残しておきたい福祉ニュース 1996〜社会福祉のニュース

Past news

残しておきたい福祉ニュース

 2016年 
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

 2016.11.15 障害児にホースセラピー 心身の変化に手応え 鹿児島市・社会福祉法人落穂会
 2016.11.19 入所の障害者1万人減目標 厚労省、地域生活に移行
 2016.11.24 群馬県内の「放課後等デイサービス」設置増 4年で3倍 質の向上が課題 全国でも12年度の3107カ所から15年度には6971カ所に倍増
 2016.11.28 <メチル水銀>マグロ過食に注意 妊婦から胎児へ影響  将来知的障害と判断される子の割合が増える?
 2016.11.29 障害児施設を退所後の行き先未定 全国で1200人以上に


■2016.11.15  障害児にホースセラピー 心身の変化に手応え 鹿児島市・社会福祉法人落穂会
馬と触れ合うことで心身のバランスを整える「ホースセラピー」が今年6月から、鹿児島市の社会福祉法人「落穂会」で本格的に始まっている。主に知的障害のある子供たちが「放課後等デイサービス」として利用しており、県内では珍しい取り組み。関係者らは「落ち着きが生まれた」「順番を理解できた」といった子供の変化を実感している。

鹿児島市本名町にある「あさひが丘乗馬倶楽部(くらぶ)シュバル」。職員4人に手助けされ、セラピーを受ける鹿児島養護学校小学部2年の馬場宥伸君がポニーにまたがった。
「顔はまっすぐ」「姿勢を意識して」。1回の乗馬は約15分間。馬場君は週1回程度、利用する。職員の呼びかけに応じ、馬に乗ったまま両腕を広げたり、両手を頭の上にのせたりしている。

「馬はかわいい。背中に乗って歩いている時が一番楽しい」と馬場君。チーフ支援員の大迫雄介さん(33)は「日常生活の中で転びがちだったが、姿勢が良くなり解消された。学校の授業中も、いすに長く座れるようになったと聞いている」と手応えを語る。

■2016.11.19  入所の障害者1万人減目標 厚労省、地域生活に移行
厚生労働省は11日、入所施設で集団生活をする障害者約13万人のうち、9%以上に当たる1万人強が2017年度から4年間で施設を退所し、自宅やグループホームなど地域での暮らしに移れるようにするとの目標を定めた。同日開かれた社会保障審議会の部会に示した。

障害者の入所施設では今年7月、相模原市で19人が殺害される事件が発生。障害者団体からは地域移行を進めれば障害者への理解が深まり、同種の事件の再発防止にもつながるとの指摘がある。

障害福祉では、各自治体が3年ごとに実施計画をつくっており、今回の目標は次回の計画策定に向けた厚労省の基本指針に盛り込む。

厚労省はこれまでも地域生活への移行を進めており、前回の目標では14〜17年度に入所者12%が退所できるようにすると定めていたが、達成は厳しい状況。入所者の高齢化と重度化が進んでいることが主な原因で、グループホームの整備などで9%以上の達成を目指す。

このほか、障害のある子供をサポートする児童発達支援センターを20年度末までに全市町村に1カ所以上設置するとした。

■2016.11.24  群馬県内の「放課後等デイサービス」設置増 4年で3倍 質の向上が課題 全国でも12年度の3107カ所から15年度には6971カ所に倍増
放課後や長期休暇に障害児を預かる群馬県内の「放課後等デイサービス」(放課後デイ)が本年度、計150カ所(10月1日時点)となり、制度が導入された2012年度の3倍に増えたことが23日までの県のまとめで分かった。障害に応じた支援が受けられることなどを背景に需要が高まり、企業による設置の動きが拡大、事業所数の増加の流れを加速させている。ただ、給付費の不正請求で処分を受ける施設もあるなど、事業者は玉石混交なのが実情。業界全体の質の向上が課題として浮かび上がっている。

県内の事業所数(10月1日時点)は12年度は50カ所だったが、13年度60カ所、14年度84カ所、15年度109カ所、16年度150カ所と増え続けている。全国でも12年度の3107カ所から15年度には6971カ所に倍増した。全国規模で施設を展開する企業が設置するケースが増えており、全体の数を押し上げている。

事業所数が増加の一途をたどる一方で、不適正な対応が問題として指摘されるケースも生じている。県内では今年7月、同一人物が代表を務める高崎市内のNPO法人と企業が、運営する計3事業所で利用実績がない給付金を不正に請求し、約170万円を受け取っていた事例が明らかになった。県はこの事業者に指定停止の行政処分を行っている。

全国的に、提供するサービスの質にも事業所間で開きが生じている状況で、国の審議会や国会では「障害の特性を理解しない業者が営利目的で参入し、十分なサービスを行っていない例が増えている」といった声が上がっている。

事業者の質の向上が課題となる中で、厚生労働省は利用者が一定基準以上のサービスを受けられるよう昨年、職員配置や設備、職員の資質向上などのガイドラインを作成。県も今年9月、新しく設置する事業者を対象に、ガイドラインの周知や給付金の適正な請求方法などを説明する研修会を初めて開催した。研修会は年末や年度末にも開く方針。

県障害政策課は「さまざまな事業者がいるので、利用者が安心して質の高いサービスを受けられるよう、研修や指導を充実していきたい」としている。

◎放課後等デイサービス
6歳から18歳までの障害のある子どもを放課後や夏休みなど長期休暇中に預かる場所。子どもひとりひとりに合った計画を作り、スポーツや学習などを通じて自立に必要な力を養う。12年の児童福祉法の改正で制度化された。保護者が働いたり、親子の孤立を防いだりできる一方、障害の特性を理解しない業者が参入する例もあり、質の確保が課題になっている。

■2016.11.28  <メチル水銀>マグロ過食に注意 妊婦から胎児へ影響  将来知的障害と判断される子の割合が増える?
マグロやメカジキなどメチル水銀を比較的多く含む魚介類を妊婦が食べ過ぎると、生まれた子の運動機能や知能の発達に悪影響が出るリスクが増すことが、東北大チームの疫学調査で分かった。メチル水銀は水俣病の原因物質だが、一般的な食用に問題のない低濃度の汚染でも胎児の発達に影響する可能性があることが明らかになるのは、日本人対象の調査では初めて。

2002年から、魚をよく食べていると考えられる東北地方沿岸の母子約800組を継続的に調査。母親の出産時の毛髪に含まれるメチル水銀濃度を測定し、子に対しては1歳半と3歳半の時点で国際的によく用いられる検査で運動機能や知能の発達を調べ、両者の関係を分析した。

毛髪のメチル水銀濃度は低い人が1ppm以下だったのに対し、高い人は10ppmを超えていた。世界保健機関などは、水俣病のような神経障害を引き起こす下限値を50ppmとしている。

濃度が最高レベルの人たちの子は最低レベルに比べ、1歳半時点で実施した「ベイリー検査」という運動機能の発達の指標の点数が約5%低かった。乳幼児期の運動機能は将来の知能発達と関連があるとされる。3歳半時点の知能指数検査では男児のみ約10%の差があった。海外の研究で、男児の方が影響を受けやすいことが知られている。

国は05年、海外の研究を基に、妊婦に対しメチル水銀の1週間当たりの摂取許容量を体重1キロ当たり100万分の2グラムと決めた。厚生労働省はこれに基づき、クロマグロの摂取は週80グラム未満とするなどの目安を示している。今回の調査では食生活も尋ねており、約2割がこれを超えていたと考えられるという。

研究チームの仲井邦彦・東北大教授(発達環境医学)は「目安を守れば、影響は心配しなくてよいと考えられる。魚には貴重な栄養も含まれており、妊婦が魚を断つことは好ましくない。食物連鎖の上位にいるマグロなどを避けサンマなどを食べるなど、魚種を選ぶことが大切だ」と話す。

◇厚生労働省が定めた妊婦の摂取目安

※週80グラム未満

クロマグロ、メバチマグロ、メカジキ、キンメダイ、ツチクジラなど

※週160グラム未満

キダイ、ユメカサゴ、ミナミマグロ、クロムツ、マカジキなど

※刺し身なら1人前、切り身なら1切れが約80グラム

東北大チームの研究で比較的低濃度のメチル水銀でも妊婦が摂取した場合、胎児の発達に影響するリスクがあることが明らかになったが、影響の受けやすさには個人差があり、多く摂取した母親の子が必ずしも大きな影響を受けるとは限らない。今回の研究結果は、個人レベルではなく、集団として将来知的障害と判断される子の割合が増えることを意味する。

例えば1000人の集団の場合、メチル水銀の影響がなくても、知的障害と判断される子が23人程度生まれることが経験的に分かっている。メチル水銀を多く摂取した結果、ベイリー検査の点数が約5%下がることは、これが約2倍の48人程度になるリスクが生じることに相当するという。

子どもの発達には遺伝や教育など、さまざまな環境要因も大きく影響する。また、低濃度のメチル水銀と子の脳の発達の関係は未解明のことが多い。個々の子に知的障害が疑われる場合、メチル水銀が影響したかどうかは判別できないのが現状だ。【渡辺諒】

メチル水銀
水銀は地殻や土壌に含まれ、火山噴火や石炭の燃焼、金の採掘などに伴って排出される。これが水中や土壌中で微生物の働きなどによって化学変化し、メチル水銀が生成される。海水にも含まれ、食物連鎖によって徐々に濃縮し、上位に位置するクロマグロなどで濃度が高くなる。水俣病は、工場排水中の高濃度のメチル水銀が原因となった。

■2016.11.29  障害児施設を退所後の行き先未定 全国で1200人以上に
知的障害がある子どもたちの入所施設では、法律の改正で来年度末までに18歳以上になっても施設に残っている人たちに退所してもらわなければならなくなっています。しかし、次の行き先が決まっていない人たちが1200人に上ることが、施設で作る団体の調査でわかりました。

この調査は、知的障害者の入所施設などで作る日本知的障害者福祉協会が行ったもので、全国の172の施設から回答を得ました。

知的障害がある子どもたちの入所施設では、原則18歳になると施設を出なければなりませんが、特例で住み続けることが認められていて、今回の調査で、これらの施設に入所している6635人のうち、18歳以上の人たちは、4分の1に当たる1322人に上ることがわかりました。

しかし、児童福祉法が改正され、来年度末までに18歳以上の人たちは施設を出なければならなくなり、ことし9月の時点で次の行き先が決まっていない人たちが、1220人に上ることがわかりました。

このうち、住み慣れた同じ地域に施設がないという人が256人、施設の順番待ちという人が178人、家庭に戻るものの、家族と調整が進んでいないという人が51人などとなっています。

特に関東地方の施設は、18歳以上の入所者がおよそ440人と多く、関東の障害児施設で作る団体は「障害の重い人ほど受け入れ先が見つからない。障害者の住まいの量的な拡大を国や自治体に訴えていきたい」としています。


施設の現状は

神奈川県秦野市の知的障害がある子どもたちの入所施設では、入所者およそ100人のうち、半数近くにあたる47人が18歳以上です。18歳以上の人たちは、来年度末までに施設を出なければなりませんが、その多くが行き先が決まっていません。

12歳から22年間、この施設で暮らしてきた34歳の佐藤智一さんは、知的障害に加えて、てんかんの症状もある重い障害者です。住み慣れた近隣の施設に移ることを希望していますが、まだ見つかっていません。両親は自営業のため、自宅で介助することは難しいとして、新たな施設を探し続けています。智一さんの母親は「なかなか決まらないので、とても不安で悩んでいます」と話していました。

一方、仮に行き先が見つかったとしても、住み慣れた地域を離れざるをえない現実も見えてきました。

これまでに施設を移った人の中には、都市部の施設に空きがなく、北海道や青森県など遠方の施設に移った人もいるということです。

障害がある子どもたちの入所施設、弘済学園の高橋潔園長は「家族が毎週のように面会して元気な顔を見られるように、近くで過ごせるようにというのが親の心情だと思います。しかし、現状はなかなか厳しいもので、一個人や一施設が対応できる問題ではなく、国や行政なども考えてほしいです」と話していました。


受け皿の建設進まず

知的障害がある人が暮らす施設は、18歳未満の子ども向けと、18歳以上の大人向けがあります。

これまでは18歳になっても、子どもの施設で暮らすことが特例で認められていましたが、障害者が地域で暮らすことを目指して児童福祉法が改正され、来年度末までに18歳以上の人たちは施設を出なければならなくなりました。

国は大規模な施設を新たに建設しない方針を示し、少人数で地域で暮らすグループホームを作ることなどを進めています。しかし、障害者の住まいに詳しい日本福祉大学の綿祐二教授によりますと、重い知的障害などがある人のグループホームは、資金や人材の確保が課題となり、建設はほとんど進んでおらず、受け皿が足りない状態が続いているということです。

 

トップへ フッターへ