残しておきたい福祉ニュース 1996〜社会福祉のニュース

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残しておきたい福祉ニュース

 2012年 
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

 2012. 7. 2 介護保険給付、初めて7兆円を突破- 10年度の事業状況報告
 2012. 7. 4 内部留保多い特養、社福減免の実施率低く- 財務省調査
 2012. 7. 5 8割強の介護職「今夏は利用者の体温不安」- 日清オイリオグループが調査
 2012. 7. 6 『胃ろうよ さようなら 〜明日はおスシを食べにいこう〜』著者 : 竹内 孝仁(国際医療福祉大学大学院教授)
 2012. 7. 9 日本社会福祉士会のサイトが改ざん - 閲覧でウイルス感染のおそれ
 2012. 7. 9 入院患者が結核集団感染、3人死亡 東京・青梅の病院
 2012. 7.10 和歌山県海南市立の特養で介護職員6人による虐待12件、県が市に対して改善勧告
 2012. 7.10 高齢の親の腰痛に対応できてない子どもが半数。寝たきりに繋がる腰痛に注意
 2012. 7.10 医師「気付きにくかった」、結核集団感染3人死亡
 2012. 7.11 東日本大震災:介護保険料、減免終了14万人 岩手と宮城、9月末まで
 2012. 7.12 厚労省 24時間サービスモデル事業 平均訪問回数にばらつき
 2012. 7.13 無資格者がケアプラン作成、指定取り消し- 和歌山のケアマネ事業所が不正請求
 2012. 7.13 横浜の小学校で発達障害児がいじめ被害、学校の対応遅れ転校/神奈川
 2012. 7.13 電動車椅子サッカー日本代表監督に 岐阜の浅岡さん
 2012. 7.18 医療機関の倒産、今年上半期は15件- 過去10年間で最少
 2012. 7.18 介護事業者の倒産、今年上半期は15件- 前年比6件増
 2012. 7.19 熱中症の救急搬送、前週から2.5倍増- 高齢者が4割超
 2012. 7.19 秋田県男鹿市の医療法人に破産開始決定
 2012. 7.20 介護が必要な家族と旅行する介護者は3割弱- 第一生命経済研究所が調査
 2012. 7.22 色覚補正レンズで不便軽減 色覚障害者をサポート
 2012. 7.22 障害者団体、車いす視点で復興提案
 2012. 7.23 高齢者の買い物支援 伊那市の商店街が移動販売
 2012. 7.23 熱中症 「梅雨明け10日」警戒を
 2012. 7.24 国保1人当たり医療費、3%増の29万円- 11年度、国保中央会集計
 2012. 7.24 インターネット薬局の95%が不正サイト。偽造医薬品が及ぼす健康被害とは?
 2012. 7.24 横浜の発達障害児いじめ問題:金沢署、加害児2人を児童相談所に通告/神奈川
 2012. 7.24 慶応大、まばたきで操縦できて自動障害物回避機能なども搭載の車いすを開発
 2012. 7.24 アウトサイダーアート拠点に 蔵改装しギャラリー開設 若葉区・福祉事業所「まあるい広場」
 2012. 7.25 介護施設で事故死 リフト車から車いすごと転落
 2012. 7.25 障害者も自力でヨット操船
 2012. 7.26 障害者を不起訴 福祉支援へ
 2012. 7.26 児童虐待相談件数、過去最多 平成23年度は5万9862件 大阪、神奈川、東京都の順で多く
 2012. 7.26 2011年度の介護受給者、500万人突破- 厚労省の介護給付費実態調査
 2012. 7.26 日本女性の平均寿命、香港に首位明け渡す- 震災の影響、20代の自殺増も
 2012. 7.26 「わが子を医療従事者にしたいか?」医師らに調査。支持された職種は?
 2012. 7.26 病院送迎バスと乗用車が衝突…愛知県尾張旭市
 2012. 7.26 虐待増加:児童相談所パンク…100件超抱える福祉司も
 2012. 7.27 逗子の福祉法人が、介護給付費1億4000万円不正に受給/神奈川 
 2012. 7.27 不正請求で大阪市が居宅介護指定取り消し
 2012. 7.27 胃ろう 選択迫られ家族に迷い
 2012. 7.28 大震災被災者 障害認定請求手続きを
 2012. 7.29 福祉事業所が清掃・除草作業の共同受注開始
 2012. 7.31 発達障害者に求刑超え異例判決 「社会秩序のため」に賛否分かれる
 2012. 7.31 災害弱者 名簿整備率ワースト1…千葉


■2012.7.2  介護保険給付、初めて7兆円を突破- 10年度の事業状況報告
利用者負担を除く2010年度の介護給付費が、前年度に比べ5.6%増の7兆2536億円になったことが、厚生労働省の「2010年度介護保険事業状況報告(年報)」で分かった。介護保険制度創設以来、初めて7兆円を突破した。

1か月平均の給付費(高額介護サービス費などを除く)は、5700億円だった。サービスごとの内訳は、居宅サービスが7.7%増の2955億円(構成比率は51.8%)、地域密着型サービスが9.9%増の520億円(同9.1%)。一方、施設サービスは1.2%増の2225億円(同39.0%)で、構成割合は初めて4割を下回った。

また、10年度末時点の65歳以上の第1号被保険者数は、前年度比0.6%増の2910万人だった。要介護・要支援認定者は4.3%増の506万人で、初めて500万人を超えた。
 1か月平均のサービス受給者数は413万人で、前年度に比べ5.1%増えた。サービス別では、居宅サービスが5.6%増の302万人(同73.2%)、地域密着型サービスが8.3%増の26万人(同6.4%)、施設サービスが1.2%増の84万人(同20.4%)となった。

このほか、保険者が積み立てている介護給付費準備基金の10年度末時点での保有額合計は、前年度比10.5%減の3962億円となった。

■2012.7.4  内部留保多い特養、社福減免の実施率低く- 財務省調査
内部留保の金額が多い特別養護老人ホーム(特養)は、少ない特養に比べて、「社会福祉法人による利用者負担軽減制度」(社福減免)の実施率が低い傾向にあることが3日、財務省の「2012年度予算執行調査」の結果から明らかになった。

特養をめぐっては、厚生労働省が11年12月、1施設当たり約3億円の内部留保を保有しているとのデータを公表している。今回の調査では、特養1087施設の貸借対照表を調べたこのデータを活用し、より詳しい分析を行った。

それによると、内部留保の金額上位30施設の社福減免の実施率は62.1%にとどまり、下位30施設の73.1%を10ポイント余り下回った。全体の実施率は70.8%だった。
 社福減免は、サービスを提供する社会福祉法人が、生活困窮者の利用者負担を軽減する仕組み。一部の有識者からは「内部留保を社福減免の原資にすべき」との指摘も出ている。

また、1施設当たりの内部留保額を入所定員別に見たところ、定員100人以上の施設では5.6億円(入所者1人当たり0.048億円)、30−99人の施設では2.6億円(同0.043億円)、29人以下の施設では1.0億円(同0.037億円)となり、大規模施設ほど多額の内部留保を保有している傾向にあった。

こうした結果を受け財務省では、「今後、施設の規模や入所者の要介護度の差によって、収支差や内部留保額にどのような違いがあるか分析すべき」と強調。厚労省に対しては、13年度予算の概算要求や今後の予算執行に、今回の調査結果を反映させるよう求めている。

■障害福祉の内部留保、1法人当たり5.8億円
今回の調査ではまた、障害福祉サービスを手掛ける社会福祉法人の内部留保が、1法人当たり5.8億円あることも分かった。

集計対象とした579法人の内部留保額の総額は3385億円。内部留保が多い上位10%の法人で、全体の35.8%を占めており、1法人当たりの内部留保額は20.9億円に上った。

一方、下位10%の合計は全体の0.6%で、1法人当たりの金額は0.4億円だった。財務省では、「内部留保の状況は、法人によってかなりばらつきがある」と指摘している。

今回の調査は、財務省が、施設入所支援サービスを営む社会福祉法人579法人の財務諸表のうち、障害福祉サービス部門の内部留保額を集計したもの。

ただ、障害福祉サービス部門単独の財務諸表が作成されていない場合も多く、「外部有識者から、『必ずしも障害福祉サービス部門のみを抽出しているとは言えない』との意見があった」(財務省担当者)ことから、財務省では、「障害福祉サービス事業者の財務状況を、的確に把握する仕組みを整備する必要がある」と提言している。

■2012.7.5  8割強の介護職「今夏は利用者の体温不安」- 日清オイリオグループが調査
節電の必要性が強調される今夏、在宅介護に携わる介護福祉士やホームヘルパーの86%が、利用者の体温や利用者宅の室温の調整に不安を感じていることが、日清オイリオグループの調査で分かった。また、体温や室温の調整について工夫したくても工夫できないと感じている介護職は75%に達することも明らかになった。

日清オイリオグループでは、6月7日から10日にかけて、65歳以上の要介護者の在宅介護に関与している介護福祉士やホームヘルパーに対し、アンケート調査を実施。100人から回答を得た。

今夏、節電を行いながらの介護で不安に思うことについては(複数回答)、「体温・室温調整」が86%で最も多く、以下は「熱中症」(81%)、「水分補給」(78%)、「食欲不振」(24%)などと続いた。

また、「夏の要介護者の体温調整などについて、工夫をしているがなかなか難しいこと、あるいは工夫したいが実際にできないことはあるか」という質問に対しては、75%の介護職が「はい」と回答。「はい」と回答した人から寄せられたフリーアンサーの中には、節電への過剰な意識が、利用者の体温や室温の調整を難しくしているとする声もあった。

■「最低でも一日1000mlの水分補給を」−聖徳大・赤羽教授

利用者の体温や利用者宅の室温の調整に不安を感じる介護職が多い点について、介護福祉学を専門とする聖徳大の赤羽克子教授は、高齢者の場合、のどの渇きや暑さ・寒さを感じにくい人も多いため、専門家でも調整が困難とした上で、心掛けるべき点や工夫点として、
▽朝・昼・夜の食時と午前10時・午後3時の間食時に、各200ml程度の水分補給を実施。最低でも一日当たり1000mlの補給を確保する
▽エアコンが使えない場合は、窓を開けたり、扇風機を使ったりする▽衣類の通気性にも配慮する―ことを指摘している。

■2012.7.6  『胃ろうよ さようなら 〜明日はおスシを食べにいこう〜』著者 : 竹内 孝仁(国際医療福祉大学大学院教授)
福祉の本の専門店である有限会社筒井書房(本社:東京都練馬区、代表取締役社長:須黒 義玄)は、要介護者の「胃ろう・経管」など“食の提供”について言及した『胃ろうよ さようなら 〜明日はおスシを食べにいこう〜』(著者:竹内 孝仁)を講演会や介護施設へ販売し、2か月間で約5,000部と、専門書としては異例の販売部数を記録いたしました。

■“胃ろう”とは

“胃ろう”とは、口から食べ物を食べることが難しい人に対し、人工的に皮膚・胃に小さな口を作ってチューブを設置し、直接胃に栄養を入れる栄養投与の処置方法です。介護の現場では、主に寝たきり患者に処方され、寝ながらにして栄養状態が保たれるというメリットがあります。
 
一方で、食事の時に飲み込みが悪い場合“食事を短時間かつ円滑に進める”ことに執着し、飲み込みやすい、殆ど噛まなくてもよい食形態に変えがちになるというデメリットもあります。このように、施設の介護では効率性のみが優先され“より柔らかい”“より細かい”そして最後にはミキサーで粉砕した非人間的な食事へと変えられていくのが現状です。


■介護施設の今

●最も多く摂られているのは「お粥」で4割以上に達している。
●常食は入所時と比較し調査時には2倍以下に「大幅減」となっている。
●常食の大幅減に代わって急増するのは「ペースト・ミキサー食」で、入所時の2.5倍に。
●胃ろう・経管(チューブを用いて流動食を投与)は入所時に比べ2.8倍に。
●副菜は、主食の常食同様、常菜が約7割近く減少。
●大小の「きざみ副菜」は合計で5割近くに達し、「きざみは介護食の王様」状態。
(公益社団法人全国老人福祉施設協議会「第7期介護力向上講習会」
(平成22年度)にて139施設を調査)

■胃ろうが生命予後を短くする!

現在、全国で26万人もの高齢者が、胃ろう造設を受けたと言われますが(平成23年度全日本病院協会調べ)、本書の著者である竹内 孝仁氏は、「胃ろうは食べる楽しみを奪う上、周囲の人たちに重症感を与えてしまい、ほとんどが完全寝たきり状態に置かれてしまう」とその危険性を訴え、ターミナル期の延命策ではない限り「無駄な胃ろう」「抜去できる胃ろう」は経口常食にすべきだと主張しています。
 
食べる楽しみ以外にも、「胃ろうになると長生きができない」「胃ろう利用者のエネルギー量は一般的には基礎代謝量にも達していない」「胃ろうには誤嚥性肺炎が多い」など、身体的なダメージも大きいことを挙げ、少しずつでも常食に戻す必要があると竹内氏はうったえます。

“胃ろう全廃 全員常食へ
 おスシやトンカツを食べに行こう”

内氏はこのようなスローガンを掲げ、全国の特養ホームで「全員常食運動」を実践しています。本書はその理論と実際の方法を丁寧に解説した専門書として、介護業界から大きく注目されています。


■著者略歴

竹内 孝仁(たけうち・たかひと)
1941年東京生まれ。日本医科大学卒業後、東京医科歯科大学助教授、日本医科大学教授を経て、2004年より国際医療福祉大学大学院教授。1973年から特別養護老人ホームにかかわり、おむつはずし運動などを展開。80年代から在宅高齢者のケア全般にかかわる。
日本ケアマネジメント学会理事、パワーリハビリテーション研究会会長など多数の委員を歴任。

■2012.7.9  日本社会福祉士会のサイトが改ざん - 閲覧でウイルス感染のおそれ
日本社会福祉士会のウェブサイトが改ざんされ、閲覧によりウイルスに感染する可能性があったことがわかった。

6月28日から7月2日18時40分にかけて改ざんが発生したもの。7月2日に同会会員より指摘を受け、翌3日にサーバを管理しているホスティング会社に問い合わせたところ、同社が管理する複数のサイトで被害が発生していたことが判明した。問い合わせた時点で改ざん部分はすでに修復されていたという。

同会では、期間中にサイトを閲覧した利用者に対して、最新のセキュリティ対策ソフトを用いてウイルススキャンを実行し、必要に応じて駆除を行うようアナウンスを行っている。


■2012.7.9  入院患者が結核集団感染、3人死亡 東京・青梅の病院
東京都は9日、医療法人財団岩尾会が運営する精神科病院「東京青梅病院」(青梅市)の認知症病棟で、入院患者と職員計78人が結核に集団感染し、10人が発病したと発表した。このうちいずれも60代の入院患者3人が死亡。死因は1人が結核で、2人が誤嚥性肺炎だったという。肺炎で死亡した患者は誤嚥が多いなど結核が発病しやすい状況だったが、直接的な因果関係は不明という。

発症時期は今年2〜6月。都は、初期に2月に発症した患者が病棟内で他の患者と接触したことなどが感染拡大の原因とみている。

■2012.7.10  和歌山県海南市立の特養で介護職員6人による虐待12件、県が市に対して改善勧告
和歌山県は、7月5日、特別養護老人ホーム「海南市立南風園」に対して、高齢者虐待の改善勧告を行ったことを発表した。

同県の高齢者生活支援室によると、同施設における虐待件数は12件で、虐待されたのは7人、虐待を行ったのは介護職員6人。 身体的虐待(1件)のほか、威嚇的、侮辱的な発言や態度などの心理的虐待が11件にのぼった。

県は、園の開設者である海南市に対して、入所者が安心して施設サービスなどが受けられるよう、職員研修や入所者家族への説明会、組織体制の見直し、第三者を含めた虐待防止委員会の設置などを求めている。

【対象施設の概要】
■施設名:海南市立南風園
■サービス種別:介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
■所在地:和歌山県海南市木津233-40

【経緯】
1)施設内虐待の通報(手紙・DVD)をもとに、和歌山県と海南市で2012年3月5日〜7月4日にかけて共同調査を実施した。
2)共同調査は、施設職員、入所者からの聴き取り調査、入所者の家族からの情報提供、記録調査の方法で行い、複数職員による複数入所者への虐待行為が確認された。
3)施設運営について、2012年3月16日から監査を実施した。

【認定事実】
1)虐待件数:12件
2)被虐待者数と性別:7人(男性2人、女性4人、不明1人)
3) 被虐待者の年齢階層:75歳〜79歳 1人  80歳〜84歳 2人 85歳〜89歳 3人  不明 1人
4) 被虐待者の要介護度:要介護3・4・5 各2人  不明 1人
5) 虐待の種別
・身体的虐待:1件
・心理的虐待:11件(威嚇的な発言や態度3件、侮辱的な発言や態度5件、家族の存在や行為を否定するような発言や態度2件、心理的に孤立させるような行為1件)

6) 虐待を行った職員の職種:介護職員6人

【高齢者虐待に対して行った措置】
開設者である海南市に対して、虐待に対する改善勧告を行った。

1)早急に講ずべき措置
入所者が安心して施設サービスを受けられるようにするため、下記に留意して緊急措置を講ずること。
・再度、虐待行為が発生しないように職員全員を対象にした研修の実施。
・入所者とその家族に対して、今回の虐待に関する説明会の開催。
・施設サービス計画が作成されていない入所者について、正しい手順による早急な計画の作成。
・事故が発生した場合や、それに至る危険性がある事態が生じた場合の対処方法やその分析を通じた改善策の職員への周知徹底。

2)組織体制の見直し
下記に留意して、再発防止に向けた組織体制の見直しを図ること。
・開設者である海南市の管理監督体制の構築。
・施設の介護理念、基本方針、具体的な方策の周知徹底。

3)高齢者虐待防止改善計画の策定
・高齢者虐待防止改善計画を策定し、入所者、入所者の家族、全職員への周知。
・計画策定に当たっては、第三者を含めた虐待防止委員会において審議する。

4)第三者を含めた虐待防止委員会の設置等
・虐待発生の原因分析、発生防止策の検討・検証を行う委員会を設置し、高齢者虐待防止改善計画の策定を審議すること。
・海南市が同委員会から定期的に報告を受けて、必要に応じて当該施設に対する指導や助言を行う仕組みを構築すること。

■2012.7.10  高齢の親の腰痛に対応できてない子どもが半数。寝たきりに繋がる腰痛に注意
7月5日、医薬品会社の日本イーライリリーによるプレスセミナー「骨折と家族介護の実態〜母の痛みは、家族の痛み〜」が行われた。同セミナーに登壇した鳥取大学医学部保健学科の萩野浩教授は2012年6月9日〜10日、高齢の母親をもつ娘4,700名対して「母親の健康と介護に関する意識調査」を実施。高齢者が感じる腰痛は、骨がスカスカになる骨粗しょう症によって起きる骨折が原因である可能性もあるが、半数以上の娘が母親の腰痛に適切な対応ができていないことが判明した。

一度骨折すると、また骨折する可能性は4〜5倍にも

「まずみなさんに3つの質問をします。平均的な50歳女性が死ぬまでに大腿骨近位部を骨折する可能性はどのくらいだと思いますか? また、一度骨折すると再度骨折する可能性はどのくらい高くなるでしょうか? そして、運動することで骨折は予防できるでしょうか?」。萩野教授によるセミナーはこの質問から始まった。寝たきりの原因になりやすい大腿骨近位部の骨折は、50歳女性で5人に1人。過去に骨折している人はまったく骨折していない人に比べ、今後骨折する可能性は4〜5倍にも高まり、医学論文では運動することで骨折を予防できるとは証明されていないという。

萩野教授が実施した「母親の健康と介護に関する意識調査」では、「母親が訴えている痛み」において、「腰(33.0%)」「背中(9.0%)」と約4割の人が母親の腰痛を認識しているものの、半数以上が母親の腰痛に対して何もしていないことが分かった。また、腰痛の原因を「高齢者だから(68.6%)」と認識しており、「骨折」と回答した人は26.4%であった。腰痛の原因の1つである骨粗しょう症は無症状で進行することが多く、椎体骨折では激しい腰痛を伴う場合もある。身長低下や腰の曲がり、腰痛の有無に家族が気づければ、骨折の早期発見・治療につなげることができるという。

10人に1人は骨折・転倒で寝たきりへ

高齢労働省の調べによると、介護が必要になった10人に1人は骨折・転倒が原因という。また、寝たきりになるとうつ病や認知症を発症する可能性も高まり、介護の負担は大きくなる。実際に上記の意識調査で「母親の介護に必要なった際に心配なこと」を尋ねたところ、「自分の生活スタイルを変えなければならないこと」が60.9%でトップ、次に「精神的な負担が生じること(58.1%)」が続いた。しかし、「母親の介護予防」として「定期的に医者に診てもらうことをすすめる」と答えた人は44.5%と一番多かったものの、「特になにもしない」という人も25.7%と多い。

家族が心身ともに健康で過ごすためにも、ただの腰痛だと見逃がすことなく骨折の有無を専門医に診断してもらうなど、介護につながる痛みに気づくことが大切であるようだ。

■2012.7.10  医師「気付きにくかった」、結核集団感染3人死亡
「患者は認知症で周囲が気付きにくかった上、同一の感染源か見極めるのに時間がかかった」。入院患者と職員計78人が結核に集団感染し、男性患者3人が死亡した東京青梅病院(青梅市富岡)。取材に応じた感染対策担当の伊藤もとみ医師は9日、困惑した表情で、こう語った。

2月に男性患者の感染が確認されて以降、様々な対策は取ってきたというが、結果的に食い止めることができず、認知症治療病棟での集団感染を招いた。

また、伊藤医師は「確定的なことは分からないが、感染源とみられる男性患者はレントゲン検査で若い時に結核にかかった形跡があった。再発した可能性がある」との見方を示した。

同病棟は、患者が自由に出入りできない構造で、面会も病室ではなく、面会室で原則行っていた。このため、外部から菌が持ち込まれた可能性は少ないという。今回の事態を受け、同院は発症が疑われる患者の隔離のほか、同病棟での入院患者の受け入れや他病棟への転出を中止した。

■2012.7.11  東日本大震災:介護保険料、減免終了14万人 岩手と宮城、9月末まで
東日本大震災の被災者を対象とした、介護保険料と介護サービスの利用者負担(1割負担)の減免期間が、9月末で終了する。介護保険料の減免対象は岩手、宮城の両県だけで計約14万人。震災から1年4カ月となる被災地では生活環境の変化などで新たに要介護認定を受ける高齢者が増加しており、延長を望む声も根強い。

市町村などに支払う介護保険料は前年の所得に応じて算出され介護サービスの利用料も所得に応じて自己負担の限度額が決まる。被災者は自宅の損壊状況や主な生計維持者の死亡などに応じて、その一部または全部が免除。免除した分は国が市町村に補填(ほてん)する仕組みで震災直後の昨年3月から始まった。

毎日新聞が各県に問い合わせたところ、介護保険料は昨年度、岩手県で2万1448人(約7億9500万円)、宮城県は11万8548人(約35億1800万円)が減免された。利用者負担の減免も岩手県は5233人(約5億6400万円)、宮城県は8万2253人(約25億7700万円)に上った。

国は当初、今年3月末までで市町村に対する補助を打ち切る予定だったが、被災地の要望などを考慮して今年9月末まで6カ月延長。福島第1原発事故による避難者については、来年3月末までの延長が決まっている。

■2012.7.12  厚労省 24時間サービスモデル事業 平均訪問回数にばらつき
訪問必要な夜間コールは3割
 厚生労働省はこのほど、定期巡回・随時対応型サービスのモデル事業を実施した全国52自治体からの報告書を公表した。1日あたりの平均訪問回数は2・6回で、1回あたりのサービス提供時間は20分未満が32・3%を占めた。サービス内容で最も多かったのは「排せつ介助」だった。

■2012.7.13  無資格者がケアプラン作成、指定取り消し- 和歌山のケアマネ事業所が不正請求
介護支援専門員の資格を持たない職員がケアプランを作成し、介護報酬を不正に請求したなどとして、和歌山県はこのほど、「医療法人恒裕会」(かつらぎ町)が運営する居宅介護支援事業所「吉田クリニック」(同)について、介護保険法に基づき指定を取り消した。県が確認した不正請求額は約609万円。

県によると、同事業所は2007年5月から12年3月までの間、▽実際にはケアプランを作成していない▽介護支援専門員の資格を持たない職員がケアプランを作成した―にもかかわらず、介護支援専門員がケアプランを作成したと偽って、介護報酬を不正に請求した。また、県が5月に監査に入った際には、同事業所の役員が虚偽の書類提出や説明をしたという。

不正請求額に4割の加算金を加えた返還金額は約853万円で、今後は、かつらぎ町など2保険者が返還を求める。

同法人が運営する系列の通所リハビリテーションなどの事業所は、処分の対象外だった。

■2012.7.13  横浜の小学校で発達障害児がいじめ被害、学校の対応遅れ転校/神奈川
横浜市金沢区に住んでいた市立小学校6年の発達障害の男子児童(11)が、同級生から暴行など継続的ないじめを受けていたことが12日、分かった。保護者は4月から数回、学校側にいじめ被害を訴えていたが、学校側が認めたのは5月末。被害児は6月に1週間のけがを負い、転校した。学校側は「認識が浅く、いじめに気付くのが遅れた」と釈明している。

被害児の保護者や同校によると、普通学級に通学していた高機能自閉症の被害児は4月以降、同じクラスの男児3人から、学校内や下校途中に障害児を意味する「ガイジ」というあだ名で呼ばれたり、蹴るなどの暴力を振るわれたりするいじめを継続的に受けた。

 泥まみれで血を流して帰宅したこともあったという。

被害児はいじめを隠したが、自宅で壁に頭をぶつけたり、「死にたい」とカッターを手首に当てたりとたびたびパニックを起こした。知人から「いじめに遭っているのでは」と聞いたこともあり、母親が4月下旬、学校側に相談。担任教諭らは男児3人に事情を聴いた。その上で担任らは「仲良しグループで暴言は互いに言い合った」「一方的な暴力はあったが(加害児を)指導した」などと保護者に説明し、いじめを否定したという。だが、その後もいじめは続いたという。

6月1日の下校途中には、被害児は両膝や肩などに1週間のけがを負った。保護者によると、この3人のうち2人に路上で押し倒され、蹴られるなどしたという。保護者は「安心して通えない」と同4日、市教育委員会に転校を申し出た。手続きが素早く進まなかったため、自ら住民票を区外に移し、同8日に転校した。被害児は今もパニックに陥るなど不安定という。

校長は「4月の担任による指導で解決したと考えていた」と、5月末になっていじめと認識したと釈明。「発達障害への理解も不十分だった」と説明する。一方で6月の暴行については、男児2人は「やっていない」と話しているという。

校長らは6月末、保護者らに謝罪。今後、実態把握を進めるとともに、6年生の保護者向け説明会を開く予定で、再発防止に努めるという。

■2012.7.13  電動車椅子サッカー日本代表監督に 岐阜の浅岡さん
長良医療センター(岐阜市長良)の作業療法士浅岡俊彰さん(39)が、日本電動車椅子(いす)サッカー協会の日本代表チーム監督に就任した。2015年に米国で予定されるワールドカップ(W杯)に向けて「日本の車椅子サッカーのレベルを底上げしたい」と意気込む。

電動車椅子サッカーは車椅子の前面に取り付けた金属柵「フットガード」に直径三十三センチのボールを当て、パスやシュートをする。協会には全国三十五チームが登録している。

W杯は、〇七年に初めて東京で開かれ、昨年はフランスで第二回を開催。日本はそれぞれ四位と五位にとどまった。一五年の第三回では、初優勝を目指している。

浅岡さんは十五年前、前任地の信濃医療福祉センター(長野県下諏訪町)で競技と出合った。電動車椅子の操作レバーは、わずかな力でも制御できる。上半身や首の保持が難しい人や、呼吸器を付けた人でも競技でき、難病の筋ジストロフィーや脳性まひなど重い障害のある選手が練習に励んでいた。

誰でも対等に競い合え、障害の程度に関わらずに楽しめる点に魅力を感じたという。

〇一年に移った長良医療センターで、車椅子サッカーチーム「Wings」の監督になり、〇四年には全国大会で準優勝に導いた。第一回W杯で全日本のコーチ経験もあることから、実績を買われて三月に監督に就任した。来年一月にオーストラリアであるアジア太平洋オセアニア選手権が、初の国際大会となる。

W杯に向けて弾みをつけるためにも、上位入賞が目標。もう一つ重視するのが、全国の選手たちが身近に感じられる代表チームにすること。代表選手が身近にいれば、憧れや目標ができ、全体のレベルが上がるからだ。

浅岡さんは「障害がない人に、競技に全力投球する選手たちを知ってほしい。それが励みになるんです」と力を込めた。

■2012.7.18  医療機関の倒産、今年上半期は15件- 過去10年間で最少
東京商工リサーチの集計によると、今年1−6月に全国で発生した医療機関(病院、診療所、歯科診療所)の倒産は15件で、昨年の同じ時期の23件に比べ8件減少した。上半期の倒産件数としては、この10年間で最少。東京商工リサーチでは、「中小企業金融円滑化法」(モラトリアム法)の期限が来年3月末まで再延長されたことで、倒産が抑制されている可能性があるとみている。

今年上半期に倒産した医療機関15件の内訳は、病院1件、診療所6件、歯科診療所8件。負債総額は計68億6000万円で、前年同期の107億1100万円から減少した。
 
また、倒産の形態別では、経営主体が財産を清算して消滅する破産手続きによるものが11件と、全体の7割以上を占めた。再建を目指す民事再生は3件にとどまった。銀行取引停止は1件だった。

倒産の原因では、「販売不振」によるものが8件で最多。これに「赤字累積」を合わせると、不況型の倒産が計10件に上った。そのほかは、「放漫経営」(4件)と、「設備投資過大」(1件)によるものだった。

■2012.7.18  介護事業者の倒産、今年上半期は15件- 前年比6件増
東京商工リサーチの集計によると、有料老人ホームや訪問介護などの「老人福祉・介護事業」を手掛ける企業の今年上半期(1−6月)の倒産件数は15件で、前年同期の9件に比べて6件増えた。

15件をサービス別に見ると、訪問介護事業が9件で最も多く、通所・短期入所介護事業、有料老人ホーム、その他事業が2件ずつ。倒産の原因は、「販売不振」7件、「放漫経営(事業上の失敗)」6件、「赤字累積」2件。倒産の形態別では、破産が14件を占め、民事再生法の適用申請が1件だった。

負債総額は9億8600万円で、前年同期の15億7700万円を約6億円下回った。負債額が最も多かったのは、住宅型有料老人ホームを運営し、5月30日に宮崎地裁に民事再生法の適用を申請した「シルバーリゾート青島」(宮崎市)の4億円だった。

東京商工リサーチの担当者は、「介護施設では、利用者負担が大きい分、利用する施設選びがシビアになる。利用者を十分に集められないと、初期投資した費用を回収できなくなりかねない」と話している。

■2012.7.19  熱中症の救急搬送、前週から2.5倍増- 高齢者が4割超
7月9−15日の1週間に、熱中症で救急搬送された人は2483人で、前週の979人から2.5倍以上に増えたことが、総務省消防庁の調査(速報値)で分かった。65歳以上の高齢者が全体の4割超を占めており、同庁では注意を呼び掛けている。

2483人の年代別の内訳は、65歳以上が1056人で最も多く、全体の42.5%を占めた。以下は、成人(18歳以上65歳未満)920人(37.1%)、少年(7歳以上18歳未満)480人(19.3%)、乳幼児(生後28日以上7歳未満)27人(1.1%)の順。生後28日未満の「新生児」の報告はなかった。

症状の程度別では、入院の必要がない「軽症」が1622人(65.3%)と、ほぼ3人に2人を占めた。3週間未満の入院が必要な「中等症」は773人(31.1%)、3週間以上の入院が必要な「重症」は41人(1.7%)で、「その他」は42人(1.7%)。「死亡」も5人(0.2%)いた。

■6月の救急搬送は低水準で推移
同庁によると、熱中症による搬送者数は6月には1837人で、前年同月(6980人)の3割程度にとどまっていた。65歳以上の高齢者が777人(42.3%)で最多で、症状は「軽症」が1280人(69.7%)と7割近くを占めた。

■2012.7.19  秋田県男鹿市の医療法人に破産開始決定
秋田県男鹿市で「山田内科診療所」を経営する医療法人「泉の会」(山田坦理事長)が、7月2日付で秋田地裁から破産手続きの開始決定を受けた。負債総額は約4600万円。

東京商工リサーチによると、同法人は山田内科診療所を経営し、山田理事長が院長を兼務。2008年には空き工場を買収して高齢者専用賃貸住宅「めぐりあい小深見」を開設するなど、福祉関連事業にも参入した。この施設の開設で09年9月期決算の事業収益は、前期比17.3%増となる1億259万円を計上。翌10年9月期にはピークとなる1億1705万円を計上した。
 
しかし、11年に入り、経理全般を担当していた院長の妻が死去し、経理面が手薄となったほか、院長が高齢になる中、後継者不在の問題も抱えていた。11年9月期には、事業収益は1億393万円に落ち込み、1059万円の赤字を計上、債務超過に転落した。
 
これ以降、資金繰りのめどが立たず、院長個人も負債を抱えていたことも重なって、今回の措置となった。

■2012.7.20  介護が必要な家族と旅行する介護者は3割弱- 第一生命経済研究所が調査
介護を必要とする家族と一緒に旅行したことがある介護者は、全体の3割弱であることが、第一生命経済研究所の調査で分かった。一方、旅行が家族に良い影響を与えると考える介護者は7割に達しており、介護を必要とする家族との旅行をなかなか実行に移せないでいる介護者の実態が浮き彫りとなった。

同研究所では、昨年11月、家族を介護している男女800人を対象に、アンケート調査を実施した。

現在、介護している家族と旅行したことがあるかについての質問では、「旅行したことがある」と回答した人は28.5%、「旅行したことがない」と答えた人は71.5%だった。

旅行したことがある人に、旅行先で行ったことを尋ねた質問(複数回答)では「温泉浴」が60.5%で最も多く、以下は「自然の風景を見る」(54.8%)、「特産品などの買い物・飲食」(43.4%)、「ドライブ」(32.9%)、「名所・旧跡を見る」(32.0%)と続いた。介護が必要な家族が旅行を楽しめたかどうかの質問では、「楽しめた」という回答が82.9%に達したほか、自分(介護者)が旅行を楽しめたかどうかの質問でも「楽しめた」と答えた人が73.2%を占めており、家族もその介護者も、旅行を高く評価していることが分かった。

介護が必要な家族と旅行したことがない人に理由を尋ねた質問(複数回答)では、「その家族が旅行するのは無理だと思うから」が40.6%で最も多く、以下は「その家族が旅行したがらないから」(31.5%)、「自分に時間の余裕がないから」(24.7%)、「旅行することに対して不安を感じるから」(23.3%)、「自分にお金の余裕がないから」(20.6%)となった。

一方、介護が必要な家族が旅行することをどうとらえているかを尋ねた質問(複数回答)では、「心身のためになる」と思う人は76.6%、「旅行に連れていくことは親孝行になる」と思う人は72.0%に達した。

■「まず、既にあるサービスや情報源の周知を」

この結果を受け、調査・研究を担当した同研究所の水野映子上席主任研究員は、介護が必要な家族と介護者の旅行を阻害する主な要因として、▽介護者の不安▽時間・費用・情報の不足▽介護者が感じる家族の意欲の低さ―などを指摘。旅行を実行に移せない介護者が多い点については、「まず、介護が必要な人の旅行に関するガイドブックや専門の相談窓口など、既にあるサービスや情報源の周知が必要。また、温泉など入浴施設についても、介護が必要な人を意識した改善を進めてほしい」としている。

■2012.7.22  色覚補正レンズで不便軽減 色覚障害者をサポート
「信号で赤と黄が区別しずらい」「野菜やマグロの鮮度がわからない」「イチゴやトマトが緑から赤になるのがわからない」−。色覚障害者が日常生活で感じる不便の解消、軽減をサポートしようと、4月に設立されたネオ・ダルトン(大阪市中央区、足立公社長)が、色覚補正レンズと色感度測定機の取り扱いを本格化している。

同社によると、色覚障害の多くは緑の感度が強いことによるものだといい、強すぎる色を他の色の感度まで弱くすることで、視界はやや暗くなるが、本来の色の見え方に近づくという。

同社の色覚補正レンズは、赤・青・緑の光の三原色の透過率を1枚のフィルターで調節する特殊なもの。それぞれの目に合った透過率になるように感度の強すぎる色の光をカットし、コントロールすることで、本来の色のバランスに近づける。

また、同社の色感度測定機は、赤と緑の感度だけでなく、緑と青の感度が測定できることが特徴。同社によると、32種類の補正レンズを用意しているが、実際には12種類で98%の補正が可能だという。

日本眼科学会によると、日本では男性で20人に1人、女性で400人に1人の割合で、約300万人が色覚障害者といわれている。2002年に学校での色覚検査が中止されたため、色の見え方が他人と違うと感じながら、色覚障害を自覚しない子どもたちが増えており、今後、進学や就職に伴って、大きな不便を感じたりする可能性があるという。

自身も色覚障害のある足立社長は「色覚障害のある人たちの選択肢が広がり、あきらめなければならなかった夢に進むきっかけとなればうれしい」と話す。簡易測定は7月に開設した同社ホームページ(http://neo-dalton.com/)でも可能だ。

■2012.7.22  障害者団体、車いす視点で復興提案
全国の障害者が8月、被災地を車いすなどで旅行し、道路や建物の段差などをなくすバリアフリーの必要性を訴える活動を岩手県沿岸部で行う。障害者の視点から、復興に向けた街づくりや防災計画を提案するのが狙いだ。

こうした活動は「TRY(トライ)」と呼ばれ、兵庫県の障害者団体などが1986年に行ったのが始まり。その後、全国に活動が広まり、街のバリアフリー化などを訴えてきた。

昨年3月の震災では多くの障害者が津波の犠牲になり、避難生活を余儀なくされたことから、障害者に配慮した防災や街づくりにつなげようと、岩手県の障害者団体などが同県での開催を呼びかけた。

8月19〜30日、津波で大きな被害を受けた宮古市田老地区から陸前高田市の「奇跡の一本松」までの約150キロを車いすや徒歩で移動する。1日の移動目標は10〜15キロで、避難所となった公民館などに宿泊し、道路や建物に車いすが通れない段差がないかなど課題を洗い出す。

参加者は身体や視覚、知的に障害がある人で、約30人(19日現在)が参加を希望している。実行委員会の川畑昌子事務局長(49)は「震災では避難所や仮設住宅がバリアフリーになっておらず、利用できない障害者もいた。そうした人々への配慮が必要だ」と話す。

■2012.7.23  高齢者の買い物支援 伊那市の商店街が移動販売
近年増加してきた“買い物弱者”の問題に商店街で向き合おうと、伊那市の商店主らでつくる伊那まちの再生やるじゃん会は、ワゴン車に商品を積んで地域を回る移動販売を始める。日用品の調達に困っている高齢者を支援し、歩いて行ける場所での買い物を実現する試み。今秋からの本格始動を目指し、まずは25日に市内4会場で試行する。

きっかけは伊那市の西町、荒井、坂下、山寺の4地区の住民を対象に昨年12月に行ったアンケート。341人から回答があり、約3割が「買い物に不便を感じている」と答えた。最多理由は「歩いて行ける場所に店がない」。不便を感じていない人の中にもいずれ車に乗れなくなったら困る―という声が多かった。

中心市街地でも買い物に苦労するという現実を前に、同会の魅力アップおもてなし委員会(竹村裕委員長)は支援策を検討。県内の先行事例を視察したり、勉強会を重ねた結果、商店街への送迎サービスや商品の宅配サービスよりも、比較的負担が少なく競合相手もいない「移動販売」に利点があると考えた。

「まずは一回やってみてノウハウを作りたい」と竹村委員長(52)。25日には18店舗が参加し、車両7台に食料品や日用品、菓子、金物、花、文具、衣服などを詰めて、西町、荒井、坂下、山寺の4地区を30分ずつ回る。伊那まつりの市民おどりの曲「ダンシング・オン・ザ・ロード」が聞こえたら開始の合図だ。

利用者の反応を見て、今後の展開を検討する。今年秋には継続的な取り組みを始めたい考え。試行では実施場所を中心市街地に限るが、いずれは市内全域に拡大し、月に1〜2回続けていく構想だ。

竹村委員長は「現実に困っている人は目の前にいて、今後はさらに増えていく。この問題を解決しつつ、地域商店街の活性化につなげたい」と強調。「みんなを巻き込んで面白い試みにして、まちの閉塞感を打ち破るきっかけになれば」と期待を語った。

県が2010年9月に行った調査では、500メートル以内に商店がなく、車を運転しない65歳以上の県内の高齢買い物弱者は推定で5万2000〜8万人。不便を感じている広義の買い物弱者は、19万3000〜23万1000人。

■2012.7.23  熱中症 「梅雨明け10日」警戒を
梅雨明けし、最高気温30度超の真夏日が増える中、諏訪地方でも熱中症とみられる患者が目立ってきている。諏訪広域消防本部によると、今夏はこれまでに20〜80代の男女6人を救急搬送。うち半数は17日以降で、発生リスクが高まっていることをうかがわせている。県諏訪保健福祉事務所は「暑さに体が慣れていない『梅雨明け10日』は、最も警戒が必要」と指摘。こまめな水分補給や休憩、部屋の換気など、屋内外での予防を呼び掛けている。

消防本部のまとめでは、6人は農作業中や屋外での仕事中などに、体の一部にしびれや痛みが出たり、意識障害を起こすなどした。5月28日〜7月20日に計19件の救急搬送があった昨年度に比べると少ないが、諏訪で今季初の真夏日を観測した17日から救急要請が増え始めている。

このうち、中等症と判断された80代の男性は自宅に居ながら症状を起こした。全国的に過度な節電による「節電熱中症」も懸念される中、「屋内でも注意が必要。エアコンや扇風機で温度調節することも大事」と訴える。

気象庁は、気温上昇の恐れがある場合に高温注意情報を出しているほか、全国の翌日の最高・最低気温分布予想をホームページなどで発表している。関東甲信地方の最新の1カ月予報から、日本気象協会長野支店は「7月28日からの1週間は、暑さがより厳しくなる」と注意を促す。

同保健福祉事務所は「熱中症対策では、予測を立てて行動することが何より重要。天気予報や気象情報を注視してほしい」。運動系の部活動をしている中高生や、屋外作業が中心の労働者などには「塩分補給」を求めるが、「熱中症予防の原則は、正しい食生活と十分な睡眠。一般の人はこれらを心掛けて」という。

注意が必要なのは子どもと高齢者だ。「小さな子は地面からの反射熱の影響を受けやすく、保護者がよく観察する必要がある。のどの渇きが感じにくくなる高齢者は、定期的に水分を取ってほしい」と呼び掛けている。

こうした中、諏訪地方のドラッグストアなどは、熱中症対策グッズのコーナーを相次いで開設。諏訪市高島1のコスコ高島店では、瞬間冷却スプレーやシート、塩分補給のあめなどが並び、「梅雨明け後から清涼飲料水を含めて売れ行きが伸びている。水にぬらして首を冷やすアイテムなど即席タイプが人気です」と言う。

■2012.7.24  国保1人当たり医療費、3%増の29万円- 11年度、国保中央会集計
国民健康保険の1人当たり医療費が、2011年度は29万4779円で、前年度から3.4%増えたことが、国民健康保険中央会の集計で分かった。一方、75歳以上が加入する後期高齢者医療制度の1人当たり医療費は90万8543円で、1.6%増えた。

医療費の総額は、国保医療費が11兆4214億円(市町村国保10兆8618億円、国保組合5595億円)で、前年度から2.3%増えた。後期高齢者は13兆1884億円で、4.7%増えた。
 
被保険者数は、市町村国保が前年度比0.7%減の3558万人、国保組合が5.3%減の317万人。一方、後期高齢者は3.0%増の1452万人だった。 

国保の1人当たり医療費は、市町村国保が30万5276円(前年度比3.3%増)、国保組合が17万6781円(1.9%増)だった。

1人当たり医療費を都道府県別に見ると、市町村国保、後期高齢者共に全都道府県で前年度から増加した。
市町村国保では、最高は山口の37万5521円で、以下は香川(37万1002円)、島根(37万979円)が続いた。最低は沖縄の25万9130円で、次いで茨城(26万4115円)、千葉(27万2028円)などの順。最高の山口と、最低の沖縄の差は1.45倍だった。
 
一方、後期高齢者では、
最高は福岡の115万8395円、最低は新潟の73万9314円で、両県の間には1.57倍の開きがあった。福岡に次いで高かったのは、高知(109万4039円)、北海道(107万9813円)。新潟に次いで低かったのは、岩手(74万1312円)、静岡(77万3786円)だった。

■2012.7.24  インターネット薬局の95%が不正サイト。偽造医薬品が及ぼす健康被害とは?
世界の医薬品供給のうち偽造医薬品は約10%を占めており、その多くはインターネットなどの非正規ルートを通じて流通しているという。製薬会社4社(ファイザー、バイエル薬品、日本新薬、日本イーライリリー)は7月18日、都内でインターネット薬局の実態と偽造医薬品が及ぼす健康被害に関してプレスセミナーを実施した。

日本向けインターネット薬局の95%が法律に準拠していない

まず、日本向けインターネット薬局の現状とその安全性に関して、ファイザーの池田哲也氏が発表。NABP(連邦薬事委員会連合)が唯一認可している調査会社・LegitScript(レジットクスリプト)が2011年の秋に実施した調査によると、随時2,000〜4,000ものウェブサイトが日本国民に対して処方せん医薬品を販売、または販売促進をしていることが分かった。しかし、その95%が法律に準拠していない不正サイトであり、無免許営業や処方せんの提出を求めずに処方薬を販売しているなど、消費者の安全が守られていないサイトであったという。

偽造医薬品の服用で意識障害や死に至ることも

日本の税関で押収される偽造医薬品は、2010年が50,427点、2011年が78,029点、2012年は6月末までで389,285点と年々増えており、その多くが個人輸入代行業者(インターネット購入)から購入したものであった。偽造医薬品とは正規メーカーが製造したものではなく、有害物質や安全性が未確認な不純物を含んでいる可能性もある医薬品で、カウンターフィット薬とも呼ばれている。

実際、偽造医薬品を服用することでどのようなリスクが起こりえるのか? セミナーでは聖路加国際病院の出雲博子先生が、ED治療薬であるシアリスの偽造薬を服用した患者がけいれん・意識障害に陥り、重篤低血糖を来した症例を発表。また、食中毒を引き起こすブドウ球菌の混在や、まったく効果のない成分で構成された薬が処方薬として出回っている可能性もあるという。

現在、公的機関は偽造医薬品の危険性を伝える啓発活動を行っており、カード会社と検索エンジン運営会社などはNPO団体を設立し、不正サイトの活動阻止を目指した取り組みを行っている。医薬品を個人輸入する動機として、「ネットの手軽さ」「値段の安さ」「薬局・薬店で買えないから」が挙げられているが、金沢大学の木村和子教授は「不正なインターネット薬局の脅威を知れば手にしようとは考えないはず。啓発活動をもっと積極的に行っていくべき」とコメントした。

■2012.7.24  横浜の発達障害児いじめ問題:金沢署、加害児2人を児童相談所に通告/神奈川
横浜市金沢区に住んでいた市立小学校6年の発達障害のある男子児童(11)が同級生からいじめを受け転校した問題で、金沢署は23日までに、被害児に暴行し、けがを負わせたとして、児童福祉法に基づき同級生だった男児2人を児童相談所に通告した。

同署によると、2人は6月1日午後、在籍していた小学校近くの路上で、被害児を追い掛け、蹴るなどして両腕や両足に1週間のすり傷を負わせた、としている。加害児2人は「下校途中にたまたま見つけたので、追い掛けた。4月ごろからいじめていた。反省している」などと話している。

被害児は4月下旬から繰り返し暴行を受けたり、発達障害をからかうあだ名で呼ばれたりするいじめを受けた。暴行されけがを負った6月、区外の小学校に転校するとともに、同署に相談していた。

学校側は、被害児側の訴えで5月末にいじめと認識。今回の暴行についても6月に加害児2人に聞き取りをしたが、2人とも否定していた。校長は「加害児と信頼関係を築けず、反省している」と話している。

■2012.7.24  慶応大、まばたきで操縦できて自動障害物回避機能なども搭載の車いすを開発
慶應義塾大学(慶応大)は7月23日、眼の周囲の電位(眼電位)で前進や右左折などのコントロールが可能で、さらに障害物の自動的な回避や交差点を認識する機能なども搭載した車いす型の自動走行装置を開発したことを発表した。

成果は、慶応大理工学部 システムデザイン工学科 眼電位信号処理部の満倉康恵准教授と同・安心安全車いす制御部の高橋正樹准教授らの合同研究グループによるものだ。

近年、体の不自由なヒトや高齢者を支援することを目的として、脳波や筋電位、眼電位などの生体信号からユーザの意図を抽出し、それらを用いて操作する車いすの研究開発が盛んに行われている。

しかし、生体信号を用いた従来の車いすでは、操作入力の精度向上、安全性・操作性の向上、長時間使用や生体信号計測器の装着によるストレスの軽減が課題となり、実用化に至っていない。

この問題点に対し、研究グループは眼の周りに装着した少数の電極から眼電位を計測して3種類のまばたきを高精度に検出し、車いすの方向入力として応用する手法を開発した形だ。

また、通路や曲がり角などの環境情報を検出し、環境に応じて走行速度や旋回角を自動調節する制御機構を組み合わせることで、より安心・安全かつ円滑に走向することが可能な車いすの開発に成功したというわけである。

なお、電極装着が容易かつユーザの負担が少ない眼電位を用いて方向入力を行うことができ、なおかつ制御機構により通路状況に適した自動走向も行うことが可能な機構を搭載した車いすの開発に成功したのは、世界初だという。

まばたきに起因する眼電位の特徴は顕著に現れ、またまばたき1回の時間は0.2〜0.4秒と短いことから、高精度かつ高速に検出することが可能だ。しかし、まばたきはジョイスティックやハンドルのような連続的に操作(入力)することができないため、車いすの操作には不向きであるとこれまでは考えられていた。

そこで、通路や交差点の情報を考慮した自動走向ができる機構と組み合わせることで、まばたきによる入力を車いすの制御へ応用することができるようになったというわけである。

具体的な方向入力は、画像1に示す6カ所に装着した電極から取得した眼電位を解析し、意図的なまばたきを検出することで実現する仕組みだ。意図的なまばたきとしては、両目で瞬時に2度まばたきを行う「ダブルブリンク」、片目で行う左右のウィンクを用いて、ヒトが日常的に行う無意識的なまばたきとは区別するようになっている。

画像2の状態遷移図に示すように、前進したい時はダブルブリンクを行い、右左折したい時は右または左ウィンクを行う。この時、左右の壁との距離、前方の交差点の有無、障害物の有無を車いすに搭載したセンサにより自動検出し、適切な走行速度や旋回角を計算することで安全な半自動走行を実現するというわけだ。

なお、画像3はシミュレータにおける右折時の車いすの軌跡で、画像4が今回の車いすの右折の実機動作結果の様子。なお、通常のまばたきとダブルブリンク、右および左ウィンクの検出精度は97.28%だ。

今後は、眼電位計測機器や解析装置の小型化・低価格化に加え、より多くの環境に適応できる制御機構を導入することで、本車いすの実用化を目指したいと、研究グループはコメントしている。

■2012.7.24  アウトサイダーアート拠点に 蔵改装しギャラリー開設 若葉区・福祉事業所「まあるい広場」
千葉市若葉区の福祉事業所「まあるい広場」は28日、施設内の蔵を改装してギャラリー「9cue(キュウ)」をオープンさせる。障害者などが特別な訓練を受けずに個性、感性を生かして描いた作品「アウトサイダーアート」の拠点としていきたいとしている。

同施設は知的障害児の保護者たちによる幼児教室が前身。美浜区の海の家跡地を改装して、2006年まで約10年間、旧制度の知的障害者の授産施設を運営。市から同年、若葉区東寺山町にあった国際交流ハウス跡地を借り、改装して移転した。現在は、非雇用型の就労継続支援B型事業に移行している。

2年ほど前から、近くのギャラリーで利用者の作品展を開催してきた。「絵画は『お情け』ではなく、気に入らなければ買ってくれないと思う。それでも買ってくださる方がいた」と高本涼子施設長。作品を評価してくれる人の存在が、利用者や家族の自信にもつながったことから、施設にギャラリーを併設することにした。

■2012.7.25  介護施設で事故死 リフト車から車いすごと転落
鳥取県警は24日、鳥取市滝山の「鳥取市東デイサービスセンター」で21日に利用者の女性(92)が送迎用のリフト車から車いすごと転落し、2日後に亡くなる事故があったと発表した。県警は、対応に問題が無かったか、調べている。

鳥取署や施設を運営する社会福祉法人「鳥取福祉会」によると、女性は21日午後4時40分ごろ、施設玄関前から送迎用のリフト車に乗り込む際に事故に遭った。リフトが数十センチ程度の高さに上がったときに車いすが動き、そのまま後ろ向きに倒れて後頭部を強打。病院に運ばれたが、23日午後10時ごろ亡くなった。

事故があったリフト車は8人乗りのワンボックスタイプ。車体後部から車いすに乗ったまま可動式のリフトで乗車できる。普段は、職員2人が付き、車いすのブレーキとリフト後部のストッパーをかけたうえで、リフトを動かすが、当時どうだったかは、調査中という。

鳥取福祉会の安藤嘉美理事長は24日、市役所で会見を開き「このように大きな事故を起こし、申し訳ありませんでした。ご遺族に対して深く哀悼の意を申し上げます」と陳謝。再発防止策のため、23日にリスク委員会を開き、リフトを使う際、車いすを固定するフックを使うなど安全措置をより強化すると決めたという。

同法人は、事故後、警察への通報をしていなかった。この点について安藤理事長は「回復を目指すことを最優先にした。内部調査が済み次第、県や市、警察に報告しようと思っていた。事故原因の究明のため、警察にも全面的に協力する」とした。

■2012.7.25  障害者も自力でヨット操船
光市光井の山口県スポーツ交流村が障害者でも操船しやすいヨットを導入した。これまでヨットハーバーでの体験乗船に使用していたヨットは、障害者が独力で操船することが難しかった。新しいヨットの導入で体験乗船の充実を図る。

2人乗り小型ヨットのアクセスディンギー5艇と、6人乗りのアクタス1艇。県から指定管理を受けた県ひとづくり財団(山口市)が、母親や産婦人科医師らの募金で運営する「日母おぎゃー献金基金」からの助成金約500万円で購入した。

施設では年約300人の障害者が体験乗船している。これまで使用していた競技用ディンギーは、一緒に乗り込んだ指導員が操船するケースが多かった。アクセスディンギーは操船時の体重移動が不要で操舵(そうだ)も簡単。転覆もしづらい構造で、障害者が自力で操船体験できる。アクタスも転覆しづらいヨットで、一度で多くの障害者に操船指導が可能。施設では監視用としても使用する。16日には同所で6艇の進水式をした。

■2012.7.26  障害者を不起訴 福祉支援へ
罪を犯した障害者に、福祉の支援が必要かどうかを審査する専門家機関「障がい者審査委員会」が、福祉施設での更生がふさわしいと判断した県内の知的障害者の男性について、長崎地検が不起訴処分にしたことが25日分かった。検察が審査委を経て障害のある容疑者を起訴せず、福祉的な支援につなぐのは初めて。

関係者によると、男性は県内在住で中度の知的障害がある。詐欺(無銭飲食)の疑いで7月に逮捕された。地検や国選弁護士は過去の犯歴などから、審査委に対し、男性の障害の特性や福祉支援の必要性の有無について意見を求めた。

審査委は大学教授、臨床心理士など福祉・医療の専門家で構成。男性の障害の程度や何度刑務所に入っても更生につながっていない過去から「専門的処遇が必要」と結論づけた。

地検は25日までに、男性を不起訴(起訴猶予)処分にした。男性は釈放後、社会福祉法人南高愛隣会(田島良昭理事長)が運営する雲仙市瑞穂町の更生保護施設「雲仙・虹」に入所。今後、同施設が作成した更生支援計画に基づき、再犯防止の支援が行われる。

審査委は、NPO法人県地域生活定着支援センター(長崎市)に事務局を置く専門家機関として6月に発足。弁護士や地検の依頼を受け、中立・公正な立場で容疑者(被告)の障害の程度や、福祉支援の必要性を調査・報告。地検や弁護士は、刑事処分や弁護方針の参考にする。審査委はこれまで3件を審査したが、不起訴処分は初めて。

長崎地検の原山和高次席検事は「不起訴理由の詳細はプライバシー保護の観点からお答えできない」とコメント。国選弁護士は「男性は昨年同じ罪で刑務所を出たばかりで、本来なら起訴され、実刑になってもおかしくないケース。福祉の支援を受け更生してほしい」と話した。

 ○福祉取り組み期待/藤本哲也・常磐大大学院教授(刑事政策)の話

本来起訴されてもおかしくない事件で、審査委員会の報告を基に検察が起訴せず、福祉につなぐ第1号の事例が出たことは、障害者の更生、社会復帰を考える上で高く評価されていい。長崎の取り組みは最先端を走っており、これを機に、累犯障害者を刑事司法のルートに乗せるのではなく、福祉で更生させる取り組みが広がることを期待したい。

■2012.7.26  児童虐待相談件数、過去最多 平成23年度は5万9862件 大阪、神奈川、東京都の順で多く
全国の児童相談所(児相)が平成23年度に対応した虐待相談の件数は5万9862件(速報値)で、集計を開始した2年度から21年連続で増加し、過去最多を更新したことが26日、厚生労働省のまとめで分かった。都道府県別では、大阪府が2年連続で最も多く8900件。以下、神奈川県7296件、東京都4559件、埼玉県4360件と続いた。

22年度は東日本大震災の影響で福島県を除いて集計されたが、23年度は全都道府県の数値を集計。23年度の福島県を引くと5万9603件になり、前年度比で5・7%(3219件)増だった。厚労省は「件数の増加は以前に比べ鈍化傾向にある」とした上で「警察との連携が進んだほか、虐待事件の報道などにより住民の関心が高まり、相談や通報が増えているのではないか」と分析している。

今年4月から改正民法と改正児童福祉法が施行され、児童虐待を防ぐために親権を最長で2年間停止する「親権停止制度」が創設されたが、4〜6月に全国の児童相談所長が家庭裁判所に行った親権停止の審判申し立ては6自治体で7件。うち6月までに1件が認められた。

親権停止の申し立てがあった例としては、子供に先天性疾患があるにもかかわらず、保護者が必要な検査や手術に同意せず、子供の引き取りも拒否している▽子供に軽度の知的障害があるが、保護者が障害を認めず、子供の就職にも反対している−など。

一方、虐待が疑われるものの児相の相談に応じない家庭に知事が出す「出頭要求」は26件(児童数延べ35人)で、前年度の50件(同72人)から大幅減。要求に応じない家庭への強制立ち入り調査(臨検)も前年度の2件(同2人)から1件(同2人)となった。


■2012.7.26  2011年度の介護受給者、500万人突破- 厚労省の介護給付費実態調査
2011年度に介護サービスか介護予防サービスを1回以上受けた人は、前年度比24万5600人増の517万3800人で、初めて500万人を突破したことが26日、厚生労働省の「2011年度介護給付費実態調査」の結果(11年5月−12年4月審査分)で分かった。

介護サービスの受給者は420万1000人(前年度比18万5200人増)。このうち居宅サービスは315万1000人(16万4100人増)、施設サービスは113万5400人(2万6700人増)、地域密着型サービスは40万500人(4万2000人増)、居宅介護支援は290万4100人(13万5700人増)だった。

居宅サービスのうち、受給者数が最も多かったのは福祉用具貸与の168万1100人(12万7800人増)。以下は通所介護の155万5000人(10万3800人増)、訪問介護が129万8700人(5万800人増)、短期入所生活介護65万600人(2万4200人増)などと続いた。
 
施設サービスの受給者数では、介護福祉施設サービス(特別養護老人ホーム)が56万2100人(2万3400人増)、介護保健施設サービス(介護老人保健施設)が49万9300人(1万5500人増)と増えた一方、介護療養施設サービス(介護療養型医療施設)は12万6800人(9300人減)となった。
 
地域密着型サービスでは、短期利用を除く認知症対応型共同生活介護の20万2600人(1万3900人増)、認知症対応型通所介護の8万8900人(3500人増)、小規模多機能型居宅介護の7万9900人(1万4500人増)などが多かった。

また、介護予防サービスの受給者は127万3100人(5万4000人増)だった。内訳は、介護予防居宅サービスが126万2100人(5万3100人増)、介護予防支援が122万7300人(5万2400人増)、介護予防地域密着型サービスが1万2700人(1300人増)などとなった。

■2012.7.26  日本女性の平均寿命、香港に首位明け渡す- 震災の影響、20代の自殺増も
厚生労働省は26日、年齢ごとの1年以内の死亡率や平均余命などを推計した昨年の「簡易生命表」を公表した。それによると、昨年の日本人の平均寿命は男性79.44歳(前年比0.11歳減)、女性85.90歳(同0.40歳減)で、男女共に過去最高だった2009年から2年連続の減少。女性は香港を下回り、1985年から続いていた首位の座を明け渡した。

過去5年間の死亡確率の推移を見ると、がんや心疾患など主要な死因は男女で減少傾向にあるが、昨年は例年より減少幅が大きかった。「地震」(死亡届を提出)を死因から除いた場合、平均寿命は男性79.70歳、女性86.24歳と延びることから、東日本大震災の影響が強いとみられる。
 
さらに、女性は20歳代の「自殺」が前年より増加。震災との関係について厚労省では、「全年齢で増えているわけではないので、恐らく別の理由ではないか」としている。

中国の特別行政区である香港は、男性80.5歳、女性86.7歳で、いずれも1位となった。

■2012.7.26  「わが子を医療従事者にしたいか?」医師らに調査。支持された職種は?
エス・エム・エスとQLife(キューライフ)は、「医師」「看護師」「薬剤師」「患者」の4者に対して、「わが子を医療従事者にしたいか」についてアンケートを行った。調査の結果、同じ医療従事者でも属性によって職業観が大きく異なることが分かった。

同調査は両社が運営する4サイト「病院・お薬検索QLife」「院長jp」「ナース専科コミュニティ」「ココヤク」の会員を対象に実施。自分の子どもが「医師」「看護師」「薬剤師」を目指したいと言った時に勧めるかどうかについて調査し、1,167件の有効回答が寄せられた。

まず、「医師」を対象に自分の子どもが医師を目指すことについて聞くと、70%以上が「とてもなってほしい」「なってほしい」と回答。その理由として「やりがいのある仕事だから」「人のためになる職業だから」というコメントが多く寄せられた。

看護師・患者は「医師にあまりなってほしくない」意向が高い

一方、「看護師」「患者」に「自分の子どもが医師を目指すことをどう思うか」と尋ねたところ、過半数が「医師にあまりなってほしくない」と回答している。看護師からは「勤務が過酷」といった労働環境面の懸念が多く見られ、患者からは「医師になるためのハードルが高い」「学費が高そう」といった意見が多かった。

「看護師になってほしくない」医療従事者の約半数が回答

また、「自分の子どもが看護師を目指すことをどう思うか」と聞いたところ、「医師」「看護師」「薬剤師」「患者」の全てにおいて、過半数が「あまりなってほしくない」「決してなってほしくない」と回答。看護師自身は、約6割が自身の子どもが看護師を目指すことに消極的という結果になった。その理由として「勤務の過酷さ」や、それに対し「報われない」といった声が多く寄せられている。一方で「収入が安定している」と評価する声もあった。

「薬剤師になってほしい」看護師・患者の6割が回答

さらに「自分の子どもが薬剤師を目指すことをどう思うか」と尋ねると、「看護師」「患者」の60%以上が「なってほしい」と回答。「手に職があるので、安定している」「夜勤などが無く、健康的に働ける」といった声が寄せられた。しかし薬剤師自身は、自身の子どもが薬剤師を目指すことに消極的であることが分かった。その理由として、薬学部が6年制になったことを指摘している声が多く「同じ6年大学に行かせるなら、医師を目指したほうがいい」といった意見があった。

■2012.7.26  病院送迎バスと乗用車が衝突…愛知県尾張旭市
26日午前10時15分頃、愛知県尾張旭市北本地ヶ原町の国道363号交差点で、直進中の病院送迎バスと対向車線から右折してきた乗用車が衝突した。

この事故で、バスに乗っていた3人が負傷し、病院に搬送された。このほかにも複数のバスの乗客がけがをしている模様。

愛知県警守山署によると、バスには約35人が乗っており、名古屋市名東区の地下鉄東山線藤が丘駅前から愛知県長久手市の愛知医科大学病院に向かう途中だった。

■2012.7.26  虐待増加:児童相談所パンク…100件超抱える福祉司も
11年度6万件に迫っていたことが分かった児童相談所(児相)への虐待相談件数。増加は厚生労働省が90年度に調査を始めて以降21年連続で、一時保護施設はパンク状態、人員不足も慢性化している。児童福祉司の中には100件以上の対応児童を抱え、過労とストレスの極限状態で働き続ける人も。虐待対応の増加は現場に重くのしかかっている。

全国206の児相のうち128カ所にある一時保護所。厚生労働省によると、児相のある69自治体の45%が10年、定員を超えて児童を受け入れていた。

定員いっぱいの40人前後を受け入れている九州地方の児相はピーク時の2年前には52人を保護していた。「日中は小学生から高校生まで、非行も不登校の子供も同じ大部屋。虐待を受け感情を抑えきれない子供も多いので、ストレスもリスクも増える」。入所している男子中学生に胸倉をつかまれ「はよ出さんかい」とすごまれた経験もある担当課長はこう話す。

■2012.7.27  逗子の福祉法人が、介護給付費1億4000万円不正に受給/神奈川 
介護給付費を不正に受領したとして、県は27日、社会福祉法人「湘南の凪」(逗子市逗子3丁目)に対する障害福祉サービス事業者の指定を取り消すと発表した。4年間で1億4千万円を不正に受け取っていたという。

県によると、同法人が運営するグループホームなどで今春までの4年間、入居利用者への居宅介護サービスの実体がないのに、記録を改ざんするなどの方法で不正請求し介護給付費を得ていた、としている。

監査に対し同法人は「計画に合わせる形で改ざんしていた」と事実関係を認めているという。加算金を含めて返還する意向を示していることなどから、県は刑事告発はしない方針。実際に勤務していなかったり対象者が不在なのにヘルパーを派遣したと記録するなど、事実上の架空請求に当たる手口が多かったという。県は実地指導も行っていたが、記録の改ざんは見抜けなかったとしている。

今春着任した施設長が不適切な請求に気付いて5月に自己申告。県が障害者自立支援法に基づき監査に入っていた。指定の取り消しは利用者の引き継ぎを考慮して8月10日付にした。

■2012.7.27  不正請求で大阪市が居宅介護指定取り消し
介護給付費を不正に請求したとして、大阪市は26日、NPO法人「まつさく」が運営する居宅介護と重度訪問介護の事業所「生活支援ひらっと」について、障害者自立支援法に基づいて指定を取り消した。

市によると同事業所は、2006年10月から11年11月までの間、サービスの提供に関して虚偽の記録を作成するなどして、介護給付費を不正に請求した。両サービスについての不正請求額は約1311万円で、市は同日、加算金を含めた約1836万円の返還を請求した。

市はこのほか、同事業所が不正請求した移動支援費約828万円と、同法人などが運営する障害者小規模作業所3か所が11年度までに不正請求した補助金約1954万円についても、返還を請求した。

■2012.7.27  胃ろう 選択迫られ家族に迷い
高齢者が口から食事を取れなくなったときの選択肢の一つが「胃ろう」。胃に穴を開け、そこに通した管から人工栄養を取る。容易に栄養摂取ができる一方で、生活の質が改善されないこともあり、「いたずらな延命治療では」と、疑問の声も上がる。ただ、胃ろうをつける患者の状態はさまざまで、選択を迫られる家族には迷いが募る。

◆鼻腔栄養より容易

関東地方に住む遠藤知恵さん(68)=仮名=は6月、夫に胃ろうをつけるか否かの選択を迫られた。夫は70代半ば。脳梗塞で倒れて2カ月。危機的な状況は脱したが、寝たきりで意思疎通はできない。栄養は、鼻から通した管から取る「鼻腔栄養」。ある日、病院側から「近い時期に胃ろうにすることで、ご家族の承諾を得たい」と打診があった。

「胃ろう」は、患者が口から食べられないときの選択肢の一つ。胃に開けた穴を通して人工栄養を取る。「点滴」や鼻から人工栄養を取る「鼻腔栄養」に比べて感染症の危険性が少なく、管理が容易だ。

「新聞やテレビで見たことはあったが、自分に選択が降りかかってくるとは思っていなかった」と遠藤さん。本やインターネットで調べ、医師にも相談し、親族は消極的だったが、迷った末に胃ろうをつけることに決めた。

◆少し元気になった

入院中の夫が看護師に向かって「バカッ」と言ったと聞き、改善に希望を持ったことが大きい。「同じ胃ろうでも、90歳を超えた人が延命だけでつけ、口をポッカリ開けているのとは違う。意思疎通はできなくても、痛いことや嫌なことをされた感覚は残っているのだと思う」と話す。

鼻腔栄養もやめたかった。「感染の危険性も高いし、夫は鼻に入れたチューブが不快で引っこ抜こうとするので、手を24時間縛られていた。不快でないだけでも良かった」

病院側からは「胃ろうにすれば風呂にも入れるし、口から食べられるようになれば、胃ろうを取ることもできる」と勧められた。「鼻腔栄養だと、介護施設が入れてくれない」と言われたことも大きかった。

6月末、夫は老人保健施設に移った。胃ろうにして、少し元気になったようだ。遠藤さんは「今後のリハビリで、どう回復するのか判断がつかない。10年たっても状態が変わらず、認識もないままのとき、外せるかどうか…。今は待つしかないと思っています」と話している。

日本老年医学会は6月、高齢者のケアにおける胃ろうなどの「人工栄養」について、差し控えや中止も選択肢とするガイドラインを公表した。

ガイドラインは、意思決定に際して、本人・家族、医療・ケアチームの十分なコミュニケーションを求め、人工栄養の導入について「本人の人生にとっての益と害という観点で」最善を見いだすことを求めた。

さらに、(1)全身状態の悪化で延命効果が見込めない(2)必要な生活の質が保てない−場合は「中止ないし減量を検討し、それが継続より、本人の人生に益となる(ましである)と見込まれる場合は、中止ないし減量を選択する」とした。

早くから胃ろうの問題点を指摘してきた東京都世田谷区の特別養護老人ホーム「芦花ホーム」の石飛幸三医師は「実際にどうするかが問題」と言う。同ホームでは入所時の意思確認で、口から食べられなくなったときに胃ろうをつけるか否かを聞く。胃ろうの入所者には、状態に応じて栄養剤の減量も行ってきた。「消化しきれない量を入れれば、吐いたり、下痢をしたりする。量を加減することで(終末期の)階段を下りていくのを支えるということ」という。

そのやり方は一人一人違う。「家族も医療職も責任を転嫁せず、話し合って結論を出すことが必要。本人のために真剣に考えて出した結論なら、どんな結論でもいい。精いっぱいやったという思いがあることが大切だ」という。

日本老年医学会も意思決定のプロセスを重視し、関係者の合意に基づく選択・決定を求める。しかし、患者の状態はさまざまで、選択を迫られる家族は病状や容体もよく分からず、判断に迷う。

患者側に立ち、医療側との橋渡しをする動きも出てきた。「看護コンサルタント」代表で、赤十字国際委員会の「フローレンス・ナイチンゲール記章」を受けた訪問看護師、村松静子(せいこ)さんは今年10月、「メッセンジャーナース」の設立総会を開く。

医療で決断を迫られ、判断に悩むことは多い。胃ろうの例でも、つけたら回復の見通しがあるのか▽つけないと、どんな経過や生活が見込まれるのか▽療養場所の選択肢には何があり、どんな生活になるのか−。医者にも分からないケースもあるし、医者が伝えたつもりでも、うまく伝わっていないこともある。

メッセンジャーナースは、医師に聞くことをアドバイスしたり、治療説明に同行して一緒に治療方針や見通しを聞いたりして、患者と家族の理解を促す。

村松さんは「今は医療側と患者側に情報格差がある。しかし、患者や家族は思うように聞けない。医療と生活の両方が分かる看護師が間に立つことで、医師も情報を伝えやすくなる」という。「メッセンジャー」の言葉には、患者本人の代弁者でありたいという願いを込めた。本人の意思が確認できないときも、家族が本人の意向をくんで意思決定できるように手伝う。

ただ、「メッセンジャーナース」は任意の資格に過ぎない。研修を終了した36人が今、17都道府県にいるが、「相談を受けつつ、どんな仕組みにできるか考えているところ」と言う。生命保険のオプションにつけてもらうことや、自治体に置いてもらう可能性を探っている。

■2012.7.28  大震災被災者 障害認定請求手続きを
昨年3月11日に発生した東日本大震災から1年6カ月となる9月11日が近づいてきた。震災により障害を負った人の障害認定請求の始まる日と言え、社会保険労務士の井坂武史さん(34)=高槻市=は「障害年金を請求する重要な日になる」と位置付け、被災者らに呼び掛けている。

大阪府内には、東日本大震災の避難住民1025人(7月5日現在)が親族、知人のもとや公営施設などに移住している。震災によって障害者となった人数は把握できていないが、震災のショックによる精神疾患も障害年金の対象になるという。

障害年金の請求は、初診日から1年6カ月を経過した日で、障害認定日と定められている。カルテで初診日が確認でき、障害の状態に該当していれば、医師に診断書の作成を依頼し、障害年金の手続きをすることが可能だ。

しかし、被災者の一部あるいは多くが体育館やテントで治療を受けており、カルテが残っていない可能性もある。カルテが残っていないケースは、物証や証言を集めて客観的に初診日を特定するしかないという。

井坂さんは「客観的に初診日となる証拠や物証を手に入れ、障害年金の手続きをする必要がある。時間の経過とともに証拠をそろえたり、物証をそろえることが大変になる。一日も早く手続きをすることが必要」と話している。

■2012.7.29  福祉事業所が清掃・除草作業の共同受注開始
県内46の障害福祉事業所でつくる県就労支援事業所協議会(平原伸会長)は、清掃・除草作業の共同受注を始めた。窓口を一本化することで仕事を受けやすくし、働く障害者の工賃アップにつなげるのが狙い。協議会は「障害のある人たちの丁寧な仕事ぶりは好評で、リピーターの客も多い。ぜひ一度活用を」と呼び掛けている。

墓掃除や草取りといった作業を得意とする福祉事業所は多いものの、小規模な施設は単独での情報発信力が弱い。それぞれどんなサービスを提供しているかが分かりにくいことも課題となっていた。
 
事業所の資質向上などに取り組む同協議会は今月、社会福祉法人真珠園(中津市)に清掃や除草作業の受注窓口を一本化した。サービスに対応できる協議会加盟の事業所は20カ所あり、受け付けた仕事は現場に近い事業所などに割り振る。担当する事業所ごとに作業量や面積などに応じて見積もりを出し、契約する流れ。
 
夏場は雑草が伸びやすく、盆の墓参りもあって受注が増える時季。窓口を一本化することで、効率よく仕事を分け合うことができるようになる。清掃作業での共同受注が波に乗れば、協議会や県は今後、工芸品やクッキーなど物品の製造・販売にも対応したい考え。
 
協議会副会長の湯浅浩・真珠園施設長は「障害者を取り巻く制度が大きく動いている中、事業所側も危機感を持って柔軟にサービスを提供する必要がある。障害者事業所の高い信用度やきちんとした仕事を広くPRし、工賃の底上げを図りたい」と話す。
 
申込用紙は県や各自治体の社会福祉協議会ホームページで入手できるほか、7月中は県内のローソンでも配布。申し込み、問い合わせは真珠園(TEL0979−22−2138)へ。

■2012.7.31  発達障害者に求刑超え異例判決 「社会秩序のため」に賛否分かれる
姉を刺殺した発達障害のある42歳の男性被告に、裁判員裁判で求刑を超える懲役20年の実刑判決が言い渡された。その理由に、「社会秩序の維持」を挙げており、識者の間でも論議になっている。

障害を理由に減刑することは、刑事裁判では、よく見られる。この判決が異例なのは、逆に刑を重くしたことだ。

障害者団体などは、「無理解、偏見」と批判

報道によると、大阪市平野区の無職大東一広被告(42)は、大阪地検の精神鑑定で、社会的なコミュニケーションに問題があるとされるアスペルガー症候群と診断された。そのうえで、地検は、大東被告に責任能力はあるとして、殺人罪で懲役16年を求刑していた。

一方、2012年7月30日の大阪地裁判決では、アスペルガー症候群であると認定しながらも、大東被告がまったく反省していないうえ、家族も同居を望んでいないため、社会の受け皿がなく、再犯の可能性があると指摘した。そして、「許される限り刑務所に収容することが社会秩序の維持にも役立つ」として、殺人罪の有期懲役刑の上限を適用した。

判決によると、大東被告は、小学校5年で不登校になってから約30年間の引きこもり生活は姉のせいだと逆恨みした。そして、11年7月25日に生活用品を市営住宅の自宅に届けに来た姉に対し、腹などを包丁で数カ所刺して殺害した。

これに対し、弁護側は、「主張が認められず遺憾だ」として、控訴する構えを見せている。法廷では、障害の影響があったとして、保護観察付きの執行猶予判決を求めていた。

社会秩序維持を挙げた判決について、障害者団体などからは、「無理解、偏見に基づく判決だ」などと批判が出ている。とはいえ、ネット上では、その反応は様々だ。

識者から「裁判員の判断の方が常識」の意見も

判決について、「犯した罪ではなく、出所後の受け皿の有無で刑が決まるとかおかしい」「福祉の存在意義を真っ向から否定する言い分だな」といった疑問は多い。一方で、「病人だとはいっても、このような人間を受け入れられる施設が刑務所以外にあるのだろうか」などと判決を支持する声もあり、「無期禁固でいい」といった極論すらあった。

識者の間でも、意見は分かれているようだ。

日経の記事によると、判決について、板倉宏日大名誉教授(刑法)は「障害がある場合、量刑が軽くなるケースが大半。法律の専門家からすれば違和感が残る」と指摘した。一方、産経によると、元最高検検事の土本武司筑波大名誉教授は「検察側の求刑が軽すぎた。裁判員の判断の方が常識にかなっている。裁判員裁判を導入した成果といえるだろう」と述べた。

発達障害について、家族がいないと社会の受け皿がないというのは本当なのか。

大阪市内で発達障害者の支援に当たるある相談員は、取材に対し、「受け皿は少ないのが実情」と明かす。「グループホームに発達障害に特化したところはなく、どこも満杯です。ですから、社会復帰する施設は、なかなかありません」。

独り暮らしをしたとしても、実情は同様だ。2005年に発達障害者支援法が施行され、自治体が障害者を支援することになっている。しかし、本人が相談などをせずに引きこもっていた場合、行政が乗り込むのは難しいようだ。

ただ、前出の相談員は、判決については、「刑務所に発達障害対応のプログラムがあるとは思えず、理不尽だと思います」と漏らした。

■2012.7.31  災害弱者 名簿整備率ワースト1…千葉
千葉県内市町村で、災害時に支援が必要な障害者や高齢者を事前に登録する災害時要援護者名簿の作成が、他県に比べて遅れている。

総務省消防庁の4月1日現在のまとめでは、名簿が完成したのは54市町村のうち千葉市や市川市など19市町村(35・2%)で、整備率は全国ワースト1位。全国平均の64・1%も大きく下回り、県防災計画課は「整備が進まない理由を分析して市町村の作成を支援する」と話している。

政府は2005年に災害弱者の支援に関する指針をまとめ、全市町村に早急な名簿作成を求めた。市町村は名簿を民生委員や消防団、町内会などにも提供し、災害弱者の支援で連携する。名簿登録者の決定方法や、名簿の提供範囲は市町村の判断に委ねている。

同庁によると、昨年9月、台風12号の豪雨被害を受けた奈良県十津川村では、村職員や民生委員が名簿を基に対象世帯に電話して安否を確認。医薬品の供給や、人工透析患者の村外移送に役立ったという。同村福祉事務所は「名簿を作る前は障害者や高齢者などをそれぞれ違う部署が把握しており統率のとれた対応が難しかった」と話している。

県内で名簿が未完成の35市町のうち、31市町は作成に着手したが、このうち25市町は10年度以前から1年以上も作業を続けている。作成に時間がかかるのは、個人情報保護への配慮で名簿登載を住民の自主性に委ねる例が多いためだ。

茂原市は昨年12月から広報紙と市ホームページで、75歳以上の独居世帯などに登録を呼び掛けたが、希望者はわずか7人。同市は「こんなに少なくては名簿を作ることも出来ない」として、民生委員やケアマネジャーが戸別訪問して登録を促す方法に切り替えた。

一方、東日本大震災で津波被害を受けた旭市は、同じ12月に名簿登録の同意を求める文書を対象者に直接送った。「震災で防災意識が高まった」(同市)こともあり約6割の同意が集まった。名簿は近く完成する。

県外では、都道府県が主導することで整備が進んでいる例も多いため、県も今後、対象者の同意を得る具体的な方法の助言などにより、名簿の普及を促す。

名簿整備率が9割を超える神奈川県では、県が市町村に対し、〈1〉認知症などで本人の同意を得にくい場合は家族に理解を求める〈2〉条例に関連規定を設けて同意を得ずに名簿を作成できるようにする――など、具体的な作成方法を示しているという。

 

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