残しておきたい福祉ニュース 1996〜社会福祉のニュース

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残しておきたい福祉ニュース

 2016年 
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 2016.10. 3 知的障害児にわいせつ疑い 福祉施設経営者を再逮捕
 2016.10. 4 看護師の特定医療行為  指定研修機関に認定・・・群馬県の美原記念病院
 2016.10.10 危険はらむ駅のホーム JR三ノ宮駅全盲者同行ルポ  神戸新聞
 2016.10.10 ホーム転落の男性 誰も「反応してくれなかった」  神戸新聞
 2016.10.15 2014年度の障害者雇用率ランキング
 2016.10.15 電動点字打刻機  障害者の賃金増へ開拓 富山の株式会社フロンティア 
 2016.10.23 神戸の田園に広がる「つぼき」 稲わらで作る伝統の技
 2016.10.24 発達障害者の受験、配慮進まず 「かえって受験に不利になるのでは」あえて申請見送る親も
 2016.10.25 <ホースセラピー> 馬と触れ合い 支援学校児童、自分に自信
 2016.10.25 非常用階段避難車  株式会社サンワ
 2016.10.28 貝塚市に飲食店・乗馬クラブ開設 阪南の社福法人野のはな /大阪
 2016.10.29 障害者の工賃3倍増で生活保護頼みから脱却を 日本財団会長・笹川陽平
 2016.10.29 全国老人福祉施設協議会の石川憲会長が自民党会議に出席 株式会社などの特養参入に反対立場を表明


■2016.10.3  知的障害児にわいせつ疑い 福祉施設経営者を再逮捕
和歌山県警岩出署は3日、知的障害がある女児にわいせつ行為をしたとして、準強制わいせつの疑いで大阪市中央区、障害福祉施設経営****容疑者(26)を再逮捕した。「黙秘する」と供述している。

再逮捕容疑は1月20日午後2時20分ごろ、大阪市内に停車中の軽自動車内で、知的障害がある女児(10)=同市城東区=にわいせつな行為をした疑い。

同署は9月17日、和歌山県岩出市で女児(8)の下腹部を手で触ったとして県迷惑防止条例違反の疑いで**容疑者を現行犯逮捕した。同署によると、家宅捜索の際に今回の女児に対するわいせつ行為を収めた写真や動画が見つかったという。

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大阪市内にある障害者支援施設の経営者の男が、別の施設に通っていた知的障害のある10歳の女児にわいせつな行為をしたとして逮捕された。

準強制わいせつの疑いで逮捕されたのは、大阪市中央区の障害者支援施設「cocoLisS」の経営者****容疑者(26)。

警察によると**容疑者は、自分が経営している施設とは別の大阪市内の障害者福祉施設にも勤務していた。

9月17日に施設に通っていた小学生の女児(10)を車で送迎する途中に13歳未満であることを知りながら、わいせつな行為をした疑いがもたれている。
被害を受けた女児には重度の知的障害があったということで、警察は抵抗できないと知りながら犯行に及んだとみているが**容疑者は取調べに対し、黙秘している。

■2016.10.4  看護師の特定医療行為  指定研修機関に認定・・・群馬県の美原記念病院
群馬県の美原記念病院(伊勢崎市太田町、美原盤院長)は、医師が行う医療行為の一部を担う看護師を養成する国の指定研修機関に県内で初めて認定された。
指定機関は全国に28施設(8月4日現在)あり、同病院は気管カニューレ交換の研修を担当する。


特定行為に係る看護師の研修制度】指定研修機関について


特定行為研修を行う指定研修機関(日本地図)
http://social-welfare.rgr.jp/storage/ggig5kskc-1.jpg

各指定研修機関で研修が行われている特定行為区分(平成28年8月現在)
http://social-welfare.rgr.jp/storage/hospital-kensyu01.pdf

■2016.10.10  危険はらむ駅のホーム JR三ノ宮駅全盲者同行ルポ  神戸新聞
東京の地下鉄駅で8月、目の不自由な男性がホームから転落、電車にはねられ亡くなった。後を絶たない転落、接触事故。改札内の各箇所について、視覚障害者はどうとらえているのか。全盲で兵庫県立盲学校(現視覚特別支援学校)元教諭の古賀副武(そえむ)さん(71)=高砂市=と、JR神戸線三ノ宮駅(神戸市中央区)のホームを歩いた。

9月のある日、午前10時半すぎ。中央改札を出発し、ホームを目指す。「まず点字ブロックを探さんと」。白杖(はくじょう)を前に出し、床に擦りながら左右に振る。そこへ駆け足の女性が通りかかり、慌てて白杖を跳び越えた。

白杖でブロックを探し当て、その上を歩く。ブロックの先に男性が立っている。古賀さんの存在に気付いたようだが、動く気配はない。記者が古賀さんをブロック外へ誘導した。

「点字ブロックはどうしてカーブせず、直角に曲がっているのか、知ってますか。遠回りになるのにね」と古賀さん。「方向を正確につかむためですよ」と解説してくれた。

階段を上り、ようやくホームに着いたところで振り返り、手すりにある点字を触る。「この階段は東口、中央口へ向かいます、と示されているね」

ホームを歩き始めた。前方確認のため、白杖をパチ、パチ、パチ、と床に当てながら進む。「うるさい!と言う人もいますよ」と古賀さん。「人間っていうのはね、立場が変わるとそうなるもの」

ホームの端に沿って、点字ブロックが敷かれている。どちらがホーム内側か線路側か、を判別できるように、内側には線状の突起「内方線」が施されている。足裏の感覚を確かめながら歩く。

「列車が通過いたします。大変危険ですので点字ブロック内側までお下がりください」とアナウンス。いったん止まり、内側に下がって貨物列車が過ぎるのを待つ。「この風圧で吹き飛ばされそうになるんですよ」

再びブロック上を歩き始めると、ベビーカー連れの女性がよけた。それを知った古賀さんは「ありがとう」。さらに歩くと今度はブロックのすぐそばに柱があり、ぶつかりそうに。「こういうのが危ない」。さらに、このような手狭な所に人が立っていると、視覚障害者はよけようとしてホーム際に行き、転落しそうになるのだとか。古賀さんも約20年前、山陽垂水駅のホームから落ちたことがある。

「あれ?」。ブロック上を歩いていたつもりが、足裏の感覚が薄れてきたらしい。しゃがんで、ブロックを手で触る古賀さん。突起がすり減っていた。

ホームをぐるりと歩いた後、中央改札に戻るため、エスカレーターに乗ろうとするが、2台並んでいる。一方が乗り口、もう一方が降り口。乗り口はどっち? 片方のエスカレーターにじりじりと近づき、動く手すりに触れる古賀さん。そこは降り口だった。前からエスカレーターに乗った男性が来る。もう少しで接触するところだった。

駅から出て、古賀さんは語った。「求めるのはホームドアの設置と、周囲からの声掛けです」

■2016.10.10  ホーム転落の男性 誰も「反応してくれなかった」  神戸新聞
障害者に対して、周りの人の「気付き」が大切−。全盲に近い症状で、駅ホームから転落し重傷を負った鍼灸(しんきゅう)マッサージ師、向井喜博(よしひろ)さん(56)=兵庫県明石市=はそう実感する。

昨年8月、向井さんは知人に会いに行こうと正午前、自宅最寄りのJR大久保駅(明石市)に到着。白杖(はくじょう)を手にホームの点字ブロック上を歩き始めた。

ブロック上に人がいた。「すみません」と言うが、道を空けてくれない。スマホか、イヤホンから流れる音楽にでも気を取られているのか。かわし、再びブロック上に戻った。
また人がいた。声を掛けても、動く気配はない。同じようにブロックから離れ、戻る。
3人目。また同じ。よけようとした時、方向感覚を失った。右足を踏み外し、線路に落ちた。

ホームに引き上げられ、その1、2分後に電車が来た。骨盤の一部を粉砕骨折し1カ月半入院。仕事復帰に4カ月かかった。

「最大限に注意して歩いたつもりだったが…。恐ろしくて、もう1人でホームに行けない。ホームドアさえあれば」。一方で思う。「あの時、3人が3人とも反応してくれなかった。そういう世の中が問題なのかもしれない」

■2016.10.15  2014年度の障害者雇用率ランキング
障害者雇用率ランキング トップ1〜49位
http://social-welfare.rgr.jp/storage/shougaisha-koyouranking_1a.jpg

障害者雇用率ランキング トップ50〜100位
http://social-welfare.rgr.jp/storage/shougaisha-koyouranking_2a.jpg

■2016.10.15  電動点字打刻機  障害者の賃金増へ開拓 富山の株式会社フロンティア 
障害者の仕事や賃金を増やそうと、富山市内の省力機械メーカー「フロンティア」は、簡単な操作で紙に点字が打ち込める電動機械を発売した。福祉作業所で従来使われている機械は手動式で、障害者が仕上げられる枚数やスピードには限界があった。柳瀬哲夫社長(75)が、多くの障害者が低賃金で働かざるを得ない状況に置かれていると知り、三年を費やして開発した。

機械は卓上に置ける大きさ。封筒や名刺を差し込みスイッチを押すと、金型を付けたパンチが紙に圧力を加え、半球状の凹凸ができる。熟練者なら、一時間で千枚以上を仕上げられる。

柳瀬さんは二〇一三年ごろ、友人が運営に携わる福祉作業所を訪ねた。そこで働く人の賃金を聞き、絶句した。時給は百九十八円だった。「仕事ぶりは健常者と変わらないのに。なぜこんな差別が…」。多くの障害者が生活に不安を抱いていることも初めて知った。

精密プレスを得意とする会社の技術を生かして、障害者たちの作業の改善につなげられる機械を探し求めた。たどり着いたのは、手動式の点字打刻機。「電動式を作って生産性を高めれば、賃金の上昇や自立支援が期待できる」。開発を決意した。

開発では、作業所での使いやすさを追求した。紙を下支えするクッション生地で圧力を吸収する仕組みにして、パンチの調整を不要にした。打刻数を数えなくても良いように、デジタルの計数器を取り付けた。モーターの作動音を抑え、集団生活に配慮した。パンチを透明なケースで覆い、指のけがを予防した。

複数の作業所に試作機を持ち込み、「使ってみて、駄目なところを言ってください」と頼んだ。当時は、〇八年のリーマン・ショックの影響が長引き、会社の売り上げは低迷していた。開発費がかさみ、社内から開発中止を求める声が上がったが、やめなかった。

改良を重ねた完成品。知的障害がある女性の作業を見守った。女性は点字を一時間打ち込んだ後、ぽつりと言った。「楽しい機械をありがとう」。その一言に勇気をもらった。「一人でも多くの障害者に、喜びを感じてもらいたい」と、北陸で実績を積んだ後、全国での販売を目指している。機械は一台六十四万八千円。作業所が助成金などで購入し、企業や役所の印刷物の点字打刻を引き受ける流れを想定している。問い合わせは、フロンティア=電076(451)3717=へ。


封筒点字打刻機
http://www.toyama-frontier.com/tenzidakokuki3.html
http://www.toyama-frontier.com/tenzidakokuki2.html
http://www.zenkoku-trialnet.jp/toyama/main/7.html?detail=7045


株式会社フロンティア
http://www.toyama-frontier.com/tenzidakokuki3.html

■2016.10.23  神戸の田園に広がる「つぼき」 稲わらで作る伝統の技
神戸市北区淡河町の田園地帯で、刈り取った稲わらを円すい形(直径約1メートル、高さ約1・5メートル)に積み上げた光景が広がっている。

地元では「つぼき」と呼ばれ、昔は家畜用の餌や畳の材料などに使われていたという。内側が雨でぬれないように、頂上部分はわらでしっかりと結ばれている。
近くの障害者支援施設「上野丘更正寮」の職員や利用者が、地域のお年寄りに作り方を教わりながら約10年前から取り組んでいる。翌年の初夏に同施設が作るスイカ畑の敷きわらとして使うという。
かつては稲刈り後によく見られたが、農作業の機械化が進み少なくなった。同施設職員の男性(53)は「伝統の技を若い人たちと受け継ぎたい」と話した。

■2016.10.24  発達障害者の受験、配慮進まず 「かえって受験に不利になるのでは」あえて申請見送る親も
九州7県の2016年度県立高校入試で、発達障害(未受診を含む)の受験生に時間延長などの特別措置が取られたのは、全志願者約8万5千人のうち十数件(約0・02%)にとどまることが西日本新聞の取材で分かった。発達障害の可能性がある中学3年生は3%程度の割合でいるとされ、ほとんどが申請せずに受験したとみられる。入試要項に配慮規定を明記していない県がある一方、受験に不利に働くと懸念して申請しない保護者も多いようだ。

九州各県の教育委員会によると、16年度入試での措置数は、福岡5、佐賀4、長崎1の計10件。他の4県は申請がごく少数で「本人の特定につながる」などとして非公表だった。14、15年度も同様の傾向だった。

各県教委によると、出身中学を通じて申請があれば、時間延長や別室受験、解答用紙の拡大、漢字に読み仮名を振るなど、必要な措置を検討するという。このうち、福岡、佐賀、大分、鹿児島各県は、入試要項に「障害がある受検者等への配慮」などと明記。熊本県は「身体に障がいがある受検者−」と記しており、長崎、宮崎両県は記述がない。


全国3500校のうち3%程度にとどまる

文部科学省によると、発達障害の可能性がある中学3年生は40人学級に1人程度と推計される。だが、入試で特別措置を取った公立高は、全国約3500校のうち12年度93校▽13年度171校▽14年度177校▽15年度126校−と3%程度にとどまる。ある県教委の担当者は「申請がないと対応できない。周知が行き届いていない面もあるのではないか」と分析する。

あえて申請を見送る保護者もいる。目に見えない障害のため同級生の親から苦情を受けたり、教師の無理解から怒られてばかりだったりと、誤解や偏見に悩んだ経験を持つ当事者や家族が少なくない。福岡県の父親は「かえって受験に不利になるのでは」として申請をしなかったという。

今年4月には障害者差別解消法が施行され、公立高の入試や授業で障害の特性に即した「合理的配慮」が義務化された。熊本県教委は「発達障害にも既に対応している」として入試要項を変更する予定はないとするが、長崎県教委は17年度から改める。宮崎県教委は「今後検討する」としている。

中学が申請後押しを

日本LD学会前理事長の上野一彦東京学芸大名誉教授(発達臨床心理学)の話 発達障害者は特定分野に秀でた人もいる。万能型を求める現在の入試制度では才能の芽を摘み、国家の損失につながりかねない。高校は義務教育ではないとはいえ、大学入試センター試験では配慮されており、高校入試でも十分な措置が必要だ。小中学校での支援を手厚くして、申請を後押しするべきだ。


発達障害

自閉症やアスペルガー症候群、学習障害(LD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)などの総称。集中力が続かない、意思疎通が苦手、物事を計画的に進められないなど、人によって特性が異なる。脳機能障害が原因とされるが、詳しいメカニズムは分かっていない。2012年の文部科学省調査では、通常学級に通う小中学生で6・5%、中学3年は3・2%に可能性があるとされた。

■2016.10.25  <ホースセラピー> 馬と触れ合い 支援学校児童、自分に自信
◇福岡県、効果検証へ

 馬との触れ合いを通じて心身のバランスを整える「ホースセラピー」の効果を明らかにしようと、福岡県は特別支援学校に通う児童らに馬と交流してもらい、前後の心身の変化をみる取り組みを始めた。全国的にも珍しい事業で、県は「普及を後押ししたい」としている。

 福岡県古賀市にある県馬術競技場で今月14日、県立古賀特別支援学校に通う知的障害のある3年の男子児童5人が生まれて初めて馬に向き合った。最初は「怖い」と担任らにしがみついていたが、ニンジンを食べさせたり、馬小屋の掃除をしたりして少しずつ慣れると、その後の乗馬体験では笑顔で「楽しいよー」と声を弾ませる姿もあった。

 児童の母親(35)は「普段は集中力が続かないところがあるけれど、馬の動きを注意しながら乗る順番を待つことができた」とほほ笑んだ。

ホースセラピーは民間の乗馬クラブや支援団体などが取り入れているが、県は更なる普及のためには、その効果を明らかにする必要があるとして検証事業を考案。今年度、古賀を含む特別支援学校や小学校に通う、視覚障害や情緒障害などのある児童計20人を対象にホースセラピーを実施することにし、県馬術連盟に年間340万円で委託した。

セラピーは原則週に1回約2時間ずつで全6週。参加前と後で、馬上で見せる表情▽泣いたり怖がったりする様子▽言葉や動作でのコミュニケーション−−などの10項目にどういう変化があったかを県職員がチェックし、それを踏まえ担任や心理士がこの間の成長ぶりを検証する。すでに終えた児童の中には、以前は物事に自信が持てない言動が目立っていたのに「自分はできる」と肯定的な表現が増えた子もいるという。

県馬術連盟の木村スガ子理事長は「触るだけでなく、乗ることもできる馬との触れ合いは、身体的な反射神経を伸ばす一方、思いやりの心も育み、幅広い効果が期待できる」と語る。県障害者福祉課は「効果を行政が発信していくことで、民間の取り組みにも広がりが出てくることを期待したい」と言う。

動物を介した作業療法に詳しい帝京科学大の石井孝弘教授は「海外では、医師や心理の専門家が関わった上で乗馬療法を取り入れている。日本でも障害によってどんな触れ合いが効果的なのか研究が始まったところだ。自治体が効果の検証に乗り出したことは珍しく、馬を活用した取り組みはこれからもっと広がっていくだろう」と話している。

 ◇ホースセラピー
乗馬やブラッシングなど馬との触れ合いで心身の発達や社会性を育む「動物介在療法」の一つ。精神的なケアや教育的な面からも効果があるとされる。欧米では障害者のリハビリとして定着し、ドイツでは健康保険の適用も受けられる。日本では約30年前に導入されたが、民間団体による取り組みが中心。

■2016.10.25  非常用階段避難車  株式会社サンワ
一般財団法人日本消防設備安全センターより避難車としては初めて、消防防災の分野において有効に活用できる消防防災製品として「消防防災製品等の推奨品」として認定。

非常用階段避難車「キャリダン」
アメリカ国防省や国会議事堂にも設置されている

http://www.sunwa-jp.co.jp/

■2016.10.28  貝塚市に飲食店・乗馬クラブ開設 阪南の社福法人野のはな /大阪
府内で障害者の通所授産施設などを運営する阪南市の社会福祉法人野のはな(西尾京子理事長)は、貝塚市の市有地約37ヘクタールの一角に、障害者が働くレストランと乗馬クラブを開設する。法人の担当者は「地域に根ざした観光地として、貝塚市の魅力の一つになれば」と話している。

レストランと乗馬クラブは、障害者の就労を支援する事業所として計画された。レストランは「森の小径」と名付けられ、一足早く8月に開店する。乗馬クラブの名称は「ハーモニーファーム野のはな」で、9月にオープンする予定だ。場所は旧国立療養所千石荘病院の跡地などを含む丘陵地で、貝塚市が2011年10月に大阪市から約3億8000万円で購入。法人は、この土地の一部を借りて施設建設を進めてきた。

乗馬クラブの業務は兵庫県の淡路島や京都で乗馬クラブを展開する企業に委託した。障害があるスタッフは、馬のベッドとなる「敷き粉」の交換や清掃、エサやりなどを担う。社会参加の促進だけでなく、馬との触れ合いを通して心身の回復などの効果も期待されるという。法人では、馬から生じた堆肥で野菜を作り、レストランの食材とすることも検討している。レストランの営業時間は午前11時〜午後9時で水曜日は休み。




障害者が働く乗馬クラブとレストラン(就労継続支援B型、就労移行支援)が大阪府貝塚市にオープンした。運営するのは府内で就労系事業所とグループホームを展開する社会福祉法人野のはな(西尾京子理事長)。全国的に珍しい組み合わせの施設は、仕事を循環させる仕組みを確立し、障害者が地域で自立して暮らせるよう支援する。

ホースセラピー効果

1万平方bの敷地には厩舎棟、屋内外の馬場、レストランなどが入るクラブハウス棟が隣接する。貝塚市が5年前に病院跡地で行う事業を公募し、同法人の提案が採用された。建物は全額法人負担で建て、土地は市から借りている。
乗馬クラブ「ハーモニーファーム野のはな」は9月15日に本格始動した。西日本最大級の屋内馬場では雨の日も乗馬を楽しめる。
業務は乗馬クラブの運営に実績のある企業に委託。障害者は厩舎や馬場の清掃、エサやりなどを担う。

馬と触れ合うことで心身の療養になるホースセラピーの効果も期待され、馬に会いたいと施設に通う回数が増えた人がいるなど早くも効果が出現。
12頭いる馬は新しい環境に慣れさせている段階。将来的には障害者が馬を洗ったりブラッシングしたり、ひき馬もできるようにする。企業からきた中村友哉さんは「障害者はしっかり働く。馬も障害者もけがをしないよう安全に気を付けている」と話す。

出足は順調

一足早く8月1日に開店したイタリアンレストラン「森の小径」では、障害者は接客や厨房などで働く。
元大手ホテルのシェフが作る料理は上品な味で、窯焼きのピザも人気。口コミで評判が広がり、ランチには多くのお客が訪れ、休日は1時間待ちになることもあるという。吉川卓次・理事が「売り上げは当初見込みの1・3倍」と話すように好調な滑り出し。
ノウハウは、法人が大阪市立大学内で3年前から運営するレストラン(就労継続支援B型)の経験が生かされている。

またクラブハウス棟の隣の敷地には、引退した路面電車が置かれている。保育園児やグループの集まりで料理を食べながら貸し切りで利用できるよう準備している。
施設では馬ふんから堆肥を作ることにも取り組んでおり、じゃがいもなどを栽培する畑で使うことにしている。いずれは栽培する野菜の種類を増やし、レストランの食材として提供する構想も描く。吉川さんは「施設内で仕事が循環する仕組みを目指している」と話す。
さらにホースセラピーの効果を期待して、不登校の児童が通うフリースクールのような仕組みをつくることも模索している。

目標工賃5万円

現在、施設では知的、精神の障害者を中心に22人が働く(定員60人)。平均工賃は3万6000円だが、法人では目標工賃を5万円におく。障害年金の約7万円と合わせると約12万円になり、グループホームで生活できる額になるからだ。

また法人では、各事業所に予定日を休まず通った人に2万円を支給する皆勤手当を設け、自発的に地域に出ていくよう促している。
こうした取り組みを通じて親が亡くなっても障害者が地域で自立して生活することを支えていく。
社会福祉法人も自立しないと生き残れないという意識のもと、吉川さんは「乗馬クラブもレストランもビジネス。障害者が働く場ということは出さない。味やサービスで勝負する」と意気込む。年間の売り上げ目標は乗馬クラブ、レストランとも5000万円だ。

■2016.10.29  障害者の工賃3倍増で生活保護頼みから脱却を 日本財団会長・笹川陽平
≪働いても月1万数千円の収入≫

日本には働いても月1万数千円の収入しか得られない人たちがいるのをご存じだろうか。障害の程度などから一般事業所での雇用が困難とされ「就労継続支援事業」で就職に必要な知識や能力の向上を目指す障害者のうち、特に雇用契約が難しいとされるB型事業で働く人たちだ。

全国で約1万事業所、20万人に上り、国も工賃倍増計画を打ち出しているが、「障害の有無にかかわらず、すべての国民が共生する社会」を目指す障害者総合支援法(2012年公布)の理念には程遠い現状にある。
障害のある人は全国で790万人。全体の社会参加、生活アップを促進するには、まずはボトムにある20万人の工賃アップこそ先決と考える。仮に3倍に底上げできれば、障害者手当を含めた月収は10万円を超え、生活保護に頼る現状から脱却する道も開かれ、社会保障費の抑制だけでなく、障害のある人の自信にもつながる。

障害者総合支援法に基づく就労支援施設には、全国約3000カ所、約5万5000人が働く就労継続支援A型の事業所とB型事業所の2つのタイプがある。
ともに一般企業への就職は難しいとされているが、A型は雇用契約を結び都道府県が定める最低賃金以上が支払われ、月平均賃金は12年現在約6万8700円。これに対しB型は障害の程度が比較的重い人たちが対象で雇用契約はない。最低賃金を大幅に下回るため支払いも工賃と呼ばれ、額も月平均約1万4800円にとどまる。

この結果、月6万〜7万円の障害基礎年金を受給しても生活を維持するのは難しく、多くが生活保護に頼る現実がある。地域にもよるが、障害者1人が最低限の生活を維持するのに必要な収入は月10万円前後とされ、仮に工賃が現在の3倍の4万5000円前後になれば、この数字は達成でき生活保護に依存する必要もなくなる。
実現すればA型事業所で働く障害者の賃金だけでなく、就労支援施策の対象となる18〜64歳の障害者320万人の待遇改善にもつながるはずだ。

≪必要な事業者の意欲刺激策≫

しかし就労不可能な重度の障害者も多く、国が10年前にスタートした工賃倍増計画も思うように進んでいないのが実態だ。日本財団が全国2000カ所以上で取り組んできた古民家改修などによる障害者の就労場所の整備も、働き場所の拡大にはなったが賃金アップにはつながらなかった。
背景には、就労作業が長年、障害を理由に工賃の低い軽作業を中心に用意されてきた歴史がある。従って今、何よりも求められるのは、障害者を「社会的弱者」として「保護」の目線で見てきた行政や事業者の意識改革である。

近年、障害のある人が働く食品工場やレストラン、喫茶店やパン工房など、成功事例が全国的にも増えており、事業者には障害者の工賃・賃金アップに向けた新たな顧客獲得や個々の障害者に合わせた付加価値の高い仕事の開拓が求められる。
その上で、就労継続支援事業制度の一定の見直しも必要と考える。現行では就労支援事業の指定を受けた事業者には、障害者1人当たり月14万〜15万円の基本報酬が、事業に伴う利益の有無や多寡と関係なく給付される。

これでは事業者の意欲を高めるのは難しいし、障害者の支援よりも、事業者の報酬確保が優先される結果になりかねない。事業者の前向きの取り組みを期待するには、やはり事業者の意欲を刺激する工夫が必要と考える。
利益が増えれば、まずは障害者の工賃アップに反映させるのは当然として、事業者の報酬にも何らかの上乗せができるような仕組みが検討されてもいいのではないか。そうなれば事業者にも新たな企業チャンスとなり、双方が「ウィンウィン」の関係になる道も開ける。

≪1億総活躍社会にもつながる≫

われわれも「民」の立場で、障害がある人の働く場所づくりに向けた就労支援プロジェクトを新たにスタートさせた。多くの事業を成功させた高知の関係者を組織に招き、協同で地方創生に取り組む鳥取県では工賃3倍、その他地域でも高賃金の障害者就労モデルを、全国の100カ所を目標に整備したいと思う。
あわせて障害者就労の専門家の育成などを進め、ささやかでも「みんながみんなを支える社会」の創造に貢献したいと考える。

パラリンピックの盛り上がりを見るまでもなく、障害者を健常者と区別する社会の目線は確実に姿を消しつつある。今後は少子高齢化に伴い労働力不足が深刻化する半面、障害のある高齢者は確実に増加する。
B型事業所で働く人も含め、1人でも多くの障害者が普通に働ける職場を開拓することが、障害者の社会参加の機会を増やすだけでなく、安倍晋三内閣の「1億総活躍社会」、誰もが参加できるインクルーシブな社会、ひいては地域の活性化につながると確信する。(日本財団会長・笹川陽平 ささかわようへい)

■2016.10.29  全国老人福祉施設協議会の石川憲会長が自民党会議に出席 株式会社などの特養参入に反対立場を表明
10月17日、自民党本部で「地域の介護と福祉を考える参議院議員の会」が開かれ、全国老人福祉施設協議会の石川 憲会長が出席した。
石川会長は、公正取引委員会が先月「介護分野に関する調査報告書」で唱えた特別養護老人ホームへの参入規制緩和に対し、「『国による福祉』は市場論理で語られるべきではない」として、強く反対する立場を表明した。

公取委は、先月5日に発表した調査報告書のなかで、介護離職者が年間約10万人にのぼることや特養待機者が約15万人いることなどを踏まえ、株式会社などが参入できるよう規制緩和をすべきと主張している。

石川会長はこれに対して、株式会社は利益追求構造であるため、採算が合わない場合に撤退する恐れがあること、サービス活動収益の7割に及ぶ人件費の圧縮を行う可能性があることを指摘。
また、特養の運営が認められている社会福祉法人の認可を受けることについては参入の規制がないことことから、特養待機者問題についてはまず社会福祉法人による増設を検討すべきであり、制度を変えることを前提とした参入規制緩和の論調は、議論のすり替えだと批判した。

なお、特養の設置に関しては、現在でも「指定管理者制度」の仕組みのなかで、自治体の指定を受けることで株式会社も運営できるようになっている。
ただし、この制度に基づいて株式会社が特養を運営している実績は、現在のところない。

 

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