残しておきたい福祉ニュース 1996〜社会福祉のニュース

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残しておきたい福祉ニュース

 2012年 
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

 2012. 8. 1 高齢者見守り 燕市など協定 異変をヤクルト配達員通報…新潟
 2012. 8. 2 新たな障害区分の認定について
 2012. 8. 2 ヘルパー研修受講に本人確認…偽名取得受け
 2012. 8. 2 乗用車と送迎車が出合い頭に衝突、5人死傷
 2012. 8. 2 老人ホームの事務所焼く けが人なし、漏電か 北九州・八幡西区
 2012. 8. 3 発達障害での求刑上回る判決、認識誤りと声明
 2012. 8. 3 特養ホームで結核集団感染、1人死亡 山口・周南
 2012. 8. 3 カネミ油症救済法案、超党派議連が大筋合意 近く成立
 2012. 8. 3 カネミ油症、救済法成立へ 3党合意、支援金年24万円
 2012. 8. 3 自閉症児、「低脂血症」の傾向…判定基準に有効
 2012. 8. 3 社会福祉施設で死傷者急増 群馬県内上半期の労災
 2012. 8. 5 障害者の工賃向上/全国上回る島根県内施設
 2012. 8. 7 熱中症の救急搬送、1か月で2.1万人超- 7月では過去最多の見通し
 2012. 8. 8 「連泊は30日まで」 お泊まりデイの独自基準、東京に続き大阪府も策定へ
 2012. 8.10 老人福祉施設の給食、5年で1千億円拡大- 在宅配食サービスも拡大基調
 2012. 8.10 支え合いマップに点字版 伊那市社協
 2012. 8.11 障害ある人への理解深めよう 児童150人 ボランティア体験 和歌山
 2012. 8.11 輝き放つ車いすダンス 25、26日リバティホールで公演 大阪
 2012. 8.12 逗子の介護事業所がヘルパー架空請求で指定取消し、返還金2億円――神奈川
 2012. 8.15 高齢者施設プールで69歳死亡…市、通報せず
 2012. 8.15 風しんの累積患者数が1000人超に- 過去最多、昨年の2.7倍に
 2012. 8.16 産婦人科医院経営の博愛会が自己破産申請- 広島市
 2012. 8.16 食中毒は支援物資が原因か…宇治豪雨
 2012. 8.16 宇都宮で男性3遺体 障害持つ2人「要介護5」
 2012. 8.17 介護労働者の離職率、16・1%で過去最低
 2012. 8.17 熱中症搬送、7月としては最多の2万1082人
 2012. 8.17 腰痛の介護職、4人に1人「5年以上痛い」
 2012. 8.17 徘徊で感染拡大――施設内での結核集団感染について【厚労省事務連絡】
 2012. 8.20 O157 5人目の死者...施設の100歳代女性
 2012. 8.21 福祉法人が提訴取り下げ、元事務局長遺族に対して
 2012. 8.22 社会福祉法人で1490万円使途不明 宮城・栗原
 2012. 8.22 府盲人福祉センター:建て替えの方針 松井知事 /大阪
 2012. 8.23 処遇改善交付金、半数の事業所「一時金」に
 2012. 8.23 日本の人口は3年連続で減少、少子化に歯止めかからず――総務省
 2012. 8.25 水道料金730万円逃れか 熊本市の福祉施設
 2012. 8.27 「脳脊髄液減少症」裁判所が初めて認定の判決
 2012. 8.27 認知症高齢者10年で倍増、300万人超に- 厚労省が推計、8年後には400万人超
 2012. 8.31 医療事故報告、過去最多の約2800件- 医療機能評価機構
 2012. 8.31 健常者の5倍に上る障害者の生活保護受給率 困窮する彼ら・彼女らを手助けする支援者たちの本音


■2012.8.1  高齢者見守り 燕市など協定 異変をヤクルト配達員通報…新潟
高齢者世帯の異変に気付いた場合、市に通報してもらうため、新潟県の燕市、長岡ヤクルト販売、同市民生委員児童委員協議会が7月31日、協定を締結した。高齢者の見守りのため、自治体と民間事業者が協定を結ぶのは県内では初めて。

協定では、市内の家庭や事業所に乳酸菌飲料を配達する女性スタッフが、高齢者の異変に気付いた場合、市に通報してもらう。通報を受けた市は、民生委員や福祉施設などの関係機関と情報を共有し、支援を行い、高齢者の孤独死などを防ぐのが狙い。同市では、ほかの民間配達事業者にも協力を求めていくという。

同社よしだセンターで配達を担当する伊藤恵美さん(38)は「これまで以上に高齢者の様子に気をつけ、少しの変化でも市に連絡したい」と話した。

■2012.8.2  新たな障害区分の認定について
今年6月に成立した「障害者総合支援法」。これまでの障害程度区分に代わり、新たに「障害支援区分」が創設される。ただ、全く新しいものではなく、調査項目を変更し精度を高める内容になる。 「障害支援区分」は、2014年4月から施行。

これからは、障害の種類にかかわらず、市町村レベルで共通の制度によりサービスを提供するようになります。今までは障害の種類(身体障害、知的障害、精神障害など)によって、異なる系統だった各専門施設も、一つの基準に統一されます。新たな障害区分のレベル分けは、10月から本格的に始まります。一見わかりやすくなるように思えるし、「どんな障害でも、地域でこまやかに対応できるようにする」という目標をみると、すばらしい生活が送れそうです。が、実際は現場の混乱を引き起こしています。

今問題になっている一つは、入所者、通所者の障害区分によって施設が受ける補助金額が変わってくることです。障害区分のレベル分けと併せて、障害に対するサービスの量も10月から見直されるので、従来より大幅にサービスがカットされる入所者がいると、その結果、補助金が大幅に少なくなることが予想されています。補助金の獲得は、小規模な施設や作業所にとって死活問題です。

また、訓練や作業の時間数によっても補助金は変わります。「1割」を払うお金がないからサービスが受けられない、と、障害者が施設に来ないケースも実際に発生しています。作業に出る日数や人数で補助金が決まる部分もありますから、施設の利用者が少なくなれば、これまた補助金が減らされます。補助金カットは、どうしても人件費のカットなど、サービスの質の低下に直結します。

当事者が施設に来なくなると訓練が滞り、症状が悪化するおそれがあるだけでなく、家庭での生活が見えにくくなります。孤立や虐待、介護者のうつ発病などを未然に防ぐためにも、施設への通所は重要なのです。経営不振で閉鎖され、行き場のない障害者がでないよう、対策を講じる必要があります。

もう一つ、非常に危ぶまれていることがあります。障害区分の認定法が、介護保険の認定ソフトに酷似している点です。「1人で立てる」「歩ける」など、どうしても身体的な障害に重きが置かれ、一応自力でできるが、見守りが不可欠な知的障害・精神障害が軽く認定されやすいのです。入所型でも、自宅介護型でも、必要なサービスが減らされる可能性が高くなっています。

こうした介護保険との類似は、将来的に障害者自立支援法と介護保険法の統合も視野に入れられているのではないかという憶測を呼んでいます。しかし、「障害者自立支援」とひと口に言っても、身体、知的、精神、乳幼児まですべてに通じる人の育成は、ようやくこれから始まろうというところ。ましてや、これに高齢者介護を加えていくなど、一朝一夕には不可能でしょう。

1人ひとりの障害や生活が見えにくくなりはしないか? 共通性ばかりに目がいって、個々の障害のもつ特殊性が切り捨てられていかないか? 拙速な制度の一本化には、不安要素が多すぎます。まずは、この法律によって利用者の生活がどう変化するか、追跡調査をする必要があるでしょう。そして経過措置後の法律改正では、「一本化しやすい」という形にとらわれず、症状の改善や、社会復帰がスムーズになることを第一に考えて、障害区分の認定やサービス内容を組み直すことが望まれます。

■2012.8.2  ヘルパー研修受講に本人確認…偽名取得受け
オウム真理教による東京都庁郵便爆弾事件で再逮捕された菊地直子容疑者(40)が偽名で介護ヘルパー2級を取得していた問題で、厚生労働省は1日までに、ヘルパー研修などの受講者について、住民票や運転免許証などで本人確認を行うよう各都道府県に依頼した。

来年4月までの開始を求めている。

対象は、都道府県が実施するヘルパーやケアマネジャーなどの養成研修の受講者。受講申し込みや初回講義などの際に確認するよう求めている。神奈川県の黒岩祐治知事からの要請に対応した。

■2012.8.2  乗用車と送迎車が出合い頭に衝突、5人死傷
2日午前9時45分頃、栃木県小山市下初田の市道交差点で、乗用車と特別養護老人ホームの送迎用の軽乗用車が出合い頭に衝突、軽乗用車の高齢者3人が死亡し、運転していた女性が意識不明の重体となった。

乗用車の男性は軽傷。

小山署によると、亡くなったのは、いずれも同市内の特別養護老人ホーム「富士見荘」の利用者で、同市立木、片野キミさん(85)、同市小山、所ミツさん(95)、同市神鳥谷ひととのや、大出ケンさん(90)。重体の女性は従業員の同市渋井、介護福祉士鶴見緑さん(57)。

同署は、乗用車を運転していた同県栃木市大平町、会社員生沢いけざわ久志容疑者(34)を自動車運転過失致死傷容疑で逮捕した。

軽乗用車は片野さんら3人を自宅まで迎えに行き、施設に向かう途中だった。現場は水田に囲まれた見通しの良い交差点で、信号機や一時停止の標識はない。

■2012.8.2  老人ホームの事務所焼く けが人なし、漏電か 北九州・八幡西区
2日午前3時45分ごろ、北九州市八幡西区永犬丸(えいのまる)南町2丁目の特別養護老人ホームを運営する社会福祉法人「善興会」(青木晃隆理事長)の事務所から出火、木造平屋約98平方メートルのうち約84平方メートルを焼いた。北側に隣接する善興会運営のデイサービスセンターには利用者約10人が宿泊していたが、職員の誘導で約30メートル離れた居住棟に避難してけが人はなかった。

市消防局や地元消防団から消防車両24台が出動して消火活動に当たり、約2時間後に鎮火した。市消防局によると、東側に隣接する民家の軒先の一部を焼いた。福岡県警八幡西署によると、事務所は出火当時無人で漏電の疑いがあるとみて調べている。青木理事長(79)は「月1度、避難訓練を実施しており、けが人がいなかったことは不幸中の幸いだった」と話した。

■2012.8.3  発達障害での求刑上回る判決、認識誤りと声明
殺人罪に問われた男性被告(42)に対し、大阪地裁が先月30日、広汎性発達障害の一つ「アスペルガー症候群」であることを踏まえ、「再犯の恐れが強く心配される」などとして求刑を上回る懲役20年を言い渡した判決について、罪に問われた障害者を支援する「共生社会を創る愛の基金」(東京)は3日、「認識に重大な誤りがある」と指摘する声明を発表した。

同症候群は、生まれつきの脳機能障害のため感情のコントロールなどが苦手とされるが、犯罪などの反社会的行動には直接結びつかないとされる。声明は、発達障害には公的施設の支援があると指摘し、「社会内に障害に対応できる受け皿がない」との判示に反論。社会秩序の維持を念頭に長期刑を選択した点には、「隔離の論理だけがまかり通っている」と訴えた。

■2012.8.3  特養ホームで結核集団感染、1人死亡 山口・周南
山口県は3日、周南市の特別養護老人ホームで結核の集団感染があり、ホームの利用者の90代女性が死亡したと発表した。ほかに、入所者や利用者、職員とその家族ら8人が発病、19人が感染したが、重篤な人はいないという。

発表によると、利用者の80代女性が3月30日に結核と診断され、県が他の入所者や職員らの健診を実施。死亡した女性は、別の病気を理由に4月末から市内の医療機関に入院中だったが、80代女性と同じ結核菌に感染していたことが遺伝子検査でわかった。女性は6月4日に死亡した。ほかの発病者や感染者の一部は現在、入院や通院をしたり、薬を飲んだりしているという。

■2012.8.3  カネミ油症救済法案、超党派議連が大筋合意 近く成立
カネミ油症被害者の救済法制定をめざす超党派の国会議員連盟(会長・坂口力元厚生労働相)が3日、国会内で総会を開き、救済法案に大筋で合意した。近く議員立法として共同提出し、成立する見通し。被害者が求めてきた国による医療費の直接支援は盛り込まれなかったものの、総会に出席した被害者からは「大きな前進」と評価する声が相次いだ。

総会には、与野党の国会議員に加え、福岡県や長崎県五島市の被害者らも出席。救済法案の中身の説明を受けた後、要望や意見を述べた。また、救済法案の早期成立を求め、認定患者や未認定患者の署名163人分を坂口会長に渡した。

法案には、被害者が長年求めてきた国による医療費の直接支援が盛り込まれなかった。被害者からは、「議連の当初案には盛り込まれており、がっかりな面はある」との意見が出た。


■2012.8.3  カネミ油症、救済法成立へ 3党合意、支援金年24万円
国内最大の食品公害とされるカネミ油症の被害者救済をめぐり、民主、自民、公明の3党は2日、1人あたり年間24万円を支給する支援法案を今国会に共同提出することで合意した。認定患者と同居していた家族も新たに救済対象に含める。今国会で成立する見通しで、来年度予算の概算要求への反映をめざす。

支援法案は民主党がまとめ、2日の自公両党との実務者協議で示した。法案によると、国は当面、毎年1回「健康実態調査」を実施。それを受けた認定患者や同居家族に協力費の名目で1人あたり19万円を支給する。さらに、国が原因企業であるカネミ倉庫(北九州市)に出している経営支援金を増額し、1人あたり年5万円を上乗せする。

このほか「適切な医療の確保」や「生活の質の維持向上」などの基本理念を定めたうえで、「基本理念にのっとり施策を策定・実施」することを国の責務として法案に明記する。


■2012.8.3  自閉症児、「低脂血症」の傾向…判定基準に有効
自閉症の未成年者には、血液の脂質濃度が通常に比べ約2割低い「低脂血症」が多いことが、浜松医科大の松崎秀夫特任准教授(分子精神医学)の研究で分かった。

4日に埼玉県和光市で開かれる研究会で発表する。自閉症の原因解明につながる成果で、これまでなかった自閉症の数値的診断基準としても注目される。

自閉症児174人と、通常の180人を比べたところ、自閉症児の方が、血液の中性脂肪とコレステロール濃度が低いことが分かった。

この結果を基に、血中の中性脂肪濃度を自閉症の判定基準として使った場合、8歳以下では自閉症児の約8割が該当し、検査として有効なことが分かった。社会的適応のためには、自閉症を早期に発見し支援することが大事だが、これまでは専門医の診察に頼るしかなく、数値データを基にした診断基準はなかった。

■2012.8.3  社会福祉施設で死傷者急増 群馬県内上半期の労災
今年上半期の労災による死傷者(休業四日以上)は、前年同期比5・1%増の八百七十二人で、増加率は全国平均4%を上回った。業種では、社会福祉施設が前年同期比13%増と急増し、群馬労働局は「介護施設の急増に伴い、経営側の経験やノウハウが追いついていない」とみている。

同労働局は二日から、県内の経営者団体など十三団体に安全対策の緊急要請を始めた。

死傷者が最も多い業種は製造業二百九十九人で、全産業の34%を占めた。交通運輸・貨物取扱業、卸売り・小売業が続いた。

製造業の内訳では食料品製造八十三人、金属製品製造四十九人の順に多かった。

県勤労統計によると、今年に入ってから総実労働時間が各月とも前年同月比で増えており、同労働局の小幡俊之課長補佐は「生産増加に伴い労働時間が増えて、連動して労災が増えた」と分析している。

■2012.8.5  障害者の工賃向上/全国上回る島根県内施設
島根県は県内の福祉施設で働く障害者らが受け取る工賃を増やすため、工賃向上計画をまとめた。本年度から2014年度まで3年計画で実施し、就労による自立を支援する。

福祉施設で生活支援を受けながら働いている障害者の平均工賃については、国の主導で倍増計画が全国の都道府県で進められてきた。

07−11年度の5年計画で取り組んできたが、途中リーマン・ショックなどの影響もあってどこも達成できなかった。
その反省も踏まえ、島根県では倍増目標に代わって各福祉施設が達成可能な工賃向上計画に改定した。

障害者らの生活保障を考えると、工賃倍増を実現してほしかった。障害者基礎年金と合わせて最低限の生活維持に必要な報酬を、共通目標として掲げる意義は大きかったからである。

その目標は現実の壁に突き当たったが、目標に向けた各施設の引き上げ努力が工賃水準を底上げした意義は認めたい。
新しい目標はより現実的な水準を設定した。しかしそれによって引き上げ努力が緩められてはならない。

デフレ経済が続いて健常者の賃金も抑えられるなど環境は厳しい。しかし福祉就労を支援するため、施設に仕事を発注する企業側にも協力を求めたい。

県の工賃向上計画によると、月額1万5479円の平均工賃(11年現在)を14年度に1万8024円に引き上げる目標。アップ率は16・4%。時給では177円から195円を目指す。 この目標が適用されるのは、身体などに障害があって事業所と雇用契約を結ぶことが困難な人たちを受け入れている福祉施設。県内に86施設あり、1891人が利用している。

これらの施設を対象にどの程度の工賃アップが可能か、県が調査。その回答を集計した金額を目標に設定した。

かつて授産施設と呼ばれたこれらの施設は、企業から印刷や部品加工、清掃などの作業を請け負っている。施設で働く障害者の工賃を引き上げるためには仕事量を確保するとともに、仕事の付加価値を高めることが必要だ。

そのために県も支援に乗り出している。受注確保のため企業を回る営業職員を施設側が採用する際、その人件費を補助。菓子など施設側の独自商品開発を支援するため、専門のアドバイザーを派遣している。

注目されるのは、独自に商品開発したり、公的支援を活用している施設ほど工賃のアップ率が高いことである。工賃倍増計画の目標額2万5000円を達成した県内10施設のうち8施設は、独自開発した商品を製造販売。

さらに公的支援を活用した施設の倍増計画期間の工賃増加額は月額5913円(56%増)。活用しなかった施設の1994円(15%増)を上回った。

倍増計画を通じて島根県の平均工賃は1万2659円から1万5479円(22%増)に上昇。全国平均の上昇率を上回り、平均工賃の順位は計画前の全国22位から7位に上がった。

上から目標を押しつけることは避けたい。しかし就労を通じてハンディを克服し、自立を促す。社会との接点もそこから広がるはずである。

■2012.8.7  熱中症の救急搬送、1か月で2.1万人超- 7月では過去最多の見通し
総務省消防庁の集計(速報値)によると、7月1−31日の1か月間に熱中症とみられる症状で救急搬送された人は、少なくとも2万1047人に上り、7月の搬送者数としては、2008年の集計開始以来、これまで最多だった11年の1万7963人を超える見通しとなった。1か月間の搬送者数としては、同年8月の2万8448人に次ぐ水準。

熱中症の疑いで救急搬送された人は、今年6月には、前年同月(6980人)の3割程度の1837人(確定値)にとどまっていたが、猛暑日が続いた7月中旬以降に急増した。
 ただ、同省の集計(速報値)によると、直近の7月30日−8月5日の救急搬送者数は6891人で、前の週(7月23−29日)の9055人から23.9%減少した。今年の集計を始めた5月28日以降の累計では、2万7366人となった。

7月30日−8月5日に救急搬送された6891人の年代別の内訳は、65歳以上の高齢者が3556 人(51.6%)と過半数を占めた。症状別では、入院の必要がない「軽症」が4126人(59.9%)と全体のほぼ6割に上った。

同庁の速報値では当初、7月23−29日の搬送者数を8686人としていたが、その後修正した。7月の搬送者数の確定値は近く公表する。

■2012.8.8  「連泊は30日まで」 お泊まりデイの独自基準、東京に続き大阪府も策定へ
大阪府はこのほど、通所介護事業所などが提供する宿泊サービス、いわゆる「お泊まりデイ」の人員、設備、運営に関する基準を作成した。

府によると、近年、宿泊を伴わない指定居宅サービスである指定通所介護の事業を行う事業所等では、1カ月を超える長期宿泊者が増えてきているものの、介護保険法の適用のない自主事業であるため、利用者の安全面やプライバシーの確保等処遇面における問題点が指摘されていることから、今回の動きとなった。

同様の基準は、まだ全国的にもめずらしく、東京都が昨年4月に制定している程度。8月10日まで府民から意見を公募し、9月上旬からの施行を目指す考えだ。ただし、基準に違反した場合、行政指導はできるものの法的拘束力はない。

同基準によると、宿泊サービスを「緊急かつ短期間の利用」と規定したうえで、宿泊サービスを利用できる日数は、原則として連続30日までで、要介護・要支援認定の有効期間のおおむね半分を超えないものとした。主な基準は以下の通り。

【宿泊時間帯の人員基準】
利用者9人ごとに介護職員か看護職員を1人以上配置する。

【設備基準】
・1日に宿泊できる利用者数は、事業所の利用定員の半数以下とする。
・宿泊室の床面積は、1人当たり7.43平方メートル以上の個室とする。
・個室以外の場合は、パーテーションや家具で仕切ってプライバシーを確保する。

【運営基準】
・宿泊サービスを連続4日以上利用する場合、居宅介護支援事業者と連携して宿泊サービス計画を作成する。

■2012.8.10  老人福祉施設の給食、5年で1千億円拡大- 在宅配食サービスも拡大基調
昨年度の国内の給食市場は4兆4420億円(前年度比0.2%増)で、老人福祉施設が7400億円(同3.5%増)と最も高い伸び率を示したことが、矢野経済研究所(東京都中野区)の調査で分かった。老人福祉施設は、過去5年間で約1000億円増えたことになる。全体では2年連続の微増だった。

調査は今年5−7月、社員食堂などの「事業所対面給食」、企業や個人宅などに食事を届ける「弁当給食」、病院給食、老人福祉施設給食など6分野を対象に、同研究所の研究員が面接や電話などで聞き取りを行った。

医療・介護関連では、病院給食が1兆2350億円(同0.7%減)で、2001年度から10年連続の減少。また、老人福祉施設の市場規模も、高成長を続けてきたものの、特別養護老人ホームや介護老人保健施設の新設数の減少から、成長率が徐々に鈍化している。

一方、弁当給食は前年度比0.4%増の5750億円で、高齢者向けを中心に在宅配食サービスの拡大基調が見られた。在宅配食サービスは、自治体の予算削減の影響で、公的サービスが微増にとどまっているが、外食企業や流通小売業といった民間業者の本格参入が続いており、市場は拡大傾向にあるという。

■2012.8.10  支え合いマップに点字版 伊那市社協
伊那市社会福祉協議会は、点訳ボランティアグループ六星会と合同で「災害時支え合いマップ」の点字版の作製に取り組んでいる。東日本大震災後のアンケートで視覚障害者6世帯から希望が寄せられたため、初めて製作することにした。視覚に障害を持つ萩原俊さん(78)さん、佳代子さん(77)夫妻=八幡町=と六星会、八幡町地区社協が9日、点字版に盛り込む内容を打ち合わせた。

市社協では2004年頃から「災害時支え合いマップ」作りを各地域で進めているが、点字版はなかった。点字版作りを通じて視覚障害者が不安に思っていることや支援体制、避難までの手順などを確かめ、災害発生に備える。

話し合いの中で、災害発生時は近所の人が萩原さん夫妻を避難所まで避難することになっている手順を確認。支援者が来るまで家に待機し、在宅しているか、不在なのかを外に知らせるサインを示すことを新たに決めた。

俊さんは「地震が起きたらどうしたらいいのか私たちも支援者も分からないので、形があるものがあれば互いに困らない。(点字版が)私たちだけでなく、いろいろな人が助かるヒントになれば」と願いを話す。

市社協地域福祉課は「萩原さんの支え合いマップの点字版をモデルに、ほかの障害者世帯に広げたい」と話した。

点字版は希望があった6世帯分をそれぞれ12月までに作る。

■2012.8.11  障害ある人への理解深めよう 児童150人 ボランティア体験 和歌山
小学生に障害のある人への理解を深めてもらうとともに、ボランティア参加のきっかけづくりにしてもらおうと、かつらぎ町社会福祉協議会などは10日、「夏のボランティア体験」をかつらぎ総合文化会館で開いた。

町内の渋田、笠田、妙寺、大谷、三谷の5小学校の児童約150人、肢体や視覚、聴覚などに障害のある人、ボランティアら計約300人が参加した。

児童たちは、段差やスロープで車いす利用者の車いすを押す介助や目の不自由な人が階段を上り下りする際の誘導などを体験。点字での名刺作成や手話による自己紹介にも挑戦した。

妙寺小6年の木村裕貴君(11)は「坂で車いすを押すのは力が必要で、障害者の苦労がわかった。町で見かけたら手伝いたい」と話していた。

■2012.8.11  輝き放つ車いすダンス 25、26日リバティホールで公演 大阪
車いすダンスを障害者の職業に−という目標を掲げるグループ「ジェネシスオブエンターテイメント」が25、26の両日、大阪市浪速区の大阪人権博物館・リバティホールで車いすダンスの公演を開く。

グループの結成は平成9年。障害のある人とない人の車いすダンスを通じた共通の生きがいづくりを目指し、大阪市中央区で活動を開始。教室の開催や府内の小・中・高校への講師派遣を活動の軸に据える一方、メンバーの技量向上を図るため、国内外の大会に参戦。これまでに、全国選手権やアジア大会のチャンピオン、世界選手権8位入賞者を輩出した。

また、車いすダンスを「生きがい」から「職業」にしようと20年からは公演を有料化した。

今年のプログラムは、社交ダンスや創作ダンスなどの4部構成。舞台演出を担当する林佐恵さん(39)は「今回のテーマは『輝き』。演者一人一人の輝きがお客さんに伝われば」と話していた。

25日は午後6時半開演、26日は午後1時半開演。定員は両日とも275人(車いす席あり)。入場料は2千円(高校生以下千円)。障害者と介助者は1500円。チケットの申し込みや問い合わせは坪田建一代表((電)090・4030・9540)。

■2012.8.12  逗子の介護事業所がヘルパー架空請求で指定取消し、返還金2億円――神奈川
神奈川県は7月27日、社会福祉法人「湘南の凪」が運営する「湘南の凪地域生活支援サービス事業所」に対して、障害福祉サービス事業者の指定を8月10 日付で取り消すと発表した。

県によると、同事業所は2008年4月から2012年3月にかけ、グループホームなどの利用者延べ42人分について、食事や入浴など居宅介護サービスの訪問介護員を派遣したとして、記録票を改ざんし、請求限度上限額に合わせて介護給付費1億4,457万円を不正に請求していた。県は加算分を加えた約2億円の返還を求める方針。

【事業所概要】
■事業者名:社会福祉法人湘南の凪
■事業所所在地:神奈川県逗子市逗子3−2−24
■事業所名:湘南の凪地域生活支援サービス事業所
■サービスの種類:居宅介護
■指定取消年月日:2012年8月10日

【指定取消理由】
不正請求。当該法人が運営するグループホーム等における入居利用者に対する「居宅介護」サービスの提供実態がないにもかかわらず、「居宅介護サービス提供実績記録票」を改ざんし、不正に請求し受領したこと。

■2012.8.15  高齢者施設プールで69歳死亡…市、通報せず
富山市は14日、同市星井町の高齢者福祉施設「市角川介護予防センター」の歩行用プールを利用していた市内の女性(69)が13日溺れ、同日夜、救急搬送先の市内の病院で死亡したと発表した。

市は水死とみている。

市長寿福祉課などの発表によると、女性は同日午前11時20分頃に入館。プール利用前に看護師の立ち会いで行った血圧などの健康チェックでは問題なかったという。午後0時20分頃に深さ1メートルのプールでうつぶせで沈んでいるのを他の利用者が発見。搬送時には意識も呼吸もなかったという。

同センターは、健康長寿の実現などを目的とした施設で65歳以上で体力のない高齢者らが利用できる。女性は今年4月、個人会員になり、2日に1回程度利用していた。事故当時、プールには17人の利用者と、監視員ら職員が2人いた。長寿福祉課の岡地聡課長は「監視体制に問題はなかったが結果的に事故が起きた。監視員を増やすなど、監視体制の改善を図りたい」と話している。

一方、事故の発表が14日になり、県警にも通報していなかった。岡地課長は「遺族の許可を得てからと考え時間がかかった。警察に報告するほどの事故と考えなかった」と説明。県警は14日、市の発表を受け、事故の把握のために捜査員を派遣した。

■2012.8.15  風しんの累積患者数が1000人超に- 過去最多、昨年の2.7倍に
今年の風しんの累積患者報告数がついに1000人を超えた。国立感染症研究所感染症情報センターのまとめによると、年明けから5日までに報告された累積患者数は1016人だった。全数報告が始まった2008年以降、患者報告数がもっとも多かった11年の371人の2.7倍に達している。

都道府県別に累積患者報告数を見ると、東京の235人が最も多く、以下は大阪の199人、兵庫の191人、神奈川の80人などと続いている。

男女別に見ると、男性が775人で、女性の241人の3.2倍に上っている。また、男性患者の年齢別の内訳を見ると、「30―39歳」が38%と最も多く、「20−29歳」が24%、「40−49歳」が19%と続いている。
 
厚生労働省の担当者は、「20歳から40歳代の男性は、予防接種を受ける機会が少なかった人々が含まれている。職場での集団感染など、こうした年齢層が集まったところにウイルスが侵入する機会があり、患者数が増加したのではないか」と話している。

直近の1週間(7月30日−8月5日)の患者報告数は82人で、前週の120人から38人減少。都道府県別では、東京の26人が最も多く、愛知、大阪、兵庫が各8人、埼玉、神奈川が各7人と続いた。

■2012.8.16  産婦人科医院経営の博愛会が自己破産申請- 広島市
東京商工リサーチによると、広島市内で「真野産婦人科」を運営していた医療法人社団博愛会(同市安佐北区、佐々木和子理事長)は8日付で、広島地裁に自己破産を申請した。負債総額は約2億2000万円。

商工リサーチや法人登記によると、博愛会は1989年6月の設立。2002年3月には診療所を増設し、陣痛、分娩、回復までを同じ部屋で過ごせる「LDRシステム」を県内で初めて導入。地域で人気の高い産婦人科の一つとして知られていた。

しかし、経営面をめぐる内部トラブルなどで昨年10月以降は診療の継続が困難な状況に陥り、市保健所によると、同月末日付けで真野産婦人科の休止届けが出されていた。

■2012.8.16  食中毒は支援物資が原因か…宇治豪雨
13〜14日の大雨で孤立状態になった京都府宇治市の炭山地区(120世帯、計約330人)で住民らが下痢や嘔吐おうとなどの食中毒症状を訴えた問題で、救急車で運ばれるなどして16日未明までに病院で手当てを受けた住民が80人以上に上ることが、宇治市の調べでわかった。数人が入院したが、いずれも軽症。市の支援物資が原因の可能性があり、京都府と市が調査している。

15日午後8時30分頃、体調不良を訴える住民から同市に連絡があった。地区につながる京滋バイパスが通行止めになっていたため、隣接の京都市消防局の応援も含めて救急車など20台が一般道で地区に向かい、16日未明までに小学2年(7)〜89歳の男女28人を搬送。ほかの住民は、自力で病院へ行ったという。

同地区では、災害で電気、水道などもストップしたため、ヘリコプターで運んだ支援物資のおにぎりやパン、ペットボトルの水が、15日夕〜夜に配られた。その後、症状を訴える人が続出し、市は、残っていたおにぎりとパンを回収した。

栢木かやき利和・宇治市市長公室長は、「市が配給したおにぎりやパンが原因としたら大変申し訳ない。原因を早急に解明する」と話している。

■2012.8.16  宇都宮で男性3遺体 障害持つ2人「要介護5」
15日夜、宇都宮市宮の内のアパート1階と付近の乗用車から遺体で見つかった3人のうち、障害を持つ2人は最も重い「要介護5」の認定を受け自力でほとんど動けない状態で、室内で首をつって発見された男性らが介護していたという。かいがいしく世話をしていた姿を度々目にしていた近隣住民は「まさかこんなことになるとは」と話し、驚きと悲しみに包まれた。

県警によると、要介護者の2人は男性の兄と弟とみられ、兄が乗用車から、弟が室内からそれぞれ首を絞められた状態で見つかった。男性は15日午前、兄を特別養護老人ホームから病院に連れて行ったという。その後、弟のいるアパートに向かったとみられる。

アパート管理人の妻によると、弟は約2年前、アパートに入居。男性は弟の介護のためにほぼ毎日アパートを訪れていたという。また、男性以外にもヘルパーが午前と午後の2回、介護に訪れていた。

入居の際、車いすに乗った弟と、男性が管理人のもとに菓子を持ってあいさつに訪れたこともあり、介護に努める様子がうかがえたという。妻が2、3日前に男性とアパートで顔を合わせた際、「いつも面倒を見て偉いね」と声をかけたところ「しょうがないですよね」と答え笑顔をみせた。

突然の事件に「まさかこんなことが起きるとは思ってなかった」とショックを隠しきれない様子だった。

■2012.8.17  介護労働者の離職率、16・1%で過去最低
介護労働者の2011年の離職率は16・1%で、調査を始めた04年以降で最低となったことが17日、財団法人「介護労働安定センター」が公表した介護労働実態調査でわかった。

調査は11年10月1日現在で、全国の介護サービス事業所を対象に実施、7070事業所(回答率41・2%)が回答した。

1年間に辞めた職員の割合を示す離職率は、訪問介護員が13・8%、高齢者施設などで働く介護職員が16・9%で、全体では16・1%となり、前年に比べ1・7ポイント改善した。

一方で、従業員の不足感を訴える事業所は、「大いに不足」「不足」「やや不足」を合わせて、53・1%。前年に比べ2・8ポイント増え、3年連続で増加した。

■2012.8.17  熱中症搬送、7月としては最多の2万1082人
総務省消防庁は17日、7月の熱中症による救急搬送状況を発表した。

全国で搬送されたのは、前年(1万7963人)を約17%上回る2万1082人で、同庁が統計を取り始めた2008年以降、7月としては最多となった。月別では、10年8月の2万8448人に次ぐ搬送者数だった。

年齢別では、65歳以上の高齢者が9531人で、全体の4割強を占めた。都道府県別では、愛知県が1483人で最多。埼玉県1459人、東京都1433人と続いた。同庁は引き続き、こまめな水分補給などの熱中症対策を取るよう呼びかけている。

■2012.8.17  腰痛の介護職、4人に1人「5年以上痛い」
腰痛に悩む月給制介護従事者の4人に1人は、5年以上にわたって痛みに耐えながら働いている―。そんな実態が、日本介護クラフトユニオン(NCCU)の「2012年度就業意識実態調査」(速報版)で明らかになった。

調査は今年3月、全国のNCCU組合員5000人を対象に実施。月給制の従事者1739人(回収率69.6%)、時給制の従事者1281人(同51.2%)から回答を得た。

月給制従事者に、仕事が原因の健康問題があるかどうかを尋ねたところ、52.0%が「ある」と回答。「ある」と答えた人に対し、具体的な症状(複数回答)を尋ねた質問では、「腰が痛い」が64.6%で最多となり、以下は「肩がこる」(47.6%)、「イライラする」(32.6%)、「頭痛がある」(21.2%)などと続いた。
 
さらに「腰が痛い」と答えた人に、痛みが続いている期間を尋ねたところ、最も多かったのは「5年以上」(25.3%)で、以下は「3年以上5年未満」(15.9%)、「2年以上3年未満」(13.0%)、「1年以上2年未満」(10.8%)、「6か月以上1年未満」(9.6%)、「1か月未満」(9.4%)などとなった。

NCCUの村上久美子政策部長は、調査結果について「介護をはじめて間もないうちに、腰を痛め、そのまま働き続ける人が多いのではないか」と分析。対策として▽腰痛体操や正しい介助法の実践▽腰に痛みを感じる場合は、腰痛ベルトを適切に使用▽事業所は、通常の健診以外に腰痛健診も実施する―などを呼び掛けている。

■半数以上の月給従事者が「子供を自社に入社させたくない」

また、「子供を自社に入社させたいか」という質問では、月給制の従事者の58.2%が「させたくない」と回答。「させたい」(3%)や「どちらともいえない」(37.3%)を大きく上回った。一方、時給制の従事者では、「どちらともいえない」(50.7%)が最も多く、「させたくない」は43.1%、「させたい」は4.4%となった。

仕事のやりがいと働く意識に関する質問(個別質問ごとに割合を調査)では、月給制の介護従事者の53.0%が「最近体がだるくなった」と回答。また、「休み明けに出勤するのがつらい」人は51.7%に達したほか、49.7%の人が「仕事が終わったらヘトヘトになる」と答えた。一方、時給制の従事者では「最近体がだるくなった」人は37.0%、「休み明けに出勤するのがつらい」人は31.4%、「仕事が終わってヘトヘトになる」人は35.7%となった。

■2012.8.17  徘徊で感染拡大――施設内での結核集団感染について【厚労省事務連絡】
厚生労働省は7月30日、全国の老人施設に向け、「精神科病院(認知症病棟)における結核集団感染事例の発生をふまえた高齢者介護施設等における結核対策について」事務連絡を行った。

内容は、東京都内の精神科病棟(認知症病棟)にて、結核の集団感染があったことから、高齢者施設における感染拡大防止のため、普及啓発に努める旨、周知したもの。

集団感染を起こした精神科病棟(認知症病棟)では、初発患者を含む10名の発病者(内3人死亡)及び68名が感染した。 今回は、初発患者が認知症で症状の訴えが少なく発見が遅れたこと、また徘徊行為があり多数の入院患者及び病院職員と接触していたことなどが感染拡大の一因になったものと考えられる。

高齢者が入居する施設ではこの事例と共通する感染拡大要因が想定されるため、「結核院内(施設内)感染予防の手引き」の内容について、運営者および現場職員等は十分周知しし、結核に関する普及啓発に努めるよう促している。

■2012.8.20  O157 5人目の死者...施設の100歳代女性
白菜の浅漬けを原因とする札幌市周辺の高齢者施設などで発生した腸管出血性大腸菌(O(オー)157)による集団食中毒で、北海道は19日、江別保健所管内の介護保険施設に入所していた100歳代の女性が死亡したと発表した。道と札幌市の集計によると、一連の集団食中毒による死者は5人となった。そのほかにO157は未検出だが、この浅漬けを食べて入院した2人が死亡しており、道が再検査している。

道によると、死亡した女性は10日から血便、下痢などの症状を訴えて入院していたが、19日に多臓器不全で死亡した。女性は、高齢者施設で一連の食中毒の感染源と見られる「岩井食品」(札幌市西区)が製造した白菜の浅漬けを食べており、女性の便からO157が検出された。

道と札幌市保健所によると、19日正午現在の発症者は104人。現在も66人が入院しており、少なくとも3人が集中治療室(ICU)で治療を受けるなど重症だという。

集団食中毒は、札幌、江別、千歳、苫小牧の4保健所管内の介護保険施設の入所者らが今月3日頃から腹痛や下痢などの症状を訴え始め、発覚した。白菜の浅漬けは、介護保険施設以外に、スーパーやホテル、飲食店などにも出荷された。死亡したのは、施設に入所する80歳代以上の高齢者が6人で、札幌市内のスーパーで購入した浅漬けを食べた4歳女児も死亡した。

■2012.8.21  福祉法人が提訴取り下げ、元事務局長遺族に対して
米沢市の社会福祉法人「米沢栄光の里」(吉田一明理事長)で、5月に自殺した元事務局長が4000万円を横領したとされる問題に絡み、元事務局長の妻と3人の子供が遺産を相続放棄していたことが20日、関係者の話で分かった。妻らは負債も相続しないことになるため、同法人は、4人を相手取って山形地裁米沢支部に起こした損害賠償請求訴訟を取り下げた。

同法人が「内部調査で横領が判明した」と発表した4000万円に比べ、元事務局長の残した財産が少なかったことが理由とみられる。訴訟の第1回口頭弁論は21日に予定されていたが、法人側の取り下げを受け、裁判が行われないことが今月15日に確定した。

法人側は、別の親族を相手取った訴訟を検討するというが、代理人の伊藤三之弁護士は「他の親族も相続放棄する可能性が高い」としている。今後、元事務局長の相続財産管理人が選任され、債務の清算が行われる見通しだが、法人が回収できる額は4000万円を大幅に下回りそうだ。

法人側は「施設運営に直ちに影響は出ることはない」と強調している。

■2012.8.22  社会福祉法人で1490万円使途不明 宮城・栗原
栗原市内で特別養護老人ホームなど13施設を運営する社会福祉法人「豊明会」(石橋弘二理事長)の2008、09年度の各決算で計1490万円の使途不明金があったとして、県は21日、社会福祉法に基づき、同法人に業務改善の措置命令を出したと発表した。命令は7月26日付。同法に基づく措置命令の発令は、県内で初めて。
 
県によると、豊明会は08年度に造園工事費700万円、09年度に研修会費105万円を現金で支出したように装って会計処理した。支払先とされる業者は、県の調べに対し、現金の受け取りを否定した。
 
両年度にわたって現金支出したとされる消耗品と備品の購入費計685万円については、支払先とされる業者が受け取りを認めたものの支出を裏付ける書類はなかった。
 
使途不明金は、県による10年10月の一般監査で発覚。昨年12月までに一般監査と特別監査を2回ずつ行い、事実関係を確認した。措置命令は、責任の明確化や会計経理体制の見直しなど5項目。
 
措置命令を受けた当時の石橋英治理事長は、管理監督責任を取って6月に造園工事費分を弁済。今月13日に理事長と理事を辞任した。県の監査に対し「(不正なことは)何もやっていない」と話したという。現在は、豊明会が運営する3施設の施設長に就いている。
 
県は県警と相談し、刑事告発するかどうか検討する。

■2012.8.22  府盲人福祉センター:建て替えの方針 松井知事 /大阪
松井一郎知事は21日、建設から50年が経過して老朽化している府盲人福祉センター(大阪市天王寺区)について、建て替える方針を決めた。同センターの視察後、報道陣に「早期に建設場所を決定したい」と述べた。

センターは視覚障害者の生活訓練や書籍の点訳、ヘルパーの養成事業などを実施。施設はバリアフリー化されておらず、トイレも男女共用で、利用者から改善を求める声が上がっていた。松井知事は「現状では災害の際に安全確保も難しい。予算は厳しいが知恵を絞りたい」と意欲を見せた。

■2012.8.23  処遇改善交付金、半数の事業所「一時金」に
介護労働安定センターは8月23日、「2010年度介護労働実態調査」の結果を発表した。調査では、おおよそ半数の事業所が介護職員処遇改善交付金を一時金として職員に支払っていることが明らかになった。

調査は昨年11月、全国の介護保険サービス事業所と、そこで働く介護労働者を対象に実施(調査対象日は10月1日)。事業所調査では7345事業所(有効回答率43.1%)から、労働者調査では1万9535人(同38.2%)からそれぞれ有効回答を得た。

事業所への調査のうち、介護職員処遇改善交付金の給付に伴う経営面での対応を尋ねた結果(複数回答)、「一時金の支給」(50.0%)が最も多かった。

以下、「諸手当の導入・引き上げ」(29.8%)、「基本給の引き上げ」(15.7%)、「教育研修の充実」(15.3%)、「昇進・昇格要件の明確化」(9.6%)、「非正規職員から正規職員への登用」(8.5%)、「職員の増員による業務負担軽減」(7.6%)などが続いた。介護職員処遇改善交付金が、一時的な待遇改善にあてられる傾向が強い点について、同センターの担当者は「制度自体が時限的なものであるためではないか」としている。

■人材不足に悩む事業所が増加。半数以上に

また、介護従事者の過不足の状況について尋ねた質問では、
「大いに不足」「不足」「やや不足」と回答した事業所が50.3%(前年度46.8%)となり、「適当」という回答(48.8%、前年度は52.3%)を上回った。

人材不足に悩む事業所が増加し、半数以上に達した背景について、同センターの担当者は「他業種で有効求人倍率が若干改善したことが影響し、介護で働こうという人材が減ったためではないか」としている。

過去1年間の介護職員の離職率は17.8%で、前年度(17.0%)に比べてわずかに増えた。一方、職員の採用率は25.8%(前年度25.2%)となった。
また、事業所に対して介護サービスを運営する上での問題点(複数回答)を尋ねた結果、「今の介護報酬では人材の確保・定着のために十分な賃金を支払えない」との回答が51.5%と最も多く、以下は、「良質な人材の確保が難しい」(48.5%)、「指定介護サービス提供に関する書類作成が煩雑で、時間に追われてしまう」(36.3%)、「経営(収支)が苦しく、労働条件や労働環境の改善をしたくてもできない」(29.1%)などが続いた。

一方、介護労働者に対して労働条件面での不満などを尋ねたところ、最も多かったのは、「仕事内容の割に賃金が低い」の46.6%で、以下は、「人手が足りない」(40.1%)、「有給休暇が取りにくい」(36.9%)、「業務に対する社会的評価が低い」(32.2%)、「身体的な負担が大きい(腰痛や体力に不安がある)」(31.1%)などが続いた。

■2012.8.23  日本の人口は3年連続で減少、少子化に歯止めかからず――総務省
総務省によると、平成24年3月31日現在の住民基本台帳に基づく全国の人口は、1億2,665万9,683人で、前年に比べて26万3,727人減少していた。調査を開始した昭和43年以来、平成18年に初めて人口が減少し、20、21年は再び増加したものの、平成22年から3年連続で減少。

また、出生者数は104万9,553人で4年連続で減少し、死亡者数は調査開始以来最高の125万6,125人だった。

さらに、減少傾向が続いていた転入者数、転出者数ともに昨年度より増加し、それぞれ517万7,080人、525万2,534人になった。

全人口に占める年少・生産年齢人口の割合は、調査を開始した平成6年以来、毎年減少している一方、老年人口の割合は毎年増加している。現在、年少人口(0〜14歳)は13.25%、生産年齢人口(15〜64歳)は63.32%、老年人口(65歳〜)は23.43%。

都道府県別の人口増加数、人口増加率をみると、人口増加数が最も多いのは東京都で3万6,810人、人口増加率が最も大きいのは沖縄県の0.66%だった。
東京圏、名古屋圏、関西圏という三大都市圏の人口は50.75%で、昨年に引き続き、全国人口の半数を上回った。

■2012.8.25  水道料金730万円逃れか 熊本市の福祉施設
社会福祉法人白川直会[なおらい]会が運営する指定介護老人福祉施設「るり苑」(熊本市東区上南部)が、井戸水取水量をごまかす不正配管を設置し、2004年から08年までの4年以上にわたって下水道使用料の徴収を免れていたことが24日、関係者らの証言で分かった。同法人も不正を認めており、市上下水道局は週明けにも事実関係の調査を始める。

関係者や同法人によると、徴収を免れていたとみられるのは04年4月〜08年7月。下水道使用料は月3万円台以下で推移し、その後、月14万〜20万円程度に跳ね上がった。

下水道使用料は取水量に応じて決まるが、同施設では、井戸水をくみ上げて浴槽などに配水する際、メーターを通らない配管で取水量をごまかしていたという。

同法人が支払いを免れた使用料は計約730万円に上るとみられる。上下水道局は配管の実態などを詳しく調査、事実を確認した上で、地方自治法に基づく時効(5年)が成立していない使用料と過料を請求する方針。

同法人の角中[かくなか]直也理事長(75)は「08年に不正を知り、改善を指示した。その時点で市に申告すべきだったが、当時は思いが至らなかった。大変申し訳なく、自主的に未納分を支払いたい」と話している。

施設の配管工事は熊本市内の管工事業者が行い、当時、角中理事長が社長を務めていた。不正配管の指示などについて関係者の話は食い違っている。

市上下水道局は「厳正に対処していきたい」としている。同市ではことし6月、温泉施設で同様の不正行為が発覚している。

■2012.8.27  「脳脊髄液減少症」裁判所が初めて認定の判決
交通事故が原因で脳や脊髄の周囲を満たす髄液が漏れ、頭痛などの症状が表れる「脳脊髄液減少症」を発症したとして、神奈川県内の男性(29)が加害者に約5000万円の損害賠償を求めた訴訟で横浜地裁(森義之裁判長)が、国が昨年10月に示した新たな診断基準をもとに「(事故による)同症の疑いが相当程度ある」と認定し、約2300万円の賠償を命じる判決を言い渡していたことがわかった。

同症には明確な診断基準がなかったが、昨年10月に厚生労働省研究班が、MRI(磁気共鳴画像)などの画像から、髄液の漏れを判断する基準を示した。男性を支援するNPO法人「脳脊髄液減少症患者・家族支援協会」によると、同種の訴訟で、新基準をもとに同症を認定した判決が明らかになったのは初めて。判決は7月31日付で、加害者側は控訴している。

■2012.8.27  認知症高齢者10年で倍増、300万人超に- 厚労省が推計、8年後には400万人超
一人では自立した生活を送るのが難しい認知症高齢者が、最近10年間で倍増し、305万人に達したことが厚生労働省の推計で明らかになった。推計では、8年後に400万人を超えるとも予測されている。

厚労省では、2010年の要介護認定のデータを基に、65歳以上の認知症の人数を推計。生活に支障をきたす症状や行動が多少見られるが、誰かが注意していれば自立できる「日常生活自立度2」以上の人数を算出した。

その結果、02年時点には149万人だった認知症高齢者は、10年時点で280万人となった。さらに12年には305万人、20年には410万人まで増加。25年には470万人に達すると予測している。

■認知症高齢者の居場所、最多は「居宅」
 また、10年9月末時点の認知症高齢者の居場所では、居宅が140万人で最多となった。以下は、介護老人福祉施設(41万人)、医療機関(38万人)、介護老人保健施設等(36万人)、グループホーム(14万人)、特定施設(10万人)だった。

■2012.8.31  医療事故報告、過去最多の約2800件- 医療機能評価機構
日本医療機能評価機構によると、2011年に報告された医療事故情報は前年比96件増の2799件で、同機構が「医療事故情報収集・分析・提供事業」を始めた04年以降で最も多かった。同機構では、「医療事故を報告することが定着してきていることの表れ」としている。

同機構は、医療事故の予防や再発防止のため、事業に参加する医療機関に対し、実施した医療や管理によって患者が死亡したり、予期せぬ処置が必要になったりした事例の報告を求めている。11年末時点の参加機関数は882施設(前年比32施設増)。このうち、特定機能病院など参加が義務付けられている273施設からは、208施設が計2483件の医療事故情報を報告した。任意で参加する609施設では、86施設から計316件の報告があった。

2799件の概要を見ると、「療養上の世話」に関連する事故が1155件(41.3%)で最多。以下は、「治療・処置」に関する事故が579件(20.7%)、「ドレーン・チューブ」に関する事故が295件(10.5%)などと続いた。
 程度別では、死亡した事例が165件(5.9%)、障害残存の可能性が高いとされる事例も285件(10.2%)あった。

医療機関が事故と関係したと判断した「当事者」の職種別では(複数回答)、「看護師」2048件(56.5%)、「医師」1327件(36.6%)などとなっている。
 
発生要因では(複数回答)、「確認を怠った」の904件(12.8%)が最も多く、以下は「観察を怠った」806件(11.4%)、「判断を誤った」768件(10.8%)などの順だった。

■ヒヤリ・ハット事例情報も初の3万件超え

誤った医療が実施されたが、患者への影響が認められなかったり、医療に誤りがあったが、患者に実施される前に発見されたりした事例を集める「ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業」でも、日本医療機能評価機構が厚生労働省から事業を引き継いだ04年以降で最多の3万1549件(前年比6244件増)の事例情報が寄せられた。

事例の概要は、「薬剤」に関するものが1万4099件(44.7%)で最も多く、以下は「療養上の世話」に関する事例が6109件(19.4%)、「ドレーン・チューブ」に関する事例が4617件(14.6%)などと続いた。
 
このうち、実施される前に発見された1万4734件の事例について、実施された場合に想定される影響を見ると、「軽微な処置・治療が必要もしくは処置・治療が不要と考えられる」事例が1万3854件(94.0%)とほとんどを占めたが、「濃厚な処置・治療が必要であると考えられる」事例が514件(3.5%)、「死亡もしくは重篤な状況に至ったと考えられる」事例が366件(2.5%)あった。

■2012.8.31  健常者の5倍に上る障害者の生活保護受給率 困窮する彼ら・彼女らを手助けする支援者たちの本音
地方に住み、生活保護を受給している障害者たちは、生活保護受給者の中でも最も立場の弱い人々である。この人々の支援者たちから見て、生活保護とはどのような存在なのだろうか? どのように運用されることが望ましいのだろうか? そもそも、障害者にとっての「自立」とは何だろうか? 

今回は、健常者中心の社会からは見えづらい生活保護の意義を、障害者の支援者たちを通じて明らかにしたい。

根本あや子さん(63歳)。特定NPO法人「サンネット青森」理事(代表)。青森市生まれ。都会に憧れて東京の大学に進学し、横浜市役所の福祉部門に18年勤務した後、青森にUターン。1999年、市民団体「サンネット」を設立し、精神障害者のためのオープンスペースを開所。現在の「サンネット青森」へと発展させた。

最大の問題は、生活保護から脱却する道筋が見えないこと
「生活保護は、必要な時に受けられて、必要なくなったら出られるというふうに、行き来ができるのがいいなあ、と思ってるんですよ」

こう語るのは、根本あや子さん(63歳)。青森県青森市で、精神障害者の居場所であり作業所でもある「サンネット青森」を運営している(前回参照)。

「サンネット青森」の利用者である精神障害者の相当数は、生活保護を受給している。負傷や病気のために働けない傷病者と異なり、障害者は基本的に、一生にわたって障害者のままだ。障害が認定されて障害者手帳が交付されるための条件の1つは、「症状の固定」である。治癒の見込みがある間は、原則として、障害者手帳は交付されない。では、障害者たちは、どのようにして生活保護から「出られる」のだろうか?

「生活保護から脱出するというモデルが、青森ではなかなか見えないんです。特に、精神障害があって生活保護を受けた場合に、『そこから抜けてもやっていける』という道筋が見えません」

2011年、青森県の完全失業率は、6.1%であった。全国平均の4.6%に比べると、数字だけでも求職の困難さは明確だ。2010年(注1)、青森県の生活保護率は、2.08%。同年の全国平均1.52%に比べると、やはり、かなり高い。

また青森県は、最低賃金が生活保護水準以下となっている自治体の1つでもある。就労の機会が少ない上に、十分な収入を得られる機会も少ない。生活保護利用者が増えるのは、必然といえば必然である。

では、障害者の経済状況はは、現在どうなのだろうか? 障害者ゆえに、健常者より恵まれている可能性があるのだろうか? それとも、より劣悪なのだろうか?

(注1)
その年の生活保護に関する公式統計は、翌年の秋ごろに公表される。2012年8月30日現在、2011年の統計結果は、まだ公表されていない。

障害者の貧困率はなんと56%就労推進どころか実態把握も不十分な障害者の経済状況

結論から言うと、障害者の多くは非常な低所得状態にある。「親族に扶養される」「生活保護を受給する」以外には、生計の道がない。何らかの事情で親族の扶養を受けることができない場合には、生活保護を受給することが、生きるための唯一の選択肢だ。

そもそも、障害者の所得については、信頼できる調査が非常に少ない。その数少ない調査結果の1つ(注2)によれば、2010年、健常者の可処分所得の中央値が224万円とされているのに対し、障害者の所得(注3)の中央値は50万円〜100万円の間に位置していた。同年、健常者の貧困率(注4)が16%であったのに対し、障害者の貧困率は56%であった。

障害者がこれほど貧困であれば、障害者の生活保護受給率は高くなるのが自然だ。同じ調査によれば、2009年、健常者の生活保護受給者比率は約1.7%だったが、障害者では9.3%であった。健常者の約5倍である。

収入が50万円〜100万円の範囲にある障害者は、障害基礎年金を受給し、さらに作業所などでの福祉的就労で報酬を得ている例が多いと推察される。ちなみに、福祉的就労に対しては、最低賃金法は適用されない。しばしば「生活保護費より安い最低賃金」が「生活保護費を抑制すべし」の根拠とされるが、福祉的就労の報酬は、その最低賃金より低いのだ。2010年度、作業所の工賃月額の全国平均は、約1万3000円であった。

障害児も義務教育を受けるのが当然となったのは、1979年のことであった。1973年以前に生まれた、現在およそ40歳以上の障害者たちは、義務教育すら受けていないことが少なくない。就労の数多くの前提が欠落している状態で就労を求められているのが、多くの障害者の現実である。

(注2)
2012年4月に発表された「障害のある人の地域生活実態調査の結果(第一次報告)」による。調査を行ったのは、障害者作業所の連絡会である「きょうされん(旧称:共同作業所全国連絡会)」。

(注3)
障害年金を含む。障害基礎年金は、最高の1級で年間983,100円(単身者の場合)。

(注4)
年収が、同年の貧困線(日本人の可処分所得の中央値である224万円の1/2、112万円)未満である人々の比率。「平成22年国民生活基礎調査」(厚生労働省)による。

社会の余裕のなさが障害者のところまで降りてきた

根本さんは、青森県青森市で生まれ、高校卒業までを青森で過ごした。その後、東京の大学に進学し、卒業後は長年、福祉職として横浜市役所に勤務していた。寄せ場として有名な寿町のある地域で、福祉事務所に勤務していたこともある。生活保護の裏も表も深く知る上に、高齢者福祉・障害者福祉でも豊かな経験を持つ、福祉のベテランだ。

「精神科病院を退院しても地域に居場所のない精神障害者たちの居場所を作ろう」と、青森市に戻ってきた根本さんは、首都圏の大都市とは全く違う「貧困」を見る。

「生活保護がうんぬんというより、生活に困っている人がたくさんいて。良いか悪いかは別として、親の年金で子どもが食べていたり、障害を持った子どもの年金で親が食べていたり」(根本さん)

地方ならではの貧困があり、そこでの暮らしを「家族福祉」が下支えしている。

「あるいは、野菜や魚をあげたりもらったりとかの助けあい。特に郡部では、そういったことが日常的にあります。暮らし方に、現金に換算できない面があって、それが生活保護を受けないで暮らす貧しい人々を支えているところもあります。生活保護費や最低賃金の金額がどうこうというより、助けあって暮らしていかなくてはいけない地域の貧しさですね」(根本さん)

その根本さんは、障害者の就労を推進する昨今の動きを、単純に「障害者も社会参加することは良い」とは考えていない。

「『能力を生かして、自己責任で頑張れ、困るのは自分の能力のせいだ』という考え方が、障害者のところまで降りてきたってことじゃないでしょうか。社会が、そこまで余裕をなくしているんですよね」(根本さん)

では、どうすればいいのだろうか。何ができるだろうか。

障害者就労支援に期待していない障害者作業所を運営する障害当事者

生活保護にまつわる問題に関して、

「次の選挙で自民党が勝ったらダメですね。自民党以外にしっかりしてもらわないと」

と明快に語るのは、佐野卓志さん(57歳)。愛媛県松山市で、精神障害者のための作業所「ルーテル作業センター ムゲン」を運営している。

「ムゲン」には、作業所の前身時代から数えると、既に20年に及ぶ歴史がある。精神科病院を退院したが、トラブルを起こす可能性が高く一般的な作業所に受け入れられない人々を、積極的に受け入れている。ちなみに佐野さん自身も、統合失調症を持つ精神障害者である。福祉の専門家である「サンネット青森」の根本さんとは対照的だ。

政策の問題は、結局は政治にしか解決できない。しかし、

「民主党、あそこに希望を持ったのはダメでしたね」(佐野さん)

それでは、どの政党に投票すれば、社会保障の後退を食い止められるのか。政権を取れば、それで済むわけではない。各省庁との調整を行い、政策を形にすることは、与党と言えども容易ではない。

佐野さんは、厚生労働省が近年「工賃倍増5カ年計画」などで推進する障害者の就労支援に対しても、

「大した成果を上げられずに、終わると思います」

と厳しい視線を向ける。

佐野さんの運営する「ムゲン」には、現在、概ね30人程度の利用者がいる。その半数以上が、生活保護を受給している。働きたい利用者は、古い着物の加工や機織りなどの仕事をして工賃を得ることができる。中には、一般就労が可能になる人もいる。一般就労した人は、20年間で3人だそうだ。

その佐野さんが、重視しているのは、人間関係の力だ。

「ムゲンは、一番大変な人が利用者として来ますから、もう、毎日、大変ですよ。人間関係、トラブルだらけです。職員どうしのトラブルもあります。でも、トラブルが起きるって、それだけ『本音が出てる』ってことですよね」(佐野さん)

問題は、トラブルが起こることではなく、トラブルを通じてどのような体験をするかである。

「僕は、どちらかというと、トラブルを『良いこと』と捉えています。トラブルの後、間を取り持って人間関係を修復して元通りにすることを目指しています。一回のトラブルで人間関係は切れることが多いですから、そうではない、強い人間関係を体験してもらいたいと思っています」(佐野さん)

結局のところ、できることは、社会や政策に働きかける努力を放棄しないこと。その一方で、就労のずっと手前で障害者が抱えている数多くの欠落を、1つ1つ埋めていくこと。そういった地道なことの数々でしかなさそうだ。

「生活保護を選択する」という自立の始め方

「サンネット青森」の根本さんは、障害者が生活保護を受給することを「自立の始まり」と考えている。

障害者の多くは、若い時期には親などの家族と同居している。親に充分な収入があれば、就労できなくても生きていける。30代でも親から小遣いを貰い、不自由なく生活ができる。しかし、障害者本人の自尊感情にとって、好ましい状態ではない。本人にも、親に対する心苦しさがある。

いずれ、親は退職し、年金生活に入る。本人は「いつまでも親に扶養されているわけにはゆかない」という現実を意識せざるを得ない。といっても、経済的自立を目指すことは困難な現実がある。

「障害があって収入がなければ、親との関係を考えるときに、どこかで自立するときに生活保護を考える。それは『当然だろうな』と思います」(根本さん)

そこで重要な問題は、生活保護受給者としての生活を、本人がどう考えるかだ。

「生活保護には、『お金に困っているから受ける』で済まないものがありますよね。生活保護を受けることに対する道徳的な何かとか、スティグマ(烙印)とか、生活保護の世界に押し込まれるような圧力とか」(根本さん)

生活保護の住居扶助を利用して住むことのできる民間アパートが、親の家よりも快適なことは少ない。生活保護を受給したことが理由で、できたはずの結婚ができなくなるかもしれない。

「それでも『自分は生活保護で、自分の力で頑張る』と決意するのが、障害者の自立の始まりなんじゃないかと思います」(根本さん)

人を分断しようとする力に抗いつつ

根本さんは現在、障害者の就労支援について「受け止め切れない」という思いを抱いている。

「労働市場での能力のある/なし」で障害者が区分されたら、次には「就労できる障害者/就労できない障害者」の分断が起こるだろう。いずれは、障害者が「生活保護を必要としない障害者」「生活保護を必要とする障害者」の2つに分断されてしまうかもしれない。

昭和24年に生まれた根本さんは、終戦直後の経済的困難を知っている。電灯は、一家に一個しか許されない時代があった。米も、自由に購入できるわけではなかった。世帯ごとに「米穀通帳」があり、許された量しか購入できなかった。不自由だった。そして、誰もかもが貧しかった。

しかし、根本さんは「今の方が、より生きづらいのでは」という。

現在、自分が失敗すること、敗北することは、自己責任で招いた結果とみなされる。本当はそうではないとしても、貧困になってしまったら、誰に言われなくても「自分の能力のなさが招いた結果」と考えてしまいがちだ。「能力主義」「自己責任」「自己選択」「自主」……どれも、資本主義社会のもとでは、当然であり、好ましいものとみなされている。「頑張ればなんとかなる」という文化。裏返せば「なんとかならないのは頑張らなかったからだ」という文化だ。そして、精神的にも経済的にも追い詰められた人々が、精神科へと流れこんでいる。

今、最も必要な力は、「助け合う」を形にできる力。根本さんは、そう考えている。

「助け合う」相手を、自分と同じような人に限る必要はない。たとえば、生活保護受給者にとってのケースワーカーは、敵対的な存在と考えられやすい。しかし、主張すべきことは主張し、「何ができないか」「何をするのが大変か」について理解を求めていくことはできる。精神障害者の「できない」「大変」は理解されにくく、「ワガママ」と誤解されやすい。だからこそ、福祉行政の窓口にいるケースワーカーに、繰り返し話していかなくてはならない。支援者は、それを代弁しない。ただ付き添い、本人が言うのを応援する。

関係が良好でない親族、過去に自分に虐待を加えたことのある親族への扶養照会も、同様である。黙っているのが、一番いけない。事情を話し、止めてもらわなくてはならない。

そのような努力を繰り返すうちに、最も身近な福祉行政の窓口であるケースワーカーが、自分の理解者になるかもしれない。ケースワーカーと生活保護受給者は敵対関係ではなく、協力関係を作ることができるかもしれない。それも「助け合う」の1つの形だ。

激しい変化の中、個人が生き残りのためにあがいたところで、できることは多くない。しかし、強い人間関係のある社会・助け合える社会を作り、その中で自分も生き残ることは、個人レベルで努力を続けるよりも、はるかに容易であろう。

社会を作るには、個人単位の努力だけではなく、制度の力が不可欠である。次回は立法に関わる国会議員・政策秘書を通して、現在の生活保護制度にどのような力と可能性があるか、どのような問題があるかを考えてみたい。

 

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