がない20代の男性を分析すると、「中学生の頃の家庭は楽しかった」「子供が欲しい」といった回答が、関心がある男性より総じて低かった。

結婚している男女で1カ月以上性交渉がない「セックスレス夫婦」は、41・3%(同0・5ポイント増)と過去最高を更新。性交渉に積極的になれない理由として、男性は「仕事で疲れている」が28・2%で最多、女性は「面倒くさい」が23・5%で最も多かった。

■2012.12.21  介護施設の高齢者虐待、1.5倍に急増- 過去最多を5年連続で更新・厚労省調査
昨年度の介護施設における高齢者の虐待件数は、前年度の約1.5倍に急増し、5年連続で過去最多を更新したことが、21日までに厚生労働省の調査で分かった。

厚労省の「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律に基づく対応状況等に関する調査」によると、介護施設の職員らによる高齢者虐待について、昨年度に市町村などに相談・通報があった事例は687件で、前年度から35.8%増加。このうち、虐待と判断されたのは57.3%増の151件だった。

虐待があった施設をサービス種別に見ると、特別養護老人ホームが30.0%で最も多く、次いで認知症高齢者グループホーム24.0%、有料老人ホーム12.0%、介護老人保健施設11.3%などと続いた。虐待の種類(複数回答)では、要介護者に暴力を振るうなどの「身体的虐待」が74.8%で最多。以下は、要介護者に暴言を吐くなどの「心理的虐待」37.1%、おむつを長時間にわたって交換しないなどの「介護等放棄」10.6%、「性的虐待」4.0%などの順となった。

虐待を行った職員の年齢は、30歳未満が27.6%、30−39歳が14.9%、50−59歳が14.4%、40−49歳が11.6%、60歳以上が7.2%などとなっており、若い職員が虐待に走りやすい傾向があった。

一方、虐待を受けた高齢者の年齢は、85−89歳が21.0%、80−84歳が20.4%、75−79歳が14.6%、90−94歳が14.3%などとなった。男女別では、女性が66.2%、男性が33.8%となっている。

施設での虐待が急増した背景について厚労省高齢者支援課では、高齢者虐待防止法の存在や趣旨が次第に周知されたことで、これまでは虐待と見なされなかった行為も通報され、虐待と判断されるようになったことがあるのではないかと分析。一方で、「今回の調査で、すべての虐待が把握できているとは考えていない」(担当者)として、今後も虐待の実態把握や発生防止に注力する方針だ。

■2012.12.21  昨年度の養護者による高齢者虐待死は21人- いずれも自宅など・厚労省調査
家族や親族、同居人ら養護者による虐待で死亡した高齢者は、昨年度だけで21人いることが、21日までに厚生労働省の調査で分かった。いずれも自宅などでの事例で、介護施設では虐待による死者は確認されなかった。また、自宅などでの養護者による高齢者の虐待件数は、前年度よりわずかに減少したものの、相談・通報件数は5年連続で過去最多となった。

厚労省が21日に発表した「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律に基づく対応状況等に関する調査」で明らかになった。同調査によると、家族や親族、同居人といった養護者による自宅などでの高齢者虐待について、市町村などが相談・通報を受け付けた件数は前年度比1.3%増の2万5636件となり、5年連続で過去最多を記録。このうち、虐待と判断されたのは1万6599件(0.4%減)だった。

虐待の種類(複数回答)では、「身体的虐待」が64.5%で最も多く、以下は「心理的虐待」が37.4%、「経済的虐待」が25.0%、「介護等放棄」が24.8%などの順となった。

■2012.12.21  全社連運営の社保5病院が不明金計上- 特別損失5億円など
厚生労働省は21日、全国社会保険協会連合会(全社連)が運営を委託されている社会保険病院のうち5施設が、昨年度までの決算で、原因究明をせずに不明金を計上していたと発表した。計上済みの不明金は、特別利益として約7800万円(1施設)、特別損失として約5億1400万円(4施設)。これを受けて厚労省では、原因を究明して今年度決算で修正するよう施設に求める。

全社連などに病院の運営を委託している年金・健康保険福祉施設整理機構(RFO)は、来年度から「地域医療機能推進機構」に改組されることが決まっており、改組時の清算に向け、各病院の資産・収益などを把握するための実地調査を今年9月に開始。来年2月までに、▽全社連に委託している社会保険病院(49施設)▽厚生年金事業振興団に委託している厚生年金病院(7施設)▽船員保険会に委託している船員保険病院(3施設)の計59施設の調査を予定している。このうち、RFOは今月17日までに、社会保険病院19施設と厚生年金病院1施設、船員保険病院3施設の調査を終えている。

これまでの調査で、社会保険病院17施設の資産や収益などに、原因を説明できない差額が生じていることが分かった。このうち14施設では、診療報酬の保険請求額と実際の入金額が異なり、その原因調査が行われていなかった。また5施設で、昨年度までの決算で特別損益などを決算処理した原因が解明されていなかった。
 厚労省によると、厚生年金病院や船員保険病院でも、調査後に「会計処理の相互けん制体制が不十分」などと指摘を受けるケースがあったが、重大な問題点は見られなかったという。

同省は会計上の問題が見つかった病院に、それぞれ改善するよう要請する。また、全社連が運営委託を受けている病院で問題が多く見つかったことから、「全社連本部のガバナンスが適切に機能していない」と判断。全社連の本部の組織体制を見直したり、運営委託を受けている全病院に外部監査を導入させ、RFOへの結果報告を義務付けたりする方針だ。

■2012.12.21  口から食べ続けるには 介護食は機能に応じた形態で
在宅で高齢者を介護する家族にとって、「食」は大きな課題だ。なるべく口から食べさせたいが、飲み込みが困難な人には適切な形状の食べ物を選ばないと、誤嚥(ごえん)による肺炎を起こしかねない。細かくしたり、ミキサーにかけたりするだけではかえって危険なこともあるので注意が必要だ。(佐藤好美)

10月に紹介した小林千代さん(64)=仮名、鳥取県米子市=は、くも膜下出血の後遺症のある夫(71)を介護している。介護保険の要介護度は最重度の5。食事は介助が必要で、食べ終わるまでつきっきりだ。以前は胃に直接栄養を注入する「胃ろう」もしたが、リハビリで管を抜いた。「胃ろうが食事だとは思えない。もう、つけるつもりはないから、家でできる限りのことをしたい」と言う。

小林さんは、さまざまなメーカーの介護食やとろみ剤を駆使する。朝夕2回は医療用の液状栄養剤「エンシュア・リキッド」にとろみ剤「ソフティア」を入れ、プリン状にして食べさせる。栄養剤を使うのは、少量で栄養を確保できるからだ。昼はとろみ剤を入れたおかゆを食べさせる。とろみをつけると、飲み込みやすくなるためだ。

市販の介護食「あいーと」も使う。イーエヌ大塚製薬(岩手県花巻市)が開発した「あいーと」は、従来の介護食と違い、食材を再形成していない。見かけは通常の料理だが、舌で崩せるやわらかさで、飲み込みの機能が「お楽しみ」にとどまる人も食べられる。1品400円前後と高いのが難だが、小林さんが夫に「どっちがいい?」と見せると、夫は食べたい方を自分で選ぶ。

「本人は食べられるつもりでいるし、おいしいものを食べればやっぱりうれしそうにする。少量しか食べられないからこそ、おいしいものを食べさせたい」

夫が食べるのに適した食品・食形態は、訪問リハビリの言語聴覚士(ST)に教えてもらった。「訪問リハビリを受けているから情報も入る。STさんの指導は大きい」(小林さん)

しかし、小林さんの夫のような要介護の人に、適切な食形態・栄養価の食事が提供されているかどうかは、在宅はもちろん、施設や病院でもまちまちだ。

今月、病院や施設向けの嚥下(えんげ)食メーカー「ニュートリー」(三重県四日市市)と、介護食の「煮こごりシリーズ」を販売する「マルハチ村松」(静岡県焼津市)などは、栄養士や言語聴覚士、看護師ら約130人を対象に「嚥下食実践セミナー」を開いた。内容は摂食・嚥下のメカニズムに関する講演と、施設や病院向け嚥下食の調理・実演など。年間70回超行う。

セミナーでは、講師が「嚥下機能が落ちた人には、口の中でまとまりやすく、べたつかない食品が大切」と説明。参加者にこう問いかけた。「キュウリを食べるとき、かむ回数が一番多い形状は、(1)そのまま(2)じゃばらに切った状態(3)輪切り(4)みじん切り−のうち、どれでしょう」

回答はまちまちだったが、健常な人でも、かむ回数や飲み込む回数は(4)が多い。みじん切りは実は、口の中でまとめにくい。飲み込みが困難な人は誤嚥しかねないので、とろみをつけたり、半固形にする工夫が必要だ。

しかし、医療機関や高齢者施設の中には、飲み込みの難しい人に食品を刻んだだけの「きざみ食」や、ミキサーにかけただけの「ミキサー食」を提供する所もあるようだ。この日のセミナーでは、参加者は熱心にノートを取り、レベル別の嚥下食を試食し、作り方を学んだ。

ただ、障害やその程度によって個々の高齢者に合う食形態は異なる。専門家らは「要介護で誤嚥のリスクがある人は、食べる前にSTに相談したり、嚥下機能の検査をしたりしてほしい」とする。飲み込みをチェックする方法には、嚥下造影検査(VF)や嚥下内視鏡検査(VE)がある。リハビリテーション科のある医療機関などで検査の有無や嚥下食の相談ができるかどうか確認してみてほしい。
               ◇
要介護になる前の低栄養防止は?

飲み込みの機能が落ちた要介護の人に、何を食べてもらうかという課題がある一方で、「介護状態になる前の時点での栄養管理が重要」との声もある。低栄養の兆候に気づかずに栄養状態が悪化し、要介護に突入するケースは珍しくないためだ。

在宅高齢者の食事指導に詳しい管理栄養士の水野三千代さんは「高齢者の食が細り、痩せてきても、本人も家族も『年だからしようがない』と、問題視しない傾向がある」と警鐘を鳴らす。要注意の兆候は、(1)夏に落ちた体重が今も戻らない(2)BMI(体格指数=体重「キロ」を身長「メートル」の2乗で割った数値)が18.5未満(3)お茶や汁ものなどでよくむせる(4)食べる時間がかかる、量が減る−など。

高齢者が食べにくい食品には、▽焼きいもなどのパサパサした物▽煎り卵などのポソポソした物▽焼きのりのようなヒラヒラした物▽酸っぱい物▽粘る物▽すする物−などがある。煮込んだり、とろみやつなぎに工夫が必要だ。

低栄養を改善する簡単な調理法も覚えておきたい。水野さんは「牛乳やヨーグルトにスキムミルク(脱脂粉乳)を入れれば、タンパク質やカルシウムが増える。カボチャ煮にスライスチーズをのせてレンジにかける方法もある」という。市町村の介護保険の担当課では栄養改善の相談や事業も行っているので、積極的に利用したい。

水野さんは「年末年始は特に食事時間が不規則になり、つい2食になったりするが、抜けた1食分を次の食事で補うのは難しい。低栄養予防の第一歩は3食を食べること」と話している。

■2012.12.21  3人に1人が朝食抜き 25〜34歳、2食化の傾向
25〜34歳で朝食を抜いている人は34・1%に上り、全年代の平均17・5%を大きく上回っていることが総務省の2011年社会生活基本調査で21日、分かった。昼食を抜いている人もこの年代は19・0%で全年代の14・4%より高く、同省は「若い人を中心に、朝か昼どちらか1食にする1日2食の傾向が強まっているのではないか」とみている。

15〜24歳では朝食抜きが29・9%、昼食抜きが20・0%だった。10〜64歳の幅広い年代で、男性の朝食を抜く割合が女性より高かった。

10〜14歳の子供の夕食状況をみると、1人で食べた割合は平日が5・9%で、総務省は「それほど孤食は進んでいないようだ」としている。

インターネットの利用時間は、1日平均39分で5年前から1・6倍に増え、25〜34歳では1時間17分に達した。

■2012.12.21  [広域避難・高齢者のケア](下)認知症患者 戸惑わせない
なじんだ環境の再現に努る

環境の変化で混乱しやすい認知症の高齢者にとって、避難生活の負担は大きい。

福島県本宮市の仮設住宅の一角にあるグループホーム「虹の家」。78〜93歳の9人の認知症高齢者らが入居している。「ようやく落ち着いた生活が戻ってきました」と管理者の星節子さんは話す。

もともと、「虹の家」は、本宮市から約50キロ離れた沿岸部の同県浪江町にあった。東日本大震災で建物は無事だったが、東京電力福島第一原発事故の警戒区域にあり、戻れる見通しが立っていない。

災害救助法に基づく「福祉仮設住宅」として現在の場所にホームが完成したのは昨年10月。それまでの約7か月間、入居者たちは栃木県内の別のグループホームや遠方の家族の元で過ごしてきた。星さんは「栃木のグループホームには大変親切にしていただいた。ただ、個室に余裕がなく2、3人で寝泊まりしなければならなかったのは大変だったと思います」と振り返る。

入居者の高力こうりき菊さん(83)の娘、佐藤文子さんは「生活の変化が原因なのか、母は以前より無口になった」という。家族の元で暮らす間に、幻覚が出るなど症状が悪化した人もいた。

「虹の家」では、浪江町の雰囲気を取り戻そうと努めている。元のホームに掛けてあった風景写真や油絵を飾り直したほか、先月には一部の入居者が元のホームに一時帰宅し、よく聴いたレコードや愛用のはんてんなどの私物を持ち帰った。

お祭りを企画するなど、仮設住宅の住民との交流にも力を入れる。認知症ケアには、顔見知りの人に囲まれた安心感が大切だからだ。「住民とのなじみの関係をゼロから作らないといけない。その取り組みの最中です」と星さんは話す。

厚生労働省によると、こうしたグループホーム型の仮設住宅は今年10月現在、福島県内に9か所、昨年9月現在で宮城県に18か所、岩手県に6か所ある。

福祉仮設住宅を調査している東北工業大学工学部建築学科教授の石井敏さんは「転居に伴い認知症が悪化したケースがある」と話す。

あるグループホーム型仮設住宅では、一般の仮設住宅から離れた場所に造られたため「こんな寂しい場所に来てしまって」と涙を流す入居者、以前のグループホームと大きく異なる建物に「こんな家見たことない」と怒る人もいた。転居から4か月で、攻撃的な言動や短期的な記憶の急激な低下など、認知症の症状が進行したケースが見受けられた。

浪江町健康保険課によると、震災前、要介護、要支援に認定された高齢者は911人。それが、今年8月には1256人に増えた。仮設住宅などの慣れない環境で、認知症が悪化したケースもあるのではないかと同課ではみている。

石井さんは「今後、焦点となる復興の街づくりでは、環境の変化を受けやすい認知症高齢者らの生活の場と周辺環境を一体的に考えていく必要がある」と指摘する。

東日本大震災から1年9か月。苦しみ続ける避難者のことを、私たちは忘れてはならない。

■2012.12.21  震災後、循環器系の病気急増…宮城
東北大と読売新聞社が共同サイエンス講座

東北大と読売新聞東京本社が共同で企画した講演会「市民のためのサイエンス講座2012」が20日、仙台市青葉区のエル・パーク仙台で開かれた。

「3・11後の心と体〜被災地のヘルスケア〜」と題して、東日本大震災が心身の健康に与える影響について、同大大学院博士課程で学ぶ菅野武・丸森病院内科医長ら3人の研究者が、最新の成果を交えながら解説し、参加者約80人が真剣な表情で耳を傾けた。

発症のピーク

最初に登壇した菅野さんは震災当時、勤務していた南三陸町の公立志津川病院で患者らの命を守るために尽力した体験を語った。同病院では、非常用電源も水や食料の備蓄も1階にあった。菅野さんは、当時の写真や動画を示しながら、「津波が押し寄せることは想定していなかった。水や食料が逃げる先にないのが、いかに重要な問題かを痛感した」と話した。

また、現在、大学院で研究している震災ストレスと消化性潰瘍の関係について、震災発生から10日前後に発症ピークがあることから、「災害発生の早期の段階で薬を投与できれば、より多くの方の命が救えるかもしれない」と語った。

塩分多い保存食

同大大学院医学系研究科の下川宏明教授(循環器内科学)は、震災前後の4か月間の県内の救急車による全ての搬送記録を集めた。2008〜10年の同時期の記録も合わせ、計12万4000件を比較、分析し、心不全や脳卒中など循環器系の病気が震災後に急増したことを明らかにした世界初の研究結果を披露した。

原因として、被災によるストレスのほか、震災で持病の薬が手に入らなくなったことや、塩分の多い保存食などが考えられると指摘し、「水や食料を入れた『災害時パック』に、普段服用している薬の情報を記したお薬手帳のコピーなどを入れておくとよい」と提案した。

精神面の変化

同大災害科学国際研究所の富田博秋教授(災害精神医学)は、命が危険にさらされたり、悲惨な光景を目にしたりすることで心的外傷後ストレス障害(PTSD)が起きたり、家族や親しい人を亡くした場合、「なぜ助けられなかったのか」と自責の念にさいなまれたりなど、災害後に見られる精神面の変化について語った。

また、つらい出来事に見舞われた時、精神的に混乱する「ショック期」から、無力感に襲われる「引きこもり期」などを経て、心身が回復し始める「癒やし期」に至るまでのステップを解説した。PTSDにより、免疫力低下なども心配されることから、「体の健康あっての心の健康。適度な運動や十分な睡眠を心がけて欲しい」と訴えた。

■2012.12.22  福岡市の特養ホーム、向精神薬50錠紛失
福岡市西区の特別養護老人ホーム「愛信園」(斉藤忠男施設長、入所者93人)で、入所者に服用させる向精神薬約50錠がなくなっていたことがわかった。

福岡市は同園に対し、事実関係を調べて報告するよう求めている。

同市などによると、今月17、18日に「愛信園で睡眠薬がなくなっているようだ」との匿名の電話が寄せられ、市が聞き取り調査をしたところ、園側が入所者1人の向精神薬(9日分)を紛失していたことを認めた。

同園によると、その後、園側の調査で計50錠がなくなっていることが判明。向精神薬の保管場所は施錠されていたという。同園は「盗難の可能性もあり、今後、警察に相談したい」と説明している。

■2012.12.22  骨粗鬆症予防にミカン 黄色い色素が骨を増やす
ミカンをよく食べると骨粗鬆症(こつそしょうしょう)を予防できるらしいことが、果樹研究所の杉浦実主任研究員らの研究でわかった。ミカンを黄色くする色素であるβクリプトキサンチンが、骨を増やしたり、減少を抑えたりしていると考えられる。20日付米科学誌プロスワンで発表した。

女性が閉経してホルモンのバランスが変わると、骨粗鬆症にかかりやすくなる。一方、杉浦さんらが温州ミカンの産地の一つ、浜松市の三ケ日町地域で行ってきた研究で、ミカンを多く食べる女性は患者が少ない傾向もわかっていた。

そこで、この地域の閉経後の女性212人で、βクリプトキサンチンの血中濃度と骨粗鬆症の関連を調べたところ、ミカンを毎日4個食べることに相当する血中濃度の人は、ミカンを食べない日がある人よりも、骨粗鬆症にかかるリスクが92%低いことがわかった。

果物などに含まれる色素の骨粗鬆症予防効果が明らかになったのは世界で初めてという。


■2012.12.23  障害者の芸術作品発表の場に 福祉ギャラリー日光にオープン
障害者が芸術作品を発表しやすい場を提供しようと、日光市瀬川に「アートギャラリー 憩い」がオープンした。市内の丸山昇平さん(71)が、経営していた会社を廃業したのを機に事務所を改築したもので、障害者の利用料は健常者よりも安く設定。障害者にやさしい福祉ギャラリーとして関心を集めそうだ。 (石川徹也)

丸山さんは、戦前から続く家業の建築資材卸販売会社の三代目経営者だった。高校生のころから、絵画や写真などの芸術鑑賞が趣味で、結婚してからも毎月のように県内や東京都内の美術館巡りを、妻のマサさん(72)と楽しんできた。

仕事で資材を搬入したり、加入している今市ライオンズクラブの慰問活動で福祉施設を訪れたりするたびに、展示してある入所者の芸術作品が気になるように。施設職員に聞くと、多くは施設内に展示するだけで、外部の人の目に触れることはほとんどないことを知った。「障害者の発表の場があれば」との思いを、十年ほど前から抱き続けてきた。

今年五月、廃業を機に、取引先で福祉施設に詳しい知人の設計士福田豊さん(62)に相談。事務所を改築し、障害者も使いやすいバリアフリーのギャラリーにすることを決意した。

約八十平方メートルのギャラリーには、白い壁に囲まれた六十三平方メートルの展示スペースを設けたほか、ギャラリー名通り、来場者がお茶を飲みながら「憩い」ができる談話スペースも設けた。

丸山さんは「福祉のことはあまり知らないが、障害のある人が安い値段で出展できる場として広く利用してもらえれば」と話している。

現在、展示第一弾として、宇都宮市の主婦二人による植物画展が来年一月二十日まで開かれている。

利用料金は、障害者は一日千円、健常者は千五百円。利用時間は、午前九時半から午後六時半までで、入場無料。水曜定休。問い合わせは、同ギャラリー=電0288(21)0505=へ。

■2012.12.23  ノロウイルスで入院患者6人死亡 宮崎の病院
宮崎県日南市の医療法人春光会東病院は23日、ノロウイルスの集団感染が発生、入院患者や職員計44人が下痢や嘔吐の症状を訴え、うち入院中の70〜80代の男性患者6人が死亡したと発表した。

記者会見した病院によると、6人は脳梗塞などで全員が寝たきり状態だった。

宮崎県では今冬、医療機関からの感染性胃腸炎の報告数が例年よりも増えており、県は注意を呼び掛けていた。

■2012.12.23  RSウイルス猛威、乳幼児注意 「高齢者も警戒を」
乳幼児の肺炎の原因となるRSウイルスが猛威をふるっている。患者数が過去の同時期と比べ最多の状態が続いている。専門家は乳幼児だけでなく、高齢者でも集団感染の恐れがあるとして警戒するよう指摘する。厚生労働省も注意を呼びかけている。

国立感染症研究所によると、12月3〜9日の1週間で、全国の指定医療機関から報告された患者は4020人。1歳以下が全体の約7割を占める。小児科を基本にした調査のため、成人での広がりは不明だ。感染者が増えた原因もよくわかっていない。

九州大の池松秀之特任教授は「高齢者の原因不明とされる肺炎の多くは、RSウイルスによる可能性がある」という。池松さんらは2008〜09年のインフルエンザ流行に、発熱やせきなどの症状がある50歳以上の約400人を調査。ウイルスが検出された人の2割がRSウイルスに感染しており、インフルエンザウイルスに次いで多かった。

東京都健康長寿医療センターの稲松孝思・臨床検査科部長も「日本では赤ちゃんの感染症と思われているが、高齢者への注意喚起が必要だ」と話す。RSウイルスは治療薬などがなく、予防が中心。感染が疑わしい乳幼児は高齢者に近づけないほうがいいという。

厚労省は先月29日、RSウイルス感染症について「Q&A」を公表。高齢者でも重症の下気道炎を起こすことがあることや、長期療養施設内での集団発生が問題になることなどを指摘している。

■2012.12.24  老いてさまよう:鳥かごの家から 1・高齢者囲い込み
介護が必要になった人が行き場を失い、さまよいたどり着く「家」がある。介護事業者が介護報酬をあてこみ、賃貸住宅に集めて囲い込んでいるのだ。各地で増えているが、高齢者施設とみなされないため、法律の制約は少ない。東京郊外のマンションでは互いの交流もない孤独な生活が続き、生きる意欲も奪われていく。鳥かごのような家で何が起きているのか。記者はこの夏から一室を借りて住むことにした。

◇民間集合住宅、介護報酬目当て 徘徊恐れ、空き缶の警報器
東京・八王子。昨年6月に都内の介護事業者が、不動産会社の管理する古い6階建てマンションの空き室を利用して事業を始めた。今は2階と3階の10室が埋まる。6畳一間にユニットバス・トイレ付き。設備投資はいらない。家賃も入居者10人がそれぞれ負担する。2階の別の1室をヘルパーの詰め所にあて、日中は通常女性2人が「訪問介護」を担当する。夕方からは夜勤1人だけになる。

麦わらさん。記者が心の中でそう呼ぶことにした男性が入居したのは7月12日。記者が住む部屋のはす向かいだ。70代に見える。部屋のドアにヘルパーが空き缶をぶら下げた。その意味はほどなくわかる。

翌日、男性がドアを開けて出ると、缶の音が薄暗い2階の中廊下に響く。麦わら帽子を持って外出しようとしている。年配の女性ヘルパーが詰め所から飛び出してきた。

「どこ行くの?」「下」「階段とか危ないからね。ごめんね」
手を引かれ、部屋に連れ戻された。認知症で、徘徊の心配があるようだ。他に9人の入居者がいるため付き添って散歩に行く余裕はないのだろう。ヘルパーも疲れ切っている。

数分後、再び空き缶の音。ヘルパーが立ちふさがる。「ご飯ができるまで休んでて」「もうずっと休んでるよ」「じゃあテレビ見てて」「いや」「いいじゃない。みんなそうしてるんだから」

次の日、部屋のドアに風鈴もぶら下げられていた。ドアが開くと空き缶と風鈴の音がする。二重の「警報器」なのだ。
廊下にはパイプいすが一つ置かれた。麦わらさんは多い日で40回以上、廊下に出た。麦わら帽子をかぶって日の当たらない廊下を歩き、いすに座る。入居からひと月近くたったころ、記者は「ここの生活はどうですか」と声をかけた。麦わらさんは「慣れるしかないんだよ」と言った。

記者があいさつしてもやがて反応が少なくなり足元もふらつく。いすに腰掛け、うなだれる姿が気になった。

収入が低く、蓄えも乏しいため有料老人ホームなどに入れない人たちは介護事業者の大事な「顧客」だ。年金や生活保護費で家賃を払い、居続けてもらえれば介護保険で確実な収入を見込める。しかもあくまで入居者の「自宅」。施設のように職員配置基準やスプリンクラーの設置義務はない。

火事になったらどうするのか。社員の一人は言う。「考えても仕方がない」

■2012.12.24  老いてさまよう:鳥かごの家から 2・「自宅」扱い、責任不在
「鳥かごの家」で暮らす認知症の麦わらさんがふらりと外へ出たのは8月20日夕方のことだった。介護事業者が介護の必要な人たちを囲い込む東京都八王子市の賃貸マンション。部屋のドアを開けたことを知らせる空き缶と風鈴の「警報器」が廊下で鳴ったはずだが、詰め所のヘルパーが聞き逃したらしい。

右足を引きずり、倒れそうになりながら近くの道路を懸命に歩いている。心配してあわてて連れ戻しに行くヘルパー。麦わらさんは記者と目が合うと「どうも」と言って右手を上げた。夏の青空を仰ぎ、陽光を全身に浴びたからか。初めて見る満面の笑みだった。

この事業者の関連会社は以前、堺市の賃貸マンションに高齢者11人を住まわせていた。徘徊防止のため、非常階段にロープを張った。ほかにも同様のマンションが大阪市内に3カ所。病院を回って高齢者を集める営業用のパンフレットには「24時間見守る体制を整備している」とあった。

堺市が昨年8月、高齢者虐待の疑いで立ち入り調査したのを機に関連会社は大阪から撤退する。事業者の拠点は東京・多摩地区に移った。大阪と同じ方法で入居者を管理すれば再び行政の指導を受けかねない。ロープではなく「警報器」を使うのは、そのためだ。

家賃は、生活保護受給者の利用を想定してか、住宅扶助の上限とほぼ同じ5万2000円。冷凍された食材を温めるだけの食事代3万円などと合わせて月8万円余りかかる。ほかに介護保険の1割を負担すると月に10万円を超える。

麦わらさんは年金でなんとかまかなう。入浴は介助の付く週2回のみ。食堂や集会所のような共有スペースもない。低料金の施設を望む人もいるが順番待ちが多く、空きはなかなか見つからない。この事業者は多摩地区にある計3カ所のマンションで、要介護度1〜5の40人近い高齢者を集め、訪問介護事業を展開する。各地を転々とし、ここへ来た男性もいる。行き場のない人たちの「受け皿」になっているのだ。

昨年1月、同じ事業者が運営する別のマンションで男性が未明に入浴中、死亡する事故が起きていた。事業者は「介護中ではなかった」として行政に報告していない。社長(40)が取材に答えた。「ここは施設ではなく自宅。24時間見守る契約ではないし、責任を問われても困る」


麦わらさんは時々外へ出るようになる。おおよその居場所がわかるGPS(全地球測位システム)機能付き携帯電話を持たされていた。だが、安全は保証できない。10月12日午後、麦わらさんは近所を走る4車線道路の中央分離帯に立っていた。信号も横断歩道もないのに車道へ歩き出す。「危ない」。気づいた記者は行き交う車に両手を振って知らせた。間一髪だった。

麦わらさんが昨年夏まで働いていたカフェテリアが東京・日本橋にあった。軽食作りの担当だったが、注文をたびたび間違えるようになり、店を辞めざるを得なくなった。入院を経てこのマンションに来た。離婚歴があり、たまに訪ねて来るのは弟くらいだ。

記者は部屋を訪ねた。70代に見えたが、65歳だった。ロック音楽や映画が好きらしい。CDコンポとDVDプレーヤーが並んでいる。接続されていないので動かない。
「友達に会いに行く」。師走の昼下がり、季節外れの風鈴がチリンと鳴った。入居して5カ月が過ぎた今もここがどこだかわからない。


◇特養待機者、推計42万人
高齢社会に伴い、介護施設や高齢者向け住宅の需要は高まる一方だが、国や自治体は財政難から比較的低額で入所できる特別養護老人ホームの新規開設を抑制してきた。特養の待機者は全国で42万人と推計され、厳しい在宅介護を強いられる世帯も多い。国は特養などの施設の代わりに、民間業者によるサービス付き高齢者向け住宅の充実を目指しているが、特養の倍以上の費用がかかる住宅がほとんどだ。


◇訪問介護
介護保険で受けられるサービスの一つ。ヘルパーが自宅を訪問し、1人では難しい排せつや入浴、食事介助などの身体介護を行うほか、必要に応じ家事を援助する。事業者が受領する報酬のうち1割を利用者、残りを自治体が負担する。地域を巡回し訪問する形態が想定されていたが、近年は一般のマンションの他、住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅に事務所を併設し、入居者のみに訪問介護をする事業者が増えている。

■2012.12.24  老いてさまよう:鳥かごの家から 3・リハビリもできず
◇62歳・元すし職人「何やってるんだろう」
「鳥かごの家」でなぜか時折、中廊下を掃きそうじする入居者がいる。サブローさん(62)だ。介護事業者が要介護の人たちを囲い込む東京都八王子市の賃貸マンション。部屋を訪ねた。

「こちらにはいつ?」「わからんね」。記憶はあやふやだ。「お仕事は」と尋ねた時、うれしそうな顔になった。「すし屋だよ」。ノートの表紙に「闘病記」と書いた日記がある。取材と断り、見せてもらった。雪が残る今年1月の寒い朝、通勤途中で脳梗塞になり、半年間リハビリ病院に入院していたらしい。左半分の視野がないという。日記は病院で書き始めた。
 <7月11日 記憶のけんさをした。でんたくを使って計算の問題をした>
 <7月24日 サンポは気持ちよかったです>
リハビリを重ね、社会復帰をめざす意欲がにじむ。しかし、8月下旬、今のマンションへ移ると日記の内容は一変する。
 <何をしたらいいか分かりません。(廊下の)そうじをたのまれたからしたけど、つかれた>
 <ここがどこなのかわからない。何をやっているのだろうオレは>
気力が萎えていくように見える。食事の配膳や入浴介助はあるが、病院のようなリハビリ訓練はない。

4歳上の姉が神奈川県西部の町にいた。
サブローさんは岩手県の小さな町で5人きょうだいの末っ子に生まれた。父親が働く鉱山が閉山し、中学を出て都内のすし店に住み込みで働き、結婚して長男をもうけた。店を持ったが、なじみ客や友人に気前よくおごり、従業員にだまされて店を失う。妻子と別れ、すしのチェーン店に雇われてからはアパートで1人暮らしだった。

長年、支援してきたのが姉の夫(71)だ。<(義理の)兄貴にはめんどうばかりかけてすみません>。日記にそう書かれていたことを記者が伝えると、姉夫婦は涙ぐんだ。

家賃を含め約11万円かかる費用は当面、健康保険からの傷病手当金でなんとかまかなえるが、それも1年半で切れる。支える姉夫婦にも限界がある。「弟も将来は施設がいいと思うけれど、家賃は安い方がいい。わたしらも年金生活だから」

サブローさんを事業者に紹介したのは、リハビリ病院だった。診断は脳に記憶障害が残る高次脳機能障害。入院が180日を超えると医療保険は適用されない。退院しても、帰る家も支えてくれる家族もない。病院のソーシャルワーカーは受け入れ先を探すため、各地の有料老人ホームなど40カ所以上に当たった。しかし、年齢がまだ若いことや費用が高いことから見つからなかった。

「どんな所か分からず、不安もあったが、傷病手当で収まる場所は他になかった」。ソーシャルワーカーが退院の期限寸前で行き着いたのが、以前、営業でパンフレットを置いていったこの事業者だった。

事業者に患者を紹介した病院は、ほかに少なくとも五つある。

サブローさんの日記には名前を書き連ねた日がある。腕のいい職人で人気者の「さぶちゃん」を知る人たち。一人一人に話しかけているかのようだ。最後に幼いころ別れた息子の名前があった。

■2012.12.24  老いてさまよう:鳥かごの家から 4・話し相手もなく
◇92歳、認知症の女性
掃除のモップをつえ代わりにして、背中の丸まった女性が夜勤ヘルパーのいる詰め所を訪ねてきた。介護の必要な人たちを介護事業者が囲い込む東京都八王子市のマンションは夜になると、職員は1人になる。
 「おなかがすいたんですか?」
 「だって(夕食を)持って来ないんだもの」
 「お魚食べたでしょ、白身の魚」
重い認知症のようだ。「わたしはここにいるけど、家はあるんですから」
 「あなたの家はもうないの。家はここ」
入居者10人の多くは家族と疎遠だ。

記者は2階にある女性の部屋を訪ねた。ほとんど物のない6畳間の壁に短冊が1枚飾ってある。ここに来る前に入院していた時に書いたようだ。<みんな一緒に早く元気になって 私も頑張ります>

父親は小学校の校長、自分も北海道の小学校で教師をしていたという。年齢は「88歳」。実際は92歳だ。同じ話を繰り返す。北海道のことだ。「あっちは寒いけど過ごしいいから。それで、あなたはわたしがここにいることがよくわかったわね」

マンションから一歩も出たことはない。窓の外には川沿いの桜並木の向こうに秩父の山並みが見える。「ここから眺めてるだけなの」

何かやりたいことは?と尋ねた時だ。「なにがやりたいもんですか。ベッドの上に縛り付けられて。島流しですよ」

訪ねて来る人はほとんどいない。人と話をしなければ認知症も進行するばかりだ。入居者の中で、日に何回か部屋のドアから顔をのぞかせ、「もしもし、もしもし」と繰り返す認知症の人がいる。ヘルパーを呼んでいるのだ。しかし、気づかれずにあきらめることも多い。日中は通常、ヘルパーは2人だけ。認知症のケアまで手が回らない。

介護保険法は介護状態を軽くしたり、悪化させないようにしたりすることを目的にうたう。だが、要介護度が上がるほど、事業者の介護報酬は上がる。「入居者の状態が重くなれば会社はカネになる」。元社員の一人は幹部の言葉を覚えている。

女性には家族と過ごした小さな家が同じ多摩地区に確かにあった。夫と死別後は独り身の妹を呼び寄せ、2人で暮らしていた。妹はたまに姉の顔を見に行く。「あそこで24時間見てもらって安心しています」。妹も話し相手を失った。近所の人は「妹さんも言動がおかしくなってきたから認知症かもしれない」と心配する。

家のそばには、姉が元気なころに2人で散歩をした多摩川が流れる。

女性の部屋で記者との会話が続く。「それにしてもあなた、ここにわたしがいることがよくわかったわね」
部屋が少し寒いせいなのか、久しぶりの来客で人恋しかったからか。記者のあごひげに手を伸ばし、触れた。
 「ここはあったかそうねえ」

■2012.12.24  老いてさまよう:鳥かごの家から 5・介護選択肢なく
◇66歳、左半身まひの男性
「鳥かごの家」に記者が入居して3カ月たった9月末になっても顔を見ない人がいた。介護が必要でも行き場がない人たちがたどりついた東京都八王子市の賃貸マンション。隣室から人の気配を感じるのは、止まっては動くエアコンの室外機の音だけだ。

夕方、隣室を訪ねた。暗闇で声がした。「ベッドから起き上がれないので手を貸してもらえますか」。左半身がまひしている。睡眠導入剤を常用しているせいで寝たり起きたりの繰り返しだ。昼夜の区別もつきにくい。ヒデオさん、66歳。

明かりをつけると、本棚にIT関連の本が100冊近く並んでいた。2台のパソコンはパスワードが思い出せず動かせない。「ネットビジネスで一もうけしたかったけどね」。ここに来る前は都心の池袋にある自宅兼事務所の賃貸マンションでリフォーム会社を経営していた。苦学して有名私立大の大学院を修了し、夢だった起業を果たした。独身を通し、仕事が生きがいだった。3年前の春、脳梗塞で倒れた。収入が絶たれ、蓄えも底をつく。豊島区から生活保護を受けた。

「歩けないから外には出ない。部屋で転んでも立ち上がるのに1時間かかるんだ」。ヒデオさんの部屋と同じ2階に詰め所を置く介護事業者の「訪問介護」で介助を受けるが、足腰が弱った。要介護3。介護プランを立てたのは、この事業者のケアマネジャー。リハビリ訓練をしたいと頼んでも聞いてもらえなかった。

要介護認定されれば本来、リハビリやデイサービスの利用など本人の希望を聞いて介護のプランが作られる。だがここでは、選択肢を与えられていない。ほかの事業者を利用させれば、その分この事業者の介護報酬が減る。ヘルパーは記者に「いずれ寝たきりになるでしょう」と言った。

ヒデオさんをここに紹介したのは豊島区役所だ。役所と事業者のパイプができたのは、社長が営業に来たのがきっかけだった。生活保護を受けるヒデオさんがすぐに入れる施設はない。特別養護老人ホームへの入居を待つ区内の生活保護受給者は今も約100人。区の担当者は「空きがある」という言葉にひかれた。区は社長が訪問介護事業を展開する都内3カ所の賃貸マンションにこれまで5人を紹介している。区の担当者は「本人から目立った不満は聞いていない」と言う。しかしヒデオさんは記者にこう話していた。「ただその日が終わるのを待っているんです」

11月中旬、部屋を再び訪ねた。スナップ写真が飾られていた。記者がかつての同業者仲間を探し、ヒデオさんと一緒に台湾旅行した時の一枚をもらって渡していたものだ。

「また、働きたいね」。声は弱々しく聞き取れないほどだ。誕生日を迎えたこの日、約1時間の訪問中にベッドから起き上がることはなかった。

記者がこのマンションに入居して5カ月たった冬。一度も顔を見ていない人がまだほかに2人いる。

■2012.12.24  老いてさまよう:鳥かごの家から 6・誰とも交わらず
◇「天涯孤独」86歳女性
夕方、決まって小さなポリ袋を手にゴミ置き場へ行く女性がいる。前をじっと見すえ、人を寄せつけない。介護が必要になっても行き場のない人たちを介護事業者が囲い込む東京・八王子の賃貸マンション。声をかけても返事がない。

その女性(86)は昨秋、ここへ来た。記者が前の住所を訪ねると、新宿の古い木造2階建てアパートだった。「わたしは天涯孤独だから」。女性はそう言って人と付き合おうとはしなかった。それでも1人、友人がいた。アパートの住人のうち女性が2人だけになった時、友人が心細くなって「頼りにするからお願いね」と女性にあいさつに行ってから少しずつ親しくなった。

女性は下町で生まれ、早くに母を亡くした。幼い兄弟の世話のため学校にもあまり通えなかった。料理屋の仲居をしながら独身を通し、80歳近くまで飲食店でレジ打ちのパートをした。その後は月8万円の年金だけが頼りだった。

友人も夫と死別後は子供に頼らずに1人暮らしを続けている。85歳までチラシ配りのアルバイトをしていたが、貯金もそろそろ底をつく。収入はわずかな年金と、生活が苦しい息子からの仕送り1万円。風呂のない6畳一間の家賃4万8000円と介護保険料を引くと月約3万円で暮らさなければならない。

それでも生活保護の世話にはなりたくない。家賃の安い都営住宅に申し込んでいるが、抽選に外れてばかりだ。

女性も同じだった。昨年9月、布団につまずいて骨折し、入院。退院後、病院の紹介で老人ホームより格安な今のマンションへ移った。「普通のマンションにいるの」。友人に一度だけ電話があったという。その話をしながら、友人は深いしわを刻んだ両手で顔を覆った。「あの人も転んだりしなければ、いまも元気でここにいただろうに。部屋もきちんときれいにしていた人なのよ」

都会の独居高齢者が増える中、収入が少ないと家賃が重い負担になる。この事業者が東京・多摩地区の賃貸マンションを訪問介護の拠点に選んだのも都心より家賃が安く、高齢者を集めやすいのが理由とみられる。

記者はマンションの女性の部屋を訪ねた。チェーンをかけたままドアが開く。「新宿で同じアパートだったおばあさんが心配されていましたよ」。無表情だった顔が動いた。

「あなたがいなくなって、寂しがっていました」。そう伝えると、目元に笑みが浮かんだ。「そう? あの人、同い年なの」

今は誰とも交わることはない。年金だけでは足りない生活費は、疎遠だった親戚が一部を負担しているが、これ以上の援助は無理だという。
親戚の一人は言う。「あのマンションがおばあさんのついの住み家になると思う」

■2012.12.24  老いてさまよう:鳥かごの家から 7・制度のはざまで
◇増加する「灰色」事業者
介護事業者が高齢者を囲い込む東京・八王子の賃貸マンションで、記者が入居者のケアプランに不信を感じたのは9月中旬、ある男性の部屋を訪ねていた時のことだ。

「はんこお借りしますね」。2階の詰め所にいるヘルパーが男性の印鑑を持ち出した。利用者が介護を受けたことを証明する書類への押印のためだ。後日、入手した「訪問介護」の週間予定表などを見てがく然とする。

介護保険制度では訪問介護は排せつや入浴の「身体介護」と、掃除、洗濯、買い物などの「生活援助」に分かれ、利用時間に応じて報酬が決まる。

夜勤帯の予定表では、毎日午後6時から11時まで30分間の身体介護が空き時間なく続く。朝も6時半から2時間、日勤のヘルパーが出てくるまで予定が埋まっていた。ところが、記者が同じマンションに4カ月余り暮らした中で、プラン通りの介護をしているのを見たことは1日もなかった。

プランが夜間と早朝に集中しているのは介護報酬が昼間の1・25〜1・5倍になるからだ。事業者はほぼ予定通りの介護をしたとして介護報酬を保険請求。他業者のデイサービスやリハビリを利用させず、10人のうち8人は自社の訪問介護だけで保険が認める限度ぎりぎりの額を使っていた。しかも限度額は、同じ要介護度でも介護付き有料老人ホームと比べて最高で月に10万円ほど高く設定されている。ヘルパーが自宅を巡回する手間を考慮しているためだ。マンションに住まわせれば施設ではなく、それぞれの「自宅」になる。事業者はここに目をつけた。

一方、ヘルパーの労働は過重だ。たとえば入浴。介護用ではなくユニットバスのため、2人しかいない日勤で3時間も費やすことがある。夜勤は専従の1人が毎週5日こなし、入居者からの呼び出しで起こされることも多い。割増賃金はない。ヘルパーはこの1年余りで少なくとも4人が辞めた。人手不足は明らかだが、現場の労働者を酷使するほど事業者の利益は上がる。

ケアプランの担当は、このマンションで訪問介護事業を運営する会社の役員も務めていた30代の男性ケアマネジャーだった。上司はブログで「稼げるケアマネ」とたたえた。だが今年8月に退社し、千葉県内の高齢者施設で施設長をしている。「事業のやり方に疑問がなければ今も続けていた。でも困っている人を受け入れていることを考えれば全面的に悪いとは思わない」。社長(40)は「プランはケアマネが作るもの。内容が適切だったかと聞かれても分からない」と言った。

同じように高齢者を囲い込む事業者は近年増えている。国は超高齢社会に備え、財政負担の重い特別養護老人ホームなど施設の増加を抑制し、高齢者向け集合住宅を含む「在宅介護」へかじを切った。さらに、新設の特養は近年高額化し、収入が低く、家族の支えもない高齢者は行き場を失うばかりだ。

国の方針のもと、「施設」と「在宅」の隙間で生まれた灰色のビジネスモデル。そこで何が起きているのか、外からは見えにくい。

■2012.12.24  老いてさまよう:鳥かごの家から 8・とにかく住まいを
◇「必要悪」に頼る行政
「賢い業者は指導力の弱い自治体に逃げていく。僕らは撤退させただけですから、心が痛むのです」

堺市の生活保護担当課の幹部は嘆いた。業者とは、東京都八王子市など多摩地区にある3カ所の賃貸マンションに高齢者を囲い込む介護事業者のことだ。

この事業者の前社長が大阪で運営していた会社は、堺市の賃貸マンションに高齢者11人を住まわせ、徘徊防止のため非常階段にロープを張った。昨年8月、高齢者虐待の疑いで堺市から立ち入り調査を受けたのを機に、拠点は東京・多摩地区に移った。

しかし記者が八王子のマンションに取材のため住んでいた今年8月、今度は東京都福祉保健局の監査を経て改善指導を受ける。A4判15ページに及ぶ指摘項目のうち、都が重視したのは「利用者に介護サービスの選択肢を与えていない」ことだ。同局幹部は「利用者に適切なケアプランを組まず、自社だけのサービスで介護保険の限度額近くまで使っていたので『囲い込み』と判断した。前例のない指摘だった」と言う。

多摩地区の3カ所のマンションに暮らす40人近い高齢者の中には、行政のケースワーカーが紹介した人も少なくない。豊島区の担当者は「問題のある業者とは知らなかったが、行き場のない人を野にさらすわけにはいかない。特別養護老人ホームに入るまでのつなぎでもいいから、私たちはとにかく住まいを探さなければならない」と釈明する。

社長(40)も取材にこう答えた。「訪問介護事業者が介護で生計を立ててはいけないのか。役所に頼み込まれて受け入れてきたのに。身よりのない独居老人が生活保護や年金の範囲で生活できる場を提供している自負がある」

厚生労働省や都、多摩地区の自治体の担当者は「法の想定外のビジネスだが、違法とは言えない」と声をそろえる。しかし、囲い込まれた高齢者は入居者や地域との交流もなく、満足なリハビリも受けず、生きる意欲さえ奪われ老いていく。都福祉保健局の別の幹部は言った。「自分の親なら、預けられない。でも社会資源として使わざるを得ない」

介護保険制度が導入されて12年。社会全体で高齢者を支えるはずの仕組みは、「必要悪」とも言える介護事業者に頼るしかないところまで行き詰まっている。

都の監査が一段落した秋以降、事業者に都内の自治体からこんな電話が入るようになった。「監査が終わったようだが、どうしても受け入れてほしい人がいる。どうにかならないか」

記者が心の中で「麦わらさん」と呼ぶ認知症の男性(65)が「鳥かごの家」に入居して5カ月が過ぎた。夏、麦わら帽子をかぶり、GPS(全地球測位システム)機能付き携帯電話を持たされて徘徊を繰り返した人だ。

年の瀬。麦わらさんを見かけなくなった。外出する気力も体力も衰えてしまったようだ。
夕方、部屋を訪ねた。床に膝をつき、ベッドに体を預けて動かない。「大丈夫ですか」。寝息が聞こえた。その背中に布団をかけた。

■2012.12.26  福島の子供に肥満急増、原発避難で運動不足か
肥満傾向にある子供が福島県で増えていることが25日、文部科学省が発表した今年度の学校保健統計調査で分かった。

男女を合わせた肥満の比率は、5〜9歳の各年齢で全国で最も高く、10、11歳も2位だった。同県教育委員会は「原発事故後、避難生活や屋外活動の制限が長く続いたことによる運動不足やストレスが原因」とみている。

調査は今年4〜6月、全国の幼稚園と小、中、高校生(5〜17歳)から、69万5600人(約5%)を抽出。身長別標準体重などから割り出した肥満度が20%以上の児童・生徒の割合などを調べた。

福島県では震災直後の昨年度は調査が行われておらず、10年度と比べたところ、男子は6歳で10年度の6・18%(9位)から11・42%(1位)となったほか、女子は8歳が8・11%(17位)から14・61%(1位)へと倍近い急増ぶりだった。

■2012.12.26  社会福祉法人に改善命令 20年超不正と熊本市
熊本市は26日、不適切な法人運営が疑われ、特別指導監査を進めていた社会福祉法人慈雄会[じゆうかい](北区龍田陳内、三角保之理事長)に対し、前理事長親子らによる20年以上にわたる不正が確認されたとして、社会福祉法に基づく改善命令を出した。

前理事長の平原輝雄氏と次男の理事、静雄氏の責任の明確化と、原因究明や再発防止策の策定などの改善措置を、60日以内に講じるよう求めている。

市によると、不正は(1)理事会議事録など重要文書の紛失(2)実態のない工事費支出による法人資産の流出(3)役員や親族が経営する会社や医療法人との不明瞭な委託契約(4)法人所有の公用車やゴルフ会員権の私物化(5)理事会や監事の形骸化−など。

市が確認した最初の不正は、1989年の介護老人保健施設「阿房宮」造成に伴う擁壁工事(工事代金4710万円)の架空発注。熊日が入手した資料によると、工事代金は業者を迂回[うかい]して輝雄氏が受け取ったとされる。別の軽費老人ホームでも実態不明の工事に1350万円が法人から支出されていた。

同法人をめぐっては、元法人関係者の情報提供や定期監査で不適切運営が疑われ、市はことし3〜7月に計3回の特別指導監査を実施。平原氏親子の地位剥奪を視野に行政手続法に基づく聴聞の手続きに入った。

11月の第1回聴聞の直前に輝雄氏が理事長職、静雄氏が統括会計責任者などを辞任。新理事長に前市長で同法人理事の三角氏が就任していた。

会見した市健康福祉子ども局の宮本邦彦次長らは「不正を見抜けなかった市の定期監査の在り方も検討したい」と述べた。

同法人代理人の廣田稔弁護士(大阪市)は「新理事長の下で自主的な改善を進めている。改善命令は厳粛に受け止め、施設利用者や職員のため適正な運営に努めていきたい」と話している。

■2012.12.27  障害者雇用:法定雇用率達成 県内対象企業、69.4%の318社 2年連続全国1位 /佐賀
佐賀労働局は、県内の障害者の雇用状況(6月1日)をまとめた。障害者雇用促進法に基づく法定雇用率(1・8%)が適用される民間企業の実雇用率は2・13%。法定雇用率を達成した企業は69・4%に上り、2年連続全国1位を記録した。

同局によると、県内で法定雇用率の対象になる企業は458社。このうち318社が達成。全国平均の46・8%を大幅に上回った。未達成企業のうち、一人も雇っていないのは77社だった。同局は「毎年、ハローワーク担当者が未達成企業全社を訪問して指導するなど、理解を求める活動が積み重なった結果」と分析する。

一方、2・1%の雇用率が課される県(県教委は2%)、市町のうち、上峰町、伊万里・有田地区医療福祉組合、多久市教委の3機関が未達成だった(ただし多久市教委以外は今年10月に達成済み)。

法定雇用率は、13年4月から、民間企業が1・8%から2%に、国や地方自治体が2・1%から2・3%、都道府県教委は2%から2・2%に引き上げられる。また、民間企業の対象規模も56人以上から50人以上に変更される。

■2012.12.28  ノロウイルス感染か、2人死亡 東大阪の老人ホーム
大阪府東大阪市は28日、市内の介護付き有料老人ホームで、入所者18人と職員6人の計24人が感染性胃腸炎になり、うち80代と90代の入所者の女性2人が死亡した、と発表した。同市によると、別の患者2人の便からはノロウイルスが検出された。

80代の女性は26日に亡くなった。市によると、吐いた物をのどに詰めた窒息死で、以前から誤嚥(ごえん)する傾向があり、介護を受けていたという。ノロウイルスの検査はしておらず、因果関係は不明としている。

90代の女性は25日に亡くなった。急性心不全で、ノロウイルスとの因果関係はない、としている。

■2012.12.28  高校生が知的障害者?に嫌がらせ 動画をLINEに投稿
兵庫県西部の県立高校の野球部員ら1年生10人が今月上旬、路線バスの車内で知的障害者とみられる男性に嫌がらせをし、その様子をスマートフォンで撮影していたことがわかった。高校は10人を5日間の自宅謹慎にした。

高校によると、生徒らは11日午後6時ごろ、下校中のバスに乗車してきた男性の前にかばんを置いて通行を妨げたり、男性がいつも座る席に生徒が座ったりする嫌がらせをした。男性が怒る様子を撮影してスマートフォンのアプリ「LINE」に投稿し、仲間内で閲覧していたという。

校長は「相手の立場に立つ優しさがなく、明らかな人権侵害。今後も徹底的に指導する」と話した。教頭が男性の家族に面会を求めたが断られたため、校長が電話で謝罪したという。

■2012.12.28  給付費不正受給:障害福祉2事業所、県指定取り消しへ /和歌山
給付費を不正受給したなどとして、県は27日、障害者自立支援法に基づき、指定居宅介護事業所「ホームヘルプ24」(田辺市目良)と、指定障害福祉サービス事業所「就労支援事業所すばる」(岩出市高塚)の知事指定を来月26日付で取り消すと発表した。

県によると、ホームヘルプは通院介助を行っていないにもかかわらず、虚偽の記録を作成。介護給付費約776万円を不正に受け取った。また、すばるは人員基準を満たしていないのに訓練等給付費を請求し、約262万円を不正に受け取った。

■2012.12.29  ノロ院内感染か、入院患者4人死亡…99人症状
横浜市緑区長津田の「横浜田園都市病院」(渋谷誠二院長、375床)は29日、入院患者や病院職員計99人が今月25日以降、嘔吐おうとや下痢などの症状を訴え、うち80〜97歳の男女の患者計4人が死亡したと発表した。

99人のうち2人からノロウイルスが検出された。同病院と横浜市は感染性胃腸炎の集団感染とみて調べている。

発表によると、4人が死亡したのは26〜29日。死因は、吐いた物が気管などに入ったことによる誤嚥ごえん性肺炎や急性呼吸不全だった。

症状を訴えたのは25日の病院職員3人が最初で、29日までに職員27人と患者72人が発症した。同病院は27日、横浜市緑福祉保健センターに届け出た。

病院によると、死亡した4人以外の容体は、呼吸が不安定で重症の患者が1人いるものの、他の発症者は比較的症状が軽いという。

■2012.12.29  民間ハンセン病療養所「待労院」が閉所へ
熊本市西区の民間ハンセン病療養所「待労院たいろういん診療所」は28日、来年1月で閉所し、114年の歴史に幕を閉じることを明らかにした。国立療養所への転院などで入所者がいなくなったため。厚生労働省によると、民間の療養所は、これで静岡県御殿場市の「神山復生病院」だけになる。

社会福祉法人・聖母会待労院診療所は、布教で熊本を訪れていたフランス人のカトリック教司祭が1898年(明治31年)に開設。まだ国立の療養所がない時代で、「非人道的な生活」を余儀なくされたハンセン病患者の救済に当たった。

国の強制隔離政策で入所者は増え、1948年には121人が暮らしていた。その後、社会復帰や高齢化が進んで年々減少し、11月末に最後の1人が熊本県合志市の国立ハンセン病療養所「菊池恵楓園」に移り、入所者がゼロになった。

■2012.12.29  30人が下痢などの症状 ノロウイルス検出 京都・南丹の宿泊施設
京都府は29日、同府南丹市が運営する宿泊施設「日吉山の家」を利用した3〜82歳の男女30人が下痢などの症状を訴え、うち2人からノロウイルスを検出したと発表した。重症者はおらず、全員快方に向かっている。

府によると、30人は15日から23日の間に宿泊施設で食事をした。施設で調理を担当した6人からもノロウイルスを検出。府は施設の食事が原因とみている。

27日に利用者からの保健所への申告で判明。府は施設を29日から3日間の営業停止とした。

■2012.12.29  ノロウイルス8人感染、1人死亡 松山の病院
松山市の松山赤十字病院は29日、11月末から12月初旬に56〜90歳の入院患者8人がノロウイルスに感染し、市内の88歳男性が死亡したと明らかにした。ほか7人は軽症で、感染経路は不明。

病院は12月28日まで市保健所に感染を報告しなかった。「早期に収束したので必要ないと考えた。厚生労働省の指針でも報告は義務付けられていない」と説明している。

病院事務部によると11月24日ごろ、死亡した男性が最初に下痢の症状を訴え12月1日にノロウイルスを検出。6日朝、多臓器不全で死亡した。4日までにほかの男女7人の感染を確認した。

感染の疑いが出てから病院は毎日数回、院内を塩素系の薬剤に浸したガーゼで消毒。新たな患者が出なかったため、12月10日に収束したと判断した。

■2012.12.30  横浜ノロ感染、発症105人に 市が病院を立ち入り調査
横浜市緑区の療養型医療施設「横浜田園都市病院」で患者4人が死亡したノロウイルスの集団感染で、横浜市は30日、発症者が105人に増えたことを明らかにした。市は30日、病院に立ち入り調査し、感染経路などを調べたほか、感染の拡大防止策を徹底するよう指導した。

立ち入り調査は病院から報告を受けた27日から4回目。

横浜市によると、29日午後5時までに発症した入院患者72人と職員27人の計99人に加え、30日午前9時までに新たに患者5人と職員1人が発症。重症の80代男性の容体に変化はないという。

発症者が出たのは2、3階の医療病棟と4階の介護病棟で、半数以上が介護病棟の患者だった。

■2012.12.30  兵庫・姫路の飲食店で8人食中毒 6人からノロウイルス検出
兵庫県姫路市保健所は29日、同市飾磨区中野田の飲食店「さかなやちゃん」で飲食した18〜51歳の男性8人が下痢や腹痛、嘔吐(おうと)などの食中毒症状を発症したと発表した。6人からノロウイルスが検出され、共通する食事が同店で提供された物以外にないことなどから、同店での飲食による食中毒と断定。入院者はおらず、全員が快方に向かっているという。

市保健所は食品衛生法に基づき、同店を31日までの3日間、営業停止処分にした。同店で25日夜、刺し身盛り合わせや生カキのポン酢あえなどを食べた1グループ8人全員が発症しており、原因となった食品を調査している。


 

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