残しておきたい福祉ニュース 1996〜社会福祉のニュース

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残しておきたい福祉ニュース

 2012年 
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 2012.10. 1 90代入所者の口に塩 デイサービス施設代表、暴行容疑
 2012.10. 1 車いす用安全ベルト 介護福祉施設職員が製作
 2012.10. 2 発達障害児の学校生活 家族はどう支援?
 2012.10. 2 障害者施設:「理事長が入所者虐待」元職員が通報…千葉
 2012.10. 2 入所高齢者の口に塩押し込む、介護施設代表を逮捕 佐賀
 2012.10. 2 不正請求で訪問介護事業所の指定を取り消し、介護員養成研修の改善指導も 三重県
 2012.10. 3 精神障害者施設:虐待通報 千葉県が立ち入り調査
 2012.10. 3 勤務していた老人ホームで窃盗容疑 元介護士逮捕 神奈川
 2012.10. 4 有料老人ホーム110番
 2012.10. 4 認知症の入院患者変死 看護師解雇「布団で頭包む」 大阪・豊中市の病院
 2012.10. 4 精神障害者施設虐待:「日常的に暴力」 県の調査に職員
 2012.10. 4 南房総の障害者施設入所者虐待:「行政対応遅かった」 通報者保護規定、職員が次々証言 /千葉
 2012.10. 9 府内障害者就労支援へ 機構が研究会立ち上げ
 2012.10. 9 介護送迎車事故:路線バスに追突し1人重傷、4人軽傷
 2012.10.10 施設職員、セアカゴケグモにかまれる 大阪
 2012.10.10 不正受給:緊急雇用事業の委託料、津の訪問介護事務所が246万円 /三重 サザンコート
 2012.10.11 職員着服が相次ぐ、横浜の障害者福祉施設/神奈川
 2012.10.11 岩手県、通所介護事業所を指定取り消し- 650万円余りを不正受給
 2012.10.11 八幡平の事業所、介護報酬658万円 県が指定取り消し /岩手 マイトレア・ニケタン
 2012.10.12 また、福祉が人を殺した
 2012.10.12 累犯障害者、歩道橋上で男児投げ落とし 施設の賠償責任論争 八尾市
 2012.10.15 障害者福祉の充実を 相模原で2団体がデモ行進へ、地域で普通に暮らしたい/神奈川
 2012.10.15 入所者に虐待か 神戸市が特養を処分 兵庫 本多聞ケアホーム
 2012.10.16 補助犬:「シンシア」に出会って 宝塚市職員・大西さん、広報誌に特集 啓発活動を紹介、障害者に希望を /兵庫
 2012.10.18 自殺未遂者を追跡調査…神戸市医師会など
 2012.10.18 RSウイルス 苦しそうな呼吸、注意を
 2012.10.18 詐欺:介護報酬詐取容疑、会社代表を逮捕 八代署 /熊本 ひまわり
 2012.10.19 ドクターヘリ試験飛行…京都
 2012.10.19 富士フイルム、「サラシア」のインフルエンザ症状軽減作用を実証
 2012.10.19 日本脳炎ワクチン接種と死亡の因果究明へ- 三井厚労相
 2012.10.19 口腔ケアで胃ろうを抜去 「口から食べる」を支援する
 2012.10.19 RSウイルス感染者、過去最多に 1週間で5千人超
 2012.10.20 施設から長男連れ去る
 2012.10.20 食中毒:障害者支援施設「星が岡牧場」で16人症状 能美 /石川
 2012.10.21 高齢者の「転んで骨折」防ぐ 手軽な運動法を開発
 2012.10.21 ノロウイルス:津の障害者施設の弁当で35人症状 県が営業禁止処分 /三重
 2012.10.22 夫の連れ子に熱湯、25歳女を逮捕 大阪府
 2012.10.25 解雇職員と福祉法人の和解成立
 2012.10.25 知的障害の少女殴り死なせる、容疑の41歳男逮捕
 2012.10.26 接客に福祉の視点 高齢・障害者の対応強化 ホンダカーズ宮城
 2012.10.26 古着などの提供を、障害者福祉施設
 2012.10.28 盲導犬:進まない社会的受け入れ…多くの理解を 福井でキャンペーン、訓練説明や歩行体験も /福井
 2012.10.30 暴行容疑で経営者を再逮捕 介護施設塩事件 佐賀 デイサービス立花・立花宅老所
 2012.10.31 障害福祉事業者の指定取り消し 書類偽造で愛知県
 2012.10.31 不正受給で訪問介護事業所の指定取り消し- 和歌山県
 2012.10.31 在宅障害者 震災の爪痕
 2012.10.31 海南の「紀和苑」指定取り消し 介護報酬不正受給 和歌山
 2012.10.31 盲導犬:一緒に散歩し理解呼びかけ 中区 /広島


■2012.10.1  90代入所者の口に塩 デイサービス施設代表、暴行容疑
福祉施設に入所する90代の男性の口の中に塩を押し込む虐待をしたとして、佐賀県警は1日、同県伊万里市立花町の通所施設「デイサービス立花」代表、冨永英之容疑者(59)を暴行容疑で逮捕し、発表した。容疑を否認しているという。

県警などによると、冨永容疑者は5月28日午前9時半ごろ、施設に併設する宅老所に入所している男性の口の中に、スプーンに盛った塩を押し込んだ疑い。

県と県警は5月末、伊万里市から「虐待があるようだ」と通報を受けた。県はデイサービス立花を7月17日に実地指導したが、冨永容疑者は「そのような事実はない」と否定していた。

デイサービス立花は2003年12月に県の指定居宅サービス事業所として開設。定員10人で、宿泊しながらデイサービスに通える宅老所を併設している。

■2012.10.1  車いす用安全ベルト 介護福祉施設職員が製作
埼玉県飯能市の介護福祉施設の職員たちが、車いす専用の“シートベルト”を独自に製作した。伸縮する帯を縫い合わせ、上半身を車いすに固定する簡単な安全ベルトだが、車いす利用者を守ろうとする思いがこめられ、職員らは普及に期待を寄せている。

きっかけは、7月下旬に起きた送迎中の軽傷事故。同施設「サンタヴィレッジ」の男性職員が福祉車両を運転中に急ブレーキをかけた際、車いすで乗車していた70歳代の女性が、頭に打撲傷を負った。筋力が衰えており、上半身の姿勢を保てなかったという。

通常、福祉車両の床には、車いすを固定する留め具を整備。車いすに座ったまま装着できる、一般車両と同じ形式の3点式シートベルトもある。

しかし、病気や障害を持つ高齢者の中には、上半身を真っすぐ保つのが難しい人も多く、その場合、シートベルトを通常通り装着できない。そこで、職員約10人がアイデアを出し合い、安全ベルトを作った。

腰などに巻く、市販のサポーター帯を約1・5メートルに合わせ、車いすの背面から胸を一巻きする。製作した職員が8月中旬、入間市根岸の自動車工場「小沢自動車商会」に相談。同社の小沢華一社長(69)が装着具合を確認した上で、自動車メーカーに持ちかけた。

自動車メーカーは「福祉の現場の貴重な意見。福祉用品、車いすメーカーと会議する機会があるので、情報を提供したい」とする。

職員は「伸縮素材なので、それぞれの症状に合わせやすい。自動車、福祉のメーカーで普及に取り組んでほしい」、小沢さんは「福祉車両の安全安心につながれば」と期待する。

■2012.10.2  発達障害児の学校生活 家族はどう支援?
「息子のとっぴな行動に『変な子』『親のしつけがなってない』と学校で周囲の反応は冷たい」−。発達障害の長男(9つ)を育てる母親(43)からの手紙が生活部に寄せられた。母親は「障害への理解がもっと広まってほしい」と訴える。発達障害の子や家族が、もっと生きやすくするにはどうすればいいか−。専門家に聞いた。

長男は都内の公立小四年生。一年の時に広汎性発達障害の一つであるアスペルガー症候群と診断された。

母親は「見た目は普通の男の子だけど、こだわりが強く、切り替えが苦手」と言う。特に時間へのこだわりが強く、学校で時間割通りに授業が進まないとパニックになり、うろうろしたり、声を上げてしまいがち。ほかの子から「変な子」と見られ、からかわれたり、いじめの対象になったこともある。

こだわりは長所でもある。「時間に正確な鉄道が大好き。乗り換えなどの知識は驚くほど」と言う。

学校の授業についていくのは大変。教師のクラス全員への指示が理解しづらい。区に要望し、週に何回か支援員がマンツーマンで付く。「○○ページだよ」など、支援員の声掛けでやっとついていける。週一回は障害に応じた指導が受けられる学級のある別の小学校へ通う。

母親は「校長や担任ごとに障害への理解度が違う。相談するが、先生が代わったらまたやり直し」と苦労を打ち明ける。

長年発達障害の児童を診てきた東京小児療育病院(東京都武蔵村山市)の赤星恵子副院長は「発達障害は生まれ持った脳の機能障害。本人のせいでも、親のしつけのせいでもない。周囲はその子の特性を受け止めてほしい」と訴える。

発達障害の子は「困った子」のレッテルを貼られ、家庭でも学校でも叱られることが多いとされる。赤星さんは「そういった環境で育つと、思春期ごろになって『自分は何をやってもだめ』『生きている価値がない』と屈折し、故意に人を怒らせる態度を取ったり、うつ状態など二次障害に発展してしまう可能性がある」と指摘する。

それを防ぐには、障害に早期に気付き、その子の特性を理解して周囲が支援していくことが大事。家族も病院などで専門家と話すと気分的に楽になる。赤星さんは「その子の特性を一緒に考え、育て方のコツを親とじっくり話し合っていく。同じ悩みを持つ親同士の交流も大きな助けになる」と話す。

発達障害の人たちを支援する日本発達障害ネットワーク理事長の市川宏伸さんは、学校では積極的に教師と話し合うことを勧める。「まずは担任に相談する。診断名を出す必要はなく、苦手なこと、逆に得意なことなど、子どもの特性をありのままに伝えて」とアドバイス。ほかの保護者には担任から伝えてもらう。

学校では、教師の役割が重要だ。「『Aくんって電車のことなら一番詳しいね』など、いい所を見つけてあげてほしい、と教師に伝える。そういう態度がほかの子たちにも伝わる。一方で、通常学級の教師も障害について勉強し、理解することが不可欠」と市川さんは話している。

■2012.10.2  障害者施設:「理事長が入所者虐待」元職員が通報…千葉
千葉県南房総市白浜町の精神障害者施設「ふるさとホーム白浜」の女性入所者(50)が、施設を運営する社会福祉法人「愛と光の会」(東京都荒川区)の山下洋子理事長(70)から虐待を受けていると元職員が1日、同市障害者虐待防止センターに通報した。同日から施行された障害者虐待防止法に基づく通報で、入所者は千葉県警館山署にも既に被害届を提出している。同市から連絡を受けた県は、近く施設の立ち入り調査をする。

市や施設関係者によると、9月初め、女性入所者の腕などに殴られたようなあざがあるのを職員が発見。市内の病院で、両腕や右足などに打撲が確認され、全治約10日と診断された。病院は「虐待の疑いがある」としてそのまま女性を入院させた。

理事長側は施設に戻るよう説得を試みたが、病院側は面会を認めていない。

元職員は「施設内で虐待を受けているのは彼女だけではない。入所者の多くが生活保護受給者で、逃げ出すことができない。障害者の弱みにつけ込んだ行為で許せない」と訴えている。

同会は東京都や栃木県などで複数の障害者施設などを運営。同ホームは昨年3月に開設され、現在約10人の入所者が暮らす。

■2012.10.2  入所高齢者の口に塩押し込む、介護施設代表を逮捕 佐賀
佐賀県警伊万里署は1日、老人介護施設に入所中の高齢者に対し、口の中に塩を押し込む虐待を加えたとして、同県伊万里市立花町、施設運営会社代表冨永英之容疑者(59)を暴行容疑で逮捕した。
 
発表によると、冨永容疑者は5月28日午前9時半頃、自らが運営する同市の「デイサービス立花・立花宅老所」で、90歳代の男性に対し、スプーンに盛った塩を無理やり口に押し込んだ疑い。「やっていない」と否認しているという。
 
施設は県から居宅サービス事業所の指定を受けており、当時、男性を含め約10人の高齢者が、デイサービスや泊まりのサービスを利用していた。

■2012.10.2  不正請求で訪問介護事業所の指定を取り消し、介護員養成研修の改善指導も 三重県
三重県は、介護報酬を不正に請求したとして、株式会社アクティブ・スマイルが運営する訪問介護事業所「ヘルパーステーションすまいる」の指定を取り消すと発表した。処分は9月25日付。

これにより、株会社アクティブ・スマイルは、今後、5年間は在宅系サービス(訪問介護、通所介護、短期入所など)の指定を受けることができなくなる。

介護報酬不正請求額は、2,747,898円にのぼり、今後は保険者が課徴金も含め、3,847,057円の返還を請求する。

事業所は2012年5月から事業を休止し、利用者は他の訪問介護事業所のサービスをrすでに利用しているため、取り消しによる影響はないという。

また、県では、同事業者が実施した介護員養成研修において一部の受講者が介護実習を未受講であったにもかかわらず、修了証明書を交付したことなどについても改善指導を行った。

【事業者の概要】
■運営者:株式会社アクティブ・スマイル

■事業所:ヘルパーステーションすまいる

■事業所所在地:志摩市阿児町国府3677-3

■サービス種類:訪問介護サービス

■開設年月日:2011年1月1日

【処分を行う理由】
・訪問介護員などの資格を有しない職員に単独で訪問介護のサービスを提供させ、介護報酬を不正に請求した。

・指定訪問介護事業所に在籍していない職員の名前を使用して、実際にはサービスを提供していない訪問介護記録を作成し、介護報酬を不正(架空)請求した。
  
【介護員養成研修の改善指導】
・2007年度から2011年度において、介護員養成研修訪問介護2級課程)を10回実施(通信制・通学制あわせて受講者94名)したところ、3名の受講者が介護実習を未受講であるのに修了証明書を交付していた。本人がその事実を認識していたことから、研修課程を修了したとは認めず、交付した介護員研修修了証明書は無効とする。

・通信制の介護員養成研修のうち、一部の教科目のレポート添削指導において、資格要件を満たしていない者に添削指導を行わせていた。該当する73名に対し、研修修了とは認めず、資格要件を満たした講師による補講を実施するよう指導。

◎三重県

■関連記事
・和歌山県の訪問介護事業所、不正請求で指定取り消し処分
・利用者からの通報で発覚、通所事業所が指定取消 茨城県八千代市

■2012.10.3  精神障害者施設:虐待通報 千葉県が立ち入り調査
千葉県南房総市の精神障害者施設の女性入所者(50)が施設を運営する社会福祉法人の山下洋子理事長(70)から虐待を受けたとして施設元職員が障害者虐待防止法に基づき市に通報した問題で、千葉県は3日午前、施設の立ち入り調査に入った。

立ち入り調査されたのは社会福祉法人「愛と光の会」(東京都荒川区)が運営する「ふるさとホーム白浜」。市から連絡を受けた県障害福祉課の担当者が山下理事長らから事情を聴いている。

一方、女性入所者から傷害容疑で被害届が出されている同県警館山署も2日、同市内の病院に入院中の女性入所者から初めて事情を聴いた。

元職員の通報によると、9月上旬ごろ、女性入所者は理事長の暴力で両腕や足に全治約10日間のけがをした。山下理事長は9月中旬の取材に「ありもしないことを入所者が話し多くの人が振り回されている。けがもあざのようなものと聞いている」と説明。元職員は「行政には法施行前から虐待に関する情報が入っていたはずで、真剣に調べてほしい」と話している。

愛と光の会は「詳細が分からずコメントできない」としている。

■2012.10.3  勤務していた老人ホームで窃盗容疑 元介護士逮捕 神奈川
老人ホームで窃盗を繰り返したとして、神奈川県警港北署は3日、窃盗の疑いで横浜市鶴見区駒岡の元介護士、野本大策容疑者(30)を逮捕した。同署によると容疑を認めているという。
 
逮捕容疑は8月から9月の間、当時勤務していた同市港北区の老人ホームで、入居していた男性(89)と女性(72)の現金計3千円と指輪9個(9万円相当)を盗んだとしている。
 
同署によると、9月初めに老人ホームから被害届を受け、防犯カメラの映像などから野本容疑者を特定した。他にも被害が数件あるといい、同署で関連を調べる。

■2012.10.4  有料老人ホーム110番
社団法人の全国有料老人ホーム協会(東京)が10月30日から11月1日までの3日間、「有料老人ホームなんでも相談 有料老人ホーム110番」を行う。

有料老人ホームの契約や費用などに関する相談に専門の担当者が応じる。電話相談後、希望があれば、後日、弁護士や福祉関係者らによる面接での相談も実施する。面接場所は東京都内か大阪市内を予定。

談は各日午前10時〜午後4時、電話(0120・180・885)とファクス(03・3548・1078)で受け付ける。相談無料。

問い合わせは、同協会事務局(03・3548・1077)へ。

■2012.10.4  認知症の入院患者変死 看護師解雇「布団で頭包む」 大阪・豊中市の病院
大阪府豊中市城山町の医療法人北斗会「さわ病院」で9月、認知症の入院患者の男性(79)が変死する事件があり、男性看護師(33)が病院側の調査に「声を上げたので薬を投与し、うつぶせにして布団で頭を巻き込んだ」という趣旨の説明をしていることが4日、分かった。

取材に病院側は「看護師の行為と患者の死亡との因果関係は分からないが、医療行為としてあってはならない」とし、看護師を解雇したことを明らかにした。

大阪府警豊中署は死亡時に届け出を受けて司法解剖を行ったが、看護師の説明については「把握していない」としており、改めて病院側から事情を聴き、刑事事件として立件できるか判断する方針。

同署によると、死亡したのは無職、田江(たごう)利一郎さん(79)。司法解剖の結果、死因はのどに何かをつまらせたことによる窒息死だった。外傷はなかったという。

田江さんは9月22日午後11時5分ごろ、病室のベッドの上で、頭に布団をかぶった状態で死亡しているのを巡回中の女性看護師が発見した。田江さんは約2年前から認知症の症状で入院。ほとんど寝たきりだったが、食事は普通にとれていたという。病院によると男性看護師は同日午後10時ごろ、田江さんが病室で大声を上げたため、医師の指示で睡眠導入剤を飲ませた。だが、田江さんが騒ぎ続けたため、布団で頭を包みうつぶせにしたという。

男性看護師は病院に対し、以前にも田江さんに同様の行為をしたと説明。「ほかの患者に迷惑がかかるのを防ぐため、これまでにも大声を上げて騒ぐ患者に布団をかぶせたことがある」と話しているという。

発見時は病室に田江さんのほか4人の患者がいたが全員寝ていた。発見の約1時間前に別の看護師が巡回した際は、大きな物音や争うような声を聞いた人はいなかったという。同署は当初、こうした状況や死因などから事件の可能性は低いとみていた。

豊中市保健所は病院から9月24日に報告を受け、翌日に立ち入り検査を実施。安全管理態勢を確認したうえで、改善計画を出すよう指導した。

■2012.10.4  精神障害者施設虐待:「日常的に暴力」 県の調査に職員
千葉県南房総市の精神障害者施設「ふるさとホーム白浜」で入所者が虐待されていると通報があった問題で、千葉県が3日行った立ち入り調査に対し、複数の職員が、運営法人理事長による日常的な暴力があったと証言したことが、施設関係者への取材で分かった。調査への隠蔽(いんぺい)も求められたとの証言もあったという。

この問題は、障害者虐待防止法が施行された1日、元職員から同法に基づく通報が同市にあった。施設を運営する社会福祉法人「愛と光の会」の山下洋子理事長(70)が入所者を虐待しているとの内容で、立ち入り調査で同県障害福祉課の担当者は、山下理事長と職員から聞き取りを行った。

施設関係者によると、聴取に対し、複数の職員が、平手や時には拳で入所者の顔などをたたくなど、理事長による暴力があったと証言。「節約のため、夏の間、水風呂に入浴させていた」「就労支援にもなるという趣旨で、深夜に足のマッサージをさせ、うまくいかないとたたいていた」という指摘もあった。

「死ね」「海に飛び込め」「生活保護費を切る」などの入所者への暴言があったとの指摘も出たという。

また、9月中旬以降、山下理事長が「苑長(理事長)による虐待は一切なかった」とする文書へのサインを入所者や職員に求めていた、との証言もあったという。

この施設に対する監督権は同県にあるが、同会は東京都と栃木県にも同種施設を運営しており、理事長の処分などについては厚生労働省との協議が必要とみられる。

毎日新聞のこれまでの取材に山下理事長は「私は人をたたいたりしない。たたいて気持ち良くなると思いますか?」などと話し、虐待を全面的に否定している。

■2012.10.4  南房総の障害者施設入所者虐待:「行政対応遅かった」 通報者保護規定、職員が次々証言 /千葉
「理事長による虐待は日常的だった」−−。障害者虐待防止法が1日施行されたことに伴い、元職員が通報した南房総市白浜町の精神障害者施設「ふるさとホーム白浜」を運営する社会福祉法人「愛と光の会」の山下洋子理事長(70)自らによる女性入所者(50)への虐待疑惑。3日に県の調査が入り、これまで沈黙を守ってきた職員の口から虐待に関する具体的な証言が明らかになったが、理事長は全面的に虐待を否定しており、県の調査の行方が注目される。

同法施行で、障害者への虐待を知った施設職員らは、市町村の虐待防止センターへの通報が義務づけられた。

今回は施設の元職員による、南房総市への電話通報が調査のきっかけとなったが、同法は、通報者が解雇などの不利益を受けることのないよう「通報者保護」の規定も盛り込まれている。3日の県の調査で、複数の施設職員が、理事長の虐待について証言した背景にはこうした事情もあるとみられる。

ただ、県に理事長の虐待を証言した職員たちは、「県や警察は虐待の疑いに気付きながら、動きが遅かった」との不満もぶつけたという。県や県警は「不作為」を問われない速やかな対応が求められている。

■2012.10.9  府内障害者就労支援へ 機構が研究会立ち上げ
大阪府工賃向上計画支援事業を受託する一般社団法人エル・チャレンジ福祉事業振興機構が、今月から工賃向上研究会をスタートする。同機構が進める賃金向上プロジェクトの一環で、障害者らが働く就労継続支援B型事業所の工賃向上を目指し、各事業所の担当者と議論を深め、事業所間の交流と課題や情報の共有化を図る。

治具(作業効率を上げる小道具やアイデア)と店舗経営(商品配列やPOP表示など)、販促(商品チラシの作成)の三つの研究会で、5〜6回にわたって開く。

これまでにも、ビジネスマナーや事業計画づくりなどのセミナーが開かれてきたが、いずれも単発で、参加した一部担当者への効果だけで具体的な成果の波及が小幅にとどまるのが実情だったが、今回の研究会では「実践的な成果を得られる形にしたい」と同機構の担当者は話す。

このため、参加型の姿勢を重視し、参加者の創意工夫を促す形で進めることにしており、販促研究会ではパソコンの専門家やデザイナーを招いて商品チラシを作成するなど、実際に帰ってすぐに役に立つ具体的成果の習得を目指す。

また、研究会を通じて他の事業所の担当者らと議論や交流を深めることで、研究会終了後も情報交換し合えるようなネットワークづくりも視野に入れる。

さらに同機構では「研究会の成果を出席した担当者だけでなく各事業所で共有してもらえるように、マニュアル化するように工夫したい」と話している。

大阪府では、就労継続支援B型事業所に従事する障害者の2011年度の月額平均工賃は9761円。07年から府が取り組んできた「工賃倍増5カ年計画」の成果もあり、06年度の7990円に比べて22・2%増加したが、11年度の調査で現状の工賃に「満足」とする意見は12・3%で、50・9%が「やや不満」26・7%が「大いに不満」と回答している。

工賃向上プロジェクトでは、経営コンサルタントや技術指導者、企業OBの販路コーディネーターなどを派遣し経営力アップもサポートする。販路サポーターの新規企業開拓などで、年間約5千万円の販路を各事業所に供給する実績を挙げている。

しかし、06年に府内の4千社を対象に実施した調査では、作業所の存在を知る企業はわずか12・6%にとどまるなど、一般企業などの作業所への理解や協力はまだまだ必要なのが現状。同機構の担当者は「もっと多くの企業にこうした事業所の存在と取り組みを知ってもらいたい」と話している。

■2012.10.9  介護送迎車事故:路線バスに追突し1人重傷、4人軽傷
9日午後4時ごろ、鹿児島市谷山中央1の国道225号で、市内の民間介護施設の送迎用ワゴン車が、バス停に停車中の路線バスに追突した。ワゴン車に乗っていた施設利用者の女性(75)が胸を強く打って重傷。施設の女性職員1人と利用者の男女4人(73〜85歳)が打撲などの軽いけがをした。路線バスの乗客ら7人にけがはなかった。

鹿児島南署などによると、ワゴン車には利用者5人、職員3人の計8人が乗っていた。市内の動物園に行った帰りだったという。

現場は片側1車線の直線道路。同署は、ワゴン車を運転していた施設の女性職員(35)と路線バスの男性運転手(60)から事情を聴いている。

■2012.10.10  施設職員、セアカゴケグモにかまれる 大阪
大阪府は9日、羽曳野市内の社会福祉施設で、職員の男性(30)がセアカゴケグモにかまれたと発表した。セアカゴケグモにかまれる被害は今年度5人目。

府によると、男性職員は2日午後3時半ごろ、施設の軒下にすだれを固定しようとした際、左手親指の付け根をかまれた。患部を冷やすと、1時間後に痛みは引いたという。藤井寺保健所が施設を調べたところ、施設内でセアカゴケグモの成体や卵が見つかり、すべて駆除した。


■2012.10.10  不正受給:緊急雇用事業の委託料、津の訪問介護事務所が246万円 /三重 サザンコート
県は9日、訪問介護事業所などを運営する津市観音寺町の「サザンコート」(三輪清隆代表)が緊急雇用創出事業の委託料約246万円を不正受給していたうえ、介護職員の処遇改善のために県から受け取った交付・助成金約92万円も職員に支払っていなかったと発表した。県は同日、委託契約を解除し違約金を含む約271万円の返還を請求した。交付・助成金についても近く全額返還を求める。
 
県地域福祉国保課によると、同社は緊急雇用創出事業で10年度に妻と息子を雇用したとしていたが、妻は同社の取締役で離職者でなかった。また、2人に賃金を支払っていなかったにもかかわらず、支払い済みとする虚偽の実績報告書を作成し、委託料を不正受給していたという。
 
さらに、10〜12年度に介護職員に対する給与改善を図ったとして交付・助成金を受け取っていたが、県の検査で職員への支払い実績は無かったという。

■2012.10.11  職員着服が相次ぐ、横浜の障害者福祉施設/神奈川
横浜市泉区の障害者グループホーム「メゾン『みどり』3」に勤務する男性職員(33)が、知的障害者の施設利用料など少なくとも112万5千円を着服していたことが11日、分かった。運営支援などを行う横浜市社会福祉協議会と市が発表した。職員は3日、泉署に出頭。同署は詳しい事情を調べている。

同ホームには25〜76歳の男性5人が入居し、月額7万5千円で夕方から朝まで生活している。

市などによると、今月1日、5人の利用料が3カ月分、滞納となっていることが発覚。同区内にある運営本部が職員に確認したところ、着服を認めたという。4日に全額返済された。

職員は2009年7月に採用され、ホームの責任者として障害者らの預金や小遣いなども管理。同年12月から12年9月までに通帳から不正に現金を引き出すなど着服を続けていたという。市などは実態調査をしている。職員は「カードローンの支払いや飲食費などに充てた」と話しているという。同ホームは入居者やその家族の代表者らで運営しており、同様の施設は市内に計52カ所ある。運営費の一部は社協を通じて市が交付している。

また、市は、神奈川区の障害者地域活動ホーム「たんまち福祉活動ホーム」で男性介護職員(42)が36人の保護者から7月と8月の会費計17万円を着服したことも公表した。9月28日に全額返済され、同日付で解雇されている。職員は「住宅ローンの返済に充てた」と話しているという。市健康福祉局は「現金や預金の管理などは必ずダブルチェックするよう態勢強化を指導する」としている。

■2012.10.11  岩手県、通所介護事業所を指定取り消し- 650万円余りを不正受給
介護給付費を不正受給していたなどとして岩手県は10日、デイサービス事業所「マイトレア・ニケタン」(八幡平市)などを運営する「Aspire(アスパイア)」(同市)について、介護保険法に基づき通所介護と介護予防通所介護の指定を取り消したと発表した。取り消しは同日付。

同県長寿社会課によると、アスパイアは昨年5月、実際には1人しか雇用していないのに2人の看護職員を配置していると偽り、通所介護事業所としての指定を受けた。さらに昨年8月から今年5月にかけて、実際には来所していない2人分(142日分)の介護給付費を架空請求するなどして、約658万円を不正に受給した。
 
今後、盛岡北部行政事務組合など2保険者が、課徴金を含め返還を求める方針。なお、アスパイアが運営する居宅介護支援事業所「如水」(同市)は、取り消しの対象には含まれていない。

■2012.10.11  八幡平の事業所、介護報酬658万円 県が指定取り消し /岩手 マイトレア・ニケタン
県は10日付けで、介護報酬約658万円を不正に受給したなどとして、八幡平市松尾寄木のデイサービス事業所「マイトレア・ニケタン」を、指定取り消し処分とした。
 
県長寿社会課によると、同事業所は昨年7月から今年6月までの間、実際には盛岡市内の病院に通っていた利用者がサービスを受けているかのように装う▽看護師ら職員の人員を水増しするなどして、盛岡北部行政事務組合と盛岡市から、介護保険料を不正に受給していた。
 
同事業者は、昨年5月に通所介護と介護予防通所介護の事業者認定を申請し、昨年7月に開所。今年6月までに延べ49人が利用していた。

■2012.10.12  また、福祉が人を殺した
■また、福祉が人を殺した
 寺久保 光良《著》 雨宮 処凛ほか《鼎談》

今年1月に札幌市白石区で起きた40代の姉妹の孤独死。無職だった姉は区の福祉事務所に生活保護相談に3回訪れたが生活保護を受けることなく、電気もガスも止まった部屋で姉が病死し、知的障害のある妹は凍死した。本書はこの事件の原因を探り、生活保護行政の問題点をあぶり出した。

「全国『餓死』『孤立死』問題調査団」に参加した著者は、姉妹の故郷の旧産炭地にも足を運び、早くに両親を亡くし苦労しながらも仕事に就き、支え合って懸命に生きてきた姉妹の生い立ちを追う。

そして生活に困った姉が訪れた福祉事務所の対応を、面接受付票や姉の日記から明らかにする。保護が必要な状態だったのに、面接員は求職活動を求めて十分な制度説明をせず、区も問題を認めない。著者は、保護申請をしづらくして追い返す「『水際作戦』の典型だ」と批判する。

25年前にも、同区で生活保護を受けられなかった母親が餓死し、著者はその事件も本にした。「事件を教訓とできなかったのか」と嘆き、役所の体質や社会保障切り捨て策など背景にある構造的問題も指摘する。現代において、貧困や孤立死は決してひとごとではないとの言葉は重く響く。

■2012.10.12  累犯障害者、歩道橋上で男児投げ落とし 施設の賠償責任論争 八尾市
授産施設に通う知的障害者の男(47)に歩道橋から投げ落とされ、重傷を負ったとして、当時3歳の男児(9)側が施設側に損害賠償を求めた大阪地裁の訴訟で、利用者による犯罪に施設が責任を負うのかが論争になっている。男は事件を繰り返していた「累犯障害者」で、男児側は「施設職員らが監督を怠った」と主張。施設側は「賠償責任が認められれば受け入れ先がなくなる」と争う。今春には刑務所などを出所した知的障害者らを支援する拠点が全都道府県に設置されており、全国の福祉関係者が審理の行方を見守っている。

男は、グループホームで生活しながら施設に通っていた2007年1月、大阪府八尾市の歩道橋で、施設のクッキー販売に参加中、通りがかりの男児を道路に投げ落とし、頭蓋骨骨折などの重傷を負わせたとして、殺人未遂罪で実刑判決を受け服役している。当時現場には施設の職員1人が付き添っていた。

男児側は、視力が大幅に低下し、身長が伸びにくくなる後遺症が残ったとして、10年7月、男と施設を運営する社会福祉法人、理事長(65)を提訴し、約5200万円の賠償を求めている。

男児側はまず「男は現場で施設の販売活動に参加しており、施設側は指揮・監督する立場にあった」とし、使用者責任があると主張。これに対し、施設側は「通所者らが主体の活動で、施設は、それを支援する立場。指揮・監督する関係にはない」と否定する。

さらに男児側は、男が今回の事件前、幼児を対象にした誘拐事件など6件を起こし、2件で実刑判決を受けていたとし、「施設側は第三者に危害を加えることは予見できた」とする。だが、施設側は「以前は幼児への好意から連れ回した事件で、危害を加えた今回の事件とは異質。予見は不可能だった」と反論。

同様の施設を運営する社会福祉法人などから「福祉施設の役割を考慮して判断してほしい」とする要望書約120通が寄せられ、施設側が証拠提出している。

審理は二つの争点を中心に進むが、提訴から2年以上たっても証拠調べに至らず、論戦が続いている。

出所した「累犯障害者」の支援は本格化するが、再犯に及んだ場合、受け入れ施設は法的責任を負うのか。

法務省による2006年の調査では、知的障害がある受刑者のうち、前の事件から1年以内に再犯を起こしたのは約70%。福祉サービスを受けるのに必要な療育手帳を持つのは6%に過ぎず、約40%は出所後の帰住予定先が「未定・不詳」だった。

このため、国は09年度から出所後の受け入れ先を探す「地域生活定着支援センター」事業を開始。今年3月末で全都道府県に設置され、昨年度は計274人を支援した。

だが、全国地域生活定着支援センター協議会の田島良昭会長は「施設側の抵抗感は強く、今も受け入れ先の確保は難しい」と漏らし、「賠償義務を負わされると累犯障害者を受け入れる施設はなくなる。社会からの排除は新たな再犯者を生んでしまう」と懸念を示す。

これに対し、男児側の代理人弁護士は「成長とともに、どんな影響が出るか不安は大きい。誰かが責任を果たすべきだ」と不十分な被害救済の実態を訴える。

障害者の犯罪に詳しい辻川圭乃(たまの)弁護士(大阪弁護士会)は「知的障害者の犯罪の多くは万引きや無銭飲食で、年金や生活保護の受給など生活環境を整えれば再犯は減らせる。被害救済のため犯罪被害者給付金などの充実も重要。障害者を社会全体で支える仕組みづくりが急務だ」と指摘する。

■2012.10.15  障害者福祉の充実を 相模原で2団体がデモ行進へ、地域で普通に暮らしたい/神奈川
相模原市内で活動する障害者団体「生きる会」(薄井恵美会長)と「障害者の生活を創る会」(池田まり子代表)は23日、障害があっても地域で普通に暮らせる社会を求め、市内でデモ行進する。経済的困難や将来の不安が社会全体を覆う中、かき消されがちな当事者の声を発信する。

生きる会は脳性まひなど全身性の障害者の当事者団体で1983年4月に発足。創る会は2005年9月に当事者や家族、支援者らで組織した。合同でデモを行うのは7回目となる。

デモ行進と同時に市と話し合いの場を持ち、障害者福祉制度の充実を求める要望書も併せて提出してきた。

どんな障害があっても、当たり前に生きたい−。ささやかで当たり前な願いも、行動を起こさなければ生存がおびやかされる。そんな危機感を抱かせる事件が起きたのは08年。1月、精神障害と知的障害のある兄弟が母親に殺害され、6月には、やはり知的障害のある小学5年生の女児が母親に刺し殺された。障害者とその家族を支える行政のサポート態勢の遅れが指摘された。

地道な行動は、意思疎通が難しい障害者が入院した場合、普段から支援に携わっている事業所の職員を「コミュニケーション支援員」として病院に派遣する制度の導入につながるなど、実を結んでもきた。

一方でいま、生きづらさは増しているようにも感じている当事者は少なくない。長引く不況や震災への不安…。デモを前にメンバーからは「生活保護を受けて暮らしている障害者も多い。不正受給がクローズアップされ、受給者への風当たりが強くなるのが心配」「東日本大震災後、防災訓練が行われるようになったが、車いすの障害者のことが考慮されていない」といった声が上がる。

障害者自立支援法が今年6月に改正されたが、生きる会の森田孝一事務局長は「当事者の声がより届きにくくなったと感じる。デモを通じて一般の人にも障害者福祉の課題をアピールしていきたい」と話す。

デモは午後1時にJR相模原駅前を出発。市役所本庁舎まで約1・5キロを歩き、加山俊夫市長に宛て、政令市にふさわしい独自の障害者福祉制度の確立を求める要望書を提出する。

■2012.10.15  入所者に虐待か 神戸市が特養を処分 兵庫 本多聞ケアホーム
神戸市は15日、同市垂水区の特別養護老人ホーム「本多聞ケアホーム」で、女性介護職員4人が入所者の女性4人の髪の毛を引っ張るなどの虐待行為があったとして、同ホームを介護保険法に基づき、6カ月間の新規受け入れ停止処分にした。11月から6カ月間は介護報酬を2割減額する。
 
市によると、4人のうち20代の職員は今年5〜7月、70代の入所者が食事中に指をなめるのを見て「手をちぎったろか」と発言。さらに別の90代の入所者にたたかれたことに腹を立て、腕をたたき返したという。職員はいずれも否定したが、別の職員が証言した。
 
また、20〜30代の職員3人は入所者が服を着せてほしいと頼むと、「あなたのお手伝いじゃない」と怒鳴ったり、入所者の髪の毛を引っ張ったりしたという。
 
7月下旬、同ホームの職員の通報を受け、市が調査。職員計約30人から聴き取りをし、虐待事案6件を処分対象とした。このほか、約2年前から虐待が疑われるケースが20件程度あったことや、高齢者虐待に関する研修が今年2月まで一度も行われていなかったことも判明したという。
 
一方、ホーム側は6件のうち3件について「事実を確認できない」と否定。その上で中山満介施設長(55)は「厳しい処分。利用者やご家族、地域の方々に不安感を与え、申し訳なく思う」と謝罪した。
 
中山施設長は、1998年4月の開所当初からの入所者がいる現状に触れ、「長期入所の施設なので、職員と利用者の間に不適切な発言を生むなれ合いがあったかもしれない」と説明。近く学識者らを交えた検証委員会を設けるという。

■2012.10.16  補助犬:「シンシア」に出会って 宝塚市職員・大西さん、広報誌に特集 啓発活動を紹介、障害者に希望を /兵庫
宝塚市の広報誌「広報たからづか」10月号で身体障害者補助犬の特集が掲載された。取材と執筆を担当したのは入庁1年目の大西喜子さん(22)。今月で施行から10年を迎えた身体障害者補助犬法も紹介しており、大西さんは「補助犬は障害がある人の希望になる。今後も情報発信したい」と笑顔で話す。

大西さんは小野市出身。小学校の教師で養護学校にも勤務した母恵美さん(54)から福祉や人権について教わった。大学2年の時、自宅にあった「介助犬シンシア」(毎日新聞社)を読み、宝塚市のコンピュータープログラマー、木村佳友さん(52)がシンシアと電車に乗るだけでも苦労したことを知った。就職活動では「シンシアのまち」として福祉に力を入れている宝塚市を志望し、採用された。

広報課の先輩の勧めもあり、補助犬特集の担当に選ばれた。5月に愛知県長久手市の介助犬訓練施設「シンシアの丘」を取材。介助犬との合同訓練を終えた女性に心の変化を聞くと「就職や、免許を取って頑張ろうという気になれた」と答えてくれた。その言葉が心に残り、特集の書き出しは「君がいたから、諦めていたことに もう一度チャレンジしてみようという気になった」とつづった。

8月下旬から取材を本格的させ、木村さんと介助犬エルモの1日を表にし、啓発を続ける「宝塚補助犬支援の会」の活動も紹介した。大西さんは「シンシアがいなかったら宝塚市に来ていなかった。これからも補助犬に関わりたい」と話している。

■2012.10.18  自殺未遂者を追跡調査…神戸市医師会など
神戸市医師会などが、市内の救急病院と連携して自殺未遂者の追跡調査に乗り出している。

全国の自殺者が年間3万人を超える中、未遂者はそれ以上に上るとされ、再び自殺を図るケースも多いという。ただ未遂者の動向を十分に把握できていない現状にあることから、医師会などは「調査結果の分析を通して、未遂者の支援方法に生かしたい」としている。

同市の年間の自殺者数は300人超に上るが、未遂者数はつかめていない。例えば、自殺を試み、救急搬送された軽傷者が、その日のうちに治療を終えた場合、予後を見守る診療が行われないことが多く、病院とのつながりも途絶えてしまうためだ。

市医師会と市によるうつ病患者らの自殺予防に取り組むグループ「神戸G―Pネット」では、未遂者は再び自殺を試みる可能性が高いとされることから、未遂者の実態を継続的に把握することが自殺防止に結びつくと判断、調査を始めた。

調査は、自殺者が増えるとされる年末に合わせて、昨年12月の1か月間、市内57か所の2次、3次救急指定病院の協力を得て実施。自殺を図った人が搬送されるたびに、▽年齢や性別▽自殺未遂歴▽搬送時に施した治療▽その後の診療の有無――などを、各病院の救急担当の医師に所定の調査票に記入してもらった。

その結果、死亡者10人、未遂者56人(男性18人、女性34人、未記入4人)の計66枚のシートが集まった。未遂者の年代別の内訳を見ると、30歳代が15人、20歳代が14人、40歳代が8人と続いた。自殺未遂歴「有り」は26人(46%)に達し、中には6回も自殺を図った人もいた。残りは他院に紹介するなど継続して診療が行われていることが判明した。

一方、入院中(昨年12月末時点)や未記入計9人を除く未遂者47人のうち、その後の動向が分からなくなっている人は18人もいた。

調査を担当した市医師会の深山鉄平理事(47)は「未遂者にはその後のフォローが重要。継続的に精神ケアなどを行っていけば、自殺の減少につながるはず」と話す。

調査結果は11月に京都市内で行われる日本救急医学会で発表される。同グループでは今月から来年3月まで半年間、2度目の調査にあたり、更なるデータ収集に努めるという。

■2012.10.18  RSウイルス 苦しそうな呼吸、注意を
赤ちゃんにとって、インフルエンザに負けず劣らず、警戒すべき感染症――。小児科医が、そう口をそろえる病気があります。最近、流行が広がっている「RSウイルス感染症」です。

国立感染症研究所感染症情報センターの調査では、今季は流行の立ち上がりが早く、すでに9月初旬の時点で、例年の11月並みの広がりをみせ始めた。秋から冬にかけて増えていくため、今季はとりわけ注意が必要だ。

RSウイルスは2歳までにほぼすべての赤ちゃんが感染する。ありふれた感染症で、成長すると軽い鼻風邪ぐらいで済むことが多い。問題は赤ちゃんに感染したときだ。慶応大の池田一成専任講師(小児科)は「小さいうちに感染するほど、重症化しやすくなる」と話す。

気管支や肺などの「下気道」に症状が出やすく、気管支炎や肺炎の原因になる。症状は発熱、鼻水、せきと、風邪やインフルエンザと大きく変わらないが、「ゼーゼー」と苦しそうな呼吸をしているときは注意が必要。呼吸の苦しさから母乳やミルクののみが悪くなったり、眠りが悪くなったり。赤ちゃんで比べれば、インフルエンザよりも入院の患者数が多いという報告もある。

    ◇

熱の高さにとらわれがちだが、RSウイルス感染症は、熱が下がった後に呼吸が苦しくなるなど、症状の悪化がみられることもある。池田さんは「熱の有無に関係なく、苦しそうな呼吸や表情に注意してほしい」という。

インフルエンザではタミフルなどの治療薬があるが、RSウイルス感染症にはないため、呼吸管理などの対症療法が中心になる。もともと心臓や肺に病気があったり、早産で低体重で生まれたりした赤ちゃんのためには、予防のための注射薬がある。

東京女子医大の楠田聡教授(新生児科)は「大人が赤ちゃんにうつさないように注意して」という。インフルエンザの流行が始まれば、マスクや手洗いなどの予防意識が高まるが、軽い鼻風邪ぐらいではそこまで働きにくい。

    ◇

RSウイルスの流行がすでに始まっていることを頭に入れ、赤ちゃんがいる家庭では、大人やきょうだいに風邪症状があれば、感染源となるせきやくしゃみが赤ちゃんにかからないようにする。赤ちゃんに触れるときには手洗いなどを徹底したほうがいい、という。

赤ちゃんのときのRSウイルス感染がその後のぜんそく発症リスクを高めるのではないか、という報告が最近、注目されている。いずれ誰もが感染するウイルスとはいえ、「小さな赤ちゃんのときの感染をできるかぎり避けることが重要」と楠田さん。まずはインフルと同じように予防意識をもつところから始めたい。

最新の流行状況は各地の感染症情報センターなどのサイトで。
一覧は(http://www.chieiken.gr.jp/kansenjoho/klink.html)。製薬会社が主催するサイト(http://rsvinfo.net/)にはRSウイルスの基本情報や予防法などが紹介されている。

■2012.10.18  詐欺:介護報酬詐取容疑、会社代表を逮捕 八代署 /熊本 ひまわり
八代署などは介護報酬をだまし取ったとして八代市水島町、「ひまわり」代表、垣下由美子容疑者(54)を詐欺容疑で逮捕した。
 
逮捕容疑は、八代地域で運営していた有料老人ホームにヘルパーを派遣して訪問介護をしたと偽り、08年5〜11月ごろの間に県国民健康保険団体連合会から介護給付費約90万円を詐取したとしている。容疑を否認している。
 
同署や県によると、監査した県が昨年3月に詐欺容疑で刑事告発し、県警が家宅捜索し捜査していた。県は介護事業者の指定取り消しを決めたが、同社が処分取り消しを求め裁判で係争中という。

■2012.10.19  ドクターヘリ試験飛行…京都
今月から京都府中南部で全面運行しているドクターヘリの説明会が18日、京都市東山区の京都第一赤十字病院で行われ、医療機関や各消防本部の担当者ら約50人が参加した。

京丹波町以南の10市8町1村(対象人口約232万人)をカバーするため、1日から大阪府のドクターヘリを両府で常時運用。患者の搬送先には、京都第一赤十字病院のほか、洛和会音羽病院(山科区)、田辺中央病院(京田辺市)など15病院が指定されている。

この日は医師ら担当者が、ヘリが時速230キロで飛行することなどの説明を受けた。試験飛行もあり、医師が搭乗したヘリが大阪大病院(大阪府吹田市)から京都第一赤十字病院までの約30キロを10分で飛行し、屋上ヘリポートに着陸。参加者が機体の乗り心地を確認していた。

搭乗してきた阪大病院高度救命救急センターの中川雄公助教は「ヘリで的確な診断をして、1分1秒でも早く治療を始め、病院まで搬送するのが役割。各機関の連係が何より大事になってくる」と呼びかけていた。

■2012.10.19  富士フイルム、「サラシア」のインフルエンザ症状軽減作用を実証
富士フイルム株式会社は、糖の吸収抑制効果があることで知られるサラシア属植物の腸管免疫に対する作用に関して京都府立大学(動物機能学研究室・動物衛生学研究室)と共同研究を行った結果、サラシア属植物抽出エキスを摂取すると、免疫力の指標となるNK細胞(*1)の活性が高まり、インフルエンザ感染時の症状が軽減されることを、マウスを用いた試験における免疫学的解析・病理学的解析・臨床症状観察から実証した。

同社は写真分野で蓄積してきた原材料の精製加工技術や独自のナノ技術、解析技術などをベースに、これまでに、さまざまな有用成分を高濃度に抽出・安定化することや吸収を高めることに成功しているほか、有用成分の新たな作用のメカニズムを解明してきた。

サラシア属植物についても、抽出エキスを摂取することで腸内環境が改善され、生体内の免疫力が高まることをこれまでに確認してきた。免疫力が適正に調整されることによる花粉症などのアレルギー抑制への期待に加え、今回インフルエンザ感染時の症状軽減という研究成果が得られたことで、健康増進に繋がるサラシア属植物の新たな応用の検討に期待ができる。

*1 ナチュラルキラー細胞(Natural Killer Cell)
自然免疫の重要な因子として働くリンパ球の1種で、自分の体の一部ではないと認識した細胞を攻撃する働きを持つ。体内は、ウイルスに感染すると免疫に関連する細胞も順次活動を開始する。NK細胞はウイルスに感染したときに、それを攻撃するために最初に活動を開始する細胞。NK細胞の活性を測定することで、感染したときの防御力を評価することができる。NK細胞活性が高いほど、ウイルスへの防御力が高いという指標になる。

■サラシア
インドやスリランカなど南アジア地域に自生するデチンムル科のサラシア属植物(Salacia reticulata、Salacia oblongaなど)の総称で、インドに古くから伝わる伝承医学(アーユルヴェーダ)においては初期の糖尿病治療に使用されてきた。最近では、サラシア属植物抽出エキスに含まれるサラシノール,コタラノールなどが、腸内でオリゴ糖の分解を促進する酵素(α−グルコシダーゼ)の活性を阻害することが確認されており、サラシア属植物抽出エキスを摂取することで小腸での糖の吸収が抑制され、血糖値上昇を抑える効果があることが明らかになっている。

■2012.10.19  日本脳炎ワクチン接種と死亡の因果究明へ- 三井厚労相
接種後の死亡事例が相次いでいる日本脳炎ワクチンについて、三井辨雄厚生労働相は19日の閣議後の記者会見で、接種と死亡の因果関係を、有識者による検討などで究明する考えを示した。

日本脳炎ワクチンの接種による死亡事例は、今年度だけで2件が確認されている。このうち1件は、17日に岐阜県美濃市で、男児がワクチン接種後に亡くなったもの。厚労省は、この事例が明らかになった後、接種後に死亡したケースが7月にも1件あったと公表している。

31日に開催する厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会の「日本脳炎に関する小委員会」では、これまでの同ワクチン接種後の副反応などのデータを基に、接種と死亡事例の因果関係を議論する予定。
 会見で三井厚労相は、2件の死亡事例に関する情報を医療機関などから収集中だとした上で、「専門家の意見を聞きつつ、今後のことを検討していきたい」と述べた。

■2012.10.19  口腔ケアで胃ろうを抜去 「口から食べる」を支援する
脳梗塞や脳出血などの治療後、集中的なリハビリを行うのが「回復期リハビリテーション病棟」。まひの残る体で、歩く、食べる、排泄(はいせつ)などの自立に取り組む。後遺症が重いと、口から食べることが困難になるが、口腔(こうくう)ケアに取り組み、「口から食べる」を支援する病院も増えている。

鳥取県米子市にある「錦海(きんかい)リハビリテーション病院」。食堂からは、ラムサール条約に指定された「中海(なかうみ)」が見渡せる。地元で「錦海」とも称される中海には淡水魚と海水魚が生息し、ガンやカモが飛来する。

同院は、集中的なリハビリで自宅復帰を促す「回復期リハビリテーション病院(病棟)」で、在宅復帰率は80%を超える。言語聴覚士(ST)でもある竹内茂伸副院長は「うちは『口から食べる』を支援する病院。口から食べられると、家族の介護負担が減り、家に帰りやすい。患者本人にとっても食べることは大きな楽しみです」と言う。

米子市に住む小林千代さん(64)=仮名=の夫(70)は、くも膜下出血の治療後に転院した。当初は寝たきりで、排泄はおむつ。言葉も発せず、栄養摂取は胃に直接、管で栄養分を入れる「胃ろう」だった。しかし、ある日、スタッフがアイスクリームを夫の口に入れると、夫はゆっくりと口を動かした。小林さんは「すごくうれしかった。胃ろうになったら元に戻らないと思っていたけれど、希望を持った」。

ただ、再び話したり、食べたりするまでの過程は容易でなかった。日に3時間のリハビリが連日、マンツーマンで行われた。立つ、歩くなどの運動機能や、手指のリハビリだけではない。このうち1時間はSTによる発語や嚥下(えんげ)のトレーニング。歯科医との連携で、抜けたままになっていた部分に義歯も入った。

厚生労働省の施設基準では、STは質の高い回復期リハビリ病棟で「1人以上」の規定があるが、同院は48床に16人を配置。11人が入院病棟を担当し、患者の口腔ケアも担う。通常の発語や発声の訓練のほか、口腔ケアは日に最低3回。食前も含めて6回という人もおり、顔と口の中のマッサージ、舌のストレッチなども行う。

小林さんの夫は半年後には話したり、軟らかい食事を食べたりできるようになり、胃ろうを抜いて退院した。小林さんは「そこらじゅうに管が付いていた夫の状態を知る人は、信じられないと思う」と話す。退院後も骨折や誤嚥(ごえん)性肺炎で入退院を繰り返したが、その都度、同院を経て自宅復帰した。

もちろん、全ての患者が口から食べられるようになるわけではない。同院の実績では、小林さんの夫のように入院時に重度の摂食・嚥下障害のあった人で、管を抜いて出られた人は27%。入院時に何らかの経口摂取はできたが、経管による代替栄養が必要だった中等度の人で、退院時に管を取れた人は8割だった。

小林さんは「主人は認知症もあり、会話の内容ははっきりしないが、食べ物を見ると、うれしそうにする。満足していると思います」と話している。



「その後」のため良質のリハビリ病院を

「完全に回復していないのに転院を求められた」「病院から退院を勧められてショックだった」

病院から出るように勧められるのは不安なものだ。しかし、今は、例えば、脳卒中で運び込まれる病院と、その後にリハビリを受ける病院は異なるのが一般的だ。発症して最初にかかる病院は「急性期病院」と呼ばれ、命を助けるのが目的。元の生活に戻るための医療機関は「回復期リハビリ病棟(病院)」と呼ばれ、リハビリ専門の病院や病棟が担う。

ただ、誰でも入れるわけではない。対象は、脳梗塞や脳出血、大腿骨頚部(だいたいけいぶ)骨折、廃用症候群などで身体機能が低下した人で、発症から1〜2カ月以内に入院するなどの条件がある。早期の方が改善効果も高いためだ。

同じ回復期リハビリ病棟でも、スタッフ数やリハビリ内容に差があるため、質の高い医療機関を選ぶことが「その後」につながる。厚生労働省は今年度の診療報酬改定で施設基準を引き上げ、スタッフの充実した医療機関に「回復期リハビリテーション病棟入院料1」として高い診療報酬を付けた。病院に掲示されているので参考になる。

回復期リハビリテーション病棟協会(東京都渋谷区)は良い病院を選ぶポイントとして、(1)リハビリテーション専門医がいる(2)看護・介護のスタッフ数が多い(3)療法士によるリハビリ時間が長い−などを挙げる。(3)は最低でも1日2時間以上、できれば3時間の実施が理想だ。また、土日祝日も平日と同様のリハビリを提供するかどうかも目安になる。

同協会のHP(http://www.rehabili.jp/)で全国の会員病棟一覧が見られる。

■2012.10.19  RSウイルス感染者、過去最多に 1週間で5千人超
赤ちゃんの肺炎や気管支炎の原因になるRSウイルス感染症患者の最新1週間(10月1日〜7日)の報告数が5007人と、過去最多になったことが国立感染症研究所感染症情報センターの調査で19日、わかった。これまで最多だったのは2010年1月25〜31日の4742人。冬に向けてさらに流行が広がる恐れがあり、同センターは注意を呼びかけている。

■2012.10.20  施設から長男連れ去る
児童福祉施設から長男を勝手に連れ出したとして和歌山北署は18日夜、母で無職美濃田こずえ(32)(紀の川市打田)、友人の職業不詳林敏征(51)(同市中鞆渕)両容疑者を未成年者略取容疑で緊急逮捕した。14日午後の発生から子どもの確保まで4日間。県は児童相談所と県警間の情報共有が不十分だったことが対応の遅れを生んだ可能性があるとして、関係機関の連携強化を図る。

発表によると、2人は14日午後4時30分頃、和歌山市内の児童福祉施設で、職員と駆けつけた県子ども・女性・障害者相談センター(県中央児童相談所)職員の制止を聞かず、長男(10)を美濃田容疑者の自宅に連れ去った疑い。2人は否認している。

署員とセンターの職員が18日、美濃田容疑者宅に踏み込んで3人を発見。長男にけがはなかった。長男は昨年11月、虐待の恐れがあるなどとして同センターに保護され、翌月から児童福祉施設に入所していた。

 ◇

長男の保護に向けた対応についてセンターと同署が本格的に協議を始めたのは17日。連れ去りから3日も経過していた。

センターによると、14日午後、美濃田容疑者らが無理に長男を連れ去ろうとしたため、センターが職権により、緊急で一時保護すると通告。しかし、施設職員の110番を受け、署員が駆けつけた時には連れ去られていた。センターは美濃田容疑者らが通告を無視した経緯を署員に伝えたとする。

ただ、同署は「親が子どもを連れ帰ったと聞いたが、一時保護は聞いていない」としており、17日に訪れたセンター職員から詳細を聞き、初めて事態の重大性を認識。長男の安全確保を急ぐ必要があると判断し、すぐ自宅に踏み込んだという。

一方、センターは美濃田容疑者が連日、職員の電話に応じていたことから「強硬手段はできるだけ避けたいとの思いもあり、説得の可能性を捨て切れなかった」と振り返る。

センターは「最初に通報した段階で、警察は事態の重要性を把握していると思った。ただ、14日から警察にしっかり捜査してもらうため、もっと説明しておくべきだった」としている。一方、同署は「発生当初の聞き取りをしっかりすべきだった」とし、互いに意思疎通の不足を反省点に挙げている。

センターによると、児童福祉施設の入所児童が連れ去られたケースは珍しい。県は近く開かれる警察や県教委、センターとの会合などで同様のケースが起きた場合の連携強化を協議する。

山本明史福祉保健部長は「今回は虐待にいたらなかったが、警察との連携不足を非常に重く受け止めている。なぜ対応が遅れたのか、検証を進めたい」と話している。

■2012.10.20  食中毒:障害者支援施設「星が岡牧場」で16人症状 能美 /石川
県の食品安全対策室は19日、障害者支援施設の社会福祉法人佛子園「星が岡牧場」(能美市)で、職員や入所者16人が食中毒症状を示したと発表した。県は施設を同日から3日間の使用停止処分とした。同室によると、18日夜から職員や入所者が、下痢の症状を示した。症状は軽く、全員快方に向かっているという。患者の聞き取りから、17日に施設内で食べた夕食が原因とみて調べている。

■2012.10.21  高齢者の「転んで骨折」防ぐ 手軽な運動法を開発
転倒による骨折は、高齢者が寝たきりや要介護になる大きなきっかけとなる。筋力の衰えに加えて、2つのことを同時にこなす能力が低下しているため転倒しやすい。そんな高齢者のためのトレーニング法をいくつかの大学が開発した。科学的な知見に基づいており、簡単に見えるが効果は十分にあるという。

「どこの筋肉を使っているか意識してゴムバンドを伸ばしましょう」。滋賀県草津市の志津南市民センターには、20人ほどの高齢者がいすに座り、ゴムバンドを使った運動にいそしんでいた。

両手にゴムバンドを巻き付け、右足のかかとに引っかけて伸ばす。この動作を10回繰り返す。ゴムバンドの長さを調節し、10回目はややきついと感じる程度がよいという。太ももやすね、背筋など鍛える場所に応じ13通りの運動があり、1時間かけてゆっくりとこなす。

■80代で「薬いらず」

「取り組んで3カ月くらいたったら、すっかり体が軽くなった」と近くに住む藤田昭郎さん(83)はいう。この教室は藤田さんの呼びかけで2年前に始まった。

藤田さんは80歳になると、階段の上り下りがつらいと感じるようになった。立命館大学の調査に協力する中で知ったゴムバンド運動を自宅で週に2回続けるうちに、すんなり上れるようになったという。「今でも常用する薬はゼロ」。藤田さんは健康の秘訣と自慢する。

「年をとるにつれ、筋力は次第に低下する。その予防には高齢者でも運動が有効だ」。ゴムバンド運動を考案した立命館大学スポーツ健康科学部の藤田聡教授はこう解説する。筋力アップには「ちょっときついと感じる運動の方が適している」という。

ただ、筋力が衰えた高齢者には、スポーツジムのウエートトレーニングをこなすのは、負荷を小さくしても大変だ。運動は継続しないと意味がない。ゴムバンドだと、両手で握る間隔や伸ばす量を自分なりに調節するだけで思い通りの負荷をかけられる。

藤田教授は平均年齢が70歳弱の男女18人を対象に、トレーニングの効果を試した。様々な病気の診断に使う磁気共鳴画像装置(MRI)で太ももを撮影したところ、筋肉の量が平均して400グラム増加。高齢者でも筋力増強に効果があることを確かめた。

■同時に2つの課題

「筋力増強も大事だが、脳機能の低下を予防することも重要だ」。こう話すのは京都大学大学院医学研究科の山田実助教だ。山田助教らが注目するのは「デュアルタスク(二重課題)」への対応力だ。

歩きながら話すといった具合に2つの課題を同時にこなす能力で、高齢者はデュアルタスクを遂行する力が弱くなることで転倒しやすくなるという考え方に基づく。歩きながら別のことに注意を向けると、ちょっとした不測の事態に対応できず、つまずいたりすべったりして転ぶという。

この機能を鍛えるトレーニング法を山田助教らは考えた。例えば、いすに座り、なるべく速く5秒間足踏みする。その間に動物や野菜、国などの名前を次々に言う。足踏みが遅くならないよう気を配ることがポイントだ。この動作を10回くらい繰り返すトレーニングを週に1回実施してもらったところ、2つの動作をうまくこなせるようになるなどの効果が出た。

転倒する場所は屋外とは限らない。「屋内でも電気コードに足を引っかけたり、レジ袋を踏んで滑ったりするケースが多い」と山田助教は指摘する。大学発のトレーニング法に取り組むだけでなく、自宅に潜む危険を取り除くことにも注意を向けたい。

■2012.10.21  ノロウイルス:津の障害者施設の弁当で35人症状 県が営業禁止処分 /三重
県は20日、社会福祉法人「星たる」が運営する津市河辺町の障害者雇用施設「津ファクトリー河辺」で調理された弁当を食べた10〜60代の男女35人が下痢や嘔吐(おうと)などの症状を訴えたと発表した。全員が快方に向かっているという。県は食中毒と判断、同施設を同日付で営業禁止処分にした。

県食品安全課によると、35人は15〜16日、津市と松阪市にある13の障害者施設でそれぞれ津ファクトリー河辺が調理した弁当を食べていた。症状を訴えた人のうち6人と同施設で調理を行った13人のうち3人から食中毒の原因物質のノロウイルスが検出されたという。

■2012.10.22  夫の連れ子に熱湯、25歳女を逮捕 大阪府
夫の連れ子の男児(4)を熱湯の風呂につけて重傷を負わせたとして、大阪府警枚方署は22日、大阪府枚方市渚西1、無職、野村知加(ともか)容疑者(25)を傷害容疑で逮捕した。「沸かした湯を入れた鍋をごみ箱の上に置いていたのを子供がひっくり返した」と容疑を否認している。

逮捕容疑は今年3月30日午後5時半ごろ、自宅風呂場で熱湯を入れた浴槽に男児の足をつけ、やけどを負わせたとしている。男児は現在も入院中。治療した病院が4月、大阪府中央子ども家庭センターに連絡して発覚した。

府警によると、野村容疑者は当時、夫と子供3人の5人暮らし。野村容疑者は食事をしない男児に激高したという。夫は仕事で外出していた。男児の顔などに複数の皮下出血の痕があり、府警は日常的に虐待があった可能性もあるとみている。

近所の女性(70)は「若い夫婦なのに子供がたくさんいて頑張っていると思っていたが、育児のストレスでもあったのだろうか。小さい子に罪はないのに」と話した。

■2012.10.25  解雇職員と福祉法人の和解成立
降格と減給を拒否したことで解雇されたのは無効だとして、特別養護老人ホームなどを運営する社会福祉法人「常陽会」=新潟市江南区=の男性職員(53)=同市西区=が同法人を相手取り、雇用関係の存在確認などを求めた訴訟の控訴審は25日までに、同法人が未払い賃金相当分のほかに和解金900万円を男性に支払うことで東京高裁(市村陽典裁判長)で和解が成立した。

男性の代理人らによると、ほかの和解条項として、解雇を無効とした一審新潟地裁判決の内容を双方が確認し、同法人が男性に遺憾の意を表することや、双方の労働契約を解除することなどが盛り込まれた。この訴訟では同法人が地裁判決を不服として控訴。東京高裁は7月、和解協議に入るよう双方に求めていた。


********* 新潟合同法律事務所 **********

常陽会解雇無効訴訟 勝訴判決!

本日,2012年4月20日,新潟地方裁判所は,社会福祉法人常陽会に雇用されていた職員Xさんが解雇された件について,解雇が無効であるとの判決を言い渡しました。

常陽会は確たる理由もなく,半年間で,3回にわたりXさんの基本給を減額しました。Xさんの基本給は半分以上減額されたのです。2回目の減額についてはXさんの同意書があります。そして,常陽会は,Xさんが3回目の減額を拒否したことを理由に解雇をしたのです(第1次解雇)。

そのためXさんは労働組合に加入し,常陽会と団交をするなどしましたが,常陽会は団交を拒否しました.そのため,労働組合はやむなくチラシ配布等を行ない,常陽会の不当性を訴えました。訴訟中には,このチラシ配布を理由とする第2次解雇もなされました。

裁判所は,第1次解雇,第2次解雇とも解雇をすることができる理由がないと当方の主張を認めました。

また,裁判所は,合意書がある2回目の減額についても自由な同意であったとは言えないとして,減額を無効としました。

私たちはXさんが職場復帰するまで闘う所存です。

■2012.10.25  知的障害の少女殴り死なせる、容疑の41歳男逮捕
同居する内縁の妻の子供の女子中学生を繰り返し殴ったとして、北海道警室蘭署は25日、登別市中央町1、無職、石川哲也容疑者(41)を傷害容疑で逮捕した。中学生は約18時間後に病院で死亡。同署は司法解剖して死亡と暴行の因果関係を調べる。また中学生の体には他にも殴られたような痕があり、日常的な虐待がなかったか調べる。

容疑は23日午後11時ごろ、自宅で中学3年の松尾みさとさん(14)の胸を十数回殴り、胸部打撲などのけがをさせたとしている。暴行後、松尾さんはいったん就寝したが、翌24日にトイレにこもり、出てこなかったことから石川容疑者が午後3時半ごろ119番。同5時過ぎ、死亡が確認された。

捜査関係者によると、石川容疑者は「食事の後片付けで言うことをきかなかったので殴った。死ぬとは思わなかった」と供述している。松尾さんは知的障害があったという。

石川容疑者は松尾さんの実母(42)、以前交際していた女性(33)の計3人で06年ごろから同居。松尾さんは道内の福祉施設に入所していたが、今年8月から4人で暮らし始めた。暴行時は実母ら女性2人も室内にいたという。

道室蘭児童相談所は「関係者から家庭環境などについて相談があったが、(逮捕容疑のような)暴行、虐待の相談や通告はなかった」としている。

■2012.10.26  接客に福祉の視点 高齢・障害者の対応強化 ホンダカーズ宮城
ホンダ系ディーラーのホンダカーズ宮城中央(仙台市)は、高齢者や障害者に優しい店舗づくりを進めている。介助に関する専門家の養成を始め、宮城県内の全20店で計約60人の社員が資格を取得した。車いす対応の試乗車を集約した仙台市宮城野区の高砂店にも資格取得者が誕生し、ホンダが8月に全国でスタートさせたバリアフリー対応の「マスター店」に認定された。

高砂店の朝礼は黒沢克彦工場長(41)の手話の紹介で始まる。「『いらっしゃいませ』など簡単な内容が中心」と言う。
 
店には黒沢工場長ら3人の「介助専門士」がいる。NPO法人日本介助専門員推進協会(三重県)の認定制度で、車いす介助や点字などに関する講習を受けて取得した。
 
「頻繁には使わないが、専門知識や技術が役に立つ時がある」と有資格者の阿部義典店長代理(52)。障害を抱える来店客には「邪魔にならないようにお手伝いさせていただいている」と語る。
 
ホンダカーズ宮城中央は2008年、店舗面積が広い高砂店を福祉車両の販売拠点とし、試乗車6車種を集約した。対応を強化するため、ことし1月に始めたのが介護に関する講習会で、対象を店長ら幹部、工場長、女性従業員に分けて3回開いた。
 
資格取得は接客向上につながっている。高砂店の奥村祐子さん(30)は「車いすの方はそのままか、いすに移りたいのか、質問しなければ分からない。ちゅうちょせず話し掛けることを心掛けるようになった」と話す。
 
ホンダのマスター店は02年に始めた「オレンジディーラー」制度の強化策。従来の施設面のバリアフリー化だけでなく、介助専門士か、NPO法人日本ケアフィットサービス協会(東京)認定の「サービス介助士」が2人以上いることを条件にした。東北では高砂店とホンダカーズ山形下条店(山形市)の2店を認定した。
 
マスター店について、ホンダ福祉事業室は「高齢化社会の販売現場には専門知識を持った人材が不可欠。宮城の取り組みを全国に広げるために行き着いた制度」と説明している。

■2012.10.26  古着などの提供を、障害者福祉施設
機械油などをふき取る工業用ぞうきん(ウエス)を作っている、障害者就労継続支援施設「もぐら工房」(新潟市西区坂井)が、材料の古着や布の提供を呼び掛けている。これまで、市内の公共施設や店舗などに回収箱を置き集めてきたが、近年はリサイクルショップの増加や、不景気の影響などで減少が続いていた。

ウエスにはTシャツやシーツ、トレーナーなど綿を含む布が適し、油を吸収しにくい背広やジャンパーなどは不向き。回収箱は市総合福祉会館や東区役所、西地区公民館などにある。問い合わせは工房、025(260)3700。

■2012.10.28  盲導犬:進まない社会的受け入れ…多くの理解を 福井でキャンペーン、訓練説明や歩行体験も /福井
盲導犬に対する理解を深めてもらおうと、福井市中央1の西武福井店は27日、「盲導犬ふれあいキャンペーン」を開き、デモンストレーションや体験歩行などを行った。

静岡県富士宮市の盲導犬ユーザー、押野まゆさん(26)ら日本盲導犬総合センター(同市)の職員2人が、押野さんのパートナー、ピンキー(ラブラドルレトリバー、3歳)とともに訪れ、盲導犬の訓練方法や役割を説明した。

ピンキーが、障害物を避けたり、段差を知らせたりして人を誘導する様子が披露され、歩行体験では一般の参加者が目隠しをしてピンキーと一緒に通りを歩いた。

押野さんは「盲導犬同伴だと飲食店で断られるなど、社会的な受け入れがなかなか進んでいないのが実情。少しでも多くの人の理解につながってほしい」と話した。歩行体験に挑戦した福井市経田、会社員、牧野咲子さん(53)は「最初は怖かったけど、安心して歩けた。いい体験になった」と話した。

■2012.10.30  暴行容疑で経営者を再逮捕 介護施設塩事件 佐賀 デイサービス立花・立花宅老所
介護施設利用者の口に塩を押し込んだとされる事件で、伊万里署は30日、暴行の疑いで、伊万里市立花町、施設運営会社役員冨永英之容疑者(60)=同罪で起訴=を再逮捕した。同署によると、冨永容疑者は逮捕時から一貫して「していない」と容疑を否認しているという。
 
逮捕容疑は4月22日夜と5月29日朝、冨永容疑者が経営する同市の介護施設「デイサービス立花・立花宅老所」で、入所していた男性(91)の口の中へ、スプーンに盛った塩を押し込んだ疑い。冨永容疑者は、5月28日にもこの男性に同様の行為をしたとして今月22日、起訴された。

■2012.10.31  障害福祉事業者の指定取り消し 書類偽造で愛知県
書類を偽造して障害福祉サービス事業者の指定を受けたとして、愛知県は31日、同県津島市柳原町の福祉事業者「コスモス」に対し、津島市と同県稲沢市で運営している共同生活介護所「ケアホームあさがお」の指定を11月30日に取り消すと通知した。コスモスが受け取っていた介護給付費など1329万円の返還も命じ、有印私文書偽造容疑などで県警に告発する。

県によると、コスモスは2011年5月の指定申請時に、職員の女性が5年以上の実務経験があるとする虚偽の証明書を作成。事業の指定には、5年以上の実務経験を持つ「サービス管理責任者」の配置が義務付けられている。このほか、県の監査などでも虚偽の説明を繰り返していたという。

現在、2つの介護所には計7人が入所しているが、指定取り消しになる11月30日までに、ほかのケアホームなどの受け入れ先を確保する。

■2012.10.31  不正受給で訪問介護事業所の指定取り消し- 和歌山県
介護報酬32万円余りを不正受給したなどとして和歌山県は、「紀和」(有田市)が運営する訪問介護事業所「紀和苑訪問介護サービス下津」(海南市)について、介護保険法に基づいて指定を取り消したと発表した。介護予防訪問介護の指定も併せて30日付で取り消した。

県によると、同事業所は昨年7月から12月にかけて、実際には提供していない生活援助サービスなどを提供したとする架空の記録を作成し、介護報酬を不正に請求。計32万6280円(127件)を不正受給した。また、昨年4月から11月までの間、全く勤務実態がない訪問介護員が働いていたとする虚偽の出勤簿を県に提出した。虚偽報告分の人員がいなかった場合、同事業所は介護保険法上の配置基準を満たさないため、県では同事業所が違法状態で運営されていたとしている。
 
今後は2保険者が、課徴金も含め44万3741円の返還を求める方針。

■2012.10.31  在宅障害者 震災の爪痕
東日本大震災から1年半以上が経過したが、被災地の障害者は、今も様々な困難に直面している。とりわけ、福祉施設を利用せず、自宅や仮設住宅で暮らす障害者ほど、生活上の不安は大きい。

介護者不足 生活にも支障

「住み慣れた街を離れたくはないが、移住するつもり」。福島市内で一人暮らしをしている筋萎縮性側索硬化症(ALS)の佐川優子さん(58)は震災後しばらくして、覚悟を決めた。

理由は、介護者不足だ。佐川さんは、自力では手足を動かせず、人工呼吸器も欠かせない。介護保険や障害者支援制度に基づき、専属ヘルパー4人が交代で24時間の介護を行っている。

だが、東京電力福島第一原発の事故後、ヘルパーの1人、渡辺和也さん(42)が、放射能の影響を心配する家族とともに、福島市から福島県会津若松市へ避難。以来、車で片道2時間かけて、佐川さん宅へ通う。

渡辺さんは、「ALS患者の介護は専門的な技術が必要で、代わりを見つけるのは簡単ではない。辞めるつもりはない」と話す。だが佐川さんは、「これ以上、苦労をかけられない。今後、ヘルパー不足がより深刻になる可能性もある」と話す。

渡辺さんが勤める介護事業所では震災後、時給制のヘルパー約80人のうち約20人が辞めた。半数前後が、避難に伴う退職だった。また、介護事業所団体の調査(今年1月)によると、障害者の在宅介護を行っている福島市内の24事業所のうち、半数が「ヘルパー不足が顕著」と回答した。

宮城県と岩手県でも震災後、介護関連職種の有効求人倍率が急上昇しており、人手不足は深刻だ。



津波で甚大な被害を受けた岩手県陸前高田市。被災したJR大船渡線はいまだに復旧せず、路線バスも震災前より本数が減り、車を運転できない障害者の生活に支障が出ている。

市内の仮設住宅に住む全盲の千葉亮子さん(54)は、時々気分が落ち込むことがあり、月1回、隣接する同県大船渡市の病院へ通っている。震災前は、ヘルパーに付き添ってもらい、バスで片道約40分かけて通えた。だが、震災後はバスの本数が減ったうえ、バス停までも遠くなり、体調の悪化もあって、タクシーを使わざるを得ないことが増えた。

料金は往復で約1万円。「マッサージ業を営んでいた自宅が津波で流されてしまった。仕事ができないので経済的な負担が重い」と困っていた。幸い今年4月、ボランティア団体「JDF(日本障害フォーラム)いわて支援センター」が、車による無料送迎を開始。千葉さんも、歯科医院への通院も含め月2回ほど利用できるようになった。

同センターの送迎を利用している障害者や高齢者は、現在約50人。小山貴事務局長は、「予想以上に増えている。交通費が払えない人、家族などの支援が受けられない人を優先的に支援していくしかない」と話す。

障害者や高齢者の通院は、沿岸部の被災各地で課題となっている。このため、岩手県釜石市は今月、仮設住宅の住民らを対象に予約制乗り合いバスの試験運行を始めた。

被災地ではこのほか、仮設住宅がバリアフリー(障壁なし)でないために、車いす利用者などが住みにくいといった問題も指摘されている。



障害者の暮らしにくさを解消するため、障害者団体を中心としたボランティアによる支援が展開されている。だが、地域社会で暮らす障害者のニーズは多様で、十分な支援が行われているとは言い難い。

被災地の障害者の現状に詳しい、NPO法人「ゆめ風基金」(大阪市)の八幡隆司理事は、「今後は、それぞれの地域が支援を引き継ぐことになる。よりきめ細かい支援ができるよう、自治体が中心となって早急に体制を整え、国も財政的な援助をすべきだ」と指摘している。

■2012.10.31  海南の「紀和苑」指定取り消し 介護報酬不正受給 和歌山
県は30日、介護報酬約32万6千円を不正受給したとして、海南市下津町下津の指定訪問介護事業所「紀和苑訪問介護サービス下津」(池端伸一社長)を、同日付けで介護保険法に基づく指定取り消し処分にすると発表した。
 
県によると、同事業所は平成23年7月2日から12月31日までの間、実際には行っていない掃除や調理などの生活援助サービスを行ったとして、虚偽のサービス提供記録127件を作成し介護報酬を請求。約32万6千円を不正に受け取っていた。県は、不正受給額の返還を求める方針。同事業所はすでに休止している。

■2012.10.31  盲導犬:一緒に散歩し理解呼びかけ 中区 /広島
視覚障害者を支援する盲導犬への理解を呼びかけるふれあいキャンペーンが27日、中区基町のそごう広島店で開かれた。

日本盲導犬協会の主催。盲導犬を育てる島根あさひ訓練センター(島根県浜田市)から「シャンティ」(雌3歳)と「ナッシュ」(同)の2匹が参加し、現状説明や訓練のデモンストレーションの後、来場者たちがアイマスクを着用して実際に盲導犬と歩く体験も。広大付属小3年の高村真依さん(9)は「人間の言うことをしっかり聞いてくれて、すごい」と驚いていた。

同協会によると、盲導犬は全国で1043匹(県内33匹)いるが、希望する視覚障害者は3000人以上もいるという。同協会は募金などの協力を求めている。

 

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